説明

走査型表示装置光学系、立体表示装置及びヘッドアップディスプレイ装置

【課題】簡単且つ安価な構成で立体画像を意図する提示距離に最適に表示を行う。
【解決手段】走査型表示装置光学系10は、2次元画像形成素子11と、第1集光レンズ12と、絞り13と、第2集光レンズ14と、1次元スキャナ15と、第3集光レンズ16と、拡散板17を備える。2次元画像形成素子11は液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、デジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いた表示装置を使用することができ、入力された視差画像を高速に切り換えて時分割表示し、1次元スキャナ15は2次元画像形成素子11の動作に連動してスキャンして2次元画像形成素子11の画像を拡散板17に投影し、観察者20の眼球21L,21Rに視差画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型表示装置光学系、立体表示装置及びヘッドアップディスプレイ装置に係り、特に簡単な構成で立体表示可能な走査型表示装置光学系、この光学系を用いた立体表示装置及びこの立体表示装置使用したヘッドアップディスプレイ(HUD)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体表示装置として、左右眼にdisparity(不均衡、不釣合い)のある画像を提示して立体感を得るステレオ表示は様々な表示法で実現されてきた(例えば特許文献1参照)。また、もっとも単純には2枚の航空写真を裸眼あるいは簡単な装置によって観察して地図を作成することも行われてきた。
【0003】
また、近年、より現実感のある立体画像を得るために、左右眼2眼用の画像ではなくてインテグラルディスプレイや多眼の画像を使用したものがあり(特許文献2参照)、更に超多眼方式と称される画像数を128とした立体ディスプレイも提案されている(特許文献3参照)。この超多眼方式の立体画像表示は、実際の物体が発する光を角度単位でサンプリングして得られる多数の光線群を空間に再現し、左右眼のそれぞれの瞳孔に2つ以上の視差画像が入射するような細かいピッチで多視点画像を表示するものである。これにより水平方向の滑らかな運動視差と眼精疲労の生じない3次元カラー動画表示を実現できる。
【0004】
また、ホログラムで立体画像を表示するに際して、DMDデバイスと、複数個のシリンダーレンズと、縦方向拡散板とを使用した立体表示装置が開示されている(非特許文献1)。
【0005】
一方、例えば前方視界支援装置として赤外線カメラを介して車室内のヘッドアップディスプレイ(以下、HUDと略称する)装置によって表示する夜間運転視界支援装置(ナイトビジョン)も知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3851887公報
【特許文献2】特開2001−42257号公報
【特許文献3】特開2007−309975号公報
【特許文献4】特許3855439号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Applied Optics 10 June 2009 /Vol.48,No.17/3255-3260
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の超多眼方式を利用した立体表示装置では、それぞれの画像に2次元表示装置が1台ずつ必要となる(例えば128台)ため、立体表示装置が大きくなり、コストも嵩むという問題があった。また、超多眼、あるいはインテグラルディスプレイでは、視差が付く角度が決まっている、つまり提示しようとしている物体の距離に限界があるなどの問題もあった。
【0009】
そのため、例えば車両などの移動体にHUD表示装置を装着し、ドライバーに障害物の画像を現実の風景に重ね合わせて表示した場合に、障害物の距離が現実の距離とずれて表示されてしまい、ドライバーが障害物との距離感を正確に把握できない問題もあった。更に、ホログラムを使用する場合には画像データの作成に手間がかかるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明では、画像データの作成が容易であり、且つ、簡単な構成で立体画像を意図する提示距離に最適に表示を行える走査型表示装置光学系、立体表示装置及びヘッドアップディスプレイ装置を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、複数組の視差画像を時間的に分割して表示する2次元画像形成素子と、前記2次元画像形成素子の下流に配置された第1集光レンズと、前記2次元画像形成素子の前記第1集光レンズの焦点位置に配置された絞りと、前記絞りの下流に配置された第2集光レンズと、前記第2集光レンズの下流に配置され、前記時分割された視差画像を所定の振り幅及びタイミングでライン走査する1次元スキャナと、前記1次元スキャナの下流に配置された第3集光レンズと、前記第3集光レンズと光学的に共役な位置に配置されるとともに略垂直方向だけ光を拡散する拡散板と、を備えることを特徴とする走査型表示装置光学系である。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載された走査型表示装置光学系と、所定タイミングで前記2次元画像形成素子に表示させる複数の視差画像を発生する視差画像発生手段と、前記視差画像に基づいて前記2次元画像形成素子を駆動する画像形成素子駆動手段と、前記1次元スキャナを駆動するスキャナ駆動手段と、前記視差画像発生手段の視差画像発生タイミングに基づいて前記スキャナ駆動手段の駆動制御を行うスキャナ駆動制御手段と、を備えることを特徴とする立体表示装置である。
【0013】
請求項3の発明は、請求項3に記載のである立体表示装置において、観察者の眼球の位置情報及び視線情報の少なくとも一方を含む眼球情報を取得する眼球情報取得手段を備え、前記スキャナ駆動制御手段は、前記眼球情報に基づいて前記スキャナ駆動手段を駆動することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載された立体表示装置を備えることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置である。
【0015】
請求項5の発明は、請求項4に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、移動体のフロントウインドウスクリーンに前記拡散板の画像を反射させて移動体のオペレータに立体画像を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る走査型表示装置光学系及び立体表示装置によれば、1台の2次元ディスプレイと、標準的な1次元スキャナを使用するだけで立体表示を行えるので、画像データを簡単に作成でき、且つ簡易な構成で低コストなものとすることができる。
【0017】
また、本発明に係る立体表示装置によれば、取得した眼球情報に基づいて1次元スキャナの駆動を制御して立体像を眼球の状態に適正なものとして表示できるので、意図した距離及び位置に高い現実感の立体像を表示することができる。
【0018】
更に、本発明に係るヘッドアップディスプレイによれば、夜間オペレータに対して例えば障害物等を指摘する立体画像を正しい距離感を備えた状態で現実の風景に重ね合わせて表示することができオペレータは障害物との距離感を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例に係る走査型表示装置光学系を示す模式図である。
【図2】走査型表示装置光学系における立体視の原理を示す模式図である。
【図3】走査型表示装置光学系における立体視の原理を示す模式図である。
【図4】実施例に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す模式図である。
【図5】実施例に係るヘッドアップディスプレイ装置の制御系を示すブロック図である。を示す模式図である。
【図6】実施例に係るヘッドアップディスプレイ装置の変形例を示す模式図である。
【図7】ヘッドアップディスプレイ装置の使用状態における画像を示す模式図である。
【図8】ヘッドアップディスプレイ装置で表示される測量ポイントマーカーを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る走査型表示装置光学系は、複数組の視差画像を時間的に分割して表示する2次元画像形成素子と、前記2次元画像形成素子の下流に配置された第1集光レンズと、前記2次元画像形成素子の前記第1集光レンズの焦点位置に配置された絞りと、前記絞りの下流に配置された第2集光レンズと、前記第2集光レンズの下流に配置され、前記時分割された視差画像を所定の振り幅及びタイミングでライン走査する1次元スキャナと、前記1次元スキャナの下流に配置された第3集光レンズと、前記第3集光レンズと光学的に共役な位置に配置されるとともに略垂直方向だけ光を拡散する拡散板と、を備えるものである。
【0021】
本例において2次元表示装置としては有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、デジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いた表示装置を採用することができ、これらの2次元表示装置からの光は、第1集光レンズ、絞り、第2集光レンズを経て1次元スキャナに導かれ、第3集光レンズを介して、垂直方向のみ光が拡散する拡散板に投影される。
【0022】
本例では、2次元表示装置に表示すべき立体画像の視差画像を時分割して表示することにより、立体画像を表示することができ、立体画像データをホログラムデータに比べて容易に作成することができる。
【0023】
また、本発明に係る立体表示装置は前記走査型表示装置光学系と、所定タイミングで前記2次元画像形成素子に表示させる複数の視差画像を発生する視差画像発生手段と、前記視差画像に基づいて前記2次元画像形成素子を駆動する画像形成素子駆動手段と、前記1次元スキャナを駆動するスキャナ駆動手段と、前記視差画像発生手段の視差画像発生タイミングに基づいて前記スキャナ駆動手段の駆動制御を行うスキャナ駆動制御手段と、を備える。
【0024】
本例によれば、視差画像発生手段からの視差画像は画像形成素子駆動手段に駆動される2次元画像形成素子で表示され、スキャナ駆動手段で駆動される1次元スキャナでスキャンされる。このとき、スキャナ駆動手段はスキャナ駆動制御手段で前記視差画像の発生タイミングに基づいて駆動が制御され、スキャンされた画像は所定タイミングで拡散板に投影され、観察者に適正な視差画像を視認させることができる。
【0025】
また、本発明に係る立体表示装置は、観察者の眼球の位置情報及び視線情報の少なくとも一方を含む眼球情報を取得する眼球情報取得手段を備え、前記スキャナ駆動制御手段は、前記眼球情報に基づいて前記スキャナ駆動手段を駆動する。
【0026】
本例によれば、取得した眼球情報に基づいて1次元スキャナの駆動を制御するので、立体表示装置の観察者の姿勢、視線の状態にあわせた最適な立体画像を表示することができる。
【0027】
また、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、立体表示装置を備えるものである。本例によれば、車両などの移動体に立体表示装置を装着してヘッドアップディスプレイ装置を構成し、移動体の操作者に、計器情報や夜間における障害物の画像を表示でき、この際障害物などの物体の立体画像を現実の距離に合致した正確な距離感で表示でき、操作者に障害物を正確に把握させることができる。
【0028】
また、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、移動体のフロントウインドウスクリーンに前記拡散板の画像を反射させて移動体のオペレータに表示するものである。本例によれば、車両などの移動体のフロントシールドスクリーンに計器の表示や夜間における障害物の画像をフロントシールドスクリーンから視認される現実の風景に重ね合わせて表示でき操作者は視線を動かすことなく計器、夜間の障害物の映像を立体的に視認することができる。
【実施例】
【0029】
以下実施例に係る画像形成装置について説明する。図1は実施例に係るヘッドアップディスプレイ装置に使用される走査型表示装置光学系を示すものであり、(a)は平面模式図、(b)は(a)中B方向からの模式図、図2及び図3は走査型表示装置光学系における立体視の原理を示す模式図である。
【0030】
本例に係る走査型表示装置光学系10は、図1に示すように、2次元画像形成素子11と、第1集光レンズ12と、絞り13と、第2集光レンズ14と、1次元スキャナ15と、第3集光レンズ16と、拡散板17を備えて構成される。2次元画像形成素子11は液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、デジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いた表示装置を使用することができ、入力された視差画像を高速に切り換えて時分割表示する。
【0031】
前記第1集光レンズ12は正レンズであり、前記2次元画像形成素子11の下流側に配置されている。また、前記絞り13は、前記第1集光レンズ12の焦点位置に配置されている。更に、第2集光レンズ14は正レンズであり、前記絞り13の下流に配置されている。前記1次元スキャナ15は、前記時分割された視差画像を所定の振り幅及びタイミングでライン走査する走査鏡15aを電磁力により所定タイミングで揺動させるガルバノミラーとして構成されている。
【0032】
第3集光レンズ16は正レンズであり、前記絞り13の第2集光レンズ14による結像位置に焦点位置を有し、拡散板17に2次元画像形成素子11の像を投影する。そして、前記拡散板17は、前記第3集光レンズと光学的に共役な位置に配置されており、本例に係る光学系はテレセントリック光学系をなす。
【0033】
前記拡散板17は、鉛直方向(図1(a)の紙面に垂直方向)にのみ光を拡散させ、水平方向には光を拡散させず透過させる特性を有する素子であり、例えば微細加工により形成した回折光学素子を採用することができる。

【0034】
このような走査型表示装置光学系10において、2次元画像形成素子11に表示された画像は、第1集光レンズ12、絞り13、第2集光レンズ14を経て1次元スキャナ15に入射する。入射光は1次元スキャナ15でスキャンされて第3集光レンズ16に照射され、拡散板97に結像する。従って本例に係る走査型表示装置光学系10では、1次元スキャナ15によるスキャンは、観察者20からは左右方向になされ、2次元画像形成素子11の画素はそのまま観察者20が認識する画素となり、拡散板17に入射する光線の角度は前記1次元スキャナ15の走査鏡15aの角度で定まる。
【0035】
そして、図2に示すように、観察者20に点Aを所定の位置に表示させるには、1次元スキャナ15からの光線が左の眼球21Lと点Aを結ぶ直線LL及び右の眼球21Rと点Aを結ぶ直線LRと一致するように、2次元画像形成素子91の対応する画素を表示する。これにより、観察者20の左の眼球21L、右の眼球21Rには視差のある画像が入射され、観察者20は点Aの立体画像を認識することがきる。ここで、実際には観察者20は移動することがあり、これに対処するため、本例では、2次元画像形成素子11に各方向から観察した点Aに対応する画像を表示しつつ1次元スキャナ15をこの表示に同期してスキャンし、拡散板17の全ての位置から、点Aに向う方向から光が入射するように構成している。具体的には、点Aから拡散板17までの光線が存在するように、点Aの輝度、色、位置、1次元スキャナの角度に応じて2次元画像形成素子11に表示するのである。
【0036】
以上の説明は、簡単のために1点(点A)のみ表示する場合についてのものであるが、複数の点を表示することにより立体画像を表示したり、時間的に変化する複数の点を表示して立体動画を表示したりすることができる。また、画素の発光量を調整することにより、明暗のある画像を表示することができる他、2次元画像形成素子11をカラー表示のものとすればカラー立体表示を行うことができる。これにより、矢印等の記号その他の模様や、立体的な物体とすることができ、これらのときには、模様や物体に対応した画像が左右の眼球21L,21Rに入射するよう1次元スキャナ15の角度に応じて、2次元画像形成素子11を表示させるようにする。
【0037】
ここで、ある一瞬に付いてみると、拡散板17から出る光の水平方向の角度は、一つの方向のみである。これらの光の拡散板上での空間パターンは画像パネルの空間パターンと同じである。
【0038】
本実施例では、1次元スキャナ15が一方の最外角から反対の角度までスキャンして、一つの立体画像を表示し、更にそれを繰り返して立体画像を表示するので、人間の視覚特性を考慮すると、一つの画像を走査するスキャン速さは最低30Hz程度とする必要がある(なお、帰り方向の速度は高速として無視する)。本例では、1/30秒間に、前記特許文献3に示した超多眼(例えば128眼)の表示を行うとすると、2次元画像形成素子91は各方向からの画像が所定回(例えば128回)書き直される。また、立体画像が表示される方向は1次元スキャナ15の走査鏡15aの向きで定まる。
【0039】
図3に示すように、本例に係る走査型表示装置光学系10を使用するとき、表示したい画像と観察者20との位置から、光線は、線分LAと線分LBの間にあれば良好な3次元画像を表示できることが判る。従って、1次元スキャナ15の走査鏡15aの振り角度は、1次元スキャナ15から拡散板17の中央Oにあたる光線を考慮し、水平方向の主光線が、それぞれ、画像を観察するために必要な線分LA、線分LBと同じ角度になるように振れれば良いことが判る。つまり走査鏡15aの振り角度はLa、Lbの角度の半分の角度であれば十分ということになる。
【0040】
本実施例に係る走査型表示装置光学系10を用いて、自動車、ブルドーザー等の重機、農機具、船舶、飛行機、車両などの移動体に装着し、外部の景色、あるいは夜間の障害物などと赤外線カメラで撮影した画像、又は燃料計、走行距離などの計器のデータなどを重ね合わせて表示するヘッドアップディスプレイ装置(HUD)装置に用いることができる。図4は実施例に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す模式図、図5は実施例に係るヘッドアップディスプレイ装置の制御系を示すブロック図である。
【0041】
本例に係るヘッドアップディスプレイ装置50は、図4に示すように、走査型表示装置光学系10の2次元画像形成素子11、第1集光レンズ12、絞り13、第2集光レンズ14を備えた走査光学系30と、第3集光レンズ31、拡散板32を備える。そして、拡散板32に投影された画像は車両のフロントシールドスクリーン33に反射して観察者20に視認される。このフロントシールドスクリーン33は、車室内側に、半透鏡、あるいはある波長のみ反射するように、反射防止膜が積層されている。なお、本例ではフロントシールドスクリーン33は、後述する眼球情報の取得のため近赤外線を透過するものとしている。また、本例に係るヘッドアップディスプレイ装置50には、観察者20である運転者の眼球21の位置、視線方向を検知する眼球情報取得手段40が配置される。この眼球情報取得手段40は、観察者20の眼球付近に近赤外線を照射する照射手段41と、近赤外光を選択的に反射するダイクロイックミラー42と、近赤外線カメラ43とを備えて構成される。ここでダイクロイックミラー42は観察者20の視線の延長上に近赤外光を近赤外線カメラ44方向に反射するよう配置される。また、照射手段41はLEDを備え、例えば940nm程度の近赤外線を照射する。
【0042】
次にヘッドアップディスプレイ装置50の制御について説明する。ヘッドアップディスプレイ装置50を制御する制御系60は、図5に示すように、2次元画像形成素子11を駆動する画像形成素子駆動手段61、画像形成素子駆動手段61に視差画像を出力する視差画像発生手段62、1次元スキャナ15を駆動するスキャナ駆動手段63、前記視差画像発生手段62からのタイミング信号及び近赤外線カメラ43からの画像に基づいて観察者20の眼球の姿勢、位置などの眼球情報を出力する眼球情報出力手段64及び前記視差画像発生手段62からのタイミング信号及び前記眼球情報出力手段64からの眼球情報に基づいてスキャナ駆動手段63を制御するスキャナ制御手段65を備える。
【0043】
これらの制御系60により1次元スキャナ15を駆動制御して、検知された眼の位置、視線方向にあわせて、1次元スキャナ15による反射方向を制御し、観察者20の視線の方向に立体画像が表示される。なお、図4中、走査光学系30において、1次元スキャナ15は、2次元画像形成素子11から紙面垂直に来る光束を紙面上方に向け反射し、反射された光束は紙面垂直方向に走査される。
【0044】
本実施例によれば、車両などの移動体に立体表示装置を装着してヘッドアップディスプレイ装置を構成し、移動体の操作者に計器情報や夜間における障害物の画像を表示でき、この際障害物などの物体の立体画像を現実の距離に合致した正確な距離感で表示でき、操作者に障害物を正確に把握させることができる他、車両などの移動体のフロントシールドスクリーンに計器の表示や夜間における障害物の画像をフロントシールドスクリーンから視認される現実の風景に重ね合わせて表示でき操作者は視線を動かすことなく計器、夜間の障害物の映像を立体的に視認することができる。
【0045】
次にヘッドアップディスプレイ装置の変形例について説明する。図6は実施例に係るヘッドアップディスプレイ装置の変形例を示す模式図である。本例に係るヘッドアップディスプレイ装置70は、移動体室内側に眼球情報取得手段80を備える他、前記実施例に係るヘッドアップディスプレイ装置50と同様の構成を備える。眼球情報取得手段80は、近赤外線カメラ81とダイクロイックミラー82とを備えている。本例では、近赤外線カメラ81は近赤外線を照射する光源を内蔵し、照射した近赤外線をダイクロイックミラー82で反射して観察者20の眼球21付近を照明する。本例に係るヘッドアップディスプレイ装置70によれば、移動体外部に部材を配置することなく、前記実施例と同様に観察者20に立体画像を表示することができる。
【0046】
この走査型表示装置光学系10を測量システムに適用する場合について説明する。この測量システムは車両に搭載され、矢印、カーソルなどの限られた画像を観察者の視認する景色の所定の位置に重畳して表示するものである。このようなシステムは、本例に係る走査型表示装置光学系10を適用するのに好適なものである。ここでカーソル等の位置はシステム側で保持している。また、観察者の眼の位置は上述した近赤外線を使用した認識装置で認識できる。
【0047】
次にヘッドアップディスプレイ装置の実際の使用例について説明する。図7はヘッドアップディスプレイ装置の使用状態における表示画像を示す模式図、図8はヘッドアップディスプレイ装置で表示される各種ポイントマーカーを示す模式図である。本例は、ヘッドアップディスプレイ装置を移動体測量装置に使用した場合を示している。
【0048】
移動体測量装置では、ドライバーを兼ねる測量者が移動体測量装置を搭載した車両を移動させつつ、あるいは測量ポイント設定時は停止した状態で、測量点を決定していく。測量者が測量ポイントを設定すると、検出されたその測量者の頭部及び眼の位置に対応して、正確には拡散板との相対位置から、方向、距離を考慮したポイントマーカーが表示される。表示されるポイントマーカーは、例えば3次元ディスプレイで提示された矢印を測量対象物に付着したように見える状態で、視差、大きさを調整されたものである。
【0049】
図7に示した例では、道路111の左側の樹木に112に最初のポイントマーカー113を、右側の建物114に2番目のポイントマーカー115を表示している。これらのポイントマーカーは例えば赤い矢印と、測量点の番号(丸印付きの番号)で表示される。また、測量者が、測量点を決まる作業中のカーソル116を表示するようにしている。この例ではカーソル116は「×」で表示される。なお、図中117は窓枠、118はハンドルを示している。
【0050】
ここで、カーソルやポイントマーカーは、方位、距離により視差、大きさを変更して表示される。また、車側からのカメラによる観察が行われている場合で、外部の物体の輝度、更に色彩が認識できることがあり、このような場合には、カーソル、ポインターが、測量者が観察しやすい輝度、色で表示されるようにするものとする。例えばポイントマーカーとしては、図8に示すように、番号付きの下向き矢印121(図8(a))、符号付きの左向き矢印122(同(b))、文字付きの上向き矢印123(同(c))等、必要に応じて設定できる。
【0051】
更に、このような測量では、測量者が測量ポイントを設定してから、車両即ち移動体測量装置が移動することが多く、その場合は、移動体測量装置に付属したGPS、光学的な測量手段、あるいは車の走行記録により、移動体測量装置自体と測量ポイントの相対的位置関係を再計算して、測量ポイントマーカーの表示が自動的に変更することができる。
【0052】
例えば、建物114の左上手前の角を測量ポイントとして設定する場合は以下の手順による。
第1ステップ:
測量者は、測量ポイントのラフな位置を、ジョイスティックの操作でカーソルを移動することにより設定する。ジョイスティックは、左右にたおすことで測量ポイントがカーソルとともに左右に移動し、前後に傾倒することにより測量ポイントがカーソルとともに前後に移動する。この前後移動の動作は採用しないこともできる。前後移動のマニュアル設定がない場合は、すでに入力された2次元的な情報と、後述する奥行き方向の機械的な測定により、奥行き方向は自動的に設定される。この処理は、設定は通常停止した状態で行う。上下方向は、眼科装置で使われているように、ジョイスティックの縦のホールドする部分が回転するようになっていて、その回転により上下方向を指定することができる。
【0053】
第2ステップ:
このように、測量者により、測量ポイントがラフに決まったら、装置により正確な測量ポイントの決定が必要となることがある。そのために、まず、その測量ポイントの周辺をカメラで撮影し、それにより得られた2次元画像から、特徴点を抽出し、左右、上下のポイント決定の補助、あるいは自動で設定する。また、奥行き方向に関しては、移動体測量装置に、3次元測量手段、例えば、2つあるいは複数のカメラを使ったステレオ方式の3次元測量により奥行き(距離)を決定することができる。また、光学的な測量方式により距離情報を得ることができる。
【0054】
第3ステップ:
次に、マニュアル、あるいは機械により決まられた測量点が本当に測量者の意図した点であるかの確認、そして必要であれば修正の処理を実行する。この処理では、暫定の測量点として、ポイントマーカーが表示され、その表示が正しいことを測量者が確認する。このとき、前記の風景を目視しているところに、ヘッドアップディスプレイ装置(HUD)としての3次元ディスプレイからのポイントマーカーが重ねられて表示されることもできる。更に肉眼では倍率、奥行き方向の解像力が出ない場合は、3次元ディスプレイにここまでのプロセスで得られた、測量ポイントとその周辺の情報を2次元的、あるいは3次元できに提示し、その上でポイントを確実に確認することができる。また、このような表示を使って、測量ポイントを修正し、高い精度で設定することができる。
【0055】
なお、実施例に係るヘッドアップディスプレイ装置では、横方向の視差は表示したい物体により完全に表示されるが、縦方向は、物理的に拡散板上の位置で固定されてしまう。これでは、眼の高さが異なる観察者が来たときに表示の高さが変わってしまうので、眼の高さを観察することにより高さ方向の表示の補正をする。この補正は表示すべきカーソル、ポイントマーカー等の画像を2次元画像形成素子上で上下方向に移動することにより行われる。また、移動体測量中に眼の高さが変わってしまうこともありうるが、この場合も眼の高さを観察して、実時間的に高さ方向が適当になるように表示を変更することで対応できる。
【符号の説明】
【0056】
10 走査型表示装置光学系
11 2次元画像形成素子
12 第1集光レンズ
13 絞り
14 第2集光レンズ
15 1次元スキャナ
15a 走査鏡
16 第3集光レンズ
17 拡散板
20 観察者
21 眼球
21L 眼球(左)
21R 眼球(右)
30 走査光学系
31 第3集光レンズ
32 拡散板
33 フロントシールドスクリーン
40 眼球情報取得手段
41 照射手段
42 ダイクロイックミラー
43 近赤外線カメラ
50 ヘッドアップディスプレイ装置
60 制御系
61 画像形成素子駆動手段
62 視差画像発生手段
63 スキャナ駆動手段
64 眼球情報出力手段
65 スキャナ制御手段
70 ヘッドアップディスプレイ装置
80 眼球情報取得手段
81 近赤外線カメラ
82 ダイクロイックミラー
91 2次元画像形成素子
97 拡散板
111 道路
113 ポイントマーカー
114 建物
115 ポイントマーカー
116 カーソル
121 矢印
122 矢印
123 矢印
42 ダイクロイックミラー
82 ダイクロイックミラー
43 近赤外線カメラ
81 近赤外線カメラ
113 ポイントマーカー
115 ポイントマーカー
121 矢印
122 矢印
123 矢印



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数組の視差画像を時間的に分割して表示する2次元画像形成素子と、
前記2次元画像形成素子の下流に配置された第1集光レンズと、
前記2次元画像形成素子の前記第1集光レンズの焦点位置に配置された絞りと、
前記絞りの下流に配置された第2集光レンズと、
前記第2集光レンズの下流に配置され、前記時分割された視差画像を所定の振り幅及びタイミングでライン走査する1次元スキャナと、
前記1次元スキャナの下流に配置された第3集光レンズと、
前記第3集光レンズと光学的に共役な位置に配置されるとともに略垂直方向だけ光を拡散する拡散板と、
を備えることを特徴とする走査型表示装置光学系。
【請求項2】
請求項1に記載された走査型表示装置光学系と、
所定タイミングで前記2次元画像形成素子に表示させる複数の視差画像を発生する視差画像発生手段と、
前記視差画像に基づいて前記2次元画像形成素子を駆動する画像形成素子駆動手段と、
前記1次元スキャナを駆動するスキャナ駆動手段と、
前記視差画像発生手段の視差画像発生タイミングに基づいて前記スキャナ駆動手段の駆動制御を行うスキャナ駆動制御手段と、
を備えることを特徴とする立体表示装置。
【請求項3】
観察者の眼球の位置情報及び視線情報の少なくとも一方を含む眼球情報を取得する眼球情報取得手段を備え、
前記スキャナ駆動制御手段は、前記眼球情報に基づいて前記スキャナ駆動手段を駆動することを特徴とする請求項2に記載の立体表示装置。

【請求項4】
請求項3に記載された立体表示装置を備えることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
移動体のフロントウインドウスクリーンに前記拡散板の画像を反射させて移動体のオペレータに立体画像を表示することを特徴とする請求項4に記載のヘッドアップディスプレイ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−133508(P2011−133508A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290018(P2009−290018)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】