説明

薄膜トランジスタアレイ基板、発光パネル及びその製造方法並びに電子機器

【課題】製造中のパーティクルの発生を低減して、歩留まりを改善することができる基板構造を有する薄膜トランジスタアレイ基板、該薄膜トランジスタアレイ基板を適用した発光パネル及びその製造方法、並びに、該発光パネルを実装した電子機器を提供する。
【解決手段】基板11上に形成されるトランジスタTr11、Tr12に接続される配線層のうち、最上層に形成される配線(電源電圧ラインLa、選択ラインLs)表面の少なくとも一部が陽極酸化膜で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタアレイ基板、発光パネル及びその製造方法並びに電子機器に関し、特に、発光素子を有する画素が基板上に複数配列された発光パネルに適用可能な薄膜トランジスタアレイ基板、該薄膜トランジスタアレイ基板を適用した発光パネル及びその製造方法、並びに、該発光パネルを実装した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯音楽プレーヤ等の電子機器の表示デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略記する)等の発光素子を2次元配列した表示パネル(発光素子型表示パネル)を適用したものが知られている。特に、アクティブマトリクス駆動方式を適用した発光素子型表示パネルにおいては、広く普及している液晶表示装置に比較して、表示応答速度が速く、視野角依存性も小さく、また、高輝度・高コントラスト化、表示画質の高精細化等が可能であるという特長を有している。加えて、発光素子型表示パネルは、液晶表示装置のようにバックライトや導光板を必要としないので、一層の薄型軽量化が可能であるという特長を有している。
【0003】
このような表示パネルにおいて、画質の高精細化や大画面化を図る場合、発光素子を有する画素の配置位置に応じて、ドライバからの配線長が異なるため、信号遅延や電圧低下が顕著となるという問題があった。このような問題を解決するためには、上記表示パネルに低抵抗の配線構造を適用することが必須であった。例えば特許文献1には、有機EL素子を備えた複数の画素が配列された有機ELパネルにおいて、電源線の配線材料としてアルミニウム単体、又は、アルミニウム合金を用いることにより、配線抵抗を低減することが記載されている。
【0004】
ここで、有機EL素子は、周知のように、例えばガラス基板等の一面側に、アノード(陽極)電極と、有機EL層(発光機能層)と、カソード(陰極)電極と、を順次積層した素子構造を有している。そして、有機EL層に発光しきい値を越えるようにアノード電極とカソード電極との間に電圧を印加することにより、有機EL層内で注入されたホールと電子が再結合する際に生じるエネルギーに基づいて光(励起光)が放射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−116206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したようなアクティブマトリクス駆動方式を適用した表示パネルにおいては、各画素に、発光素子に加え、スイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)等の回路素子を備える必要がある。このような回路素子は、複数回の成膜、パターニング工程を経て、基板上に導電層や絶縁膜を積層形成することにより構成される。このとき、基板は、非常に清浄な状態であることが要求される。
【0007】
しかしながら、成膜、パターニング工程が多いほど、基板上にパーティクル(微小な異物)が発生しやすくなるため、残留したパーティクルによりアノード電極とカソード電極とがショートして、点欠陥が発生し、製造歩留まりが低下(不良発生率が上昇)するという問題を有していた。即ち、液晶素子構造と有機EL素子構造とを比較すると、液晶素子における液晶層よりも有機EL素子における発光機能層の方が遥かに薄いため、パーティクルによる点欠陥が発生する確率が高くなる。また、上述したように、表示パネルの画質の高精細化や大画面化を図る場合には、パーティクルの影響が相対的に大きくなるという問題を有している。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑み、画質の高精細化や大画面化した場合であっても、製造中のパーティクルの発生を抑制して、歩留まりを改善することができる基板構造を有する薄膜トランジスタアレイ基板、該薄膜トランジスタアレイ基板を適用した発光パネル及びその製造方法、並びに、該発光パネルを実装した電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、基板上に、薄膜トランジスタが形成された薄膜トランジスタアレイ基板において、前記基板上に配設され、前記薄膜トランジスタを含む回路を駆動するための電圧が印加される配線表面の少なくとも一部が、陽極酸化膜で形成されていることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の薄膜トランジスタアレイ基板において、前記配線は、アルミニウム、又は、アルミニウムを含む合金材料からなることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の薄膜トランジスタアレイ基板において、前記配線は、ウェットエッチング法によりパターニングされていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の薄膜トランジスタアレイ基板において、前記配線は、前記回路を駆動するための電源電圧が印加される電源電圧ラインであることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の薄膜トランジスタアレイ基板において、前記回路は、前記基板上に規則的に配列された画素であり、前記薄膜トランジスタは、前記電源電圧ラインを介して印加される前記電源電圧に基づいて、前記画素を駆動する駆動トランジスタであることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、基板上に、少なくとも発光素子、及び、該発光素子を駆動するための薄膜トランジスタを有する複数の画素が配設された発光パネルにおいて、前記薄膜トランジスタにより前記発光素子を駆動するための電圧が印加される配線表面の少なくとも一部が、陽極酸化膜で形成されていることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項6に記載の発光パネルにおいて、前記発光素子は、電流制御型の発光素子であることを特徴とする。
請求項8記載の発明に係る電子機器は、前記請求項6又は7に記載の前記発光パネルが実装されてなることを特徴とする。
【0011】
請求項9記載の発明は、基板上に、少なくとも発光素子、及び、該発光素子を駆動するための薄膜トランジスタを有する複数の画素が配設された発光パネルの製造方法において、前記発光素子を駆動するための電圧が印加される配線を形成する工程と、前記配線表面の少なくとも一部を陽極酸化処理により形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画質の高精細化や大画面化した場合であっても、製造中のパーティクルの発生を抑制して、歩留まりを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る薄膜トランジスタアレイ基板を適用した表示パネルの例を示す概略平面図である。
【図2】実施形態に係る表示パネルにおける画素の配列状態及び配線層の配設状態の一例を示す概略平面図である。
【図3】実施形態に係る表示パネルに配列される各画素の回路構成例を示す等価回路図である。
【図4】実施形態に適用可能な画素の一例を示す平面レイアウト図である。
【図5】実施形態に係る画素の要部拡大図である。
【図6】実施形態に係る表示パネルの要部断面図(その1)である。
【図7】実施形態に係る表示パネルの要部断面図(その2)である。
【図8】実施形態に係る表示パネルの要部断面図(その3)である。
【図9】実施形態に係る表示パネルの要部断面図(その4)である。
【図10】実施形態に係る表示パネルの製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図11】実施形態に係る表示パネルの製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図12】実施形態に係る表示パネルの製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図13】実施形態に係る表示パネルの製造方法を示す工程断面図(その4)である。
【図14】実施形態に係る表示パネルの製造方法を示す工程断面図(その5)である。
【図15】比較対象となる表示パネルの一例を示す要部断面図である。
【図16】比較対象となる表示パネルの製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図17】比較対象となる表示パネルの製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図18】実施形態に係る表示パネルに配列される画素の他の回路構成例を示す等価回路図である。
【図19】実施形態に適用可能な画素の他の例を示す平面レイアウト図である。
【図20】実施形態の適用例に係るデジタルカメラの構成を示す斜視図である。
【図21】実施形態の適用例に係るモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図22】実施形態の適用例に係る携帯電話の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ基板、発光パネル及びその製造方法並びに電子機器ついて、実施形態を示して詳しく説明する。まず、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ基板を適用した発光パネル、及び、その製造方法について説明する。ここでは、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ基板を適用した発光パネルとして、有機EL素子を備えた複数の画素が配列された表示パネルを示して説明する。
【0015】
(発光パネル)
図1は、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ基板を適用した表示パネルの例を示す概略平面図である。図1(a)は、表示パネルの第1の例を示す概略平面図であり、図1(b)は、表示パネルの第2の例を示す概略平面図である。また、図2は、図1(b)に示した表示パネルにおける画素の配列状態及び配線層の配設状態の一例を示す概略平面図である。
【0016】
ここで、図1に示す平面図においては、説明の都合上、表示パネルの一面側(基板の有機EL素子の形成面側)から見た、表示領域における各画素の画素電極、及び、各画素(又は発光素子)の形成領域を画定する隔壁層に設けられる開口部、並びに、表示領域外の周辺領域に設けられる外部接続用の端子パッドの配置のみを示す。また、図2に示す平面図においては、各画素の画素電極と各配線層との配置関係のみを示し、各画素の有機EL素子(発光素子)を発光駆動するための発光駆動回路(後述する図3参照)に設けられるトランジスタ等の表示を省略した。なお、図1、図2においては、画素電極及び各配線層、端子パッド、隔壁層等の配置や被覆状態を明瞭にするために、便宜的にハッチングを施して示した。
【0017】
本発明に係る薄膜トランジスタアレイ基板を適用した表示パネル(発光パネル)10は、例えば図1(a)、(b)及び図2に示すように、ガラス基板等の透明な基板11の一面側(紙面手前側)に、表示領域20と、その周囲の周辺領域30とが設定されている。表示領域20には、複数の画素PIXが行方向(図面左右方向)及び列方向(図面上下方向)にマトリクス状に配列されている。
【0018】
ここで、各画素PIXに設けられる画素電極14の周囲には、例えば図2に示すように、列方向にデータラインLdが配設されている。また、当該データラインLdに直交する行方向には選択ラインLs及び電源電圧ライン(例えばアノードライン)Laが配設されている。選択ラインLsの一方の端部には端子パッドPLsが設けられ、電源電圧ラインLaの一方の端部には端子パッドPLaが設けられている。また、データラインLdの一方の端部には図示を省略した端子パッドが設けられている。そして、詳しくは後述するが、表示パネル10には、基板11上に配列された複数の画素電極14に対して共通に対向するように、単一の電極層(べた電極)からなる対向電極(例えばカソード電極)が形成されている。
【0019】
また、表示パネル10の表示領域20には、図1(a)、(b)に示すように、少なくとも、各画素PIXの画素電極14相互の境界領域を含む領域に隔壁層17が設けられている。換言すると、表示領域20を含む領域に形成された隔壁層17には、少なくとも各画素PIXの画素電極14が露出する開口部が設けられている。この隔壁層17により取り囲まれ、画素電極(例えばアノード電極)14が露出する領域が、各画素PIXの有機EL素子(発光素子)を形成するためのEL素子形成領域として画定される(後述する図4参照)。そして、このEL素子形成領域、及び、その周囲の境界領域の隔壁層17を含む領域が、各画素PIXの画素形成領域として画定される(後述する図4参照)。
【0020】
一方、表示パネル10の周辺領域30には、所定の位置に、選択ラインLsや電源電圧ラインLaに接続された端子パッドPLs、PLaや、データラインLdに接続された端子パッド(図示を省略)、対向電極(例えばカソード電極)が接続されるコンタクト電極Eccが配置されている。各端子パッドPLs、PLa(データラインLdに接続された端子パッドを含む)は、例えば、図示を省略した表示パネル外部のフレキシブル基板や駆動用のドライバIC等に電気的に接続され、所定の駆動信号や駆動電圧が供給される。なお、図1(a)と図1(b)に示す表示パネル10では、周辺領域30に配置される端子パッドPLs、PLaや、コンタクト電極Eccとして、異なる構造を有している。これらの具体的な構成については後述する(図8、図9参照)が、本発明に係る表示パネル10においてはいずれの構造を適用するものであってもよい。
【0021】
(画素)
図3は、本実施形態に係る表示パネルに配列される各画素(発光素子及び発光駆動回路)の回路構成例を示す等価回路図である。
画素PIXは、例えば図3に示すように、発光駆動回路DCと有機EL素子(発光素子)OELとを備えている。発光駆動回路DCは、1乃至複数のトランジスタ(例えばアモルファスシリコン薄膜トランジスタ等)を備えた回路構成を有している。また、有機EL素子OELは、発光駆動回路DCにより制御される発光駆動電流が供給されることにより発光動作する。
【0022】
発光駆動回路DCは、具体的には、例えば図3に示すように、トランジスタTr11と、トランジスタ(駆動トランジスタ)Tr12と、キャパシタCsと、を備えている。トランジスタTr11は、ゲート端子が接点N14を介して選択ラインLsに接続され、ドレイン端子が接点N13を介してデータラインLdに接続され、ソース端子が接点N11に接続されている。トランジスタTr12は、ゲート端子が接点N11に接続され、ドレイン端子が接点N15を介して電源電圧ラインLaに接続され、ソース端子が接点N12に接続されている。キャパシタCsは、トランジスタTr12のゲート端子(接点N11)及びソース端子(接点N12)間に接続されている。
【0023】
ここでは、トランジスタTr11、Tr12は、いずれもnチャネル型の薄膜トランジスタが適用されている。トランジスタTr11、Tr12がpチャネル型であれば、ソース端子及びドレイン端子が互いに逆になる。また、キャパシタCsは、トランジスタTr12のゲート・ソース間に形成される寄生容量、又は、該ゲート・ソース間に付加的に設けられた補助容量、もしくは、これらの寄生容量と補助容量からなる容量成分である。
【0024】
また、有機EL素子OELは、アノード(アノード電極となる画素電極14)が上記発光駆動回路DCの接点N12に接続され、カソード(カソード電極となる対向電極16;後述する図6参照)がコンタクト電極Eccを介して、例えば所定の低電位電源に直接又は間接的に接続される。したがって、基板11上に配列された複数の画素電極14に対して、カソード電極となる対向電極16を共通に対向する単一の電極層(べた電極)により構成することにより、例えば全ての画素PIX(有機EL素子OEL)に対して、所定の低電圧(基準電圧Vsc;例えば接地電位Vgnd)が共通に印加される。
【0025】
なお、図3に示した画素PIX(発光駆動回路DC及び有機EL素子OEL)において、選択ラインLsは、図1、図2に示した端子パッドPLsを介して、図示を省略した選択ドライバに接続される。選択ドライバは、所定のタイミングで画素PIXを選択状態に設定するための選択電圧Vselを選択ラインLsに印加する。また、データラインLdは、図示を省略した接続パッドを介して、データドライバに接続される。データドライバは、上記画素PIXの選択状態に同期するタイミングで画像データに応じた階調電圧VdataをデータラインLdに印加する。
【0026】
また、電源電圧ラインLaは、図1、図2に示した端子パッドPLaを介して、例えば所定の高電位電源に直接又は間接的に接続される。ここで、電源電圧ラインLaには、各画素PIXに設けられる有機EL素子OELの画素電極(アノード電極)14に、画像データに応じた発光駆動電流を流すことができる所定の高電圧(電源電圧Vsa)が印加される。この高電圧は、有機EL素子OELの対向電極16に印加される基準電圧Vscより電位の高い電圧に設定される。
【0027】
そして、このような回路構成を有する画素PIXにおける駆動制御動作は、まず、所定の選択期間に、図示を省略した選択ドライバから選択ラインLsに対して、選択レベル(例えばハイレベル)の選択電圧Vselが印加される。これにより、発光駆動回路DCに設けられたトランジスタTr11がオン動作して、画素PIXが選択状態に設定される。このタイミングに同期して、図示を省略したデータドライバから画像データに応じた階調電圧VdataがデータラインLdに印加される。これにより、トランジスタTr11を介して接点N11(すなわち、トランジスタTr12のゲート端子)がデータラインLdに接続され、接点N11に階調電圧Vdataに応じた電位が印加される。
【0028】
ここで、トランジスタTr12のドレイン・ソース間電流(すなわち、有機EL素子OELに流れる発光駆動電流)の電流値は、ドレイン・ソース間の電位差及びゲート・ソース間の電位差によって決定される。すなわち、図3に示した発光駆動回路DCにおいては、トランジスタTr12のドレイン・ソース間に流れる電流の電流値は、階調電圧Vdataによって制御することができる。
【0029】
したがって、トランジスタTr12が接点N11の電位(すなわち、階調電圧Vdata)に応じた導通状態でオン動作して、高電位側の電源電圧VsaからトランジスタTr12及び有機EL素子OELを介して低電位側の基準電圧Vsc(接地電位Vgnd)に、所定の電流値を有する発光駆動電流が流れる。これにより、有機EL素子OELが階調電圧Vdata(すなわち画像データ)に応じた輝度階調で発光動作する。また、このとき、接点N11に印加された階調電圧Vdataに基づいて、トランジスタTr12のゲート・ソース間のキャパシタCsに電荷が蓄積(充電)される。
【0030】
次いで、上記選択期間終了後の非選択期間においては、選択ドライバから選択ラインLsに非選択レベル(オフレベル;例えばローレベル)の選択電圧Vselが印加される。これにより、発光駆動回路DCのトランジスタTr11がオフ動作して非選択状態に設定され、データラインLdと接点N11が電気的に遮断される。このとき、上記キャパシタCsに蓄積された電荷が保持されることにより、トランジスタTr12のゲート・ソース間の電位差が保持され、トランジスタTr12のゲート端子(接点N11)に階調電圧Vdataに相当する電圧が印加される。
【0031】
したがって、上記選択状態と同様に、電源電圧VsaからトランジスタTr12を介して、有機EL素子OELに発光動作状態と同程度の電流値の発光駆動電流が流れて、発光動作状態が継続される。この発光動作状態は、次の画像データに応じた階調電圧Vdataが書き込まれるまで、例えば、1フレーム期間継続するように制御される。そして、このような駆動制御動作を、表示パネル10に2次元配列された全ての画素PIXについて、各行ごとに順次実行することにより、所望の画像情報を表示する動作が実行される。
【0032】
(画素のデバイス構造)
次いで、上述したような回路構成を有する画素(発光駆動回路及び有機EL素子)の具体的なデバイス構造(平面レイアウト及び断面構造)について説明する。ここでは、有機EL層において発光した光を、基板を介して視野側(基板の他面側)に出射するボトムエミッション型の発光構造を有する有機EL表示パネルについて示す。
【0033】
図4は、本実施形態に適用可能な画素の一例を示す平面レイアウト図である。また、図5は、本実施形態に係る画素の要部拡大図である。なお、図4、図5においては、図3に示した発光駆動回路DCの各トランジスタ及び配線等が形成された層を中心に示し、各トランジスタの電極及び各配線層、画素電極を明瞭にするために、便宜的にハッチングを施して示した。
【0034】
また、図6〜図9は、本実施形態に係る表示パネルの要部断面図である。ここで、図6(a)、(b)は、各々、図4に示した平面レイアウトを有する画素におけるVIA−VIA線(本明細書においては図4中に示したローマ数字の「6」に対応する記号として便宜的に「VI」を用いる。以下同じ)、及び、VIB−VIB線に沿った断面を示す概略断面図である。また、図7(a)〜(d)は、各々、図5に示した要部平面レイアウトにおけるVIIC−VIIC線(本明細書においては図5中に示したローマ数字の「7」に対応する記号として便宜的に「VII」を用いる。以下同じ)、VIID−VIID線、VIIE−VIIE線、及び、VIIF−VIIF線に沿った断面を示す概略断面図である。図8(a)、(b)は、各々、図1(a)、(b)に示した平面レイアウトを有する表示パネルにおけるVIIIG−VIIIG線(本明細書においては図1中に示したローマ数字の「8」に対応する記号として便宜的に「VIII」を用いる。以下同じ)に沿った断面を示す概略断面図である。図9(a)、(b)は、各々、図1(a)、(b)に示した平面レイアウトを有する表示パネルにおけるIXG−IXG線(本明細書においては図1中に示したローマ数字の「9」に対応する記号として便宜的に「IX」を用いる。以下同じ)に沿った断面を示す概略断面図である。
【0035】
図4に示した画素PIXは、具体的には、図6(a)、(b)に示すように、基板11の一面側(図面上面側)に設定された画素形成領域Rpxごとに設けられている。この画素形成領域Rpxには、少なくとも、有機EL素子OELの形成領域(EL素子形成領域)Relと、隣接する画素PIXとの間の境界領域と、が設定されている。
【0036】
図4に示した画素形成領域Rpxの図面上方及び下方の縁辺領域には、各々、行方向(図面左右方向)に延在するように選択ラインLs及び電源電圧ラインLaが配設されている。一方、画素形成領域Rpxの図面右方の縁辺領域には、選択ラインLs及び電源電圧ラインLaに直交して、列方向(図面上下方向)に延在するようにデータラインLdが配設されている。
【0037】
また、画素形成領域Rpxの上下及び左右の縁辺領域に設定される境界領域には、上下及び左右方向に隣接して配列される画素PIXの画素形成領域Rpxにまたがって、図4、図6(a)、(b)に示すように、隔壁層17が形成されている。そして、隔壁層17の側壁17eにより四方が囲まれ、画素電極14が露出した領域がEL素子形成領域Relとして画定されている。
【0038】
データラインLdは、例えば図4〜図6、図7(a)に示すように、選択ラインLs及び電源電圧ラインLaよりも下層側(基板11側)に設けられている。データラインLdは、トランジスタTr11、Tr12のゲート電極Tr11g、Tr12gを形成するためのゲートメタル層をパターニングすることによって、当該ゲート電極Tr11g、Tr12gと同じ工程で形成される。データラインLdは、図4、図7(a)に示すように、その上に被覆成膜されたゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールCH3(接点N13に相当する)を介して、トランジスタTr11のドレイン電極Tr11dに接続されている。ここで、図6(a)、図7(a)に示すように、データラインLdは、対向電極16との間にゲート絶縁膜12、絶縁膜13及び隔壁層17が介在しているので、寄生容量を低減でき、データラインLdに供給される信号(階調電圧Vdata)の遅延を抑制することができる。
【0039】
また、選択ラインLs及び電源電圧ラインLaは、例えば図4〜図6、図7(b)、(d)に示すように、トランジスタTr11及びTr12のソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12dよりも上層側に設けられている。選択ラインLs及び電源電圧ラインLaは、例えば高融点金属又は希土類元素を1乃至2種類、数重量%含有するアルミニウム合金材料により形成される。特に、本実施形態においては、例えば図6(b)、図7(d)に示すように、少なくとも電源電圧ラインLaの表層が陽極酸化膜からなる絶縁膜Faoにより被覆され、絶縁されている。なお、本実施形態においては、例えば図6(b)、図7(b)に示すように、選択ラインLsもその表層が陽極酸化膜からなる絶縁膜Faoにより被覆され、絶縁されたパネル構造を有している。
【0040】
そして、選択ラインLsは、図4、図5(a)、図7(b)に示すように、下層の絶縁膜13に設けられたコンタクトホールCH4aを介して中間層Lmに接続されている。中間層Lmは、さらに下層のゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールCHbを介してトランジスタTr11のゲート電極Tr11gに電気的に接続されている。中間層Lmは、後述するトランジスタTr11、Tr12を構成するソース、ドレインメタル層SD、及び、有機EL素子OELを構成する透明電極層ITOが積層された構成を有している。また、中間層Lmの下層には半導体層SMC及び不純物層OHMが設けられている。また、電源電圧ラインLaは、図4、図5(b)、図7(d)に示すように、下層の絶縁膜13に設けられたコンタクトホールCH5を介して、トランジスタTr12のドレイン電極Tr12dに電気的に接続されている。
【0041】
ここで、上述した選択ラインLs及び電源電圧ラインLaを形成するアルミニウム合金に含有される高融点金属は、例えばチタン(Ti)やタンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等を良好に適用することができる。具体的には、選択ラインLs及び電源電圧ラインLaの配線材料として、Al−Ti(0.5%〜1.5%)、Al−Ta(1.0%〜2.0%)、Al−Zr(0.5%〜3%)、Al−W(1.0%〜2.0%)、Al−Mo(0.5%〜1.5%)等のアルミニウム合金を適用することができる。上記括弧内の数字は、アルミニウムに含有される各高融点金属の重量%を示す。また、選択ラインLs及び電源電圧ラインLaを形成するアルミニウム合金に含有される希土類元素は、例えばネオジウム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、スカンジウム(Sc)等を良好に適用することができる。具体的には、選択ラインLs及び電源電圧ラインLaの配線材料として、Al−Sc(0.5〜2.5%)等のアルミニウム合金を適用することができる。
【0042】
そして、このような選択ラインLs及び電源電圧ラインLaは、図1、図2に示したように、その一方の端部が表示領域20外の周辺領域30にまで延在し、端子パッドPLs、PLaに接続されている。電源電圧ラインLaに接続される端子パッドPLaの第1の例について具体的に示すと、電源電圧ラインLaは、例えば図9(a)に示すように、絶縁膜13に設けられたコンタクトホールCH9を介して上部パッド層PD2に電気的に接続される。ここで、電源電圧ラインLaは、その表層が陽極酸化膜からなる絶縁膜Faoにより被覆されていない。このような端子構造を実現するためには、後述する表示パネルの製造方法において、端子パッドPLa付近の電源電圧ラインLaを、予めレジスト等により被覆して露出しない状態にして陽極酸化を行うことにより、表層を絶縁膜化しないようにする。また、上部パッド層PD2は、上述した中間層Lmと同様に、後述するトランジスタTr11、Tr12を構成するソース、ドレインメタル層SD、及び、有機EL素子OELを構成する透明電極層ITOが積層された構成を有している。また、上部パッド層PD2の下層には半導体層SMC及び不純物層OHMが設けられている。さらに、上部パッド層PD2は、不純物層OHM、半導体層SMC及びゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールCH8を介して、下層の下部パッド層PD1に電気的に接続される。ここで、下部パッド層PD1は、上述したデータラインLdと同様に、トランジスタTr11、Tr12を構成するゲートメタル層により形成される。
【0043】
また、端子パッドPLaの第2の例について具体的に示すと、電源電圧ラインLaは、例えば図9(b)に示すように、絶縁膜13に設けられたコンタクトホールCH9を介して上部パッド層PD2に電気的に接続される。ここで、電源電圧ラインLaは、その表層が陽極酸化膜からなる絶縁膜Faoにより被覆されている。そして、上部パッド層PD2は、不純物層OHM、半導体層SMC及びゲート絶縁膜12に設けられた複数のコンタクトホールCH7、CH8を介して、下層の下部パッド層PD1に電気的に接続される。
【0044】
なお、図示を省略したが、選択ラインLsの端部に設けられる端子パッドPLs(図1、図2参照)についても上述した端子パッドPLaと同様に、図9(a)、(b)に示した端子構造のいずれかが適用される。また、データラインLdの端部に設けられる端子パッド(図示を省略)においては、データラインLdがトランジスタTr11、Tr12を構成するゲートメタル層SDにより形成されるので、その端部が図9(a)、(b)に示した端子構造の下部パッド層PD1として適用される。そして、ゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールを介して、データラインLdの端部(下部パッド層PD1)と上部パッド層を電気的に接続することにより、図9(a)、(b)と略同等の端子構造が適用される。ここで、図9(a)、(b)に示した端子構造は、端子パッドPLa、PLs(データラインLdの端部に設けられる端子パッドを含む)において、いずれの構造を適用するものであってもよい。
【0045】
また、図3に示した発光駆動回路DCのトランジスタTr11及びTr12は、具体的には、図4に示すように、データラインLdに沿って列方向(図面上下方向)に延在するように配置されている。本実施形態においては、トランジスタTr11、Tr12のチャネルの幅方向が、データラインLdに並行に設定されている。
【0046】
ここで、各トランジスタTr11、Tr12は、周知の電界効果型の薄膜トランジスタ構造を有している。すなわち、トランジスタTr11、Tr12は、図4、図6(a)、図7(a)に示すように、各々、ゲート電極Tr11g、Tr12gと、ゲート絶縁膜12を介して少なくとも各ゲート電極Tr11g、Tr12gに対応する領域に形成された半導体層SMCと、該半導体層SMCの両端部に延在するように形成されたソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12dと、を有している。
【0047】
なお、図6(a)、図7(a)に示すように、各トランジスタTr11、Tr12のソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12d上には、後述する有機EL素子OELの画素電極14を構成する透明電極層ITOが整合するように形成されている。また、少なくともソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12dと半導体層SMCとの間には、不純物層OHMが形成されている。不純物層OHMは、n型の不純物を含むアモルファスシリコンからなるn+シリコン層等により形成され、半導体層SMCとソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12dとのオーミック接続を実現する機能を有している。なお、本実施形態に係る表示パネル10においては、ソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12d、並びに、これらの電極と同時に形成される配線層の下層に不純物層OHMと半導体層SMCが延在して形成された基板構造を有している。また、各トランジスタTr11、Tr12のソース電極Tr11s、Tr12sとドレイン電極Tr11d、Tr12dが対向する半導体層SMC上には、チャネル保護層BLが形成されている。チャネル保護層BLは、酸化シリコン又は窒化シリコン等により形成され、半導体層SMCへのエッチングダメージを防止する機能を有している。
【0048】
そして、図3に示した発光駆動回路DCの回路構成に対応するように、トランジスタTr11は、ゲート電極Tr11gが図4、図5(a)、図7(b)に示すように、ゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールCH4b、中間層Lm、及び絶縁膜13に設けられたコンタクトホールCH4aを介して選択ラインLsに接続されている。また、トランジスタTr11のドレイン電極Tr11dは、図4、図5(a)、図7(a)に示すように、ゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールCH3を介してデータラインLdに接続されている。また、トランジスタTr11のソース電極Tr11sは、図4、図5(a)、図7(c)に示すように、ゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールCH1を介してトランジスタTr12のゲート電極Tr12gに接続されている。ここで、コンタクトホールCH1は、図3に示した発光駆動回路DCの接点N11に対応し、コンタクトホールCH3は接点N13に対応し、コンタクトホールCH4a、CH4bは接点N14に対応する。
【0049】
また、トランジスタTr12は、ゲート電極Tr12gが図4、図5(a)、図6(a)、図7(c)に示すように、ゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールCH1を介して上記トランジスタTr11のソース電極Tr11sに電気的に接続されている。また、ゲート電極Tr12gは、キャパシタCsの下部電極Ecaに直接接続されている。また、トランジスタTr12のドレイン電極Tr12dは、図4、図5(b)、図7(d)に示すように、絶縁膜13に設けられたコンタクトホールCH5を介して上記電源電圧ラインLaに電気的に接続されている。また、トランジスタTr12のソース電極Tr12sは、図4、図6(a)に示すように、後述するキャパシタCsの上部電極Ecbを兼用する、有機EL素子OELの画素電極14に直接接続されている。ここで、コンタクトホールCH1は、図3に示した発光駆動回路DCの接点N11に対応し、コンタクトホールCH5は接点N15に対応する。また、ソース電極Tr12sと画素電極14(上部電極Ecb)の接続点は、図3に示した発光駆動回路DCの接点N12に対応する。
【0050】
キャパシタCsは、図4、図6(a)、(b)に示すように、下部電極Ecaと、該下部電極Ecaに対向する上部電極Ecbと、下部電極Eca及び上部電極Ecb間に介在するゲート絶縁膜12と、を有している。ここで、ゲート絶縁膜12は、キャパシタCsの誘電体層として兼用されている。また、上部電極Ecbは、後述する有機EL素子OELの画素電極14が兼用されている。すなわち、キャパシタCsは、有機EL素子OELの下層側(基板11側)に設けられている。
【0051】
有機EL素子OELは、図4、図6(a)、(b)に示すように、画素電極(アノード電極)14と、有機EL層(発光機能層)15と、対向電極(カソード電極)16と、を順次積層した素子構造を有している。画素電極14は、上記トランジスタTr11、Tr12のゲート絶縁膜12上に設けられ、上述したように、キャパシタCsの上部電極Ecbとして兼用されている。また、画素電極14は、その一部が延在して、トランジスタTr12のソース電極Tr12sに直接接続されて、上記発光駆動回路DCから所定の発光駆動電流が供給される。
【0052】
有機EL層15は、図4、図6(a)、(b)に示すように、基板11上に形成された隔壁層17の側壁17eにより画定されたEL素子形成領域Relに露出する画素電極14上に形成される。有機EL層15は、例えば正孔注入層(又は、正孔注入層を含む正孔輸送層)15a及び電子輸送性発光層15bから形成される。ここで、有機EL層15は、正孔注入層や発光層、電子注入層等の担体輸送層のうち、発光層として機能する層が有機材料で形成されているものを指す。
【0053】
対向電極16は、基板11上に2次元配列された各画素PIXの画素電極14に対して、共通に対向するように設けられている。対向電極16は、例えば基板11の表示領域20に対応するように、単一の電極層(べた電極)により形成されている。また、対向電極16は、各画素PIXのEL素子形成領域Relだけでなく、当該EL素子形成領域Relを画定する隔壁層17や絶縁膜13上にも延在するように設けられている。さらに、対向電極16は、表示領域20外の周辺領域30にまで一部が延在するように設けられ、周辺領域30に配置されたコンタクト電極Eccを介してカソードラインLcに電気的に接続されている。このカソードコンタクト部の第1の例について具体的に示すと、例えば図8(a)に示すように、対向電極16がコンタクト電極Eccに電気的に接続され、該コンタクト電極Eccが、絶縁膜13に設けられたコンタクトホールCH6を介して、絶縁膜13の下層のカソードラインLcに電気的に接続されている。ここで、コンタクト電極Eccは、その表層が陽極酸化膜からなる絶縁膜Faoにより被覆されていない。すなわち、この場合も、後述する表示パネルの製造方法において、コンタクト電極Eccを予めレジスト等により被覆して露出しない状態にして陽極酸化を行うことにより、表層を絶縁膜化しないようにする。
【0054】
また、カソードコンタクト部の第2の例について具体的に示すと、例えば図8(b)に示すように、対向電極16は、コンタクト電極Eccに電気的に接続されるとともに、絶縁膜13に設けられたコンタクトホールCH6bを介して、絶縁膜13の下層のカソードラインLcに直接接続されている。また、コンタクト電極Eccは、絶縁膜13に設けられたコンタクトホールCH6aを介して、カソードラインLcに接続されている。ここで、コンタクト電極Eccは、その表層が陽極酸化膜からなる絶縁膜Faoにより被覆されている。
【0055】
これにより、コンタクト電極Ecc及びカソードラインLcに接続された接続パッド(図示を省略)を通じて、所定の基準電圧Vsc(カソード電圧;例えば接地電位Vgnd)が対向電極16に印加される。ここで、カソードラインLcは、上述したトランジスタTr11、Tr12を構成するソース、ドレインメタル層SD、及び、有機EL素子OELを構成する透明電極層ITOが積層された構成を有し、その下層に半導体層SMC及び不純物層OHMが整合するように延在している。
【0056】
なお、図8(a)、(b)に示したカソードコンタクト部の接続構造は、いずれの構造を適用するものであってもよく、上述した端子パッドの端子構造(図9(a)、(b)参照)も含め、任意の組み合わせを適用してもよい。
【0057】
また、カソードラインLcの端部に設けられる端子パッド(図示を省略)は、カソードラインLcがトランジスタTr11、Tr12を構成するソース、ドレイン層SDにより形成されるので、その端部が図9(a)、(b)に示した端子構造の上部パッド層PD2として適用される。そして、ゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールを介して、カソードラインLcの端部(上部パッド層PD2)と下部パッド層PD1を電気的に接続することにより、図9(a)、(b)と略同等の端子構造が適用される。
【0058】
ここで、本実施形態に係る表示パネル10においては、ボトムエミッション型の発光構造を有しているので、画素電極14は、錫ドープ酸化インジウム(Indium Thin Oxide:ITO)等の光透過率の高い透明な電極材料により形成されている。一方、対向電極16は、アルミニウム(Al)単体やアルミニウム合金等の高い光反射率を有する電極材料を含んでいる。
【0059】
隔壁層17は、図1、図6に示すように、少なくとも、表示パネル10に2次元配列される複数の画素PIX相互の境界領域に格子状に設けられている。ここで、隔壁層17は、例えばドライエッチング法を用いてパターニングが可能な絶縁材料、例えば感光性の絶縁材料であるポリイミド系の樹脂材料により形成される。
【0060】
また、絶縁膜13は、図1、図6〜図9に示すように、基板11の略全域に設けられている。絶縁膜13は、図6、図7に示すように、少なくとも画素PIX相互の境界領域を被覆するように、基板11上に設けられている。これにより、表示領域20においては、トランジスタTr11、Tr12、及び、該トランジスタTr11、Tr12のソース電極Tr11s、Tr12s、ドレイン電極Tr11d、Tr12dを構成するソース、ドレインメタル層により形成される配線層は、絶縁膜13及び隔壁層17により被覆されている。また、周辺領域30においては、ソース、ドレインメタル層SDにより形成される配線層が絶縁膜13により被覆されている。
【0061】
そして、上述した発光駆動回路DC、有機EL素子OEL(画素電極14、有機EL層15、対向電極16)、絶縁膜13及び隔壁層17が形成された基板11の一面側には、封止層18が形成されて表示パネル10が封止されている。ここで、周辺領域30においては、図9(a)、(b)に示すように、少なくとも端子パッドPLs、PLaが露出するように封止層18に開口部CH10が形成されている。なお、表示パネル10は、封止層18に加えて、又は、封止層18に替えて、図示を省略したメタルキャップ(封止蓋)やガラス等の封止基板を貼り合わせた封止構造を適用するものであってもよい。
【0062】
以上説明したようなデバイス構造を有する画素PIXにおいて、データラインLdを介して供給される画像データに応じた階調電圧Vdataに基づいて、所定の電流値の発光駆動電流がトランジスタTr12のドレイン・ソース間に流れて画素電極14に供給されることにより、有機EL素子OELが当該画像データに応じた所望の輝度階調で発光動作する。
【0063】
このとき、表示パネル10の画素電極14が高い光透過率を有し、対向電極16が高い光反射率を有することにより(すなわち、有機EL素子OELがボトムエミッション型であることにより)、各画素PIXの有機EL層15において発光した光は、画素電極14を透過して直接、あるいは、対向電極16で反射した後、基板11を透過して、視野側である基板11の他面側(図6(a)、(b)の図面下方)に出射される。
【0064】
(発光パネルの製造方法)
次に、本実施形態に係る表示パネルの製造方法について説明する。
図10〜図14は、本実施形態に係る表示パネルの製造方法を示す工程断面図である。ここでは、図示の都合上、図6〜図9に示した表示パネル10の各部の断面を、便宜的に隣接するように配置して示した。図中、(VIA−VIA)〜(IXH−IXH)は、各々図6〜図9に示した各断面における工程断面を示す。また、端子パッドとして図9(b)に示した端子構造(第2の例)を適用し、カソードコンタクト部として図8(b)に示した接続構造(第2の例)を適用した場合について説明する。
【0065】
上述した表示パネルの製造方法は、まず、図10(a)〜図11(b)に示すように、ガラス基板等の基板11の一面側に、上述した発光駆動回路DC(図3、図4参照)を構成するトランジスタTr11、Tr12やキャパシタCs、データラインLd、選択ラインLs、電源電圧ラインLaが形成される。
【0066】
具体的には、まず、図10(a)に示すように、透明な基板11の一面側(図面上面側)に設定された各画素PIXの画素形成領域Rpx内のEL素子形成領域Rel(図4、図6参照)に対応する領域ごとに、キャパシタCsの下部電極Ecaが形成される。ここで、下部電極Ecaは、基板11上にITOや亜鉛ドープ酸化インジウム(Indium Zinc Oxide)等の光透過率の高い透明な電極材料膜を堆積後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることにより形成される。ここで、透明な電極材料膜をパターニングする際には、ウェットエッチングが用いられる。
【0067】
次いで、図10(b)に示すように、基板11の一面側に形成された同一のゲートメタル層をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることにより、上記EL素子形成領域Rel以外の表示領域20に、ゲート電極Tr11g、Tr12g及びデータラインLdが同時に形成される。このとき、図4、図5(a)、図7(c)に示すように、ゲート電極Tr12gの一端が下部電極Eca上に延在するようにパターニング形成されて、ゲート電極Tr12gと下部電極Ecaが電気的に接続される。また、このとき、基板11の周辺領域30には、端子パッドPLaの下部パッド層PD1が同時に形成される。なお、図示を省略したが、端子パッドPLsについても同様に下部パッド層が形成される。ここで、ゲート電極Tr11g、Tr12g、データラインLd及び下部パッド層PD1を形成するためのゲートメタル層は、例えばモリブデン単体、又はモリブデン−ニオブ(MoNb)等のモリブデンを含む合金を適用することが好ましい。また、ゲートメタル層をパターニングする際には、ウェットエッチングが用いられる。
【0068】
次いで、図10(c)に示すように、基板11の全域に窒化シリコン等からなるゲート絶縁膜12、真性アモルファスシリコン等からなる半導体膜SMCx、窒化シリコン等からなる絶縁膜を連続的に被覆形成する。その後、窒化シリコン等の絶縁膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることにより、半導体膜SMCx上のゲート電極Tr11g及びTr12gに対応する領域に、チャネル保護層BLを形成する。ここで、窒化シリコン等からなる絶縁膜をパターニングしてチャネル保護層BLを形成する際には、ウェットエッチングが用いられる。
【0069】
次いで、図11(a)に示すように、基板11の全域にn型アモルファスシリコン等からなる不純物層OHMxを被覆形成する。その後、フォトリソグラフィ法を用いて、データラインLd及びトランジスタTr11、Tr12のゲート電極Tr11g、Tr12gの所定の位置の上面が露出するように、不純物層OHMx、半導体膜SMCx及びゲート絶縁膜12を一括してパターニングすることにより、図4に示したコンタクトホールCH3、CH4a、CH1をそれぞれ形成する。このとき同時に、電源電圧ラインLaの下部パッド層PD1(図示を省略するが、選択ラインLs及びデータラインLdの下部パッド層を含む)の所定の位置の上面が露出するコンタクトホールCH7、CH8も形成される。ここで、不純物層OHMx、半導体膜SMCx及びゲート絶縁膜12をパターニングする際には、ドライエッチングが用いられる。
【0070】
次いで、図11(b)に示すように、基板11の一面側にソース、ドレインメタル層SDを形成する。ここで、ソース、ドレインメタル層は、例えばクロム(Cr)やチタン(Ti)等のマイグレーションを低減するための遷移金属層上に、例えばアルミニウム単体やアルミニウム合金等の配線抵抗を低減するための低抵抗金属層を設けた2層構造、あるいは、さらにクロム等の金属層を積層した3層構造等の、積層構造を適用することができる。その後、フォトリソグラフィ法を用いて、ソース、ドレインメタル層SD、上記不純物層OHMx及び半導体膜SMCxを一括してパターニングすることにより、少なくともチャネル保護層BLの両側であって、トランジスタTr11、Tr12の半導体層SMCとなる領域の両端部に、オーミック接続のための不純物層OHMを介してソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12dを形成する。このとき同時に、中間層Lmの下層となるソース、ドレインメタル層SD、カソードラインLcの下層となるソース、ドレインメタル層SD、及び、上部パッド層PD2の下層となるソース、ドレインメタル層SDも形成される。ここで、上述したように、中間層Lmは、トランジスタTr11のゲート電極Tr11gと選択ラインLsとを電気的に接続するための配線層である。また、カソードラインLcは、対向電極16に接続されるコンタクト電極Ecc相互を接続し、対向電極16に所定の基準電圧Vsc(接地電位Vgnd)を供給するための配線層である。また、上部パッド層PD2は、電源電圧ラインLa(選択ラインLsを含む)と下部パッド層PD1とを電気的に接続するための電極層である。ここで、ソース、ドレインメタル層SD、上記不純物層OHMx及び半導体膜SMCxをパターニングする際には、ドライエッチングが用いられる。
【0071】
これにより、図6(a)、図7(a)に示した薄膜トランジスタ構造のトランジスタTr11、Tr12が形成される。このとき、トランジスタTr11のドレイン電極Tr11dは、ゲート絶縁膜12に形成されたコンタクトホールCH3を介して、下層のデータラインLdに電気的に接続される。また、トランジスタTr11のソース電極Tr11sは、ゲート絶縁膜12に形成されたコンタクトホールCH1を介して、下層のトランジスタTr12のゲート電極Tr12gに電気的に接続される。また、中間層Lmに設けられるソース、ドレインメタル層SDは、ゲート絶縁膜12に形成されたコンタクトホールCH4aを介して、下層のゲート電極Tr11gに電気的に接続される。また、カソードラインLcに設けられるソース、ドレインメタル層SDは、周辺領域30の所定の位置に設けられるコンタクト電極Ecc相互を電気的に接続するように配設される。また、電源電圧ラインLaの端子パッドPLa(選択ラインLsの端子パッドPLs、データラインLdの端子パッドを含む)の上部パッド層PD2に設けられるソース、ドレインメタル層SDは、ゲート絶縁膜12に形成されたコンタクトホールCH7、CH8を介して、下層の下部パッド層PD1に電気的に接続される。
【0072】
次いで、基板11の全域にITOや亜鉛ドープ酸化インジウム等の光透過率の高い電極材料膜(透明電極層)を堆積した後、フォトリソグラフィ法を用いて当該電極材料膜をパターニングすることにより、図11(c)に示すように、少なくとも各画素PIXのEL素子形成領域Relのゲート絶縁膜12上に、例えば矩形状の平面パターンを有する画素電極14を形成する。このとき、画素電極14の一部がトランジスタTr12のソース電極Tr12s上にまで延在するようにパターニング形成することにより、ソース電極Tr12sと画素電極14が直接接続される。また、本実施形態においては、画素電極14を形成する透明電極層ITOが、上述したソース、ドレインメタル層SDからなる電極(ソース電極Tr11s、Tr12s、ドレイン電極Tr11d、Tr12d)や配線層(中間層Lm、カソードラインLc、上部パッド層PD2)上にも整合するように形成される。ここで、透明電極層ITOをパターニングする際には、ウェットエッチングが用いられる。
【0073】
これにより、各画素PIXのEL素子形成領域Relにおいては、ゲート絶縁膜12を介して、画素電極14と下部電極Ecaが対向して配置されたキャパシタCsが形成される。すなわち、画素電極14は、有機EL素子OELのアノード電極であるとともに、下部電極Ecaに対向する上部電極Ecbとして兼用され、また、ゲート絶縁膜12は、誘電体層として兼用される。また、ソース、ドレインメタル層SDを下層とし、透明電極層ITOを上層した積層構造を有するソース電極Tr11s、Tr12s及びドレイン電極Tr11d、Tr12d、中間層Lm、カソードラインLc、上部パッド層PD2が形成される。
【0074】
このように、キャパシタCsの上部電極Ecb(画素電極14)及び下部電極Ecaが透明な電極材料により形成されていることにより、ボトムエミッション型の発光構造を有する表示パネルであっても、高い開口率を実現することができる。
【0075】
次いで、図12(a)に示すように、上述した画素電極14、トランジスタTr11、Tr12、中間層Lm、カソードラインLc及び上部パッド層PD2を含む基板11の全域に、例えば化学気相成長(CVD)法を用いて、窒化シリコン等の無機の絶縁性材料からなり、層間絶縁膜又は保護絶縁膜として機能する絶縁膜13を形成する。ITOと窒化シリコンの密着性が良いことは知られているので、本実施形態においては、画素電極14を形成する透明電極層ITOを、上述したソース、ドレインメタル層SDからなる電極や配線層上にも形成することで、ITOと窒化シリコンからなる絶縁膜との接触面積を大きくし、膜剥がれ等を起きにくくしている。その後、ドライエッチング法を用いて、絶縁膜13をパターニングして、各画素PIXの画素電極14の上面が露出する開口部、並びに、中間層Lm、ドレイン電極Tr12d、カソードラインLc及び上部パッド層PD2の所定の位置の上面が露出する各コンタクトホールCH4b、CH5、CH6a、CH6b、CH9、開口部CH10xを形成する。
【0076】
次いで、図12(b)に示すように、例えばスパッタリング法を用いて、基板11の一面側にアルミニウム合金等からなる配線層を形成した後、フォトリソグラフィ法を用いて、当該配線層をパターニングすることにより、所定の配線パターンを有し、選択ラインLsとなる配線層Lsx、及び、電源電圧ラインLaとなる配線層Laxを形成する。このとき同時に、周辺領域30に配置されるコンタクト電極Eccとなる電極層Ecxも形成される。ここで、アルミニウム合金等からなる配線層をパターニングする際には、ウェットエッチングが用いられる。
【0077】
このとき、電源電圧ラインLaとなる配線層Laxは、表示領域20においては、絶縁膜13に形成されたコンタクトホールCH5を介して、下層のドレイン電極Tr12dに電気的に接続される。また、配線層Laxは、周辺領域30においては、絶縁膜13に形成されたコンタクトホールCH9を介して、端子パッドPLaの上部パッド層PD2に電気的に接続される。また、選択ラインLsとなる配線層Lsxは、表示領域20においては、絶縁膜13に形成されたコンタクトホールCH4bを介して、下層の中間層Lmに電気的に接続される。また、配線層Lsxは、周辺領域30においては、上記配線層Laxと同様に、絶縁膜13に形成されたコンタクトホールを介して、端子パッドPLsの上部パッド層PD2に電気的に接続される。また、コンタクト電極となる電極層Ecxは、絶縁膜13に形成されたコンタクトホールCH6aを介して、下層のカソードラインLcに電気的に接続される。
【0078】
次いで、図12(c)に示すように、アルミニウム合金等からなる配線層Lax、Lsx、及び、電極層Ecxを陽極酸化して、各配線層Lax、Lsx、及び、電極層Ecxの表層に陽極酸化膜からなる絶縁膜Faoを形成する。これにより、アルミニウム合金等からなる配線層Lax、Lsxのうち、陽極酸化されない配線層内部が電源電圧ラインLa及び選択ラインLsとなり、その上面及び側面が陽極酸化膜からなる絶縁膜Faoにより被覆される。また、電極層Ecxのうち、陽極酸化されない電極層内部がコンタクト電極Eccとなり、その上面及び側面が陽極酸化膜からなる絶縁膜Faoにより被覆される。ここで、基板11上に形成されたアルミニウム合金等からなる配線層や電極のうち、表層を絶縁膜化しない領域の配線層や電極は、予めレジスト等により被覆して露出しない状態にし、陽極酸化を行う。配線層や電極の表層を、すべて絶縁膜化する場合には、レジスト等により被覆する工程は省略することができる。具体的には、本実施形態の製造方法に示すように、図8(b)に示したカソードコンタクト部の接続構造、及び、図9(b)に示した端子パッドの端子構造を適用した表示パネル10においては、アルミニウム合金等からなる配線層Lax、Lsx、及び、電極層Ecxをレジスト等で被覆する工程を省くことができる。
【0079】
また、陽極酸化処理の具体的な条件としては、次のような例を良好に適用することができる。
(1)陽極酸化使用電解液(次のいずれか)
a)硼酸アンモニウム水溶液
b)希硫酸
c)シュウ酸
d)エチレングリコールと水の混合液であり、その容積比が7:3〜9:1程度であり、さらに酒石酸等の電解質
e)酒石酸アンモニウムをエチレングリコールで希釈してpH7.0前後に調整した電解液
f)硫酸水溶液
g)酒石酸アンモニウム
本実施例においては、a)2.5%硼酸アンモニウム水溶液を用いた。
【0080】
(2)電極材料(陰極)
a)白金(Pt)
(3)電極形状
a)メッシュ状
b)平板
(4)処理電圧/処理時間
電流密度 4.5mA/cm2(3〜15mA/cm2の範囲),化成電流 3.4A,化成電圧200V,最終化成電流 0.06A(この値に到達してから60sec熟成時間を設ける)
【0081】
上記の条件で陽極酸化処理を行う場合において、例えば膜厚400nmのアルミニウム合金からなる電源電圧ラインLaや選択ラインLsの表層に、絶縁性が十分な陽極酸化膜を形成するためには、概ね550nm以上の膜厚のアルミニウム合金からなる配線層Lax、Lsxを成膜する必要がある。すなわち、膜厚550nmのアルミニウム合金のうち、膜厚150nm分を陽極酸化により絶縁膜化する必要がある。
【0082】
次いで、基板11上に、例えばポリイミド系やアクリル系等の感光性の有機樹脂材料を塗布して、例えば1〜5μmの膜厚を有する樹脂層を形成した後、当該樹脂層をパターニングすることにより、図1、図13(a)に示すように隔壁層17を形成する。ここで、隔壁層17は、少なくとも表示領域20において基板11の一面側に突出するとともに、各画素PIXの画素電極14が矩形状に露出する開口部を有している。
【0083】
これにより、各画素形成領域Rpxにおいて、隔壁層17に形成された開口部、すなわち側壁17eにより囲まれた領域が各画素PIXのEL素子形成領域Relとして画定される。ここで、隔壁層17を形成する感光性の有機樹脂材料としては、例えば東レ株式会社製のポリイミドコーティング材「フォトニースPW−1030」や「フォトニースDL−1000」等を良好に適用することができる。
【0084】
次いで、基板11を純水で洗浄した後、例えば酸素プラズマ処理又はUVオゾン処理等を施すことにより、隔壁層17により画定された各EL素子形成領域Relに露出する画素電極14の表面を、後述する正孔輸送材料や電子輸送性発光材料の有機化合物含有液に対して親液化する処理を施す。
【0085】
このように、隔壁層17により有機化合物含有液を塗布する領域を画定し、加えて、各画素PIX(有機EL素子OEL)の画素電極14表面を親液化することにより、後述するように、有機化合物含有液をノズルプリンティング法やインクジェット法を用いて塗布し、有機EL層15の発光層(電子輸送性発光層15b)を形成する場合であっても、表示パネル10の行方向に隣接して配置される、異なる色の画素PIXのEL素子形成領域Relへの有機化合物含有液の漏出や乗り越えを抑制することができる。したがって、カラー表示に対応した表示パネル10を製造する場合であっても、隣接画素相互の混色を防止して、赤(R)、緑(G)、青(B)色の発光材料の塗り分けを良好に行うことができる。
【0086】
なお、本実施形態においては、画素電極14表面を親液化する工程についてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上述した画素電極14表面の親液化処理の後に、少なくとも隔壁層17表面を撥液化する処理を施すものであってもよい。これによれば、隔壁層17の表面が撥液性を有するとともに、各EL素子形成領域Relに露出する画素電極14の表面が親液性を有する基板表面を実現することができる。したがって、基板11の表面に塗布される有機化合物含有液が隔壁層17の側壁17eに迫り上がる現象をさらに抑制することができるとともに、画素電極14の表面に十分馴染んで略均一に拡がるので、画素電極14上の全域に略均一な膜厚を有する有機EL層15(正孔輸送層15a及び電子輸送性発光層15b)を形成することができる。
【0087】
また、本実施形態において使用する「撥液性」とは、後述する正孔輸送層となる正孔輸送材料を含有する有機化合物含有液や、電子輸送性発光層となる電子輸送性発光材料を含有する有機化合物含有液、もしくは、これらの溶液に用いる有機溶媒を、絶縁性基板上等に滴下して、接触角の測定を行った場合に、当該接触角が概ね50°以上になる状態と規定する。また、「撥液性」に対峙する「親液性」とは、本実施例においては、上記接触角が概ね40°以下、好ましくは概ね10°以下になる状態と規定する。
【0088】
次いで、図13(b)に示すように、表示領域20の各画素PIXのEL素子形成領域Relに露出する画素電極14上に、正孔輸送層(担体輸送層)15a及び電子輸送性発光層(担体輸送層)15bが積層形成された有機EL層(発光機能層)15を形成する。
【0089】
まず、各画素PIXのEL素子形成領域Relに対して、連続した溶液(液流)を吐出するノズルプリンティング(又はノズルコート)法、又は、互いに分離した不連続の複数の液滴を所定位置に吐出するインクジェット法等を用いて、正孔輸送材料の溶液又は分散液を塗布した後、加熱乾燥させて画素電極14上に正孔輸送層15aを形成する。
【0090】
具体的には、有機高分子系の正孔輸送材料(担体輸送性材料)を含む有機化合物含有液(有機溶液)として、例えばポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水溶液(PEDOT/PSS;導電性ポリマーであるポリエチレンジオキシチオフェンPEDOTと、ドーパントであるポリスチレンスルホン酸PSSを水系溶媒に分散させた分散液)を、EL素子形成領域Relに塗布する。その後、基板11が載置されているステージを100℃以上の温度条件で加熱して乾燥処理を行って残留溶媒を除去することにより、各EL素子形成領域Relに露出する画素電極14上にのみ有機高分子系の正孔輸送材料を定着させて、正孔輸送層15aを形成する。
【0091】
ここで、各EL素子形成領域Relに露出する画素電極14の上面は、上述した親液化処理により正孔輸送材料を含む有機化合物含有液に対して親液性を有しているので、塗布された有機化合物含有液は、画素電極14上に十分馴染んで広がる。一方、隔壁層17は、塗布される有機化合物含有液の液面高さに対して十分高く形成され、かつ、感光性の有機樹脂材料が当該有機化合物含有液に対して一般に撥液性を有しているので、隣接する画素PIXのEL素子形成領域Relへの有機化合物含有液の漏出や乗り越えを防止することができる。
【0092】
次いで、各EL素子形成領域Relに形成された正孔輸送層15a上に、ノズルプリンティング法又はインクジェット法等を用いて、電子輸送性発光材料の溶液又は分散液を塗布した後、加熱乾燥させて電子輸送性発光層(担体輸送層)15bを形成する。
【0093】
具体的には、有機高分子系の電子輸送性発光材料(担体輸送性材料)を含む有機化合物含有液(有機溶液)として、例えばポリパラフェニレンビニレン系やポリフルオレン系等の共役二重結合ポリマーを含む赤(R)、緑(G)、青(B)色の発光材料を、適宜水系溶媒或いはテトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン、キシレン等の有機溶媒に溶解または分散した0.1wt%〜5wt%の溶液を、上記正孔輸送層15a上に塗布する。その後、窒素雰囲気中で上記ステージを加熱して乾燥処理を行って残留溶媒を除去することにより、正孔輸送層15a上に有機高分子系の電子輸送性発光材料を定着させて、電子輸送性発光層15bを形成する。
【0094】
ここで、EL素子形成領域Rel内に形成された上記正孔輸送層15aの表面は、電子輸送性発光材料を含む有機化合物含有液に対して親液性を有しているので、各EL素子形成領域Relに塗布された有機化合物含有液は、正孔輸送層15a上に十分馴染んで広がる。一方、隔壁層17は、塗布される有機化合物含有液の高さに対して十分高く設定され、かつ、感光性の有機樹脂材料が当該有機化合物含有液に対して一般に撥液性を有しているので、隣接する画素PIXのEL素子形成領域Relへの有機化合物含有液の漏出や乗り越えを防止することができる。
【0095】
次いで、図14(a)に示すように、上記隔壁層17及び有機EL層15(正孔輸送層15a及び電子輸送性発光層15b)が形成された基板11の少なくとも表示領域20に、光反射特性を有し、各画素PIXの有機EL層15を介して画素電極14に対向する、共通の対向電極(カソード電極)16を形成する。このとき、対向電極16は、表示領域20のみならず、周辺領域30にも一部が延在するように形成されることにより、コンタクト電極Eccに直接接続されるとともに、絶縁膜13に形成されたコンタクトホールCH6bを介して、下層のカソードラインLcに直接接続される。
【0096】
ここで、対向電極16としては、例えば真空蒸着法やスパッタリング法を用いて、1〜10nmの膜厚のカルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、インジウム(In)等の仕事関数の低い電子注入層(カソード電極)と、100nm以上の膜厚のアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)のいずれかの単体、又は、これらの少なくとも一種を含む合金からなる高仕事関数の薄膜(給電電極)と、を積層した電極構造を適用することができる。ここで、対向電極16を構成する電極層をパターニングする際には、ウェットエッチングが用いられる。なお、このような電極構造の場合、上記対向電極16のうち、上記高仕事関数の薄膜のみがコンタクト電極Ecc、及び、コンタクトホールCH6bを介してカソードラインLcに接続されていればよい。
【0097】
次いで、上記対向電極16を形成した後、図14(b)に示すように、基板11の一面側全域にシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等からなる封止層18をCVD法等を用いて形成する。その後、基板11の周辺領域に形成された端子パッドPLa、PLs(図示を省略したデータラインLdの端子パッドを含む)の上面が露出するように封止層18に開口部CH10を形成する。ここで、開口部CH10は、例えば上述した開口部CH10x(図12(a)参照)に整合するように形成される。これにより、図6〜図9に示したような断面構造を有する表示パネル10が完成する。なお、上記封止層18に加えて、又は、封止層18に替えて、メタルキャップ(封止蓋)やガラス等の封止基板を基板11に対向して接合するものであってもよい。
【0098】
このように、本実施形態に係る表示パネル(発光パネル)及びその製造方法においては、基板11上に形成されるトランジスタTr11、Tr12に接続される配線層のうち、少なくとも最上層に形成される配線層(電源電圧ラインLa、選択ラインLs)がアルミニウム合金材料からなり、かつ、その表層が陽極酸化膜からなる絶縁膜Faoにより被覆されていることを特徴とする。
【0099】
(作用効果の検証)
次に、上述した特徴を有する薄膜トランジスタアレイ基板を適用した表示パネル及びその製造方法に特有の作用効果について詳しく説明する。
【0100】
図15は、上述した実施形態の比較対象となる表示パネルの一例を示す要部断面図である。ここでは、上述した実施形態との比較を容易にするために、図6〜図9と同等の断面について、(VIA−VIA)〜(IXH−IXH)の表記を用いた。また、図16、図17は、比較対象となる表示パネルの製造方法を示す工程断面図である。ここでは、上述した実施形態との比較を容易にするために、図10〜図14と同様に、各部の断面を便宜的に隣接するように配置して示した。図中、(VIA−VIA)〜(IXH−IXH)は、各々図15に示した各断面における工程断面を示す。なお、上述した実施形態と同等の構成については、同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0101】
比較対象となる表示パネルは、図15(a)、(b)に示すように、基板11上に形成されるトランジスタTr11、Tr12に接続される配線層のうち、最上層に形成される配線層(電源電圧ラインLa、選択ラインLs)を被覆する絶縁膜が、陽極酸化膜ではなく、窒化シリコン等の無機の絶縁性材料からなる点が、上述した実施形態とは異なっている。
【0102】
すなわち、表示パネルの表示領域においては、絶縁膜13aに設けられたコンタクトホールを介して、トランジスタTr11のゲート電極Tr11gに電気的に接続された選択ラインLsや、トランジスタTr12のドレイン電極に電気的に接続された電源電圧ラインLaは、窒化シリコン膜等からなる絶縁膜13bにより被覆されている。ここで、選択ラインLsや電源電圧ラインLaの下層に設けられる絶縁膜13aは、上述した実施形態における絶縁膜13に対応する。
【0103】
一方、表示パネルの周辺領域においては、絶縁膜13aに設けられたコンタクトホールを介して、カソードラインLcに電気的に接続されたコンタクト電極Eccは、当該コンタクト電極Eccを被覆する絶縁膜13bに設けられたコンタクトホールを介して、有機EL素子OELの対向電極16に電気的に接続されている。また、絶縁膜13aに設けられたコンタクトホールを介して、端子パッドPLs、PLaの上部パッド層PD2に電気的に接続された選択ラインLsや電源電圧ラインLaは、絶縁膜13bにより被覆されている。
【0104】
このようなパネル構造を有する表示パネルの製造方法は、上述した実施形態と同様に、まず、図16(a)に示すように、基板11の一面側に、発光駆動回路DCを構成するトランジスタTr11、Tr12、キャパシタCs、データラインLd、中間層Lm、カソードラインLc、端子パッドPLaの上部パッド部PD2及び下部パッド部PD1を形成する。
【0105】
次いで、図16(b)に示すように、CVD法を用いて、基板11の全域に窒化シリコン等からなる絶縁膜13aを形成した後、ドライエッチング法を用いて、中間層Lm、ドレイン電極Tr12d、カソードラインLc及び上部パッド層PD2の所定の位置の上面が露出するコンタクトホール及び開口部を形成する。その後、スパッタリング法を用いて、基板11上にアルミニウム合金等からなる配線層を形成した後、ウェットエッチング法を用いてパターニングすることにより、所定の配線パターンを有する選択ラインLs及び電源電圧ラインLaを形成する。このとき同時に、周辺領域30にコンタクト電極Eccを形成する。
【0106】
このとき、電源電圧ラインLaは、表示領域20において、絶縁膜13aに形成されたコンタクトホールを介して、下層のドレイン電極Tr12dに電気的に接続される。また、電源電圧ラインLaは、周辺領域30においては、絶縁膜13aに形成されたコンタクトホールを介して、端子パッドPLaの上部パッド層PD2に電気的に接続される。また、選択ラインLsは、表示領域20において、絶縁膜13aに形成されたコンタクトホールを介して、下層の中間層Lmに電気的に接続される。また、選択ラインLsは、周辺領域30においては、上記電源電圧ラインLaと同様に、絶縁膜13aに形成されたコンタクトホールを介して、端子パッドPLsの上部パッド層PD2に電気的に接続される(図示を省略)。また、コンタクト電極Eccは、絶縁膜13aに形成されたコンタクトホールを介して、下層のカソードラインLcに電気的に接続される。
【0107】
次いで、図16(c)に示すように、CVD法を用いて、基板11の全域に窒化シリコン等からなる絶縁膜13bを被覆形成した後、ドライエッチング法を用いて、画素電極14、コンタクト電極Ecc及び上部パッド層PD2の所定の位置の上面が露出するコンタクトホール及び開口部を形成する。ここで、EL素子形成領域Rel、端子パッドPLa及びPLsの形成領域においては、単一のエッチング工程で絶縁膜13b及び13aを連続的にエッチングすることにより、画素電極14及び上部パッド層PD2の上面が露出するコンタクトホール及び開口部が形成される。一方、コンタクト電極Eccの形成領域においては、絶縁膜13bをエッチングすることにより、コンタクト電極Eccの上面が露出するコンタクトホールが形成される。
【0108】
次いで、図17(a)に示すように、基板11上の少なくとも表示領域において、感光性の有機樹脂材料からなり、各画素PIXの画素電極14が露出する開口部を有する隔壁層17を形成する。これにより、各画素PIXのEL素子形成領域Relが画定される。
【0109】
次いで、各EL素子形成領域Relに露出する画素電極14の表面を親液化処理した後、図17(b)に示すように、各画素電極14上に正孔輸送層15a及び電子輸送性発光層15bからなる有機EL層15を形成する。次いで、基板11の少なくとも表示領域20に、光反射特性を有する対向電極16を形成する。ここで、対向電極16は、各画素PIXの有機EL層15を介して各画素電極14に共通に対向するように、単一の電極層(べた電極)により形成される。このとき、対向電極16は、周辺領域30に配置され、絶縁膜13bに設けられたコンタクトホール内に露出するコンタクト電極Eccに接続される。これにより、対向電極16はコンタクト電極Eccを介してカソードラインLcに電気的に接続される。
【0110】
このようなパネル構造を有する表示パネルにおいては、トランジスタTr11、Tr12を含む発光駆動回路DCの形成後、絶縁膜13a、13bや、選択ラインLs、電源電圧ラインLa等の配線層の形成のため、数回の成膜工程及びパターニング工程を繰り返す必要がある。一般に、成膜、パターニング工程においては、スパッタリング時やレジスト洗浄時、エッチング時等にパーティクル(微小な異物)が発生し、基板11上に残留することが知られている。特に、絶縁膜13a、13bを成膜する際に多用されるCVD法や、ドライエッチング工程においては、パーティクルが発生しやすい。このようなパーティクルが基板上に存在すると、成膜時に膜中に取り込まれて粒子化し、有機EL素子OEL(発光素子)からの発光を阻害して、点欠陥や輝度低下等の画素不良を招き、製造歩留まりを低下させるという問題を有している。そして、このようなパーティクルの問題は、特に、表示パネルの画質の高精細化や大画面化を実現しようとする場合に、その影響が相対的に大きくなる。
【0111】
これに対して、上述した実施形態に係る表示パネル10においては、選択ラインLs、電源電圧ラインLa等の配線層の表層を、陽極酸化膜からなる絶縁膜Faoにより被覆したパネル構造を有している。これにより、本実施形態に係る製造方法においては、選択ラインLsや電源電圧ラインLa等の配線層の形成後に陽極酸化処理を行うことにより、当該配線層の表層を絶縁膜化することができるので、比較対象に示した絶縁膜13bを成膜、パターニングする工程を省くことができる。すなわち、本実施形態に係る製造方法においては、絶縁膜13bの成膜時に用いられるCVD工程や、パターニング時に用いられるドライエッチング工程の回数を削減することができるので、パーティクルの発生を抑制して、表示パネル(薄膜トランジスタアレイ基板)の不良発生率を低減し、製造歩留まりを改善することができる。
【0112】
さらに、選択ラインLsや電源電圧ラインLa等の配線層として、アルミニウム単体、又は、アルミニウムを含む合金材料を適用することにより、良好な絶縁特性を有する陽極酸化膜(絶縁膜Fao)を表層に形成することができる。加えて、配線層としてアルミニウム単体、又は、アルミニウムを含む合金材料を適用することにより、配線抵抗を十分に低減することができる。したがって、表示パネル10を高精細化や大画面化する場合であっても、信号遅延や電圧低下を抑制して、画像データに応じた適切な輝度階調で画素PIXを発光動作させることができ、画質の劣化を抑制することができる。
【0113】
なお、上述した実施形態においては、画素PIXに設けられる発光駆動回路DCとして、画像データに応じて各画素PIX(具体的には、発光駆動回路DCのトランジスタTr12のゲート端子;接点N11)に書き込む階調電圧Vdataの電圧値を調整(指定)することにより、有機EL素子OELに流す発光駆動電流の電流値を制御して、所望の輝度階調で発光動作させる電圧指定型の階調制御方式の回路構成を示した(図3参照)。本発明は、これに限定されるものではなく、画像データに応じて各画素PIXに書き込む階調電流の電流値を調整(指定)することにより、有機EL素子OELに流す発光駆動電流の電流値を制御して、所望の輝度階調で発光動作させる電流指定型の階調制御方式の回路構成を有するものであってもよい。以下にその一例を示す。
【0114】
(画素の他の例)
図18は、本実施形態に係る表示パネルに配列される画素の他の回路構成例を示す等価回路図である。また、図19は、本実施形態に適用可能な画素の他の例を示す平面レイアウト図である。ここで、上述した実施形態に示した画素(図3参照)と同一又は同等の構成については、同等の符号を付して示し、その説明を簡略化する。
【0115】
画素PIXの他の回路構成は、図18に示すように、3個のトランジスタを有する発光駆動回路DCと有機EL素子OELとを備えている。発光駆動回路DCは、具体的には、トランジスタTr21〜Tr23と、キャパシタCsとを備えている。トランジスタTr21は、ゲート端子が接点N24を介して選択ラインLsに接続され、ドレイン端子が接点N25を介して電源電圧ラインLaに接続され、ソース端子が接点N21に接続されている。トランジスタTr22は、ゲート端子が接点N24を介して選択ラインLsに接続され、ソース端子が接点N23を介してデータラインLdに接続され、ドレイン端子が接点N22に接続されている。トランジスタ(駆動トランジスタ)Tr23は、ゲート端子が接点N21に接続され、ドレイン端子が接点N25を介して電源電圧ラインLaに接続され、ソース端子が接点N22に接続されている。キャパシタCsは、トランジスタTr23のゲート端子(接点N21)及びソース端子(接点N22)間に接続されている。
【0116】
また、有機EL素子OELは、上述した実施形態に示した画素(図3参照)と同様に、アノード(アノード電極となる画素電極14;後述する図19参照)が上記発光駆動回路DCの接点N22に接続され、カソード(カソード電極となる対向電極)が所定の低電位電位電源(基準電圧Vsc;例えば接地電位Vgnd)に接続される。
【0117】
そして、このような回路構成を有する画素PIXにおける駆動制御動作は、所定の処理サイクル期間内に、画像データに応じた電圧成分を保持させる書込動作(選択期間)と、該書込動作終了後に、有機EL素子OELを画像データに応じた輝度階調で発光動作させる発光動作(非選択期間)と、を実行するように制御される。
【0118】
まず、画素PIXへの書込動作(選択期間)においては、選択ラインLsに選択レベル(オンレベル;例えばハイレベル)の選択電圧Vselを印加することにより、画素PIXを選択状態に設定する。そして、電源電圧ラインLaにローレベル(基準電圧Vsc以下の電圧レベル;例えば負電圧)の電源電圧Vsaを印加した状態で、データラインLdに画像データに応じた負の電流値に設定された階調電流Idataを供給する。
【0119】
これにより、画素PIXからデータラインLd方向に階調電流Idataが引き抜かれるように流れ、ローレベルの電源電圧Vsaよりもさらに低電位の電圧がトランジスタTr23のソース端子(接点N22)に印加される。
【0120】
したがって、接点N21及びN22間(すなわち、トランジスタTr23のゲート・ソース間)に電位差が生じることによりトランジスタTr23がオン動作して、電源電圧ラインLaからトランジスタTr23、接点N22、トランジスタTr22、接点N23を介してデータラインLd方向に、階調電流Idataに対応した書込電流が流れる。
【0121】
このとき、キャパシタCsには、接点N13及びN14間に生じた電位差に対応する電荷が蓄積され、電圧成分として保持される。また、電源電圧ラインLaには、基準電圧Vsc以下の電圧レベルの電源電圧Vsaが印加され、さらに、書込電流が画素PIXからデータラインLd方向に引き抜くように設定されている。これにより、有機EL素子OELのアノード(接点N22)に印加される電位は、カソードの電位(基準電圧Vsc)よりも低くなるため、有機EL素子OELには電流が流れず発光動作は行われない(非発光動作)。
【0122】
次いで、書込動作終了後の発光動作(非選択期間)においては、選択ラインLsに非選択レベル(ローレベル)の選択電圧Vselを印加することにより、画素PIXを非選択状態に設定する。このとき、キャパシタCsには、上述した書込動作において蓄積された電荷が保持されるので、トランジスタTr23はオン状態を維持する。そして、電源電圧ラインLaにハイレベル(基準電圧Vscよりも高い電圧レベル)の電源電圧Vsaを印加することにより、電源電圧ラインLaからトランジスタTr23、接点N22を介して、有機EL素子OELに所定の発光駆動電流が流れる。
【0123】
このとき、キャパシタCsにより保持される電圧成分は、トランジスタTr23において階調電流Idataに対応する書込電流を流す場合の電位差に相当するので、有機EL素子OELに流れる発光駆動電流は、当該書込電流と略同等の電流値となり、有機EL素子OELは、画像データに応じた輝度階調で発光動作する。
【0124】
(画素のデバイス構造)
図18に示した回路構成を有する画素は、例えば図19に示すようなデバイス構造(平面レイアウト)により実現することができる。図19において、トランジスタTr21のソース電極Tr21sとトランジスタTr23のゲート電極Tr23gとキャパシタCsの下部電極Ecaとを電気的に接続するコンタクトホールCH21は、図18に示した等価回路の接点N21に対応する。また、トランジスタTr23のソース電極Tr23sとキャパシタCsの上部電極Ecbとなる画素電極14の接続点は、接点N22に対応する。また、トランジスタTr22のソース電極Tr22sとデータラインLdとを電気的に接続するコンタクトホールCH23は、接点N23に対応する。また、トランジスタTr21のゲート電極Tr21gとトランジスタTr22のゲート電極Tr22gと中間層Lmとを電気的に接続するコンタクトホールCH24a、及び、中間層Lmと選択ラインLsとを電気的に接続するコンタクトホールCH24bは、接点N24に対応する。また、トランジスタTr21のドレイン電極Tr21dとトランジスタTr23のドレイン電極Tr23dと電源電圧ラインLaとを電気的に接続するコンタクトホールCH25は、接点N25に対応する。
【0125】
そして、これらの接点N21〜N25を含む画素PIXが配列された表示パネルは、上述した実施形態において図6〜図9に示した要部断面図の構造をほぼそのまま適用することができる。したがって、図18、図19に示した他の例に係る画素PIX(発光駆動回路DC及び有機EL素子OEL)を備えた表示パネル(薄膜トランジスタアレイ基板)においても、上述した実施形態と同様に、基板11上に形成されるトランジスタTr21〜Tr23に接続される配線層のうち、少なくとも最上層に形成される配線層(電源電圧ラインLa、選択ラインLs)の表層が陽極酸化膜からなる絶縁膜により被覆されたパネル構造を適用することができる。したがって、絶縁膜の成膜、パターニング工程を削減することができるので、パーティクルの発生を抑制して、表示パネル(薄膜トランジスタアレイ基板)の不良発生率を低減し、製造歩留まりを改善することができる。
【0126】
なお、図3及び図18に示した画素PIXは、本発明に適用可能な回路構成の一例を示したものに過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。また、上述した画素PIXのデバイス構造(図6〜図9参照)においては、ソース、ドレインメタル層SDにより形成されたソース、ドレイン電極や配線層上に、画素電極14を構成する透明電極層ITOが積層された電極、配線構造を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、透明電極層ITOが発光駆動回路DCの駆動トランジスタであるトランジスタTr12又はTr23のソース電極にのみ電気的に接続され、他の電極や配線層上に形成されていない構造を有するものであってもよい。
【0127】
また、上述した実施形態においては、有機EL素子OELの素子構造として、ボトムエミッション型の発光構造を有する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、トップエミッション型の発光構造を有するものであってもよい。また、上述した実施形態においては、有機EL層15が正孔輸送層15a及び電子輸送性発光層15bからなる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明に適用される有機EL素子OELは、有機EL層15が例えば正孔輸送兼電子輸送性発光層のみからなる素子構造を有するものでもよく、あるいは、正孔輸送性発光層及び電子輸送層からなるものでもよく、また、これらの層の間に適宜電荷輸送層が介在するものでもよく、さらに、その他の電荷輸送層の組合せを有するものであってもよい。また、上述した各実施例においては、画素電極14をアノード電極とし、対向電極16をカソード電極としたが、これに限らず画素電極14をカソード電極とし、対向電極16をアノード電極としてもよい。このとき、有機EL層15は、画素電極14に接する担体輸送層が電子輸送性の層であればよい。
【0128】
さらに、上述した実施形態においては、発光駆動回路DCにより発光駆動される発光素子として有機EL素子OELを適用した場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電流制御型の発光素子であれば、例えば発光ダイオード等の他の発光素子であってもよい。
【0129】
(発光パネルの適用例)
次に、上述した実施形態に係る表示パネル(薄膜トランジスタアレイを備えた発光パネル)を適用した電子機器について図面を参照して説明する。上述した実施形態に示した表示パネル10は、例えばデジタルカメラやモバイル型のパーソナルコンピュータ、携帯電話等、種々の電子機器に適用できるものである。
【0130】
図20は、本実施形態の適用例に係るデジタルカメラの構成を示す斜視図であり、図21は、本実施形態の適用例に係るモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図であり、図22は、本実施形態の適用例に係る携帯電話の構成を示す図である。
【0131】
図20において、デジタルカメラ200は、概略、本体部201と、レンズ部202と、操作部203と、上述した実施形態に示した表示パネル10を備える表示部204と、シャッターボタン205とを備えている。これによれば、表示部204において、点欠陥や輝度低下等の画素不良の発生が抑制された表示パネル10を適用することができ、画像データに応じた適切な輝度階調で画素を発光動作させることができるので、良好かつ均質な画質を実現することができる。
【0132】
また、図21において、パーソナルコンピュータ210は、概略、本体部211と、キーボード212と、上述した実施形態に示した表示パネル10を備える表示部213とを備えている。この場合においても、表示部213において、点欠陥や輝度低下等の画素不良の発生が抑制された表示パネル10を適用することができ、画像データに応じた適切な輝度階調で画素を発光動作させることができるので、良好かつ均質な画質を実現することができる。
【0133】
また、図22において、携帯電話220は、概略、操作部221と、受話口222と、送話口223と、上述した実施形態に示した表示パネル10を備える表示部224とを備えている。この場合においても、表示部224において、点欠陥や輝度低下等の画素不良の発生が抑制された表示パネル10を適用することができ、画像データに応じた適切な輝度階調で画素を発光動作させることができるので、良好かつ均質な画質を実現することができる。
【0134】
なお、上述した実施形態においては、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ基板を、有機EL表示パネル(発光パネル)に適用した場合について詳しく説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、例えば有機EL素子OELを有する複数の画素PIXが一方向に配列された発光素子アレイを備え、感光体ドラムに画像データに応じて発光素子アレイから出射した光を照射して露光する露光装置に適用するものであってもよい。また、本発明は、発光パネルに限定されるものではなく、基板上に駆動制御用の薄膜トランジスタが配列された薄膜トランジスタアレイ基板を適用するものであれば、例えば液晶表示装置や2次元センサ等に適用することもできる。
【符号の説明】
【0135】
10 表示パネル
11 基板
12 ゲート絶縁膜
13 絶縁膜
14 画素電極
15 有機EL層
16 対向電極
17 隔壁層
20 表示領域
30 周辺領域
PIX 画素
Rpx 画素形成領域
Rel EL素子形成領域
OEL 有機EL素子
Tr11、Tr12 トランジスタ
Cs キャパシタ
Ls 選択ライン
La 電源電圧ライン
Ld データライン
Fao 絶縁膜
Ecc コンタクト電極
PLs、PLa 端子パッド
CH1〜CH9 コンタクトホール
CH10 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、薄膜トランジスタが形成された薄膜トランジスタアレイ基板において、
前記基板上に配設され、前記薄膜トランジスタを含む回路を駆動するための電圧が印加される配線表面の少なくとも一部が、陽極酸化膜で形成されていることを特徴とする薄膜トランジスタアレイ基板。
【請求項2】
前記配線は、アルミニウム、又は、アルミニウムを含む合金材料からなることを特徴とする請求項1記載の薄膜トランジスタアレイ基板。
【請求項3】
前記配線は、ウェットエッチング法によりパターニングされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜トランジスタアレイ基板。
【請求項4】
前記配線は、前記回路を駆動するための電源電圧が印加される電源電圧ラインであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の薄膜トランジスタアレイ基板。
【請求項5】
前記回路は、前記基板上に規則的に配列された画素であり、
前記薄膜トランジスタは、前記電源電圧ラインを介して印加される前記電源電圧に基づいて、前記画素を駆動する駆動トランジスタであることを特徴とする請求項4記載の薄膜トランジスタアレイ基板。
【請求項6】
基板上に、少なくとも発光素子、及び、該発光素子を駆動するための薄膜トランジスタを有する複数の画素が配設された発光パネルにおいて、
前記薄膜トランジスタにより前記発光素子を駆動するための電圧が印加される配線表面の少なくとも一部が、陽極酸化膜で形成されていることを特徴とする発光パネル。
【請求項7】
前記発光素子は、電流制御型の発光素子であることを特徴とする請求項6に記載の発光パネル。
【請求項8】
前記請求項6又は7に記載の前記発光パネルが実装されてなることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
基板上に、少なくとも発光素子、及び、該発光素子を駆動するための薄膜トランジスタを有する複数の画素が配設された発光パネルの製造方法において、
前記発光素子を駆動するための電圧が印加される配線を形成する工程と、
前記配線表面の少なくとも一部を陽極酸化処理により形成する工程と、
を含むことを特徴とする発光パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−75756(P2011−75756A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226156(P2009−226156)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】