説明

車両用走行制御装置

【課題】追従走行制御に運転者が違和感を感じてしまうことを防止する。
【解決手段】車両用走行制御装置10は、自車両と先行車両との間の車間距離を検出する車間距離センサ24と、自車両の車速を検出する車速センサ21と、車速に基づいて目標車間距離を設定する目標車間距離算出部31および目標車間距離設定部33と、車間距離センサ24により検出された車間距離が目標車間距離に等しくなるように走行制御を行なうと共に、先行車両の停止に追従して自車両を停止させる走行制御部35と、自車両の走行路の勾配を取得する勾配取得部32とを備え、目標車間距離設定部33は、勾配取得部32により取得された勾配と車速センサ21により検出された車速とに基づき、目標車間距離を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば先行車両の停止および発進を含む走行状態の変化に追従して自車両の停止および発進を行なう追従走行制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この追従走行制御装置においては、先行車両に追従して自車両が停止する場合には、予め設定された所定の初回停止目標距離が先行車両と自車両との間の停止時車間距離として確保されて停止保持の状態となる。さらに、この停止保持の状態において、運転者の入力操作によって先行車両と自車両との間の停止時車間距離を縮めることが指示されると、予め設定された所定のミニマム停止目標距離まで先行車両と自車両との間の停止時車間距離が短縮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4230385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る追従走行制御装置においては、先行車両および自車両の走行路の勾配とは関わりなく、単に所定の停止時車間距離が先行車両と自車両との間に確保されるだけであり、この停止時車間距離に運転者が違和感を感じてしまうという問題が生じる。つまり、登坂路においては、停止からの発進時に先行車両が後退する虞があり、降坂路においては、自車両の停止時に減速が不足する虞がある。このため、登坂路および降坂路において平坦路と同じ停止時車間距離が設定されるだけでは、自車両の運転者は停止時車間距離が短すぎると感じ易くなり、追従走行制御に不安を感じてしまうという問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、追従走行制御に運転者が違和感を感じてしまうことを防止することが可能な車両用走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る車両用走行制御装置は、自車両に搭載されて自車両と先行車両との間の車間距離を検出して検出結果の信号を出力する車間距離検出手段(例えば、実施の形態での車間距離センサ24)と、自車両の走行速度を検出して検出結果の信号を出力する車速センサ(例えば、実施の形態での車速センサ21)と、前記車速センサから出力される信号に基づいて目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段(例えば、実施の形態での目標車間距離算出部31、目標車間距離設定部33、制限車間距離設定部36、車間距離選択部37、車間距離補正量設定部38、目標車間距離補正部39)と、前記車間距離検出手段により検出された前記車間距離が前記目標車間距離設定手段により設定された前記目標車間距離に等しくなるように走行制御を行なうと共に、前記先行車両の停止に追従して自車両を停止させる追従走行制御手段(例えば、実施の形態での走行制御部35)とを備える車両用走行制御装置であって、自車両の走行路の勾配を取得する勾配取得手段(例えば、実施の形態での勾配取得部32)を備え、前記目標車間距離設定手段は、前記勾配取得手段により取得された前記勾配と前記車速センサにより検出された前記走行速度とに基づき、前記目標車間距離を設定する。
【0006】
さらに、本発明の第2態様に係る車両用走行制御装置では、前記目標車間距離設定手段は、前記勾配取得手段により取得された前記勾配が大きくなることに伴い、前記目標車間距離が増大傾向に変化するように設定する。
【0007】
さらに、本発明の第3態様に係る車両用走行制御装置では、前記目標車間距離設定手段は、前記勾配取得手段により取得された前記勾配と前記車速センサにより検出された前記走行速度とに加えて、操作者により設定された車間距離設定値(例えば、実施の形態での第1目標車間距離特性に対するショート側設定値DS、第2目標車間距離特性に対する中間設定値DM、第3目標車間距離特性に対するロング側設定値DL)とに基づき、前記目標車間距離を設定する。
【0008】
さらに、本発明の第4態様に係る車両用走行制御装置では、前記目標車間距離設定手段は、操作者により選択可能な車間距離設定値のロング側設定値(例えば、実施の形態での第3目標車間距離特性に対するロング側設定値DL)とショート側設定値(例えば、実施の形態での第1目標車間距離特性に対するショート側設定値DS)との重み付けを前記勾配取得手段により取得された前記勾配に基づき設定し、前記重み付けに応じた前記ロング側設定値と前記ショート側設定値との重み付け平均を前記目標車間距離として設定する。
【0009】
さらに、本発明の第5態様に係る車両用走行制御装置では、前記目標車間距離設定手段は、前記勾配取得手段により取得された前記勾配に基づき車間距離補正量を設定し、該車間距離補正値を操作者により設定された車間距離設定値(例えば、実施の形態での第1目標車間距離特性に対するショート側設定値DS、第2目標車間距離特性に対する中間設定値DM、第3目標車間距離特性に対するロング側設定値DL)に加算して得た値を、前記目標車間距離として設定する。
【0010】
さらに、本発明の第6態様に係る車両用走行制御装置では、前記目標車間距離設定手段は、前記勾配取得手段により取得された前記勾配に加えて、前記車速センサにより検出された前記走行速度とに基づき、前記車間距離補正量を設定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1態様に係る車両用走行制御装置によれば、自車両の走行速度と走行路の勾配とに応じて、先行車両と自車両との間の目標車間距離が設定される。これにより、走行路の勾配に応じて変化する運転者の車間感覚に応じて適切に目標車間距離を設定することができ、走行速度が低速走行状態を示す所定判定閾値以下での追従走行制御に運転者が違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0012】
本発明の第2態様に係る車両用走行制御装置によれば、勾配が大きくなることに伴い、運転者が違和感を感じない車間距離が増大することに応じて、目標車間距離が増大傾向に変化することから、追従走行制御に運転者が違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0013】
本発明の第3態様に係る車両用走行制御装置によれば、自車両の走行速度と走行路の勾配とに加えて、操作者により設定された車間距離設定値とに基づき、目標車間距離を設定する。これにより、運転者の車間感覚の変化を目標車間距離に適切に反映させることができ、追従走行制御に運転者が違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0014】
本発明の第4態様に係る車両用走行制御装置によれば、車間距離設定値のロング側設定値とショート側設定値との間で連続的に変化する目標車間距離を設定することができ、走行路の勾配に応じて変化する運転者の車間感覚に応じて、運転者が違和感を感じない範囲で適切に目標車間距離を設定することができる。
【0015】
本発明の第5態様に係る車両用走行制御装置によれば、走行路の勾配に応じて変化する運転者の車間感覚に応じて適切に目標車間距離を設定することができる。
本発明の第6態様に係る車両用走行制御装置によれば、走行路の勾配に加えて、走行速度に応じて変化する運転者の車間感覚に応じて適切に目標車間距離を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用走行制御装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る複数の目標車間距離特性毎での車速に応じた目標車間の変化の例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る勾配取得部の構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る勾配取得部の構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係る液圧減速度係数に応じた勾配の変化の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車両用走行制御装置の動作、特に、目標車間距離を設定する処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態の第1変形例に係る車両用走行制御装置の動作、特に、目標車間距離を設定する処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態の第2変形例に係る車両用走行制御装置の構成図である。
【図9】本発明の実施形態の第2変形例に係る車両用走行制御装置の動作、特に、目標車間距離を設定する処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態の第3変形例に係る車両用走行制御装置の構成図である。
【図11】本発明の実施形態の第3変形例に係る車速および勾配に応じた車間距離補正量の変化の一例を示す図である。
【図12】本発明の実施形態の第3変形例に係る車両用走行制御装置の動作、特に、目標車間距離を設定する処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の実施形態の第4変形例に係る勾配に応じた車間距離補正量の変化の一例を示す図である。
【図14】本発明の実施形態の第4変形例に係る車両用走行制御装置の動作、特に、目標車間距離を設定する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態に係る車両用走行制御装置10は、例えば図1に示すように、内燃機関(E)の駆動力をトランスミッション(T/M)を介して駆動輪(図示略)に伝達する車両に搭載され、車両状態センサ11と、入力装置12と、制御装置13と、スロットルアクチュエータ14と、ブレーキアクチュエータ15とを備えて構成されている。
【0018】
車両状態センサ11は、例えば、自車両の速度(車速)を検出する車速センサ21と、車体の前後方向に作用する加速度を検知する加速度センサ22と、ブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧センサ23と、レーダ装置(図示略)などにより自車両の前方に存在する他車両(例えば、先行車両など)までの車間距離を検出する車間距離センサ24となどを備えて構成され、自車両の各種の車両情報の検出結果の信号を出力する。
【0019】
制御装置13は、車両状態センサ11から出力される各種の車両情報の検出結果の信号に基づき、自車両の走行状態、例えば先行車両に追従した自車両の走行および停止を制御する。
制御装置13は、例えば目標車間距離算出部31と、勾配取得部32と、目標車間距離設定部33と、レートリミッタ34と、走行制御部35とを備えて構成されている。
【0020】
目標車間距離算出部31は、車速センサ21から出力される車速の検出結果の信号に基づき、予め設定された複数の目標車間距離特性からなる所定マップを参照して、複数の目標車間距離特性毎に目標車間距離(つまり、先行車両と自車両との間の車間距離の目標値)を算出する。
この所定マップは、例えば図2に示すように、車速に応じた目標車間距離の変化を複数の目標車間距離特性(例えば、第1〜第3目標車間距離特性)毎に設定しており、各目標車間距離特性においては、車速が増大することに伴い、目標車間距離が増大傾向に変化するように設定されている。
【0021】
勾配取得部32は、例えば、車速センサ21から出力される車速の検出結果の信号と、加速度センサ22から出力される加速度の検出結果の信号またはブレーキ液圧センサ23から出力されるブレーキ液圧の検出結果の信号となどに基づき、走行路の勾配を取得する。
勾配取得部32は、例えば車速および加速度の検出結果から勾配を取得する場合には、図3に示すように、車体加速度算出部41と、勾配加速度算出部42と、勾配変換部43と、勾配推定部44とを備えて構成される。
車体加速度算出部41は、車速センサ21から出力される車速の検出結果の信号に基づき、単位時間当たりの車速の変化を算出し、この算出結果を車体加速度として出力する。
【0022】
勾配加速度算出部42は、加速度センサ22により検出された車体の前後方向に作用する加速度から、車体加速度算出部41により算出された車体加速度を減算して、走行路の勾配に応じた重力加速度の寄与による加速度(勾配加速度)を算出する。
勾配変換部43は、勾配加速度算出部42により算出された勾配加速度に所定の変換係数を作用させて勾配加速度を勾配変換値へと変換する。
【0023】
勾配推定部44は、勾配変換部43により算出された勾配変換値に基づき、走行路の勾配を推定する。
勾配推定部44は、例えば下記表1に示すように予め設定された所定マップなどを参照して、勾配変換部43により算出された勾配変換値に対応する坂道レベルを取得する。この坂道レベルは、登坂路および降坂路の勾配の大きさに応じて設定されており、正値は上り勾配の大きさを示し、負値は下り勾配の大きさを示しており、絶対値が大きくなることに伴って、勾配の大きさが増大傾向に変化するように設定されている。
【0024】
【表1】

【0025】
例えば上記表1に示す所定マップでは、勾配変換値の絶対値が所定の第1勾配値Ga%(例えば、12%など)以上であれば坂道レベルは±2とされる。なお、上り坂にて「+」、下り坂にて「−」である。そして、勾配変換値の絶対値が第1勾配値Ga%より小さい所定の第2勾配値Gb%(例えば、6%など)以上かつ所定の第1勾配値Ga%未満であれば坂道レベルは±1とされる。そして、勾配変換値の絶対値が所定の第2勾配値Gb%未満であれば坂道レベルはゼロとされている。
【0026】
また、勾配取得部32は、例えば車速およびブレーキ液圧の検出結果から勾配を取得する場合には、図4に示すように、車体加速度算出部41と、減速度係数算出部45と、勾配推定部46とを備えて構成される。
減速度係数算出部45は、例えば、車体加速度算出部41により算出された車体加速度から、内燃機関(E)の運転負荷により車体に発生する減速度(エンジン負荷減速度)およびトランスミッション(T/M)の機構に起因するクリープトルクによる加速度などの寄与を差し引いて、ブレーキの作動に起因した減速度を算出する。そして、ブレーキの作動に起因した減速度とブレーキ液圧との比の平均値を算出し、この算出結果を液圧減速度係数として出力する。
【0027】
勾配推定部46は、減速度係数算出部44により算出された液圧減速度係数に基づき、走行路の勾配を推定する。液圧減速度係数は、例えば図5に示すように、液圧減速度係数の絶対値が所定閾値以下の範囲において、液圧減速度係数が増大することに伴い、勾配が増大傾向に変化するように設定されている。
勾配推定部46は、例えば、予め設定された所定マップなどを参照して、減速度係数算出部44により算出された液圧減速度係数に対応する坂道レベルを取得する。
この所定マップでは、例えば、液圧減速度係数の絶対値が所定の第1閾値THa以上であれば坂道レベルは±2とされ、液圧減速度係数の絶対値が第1閾値THaより小さい所定の第2閾値THb(<THa)以上かつ所定の第1閾値THa未満であれば坂道レベルは±1とされ、液圧減速度係数の絶対値が所定の第2閾値THb未満であれば坂道レベルはゼロとされている。
【0028】
目標車間距離設定部33は、勾配取得部32により取得された勾配(つまり、坂道レベル)と、目標車間距離算出部31により算出された複数の目標車間距離特性毎の目標車間距離(例えば、第1目標車間距離特性に対するショート側設定値DSと、第2目標車間距離特性に対する中間設定値DMと、第3目標車間距離特性に対するロング側設定値DLとなど)と、操作者の入力操作に応じて入力装置12から出力される目標車間距離の選択指示とに基づき、目標車間距離を設定する。
【0029】
目標車間距離設定部33は、例えば下記表2に示すように、勾配取得部32により取得された勾配(つまり、坂道レベル)に応じて、目標車間距離算出部31により算出された複数の目標車間距離特性毎の目標車間距離から最短車間距離を設定する。例えば、坂道レベルが±2の場合には複数の目標車間距離特性において最大の目標車間距離である第3目標車間距離特性に対するロング側設定値DLを最短車間距離とする。そして、坂道レベルが±1の場合には複数の目標車間距離特性において2番目に大きな目標車間距離である第2目標車間距離特性に対する中間設定値DM(<ロング側設定値DL)を最短車間距離とする。そして、坂道レベルがゼロの場合には最短車間距離を制限なしとする。
なお、各坂道レベルに対する最短車間距離は、各目標車間距離特性から得られる目標車間距離よりも所定値αだけ長い距離に設定されてもよい。
【0030】
【表2】

【0031】
そして、目標車間距離設定部33は、車速センサ21により検出された車速が低速走行状態を示す所定判定閾値(例えば、時速40kmなど)以下となった場合に、坂道レベルに応じた最短車間距離以下の範囲において、入力装置12から出力される目標車間距離の選択指示を参照して、目標車間距離を設定する。
例えば、操作者の選択指示による目標車間距離が坂道レベルに応じた最短車間距離よりも短い場合には、最短車間距離を目標車間距離として設定する。一方、操作者の選択指示による目標車間距離が坂道レベルに応じた最短車間距離よりも長い場合には、操作者の選択指示による目標車間距離を目標車間距離として出力する。また、最短車間距離が制限なしの場合には、操作者の選択指示による目標車間距離を目標車間距離として出力する。
【0032】
レートリミッタ34は、目標車間距離設定部33により設定された目標車間距離の変化が所定の程度を超えて急激となることを防止するようにして、目標車間距離の時間変化率を規制する。
走行制御部35は、車間距離センサ24から出力される自車両と自車両の前方に存在する他車両(例えば、先行車両など)との間の車間距離の検出結果の信号と、レートリミッタ34から出力される目標車間距離とに基づき、車間距離の検出結果が目標車間距離に等しくなるようにして、自車両の走行状態(例えば、先行車両に追従した自車両の走行および停止など)を制御する制御信号を出力する。この制御信号は、例えば、トランスミッション(T/M)の変速動作を制御する制御信号およびスロットルアクチュエータ14により内燃機関(E)の駆動力を制御する制御信号およびブレーキアクチュエータ15によりブレーキによる減速を制御する制御信号などである。
【0033】
本実施の形態による車両用走行制御装置10は上記構成を備えており、次に、車両用走行制御装置10の動作として、特に、目標車間距離を設定する処理について添付図面を参照しながら説明する。
【0034】
先ず、例えば図6に示すステップS01においては、坂道レベルの絶対値が2以上であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS02に進み、このステップS02においては、ロング側設定値DLを最短車間距離とし、後述するステップS06に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS03に進む。
次に、ステップS03においては、坂道レベルの絶対値が1以上であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS04に進み、このステップS04においては、中間設定値DMを最短車間距離とし、後述するステップS06に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS05に進み、このステップS05においては、最短車間距離を制限なしとし、ステップS06に進む。
そして、ステップS06においては、最短車間距離と、入力装置12に対する操作者の操作入力とに基づき、最短車間距離以下の範囲において操作入力を参照して目標車間距離を設定し、エンドに進む。
【0035】
上述したように、本発明の実施形態による車両用走行制御装置10によれば、自車両の車速と走行路の勾配とに応じて、先行車両と自車両との間の目標車間距離が設定される。具体的には、勾配が大きくなることに伴い、運転者が違和感を感じない車間距離が増大することに応じて、目標車間距離が増大傾向に変化する。これにより、走行路の勾配に応じて変化する運転者の車間感覚に応じて適切に目標車間距離を設定することができ、車速が低速走行状態を示す所定判定閾値以下での走行および停止を含む追従走行制御に運転者が違和感を感じてしまうことを防止することができる。
しかも、自車両の車速と走行路の勾配とに加えて、操作者の操作入力に応じた目標車間距離の選択結果に基づき目標車間距離を設定する。これにより、運転者の車間感覚の変化を目標車間距離に適切に反映させることができる。
【0036】
なお、上述した実施の形態において、目標車間距離設定部33は、勾配取得部32により取得された坂道レベルに応じて最短車間距離を設定するとしたが、これに限定されず、例えば下記表3に示すように、坂道レベルを用いずに、勾配に応じて最短車間距離を設定してもよい。
【0037】
【表3】

【0038】
この第1変形例において、勾配取得部32は坂道レベルを用いずに勾配を出力すればよく、例えば車速および加速度の検出結果から勾配を取得する場合には、図3に示す勾配推定部44が省略され、勾配変換値が勾配として出力される。
この場合、目標車間距離を設定する処理では、先ず、例えば図7に示すステップS11において、勾配変換部43により算出された勾配変換値の絶対値が所定の第1勾配値Ga%(例えば、12%など)以上であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS12に進み、このステップS12においては、ロング側設定値DLを最短車間距離とし、後述するステップS16に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS13に進む。
【0039】
次に、ステップS13においては、勾配変換値の絶対値が第1勾配値Ga%より小さい所定の第2勾配値Gb%(例えば、6%など)以上であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS14に進み、このステップS14においては、中間設定値DMを最短車間距離とし、後述するステップS16に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS15に進み、このステップS15においては、最短車間距離を制限なしとし、ステップS16に進む。
そして、ステップS16においては、最短車間距離と、入力装置12に対する操作者の操作入力とに基づき、最短車間距離以下の範囲において操作入力を参照して目標車間距離を設定し、エンドに進む。
【0040】
また、この第1変形例において、例えば車速およびブレーキ液圧の検出結果から勾配を取得する場合には、図4に示す勾配推定部46は、例えば図5に示すように予め設定された液圧減速度係数と勾配との対応関係を示す所定マップなどを参照して、減速度係数算出部44により算出された液圧減速度係数に対応する勾配を取得する。
【0041】
なお、上述した実施の形態においては、目標車間距離算出部31により算出された複数の目標車間距離特性毎の目標車間距離の何れか1つを勾配に応じて最短車間距離として選択するとしたが、これに限定されず、例えば図8に示す第2変形例のように、勾配に応じて連続的に変化する制限車間距離を目標車間距離算出部31により算出された複数の目標車間距離特性毎の目標車間距離から設定してもよい。
この第2変形例において、制御装置13は、例えば目標車間距離算出部31と、勾配取得部32と、目標車間距離設定部33と、レートリミッタ34と、走行制御部35と、制限車間距離設定部36と、車間距離選択部37とを備えて構成されている。
【0042】
この第2変形例において、勾配取得部32は、例えば上述した第1変形例のように、坂道レベルを用いずに勾配を出力する。
そして、目標車間距離設定部33は、目標車間距離算出部31により算出された複数の目標車間距離特性毎の目標車間距離の何れか1つを、入力装置12から出力される目標車間距離の選択指示に応じて選択し、目標車間距離として出力する。
【0043】
制限車間距離設定部36は、例えば、目標車間距離算出部31により算出された複数の目標車間距離特性毎の目標車間距離のうち、最大の目標車間距離(つまり、第3目標車間特性に対するロング側設定値DL)と最小の目標車間距離(つまり、第1目標車間特性に対するショート側設定値DS)との2つの目標車間距離に対して、勾配取得部32により取得された勾配に応じて重み付けを設定する。そして、重み付けに応じて最大の目標車間距離と最小の目標車間距離との重み付け平均を算出し、この算出結果を制限車間距離として設定する。
【0044】
制限車間距離設定部36は、例えば下記表4に示すように、勾配取得部32により取得された勾配の絶対値が所定の第1勾配値Ga%(例えば、12%など)以上であれば最大の目標車間距離(つまり、ロング側設定値DL)に対する重みを1.0とする。そして、勾配取得部32により取得された勾配の絶対値が0%(例えば、6%など)よりも大きくかつ所定の第1勾配値Ga%未満であれば、最大の目標車間距離(つまり、ロング側設定値DL)に対する重みをゼロよりも大きくかつ1.0未満とする。そして、勾配取得部32により取得された勾配の絶対値が0%であれば最大の目標車間距離(つまり、ロング側設定値DL)に対する重みをゼロとする。
【0045】
【表4】

【0046】
車間距離選択部37は、目標車間距離設定部33により操作者の操作入力に応じて設定された目標車間距離と、制限車間距離設定部36により設定された制限車間距離とのうち、何れか大きい方を選択して、新たに目標車間距離として出力する。
【0047】
この第2変形例において、目標車間距離を設定する処理では、先ず、例えば図9に示すステップS21において、車速と操作者の操作入力に応じて複数の目標車間特性毎の目標車間の何れか1つを目標車間距離として設定する。
次に、ステップS22においては、走行路の勾配に応じて、ロング側設定値DLに対する重みwを設定する。
次に、ステップS23においては、重みwにより、ロング側設定値DLとショート側設定値DSとの重み付け平均を制限車間距離として設定する。
次に、ステップS24においては、車速と操作者の操作入力に応じて設定された目標車間距離と、制限車間距離とのうち、何れか大きい方を選択して、新たに目標車間距離として設定し、エンドに進む。
【0048】
この第2変形例によれば、複数の目標車間距離特性毎の目標車間距離のうち最大の目標車間距離(第3目標車間特性に対するロング側設定値DL)と最小の目標車間距離(第1目標車間特性に対するショート側設定値DS)との間で連続的に変化する目標車間距離を設定することができ、走行路の勾配に応じて変化する運転者の車間感覚に応じて、運転者が違和感を感じない範囲で適切に目標車間距離を設定することができる。
【0049】
なお、上述した実施の形態においては、目標車間距離算出部31により算出された複数の目標車間距離特性毎の目標車間距離の何れか1つを勾配に応じて最短車間距離として選択するとしたが、これに限定されず、例えば図10に示す第3変形例のように、操作者の操作入力に応じて複数の目標車間距離特性毎の目標車間から選択された目標車間距離を、勾配に応じて連続的に変化する車間距離補正量によって補正(つまり、車間距離補正量だけ延長)してもよい。
この第3変形例において、制御装置13は、例えば目標車間距離算出部31と、勾配取得部32と、目標車間距離設定部33と、レートリミッタ34と、走行制御部35と、車間距離補正量設定部38と、目標車間距離補正部39とを備えて構成されている。
【0050】
この第3変形例において、勾配取得部32は、例えば上述した第1変形例のように、坂道レベルを用いずに勾配を出力する。
そして、目標車間設距離定部33は、目標車間距離算出部31により算出された複数の目標車間距離特性毎の目標車間距離の何れか1つを、入力装置12から出力される目標車間距離の選択指示に応じて選択し、目標車間距離として出力する。
【0051】
車間距離補正量設定部38は、例えば図11に示すように予め設定された所定マップなどを参照して、車速センサ21により検出された車速および勾配取得部32により取得された勾配に応じた車間距離補正量を取得する。
例えば図11に示す所定マップでは、勾配がゼロ以外の場合において、車速が所定車速Va(例えば、時速40kmなど)から減少することに伴い、車間距離補正量がゼロから増大傾向に変化するように設定されている。この車速の減少に伴う車間距離補正量の増大の程度は、勾配の絶対値が大きくなることに伴い、増大傾向に変化する。そして、勾配の絶対値が所定の第1勾配値Ga%(例えば、12%など)以上である場合に、車速に応じた車間距離補正量が最大となり、車速が所定車速Va(例えば、時速40kmなど)からゼロに向い減少することに伴い、車間距離補正量がゼロから最大補正量Dc(例えば、1.5mなど)に向かい増大傾向に変化する。
【0052】
この第3変形例において、目標車間距離を設定する処理では、先ず、例えば図12に示すステップS31において、車速と操作者の操作入力に応じて複数の目標車間距離特性毎の目標車間距離の何れか1つを目標車間距離として設定する。
次に、ステップS32においては、車速と走行路の勾配とに応じた車間距離補正量を設定する。
次に、ステップS33においては、車速と操作者の操作入力に応じて設定された目標車間距離を車間距離補正量により補正して得た値を、新たに目標車間距離として設定し、エンドに進む。
【0053】
この第3変形例によれば、走行路の勾配に加えて、車速に応じて変化する運転者の車間感覚に応じて適切に目標車間距離を設定することができる。
【0054】
なお、上述した実施の形態の第3変形例においては、車間距離補正量を車速と走行路の勾配とに応じて設定するとしたが、これに限定されず、例えば車速には拠らず、走行路の勾配のみに応じて車間距離補正量を設定してもよい。
この第4変形例において、車間距離補正量設定部38は、例えば図13に示すように予め設定された所定マップなどを参照して、勾配取得部32により取得された勾配に応じた車間距離補正量を取得する。
例えば図13に示す所定マップでは、勾配の絶対値がゼロから所定の第1勾配値Ga%(例えば、12%など)に向かい増大することに伴い、車間距離補正量がゼロから最大補正量Dc(例えば、1.5mなど)に向かい増大傾向に変化し、勾配の絶対値が第1勾配値Ga%(例えば、12%など)以上では、車間距離補正量が最大補正量Dc(例えば、1.5mなど)となるように設定されている。
【0055】
この第4変形例において、目標車間距離を設定する処理では、先ず、例えば図14に示すステップS41において、車速と操作者の操作入力に応じて複数の目標車間距離特性毎の目標車間距離の何れか1つを目標車間距離として設定する。
次に、ステップS42においては、走行路の勾配に応じた車間距離補正量を設定する。
次に、ステップS43においては、車速と操作者の操作入力に応じて設定された目標車間距離を車間距離補正量により補正して得た値を、新たに目標車間距離として設定し、エンドに進む。
【0056】
なお、上述した実施の形態の第3変形例および第4変形例においては、目標車間距離設定部33により操作者の操作入力に応じて設定された目標車間距離に対して、操作者の操作入力には拠らずに単一の車間距離補正量を設定するとしたが、これに限定されず、操作者の操作入力に応じた複数の車間距離補正量を設定し、入力装置12から出力される目標車間距離の選択指示に応じて、複数の車間距離補正量から選択される車間距離補正量を切り替えてもよい。
例えば、操作者の操作入力に応じて、第1目標車間距離特性に対するショート側設定値DSと、第2目標車間距離特性に対する中間設定値DMと、第3目標車間距離特性に対するロング側設定値DLとのうちの何れか1つが目標車間距離として選択可能である場合に、ショート側設定値DSに対してショート側車間距離補正量を設定し、中間設定値DMに対して中間車間距離補正量を設定し、ロング側設定値DLに対してロング側車間距離補正量を設定する。ショート側車間距離補正量と中間車間距離補正量とロング側車間距離補正量との各最大補正量Dc(つまり、車両停止時の車間距離補正量)は、例えば、順次、1.5m、1.0m、0.5mとされる。
【符号の説明】
【0057】
10 車両用走行制御装置
21 車速センサ
22 加速度センサ
23 ブレーキ液圧センサ
24 車間距離センサ(車間距離検出手段)
31 目標車間距離算出部(目標車間距離設定手段)
32 勾配取得部(勾配取得手段)
33 目標車間距離設定部(目標車間距離設定手段)
35 走行制御部(追従走行制御手)
36 制限車間距離設定部(目標車間距離設定手段)
37 車間距離選択部(目標車間距離設定手段)
38 車間距離補正量設定部(目標車間距離設定手段)
39 目標車間距離補正部(目標車間距離設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載されて自車両と先行車両との間の車間距離を検出して検出結果の信号を出力する車間距離検出手段と、
自車両の走行速度を検出して検出結果の信号を出力する車速センサと、
前記車速センサから出力される信号に基づいて目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段と、
前記車間距離検出手段により検出された前記車間距離が前記目標車間距離設定手段により設定された前記目標車間距離に等しくなるように走行制御を行なうと共に、前記先行車両の停止に追従して自車両を停止させる追従走行制御手段とを備える車両用走行制御装置であって、
自車両の走行路の勾配を取得する勾配取得手段を備え、
前記目標車間距離設定手段は、前記勾配取得手段により取得された前記勾配と前記車速センサにより検出された前記走行速度とに基づき、前記目標車間距離を設定することを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項2】
前記目標車間距離設定手段は、前記勾配取得手段により取得された前記勾配が大きくなることに伴い、前記目標車間距離が増大傾向に変化するように設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用走行制御装置。
【請求項3】
前記目標車間距離設定手段は、前記勾配取得手段により取得された前記勾配と前記車速センサにより検出された前記走行速度とに加えて、操作者により設定された車間距離設定値とに基づき、前記目標車間距離を設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用走行制御装置。
【請求項4】
前記目標車間距離設定手段は、操作者により選択可能な車間距離設定値のロング側設定値とショート側設定値との重み付けを前記勾配取得手段により取得された前記勾配に基づき設定し、前記重み付けに応じた前記ロング側設定値と前記ショート側設定値との重み付け平均を前記目標車間距離として設定することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の車両用走行制御装置。
【請求項5】
前記目標車間距離設定手段は、前記勾配取得手段により取得された前記勾配に基づき車間距離補正量を設定し、該車間距離補正量を操作者により設定された車間距離設定値に加算して得た値を、前記目標車間距離として設定することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の車両用走行制御装置。
【請求項6】
前記目標車間距離設定手段は、前記勾配取得手段により取得された前記勾配に加えて、前記車速センサにより検出された前記走行速度とに基づき、前記車間距離補正量を設定することを特徴とする請求項5に記載の車両用走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−253984(P2010−253984A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103074(P2009−103074)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】