説明

衝突予測装置

【課題】衝突予測精度の向上を図った衝突予測装置を提供すること。
【解決手段】他車両104の複数位置の物標点P1〜P5を各々検出し、各物標点P1〜P5について予測した衝突部位に基づいて自車両102と他車両104との衝突態様を予測する。これにより、複数位置の物標点P1〜P5を各々検出して、各物標点P1〜P5について衝突部位を予測しているので、他車両104の限られた点(従来の代表点)だけでなく、他車両104の複数位置について自車両102のどの部位に衝突するのかを予測することができる。従って、従来のグルーピング処理において、代表点P1,P3に包括されて物標出力されていなかったメンバーP2,P4,P5情報を有効活用することで、衝突予測精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突を予測する衝突予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、他車等の対象物を検出するレーダ装置を備え、検出された対象物と自車との衝突を予測する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の技術では、レーダ装置で検出した対象物における複数点のうち、自車との距離が最短となる代表点のTTC(Time To Collision)に基づいて、対象物と自車との衝突判定を行うと共に、この衝突判定の結果に応じて、車両制御を行うものが知られている。
【特許文献1】特開2003−232853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような衝突判定に用いられるレーダ装置(例えば、ミリ波レーダ等)では、対象物(以下、「物標」ともいう。)を検出し、この物標出力結果から近似曲線を算出し、自車に対する衝突部位を予測している。図7は、従来のレーダ装置を用いた衝突判定の際のグルーピング処理におけるグルーピング代表点及びグルーピングメンバーを説明するためのモデル図である。従来技術では、検出された複数の物標のうち、TTC等の条件に基づいて、優先度の高いものをグルーピング代表点(以下、「代表点」という)P101とし、この代表点P101と同じ速度で移動する物標をグルーピングメンバー(以下、「メンバー」という)P102,P103とし、メンバーP102,P103の情報は、代表点P101の情報に包括されていた。このように、メンバーP102,P103の情報を代表点P101の情報に包括するグルーピング処理を行うことで、物標数(情報量)を削減し、少ない送信数で必要な情報を効率良く伝達していた。従来技術では、代表点のみを用いた衝突予測であり、予測精度の向上が求められている。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、衝突予測精度の向上を図った衝突予測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による衝突予測装置は、他車両における複数位置の物標点を各々検出する検出手段と、複数位置の各物標点の位置情報の時系列変化と自車両の位置情報との比較に基づいて自車両に対する各物標点の衝突部位を各々予測する物標点衝突部位予測手段と、複数位置の衝突部位予測結果に基づいて自車両と他車両との衝突態様を予測する衝突態様予測手段と、を備えることを特徴としている。
【0006】
このような衝突予測装置は、他車両の複数位置の物標点を各々検出し、各物標点について予測した衝突部位に基づいて自車と他車との衝突態様を予測する。これにより、複数位置の物標点を各々検出して、各物標点について衝突部位を予測しているので、他車の限られた点(従来の代表点)だけでなく、他車の複数位置について自車のどの部位に衝突するのかを予測することができる。従って、従来グルーピング処理において、代表点に包括されて物標出力されていなかったメンバー情報を有効活用することで、衝突予測精度を向上させることができる。
【0007】
ここで、衝突態様予測手段は、衝突態様として、自車両における他車両との衝突部位を予測することが好ましい。衝突部位として、例えば、自車両の前部であるか、後部であるかを予測することが好ましい。
【0008】
また、衝突態様予測手段は、衝突態様として、自車両における他車両との衝突面の大きさを予測することが好ましい。例えば、自車両の中央部に衝突する場合は、衝突面が大きいと予測し、自車両の側部に衝突する場合は、衝突面が小さいと予測する。
【0009】
また、衝突態様予測手段は、物標点衝突部位予測手段によって予測された衝突部位の位置分布に基づいて、衝突態様を予測することが好ましい。
【0010】
また、衝突態様予測手段は、物標点衝突部位予測手段による予測結果に応じた係数に基づいて衝突態様を予測することが好ましい。
【0011】
また、係数は、衝突部位が自車両の中心寄りに位置する場合と自車両の外側寄りに位置する場合とで異なることが好ましい。これにより、被害の大きさ、回避しやすさを考慮した判定を行うことが可能となる。例えば、自車の中心に衝突される場合に比して、自車外側に衝突される場合の方が、衝突面が小さく、自車の被害が小さいと予測することができると共に、衝突を回避できる可能性が高いと判断することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の衝突予測装置によれば、衝突予測精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明による衝突予測装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図1は、本発明の実施形態に係る衝突予測装置を示すブロック図である。
【0014】
図1に示す衝突予測装置100は、他車両104(図2参照)と自車両102との衝突を予測する衝突判定電子制御ユニット(以下、「衝突判定ECU」という。)10を備えている。この衝突判定ECU10は、前方用ミリ波レーダ12、前側方用ミリ波レーダ14、操舵角センサ16、ヨーレートセンサ18、車速センサ20と電気的に接続されている。この衝突判定ECU10は、前方用ミリ波レーダ12、前側方用ミリ波レーダ14、操舵角センサ16、ヨーレートセンサ18、車速センサ20により検出されたデータに基づいて自車両102と他車両104との衝突態様を予測する。その詳細については、後述する。
【0015】
前方用ミリ波レーダ12は、自車両102の前面中央部に設けられ、前側方用ミリ波レーダ14は、自車両102の前面左右側部に設けられている。前方用ミリ波レーダ12及び前側方用ミリ波レーダ14は、他車両104における複数位置の物標点P1〜P5を各々検出する検出手段として機能するものであり、物標点P1〜P5の位置情報(方位及び距離に関する情報)及び相対速度を他車両104に関する情報として出力する。操舵角センサ16は、自車両102の操舵角を検出し、ヨーレートセンサ18は、自車両102のヨーレートを検出し、車速センサ20は、自車両102の車速を検出する。
【0016】
また、衝突判定ECU10は、警報ECU22、シートベルトECU24、ブレーキECU26と電気的に接続されている。警報ECU22は、警報音を出力する警報器32、振動を運転者に伝達するための振動子34と電気的に接続され、運転者に警報を報知する。シートベルトECU24は、シートベルトアクチュエータ36を作動させ、シートベルトを巻き取って緊張させる。ブレーキECU26は、ホイールシリンダの油圧を調整するブレーキアクチュエータ38に目標油圧信号を送り、ブレーキアクチュエータ38を制御してホイールシリンダの油圧を調節することで、自車両102の減速制御を行う。
【0017】
衝突判定ECU10、警報ECU22、シートベルトECU24、及びブレーキECU26は、例えばCAN(Controll Area Network)等の通信回路で接続されることにより、相互にデータ交換が可能な構成とされている。これらの衝突判定ECU10、警報ECU22、シートベルトECU24、及びブレーキECU26は、演算処理を行うCPU、記憶部となるROM及びRAM、入力通信回路、出力通信回路、電源回路などにより構成されている。
【0018】
ここで、衝突判定ECU10のCPUでは、記憶部に記憶されているプログラムを実行することで、時系列変化算出部、比較部、物標点衝突部位予測部、衝突態様予測部が構成される。
【0019】
時系列変化算出部は、前方用ミリ波レーダ12及び前側方用ミリ波レーダ14によって検出された各データに基づいて、他車両104における複数位置の各物標点P1〜P5の位置情報の時系列変化を算出する。比較部は、時系列変化算出部によって算出された各物標点P1〜P5の位置情報の時系列変化と自車両102の位置情報との比較を行う。
【0020】
物標点衝突部位予測部は、比較結果に基づいて、自車両102に対する各物標点P1〜P5の衝突部位を各々予測する。衝突態様予測部は、物標点衝突部位予測部による複数位置の衝突部位予測結果に基づいて自車両102と他車両104との衝突態様を予測する。
【0021】
図2は、自車両及び他車両の位置関係を示すと共に、ミリ波レーダによる検出範囲を示す平面図である。図2では、交差点106で直交する第1の道路108及び第2の道路110が示され、自車両102が第1の道路108を交差点106に向かって直進し、他車両104が第2の道路110を交差点106に向かって直進しているところを示している。自車両102は、このまま直進した場合、交差点106において、他車両104と衝突する可能性がある。また、仮想線に囲まれた範囲は、前方用ミリ波レーダ12による検出可能範囲S1、前側方用ミリ波レーダ14による検出可能範囲S2を示し、図2の状態において、前方用ミリ波レーダ12及び前側方用ミリ波レーダ14は、他車両104を検出している。
【0022】
図3は、ミリ波レーダのグルーピング範囲、代表点、メンバーの位置関係の一例を示す平面図である。前方用ミリ波レーダ12、前側方用ミリ波レーダ14のグルーピング条件として、Z方向(自車両102の進行方向)において所定の範囲内にあるもの、X方向(自車両102の進行方向と直交する方向)において所定の範囲内にあるもの、相対速度差が所定の範囲内にあるものがグルーピングされる。
【0023】
前方用ミリ波レーダ12は、他車両104の前面中央部の位置を代表点(物標点)P1として検出し、前面左側部の位置を代表点P1のメンバー(物標点)P2として検出し、代表点P1及びメンバーP2に関する情報を物標出力している。前側方用ミリ波レーダ14は、他車両104の側面前部の位置を代表点(物標点)P3として検出し、右側ミラーの位置を代表点P3のメンバー(物標点)P4として検出し、他車両104の側面後部の位置を代表点P3のメンバー(物標点)P5として検出し、各物標点の位置情報及び相対速度を物標出力している。
【0024】
図4は、衝突軌跡を推定するための近似曲線の一例を示す図である。図4では、自車両102の後面中央部の位置を原点とする座標系を設定し、横軸に自車両102の横方向の距離を示し、縦軸にTTC(他車両4との衝突までの時間)を示している。そして、衝突判定ECU10は、時系列変化算出部、比較部、物標点衝突部位予測部として機能し、図4に示すように、各物標点P1〜P5の位置情報の時系列変化を示す近似曲線(直線)L1〜L5を算出する。
【0025】
次に、衝突判定ECU10による衝突予測処理の動作手順について説明する。図5は、衝突判定ECUによる衝突予測処理の動作手順を示すフローチャートである。前方用ミリ波レーダ12及び前側方用ミリ波レーダ14は、他車両104が検出可能範囲に進入すると、代表点P1,P3、メンバーP2,P4,P5の位置情報、相対速度情報を物標出力する。そして、衝突判定ECU10は、前方用ミリ波レーダ12及び前側方用ミリ波レーダ14からの物標出力を入力する(S1)。このとき、メンバーP2,P4,P5の位置情報、相対速度情報は、どの代表点と同じ物標と判断されていたかの情報が新たに付加されている。
【0026】
次に、衝突判定ECU10は、前方用ミリ波レーダ12及び前側方用ミリ波レーダ14により物標出力された情報に基づいて、各物標点P1〜P5の位置情報の時系列変化を示す近似曲線を算出し、自車両102と他車両104との衝突軌跡を推定する(S2)。
【0027】
続いて、衝突判定ECU10は、自車キャビン前部衝突判定値Fn=α×γ+β×γ…(1)を算出する(S3)と共に、自車キャビン後部衝突判定値Rn=β×γ+α×γ…(2)を算出する(S4)。なお、物標点P1の自車キャビン前部衝突判定値をF1と記す。図6は、係数α領域、係数β領域の設定例を示す図である。図6では、自車両102の後面中央部の位置を原点とする座標系を設定し、横軸をX軸、縦軸をZ軸としている。
【0028】
自車両102の前部側は係数α領域とされ、係数α領域は、X軸方向に等間隔に複数(本実施形態では、6つ)に区分されている。具体的には、自車両中央の2つの領域は、α3と設定され、領域α3の外側には、領域α2が設定され、さらに、領域α2の外側には、領域α1が設定されている。そして、係数αは、α3>α2>α1の関係が成立するものであり、車両中央に衝突した場合には被害度が大きくなることを考慮して設定している。例えば、推定された衝突軌跡に基づいて、物標点が領域α3に衝突すると予測された場合には、係数α3(α2>α1)が採用される。
【0029】
また、自車両102の後部側は係数β領域とされ、係数β領域は、係数α領域同様、X軸方向に等間隔に複数(本実施形態では、6つ)に区分され、自車両中央から外側に向かって、α3,α2,α1とされている。そして、係数βは、β3>β2>β1の関係が成立するものであり、車両中央に衝突した場合には被害度が大きくなることを考慮して設定している。例えば、推定された衝突軌跡に基づいて、物標点が領域β3に衝突すると予測された場合には、係数β3(β2>β1)が採用される。
【0030】
係数(外挿回数によるウェイト乗数)γは、TTCや外挿回数に応じて重み付けを行うための係数である。図7は、外挿回数によるウェイト乗数γの設定例を示すグラフである。図7では、横軸に外挿回数、縦軸に係数γを示している。「外挿」とは、ミリ波レーダ12,14により物標検出する際に、必須となる対象物標からの反射レベルが所定の検出レベルを下回り、対象物標が検出できない場合に、これまでの検出結果に基づいて、今回、検出されるであろう場所を推測することをいう。「外挿回数」とは、連続して外挿した回数を指す。図7において、G1はTTCが短い場合の設定例であり、G2はTTCが長い場合の設定例であり、G1,G2共に、外挿回数が0回のときはγ=1であり、外挿回数の増加に伴い、係数γが低下する。また、G2は、G1より低く設定されている。すなわち、衝突直前において、ミリ波レーダが対象物標を見失った場合であっても、係数γを0.8より下げないようにしている。
【0031】
上述したように、ステップ3及ステップ4では、物標点P1〜P5ごとに自車キャビン前部判定値Fn=α×γ+β×γ、自車キャビン後部判定値Rn=β×γ−α×γを算出する。このとき、各物標点P1〜P5が、代表点であるか、メンバーであるかに応じて係数α、係数βに重み付けを行うことが好ましく、代表点の場合は、メンバーの場合より、係数を大きくするように重み付けを行う。
【0032】
さらに、ステップ3では、ΣFnを算出し、ΣFn>自車キャビン前部衝突判定範囲閾値THFCが成立する場合に、他車両が自車両の前部に衝突すると予測して、自車キャビン前部衝突判定フラグ=ONとする。なお、自車キャビン前部衝突判定範囲閾値THFCは、実験等により設定されるものである。
【0033】
さらに、ステップ4では、ΣRnを算出し、ΣRn>自車キャビン後部衝突判定範囲閾値THRCが成立する場合に、他車両が自車両の後部に衝突すると予測して、自車キャビン後部衝突判定フラグ=ONとする。なお、自車キャビン後部衝突判定範囲閾値THRCは、実験等により設定されるものである。
【0034】
続いて、衝突判定ECU10は、前部衝突判定フラグのみがONであるか否かを判定する(S5)。前部衝突判定フラグのみがONであると判定された場合、ステップ9に進み、前部衝突判定フラグのみがONであると判定されなかった場合、ステップ6に進む。
【0035】
ステップ6では、衝突判定ECU10は、後部衝突判定フラグのみがONであるか否かを判定する。後部衝突判定フラグのみがONであると判定された場合、ステップ10に進み、後部衝突判定フラグのみがONであると判定されなかった場合、ステップ7に進む。
【0036】
ステップ7では、衝突判定ECU10は、前部衝突判定フラグと後部衝突判定フラグと両方がONであるか否かを判定する。前部衝突判定フラグと後部衝突判定フラグとの両方がONであると判定された場合、ステップ8に進み、前部衝突判定フラグと後部衝突判定フラグとの両方がONであると判定されなかった場合、処理を終了する。
【0037】
ステップ8では、衝突判定ECU10は、(ΣFn−THFC)>(ΣRn−THRC)であるか否かを判定する。(ΣFn−THFC)>(ΣRn−THRC)であると判定された場合、ステップ9に進み、(ΣFn−THFC)>(ΣRn−THRC)であると判定されなかった場合、ステップ10に進む。
【0038】
ステップ9では、衝突判定ECU10は、警報ECU22に信号を出力し、警報器32、振動子34を用いて、運転者への警報を行う。また、衝突判定ECU10は、シートベルトECU24に信号を出力し、シートベルトの制御を行って、シートベルトの巻取装置を作動させ、シートベルトを巻き取って緊張させる。また、衝突判定ECU10は、ブレーキECU26に信号を出力し、ブレーキアクチュエータ36を制御してホイールシリンダの油圧を調節することで、自車キャビン中央への衝突を回避するために、自車両102の減速制御を行う。すなわち、衝突判定ECU10は、他車両が自車キャビン前部に衝突すると予測された場合に、警報出力、シートベルト制御、ブレーキ制御を行い、自車キャビン中央の被害を低減させる。
【0039】
ステップ10では、衝突判定ECU10は、警報ECU22に信号を出力し、警報器32、振動子34を用いて、運転者への警報を行う。また、衝突判定ECU10は、シートベルトECU24に信号を出力し、シートベルトの制御を行って、シートベルトの巻取り装置を作動させ、シートベルトを巻き取って緊張させる。なお、ステップ10では、ブレーキ制御は行わない。すなわち、衝突判定ECU10は、他車両が自車キャビン後部に衝突すると予測された場合に、警報出力、シートベルト制御を行い、ブレーキ制御を行わず、自車キャビン中央の被害を低減させる。
【0040】
次に、衝突判定ECU10は、前部衝突判定範囲内と判定された場合に、自車キャビン中央への衝突を回避するために、警報制御、シートベルト制御、ブレーキ制御を行う(S4)。衝突判定ECU10は、後部衝突判定範囲内と判定された場合に、自車キャビン中央への衝突を回避するために、警報制御、シートベルト制御を行う(S5)。
【0041】
このように、本実施形態の衝突予測装置100では、衝突部位を予測する際に、従来、物標出力されていなかったメンバーP2,P4,P5情報を有効に活用して、近似曲線判定を行って自車キャビン位置に対する衝突部位をすることができる。これにより、衝突部位の予測精度を向上させることができる。そのため、衝突軽減制御(PCS:Pre−Crash Safey)において、自車両の衝突部位に応じた警報制御、シートベルト制御、ブレーキ制御を高精度に行うことができる。従前のグルーピング処理では、メンバー情報が物標出力されていなかったため、物標情報が少なく衝突部位予測が不十分であった。
【0042】
また、衝突予測装置100では、メンバー情報を物標出力しているので、従前に比して他車両に関する情報量が増加され、高精度に衝突部位の予測ができる。出会い頭の衝突を防止するための側突PCSでは、前方PCSと比較して自車両に接近する他車両を検出し始める時間が極めて短いため、特に、有効である。
【0043】
また、衝突予測装置では、自車キャビン前部、自車キャビン後部の何れに衝突するかに応じて、ブレーキ制御の実施の有無を制御しているため、自車キャビン中央への影響を低減することができる。
【0044】
また、衝突予測装置では、係数α、係数βを衝突部位が自車両の中央よりに位置する場合と、自車両の外側寄りに位置する場合とで異なるようにしているので、自車両の中央に衝突される場合に比して、自車両の外側に衝突される場合の方が、衝突面が小さく、自車両の被害が小さいと予測することができると共に、衝突を回避するできる可能性が高いと判断することができる。従って、被害の大きさ、回避しやすさを考慮した衝突予測を行うことができる。
【0045】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。衝突判定ECU10は、例えば、ヒストグラムを用いて、衝突部位の位置分布に基づいて、衝突態様を予測してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係る衝突予測装置を示すブロック図である。
【図2】自車両及び他車両の位置関係を示すと共に、ミリ波レーダによる検出範囲を示す平面図である。
【図3】ミリ波レーダのグルーピング範囲、代表点、メンバーの位置関係の一例を示す平面図である。
【図4】衝突軌跡を推定するための近似曲線の一例を示す図である。
【図5】衝突判定ECUによる衝突予測処理の動作手順を示すフローチャートである。
【図6】係数α領域、係数β領域の設定例を示す図である。
【図7】外挿回数によるウェイト乗数γの設定例を示すグラフである。
【図8】従来のレーダ装置を用いた衝突判定の際のグルーピング処理におけるグルーピング代表点及びグルーピングメンバーを説明するためのモデル図である。
【符号の説明】
【0047】
10…衝突判定ECU(物標点衝突部位予測手段、衝突態様予測手段)、12…前方用ミリ波レーダ(検出手段)、14…前側方用ミリ波レーダ(検出手段)、102…自車両、104…他車両、P1〜P5…物標点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他車両における複数位置の物標点を各々検出する検出手段と、
前記複数位置の各物標点の位置情報の時系列変化と自車両の位置情報との比較に基づいて自車両に対する前記各物標点の衝突部位を各々予測する物標点衝突部位予測手段と、
前記複数位置の衝突部位予測結果に基づいて自車両と前記他車両との衝突態様を予測する衝突態様予測手段と、を備えることを特徴とする衝突予測装置。
【請求項2】
前記衝突態様予測手段は、前記衝突態様として、自車両における前記他車両との衝突部位を予測することを特徴とする請求項1記載の衝突予測装置。
【請求項3】
前記衝突態様予測手段は、前記衝突態様として、自車両における前記他車両との衝突面の大きさを予測することを特徴とする請求項1又は2記載の衝突予測装置。
【請求項4】
前記衝突態様予測手段は、前記物標点衝突部位予測手段によって予測された前記衝突部位の位置分布に基づいて、前記衝突態様を予測することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の衝突予測装置。
【請求項5】
前記衝突態様予測手段は、前記物標点衝突部位予測手段による予測結果に応じた係数に基づいて前記衝突態様を予測することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の衝突予測装置。
【請求項6】
前記係数は、前記衝突部位が自車両の中心寄りに位置する場合と自車両の外側寄りに位置する場合とで異なることを特徴とする請求項5に記載の衝突予測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−302904(P2008−302904A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154357(P2007−154357)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】