表示装置
【課題】 容量素子の各電極における絶縁破壊を回避させた表示装置を提供する。
【解決手段】 半導体層の導電化された部分を一方の電極とし、前記半導体層を被う絶縁膜を誘電体膜とし、前記絶縁膜上に形成され前記一方の電極に重畳する部分を有する導体層を他方の電極として構成する容量素子を備える表示装置であって、
前記導体層は、前記一方の電極に重畳する部分の導体層と一体につながっているとともに前記半導体層の形成領域内から前記半導体層の形成領域外まで延在され、かつ、前記絶縁膜上に形成された延在部分を有し、
前記絶縁膜は、前記半導体層と前記導体層の前記延在部分との両方に重畳する領域において、その膜厚が前記一方の電極と重畳する部分の前記絶縁膜の膜厚よりも厚く形成されていることを特徴とする表示装置。
【解決手段】 半導体層の導電化された部分を一方の電極とし、前記半導体層を被う絶縁膜を誘電体膜とし、前記絶縁膜上に形成され前記一方の電極に重畳する部分を有する導体層を他方の電極として構成する容量素子を備える表示装置であって、
前記導体層は、前記一方の電極に重畳する部分の導体層と一体につながっているとともに前記半導体層の形成領域内から前記半導体層の形成領域外まで延在され、かつ、前記絶縁膜上に形成された延在部分を有し、
前記絶縁膜は、前記半導体層と前記導体層の前記延在部分との両方に重畳する領域において、その膜厚が前記一方の電極と重畳する部分の前記絶縁膜の膜厚よりも厚く形成されていることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置およびその製造方法に係り、たとえばアクティブ・マトリクス型の液晶表示装置あるいは有機EL表示装置等およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブ・マトリクス型の表示装置は、その基板の面に、そのx方向に延在されy方向に並設されるゲート信号線(走査信号線)とy方向に延在されx方向に並設されるドレイン信号線(映像信号線)とで囲まれる領域を画素領域とし、この画素領域の集合体を表示部として構成している。
【0003】
各画素領域には、当該画素領域を囲む一対のゲート信号線のうち一方の側のゲート信号線からの走査信号によって駆動されるスイッチング素子と、このスイッチング素子を介して当該画素領域を囲む一対のドレイン信号線のうち一方の側のドレイン信号線からの映像信号が供給される電極とが備えられている。
【0004】
この電極は、液晶表示装置の場合にあっては液晶を間にして配置される他方の電極との間に該映像信号に対応する電圧を生じせしめるようになっている。有機EL表示装置の場合にあっては、様々な方式があるが、一例を挙げると、この電極は、映像信号を取り込む容量素子の電極である。そして、この容量素子に取り込まれた映像信号に対応して有機発光層を間に配置される一方の電極と他方の電極との間に該映像信号に対応する電流を生じせしめる回路を備えている。
【0005】
このように構成される表示装置は、表示部の各画素を、前記ゲート信号線を共通とする画素群(ライン)を順次走査させて駆動するようにしているが、同じ画素群を次に駆動させるまでの間に、該画素群に供給された映像信号を蓄積させておくための容量素子を備えている。
【0006】
そして、前記スイッチング素子である薄膜トランジスタ、および容量素子は、それぞれ所定パターンに形成された半導体層、絶縁層、および金属層等の積層体で構成されているが、該スイッチング素子のゲート絶縁膜と容量素子の誘電体膜は共通の絶縁膜で形成されるのが通常となっている。製造プロセスの低減を図らんとしているからである。
【0007】
しかし、上述した構成において、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜は、該薄膜トランジスタの特性が定められていることから、その膜厚が予め規定され、この結果、容量素子の誘電体膜の厚さも設定されてしまうという不都合が生じる。
【0008】
すなわち、画素領域内に形成される容量素子において、比較的大きな容量を得ようとした場合、その誘電体膜の膜厚が規定されているため、面積を大きくせざるを得ず、その結果、いわゆる開口率を低下させてしまうことになる。
【0009】
そこで、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜と比較し容量素子の誘電体膜を薄くする工程を新たに付加させたものが知られている。容量素子の形成領域に形成されたゲート絶縁膜をマスクを用いた選択エッチングをして除去し、該マスクを取り除いた後に熱酸化膜を形成するようにしたものである。
このような技術としては、たとえば下記特許文献に開示がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−175154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述した構成は、膜厚差をもたせるゲート絶縁膜を形成した後に、容量素子を形成する領域(ゲート絶縁膜の膜厚を薄く形成した領域)に高濃度の不純物をインプラし、該ゲート絶縁膜の下層に配置される半導体層を導電化させており、このインプラを行なう場合にも新たなマスクを形成しなければならないものであった。
【0012】
また、マスク(ホトレジスト膜)を形成した後に、それを除去する場合には、該マスクの形成面が汚染されていることから、洗浄と称される工程が付加されるのが通常である。
このことから、製造工数が増大し、その解決策が要望されるに至った。
【0013】
また、このように構成された容量素子において、その絶縁膜の上層に形成される他方の電極に該半導体層の形成領域外にまで延在する配線層等を形成した場合に、該絶縁膜の下層の半導体層(導電化されている)からなる電極と配線層との間で、絶縁破壊を起してしまうという不都合が生じることが見出された。容量素子の形成領域における絶縁膜の膜厚を薄く形成した場合に、その絶縁膜が半導体層の段差部で充分な膜厚で形成されないからである。
【0014】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、製造工数の低減を図った表示装置の製造方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、容量素子の各電極における絶縁破壊を回避させた表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0016】
(1)
本発明による表示装置の製造方法は、たとえば、基板の上面に半導体層を形成し、前記半導体層の上面に絶縁膜を形成し、
第1領域を被い第2領域を露出させたマスクを用いて、前記第2領域の前記半導体層に前記絶縁膜を通して不純物の打ち込みを行い、
前記マスクを除去した後に、前記第1領域及び前記第2領域の前記絶縁膜の表面を前記第2領域の前記絶縁膜が残存する程度にエッチングすることにより、前記第2領域の絶縁膜の膜厚を前記第1領域の絶縁膜の膜厚よりも薄くすることを特徴とする。
【0017】
(2)
本発明による表示装置の製造方法は、たとえば、(1)の構成を前提とし、前記第1領域の絶縁膜を薄膜トランジスタのゲート絶縁膜に用い、前記第2領域の絶縁膜を容量素子の誘電体膜に用いて、前記薄膜トランジスタと前記容量素子とを形成することを特徴とする。
【0018】
(3)
本発明による表示装置の製造方法は、たとえば、基板の上面に半導体層を形成し、前記半導体層の上面に絶縁膜を形成し、
第1領域を被い第2領域を露出させたマスクを用いて、前記第2領域の前記半導体層に前記絶縁膜を通して不純物の打ち込みを行い、
前記マスクを残存させたまま、前記第2領域の前記絶縁膜の表面を前記第2領域の前記絶縁膜が残存する程度にエッチングすることにより、前記第2領域の絶縁膜の膜厚を前記第1領域の絶縁膜の膜厚よりも薄くし、
前記マスクを除去した後に、前記第1領域及び前記第2領域の前記絶縁膜の表面を洗浄することを特徴とする。
【0019】
(4)
本発明による表示装置の製造方法は、たとえば、(3)の構成を前提とし、前記第1領域の絶縁膜を薄膜トランジスタのゲート絶縁膜に用い、前記第2領域の絶縁膜を容量素子の誘電体膜に用いて、前記薄膜トランジスタと前記容量素子とを形成することを特徴とする。
【0020】
(5)
本発明による表示装置は、たとえば、半導体層の導電化された部分を一方の電極とし、前記半導体層を被う絶縁膜を誘電体膜とし、前記絶縁膜上に形成され前記一方の電極に重畳する部分を有する導体層を他方の電極として構成する容量素子を備える表示装置であって、
前記導体層は、前記一方の電極に重畳する部分の導体層と一体につながっているとともに前記半導体層の形成領域内から前記半導体層の形成領域外まで延在され、かつ、前記絶縁膜上に形成された延在部分を有し、
前記絶縁膜は、前記半導体層と前記導体層の前記延在部分との両方に重畳する領域において、その膜厚が前記一方の電極と重畳する部分の前記絶縁膜の膜厚よりも厚く形成されていることを特徴とする。
【0021】
(6)
本発明による表示装置は、たとえば、(5)の構成を前提とし、前記半導体層は、前記半導体層の形成領域内から前記半導体層の形成領域外まで延在された前記導体層の前記延在部分と重畳する領域において、その不純物濃度が、前記一方の電極を構成する部分の不純物濃度より小さくなっていることを特徴とする。
【0022】
(7)
本発明による表示装置は、たとえば、(5)または(6)の構成を前提とし、前記導体層の前記延在部分は、前記他方の電極に電位を与える配線層であることを特徴とする。
【0023】
(8)
本発明による表示装置は、たとえば、絶縁膜で被われた半導体層の領域に第1領域と第2領域とを有し、前記第1領域の部分にてその上面に形成される前記絶縁膜をゲート絶縁膜とする薄膜トランジスタと、前記第2領域の部分にてその上面に形成される前記絶縁膜を誘電体膜とする容量素子とを備える表示装置であって、
前記容量素子は、前記半導体層の前記第2領域に不純物がドープされて一方の電極を構成し、前記第2領域上の前記絶縁膜の上面に形成される導体層を他方の電極として構成し、前記他方の電極は前記半導体層の形成領域外から延在される配線層と接続されて形成され、
前記半導体層のうち少なくとも前記配線層が重畳される領域には前記一方の電極を構成する前記第2領域の不純物濃度よりも小さい不純物濃度を有する第3領域を備えるとともに、
前記第2領域上の前記絶縁膜は前記第1領域および前記第3領域上の前記絶縁膜よりも膜厚が小さくなっていることを特徴とする。
【0024】
(9)
本発明による表示装置の製造方法は、たとえば、(1)ないし(4)のいずれかの構成を前提とし、前記表示装置は液晶表示装置であることを特徴とする。
【0025】
(10)
本発明による表示装置は、たとえば、(5)ないし(8)のいずれかの構成を前提とし、前記表示装置は液晶表示装置であることを特徴とする。
なお、本発明は以上の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【発明の効果】
【0026】
このように構成された表示装置の製造方法によれば、いずれもマスク工程を1回行なうだけで、半導体層を選択的に導電化でき、該半導体層を被って形成された絶縁膜のうち該導電化された部分上の絶縁膜の膜厚をそれ以外の部分の絶縁膜の膜厚よりも小さくすることができる。
また、上述した表示装置によれば、導電化された半導体層、絶縁膜、前記半導体層の非形成領域外に延在する延在部を有する導体層との順次積層体からなる容量素子において、前記導電化された半導体層と前記延在部との前記半導体層の段差部における絶縁破壊が生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による表示装置の製造方法の一実施例の要部を示す説明図である。
【図2】本発明による表示装置の画素の構成の一実施例を示す要部平面図である。
【図3】図2に示す表示装置の製造方法の一実施例を示す工程図で、図4、図5とともに一連の工程を示した図である。
【図4】図2に示す表示装置の製造方法の一実施例を示す工程図で、図3、図5とともに一連の工程を示した図である。
【図5】図2に示す表示装置の製造方法の一実施例を示す工程図で、図3、図4とともに一連の工程を示した図である。
【図6】図2のA−A’線における断面を示す図である。
【図7】本発明による表示装置の製造方法の要部における工程に要する時間を示した図である。
【図8】図2に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図9、図10とともに一連の工程を示した図である。
【図9】図2に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図8、図10とともに一連の工程を示した図である。
【図10】図2に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図8、図9とともに一連の工程を示した図である。
【図11】本発明による表示装置の製造方法の要部において絶縁膜に形成される凹陥部の側壁面における角度を説明した図である。
【図12】本発明による表示装置の画素の構成の他の実施例を示す要部平面図である。
【図13】図12のB−B’線における断面を示す図である。
【図14】図12に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図15、図16とともに一連の工程を示した図である。
【図15】図12に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図14、図16とともに一連の工程を示した図である。
【図16】図12に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図14、図15とともに一連の工程を示した図である。
【図17】図12に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図18、図19とともに一連の工程を示した図である。
【図18】図12に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図17、図19とともに一連の工程を示した図である。
【図19】図12に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図17、図18とともに一連の工程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明による表示装置を液晶表示装置を例にとり、その製造方法とともに実施例を説明する。
[実施例1]
《画素の構成》
図2は、本発明による液晶表示装置の画素の構成を示す構成図で、矩形状からなる該画素のうち右上の薄膜トランジスタTFTが形成されている部分の詳細平面図を示している。また、図6は図2のA−A’線における断面図を示している。
【0029】
たとえばガラスからなる基板SUB1の上面(液晶側の面)にはシリコン窒化膜(SiN)102およびシリコン酸化膜(SiO2)103の積層体からなる下地層GWが形成されている。この下地層GWは基板SUB1に含まれるイオン性不純物が後述の薄膜トランジスタTFTに影響を及ぼすのを回避するために形成されている。
【0030】
そして、この下地層GWの表面には、たとえばポリシリコン層からなる半導体層PSが形成されている。この半導体層PSはたとえばプラズマCVD装置によって成膜したアモルファスSi膜をエキシマレーザによって多結晶化したものである。
【0031】
この半導体層PSは、薄膜トランジスタTFTのチャネル層、ドレイン領域SD1、ソース領域SD2として形成されるのみでなく、ソース領域SD2にそのまま接続される容量素子Cstgの一方の電極CT1を構成するようになっている。
【0032】
このため、該半導体層PSは、後述するドレイン信号線DLの直下に形成される部分と、該ドレイン信号線DLに一部沿って形成され、その後屈曲して後述するゲート信号線GLに近接して平行に走行する部分、画素領域内に一部延在して形成される部分とが一体となって形成されている。
【0033】
そして、このように半導体層PSが形成された透明基板SUB1の表面には、該半導体層PSをも覆ってたとえばSiO2あるいはSiNからなる第1絶縁膜GI(図6参照)が形成されている。
【0034】
この第1絶縁膜GIは前記薄膜トランジスタTFTのゲート絶縁膜として機能するともに、後述する容量素子Cstgの誘電体膜として機能するようになっている。
【0035】
尚、半導体層PSの一部は、マスクを用い、この第1絶縁膜GIを通して不純物の注入(インプラ)が行われて導電化されて、容量素子Cstgの一方の電極CT1が形成されるようになっている。
【0036】
ここで、この第1絶縁膜GIは、容量素子Cstgの誘電体膜として機能する部分において凹陥部が形成され、他の領域における部分よりも膜厚が薄く形成されている。第1絶縁膜GIの膜厚は例えば薄膜トランジスタTFTの設定された閾値等によって規定されるのが通常であり、それよりも容量素子Cstgの誘電体膜として機能する部分を薄く形成することにより、その容量値を大きくでき、ひいては容量素子Cstgの全体の面積を小さくできるからである。
【0037】
そして、第1絶縁膜GIの上面には、図中x方向に延在されるゲート信号線GLが形成され、GT2の部分で前記半導体層PSの一部と交差するようにして配置されている。このゲート信号線GLは図中下側にやはり図中x方向に延在されて形成される図示しないゲート信号線とで当該画素領域を囲むようになっている。
【0038】
このゲート信号線GLは、その一部において、画素領域内に若干延在され、その延在部GT1は前記半導体層PSの一部と交差するようになっている。この延在部は薄膜トランジスタTFTのゲート電極GT1として形成されるようになっている。
【0039】
ここで、薄膜トランジスタTFTのゲート電極GTは、前記延在部(GT1)のみでなく、前記ゲート信号線GL自体が半導体層PSを横切る部分(GT2)においても形成された構造となっている。但し、本発明は、このような構造に限られず、いずれか一方のみを有する構造としても良い。
【0040】
なお、このゲート信号線GLの形成後は、第1絶縁膜GIを介して不純物のイオン打ち込みをし、前記半導体層PSにおいて前記ゲート電極GTの直下を除く領域を導電化させることによって、薄膜トランジスタTFTのソース領域SD2およびドレイン領域SD1が形成される。
【0041】
ここで、該薄膜トランジスタTFTは、その半導体層PSにおいてゲート電極GT1、GT2の直下の領域(チャネル領域)からソース領域SD2あるいはドレイン領域SD1までの領域において比較的不純物量の小さい領域、すなわちLDD(Lightly Doped Drain)領域LDが形成された構成となっている。ゲート電極GTとソース領域SD2あるいはドレイン領域SD1との間の電界集中を回避させるためである。
【0042】
なお、このゲート信号線GLは耐熱性を有する導電膜であればよく、たとえばAl、Cr、Ta、TiW等が選択される。この実施例ではゲート信号線GLとしてたとえばTiWが用いられている。
【0043】
また、第1絶縁膜GIの上面には、前記ゲート信号線GLと同層でかつ同一の材料で形成される容量信号線CLが該ゲート信号線GLと平行になるように形成されている。この容量信号線CLは、半導体層PSで形成された容量素子Cstgの一方の前記電極CT1の部分に交差するように形成されているともに、該電極CT1の部分と充分に重なるように比較的面積の広い部分が形成されたパターンとして形成されている。この比較的面積の広い部分は前記容量素子Cstgの他方の電極CT2を構成している。この容量素子Cstgの誘電体膜は前記第1絶縁膜GIである。
【0044】
前記ゲート信号線GLおよび容量信号線CL(および容量電極CT2)をも被って前記第1絶縁膜GIの上面には第2絶縁膜IN(図6参照)がたとえばSiO2あるいはSiNによって形成されている。
【0045】
そして、この第2絶縁膜INの上面には、図中y方向に延在されるドレイン信号線DLが形成されている。このドレイン信号線DLは、図中左側にやはり図中y方向に延在されて形成される図示しないドレイン信号線DLとで当該画素領域を囲むようになっている。
ドレイン信号線DLは、たとえばアルミニウム、TiWを下地層としたアルミニウム、MoSiを下地層としたアルミニウムが用いられている。
【0046】
このドレイン信号線DLは前記半導体層PSのドレイン領域SD1に重畳するように配置され、このドレイン領域SD1の部分にて、第2絶縁膜INおよび第1絶縁膜GIを貫通し形成されたコンタクトホールCH1を通して該ドレイン領域SD1に接続されている。このようにして、ドレイン信号線DLの一部はドレイン電極DTとしての機能を有している。
【0047】
また、前記コンタクトホールCH1の形成の際に、薄膜トランジスタTFTのソース領域SD2を露出させるために、やはり第2絶縁膜INおよび第1絶縁膜GIを貫通して形成されたコンタクトホールCH2が形成されるようになっている。
このコンタクトホールCH2は、第2絶縁膜IN上において形成されるソース電極ST(図6参照)とソース領域SD2との導通を図るためのものである。
【0048】
尚、図6に示すように、ソース電極STの一部を容量素子Cstgの他方の電極CT2と重畳する領域まで延在させ、電極CT3とし、電極CT2、第2絶縁膜IN、電極CT3によって第2の容量素子を形成するようにしても良い。
【0049】
また、第2絶縁膜INの上には、ソース電極STをも覆って図示しない層間絶縁膜(第3絶縁膜)を形成し、第3絶縁膜の上には図示しない画素電極を形成する。第3絶縁膜には図示しないコンタクトホールが形成され、画素電極とソース電極STとが接続される。
【0050】
これによって、ゲート信号線GLからの走査信号によって駆動される薄膜トランジスタTFTを介して、ドレイン信号線DLからの映像信号が該画素電極に供給されるようになる。この場合、前記容量素子Cstgによって該映像信号が画素電極に比較的長く蓄積されるようになっている。
【0051】
《製造方法》
図3ないし図5は、図2に示した液晶表示装置の製造方法の一実施例を示す工程図で、各工程の図は図2のA−A’線に沿った断面図を示している。なお、図3ないし図5にわたって経時的になされる各工程は(a)ないし(n)の一連の符号で示している。
【0052】
以下、工程順に以下説明をする。
工程1.(図3(a))
たとえばガラスからなる基板101を用意し、この一方の表面(液晶側の面)に、たとえばプラズマCVD法を用いて、シリコン窒化膜(SiN)102、シリコン酸化膜(SiO2)103、アモルファスシリコン(a−Si)層104を順次積層させて形成する。
ここで、ガラスからなる基板101は図2に示した透明基板SUB1に、シリコン窒化膜(SiN)102、シリコン酸化膜(SiO2)103は図6に示した下地層GWに相当するものである。
【0053】
工程2.(図3(b))
熱処理を施すことにより、前記アモルファスシリコン(a−Si)104に含まれる水素を脱離させた後、たとえばエキシマレーザアニール(ELA)装置を用いて前記アモルファスシリコン(a−Si)104を結晶化し、これによりポリシリコン(poly−Si)層116を形成する。そして、このポリシリコン(poly−Si)層116をフォトリソグラフィ技術を用いた選択エッチング方法により、島状のパターンに形成する。
このように形成されるポリシリコン(poly−Si)層116は図6に示した半導体層PSに相当するものである。
【0054】
工程3.(図3(c))
たとえばプラズマCVD方法を用いて、ポリシリコン(poly−Si)層116をも被って、基板101の表面にゲート絶縁膜105を生成する。このゲート絶縁膜105は図6に示した第1絶縁膜GIに相当するものである。
【0055】
工程4.(図3(d))
ゲート絶縁膜105を通して、ポリシリコン(poly−Si)層116に低濃度のボロン(B+)からなる不純物117をインプラする。この作業は、該ポリシリコン(poly−Si)層116によって形成しようとする薄膜トランジスタTFTの閾値制御のために行なわれるものである。
【0056】
工程5.(図3(e))
ホトレジスト膜106を形成し、ポリシリコン(poly−Si)層116の形成領域のうち、容量電極(図6の電極CT1に相当する)を形成しようとする領域に相当する部分のホトレジスト膜106に孔開けを行なう。このホトレジスト膜106の孔の該輪郭は図2に重ねて示した太線枠MSKに相当する。
【0057】
工程6.(図3(f))
残存したホトレジスト膜106をマスクとし、高濃度の燐(P+)からなる不純物(図中符号118で示す)をインプラする。該不純物はホトレジスト膜106から露出されたゲート絶縁膜105を通して、ポリシリコン(poly−Si)層116に打ち込まれ、この部分が導電化されて容量電極CT1の機能を有するようになる。
【0058】
工程7.(図4(g))
前記ホトレジスト膜106を除去し、ゲート絶縁膜105の表面の全域を露出させる。
【0059】
工程8.(図4(h))
該ゲート酸化膜105の表面に希フッ酸処理121を行なう。この希フッ酸処理はゲート絶縁膜105の表面を洗浄する処理となっている。該ゲート絶縁膜105の表面には、ホトレジスト膜106を除去した後で、不純物が付着しているからである。このため、通常行われている洗浄はこの不純物を除去するに足るだけの短時間で行なわれている。
【0060】
しかし、本実施例の洗浄においては、通常行われている洗浄よりも長時間行なうことによって、エッチングに相当する処理を行っている。そして、本実施例の洗浄を兼ねたエッチングにより、図からも明らかなように、容量素子の電極の形成領域を被うゲート絶縁膜105をそれ以外の領域のゲート絶縁膜105よりも薄く形成するエッチングが必然的になされる特徴を有する。その理由は、ゲート絶縁膜105のうち、工程6によって高濃度の燐(P+)からなる不純物のインプラがなされた部分はそれ以外の部分よりもエッチングレートが速くなることを利用して、同じ時間エッチングした場合でもその部分においてそれ以外の部分よりも膜厚が小さく形成されるようになるからである。尚、通常行われている短時間の洗浄では表面のわずかな部分を除去するのみなので、このような膜厚差はほとんど生じず、実質的に膜厚差は0である。
【0061】
本実施例のゲート絶縁膜105の洗浄の詳細な過程を、図1において、前の工程である工程7(図1(g)で示す)に対する本工程である工程8(図1(h)で示す)との比較で示している。容量素子の電極の形成領域以外の領域を被うゲート絶縁膜105の表面は、僅かな深さで洗浄(エッチング)されているにも拘わらず(図中符号125で示す)、容量素子の電極の形成領域を被うゲート絶縁膜105の表面は、洗浄もなされるがそのエッチングレートが大きいがため(図中符号126で示す)に、あたかも別工程でエッチングがなされたかの如く、その周辺の表面に対して深さをもつ凹陥部が形成される。
【0062】
また、図1(h)において、符号123は本工程で行なう洗浄前におけるゲート絶縁膜105の表面を、符号124は本工程で行なう洗浄後におけるゲート絶縁膜105の表面を示している。
このようにして、本工程では不純物のインプラをした箇所とインプラしていない箇所の第1絶縁膜GIのエッチングレートの差を利用して、膜厚差を設けるエッチングを行なうことにより、表面除去も行われるため、洗浄の効果も果たすことができる。
【0063】
工程9.(図4(i))
たとえばスパッタリング方法を用い、ゲート絶縁膜105の上面に導体層として金属層122を形成する。この金属層122は図2で示したゲート電極GT(およびゲート信号線GL)および容量信号線CL(および電極CT2)を形成するための材料層からなるものである。
【0064】
工程10.(図4(j))
該金属層122の上面にホトレジスト膜110を形成し、このホトレジスト膜110をフォトリソグラフィ技術により孔開けをし、前記金属層122の一部を露出させる。
そして、残存したホトレジスト膜110をマスクとし、それから露出された該金属層122をエッチングする。
この場合、いわゆる自己整合で薄膜トランジスタTFTの部分にLDD部(Lightly Doped Drain)を形成するため、該金属層122のエッチングはホトレジスト膜110の開口端部より数μm程度に後退するまで行なう。
【0065】
工程11.(図4(k))
前記ホトレジスト膜110を残存させたまま、このホトレジスト膜110をマスクとし、燐(P+)からなる不純物119をインプラする。これにより、薄膜トランジスタTFTの形成領域において、ドレイン領域およびソース領域111が形成される。
これとともに、薄膜トランジスタTFTの形成領域において、ゲート電極GTの直下から前記ドレイン領域あるいはソース領域111までの間において前記不純物がインプラされていない領域が数μmの幅を有して形成される。
【0066】
工程12.(図5(l))
前記ホトレジスト膜110を除去し、再び燐(P)からなる不純物120をインプラする。この場合の不純物の濃度は、前記工程11で用いたそれの濃度よりも低く、前記ドレイン領域およびソース領域にも打ち込まれるが、ゲート電極GTの直下から前記ドレイン領域およびソース領域111までの間の領域にも打ち込まれる。これにより後者の領域に前記LDD部112が形成される。
【0067】
工程13.(図5(m))
たとえばシリコン窒化膜113を全域に形成する。このシリコン窒化膜113は図6に示した第2絶縁膜INに相当するものである。そしてこのシリコン窒化膜113の形成後においてアニール処理を行なう。工程11および工程12でインプラされた不純物の活性化を行なうためである。
【0068】
工程14.(図5(n))
前記保護膜113および下層のゲート絶縁膜105を貫通する孔を設け、この孔から薄膜トランジスタTFTのドレイン領域およびソース領域を露出させ。その後、全域に金属層115を形成し、これを選択エッチングすることにより、該ドレイン領域に電気的に接続されたドレイン信号線およびドレイン電極、並びに、該ソース領域に電気的に接続されたソース電極をそれぞれ形成する。尚、ソース電極の一部を延在させて電極CT3を形成している。
この後、図示しない第3絶縁膜や画素電極等を形成する。画素電極は第3絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介してソース電極に接続されている。
【0069】
次に、上述した製造方法において、その特徴部をなす工程8(図4(h))に要する時間を示した表を図7(a)に示す。
図7(a)において、図中の(f)から(i)はそれぞれ図3ないし図5に示した一連の符号のうち(f)から(i)までの工程に相当し、工程8(図4(h))の工程は(h)に相当したものとなっている。
【0070】
図中(f)で容量部のインプラを経た後に、ホトレジスト剥離を行なっている(図中(g))。このホトレジスト剥離はロットで行い、該ロットにはたとえば25枚の基板(処理基板)が収納されている。この場合に要する時間は10800秒である。
【0071】
次の工程(図中(h))では、ロット内から取り出された各基板が一枚毎に処理され、搬送、エッチング、リンス、乾燥、搬送の各工程が順次なされ、それぞれ30秒、60秒、60秒、60秒、10秒の時間を要するようになっている。したがって、この工程における時間は1枚あたりでは全体として210秒という極めて短時間でなされることが確認される。尚、エッチングの時間は、第1絶縁膜GIの膜厚差が十分につく程度に設定する。
【0072】
ここで、図(h)で示した各工程をロット単位当たりで要した時間に換算すると、搬送、エッチング、リンス、乾燥、搬送において、それぞれ750秒、1500秒、1500秒、1500秒、1500秒、250秒となり、全体として5250秒を要することが判る。
【0073】
エッチングは通常の洗浄よりも長い60秒としているが、エッチングが洗浄を兼ねているので、改めて洗浄を行なう必要がなくなるため、エッチング工程や洗浄工程のたびに必要となる搬送、リンス、乾燥は1回で済む。したがって、後述する実施例2のように第1絶縁膜GIに膜厚差を設けるためのエッチングと第1絶縁膜GI全体の洗浄を行なう工程を別々に行なう場合(4750秒+4750秒=9500秒)に比べ、全体に要する時間が大幅に短縮されている。
その後、図中(i)のメタルスパッタ工程へと続く。
【0074】
[実施例2]
図8ないし図10は、図2に示した表示装置の製造方法の他の実施例を示し、各工程の図は図2のA−A’線における断面を示している。図8ないし図10にわたって経時的になされる各工程は(a)ないし(o)の一連の符号で示している。
【0075】
図8ないし図10において、その(a)から(f)までの工程においては図3ないし図5の(a)から(f)までの工程と同じで、(j)から(o)までの工程においては図3ないし図5の(i)から(n)までの工程と同じである。このため、以下では、図8ないし図10の(g)から(i)までの工程を説明する。
【0076】
工程(図9(g))
この前での工程(図8(f))では、ホトレジスト膜106をマスクとし、半導体層PSの形成領域のうち容量素子の電極CT1の形成領域に相当する部分に、高濃度の燐(P+)からなる不純物118をインプラしたものである。
【0077】
そして、この工程(図9(g))において、該ホトレジスト膜106をそのまま残存させ、これをマスクとして希フッ酸処理121を行なう。この希フッ酸処理はゲート絶縁膜105の表面をそのゲート絶縁膜105が残存する程度に選択エッチングするためのものである。
【0078】
ここでのエッチングはそのエッチングレートが通常のゲート絶縁膜の場合よりも速いことに特徴を有する。前の工程(図8(f))で高濃度の燐(P+)からなる不純物118が打ち込まれた領域となっているからである。尚、マスクを用いてエッチングしているので、必要な膜厚差を得るためのエッチング時間は実施例1の場合に比べて少なくて済む。
【0079】
工程(図9(h))
前記ホトレジスト膜106を除去し、ゲート絶縁膜105の表面の全域を露出させる。ここで、図11(b)は、前記工程(図9(g))と本工程との図を改めて示したもので、該ホトレジスト膜106を除去した後において、容量素子の容量電極の形成領域に相当するゲート酸化膜105に形成された凹陥部の側壁面の角度(垂線に対する角度)501を示したものである。
この場合の該角度501は大きく形成され、換言すれば、なだらかな斜面を有する側壁面として形成されるようになる。
【0080】
ちなみに、図11(a)は、実施例1の場合における工程中のうち、図4(h)に示す工程を改めて示したものである。洗浄を行なった後において、容量素子Cstgの容量電極の形成領域に相当するゲート絶縁膜105に形成された凹陥部の側壁面の角度(垂線に対する角度)502を示している。ゲート絶縁膜105の全面に均一に洗浄をしたために、凹陥部の側壁面の角度502は実施例2による場合の角度501よりも大きく、斜面のなだらかさは強調されたものとなっている。よって、この上に膜を形成した場合、カバレッジの点で有利となる。但し、斜面部分に必要な領域は広くなってしまう。
【0081】
但し、この実施例の場合、次の工程で洗浄をする必要から、洗浄時間によっては図中に示した凹陥部の側壁面の角度501より大きくなる場合がある。しかし、その洗浄は極めて短時間であることから、実施例1の場合における凹陥部の側壁面の角度502よりも大きくなることはない。
【0082】
工程(図9(i))
露出されたゲート絶縁膜105の表面の全的にわたって希フッ酸処理121を行なう。この希フッ酸処理はゲート酸化膜105の表面を洗浄するためのものである。
すなわち、実施例1の場合と異なり、ゲート酸化膜105の表面の洗浄およびエッチングを別個の工程でそれぞれ行なっている。
【0083】
この工程における洗浄では、既に膜厚差は形成済みなので、短時間で済む。短時間なので、エッチングレートの差による膜厚差はほとんど生じない。但し、長時間行なうことにより更に膜厚差を設けるようにしても良い。
そして、その後の工程では、実施例1の場合と同様にゲート絶縁膜105上に金属層122が形成され、上述した工程を経るようになる。
【0084】
上述した製造方法において、その特徴部をなす工程(図9(g))および工程(図9(i))に要する時間を示した表を図7(b)に示す。
図7(b)において、当該工程はその前後の工程とともに、すなわち、図8ないし図10に示した一連の符号のうち(f)から(j)までを示し、当該工程は(g)および(i)に相当したものとなっている。
【0085】
図中(f)で容量部のインプラを経て、次の工程(図中(g))では、搬送、エッチング、リンス、乾燥、搬送の各工程が順次なされ、それぞれ30秒、30秒、60秒、60秒、10秒の時間を要するようになっている。したがって、この工程における時間は全体として190秒要することが確認される。尚、エッチング時間は実施例1と比べて短くてよい。
そして、各基板をロットに収納(25枚)させた後、ホトレジスト剥離を行なっている(図中(h))。この場合に要する時間は10800秒である。
【0086】
その後、ロットから各基板を取り出し、次の工程(図中(i))で、各基板毎に、搬送、エッチング、リンス、乾燥、搬送の各工程が順次なされ、それぞれ30秒、30秒、60秒、60秒、10秒の時間を要するようになっている。したがって、この工程における時間は1枚あたり全体として190秒要することが確認される。尚、洗浄時間は実施例1のエッチングと比べて短くてよい。
そして、図中(j)のメタルスパッタ工程へと続く。
【0087】
なお、図(g)で示した各工程をロット単位当たりで要した時間を換算すると、搬送、エッチング、リンス、乾燥、搬送において、それぞれ750秒、750秒、1500秒、1500秒、1500秒、250秒となり、全体として4750秒を要し、同様に図(i)で示した各工程もエッチングが洗浄に変わったことを除いて同様であり、全体として4750秒を要する。
【0088】
実施例1の場合と比較して、搬送、リンス、乾燥が2回行われるため、全体としては実施例1の場合よりも時間がかかる。但し、エッチングレートの差を利用して膜厚差を形成しているわけではないので、膜厚差を大きく形成したい場合でも最初に形成する第1絶縁膜GIの膜厚を実施例1に比べて小さくすることができるという利点がある。また、エッチング時間だけを見れば実施例1よりも短縮できるという利点がある。
【0089】
[実施例3]
図12は、本発明による表示装置の他の実施例を示す平面図で、図2に対応した図となっている。
図2と比較して異なる構成は、容量素子の部分にある。すなわち、図12に示した容量素子Cstgは、その一方の電極CT1が半導体層PSで構成され、第1絶縁膜GIを介して容量信号線CLと一体になった他方の電極CT2がそれらの順で積層された構成となっている。
【0090】
このため、前記他方の電極CT2をたとえ一方の電極CT1の領域内に配置されるように形成しても、該他方の電極CT1と一体となった容量信号線CLは、第1絶縁膜GIを介して半導体層PSの周辺部(端部近傍)において、外輪郭部の段差部(図中円Cで囲まれる部分)を横切って形成しなければならないことを免れない。
【0091】
この場合、該第1絶縁膜GIは、その段差部において充分な膜厚を確保することができないことから、この部分にて一方の電極CT1と他方の電極CT2との間に絶縁破壊が生じ易いという不都合がある。
【0092】
このため、図12のB−B’線における断面図である図13に示すように、半導体層PSの外輪郭部であって容量信号線CLが跨る部分において、該第1絶縁膜GIを厚く構成し、その膜厚は前記一方の電極CT1を構成する半導体層PSの上面に形成される第1絶縁膜GIのそれよりも大きくなっている。
【0093】
この場合、第1絶縁膜GIの前記膜厚を厚く形成した部分の膜厚の最大値は、薄膜トランジスタTFTの形成領域における半導体層PSの上面に形成された第1絶縁膜GIの膜厚とほぼ等しく設定することができる。
【0094】
そして、このような構成において、第1絶縁膜GIの前記膜厚を厚く形成した部分の下層に位置づけられる半導体層PSは、前記一方の電極CT1を構成する部分と比較し不純物濃度が小さくなっている。この構成は、製造工数の増大をもたらすことなく、第1絶縁膜GIにおいて上述したような膜厚を大きくする製造方法(後述する)から由来するものである。
【0095】
《製造方法》
図14ないし図16は、図12に示した表示装置の製造方法の一実施例を示し、各工程の図は図12のB−B’線における断面を示している。図14ないし図16にわたって経時的になされる各工程は(a)ないし(n)の一連の符号で示している。
【0096】
これらの工程は、半導体層PSの一部に選択的にインプラして容量素子Cstgの一方の電極CT1を形成する際のマスクMSKの孔開けのパターンが異なるのみで、他は実施例1に示した工程(図3ないし図5)と同じである。このため、以下では、前記マスクの形成の工程、すなわち、図14(f)に示す工程のみを説明する。
【0097】
工程(図14(f))
この工程の前では、ゲート絶縁膜105によって被われた半導体層PSに、該ゲート絶縁膜105を通して、低濃度のボロン(B+)からなる不純物117をインプラしたものである。該半導体層PSを用いて形成する薄膜トランジスタTFTの閾値制御のためである。
【0098】
そして、この工程(図14(f))では、図3(f)の場合と同様に、該半導体層PSの容量素子の電極CT1の形成領域に相当する部分に、高濃度の燐(P+)からなる不純物を選択的にインプラするためのマスクをホトレジスト膜106によって形成する。
【0099】
ここで、図3(f)の場合と比較して異なるのは、該ホトレジスト膜106の孔開けの形状である。このホトレジスト膜106の孔の輪郭は図12に重ねて示した太線枠MSKに相当する。本実施例では、絶縁破壊の生じやすい部分、すなわち、電極CT2と一体につながって半導体層PSの形成領域外まで延在する部分(例えば容量信号線CLが半導体層PSの端部を跨ぐ部分)を、ホトレジスト膜106によって被った点である(但し、このホトレジスト膜106の形成時点では電極CT2や容量信号線CLは形成されていないので、厳密に言えば後にこれらの導体層が形成された場合に半導体層PSの端部を跨ぐこととなる領域を被うことに相当する)。
【0100】
こうすることで、絶縁破壊の生じやすい端部では半導体層PSに高濃度の燐(P+)からなる不純物がインプラされるのを回避することができるので、この部分では電極CT1が形成されない。
【0101】
さらに、このようにすることによって、この部分のゲート絶縁膜105(第1絶縁膜GI)にも不純物がインプラされなくなるので、実施例1のようなエッチングレートの差を利用した膜厚差の形成や実施例2のようなマスクによるエッチングをした場合でも、この部分のゲート絶縁膜105の膜厚は容量素子の電極CT1と重畳する部分のゲート絶縁膜105の膜厚よりも厚くなる。これによって、絶縁破壊が起こりにくくなる。
【0102】
本実施例では、実施例1と同様に、この後の工程でホトレジスト膜106を除去した後に希フッ酸処理をする際に、図15(h)に示すように、絶縁破壊の起こりやすい半導体層PSの端部においてこれを被うゲート絶縁膜105の膜厚が薄く形成されるのを防止し、その周囲のゲート絶縁膜105の表面から突出した形状となる程度に充分な膜厚を確保することができる。
【0103】
この、突出部はそのまま除去されることなく残存し、上述したように、図15(j)に示す工程において、たとえば容量信号線CLを形成した場合に、特に絶縁破壊が生じ易い前記部分にて、半導体層PSで形成した容量電極CT1との間隔を充分に確保することができる。
【0104】
尚、絶縁破壊の起こりやすい部分としては、容量信号線CLが半導体層PSの端部を跨ぐ部分に限られず、例えば電極CT2を半導体層PSよりも大きく形成した場合には半導体層PSの形成領域外に延在する部分(半導体層PSの端部を跨ぐ部分)でも起こりうるので、この箇所についてもホトレジスト膜106で被うことによって同様に本発明を適用できる。次に述べる実施例4の場合も同様である。
【0105】
[実施例4]
図17ないし図19は、図12からなる構成の表示装置の製造方法の他の実施例を示し、各工程の図は図12のB−B’線における断面を示している。図17ないし図19にわたって経時的になされる各工程は(a)ないし(o)の一連の符号で示している。
【0106】
これらの工程も、半導体層PSの一部に選択的にインプラして容量素子Cstgの一方の電極CT1を形成する際のマスクの孔開けのパターンが異なるのみで、他は実施例2に示した工程(図8ないし図10)と同じである。そして、マスクの孔開けのパターンは実施例3で説明したものと同じである。
【0107】
上述した実施例1から実施例4は、表示装置のうち液晶表示装置について説明したものであるが、それ以外の表示装置、たとえば有機EL表示装置にも適用できるものである。有機EL表示装置の各画素においても薄膜トランジスタと容量素子を備えて構成されるからである。
上述した各実施例はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施例での効果を単独であるいは相乗して奏することができるからである。
【符号の説明】
【0108】
GL……ゲート信号線、DL……ドレイン信号線、PS……半導体層、DT……ドレイン電極、ST……ソース電極、CH1、CH2……コンタクトホール、CT1……容量素子の一方の電極、CT2……容量素子の他方の電極、CL……容量信号線、GI……第1絶縁膜。
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置およびその製造方法に係り、たとえばアクティブ・マトリクス型の液晶表示装置あるいは有機EL表示装置等およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブ・マトリクス型の表示装置は、その基板の面に、そのx方向に延在されy方向に並設されるゲート信号線(走査信号線)とy方向に延在されx方向に並設されるドレイン信号線(映像信号線)とで囲まれる領域を画素領域とし、この画素領域の集合体を表示部として構成している。
【0003】
各画素領域には、当該画素領域を囲む一対のゲート信号線のうち一方の側のゲート信号線からの走査信号によって駆動されるスイッチング素子と、このスイッチング素子を介して当該画素領域を囲む一対のドレイン信号線のうち一方の側のドレイン信号線からの映像信号が供給される電極とが備えられている。
【0004】
この電極は、液晶表示装置の場合にあっては液晶を間にして配置される他方の電極との間に該映像信号に対応する電圧を生じせしめるようになっている。有機EL表示装置の場合にあっては、様々な方式があるが、一例を挙げると、この電極は、映像信号を取り込む容量素子の電極である。そして、この容量素子に取り込まれた映像信号に対応して有機発光層を間に配置される一方の電極と他方の電極との間に該映像信号に対応する電流を生じせしめる回路を備えている。
【0005】
このように構成される表示装置は、表示部の各画素を、前記ゲート信号線を共通とする画素群(ライン)を順次走査させて駆動するようにしているが、同じ画素群を次に駆動させるまでの間に、該画素群に供給された映像信号を蓄積させておくための容量素子を備えている。
【0006】
そして、前記スイッチング素子である薄膜トランジスタ、および容量素子は、それぞれ所定パターンに形成された半導体層、絶縁層、および金属層等の積層体で構成されているが、該スイッチング素子のゲート絶縁膜と容量素子の誘電体膜は共通の絶縁膜で形成されるのが通常となっている。製造プロセスの低減を図らんとしているからである。
【0007】
しかし、上述した構成において、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜は、該薄膜トランジスタの特性が定められていることから、その膜厚が予め規定され、この結果、容量素子の誘電体膜の厚さも設定されてしまうという不都合が生じる。
【0008】
すなわち、画素領域内に形成される容量素子において、比較的大きな容量を得ようとした場合、その誘電体膜の膜厚が規定されているため、面積を大きくせざるを得ず、その結果、いわゆる開口率を低下させてしまうことになる。
【0009】
そこで、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜と比較し容量素子の誘電体膜を薄くする工程を新たに付加させたものが知られている。容量素子の形成領域に形成されたゲート絶縁膜をマスクを用いた選択エッチングをして除去し、該マスクを取り除いた後に熱酸化膜を形成するようにしたものである。
このような技術としては、たとえば下記特許文献に開示がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−175154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述した構成は、膜厚差をもたせるゲート絶縁膜を形成した後に、容量素子を形成する領域(ゲート絶縁膜の膜厚を薄く形成した領域)に高濃度の不純物をインプラし、該ゲート絶縁膜の下層に配置される半導体層を導電化させており、このインプラを行なう場合にも新たなマスクを形成しなければならないものであった。
【0012】
また、マスク(ホトレジスト膜)を形成した後に、それを除去する場合には、該マスクの形成面が汚染されていることから、洗浄と称される工程が付加されるのが通常である。
このことから、製造工数が増大し、その解決策が要望されるに至った。
【0013】
また、このように構成された容量素子において、その絶縁膜の上層に形成される他方の電極に該半導体層の形成領域外にまで延在する配線層等を形成した場合に、該絶縁膜の下層の半導体層(導電化されている)からなる電極と配線層との間で、絶縁破壊を起してしまうという不都合が生じることが見出された。容量素子の形成領域における絶縁膜の膜厚を薄く形成した場合に、その絶縁膜が半導体層の段差部で充分な膜厚で形成されないからである。
【0014】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、製造工数の低減を図った表示装置の製造方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、容量素子の各電極における絶縁破壊を回避させた表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0016】
(1)
本発明による表示装置の製造方法は、たとえば、基板の上面に半導体層を形成し、前記半導体層の上面に絶縁膜を形成し、
第1領域を被い第2領域を露出させたマスクを用いて、前記第2領域の前記半導体層に前記絶縁膜を通して不純物の打ち込みを行い、
前記マスクを除去した後に、前記第1領域及び前記第2領域の前記絶縁膜の表面を前記第2領域の前記絶縁膜が残存する程度にエッチングすることにより、前記第2領域の絶縁膜の膜厚を前記第1領域の絶縁膜の膜厚よりも薄くすることを特徴とする。
【0017】
(2)
本発明による表示装置の製造方法は、たとえば、(1)の構成を前提とし、前記第1領域の絶縁膜を薄膜トランジスタのゲート絶縁膜に用い、前記第2領域の絶縁膜を容量素子の誘電体膜に用いて、前記薄膜トランジスタと前記容量素子とを形成することを特徴とする。
【0018】
(3)
本発明による表示装置の製造方法は、たとえば、基板の上面に半導体層を形成し、前記半導体層の上面に絶縁膜を形成し、
第1領域を被い第2領域を露出させたマスクを用いて、前記第2領域の前記半導体層に前記絶縁膜を通して不純物の打ち込みを行い、
前記マスクを残存させたまま、前記第2領域の前記絶縁膜の表面を前記第2領域の前記絶縁膜が残存する程度にエッチングすることにより、前記第2領域の絶縁膜の膜厚を前記第1領域の絶縁膜の膜厚よりも薄くし、
前記マスクを除去した後に、前記第1領域及び前記第2領域の前記絶縁膜の表面を洗浄することを特徴とする。
【0019】
(4)
本発明による表示装置の製造方法は、たとえば、(3)の構成を前提とし、前記第1領域の絶縁膜を薄膜トランジスタのゲート絶縁膜に用い、前記第2領域の絶縁膜を容量素子の誘電体膜に用いて、前記薄膜トランジスタと前記容量素子とを形成することを特徴とする。
【0020】
(5)
本発明による表示装置は、たとえば、半導体層の導電化された部分を一方の電極とし、前記半導体層を被う絶縁膜を誘電体膜とし、前記絶縁膜上に形成され前記一方の電極に重畳する部分を有する導体層を他方の電極として構成する容量素子を備える表示装置であって、
前記導体層は、前記一方の電極に重畳する部分の導体層と一体につながっているとともに前記半導体層の形成領域内から前記半導体層の形成領域外まで延在され、かつ、前記絶縁膜上に形成された延在部分を有し、
前記絶縁膜は、前記半導体層と前記導体層の前記延在部分との両方に重畳する領域において、その膜厚が前記一方の電極と重畳する部分の前記絶縁膜の膜厚よりも厚く形成されていることを特徴とする。
【0021】
(6)
本発明による表示装置は、たとえば、(5)の構成を前提とし、前記半導体層は、前記半導体層の形成領域内から前記半導体層の形成領域外まで延在された前記導体層の前記延在部分と重畳する領域において、その不純物濃度が、前記一方の電極を構成する部分の不純物濃度より小さくなっていることを特徴とする。
【0022】
(7)
本発明による表示装置は、たとえば、(5)または(6)の構成を前提とし、前記導体層の前記延在部分は、前記他方の電極に電位を与える配線層であることを特徴とする。
【0023】
(8)
本発明による表示装置は、たとえば、絶縁膜で被われた半導体層の領域に第1領域と第2領域とを有し、前記第1領域の部分にてその上面に形成される前記絶縁膜をゲート絶縁膜とする薄膜トランジスタと、前記第2領域の部分にてその上面に形成される前記絶縁膜を誘電体膜とする容量素子とを備える表示装置であって、
前記容量素子は、前記半導体層の前記第2領域に不純物がドープされて一方の電極を構成し、前記第2領域上の前記絶縁膜の上面に形成される導体層を他方の電極として構成し、前記他方の電極は前記半導体層の形成領域外から延在される配線層と接続されて形成され、
前記半導体層のうち少なくとも前記配線層が重畳される領域には前記一方の電極を構成する前記第2領域の不純物濃度よりも小さい不純物濃度を有する第3領域を備えるとともに、
前記第2領域上の前記絶縁膜は前記第1領域および前記第3領域上の前記絶縁膜よりも膜厚が小さくなっていることを特徴とする。
【0024】
(9)
本発明による表示装置の製造方法は、たとえば、(1)ないし(4)のいずれかの構成を前提とし、前記表示装置は液晶表示装置であることを特徴とする。
【0025】
(10)
本発明による表示装置は、たとえば、(5)ないし(8)のいずれかの構成を前提とし、前記表示装置は液晶表示装置であることを特徴とする。
なお、本発明は以上の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【発明の効果】
【0026】
このように構成された表示装置の製造方法によれば、いずれもマスク工程を1回行なうだけで、半導体層を選択的に導電化でき、該半導体層を被って形成された絶縁膜のうち該導電化された部分上の絶縁膜の膜厚をそれ以外の部分の絶縁膜の膜厚よりも小さくすることができる。
また、上述した表示装置によれば、導電化された半導体層、絶縁膜、前記半導体層の非形成領域外に延在する延在部を有する導体層との順次積層体からなる容量素子において、前記導電化された半導体層と前記延在部との前記半導体層の段差部における絶縁破壊が生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による表示装置の製造方法の一実施例の要部を示す説明図である。
【図2】本発明による表示装置の画素の構成の一実施例を示す要部平面図である。
【図3】図2に示す表示装置の製造方法の一実施例を示す工程図で、図4、図5とともに一連の工程を示した図である。
【図4】図2に示す表示装置の製造方法の一実施例を示す工程図で、図3、図5とともに一連の工程を示した図である。
【図5】図2に示す表示装置の製造方法の一実施例を示す工程図で、図3、図4とともに一連の工程を示した図である。
【図6】図2のA−A’線における断面を示す図である。
【図7】本発明による表示装置の製造方法の要部における工程に要する時間を示した図である。
【図8】図2に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図9、図10とともに一連の工程を示した図である。
【図9】図2に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図8、図10とともに一連の工程を示した図である。
【図10】図2に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図8、図9とともに一連の工程を示した図である。
【図11】本発明による表示装置の製造方法の要部において絶縁膜に形成される凹陥部の側壁面における角度を説明した図である。
【図12】本発明による表示装置の画素の構成の他の実施例を示す要部平面図である。
【図13】図12のB−B’線における断面を示す図である。
【図14】図12に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図15、図16とともに一連の工程を示した図である。
【図15】図12に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図14、図16とともに一連の工程を示した図である。
【図16】図12に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図14、図15とともに一連の工程を示した図である。
【図17】図12に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図18、図19とともに一連の工程を示した図である。
【図18】図12に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図17、図19とともに一連の工程を示した図である。
【図19】図12に示す表示装置の製造方法の他の実施例を示す工程図で、図17、図18とともに一連の工程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明による表示装置を液晶表示装置を例にとり、その製造方法とともに実施例を説明する。
[実施例1]
《画素の構成》
図2は、本発明による液晶表示装置の画素の構成を示す構成図で、矩形状からなる該画素のうち右上の薄膜トランジスタTFTが形成されている部分の詳細平面図を示している。また、図6は図2のA−A’線における断面図を示している。
【0029】
たとえばガラスからなる基板SUB1の上面(液晶側の面)にはシリコン窒化膜(SiN)102およびシリコン酸化膜(SiO2)103の積層体からなる下地層GWが形成されている。この下地層GWは基板SUB1に含まれるイオン性不純物が後述の薄膜トランジスタTFTに影響を及ぼすのを回避するために形成されている。
【0030】
そして、この下地層GWの表面には、たとえばポリシリコン層からなる半導体層PSが形成されている。この半導体層PSはたとえばプラズマCVD装置によって成膜したアモルファスSi膜をエキシマレーザによって多結晶化したものである。
【0031】
この半導体層PSは、薄膜トランジスタTFTのチャネル層、ドレイン領域SD1、ソース領域SD2として形成されるのみでなく、ソース領域SD2にそのまま接続される容量素子Cstgの一方の電極CT1を構成するようになっている。
【0032】
このため、該半導体層PSは、後述するドレイン信号線DLの直下に形成される部分と、該ドレイン信号線DLに一部沿って形成され、その後屈曲して後述するゲート信号線GLに近接して平行に走行する部分、画素領域内に一部延在して形成される部分とが一体となって形成されている。
【0033】
そして、このように半導体層PSが形成された透明基板SUB1の表面には、該半導体層PSをも覆ってたとえばSiO2あるいはSiNからなる第1絶縁膜GI(図6参照)が形成されている。
【0034】
この第1絶縁膜GIは前記薄膜トランジスタTFTのゲート絶縁膜として機能するともに、後述する容量素子Cstgの誘電体膜として機能するようになっている。
【0035】
尚、半導体層PSの一部は、マスクを用い、この第1絶縁膜GIを通して不純物の注入(インプラ)が行われて導電化されて、容量素子Cstgの一方の電極CT1が形成されるようになっている。
【0036】
ここで、この第1絶縁膜GIは、容量素子Cstgの誘電体膜として機能する部分において凹陥部が形成され、他の領域における部分よりも膜厚が薄く形成されている。第1絶縁膜GIの膜厚は例えば薄膜トランジスタTFTの設定された閾値等によって規定されるのが通常であり、それよりも容量素子Cstgの誘電体膜として機能する部分を薄く形成することにより、その容量値を大きくでき、ひいては容量素子Cstgの全体の面積を小さくできるからである。
【0037】
そして、第1絶縁膜GIの上面には、図中x方向に延在されるゲート信号線GLが形成され、GT2の部分で前記半導体層PSの一部と交差するようにして配置されている。このゲート信号線GLは図中下側にやはり図中x方向に延在されて形成される図示しないゲート信号線とで当該画素領域を囲むようになっている。
【0038】
このゲート信号線GLは、その一部において、画素領域内に若干延在され、その延在部GT1は前記半導体層PSの一部と交差するようになっている。この延在部は薄膜トランジスタTFTのゲート電極GT1として形成されるようになっている。
【0039】
ここで、薄膜トランジスタTFTのゲート電極GTは、前記延在部(GT1)のみでなく、前記ゲート信号線GL自体が半導体層PSを横切る部分(GT2)においても形成された構造となっている。但し、本発明は、このような構造に限られず、いずれか一方のみを有する構造としても良い。
【0040】
なお、このゲート信号線GLの形成後は、第1絶縁膜GIを介して不純物のイオン打ち込みをし、前記半導体層PSにおいて前記ゲート電極GTの直下を除く領域を導電化させることによって、薄膜トランジスタTFTのソース領域SD2およびドレイン領域SD1が形成される。
【0041】
ここで、該薄膜トランジスタTFTは、その半導体層PSにおいてゲート電極GT1、GT2の直下の領域(チャネル領域)からソース領域SD2あるいはドレイン領域SD1までの領域において比較的不純物量の小さい領域、すなわちLDD(Lightly Doped Drain)領域LDが形成された構成となっている。ゲート電極GTとソース領域SD2あるいはドレイン領域SD1との間の電界集中を回避させるためである。
【0042】
なお、このゲート信号線GLは耐熱性を有する導電膜であればよく、たとえばAl、Cr、Ta、TiW等が選択される。この実施例ではゲート信号線GLとしてたとえばTiWが用いられている。
【0043】
また、第1絶縁膜GIの上面には、前記ゲート信号線GLと同層でかつ同一の材料で形成される容量信号線CLが該ゲート信号線GLと平行になるように形成されている。この容量信号線CLは、半導体層PSで形成された容量素子Cstgの一方の前記電極CT1の部分に交差するように形成されているともに、該電極CT1の部分と充分に重なるように比較的面積の広い部分が形成されたパターンとして形成されている。この比較的面積の広い部分は前記容量素子Cstgの他方の電極CT2を構成している。この容量素子Cstgの誘電体膜は前記第1絶縁膜GIである。
【0044】
前記ゲート信号線GLおよび容量信号線CL(および容量電極CT2)をも被って前記第1絶縁膜GIの上面には第2絶縁膜IN(図6参照)がたとえばSiO2あるいはSiNによって形成されている。
【0045】
そして、この第2絶縁膜INの上面には、図中y方向に延在されるドレイン信号線DLが形成されている。このドレイン信号線DLは、図中左側にやはり図中y方向に延在されて形成される図示しないドレイン信号線DLとで当該画素領域を囲むようになっている。
ドレイン信号線DLは、たとえばアルミニウム、TiWを下地層としたアルミニウム、MoSiを下地層としたアルミニウムが用いられている。
【0046】
このドレイン信号線DLは前記半導体層PSのドレイン領域SD1に重畳するように配置され、このドレイン領域SD1の部分にて、第2絶縁膜INおよび第1絶縁膜GIを貫通し形成されたコンタクトホールCH1を通して該ドレイン領域SD1に接続されている。このようにして、ドレイン信号線DLの一部はドレイン電極DTとしての機能を有している。
【0047】
また、前記コンタクトホールCH1の形成の際に、薄膜トランジスタTFTのソース領域SD2を露出させるために、やはり第2絶縁膜INおよび第1絶縁膜GIを貫通して形成されたコンタクトホールCH2が形成されるようになっている。
このコンタクトホールCH2は、第2絶縁膜IN上において形成されるソース電極ST(図6参照)とソース領域SD2との導通を図るためのものである。
【0048】
尚、図6に示すように、ソース電極STの一部を容量素子Cstgの他方の電極CT2と重畳する領域まで延在させ、電極CT3とし、電極CT2、第2絶縁膜IN、電極CT3によって第2の容量素子を形成するようにしても良い。
【0049】
また、第2絶縁膜INの上には、ソース電極STをも覆って図示しない層間絶縁膜(第3絶縁膜)を形成し、第3絶縁膜の上には図示しない画素電極を形成する。第3絶縁膜には図示しないコンタクトホールが形成され、画素電極とソース電極STとが接続される。
【0050】
これによって、ゲート信号線GLからの走査信号によって駆動される薄膜トランジスタTFTを介して、ドレイン信号線DLからの映像信号が該画素電極に供給されるようになる。この場合、前記容量素子Cstgによって該映像信号が画素電極に比較的長く蓄積されるようになっている。
【0051】
《製造方法》
図3ないし図5は、図2に示した液晶表示装置の製造方法の一実施例を示す工程図で、各工程の図は図2のA−A’線に沿った断面図を示している。なお、図3ないし図5にわたって経時的になされる各工程は(a)ないし(n)の一連の符号で示している。
【0052】
以下、工程順に以下説明をする。
工程1.(図3(a))
たとえばガラスからなる基板101を用意し、この一方の表面(液晶側の面)に、たとえばプラズマCVD法を用いて、シリコン窒化膜(SiN)102、シリコン酸化膜(SiO2)103、アモルファスシリコン(a−Si)層104を順次積層させて形成する。
ここで、ガラスからなる基板101は図2に示した透明基板SUB1に、シリコン窒化膜(SiN)102、シリコン酸化膜(SiO2)103は図6に示した下地層GWに相当するものである。
【0053】
工程2.(図3(b))
熱処理を施すことにより、前記アモルファスシリコン(a−Si)104に含まれる水素を脱離させた後、たとえばエキシマレーザアニール(ELA)装置を用いて前記アモルファスシリコン(a−Si)104を結晶化し、これによりポリシリコン(poly−Si)層116を形成する。そして、このポリシリコン(poly−Si)層116をフォトリソグラフィ技術を用いた選択エッチング方法により、島状のパターンに形成する。
このように形成されるポリシリコン(poly−Si)層116は図6に示した半導体層PSに相当するものである。
【0054】
工程3.(図3(c))
たとえばプラズマCVD方法を用いて、ポリシリコン(poly−Si)層116をも被って、基板101の表面にゲート絶縁膜105を生成する。このゲート絶縁膜105は図6に示した第1絶縁膜GIに相当するものである。
【0055】
工程4.(図3(d))
ゲート絶縁膜105を通して、ポリシリコン(poly−Si)層116に低濃度のボロン(B+)からなる不純物117をインプラする。この作業は、該ポリシリコン(poly−Si)層116によって形成しようとする薄膜トランジスタTFTの閾値制御のために行なわれるものである。
【0056】
工程5.(図3(e))
ホトレジスト膜106を形成し、ポリシリコン(poly−Si)層116の形成領域のうち、容量電極(図6の電極CT1に相当する)を形成しようとする領域に相当する部分のホトレジスト膜106に孔開けを行なう。このホトレジスト膜106の孔の該輪郭は図2に重ねて示した太線枠MSKに相当する。
【0057】
工程6.(図3(f))
残存したホトレジスト膜106をマスクとし、高濃度の燐(P+)からなる不純物(図中符号118で示す)をインプラする。該不純物はホトレジスト膜106から露出されたゲート絶縁膜105を通して、ポリシリコン(poly−Si)層116に打ち込まれ、この部分が導電化されて容量電極CT1の機能を有するようになる。
【0058】
工程7.(図4(g))
前記ホトレジスト膜106を除去し、ゲート絶縁膜105の表面の全域を露出させる。
【0059】
工程8.(図4(h))
該ゲート酸化膜105の表面に希フッ酸処理121を行なう。この希フッ酸処理はゲート絶縁膜105の表面を洗浄する処理となっている。該ゲート絶縁膜105の表面には、ホトレジスト膜106を除去した後で、不純物が付着しているからである。このため、通常行われている洗浄はこの不純物を除去するに足るだけの短時間で行なわれている。
【0060】
しかし、本実施例の洗浄においては、通常行われている洗浄よりも長時間行なうことによって、エッチングに相当する処理を行っている。そして、本実施例の洗浄を兼ねたエッチングにより、図からも明らかなように、容量素子の電極の形成領域を被うゲート絶縁膜105をそれ以外の領域のゲート絶縁膜105よりも薄く形成するエッチングが必然的になされる特徴を有する。その理由は、ゲート絶縁膜105のうち、工程6によって高濃度の燐(P+)からなる不純物のインプラがなされた部分はそれ以外の部分よりもエッチングレートが速くなることを利用して、同じ時間エッチングした場合でもその部分においてそれ以外の部分よりも膜厚が小さく形成されるようになるからである。尚、通常行われている短時間の洗浄では表面のわずかな部分を除去するのみなので、このような膜厚差はほとんど生じず、実質的に膜厚差は0である。
【0061】
本実施例のゲート絶縁膜105の洗浄の詳細な過程を、図1において、前の工程である工程7(図1(g)で示す)に対する本工程である工程8(図1(h)で示す)との比較で示している。容量素子の電極の形成領域以外の領域を被うゲート絶縁膜105の表面は、僅かな深さで洗浄(エッチング)されているにも拘わらず(図中符号125で示す)、容量素子の電極の形成領域を被うゲート絶縁膜105の表面は、洗浄もなされるがそのエッチングレートが大きいがため(図中符号126で示す)に、あたかも別工程でエッチングがなされたかの如く、その周辺の表面に対して深さをもつ凹陥部が形成される。
【0062】
また、図1(h)において、符号123は本工程で行なう洗浄前におけるゲート絶縁膜105の表面を、符号124は本工程で行なう洗浄後におけるゲート絶縁膜105の表面を示している。
このようにして、本工程では不純物のインプラをした箇所とインプラしていない箇所の第1絶縁膜GIのエッチングレートの差を利用して、膜厚差を設けるエッチングを行なうことにより、表面除去も行われるため、洗浄の効果も果たすことができる。
【0063】
工程9.(図4(i))
たとえばスパッタリング方法を用い、ゲート絶縁膜105の上面に導体層として金属層122を形成する。この金属層122は図2で示したゲート電極GT(およびゲート信号線GL)および容量信号線CL(および電極CT2)を形成するための材料層からなるものである。
【0064】
工程10.(図4(j))
該金属層122の上面にホトレジスト膜110を形成し、このホトレジスト膜110をフォトリソグラフィ技術により孔開けをし、前記金属層122の一部を露出させる。
そして、残存したホトレジスト膜110をマスクとし、それから露出された該金属層122をエッチングする。
この場合、いわゆる自己整合で薄膜トランジスタTFTの部分にLDD部(Lightly Doped Drain)を形成するため、該金属層122のエッチングはホトレジスト膜110の開口端部より数μm程度に後退するまで行なう。
【0065】
工程11.(図4(k))
前記ホトレジスト膜110を残存させたまま、このホトレジスト膜110をマスクとし、燐(P+)からなる不純物119をインプラする。これにより、薄膜トランジスタTFTの形成領域において、ドレイン領域およびソース領域111が形成される。
これとともに、薄膜トランジスタTFTの形成領域において、ゲート電極GTの直下から前記ドレイン領域あるいはソース領域111までの間において前記不純物がインプラされていない領域が数μmの幅を有して形成される。
【0066】
工程12.(図5(l))
前記ホトレジスト膜110を除去し、再び燐(P)からなる不純物120をインプラする。この場合の不純物の濃度は、前記工程11で用いたそれの濃度よりも低く、前記ドレイン領域およびソース領域にも打ち込まれるが、ゲート電極GTの直下から前記ドレイン領域およびソース領域111までの間の領域にも打ち込まれる。これにより後者の領域に前記LDD部112が形成される。
【0067】
工程13.(図5(m))
たとえばシリコン窒化膜113を全域に形成する。このシリコン窒化膜113は図6に示した第2絶縁膜INに相当するものである。そしてこのシリコン窒化膜113の形成後においてアニール処理を行なう。工程11および工程12でインプラされた不純物の活性化を行なうためである。
【0068】
工程14.(図5(n))
前記保護膜113および下層のゲート絶縁膜105を貫通する孔を設け、この孔から薄膜トランジスタTFTのドレイン領域およびソース領域を露出させ。その後、全域に金属層115を形成し、これを選択エッチングすることにより、該ドレイン領域に電気的に接続されたドレイン信号線およびドレイン電極、並びに、該ソース領域に電気的に接続されたソース電極をそれぞれ形成する。尚、ソース電極の一部を延在させて電極CT3を形成している。
この後、図示しない第3絶縁膜や画素電極等を形成する。画素電極は第3絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介してソース電極に接続されている。
【0069】
次に、上述した製造方法において、その特徴部をなす工程8(図4(h))に要する時間を示した表を図7(a)に示す。
図7(a)において、図中の(f)から(i)はそれぞれ図3ないし図5に示した一連の符号のうち(f)から(i)までの工程に相当し、工程8(図4(h))の工程は(h)に相当したものとなっている。
【0070】
図中(f)で容量部のインプラを経た後に、ホトレジスト剥離を行なっている(図中(g))。このホトレジスト剥離はロットで行い、該ロットにはたとえば25枚の基板(処理基板)が収納されている。この場合に要する時間は10800秒である。
【0071】
次の工程(図中(h))では、ロット内から取り出された各基板が一枚毎に処理され、搬送、エッチング、リンス、乾燥、搬送の各工程が順次なされ、それぞれ30秒、60秒、60秒、60秒、10秒の時間を要するようになっている。したがって、この工程における時間は1枚あたりでは全体として210秒という極めて短時間でなされることが確認される。尚、エッチングの時間は、第1絶縁膜GIの膜厚差が十分につく程度に設定する。
【0072】
ここで、図(h)で示した各工程をロット単位当たりで要した時間に換算すると、搬送、エッチング、リンス、乾燥、搬送において、それぞれ750秒、1500秒、1500秒、1500秒、1500秒、250秒となり、全体として5250秒を要することが判る。
【0073】
エッチングは通常の洗浄よりも長い60秒としているが、エッチングが洗浄を兼ねているので、改めて洗浄を行なう必要がなくなるため、エッチング工程や洗浄工程のたびに必要となる搬送、リンス、乾燥は1回で済む。したがって、後述する実施例2のように第1絶縁膜GIに膜厚差を設けるためのエッチングと第1絶縁膜GI全体の洗浄を行なう工程を別々に行なう場合(4750秒+4750秒=9500秒)に比べ、全体に要する時間が大幅に短縮されている。
その後、図中(i)のメタルスパッタ工程へと続く。
【0074】
[実施例2]
図8ないし図10は、図2に示した表示装置の製造方法の他の実施例を示し、各工程の図は図2のA−A’線における断面を示している。図8ないし図10にわたって経時的になされる各工程は(a)ないし(o)の一連の符号で示している。
【0075】
図8ないし図10において、その(a)から(f)までの工程においては図3ないし図5の(a)から(f)までの工程と同じで、(j)から(o)までの工程においては図3ないし図5の(i)から(n)までの工程と同じである。このため、以下では、図8ないし図10の(g)から(i)までの工程を説明する。
【0076】
工程(図9(g))
この前での工程(図8(f))では、ホトレジスト膜106をマスクとし、半導体層PSの形成領域のうち容量素子の電極CT1の形成領域に相当する部分に、高濃度の燐(P+)からなる不純物118をインプラしたものである。
【0077】
そして、この工程(図9(g))において、該ホトレジスト膜106をそのまま残存させ、これをマスクとして希フッ酸処理121を行なう。この希フッ酸処理はゲート絶縁膜105の表面をそのゲート絶縁膜105が残存する程度に選択エッチングするためのものである。
【0078】
ここでのエッチングはそのエッチングレートが通常のゲート絶縁膜の場合よりも速いことに特徴を有する。前の工程(図8(f))で高濃度の燐(P+)からなる不純物118が打ち込まれた領域となっているからである。尚、マスクを用いてエッチングしているので、必要な膜厚差を得るためのエッチング時間は実施例1の場合に比べて少なくて済む。
【0079】
工程(図9(h))
前記ホトレジスト膜106を除去し、ゲート絶縁膜105の表面の全域を露出させる。ここで、図11(b)は、前記工程(図9(g))と本工程との図を改めて示したもので、該ホトレジスト膜106を除去した後において、容量素子の容量電極の形成領域に相当するゲート酸化膜105に形成された凹陥部の側壁面の角度(垂線に対する角度)501を示したものである。
この場合の該角度501は大きく形成され、換言すれば、なだらかな斜面を有する側壁面として形成されるようになる。
【0080】
ちなみに、図11(a)は、実施例1の場合における工程中のうち、図4(h)に示す工程を改めて示したものである。洗浄を行なった後において、容量素子Cstgの容量電極の形成領域に相当するゲート絶縁膜105に形成された凹陥部の側壁面の角度(垂線に対する角度)502を示している。ゲート絶縁膜105の全面に均一に洗浄をしたために、凹陥部の側壁面の角度502は実施例2による場合の角度501よりも大きく、斜面のなだらかさは強調されたものとなっている。よって、この上に膜を形成した場合、カバレッジの点で有利となる。但し、斜面部分に必要な領域は広くなってしまう。
【0081】
但し、この実施例の場合、次の工程で洗浄をする必要から、洗浄時間によっては図中に示した凹陥部の側壁面の角度501より大きくなる場合がある。しかし、その洗浄は極めて短時間であることから、実施例1の場合における凹陥部の側壁面の角度502よりも大きくなることはない。
【0082】
工程(図9(i))
露出されたゲート絶縁膜105の表面の全的にわたって希フッ酸処理121を行なう。この希フッ酸処理はゲート酸化膜105の表面を洗浄するためのものである。
すなわち、実施例1の場合と異なり、ゲート酸化膜105の表面の洗浄およびエッチングを別個の工程でそれぞれ行なっている。
【0083】
この工程における洗浄では、既に膜厚差は形成済みなので、短時間で済む。短時間なので、エッチングレートの差による膜厚差はほとんど生じない。但し、長時間行なうことにより更に膜厚差を設けるようにしても良い。
そして、その後の工程では、実施例1の場合と同様にゲート絶縁膜105上に金属層122が形成され、上述した工程を経るようになる。
【0084】
上述した製造方法において、その特徴部をなす工程(図9(g))および工程(図9(i))に要する時間を示した表を図7(b)に示す。
図7(b)において、当該工程はその前後の工程とともに、すなわち、図8ないし図10に示した一連の符号のうち(f)から(j)までを示し、当該工程は(g)および(i)に相当したものとなっている。
【0085】
図中(f)で容量部のインプラを経て、次の工程(図中(g))では、搬送、エッチング、リンス、乾燥、搬送の各工程が順次なされ、それぞれ30秒、30秒、60秒、60秒、10秒の時間を要するようになっている。したがって、この工程における時間は全体として190秒要することが確認される。尚、エッチング時間は実施例1と比べて短くてよい。
そして、各基板をロットに収納(25枚)させた後、ホトレジスト剥離を行なっている(図中(h))。この場合に要する時間は10800秒である。
【0086】
その後、ロットから各基板を取り出し、次の工程(図中(i))で、各基板毎に、搬送、エッチング、リンス、乾燥、搬送の各工程が順次なされ、それぞれ30秒、30秒、60秒、60秒、10秒の時間を要するようになっている。したがって、この工程における時間は1枚あたり全体として190秒要することが確認される。尚、洗浄時間は実施例1のエッチングと比べて短くてよい。
そして、図中(j)のメタルスパッタ工程へと続く。
【0087】
なお、図(g)で示した各工程をロット単位当たりで要した時間を換算すると、搬送、エッチング、リンス、乾燥、搬送において、それぞれ750秒、750秒、1500秒、1500秒、1500秒、250秒となり、全体として4750秒を要し、同様に図(i)で示した各工程もエッチングが洗浄に変わったことを除いて同様であり、全体として4750秒を要する。
【0088】
実施例1の場合と比較して、搬送、リンス、乾燥が2回行われるため、全体としては実施例1の場合よりも時間がかかる。但し、エッチングレートの差を利用して膜厚差を形成しているわけではないので、膜厚差を大きく形成したい場合でも最初に形成する第1絶縁膜GIの膜厚を実施例1に比べて小さくすることができるという利点がある。また、エッチング時間だけを見れば実施例1よりも短縮できるという利点がある。
【0089】
[実施例3]
図12は、本発明による表示装置の他の実施例を示す平面図で、図2に対応した図となっている。
図2と比較して異なる構成は、容量素子の部分にある。すなわち、図12に示した容量素子Cstgは、その一方の電極CT1が半導体層PSで構成され、第1絶縁膜GIを介して容量信号線CLと一体になった他方の電極CT2がそれらの順で積層された構成となっている。
【0090】
このため、前記他方の電極CT2をたとえ一方の電極CT1の領域内に配置されるように形成しても、該他方の電極CT1と一体となった容量信号線CLは、第1絶縁膜GIを介して半導体層PSの周辺部(端部近傍)において、外輪郭部の段差部(図中円Cで囲まれる部分)を横切って形成しなければならないことを免れない。
【0091】
この場合、該第1絶縁膜GIは、その段差部において充分な膜厚を確保することができないことから、この部分にて一方の電極CT1と他方の電極CT2との間に絶縁破壊が生じ易いという不都合がある。
【0092】
このため、図12のB−B’線における断面図である図13に示すように、半導体層PSの外輪郭部であって容量信号線CLが跨る部分において、該第1絶縁膜GIを厚く構成し、その膜厚は前記一方の電極CT1を構成する半導体層PSの上面に形成される第1絶縁膜GIのそれよりも大きくなっている。
【0093】
この場合、第1絶縁膜GIの前記膜厚を厚く形成した部分の膜厚の最大値は、薄膜トランジスタTFTの形成領域における半導体層PSの上面に形成された第1絶縁膜GIの膜厚とほぼ等しく設定することができる。
【0094】
そして、このような構成において、第1絶縁膜GIの前記膜厚を厚く形成した部分の下層に位置づけられる半導体層PSは、前記一方の電極CT1を構成する部分と比較し不純物濃度が小さくなっている。この構成は、製造工数の増大をもたらすことなく、第1絶縁膜GIにおいて上述したような膜厚を大きくする製造方法(後述する)から由来するものである。
【0095】
《製造方法》
図14ないし図16は、図12に示した表示装置の製造方法の一実施例を示し、各工程の図は図12のB−B’線における断面を示している。図14ないし図16にわたって経時的になされる各工程は(a)ないし(n)の一連の符号で示している。
【0096】
これらの工程は、半導体層PSの一部に選択的にインプラして容量素子Cstgの一方の電極CT1を形成する際のマスクMSKの孔開けのパターンが異なるのみで、他は実施例1に示した工程(図3ないし図5)と同じである。このため、以下では、前記マスクの形成の工程、すなわち、図14(f)に示す工程のみを説明する。
【0097】
工程(図14(f))
この工程の前では、ゲート絶縁膜105によって被われた半導体層PSに、該ゲート絶縁膜105を通して、低濃度のボロン(B+)からなる不純物117をインプラしたものである。該半導体層PSを用いて形成する薄膜トランジスタTFTの閾値制御のためである。
【0098】
そして、この工程(図14(f))では、図3(f)の場合と同様に、該半導体層PSの容量素子の電極CT1の形成領域に相当する部分に、高濃度の燐(P+)からなる不純物を選択的にインプラするためのマスクをホトレジスト膜106によって形成する。
【0099】
ここで、図3(f)の場合と比較して異なるのは、該ホトレジスト膜106の孔開けの形状である。このホトレジスト膜106の孔の輪郭は図12に重ねて示した太線枠MSKに相当する。本実施例では、絶縁破壊の生じやすい部分、すなわち、電極CT2と一体につながって半導体層PSの形成領域外まで延在する部分(例えば容量信号線CLが半導体層PSの端部を跨ぐ部分)を、ホトレジスト膜106によって被った点である(但し、このホトレジスト膜106の形成時点では電極CT2や容量信号線CLは形成されていないので、厳密に言えば後にこれらの導体層が形成された場合に半導体層PSの端部を跨ぐこととなる領域を被うことに相当する)。
【0100】
こうすることで、絶縁破壊の生じやすい端部では半導体層PSに高濃度の燐(P+)からなる不純物がインプラされるのを回避することができるので、この部分では電極CT1が形成されない。
【0101】
さらに、このようにすることによって、この部分のゲート絶縁膜105(第1絶縁膜GI)にも不純物がインプラされなくなるので、実施例1のようなエッチングレートの差を利用した膜厚差の形成や実施例2のようなマスクによるエッチングをした場合でも、この部分のゲート絶縁膜105の膜厚は容量素子の電極CT1と重畳する部分のゲート絶縁膜105の膜厚よりも厚くなる。これによって、絶縁破壊が起こりにくくなる。
【0102】
本実施例では、実施例1と同様に、この後の工程でホトレジスト膜106を除去した後に希フッ酸処理をする際に、図15(h)に示すように、絶縁破壊の起こりやすい半導体層PSの端部においてこれを被うゲート絶縁膜105の膜厚が薄く形成されるのを防止し、その周囲のゲート絶縁膜105の表面から突出した形状となる程度に充分な膜厚を確保することができる。
【0103】
この、突出部はそのまま除去されることなく残存し、上述したように、図15(j)に示す工程において、たとえば容量信号線CLを形成した場合に、特に絶縁破壊が生じ易い前記部分にて、半導体層PSで形成した容量電極CT1との間隔を充分に確保することができる。
【0104】
尚、絶縁破壊の起こりやすい部分としては、容量信号線CLが半導体層PSの端部を跨ぐ部分に限られず、例えば電極CT2を半導体層PSよりも大きく形成した場合には半導体層PSの形成領域外に延在する部分(半導体層PSの端部を跨ぐ部分)でも起こりうるので、この箇所についてもホトレジスト膜106で被うことによって同様に本発明を適用できる。次に述べる実施例4の場合も同様である。
【0105】
[実施例4]
図17ないし図19は、図12からなる構成の表示装置の製造方法の他の実施例を示し、各工程の図は図12のB−B’線における断面を示している。図17ないし図19にわたって経時的になされる各工程は(a)ないし(o)の一連の符号で示している。
【0106】
これらの工程も、半導体層PSの一部に選択的にインプラして容量素子Cstgの一方の電極CT1を形成する際のマスクの孔開けのパターンが異なるのみで、他は実施例2に示した工程(図8ないし図10)と同じである。そして、マスクの孔開けのパターンは実施例3で説明したものと同じである。
【0107】
上述した実施例1から実施例4は、表示装置のうち液晶表示装置について説明したものであるが、それ以外の表示装置、たとえば有機EL表示装置にも適用できるものである。有機EL表示装置の各画素においても薄膜トランジスタと容量素子を備えて構成されるからである。
上述した各実施例はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施例での効果を単独であるいは相乗して奏することができるからである。
【符号の説明】
【0108】
GL……ゲート信号線、DL……ドレイン信号線、PS……半導体層、DT……ドレイン電極、ST……ソース電極、CH1、CH2……コンタクトホール、CT1……容量素子の一方の電極、CT2……容量素子の他方の電極、CL……容量信号線、GI……第1絶縁膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層の導電化された部分を一方の電極とし、前記半導体層を被う絶縁膜を誘電体膜とし、前記絶縁膜上に形成され前記一方の電極に重畳する部分を有する導体層を他方の電極として構成する容量素子を備える表示装置であって、
前記導体層は、前記一方の電極に重畳する部分の導体層と一体につながっているとともに前記半導体層の形成領域内から前記半導体層の形成領域外まで延在され、かつ、前記絶縁膜上に形成された延在部分を有し、
前記絶縁膜は、前記半導体層と前記導体層の前記延在部分との両方に重畳する領域において、その膜厚が前記一方の電極と重畳する部分の前記絶縁膜の膜厚よりも厚く形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記半導体層は、前記半導体層の形成領域内から前記半導体層の形成領域外まで延在された前記導体層の前記延在部分と重畳する領域において、その不純物濃度が、前記一方の電極を構成する部分の不純物濃度より小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記導体層の前記延在部分は、前記他方の電極に電位を与える配線層であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
絶縁膜で被われた半導体層の領域に第1領域と第2領域とを有し、前記第1領域の部分にてその上面に形成される前記絶縁膜をゲート絶縁膜とする薄膜トランジスタと、前記第2領域の部分にてその上面に形成される前記絶縁膜を誘電体膜とする容量素子とを備える表示装置であって、
前記容量素子は、前記半導体層の前記第2領域に不純物がドープされて一方の電極を構成し、前記第2領域上の前記絶縁膜の上面に形成される導体層を他方の電極として構成し、前記他方の電極は前記半導体層の形成領域外から延在される配線層と接続されて形成され、
前記半導体層のうち少なくとも前記配線層が重畳される領域には前記一方の電極を構成する前記第2領域の不純物濃度よりも小さい不純物濃度を有する第3領域を備えるとともに、
前記第2領域上の前記絶縁膜は前記第1領域および前記第3領域上の前記絶縁膜よりも膜厚が小さくなっていることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
前記表示装置は液晶表示装置であることを特徴とする請求項1、2、3、4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項1】
半導体層の導電化された部分を一方の電極とし、前記半導体層を被う絶縁膜を誘電体膜とし、前記絶縁膜上に形成され前記一方の電極に重畳する部分を有する導体層を他方の電極として構成する容量素子を備える表示装置であって、
前記導体層は、前記一方の電極に重畳する部分の導体層と一体につながっているとともに前記半導体層の形成領域内から前記半導体層の形成領域外まで延在され、かつ、前記絶縁膜上に形成された延在部分を有し、
前記絶縁膜は、前記半導体層と前記導体層の前記延在部分との両方に重畳する領域において、その膜厚が前記一方の電極と重畳する部分の前記絶縁膜の膜厚よりも厚く形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記半導体層は、前記半導体層の形成領域内から前記半導体層の形成領域外まで延在された前記導体層の前記延在部分と重畳する領域において、その不純物濃度が、前記一方の電極を構成する部分の不純物濃度より小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記導体層の前記延在部分は、前記他方の電極に電位を与える配線層であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
絶縁膜で被われた半導体層の領域に第1領域と第2領域とを有し、前記第1領域の部分にてその上面に形成される前記絶縁膜をゲート絶縁膜とする薄膜トランジスタと、前記第2領域の部分にてその上面に形成される前記絶縁膜を誘電体膜とする容量素子とを備える表示装置であって、
前記容量素子は、前記半導体層の前記第2領域に不純物がドープされて一方の電極を構成し、前記第2領域上の前記絶縁膜の上面に形成される導体層を他方の電極として構成し、前記他方の電極は前記半導体層の形成領域外から延在される配線層と接続されて形成され、
前記半導体層のうち少なくとも前記配線層が重畳される領域には前記一方の電極を構成する前記第2領域の不純物濃度よりも小さい不純物濃度を有する第3領域を備えるとともに、
前記第2領域上の前記絶縁膜は前記第1領域および前記第3領域上の前記絶縁膜よりも膜厚が小さくなっていることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
前記表示装置は液晶表示装置であることを特徴とする請求項1、2、3、4のいずれかに記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−107991(P2010−107991A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276247(P2009−276247)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【分割の表示】特願2004−88233(P2004−88233)の分割
【原出願日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【分割の表示】特願2004−88233(P2004−88233)の分割
【原出願日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
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