説明

車両事故防止システム

【課題】
自車後方の情報を取得し、安全な走行を支援すること可能な技術を提供する。
【解決手段】
車両事故防止装置10は、自車両に搭載され自車両の後方を異なる視点から撮像し、視差のある第1の画像及び第2の画像を出力する撮像装置20と、自車両の速度の低下、もしくは走行方向の変化を検出するセンサ群40と、撮像装置20の出力から他車両を認識すると、自車両と前記他車両との位置関係、自車両から前記他車両までの距離、および前記他車両の速度を算出して、自車両と他車両の衝突の可能性を判断し、衝突の可能性のある場合に警告を発する制御部11と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両事故防止システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラにより自車両周辺を撮像して、周辺画像を利用者に提示することで、安全な走行を支援するような技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−158426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、自車両の後方および両側方の情報収集を複数のカメラで行う必要があるため、撮像機器や画像の演算処理に関するコストがかかる。
【0005】
そこで、本発明では、安全な走行を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上に記載した課題を解決するため、本発明の車両事故防止システムは、自車両に搭載され、自車両の後方を異なる視点から撮像し、視差のある第1の画像及び第2の画像を出力する撮像装置と、前記撮像装置の出力から他車両を認識すると、自車両と前記他車両との位置関係、自車両から前記他車両までの距離、および前記他車両の速度を算出する演算手段と、自車両の速度の低下、もしくは走行方向の変化を検出する検出手段と、前記演算手段の出力と前記検出手段の出力とから、自車両と他車両の衝突の可能性を判断し、衝突の可能性のある場合に警告を発する警告手段と、を有することを特徴とする車両事故防止システムを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、安全な走行を支援することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両事故防止システム1の構成を示すブロック図である。
【0010】
車両事故防止システム1は、周辺車両の動きから危険を予測して利用者に警告する車両事故防止装置10と、車載カメラによって車両周辺を撮像する撮像装置20と、撮像装置20の撮像する領域に光を照射する照明装置30と、車両の走行状態を検出する各種センサからなるセンサ群40と、を有する。
【0011】
撮像装置20は、第1の画像を撮像する第一のカメラである右側カメラ21aと、第2の画像を撮像する第二のカメラである左側カメラ21bと(これらを区別しない場合には、以下、ステレオカメラ21と称する)、を有する。これらは同一の高さで、かつ、それぞれの光軸が平行になるような所定の間隔(基線長)で配置されるステレオカメラである。ステレオカメラ21は、例えば、車両の後方に設置され、車両後方側の所定の撮影範囲を撮像する。
【0012】
各カメラはフレームレートに従って、第1の画像および第2の画像からなる1対のステレオ画像を出力する。ステレオ画像は、図示しないA/D変換器を経て、デジタルデータとして車両事故防止装置10へと送られる。各カメラの駆動は、車両事故防止装置10からの制御を受けても良いし、撮像装置20の備える図示しないカメラの制御部によって、独立して駆動しても良い。
【0013】
照明装置30は、近赤外光を照射可能な光源(例えば、LED等)を備え、撮像装置20のフレームレートに同期して、フレームスキャンに際したタイミングで近赤外光を照射する。
【0014】
センサ群40は、ブレーキセンサ41と、車速センサ42と、ウィンカーセンサ43と、を備える。
【0015】
ブレーキセンサ41は、運転者によるブレーキペダルの踏み込み状態を検出し、その状態に対応する検出信号を出力する。例えば、運転者がブレーキペダルを踏み込んだ時にはオン信号を、運転者がブレーキから足を離してブレーキペダルを解放した時にはオフ信号を車両事故防止装置10へと出力する。
【0016】
車速センサ42は、自車両の走行速度を検出して、速度に応じた検出信号を車両事故防止装置10へと出力する。車速センサ42は、車速を検出可能なセンサであればどのようなものでもよく、各車輪の回転数を検出する車輪速センサであってもよいし、車輪につながる車軸の回転数を検出する回転センサであってもよい。
【0017】
ウィンカーセンサ43は、運転者による方向指示器の操作を検出し、対応する検出信号を出力する。例えば、運転者が右方向の方向指示操作を行った時には、右方向指示信号を、左方向の方向指示操作を行った時には、左方向指示信号を、車両事故防止装置10へと出力する。
【0018】
次に、車両事故防止装置10について説明する。車両事故防止装置10は、制御部11と、記憶部12と、入出力インターフェース部(以下、I/F部と称する)13と、を備えている。
【0019】
記憶部12は、画像記憶領域121と、変換テーブル記憶領域122と、テンプレート記憶領域123と、管理テーブル記憶領域124と、警戒フラグ記憶領域125と、を有する。
【0020】
画像記憶領域121は、車両事故防止装置10の画像処理部111が取得、生成する各種画像、例えば、ステレオカメラ21から取得した一対のステレオ画像、当該一対のステレオ画像のうち、基準となる画像に前処理を施したフレーム画像、当該フレーム画像より生成された俯瞰画像、当該俯瞰画像から生成されたエッジ画像を記憶する。
【0021】
変換テーブル記憶領域122は、ステレオカメラ21の撮像したステレオ画像のうち、基準となる画像から俯瞰画像を生成するために必要な変換テーブル(図示しない)を予め記憶する。
【0022】
変換テーブルとは、例えば、フレーム画像の各画素の座標位置を、俯瞰画像の座標位置に対応付けて、各座標について角速度やレンズの歪曲収差を補正するための補正パラメータを配したものである。補正パラメータとは、例えば、カメラの設置位置、設置角度、レンズ歪み、CCDサイズ等であり、レンズの光学特性やカメラの設定等に基づいて事前に設定される。
【0023】
テンプレート記憶領域123には、1つ前フレームのエッジ画像中における他車両が写り込んだ領域(車両領域)の特徴量が、当該他車両を追尾するためのテンプレートとして記憶されている。各テンプレートには識別のためのIDが割り振られ、対応するIDとともに記憶される。なお、ここでの特徴量とは、どのような値でもよく、種々の画像成分の分布、強度、累積値等を用いることが可能である。
【0024】
管理テーブル記憶領域124には、図2に示すように、画像処理部111が取得したステレオ画像を識別するためのステレオIDが格納されるステレオID格納領域124aと、当該ステレオ画像を取得した際に、画像処理部111が車速センサ42へと要求して取得した自車両の速度が格納される車速格納領域124bと、当該ステレオ画像に写っている(相関がある)と判断された車両領域(テンプレート)のIDが格納されるテンプレートID格納領域124cと、車両領域の座標が格納される座標格納領域124dと、車両領域で特定される他車両が自車両(ステレオカメラ)に対してどの位置にあるかを示す位置情報が格納される位置情報格納領域124eと、視差から導き出される自車両と他車両との間の距離が格納される距離格納領域124fと、を備える管理テーブルが記憶される。
【0025】
警戒フラグ記憶領域125は、図4に示すような警戒フラグテーブルが記憶されている。警戒フラグテーブルは、後方警戒フラグ格納領域125aと、右後方警戒フラグ格納領域125bと、左後方警戒フラグ格納領域125cと、を備えている。警戒フラグテーブルに格納される警戒フラグに関しては、後述する。
【0026】
制御部11は、撮像装置20から取得した画像をエッジ画像に変換する画像処理部111と、エッジ画像に含まれる他車両を検出する車両認識部112と、自車両と他車両との間の距離を算出する距離算出部113と、警戒状態の期間を設定する警戒判断部114と、警戒状態の際にセンサから所定の信号を受けると、運転者へ危険を知らせる警告を発する警告部115と、を有する。
【0027】
画像処理部111は、ステレオカメラ21で撮像された車両後方のステレオ画像から、エッジ画像を生成する。
【0028】
より具体的には、画像処理部111は、まず、ステレオカメラ21が撮像した一対のステレオ画像を取得して、これにステレオIDを割り当てて、当該ステレオIDとともに画像記憶領域121へと時系列順に蓄積する。
【0029】
そして、画像処理部111は、管理テーブル記憶領域124に記憶される、図2に示すような管理テーブルに、新規に取得したステレオ画像のレコードを新たに生成し、当該ステレオIDをステレオID格納領域124aへと格納する。また、車速センサ42へと信号取得要求を出力して自車両の車速を取得し、当該レコードの車速格納領域124bへと格納する。
【0030】
次に、画像処理部111は、取得したステレオ画像のうち、基準となる一方のステレオカメラ(ここでは、右側カメラ21a)の撮像した第1の画像(便宜上、ここで得た基準となる最新の第1の画像を、基準画像Aとして説明する)に対して前処理を行って、図3に示すようなフレーム画像Aを生成し、画像記憶領域121へと記憶させる。前処理とは、例えば、フィルタリングやガンマ補正等、一般的なデジタル画像処理の一環であるので、ここでは詳述しない。
【0031】
その後、画像処理部111は、フレーム画像Aに対して変換テーブルに基づいて俯瞰変換処理を実行し、俯瞰画像(天空から垂直に地上面を見た場合の平面図)Aを生成する。そして、俯瞰Aを、画像記憶領域121へと蓄積する。
【0032】
さらに、画像処理部111は、前述の処理で生成した俯瞰画像に対して二値化処理を行った後、画像内の物体を特徴づける線要素(濃淡が急に変化している領域)をその境界線によって抽出して強調するエッジ処理を実行し、図3に示すようなエッジ画像Aを生成する。生成されたエッジ画像Aは、画像記憶領域121へとさらに蓄積される。
【0033】
なお、二値化処理は、例えば、各画素の輝度に対して固定閾値を用いた単純二値化法を用いることにより実行可能である。
【0034】
車両認識部112は、基準画像Aから生成されたエッジ画像A内に他車両が存在するか否かを検出する。
【0035】
具体的に、まず、車両認識部112は、画像処理部111によって生成されたエッジ画像Aを画像記憶領域121より読み出して、画像内に他車両と考えられる車両領域が存在するか否かを特定する車両認識を行う。
【0036】
車両認識は、どのような方法を用いてもよく、例えば、車両のテンプレートを予め記憶しておき、画像全域に対してテンプレートマッチング処理を行うことで実現可能である。
【0037】
また、車両は通常はほぼ方形であると考えられるため、車両の左右側面や、上下面の輪郭に現れるエッジは、お互いに対応するエッジ対として検出される。従って、エッジ画像Aの縦方向および横方向のエッジ成分の累積量を区間ごとに抽出したヒストグラムを生成し、上下および左右のエッジ対に囲まれた部分を、車両領域として特定してもよい。なお、特定されたエッジ画像A中の車両領域は、追尾目標となる他車両のテンプレートとして、テンプレート記憶領域123に格納される。
【0038】
ここで、車両認識部112は、エッジ画像A内で検出された全ての車両領域の各々について、テンプレート記憶領域123に既に登録されているか否かを、テンプレートマッチングにより判断する。
【0039】
車両領域が既にテンプレートとして登録されている場合、前フレームでも当該車両領域で特定される他車両がカメラで捕捉されていると考えられるため、他車両の1フレーム間の変化量eを後述の処理で算出できるからである。
【0040】
なお、テンプレートマッチングにはどのような手法を用いてもよい。また、認識対象である他車両は、自車両からの距離が変動してその大きさや縦横比が変化するため、テンプレートは適宜圧縮、伸長して扱うものとする。
【0041】
車両認識部112は、エッジ画像Aで検出された車両領域に対して所定の閾値以上相関するテンプレートがテンプレート記憶領域123に既に登録されている場合、車両領域の特徴量を新たなテンプレートとして既存のテンプレートに上書きし、これを更新する。なお、所定の閾値以上相関するテンプレートが複数存在する場合には、最も相関値の高いテンプレートを更新する。
【0042】
そして、車両認識部112は、更新されたテンプレートのテンプレートIDを、管理テーブルのテンプレートID格納領域124cへと格納する。
【0043】
エッジ画像Aで検出された車両領域と所定の閾値以上相関するテンプレートが登録されていなかった場合には、テンプレートIDを新たに割り振って、当該車両領域の特徴量を新規のテンプレートとしてテンプレート記憶領域123に登録する。そして、当該テンプレートIDを、管理テーブルのテンプレートID格納領域124cへと格納する。
【0044】
なお、車両認識部112は、テンプレート記憶領域123に記憶されるテンプレートのうち、エッジ画像A中で検出されなかった(即ち、上記処理で更新されなかった)テンプレートについては、最新のフレームで捕捉されておらず、追尾対象から外れた他車両であると判断し、テンプレート記憶領域123から削除する。
【0045】
次に、車両認識部112は、各車両領域が、エッジ画像A中で自車両から見てどの位置に存在しているかを判断する。
【0046】
具体的に、車両認識部112は、まず、車両領域として特定された領域の座標を、座標格納領域124dへと登録する。そして、エッジ画像Aの座標を縦方向に3分割した際に、各車両領域が自車両から見て「右後方」、「後方」、「左後方」のどの位置に存在するかを判断する。なお、車両領域が分割された領域間に跨って存在する時は、車両領域として特定された座標がより多く属する位置を選択すればよい。車両認識部112は、特定された各車両領域の位置を位置情報として、管理テーブルの位置情報格納領域124eへと格納する。
【0047】
なお、車両領域の位置の判断はこれに限らず、例えば車線を形成する白線を認識することで行ってもよい。
【0048】
車両認識部112は、全ての車両領域について上述の処理を終えると、距離算出部113へ距離算出要求を出力する。
【0049】
距離算出部113は、車両認識部112からの距離算出要求を受け付けると、エッジ画像A中で検出された他車両を示す車両領域の全てに対して、それぞれ自車両との間の距離を算出する。
【0050】
具体的に、距離算出部113は、まず管理テーブルを参照して、エッジ画像Aで検出された車両領域(テンプレート)の座標情報を抽出する。そして、変換テーブルに基づき、エッジ画像Aの元画像である基準画像A上における車両領域を特定する。
【0051】
そして、距離算出部113は、特定した車両領域を所定の大きさのテンプレートブロックに分割し、当該テンプレートブロックごとに基準画像Aと対をなす第2の画像のエピポーラ線を含む所定のサーチウィンドウ内を探索(1画素ずつずらしながら評価値を算出)し、テンプレートブロックと最も一致する領域を決定して、その水平シフト値から視差dを得る。
【0052】
なお、評価値の算出には、例えば、SAD(Sum of Absolute Difference)法を用いる。SAD法とは、両画像のブロック内の各画素について差の絶対値を取り、その総和を評価値とするものである。この評価値が小さいほどブロック間の一致度が高く、その水平方向のシフト量から視差dが与えられる。もちろん、評価値の算出法は上記に限定されず、SAD法の他に、ブロック内の各画素について差の二乗を取るSSD(Sum of Squared intensity Difference)法、各画素の輝度値から局所的な平均値を引き、分散値の類似度を求めるNCC(Normalized Cross Correlation)法等、どのような手法を用いてもよい。
【0053】
次に、距離算出部113は、三角測量の原理により視差dから他車両までの距離を算出する。距離の算出は、記憶部12に視差と距離との対応表を予め記憶させておくことで可能である。距離算出部113は、各テンプレートブロックついて得た視差dのうち一番大きな値を用いて算出したものを、自車両から車両領域が示す他車両までの最短距離として、距離格納領域124fへと格納する。
【0054】
全ての車両領域について距離を算出すると、距離算出部113は、警戒判断部114へと判断要求を出力する。
【0055】
警戒判断部114は、判断要求を受け付けると、基準画像Aと、一つ前のフレームの基準画像A′とで、同じテンプレートIDの距離格納領域124fに格納される距離を比較し、1フレーム間における他車両と自車両との間の距離の変化量eを算出する。
【0056】
変化量eが負の値である(他車両と自車両の距離が縮まる方向に変化している)場合、警戒判断部114は、管理テーブルの車速格納領域124bから、基準画像Aと、一つ前のフレームの基準画像A′と、の取得時における自車両の速度の平均値aを算出する。
【0057】
次に、警戒判断部114は、変化量e、および、自車両の速度の平均値aに基づいて、他車両の速度を算出し、自車両と他車両との間の距離が所定の値(ここでは、ゼロ)になるのにかかる時間、すなわち、自車両との接触が懸念される予測時間tを算出する。
【0058】
例えば、仮に、フレームレートが1f/min、他車両との現在の距離が0.1km、自車両の速度の平均値aが50km/h、1フレーム間の変化量eが−0.1kmであるとすると、他車両の速度は56km/hであると考えられる。従って、予測時間tは、1minとなり、1分後には、自車両と他車両との間の距離がゼロになると考えられる。
【0059】
そして、警戒判断部114は、この予測時間tが所定の閾値T以下であった場合、警戒状態を開始させるために警戒フラグテーブルを更新する。
【0060】
ここで、警戒状態の開始時を定める閾値はTに限定されず、位置情報格納領域124eに格納される他車両の存在する位置によって、適宜使い分けるような構成としてもよい。例えば、他車両が「後方」に存在する場合は、急ブレーキ等に備え、「右後方」および「左後方」の際に使われる閾値Tに比べて、より大きな閾値Tを使用することで、早い段階で警戒状態を開始することが可能である。
【0061】
警戒状態とは、運転者によりブレーキペダルや、方向指示器(ウィンカー)の操作があった場合に、警告部115が、図示しない音声出力装置や表示装置等によって、警告音を出力したり、警告メッセージを表示したりすることで、他車両との接触を運転者に警告する期間である。
【0062】
警戒判断部114は、警告部115が警戒状態であるか否かを判断するために、図4のような警戒フラグテーブルを適宜更新する。
【0063】
具体的に、まず、警戒判断部114は、予測時間tが所定の閾値T以下である他車両が検出されると、管理テーブルの位置情報格納領域124eを参照して、自車両に対する他車両の位置を抽出する。
【0064】
他車両の位置が「後方」であった場合、警戒判断部114は、警戒フラグテーブルの後方警戒フラグ格納領域125aに、警戒状態であることを示す警戒フラグ(例えば、「1」)を設定する。
【0065】
同様に、警戒判断部114は、他車両の位置が「右後方」であった場合、右後方警戒フラグ格納領域125bに警戒フラグ「1」を、「左後方」であった場合には、左後方警戒フラグ格納領域125cに警戒フラグ「1」を設定する。
【0066】
また、警戒判断部114は、警戒フラグ「1」を登録すると同時に、図示しないタイマをスタートさせる。タイマは、所定の値をカウントダウンし、警戒状態の終了時を定める。
【0067】
これにより、例えば図5に示すように、他車両がカメラから消失したとしても、サイドミラーでも確認不可能な死角に存在している可能性があることから、他車両が死角に移動した後でも警告がなされるような予備時間を設けることができる。
【0068】
なお、制御部11は、「後方」「右後方」「左後方」のそれぞれに対して警戒状態の持続時間を計測する少なくとも3つのタイマA、B、Cを備えており、各タイマは、所定の値のカウントダウンを開始し、値が0になると停止する。警戒判断部114は、タイマの動作が終了すると、警戒状態でないことを示す警戒フラグ「0」を登録する。
【0069】
なお、タイマのカウントダウン値は、変化量eおよび自車両の車長から、他車両が死角から抜け出して運転者が他車両を目視可能になるよう自車両と並ぶ位置まで移動する時間を算出し、これを設定してもよい。
【0070】
警告部115は、後方警戒フラグ格納領域125aに警戒フラグ「1」が登録されている際(警戒状態)にブレーキセンサ41からオン信号を受信すると、運転者に追突の可能性がある旨の警告を発する。
【0071】
また、警告部115は、右後方警戒フラグ格納領域125bに警戒フラグ「1」が登録されている際に、ウィンカーセンサ43からの右方向指示信号を検出すると、運転者に他車両と接触の可能性がある旨の警告を発する。さらに、左後方警戒フラグ格納領域125cに警戒フラグ「1」が登録されている際に、ウィンカーセンサ43からの左方向指示信号を検出した際にも、運転者に他車両と接触の可能性がある旨の警告を発する。
【0072】
I/F部13は、車両事故防止装置10と、他の装置と、を情報の出入力可能に接続する。通信方式にはどのような手段を利用してもよい。
【0073】
ここで、車両事故防止装置10のハードウェア構成について説明する。図7は、車両事故防止装置10の電気的な構成を示すブロック図である。
【0074】
図7に示すように、車両事故防止装置10は、コンピュータの主要部であって、各装置を集中的に制御するCPU(Central Processing Unit)51と、各種データを書換え可能に記憶するメモリ52と、を備える。さらに、車両事故防止装置10は、各種のプログラム、プログラムが生成するデータ等を格納する外部記憶装置53と、外部の装置と通信を行うI/F部54と、を備える。これらの各装置は、バスなどの信号線55を介してCPU51と接続される。
【0075】
CPU51は、例えば、外部記憶装置53上に格納されたプログラムをメモリ52上にロードして実行することにより、各種処理を実行する。
【0076】
以上のように構成される車両事故防止装置10での処理について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。図6は、車両事故防止装置10が、撮像装置20からのステレオ画像を取得してから、警戒状態を設定する処理の流れを示すフロー図である。
【0077】
車両事故防止装置10の画像処理部111は、ステレオカメラ21から出力されるステレオ画像を取得して画像記憶領域121へと時系列順に蓄積するとともに、管理テーブルにステレオ画像の新しいレコードを生成し、新たなステレオIDを設定してステレオID格納領域124aへと格納する。また、車速センサ42へと信号取得要求を出力して自車両の車速を取得し、当該レコードの車速格納領域124bへと格納する(S11)。
【0078】
次に、画像処理部111は、ステレオ画像から、エッジ画像Aを生成する(S12)。
【0079】
具体的に、画像処理部111は、取得したステレオ画像のうち、基準となる第1の画像である基準画像Aに対して前処理を行ってフレーム画像Aを生成する。さらに、画像処理部111は、フレーム画像Aに対して俯瞰変換処理を実行して変換テーブルに基づく俯瞰画像Aを生成し、これに対して二値化処理およびエッジ処理を施してエッジ画像Aを生成する。生成された各画像は、画像記憶領域121へと蓄積される。
【0080】
新たなエッジ画像Aが生成されると、車両認識部112は、エッジ画像A内に他車両が存在するか否かを検出する(S13)。
【0081】
具体的に、車両認識部112は、上下および左右のエッジ対に囲まれた部分を、車両領域として特定する。
【0082】
ステップ13で他車両の車両領域が検出されなかった場合(NO)、車両認識部112は、他車両が存在しないと判断して、テンプレート記憶領域123に記憶されるテンプレートとそのIDに関する情報を、全て削除し(S14)、処理を終了する。
【0083】
ステップ13で他車両の車両領域が検出された場合(YES)、車両認識部112は、検出された全ての車両領域が、既にテンプレートとしてテンプレート記憶領域123に登録されているか否かを、テンプレートマッチングにより判断する(S15)。
【0084】
ステップ15において、エッジ画像Aで検出された車両領域と、所定の閾値以上相関するテンプレートが既に登録されている場合(YES)、車両認識部112は、車両領域の特徴量を新たなテンプレートとして既存のテンプレートに上書きし、テンプレートを更新する(S16)。また、車両認識部112は、更新されたテンプレートのテンプレートIDを、テンプレートID格納領域124cへと格納する。
【0085】
ステップ15において、エッジ画像Aで検出された車両領域と、所定の閾値以上相関するテンプレートが登録されていなかった場合(NO)、当該車両領域にテンプレートIDを新たに割り振り、車両領域の特徴量をテンプレートとしてテンプレート記憶領域123に登録する。そして、当該テンプレートのIDを、テンプレートID格納領域124cへと格納する(S17)。
【0086】
エッジ画像Aで検出された車両領域の全てについて上記ステップ15からステップ17までの処理を終えると、車両認識部112は、エッジ画像Aで検出されなかったテンプレート、即ち、ステップ16で更新されなかったテンプレートと、そのIDと、をテンプレート記憶領域123から削除する(S18)。
【0087】
次に、車両認識部112は、テンプレート記憶領域123に登録された各車両領域が、自車両から見てどの位置に存在しているかをそれぞれ判断する(S19)。
【0088】
具体的に、車両認識部112は、まず、エッジ画像A中で車両領域として特定された領域の座標を、座標格納領域124dへと登録する。そして、車両認識部112は、エッジ画像Aの座標を、縦方向に3分割して、車両領域が自車両から見て「右後方」、「後方」、「左後方」のどの位置に存在するかを判断し、管理テーブルの位置情報格納領域124eへと位置情報を格納する。そして、距離算出部113へ距離算出要求を出力する。
【0089】
距離算出部113は、車両認識部112からの距離算出要求を受け付けると、各テンプレートに基づいて、他車両と自車両との間の距離を算出する(S20)。
【0090】
具体的に、距離算出部113は、エッジ画像Aで検出された車両領域の座標を座標格納領域124dから抽出し、これと対応する基準画像A上での車両領域を変換テーブルに基づいて特定する。そして、基準画像Aと対をなす第2の画像からなるステレオ画像より、当該車両領域の水平シフト値を算出し視差dを得る。
【0091】
距離算出部113は、視差dに基づいて、自車両から車両領域までの距離を算出して、基準画像AのIDが格納されるレコードの距離格納領域124fへと格納する。全ての車両領域に対してこの処理を終えると、距離算出部113は、警戒判断部114に判断処理を要求する。
【0092】
警戒判断部114は、基準画像Aと、一つ前のフレームの基準画像A′とで、同じテンプレートIDの距離格納領域124fに格納される他車両と自車両との間の距離を比較し、フレームレートに基づいて1フレームにおける他車両と自車両との間の距離の変化量eを算出する(S21)。
【0093】
次に、警戒判断部114は、変化量eが正の値(他車両と自車両の距離が広がる方向に変化している場合)であるか、負の値(他車両と自車両の距離が縮まる方向に変化している場合)であるかを判断する(S22)。
【0094】
ステップ22において、変化量eが正の値である場合(YES)、警戒判断部114は、処理を終了する。変化量eが負の値である場合(NO)、警戒判断部114は、管理テーブルの車速格納領域124bから、基準画像Aと、一つ前のフレームの基準画像A′と、の取得時における自車両の速度の平均値aを算出する(S23)。
【0095】
次に、警戒判断部114は、フレームレートと変化量e、および、自車両の速度の平均値aに基づいて、他車両の速度を算出し、自車両と他車両との間の距離が0になるのにかかる時間、すなわち、自車両との接触が懸念される予測時間tを算出する(S24)。
【0096】
さらに、警戒判断部114は、予測時間tが所定の閾値T以下であるか否かを判断する(S25)。
【0097】
ステップ25において、予測時間tが所定の閾値T以下でなかった場合(NO)、警戒判断部114は、処理を終了する。予測時間tが所定の閾値T以下であった場合(YES)、警戒判断部114は、管理テーブルの位置情報格納領域124eを参照して、他車両の自車両に対する位置を抽出し、警戒状態であることを示す警戒フラグを登録する(S26)。
【0098】
具体的に、警戒判断部114は、他車両が「後方」の位置であった場合、警戒フラグテーブルの後方警戒フラグ格納領域125aには警戒フラグ「1」を登録してタイマAを動作させ、他車両が「右後方」の位置であった場合、右後方警戒フラグ格納領域125bに警戒フラグ「1」を登録してタイマBを動作させ、他車両が「左後方」の位置であった場合、左後方警戒フラグ格納領域125cに警戒フラグ「1」を登録してタイマCを動作させる。なお、警戒判断部114は、各タイマの動作が停止すると、対応する警戒フラグの格納領域に警戒状態ではないことを示す警戒フラグ「0」を登録する。
【0099】
以上、本発明の一実施形態について説明した。
【0100】
上記実施形態によれば、車両事故防止システム1は、自車両および他車両の速度と、その間の距離の変化量に基づいて接触する可能性のある時間を予測し、より正確なタイミングで運転者に警告を行うことが可能である。
【0101】
また、例えば、他車両がカメラの撮像角から脱して死角となる領域へ進入した場合であっても、一定の予備時間が設けられているため、運転者は所定の期間、警告を受けることが可能である。
【0102】
なお、本発明は、上記実施形態に制限されない。上記実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
【0103】
例えば、閾値Tは、他車両の速度によりその値を変動する構成としてもよい。他車両の速度に比例して閾値Tを大きな値とすることにより、運転者は、他車両が高速で走行している場合は、早い段階で警告を受けることが可能となる。
【0104】
上記実施形態では、警告を実行するトリガとしてブレーキセンサ41やウィンカーセンサ43の検出信号を用いたが、センサはこれに限定されず、例えば、操舵角センサや角速度センサ等の検出信号から、警戒状態の開始を判断してもよい。
【0105】
さらに、上記の実施形態では、本発明を車載装置とする例について説明したが、本発明は、車載用以外の用途にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】車両事故防止システム1の構成を示すブロック図である。
【図2】管理テーブルの概略図である。
【図3】フレーム画像Aおよびエッジ画像Aの概略図である。
【図4】警戒フラグテーブルの概略図である。
【図5】撮像装置20の撮像角およびサイドミラー角を示す概略図である。
【図6】車両事故防止装置10の実行する処理の流れを示すフロー図である。
【図7】車両事故防止装置10の電気的な構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0107】
1:車両事故防止システム、10:車両事故防止装置、11:制御部、111:画像処理部、112:車両認識部、113:距離算出部、114:警戒判断部、115:警告部、12:記憶部、121:画像記憶領域、122:変換テーブル記憶領域、123:テンプレート記憶領域、124:管理テーブル記憶領域、125:警戒フラグ記憶領域、13:I/F部、20:撮像装置、30:照明装置、40:センサ群、41:ブレーキセンサ、42:車速センサ、43:ウィンカーセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と他車両との衝突を回避するための車両事故防止システムにおいて、
自車両に搭載され、自車両の後方を異なる視点から撮像し、視差のある第1の画像及び第2の画像を出力する撮像装置と、
前記撮像装置の出力から他車両を認識すると、自車両と前記他車両との位置関係、自車両から前記他車両までの距離、および前記他車両の速度を算出する演算手段と、
自車両の速度の低下、もしくは走行方向の変化を検出する検出手段と、
前記演算手段の出力と前記検出手段の出力とから、自車両と他車両の衝突の可能性を判断し、衝突の可能性のある場合に警告を発する警告手段と、を有すること
を特徴とする車両事故防止システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両事故防止システムであって、
前記演算手段は、
前記自車両から前記他車両までの距離が所定の値に達するまでの予測時間を算出し、
前記警告手段は、
前記予測時間が所定の値以下であった場合に、前記検出手段が自車両の速度の低下もしくは走行方向の変化を検出すると、衝突の可能性のあると判断すること
を特徴とする車両事故防止システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両事故防止システムであって、
前記検出手段は、運転者のブレーキ操作を検出するブレーキセンサを備え、
前記警告手段は、
前記予測時間が所定の閾値以下であった場合に、前記他車両が自車両に対して後方に位置し、かつ、前記ブレーキセンサからブレーキ操作があったことを示す信号が検出されると、衝突の可能性のあると判断すること
を特徴とする車両事故防止システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両事故防止システムであって、
前記検出手段は、運転者の方向指示操作を検出するウィンカーセンサを備え、
前記警告手段は、
前記予測時間が所定の閾値以下であった場合に、前記他車両が自車両に対して右後方に位置し、かつ、前記ウィンカーセンサから右への方向指示があったことを示す信号が検出されると、右後方の前記他車両と衝突の可能性のあると判断し、
前記他車両が自車両に対して左後方に位置し、かつ、前記ウィンカーセンサから左への方向指示があったことを示す信号が検出されると、左後方の前記他車両と衝突の可能性のあると判断すること
を特徴とする車両事故防止システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−134852(P2010−134852A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312387(P2008−312387)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】