説明

薄膜の成膜方法及び成膜装置

【課題】被処理体の凹部の径が小さくても、例えばバリヤ層として機能する薄膜が凹部の側壁へ堆積することを抑制しつつ、凹部の底部に効率的に堆積させることが可能な薄膜の成膜方法を提供する。
【解決手段】表面に凹部6が形成されている被処理体Wの表面に薄膜を形成する成膜方法において、凹部の内面を含む被処理体の表面にチタン化合物ガスと還元ガスとを用いてチタン膜100を形成するチタン膜形成工程と、窒化ガスを用いてチタン膜を全て窒化して第1の窒化チタン膜104を形成する窒化工程と、凹部の内面を含む被処理体の表面に第2の窒化チタン膜106を堆積させて形成する窒化チタン膜堆積工程と、を有する。これにより、被処理体の凹部の径が小さくても、薄膜が凹部の側壁へ堆積することを抑制しつつ、凹部の底部に効率的に堆積させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板等の半導体ウエハの表面に、バリヤ層等の薄膜を形成するための薄膜の成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、IC等の半導体デバイスを形成するためにはシリコン基板等よりなる半導体ウエハに対して、成膜処理、酸化拡散処理、エッチング処理、改質処理等の各種の処理が繰り返し施される。
【0003】
高集積化や高密度化が進んだ近年の半導体デバイスは,複数の配線層から成る、いわゆる多層配線構造を有している。このような半導体デバイスにおいては、良好な電気的特性を得るためにも、シリコン基板と配線層とを電気的に接続するためのコンタクトホールや上側配線層と下側配線層とを電気的に接続するためのビアホールに対する金属の埋め込み技術がより重要となってきている。特に近年では、埋め込み性能がより高いなどの理由から、コンタクトホールやビアホール等の凹部には、主としてCVD(Chemical Vapor Deposition)法によってタングステンが埋め込まれる傾向にある。
【0004】
上記タングステンが埋め込まれたシリコン基板等の半導体ウエハにおける一般的なコンタクト構造を図14に示す。図14(A)に示すように、このようなコンタクト構造を得るためには例えば、まずシリコン基板等よりなる半導体ウエハW上の絶縁膜2のうち、シリコンが含まれる導電層4に対応する領域をエッチングしてホール等の凹部6を形成する。この導電層4が下層の配線層やトランジスタのソースやドレイン等を構成する不純物拡散層となる。
【0005】
そして、上記凹部6内にタングステンを埋め込むことになるが、この場合、タングステン膜の密着性や凹部6の電気的特性などを向上させるため、タングステン膜の成膜に先立って凹部6の表面を含むウエハ表面全体に、チタン膜8と窒化チタン膜10とを順に形成してから、その上にタングステン膜12を形成する。
【0006】
従来、これらの各成膜工程は、複数の処理装置で行うようになっていた。例えば先ず、第1の処理装置で例えば四塩化チタン(以下「TiCl 」とも称す)ガスと水素(以下「H 」とも称す)ガスとを用いてプラズマCVD法等により、凹部6内を含めてウエハWの表面全体にチタン膜8を形成する。このとき、導電層4の表面には、導電層4中のシリコンとチタンとは反応してチタンシリサイド(TiSi )層14が形成される。
【0007】
続いて、このウエハWを第2の処理装置へ搬送して、例えば四塩化チタンガスとアンモニア(以下「NH 」とも称す)ガスとを用いて熱CVD法により、窒化チタン膜10を形成する。そして、このウエハWを第3の処理装置へ搬送して、例えばモノシラン(SiH)ガスと水素ガスとの両方又は一方のガスと六フ ッ化タングステン(以下「WF 」とも称す)ガスを用いて熱CVD法によりタングステン膜12を形成する。これによって、凹部6内にはタングステンが埋め込まれる。
【0008】
このようなタングステン膜12を形成する際に用いられる六フッ化タングステンガスは、チタンなどの金属と高い反応性を示すフッ素(F)を含むため、もし窒化チタン膜10を形成せずに、チタン膜8上に直接的にタングステン膜12を形成すると、このチタン膜8がフッ素によりエッチングされてしまう。つまり、タングステン膜12とチタン膜8との間に形成される窒化チタン膜10は、タングステン膜12の形成工程におけるフッ素の拡散を防止するバリヤ層として機能するものであり、これによって、チタン膜8はフッ素の侵入を受けることなく良好な状態に保たれる。
【0009】
このような理由により、従来、チタン膜8上には窒化チタン膜10を形成していた。この場合、チタン膜8を形成した後、窒化チタン膜10を形成する前に、チタン膜8の表面を例えばプラズマにより窒化する処理を行っていた。これにより、チタン膜8表面(上層部)に薄い窒化チタン層16が形成されるため、次の例えば熱CVD法による窒化チタン膜10の成膜工程で使用される四塩化チタンガスによってチタン膜8の表面がエッチングされてしまうことを防止できる。
【0010】
【特許文献1】特開2003−142425号公報
【特許文献2】特表2002−542399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来、チタン膜8の表面のみを窒化するので、チタン膜8にはチタン層18が残っていた。このため、チタン膜8の窒化チタン層16及び窒化チタン膜10に十分な膜厚がなければ、フッ素の一部が窒化チタン層10及び窒化チタン膜16を通過してチタン膜8のチタン層18に達してしまい、脆弱なフッ化チタン(TiF )が生成される可能性があった。このようにフッ化チタンが生成されると、窒化チタン膜10とタングステン膜12は、下地層との密着性が劣化し、ウエハWの表面から剥離する恐れがある。
【0012】
また、微細化の要求が最近にあっては更に厳しくなり、上記凹部6の直径である例えばホール径の要求が60nm、或いはそれ以下になると、上記第2の処理装置で熱CVD法により窒化チタン膜10を成膜する際、この熱CVD法は成膜時の指向性が比較的小さいことから、図14(B)に示すように上記凹部6内の底部は勿論のこと、凹部6の側壁6Aに対応する部分にも比較的厚く窒化チタン膜10が等方的に堆積してしまい、この結果、凹部6内が狭くなり過ぎて後工程のタングステン成膜工程時において、成膜ガスが上記凹部6内に十分に侵入できず、凹部6の埋め込み量の減少が発生してプラグ抵抗が増加する、といった問題もあった。
【0013】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、被処理体の凹部の径が小さくても、例えばバリヤ層として機能する薄膜が凹部の側壁へ堆積することを抑制しつつ、凹部の底部に効率的に堆積させることが可能な薄膜の成膜方法及び成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、表面に凹部が形成されている被処理体の表面に薄膜を形成する成膜方法において、前記凹部の内面を含む前記被処理体の表面にチタン化合物ガスと還元ガスとを用いてチタン膜を形成するチタン膜形成工程と、窒化ガスを用いて前記チタン膜を全て窒化して第1の窒化チタン膜を形成する窒化工程と、前記凹部の内面を含む前記被処理体の表面に第2の窒化チタン膜を堆積させて形成する窒化チタン膜堆積工程と、を有することを特徴とする薄膜の成膜方法である。
【0015】
このように、表面に凹部が形成されている被処理体の表面に薄膜を形成する成膜方法において、凹部の内面を含む被処理体の表面にチタン化合物ガスと還元ガスとを用いてチタン膜を形成するチタン膜形成工程と、窒化ガスを用いてチタン膜を全て窒化して第1の窒化チタン膜を形成する窒化工程と、凹部の内面を含む被処理体の表面に第2の窒化チタン膜を堆積させて形成する窒化チタン膜堆積工程とを有するようにしたので、被処理体の凹部の径が小さくても、例えばバリヤ層として機能する薄膜が異方的に、すなわち凹部の側壁へ堆積することを抑制しつつ、凹部の底部には効率的に堆積することが可能となる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記チタン膜形成工程と前記窒化工程とを交互に複数回繰り返した後に前記窒化チタン膜堆積工程を行うようにしたことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記チタン膜形成工程と前記窒化工程は、それぞれプラズマの存在下で行われることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記凹部の底部には、シリコンを含む導電層が露出しており、前記チタン膜形成工程では前記導電層のシリコンと前記チタン膜のチタンとが反応してチタンシリサイド層が形成されるように前記被処理体を第1の温度に設定することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記第1の温度は400〜650℃の範囲内であることを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発明において、前記チタン膜形成工程にて形成される前記チタン膜の膜厚は15nm以下であることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発明において、前記窒化チタン膜堆積工程では、チタン化合物ガスと還元ガスと窒素ガスとプラズマ安定用ガスとを用いてプラズマの存在下で前記第2の窒化チタン膜を堆積させるようにしたことを特徴とする。
【0019】
このように、窒化チタン膜堆積工程では、チタン化合物ガスと還元ガスと窒素ガスとプラズマ安定用ガスとを用いてプラズマの存在下で第2の窒化チタン膜を堆積させるようにしたので、特に凹部の側壁への成膜を制御しつつ凹部の底部への成膜を促進させることができる。
【0020】
請求項8の発明は、請求項7記載の発明において、前記窒素ガスの流量Y と、前記プラズマを生成するために投入する高周波電力X との関係が、前記チタン化合物ガスの流量に依存して定まる所定の関係式を満たすように前記流量Y と前記高周波電力X とが設定されていることを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項8記載の発明において、前記所定の関係式は、前記チタン化合物ガスの流量が20sccm以下の時には、下記の数1であることを特徴とする。
≦7.62・10−4・X −2.37・X +2.02・10 …(数1)
請求項10の発明は、請求項9記載の発明において、前記窒素ガスの流量Y の下限は1sccmであることを特徴とする。
【0021】
請求項11の発明は、請求項7記載の発明において、前記窒素ガスの前記被処理体の単位面積当りの流量Y と、前記プラズマを形成するために投入する前記被処理体の単位面積当りの高周波電力X との関係が、前記チタン化合物ガスの前記被処理体の単位面積当りの流量に依存して定まる所定の関係式を満たすように前記流量Y と前記高周波電力X とが設定されていることを特徴とする。
【0022】
請求項12の発明は、請求項11記載の発明において、前記所定の関係式は、前記チタン化合物ガスの前記被処理体の単位面積当りの流量が2.831・10−2sccm/cm以下の時には、下記の数2であることを特徴とする。
≦5.39・10−1・X −2.37・X +2.86 …(数2)
請求項13の発明は、請求項12記載の発明において、前記窒素ガスの前記被処理体の単位面積当りの流量Y の下限は、1.415・10−3sccm/cm であることを特徴とする。
【0023】
請求項14の発明は、請求項7記載の発明において、前記窒素ガスの分圧Y と、プラズマを生成するために投入する前記被処理体の単位面積当りの高周波電力X との関係が、前記チタン化合物ガスの分圧に依存して定まる所定の関係式を満たすように前記分圧Y と前記高周波電力X とが設定されていることを特徴とする。
【0024】
請求項15の発明は、請求項14記載の発明において、前記所定の関係式は、チタン化合物ガスの分圧が2.37Pa以下の時には、下記の数3であることを特徴とする。
≦28.9・10 ・X −140・X +1.87・10 …(数3)
請求項16の発明は、請求項15記載の発明において、前記窒素ガスの分圧Y の下限は、0.12Paであることを特徴とする。
【0025】
請求項17の発明は、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の発明において、前記チタン膜形成工程と前記窒化工程と前記窒化チタン膜堆積工程とは同一の成膜装置内で行われることを特徴とする。
このように、チタン膜形成工程と窒化工程と窒化チタン膜堆積工程とは同一の成膜装置内で行われるようにしたので、その分、必要とする成膜装置の台数を減少させることができ、設備コストの削減に寄与することができる。
【0026】
請求項18の発明は、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の発明において、前記チタン化合物ガスは、四塩化チタンガスであることを特徴とする。
請求項19の発明は、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の発明において、前記還元ガスは、H ガスであることを特徴とする。
請求項20の発明は、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の発明において、前記チタン膜堆積工程の後に、前記被処理体の表面にタングステン膜を形成して前記凹部を埋め込むタングステン膜形成工程を行うことを特徴とする。
【0027】
請求項21の発明は、表面に凹部が形成されている被処理体の表面に薄膜を形成する成膜装置において、前記被処理体を収容する処理容器と、前記処理容器内で前記被処理体を載置すると共に下部電極が設けられた載置台と、前記処理容器内へガスを導入すると共に上部電極として兼用されるシャワーヘッド部と、前記シャワーヘッド部に接続されて必要なガスを供給するガス供給手段と、前記被処理体を加熱する加熱手段と、前記処理容器内を真空排気する排気系と、前記処理容器内でプラズマを形成するために高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の薄膜の成膜方法を実施するために装置全体を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする成膜装置である。
【0028】
請求項22の発明は、被処理体を収容する処理容器と、前記処理容器内で前記被処理体を載置すると共に下部電極が設けられた載置台と、前記処理容器内へガスを導入すると共に上部電極として兼用されるシャワーヘッド部と、前記シャワーヘッド部に接続されて必要なガスを供給するガス供給手段と、前記被処理体を加熱する加熱手段と、前記処理容器内を真空排気する排気系と、前記処理容器内でプラズマを形成するために高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、装置全体を制御する制御部とを備えた成膜装置を用いて表面に凹部が形成されている被処理体の表面に薄膜を形成するに際して、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の薄膜の成膜方法を実施するように装置全体を制御するコンピュータに読み取り可能なプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体である。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る薄膜の成膜方法及び成膜装置によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
表面に凹部が形成されている被処理体の表面に薄膜を形成する成膜方法において、凹部の内面を含む被処理体の表面にチタン化合物ガスと還元ガスとを用いてチタン膜を形成するチタン膜形成工程と、窒化ガスを用いてチタン膜を全て窒化して第1の窒化チタン膜を形成する窒化工程と、凹部の内面を含む被処理体の表面に第2の窒化チタン膜を堆積させて形成する窒化チタン膜堆積工程とを有するようにしたので、被処理体の凹部の径が小さくても、例えばバリヤ層として機能する薄膜が凹部の側壁へ堆積することを抑制しつつ、凹部の底部に効率的に堆積させることができる。このため後工程で凹部内を配線金属で埋め込んでプラグ(あるいはコンタクト)を形成する際、太いプラグを形成することができ、プラグ(コンタクト)抵抗の小さいデバイスをつくることができる。
【0030】
特に、請求項7の発明によれば、窒化チタン膜堆積工程では、チタン化合物ガスと還元ガスと窒素ガスとプラズマ安定用ガスとを用いてプラズマの存在下で第2の窒化チタン膜を堆積させるようにしたので、特に凹部の側壁への成膜を制御しつつ凹部の底部への成膜を促進させることができる。
また特に請求項17の発明によれば、チタン膜形成工程と窒化工程と窒化チタン膜堆積工程とは同一の成膜装置内で行われるようにしたので、その分、必要とする成膜装置の台数を減少させることができ、設備コストの削減に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明に係る薄膜の成膜方法及び成膜装置の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る成膜装置の一例を示す断面構成図、図2は本発明の成膜方法の一例を示すフローチャート、図3は本発明方法により被処理体の表面に形成される薄膜の状態を説明するための説明図、図4は第1の窒化チタン膜の形成時の各ガスの供給状態を示すタイミングチャート、図5は第2の窒化チタン膜を堆積する場合においてRF電力(高周波電力)を一定にした時のN ガス流量とTiCl ガス流量との関係を説明する説明図、図6は第2の窒化チタン膜を形成する場合においてN ガス流量とRF電力とTiCl ガス流量とが膜厚のピークの変動に与える影響を説明するための説明図である。
【0032】
図7は第2の窒化チタン膜を堆積する時の高周波電力に対するN ガス流量の最適な範囲を説明するための説明図、図8は第2の窒化チタン膜を堆積する時の被処理体の単位面積当りの高周波電力に対する被処理体の単位面積当りのN ガス流量の最適な範囲を説明するための説明図、図9は第2の窒化チタン膜を堆積する時の被処理体の単位面積当りの高周波電力に対するN ガスの分圧の最適な範囲を説明するための説明図、図10はRF電力が800W、TiCl ガス流量が12sccmの時のN ガス流量と膜厚との関係を取り出して示したグラフ、図11は凹部の底面近傍における薄膜の堆積状態を示す電子顕微鏡写真、図12は第2の窒化チタン膜を堆積する時のN ガス流量が多い場合と少ない場合に生ずる反応の形態を模式的に示す図、図13はタングステン膜を成膜する時の各ガスの供給のタイミングを示すタイミングチャートである。ここでは同一の成膜装置内でチタン膜形成工程と窒化工程と窒化チタン膜形成工程を実施する場合について説明する。
【0033】
図1に示すように、この成膜装置22は、略内部が円筒体状になされたアルミニウム、或いはアルミニウム合金製の処理容器24を有している。この処理容器24の中には被処理体としての半導体ウエハWを水平に支持するための載置台としてのサセプタ26がその中央下部に設けられた円筒状の支持部材28により支持された状態で配置されている。このサセプタ26は窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスからなり、その外縁部にはウエハWをガイドするためのガイドリング30が設けられている。
【0034】
また、サセプタ26にはウエハWを加熱する加熱手段としてヒータ32が埋め込まれており,このヒータ32はヒータ電源34から給電されることによりウエハWを所定の温度に加熱する。サセプタ26には、下部電極36がヒータ32の上に埋設されており、この下部電極36は例えば接地(図示せず)されている。
【0035】
処理容器24の天壁24Aには、絶縁部材38を介してシャワーヘッド部40が設けられている。このシャワーヘッド部40は、大きく分けると上部分であるベース部材42と下部分であるシャワープレート44から構成されている。
【0036】
ベース部材42には、ヒータ46が埋設されており、このヒータ46はヒータ電源48から給電されることにより、シャワーヘッド部40を所定温度に加熱することが可能となっている。
【0037】
シャワープレート44には処理容器24内にガスを吐出する多数の吐出孔50が形成されている。各吐出孔50は、ベース部材42とシャワープレート44の間に形成されるガス拡散空間52に連通している。ベース部材42の中央部には処理ガスをガス拡散空間52に供給するためのガス導入ポート54が設けられている。ガス導入ポート54は、後述するガス供給手段56の混合ガス供給ライン58に接続されている。
【0038】
ガス供給手段56は、チタン化合物ガスとして例えば四塩化チタンガスを供給する四塩化チタンガス供給源60、プラズマ安定用ガスとして例えばアルゴン(以下「Ar」とも称す)ガスを供給するアルゴンガス供給源62、還元ガスとして例えば水素ガスを供給する水素ガス供給源64、窒素化合物ガスとして例えばアンモニアガスを供給するアンモニアガス供給源66及び窒素ガスを供給する窒素ガス供給源68を有している。
【0039】
そして、四塩化チタンガス供給源60には四塩化チタンガス供給ライン60Lが接続されており、アルゴンガス供給源62にはアルゴンガス供給ライン62Lが接続されており、水素ガス供給源64には水素ガス供給ライン64Lが接続されており、アンモニアガス供給源66にはアンモニアガス供給ライン66Lが接続されており、窒素ガス供給源68には窒素ガス供給ライン68Lが接続されている。各ガス供給ライン60L〜68Lにはそれぞれマスフローコントローラ(MFC)60C〜68C及びこのマスフローコントローラ60C〜68Cを挟んで2つのバルブ60V〜68Vが設けられている。
【0040】
そして、上記各ライン60L〜68Lの先端はガス混合部70に接続されている。このガス混合部70は、上記の処理ガスを混合してシャワーヘッド部40に供給する機能を有するものであり、そのガス流入側には、上記したように各ガス供給ライン60L〜68Lを介して各ガス供給源60〜68が接続されており、そのガス流出側には混合ガス供給ライン58を介してシャワーヘッド部40が接続されている。
【0041】
プロセス時には、四塩化チタンガス、アルゴンガス、水素ガス、アンモニアガス及び窒素ガスの中から選択された一種類のガスまたは複数のガスの混合ガスが、シャワーヘッド部40のガス導入ポート54とガス拡散空間52を経由して、複数の吐出孔50から処理容器24内に導入される。
【0042】
このように本実施形態にかかるシャワーヘッド部40は、各ガスを予め混合して処理容器24内に供給する、いわゆるプリミックスタイプで構成されているが、各ガスを独立して処理容器24内に供給する、いわゆるポストミックスタイプで構成するようにしてもよい。
【0043】
シャワーヘッド部40には、プラズマ発生用の高周波電力を供給する高周波電力供給手段72が接続されている。この高周波電力供給手段72は、シャワーヘッド部40に接続された給電ライン74を有し、この給電ライン74には整合器76及び高周波電源78が順次介設されており、成膜等の際にこの高周波電源78からシャワーヘッド部40に、例えば450kHzの高周波電力を供給することにより、上部電極として兼用されるシャワーヘッド部40と下部電極36との間に高周波電界が生じ、処理容器24内に供給されたガスをプラズマ化し得るようになっている。
【0044】
また、処理容器24の底壁24Bの中央部には円形の穴が形成されており、底壁24Bにはこの穴を覆うように下方に向けて突出する排気室80が設けられている。排気室80の側面には排気管82が接続されており、この排気管82には排気系84が接続されている。そしてこの排気系84を作動させることにより処理容器24内を所定の真空度まで減圧することができる。この排気系84は図示しない圧力調整弁や真空ポンプを有しており、上述のように真空排気を行う。
【0045】
またサセプタ26には、ウエハWを支持して昇降させるための3本(2本のみ図示)のウエハ支持ピン84がサセプタ26の表面に対して出没可能に設けられ、これらウエハ支持ピン84は支持板86に固定されている。そして、ウエハ支持ピン84は、エアシリンダ等の駆動機構88により支持板86を介して昇降される。
【0046】
また処理容器24の側壁24Cには、共通搬送室(図示せず)との間でウエハWの搬入出を行うための搬入出口90と、この搬入出口90を開閉するゲートバルブ92が設けられている。
【0047】
このような構成を有する成膜装置22の全体の動作の制御、例えば各種ガスの供給開始と停止の制御、各ガスの流量制御、ウエハWの温度制御、処理容器24内の圧力制御等は、例えばコンピュータよりなる制御部94によって行われる。この制御に必要なコンピュータに読み取り可能なプログラムは記憶媒体96に記載されている。この記憶媒体96は、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、CD−ROM、ハードディスク、フラッシュメモリ或いはDVD等よりなる。
【0048】
次に、以上のように構成された成膜装置22を用いて行われる本発明の成膜方法について説明する。
まず、未処理の半導体ウエハWは、図示しない例えばクラスタツール化された処理システムの共通搬送室より、搬送アームを用いて開放されたゲートバルブ92及び搬入出口90を介して、この処理容器24内へ搬入される。このウエハWは、サセプタ26に設けたウエハ支持ピン84を上昇させることにより、このウエハ支持ピン84側に受け渡され、上記搬送アームを後退させた後に上記ウエハ支持ピン84を降下させることによって上記ウエハWはサセプタ26上に載置されることになる。
【0049】
この処理容器24内は予め真空引きされており、上記ゲートバルブ92を閉じることによって処理容器24内を密閉する。上記半導体ウエハWの表面には、図14において説明したように、絶縁層2や凹部6が予め形成されており、その凹部6の底部に下層の配線層やトランジスタのソースやドレイン等の不純物拡散層となる導電層4が露出している。
【0050】
そして、サセプタ26に配置したヒータ32を駆動してサセプタ26上のウエハWを所定の温度に昇温してその温度を維持する。これと同時に、ガス供給手段56の各ガス源60〜68より必要な各ガスを流量制御しつつそれぞれ流し、これらの各ガスをガス混合部70にて混合した後に混合ガス供給ライン58を介してシャワーヘッド部40のガス拡散室52へ導入する。このガス拡散室52内へ導入された混合ガスは、このガス拡散室52内を平面方向へ拡散して多数の吐出孔50より下方の処理空間Sに供給されることになる。
【0051】
また、このガス供給と同時に、高周波電力供給手段72を駆動してシャワーヘッド部40よりなる上部電極とサセプタ26に設けた下部電極36との間に高周波電力を印加し、これにより処理空間SにArガスを主体とするプラズマを発生させ、以下に説明する各種の処理を実行することになる。
【0052】
まず、上記成膜装置22を用いて行われる本発明の成膜方法は、凹部の内面を含む被処理体である半導体ウエハの表面にチタン化合物ガスと還元ガスとを用いてチタン膜を形成するチタン膜形成工程と、窒化ガスを用いて上記チタン膜を全て窒化して第1の窒化チタン膜を形成する窒化工程と、上記凹部の内面を含む上記被処理体の表面に第2の窒化チタン膜を堆積させて形成する窒化チタン膜堆積工程とを有する。
【0053】
これを図2及び図3も参照して説明すると、まず、半導体ウエハWの表面には図3(A)に示すように、SiO 等よりなる層間絶縁層等の絶縁層2に凹部6が前工程で予め形成されており、この凹部6の底部にSiを含む導電層4が露出している。そして、ステップS1に示すように、このウエハWの表面にチタン化合物ガスと還元ガスとを用いてチタン膜100を形成するチタン膜形成工程を行う。上記チタン化合物ガスとしては例えばTiCl ガスを用い、還元ガスとしては例えばH ガスを用いる。
【0054】
このチタン膜形成工程は、後述するように例えばSFD(Sequential Flow Deposition)法により行われる。また、この際、チタン膜100と導電層4との境界部分ではチタンがシリサイド化してチタンシリサイド層102が形成される。
【0055】
次に、ステップS2に示すように、窒化ガスを用いて上記チタン膜100を全て窒化して第1の窒化チタン膜104を形成する窒化工程を行う。上記窒化ガスとしては例えばNH ガスを用いる。
【0056】
そして、ステップS3に示すように、上記ステップS1のチタン膜成膜工程とステップS2の窒化工程とを交互に所定の回数だけ繰り返す。この場合、繰り返し回数は”1”、或いは複数回でもよいが、繰り返し回数がゼロで、両ステップS1、S2を共に1回のみ行って(ワンパス)、次のステップへ移行するようにしてもよい。
【0057】
次に、ステップS4に示すように、凹部6の内面を含むウエハWの表面に第2の窒化チタン膜106を堆積させる。ここでは、後述するように、チタン化合物ガスと還元ガスと窒化ガスとプラズマ安定用ガスとを用いてプラズマの存在下で上記第2の窒化チタン膜106が形成される。これにより、上記第1と第2の窒化チタン膜104、106で構成されるバリヤ層108が形成されることになる。
【0058】
このように、バリヤ層108を形成したならば、次にステップS5に示すように、ウエハWの表面にタングステン膜110を形成して上記凹部6を埋め込むタングステン膜形成工程を行うことになる。
【0059】
次に、上記各工程について詳しく説明する。
<チタン膜形成工程と窒化工程>
まず、チタン膜形成工程と窒化工程について説明する。ここでは図4に示すように、チタン膜形成工程と窒化工程とを交互に複数回繰り返し行う。すなわち、第1の窒化チタン膜104を形成するためには、薄いチタン膜100を形成してこれを窒化する工程を何度か繰り返して第1の窒化チタン膜104を形成するプラズマSFD(Sequential Flow Deposition)法を用いることができる。
【0060】
このプラズマSFD法による第1の窒化チタン膜104の形成処理では、例えばチタン化合物ガスとアルゴンガスと水素ガスを同時期に供給しつつプラズマを生成して、薄いチタン膜100を形成するチタン膜形成工程と、アンモニアガスとアルゴンガスと水素ガスを同時期に供給しつつプラズマを生成して、その薄いチタン膜100の全てを窒化する窒化工程とを1サイクルとして、これを第1の窒化チタン膜104が所定の膜厚に達するまで複数回繰り返す。
【0061】
具体的には、プロセス温度(ウエハ温度)を400〜650℃の範囲内(請求項における第1の温度)、より好ましくは400〜560℃の範囲内、例えば550℃に設定し、プロセス圧力を例えば500〜800Paの範囲内、例えば667Paに設定する。そして、期間P11(ガス安定化)にて、四塩化チタンガス(チタン化合物ガス)と水素ガス(還元ガス)とアルゴンガスを供給する。このとき、四塩化チタンガスの流量を例えば12sccmに調整し、水素ガスの流量を例えば4000sccmに調整し、アルゴンガスの流量を例えば1600sccmに調整する。なお、この期間P11の主な目的は、次の期間P12に先立って処理容器24内の処理ガスを安定化させることにある。期間P11の時間は例えば0〜5秒とする。
【0062】
次に、期間P12にて、四塩化チタンガス、水素ガス、およびアルゴンガスを、期間P11から同じ流量で継続して供給したまま、シャワーヘッド部(上部電極)40に例えば800Wの高周波電力を印加してプラズマを形成する。これによって、チタン膜100が堆積する。このチタン膜100のチタンは、下層の導電層4との境界部分でシリコンと反応してシリサイド化する。期間P12の時間は例えば4秒とする。
【0063】
続いて、期間P12の状態から四塩化チタンガスの供給を停止して期間P13へ移行する。この期間P13では、水素ガスとアルゴンガスを期間P12と同じ流量で供給し、これらをプラズマ化する。これによって、先の期間P12にて堆積したチタン膜100がプラズマアニールされる。期間P13の時間は例えば5秒とする。
【0064】
次いで、期間P13の状態からプラズマを消して期間P14に移行する。この期間P14は、次の期間P15が開始されるまでの待ち時間であり、この時間は例えば1秒とする。以上の期間P11〜P14の処理を実行することで、極めて薄いチタン膜100が形成される。なお,期間P11〜P14では、アルゴンガスを導入しないようにしてもよい。
【0065】
次に、期間P15にて、期間P11〜P14の処理によって形成されたチタン膜100を全て窒化し、極めて薄い第1の窒化チタン膜104を形成する。ここでは、水素ガス、アルゴンガス、およびアンモニアガス(窒素化合物ガス)を供給するとともに、シャワーヘッド部(上部電極)40に例えば800Wの高周波電力を印加してプラズマを再び形成する。このとき水素ガスの流量を例えば2000sccmに調整し、アルゴンガスの流量を例えば1600sccmに調整し、アンモニアガスの流量を例えば1500sccmに調整する。期間P15の時間は例えば5秒とする。
【0066】
次の期間P16ではプラズマを消すとともに、アンモニアガスの供給を止める。水素ガスとアルゴンガスについては、期間P15のときと同じ流量に調整し、これらのガスによって処理容器24内に残留しているアンモニアガスをパージする。これによって、次のサイクルの期間P11において、処理容器24内に供給される四塩化チタンガスが残留アンモニアガスと混合してしまうことが防止され、より良質な第1の窒化チタン膜を形成することができる。この期間P16の時間は例えば2秒とする。
【0067】
以上の期間P11〜P16の各処理を1サイクルとして、第1の窒化チタン膜104が所定の膜厚1〜15nmの範囲内、例えば10nmに達するまで同サイクルを繰り返す。このようにして、図3(C)に示すように、所定の厚さの第1の窒化チタン104が形成される。尚、ここでは成膜のためにプラズマSFD法を用いたが、これに替えて、特開2004−232080号公報に示されているようなプラズマCVD法を用いて、すなわち図4におけるP12(チタン膜成膜)とP13(プラズマアニール)からなるサイクルを1回あるいは複数回繰り返し、例えば10nmの膜厚のチタン膜を形成し、この後に図4におけるP15(窒化処理)によりこのチタン膜の全てをプラズマによって窒化する方法を採用してもよい。
【0068】
<窒化チタン膜堆積工程>
次に、図3(D)に示すように第2の窒化チタン膜106を形成する。この第2の窒化チタン膜106を形成する理由は、上記第1の窒化チタン膜104の膜厚だけでは、後工程で用いる六フッ化タングステンに起因するフッ素ガス成分に対するバリヤ性が不十分であり、また、プラズマSFD法でバリヤ性が十分な膜厚まで第1の窒化チタン膜を形成するにはこのプラズマSFD法の成膜レートが非常に小さいので、スループットが大幅に低下してしまう、といった理由からである。
【0069】
この第2の窒化チタン膜堆積工程で重要な点は、後工程で凹部6に対するタングステンの埋め込み量を十分に確保するために、いかに凹部6の側面に対する成膜を抑制しつつ凹部6の底面への成膜を行うか、という点である。換言すれば、図3(D)において、凹部6内の第2の窒化チタン膜106に関して、凹部6内の側壁の厚さT1はできるだけ薄くし、且つ底面の厚さT2はできるだけ厚くすることが必要となる。特に、更なる微細化傾向により、凹部6の穴径が60nm以下になると、凹部6内の表面への成膜のコントロールが重要となる。
【0070】
本発明では、この窒化チタン膜堆積工程におけるN ガスの流量を最適化させることにより、上記目的を達成しようとするものである。具体的には、ここではチタン化合物ガスと還元ガスと窒素ガスとプラズマ安定用ガスとを用いており、チタン化合物ガスとしては例えばTiCl ガスを用い、還元ガスとしては例えばH ガスを用い、プラズマ安定用ガスとしては例えばArガスを用いている。そして、上記4種類のガスを同時に処理容器24内へ供給すると共に、高周波電力をシャワーヘッド部40に印加してプラズマを発生させ、これによって各ガスの活性種を発生させてウエハWの凹部6内の表面を含むウエハ表面全体に第2の窒化チタン膜をプラズマCVD処理によって形成する。
【0071】
この場合、各ガスの流量、特にN ガスの流量を最適化するように制御し、且つプラズマ形成用の投入する高周波電力等も制御することにより、凹部6の側壁への成膜を抑制しつつ凹部6の底部への成膜を促進させる。尚、この場合、ウエハWの絶縁層2の上面にも窒化チタン膜が堆積するのは勿論である。
【0072】
本発明者等は、凹部6内の表面に対する窒化チタンの成膜状態は、主に四塩化チタンとN の各ガス流量及び投入する高周波電力に大きく依存することを見い出し、これらを最適化するようにしている。
【0073】
まず、図5を参照して第2の窒化チタン膜を堆積する場合において、高周波電力(RF電力)を一定にした時のN ガス流量とTiCl ガス流量との関係を説明する。図5において、横軸にはN ガス流量をとり、縦軸には膜厚をとっている。そして、TiCl ガスは8sccm〜20sccmまで変化させている。この時のRF電力は800W(ワット)で一定である。また、ここではウエハ直径が300mmに対応する処理容器を用いており、この容積は706.5cmであり、この点はこれ以降に説明する各グラフにおいても同じである。
【0074】
このグラフから明らかなように、N ガス流量に対して、膜厚はピーク値を有しており、しかもそのピーク値はTiCl ガス流量に依存して左右方向へ移動している。例えばTiCl ガス流量が8sccmの時のピークK1はN ガス流量が100sccm程度の時であり、TiCl ガス流量が12sccmの時のピークK2はN ガス流量が200sccm程度の時であり、TiCl ガス流量が16sccmの時のピークK3はN ガス流量が380sccm程度の時であり、TiCl ガス流量が20sccmの時のピークK4はN ガス流量が400sccm程度の時である。
【0075】
ここで、ウエハの凹部6内の表面の膜厚状態を電子顕微鏡写真で確認したところ、各TiCl ガス流量におけるピークK1〜K4よりもそれぞれの左側の領域の堆積状態が、それぞれの右側の領域と比較して非常に良好であった。すなわち、各ピークK1〜K4よりもそれぞれの左側の領域では、凹部6内の側面への堆積を抑制しつつ底面への堆積を促進させることができることが判った。
【0076】
次に、図6を参照して第2の窒化チタン膜を堆積する場合において、N ガス流量とRF電力とTiCl ガス流量とが膜厚のピークの変動に与える影響について説明する。図6において、横軸はN ガス流量をとり、縦軸に膜厚をとっており、RF電力は400W〜1200Wまで変化させている。また、TiCl ガスの流量に関して、図6(A)は20sccmの場合を示し、図6(B)は12sccmの場合を示し、図6(C)は6sccmの場合を示している。
【0077】
ここで図6(A)におけるRF電力400W、800W、1200Wの各曲線のピークをそれぞれM1、M2、M3とし、図6(B)におけるRF電力400W、800W、1200Wの各曲線のピークをそれぞれN1、N2、N3とし、図6(C)におけるRF電力400W、800W、1200Wの各曲線のピークをそれぞれO1、O2、O3とする。
【0078】
この図6から明らかなように、TiCl ガスの流量が一定の場合には、膜厚のピークは、RF電力が小さい程、右側へシフトしている。従って、TiCl ガスの流量が一定の場合には、RF電力が小さい程、膜厚のピークはN ガス流量が多い方向へシフトしており、RF電力が大きい程、膜厚のピークはN ガス流量が少ない方向へシフトしている。この点は、図6(A)〜図6(C)の各グラフにおいて共通である。そして、TiCl ガスの流量が少なくなる程、各グラフのピークは左側へシフトしていることが判る(図6(C)参照)。
【0079】
ここでウエハの凹部6内の表面の膜厚状態を電子顕微鏡で確認したところ、図6(A)〜図6(C)の各グラフの各TiCl ガス流量において、ピークM1〜M3、N1〜N3、O1〜O3よりも左側の領域における堆積状態が、右側の領域と比較して非常に良好であった。この点は、図5の場合と同様である。そして、上記図6における各ピークを連ねることによって形成される曲線のグラフを求めたので、その結果を図7に示す。図7は第2の窒化チタン膜を堆積する時の高周波電力に対するN ガス流量の最適な範囲を説明するための説明図である。
【0080】
図7において、横軸には高周波電力(RF電力):X をとっており、縦軸にはN ガス流量:Y をとっている。図7に示すように、図6中の各ピークM1〜M3、N1〜N3、O1〜O3がTiCl ガスの流量毎にプロットされており、TiCl ガスの流量が異なる3本の曲線で表されている。そして、図6中の各ピークよりも左側の堆積状態の良好な領域が図7中で表される各曲線の下方の領域となる。すなわち、窒素ガスの流量Y と、プラズマを生成するために投入する高周波電力X との関係が、チタン化合物ガスの流量に依存して定まる所定の関係式を満たすように上記流量Y と上記高周波電力X とが設定されている。
【0081】
ここで高周波電力の下限は200Wであり、これよりも高周波電力が小さくなると、プラズマを安定的に形成して維持することが困難になってしまう。また、TiCl ガスの流量の下限は1sccmであり、この流量が1sccmよりも少なくなると、実質的に窒化チタン膜の成膜が困難になってしまう。特に、実質的な成膜レートを考慮した場合、このTiCl ガスの流量は、4sccm以上に設定するのが好ましい。また、N ガスの流量は上記TiCl ガスよりも遥かに多量に流すが、その下限は堆積されるTiN膜の組成を考慮するとTiCl ガスと同じ1sccmであり、この場合も実質的な成膜レートを考慮した場合、4sccm以上に設定するのが好ましい。
【0082】
そして、上記TiCl ガス流量が20sccmの時に定まる窒素ガスの流量Y と、高周波電力X との関係式は以下の数1のようになり、この数1を満たすように上記流量Y と高周波電力X とが設定される。
【0083】
≦7.62・10−4・X −2.37・X +2.02・10 …(数1)
【0084】
実際的には、上記数1で表される曲線の下方の領域が最適範囲であり、この領域内に納まるように上記高周波電力X とN ガス流量Y とが設定される。そして図7から明らかなように、数1で示される領域内にTiCl ガス流量が12sccmの時に定まる最適範囲、及びTiCl ガス流量が6sccmの時に定まる最適範囲も含まれることとなり、数1で示される領域は、TiCl ガス流量が20sccm以下の時に定まる最適範囲を示していることになる。
【0085】
また、上記TiCl ガス流量が12sccmの時に定まる窒素ガスの流量Y と、高周波電力X との関係式は以下の数1−2のようになり、この数1−2を満たすように上記流量Y と高周波電力X とが設定される。
【0086】
≦3.13・10−4・X −1.13・X +10 …(数1−2)
【0087】
実際的には、上記数1−2で表される曲線の下方の領域が最適範囲であり、この領域内に納まるように上記高周波電力X とN ガス流量Y とが設定される。
【0088】
また、上記TiCl ガス流量が6sccmの時に定まる窒素ガスの流量Y と、高周波電力X との関係式は以下の数1−3のようになり、この数1−3を満たすように上記流量Y と高周波電力X とが設定される。
【0089】
≦3.13・10−4・X −8.75・10−1・X +6・10 …(数1−3)
【0090】
実際的には、上記数1−3で表される曲線の下方の領域が最適範囲であり、この領域内に納まるように上記高周波電力X とN ガス流量Y とが設定される。
【0091】
ここでは3本の曲線を一例として示したが、実際にはTiCl ガスの例えば流量毎に多数の上述したような曲線が実験的に予め定まっており、プロセス条件の際に上記TiCl ガス流量が定まったならば、当該TiCl ガス流量に対応する曲線(関係式)が図7に示すように予め定まっているので、その曲線よりも下方の流域の範囲に適合するように上記高周波電力X やN ガス流量Y をそれぞれ定めることになる。これにより、TiClガスの任意の設定値に対応 できることになる。
【0092】
例えばTiCl ガスの流量を20sccmに設定した場合には、図7中の斜線で示された領域に対応するように上記高周波電力X やN ガス流量Y をそれぞれ定めることになる。このように高周波電力X やN ガス流量Y を定めることにより、第2のチタン窒化膜106の堆積状態を良好にすることができる。尚、この時のプロセス温度は例えば400〜650℃程度の範囲内であり、より好ましくは450〜550℃程度の範囲内であり、またプロセス圧力は500〜800Pa程度の範囲内であり、より好ましくは500〜700Pa程度の範囲内である。
【0093】
また、図7に示す場合では、最適な範囲を成膜装置のプロセス条件の全体(全体として流れるTiCl ガスの流量)を基準として定めたが、これに限定されず、被処理体である半導体ウエハWの単位面積当りの値に換算して定めるようにしてもよい。図8は第2の窒化チタン膜を堆積する時の被処理体の単位面積当りの高周波電力に対する被処理体の単位面積当りのN ガス流量の最適な範囲を説明するための説明図である。
【0094】
図8において横軸にはウエハの単位面積当りの高周波電力をとり、縦軸にはウエハ単位面積当りのN ガス流量をとっている。すなわち、ここでは窒素ガスの上記被処理体の単位面積当りの流量Y と、プラズマを形成するために投入する上記被処理体の単位面積当りの高周波電力X との関係が、上記チタン化合物ガスの上記被処理体の単位面積当りの流量に依存して定まる所定の関係式を満たすように上記流量Y と上記高周波電力X とが設定されている。
【0095】
まず、ウエハの単位面積当りのTiCl ガス流量が2.831・10−2sccm/cm (20sccm対応)の時に定まる関係式は以下の数2のようになる。
【0096】
≦5.39・10−1・X −2.37・X +2.86 …(数2)
そして図8から明らかなように、数2で示される領域内に、ウエハの単位面積当りのTiCl ガス流量が1.699・10−2sccm/cm (12sccm対応)および0.849・10−2sccm/cm (6sccm対応)の時に定まる最適範囲も含まれることとなり、数2で示される領域は、ウエハの単位面積当りのTiCl ガス流量が2.831・10−2sccm/cm 以下の時に定まる最適範囲を示していることになる。また、ウエハの単位面積当りのTiCl ガス流量が1.699・10−2sccm/cm (12sccm対応)の時に定まる関係式は以下の数2−2のようになる。
【0097】
≦2.21・10−1・X −1.13・X +1.42…(数2−2)
また、ウエハの単位面積当りのTiCl ガス流量が0.849・10−2sccm/cm (6sccm対応)の時に定まる関係式は以下の数2−3のようになる。
【0098】
≦2.21・10−1・X −8.76・10−1 +0.849…(数2−3)
この時にウエハの単位面積当りのN ガス流量及びTiCl ガス流量の下限は、それぞれ1.415・10−3sccm/cm (1sccm対応)であり、好ましくは5.662・10−3sccm/cm (4sccm対応)である。
【0099】
また図8では半導体ウエハWの単位面積当りの値に換算して示しているが、これに限定されず、各ガスを分圧に換算して定めるようにしてもよい。図9は第2の窒化チタン膜を堆積する時の被処理体の単位面積当りの高周波電力に対するN ガスの分圧の最適な範囲を説明するための説明図である。
【0100】
図9において横軸にはウエハ単位面積当りの高周波電力をとり、縦軸にはN ガス分圧をとっている。尚、Arガス流量は1600sccm、H ガス流量は4000sccm、プロセス圧力は667Paである。すなわち、ここでは上記窒素ガスの分圧Y と、プラズマを生成するために投入する上記被処理体の単位面積当りの高周波電力X との関係が、上記チタン化合物ガスの分圧に依存して定まる所定の関係式を満たすように上記分圧Y と上記高周波電力X とが設定されている。
【0101】
まず、TiCl の分圧が2.37Pa(20sccm対応)の時に定まる関係式は、以下の数3のようになる。
【0102】
≦28.9・X −140・X +187…(数3)
【0103】
そして図9から明らかなように、数3で示される領域内にTiCl の分圧が1.43Pa(12sccm対応)および0.71Pa(6sccm対応)の時に定まる最適範囲も含まれることとなり、数3で示される領域は、TiCl の分圧が2.37Pa以下の時に定まる最適範囲を示していることになる。
また、TiCl の分圧が1.43Pa(12sccm対応)の時に定まる関係式は、以下の数3−2のようになる。
≦13.1・X −76.3X +103…(数3−2)
また、TiCl の分圧が0.71Pa(6sccm対応)の時に定まる関係式は、以下の数3−3のようになる。
【0104】
≦16.4・X −67.1・X +66.6…(数3−3)
この時にN ガス及びTiCl ガスの各分圧の下限はそれぞれ0.12Pa(1sccm対応)であり、好ましくは0.48Pa(4sccm対応)である。
【0105】
[第2の窒化チタン膜の堆積状態の評価]
ここで、本発明方法を用いて第2の窒化チタン膜を実際に成膜した時の凹部の底面近傍における薄膜の堆積状態を検査したので、その評価結果について説明する。図10はRF電力が800W、TiCl ガス流量が12sccmの時のN ガス流量と膜厚との関係を取り出して示したグラフであり、ここではN ガス流量を1〜1000sccmまで種々変化させて第2の窒化チタン膜を堆積している。このグラフは図6(B)中の高周波電力が800Wの時の特性と同じグラフである。従って、そのプロセス条件は、高周波電力が800W、TiCl ガス流量が12sccm、プロセス温度が550℃、凹部6の直径が60nmである。
【0106】
図10に示すように、N ガス流量を1sccmから増加すると、膜厚は順次増加して行き、そして、N ガス流量が300sccm程度のところで膜厚はピークN2となる。更にN ガス流量を増加して行くと、今度は膜厚は次第に減少して行く。ここで上記ピークN2を含まないでこのピークN2から右側の領域をモード1と称し、ピークN2を含んでこのピークN2から左側の領域をモード2と称す。上記モード2の領域は先に説明していたように第2の窒化チタン膜の堆積状態が良好になる領域である。
【0107】
そして、モード1の領域を代表してポイントA1(N =1000sccm)の部分と、モード2の領域を代表してポイントA2(N =100sccm)の部分の堆積状態をそれぞれ調べたので、その結果を図11に示す。
【0108】
図11は凹部の底面近傍における薄膜の堆積状態を示す電子顕微鏡写真である。ここで図11(A)はモード1(ポイントA1)を示し、図11(B)はモード2(ポイントA2)を示す。図11において凹部の断面を示す写真の下部に、凹部の底面付近の拡大写真を併せて示している。堆積時間に関しては、モード1の場合は70secであり、モード2の場合は28secである。この結果、モード1の場合はモード2の場合よりも堆積時間が長いにもかかわらず、凹部の底面に堆積している窒化チタン膜(第2の窒化チタン膜)の厚さは略ゼロであるので、ボトムカバレジは0%(絶縁層の上面に堆積する窒化チタン膜厚に対する凹部底面に堆積する窒化チタン膜厚)であり、好ましくない結果が得られた。
【0109】
これに対して、モード2の場合は、堆積時間が短いにもかかわらず、凹部底面に十分に窒化チタン膜(第2の窒化チタン膜)が堆積してボトムカバレジも30%程度に達し、好ましい結果を得ることができた。また、このモード2の場合には凹部内の側壁には非常に薄く僅かに窒化チタン膜が堆積している程度であり、この点からもモード2における堆積状態は良好であることを確認することができた。
【0110】
次に、上記モード1と堆積状態が良好になるモード2の時に生ずる反応形態の相異を模式的に説明する。図12は第2の窒化チタン膜を堆積する時のN ガス流量が多い場合と少ない場合に生ずる反応の形態を模式的に示す図である。ここでN ガス流量が多い場合はモード1を示し、N ガス流量が少ない場合はモード2を示している。また図12中の右側には、凹部内に侵入するガスの状態が模式的に併記されている。
【0111】
図12(A)に示すように、モード1の場合は、供給されるN ガスが多いことから、このN ガスと還元ガスとして供給されているH ガスとがプラズマにより活性化されて両者が反応して活性種であるH*、N*、NH (*は活性種 を示す)が多量に発生し、このH*、N*、NH がウエハ表面に吸着すること になる。そして、このウエハ表面上に吸着したH*、N*、NH にTiCl をプラズマにより分解することにより発生したTiClx(X:1〜3)が反応してこれを還元し、この結果、HClが発生すると共に、ウエハ表面にTiN膜が堆積することになる。
【0112】
このような反応形態において、ウエハWの凹部6内の表面には上述のように活性種であるNH が付着しているが、上記TiClxは凹部6の開口付近で多く消費されてしまい、凹部6の底部まで十分に届かない状態が生ずる。この結果、モード1の場合には凹部6内の底面にはTiN膜が十分に堆積しない状態が生ずる。
【0113】
これに対して、図12(B)に示すように、モード2の場合は、供給されるN ガスが少ないことから、TiCl をプラズマにより分解することにより発生したTiClx(X:1〜3)がモード1の場合に比べて多くなり、このTiClxがウエハ表面に吸着することになる。そして、このウエハ表面に吸着したTiClxは、N 及びH をプラズマにより活性化させることにより発生したN 、H 、NH と反応してこれを還元し、この結果、HClが発生すると共に、ウエハ表面にTiN膜が堆積することになる。
【0114】
このような反応形態において、ウエハWの凹部6内の表面には上述のようにTiClxが付着しているが、N 、H 、NH はTiClxよりも相対的に多いので、N 、H 、NH は凹部6の開口付近で消費されても十分に残存していることになって凹部6の底部まで十分に届き、この凹部6の底面上にTiN膜を十分に堆積させることができることになる。
【0115】
このように、本発明によれば、表面に凹部6が形成されている被処理体、例えば半導体ウエハWの表面に薄膜を形成する成膜方法において、凹部6の内面を含む被処理体の表面にチタン化合物ガスと還元ガスとを用いてチタン膜を形成するチタン膜形成工程と、窒化ガスを用いてチタン膜を全て窒化して第1の窒化チタン膜104を形成する窒化工程と、凹部6の内面を含む被処理体の表面に第2の窒化チタン膜106を堆積させて形成する窒化チタン膜堆積工程とを有するようにしたので、被処理体の凹部の径が小さくても、例えばバリヤ層として機能する薄膜が凹部6の側壁へ堆積することを抑制しつつ、凹部6の底部に効率的に堆積させることができる。
【0116】
<タングステン膜成膜工程>
次に、タングステン膜成膜工程について説明する。上述のように第1の窒化チタン膜104と第2の窒化チタン膜106とを形成することによりバリヤ層108を形成したならば、次に、凹部6を埋め込むためのタングステン膜を形成する。図13はタングステン膜を成膜する時の各ガスの供給のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0117】
このタングステン膜を形成するには、上記ウエハWを図示しない別のタングステン用の成膜装置へ移載する。このタングステン膜を成膜するには図1に示す成膜装置と同様で、別途設けた熱CVD装置等を用いればよい。ここではタングステン含有ガスと還元ガスであるモノシランガスと交互に繰り返し供給して成膜を行うSFD法を用いるのが好ましい。
【0118】
ただし、このときのウエハ温度(プロセス温度)については、従来の一般的な熱CVD処理におけるプロセス温度400〜450℃程度よりも低い250〜350℃程度に調整する。また、プロセス圧力については、100〜1000Pa程度に調整する。そして、期間P21にて、熱CVD装置内に六フッ化タングステンガスを供給する。このとき、六フッ化タングステンガスの流量を10〜30sccmに調整する。また、この期間P21では、上記六フッ化タングステンガスとともにアルゴンガスまたは窒素ガスをキャリアガスとして供給する。期間P21の時間は例えば0.5〜5秒とする。
【0119】
次に、期間P21の状態から六フッ化タングステンガスの供給を停止して期間P22に移行する。この期間P22は、次の期間P23が開始されるまでの待ち時間であり、この時間は例えば0.5〜3.0秒とする。この期間P22では、熱CVD装置内に、アルゴンガスまたは窒素ガスをパージガスとして供給し続けることが好ましい。
【0120】
続いて、期間P23にて、モノシランガスを供給する。このとき、モノシランガスの流量を50〜100sccmに調整する。また,この期間P23では、上記モノシランガスとともにアルゴンガスまたは窒素ガスをキャリアガスとして供給する。期間P23の時間は例えば0.5〜5秒とする。なお、還元ガスとしては、このモノシランガスに代えて、ジシラン(Si )ガス、ジボラン(B)ガスなどを用いることができる。
【0121】
次いで、期間P23の状態からモノシランガスの供給を停止して期間P24に移行する。この期間P24は、次のサイクルの期間P21が開始されるまでの待ち時間であり、この時間は例えば0.5〜3.0秒とする。この期間P24では、熱CVD装置内に、アルゴンガスまたは窒素ガスをパージガスとして供給し続けることが好ましい。
【0122】
以上の期間P21〜P24の処理を実行することで、極めて薄いタングステン膜が形成される。そして,期間P21〜P24の処理を1サイクルとして、タングステン膜110(図3(E)参照)が所定の膜厚に達し、凹部6内がタングステンで埋められるまで同サイクルを繰り返す。
【0123】
このように、本実施形態にかかるSFDタングステン膜形成処理によれば、六フッ化タングステンガスとモノシランガスを交互に繰り返し供給して、極めて薄いタングステン膜を積層させるようにしてタングステン膜110を形成する。したがって、従来の一般的な熱CVD処理時のプロセス温度400〜450℃よりも遥かに低い250〜350℃であっても、特性の良好なタングステン膜110を形成することができる。
【0124】
ところで、SFDタングステン膜形成処理によれば、上述のように1サイクルで堆積するタングステンの量は極めて少ないため、例えば200〜300nmの厚さのタングステン膜を形成しようとすると、かなり長いプロセス時間が必要となり、スループットが低下してしまう。そこで、このスループット低下を防止するために、上記のSFDタングステン膜形成処理の後に、高い成膜レートが得られる第2のタングステン膜形成処理を行うようにしてもよい。
【0125】
この第2のタングステン膜形成処理では、例えば、プロセス温度を400〜450℃程度まで上昇させ、プロセス圧力を2000〜20000Pa程度に調整する。また、還元ガスとしてのモノシランガスを水素ガスに切り換え、キャリアガスとともにこの水素ガスと六フッ化タングステンガスとを同時にかつ連続的に供給する。このとき、水素ガスの流量を例えば300〜3000sccm程度とし、六フッ化タングステンガスの流量を30〜300sccm程度に調整する。このようなプロセスレシピを用いることによって、高い成膜レート、例えば1000〜5000Å/minでタングステン膜110を形成することができる。
【0126】
以上のように、本実施形態にかかる成膜処理によれば、チタン膜成膜工程によって、薄いチタン膜100を形成し、これを窒化工程にて窒化することによって例えば10nmの厚さの別の窒化チタン膜104を形成する。このとき、チタン膜が薄いために、チタン膜を残すことなくそのすべてを確実に窒化することができる。このように、本実施形態によれば、タングステン膜110を形成するために用いられる六フッ化タングステンガスに含まれるフッ素と活発に反応するおそれのあるチタン膜が第1の窒化チタン膜104の下に存在しなくなるため、第2の窒化チタン膜106とタングステン膜110がこれらの下地層から剥離することを防止することができる。
【0127】
更に、本実施形態では、窒化チタン膜堆積工程にて上記第1の窒化チタン膜104上に第2の窒化チタン膜106を形成するようにしたので、バリヤ機能を十分に発揮することができ、この結果、この後工程であるタングステン膜形成工程で用いられる六フッ化タングステンのフッ素による拡散を防止することができる。
【0128】
またこの第2の窒化チタン膜106を堆積する際、N ガス量とプラズマ発生用の高周波電力とTiCl ガス量との関係を最適化するようにしたので、例えば直径が60nm以下の微細な凹部(ホール)内であっても、その凹部内の側壁への成膜を抑制しつつ、底面側には十分に窒化チタン膜を成膜することができ、凹部内が閉塞されることを防止することができる。
【0129】
このため、後工程のタングステン膜形成工程で上記凹部内に十分にタングステン膜を堆積させることができ、このコンタクト抵抗(プラグ抵抗)等を小さくすることができる。上記実施形態では、チタン膜成膜工程と窒化工程と窒化チタン膜堆積工程とを同一の成膜装置内で連続的に行うようにしたので、スループットを向上させることができる。
【0130】
尚、上記実施形態では、プラズマ安定用ガスとしてArガスを用いたが、これに限定されず、He等の他の希ガスを用いてもよい。また、上記実施形態では、チタン膜成膜工程と窒化工程と窒化チタン膜堆積工程とを同一の成膜装置内で連続的に行うようにしたが、これに限定されず、窒化チタン膜堆積工程を別途設けた別の成膜装置で行うようにしてもよい。
【0131】
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、この半導体ウエハにはシリコン基板やGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれ、更にはこれらの基板に限定されず、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明に係る成膜装置の一例を示す断面構成図である。
【図2】本発明の成膜方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明方法により被処理体の表面に形成される薄膜の状態を説明するための説明図である。
【図4】第1の窒化チタン膜の形成時の各ガスの供給状態を示すタイミングチャートである。
【図5】第2の窒化チタン膜を堆積する場合においてRF電力(高周波電力)を一定にした時のN ガス流量とTiCl ガス流量との関係を説明する説明図である。
【図6】第2の窒化チタン膜を形成する場合においてN ガス流量とRF電力とTiCl ガス流量とが膜厚のピークの変動に与える影響を説明するための説明図である。
【図7】第2の窒化チタン膜を堆積する時の高周波電力に対するN ガス流量の最適な範囲を説明するための説明図である。
【図8】第2の窒化チタン膜を堆積する時の被処理体の単位面積当りの高周波電力に対する被処理体の単位面積当りのN ガス流量の最適な範囲を説明するための説明図である。
【図9】第2の窒化チタン膜を堆積する時の被処理体の単位面積当りの高周波電力に対するN ガスの分圧の最適な範囲を説明するための説明図である。
【図10】RF電力が800W、TiCl ガス流量が12sccmの時のN ガス流量と膜厚との関係を取り出して示したグラフである。
【図11】凹部の底面近傍における薄膜の堆積状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図12】第2の窒化チタン膜を堆積する時のN ガス流量が多い場合と少ない場合に生ずる反応の形態を模式的に示す図である。
【図13】タングステン膜を成膜する時の各ガスの供給のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図14】半導体ウエハにおける一般的なコンタクト構造を示す図である。
【符号の説明】
【0133】
2 絶縁層
4 導電層
6 凹部
22 成膜装置
24 処理容器
26 サセプタ(載置台)
32 ヒータ(加熱手段)
36 下部電極
40 シャワーヘッド部
56 ガス供給手段
60 TiCl ガス供給源
62 Arガス供給源
64 H ガス供給源
66 NH ガス供給源
68 N ガス供給源
72 高周波電力供給手段
94 制御部
98 記憶媒体
100 チタン膜
102 チタンシリサイド層
104 第1の窒化チタン膜
106 第2の窒化チタン膜
108 バリヤ層
110 タングステン膜
W 半導体ウエハ(被処理体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹部が形成されている被処理体の表面に薄膜を形成する成膜方法において、
前記凹部の内面を含む前記被処理体の表面にチタン化合物ガスと還元ガスとを用いてチタン膜を形成するチタン膜形成工程と、
窒化ガスを用いて前記チタン膜を全て窒化して第1の窒化チタン膜を形成する窒化工程と、
前記凹部の内面を含む前記被処理体の表面に第2の窒化チタン膜を堆積させて形成する窒化チタン膜堆積工程と、
を有することを特徴とする薄膜の成膜方法。
【請求項2】
前記チタン膜形成工程と前記窒化工程とを交互に複数回繰り返した後に前記窒化チタン膜堆積工程を行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の薄膜の成膜方法。
【請求項3】
前記チタン膜形成工程と前記窒化工程は、それぞれプラズマの存在下で行われることを特徴とする請求項1又は2記載の薄膜の成膜方法。
【請求項4】
前記凹部の底部には、シリコンを含む導電層が露出しており、前記チタン膜形成工程では前記導電層のシリコンと前記チタン膜のチタンとが反応してチタンシリサイド層が形成されるように前記被処理体を第1の温度に設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項5】
前記第1の温度は400〜650℃の範囲内であることを特徴とする請求項4記載の薄膜の成膜方法。
【請求項6】
前記チタン膜形成工程にて形成される前記チタン膜の膜厚は15nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項7】
前記窒化チタン膜堆積工程では、チタン化合物ガスと還元ガスと窒素ガスとプラズマ安定用ガスとを用いてプラズマの存在下で前記第2の窒化チタン膜を堆積させるようにしたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項8】
前記窒素ガスの流量Y と、前記プラズマを生成するために投入する高周波電力X との関係が、前記チタン化合物ガスの流量に依存して定まる所定の関係式を満たすように前記流量Y と前記高周波電力X とが設定されていることを特徴とする請求項7記載の薄膜の成膜方法。
【請求項9】
前記所定の関係式は、前記チタン化合物ガスの流量が20sccm以下の時には、下記の数1であることを特徴とする請求項8記載の薄膜の成膜方法。
≦7.62・10−4・X −2.37・X +2.02・10 …(数1)
【請求項10】
前記窒素ガスの流量Y の下限は1sccmであることを特徴とする請求項9記載の薄膜の成膜方法。
【請求項11】
前記窒素ガスの前記被処理体の単位面積当りの流量Y と、前記プラズマを形成するために投入する前記被処理体の単位面積当りの高周波電力X との関係が、前記チタン化合物ガスの前記被処理体の単位面積当りの流量に依存して定まる所定の関係式を満たすように前記流量Y と前記高周波電力X とが設定されていることを特徴とする請求項7記載の薄膜の成膜方法。
【請求項12】
前記所定の関係式は、前記チタン化合物ガスの前記被処理体の単位面積当りの流量が2.831・10−2sccm/cm 以下の時には、下記の数2であることを特徴とする請求項11記載の薄膜の成膜方法。
≦5.39・10−1・X −2.37・X +2.86 …(数2)
【請求項13】
前記窒素ガスの前記被処理体の単位面積当りの流量Y の下限は、1.415・10−3sccm/cm であることを特徴とする請求項12記載の薄膜の成膜方法。
【請求項14】
前記窒素ガスの分圧Y と、プラズマを生成するために投入する前記被処理体の単位面積当りの高周波電力X との関係が、前記チタン化合物ガスの分圧に依存して定まる所定の関係式を満たすように前記分圧Y と前記高周波電力X とが設定されていることを特徴とする請求項7記載の薄膜の成膜方法。
【請求項15】
前記所定の関係式は、チタン化合物ガスの分圧が2.37Pa以下の時には、下記の数3であることを特徴とする請求項14記載の薄膜の成膜方法。
≦28.9・X −140・X +1.87・10 …(数3)
【請求項16】
前記窒素ガスの分圧Y の下限は、0.12Paであることを特徴とする請求項15記載の薄膜の成膜方法。
【請求項17】
前記チタン膜形成工程と前記窒化工程と前記窒化チタン膜堆積工程とは同一の成膜装置内で行われることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項18】
前記チタン化合物ガスは、四塩化チタンガスであることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項19】
前記還元ガスは、水素ガスであることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項20】
前記チタン膜堆積工程の後に、前記被処理体の表面にタングステン膜を形成して前記凹部を埋め込むタングステン膜形成工程を行うことを特徴とする請求項1乃至19のいずれか一項に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項21】
表面に凹部が形成されている被処理体の表面に薄膜を形成する成膜装置において、
前記被処理体を収容する処理容器と、
前記処理容器内で前記被処理体を載置すると共に下部電極が設けられた載置台と、
前記処理容器内へガスを導入すると共に上部電極として兼用されるシャワーヘッド部と、
前記シャワーヘッド部に接続されて必要なガスを供給するガス供給手段と、
前記被処理体を加熱する加熱手段と、
前記処理容器内を真空排気する排気系と、
前記処理容器内でプラズマを形成するために高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、
請求項1乃至20のいずれか一項に記載の薄膜の成膜方法を実施するために装置全体を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項22】
被処理体を収容する処理容器と、
前記処理容器内で前記被処理体を載置すると共に下部電極が設けられた載置台と、
前記処理容器内へガスを導入すると共に上部電極として兼用されるシャワーヘッド部と、
前記シャワーヘッド部に接続されて必要なガスを供給するガス供給手段と、
前記被処理体を加熱する加熱手段と、
前記処理容器内を真空排気する排気系と、
前記処理容器内でプラズマを形成するために高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、
装置全体を制御する制御部とを備えた成膜装置を用いて表面に凹部が形成されている被処理体の表面に薄膜を形成するに際して、
請求項1乃至20のいずれか一項に記載の薄膜の成膜方法を実施するように装置全体を制御するコンピュータに読み取り可能なプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−16136(P2010−16136A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174017(P2008−174017)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】