車両挙動制御装置
【課題】左右の後輪の一方のトー角が制御不能になった場合において、車両挙動をすばやく安定化させることが可能な車両挙動制御装置を提供する。
【解決手段】車両挙動制御装置30Aは、左右の後輪WRL,WRRの一方に対応する後輪トー角変更部21L,21Rが失陥した場合に、左右の後輪WRL,WRRの一方に対応する後輪トー角検出部22L,22Rの検出結果に基づいて、左右の後輪WRL,WRRの他方に対応する後輪トー角変更部21L,21Rを制御することによって、左右の後輪WRL,WRRの他方のトー角を左右の後輪WRL,WRRの一方のトー角に合わせて左右の後輪WRL,WRRの合計トー角をゼロにするとともに、前輪転舵部23を制御することによって、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートを打ち消すように左右の前輪WFL,WFRを転舵させる。
【解決手段】車両挙動制御装置30Aは、左右の後輪WRL,WRRの一方に対応する後輪トー角変更部21L,21Rが失陥した場合に、左右の後輪WRL,WRRの一方に対応する後輪トー角検出部22L,22Rの検出結果に基づいて、左右の後輪WRL,WRRの他方に対応する後輪トー角変更部21L,21Rを制御することによって、左右の後輪WRL,WRRの他方のトー角を左右の後輪WRL,WRRの一方のトー角に合わせて左右の後輪WRL,WRRの合計トー角をゼロにするとともに、前輪転舵部23を制御することによって、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートを打ち消すように左右の前輪WFL,WFRを転舵させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の挙動を制御する車両挙動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の旋回時等に左右の後輪のトー角を独立して可変制御する技術が知られている(特許文献1参照)。かかる技術が適用された車両は、左右の後輪のトー角を独立して変化させる左右のアクチュエータを、左右の後輪のトー角を検出するセンサによる検出結果に基づいて可変制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−55921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる技術が適用された車両において、左右の後輪のトー角を独立して変化させる左右のアクチュエータの一方が失陥した場合や、左右の後輪のトー角を検出するセンサの一方が失陥した場合には、失陥が発生した側の後輪のトー角を固定するとともに、失陥が発生していない側の後輪のトー角を制御する、いわゆるフェールセーフアクションによって、車両の走行不具合を最小化することが考えられる。しかし、失陥していない側の後輪のトー角を急激に変化させると、車両挙動に乱れが生じて運転者に違和感を与えてしまうおそれがある。そのため、トー角の変化によって車両挙動に乱れが生じないよう、失陥していない側の後輪のトー角を変化させる速度を抑えることが考えられるが、この場合には、失陥による走行不具合の安定化に要する時間が長くなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決すべく創案されたものであり、左右の後輪の一方のトー角が制御不能になった場合において、車両挙動をすばやく安定化させることが可能な車両挙動制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本願発明の車両挙動制御装置は、左右の後輪のトー角を独立して変更させる左右の後輪トー角変更部と、前記左右の後輪のそれぞれのトー角を検出する左右の後輪トー角検出部と、前記左右の後輪トー角変更部とは別体に設けられ、車体にヨーレートを発生させるヨーレート発生部と、を備える車両において当該車両の挙動を制御する車両挙動制御装置であって、前記左右の後輪トー角検出部の検出結果を用いて前記左右の後輪トー角変更部を制御する後輪トー角制御部と、前記ヨーレート発生部を制御するヨーレート制御部と、を備え、前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角変更部が失陥した場合に、前記後輪トー角制御部が、前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角検出部の検出結果に基づいて、前記左右の後輪の他方に対応する前記後輪トー角変更部を制御することによって、前記左右の後輪の他方のトー角を前記左右の後輪の一方のトー角に合わせて前記左右の後輪の合計トー角をゼロにするとともに、前記ヨーレート制御部が、前記ヨーレート発生部を制御することによって、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記車両にヨーレートを発生させることを特徴とする。
【0007】
ここで、「左右の後輪の合計トー角をゼロにする」とは、左右の後輪の向きを平行にすることを指す。ここで、合計トー角は完全にゼロでなくても、制御上実質的にゼロであるとみなすことが可能な値であればよい。すなわち、左右の後輪の向きがほぼ平行であれば、本発明の「左右の後輪の合計トー角をゼロにする」に該当する。かかる構成によると、フェールセーフアクションによるヨーレートを打ち消すことができるので、フェールセーフアクションの速度を向上させることができるとともに、失陥時の車両挙動の安定性を向上させることができる。
【0008】
また、本願発明の車両挙動制御装置は、左右の後輪のトー角を独立して変更させる左右の後輪トー角変更部と、前記左右の後輪のそれぞれのトー角を検出する左右の後輪トー角検出部と、前記左右の後輪トー角変更部とは別体に設けられ、車体にヨーレートを発生させるヨーレート発生部と、を備える車両において当該車両の挙動を制御する車両挙動制御装置であって、前記左右の後輪トー角検出部の検出結果を用いて前記左右の後輪トー角変更部を制御する後輪トー角制御部と、前記ヨーレート発生部を制御するヨーレート制御部と、を備え、前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角検出部が失陥した場合に、前記後輪トー角制御部が、前記左右の後輪の他方に対応する前記後輪トー角変更部を制御することによって、前記左右の後輪の他方のトー角をゼロにするとともに、前記ヨーレート制御部が、前記ヨーレート発生部を制御することによって、前記ヨーレート発生部が、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記車両にヨーレートを発生させることを特徴とする。
【0009】
ここで、「左右の後輪の他方のトー角をゼロにする」とは、失陥が発生していない側の後輪の向きを車体の前後方向に合わせることを指す。ここで、トー角は完全にゼロでなくても、制御上実質的にゼロであるとみなすことが可能な値であればよい。すなわち、左右の後輪の他方の向きがほぼ車体の前後方向に沿っていれば、本発明の「左右の後輪の他方のトー角をゼロにする」に該当する。かかる構成によると、フェールセーフアクションによるヨーレートを打ち消すことができるので、フェールセーフアクションの速度を向上させることができるとともに、失陥時の車両挙動の安定性を向上させることができる。
【0010】
前記ヨーレート発生部は、左右の前輪を転舵させる前輪転舵部であり、前記ヨーレート制御部は、前記前輪転舵部を制御する前輪転舵制御部であり、前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角変更部又は前記後輪トー角検出部が失陥した場合に、前記前輪転舵制御部は、前記前輪転舵部を制御することによって、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記左右の前輪を転舵させる構成であってもよい。
【0011】
また、前記ヨーレート発生部は、左右の前輪又は左右の後輪に付与されるトルクの配分を変更するトルク配分変更部であり、前記ヨーレート制御部は、前記トルク配分変更部を制御するトルク配分制御部であり、前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角変更部又は前記後輪トー角検出部が失陥した場合に、前記トルク配分制御部は、前記トルク配分変更部を制御することによって、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記左右の前輪又は前記左右の後輪に駆動力を配分する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、左右の後輪の一方のトー角が制御不能になった場合において、車両挙動をすばやく安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置を備える車両を模式的に示す図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置の動作例を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置による車両挙動の制御例を模式的に示す図であり、(a)(b)は右後輪トー角変更部が失陥した場合を示す図、(c)(d)は右後輪トー角検出部が失陥した場合を示す図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る車両挙動制御装置を備える車両を模式的に示す図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る車両挙動制御装置を示すブロック図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る車両挙動制御装置による車両挙動の制御例を模式的に示す図であり、(a)(b)は右後輪トー角変更部が失陥した場合を示す図、(c)(d)は右後輪トー角検出部が失陥した場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同様の部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、運転者によるステアリングの操作に基づいて左右の前輪を転舵させることによって車両を旋回させるとともに、かかる旋回時に左右の後輪のトー角を可変制御する車両に適用される。
【0015】
<第一の実施形態>
まず、本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置を備える車両の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置を備える車両を模式的に示す図である。図2は、本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の第一の実施形態に係る車両1Aは、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)車をベースとし、左右の前輪WFL,WFR及び左右の後輪WRL,WRRを駆動させる四輪駆動車両であり、駆動力伝達系として、エンジン11と、トランスミッション12と、フロントデファレンシャル装置13と、左右の前輪駆動軸14L,14Rと、プロペラシャフト15と、リアデファレンシャル装置16と、左右の後輪駆動軸17L,17Rと、を備えている。エンジン11によって発生された駆動力は、トランスミッション12、フロントデファレンシャル装置13及び左右の前輪駆動軸14L,14Rを介して左右の前輪WFL,WFRに伝達されるとともに、トランスミッション12、フロントデファレンシャル装置13、プロペラシャフト15、リアデファレンシャル装置16及び左右の後輪駆動軸17L,17Rを介して左右の後輪WRL,WRRに伝達される。
【0017】
また、車両1Aは、左右の後輪WRL,WRRのトー角を独立して変更可能に構成されており、左後輪トー角変更部21Lと、右後輪トー角変更部21Rと、左後輪トー角検出部22Lと、右後輪トー角検出部22Rと、前輪転舵部23と、車両挙動制御装置30Aと、を備えている。
【0018】
左後輪トー角変更部21Lは、左後輪WRLを車体に支持する後輪懸架装置におけるラテラルリンク等の長さを変化させることによって左後輪WRLのトー角を変化させるアクチュエータである。左後輪トー角検出部22Lは、左後輪WRLのトー角を検出する装置であり、ここでは、左後輪WRLのトー角に対応する左後輪トー角変更部21Lの変位量を検出するセンサである。
【0019】
同様に、右後輪トー角変更部21Rは、右後輪WRRを車体に支持する後輪懸架装置におけるラテラルリンク等の長さを変化させることによって右後輪WRRのトー角を変化させるアクチュエータである。右後輪トー角検出部22Rは、右後輪WRRのトー角を検出する装置であり、ここでは、右後輪WRRのトー角に対応する右後輪トー角変更部21Rの変位量を検出するセンサである。
【0020】
左右の後輪トー角変更部21L,21Rとしては、減速機付き電動モータとねじ機構とを組み合わせた回転運動/直線運動変換装置、流体圧でピストンロッドを直線駆動させるシリンダ装置等、公知の直線変位アクチュエータを適宜使用することができる。また、左右の後輪トー角検出部22L,22Rとしては、ポテンショメータ等、公知の変位センサを適宜使用することができ、耐久性の観点から、電磁式変位センサ等の非接触式変位センサを使用することが望ましい。
【0021】
また、左右の後輪トー角変更部21L,21R及び左右の後輪トー角検出部22L,22Rは、失陥してその機能を失った場合に、フェール信号を後記する車両挙動制御装置30Aへ出力する。
【0022】
前輪転舵部23は、左右の後輪トー角変更部21L,21Rとは別体に設けられ、車体にヨーレートを発生させるヨーレート発生部の一例であり、左右の前輪WFL,WFRを転舵させることによって車両1Aを旋回させるアクチュエータである。ここで、車両1Aは、前輪転舵部23の駆動によって回転し、下端部にピニオンが設けられたシャフト23aと、ピニオンと歯合するラックが設けられたロッド23bと、ロッド23bの左右両端に設けられて左右の前輪と連結されたタイロッド23cL,23cRと、を備えており、前輪転舵部23は、シャフト23aを回転させることによって左右の前輪WFL,WFRを転舵させる。なお、シャフト23aは、運転者が操作可能なステアリングと一体に回転するステアリングシャフトと共用可能である。
【0023】
車両挙動制御装置30Aは、例えば、CPU、RAM、ROM及び入出力回路から構成された、いわゆるECU(Electronic Control Unit)であり、図2に示すように、機能ブロックとして、後輪トー角制御部31と、前輪転舵制御部32と、を備えている。
【0024】
後輪トー角制御部31は、通常運転時には、ステアリングの操作量を検出するステアリングセンサ、車体に発生するヨーレートを検出するヨーレートセンサ等からの検出結果に基づいて、車両1Aの旋回動作に応じて左右の後輪WRL,WRRのトー角を独立して可変制御する。また、後輪トー角制御部31は、左右の後輪WRL,WRRのいずれかに対応する左後輪トー角変更部21L及び左後輪トー角検出部22Lと、右後輪トー角変更部21R及び右後輪トー角検出部22Rと、のいずれかが失陥した場合、すなわち、左後輪トー角変更部21L、左後輪トー角検出部22L、右後輪トー角変更部21R及び右後輪トー角検出部22Rのいずれかから出力されたフェール信号を受信した場合に、失陥が発生していない側の後輪のトー角を制御する、いわゆるフェールセーフアクションによって、車両1Aの走行不具合を最小化する。また、後輪トー角制御部31は、受信したフェール信号を前輪転舵制御部32へ出力する。
【0025】
前輪転舵制御部32は、左右の後輪WRL,WRRのいずれかに対応する左後輪トー角変更部21L及び左後輪トー角検出部22Lと、右後輪トー角変更部21R及び右後輪トー角検出部22Rと、のいずれかが失陥した場合に、後輪トー角制御部31からフェール信号を受信するとともに、前輪転舵部23を制御することによって、後輪トー角制御部31によって駆動制御された左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートを打ち消すように車両1Aにヨーレートを発生させるヨーレート制御部の一例であり、前輪転舵部23を制御することによって、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートを打ち消すように左右の前輪WFL,WFRを転舵させる。
【0026】
<動作例>
続いて、車両挙動制御装置1Aの動作例について、図3及び図4を参照して説明する(適宜図1及び図2参照)。図3は、本発明の実施形態に係る車両挙動制御装置の動作例を説明するためのフローチャートである。図4は、本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置による車両挙動の制御例を模式的に示す図であり、(a)(b)は右後輪トー角変更部が失陥した場合を示す図、(c)(d)は右後輪トー角検出部が失陥した場合を示す図である。
【0027】
まず、図4(a)(b)を参照して、右後輪トー角変更部21Rが失陥した場合の動作例について説明する。図4(a)に示すように、右後輪トー角変更部21Rが失陥し、右後輪WRRのトー角が制御不能になった場合には、右後輪トー角変更部21Rがフェール信号を出力し、車両挙動制御装置30Aの後輪トー角制御部31が当該フェール信号を受信する(図3のステップS1でYes)。
【0028】
続いて、後輪トー角制御部31は、受信したフェール信号を前輪転舵制御部32に出力する。続いて、図4(b)に示すように、後輪トー角制御部31が、右後輪トー角検出部22Rの検出結果に基づいて左後輪トー角変更部21Lを制御することによって、左後輪WRLのトー角を右後輪WRRのトー角に合わせて左右の後輪WRL,WRRの合計トー角を可及的速やかにゼロにする、換言すると、左右の後輪WRL,WRRの向きを平行にする(フェールセーフアクション)とともに、前輪転舵制御部32が、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY11を打ち消すように車両1AにヨーレートY12を発生させる(図3のステップS2)。本実施形態において、前輪転舵制御部32は、前輪転舵部23を制御することによって、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY11を打ち消すように左右の前輪WFL,WFRを右方向に可及的速やかに転舵させる。かかる制御によって、車両1Aは、斜め右方向ではあるが、ヨーレートを発生させることなく真っ直ぐ進んでいく。
【0029】
続いて、図4(c)(d)を参照して、右後輪トー角検出部22Rが失陥した場合の動作例について説明する。図4(c)に示すように、右後輪トー角検出部22Rが失陥し、右後輪WRRのトー角を検出できないために右後輪WRRのトー角が制御不能になった場合には、右後輪トー角検出部22Rがフェール信号を出力し、車両挙動制御装置30Aの後輪トー角制御部31が当該フェール信号を受信する(図3のステップS1でYes)。
【0030】
続いて、後輪トー角制御部31は、受信したフェール信号を前輪転舵制御部32に出力するとともに、右後輪トー角変更部21Rの制御を中止して右後輪WRRのトー角を固定させる。続いて、図4(d)に示すように、後輪トー角制御部31が、左後輪トー角変更部21Lを制御することによって、左後輪WRLのトー角を可及的速やかにゼロにする、換言すると、左後輪WRLの向きを車体の前後方向に合わせる(フェールセーフアクション)とともに、前輪転舵制御部32が、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY13を打ち消すように車両1AにヨーレートY14を発生させる(図3のステップS2)。本実施形態において、前輪転舵制御部32は、前輪転舵部23を制御することによって、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY13を打ち消すように左右の前輪WFL,WFRを右方向に可及的速やかに転舵させる。かかる制御によって、車両1Aは、斜め右方向ではあるが、ヨーレートを発生させることなく真っ直ぐ進んでいく。
【0031】
なお、前輪転舵制御部32は、前輪転舵部23を制御するに際して、図示しない車体速センサの検出結果(車体速度)等、車両1Aに設けられた各種センサの検出結果を用いることができる。
【0032】
第一の実施形態に係る車両挙動制御装置30Aは、フェールセーフアクションによるヨーレートを打ち消すことができるので、フェールセーフアクションの速度を向上させることができるとともに、失陥時の車両挙動の安定性を向上させることができる。すなわち、左右の後輪の一方のトー角が制御不能になった場合において、車両挙動をすばやく安定化させることができる。
【0033】
<第二の実施形態>
続いて、本発明の第二の実施形態に係る車両挙動制御装置を備える車両について、第一の実施形態との相違点を中心に、図5及び図6を参照して説明する。図5は、本発明の第二の実施形態に係る車両挙動制御装置を備える車両を模式的に示す図である。図6は、本発明の第二の実施形態に係る車両挙動制御装置を示すブロック図である。
【0034】
図5に示すように、本発明の第二の実施形態に係る車両1Bは、駆動力配分変更部24を備えるとともに、車両挙動制御装置30Aに代えて車両挙動制御装置30Bを備えている。車両挙動制御装置30Bは、左右の後輪WRL,WRRのいずれかに対応する左後輪トー角変更部21L及び左後輪トー角検出部22Lと、右後輪トー角変更部21R及び右後輪トー角検出部22Rと、のいずれかが失陥した場合に、駆動力配分変更部24を制御する。
【0035】
駆動力配分変更部24は、左右の後輪トー角変更部21L,21Rとは別体に設けられ、車体にヨーレートを発生させるヨーレート発生部の一例であって、左右の後輪WRL,WRRに伝達される駆動力の配分を変更する装置であり、本実施形態では一対の電磁クラッチ24L,24Rから構成されている。電磁クラッチ24Lは、リアデファレンシャル装置16の出力端と左後輪駆動軸17Lとの間に設けられており、車両挙動制御装置30Bの制御によってリアデファレンシャル装置16から左後輪駆動軸17Lへ伝達される駆動力の大きさを変更するクラッチである。同様に、電磁クラッチ24Rは、リアデファレンシャル装置16の出力端と右後輪駆動軸17Rとの間に設けられており、車両挙動制御装置30Bの制御によってリアデファレンシャル装置16から右後輪駆動軸17Rへ伝達される駆動力の大きさを変更するクラッチである。
【0036】
図6に示すように、車両挙動制御装置30Bは、機能ブロックとして、前輪転舵制御部32に代えて駆動力配分制御部33を備えている。駆動力配分制御部33は、左右の後輪WRL,WRRのいずれかに対応する左後輪トー角変更部21L及び左後輪トー角検出部22Lと、右後輪トー角変更部21R及び右後輪トー角検出部22Rと、のいずれかが失陥した場合に、駆動力配分変更部24を制御することによって、後輪トー角制御部31からフェール信号を受信するとともに、後輪トー角制御部31によって駆動制御された左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートを打ち消すように車両1Bにヨーレートを発生させるヨーレート制御部の一例であり、駆動力配分変更部24を制御することによって、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートを打ち消すように左右の後輪WRL,WRRの駆動力の配分を変更する。
【0037】
<動作例>
続いて、車両挙動制御装置1Bの動作例について、図3及び図7を参照して説明する(適宜図5及び図6参照)。図7は、本発明の第二の実施形態に係る車両挙動制御装置による車両挙動の制御例を模式的に示す図であり、(a)(b)は右後輪トー角変更部が失陥した場合を示す図、(c)(d)は右後輪トー角検出部が失陥した場合を示す図である。
【0038】
まず、図7(a)(b)を参照して、右後輪トー角変更部21Rが失陥した場合の動作例について説明する。図7(a)に示すように、右後輪トー角変更部21Rが失陥し、右後輪WRRのトー角が制御不能になった場合には、右後輪トー角変更部21Rがフェール信号を出力し、車両挙動制御装置30Bの後輪トー角制御部31が当該フェール信号を受信する(図3のステップS1でYes)。
【0039】
続いて、後輪トー角制御部31は、受信したフェール信号を駆動力配分制御部33に出力する。続いて、図7(b)に示すように、後輪トー角制御部31が、右後輪トー角検出部22Rの検出結果に基づいて左後輪トー角変更部21Lを制御することによって、左後輪WRLのトー角を右後輪WRRのトー角に可及的速やかに合わせて左右の後輪WRL,WRRの合計トー角をゼロにする(フェールセーフアクション)とともに、駆動力配分制御部33が、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY21を打ち消すように車両1BにヨーレートY22を発生させる(図3のステップS2)。本実施形態において、駆動力配分制御部33は、駆動力配分変更部24を制御することによって、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY21を打ち消すように、左後輪WRLの駆動力が右後輪WRRの駆動力よりも大きくなるように左右の後輪WRL,WRRの駆動力を可及的速やかに調節する。かかる制御によって、車両1Bは、斜め右方向ではあるが、ヨーレートを発生させることなく真っ直ぐ進んでいく。
【0040】
続いて、図7(c)(d)を参照して、右後輪トー角検出部22Rが失陥した場合の動作例について説明する。図7(c)に示すように、右後輪トー角検出部22Rが失陥し、右後輪WRRのトー角を検出できないために右後輪WRRのトー角が制御不能になった場合には、右後輪トー角検出部22Rがフェール信号を出力し、車両挙動制御装置30Bの後輪トー角制御部31が当該フェール信号を受信する(図3のステップS1でYes)。
【0041】
続いて、後輪トー角制御部31は、受信したフェール信号を駆動力配分制御部33に出力するとともに、右後輪トー角変更部21Rの制御を中止して右後輪WRRのトー角を固定させる。続いて、図7(d)に示すように、後輪トー角制御部31が、左後輪トー角変更部21Lを制御することによって、左後輪WRLのトー角を可及的速やかにゼロにする(フェールセーフアクション)とともに、駆動力配分制御部33が、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY23を打ち消すように車両1BにヨーレートY24を発生させる(図3のステップS2)。本実施形態において、駆動力配分制御部33は、駆動力配分変更部24を制御することによって、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY23を打ち消すように、左後輪WRLの駆動力が右後輪WRRの駆動力よりも大きくなるように左右の後輪WRL,WRRの駆動力を可及的速やかに調節する。かかる制御によって、車両1Bは、斜め右方向ではあるが、ヨーレートを発生させることなく真っ直ぐ進んでいく。
【0042】
なお、駆動力配分制御部33は、駆動力配分変更部24を制御するに際して、図示しない車体速センサの検出結果(車体速度)等、車両1Bに設けられた各種センサの検出結果を用いることができる。
【0043】
第二の実施形態に係る車両挙動制御装置30Bは、第一の実施形態に係る車両挙動制御装置30Aと同様に、フェールセーフアクションによるヨーレートを打ち消すことができるので、フェールセーフアクションの速度を向上させることができるとともに、失陥時の車両挙動の安定性を向上させることができる。すなわち、左右の後輪の一方のトー角が制御不能になった場合において、車両挙動をすばやく安定化させることができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。例えば、第一の実施形態に係る車両1Aにおいて、前輪転舵部23による前輪WFL,WFRの転舵手法は、前記したものに限定されない。また、第二の実施形態に係る車両挙動制御装置30Bにおいて、駆動力配分変更部24が左右の前輪WFL,WFRに伝達される駆動力の配分を変更する装置(例えば、一対の電磁クラッチ)であり、駆動力配分制御部33が、左右の前輪WFL,WFRに伝達される駆動力の配分を変更するように駆動力配分変更部24を制御することによって、フェールセーフアクションによるヨーレートを打ち消す構成であってもよい。また、例えば右後輪トー角変更部21R及び右後輪トー角検出部22Rの両方が失陥した場合には、図4(c)(d)又は図7(c)(d)に示す動作例によって、フェールセーフアクションによるヨーレートを打ち消すことが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1A,1B 車両
21L 左後輪トー角変更部
21R 右後輪トー角変更部
22L 左後輪トー角検出部
22R 右後輪トー角検出部
23 前輪転舵部(ヨーレート発生部)
24 駆動力配分変更部(ヨーレート発生部)
30A,30B 車両挙動制御装置
31 後輪トー角制御部
32 前輪転舵制御部(ヨーレート制御部)
33 駆動力配分制御部(ヨーレート制御部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の挙動を制御する車両挙動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の旋回時等に左右の後輪のトー角を独立して可変制御する技術が知られている(特許文献1参照)。かかる技術が適用された車両は、左右の後輪のトー角を独立して変化させる左右のアクチュエータを、左右の後輪のトー角を検出するセンサによる検出結果に基づいて可変制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−55921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる技術が適用された車両において、左右の後輪のトー角を独立して変化させる左右のアクチュエータの一方が失陥した場合や、左右の後輪のトー角を検出するセンサの一方が失陥した場合には、失陥が発生した側の後輪のトー角を固定するとともに、失陥が発生していない側の後輪のトー角を制御する、いわゆるフェールセーフアクションによって、車両の走行不具合を最小化することが考えられる。しかし、失陥していない側の後輪のトー角を急激に変化させると、車両挙動に乱れが生じて運転者に違和感を与えてしまうおそれがある。そのため、トー角の変化によって車両挙動に乱れが生じないよう、失陥していない側の後輪のトー角を変化させる速度を抑えることが考えられるが、この場合には、失陥による走行不具合の安定化に要する時間が長くなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決すべく創案されたものであり、左右の後輪の一方のトー角が制御不能になった場合において、車両挙動をすばやく安定化させることが可能な車両挙動制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本願発明の車両挙動制御装置は、左右の後輪のトー角を独立して変更させる左右の後輪トー角変更部と、前記左右の後輪のそれぞれのトー角を検出する左右の後輪トー角検出部と、前記左右の後輪トー角変更部とは別体に設けられ、車体にヨーレートを発生させるヨーレート発生部と、を備える車両において当該車両の挙動を制御する車両挙動制御装置であって、前記左右の後輪トー角検出部の検出結果を用いて前記左右の後輪トー角変更部を制御する後輪トー角制御部と、前記ヨーレート発生部を制御するヨーレート制御部と、を備え、前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角変更部が失陥した場合に、前記後輪トー角制御部が、前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角検出部の検出結果に基づいて、前記左右の後輪の他方に対応する前記後輪トー角変更部を制御することによって、前記左右の後輪の他方のトー角を前記左右の後輪の一方のトー角に合わせて前記左右の後輪の合計トー角をゼロにするとともに、前記ヨーレート制御部が、前記ヨーレート発生部を制御することによって、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記車両にヨーレートを発生させることを特徴とする。
【0007】
ここで、「左右の後輪の合計トー角をゼロにする」とは、左右の後輪の向きを平行にすることを指す。ここで、合計トー角は完全にゼロでなくても、制御上実質的にゼロであるとみなすことが可能な値であればよい。すなわち、左右の後輪の向きがほぼ平行であれば、本発明の「左右の後輪の合計トー角をゼロにする」に該当する。かかる構成によると、フェールセーフアクションによるヨーレートを打ち消すことができるので、フェールセーフアクションの速度を向上させることができるとともに、失陥時の車両挙動の安定性を向上させることができる。
【0008】
また、本願発明の車両挙動制御装置は、左右の後輪のトー角を独立して変更させる左右の後輪トー角変更部と、前記左右の後輪のそれぞれのトー角を検出する左右の後輪トー角検出部と、前記左右の後輪トー角変更部とは別体に設けられ、車体にヨーレートを発生させるヨーレート発生部と、を備える車両において当該車両の挙動を制御する車両挙動制御装置であって、前記左右の後輪トー角検出部の検出結果を用いて前記左右の後輪トー角変更部を制御する後輪トー角制御部と、前記ヨーレート発生部を制御するヨーレート制御部と、を備え、前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角検出部が失陥した場合に、前記後輪トー角制御部が、前記左右の後輪の他方に対応する前記後輪トー角変更部を制御することによって、前記左右の後輪の他方のトー角をゼロにするとともに、前記ヨーレート制御部が、前記ヨーレート発生部を制御することによって、前記ヨーレート発生部が、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記車両にヨーレートを発生させることを特徴とする。
【0009】
ここで、「左右の後輪の他方のトー角をゼロにする」とは、失陥が発生していない側の後輪の向きを車体の前後方向に合わせることを指す。ここで、トー角は完全にゼロでなくても、制御上実質的にゼロであるとみなすことが可能な値であればよい。すなわち、左右の後輪の他方の向きがほぼ車体の前後方向に沿っていれば、本発明の「左右の後輪の他方のトー角をゼロにする」に該当する。かかる構成によると、フェールセーフアクションによるヨーレートを打ち消すことができるので、フェールセーフアクションの速度を向上させることができるとともに、失陥時の車両挙動の安定性を向上させることができる。
【0010】
前記ヨーレート発生部は、左右の前輪を転舵させる前輪転舵部であり、前記ヨーレート制御部は、前記前輪転舵部を制御する前輪転舵制御部であり、前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角変更部又は前記後輪トー角検出部が失陥した場合に、前記前輪転舵制御部は、前記前輪転舵部を制御することによって、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記左右の前輪を転舵させる構成であってもよい。
【0011】
また、前記ヨーレート発生部は、左右の前輪又は左右の後輪に付与されるトルクの配分を変更するトルク配分変更部であり、前記ヨーレート制御部は、前記トルク配分変更部を制御するトルク配分制御部であり、前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角変更部又は前記後輪トー角検出部が失陥した場合に、前記トルク配分制御部は、前記トルク配分変更部を制御することによって、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記左右の前輪又は前記左右の後輪に駆動力を配分する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、左右の後輪の一方のトー角が制御不能になった場合において、車両挙動をすばやく安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置を備える車両を模式的に示す図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置の動作例を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置による車両挙動の制御例を模式的に示す図であり、(a)(b)は右後輪トー角変更部が失陥した場合を示す図、(c)(d)は右後輪トー角検出部が失陥した場合を示す図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る車両挙動制御装置を備える車両を模式的に示す図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る車両挙動制御装置を示すブロック図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る車両挙動制御装置による車両挙動の制御例を模式的に示す図であり、(a)(b)は右後輪トー角変更部が失陥した場合を示す図、(c)(d)は右後輪トー角検出部が失陥した場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同様の部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、運転者によるステアリングの操作に基づいて左右の前輪を転舵させることによって車両を旋回させるとともに、かかる旋回時に左右の後輪のトー角を可変制御する車両に適用される。
【0015】
<第一の実施形態>
まず、本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置を備える車両の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置を備える車両を模式的に示す図である。図2は、本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の第一の実施形態に係る車両1Aは、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)車をベースとし、左右の前輪WFL,WFR及び左右の後輪WRL,WRRを駆動させる四輪駆動車両であり、駆動力伝達系として、エンジン11と、トランスミッション12と、フロントデファレンシャル装置13と、左右の前輪駆動軸14L,14Rと、プロペラシャフト15と、リアデファレンシャル装置16と、左右の後輪駆動軸17L,17Rと、を備えている。エンジン11によって発生された駆動力は、トランスミッション12、フロントデファレンシャル装置13及び左右の前輪駆動軸14L,14Rを介して左右の前輪WFL,WFRに伝達されるとともに、トランスミッション12、フロントデファレンシャル装置13、プロペラシャフト15、リアデファレンシャル装置16及び左右の後輪駆動軸17L,17Rを介して左右の後輪WRL,WRRに伝達される。
【0017】
また、車両1Aは、左右の後輪WRL,WRRのトー角を独立して変更可能に構成されており、左後輪トー角変更部21Lと、右後輪トー角変更部21Rと、左後輪トー角検出部22Lと、右後輪トー角検出部22Rと、前輪転舵部23と、車両挙動制御装置30Aと、を備えている。
【0018】
左後輪トー角変更部21Lは、左後輪WRLを車体に支持する後輪懸架装置におけるラテラルリンク等の長さを変化させることによって左後輪WRLのトー角を変化させるアクチュエータである。左後輪トー角検出部22Lは、左後輪WRLのトー角を検出する装置であり、ここでは、左後輪WRLのトー角に対応する左後輪トー角変更部21Lの変位量を検出するセンサである。
【0019】
同様に、右後輪トー角変更部21Rは、右後輪WRRを車体に支持する後輪懸架装置におけるラテラルリンク等の長さを変化させることによって右後輪WRRのトー角を変化させるアクチュエータである。右後輪トー角検出部22Rは、右後輪WRRのトー角を検出する装置であり、ここでは、右後輪WRRのトー角に対応する右後輪トー角変更部21Rの変位量を検出するセンサである。
【0020】
左右の後輪トー角変更部21L,21Rとしては、減速機付き電動モータとねじ機構とを組み合わせた回転運動/直線運動変換装置、流体圧でピストンロッドを直線駆動させるシリンダ装置等、公知の直線変位アクチュエータを適宜使用することができる。また、左右の後輪トー角検出部22L,22Rとしては、ポテンショメータ等、公知の変位センサを適宜使用することができ、耐久性の観点から、電磁式変位センサ等の非接触式変位センサを使用することが望ましい。
【0021】
また、左右の後輪トー角変更部21L,21R及び左右の後輪トー角検出部22L,22Rは、失陥してその機能を失った場合に、フェール信号を後記する車両挙動制御装置30Aへ出力する。
【0022】
前輪転舵部23は、左右の後輪トー角変更部21L,21Rとは別体に設けられ、車体にヨーレートを発生させるヨーレート発生部の一例であり、左右の前輪WFL,WFRを転舵させることによって車両1Aを旋回させるアクチュエータである。ここで、車両1Aは、前輪転舵部23の駆動によって回転し、下端部にピニオンが設けられたシャフト23aと、ピニオンと歯合するラックが設けられたロッド23bと、ロッド23bの左右両端に設けられて左右の前輪と連結されたタイロッド23cL,23cRと、を備えており、前輪転舵部23は、シャフト23aを回転させることによって左右の前輪WFL,WFRを転舵させる。なお、シャフト23aは、運転者が操作可能なステアリングと一体に回転するステアリングシャフトと共用可能である。
【0023】
車両挙動制御装置30Aは、例えば、CPU、RAM、ROM及び入出力回路から構成された、いわゆるECU(Electronic Control Unit)であり、図2に示すように、機能ブロックとして、後輪トー角制御部31と、前輪転舵制御部32と、を備えている。
【0024】
後輪トー角制御部31は、通常運転時には、ステアリングの操作量を検出するステアリングセンサ、車体に発生するヨーレートを検出するヨーレートセンサ等からの検出結果に基づいて、車両1Aの旋回動作に応じて左右の後輪WRL,WRRのトー角を独立して可変制御する。また、後輪トー角制御部31は、左右の後輪WRL,WRRのいずれかに対応する左後輪トー角変更部21L及び左後輪トー角検出部22Lと、右後輪トー角変更部21R及び右後輪トー角検出部22Rと、のいずれかが失陥した場合、すなわち、左後輪トー角変更部21L、左後輪トー角検出部22L、右後輪トー角変更部21R及び右後輪トー角検出部22Rのいずれかから出力されたフェール信号を受信した場合に、失陥が発生していない側の後輪のトー角を制御する、いわゆるフェールセーフアクションによって、車両1Aの走行不具合を最小化する。また、後輪トー角制御部31は、受信したフェール信号を前輪転舵制御部32へ出力する。
【0025】
前輪転舵制御部32は、左右の後輪WRL,WRRのいずれかに対応する左後輪トー角変更部21L及び左後輪トー角検出部22Lと、右後輪トー角変更部21R及び右後輪トー角検出部22Rと、のいずれかが失陥した場合に、後輪トー角制御部31からフェール信号を受信するとともに、前輪転舵部23を制御することによって、後輪トー角制御部31によって駆動制御された左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートを打ち消すように車両1Aにヨーレートを発生させるヨーレート制御部の一例であり、前輪転舵部23を制御することによって、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートを打ち消すように左右の前輪WFL,WFRを転舵させる。
【0026】
<動作例>
続いて、車両挙動制御装置1Aの動作例について、図3及び図4を参照して説明する(適宜図1及び図2参照)。図3は、本発明の実施形態に係る車両挙動制御装置の動作例を説明するためのフローチャートである。図4は、本発明の第一の実施形態に係る車両挙動制御装置による車両挙動の制御例を模式的に示す図であり、(a)(b)は右後輪トー角変更部が失陥した場合を示す図、(c)(d)は右後輪トー角検出部が失陥した場合を示す図である。
【0027】
まず、図4(a)(b)を参照して、右後輪トー角変更部21Rが失陥した場合の動作例について説明する。図4(a)に示すように、右後輪トー角変更部21Rが失陥し、右後輪WRRのトー角が制御不能になった場合には、右後輪トー角変更部21Rがフェール信号を出力し、車両挙動制御装置30Aの後輪トー角制御部31が当該フェール信号を受信する(図3のステップS1でYes)。
【0028】
続いて、後輪トー角制御部31は、受信したフェール信号を前輪転舵制御部32に出力する。続いて、図4(b)に示すように、後輪トー角制御部31が、右後輪トー角検出部22Rの検出結果に基づいて左後輪トー角変更部21Lを制御することによって、左後輪WRLのトー角を右後輪WRRのトー角に合わせて左右の後輪WRL,WRRの合計トー角を可及的速やかにゼロにする、換言すると、左右の後輪WRL,WRRの向きを平行にする(フェールセーフアクション)とともに、前輪転舵制御部32が、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY11を打ち消すように車両1AにヨーレートY12を発生させる(図3のステップS2)。本実施形態において、前輪転舵制御部32は、前輪転舵部23を制御することによって、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY11を打ち消すように左右の前輪WFL,WFRを右方向に可及的速やかに転舵させる。かかる制御によって、車両1Aは、斜め右方向ではあるが、ヨーレートを発生させることなく真っ直ぐ進んでいく。
【0029】
続いて、図4(c)(d)を参照して、右後輪トー角検出部22Rが失陥した場合の動作例について説明する。図4(c)に示すように、右後輪トー角検出部22Rが失陥し、右後輪WRRのトー角を検出できないために右後輪WRRのトー角が制御不能になった場合には、右後輪トー角検出部22Rがフェール信号を出力し、車両挙動制御装置30Aの後輪トー角制御部31が当該フェール信号を受信する(図3のステップS1でYes)。
【0030】
続いて、後輪トー角制御部31は、受信したフェール信号を前輪転舵制御部32に出力するとともに、右後輪トー角変更部21Rの制御を中止して右後輪WRRのトー角を固定させる。続いて、図4(d)に示すように、後輪トー角制御部31が、左後輪トー角変更部21Lを制御することによって、左後輪WRLのトー角を可及的速やかにゼロにする、換言すると、左後輪WRLの向きを車体の前後方向に合わせる(フェールセーフアクション)とともに、前輪転舵制御部32が、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY13を打ち消すように車両1AにヨーレートY14を発生させる(図3のステップS2)。本実施形態において、前輪転舵制御部32は、前輪転舵部23を制御することによって、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY13を打ち消すように左右の前輪WFL,WFRを右方向に可及的速やかに転舵させる。かかる制御によって、車両1Aは、斜め右方向ではあるが、ヨーレートを発生させることなく真っ直ぐ進んでいく。
【0031】
なお、前輪転舵制御部32は、前輪転舵部23を制御するに際して、図示しない車体速センサの検出結果(車体速度)等、車両1Aに設けられた各種センサの検出結果を用いることができる。
【0032】
第一の実施形態に係る車両挙動制御装置30Aは、フェールセーフアクションによるヨーレートを打ち消すことができるので、フェールセーフアクションの速度を向上させることができるとともに、失陥時の車両挙動の安定性を向上させることができる。すなわち、左右の後輪の一方のトー角が制御不能になった場合において、車両挙動をすばやく安定化させることができる。
【0033】
<第二の実施形態>
続いて、本発明の第二の実施形態に係る車両挙動制御装置を備える車両について、第一の実施形態との相違点を中心に、図5及び図6を参照して説明する。図5は、本発明の第二の実施形態に係る車両挙動制御装置を備える車両を模式的に示す図である。図6は、本発明の第二の実施形態に係る車両挙動制御装置を示すブロック図である。
【0034】
図5に示すように、本発明の第二の実施形態に係る車両1Bは、駆動力配分変更部24を備えるとともに、車両挙動制御装置30Aに代えて車両挙動制御装置30Bを備えている。車両挙動制御装置30Bは、左右の後輪WRL,WRRのいずれかに対応する左後輪トー角変更部21L及び左後輪トー角検出部22Lと、右後輪トー角変更部21R及び右後輪トー角検出部22Rと、のいずれかが失陥した場合に、駆動力配分変更部24を制御する。
【0035】
駆動力配分変更部24は、左右の後輪トー角変更部21L,21Rとは別体に設けられ、車体にヨーレートを発生させるヨーレート発生部の一例であって、左右の後輪WRL,WRRに伝達される駆動力の配分を変更する装置であり、本実施形態では一対の電磁クラッチ24L,24Rから構成されている。電磁クラッチ24Lは、リアデファレンシャル装置16の出力端と左後輪駆動軸17Lとの間に設けられており、車両挙動制御装置30Bの制御によってリアデファレンシャル装置16から左後輪駆動軸17Lへ伝達される駆動力の大きさを変更するクラッチである。同様に、電磁クラッチ24Rは、リアデファレンシャル装置16の出力端と右後輪駆動軸17Rとの間に設けられており、車両挙動制御装置30Bの制御によってリアデファレンシャル装置16から右後輪駆動軸17Rへ伝達される駆動力の大きさを変更するクラッチである。
【0036】
図6に示すように、車両挙動制御装置30Bは、機能ブロックとして、前輪転舵制御部32に代えて駆動力配分制御部33を備えている。駆動力配分制御部33は、左右の後輪WRL,WRRのいずれかに対応する左後輪トー角変更部21L及び左後輪トー角検出部22Lと、右後輪トー角変更部21R及び右後輪トー角検出部22Rと、のいずれかが失陥した場合に、駆動力配分変更部24を制御することによって、後輪トー角制御部31からフェール信号を受信するとともに、後輪トー角制御部31によって駆動制御された左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートを打ち消すように車両1Bにヨーレートを発生させるヨーレート制御部の一例であり、駆動力配分変更部24を制御することによって、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートを打ち消すように左右の後輪WRL,WRRの駆動力の配分を変更する。
【0037】
<動作例>
続いて、車両挙動制御装置1Bの動作例について、図3及び図7を参照して説明する(適宜図5及び図6参照)。図7は、本発明の第二の実施形態に係る車両挙動制御装置による車両挙動の制御例を模式的に示す図であり、(a)(b)は右後輪トー角変更部が失陥した場合を示す図、(c)(d)は右後輪トー角検出部が失陥した場合を示す図である。
【0038】
まず、図7(a)(b)を参照して、右後輪トー角変更部21Rが失陥した場合の動作例について説明する。図7(a)に示すように、右後輪トー角変更部21Rが失陥し、右後輪WRRのトー角が制御不能になった場合には、右後輪トー角変更部21Rがフェール信号を出力し、車両挙動制御装置30Bの後輪トー角制御部31が当該フェール信号を受信する(図3のステップS1でYes)。
【0039】
続いて、後輪トー角制御部31は、受信したフェール信号を駆動力配分制御部33に出力する。続いて、図7(b)に示すように、後輪トー角制御部31が、右後輪トー角検出部22Rの検出結果に基づいて左後輪トー角変更部21Lを制御することによって、左後輪WRLのトー角を右後輪WRRのトー角に可及的速やかに合わせて左右の後輪WRL,WRRの合計トー角をゼロにする(フェールセーフアクション)とともに、駆動力配分制御部33が、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY21を打ち消すように車両1BにヨーレートY22を発生させる(図3のステップS2)。本実施形態において、駆動力配分制御部33は、駆動力配分変更部24を制御することによって、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY21を打ち消すように、左後輪WRLの駆動力が右後輪WRRの駆動力よりも大きくなるように左右の後輪WRL,WRRの駆動力を可及的速やかに調節する。かかる制御によって、車両1Bは、斜め右方向ではあるが、ヨーレートを発生させることなく真っ直ぐ進んでいく。
【0040】
続いて、図7(c)(d)を参照して、右後輪トー角検出部22Rが失陥した場合の動作例について説明する。図7(c)に示すように、右後輪トー角検出部22Rが失陥し、右後輪WRRのトー角を検出できないために右後輪WRRのトー角が制御不能になった場合には、右後輪トー角検出部22Rがフェール信号を出力し、車両挙動制御装置30Bの後輪トー角制御部31が当該フェール信号を受信する(図3のステップS1でYes)。
【0041】
続いて、後輪トー角制御部31は、受信したフェール信号を駆動力配分制御部33に出力するとともに、右後輪トー角変更部21Rの制御を中止して右後輪WRRのトー角を固定させる。続いて、図7(d)に示すように、後輪トー角制御部31が、左後輪トー角変更部21Lを制御することによって、左後輪WRLのトー角を可及的速やかにゼロにする(フェールセーフアクション)とともに、駆動力配分制御部33が、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY23を打ち消すように車両1BにヨーレートY24を発生させる(図3のステップS2)。本実施形態において、駆動力配分制御部33は、駆動力配分変更部24を制御することによって、左右の後輪WRL,WRRのトー角によるヨーレートY23を打ち消すように、左後輪WRLの駆動力が右後輪WRRの駆動力よりも大きくなるように左右の後輪WRL,WRRの駆動力を可及的速やかに調節する。かかる制御によって、車両1Bは、斜め右方向ではあるが、ヨーレートを発生させることなく真っ直ぐ進んでいく。
【0042】
なお、駆動力配分制御部33は、駆動力配分変更部24を制御するに際して、図示しない車体速センサの検出結果(車体速度)等、車両1Bに設けられた各種センサの検出結果を用いることができる。
【0043】
第二の実施形態に係る車両挙動制御装置30Bは、第一の実施形態に係る車両挙動制御装置30Aと同様に、フェールセーフアクションによるヨーレートを打ち消すことができるので、フェールセーフアクションの速度を向上させることができるとともに、失陥時の車両挙動の安定性を向上させることができる。すなわち、左右の後輪の一方のトー角が制御不能になった場合において、車両挙動をすばやく安定化させることができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。例えば、第一の実施形態に係る車両1Aにおいて、前輪転舵部23による前輪WFL,WFRの転舵手法は、前記したものに限定されない。また、第二の実施形態に係る車両挙動制御装置30Bにおいて、駆動力配分変更部24が左右の前輪WFL,WFRに伝達される駆動力の配分を変更する装置(例えば、一対の電磁クラッチ)であり、駆動力配分制御部33が、左右の前輪WFL,WFRに伝達される駆動力の配分を変更するように駆動力配分変更部24を制御することによって、フェールセーフアクションによるヨーレートを打ち消す構成であってもよい。また、例えば右後輪トー角変更部21R及び右後輪トー角検出部22Rの両方が失陥した場合には、図4(c)(d)又は図7(c)(d)に示す動作例によって、フェールセーフアクションによるヨーレートを打ち消すことが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1A,1B 車両
21L 左後輪トー角変更部
21R 右後輪トー角変更部
22L 左後輪トー角検出部
22R 右後輪トー角検出部
23 前輪転舵部(ヨーレート発生部)
24 駆動力配分変更部(ヨーレート発生部)
30A,30B 車両挙動制御装置
31 後輪トー角制御部
32 前輪転舵制御部(ヨーレート制御部)
33 駆動力配分制御部(ヨーレート制御部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の後輪のトー角を独立して変更させる左右の後輪トー角変更部と、
前記左右の後輪のそれぞれのトー角を検出する左右の後輪トー角検出部と、
前記左右の後輪トー角変更部とは別体に設けられ、車体にヨーレートを発生させるヨーレート発生部と、
を備える車両において当該車両の挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記左右の後輪トー角検出部の検出結果を用いて前記左右の後輪トー角変更部を制御する後輪トー角制御部と、
前記ヨーレート発生部を制御するヨーレート制御部と、
を備え、
前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角変更部が失陥した場合に、
前記後輪トー角制御部が、前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角検出部の検出結果に基づいて、前記左右の後輪の他方に対応する前記後輪トー角変更部を制御することによって、前記左右の後輪の他方のトー角を前記左右の後輪の一方のトー角に合わせて前記左右の後輪の合計トー角をゼロにするとともに、前記ヨーレート制御部が、前記ヨーレート発生部を制御することによって、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記車両にヨーレートを発生させる
ことを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項2】
左右の後輪のトー角を独立して変更させる左右の後輪トー角変更部と、
前記左右の後輪のそれぞれのトー角を検出する左右の後輪トー角検出部と、
前記左右の後輪トー角変更部とは別体に設けられ、車体にヨーレートを発生させるヨーレート発生部と、
を備える車両において当該車両の挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記左右の後輪トー角検出部の検出結果を用いて前記左右の後輪トー角変更部を制御する後輪トー角制御部と、
前記ヨーレート発生部を制御するヨーレート制御部と、
を備え、
前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角検出部が失陥した場合に、
前記後輪トー角制御部が、前記左右の後輪の他方に対応する前記後輪トー角変更部を制御することによって、前記左右の後輪の他方のトー角をゼロにするとともに、前記ヨーレート制御部が、前記ヨーレート発生部を制御することによって、前記ヨーレート発生部が、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記車両にヨーレートを発生させる
ことを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項3】
前記ヨーレート発生部は、左右の前輪を転舵させる前輪転舵部であり、
前記ヨーレート制御部は、前記前輪転舵部を制御する前輪転舵制御部であり、
前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角変更部又は前記後輪トー角検出部が失陥した場合に、
前記前輪転舵制御部は、前記前輪転舵部を制御することによって、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記左右の前輪を転舵させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両挙動制御装置。
【請求項4】
前記ヨーレート発生部は、左右の前輪又は左右の後輪に付与されるトルクの配分を変更するトルク配分変更部であり、
前記ヨーレート制御部は、前記トルク配分変更部を制御するトルク配分制御部であり、
前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角変更部又は前記後輪トー角検出部が失陥した場合に、
前記トルク配分制御部は、前記トルク配分変更部を制御することによって、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記左右の前輪又は前記左右の後輪に駆動力を配分する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両挙動制御装置。
【請求項1】
左右の後輪のトー角を独立して変更させる左右の後輪トー角変更部と、
前記左右の後輪のそれぞれのトー角を検出する左右の後輪トー角検出部と、
前記左右の後輪トー角変更部とは別体に設けられ、車体にヨーレートを発生させるヨーレート発生部と、
を備える車両において当該車両の挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記左右の後輪トー角検出部の検出結果を用いて前記左右の後輪トー角変更部を制御する後輪トー角制御部と、
前記ヨーレート発生部を制御するヨーレート制御部と、
を備え、
前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角変更部が失陥した場合に、
前記後輪トー角制御部が、前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角検出部の検出結果に基づいて、前記左右の後輪の他方に対応する前記後輪トー角変更部を制御することによって、前記左右の後輪の他方のトー角を前記左右の後輪の一方のトー角に合わせて前記左右の後輪の合計トー角をゼロにするとともに、前記ヨーレート制御部が、前記ヨーレート発生部を制御することによって、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記車両にヨーレートを発生させる
ことを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項2】
左右の後輪のトー角を独立して変更させる左右の後輪トー角変更部と、
前記左右の後輪のそれぞれのトー角を検出する左右の後輪トー角検出部と、
前記左右の後輪トー角変更部とは別体に設けられ、車体にヨーレートを発生させるヨーレート発生部と、
を備える車両において当該車両の挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記左右の後輪トー角検出部の検出結果を用いて前記左右の後輪トー角変更部を制御する後輪トー角制御部と、
前記ヨーレート発生部を制御するヨーレート制御部と、
を備え、
前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角検出部が失陥した場合に、
前記後輪トー角制御部が、前記左右の後輪の他方に対応する前記後輪トー角変更部を制御することによって、前記左右の後輪の他方のトー角をゼロにするとともに、前記ヨーレート制御部が、前記ヨーレート発生部を制御することによって、前記ヨーレート発生部が、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記車両にヨーレートを発生させる
ことを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項3】
前記ヨーレート発生部は、左右の前輪を転舵させる前輪転舵部であり、
前記ヨーレート制御部は、前記前輪転舵部を制御する前輪転舵制御部であり、
前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角変更部又は前記後輪トー角検出部が失陥した場合に、
前記前輪転舵制御部は、前記前輪転舵部を制御することによって、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記左右の前輪を転舵させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両挙動制御装置。
【請求項4】
前記ヨーレート発生部は、左右の前輪又は左右の後輪に付与されるトルクの配分を変更するトルク配分変更部であり、
前記ヨーレート制御部は、前記トルク配分変更部を制御するトルク配分制御部であり、
前記左右の後輪の一方に対応する前記後輪トー角変更部又は前記後輪トー角検出部が失陥した場合に、
前記トルク配分制御部は、前記トルク配分変更部を制御することによって、前記左右の後輪のトー角によるヨーレートを打ち消すように前記左右の前輪又は前記左右の後輪に駆動力を配分する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両挙動制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−188798(P2010−188798A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33629(P2009−33629)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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