説明

複合流体機械およびそれを用いた冷凍装置

【課題】 膨張機によるポンプの作動を可能としつつ、圧縮機単独で作動させる場合のポンプの影響を無くし、また、圧縮機の作動不要時にも廃熱の有効活用を可能とする複合流体機械およびそれを用いた冷凍装置を提供する。
【解決手段】 流体を圧縮して吐出する圧縮機(110)と、ポンプ130によって循環される作動流体の膨張によって駆動力を発生する膨張機(110)と、発電機および電動機の両機能を併せ持つ回転電機120とを有し、圧縮機(110)、膨張機(110)、回転電機120、ポンプ130を直列に接続し、圧縮機(110)が回転電機120によって駆動される時に、回転電機120とポンプ130との接続状態を切断状態に切替え可能とする断続切替え手段(140)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を圧縮して吐出する圧縮機に、ランキンサイクル中の作動流体の膨張によって機械的エネルギーを出力する膨張機の機能を併せ持つ複合流体機械およびそれを用いた冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、圧縮機、膨張機、駆動モータ、循環ポンプが一体的に設けられた複合流体機械(特許文献1中ではローリングピストン式回転機械)が知られている。上記の各機器は、直列に配置され、同一軸で接続(圧縮機と膨張機との間は例えばマグネットカップリングのような接続手段を介して接続、あるいは直接的に接続)されている。そして、圧縮機は、例えば冷凍サイクル内の冷媒の圧縮用に用いられ、また、膨張機はランキンサイクル内の作動流体によって駆動されるようになっている。
【0003】
上記の複合流体機械の具体的な作動については、膨張機は初期の一定時間(膨張機が安定状態に入るまでの時間)だけ駆動モータによって駆動され、更に、ランキンサイクル内の作動流体(バーナを加熱源として加熱される高温、高圧ガス)の膨張によって駆動され、自身の軸に駆動力を発生させる。この駆動力はマグネットカップリングを介して(あるいは直接的に)圧縮機に伝達され、圧縮機が作動される。そして、圧縮機は冷凍サイクル内の冷媒を圧縮する。尚、循環ポンプは、膨張機から発生される駆動力によって駆動され、専用のモータ等を不要としてランキンサイクル内の作動流体を循環させる。
【特許文献1】特開平8−86289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記複合流体機械においてはっては、ランキンサイクル内にバーナのような加熱源を必要とするものであって、膨張機はバーナの熱エネルギー(専用の燃料を燃焼させること)によって駆動されている。本発明者らは、近年問題とされている地球温暖化に対して、いかにエネルギー消費を減らすかということを念頭に置いて、例えば車両用内燃機関のような発熱機器の廃熱を有効に活用できる複合流体機械を検討している。
【0005】
そこで、上記特許文献1に示される複合流体機械を用いて、廃熱から膨張機を作動させようとした場合、発熱機器の状況に応じて廃熱が少ない時は、膨張機での駆動力が得られなくなるので、駆動モータで圧縮機を駆動させることが考えられる。しかし、この時、同一軸に接続される循環ポンプも友連れして回転することになるので、駆動モータにとっては作動抵抗となり、効率的な圧縮機の作動ができない。
【0006】
また、発熱機器の廃熱が充分あっても、圧縮機の作動が不要の時(冷凍サイクルの作動が不要の時)は、膨張機を停止させる必要があり、せっかくの廃熱を有効に活用することができない。
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、冷凍サイクル用の圧縮機と、内燃機関のような発熱機器の廃熱によって駆動される膨張機とを有するものにおいて、膨張機によるポンプの作動を可能としつつ、圧縮機単独で作動させる場合のポンプの影響を無くし、また、圧縮機の作動不要時にも廃熱の有効活用を可能とする複合流体機械およびそれを用いた冷凍装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0009】
請求項1に記載の発明では、流体を圧縮して吐出する圧縮機(110)と、ポンプ(130)によって循環される作動流体の膨張によって駆動力を発生する膨張機(110)と、発電機および電動機の両機能を併せ持つ回転電機(120)とを有し、圧縮機(110)、膨張機(110)、回転電機(120)、ポンプ(130)が直列に接続されており、圧縮機(110)が回転電機(120)によって駆動される時に、回転電機(120)とポンプ(130)との接続状態を切断状態に切替え可能とする断続切替え手段(140)が設けられたことを特徴としている。
【0010】
これにより、膨張機(110)作動時の駆動力によって、ポンプ(130)の駆動が可能であり、ポンプ(130)作動用の専用駆動源を不要とすることができる。そして、流体の膨張エネルギーの有無に関わらず、回転電機(120)によって圧縮機(110)を作動させることができる。この時、断続切替え手段(140)によって、ポンプ(130)は回転電機(120)から切断されるので、ポンプ(130)が回転電機(120)の作動抵抗となるのを防止できる。更に、作動流体の膨張が充分に得られるものの、圧縮機(110)の作動が不要な時は、膨張機(110)の駆動力で回転電気(120)を発電機として作動させて、発電することが可能となり、膨張エネルギーを電気エネルギーとして回生することができる。
【0011】
ここで、上記請求項1に記載の複合流体機械(100)を用いて、回転電機(120)で圧縮機(110)を駆動させた場合、同一軸に接続される膨張機(110)も友連れして回転することになるので、回転電機(120)にとっては膨張機(110)が作動抵抗となり、効率的な圧縮機(110)の作動ができない。
【0012】
そこで、請求項2に記載の発明では、圧縮機(110)は、その作動室(V)と高圧室(114)との間の流路を切替える切替え手段(116、117d)によって、高圧室(114)から作動流体が流入する時には、膨張機(110)として機能する膨張機兼圧縮機(110)としたことを特徴としている。
【0013】
これにより、回転電機(120)によって膨張機兼圧縮機(110)を圧縮機(110)として作動させる時においては、膨張機(110)は存在しない形とすることができるので、上記のように膨張機(110)が回転電機(120)の作動抵抗となることが無い。
【0014】
請求項3に記載の発明では、ポンプ(130)は、圧縮機(110)、膨張機(110)、電動機(120)、ポンプ(130)が直列に接続される一端側に配置されており、断続切替え手段(140)は、ポンプ(130)と、ポンプ(130)に隣接する隣接機器(120)との間に設けられたことを特徴としている。
【0015】
これにより、ポンプ(130)を除く各機器(110、110、120)の配置がどのような並びであっても、複雑な軸構造を設けること無く、容易に断続切替え手段(140)を設けることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、膨張機(110)は、圧縮機(110)に対して逆方向に回転作動するものとした時に、断続切替え手段(140)は、ポンプ(130)のポンプ軸(134)と、隣接機器(120)の軸(124)との間で、圧縮機(110)の回転作動方向に噛み合いが外れ、膨張機(110)の回転作動方向に噛み合う一方向クラッチ(140)として設けることができる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明のように、断続切替え手段(140)は、ポンプ(130)のポンプ軸(134)と、隣接機器(120)の軸(124)との間で、電気信号により断続される電磁クラッチとしても良い。
【0018】
この場合は、膨張機(110)の作動によってポンプ(130)が駆動される時にも、電磁クラッチの断続により、ポンプ(130)のON−OFFが可能となり、作動流体の流量制御が可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明では、ポンプ(130)および隣接機器(120)間の流体、あるいは作動流体の漏れを防止する軸封装置(150)を有し、軸封装置(150)は、ポンプ軸(134)に設けられたことを特徴としている。
【0020】
これにより、一方向クラッチ(140)あるいは電磁クラッチによってポンプ(130)が切断された時に、軸封装置(150)が回転電機(120)の作動抵抗になるのを防止できる。
【0021】
尚、請求項6に記載の発明において、請求項7に記載の発明のように軸封装置(150)が設けられる部位のポンプ軸(134)の外径は、一般部位よりも小さく設定されるのが良い。
【0022】
ポンプ(130)作動時における軸封装置(150)による損失は、軸封装置(150)のポンプ軸(134)への締付け力と、軸封装置(150)に接触するポンプ軸(134)外径部の回転速度とに比例する。よって、軸封装置(150)が設けられる部位のポンプ軸(134)の外径を小さくすることで、その回転速度を小さくして損失を低減できる。
【0023】
上記請求項1〜請求項7に記載の複合流体機械(100)は、請求項8に記載の発明のように、冷凍サイクル(30)内の凝縮器(31)を兼用して形成されると共に、発熱機器(10)の廃熱を加熱源とするランキンサイクル(40)を備える冷凍装置に適用して好適である。この時、圧縮機(110)を冷凍サイクル(30)に使用し、ポンプ(130)および膨張機(110)をランキンサイクル(40)に使用する。
【0024】
そして、請求項9に記載の発明のように、発熱機器(10)は、熱機関(10)を対象として好適である。
【0025】
因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明の複合流体機械(熱媒ポンプ一体型膨張発電機兼電動圧縮機)100を、ランキンサイクル40を備える冷凍サイクル30に適用した車両用の冷凍装置1としている。
【0027】
まず、複合流体機械100の構成について図1を用いて説明する。複合流体機械100は、圧縮機および膨張機の両機能を有する膨張機兼圧縮機110と、発電機および電動機としての両機能を有するモータジェネレータ(本発明における回転電機および熱媒ポンプ130に対する隣接機器に対応)120と、熱媒ポンプ(本発明におけるポンプに対応)130とから成る。
【0028】
膨張機兼圧縮機110は、周知のスクロール型圧縮機構と同一構造を有するもので、具体的には、フロントハウジング111とモータハウジング121との間に固定される固定スクロール112、この固定スクロール112に対向して旋回変位する旋回スクロール113、作動室Vと高圧室114とを連通させる吐出ポート115、および流入ポート116を開閉する弁機構117等から成るものである。
【0029】
固定スクロール112は、板状の基板部112aおよび基板部112aから旋回スクロール113側に突出した渦巻状の歯部112bを有して構成され、一方、旋回スクロール113は、上記歯部112bに接触して噛み合う渦巻状の歯部113b、およびこの歯部113bが形成された基板部113aを有して構成されており、両歯部112b、113bが接触した状態で旋回スクロール113が旋回することにより、両スクロール112、113により形成される作動室Vの体積が拡大縮小するようになっている。
【0030】
シャフト118は、モータハウジング121に固定された軸受け118cによって回転可能に支持されて、一方の長手方向端部に回転中心軸に対して偏心したクランク部118aを有するクランクシャフトである。このクランク部118aは、ブッシング118b、ベアリング113cを介して旋回スクロール113に連結されている。
【0031】
また、自転防止機構119は、シャフト118が1回転する間に旋回スクロール113がクランク部118a周りに1回転するようにするものである。このためシャフト118が回転すると、旋回スクロール113は、自転せずにシャフト118の回転中心軸周りを公転旋回する。そして、作動室Vは、例えばシャフト118が正方向に回転する時に、旋回スクロール113の外径側から中心側に変位するほど、その体積が縮小するように変化し、逆に、シャフト118が逆方向に回転する時に、旋回スクロール113の中心側から外径側に変位するほど、その体積が拡大するように変化する。
【0032】
吐出ポート115は、基板部112aの中心部に設けられて、膨張機兼圧縮機110が圧縮機として作動する時(以下、圧縮モード時)に、最小体積となる作動室Vと、フロントハウジング111に設けられた高圧室114とを連通させて圧縮された冷媒(本発明における流体に対応)を吐出するポートである。また、流入ポート116は、同様に基板部112aに(吐出ポート115に隣接して)設けられて、膨張機兼圧縮機110が膨張機として作動する時(以下、膨張モード時)に、高圧室114と、最小体積となる作動室Vとを連通させて高圧室114に導入された高温、高圧の冷媒、つまり過熱蒸気冷媒(本発明における作動流体に対応)を作動室Vに導くポートである。
【0033】
上記高圧室114は、吐出ポート115から吐出された冷媒の脈動を平滑化する吐出室の機能を有するものであり、この高圧室114には、後述する加熱器43および凝縮器31側に接続される高圧ポート111aが設けられている。
【0034】
尚、後述する蒸発器34および第2バイパス流路42側に接続される低圧ポート121aは、モータハウジング121に設けられて、モータハウジング121内を経由して、固定スクロール112側に連通している。
【0035】
弁機構117は、吐出弁117a、弁体117d、電磁弁117f等から成る。吐出弁117aは、吐出ポート115の高圧室114側に配置されて吐出ポート115から吐出された冷媒が高圧室114から作動室Vに逆流することを防止するリード弁状の逆止弁であり、ストッパ117bは吐出弁117aの最大開度を規制する弁止板であり、吐出弁117aおよびストッパ117bはボルト117cによって基板部112aに固定されている。
【0036】
弁体117dは、流入ポート116を開閉して膨張機兼圧縮機110の圧縮モードと膨張モードとを切替える切替え弁であり、その後端側がフロントハウジング111に設けられた背圧室117eに沿って、摺動可能に配設されている。背圧室117e内にはバネ(弾性手段)117fが挿入されており、バネ117fは弁体117dの先端側が流入ポート116を閉じる方向に弾性力を作用させるようになっている。また、フロントハウジング111には、所定の通路抵抗を有して背圧室117eと高圧室114とを連通させる抵抗手段としての絞り117gが設けられている。
【0037】
電磁弁117hは、低圧ポート121a側と背圧室117eとの連通状態を制御することにより背圧室117e内の圧力を制御する制御弁であり、図示しない制御装置によって制御される。
【0038】
そして、電磁弁117hを開くと、背圧室117eの圧力が高圧室114より低下して弁体117dがバネ117fを押し縮めながら図1中の右側に変位するので、流入ポート116が開く。尚、絞り117gでの圧力損失は非常に大きいので、高圧室114から背圧室117eに流れ込む冷媒量は無視できるほど小さい。
【0039】
逆に、電磁弁117hを閉じると、絞り117gによって背圧室117eの圧力と高圧室114の圧力とが等しくなり、弁体117dはバネ117fの弾性力により図1中の左側に変位するので、流入ポート116が閉じる。つまり、弁体117d、背圧室117e、バネ117f、絞り117g、および電磁弁117h等により流入ポート116を開閉するパイロット式の電気開閉弁が構成される。尚、流入ポート116と弁体117dは、本発明における作動室Vと高圧室114との間の流路を切替える切替え手段に対応する。
【0040】
モータジェネレータ120は、ステータ122およびステータ122内で回転するロータ123等から成るもので、固定スクロール112に固定されるモータハウジング121内(膨張機兼圧縮機110の低圧側雰囲気)に収容されている。ステータ122は、巻き線が巻かれたステータコイルであり、モータハウジング121の内周面に固定されている。ロータ123は、永久磁石が埋設されたマグネットロータであり、モータ軸124に固定されている。モータ軸124の一端側は、上記膨張機兼圧縮機110のシャフト118に接続されており、また、他端側には穴部124aが設けられており、この他端側は後述する熱媒ポンプ130のポンプ軸134に接続されている。
【0041】
そして、モータジェネレータ120は、後述するバッテリ13からインバータ12を介して、ステータ122に電力が供給された場合には、ロータ123を回転(正方向回転)させて、膨張機兼圧縮機110を(圧縮機として)駆動するモータ(電動機)として作動する。あるいは、ロータ123を回転(逆方向回転)させて、後述する熱媒ポンプ130を駆動するモータ(電動機)として作動する。また、膨張機兼圧縮機110の膨張モード時に発生した駆動力によってロータ123を回転させるトルクが入力された場合(逆方向回転時)には、電力を発生させるジェネレータ(発電機)として作動する。そして、得られた電力は、インバータ12を介してバッテリ13に充電されるようになっている。
【0042】
熱媒ポンプ130は、モータジェネレータ120の反膨張機側に隣接して配設されて、モータハウジング121に固定されるポンプハウジング131内に収容されている。熱媒ポンプ130は、上記膨張機兼圧縮機110と同様に、基板部132a、歯部132bから成る固定スクロール132と、基板部133a、歯部133bから成る旋回スクロール133とを有している。固定スクロール132は、ポンプハウジング131に固定され、旋回スクロール133は、ポンプハウジング131と固定スクロール132とによって形成される空間内に配設されている。尚、旋回スクロール133は、自転防止機構135によって、自転が防止されつつ、公転旋回可能となっている。
【0043】
ポンプハウジング131には、後述する気液分離器32側から接続されて、ポンプハウジング131の内部および旋回スクロール133側に連通する流入ポート131aが設けられている。また、固定スクロール132には、両スクロール132、133によって形成される作動室Pから後述する加熱器43側に接続される吐出ポート132cが設けられている。
【0044】
ポンプ軸134は、ポンプハウジング131に固定された軸受け134cによって回転可能に支持されて、一方の長手方向端部に回転中心軸に対して偏心したクランク部134aを有し、ブッシング134b、ベアリング133cを介して旋回スクロール133に連結されている。また、ポンプ軸134の他方の長手方向端部は、一般部(軸受け134cによって支持されている部位)に対して外径が小さく設定された小径部134dとして形成されており、小径部134dはモータ軸124の穴部124aに挿入されている。
【0045】
そして、モータ軸124とポンプ軸134(小径部134d)との間には、一方向クラッチ(本発明における断続切替え手段に対応)140が設けられている。この一方向クラッチ140は、モータ軸124が逆方向回転(膨張モード時の回転)した時に、ポンプ軸134(小径部134d)に噛み合うことで、ポンプ軸134を回転させ、また、モータ軸124が正方向回転(圧縮モード時の回転)した時に、ポンプ軸134(小径部134d)との噛み合いが外れて、モータ軸124とポンプ軸134とが切断される(ポンプ軸134が回転されない)ものとしている。
【0046】
更に、ポンプハウジング131とポンプ軸134の小径部134dとの間には、モータジェネレータ120と熱媒ポンプ130(流入ポート131aから旋回スクロール133に繋がる低圧側)との間をシールする軸封装置としての軸シール150が設けられている。
【0047】
上記のように構成される複合流体機械100は、ランキンサイクル40を備える冷凍サイクル30に組み込まれ、冷凍装置1を形成している。具体的には、膨張機兼圧縮機110(圧縮モード時の圧縮機)が冷凍サイクル30に組み込まれ、また、膨張機兼圧縮機110(膨張モード時の膨張機)と熱媒ポンプ130とがランキンサイクル40に組み込まれるようにしている。以下、冷凍装置1について図2を用いて説明する。
【0048】
冷凍サイクル20は、低温側の熱を高温側に移動させて冷熱および温熱を空調に利用するもので、膨張機兼圧縮機110、凝縮器31、気液分離器32、減圧器33、蒸発器34等が環状に接続されて形成されている。
【0049】
凝縮器31は、圧縮モード時の膨張機兼圧縮機110の冷媒吐出側に設けられ、高温高圧に圧縮された冷媒を冷却して、凝縮液化する熱交換器である。尚、ファン31aは、凝縮器31に冷却風(車室外空気)を送るものである。
【0050】
気液分離器32は、凝縮器31で凝縮された冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して液相冷媒を流出させるレシーバである。減圧器33は、気液分離器32で分離された液相冷媒を減圧膨脹させるもので、本実施形態では、冷媒を等エンタルピ的に減圧すると共に、圧縮モード時の膨張機兼圧縮機110に吸入される冷媒の過熱度が所定値となるように絞り開度を制御する温度式膨脹弁を採用している。
【0051】
蒸発器34は、減圧器33にて減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮する熱交換器であり、ファン34aによって供給される車室外空気(外気)あるいは車室内空気(内気)を冷却する。そして、蒸発器34の冷媒流出側には、蒸発器34側から膨張機兼圧縮機110側にのみ冷媒が流れることを許容する逆止弁34bが設けられている。
【0052】
ランキンサイクル40は、車両の走行用動力を発生させるエンジン(本発明における発熱機器、熱機関に対応)10で発生した廃熱からエネルギー(膨張機兼圧縮機110の膨張モード時における駆動力)を回収するものである。ランキンサイクル40は、上記冷凍サイクル30に対して、凝縮器31が共用されると共に、この凝縮器31をバイパスするように気液分離器32から膨張機兼圧縮器110および凝縮器31の間(A点)に接続される第1バイパス流路41と、膨張機兼圧縮機110および逆止弁34bの間(B点)から凝縮器31およびA点の間(C点)に接続される第2バイパス流路42とが設けられて、以下のように形成されている。
【0053】
即ち、第1バイパス流路41には、複合流体機械100の熱媒ポンプ130が配設されると共に、気液分離器32側から熱媒ポンプ130側にのみ冷媒が流れることを許容する逆止弁41aが設けられている。また、A点と膨張機兼圧縮機110との間に加熱器43が設けられている。
【0054】
加熱器43は、熱媒ポンプ130から送られる冷媒とエンジン10における温水回路20のエンジン冷却水(温水)との間で熱交換することにより冷媒を加熱する熱交換器であり、三方弁21によりエンジン10から流出したエンジン冷却水を加熱器43に循環させる場合と循環させない場合とが切替えられる。尚、三方弁21の流路切替えは、図示しない制御装置によって行われるようになっている。
【0055】
因みに、エンジン10には、エンジン10の駆動力によって駆動され発電するオルタネータ11が設けられており、オルタネータ11によって発電された電力は、インバータ12を介して、バッテリ13に充電されるようになっている。
【0056】
また、水ポンプ22は温水回路20内でエンジン冷却水を循環させるポンプ(例えば、エンジン10によって駆動される機械式ポンプ)であり、ラジエータ23はエンジン冷却水と外気との間で熱交換してエンジン冷却水を冷却する熱交換器である。
【0057】
そして、第2バイパス流路42には、膨脹機兼圧縮機110側から凝縮器31の冷媒入口側にのみ冷媒が流れることを許容する逆止弁42aが設けられている。また、A点とC点との間には開閉弁44が設けられている。開閉弁44は、冷媒流路を開閉する電磁式のバルブであり、図示しない制御装置により制御されるようになっている。
【0058】
上記気液分離器32、第1バイパス流路41、熱媒ポンプ130、加熱器43、膨張機兼圧縮機110、第2バイパス流路42、凝縮器31等にてランキンサイクル40が形成される。
【0059】
次に、本実施形態における複合流体機械100の作動およびその作用効果について説明する。
【0060】
1.圧縮モード
このモードは、冷凍サイクル30による冷房が必要な時に、モータジェネレータ120をモータとして作動させ、モータ軸124に回転力(正方向回転)を与えることにより膨張機兼圧縮機110の旋回スクロール113を旋回させて冷媒を吸入圧縮する運転モードである。
【0061】
具体的には、図示しない制御装置は、開閉弁44を開き、三方弁21の切替えによって、エンジン冷却水が加熱器43側に循環しないようにする。また、電磁弁117hを閉じて、弁体117dによって流入ポート116を閉じた状態で、バッテリ13、インバータ12からモータジェネレータ120のステータ122に電力を供給して、モータ軸124を回転させる。
【0062】
この時、膨脹機兼圧縮機110は、周知のスクロール型圧縮機と同様に、低圧ポート121aから冷媒を吸引して作動室Vにて圧縮した後、吐出ポート115から高圧室114に圧縮した冷媒を吐出し、高圧ポート111cから圧縮された冷媒を凝縮器31側に吐出する。
【0063】
そして、高圧ポート111cから吐出された冷媒は、加熱器43→開閉弁44→凝縮器31→気液分離器32→減圧器33→蒸発器34→逆止弁34b→膨脹機兼圧縮機110の低圧ポート121aの順に循環(冷凍サイクル30を循環)し、蒸発器34の吸熱による冷房が行われる。尚、加熱器43にはエンジン冷却水が循環しないので、加熱器43において冷媒は加熱されず、加熱器43は単なる冷媒流路として機能する。
【0064】
また、熱媒ポンプ130のポンプ軸134(小径部134d)は、一方向クラッチ140によってモータ軸124との噛み合いが外れるので、熱媒ポンプ130は停止状態となる。
【0065】
2.膨張モード
このモードは、冷凍サイクル30による冷房が不要の時に、エンジン10の廃熱が充分得られる(エンジン冷却水温度が充分高い)場合に、加熱器43によって加熱された高圧の過熱蒸気冷媒を膨張機兼圧縮機110に導入して膨脹させることにより、旋回スクロール113を旋回させてモータ軸124を回転させ、駆動力(機械的エネルギー)を得る運転モードである。尚、得られた駆動力によりモータジェネレータ120のロータ123を回転させて発電を行い、その発電された電力をバッテリ13に充電するようにしている。
【0066】
具体的には、図示しない制御装置は、開閉弁34を閉じ、三方弁21の切替えによって、エンジン冷却水が加熱器43側に循環するようにする。また、モータジェネレータ120をモータとして作動させ(逆方向回転)、電磁弁117hを開いて弁体117dによって流入ポート116を開く。
【0067】
この時、熱媒ポンプ130のポンプ軸134(小径部134d)が一方向クラッチ140によってモータ軸124と噛み合い、熱媒ポンプ130が駆動される。そして、加熱器43によって加熱された高圧の過熱蒸気冷媒が、高圧ポート111a、高圧室114、流入ポート116を経由して作動室Vに導入されて膨脹する。過熱蒸気冷媒の膨脹により旋回スクロール113が圧縮モード時に対して逆方向に旋回し、シャフト118に与えられた駆動力は、モータジェネレータ120のモータ軸124、ロータ123に伝達される。そして、モータ軸124に伝達された駆動力が熱媒ポンプ130駆動のための駆動力を超えると、モータジェネレータ120は、ジェネレータとして作動することになり、得られた電力はインバータ12を介してバッテリ13に充電される。
【0068】
そして、膨脹を終えて圧力が低下した冷媒は、低圧ポート121aから流出される。低圧ポート121aから流出される冷媒は、第2バイパス流路42→逆止弁42a→凝縮器31→気液分離器32→第1バイパス流路41→逆止弁41a→熱媒ポンプ130→加熱器43→膨脹機兼型圧縮機110(高圧ポート111c)の順に循環することになる(ランキンサイクル40を循環)。尚、熱媒ポンプ130は、加熱器43にて加熱されて生成された過熱蒸気冷媒の温度に応じた圧力に加圧して気液分離器32からの液相冷媒を加熱器43に送り込む。
【0069】
以上のように、本発明の複合流体機械100においては、冷媒の膨張エネルギーの有無に関わらず、モータジェネレータ120による膨張機兼圧縮機110の圧縮モードが可能となる。この時、一方向クラッチ140によって、熱媒ポンプ130はモータジェネレータ120から切断されるので、熱媒ポンプ130がモータジェネレータ120の作動抵抗となるのを防止できる。
【0070】
尚、圧縮機(110)と膨張機(110)とを兼用した膨張機兼圧縮機110としていることから、上記モータジェネレータ120による膨張機兼圧縮機110の圧縮モード時においては、膨張機(110)は存在しない形とすることができるので、膨張機(110)がモータジェネレータ120の作動抵抗となることが無い。
【0071】
また、冷媒の膨張が充分に得られるものの、圧縮機(110)の作動が不要な時は、膨張機兼圧縮機110の膨張モード時の駆動力によって、熱媒ポンプ130の駆動が可能であり、熱媒ポンプ130作動用の専用駆動源を不要とすることができると共に、モータジェネレータ120をジェネレータとして作動させて、発電することが可能となり、膨張エネルギーを電気エネルギーとして回生することができる。この時、本来の発電用のオルタネータ11を作動させるための動力を低減でき、エンジン10の燃費を向上できる。
【0072】
また、熱媒ポンプ130を複合流体機械100の一端側に配置し、隣接する機器(モータジェネレータ120)と熱媒ポンプ130との間に一方向クラッチ140を設けるようにしているので、熱媒ポンプ130を除く各機器110、120の配置がどのような並びであっても、複雑な軸構造を設けること無く、容易に一方向クラッチ140を設けることができる。
【0073】
また、モータジェネレータ120と熱媒ポンプ130との間の冷媒漏れを防止する軸シール150をポンプ軸134に設けるようにしているので、一方向クラッチ140によって熱媒ポンプ130が切断された時に、軸シール150がモータジェネレータ120の作動抵抗になるのを防止できる。
【0074】
尚、熱媒ポンプ130作動時における軸シール150による損失は、軸シール150のポンプ軸134への締付け力と、軸シール150に接触するポンプ軸134外径部の回転速度とに比例することから、軸シール150をポンプ軸134の小径部134dに設けることで、回転速度を小さくして損失を低減できる。
【0075】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図3に示す。第2実施形態は上記第1実施形態に対して、冷凍装置1が搭載される車両が、走行条件に応じて(アイドリング時、低速走行時等)エンジン10が停止される車両(アイドルストップ車両、ハイブリッド車両等)としており、冷凍サイクル30に専用の主圧縮機35を設けると共に、各接続流路51、52、各開閉弁51a、52a、53aを設けるようにしたものである。
【0076】
冷凍サイクル30には、膨張機兼圧縮機110とは独立した主圧縮機35を配設している。即ち、本実施形態の冷凍サイクル30は、主圧縮機35、凝縮器31、気液分離器32、減圧器33、蒸発器34が環状に接続されたものをベースとしている。
【0077】
主圧縮機35は、断続手段としての電磁クラッチが設けられたプーリ35aを有しており、このプーリ35aは、駆動ベルト14を介して、エンジン10に接続されている。主圧縮機35は、プーリ35aの電磁クラッチが接続されると、エンジン10の駆動力によって駆動され、また、電磁クラッチが切断されると停止されるようになっている。尚、電磁クラッチの断続は、図示しない制御装置によって制御されるようになっている。
【0078】
ランキンサイクル40は、上記第1実施形態と同様に、複合流体機械100が用いられて、熱媒ポンプ130、加熱器43、膨張機兼圧縮機110、凝縮器31、気液分離器32が環状に接続されて形成されている。
【0079】
そして、主圧縮機35の冷媒吸入側(D点)と、膨張機兼圧縮機110の低圧側(E点)とを接続する第1接続流路51を設け、また、膨張機兼圧縮機110の高圧側(F点)と、主圧縮機35の冷媒吐出側(G点)とを接続する第2接続流路52を設けている。
【0080】
第1接続流路51中には第1開閉弁51aを、第2接続流路52中には第2開閉弁52aを、更に、E点と凝縮器31との間には第3開閉弁53aを設けている。各開閉弁51a、52a、53aは、第1接続流路51、第2接続流路52、E点と凝縮器31との間、をそれぞれ開閉する電磁式の弁であり、図示しない制御装置によって制御されるようになっている。
【0081】
次に、上記構成に基づく作動について図4〜図8を用いて説明する。
【0082】
1.メインA/C単独モード(図4)
このモードは、エンジン10が例えば暖機中でエンジン10からの廃熱が充分に得られない場合、あるいは、バッテリ13の充電量が充分にあり充電が不要の場合で、冷房が必要な時に、主圧縮機35を作動させる運転モードである。
【0083】
具体的には、図示しない制御装置は、三方弁21の切替えによって、エンジン冷却水が加熱器43側に循環しないようにする。また、各開閉弁51a、52a、53aをすべて閉じて、主圧縮機35のプーリ35aの電磁クラッチを接続状態にする。
【0084】
この時、主圧縮機35は、エンジン10によって駆動され、冷媒を圧縮吐出し、吐出された冷媒は冷凍サイクル30内を循環し(図4中の実線矢印)、蒸発器34の吸熱による冷房が行われる。尚、このモードにおいては、複合流体機械100は停止状態となっている。
【0085】
2.ランキン単独モード(図5)
このモードは、エンジン10による車両の走行が行われており、エンジン10からの廃熱が充分に得られ、また、バッテリ13への充電が必要な場合で、冷房が不要の時に、膨張機兼圧縮機110の膨張モードを実行させる運転モード(上記第1実施形態の膨張モードに対応するモード)である。
【0086】
具体的には、図示しない制御装置は、三方弁21の切替えによって、エンジン冷却水が加熱器43側を循環するようにする。また、第1開閉弁51a、第2開閉弁52aを閉じ、第3開閉弁53aを開く。主圧縮機35のプーリ35aの電磁クラッチは、切断状態とし、更に、モータジェネレータ120をモータとして作動させ(逆方向回転)、膨張機兼圧縮機110の電磁弁117h(図1)を開く。
【0087】
この時、熱媒ポンプ130が駆動され加熱器43からの過熱蒸気冷媒の膨脹により膨張機兼圧縮機110に駆動力が発生され、この駆動力によってモータジェネレータ120が駆動される。膨張機兼圧縮機110に与えられた駆動力が熱媒ポンプ130駆動のための駆動力を超えると、モータジェネレータ120は、ジェネレータとして作動することになり、得られた電力はインバータ12を介してバッテリ13に充電される。そして、膨張機兼圧縮機110から流出される冷媒は、図5中の破線矢印のようにランキンサイクル40を循環する。尚、このモードにおいては、主圧縮機35は停止状態となっている。
【0088】
3.メインA/C、ランキン同時運転モード(図6)
このモードは、エンジン10による車両の走行が行われており、エンジン10からの廃熱が充分に得られ、また、バッテリ13への充電が必要な場合で、冷房が必要な時に、上記ランキン単独モードに加えて、主圧縮機35も併せて作動させる運転モードである。
【0089】
具体的には、図示しない制御装置は、三方弁21の切替えによって、エンジン冷却水が加熱器43側を循環するようにする。また、第1開閉弁51a、第2開閉弁52aを閉じ、第3開閉弁53aを開く。更に、モータジェネレータ120をモータとして作動させ(逆方向回転)、膨張機兼圧縮機110の電磁弁117h(図1)を開くと共に、主圧縮機35のプーリ35aの電磁クラッチを接続状態とする。
【0090】
この時、ランキンサイクル40においては、上記のランキン単独モードと同一の作動を果たし、膨張機兼圧縮機110で得られた駆動力によって、モータジェネレータ120で発電が行われる(冷媒流れは図6中の破線矢印)。
【0091】
また、冷凍サイクル30においては、上記のメインA/C単独モードと同一の作動を果たし、主圧縮機35がエンジン10によって駆動され、蒸発器34の吸熱による冷房が行われる(冷媒流れは図6中の実線矢印)。
【0092】
4.A/Cアシストモード(図7)
このモードは、例えば、夏場における炎天下放置後のクールダウン時のように、冷房能力が大きく必要とされる時に、冷房を第1優先として、主圧縮機35に加えて、膨張機兼圧縮機110の圧縮モードを実行して作動させる運転モードである。
【0093】
具体的には、図示しない制御装置は、三方弁21の切替えによって、エンジン冷却水が加熱器43側に循環しないようにする。また、第1開閉弁51a、第2開閉弁52aを開き、第3開閉弁53aを閉じる。膨張機兼圧縮機110の電磁弁117h(図1)を閉じ、モータジェネレータ120のステータ122に電力を供給して、モータとして作動させる(正方向回転)。更に、主圧縮機35のプーリ35aの電磁クラッチを接続状態にする。
【0094】
この時、主圧縮機35は、エンジン10によって駆動され、冷媒を圧縮吐出し、吐出された冷媒は冷凍サイクル30内を循環する(図7中の実線矢印)。更に、膨張機兼圧縮機110はモータジェネレータ120によって圧縮モードとなり、冷凍サイクル30を流通する冷媒の一部は、主圧縮機35の吸入側(D点)から第1接続流路51、第1開閉弁51aを流通して、膨張機兼圧縮機110に至り、圧縮吐出されて、第2接続流路52、第2開閉弁52aを経て、凝縮器31に至る(図7中の一点鎖線矢印)。即ち、冷凍サイクル30において、並列配置される主圧縮機35および膨張機兼圧縮機110によって、高流量の冷媒が圧縮吐出され、蒸発器34、凝縮器31を流通する冷媒流量が増加され、蒸発器34における冷房能力が増大される。尚、熱媒ポンプ130は、一方向クラッチ140によってモータジェネレータ120から切り離されて、停止状態となる。
【0095】
5.サブA/C単独モード(図8)
このモードは、走行中にエンジン10が停止された場合でも、冷房が必要な時に、主圧縮機35に代えて膨張機兼圧縮機110の圧縮モードを実行して、冷房を行う運転モード(上記第1実施形態の圧縮モードに対応するモード)である。
【0096】
具体的には、図示しない制御装置は、三方弁21の切替えによって、エンジン冷却水が加熱器43側に循環しないようにする。また、第1開閉弁51a、第2開閉弁52aを開き、第3開閉弁53aを閉じる。膨張機兼圧縮機110の電磁弁117h(図1)を閉じ、モータジェネレータ120のステータ122に電力を供給して、モータとして作動させる(正方向回転)。
【0097】
この時、主圧縮機35はエンジン10の停止と共に停止状態となり、膨張機兼圧縮機110はモータジェネレータ120によって圧縮モードとなる。そして、蒸発器34から流出した冷媒は、第1接続流路51→第1開閉弁51a→膨張機兼圧縮機110→第2接続流路52→第2開閉弁52a→凝縮器31→気液分離器32→減圧器33→蒸発器34を循環し(図8中の実線矢印)、蒸発器34の吸熱による冷房が行われる。ここでは、上記冷媒の循環するサイクルが冷凍サイクルとなる。尚、熱媒ポンプ130は、一方向クラッチ140によってモータジェネレータ120から切り離されて、停止状態となる。
【0098】
このように、本実施形態においては、冷凍サイクル30にエンジン10によって駆動される主圧縮機35を設け、また、冷凍サイクル30およびランキンサイクル40間に各接続流路51、52、各開閉弁51a、52a、53aを設けるようにしているので、エンジン10の作動時において、エンジン10の廃熱の状態、冷房要求、発電要求等に応じて、冷房、発電の両機能を独立して、あるいは、両機能を同時に発揮できる。
【0099】
また、冷房能力の要求が高い時に、主圧縮機35に加えて、膨張機兼圧縮機110の圧縮モードを実行して、並列配置となる2つの圧縮機を作動させることができ、冷房能力を向上できる。
【0100】
更に、エンジン10が停止した時においても、主圧縮機35に代えて、膨張機兼圧縮機110の圧縮モードを実行することで、継続冷房が可能となる。
【0101】
(第3実施形態)
上記第1、第2実施形態に対して、複合流体機械100の断続切替え手段としては、一方向クラッチ140に代えて、図示しない制御装置からの電気信号によって断続される電磁クラッチとしても良い。
【0102】
これにより、膨張機兼圧縮機110の膨張モード時に熱媒ポンプ130が駆動される時にも、電磁クラッチの断続により、熱媒ポンプ130のON−OFFが可能となり、ランキンサイクル40内を循環する冷媒の流量制御が可能となる。
【0103】
(その他の実施形態)
上記の実施形態においては、圧縮機(110)および膨張機(110)において両者兼用となる膨張機兼圧縮機110としたが、それぞれ独立した圧縮機(110)、膨張機(110)として設定しても良い。
【0104】
また、スクロール型の膨張機兼圧縮機110を採用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ロータリ型、ピストン型、ベーン型等のその他の形式のものを適用することができる。
【0105】
また、熱媒ポンプ130が直列接続される一端側に配置されれば、圧縮機(110)、膨張機(110)、モータジェネレータ120の配置は、他の並び方となっても良い。
【0106】
また、上記の実施形態においては、発熱機器として、車両用のエンジン(熱機関、内燃機関)10としたが、これに限らず、例えば、外燃機関、燃料電池車両の燃料電池スタック、各種モータ、インバータ等のように作動時に発熱を伴い、温度制御のためにその熱の一部を捨てるもの(廃熱が発生するもの)であれば、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明における複合流体機械を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態における冷凍装置を示す模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態における冷凍装置を示す模式図である。
【図4】図3においてメインA/C単独モードで作動する場合の冷媒流れ方向を示す模式図である。
【図5】図3においてランキン単独モードで作動する場合の冷媒流れ方向を示す模式図である。
【図6】図3においてメインA/C、ランキン同時運転モードで作動する場合の冷媒流れ方向を示す模式図である。
【図7】図3においてA/Cアシストモードで作動する場合の冷媒流れ方向を示す模式図である。
【図8】図3においてサブA/C単独モードで作動する場合の冷媒流れ方向を示す模式図である。
【符号の説明】
【0108】
1 冷凍装置
10 エンジン(発熱機器、熱機関)
30 冷凍サイクル
31 凝縮器
40 ランキンサイクル
100 熱媒ポンプ一体型膨張発電機兼電動圧縮機(複合流体機械)
110 膨張機兼圧縮機
114 高圧室
116 流入ポート(切替え手段)
107d 弁体(切替え手段)
120 モータジェネレータ(回転電機、隣接機器)
130 熱媒ポンプ(ポンプ)
134 ポンプ軸
140 一方向クラッチ(断続切替え手段)
150 軸シール(軸封装置)
V 作動室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮して吐出する圧縮機(110)と、
ポンプ(130)によって循環される作動流体の膨張によって駆動力を発生する膨張機(110)と、
発電機および電動機の両機能を併せ持つ回転電機(120)とを有し、
前記圧縮機(110)、前記膨張機(110)、前記回転電機(120)、前記ポンプ(130)が直列に接続されており、
前記圧縮機(110)が前記回転電機(120)によって駆動される時に、前記回転電機(120)と前記ポンプ(130)との接続状態を切断状態に切替え可能とする断続切替え手段(140)が設けられたことを特徴とする複合流体機械。
【請求項2】
前記圧縮機(110)は、その作動室(V)と高圧室(114)との間の流路を切替える切替え手段(116、117d)によって、前記高圧室(114)から前記作動流体が流入する時には、前記膨張機(110)として機能する膨張機兼圧縮機(110)としたことを特徴とする請求項1に記載の複合流体機械。
【請求項3】
前記ポンプ(130)は、前記圧縮機(110)、前記膨張機(110)、前記電動機(120)、前記ポンプ(130)が直列に接続される一端側に配置されており、
前記断続切替え手段(140)は、前記ポンプ(130)と、前記ポンプ(130)に隣接する隣接機器(120)との間に設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合流体機械。
【請求項4】
前記膨張機(110)は、前記圧縮機(110)に対して逆方向に回転作動するものであって、
前記断続切替え手段(140)は、前記ポンプ(130)のポンプ軸(134)と、前記隣接機器(120)の軸(124)との間で、前記圧縮機(110)の回転作動方向に噛み合いが外れ、前記膨張機(110)の回転作動方向に噛み合う一方向クラッチ(140)としたことを特徴とする請求項3に記載の複合流体機械。
【請求項5】
前記断続切替え手段(140)は、前記ポンプ(130)のポンプ軸(134)と、前記隣接機器(120)の軸(124)との間で、電気信号により断続される電磁クラッチとしたことを特徴とする請求項3に記載の複合流体機械。
【請求項6】
前記ポンプ(130)および前記隣接機器(120)間の前記流体、あるいは前記作動流体の漏れを防止する軸封装置(150)を有し、
前記軸封装置(150)は、前記ポンプ軸(134)に設けられたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の複合流体機械。
【請求項7】
前記軸封装置(150)が設けられる部位の前記ポンプ軸(134)の外径は、一般部位よりも小さく設定されたことを特徴とする請求項6に記載の複合流体機械。
【請求項8】
冷凍サイクル(30)内の凝縮器(31)を兼用して形成されると共に、発熱機器(10)の廃熱を加熱源とするランキンサイクル(40)を備える冷凍装置であって、
請求項1〜請求項7に記載の複合流体機械(100)の前記圧縮機(110)が、前記冷凍サイクル(30)に使用され、
前記ポンプ(130)および前記膨張機(110)が、前記ランキンサイクル(40)に使用されることを特徴とする冷凍装置。
【請求項9】
前記発熱機器(10)は、熱機関(10)であることを特徴とする請求項8に記載の冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−125340(P2006−125340A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316739(P2004−316739)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】