説明

車両交通量の安定化制御のための方法及び装置

【課題】 高速道路ないし鉄道軌道等の自動車ないし車両交通において格別の障害物の存在しない場合でも発生しうる渋滞現象を改善するための方策であって、運転者が有効かつ安全に制御に組み入れられる方策を提案する。
【解決手段】 マンマシン系として作業を分担させ、車間距離ならびに速度制御機能を運転者に行わせる一方で、車間距離列安定化のための制御量を自動計算し、各車で加算配合して加える方法及び装置を提供する。車間距離の安定化は、先行車からの加減速情報を適切に積算し後方にリレー伝達させる分散制御法で実現される。これにより、車間距離計測そのものを要求せずに車間距離列の安定化が可能になり、装備化も容易で、運転者が局所制御を依然担えるために安全性が確保できる方式が実現できる。本制御は車間制御であり、またその結果として得られる渋滞解消を含む交通量の安定化制御法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車、鉄道交通などにおける車両交通量制御、車両群の縦方向の走行制御、及び交通渋滞の回避のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道等の車両交通における渋滞は、実障害がなくても、わずかな巡航中の車間距離の変動が後方に伝播し、車間距離の粗密波の拡大となって引き起こす現象である。図1に示すように、先行車と自車間の車間距離を、自車の運転者が局所的に制御する場合には、後続車両への情報伝達遅れが発生し、これがわずかな車間距離擾乱が振動的に拡大し、後方で渋滞、すなわち交通量の不安定性を引き起こす。これが格別の障害がないにもかかわらず、渋滞をひきおこす原因である。
【0003】
【特許文献1】特開2000−177428
【特許文献2】特開2000−6685
【特許文献3】特開平11−278098
【特許文献4】特開平7−17298
【特許文献5】特開平7−17294
【非特許文献1】津川ほか、「車両間通信による自律車両群の走行制御」、計測自動制御学会論文集、Vol.26, No.9, 1058/1065, 1990
【非特許文献2】津川、「高速道路交通システム概論」、日本ロボット学会誌、Vol.17, No.3, 312/320, 1999
【非特許文献3】熊本ほか、「スラディングモードによる自動車の縦方向制御」、計測自動制御学会論文集、Vol.34, No.7, 734/740, 1998
【非特許文献4】宇野ほか、「車両間通信を用いた車両群の合流制御アルゴリズム」、計測自動制御学会論文集、Vol.36, No.8, 684/691, 2000
【0004】
局所的な制御を車列全体にわたって展開する手法はすでに知られている。この車列全体の制御を行うにあたって、従来は、図2に示すように、人間に代わって、車間距離計測を行って自動制御する方法が考察・提案されてきた。例えば、非特許文献1では、車両間で操作量を伝達していく構造の概念が扱われており、伝達される内容に車間距離、速度情報を含んで構成されている。非特許文献2では、Intelligent Transportation System (ITS)の中で、レーザなどを用いた車間距離、相対速度計測を行う、自律的な制御方式が紹介されている。また、特許文献1、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5では、車間距離計測を前提とした制御装置が提案されている。これらの方式は、車間距離計測値と相対速度計測値を利用することを前提とした方式であるため、車間距離を制御する機能を有し、渋滞解消のために機能し得ると考えられる。しかし、従来の方式では、各車両への局所的な加減速量だけで構成されたものはない。また、車間通信機能が双方向になるため、車列への参加、離散が難しい問題がある。
【0005】
また、特許文献2及び非特許文献3では、車間距離、相対速度計測を前提とした方式に加減速情報を含めた通信方式も論じられている。さらに、非特許文献4では、相対距離計測の存在を前提にした制御アルゴリズムが紹介されている。しかし、これらの提案方式は、その車間距離計測の確実性、機械制御主導に起因する安全性や、あるいは車両への装備法に難があり、実現性に課題を残している。
【0006】
【非特許文献5】近藤ほか、「分散制御を用いた車両の集団走行」、第19回、計測自動制御学会、誘導制御シンポジウム講演予稿集、pp. 125-131, 2002
【0007】
また、非特許文献5では、操舵制御法が紹介されている。上記の問題のほか、車線間制御問題やステアリング問題の検討の余地もあるが、ここでは、縦走行制御の問題のみを考察する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記提案があるにもかかわらず、車列制御は実用化にいたっていない。それは、1)車間距離計測を使用状況に関わらず確実に実施することの実用化課題が未解決であることや、2)運手者の介在を認めにくい機械主導の制御構造が出現すること、3)運転者の操作との両立性の確保に難点を残していること、4)車間通信機能が距離・速度計測のため双方向になるため、車列への参加、離散が困難であることなどが大きな理由と考えられている。従って、図3に示すように、車列への参加、離散が容易になるように車間通信機能が単方向であり、車間距離計測を行わず、また運転者が有効かつ安全に制御に組み入れられる方策の提案が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みて構成されたもので、高速道路ないし鉄道軌道等での自動車ないし車両交通において格別の障害物の存在しない場合でも発生しうる渋滞現象等の交通量の不安定性を改善するための方策であって、運転者が有効かつ安全に制御に組み入れられる方策を提案することを目的とする。
【0010】
本発明は、対象車両群の車両交通量の安定化制御方法であって、
前記対象車両群のうちの一車両に対する直前の車両において車間及び速度制御に要した加減速度入力要求量を前記一車両で受信する受信段階と、
運転者が前記一車両において車間及び速度を制御するために与えようとする加減速操作量を計測する計測段階と、
前記加減速度入力要求量と前記加減速操作量を加算して車両加減速度要求量を得る加算段階と、
前記車両加減速度要求量に基づいて前記一車両を駆動させるために前記一車両の駆動部に前記車両加減速度要求量を提供する提供段階と、
前記一車両の直後の車両が前記車両加減速度要求量を加減速度入力要求量として受信できるように、前記直後の車両に前記車両加減速度要求量を送信する送信段階と、を備え、
前記一車両に対する前記全段階を前記対象車両群の各車両で実行することを特徴とする方法を提供する。
【0011】
好ましい態様では、前記提供段階は、前記加算段階で得られた車両加減速度要求量が前記一車両の加減速度制限値を超える場合に、前記一車両の加減速度限界値を前記一車両の駆動部に提供する。
【0012】
別の態様では、前記一車両がその速度の情報を用いて一定の巡航速度を保つための自動速度制御手段を備える場合に、前記加算段階は、前記加減速度入力要求量、前記加減速操作量、及び自動速度制御手段から算出される自動速度制御要求量を加算して車両加減速度要求量を得ることを特徴とする。
【0013】
さらに、別の態様では、前記加算段階における加減速度入力要求量は、前記受信段階で受信される加減速度入力要求量に任意の割合を乗じた値であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、車両交通量の安定化制御のために前方車両群の加減速度情報を用いて半自動的に対象車両の加減速度を制御する装置であって、
前記対象車両の直前の車両において車間及び速度制御に要した加減速度入力要求量を前記対象車両で受信する受信手段と、
運転者が前記対象車両において車間及び速度を制御するために与えようとする加減速操作量を計測する計測手段と、
前記加減速度入力要求量と前記加減速操作量を加算して車両加減速度要求量を得る加算手段と、
前記車両加減速度要求量に基づいて前記対象車両を駆動させるために前記対象車両の駆動部に前記車両加減速度要求量を提供する提供手段と、
前記対象車両の直後の車両が前記車両加減速度要求量を加減速度入力要求量として受信できるように、前記直後の車両に前記車両加減速度要求量を送信する送信手段と、を備えることを特徴とする装置を提供する。
【0015】
好ましい態様では、前記提供手段は、前記加算手段で得られた車両加減速度要求量が前記対象車両の加減速度制限値を超える場合に、前記対象車両の加減速度限界値を前記対象車両の駆動部に提供する。
【0016】
別の態様では、前記対象車両がその速度の情報を用いて一定の巡航速度を保つための自動速度制御手段を備える場合に、前記加算手段は、前記加減速度入力要求量、前記加減速操作量、及び自動速度制御手段から算出される自動速度制御要求量を加算して車両加減速度要求量を得ることを特徴とする。
【0017】
さらに、別の態様では、前記加算手段における加減速度入力要求量は、前記受信手段で受信される加減速度入力要求量に任意の割合を乗じた値であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、対象車両群の車両交通量の安定化制御システムであって、
前記対象車両群のうちの一車両に対する直前の車両において車間及び速度制御に要した加減速度入力要求量を前記一車両で受信する受信手段と、
運転者が前記一車両において車間及び速度を制御するために与えようとする加減速操作量を計測する計測手段と、
前記加減速度入力要求量と前記加減速操作量を加算して車両加減速度要求量を得る加算手段と、
前記車両加減速度要求量に基づいて前記一車両を駆動させるために前記一車両の駆動部に前記車両加減速度要求量を提供する提供手段と、
前記一車両の直後の車両が前記車両加減速度要求量を加減速度入力要求量として受信できるように、前記直後の車両に前記車両加減速度要求量を送信する送信手段と、を備え、
前記一車両に対する前記全手段を前記対象車両群の各車両で実行することを特徴とするシステムを提供する。
【0019】
好ましい態様では、前記提供手段は、前記加算手段で得られた車両加減速度要求量が前記一車両の加減速度制限値を超える場合に、前記一車両の加減速度限界値を前記一車両の駆動部に提供する。
【0020】
別の態様では、前記一車両がその速度の情報を用いて一定の巡航速度を保つための自動速度制御手段を備える場合に、前記加算手段は、前記加減速度入力要求量、前記加減速操作量、及び自動速度制御手段から算出される自動速度制御要求量を加算して車両加減速度要求量を得ることを特徴とする。
【0021】
さらに、別の態様では、前記加算手段における加減速度入力要求量は、前記受信手段で受信される加減速度入力要求量に任意の割合を乗じた値として用いることができるようになっていることを特徴とする。
【0022】
以上より、本発明は、マンマシン系として作業を分担させ、車間距離ならびに速度制御機能を運転者に行わせる一方で、車間距離ないしその結果として得られる交通量安定化のための制御量を自動計算し、各車で加算配合して加える方法及び装置であり、運転者が有効かつ安全に制御に組み入れられるものである。
【0023】
数学的解釈と証明:
ここで、本発明の数学的解釈について以下に説明する。各車の位置をxiで記し、各車への加減速度入力を ui とする。すなわち

ここで車間距離を yi

と定義すると、

であり、これを空間について z-変換すると

と書かれる。右辺に z-演算子を含むことが伝達遅れを示していて、これを制御論理上相殺させて消すことが安定な車列制御の本質である。これは、過去にも報告されている点であるが、新しい解釈をここで加えている。
【0024】
最初に通常の、運転者が自車と先行車間の車間距離を制御する場合を考える。この場合、速度誤差フィードバックゲイン、車間誤差フィードバックゲインをそれぞれKv、Kxとすると、

が制御論理である。以下で変数名の上に横棒(バー)を付して当該変数の目標値を示すものとする。

より、

であるので、(負号に注意する。)閉ループ特性は、

にしたがう。ここで、簡単にこの特性を解釈してみる。一般性を失わずに、

とおくことができ、Kv が十分小さく、

と置き換えると、初期条件がyZ0の解は

で与えられる。これを(1/z)で展開し係数を評価すると、各車間距離を求めることができる。第1項は、初期条件と制御目標間の誤差の車列への伝播を与えており、この項による先頭からn番目の車間距離は、(1/z)nの展開係数で与えられ、この簡易モデルでは、

で与えられる。理論的には、各車間ごとに位相が90度異なるはずである。この振幅は、

であり、有限時間内であれば、

であり、車間距離は発散はしない。逆に有限の車列長では、時間の経過とともに発散していく。車間距離列は、結局、振幅が

の振動を後方車列に生じさせていくことになり、これが重畳して渋滞にいたることになる。渋滞を避けるには、

として、車間距離に対して加減速を行わせる感度を下げることが効果的であるといえるが、上述のように後方車列に発散的に伝播する振動を生ずることは本質的に避けられない。したがって、なんらかの車間距離の擾乱が発生すると、従来の運転者が先行車との車間距離をみて制御する方式では、渋滞はかならず発生することになる。実際には、速度フィードバック項がdampingを供給するために、緩和されるほか、後方車は先行車を追い越すことができないという飽和特性が存在するために発散にはいたらないですんでいる。
【0025】
理論的には、この車列間隔の振動時定数は、

で与えられるのだが、各車の加減速性能には限界があり、実際に現れる周期はこれよりもずっと長くなる。たとえば、加減速の限界を A [m/s2] とし、そのフルの加減速を行う際の車間距離の目標値との誤差を、D [m] とするならば、等価的な Kx は、A/D となり、出現する周期は

となる。A =1[m/s2], D=100[m] では、約62秒になる。
【0026】
[新制御則]
次に、本発明に係る制御則について以下に説明する。いま、制御則を

とおく。上記と同様に y で書き直すと、

ということになる。閉ループ特性は

で支配される。
このyz に関する制御系は、Kv, Kx >0 、であれば安定であり、最終的に



にいたることになる。このyz に関わる安定性の証明においては、係数の負号だけが問題であり、Kx の時間変化が十分小さければ、すなわち

非線形性にかかわらず安定であることを示すことができる。
各車に求められる巡航速度は、ここでの説明では共通の1つの値としているが、それらは道路標識などから指定値が提供されると考えられ、実際には各車ごとにばらついている。しかし、上式が意味するところは、収束する各車間距離に、若干のばらつきが生ずる結果として現れるだけで、制御応答の安定性という点には影響を与えていないことであり、この制御方式での問題とはならない。
この制御論理は、逆z- 変換を行うと、

と具体的に書くことができる。K*=0 であれば、この制御論理は、ごく普通の運転者の行う車間距離制御に一致する。vi を更新する過程は、各車で行うことができ、その結果のみを後方車両に伝達することで、車列全体の安定化が図られていることになる。これを本論では分散積算型制御方策と呼ぶことにする。実際に加えられる操作量は、移送される情報そのものでない点が、本提案の新しい点である。この積算制御構造は、実は、車間距離誤差フィードバックゲインが一定である場合で、車間距離を全車列にわたって一定にする制御においては、車間距離計測を積算し先頭からの距離を算出する構造に等価である。この極端な場合においては、過去に報告されている方式に一致する。しかし、提案のポイントは、距離で積算するのではなく、制御操作入力 vi で積算を行うことにあり、これが新しい点である。そのメリットは、なによりも車間距離を計測する必要がなく、制御量計算作業を各車の運転者に陰に委ねることができる点にある。
【0027】
この運転者の技量に委ねる場合、車間距離誤差フィードバックゲインが各車毎に異なる場合の安定性を証明する必要があるが、それは以下のように示される。

を書き換えると、

となり、速度誤差フィードバックゲインが対角行列 K1, 車間距離誤差フィードバックが対角行列 K2 で与えられ、各運転者毎に異なることを認めたとすると、閉ループ系は、

で記述されることになる。いま線形時不変だと限定して考えると、特性方程式は、

となるが、これは下三角行列であり、特性方程式は、

となる。システム全体の安定性は個々の車間距離制御の安定性が保たれていれば成立することが示される。線形時不変での性質ではあるが、運転者毎に、K1, K2 に相当する技量に差があっても系全体の安定性に影響がないことが示される。
【0028】
[実装上のアルゴリズム]
次に、上述の分散制御理論の実装モデルについて以下に説明する。上述の分散制御論理は、優れているものの、実装上に1つ難点が存在する。vi というリレーされるべき操作量の元となる運転者の行った操作量は車間距離制御のために要した加減速量である。しかるに、運転者が行った操作量から車間距離制御のために要した加減速度だけを切り分けて計測することはできない。運転操車者の行うタスクは、車間距離制御と速度制御を同時に行っているのであって、車間制御だけに対して行っている加減速操作量を取り出すことはできないからである。
いま、その運転者が行っている加減速操作量を wi とし、上述の vi を近似した想定の速度制御モデルゲイン

を利用することで、wi から相殺させて vi に相当する量を近似計算する手法を考察してみることにする。実際に利用できる情報とは、結局のところ、運転者の行う加減速操作要求情報だけだからである。これらは数学的に表現すると以下のように記述される。

ここに添え字 i は、各車 i で行うゲインならびに操作を示す。各車毎にゲインの異なる場合には、z 変換での表記には適しないため、これをベクトル書式で表記する。行列 A を

とすると、上述の一連の操作は、

と書かれる。結局、車間距離の運動方程式は、

と記述される。ここに、

である。一般性を失わずに、

はともに対角行列としてよく、また、その結果、

は下三角行列になるため、系の安定性は、Kx対角要素の正定性とその微分値に関する上述の性質と、

の対角要素の正定性とに帰着する。この対角要素の正定性については、容易にわかるように常に成立しており、安定である。もちろん、これまでの議論の結果、

であれば、すなわち想定する速度誤差制御ゲインモデルが実際の各運転者のそれに一致していれば、まさに上述の結果が出現する。ここで、注目すべきは、

の場合で、このとき車間距離列に関する閉ループ系は

となり、車間距離列は、もとの運転者の操作の遅れを改善した、シンプルな形で安定化されることになる。これは、実用上も非常に有利である。
これらを一般化すると、

と書くことができる。前述のように K* は、この分散積算制御を使用するか否かのフラグであり、各車で設定することができる。Kv* の有効化は、既存の自動車に装備されている自動速度制御装置を用いることを意味する。Kv* =0とすると、ここで述べたように自動速度制御は無効になるが、車間の分散制御を組み入れるかどうかには影響を与えず、かつ車間距離制御は安定化されるという特徴をもつ。
【発明の効果】
【0029】
本発明で扱う制御とは、車間制御ではあるものの、それは運転者に委ねているため、車間制御というよりも、渋滞解消を含む車両交通量の安定化制御法であり、高速道路ないしは鉄道軌道などでの交通量不安定性である渋滞現象などを大幅に改善することができる。また、本発明に係る加減速度量の情報を用いた制御を既存の自動速度制御装置と協働させることにより、さらなる効果的な利用性を有し得る。また、本発明に係る制御は、先行車の急激な減速などに自動的に対応させる緊急ブレーキ操作を提供し、交通安全の向上に貢献できる。さらには、渋滞などに関わる燃料の節約、輸送時間の低減により、経済損失を抑制することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下の説明は、あくまでも本発明の例示にすぎず、以下の記載によって発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0031】
図4に、自動車交通量の安定化制御のために前方車両群の加減速度情報を用いて半自動的に車両の加減速度を制御する、典型的な制御システムを例示する。本実施形態に係る制御システムは、上述した、加減速度情報を利用した分散制御を付加的に既存の自動速度制御装置システムに組み込んで構成したものである。もちろん、これは分散制御が単体では機能しないということを意味するものではない。上述の数式モデルからもわかるように、本システムは、本発明の中心となる分散制御を既存の自動速度制御装置と併用することが可能であり、また、逆に、自動速度制御装置から切り離す設定も可能である。
【0032】
本システムは、前方車両で要求された加減速度要求量を制御対象車両において入力情報として取り込み、制御対象車両に加える加減速度要求量を算出してその駆動部に提供し、さらにその加減速度要求量を後方車両に伝送する処理を行う。そして、この処理を制御対象とする車両群の各車両において実行し、前方車両から後方車両へ実質的に前記加減速度要求量をリレーすることにより、車列全体の交通を制御することができる。以下、本システムの詳細処理について説明する。
【0033】
前提として、制御対象車両は、先行車から加減速度情報を受信するための装置(図には示されていない。以下、受信装置とする。)を備えているものとする。まず、この受信装置において前方の車両で車間及び速度制御に要した加減速度入力要求量1(vi-1)が受信され、車間制御部10に入力される。車間制御部10は本システムにおいて加減速度入力要求量1を利用するか否かを選択することができるスイッチとして機能する。車間制御部10はスイッチの設定に基づいて加減速度入力要求量12を出力する。その後、加減速度入力要求量12は、運転者が車両の走行運動30の状況、すなわち先行車両との車間距離及び自車の速度から視覚的に判断(32)して車間及び速度制御40として車両に与えようとする加減速操作量42と加算され、車両加減速度要求量14、44が得られる。
【0034】
一方、自動速度制御装置50では、自車の速度の情報34を用いて一定の巡航速度を保つために必要とされる加減速度要求量として自動速度制御要求量52が算出され、速度制御部60に出力される。速度制御部60は自動速度制御要求量52を利用するか否かを選択することができるスイッチである。速度制御部60はスイッチの設定に基づいて自動速度制御要求量62を出力する。その後、自動速度制御要求量62は、前述の車両加減速度要求量44と加算され、移送されるべき情報量である加減速度出力要求量64が得られる。
【0035】
また、前述の車両加減速度要求量14は、その後、リミッタ20に入力される。リミッタ20は、車両への加減速度要求を車両の加減速度制限値の範囲内に制限するものである。リミッタ20へ入力された車両加減速度要求量14が制限値範囲内の場合には、入力された値がそのまま出力され、制限を超える場合には、車両の加減速度限界値が出力される。リミッタ20から出力されるリミッタ加減速度要求量22(Ui)が車両の加減速度限界値の場合には、前記加減速度出力要求量14の代わりに、車両の加減速度限界値が、車両を駆動させるために車両の駆動部に提供される。この場合、車両の駆動部は、このリミッタ加減速度要求量22に基づいて車両を駆動させることができる。
【0036】
最終的に、加減速度出力要求量64(Vi)は、後方の車両に送信される。送信は、情報を発信する機能を有する送信装置(図には示されていない)を用いて行うことができる。
【0037】
以上の処理は、本システムによって走行中の各車両に同様になされる。従って、後方の各車両では、一台前(直前)の車両から加減速度入力要求量1を受信し、上記処理を行い、一台後(直後)の車両へ加減速度出力要求量64を送信する。この送受信を対象となる車列全体にわたってリレーすることにより、車列全体としての交通量の安定化に結びつけることができる。
【0038】
ここで、後方車両にとってみれば、前方車両から伝送される加減速度情報は、その前方の一車両に実際に与えられた加減速度要求量であるように認識される。しかし、本システムでは、上述のように、各車両において、各車両で加えられた加減速度要求量が前方車両から後方車両へリレーされる。従って、各車両に入力される加減速度要求量は、実質的には、前方の一の車両のみならず、前方の車両群に加えられた加減速度要求量を含むものであることがわかる。なお、この点、車列の2台目の車両における加減速度入力要求量は、先頭車両の運転者によって実際に加えられている加減速操作量(自動速度制御装置を利用する場合は、これによる自動速度制御要求量を加減速度操作量に加算したもの)と一致することになる。
【0039】
上記処理の特徴から、本システムは、従来の先行車との相対情報を用いた車両の制御とは異なるものであるといえる。すなわち、前述した特許文献2及び非特許文献3においては、先行車両との車間距離を計測し、目標車速を算出して加減速を行う方式が論じられているが、本システムは前方車両群から積算されリレーされる加減速度情報を用いた構成となっており、この点で従来の方式とは異なる。言い換えると、これら従来の方式は、交通渋滞の要因となる車列全体の挙動を考慮して分散制御する本発明とは異なり、直前の車両との車間距離を保つべく自車の速度を制御しようとするものであるといえる。
【0040】
本システムでは、車間距離部10のスイッチをOFFにすれば、既存の自動速度制御装置を備えたシステムとなり得る一方で、速度制御部60のスイッチをOFFにすれば、自動速度制御装置50を用いない構成も可能である。また、自動速度制御装置50を構成要素に含まないように本システムを別途構成することも可能である。これらの場合、加減速操作量42と加減速度入力要求量12を加算した車両加減速度要求量44が、加減速度出力要求量64として後続車両に送信されることになる。このように、本システムは、各車両が備えるべき装置が、簡単に後付け装備できる構成となっている。既存の自動速度制御装置と併用することが可能であり、逆に、切り離す設定も容易であることがわかる。
【0041】
上記の通り、本システムは自動速度制御装置50を用いない構成も可能であるため、本システムは、車間通信機能、距離計測機能、及び相対速度計測機能を必須の構成要素としない。また、通信経路に関しては、自車から後方車両への伝達という一方向のみであることから、本システムは、実装に必要なリソースを大幅に軽減できる特徴を有している。さらに、情報伝達が一方向のみであることから、各車の判断で、車列制御からの離脱や参加が自由に行えることになるという特徴を有している。
【0042】
図には示していないが、本システムは、車間距離部10を単なるスイッチではなく、加減速度入力要求量1に任意の割合を乗じた値を出力する可変ゲイン要素に置き換えることもできる。これにより、自車の制御と積算リレーされる付加的な加減速度要求量を各車で個別に調整することができ、より運転操作の安全性に役立てられると考えられる。また、これを用いれば、先行車のみならず、前方を走行する全車両の情報を任意に総合して利用できることになり、高い拡張性を有することになる。
【0043】
上記構成から、本システムは、前方車両との車間距離情報を用いて自車の速度制御を行うということを想定したものではなく、個別車両の制御を行う部分は、各車の運転者の技量をベースに、前方車両の加減速度情報を付加的に取り入れたものである。この点、本システムは半自動的な制御であり、マンマシン系の相補的な制御構造を維持できる特徴をもつことが理解される。本発明は、車間距離、速度の制御機能は、人間の機能範囲として利用すると共に、運転者が認識できない、あるいは運転者の認識が遅れがちになる前方車両群の速度変化情報を運転者の車両制御に付加的に結合して安定性を確保するという新しい視点にたっているといえる。
【0044】
以上のことから、本システムは、必ずしも応答器(トランスポンダ)機能を要しない単方向の通信機器を搭載し、運転者の行う加減速操作指令に、車列上の各車両にて積算されリレーされる車間制御量を加えて、各車の加減速指令とするものであることが理解される。
【実施例1】
【0045】
ここで、これまで説明してきたシステムを実際に車両及び車列に対して行う実施例について説明する。以下に、本実施例で用いた数値計算例を示す。
【0046】
数値計算例
平均巡航速度を、30m/sとし、目標車間距離を100mとする制御を例題とした。数値模擬は、[A]巡航中に車間距離列に突然の変化が発生した場合の復帰安定性と、[B]完全な渋滞停止状態から、巡航状態への復帰応答の両面で検討、評価した。車両数は10台としている。各車両の加減速性能や運転手の技量については、最初の例では、同一としているが、後半の例では、まちまちに分布した例を掲げている。すなわち、画一性能、技量の例では、各車の加減速度限界を、1.0m/s2とし、速度誤差フィードバックゲイン Kvを1.0/sec、車間距離誤差フィードバックゲインKx を、0.5/sec2 x {v(m/s)/30}} と、非線形性を導入して模擬した。車間距離制御では、車速が遅くなるほどフィードバックゲインを低下させて運転する(急な加減速は行わない)のがドライバの特性だからである。同様に、各車の加減速性能、運転手技量のばらつきを考慮した例では、各車10台のエンジン性能上の加減速度制限値を、1.0, 0.5, 0.5, 1.0, 2.0, 0.5, 0.5, 1.5, 0.5, 0.5 m/sec2 とした。最大4倍の性能差を想定した。また、速度誤差フィードバックゲインについては、1.0, 1.0, 0.5, 1.0, 0.75, 1.0, 1.5, 1.0, 0.75, 1.0 /sec とし、車間誤差フィードバックゲインを、0.5, 0.375, 0.5, 0.75, 0.5, 0.25, 0.5, 0.5, 0.875 x {v(m/s)/30}} /sec2 と設定した。速度が 30m/s の状態では、

に近い状態になっており、この例題はかなり渋滞が発生しやすい状態を想定している。

の最大値は、各車の加減速度限界であり、十分に

が成立しているため、この非線形性は安定性に影響を与えていない。
【0047】
各車に実装する制御則としては、

を用いた。左括弧内は、各車への加減速度要求が制限値範囲内の場合は上を選択し、制限を越える場合は下の飽和特性を加えるという意である。上述の実装上のアルゴリズムにおいて示した論理との違いは、実際に各車に加えられる段階で、加減速度制限値の制限を導入している点にある。なお、先頭車では、v1=0 ととる。
K* は、新制御則を活かして、分散積算制御を導入するか否かのスイッチである。
また、

はいわゆるオートクルーズ機能(自動速度制御機能)を組み合わせて有効化するかいなかのスイッチである。
【0048】
以上をもとに行ったシミュレーションの結果を以下に説明する。
【0049】
まず、図5は、通常制御の場合の巡航中の車間距離応答を示す。
【0050】
先頭から2番目が前車と160m車間、6番目の車が前車と150m車間距離に突然移行した場合(擾乱の発生した場合)の車間距離列の応答である。通常のドライバの操作に基づく車間距離列の応答例である。この例では、各車、各ドライバの性能とskillは同一とした。車列の前方では、比較的安定な制御ができているが、後方では、大きく振動し、それが発散状の様相を見せて、渋滞が発生することがわかる。各車間距離に注目すると、渋滞している状態と流れている状態が周期的に発生することがわかる。200秒後でも車列の制御はできていない。
【0051】
図6は、新分散積算制御を用いた場合の巡航中の車間距離応答を示す。
【0052】
一様な各車の加減速性能、運転手技量の下で、新分散積算制御を導入した場合のレスポンスを掲げた。情報量を後方にリレーすることで、車間距離変動は局所的な減衰振動に抑えられ、渋滞の発生は皆無で、収束時間は十分に短い。本方式では、リレーされる情報は先行する各車の運転者が発生する制御操作要求量を積算した量であり、車間距離計測や相対速度計測量を使用していないことが特徴である。改善効果は劇的である。
【0053】
図7は、新制御則のスイッチングゲイン=0.2における巡航中の車間距離応答を示す。なお、このスイッチングゲインは、上述したような、各車両の受信手段で受信される加減速度入力要求量に任意の割合を乗じた値を出力する可変ゲイン要素によって設定されるゲインである。
【0054】
新制御則を完全に有効にするには、スイッチングゲインK* を1.0に採ることが論理的であるが、0.2とおくことでも、応答に劇的な改善が期待できる。このことは、本方式では、各車のユーザが、車列制御の加味の程度を選択できること、またその配合比が小さくても効果が非常に大きいことを示している。これも本方式の特徴である。
【0055】
図8は、各車の性能、運転手技量にばらつきのある場合の巡航中の車間制御応答を示す。
【0056】
この図は、新制御則(K*=1)によって、すでに述べた各車の加減速性能や運転手技量のばらつきが存在する場合の応答計算例である。運転手技量は非線形であって、かつ各車の加減速性能にばらつきがあっても、提案する分散積算制御方策は、非常に有効に機能することがわかる。
【0057】
図9は、各車にばらつきのある場合(自動速度制御なし時)の巡航中の車間制御応答を示す。
【0058】
自動速度制御スイッチをOFFにしても制御系は、本来の運転者の車間距離制御と速度制御の操作に、車列制御遅れを分散積算制御で付加的におぎなった安定化を期待できる。この図は、その応答例であり、各車の運転技量によって安定化にばらつきは出るものの、車列の伝播遅れにともなう不安定性は回避されていることがわかる。
【0059】
図10は、通常制御の倍の渋滞からの巡航復帰応答を示す。
【0060】
この図は、通常の制御による渋滞からの巡航車間維持への復帰応答を示したものである。約320秒を要して、ようやく、規定の車間制御が達成され巡航速度での安定化が達成される。この数値例では、各車の加減速性能限界は、1m/s2にとっている。
【0061】
図11は、新分散積算制御を用いた場合の渋滞からの巡航復帰応答を示す。
【0062】
渋滞からの復帰応答では、新制御則を用いても、巡航中制御ほど劇的な効果はみられない。実際、後方では車間は振動的で渋滞にみまわれていることがわかる。これは、各車が本質的にもつ、速度制御の時間遅れが本質的に存在するためで、安定化方策だけでは対処できないためである。しかし、この新制御則を用いた数値例では、巡航復帰に要する時間は、通常の運転者が各車を個別に操縦する場合に比べて、半分に短縮されている。
【0063】
図12は、新分散積算制御で加減速限界=3m/s2を用いた場合の渋滞からの巡航復帰応答を示す。
【0064】
実は、図11において応答が芳しくない理由の1因は、各車の加減速性能限界の低さによることがわかっている。同限界を、3m/s2まであげた同様のシミュレーションを行った結果を、図12に掲げた。かならずしも一様に収束するわけではないが、漸近的に巡航車列目標に収束することがわかる。新制御則の下では、図11でみたように、通常制御での静定時間を改善できるとともに、加減速性能限界があがれば、漸近収束させることが可能であるといえる。
【0065】
図13は、新分散積算制御でばらつき性能、技量を考慮した場合の渋滞からの巡航復帰応答を示す。
【0066】
この図には、渋滞から巡航復帰する、新分散積算制御則の下での応答を、各車の加減速性能限界、運転手の技量のばらつきを考慮した数値例で確認したものである。性能のばらつきから、一時大きく車間が増大する時期があるものの、その後はすみやかに収束して、巡航復帰していることがわかる。この例でのばらつきは小さくないが、実際にこの新制御則で車間列制御が可能であることがわかる。車間距離が静定するのに要する時間は、ここでは400秒である。
【0067】
図14は、新分散積算制御でばらつき性能、技量を考慮し、自動速度制御装置なしの場合の渋滞からの巡航復帰応答を示す。
【0068】
この例は、同様に各車の性能や運転者の技量にばらつきのある場合で、各車に自動速度制御装置が付加されていない場合での、渋滞からの立ち上がり特性を示したものである。前の例と同様に、加減速性能において5台目の車両と6番目の車両間に4倍の大きさ差を導入していることにより、途中で非常に大きな車間距離の増加が生じるが、500秒後には、静定を完了している。
【0069】
比較されるべき、リレー積分機能を付与しない、従来の運転者のみが各車単位に行う制御では、必要な静定時間は650秒に達する。
【0070】
これまで述べてきたように、本論で提案する制御論理は、主として運転者による車間および速度制御の擾乱に端を発する交通量の不安定性を改善する機能を有する。その最大の特徴は、車間距離、相対速度計測を要せず、各車で運転者の技量で加えられている制御要求量を、各車にて分散処理し、適切に加算・積分して後方車両にリレーしていく処理方法にある。車間距離や速度の制御を人の機能の範囲で確保する視点に立っている。リレーする処理方式自体は、過去の報告にもあるが、本論での方式は、その移送される情報量が、距離や速度ではなく、付加的に配合されるべき加減速操作の要求量であることが特徴である。各車に装備するべきハードウェアは、前車からのデータ受信と後方車へのデータ送信のみであり、距離計測に必要なトランスポンダ機能は要せず、きわめて装備化が容易である点にも特徴がある。各車における運転者の操作自由度を大きく確保できることも特徴で、いたずらな自動制御とは全く異なる方式で、各車において、リレー積分される付加操作量を加味するしないをそれぞれの車両で選択する、あるいはその配合比を調整して使用できる点に大きな特徴がある。伝達されるべき情報量が限られているため、この車間距離制御列への参加や離散も容易である。すでに実用化されている自動速度制御装置は、将来、車列の群としての巡航速度制御に利用されうるが、それとの併用も、また切り離し使用も選択でき、自動速度制御装置の特性を用いて全車両列の群巡航の制御性能を向上することも可能になる。車列全体の応答時定数は、自動速度制御装置を装備している場合はその制御時定数で、装備していない場合は各車の運転者の技量で決定される時定数の複合系のそれとして定めることができる。一方的な車間距離にもとづく自動制御ではないため、運転者に与える心理的な影響は軽微で、安全性も高い。
【0071】
一方で、渋滞から巡航への復帰応答についていえば、主たる立ち上がり遅れの要因は、各車の加減速性能の制約に原因があり、論理の選択だけでの抜本的な改善は難しい。実際、本制御論理を採用し、加減速度制約を緩和すると立ち上がり応答はきわめて良好であるが、加減速度制約を課すと、応答は振動様相を示し静定に時間を要する結果となる。もちろん、通常の各車運転者の制御のみに依存する場合よりは大きく静定時間の短縮は達成される。
【0072】
提案した制御方式は、定常運航時および渋滞からの復帰応答両面において、従来の運転者依存の個別制御を大幅に改善するものである。
【0073】
以上のように、本発明の実施の一形態及び実施例について説明してきたが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、これに種々の変更を加え得るものであることは容易に理解される。そして、それらが特許請求の範囲の各請求項に記載した事項、及びそれと均等な事項の範囲内にある限り、当然に本発明の技術的範囲に含まれる。上記の実施例は特定の車列に対してのものであるが、これはあくまでも一例であり、本発明がこの特定の具体例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】運転者によってなされる通常の車間制御の概観を示す。
【図2】車間距離計測を前提とする従来の車列制御の概観を示す。
【図3】本発明に係る分散制御の概観を示す。
【図4】本発明に係る分散制御システムのブロック図を示す。
【図5】通常制御の場合の巡航中の車間距離応答を示す。
【図6】新分散積算制御を用いた場合の巡航中の車間距離応答を示す。
【図7】新制御則のスイッチングゲイン=0.2における巡航中の車間距離応答を示す。
【図8】各車の性能、運転手技量にばらつきのある場合の巡航中の車間制御応答を示す。
【図9】各車にばらつきのある場合(自動速度制御なし時)の巡航中の車間制御応答を示す。
【図10】通常制御の場合の渋滞からの巡航復帰応答を示す。
【図11】新分散積算制御を用いた場合の渋滞からの巡航復帰応答を示す。
【図12】新分散積算制御:加減速限界=3m/s2の場合の渋滞からの巡航復帰応答を示す。
【図13】新分散積算制御:ばらつき性能、技量下の渋滞からの巡航復帰応答を示す。
【図14】新分散積算制御:ばらつき性能、技量下、自動速度制御装置なしの場合の渋滞からの巡航復帰応答を示す。
【符号の説明】
【0075】
1、12・・・加減速度入力要求量
10・・・車間制御部
14、44・・・車両加減速度要求量
20・・・リミッタ
22・・・リミッタ加減速度要求量
30・・・車両の走行運動
34・・・自車の速度の情報
40・・・運転者による車間及び速度制御
42・・・加減速操作量
50・・・自動速度制御装置
52、62・・・自動速度制御要求量
60・・・速度制御部
64・・・加減速度出力要求量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象車両群の車両交通量の安定化制御方法であって、
前記対象車両群のうちの一車両に対する直前の車両において車間及び速度制御に要した加減速度入力要求量を前記一車両で受信する受信段階と、
運転者が前記一車両において車間及び速度を制御するために与えようとする加減速操作量を計測する計測段階と、
前記加減速度入力要求量と前記加減速操作量を加算して車両加減速度要求量を得る加算段階と、
前記車両加減速度要求量に基づいて前記一車両を駆動させるために前記一車両の駆動部に前記車両加減速度要求量を提供する提供段階と、
前記一車両の直後の車両が前記車両加減速度要求量を加減速度入力要求量として受信できるように、前記直後の車両に前記車両加減速度要求量を送信する送信段階と、を備え、
前記一車両に対する前記全段階を前記対象車両群の各車両で実行することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記提供段階は、前記加算段階で得られた車両加減速度要求量が前記一車両の加減速度制限値を超える場合に、前記一車両の加減速度限界値を前記一車両の駆動部に提供することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一車両がその速度の情報を用いて一定の巡航速度を保つための自動速度制御手段を備える場合に、前記加算段階は、前記加減速度入力要求量、前記加減速操作量、及び自動速度制御手段から算出される自動速度制御要求量を加算して車両加減速度要求量を得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記加算段階における加減速度入力要求量は、前記受信段階で受信される加減速度入力要求量に任意の割合を乗じた値であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
車両交通量の安定化制御のために前方車両群の加減速度情報を用いて半自動的に対象車両の加減速度を制御する装置であって、
前記対象車両の直前の車両において車間及び速度制御に要した加減速度入力要求量を前記対象車両で受信する受信手段と、
運転者が前記対象車両において車間及び速度を制御するために与えようとする加減速操作量を計測する計測手段と、
前記加減速度入力要求量と前記加減速操作量を加算して車両加減速度要求量を得る加算手段と、
前記車両加減速度要求量に基づいて前記対象車両を駆動させるために前記対象車両の駆動部に前記車両加減速度要求量を提供する提供手段と、
前記対象車両の直後の車両が前記車両加減速度要求量を加減速度入力要求量として受信できるように、前記直後の車両に前記車両加減速度要求量を送信する送信手段と、を備えることを特徴とする装置。
【請求項6】
前記提供手段は、前記加算手段で得られた車両加減速度要求量が前記対象車両の加減速度制限値を超える場合に、前記対象車両の加減速度限界値を前記対象車両の駆動部に提供することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記対象車両がその速度の情報を用いて一定の巡航速度を保つための自動速度制御手段を備える場合に、前記加算手段は、前記加減速度入力要求量、前記加減速操作量、及び自動速度制御手段から算出される自動速度制御要求量を加算して車両加減速度要求量を得ることを特徴とする請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記加算手段における加減速度入力要求量は、前記受信手段で受信される加減速度入力要求量に任意の割合を乗じた値であることを特徴とする請求項5から7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
対象車両群の車両交通量の安定化制御システムであって、
前記対象車両群のうちの一車両に対する直前の車両において車間及び速度制御に要した加減速度入力要求量を前記一車両で受信する受信手段と、
運転者が前記一車両において車間及び速度を制御するために与えようとする加減速操作量を計測する計測手段と、
前記加減速度入力要求量と前記加減速操作量を加算して車両加減速度要求量を得る加算手段と、
前記車両加減速度要求量に基づいて前記一車両を駆動させるために前記一車両の駆動部に前記車両加減速度要求量を提供する提供手段と、
前記一車両の直後の車両が前記車両加減速度要求量を加減速度入力要求量として受信できるように、前記直後の車両に前記車両加減速度要求量を送信する送信手段と、を備え、
前記一車両に対する前記全手段を前記対象車両群の各車両で実行することを特徴とするシステム。
【請求項10】
前記提供手段は、前記加算手段で得られた車両加減速度要求量が前記一車両の加減速度制限値を超える場合に、前記一車両の加減速度限界値を前記一車両の駆動部に提供することを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記一車両がその速度の情報を用いて一定の巡航速度を保つための自動速度制御手段を備える場合に、前記加算手段は、前記加減速度入力要求量、前記加減速操作量、及び自動速度制御手段から算出される自動速度制御要求量を加算して車両加減速度要求量を得ることを特徴とする請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記加算手段における加減速度入力要求量は、前記受信手段で受信される加減速度入力要求量に任意の割合を乗じた値として用いることができるようになっていることを特徴とする請求項9から11のいずれか1つに記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−232240(P2006−232240A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54000(P2005−54000)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】