説明

車両の走行安全装置

【課題】 車両の進行方向前方のカーブを通過する際に、適切に安全装置を作動させる。
【解決手段】 環境検知部65は外界センサ16の画像処理データの状態つまり撮影結果の良否又は撮影環境の良否を検知する。作動部64は環境検知部65の検知結果に基づき認識可能距離LRを可変設定し、自車両の現在位置からカーブまでの距離が認識可能距離LR以上の場合には道路データに対する認識結果に基づき、認識可能距離LR以下の場合には画像処理データの認識結果に基づき安全装置を作動させる。作動部64は自車両の現在位置からカーブまでの距離が認識可能距離LR以下であっても撮影環境が不良と判定された場合には、画像処理データの代わりに道路データに対する認識結果に基づき、あるいは、周囲環境の良否程度に応じて設定した画像処理データ及び道路データの重み付けに基づき安全装置を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の走行安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、CCDカメラ等の撮像装置により走行中の道路の状況を検出した結果と、予め記憶している道路地図情報に基づき検出した道路の状況とが一致しない場合には、減速等により車両挙動を制御する制御動作を中止または制御動作の制御量を低減する車両運動制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−211492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術に係る車両運動制御装置において、例えばCCDカメラ等の撮像装置は、例えば天候や光の照射状態等の撮影環境に応じて道路の状況を精度良く検出することが困難な場合があり、また、予め記憶している道路地図情報に対しては、一時的な道路規制や最新の道路情報が反映されていない場合があることから、単に、撮像装置の検出結果と道路地図情報に基づく検出結果とが一致しない場合に車両挙動の制御を中止または制御量を低減するだけでは、制御動作の実行頻度や制御量が過剰に低下してしまう虞がある。特に、撮像装置による検出が困難な状態(例えば、逆光や降雨や降雪状態等)では、運転者による道路の視認が困難となる可能性が高く、減速等により車両挙動を制御する必要性が増大するにもかかわらず、制御動作の実行頻度や制御量が低下することで、車両の走行安全性を向上させることができなくなるという問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、車両の進行方向前方に存在するカーブを通過する際において、適切に安全装置を作動させることが可能な車両の走行安全装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の車両の走行安全装置は、道路データを記憶する記憶手段(例えば、実施の形態での地図データ記憶部23)と、自車両の位置を検出する自車位置検出手段(例えば、実施の形態での現在位置検出部21)と、自車両の車両状態を検出する車両状態検出手段(例えば、実施の形態でのジャイロセンサ32、車速センサ33)と、前記記憶手段が記憶した前記道路データに基づき自車両の進行方向に存在するカーブの形状を認識する第1のカーブ認識手段(例えば、実施の形態での第1カーブ認識部61a)と、自車両に設けられ、自車両の進行方向を撮影する撮影手段(例えば、実施の形態での外界センサ16)と、該撮影手段の撮影画像に基づき自車両の進行方向に存在するカーブの形状を認識する第2のカーブ認識手段(例えば、実施の形態での第2カーブ認識部61b)と、前記第1および第2のカーブ認識手段が認識した前記カーブの形状に基づき該カーブを適正に通過可能な適正車両状態を設定する適正車両状態設定手段(例えば、実施の形態での適正車速設定部62)と、前記車両状態検出手段が検出した前記車両状態と、前記適正車両状態設定手段が設定した前記適正車両状態とを比較する比較手段(例えば、実施の形態での比較部63)と、前記比較手段による比較結果において前記自車両の車両状態が前記適正車両状態にないときに、自車両に設けられた安全装置(例えば、実施の形態での安全装置)を作動させる作動手段(例えば、実施の形態での作動部64)とを備える車両の走行安全装置であって、前記撮影手段の撮影環境および撮影結果の良否の少なくとも何れかを検知する環境検知手段(例えば、実施の形態での環境検知部65)と、該環境検知手段の検知結果に基づいて自車両の進行方向における設定距離を可変設定する距離設定手段(例えば、実施の形態でのステップS05、ステップS06)を備え、前記作動手段は、自車両から前記カーブまでの距離が前記距離設定手段により設定された前記設定距離以上である場合には前記第1のカーブ認識手段の認識結果に基づき、自車両から前記カーブまでの距離が前記距離設定手段により設定された前記設定距離以下である場合には前記第2のカーブ認識手段の認識結果に基づき、安全装置を作動させることを特徴としている。
【0005】
上記の車両の走行安全装置によれば、道路データに基づきカーブを認識する第1のカーブ認識手段に対して、撮影画像に基づきカーブを認識する第2のカーブ認識手段は、認識可能距離が相対的に短く設定されているもののカーブの認識に対する信頼性が相対的に高いことから、自車両からカーブまでの距離が設定距離以上においては第1のカーブ認識手段による認識結果に基づき安全装置を作動させることにより、安全装置の作動遅れや不作動が発生することを防止することができ、また、設定距離以下においては第2のカーブ認識手段の認識結果に基づき安全装置を作動させることにより、安全装置の作動制御に対する信頼性を向上させることができる。
【0006】
さらに、請求項2に記載の本発明の車両の走行安全装置は、前記環境検知手段は前記撮影手段の撮影環境に関わる環境を検知すると共に、該環境の良否の程度を判定しており、前記作動手段は、自車両から前記カーブまでの距離が前記設定距離以下であるときに前記環境検知手段により前記環境が不良であると判定された場合には、前記第2のカーブ認識手段の認識結果の代わりに前記第1のカーブ認識手段の認識結果に基づき、安全装置を作動させることを特徴としている。
【0007】
上記の車両の走行安全装置によれば、撮影画像に基づきカーブを認識する第2のカーブ認識手段の認識精度が低下あるいは認識が不可となる場合には、第2のカーブ認識手段の認識結果の代わりに第1のカーブ認識手段の認識結果に基づき、安全装置を作動させることで、安全装置の作動遅れや不作動が発生することを防止しつつ、安全装置が不適切に作動制御されることを防止することができる。
【0008】
さらに、請求項3に記載の本発明の車両の走行安全装置では、前記環境検知手段は前記撮影手段の撮影環境に関わる環境を検知すると共に、該環境の良否の程度を判定しており、前記作動手段は、自車両から前記カーブまでの距離が前記設定距離以下であるときに前記環境検知手段により判定される前記環境の良否の程度に応じて前記第1および前記第2のカーブ認識手段の各認識結果に対して重み付けを行い、該重みに基づき、安全装置を作動させることを特徴としている。
【0009】
上記の車両の走行安全装置によれば、各カーブ認識手段の認識結果の信頼性および認識可能距離に応じて安全装置を適切に作動制御することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明の車両の走行安全装置によれば、自車両からカーブまでの距離が設定距離以上においては安全装置の作動遅れや不作動が発生することを防止することができ、また、設定距離以下においては安全装置の作動制御に対する信頼性を向上させることができる。
さらに、請求項2に記載の本発明の車両の走行安全装置によれば、安全装置の作動遅れや不作動が発生することを防止しつつ、安全装置が不適切に作動制御されることを防止することができる。
さらに、請求項3に記載の本発明の車両の走行安全装置によれば、各カーブ認識手段の認識結果の信頼性および認識可能距離に応じて安全装置を適切に作動制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置について添付図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態による車両の走行安全装置10は、例えば、内燃機関11の駆動力を、オートマチックトランスミッション(AT)あるいは無段自動変速機(CVT)等のトランスミッション(T/M)12を介して車両の駆動輪に伝達する車両に搭載され、ナビゲーション装置13と、制御装置14と、ブレーキアクチュエータ15および警報装置(図示略)を具備する安全装置(図示略)と、例えば可視光領域にて撮像可能なCCDカメラやC−MOSカメラ等からなるカメラ16aおよび画像処理部16bを具備する外界センサ16とを備えて構成されている。
【0013】
ナビゲーション装置13は、例えば現在位置検出部21と、ナビゲーション処理部22と、地図データ記憶部23と、入力部24と、表示部25とを備えて構成されている。
さらに、現在位置検出部21は、例えば人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号や、例えば適宜の基地局を利用してGPS信号の誤差を補正して測位精度を向上させるためのD(Differential)GPS信号等の測位信号を受信する測位信号受信部31と、水平面内での自車両の向きや鉛直方向に対する傾斜角度(例えば、車両の前後方向軸の鉛直方向に対する傾斜角度や車両重心の上下方向軸回りの回転角であるヨー角等)および傾斜角度の変化量(例えば、ヨーレート等)を検出するジャイロセンサ32と、車両の速度(車速)を検出する車速センサ33とを備えて構成され、受信した測位信号によって、あるいは、車速やヨーレート等の検出信号に基づく自律航法の算出処理によって、車両の現在位置を算出する。
【0014】
地図データ記憶部23は、例えばハードディスク装置等の磁気ディスク装置や、例えばCD−ROMやCD−RやMOやDVD等の光ディスク装置等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体からなる。そして、地図データ記憶部23は、例えば表示部25において地図を表示するための地図データとして、例えば道路の幅員データや複数の道路の交差角度や交差点の形状や位置等の道路データを格納している。
【0015】
ナビゲーション処理部22は、例えば、地図データ記憶部23から取得される道路データに対して、現在位置検出部21における測位信号および自律航法の算出処理のそれぞれ、又は、何れかから得られる車両の現在位置の情報に基づいてマップマッチングを行い、位置検出の結果を補正すると共に、検出された車両の現在位置、あるいは、各種スイッチやキーボード等からなる入力部24を介して操作者により入力された適宜の車両の位置に対して、表示部25での地図表示を制御する。
また、ナビゲーション処理部22は、例えば車両の経路探索や経路誘導等の処理を実行し、地図データ記憶部23から取得される道路データと共に、例えば目的地までの経路情報や各種の付加情報を表示部25へ出力する。
【0016】
制御装置14は、速度制御部41と、エンジン制御部42と、変速制御部43と、ブレーキ制御部44とを備えて構成され、さらに、速度制御部41は、第1カーブ認識部61aと、第2カーブ認識部61bと、適正車速設定部62と、比較部63と、作動部64と、環境検知部65とを備えて構成されている。
【0017】
第1カーブ認識部61aは、地図データ記憶部23に記憶された道路データを取得し、道路データに基づいて自車両の進行方向の道路形状として道路上に存在するカーブを検出する。
例えばカーブ認識部61は、道路データの基礎となるノードつまり道路形状を把握するための点(例えば、図2に示す白抜き丸および黒丸)と、リンクつまり各ノードを結ぶ線(例えば、図2に示す白抜き丸および黒丸を結ぶ線)とに基づいて、カーブの形状を認識する。そして、例えばカーブの径や曲率および極性、カーブの長さ(カーブの深さ)、カーブの通過に要する旋回角等からなるカーブ形状値を算出し、適正車速設定部62へ出力する。
第2カーブ認識部61bは、外界センサ16から出力される画像処理データを取得し、画像処理データに基づいて自車両の進行方向の道路形状として道路上に存在するカーブを検出する。
【0018】
適正車速設定部62は、第1および第2カーブ認識部61a,61bにて認識されたカーブ形状値に基づいて、このカーブを適正に通過可能な車両の速度(適正速度VS)を算出する。そして、適正車速設定部62は設定した適正速度VSのデータを比較部63へ出力する。
ここで、適正車速設定部62は、カーブ通過時に車両の横方向に発生する加速度(横加速度)を算出する横加速度算出部62aを備えている。すなわち、先ず、横加速度算出部62aは、カーブ認識部61にて認識されたカーブの形状に基づいて、このカーブを適正に通過する際に許容される横加速度を算出する。次に、適正車速設定部62は、この横加速度を車両に発生させる車両の速度を算出し、この速度を適正速度VSとして設定する。
なお、カーブ通過時に自車両に許容される横加速度は、路面状況、タイヤの状況、積載の状態等により変化するため、これらを更に考慮して適正速度VSを設定するようにしてもよい。
また、認識されたカーブの形状の手前に上り勾配が存在する場合には、この勾配の大きさに応じて適正速度VSが増大傾向に変化するように設定される。
比較部63は、現在位置検出部21の車速センサ33にて検出した車両の速度(現在速度)VPと、適正車速設定部62にて設定した適正速度VSとを比較して、この比較結果を作動部64へ出力する。
【0019】
作動部64は、比較部63での比較結果に基づいてエンジン制御部42および変速制御部43およびブレーキ制御部44の作動を制御する。例えば、比較部63での比較結果において、車速センサ33にて検出した現在速度VPと適正車速設定部62にて設定した適正速度VSとが異なる場合、例えば検出された車両の現在速度VPが適正速度VSよりも高い状態等のように車両が適正車両状態にない場合には、警報装置を作動させて運転者の注意を喚起したり、ブレーキ制御部44を介してブレーキアクチュエータ15を作動させて自動的に車両を減速させる。
【0020】
作動部64にて警報装置およびブレーキアクチュエータ15等からなる安全装置を作動させるタイミングは、車両が第1および第2カーブ認識部61a,61bにて認識したカーブの入口位置に到達するまでに、現在速度VPから適正速度VSまで減速する際に要する時間または距離等に基づいて設定される。
例えば図2に示すように、車両Aが速度V1(例えば、速度V1>適正速度VS)で走行している場合に、進行方向前方に存在するカーブCを適正に通過するためには、カーブCの入口位置CSにて車両の速度が適正速度VSとなるように設定する。
このとき、例えば所定の減速度GS(例えば、0.2G=0.2×9.8m/s)にて、現在の速度V1(例えば、100km/h)から適正速度VS(例えば、40km/h)まで減速する場合には、減速に要する時間TはT=(V1−VS)/GSにより求められる。そして、この時間Tに基づいて、減速に要する距離つまり減速必要距離L0が算出され、カーブCの入口位置CSから、減速必要距離L0だけ手前の減速開始位置C0(図2に示す黒丸C0)が設定される。
【0021】
さらに、例えば、警報を発して運転者に注意を促してから、実際に運転者が反応してブレーキを踏み込むまでの反応時間(例えば、約0.5s)と、運転者がブレーキを踏み込んでから実際にブレーキが効き始めるまでの空走時間(例えば、約0.3s)とを考慮して反応空走距離ΔL0を算出する。これにより、減速開始位置C0(図2に示す黒丸C0)から反応空走距離ΔL0だけ手前の警報開始位置CWが設定される。
すなわち、車両AがカーブCの手前に設定される警報開始位置CWに到達した時点、つまり車両Aの現在位置とカーブCの入口位置CSとの間の距離(減速対象地点間距離Ln)が、下記数式(1)に示すように設定される警報必要距離LWに等しくなった時点で警報を発する。
【0022】
【数1】

【0023】
なお、作動部64は、安全装置を作動させる際に、例えば運転者によるアクセルペダルの踏み戻し操作やブレーキペダルの踏み込み操作等の運転者の減速操作の有無を検知し、この検知結果に応じて安全装置の作動可否や作動内容を設定する。
このため、速度制御部41には、車速センサ33から出力される検出信号に加えて、運転者によるアクセルペダルの操作量に係るアクセル開度を検出するアクセル開度センサ51と、運転者によるブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルセンサ52と、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ53とから出力される各検出信号が入力されている。
【0024】
環境検知部65は、例えば外界センサ16から出力される画像処理データに対して認識処理を行う際の認識結果の良否に係る画像処理データの状態、つまり撮影結果の良否、および、例えば降雨、霧、降雪等の天候や夜間、逆光、影等の光の照射状態に係る撮影環境の良否の少なくとも何れかを検知する。
そして、作動部64は、環境検知部65の検知結果に基づいて自車両の進行方向における認識可能距離LRを可変設定し、自車両の現在位置からカーブまでの距離が、認識可能距離LR以上である場合には、第1カーブ認識部16aの認識結果に基づき、また、認識可能距離LR以下である場合には第2カーブ認識部16bの認識結果に基づき、安全装置を作動させるようになっている。
また、作動部64は、自車両の現在位置からカーブまでの距離が、認識可能距離LR以下であるときであっても、環境検知部65にて撮影結果または撮影環境が不良であると判定された場合には、第2カーブ認識部16bの認識結果の代わりに第1カーブ認識部16aの認識結果に基づき、安全装置を作動させる。
【0025】
また、作動部64は、自車両の現在位置からカーブまでの距離が認識可能距離LR以下であって、道路データに対する道路形状の認識処理と画像処理データに対する道路形状の認識処理との両方により進行方向前方のカーブを認識している状態で、環境検知部65の検知結果にて撮影環境に係る周囲環境が良好ではないと判定された場合には、道路データに対する道路形状の認識結果と画像処理データに対する道路形状の認識結果とに対して重み付けを行う。そして、道路データに基づき認識したカーブ形状値と、画像処理データに基づき認識したカーブ形状値とから、設定した重みに基づきカーブ形状値を算出し、算出したカーブ形状値によりカーブを適正に通過可能な適正速度VSを算出する。
例えば、道路データと画像処理データとに対し、r:(1−r)の重み付けを行った場合(ただし、0≦r≦1)には、道路データに基づき認識したカーブまでの距離L1と、画像処理データに基づき認識したカーブまでの距離L2とにより、カーブまでの距離を{L1×r+L2×(1−r)}として設定する。
【0026】
本実施の形態による車両の走行安全装置10は上記構成を備えており、次に、この車両の走行安全装置10の動作について添付図面を参照しながら説明する。
【0027】
先ず、図3に示すステップS01においては、車両の現在速度VPおよび現在位置を取得する。
次に、ステップS02においては、地図データ記憶部23から進行方向前方の道路データを取得する。
また、ステップS03においては、外界センサ16から出力される画像処理データを取得する。
次に、ステップS04においては、例えば画像処理データの状態つまり撮影結果の良否や、例えば降雨、霧、降雪等の天候や夜間、逆光、影等の光の照射状態に係る撮影環境の良否を判定することにより、画像処理データに対して道路形状の認識処理を実行した際の認識結果が良好か否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS05に進み、このステップS05においては、認識可能距離LRとして相対的に長い所定距離#LLを設定し、ステップS07に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS06に進み、このステップS06においては、認識可能距離LRとして相対的に短い所定距離#LSを設定し、ステップS07に進む。
【0028】
そして、ステップS07においては、自車両の現在位置から道路データまたは画像処理データに基づき認識したカーブまでの距離が認識可能距離LRよりも大きいか否を判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS12に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、画像処理データに基づくカーブの認識が困難であったり、画像処理データに基づくカーブの認識結果の信頼性が低下すると判断して、ステップS08に進む。
そして、ステップS08においては、道路データに対する道路形状の認識処理により進行方向前方のカーブを認識したか否かを判定する。
ステップS08の判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS14に進む。
一方、ステップS08の判定結果が「YES」の場合には、ステップS09に進む。
【0029】
そして、ステップS09においては、道路データに基づき認識したカーブに対して、例えばカーブの最小径や最大曲率や極性、カーブの長さ(カーブの深さ)、カーブの通過に要する旋回角等からなるカーブ形状値を推定し、推定したカーブ形状値に基づいてカーブを適正に通過可能な適正速度VSを算出する。
次に、ステップS10においては、例えば現在速度VPがカーブの適正速度VSよりも大きいか否かを判定することにより、減速制御が必要であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS11に進み、自車両の速度がカーブを適正に通過可能な適正速度VSとなるように減速制御を実行し、一連の処理を終了する。
【0030】
また、ステップS12においては、画像処理データに対する道路形状の認識処理により進行方向前方のカーブを認識したか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS15に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS13に進む。
そして、ステップS13においては、例えば降雨、霧、降雪等の天候や夜間、逆光、影等の光の照射状態からなる撮影環境に係る周囲環境が良否を判定する。
ステップS13の判定結果が「NO」の場合には、たとえ実際にはカーブが存在する場合であっても、運転者によるカーブの視認が困難であり、安全装置を作動させることが望ましいと判断して、上述したステップS08に進む。
一方、ステップS13の判定結果が「YES」の場合には、たとえ実際にはカーブが存在する場合であっても、運転者によるカーブの視認が可能であると判断して、ステップS14に進む。
そして、ステップS14においては、道路データおよび画像処理データに対する道路形状の認識処理では進行方向前方にカーブを認識していないカーブ非認識状態であると判定し、一連の処理に終了する。
【0031】
また、ステップS15においては、例えば降雨、霧、降雪等の天候や夜間、逆光、影等の光の照射状態からなる撮影環境に係る周囲環境が良否を判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、画像処理データに基づくカーブの認識結果の信頼性が相対的に低いと判断して、後述するステップS17に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、画像処理データに基づくカーブの認識結果の信頼性が相対的に高いと判断して、ステップS16に進む。
そして、ステップS16においては、画像処理データに基づき認識したカーブに対して、例えばカーブの最小径や最大曲率や極性、カーブの長さ(カーブの深さ)、カーブの通過に要する旋回角等からなるカーブ形状値を推定し、推定したカーブ形状値に基づいてカーブを適正に通過可能な適正速度VSを算出し、上述したステップS10に進む。
【0032】
また、ステップS17においては、道路データに対する道路形状の認識処理により進行方向前方のカーブを認識したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、たとえ画像処理データに基づくカーブの認識結果の信頼性が相対的に低い状態であっても、運転者によるカーブの視認が困難であり、安全装置を作動させることが望ましいと判断して、上述したステップS16に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS18に進む。
そして、ステップS18においては、上述したステップS15にて判定した周囲環境の良否程度に応じて道路データに対する道路形状の認識結果と画像処理データに対する道路形状の認識結果とに対して重み付けを行う。
そして、ステップS19においては、ステップS18にて設定した重みに基づき、認識したカーブを適正に通過可能な適正速度VSを算出し、上述したステップS10に進む。
【0033】
例えば、図4に示すように、画像処理データに対して道路形状の認識処理を実行した際の認識結果が良好であると判定された状態で、カーブCが認識可能距離LR(=所定距離#LL)を超える領域に存在する場合には、画像処理データに関わらずに、道路データに基づくカーブの認識結果に応じてブレーキアクチュエータ15を駆動制御する。
一方、図5に示すように、画像処理データに対して道路形状の認識処理を実行した際の認識結果が良好であると判定された状態で、カーブCが認識可能距離LR(=所定距離#LL)以内の領域に存在する場合には、画像処理データに基づくカーブの認識結果に応じてブレーキアクチュエータ15を駆動制御する。ただし、撮影環境に係る周囲環境が良好ではないと判定される場合には、例えば重み付けにおいてr=1に設定し、画像処理データの代わりに道路データの認識結果に基づき、あるいは、周囲環境の良否程度に応じて設定した重み付け(0<r<1)に応じて、画像処理データおよび道路データの認識結果に基づき、ブレーキアクチュエータ15を駆動制御する。
【0034】
上述したように、本実施の形態による車両の走行安全装置10によれば、自車両からカーブまでの距離が認識可能距離LRよりも長い場合には、例えば、画像処理データに基づくカーブの認識が困難であったり、画像処理データに基づくカーブの認識結果の信頼性が低下すると判断して、道路データに基づくカーブの認識結果に応じて、適正速度VSを算出して減速制御を実行する。これにより、安全装置の作動遅れや不作動が発生することを防止することができる。なお、道路データに基づくカーブの認識結果のみに応じて安全装置を作動させる際には、例えば減速制御の実行時における最大減速度を相対的に小さな値に設定する等により、安全装置の作用が相対的に弱くなるように設定しておくことで、安全装置の作用が過剰に増大してしまうことを防止することができる。
【0035】
また、自車両からカーブまでの距離が認識可能距離LRよりも短い場合には、画像処理データに基づくカーブの認識結果の信頼性が増大すると判断して、画像処理データに基づくカーブの認識結果に応じて、適正速度VSを算出して減速制御を実行する。これにより、安全装置の作動制御に対する信頼性を向上させることができる。ただし、撮影環境に係る周囲環境が良好ではないと判定される場合には、画像処理データに基づくカーブの認識結果の信頼性が相対的に低く、かつ、運転者によるカーブの視認が困難であると判断して、例えば重み付けにおいてr=1に設定し、画像処理データの代わりに道路データの認識結果に基づき安全装置を作動させることで、あるいは、周囲環境の良否程度に応じて設定した重み付け(0<r<1)に応じて安全装置を作動させることで、安全装置の作動遅れや不作動が発生することを防止しつつ、安全装置が不適切に作動制御されることを防止することができる。
しかも、認識可能距離LRを、例えば画像処理データの状態つまり撮影結果の良否や、例えば降雨、霧、降雪等の天候や夜間、逆光、影等の光の照射状態に係る撮影環境の良否を判定した判定結果に応じて可変となるように設定することで、画像処理データに基づくカーブの認識結果に対する信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】車両がカーブに進入する際の警報の作動タイミングを示す図である。
【図3】図1に示す車両の走行安全装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】自車両とカーブとの相対位置の一例を示す図である。
【図5】自車両とカーブとの相対位置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10 車両の走行安全装置
15 ブレーキアクチュエータ(減速装置)
16 外界センサ(撮影手段)
21 現在位置検出部(自車位置検出手段)
23 地図データ記憶部(記憶手段)
32 ジャイロセンサ(車両状態検出手段)
33 車速センサ(車両状態検出手段)
61a 第1カーブ認識部(第1のカーブ認識手段)
61b 第2カーブ認識部(第2のカーブ認識手段)
62 適正車速設定部(適正車両状態設定手段)
63 比較部(比較手段)
64 作動部(作動手段)
65 環境検知部(環境検知手段)
ステップS05、ステップS06 距離設定手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路データを記憶する記憶手段と、
自車両の位置を検出する自車位置検出手段と、
自車両の車両状態を検出する車両状態検出手段と、
前記記憶手段が記憶した前記道路データに基づき自車両の進行方向に存在するカーブの形状を認識する第1のカーブ認識手段と、
自車両に設けられ、自車両の進行方向を撮影する撮影手段と、
該撮影手段の撮影画像に基づき自車両の進行方向に存在するカーブの形状を認識する第2のカーブ認識手段と、
前記第1および第2のカーブ認識手段が認識した前記カーブの形状に基づき該カーブを適正に通過可能な適正車両状態を設定する適正車両状態設定手段と、
前記車両状態検出手段が検出した前記車両状態と、前記適正車両状態設定手段が設定した前記適正車両状態とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果において前記自車両の車両状態が前記適正車両状態にないときに、自車両に設けられた安全装置を作動させる作動手段と
を備える車両の走行安全装置であって、
前記撮影手段の撮影環境および撮影結果の良否の少なくとも何れかを検知する環境検知手段と、
該環境検知手段の検知結果に基づいて自車両の進行方向における設定距離を可変設定する距離設定手段を備え、
前記作動手段は、自車両から前記カーブまでの距離が前記距離設定手段により設定された前記設定距離以上である場合には前記第1のカーブ認識手段の認識結果に基づき、自車両から前記カーブまでの距離が前記距離設定手段により設定された前記設定距離以下である場合には前記第2のカーブ認識手段の認識結果に基づき、安全装置を作動させることを特徴とする車両の走行安全装置。
【請求項2】
前記環境検知手段は前記撮影手段の撮影環境に関わる環境を検知すると共に、該環境の良否の程度を判定しており、
前記作動手段は、自車両から前記カーブまでの距離が前記設定距離以下であるときに前記環境検知手段により前記環境が不良であると判定された場合には、前記第2のカーブ認識手段の認識結果の代わりに前記第1のカーブ認識手段の認識結果に基づき、安全装置を作動させることを特徴とする請求項1に記載の車両の走行安全装置。
【請求項3】
前記環境検知手段は前記撮影手段の撮影環境に関わる環境を検知すると共に、該環境の良否の程度を判定しており、
前記作動手段は、自車両から前記カーブまでの距離が前記設定距離以下であるときに前記環境検知手段により判定される前記環境の良否の程度に応じて前記第1および前記第2のカーブ認識手段の各認識結果に対して重み付けを行い、該重みに基づき、安全装置を作動させることを特徴とする請求項1に記載の車両の走行安全装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−123589(P2006−123589A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310826(P2004−310826)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】