説明

車両用ナビゲーション装置

【課題】案内ポイントで通知する情報が多くなった場合であっても、情報を確実に通知することができる車両用ナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】送受信機10が受信した情報の案内タイミングが次の案内ポイントにおける発話期間であった場合は(S5:YES)、当該情報の発話時間と次の案内ポイントでの発話時間とを加算した発話時間を算出し(S8)、その総発話時間に基づいて発話開始ポイントを手前に変更する(S10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内経路上に設定された案内ポイントで音声案内を実行する車両用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の音声による経路案内は、経路上の案内ポイント、例えば分岐路の手前の1Km、500m、200mなどで予め決められた音声案内により行われている。また、例えば特許文献1では、車速センサにより検出された自車両の走行速度に応じて、制御手段が、音声案内手段による経路案内を、走行している道路について予め決められた基準速度よりも自車両の走行速度が速いときには長い距離間隔で、また基準速度よりも走行速度が遅い時には短い距離間隔で行わせることを提案している。
【特許文献1】特開2001−241962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近年、交通情報、或いは周辺情報等の多種多様な情報をナビゲーションシステムを利用して運転者に通知する技術が開発されており、走行中に取り込む情報が多くなってきている。このため、取り込んだ情報を運転者に通知する場合に、案内ポイントにおける音声案内に加えて、取り込んだ情報も通知しなければならない状況が想定される。このような場合、案内ポイントにおいて発話しなければならない情報が多くなり、案内ポイントで情報を適切に通知することが困難となってきている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、案内ポイントで通知する情報が多くなった場合であっても、情報を確実に通知することができる車両用ナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明によれば、情報提供手段から提供された情報を次の案内ポイントで通知する場合は、経路案内に関する発話時間よりも発話時間が増大するものの、その増大分に応じて次の案内ポイントでの発話開始ポイントが手前に変更されるので、全ての情報を確実に通知することができる。
【0005】
請求項2の発明によれば、車両の速度に応じて発話開始ポイントを変更するので、車両の速度にかかわらず情報を適切なタイミングで通知することができる。
請求項3の発明によれば、優先度の高い情報を運転者に確実に認識させることができる。
【0006】
請求項4の発明によれば、発話中に情報を受信した場合であっても、受信した情報をリアルタイムに通知することができる。
請求項5の発明によれば、発話中に情報を受信したことにより残りの発話時間が不足するような場合は、発話時間が不足しないように優先度の低い情報の発話を中止するので、重要な情報を確実に通知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、車両用ナビゲーション装置の電気的構成を概略的に示す機能ブロック図である。車両用ナビゲーション装置1は、そのナビゲーション動作を制御する機能を有した制御回路(経路探索手段、音声案内手段、発話時間算出手段、車両速度検出手段に相当)2に、位置検出器(位置取得手段に相当)3、地図データベース(地図データ記憶手段に相当)4、表示装置5、操作スイッチ群6、音声出力装置7、リモコンセンサ8、外部メモリ9、送受信機(情報取得手段に相当)10などを接続して構成されている。
【0008】
制御回路2は、CPU、ROM、RAM、I/Oインタフェース及びこれらを接続するバスラインなど(何れも図示せず)を備えたマイクロコンピュータにより構成されている。ROMには、カーナビゲーション用のプログラムなどが格納され、RAMにはプログラム実行時の処理データの他に地図データベース4から取得した道路地図データや送受信機10による受信したデータなどが一時的に格納される。
【0009】
位置検出器3は、例えば、GPS用人工衛星からの信号を受信するGPS受信機11、ヨーレートを検出するためのジャイロセンサ12、互いに直交する3軸方向の加速度を検出するための加速度センサ13などを含んで構成されており、車両の現在位置情報を算出する部分である。
【0010】
地図データベース4は、CD−ROM、DVD−ROM、或いはハードディスク、不揮発性の半導体メモリなどのような大容量の情報記録媒体を利用して構成されたものであり、地図表示のための地図描画用データ、マップマッチング、経路探索、経路案内などの種々の処理に必要な道路データ、交差点の詳細データから成る交差点データ、背景レイヤのための背景データ、地名などを表示するための地名データの他に、施設名称を例えば50音順に並べた施設名称データベース、電話番号と施設の対応を示す電話番号データベースなど、多様な地図データが記憶されている。
【0011】
地図描画用データは複数の要素データによって構成されており、それぞれの要素データは、道路(リンク)、交差点、分岐点、行き止まり点(交差点、分岐点および行き止まり点ともノード)といった実際の走行路上の各部分と対応している。また、地図データは、道路形状、道路幅、道路名、建造物、各種施設、それらの電話番号、地名、地形等のデータを含むとともに、その道路地図を表示装置5の画面上に再生するためのデータを含んで構成されている。
【0012】
表示装置5は、地図画面などを表示するための例えばカラー液晶ディスプレイを含んで構成されており、車両の運転席近傍に設置される。この表示装置5の画面には、通常時において縮尺を複数段階に変更可能な道路地図が表示されると共に、その表示に重ね合わせて、車両の現在位置及び進行方向を示すポインタが表示されるようになっている。また、周知のダイクストラ法を用いて行われる目的地までの経路計算結果に基づいた経路案内機能の実行時には、道路地図に重ね合わせた状態で進むべき案内ルートが表示されるようになっている。さらに、ユーザ(一般的には車両の運転者)による目的地などの検索及び入力のための各種のメニュー画面及び入力画面、並びに各種のメッセージ・インフォメーションやヘルプ画面なども表示されるようになっている。
【0013】
操作スイッチ群6は、表示装置5の周辺に配置されたメカニカルスイッチや当該表示装置5のディスプレイ上に形成されたタッチパネルスイッチなどから成り、各種のデータや設定事項などの操作に係るコマンドを制御回路2に与えるために設けられている。
音声出力装置7は、音声合成回路、アンプ、スピーカなどを備えたもので、制御回路2からの音声情報に応じた音声出力を発生する構成となっている。
リモコンセンサ8は、リモコン14からの操作信号を受信して制御回路2に与える構成となっている。
【0014】
外部メモリ9は、フラッシュメモリなどのデータ書き換え可能な不揮発性メモリより構成されたもので、例えば他の規格の情報記録媒体に対応するためのプログラムソフトを記憶したり、特定データ(走行軌跡の履歴やデジタルカメラにより取り込んだ任意の画像データなど)の保存や呼出などを行ったりするために設けられている。
【0015】
送受信機10は、VICS(登録商標)センサユニット、FM多重放送用チューナー(何れも図示せず)、無線ネットワーク・サービス(例えばG−BOOK(登録商標))などを備えたもので、それらに対応するVICS局、放送インフラ、情報センタなどから、車両運転者に対して報知すべき事象(渋滞、混雑、速度規制、車線規制、事故発生地点、故障車停止地点など)が存在する特定エリアまたは特定ポイントの位置及び音声案内の優先情報を含む道路交通情報、或いは進行方向に位置する商業施設、観光施設などの周辺情報を取得する構成となっている。尚、送受信機10は、RDS−TMC(Radio Data System‐Traffic Massage Channel)チューナーを備えた構成としても良い。また、上記のような事象データは、衛星通信システム、携帯電話回線、無線LAN、、プローブカー通信システムなどの通信インフラを通じて受信する構成とすることも可能である。
【0016】
制御回路2は、操作スイッチ群6やリモコンセンサ8を通じて入力されたコマンドに基づいて、周知の地図表示機能、経路計算機能、経路案内機能、電話番号検索機能、郵便番号検索機能、マップコード(登録商標)のような固有コードを利用した検索機能、50音検索機能、ジャンル別検索機能、最寄り施設検索機能、目的地登録機能、地点登録機能など、多種多様な支援機能に係る処理を実行するように構成されている。
この他、制御回路2には、経路案内機能の実行時において、送受信機10から情報を受信した場合は、当該情報が示す特定エリアまたは特定ポイントに、それらの情報が示す記号やアイコンなどと共に表示する。
【0017】
次に、上記構成の作用について説明する。運転者が車両(自車)のスタータキーを操作してアクセサリスイッチがオンすると、ナビゲーション装置1に対し、図示しない車両用バッテリーから電力が供給される。制御回路2は、地図データベース4から現在位置に対応した地図データを読み取り、表示装置5に現在設定されている縮尺に基づいて道路地図を表示する。同時に、位置検出器3による測位に基づいて現在位置を検出し、道路地図データ上における自車の現在位置および進行方向を示すポインタを表示装置5に表示する。
【0018】
運転者が操作スイッチ群6、或いはリモコン14を操作して経路案内モードを選択し、操作スイッチ群6あるいはリモコン14を操作して目的地、或いは必要に応じて経由地を入力すると、制御回路2は、位置検出器3によって検出された自車の現在位置と、入力された目的地との間にある道路地図データ内の複数の要素データを連結することにより、自車の現在位置から目的地までの走行経路を道路地図データ上に自動的に形成する。この場合、制御回路2は、入力された運転者が求める最適経路の種別(例えば、現在位置と目的地とを最短距離で結ぶ走行経路、最短時間で行ける走行経路、右左折が少なくわかりやすい走行経路、または幹線道路を優先した走行経路等)に応じて、走行経路の算出を行う。
【0019】
次に、表示装置5の画面に表示された道路地図上に、形成された走行経路を重ねて表示して、目的地までの案内を行う。
ここで、制御回路2は、目的地まで案内する場合は、本発明に関連して発話開始ポイントを変更する変更処理を実行するようになっている。図2は、制御回路2による変更処理を示すフローチャートである。制御回路2は、次の音声案内を検出し(S1)、発話時間を算出する(S2)。この発話時間の算出は、データのバイト数から時間を算出するものであるが、音声データに時間情報を持たせるようにしてもよい。
【0020】
次に、送受信機10が受信した各種情報を確認し(S3)、それらの情報が示す特定エリア、或いは特定ポイントを通知するのに最適な案内ポイントを検出し(S4)、その案内ポイントが次の案内ポイントの発話期間であるかを判断する(S5)。次の案内ポイントの発話期間で無い場合は、現在の走行速度を検出し(S9)、当該走行速度に基づいて発話開始ポイントを算出し(S10)、発話開始ポイントに到着した場合は(S11:YES)、優先度の高い情報から順に発話を開始する(S12)。この場合、発話対象の情報は経路案内情報、或いは周辺情報のいずれかであることから、発話対象が経路案内情報である場合は、経路を案内するための情報、例えば「○○m先を左折してください」と発話する。また、発話対象が周辺情報の場合は、例えば「○○m先の左側に○○があります」と発話する。
【0021】
尚、送受信機10で受信する情報としては、直ちに通知することが要求されるリアルタイムな情報も含まれている。
一方、例えばVICS情報として渋滞情報、或いは交通規制情報を受信し、その情報の案内ポイントが次の案内ポイントの発話期間となる場合は(S5:有)、発話内容を検出し(S6)、既に加算済みかを判断する(S7)。情報を最初に受信した場合は、加算済みではないことから(S7:NO)、発話時間を加算し(S8)、ステップS9へ移行する。
【0022】
以上の動作により、例えば、
(1)『200m先 左折です。』
(2)『進路を左車線によって下さい。』
(3)『近くに***があります』
(4)『1Km先 左折です』
と音声案内される。この場合、案内ポイントにおいて発話される情報が多くなるほど、発話開始ポイントが手前となるように変更されるので、発話ポイントにおいて全ての情報を確実に通知することができ、情報を確認しながら車両を円滑に進行させることができる。
【0023】
さて、発話中に受信した情報がリアルタイムに通知することが要求される場合は、当該情報を現在発話中の情報に割り込んで音声案内する。このとき、発話対象の残りの情報(割り込んだ情報も含む)の発話時間が不足するような場合は、発話対象の残りの情報の優先度を判断し、残りの発話時間が満足するまで優先度の低い情報から発話を中止する。このような優先度の低い情報の一例としては周辺情報が考えられる。
【0024】
つまり、上記の例は、
(1)『200m先 左折です。』
(A)『1Km先渋滞しています。』←割り込み(優先度:高)
(B)『車間距離にご注意ください』←割り込み(優先度:高)
(2)『進路を左車線によって下さい。』
(3)『近くに***があります』←発話を中止(優先度:低)
(4)『1Km先 左折です』
となる。
【0025】
従って、案内ポイントで発話中に受信した情報が優先度の高いリアルタイムに通知することが要求される場合に、本来の発話期間では全ての情報を通知できないときは、優先度の低い情報の発話が中止されるので、優先度の高い情報を運転者に確実に認識させることができる。
【0026】
このような実施形態によれば、送受信機10が受信した情報の案内タイミングが次の案内ポイントにおける発話期間であった場合は、当該情報の発話時間と次の案内ポイントでの発話時間とを加算した発話時間を算出し、その総発話時間に基づいて次の案内ポイントでの発話開始ポイントを手前に変更するようにしたので、発話時間の増大分に応じて発話開始ポイントが手前に変更され、全ての情報を確実に通知することができる。
【0027】
また、車両の速度に応じて発話開始ポイントを変更するので、車両の速度にかかわらず情報を適切なタイミングで報知することができる。
また、優先度の高い情報から順に発話するようにしたので、優先度の高い情報を運転者に確実に認識させることができる。
【0028】
さらに、発話中に受信した情報がリアルタイムに通知することが要求される場合は、現在の発話に割り込んで情報を発話するようにしたので、発話中であっても、受信した情報を確実に通知することができる。
加えて、リアルタイムに通知することが要求される情報を発話することにより残りの発話時間が不足するような場合は、発話時間が不足しないように優先度の低い情報から発話を中止するので、重要な情報を確実に通知することができる。
【0029】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、次のように変形または拡張できる。
情報を受信した場合は、次の案内ポイントのみの発話開始タイミングに対して変更処理を実行するのに限らず、情報の案内タイミングに対応する全ての案内ポイントに対して事前に発話開始タイミングを変更するようにしてもよい。この場合、発話開始タイミングを変更した案内ポイントに対応する情報をさらに受信した場合は、発話開始ポイントをさらに手前に変更する。
情報の内容を分析することにより優先度を判断するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態における車両用ナビゲーション装置の電気的構成を示す機能ブロック図
【図2】制御回路による変更処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0031】
図面中、1は車両用ナビゲーション装置、2は制御回路(経路探索手段、音声案内手段、発話時間算出手段、車両速度検出手段)、3は位置検出器(位置取得手段)、4は地図データベース(地図データ記憶手段)、10は送受信機(情報取得手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データを記憶した地図データ記憶手段と、
前記地図データ記憶手段に記憶された地図データに基づいて目的地までの案内経路を探索する経路探索手段と、
車両の現在位置を取得する位置取得手段と、
前記位置取得手段による現在位置が案内経路上に設定された案内ポイントとなった場合は、対応する音声案内を開始する音声案内手段と、
情報提供手段から提供された情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段が取得した情報の案内タイミングが次の案内ポイントにおける発話期間であった場合は、当該情報の発話時間と次の案内ポイントでの発話時間とを加算した総発話時間を算出する発話時間算出手段と、を備え、
前記音声案内手段は、前記発話時間算出手段による総発話時間に基づいて次の案内ポイントでの発話開始ポイントを手前に変更する変更処理を実行することを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項2】
車両の速度を求める車両速度検出手段を備え、
前記音声案内手段は、前記位置検出手段による現在位置と前記速度検出手段による速度とに基づいて前記変更処理を実行することを特徴とする請求項1記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記音声案内手段は、優先度の高い情報から順に発話することを特徴とする請求項1または2記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記音声案内手段は、発話中に前記情報取得手段による情報がリアルタイムな通知が要求される場合は、当該情報を現在の発話に割り込んで発話することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記音声案内手段は、発話中に前記情報取得手段による情報がリアルタイムな通知が要求される場合は、残りの発話時間を計算し、発話時間が不足すると判断した場合は、残りの発話時間が不足しないように優先度の低い情報から発話を中止することを特徴とする請求項4記載の車両用ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−14653(P2010−14653A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176758(P2008−176758)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】