説明

車両用運転支援装置

【課題】勾配路での変速機のダウンシフトが行われない場合にも、ブレーキの自動介入時間を増加させることなく良好な車速制御を行うことができる車両用運転支援装置を提供する。
【解決手段】走行制御ユニット5は、ACCの実行中にブレーキの自動介入制御が設定時間t0以上継続したことを判定したとき、目標加速度aを予め設定された負側の値Bまで変化させ、変化させた目標加速度aを、基本目標加速度a0が正側の設定値a0thを越えるまでの間維持する割込制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットル制御やブレーキ介入制御を通じて走行制御を行う車両用運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミリ波レーダ、赤外線レーザレーダ、ステレオカメラや単眼カメラ等を用いて車両前方の車外環境を認識し、認識した車外環境に基づいて自車両の走行制御等を行う運転支援装置について様々な提案がなされている、このような走行制御の機能の一つとして、自車両の前方で先行車を検出(捕捉)したとき、検出した先行車に対する追従走行制御を行う機能が広く知られている。一般に、このような追従走行制御は車間距離制御付クルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)の一環として広く実用化されており、ACCでは、自車両の前方に先行車を検出している状態では追従制御が行われ、先行車を検出していない状態ではドライバがセットした車速での定速走行制御が行われる。
【0003】
この種の運転支援装置は、例えば、ACCの実行中には、先行車と自車との相対速度、或いは、セット車速と自車速との速度偏差等に応じて目標加速度(加減速度)を設定し、電子制御スロットル弁の開度制御(エンジンの出力制御)により、目標加速度に応じた加速度を発生させる。さらに、運転支援装置は、降坂時等においてエンジンの出力制御のみでは十分な加速度(減速度)が得られないと判断した場合、ブレーキの自動介入制御を併用することで、目標加速度に応じた加速度(減速度)を発生させる。
【0004】
ところで、このようなACCの実行中において、自動変速機に対する変速制御は車速とスロットル開度等との関係に基づいて基本的に行われるが、登坂時の駆動トルク不足や降坂時のエンジンブレーキによる制動力不足による車速の変動を抑制するため、運転支援装置においては、所定以上の道路勾配を検出した際に、自動変速機の変速比を強制的にダウンシフトする技術が数多く提案されている(例えば、特許文献1参照)。そして、例えば、このようなダウンシフト制御を降坂路での減速時に行うことにより、ブレーキの自動介入頻度や介入時間等を好適に抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−34689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、道路勾配を加速度センサや勾配センサ等を用いて検出する場合、これらのセンサは温度変化の影響を受けて誤差が生じやすい。また、道路勾配については、例えば、自車の走行抵抗と車輪駆動力との関係等に基づいて推定することも可能であるが、このように推定された道路勾配も、車両重量や路面状態等の外乱の影響を受けやすく、誤差が生じやすい。
【0007】
従って、比較的緩やかな勾配路については運転支援装置において認識されない場合があり、例えば、自車が比較的緩やかに連続する下り勾配の走行中に当該勾配が認識されなかった場合、強制的なダウンシフトが行われず、結果として、自動ブレーキの介入が長時間に渡って行われ、ブレーキ力がフェードする等の虞がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、勾配路での変速機のダウンシフトが行われない場合にも、ブレーキの自動介入時間を増加させることなく良好な車速制御を行うことができる車両用運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による車両用運転支援装置は、実車速と目標車速との関係に基づいて基本目標加速度を演算し、当該基本目標加速度に基づいて目標加速度を設定する目標加速度設定手段と、前記目標加速度に基づくスロットル弁の開度制御を通じてエンジンの出力制御を行うエンジン制御手段と、負側に設定された前記目標加速度に対し前記エンジンの出力制御のみでは十分な減速が得られない場合にブレーキの自動介入制御による制動力を発生させるブレーキ制御手段と、を備えた車両用運転支援装置であって、前記ブレーキの自動介入制御が予め設定された時間以上継続したことを判定したとき、前記目標加速度を予め設定された負側の値まで変化させて当該目標減速度を前記基本目標加速度が正側の設定値を超えるまでの間維持する割込制御を行う割込制御手段を備えものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用運転支援装置によれば、勾配路での変速機のダウンシフトが行われない場合にも、ブレーキの自動介入時間を増加させることなく良好な車速制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両用運転支援装置の概略構成図
【図2】目標加速度演算ルーチンを示すフローチャート
【図3】割込制御による目標加速度と基本目標加速度との関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1は車両用運転支援装置の概略構成図、図2は目標加速度演算ルーチンを示すフローチャート、図3は割込制御による目標加速度と基本目標加速度との関係を示す説明図である。
【0013】
図1において、符号1は自動車等の車両(自車両)を示し、この車両1には、走行制御機能として車間距離制御機能付クルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)機能を備えた運転支援装置2が搭載されている。
【0014】
この運転支援装置2は、例えば、ステレオカメラ3と、ステレオ画像認識装置4と、走行制御ユニット5と、を一体的に備えたステレオカメラアセンブリ2aを中心として主要部が構成されている。そして、このステレオカメラアセンブリ2aの走行制御ユニット5には、エンジン制御ユニット(E/G_ECU)7、ブレーキ制御ユニット(BRK_ECU)8、トランスミッション制御ユニット(T/M_ECU)9等の各種車載制御ユニットが相互通信可能に接続されている。
【0015】
ステレオカメラ3は、ステレオ光学系として例えば電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いた左右1組のCCDカメラで構成されている。これら1組のCCDカメラは、それぞれ車室内の天井前方に一定の間隔を持って取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像し、撮像した画像情報をステレオ画像認識装置4に出力する。
【0016】
ステレオ画像認識装置4は、ステレオカメラ3からの画像情報が入力されるとともに、例えば、T/M_ECU9から自車速V等が入力される。このステレオ画像認識装置4は、ステレオカメラ3からの画像情報に基づいて自車両1前方の立体物データや白線データ等の前方情報を認識し、これら認識情報等に基づいて自車走行路を推定する。さらに、ステレオ画像認識装置4は、認識した立体物データ等に基づいて自車走行路上の先行車検出を行う。
【0017】
ここで、ステレオ画像認識装置4は、ステレオカメラ3からの画像情報の処理を、例えば以下のように行う。先ず、ステレオカメラ3で自車進行方向を撮像した1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって距離情報を生成する。そして、この距離情報に対して周知のグルーピング処理を行い、グルーピング処理した距離情報を予め記憶しておいた三次元的な道路形状データや立体物データ等と比較することにより、白線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、車両等の立体物データ等を抽出する。さらに、ステレオ画像認識装置4は、白線データや側壁データ等に基づいて自車走行路を推定し、自車走行路上に存在する立体物であって、自車両1と略同じ方向に所定の速度(例えば、0Km/h以上)で移動するものを先行車として抽出(検出)する。そして、先行車を検出した場合には、その先行車情報として、先行車距離D(=車間距離)、先行車速度Vf(=(車間距離Dの変化の割合)+(自車速V))、先行車加速度af(=先行車速Vfの微分値)等を演算する。なお、先行車の中で、特に速度Vfが所定値以下(例えば、4Km/h以下)で、且つ、加速していないものは、略停止状態の先行車として認識される。
【0018】
走行制御ユニット5には、例えば、ステレオ画像認識装置4から車外前方に関する各種認識情報が入力されるとともに、T/M_ECU9から自車速Vが入力される。
【0019】
また、走行制御ユニット5には、例えば、クルーズコントロール用スイッチ15を通じて設定されるドライバの各種設定情報が、E/G_ECU7を介して入力される。本実施形態において、クルーズコントロール用スイッチ15は、例えば、ステアリングに配置されたプッシュスイッチ及びトグルスイッチ等からなる操作スイッチであり、ACCの作動をON/OFFするメインスイッチであるクルーズスイッチ「CRUISE」、ACCを解除するためのキャンセルスイッチ「CANCEL」、その時の自車両の速度をセット車速Vsetとして設定するためのセットスイッチ「SET/−」、先行車と自車両との車間距離のモードを設定するための車間距離設定スイッチ、前回の記憶してあるセット車速Vsetを再セットするためのリジュームスイッチ「RES/+」を有している。なお、本実施形態において、車間距離のモードとしては「長」、「中」、「短」の何れかが設定され、走行制御ユニット5は、例えば、自車速Vに応じて、モード毎に異なる追従目標距離Dtrgを設定する。
【0020】
そして、クルーズコントロール用スイッチ15のクルーズスイッチがオンされ、セットスイッチ等を通じてドライバが希望するセット車速Vsetが設定されるとともに、車間距離設定スイッチを通じて追従目標距離Dtrgの設定のためのモードが設定されると、走行制御ユニット5は、ACCを実行する。
【0021】
このACCとして、走行制御ユニット5は、ステレオ画像認識装置4で先行車が検出されていない場合には、自車速Vをセット車速Vsetに収束させる定速走行制御を行う。また、走行制御ユニット5は、定速走行制御中にステレオ画像認識装置4にて先行車を認識した場合には、当該先行車との車間距離Dを追従目標距離Dtrgに収束させる追従走行制御(追従停止、追従発進も含む)を行う。
【0022】
すなわち、定速走行制御が開始されると、走行制御ユニット5は、自車速Vをセット車速Vsetに収束させるための目標加速度a1を演算する。
【0023】
具体的に説明すると、走行制御ユニット5は、例えば、自車速Vとセット車速Vsetとの車速偏差Vsrel(=Vset−V)を演算し、予め設定されたマップ等を参照することにより、車速偏差Vsrelと自車速Vとに応じた目標加速度a1を演算する。なお、例えば、車速偏差Vsrelが正値である場合、目標加速度a1は、自車速Vに応じた上限値の範囲内において、車速偏差Vsrelが大きくなるほど大きな値が設定される。一方、例えば、車速偏差Vsrelが負値である場合、目標加速度a1は、自車速Vに応じた下限値の範囲内において、速度偏差Vsrelが小さくなるほど小さな値が設定される(車速偏差Vsrelが負側に大きくなるほど減速側に大きな値が設定される)。
【0024】
また、定速走行制御中から追従走行制御に移行すると、走行制御ユニット5は、上述の目標加速度a1に加え、車間距離Dを追従目標距離Dtrgに収束させるための目標加速度a2を演算する。
【0025】
具体的に説明すると、走行制御ユニット5には、例えば、車間距離のモード「短」及び「長」に対応する追従目標距離Dtrg設定用のマップが予め設定されて格納されている。そして、走行制御ユニット5は、モードが「短」或いは「長」である場合には該当するマップを用いて自車速Vに応じた追従目標距離Dtrgを設定し、モードが「中」の場合にはモードが「短」及び「長」のときにそれぞれ演算される値の中間値を追従目標距離Dtrgとして設定する。また、走行制御ユニット5は、例えば、追従目標距離Dtrgと車間距離Dとの距離偏差ΔD(=Dtrg−D)を演算するとともに、先行車速度Vfと自車速Vとの相対速度Vfrel(=Vf−V)を演算し、これらをパラメータとして予め設定されたマップ等を参照して目標加速度a2を演算する。
【0026】
そして、走行制御ユニット5は、定速走行制御時においては目標加速度a1を基本となる目標加速度(以下、基本目標加速度という)a0として設定し、追従走行制御時においては目標加速度a1,a2のうちの何れか小値を基本目標加速度a0として設定するすなわち、走行制御ユニット5は、実車速(自車速V)と目標車速(セット車速Vset、或いは、先行車速度Vf)との関係に基づいて基本目標加速度a0を演算する。そして、走行制御ユニット5は、基本的には、演算した基本目標加速度a0を最終的な目標加速度aとして設定する。
【0027】
目標加速度aを設定すると、走行制御ユニット5は、E/G_ECU7を通じて電子制御スロットル弁17の開度制御(エンジンの出力制御)を行うことにより、目標加速度aに応じた加速度を発生させる。すなわち、E/G_ECU7には、例えば、T/M_ECU9から現在の変速比iが入力されるとともに、勾配センサ21で検出された道路勾配θが入力される。そして、E/G_ECU7は、例えば、目標加速度aを道路勾配θで補正し、補正後の目標加速度a及び現在の変速比i等に基づき、予め設定されたマップ等を参照して目標スロットル開度を演算する。そして、E/G_ECU7は、演算した目標スロットル開度に基づくスロットル弁17の開度制御を通じてエンジンの出力制御を行う。
【0028】
また、走行制御ユニット5は、エンジンの出力制御のみでは十分な加速度(減速度)が得られないと判断した場合に、BRK_ECU8を通じてブレーキブースタ18からの出力液圧制御(ブレーキの自動介入制御)を行うことにより制動力を発生させる。
【0029】
また、このようなACCの実行中において、T/M_ECU9は、基本的には、例えば、自車速Vとエンジンのスロットル開度とに基づき、予め設定された基本変速マップ等を参照して自動変速機(図示せず)の変速比iを制御する。その一方で、T/M_ECU9には勾配路走行時用の変速マップ等が予め設定されて格納されており、T/M_ECU9は、例えば、勾配センサ21等で検出した道路勾配θに基づいて自車走行路が所定以上の勾配路(登り勾配路、或いは、下り勾配路)であることを判定したとき、勾配路用の変速マップ等を参照して、変速比iを適宜、基本変速マップ等で設定される変速比よりも低速側の変速比へと強制的にダウンシフトさせる。
【0030】
ここで、例えば、勾配センサ21の検出精度の低下等に起因して勾配路における強制的なダウンシフト制御が行われない場合への対策として、走行制御ユニット5は、BRK_ECU8を通じたブレーキの自動介入制御が予め設定された時間t0(例えば、t0=5s)以上継続したことを判定したとき、目標加速度aの設定についての割込制御を行う。すなわち、本実施形態において、走行制御ユニット5は、目標加速度aを予め設定された負側の設定値B(例えば、B=−0.03G)まで変化させる。そして、走行制御ユニット5は、変化させた目標加速度aを、当該目標加速度aに基づく減速によって基本目標加速度a0が正側の設定値a0th(例えば、a0th=0.015G)を越えるまで維持する。
【0031】
そして、割込制御で設定された目標加速度aに応じて自車速Vが減少し、基本目標加速度a0が設定値a0thを越えると、走行制御ユニット5は、その後、予め設定された時間t1(例えば、t1=3s)以上経過するまでの間、エンジンの出力制御及びブレーキの自動介入制御の実行を禁止し、当該期間は、特にエンジンの出力制御による積極的な加速等によって割込制御後の自車速Vが急変することを抑制する。但し、走行制御ユニット5は、道路勾配θの変化や先行車の加減速等に起因して基本目標加速度a0が予め設定された範囲外(例えば、−0.04G≦a0≦0.025Gの範囲外)となったとき、エンジンの出力制御及びブレーキの自動介入制御の禁止をキャンセルする。
【0032】
このように、本実施形態において、走行制御ユニット5は、目標加速度設定手段、割込制御手段としての各機能を実現する。また、走行制御ユニット5は、E/G_ECU7とともにエンジン制御手段としての機能を実現し、BRK_ECU8とともにブレーキ制御手段としての機能を実現する。
【0033】
次に、ACCの実行中に走行制御ユニット5において実行される目標加速度の演算について、図2に示す目標加速度演算ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、設定時間毎に繰り返し実行されるもので、ルーチンがスタートすると、走行制御ユニット5は、先ず、ステップS101において、基本目標加速度a0の演算を行う。すなわち、走行制御ユニット5は、先行車を捕捉していない定速走行時には、自車速Vとセット車速Vsetとの車速偏差Vsrelと自車速Vとの応じた目標加速度a1を演算し、この目標加速度a1を基本目標加速度a0として設定する。一方、走行制御ユニット5は、先行車を捕捉している追従走行時には、上述の目標加速度a1の演算に加え、先行車との車間距離Dと追従目標距離Dtrgとの距離偏差ΔDと、先行車速度Vfと自車速Vとの相対速度Vfrelとに基づいて目標加速度a2を演算し、これら目標加速度a1,a2のうちの何れか小値を基本目標加速度a0として設定する。
【0034】
ステップS101からステップS102に進むと、走行制御ユニット5は、最終的な目標加速度aの演算についての割込制御の開始を判定したことを示す割込フラグF1が「1」にセットされているか否かを調べ、「1」にセットされている場合にはステップS103に進み、「0」にリセットされている場合にはステップS105に進む。
【0035】
ステップS102からステップS103に進むと、走行制御ユニット5は、BRK_ECU8を通じたブレーキの自動介入制御が設定時間t0(例えば、t0=5s)以上継続しているか否かを調べる。
【0036】
そして、ステップS103において、ブレーキの自動介入制御が設定時間t0以上継続していないと判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS104に進む。
【0037】
一方、ステップS103において、ブレーキの自動介入制御が設定時間t0以上継続していると判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS104に進み、割込フラグF1を「1」にセットした後、ステップS107に進む。
【0038】
また、ステップS102からステップS105に進むと、走行制御ユニット5は、エンジンの出力制御及びブレーキの自動介入制御を禁止する禁止フラグF2が「1」にセットされているか否かを調べ、禁止フラグF2が「1」にセットされている場合にはステップS109に進み、禁止フラグF2が「0」にリセットされている場合にはステップS106に進む。
【0039】
ステップS105からステップS106に進むと、走行制御ユニット5は、基本目標加速度a0が設定値a0th以上であるか否かを調べ、設定値a0th未満である場合にはステップS107に進む。
【0040】
そして、ステップS104或いはステップS106からステップS107に進むと、走行制御ユニット5は、割込制御による目標加速度aの演算を行った後、ステップS112に進む。すなわち、ステップS107において、走行制御ユニット5は、例えば、予め設定された負側の設定値B(例えば、B=−0.03G)を最終値としてセットし、周知のフィルタ処理等を用いて、目標加速度aを最終値Bに収束させる演算を行う(図3参照)。
【0041】
一方、ステップS106において、基本目標加速度a0が設定値a0th以上であると判定した場合、走行制御ユニット5は、割込制御の終了を判定してステップS108に進み、禁止フラグF2を「1」にセットした後、ステップS109に進む。
【0042】
ステップS105或いはステップS108からステップS109に進むと、走行制御ユニット5は、割込制御を終了してからの経過時間が設定時間t2以上であるか否かを調べる。
【0043】
そして、走行制御ユニット5は、ステップS109において、割込制御を終了してからの経過時間が設定時間t2以上であると判定した場合にはステップS111に進み、経過時間が設定時間t2未満であると判定した場合にはステップS110に進む。
【0044】
ステップS109からステップS110に進むと、走行制御ユニット5は、現在の基本目標加速度a0が予め設定された範囲内(例えば、−0.04G≦a0≦0.025Gの範囲内)にあるか否かを調べ、設定範囲内にあると判定した場合にはステップS112に進み、設定範囲外にあると判定した場合にはステップS111に進む。
【0045】
そして、ステップS109或いはステップS110からステップS111に進むと、走行制御ユニット5は、割込フラグF1を「0」にリセットするとともに、禁止フラグF2を「0」にリセットした後、ステップS112に進む。
【0046】
ステップS103、ステップS107、ステップS110、或いは、ステップS111からステップS112に進むと、走行制御ユニット5は、今回、割込制御による目標加速度aが演算されているか否かを調べ、現在割込制御中であり、ステップS107において目標加速度aが演算されていると判定した場合には、そのままルーチンを抜ける。
【0047】
一方、ステップS112において、現在割込制御中ではなく、目標加速度aが演算されていないと判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS113に進み、前回の目標加速度a(n-1)と基本目標加速度a(n-1)とが一致しているか否かを調べる。
【0048】
そして、ステップS113において、割込制御の介在により前回の目標加速度a(n-1)と基本目標加速度a(n-1)とが一致していないと判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS114に進み、例えば、周知のフィルタ処理等を用いて、目標加速度aを基本目標加速度a0に収束させる演算を行った後、ルーチンを抜ける。
【0049】
一方、ステップS113において、前回の目標加速度a(n-1)と基本目標加速度a(n-1)とが一致していると判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS115に進み、基本目標加速度a0を目標加速度aとして設定した後、ルーチンを抜ける。
【0050】
このような実施形態によれば、ACCの実行中にブレーキの自動介入制御が設定時間t0以上継続したことを判定したとき、目標加速度aを予め設定された負側の値Bまで変化させ、変化させた目標加速度aを、基本目標加速度a0が正側の設定値a0thを越えるまでの間維持する割込制御を行うことにより、勾配センサ21による道路勾配θの検出誤差等に起因して比較的緩やかな勾配路での変速機の強制的なダウンシフトが行われない場合にも、弱いブレーキ力(例えば、−0.03Gよりも弱いブレーキ力)によるブレーキの自動介入を長時間に渡って連続的に行うことなく、良好な車速制御を行うことができる。例えば、自車両1が60Km/hを目標車速として車速制御されている場合、割込制御による目標加速度aの演算により、自車速Vをドライバに違和感を与えない程度の低速側の車速(例えば、55Km/h程度)まで減速させることができ、その分、ブレーキの自動介入時間及び介入頻度を低減することができる。
【0051】
この場合において、割込制御の実行後設定時間t1(例えば、t1=3s)が経過するまでの間、E/G_ECU7を通じたエンジンの出力制御及びBRK_ECU8を通じたブレーキの自動介入制御の実行を禁止することにより、エンジンの出力制御による積極的な加速を抑制し、ブレーキの不介入時間を的確に確保することができる。その一方で、割込制御後の経過時間が設定時間t1未満であっても基本目標加速度a0が予め設定された範囲外(例えば、−0.04G≦a≦0.025Gの範囲外)となったとき、エンジンの出力御及びブレーキの自動介入制御の禁止をキャンセルすることにより、道路勾配の変化や先行車の加減速等にも的確に対処した車速制御を実現することができる。
【0052】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。
【符号の説明】
【0053】
1 … 車両(自車両)
2 … 運転支援装置
2a … ステレオカメラアセンブリ
3 … ステレオカメラ
4 … ステレオ画像認識装置
5 … 走行制御ユニット(目標加速度設定手段、エンジン制御手段、ブレーキ制御手段、割込制御手段)
7 … エンジン制御ユニット(エンジン制御手段)
8 … ブレーキ制御ユニット(ブレーキ制御手段)
9 … トランスミッション制御ユニット
15 … クルーズコントロール用スイッチ
17 … 電子制御スロットル弁
18 … ブレーキブースタ
21 … 勾配センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実車速と目標車速との関係に基づいて基本目標加速度を演算し、当該基本目標加速度に基づいて目標加速度を設定する目標加速度設定手段と、
前記目標加速度に基づくスロットル弁の開度制御を通じてエンジンの出力制御を行うエンジン制御手段と、
負側に設定された前記目標加速度に対し前記エンジンの出力制御のみでは十分な減速が得られない場合にブレーキの自動介入制御による制動力を発生させるブレーキ制御手段と、を備えた車両用運転支援装置であって、
前記ブレーキの自動介入制御が予め設定された時間以上継続したことを判定したとき、前記目標加速度を予め設定された負側の値まで変化させて当該目標減速度を前記基本目標加速度が正側の設定値を超えるまでの間維持する割込制御を行う割込制御手段を備えたことを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項2】
前記割込制御手段は、前記割込制御の実行後設定時間が経過するまでの間、前記エンジン制御手段によるエンジンの出力制御及び前記ブレーキ制御手段によるブレーキの自動介入制御を禁止することを特徴とする請求項1記載の車両用運転支援装置。
【請求項3】
前記割込制御手段は、前記割込制御の実行後設定時間が経過しない場合であっても、前記基本目標加速度が設定範囲外となったとき、前記エンジン制御手段によるエンジンの出力制御及び前記ブレーキ制御手段によるブレーキの自動介入制御の禁止をキャンセルすることを特徴とする請求項2記載の車両用運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−206699(P2012−206699A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76029(P2011−76029)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】