車両運動制御装置及びプログラム
【課題】簡単な構成のマップを用いて、移動する障害物を回避するための車体合成力及び回避軌道を導出する。
【解決手段】障害物を回避直後の速度方向及び車体合成力の最大値を設定し、自車両の速度のx成分vx0、y成分vy0、障害物の速度のy成分Zv、位置のy成分Z0、及び車体合成加速度の最大値F0/mを用いた各々異なる3つのパラメータを演算し、3つのパラメータと、障害物を回避しながら設定した速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータν1の特定仮定下での値ν1’との関係、第2の導入パラメータν2の特定仮定下での値ν2’との関係、障害物の回避に要する時間teの特定仮定下での時間te’との関係を定めた最短3次元マップを用いて、障害物を回避しながら設定した速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を導出する。
【解決手段】障害物を回避直後の速度方向及び車体合成力の最大値を設定し、自車両の速度のx成分vx0、y成分vy0、障害物の速度のy成分Zv、位置のy成分Z0、及び車体合成加速度の最大値F0/mを用いた各々異なる3つのパラメータを演算し、3つのパラメータと、障害物を回避しながら設定した速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータν1の特定仮定下での値ν1’との関係、第2の導入パラメータν2の特定仮定下での値ν2’との関係、障害物の回避に要する時間teの特定仮定下での時間te’との関係を定めた最短3次元マップを用いて、障害物を回避しながら設定した速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を導出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運動制御装置及びプログラムに係り、特に、簡単な構成のマップを用いて移動する障害物を回避するための車体合成力及び回避軌道を導出する車両運動制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体に加える目標合成力と、各車輪の限界摩擦円の大きさから推定される限界合成力との比をμ利用率として設定し、限界摩擦円の大きさとμ利用率とからタイヤ発生力の大きさ、及び各制御対象車輪で発生するタイヤ発生力の方向を設定し、設定されたタイヤ発生力の大きさ、及び設定されたタイヤ発生力の方向に基づいて、各制御対象車輪の操舵と制動又は操舵と駆動との協調制御を行なう車両制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、車両よりも前方の道路上に存在する障害物を回避するための回避操作量を、車両に生じる加速力、減速力及び横力の合成力が車両のタイヤのグリップ力の最大値よりも小さくなる範囲内で算出する回避操作算出装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
また、車両が走行する道路上に存在する障害物を検出し、検出現時刻から評価終了時刻後の自車両の予測位置及び外部環境に基づいて、自車両の回避後の目標姿勢角を設定し、現時刻の外部環境及び障害物の状態量に基づいてリスクポテンシャル関数を設定し、そのリスクと運転操作量の時間積分値、目標姿勢角と自車両の姿勢角との差などに基づく評価値を算出し、評価値が最小となる軌道を導出する回避操作算出装置が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
また、自車両と障害物との間の距離及び自車両の障害物に対する相対速度、そして回避するための横移動距離に基づいて定まる物理量を導入し、その物理量と自車両の重量及び車体合成力の最大値により最短距離で回避するための車体合成力の向きを導出するマップを予め記憶しておき、直進制動での最短回避距離と単純横移動における最短回避距離と、現時刻の自車両と障害物の状態に基づいてマップより得られる最短回避距離を比較して、最も短くなる回避軌道を選択し、その軌道に基づいて現時刻の車体合成力を算出する車両制御装置が提案されている(特許文献4参照)。
【0006】
また、ロボットの位置、ロボットが到達目標とする目標到達位置、ロボットが目標到達位置へ到達する時に目標とする目標速度、及びロボットの制限最高速度又は制限最高加速度の各値を用いて、ロボットが制限最高速度又は制限最高加速度を越えない速度をとると共にロボットの初期位置から目標位置へ到達するのに要する時間が等しい軌道の中ではロボットの加速度の二乗総和が最小となるようにするロボットの制御装置が提案されている(特許文献5参照)。
【0007】
また、車両がスタート位置Pに停止したとき、物体検出手段で検出した周囲の物体の状況から最適目標位置と、最適目標位置を通る一定半径rの円弧よりなる第1の移動軌跡とを設定し、第1の移動軌跡上に所定位置Sを選択し、スタート位置Pから所定位置Sまでの第2の移動軌跡を設定し、所定位置Sは、第2の移動軌跡での車両の移動距離が最小になるように選択される車両の自動操舵装置が提案されている(特許文献6参照)。
【0008】
また、自車両と障害物との間の距離、自車両の障害物に対する相対速度、及び回避するための目標位置に基づいて定まる物理量を導入し、その物理量により回避動作時に最大値が最小となる車体合成力の向きと大きさを出力するマップを予め記憶しておき、そのマップより現時刻の車体合成力を求めて車両運動を制御する車両運動制御装置が提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−249971号公報
【特許文献2】特開2007−253746号公報
【特許文献3】特開2007−253745号公報
【特許文献4】特開2006−347236号公報
【特許文献5】特開平7−32277号公報
【特許文献6】特開2001−063597号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】日本機械学会、第18回交通・物流部門大会講演論文集、障害物回避のための車両の最適軌道制御、pp.145−148(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の技術では、目標の車体合成力が与えられた場合に、最適な各輪のタイヤ発生力を導出しているが、所望の速度方向を考慮して、移動体を回避しながら縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する軌道の導出方法は記載されていない。
【0012】
また、特許文献2の技術では、所望の位置に到達する車体合成力を導出しているが、所望の速度方向を考慮して、移動体を回避しながら縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する軌道の導出方法は記載されていない。
【0013】
また、特許文献3の技術では、所望の位置及び姿勢角に近づく軌道を導出しているものの、移動体の速度を考慮しつつリスクポテンシャル関数を設定して所望の位置付近に到達する車体合成力を導出しているため、所望の速度方向を考慮して、移動体を回避しながら縦移動用距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する軌道を導出しているとはいえない。
【0014】
また、特許文献4の技術では、自車両の障害物に対する相対速度、回避するための横移動距離、車重、及び車体合成力の最大値が設定された場合に、回避距離を最短にする回避軌道を導出しているが、道路に対する所望の速度方向を考慮して、移動体を回避しながら縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する軌道の導出方法は記載されていない。
【0015】
また、特許文献5の技術では、ロボットを所望の位置及び速度に到達させる上で加速度の2乗和が最小化される軌道を導出しているが、所望の速度方向を考慮して、移動体を回避しながら縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する軌道の導出方法は記載されていない。
【0016】
また、特許文献6の技術では、自車両を所望の位置に到達させるための移動距離を最小にする軌道を導出しているが、所望の速度方向を考慮して、移動体を回避しながら縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する軌道の導出方法は記載されていない。
【0017】
また、非特許文献1の技術では、相対的な意味における所望の位置及び速度方向に対して車体合成力の最大値を最小化する軌道を導出し、その軌道に基づいたマップを記憶しておくことで現時刻の車体合成力を導出しているが、道路に対する所望の速度方向に対して、移動体を回避しながら縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する軌道の導出方法は記載されていない。
【0018】
本発明は、簡単な構成のマップを用いて、道路に対する所望の速度方向を考慮して、移動する障害物を回避しながら縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる車両運動制御装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、第1の発明の車両運動制御装置は、自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、前記障害物を回避直後の自車両の速度方向、及び車体合成力の最大値を設定する設定手段と、・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び車体合成加速度の最大値F0/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータν1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記最大値F0/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値ν1’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、・前記3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータν1と異なる第2の導入パラメータν2の、前記仮定の下での値ν2’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに・前記3つのパラメータと、前記障害物の回避に要する時間teの、前記仮定の下での時間te’と、の関係を定めた第3の3次元マップからなる最短3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された車体合成力の最大値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最短3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0020】
また、第2の発明の車両運動制御装置は、自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、前記障害物を回避直後の自車両の速度方向、及び車体合成力の最大値を設定する設定手段と、・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び車体合成加速度の最大値F0/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記最大値F0/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた最短3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された車体合成力の最大値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最短3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0021】
また、第3の発明の車両運動制御装置は、自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、前記障害物を回避直後の自車両の速度方向を設定する設定手段と、・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び前記自車両と前記障害物との距離の車体前後方向の成分Xeを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータν1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記成分Xeのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値ν1’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、・前記3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータν1と異なる第2の導入パラメータν2の、前記仮定の下での値ν2’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに・前記3つのパラメータと、前記障害物の回避に要する時間teの、前記仮定の下での時間te’と、の関係を定めた第3の3次元マップからなる最適3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最適3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0022】
また、第4の発明の車両運動制御装置は、自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、前記障害物を回避直後の自車両の速度方向を設定する設定手段と、・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び前記自車両と前記障害物との距離の車体前後方向の成分Xeを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記成分Xeのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、並びに・前記3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成加速度の最大値F0/mの、前記仮定の下での最大値F0’/m’と、の関係を定めた第2の3次元マップからなる最適3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最適3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0023】
また、第1及び第2の発明において、前記導出手段は、前記障害物の左側を回避する回避軌道の前記車体前後方向の移動距離の最短距離と、前記障害物の右側を回避する回避軌道の前記車体前後方向の移動距離の最短距離とを比較し、前記最短距離が小さい側の回避軌道を選択するようにすることができる。
【0024】
また、第3及び第4の発明において、前記導出手段は、前記障害物の左側を回避する回避軌道の車体合成力の最大値と、前記障害物の右側を回避する回避軌道の車体合成力の最大値とを比較し、前記車体合成力の最大値が小さい側の回避軌道を選択するようにすることができる。
【0025】
また、前記検出手段は、前記自車両の速度、前記自車両に対する前記障害物の相対距離及び相対速度を検出するようにすることができる。
【0026】
また、前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、操舵角、制動力、及び駆動力の少なくとも一つを制御する制御手段を更に含んで構成することができる。
【0027】
また、前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、ドライバに車両運動状態を報知する報知手段を更に含んで構成することができる。
【0028】
また、第5の発明の車両運動制御プログラムは、コンピュータを、第1〜第4の発明の車両運動制御装置を構成する各手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出するための障害物の速度を考慮した簡単な構成の3次元マップを用いて車体合成力及び回避軌道を導出するため、障害物が移動する場合でも、障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】車両運動制御の概略を示す図である。
【図2】xy座標の設定を説明するための図である。
【図3】第1の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最短3次元マップを表す線図である。
【図4】第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最短3次元マップを表す線図である。
【図7】第2の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図8】第3の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最適3次元マップを表す線図である。
【図9】第3の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最適3次元マップの他の例を表す線図である。
【図10】第3の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図11】第4の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最適3次元マップを表す線図である。
【図12】第4の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最適3次元マップの他の例を表す線図である。
【図13】第4の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図14】左側回避と右側回避との対称性を説明するための図である。
【図15】第5の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図16】第5の実施の形態の車両運動制御ルーチンの他の例の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態では、車両が走行する道路上において移動する障害物を回避する場合を想定し、回避直後の位置を障害物の横(障害物の移動方向の延長線上)を通過する位置とし、その回避直後の位置における速度方向を車体前後方向とする場合について説明する。
【0032】
第1の実施の形態では、障害物の速度を検出して、設定された車体合成力の最大値内で車体合成力を発生させて障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出する場合について説明する。
【0033】
図1に示すように、設定したxy座標での時刻t(現時刻をt=0として、現時刻からt秒後)における車体合成加速度のx成分をux(t)、車体合成加速度のy成分をuy(t)、車体合成力の大きさをF(t)、車体合成力の方向をθ0(t)、及び自車両の重量をmとすると、車体合成加速度ux(t)及びuy(t)は、下記(1)式及び(2)式で示される。また、(1)式及び(2)式を積分して、下記(3)式及び(4)式に示すように、自車両の路面に対する速度のx成分vx(t)、及び速度のy成分vy(t)が得られる。また、(3)式及び(4)式を積分して、下記(5)式及び(6)式に示すように、自車両のt秒後のx軸方向の位置X(t)、及びy軸方向の位置Y(t)が得られる。このX(t)及びY(t)により回避軌道が得られる。
【0034】
【数1】
【0035】
なお、xy座標は、t=0における自車両の位置を原点とし、障害物の横を通過する位置における速度方向(車体前後方向)をx軸、x軸に直交する軸(車体横方向)をy軸として設定する(図2参照)。
【0036】
そして、現時刻(t=0)における自車両の路面に対する速度をvx(0)=vx0、vy(0)=vy0、自車両に対する障害物の相対的な位置を(Xe,Z0)、及び障害物の道路に対する速度をZvとした場合に、車体合成力の最大値F0=maxF(t)を設定した場面において、vx0、vy0及びZvをパラメータとする縦移動距離を最小化するための3次元マップ(以下、最短3次元マップという)を用いて、所望の速度方向に対して縦移動距離を最小化する車体合成加速度ux(t)及びuy(t)((1)式、及び(2)式)を導出する。
【0037】
ここで、図1に示すように、自車両及び障害物の速度及びx方向の相対距離が既知の場合において、最適軌道を求める3次元マップの導出例について説明する。
【0038】
まず、x1=X(t)、x2=vx(t)、x3=Y(t)、x4=vy(t)、u1=ux(t)、u2=uy(t)とおくと、(1)式及び(2)式の運動方程式は、下記(7)式及び(8)式のような状態方程式に変形できる。なお、Tはベクトル及び行列の転置記号である。
【0039】
【数2】
【0040】
また、設定された座標軸上において、検出された障害物の速度がZv、位置がZ0の場合で、障害物がy軸方向に等速直線運動すると仮定すると、時刻tにおける障害物のy軸方向の位置は、下記(9)式で表される。
【0041】
【数3】
【0042】
次に、設定された車体合成力の最大値F0の範囲内で、障害物を回避しながら縦移動距離を最小化する最適制御問題として考えると、現時刻をt=0とし、回避に要する時間をteとおいて、評価関数Iを下記(10)式で表した場合、下記(11)式で表される終端条件、及び下記(12)式で表される車体合成力の大きさに関する入力制約条件の下で、評価関数Iを最小化する制御入力を求めよという制御問題に帰着される。
【0043】
【数4】
【0044】
この最適制御問題を公知の技術(特開2007-283910号公報等)を参考に解いていく。まず、ラグランジュ乗数関数ベクトルψ(t)、λ(t)、ハミルトン関数Hを下記(14)式のようにおくと、オイラー方程式を用いて最適解xo(t),uo(t)は、下記(15)〜(17)式を満足する。
【0045】
【数5】
【0046】
また、終端条件に関しては、S(x,t)=x1(t)とおき、定数ベクトルν=(ν1,ν2)Tを導出することで、下記(18)式及び(19)式のような関係が成り立つ。
【0047】
【数6】
【0048】
ただし、(14)式〜(19)式内の右下添え字x,u,tは偏微分を意味する。
【0049】
ここで、(15)〜(17)式を変形すると、下記(20)〜(22)式のような関係が得られる。
【0050】
【数7】
【0051】
また、終端条件より、下記(23)式及び(24)式を用いて、下記(25)式及び(26)式の関係が得られる。
【0052】
【数8】
【0053】
(21)式及び(22)式より、下記(27)式が得られ、uo(t)は下記(28)式となる。
【0054】
【数9】
【0055】
また(20)式及び(25)式によりψ(t)を求めると下記(29)式となり、x2(t)の終端は(26)式より下記(30)式の関係を満たすので、下記(31)式の終端条件が新たに出てくる。
【0056】
【数10】
【0057】
このとき、制御問題は下記(32)式のように書き換えられる。
【0058】
【数11】
【0059】
(32)式を(7)式及び(8)式のu(t)に代入して時間積分し、初期条件((7)式の第2式)と終端条件((11)式及び(31)式を適用すると、te、ν1、ν2を導出する非線形方程式(下記(33)式〜(36)式))が求まる。なお、ν1及びν2は本発明の第1の導入パラメータ及び第2の導入パラメータに相当する。
【0060】
(32)式において必要となるte、ν1、ν2は、(33)式〜(35)式の非線形方程式にm、vx0、vy0、F0、Z0及びZvを代入して解くことにより得られる。また、最小の縦移動距離Xsは、(36)式の関係を満たす。
【0061】
【数12】
【0062】
上記非線形方程式は、移動する障害物の速度を考慮しているため、公知の技術(特開2007−283910号公報等)の非線形方程式とは(33)式の右辺、及び(35)式の左辺の最終項が異なっている。ただし、この場合も公知の演算ソフトウエアで十分計算可能である。この方程式の解を求めるために、低次元化したマップを導出する。
【0063】
まず、(33)〜(35)式に着眼して、任意の正数aを導入して下記(37)式の関係を満足する2組のパラメータP及びP’を考えると、P及びP’に対応する解{ν1、ν2、te}及び{ν1’、ν2’、te’}は、下記(38)式の関係を満たす。
【0064】
【数13】
【0065】
(37)式の最後の式より、aを下記(39)式のようにおくと、(37)式よりvx0’、vy0’及びZv’は下記(40)式のように変形できる。
【0066】
【数14】
【0067】
この関係より、F0’/m’及びZ0’に任意の正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvx0’、vy0’及びZv’が求まる。よって、F0’/m’及びZ0’をある値に設定した場合において、vx0’、vy0’及びZv’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このF0’/m’及びZ0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。
【0068】
ここでは、一例として、F0’/m’=Z0’=1とした場合のvx0’、vy0’及びZv’に関する最短3次元マップを作成する。図3に示すように、vx0’、vy0’及びZv’をパラメータとして(33)式〜(35)式に基づいて得られるν1’の値をマッピングした第1の3次元マップ、ν2’の値をマッピングした第2の3次元マップ、及びte’の値をマッピングした第3の3次元マップを作成する。また、例えば、Zv’について、Zv’=va’、Zv’=vb’、Zv’=vc’の3値(va’<vb’<vc’)を用い、va’〜vb’間、及びvb’〜vc’間は、各々線形近似などで内挿する。ただし、この図3では、vy0’軸方向において相対速度vy0’−Zv’を用いてマッピングしている。
【0069】
そして、これらのマップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、F0’/m’=Z0’=1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(40)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びZv’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を各3次元マップから得て、(38)式及び(39)式に従って{ν1’,ν2’,te’}を{ν1,ν2,te}に変換し、(32)式に適用して入力の時間関数を得る。また、(36)式に代入して最小の縦移動距離Xsを演算する。
【0070】
ただし、Z0<0の場合は、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して、最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得ればよい。
【0071】
この結果、現時刻の障害物の位置及び速度から、設定された車体合成力の最大値内で車体合成力を発生させて、移動する障害物を回避しながら所望の速度方向に対して縦移動距離を最小化する制御入力関数が得られ、また(1)式〜(6)式の積分計算により回避軌道が導出される。
【0072】
なお、上記の最短3次元マップではパラメータvx0’、vy0’及びZv’を(40)式のように定め、F0’/m’=Z0’=1とした場合について説明したが、このパラメータの取り方は、上記以外にも複数存在する。例えば、任意の正数aを(37)式の第1式より下記(41)式のようにおくと、(37)式よりvy0’、Zv’及びZ0’は下記(42)式のように変形できる。
【0073】
【数15】
【0074】
この関係より、F0’/m’及びvx0’にある正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvy0’、Zv’及びZ0’が求まる。よって、F0’/m’及びvx0’をある値に設定した場合において、vy0’、Zv’及びZ0’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このF0’/m’及びvx0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、F0’/m’=vx0’=1とした場合のvy0’、Zv’及びZ0’を変数として、(33)式〜(35)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを作成する。
【0075】
そして、この最短3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、F0’/m’=vx0’=1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(42)式に従ってパラメータvy0’、Zv’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最短3次元マップから得て、(38)式及び(41)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。
【0076】
なお、この最短3次元マップの領域は、vy0’、Zv’及びZ0’のいずれかにおいて0以上に限定してもよい。例えば、Z0≧0の最短3次元マップを作成した場合は、検出値がZ0<0であったとしても、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、さらに−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行えば{ν1,ν2,te}が得られる。
【0077】
また、別のパラメータを用いる場合として、(42)式の第3式を下記(43)式のように変形すると、(41)式のaは、下記(44)式のように変形される。
【0078】
【数16】
【0079】
この関係より、vx0’及びZ0’にある正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってF0’/m’、vy0’及びZv’が求まる。よって、vx0’及びZ0’をある値に設定した場合において、F0’/m’、vy0’及びZv’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このvx0’及びZ0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、vx0’=Z0’=1とした場合のF0’/m’、vy0’及びZv’を変数として、(33)式〜(35)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを作成する。
【0080】
そして、この最短3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、vx0’=Z0’=1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(42)式の第1式及び第2式に従ってパラメータvy0’及びZvを演算し、(43)式に従ってパラメータF0’/m’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最短3次元マップから得て、(38)式及び(44)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。ただし、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得ればよい。
【0081】
また、別のパラメータを用いる場合として、任意の正数aを(37)式の第2式より下記(45)式のようにおくと、(37)式よりvx0’、Zv’及びZ0’は下記(46)式のように変形できる。
【0082】
【数17】
【0083】
この関係より、F0’/m’及びvy0’にある正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによって、vx0’、Zv’及びZ0’が求まる。よって、F0’/m’及びvy0’をある値に設定した場合において、vx0’、Zv’及びZ0’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このF0’/m’及びvy0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、F0’/m’=vy0’=1とした場合のvx0’、Zv’及びZ0’を変数として、(33)式〜(35)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを作成する。
【0084】
そして、この最短3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、F0’/m’=vy0’=1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(46)式に従ってパラメータvx0’、Zv’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップから得て、(38)式及び(45)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。ただし、vy0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して、最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得ればよい。
【0085】
また、別のパラメータを用いる場合として、(46)式の第3式を下記(47)式のように変形すると、(45)式のaは、下記(48)式のように変形される。
【0086】
【数18】
【0087】
この関係より、vy0’及びZ0’にある値を設定することにより、現時刻のパラメータPによってF0’/m’、vx0’及びZv’が求まる。よって、vy0’及びZ0’をある値に設定した場合において、F0’/m’、vx0’及びZv’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このvy0’及びZ0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、vy0’=1、Z0’=±1とした場合のF0’/m’、vx0’及びZv’を変数として、(33)式〜(35)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを作成する。
【0088】
そして、この最短3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、vy0’=1、Z0’=±1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(46)式の第1式及び第2式に従ってパラメータvx0’及びZv’を演算し、(47)式に従ってパラメータF0’/m’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最短3次元マップから得て、(38)式及び(48)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。ただし、vy0≧0、Z0≧0の場合には、Z0’=1の最短3次元マップより{ν1’,ν2’,te’}を求め、vy0≧0、Z0<0の場合には、Z0’=−1の最短3次元マップより{ν1’,ν2’,te’}を求める。また、vy0<0、Z0≧0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=−1の最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求めて、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得る。また、vy0<0、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=1の最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求めて、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得る。
【0089】
また、別のパラメータを用いる場合として、任意の正数aを(37)式の第3式より下記(49)式のようにおくと、(37)式よりvx0’、vy0’及びZ0’は下記(50)式のように変形できる。
【0090】
【数19】
【0091】
この関係より、F0’/m’及びZv’にある正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによって、vx0’、vy0’及びZ0’が求まる。よって、F0’/m’及びZv’をある値に設定した場合において、vx0’、vy0’及びZ0’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このF0’/m’及びZv’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、F0’/m’=Zv’=1とした場合のvx0’、vy0’及びZ0’を変数として、(33)式〜(35)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを作成する。
【0092】
そして、この最短3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、F0’/m’=Zv’=1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(50)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最短3次元マップから得て、(38)式及び(49)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。ただし、Zv<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して、最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得ればよい。
【0093】
また、別のパラメータを用いる場合として、(50)式の第3式を下記(51)式のように変形すると、(49)式のaは、下記(52)式のように変形される。
【0094】
【数20】
【0095】
この関係より、Zv’及びZ0’にある値を設定することにより、現時刻のパラメータPによってF0’/m’、vx0’及びvy0’が求まる。よって、Zv’及びZ0’をある値に設定した場合において、F0’/m’、vx0’及びvy0’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このZv’及びZ0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、Zv’=1、Z0’=±1とした場合のF0’/m’、vx0’及びvy0’を変数として、(33)式〜(35)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを作成する。
【0096】
そして、この最短3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、Zv’=1、Z0’=±1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(50)式の第1式及び第2式に従ってパラメータvx0’及びvy0’を演算し、(51)式に従ってパラメータF0’/m’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最短3次元マップから得て、(38)式及び(52)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。ただし、Zv≧0、Z0≧0の場合には、Z0’=1の最短3次元マップより{ν1’,ν2’,te’}を求め、Zv≧0、Z0<0の場合には、Z0’=−1の最短3次元マップより{ν1’,ν2’,te’}を求める。また、Zv<0、Z0≧0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=−1の最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求めて、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得る。また、Zv<0、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=1の最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求めて、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得る。
【0097】
また、最短3次元マップの軸の取り方をオーバーシュートする軌道とそうでない軌道との境界線を考慮して変更したマップを作成してもよい。例えば、(42)式のパラメータを下記(85)式のように変更して最短3次元マップを作成することができる。
【0098】
【数21】
【0099】
以下、上記の最短3次元マップを用いた第1の実施の形態について詳細に説明する。図4に示すように、第1の実施の形態の車両運動制御装置には、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段として車両に搭載されたセンサ群、外部環境状態を検出する外部環境検出手段として車両に搭載されたセンサ群、及びこれらのセンサ群からの検出データに基づいて、自車両が運動するように自車両に搭載された車載機器を制御することによって目標位置へ到達するように車両運動を制御する制御装置20、ドライバに車両運動制御状態を報知する表示装置30が設けられている。
【0100】
車両運動制御装置の自車両の走行状態を検出するセンサ群としては、車速を検出する車速センサ10、操舵角を検出する操舵角センサ12、及びスロットル弁の開度を検出するスロットル開度センサ14が設けられている。また、図示しないGPS装置からの情報を加えるようにしてもよい。
【0101】
また、外部環境状態を検出するセンサ群としては、自車両の前方を撮影する前方カメラ16、及び自車両の前方の障害物を検出するレーザレーダ18が設けられている。なお、レーザレーダ18に代えて、又はレーザレーダ18と共にミリ波レーダを設けるようにしてもよい。また、図示しないGPS装置からの情報を加えるようにしてもよい。
【0102】
前方カメラ16は、車両の前方を撮影するように車両のフロントウインドウ上部等に取り付けられている。前方カメラ16は、小型のCCDカメラ又はCMOSカメラで構成され、自車両の前方の道路状況を含む領域を撮影し、撮影により得られた画像データを出力する。出力された画像データは、マイクロコンピュータ等で構成された制御装置20に入力される。なお、カメラとして、前方カメラ16に加えて、前方赤外線カメラを設けるのが好ましい。赤外線カメラを用いることにより、歩行者を障害物として確実に検出することができる。なお、上記の赤外線カメラに代えて近赤外線カメラを用いることができ、この場合においても同様に歩行者を確実に検出することができる。
【0103】
レーザレーダ18は、赤外光パルスを照射する半導体レーザからなる発光素子、赤外光パルスを水平方向に走査する走査装置、及び前方の障害物(歩行者、前方車両等)から反射された赤外光パルスを受光する受光素子を含んで構成され、車両の前方グリル又はバンパに取り付けられている。このレーザレーダ18では、発光素子から発光された時点を基準として受光素子で受光されるまでの反射赤外光パルスの到達時間に基づいて、自車両から前方の障害物までの距離を検出することができる。レーザレーダ18で検出された障害物までの距離を示すデータは制御装置20に入力される。制御装置20は、RAM、ROM、及びCPUを含むマイクロコンピュータ等で構成され、ROMには以下で説明する車両運動制御ルーチンのプログラムが記憶されている。
【0104】
また、制御装置20は、自車両の操舵角、制動力、及び駆動力の少なくとも1つを制御することによって、目標位置へ到達するように車両運動を制御するための車両搭載機器に接続されている。この車両搭載機器としては、車輪の操舵角を制御するための電動パワーステアリング等の操舵角制御装置22、ブレーキ油圧を制御することによって制動力を制御する制動力制御装置24、及び駆動力を制御する駆動力制御装置26が設けられている。制動力制御装置24には、制動力を検出する検出センサ24Aが取り付けられている。また、制御装置20には、演算された制御入力の方向θ等を表示することによって車両運動制御情報をドライバに報知する表示装置30が接続されている。なお、車両運動制御を行なっていることを、ドライバだけでなく車両外部の目標位置方向に向かって報知するようにしてもよい。また、最短回避距離が自車両と障害物との距離よりも短い場合には、ドライバに回避の必要性を予め報知するようにしてもよい。
【0105】
操舵角制御装置22としては、ドライバのステアリングホイール操作に重畳して前輪及び後輪の少なくとも一方の車輪の操舵角を制御する制御手段、ドライバ操作とは機械的に分離され、ステアリングホイールの操作とは独立して前輪及び後輪の少なくとも一方の車輪の操舵角を制御する制御手段(いわゆるステア・バイ・ワイヤ)等を用いることができる。
【0106】
制動力制御装置24としては、ドライバ操作とは独立して各車輪の制動力を個別に制御する、いわゆるESC(Electronic Stability Control)に用いられる制御装置、ドライバ操作とは機械的に分離され、各車輪の制動力を信号線を介して任意に制御する制御装置(いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ)等を用いることができる。
【0107】
駆動力制御装置26としては、スロットル開度、点火進角の遅角、又は燃料噴射量を制御することによって駆動力を制御する制御装置、変速機の変速位置を制御することによって駆動力を制御する制御装置、トルクトランスファを制御することによって前後方向及び左右方向の少なくとも一方の駆動力を制御する制御装置等を用いることができる。
【0108】
また、制御装置20には、制御入力を求めるための最短3次元マップを記憶したマップ記憶装置28が接続されている。
【0109】
また、制御装置20には、ドライバに警報を発する図示しない警報装置が接続されている。警報装置としては、音や音声によって警報を発する装置、光や視覚的な表示によって警報を発する装置、振動によって警報を発する装置、又は操舵反力のような物理量をドライバに与えてドライバの操作を誘導する物理量付与装置を用いることができる。また、表示装置30を警報装置として用いるようにしてもよい。
【0110】
以下、図5を参照して第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する車体合成力を導出するためのマップとして図3の最短3次元マップを用いる場合について説明する。
【0111】
ステップ100で、車速センサ10等で検出された自車両の走行状態、及びレーザレーダ18等で検出された外部環境状態に関する検出データを取り込む。次に、ステップ102で、取り込んだ検出データに基づいて、車両が走行している道路上の障害物の位置及び大きさを含む環境マップを作成する。
【0112】
次に、ステップ104で、障害物の横を通過する位置における速度方向を環境マップに基づいて設定し、さらに自車両の現時刻の位置を原点に、また設定した速度方向を車体前後方向(x軸)に取り、x軸に直交する方向をy軸とするxy座標を設定する。
【0113】
次に、ステップ106で、上記ステップ100で走行状態として取り込まれた自車両及び障害物の状態量を設定された座標に対応させて変換し、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、障害物のy軸方向の位置Z0、及び障害物の速度のy成分Zvを演算する。なお、ここでは、障害物の速度のx成分は0とする。
【0114】
次に、ステップ108で、外部環境及び自車両の構造と状態に基づいて、車体合成力の最大値F0を設定する。
【0115】
次に、ステップ110で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、Zv、Z0、及び上記ステップ108で設定した車体合成力の最大値F0を用いて、(40)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びZv’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最短3次元マップから得て、(38)式及び(39)式に従って{ν1’,ν2’,te’}を{ν1,ν2,te}に変換する。そして、これらのパラメータを(32)式に適用することにより車体合成力を得る。また、(36)式に代入することで最小の縦移動距離Xsを得る。また、(1)式〜(6)式に従って、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離が最小となる回避軌道を導出する。
【0116】
次に、ステップ112で、上記ステップ110で導出された車体合成力に従って、回避軌道に沿った走行を実現するために必要な各車輪のタイヤ発生力を演算し、各車輪のタイヤ発生力が得られるように操舵角制御装置22、制動力制御装置24、及び駆動力制御装置26の少なくとも1つを制御すると共に、車両運動制御情報を表示装置30に表示する。また、障害物を回避するように制御する際には無条件で警報装置から警報を発したり、障害物を回避するための車両運動制御を行っていることを表示装置30に表示したりすることにより警報を行ってもよい。各車輪のタイヤ発生力が得られるように制御することにより、目的とする車体合成力が得られるように制御することができる。
【0117】
以上説明したように、第1の実施の形態の車両運動制御装置によれば、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出するための障害物の速度を考慮した簡単な構成の3次元マップを用いて車体合成力及び回避軌道を導出するため、障害物が移動する場合でも、障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる。
【0118】
次に、第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、車体合成力及び回避軌道を求めるために{ν1’,ν2’,te’}を導出する最短3次元マップを用いる場合について説明したが、現時刻の入力(車体合成力の向き)のみを求めたい場合には、1つのパラメータを出力する最短3次元マップで導出が可能となる。第2の実施の形態ではこの場合について説明する。なお、第2の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0119】
ここで、第2の実施の形態で用いられる最短3次元マップについて説明する。
【0120】
まず、第1の実施の形態と同様に、(40)式まで展開する。そして、一例として、F0’/m’=Z0’=1とした場合のvx0’、vy0’及びZv’に関する最短3次元マップを作成する。図6に示すように、vx0’、vy0’及びZv’をパラメータとして、(32)式〜(35)式に基づいて得られる車体合成加速度の方向θ’の値をマッピングした最短3次元マップを作成する。ただし、この図6では、vy0’軸方向において相対速度vy0’−Zv’を用いてマッピングしている。
【0121】
そして、この最短3次元マップを用いて{θ’}を求めるには、F0’/m’=Z0’=1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(40)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びZv’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を最短3次元マップから得て、下記(53)式により、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きが得られる。
【0122】
【数22】
【0123】
ただし、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最短3次元マップより{−θ’}を求め、さらに−θ’→θ’の処理を行って{θ’}を得ればよい。
【0124】
また、図6のように{Xs’}も出力する最短3次元マップを導入して、下記(54)式及び公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0125】
【数23】
【0126】
なお、上記の最短3次元マップでは、パラメータを(40)式のように定めた場合について説明したが、第1の実施の形態と同様に、(42)式に示すパラメータを用いた最短3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’}を出力する最短3次元マップを作成することもできる。一例として、F0’/m’=vx0’=1とした場合のvy0’、Zv’及びZ0’に関する最短3次元マップを作成することができる。そして、(53)式により、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きを導出する。
【0127】
なお、この最短3次元マップの領域は、vy0’、Zv’及びZ0’のいずれかにおいて0以上に限定してもよい。例えば、Z0≧0の最短3次元マップを作成した場合は、検出値がZ0<0であったとしても、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最短3次元マップより{−θ’}を求め、さらに−θ’→θ’処理を行えば{θ’}が得られる。
【0128】
また、ここでも{Xs’}も出力する最短3次元マップを導入して、下記(55)式及び公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0129】
また、(42)式の第1式、第2式及び(43)式に示すパラメータを用いた最短3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’}を出力する最短3次元マップを作成することもできる。一例として、vx0’=Z0’=1とした場合のF0’/m’、vy0’及びZv’に関する最短3次元マップを作成することができる。ただし、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最短3次元マップより{−θ’}を求め、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’}を得ればよい。また、ここでも{Xs’}も出力する最短3次元マップを導入して、(54)式及び公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0130】
また、(46)式に示すパラメータを用いた最短3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’}を出力する最短3次元マップを作成することもできる。一例として、F0’/m’=vy0’=1とした場合のvx0’、Zv’及びZ0’に関する最短3次元マップを作成することができる。ただし、vy0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して、最短3次元マップより{−θ’}を求め、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’}を得ればよい。 また、ここでも{Xs’}も出力する最短3次元マップを導入して、下記(56)式及び公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0131】
また、(46)式の第1式、第2式及び(47)式に示すパラメータを用いた最短3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’}を出力する最短3次元マップを作成することもできる。一例として、一例として、vy0’=1、Z0’=±1とした場合のF0’/m’、vx0’及びZv’に関する最短3次元マップを作成することができる。ただし、vy0≧0、Z0≧0の場合には、Z0’=1の最短3次元マップより{θ’}を求め、vy0≧0、Z0<0の場合には、Z0’=−1の最短3次元マップより{θ’}を求める。また、vy0<0、Z0≧0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=−1の最短3次元マップより{−θ’}を求めて、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’}を得る。また、vy0<0、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=1の最短3次元マップより{−θ’}を求めて、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’}を得る。また、ここでも{Xs’}も出力する最短3次元マップを導入して、(54)式及び公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0132】
また、(50)式に示すパラメータを用いた最短3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’}を出力する最短3次元マップを作成することもできる。一例として、F0’/m’=Zv’=1とした場合のvx0’、vy0’及びZ0’に関する最短3次元マップを作成することができる。ただし、Zv<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して、最短3次元マップより{−θ’}を求め、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’}を得ればよい。また、ここでも{Xs’}も出力する最短3次元マップを導入して、下記(57)式及び公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0133】
また、(50)式の第1式、第2式及び(51)式に示すパラメータを用いた最短3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’}を出力する最短3次元マップを作成することもできる。一例として、Zv’=1、Z0’=±1とした場合のF0’/m’、vx0’及びvy0’に関する最短3次元マップを作成することができる。ただし、Zv≧0、Z0≧0の場合には、Z0’=1の最短3次元マップより{θ’}を求め、Zv≧0、Z0<0の場合には、Z0’=−1の最短3次元マップより{θ’}を求める。また、Zv<0、Z0≧0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=−1の最短3次元マップより{−θ’}を求めて、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’}を得る。また、Zv<0、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=1の最短3次元マップより{−θ’}を求めて、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’}を得る。また、ここでも{Xs’}も出力する最短3次元マップを導入して、(54)式及び公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0134】
【数24】
【0135】
以下、図7を参照して第2の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の向きを導出するためのマップとして図6の最短3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0136】
ステップ100〜108を経て、次に、ステップ200で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、Zv、Z0、及び上記ステップ108で設定した車体合成力の最大値F0を用いて、(40)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びZv’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を最短3次元マップから得て、(53)式に適用することにより車体合成力の向き及び大きさを導出する。次に、ステップ112で、上記ステップ200で導出した車体合成力に従って車両運動を制御する。
【0137】
以上説明したように、第2の実施の形態の車両運動制御装置によれば、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の向きを導出するための障害物の速度を考慮した簡単な構成の最短3次元マップを用いて車体合成力の向きを導出するため、障害物が移動する場合でも、障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の向き及び大きさを導出することができる。また、第1の実施の形態の場合の最短3次元マップに比べ、用いるマップが少ないため、マップを記憶するための容量を削減できる。
【0138】
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出する場合について説明する。なお、第3の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0139】
ここで、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出するためのマップ(以下、最適3次元マップという)について説明する。
【0140】
車体合成力の最大値を最小にする最適制御は、第1の実施の形態で述べた場合と同様に(7)式〜(12)式で定式化できる。なぜなら、最小の縦移動距離Xsが自車両と障害物との相対距離のx成分Xeと等しくなる車体合成力の最大値F0を求められれば、そのときの(32)式で示される制御入力は、車体合成力の最大値最小化問題の最適解になるためである。よって、自車両と障害物との相対距離のx成分Xeに対して、x1(te)=Xeの関係を導入することにより、Xs→Xeに変換された非線形方程式(33)式〜(36)式にm、vx0、vy0、Xe、Z0、Zvを代入して、F0、te、ν1、ν2が求まる。
【0141】
まず、(33)式を下記(58)式のように変形し、Xs→Xeに変換された(34)式〜(36)式に代入する((59)式〜(61)式)。
【0142】
【数25】
【0143】
ここで、任意の正数aを導入して下記(62)式の関係を満足する2組のパラメータP及びP’を考えると、P及びP’に対応する解{ν1、ν2、te}及び{ν1’、ν2’、te’}は、下記(63)式の関係を満たす。
【0144】
【数26】
【0145】
(62)式の第2式より、aを下記(64)式のようにおくと、(62)式よりvy0’、Zv’及びZ0’は下記(65)式のように変形できる。
【0146】
【数27】
【0147】
この関係より、vx0’及びXe’に任意の正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvy0’、Zv’及びZ0’が求まる。よって、vx0’及びXe’をある値に設定した場合において、vy0’、Zv’及びZ0’をパラメータとした最適3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このvx0’及びXe’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。
【0148】
ここでは、一例として、vx0’=Xe’=1とした場合のvy0’、Zv’及びZ0’に関する最適3次元マップを作成する。図8に示すように、vy0’、Zv’及びZ0’をパラメータとして、(59)式〜(61)式に基づいて得られるν1’の値をマッピングした第1の3次元マップ、ν2’の値をマッピングした第2の3次元マップ、及びte’の値をマッピングした第3の3次元マップを作成する。ただし、この図8では、vy0’軸方向において相対速度vy0’−Zv’を用いてマッピングしている。
【0149】
そして、これらのマップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、vx0’=Xe’=1、既知のvx0、vy0、Z0、Zv及びXeから(65)式に従ってパラメータvy0’、Zv’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を各3次元マップから得て、(63)式及び(64)式に従って{ν1’,ν2’,te’}を{ν1,ν2,te}に変換する。また、(58)式に代入してF0を演算する。そしてこれらのパラメータを(32)式に適用して入力の時間関数を得る。
【0150】
なお、この最適3次元マップの領域は、vy0’、Zv’及びZ0’のいずれかにおいて0以上に限定してもよい。例えば、Z0≧0の最適3次元マップを作成した場合は、検出値がZ0<0であったとしても、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最適3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、さらに−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行えば{ν1,ν2,te}が得られる。
【0151】
この結果、現在の位置から障害物を回避しながら所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する制御入力関数が得られ、また(1)式〜(6)式の積分計算により回避軌道が導出される。
【0152】
なお、上記の最適3次元マップではパラメータvy0’、Zv’及びZ0’を(65)式のように定め、vx0’=Xe’=1とした場合について説明したが、このパラメータの取り方は、上記以外にも複数存在する。例えば、任意の正数aを(62)式の第4式より下記(66)式のようにおくと、(62)式よりvy0’、Zv’及びXe’は下記(67)式のように変形できる。
【0153】
【数28】
【0154】
この関係より、vx0’及びZ0’にある正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvy0’、Zv’及びXe’が求まる。よって、vx0’及びZ0’をある値に設定した場合において、vy0’、Zv’及びXe’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最適3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このvx0’及びZ0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、vx0’=Z0’=1とした場合のvy0’、Zv’及びXe’を変数として、(59)式〜(61)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最適3次元マップを作成する。
【0155】
そして、この最適3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、vx0’=Z0’=1、既知のvx0、vy0、Z0、Zv及びXeから(67)式に従ってパラメータvy0’、Zv’及びXe’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最適3次元マップから得て、(63)式及び(66)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。ただし、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最適3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得ればよい。
【0156】
また、別のパラメータを用いる場合として、(58)式〜(65)式の展開方法を変更することもできる。まず、(34)式を下記(68)式のように変形し、Xs→Xeに変換された(33)式、(35)式及び(36)式に代入する((69)式〜(71)式)。
【0157】
【数29】
【0158】
ここで、任意の正数a1を導入して下記(72)式の関係を満足する2組のパラメータP及びP’を考えると、P及びP’に対応する解{ν1、ν2、te}及び{ν1’、ν2’、te’}は、下記(73)式の関係を満たす。
【0159】
【数30】
【0160】
(72)式の第2式より、a1を下記(74)式のようにおくと、(72)式よりvx0’、Zv’及びZ0’は下記(75)式のように変形できる。
【0161】
【数31】
【0162】
この関係より、vy0’及びXe’に任意の正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvx0’、Zv’及びZ0’が求まる。よって、vy0’及びXe’をある値に設定した場合において、vx0’、Zv’及びZ0’をパラメータとした最適3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このvy0’及びXe’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。
【0163】
ここでは、一例として、vy0’=Xe’=1とした場合のvx0’、Zv’及びZ0’に関する最適3次元マップを作成する。図9に示すように、vx0’、Zv’及びZ0’をパラメータとして、(69)式〜(71)式に基づいて得られるν1’の値をマッピングした第1の3次元マップ、ν2’の値をマッピングした第2の3次元マップ、及びte’の値をマッピングした第3の3次元マップを作成する。なお、図9では、Zv’=vy0’/2が特異点となるため、この場合を含むように最適3次元マップを構成している。
【0164】
そして、これらのマップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、vy0’=Xe’=1、既知のvx0、vy0、Z0、Zv及びXeから(75)式に従ってパラメータvx0’、Zv’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を各3次元マップから得て、(73)式及び(74)式に従って{ν1’,ν2’,te’}を{ν1,ν2,te}に変換する。また、(68)式に代入してF0を演算し、これらのパラメータを(32)式に適用して入力の時間関数を得る。ただし、vy0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最適3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得ればよい。
【0165】
また、別のパラメータを用いる場合として、任意の正数a1を(72)式の第4式より下記(76)式のようにおくと、(72)式よりvx0’、Zv’及びXe’は下記(77)式のように変形できる。
【0166】
【数32】
【0167】
この関係より、vy0’及びZ0’にある正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvx0’、Zv’及びXe’が求まる。よって、vy0’及びZ0’をある値に設定した場合において、vx0’、Zv’及びXe’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最適3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このvy0’及びZ0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、vy0’=1、Z0’=±1とした場合のvx0’、Zv’及びXe’を変数として、(69)式〜(71)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最適3次元マップを作成する。
【0168】
そして、この最適3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、vy0’=1、Z0’=±1、既知のvx0、vy0、Z0、Zv及びXeから(77)式に従ってパラメータvx0’、Zv’及びXe’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最適3次元マップから得て、(73)式及び(76)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。ただし、vy0≧0、Z0≧0の場合には、Z0’=1の最適3次元マップより{ν1’,ν2’,te’}を求め、vy0≧0、Z0<0の場合には、Z0’=−1の最適3次元マップより{ν1’,ν2’,te’}を求める。また、vy0<0、Z0≧0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=−1の最適3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求めて、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得る。また、vy0<0、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=1の最適3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求めて、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得る。
【0169】
また、最適3次元マップの軸の取り方をオーバーシュートする軌道とそうでない軌道との境界線を考慮して変更したマップを作成してもよい。例えば、(65)式のパラメータを下記(86)式〜(88)式のように変更して最適3次元マップを作成することができる。
【0170】
【数33】
【0171】
以下、図10を参照して第3の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を導出するためのマップとして図8の最適3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0172】
ステップ100〜106を経て、次に、ステップ300で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量vx0、vy0、Zv、Z0及びXeを用いて、(65)式に従ってパラメータvy0’、Zv’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最適3次元マップから得て、(63)式及び(64)式に従って{ν1’,ν2’,te’}を{ν1,ν2,te}に変換し、(58)式に従ってF0を演算する。そして、これらのパラメータを(32)式に適用することにより車体合成力を得る。また、(1)式〜(6)式に従って、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する回避軌道を導出する。
【0173】
次に、ステップ302で、上記ステップ300で演算したF0が、タイヤ発生力の限界値以下か否かを判定する。車体合成力の最大値がタイヤ発生力の限界値以下の場合には、ステップ112へ移行し、タイヤ発生力の限界値を超えている場合には、ステップ304へ移行する。なお、タイヤ発生力の限界値は、路面とタイヤとの間の摩擦係数に基づいて定まる真の限界値だけでなく、真の限界値に対してマージンを設けて設定した限界値も含む意味である。
【0174】
ステップ112では、第1の実施の形態と同様に、上記ステップ300で導出された車体合成力に従って、回避軌道に沿った走行を実現するための回避車両運動制御を実行する。一方、ステップ304では、急制動制御により障害物の手前で車両が停止するように制動力制御装置24を制御するか、推定される衝突被害が最小化されるように操舵角制御装置22及び制動力制御装置24を制御する。例えば、WO2006−070865記載の技術のような公知の技術を用いればよい。
【0175】
以上説明したように、第3の実施の形態の車両運動制御装置によれば、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出するための障害物の速度を考慮した簡単な構成の3次元マップを用いて車体合成力及び回避軌道を導出するため、障害物が移動する場合でも、障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる。
【0176】
次に、第4の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、車体合成力及び回避軌道を求めるために{ν1’,ν2’,te’}を導出する最適3次元マップを用いる場合について説明したが、現時刻の最適入力(車体合成力の大きさ及び向き)のみを求めたい場合には、2つのパラメータを出力する最適3次元マップで導出が可能となる。第4の実施の形態ではこの場合について説明する。なお、第4の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0177】
ここで、第4の実施の形態で用いられる最適3次元マップについて説明する。
【0178】
まず、第3の実施の形態と同様に、(65)式まで展開する。そして、一例として、vx0’=Xe’=1とした場合のvy0’、Zv’及びZ0’に関する最適3次元マップを作成する。図11に示すように、vy0’、Zv’及びZ0’をパラメータとして、(32)式及び(58)式〜(61)式に基づいて得られる車体合成加速度の方向θ’の値をマッピングした第1の3次元マップ、及びF0’/m’の値をマッピングした第2の3次元マップを作成する。ただし、この図11では、vy0’軸方向において相対速度vy0’−Zv’を用いてマッピングしている。
【0179】
そして、この最適3次元マップを用いて{θ’,F0’/m’}を求めるには、vx0’=Xe’=1、既知のvx0、vy0、Z0、Zv及びXeから(65)式に従ってパラメータvy0’、Zv’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’,F0’/m’}を最適3次元マップから得て、下記(78)式によりF0を求めて、(53)式により、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きが得られる。
【0180】
【数34】
【0181】
なお、上記の最適3次元マップでは、パラメータを(65)式のように定めた場合について説明したが、第3の実施の形態と同様に、(67)式に示すパラメータを用いた最適3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’,F0’/m’}を出力する最適3次元マップを作成することもできる。一例として、vx0’=Z0’=1とした場合のvy0’、Zv’及びXe’に関する最適3次元マップを作成することができる。この場合、下記(79)式によりF0を求める。ただし、Zv<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して、最適3次元マップより{−θ’,F0’/m’}を求め、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’,F0’/m’}を得ればよい。
【0182】
また、(75)式に示すパラメータを用いた最適3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’,F0’/m’}を出力する最適3次元マップを作成することもできる。一例として、vy0’=Xe’=1とした場合のvx0’、Zv’及びZ0’に関する最適3次元マップを作成することができる(図12)。この場合、下記(80)式によりF0を求める。ただし、vy0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して、最適3次元マップより{−θ’,F0’/m’}を求め、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’,F0’/m’}を得ればよい。
【0183】
また、(77)式に示すパラメータを用いた最適3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’,F0’/m’}を出力する最適3次元マップを作成することもできる。一例として、vy0’=1、Z0’=±1とした場合のvx0’、Zv’及びXe’に関する最適3次元マップを作成することができる。この場合、下記(81)式によりF0を求める。ただし、vy0≧0、Z0≧0の場合には、Z0’=1の最適3次元マップより{θ’,F0’/m’}を求め、vy0≧0、Z0<0の場合には、Z0’=−1の最適3次元マップより{θ’,F0’/m’}を求める。また、vy0<0、Z0≧0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=−1の最適3次元マップより{−θ’,F0’/m’}を求めて、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’,F0’/m’}を得る。また、vy0<0、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=1の最適3次元マップより{−θ’,F0’/m’}を求めて、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’,F0’/m’}を得る。
【0184】
【数35】
【0185】
以下、図13を参照して第4の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力の向きを導出するためのマップとして図11の最適3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1及び第3の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0186】
ステップ100〜106を経て、次に、ステップ400で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量vx0、vy0、Zv、Z0、及びXeを用いて、(65)式に従ってパラメータvy0’、Zv’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’,F0’/m’}を最適3次元マップから得て、(78)式によりF0を演算し、(53)式に適用することにより車体合成力の向き及び大きさを導出する。次に、ステップ302、及びステップ112または304で、第3の実施の形態と同様に車両運動を制御する。
【0187】
以上説明したように、第4の実施の形態の車両運動制御装置によれば、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力の向きを導出するための障害物の速度を考慮した簡単な構成の最適3次元マップを用いて車体合成力の向きを導出するため、障害物が移動する場合でも、障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力の向き及び大きさを導出することができる。また、第3の実施の形態の場合の最適3次元マップに比べ、用いるマップが少ないため、マップを記憶するための容量を削減できる。
【0188】
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態では、左右の回避軌道を求めて比較する場合について説明する。なお、第5の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0189】
第1〜第4の実施の形態では、自車両の前後方向に対して障害物の左側に回避する回避軌道を導出する場合について説明したが、障害物の右側に回避する回避軌道を導出する場合にも適用することができる。なぜなら、図14に示すように、障害物の右側を回避する軌道は、x軸に関して線対称な場面に対して、障害物の左側に回避する軌道と対称になるためである。
【0190】
図15を参照して第5の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する回避軌道を導出するためのマップとして図3の最短3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0191】
ステップ100〜108を経て、ステップ500で、障害物の現時刻のy軸方向の位置Z0に対応して、Zv=0の時に自車両が障害物の横を通過するときの位置を左側回避ではZl、右側回避ではZrとおく。そして、自車両及び障害物の大きさに基づいた横位置のマージンαZを設定して、下記(82)式のようにZl及びZrを設定する。
【0192】
【数36】
【0193】
次に、ステップ502で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、Z0、Zv、及び上記ステップ108で設定した車体合成力の最大値F0を用いて、最短3次元マップから{ν1’,ν2’,te’}を得る。このステップ内では、Z0について、左側回避ではZ0をZlに、右側回避ではZ0をZrに代えて用いる。そして、(38)式及び(39)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。そして、これらのパラメータを(32)式に適用することにより左側回避及び右側回避の各々の車体合成力を得る。また、(36)式に代入することで左側回避及び右側回避の各々の最小の縦移動距離Xsを得る。なお、左側回避の場合には、Zv及びZlをそのまま第1の実施形態と同様に適用することができるが、右側回避の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Zr→−Zrに変換(x軸に線対称な場面)して、第1の実施形態と同様に適用して、最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を得る。そして、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行えば、障害物の右側を回避する{ν1’,ν2’,te’}が得られる。
【0194】
次に、ステップ504で、左側回避の最小の縦移動距離Xsと右側回避の最小の縦移動距離Xsとを比較し、左側回避の最小の縦移動距離Xsの方が小さい場合には、ステップ506へ移行し、左側回避の軌道を選択し、右側回避の最小の縦移動距離Xsの方が小さい場合には、ステップ508へ移行し、右側回避の軌道を選択する。
【0195】
次に、ステップ510で、選択した回避動作が必要か否かを判定し、その回避動作が必要な場合には、ステップ112へ移行し、回避車両運動制御を実行し、回避動作が必要でない場合、すなわち回避動作を行わなくても障害物と衝突しない場合には、そのまま処理を終了する。なお、公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0196】
なお、第5の実施の形態では、最短3次元マップを用いた最短回避制御について、左側回避軌道と右側回避軌道とを比較する場合について説明したが、例えば図8に示す最適3次元マップを用いて最適回避制御を行う場合にも適用できる。図16を参照して、第5の実施の形態の最適回避制御の場合について説明する。なお、第1〜第4の実施の形態、及び第5の実施の形態の最短回避制御の場合と同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0197】
ステップ100〜106、及びステップ500を経て、次に、ステップ550で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量vx0、vy0、Z0、Zv、及びXeを用いて、最適3次元マップから{ν1’,ν2’,te’}を得る。このステップ内では、Z0について、左側回避ではZ0をZlに、右側回避ではZ0をZrに代えて用いる。そして、(63)式及び(64)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。そして、これらのパラメータを(32)式に適用することにより左側回避及び右側回避の各々の車体合成力を得る。また、(58)式に代入することで左側回避及び右側回避の各々の車体合成力の最大値F0を得る。なお、左側回避の場合には、Zv及びZlをそのまま第1の実施形態と同様に適用することができるが、右側回避の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Zr→−Zrに変換(x軸に線対称な場面)して、第1の実施形態と同様に適用して、最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を得る。そして、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行えば、障害物の右側を回避する{ν1’,ν2’,te’}が得られる。
【0198】
次に、ステップ552で、上記ステップ550で得られた左側回避の場合の車体合成力の最大値F0と右側回避の場合の車体合成力の最大値F0とを比較し、左側回避の車体合成力の最大値F0の方が小さい場合には、ステップ506へ移行し、左側回避の軌道を選択し、右側回避の車体合成力の最大値F0の方が小さい場合には、ステップ508へ移行し、右側回避の軌道を選択する。
【0199】
以下、ステップ302、及びステップ112またはステップ304で、回避車両運動制御等を実行する。
【0200】
以上説明したように、第5の実施の形態では、同一の最短3次元マップまたは最適3次元マップを用いて、左側回避の軌道と右側回避の軌道とを導出することができ、最短3次元マップを用いた場合は回避距離、最適3次元マップを用いた場合は車体合成力の最大値が小さい方の回避軌道を選択するため、より最適な回避制御を実行することができる。
【0201】
なお、第5の実施の形態では、第1または第3の実施の形態に左側回避または右側回避を選択する処理を組み合わせた場合について説明したが、第2または第4の実施の形態に組み合わせるようにしてもよい。
【0202】
また、第1〜第5の実施の形態では、道路に対する自車両及び障害物の速度を用いる場合について説明したが、道路に対する自車両の速度vx0、vy0及び自車両に対する障害物の相対速度Zvx’、Zvy’を検出し、それらのパラメータを用いて制御問題を定式化して解いてもよい。なぜなら、導出される制御入力とその非線形方程式が、最終的に(32)式〜(36)式に帰着されるためである。
【符号の説明】
【0203】
10 車速センサ
12 操舵角センサ
14 スロットル開度センサ
16 前方カメラ
18 レーザレーダ
20 制御装置
22 操舵角制御装置
24 制動力制御装置
26 駆動力制御装置
28 マップ記憶装置
30 表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運動制御装置及びプログラムに係り、特に、簡単な構成のマップを用いて移動する障害物を回避するための車体合成力及び回避軌道を導出する車両運動制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体に加える目標合成力と、各車輪の限界摩擦円の大きさから推定される限界合成力との比をμ利用率として設定し、限界摩擦円の大きさとμ利用率とからタイヤ発生力の大きさ、及び各制御対象車輪で発生するタイヤ発生力の方向を設定し、設定されたタイヤ発生力の大きさ、及び設定されたタイヤ発生力の方向に基づいて、各制御対象車輪の操舵と制動又は操舵と駆動との協調制御を行なう車両制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、車両よりも前方の道路上に存在する障害物を回避するための回避操作量を、車両に生じる加速力、減速力及び横力の合成力が車両のタイヤのグリップ力の最大値よりも小さくなる範囲内で算出する回避操作算出装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
また、車両が走行する道路上に存在する障害物を検出し、検出現時刻から評価終了時刻後の自車両の予測位置及び外部環境に基づいて、自車両の回避後の目標姿勢角を設定し、現時刻の外部環境及び障害物の状態量に基づいてリスクポテンシャル関数を設定し、そのリスクと運転操作量の時間積分値、目標姿勢角と自車両の姿勢角との差などに基づく評価値を算出し、評価値が最小となる軌道を導出する回避操作算出装置が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
また、自車両と障害物との間の距離及び自車両の障害物に対する相対速度、そして回避するための横移動距離に基づいて定まる物理量を導入し、その物理量と自車両の重量及び車体合成力の最大値により最短距離で回避するための車体合成力の向きを導出するマップを予め記憶しておき、直進制動での最短回避距離と単純横移動における最短回避距離と、現時刻の自車両と障害物の状態に基づいてマップより得られる最短回避距離を比較して、最も短くなる回避軌道を選択し、その軌道に基づいて現時刻の車体合成力を算出する車両制御装置が提案されている(特許文献4参照)。
【0006】
また、ロボットの位置、ロボットが到達目標とする目標到達位置、ロボットが目標到達位置へ到達する時に目標とする目標速度、及びロボットの制限最高速度又は制限最高加速度の各値を用いて、ロボットが制限最高速度又は制限最高加速度を越えない速度をとると共にロボットの初期位置から目標位置へ到達するのに要する時間が等しい軌道の中ではロボットの加速度の二乗総和が最小となるようにするロボットの制御装置が提案されている(特許文献5参照)。
【0007】
また、車両がスタート位置Pに停止したとき、物体検出手段で検出した周囲の物体の状況から最適目標位置と、最適目標位置を通る一定半径rの円弧よりなる第1の移動軌跡とを設定し、第1の移動軌跡上に所定位置Sを選択し、スタート位置Pから所定位置Sまでの第2の移動軌跡を設定し、所定位置Sは、第2の移動軌跡での車両の移動距離が最小になるように選択される車両の自動操舵装置が提案されている(特許文献6参照)。
【0008】
また、自車両と障害物との間の距離、自車両の障害物に対する相対速度、及び回避するための目標位置に基づいて定まる物理量を導入し、その物理量により回避動作時に最大値が最小となる車体合成力の向きと大きさを出力するマップを予め記憶しておき、そのマップより現時刻の車体合成力を求めて車両運動を制御する車両運動制御装置が提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−249971号公報
【特許文献2】特開2007−253746号公報
【特許文献3】特開2007−253745号公報
【特許文献4】特開2006−347236号公報
【特許文献5】特開平7−32277号公報
【特許文献6】特開2001−063597号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】日本機械学会、第18回交通・物流部門大会講演論文集、障害物回避のための車両の最適軌道制御、pp.145−148(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の技術では、目標の車体合成力が与えられた場合に、最適な各輪のタイヤ発生力を導出しているが、所望の速度方向を考慮して、移動体を回避しながら縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する軌道の導出方法は記載されていない。
【0012】
また、特許文献2の技術では、所望の位置に到達する車体合成力を導出しているが、所望の速度方向を考慮して、移動体を回避しながら縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する軌道の導出方法は記載されていない。
【0013】
また、特許文献3の技術では、所望の位置及び姿勢角に近づく軌道を導出しているものの、移動体の速度を考慮しつつリスクポテンシャル関数を設定して所望の位置付近に到達する車体合成力を導出しているため、所望の速度方向を考慮して、移動体を回避しながら縦移動用距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する軌道を導出しているとはいえない。
【0014】
また、特許文献4の技術では、自車両の障害物に対する相対速度、回避するための横移動距離、車重、及び車体合成力の最大値が設定された場合に、回避距離を最短にする回避軌道を導出しているが、道路に対する所望の速度方向を考慮して、移動体を回避しながら縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する軌道の導出方法は記載されていない。
【0015】
また、特許文献5の技術では、ロボットを所望の位置及び速度に到達させる上で加速度の2乗和が最小化される軌道を導出しているが、所望の速度方向を考慮して、移動体を回避しながら縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する軌道の導出方法は記載されていない。
【0016】
また、特許文献6の技術では、自車両を所望の位置に到達させるための移動距離を最小にする軌道を導出しているが、所望の速度方向を考慮して、移動体を回避しながら縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する軌道の導出方法は記載されていない。
【0017】
また、非特許文献1の技術では、相対的な意味における所望の位置及び速度方向に対して車体合成力の最大値を最小化する軌道を導出し、その軌道に基づいたマップを記憶しておくことで現時刻の車体合成力を導出しているが、道路に対する所望の速度方向に対して、移動体を回避しながら縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する軌道の導出方法は記載されていない。
【0018】
本発明は、簡単な構成のマップを用いて、道路に対する所望の速度方向を考慮して、移動する障害物を回避しながら縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる車両運動制御装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、第1の発明の車両運動制御装置は、自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、前記障害物を回避直後の自車両の速度方向、及び車体合成力の最大値を設定する設定手段と、・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び車体合成加速度の最大値F0/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータν1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記最大値F0/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値ν1’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、・前記3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータν1と異なる第2の導入パラメータν2の、前記仮定の下での値ν2’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに・前記3つのパラメータと、前記障害物の回避に要する時間teの、前記仮定の下での時間te’と、の関係を定めた第3の3次元マップからなる最短3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された車体合成力の最大値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最短3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0020】
また、第2の発明の車両運動制御装置は、自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、前記障害物を回避直後の自車両の速度方向、及び車体合成力の最大値を設定する設定手段と、・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び車体合成加速度の最大値F0/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記最大値F0/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた最短3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された車体合成力の最大値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最短3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0021】
また、第3の発明の車両運動制御装置は、自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、前記障害物を回避直後の自車両の速度方向を設定する設定手段と、・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び前記自車両と前記障害物との距離の車体前後方向の成分Xeを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータν1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記成分Xeのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値ν1’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、・前記3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータν1と異なる第2の導入パラメータν2の、前記仮定の下での値ν2’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに・前記3つのパラメータと、前記障害物の回避に要する時間teの、前記仮定の下での時間te’と、の関係を定めた第3の3次元マップからなる最適3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最適3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0022】
また、第4の発明の車両運動制御装置は、自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、前記障害物を回避直後の自車両の速度方向を設定する設定手段と、・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び前記自車両と前記障害物との距離の車体前後方向の成分Xeを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記成分Xeのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、並びに・前記3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成加速度の最大値F0/mの、前記仮定の下での最大値F0’/m’と、の関係を定めた第2の3次元マップからなる最適3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最適3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0023】
また、第1及び第2の発明において、前記導出手段は、前記障害物の左側を回避する回避軌道の前記車体前後方向の移動距離の最短距離と、前記障害物の右側を回避する回避軌道の前記車体前後方向の移動距離の最短距離とを比較し、前記最短距離が小さい側の回避軌道を選択するようにすることができる。
【0024】
また、第3及び第4の発明において、前記導出手段は、前記障害物の左側を回避する回避軌道の車体合成力の最大値と、前記障害物の右側を回避する回避軌道の車体合成力の最大値とを比較し、前記車体合成力の最大値が小さい側の回避軌道を選択するようにすることができる。
【0025】
また、前記検出手段は、前記自車両の速度、前記自車両に対する前記障害物の相対距離及び相対速度を検出するようにすることができる。
【0026】
また、前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、操舵角、制動力、及び駆動力の少なくとも一つを制御する制御手段を更に含んで構成することができる。
【0027】
また、前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、ドライバに車両運動状態を報知する報知手段を更に含んで構成することができる。
【0028】
また、第5の発明の車両運動制御プログラムは、コンピュータを、第1〜第4の発明の車両運動制御装置を構成する各手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出するための障害物の速度を考慮した簡単な構成の3次元マップを用いて車体合成力及び回避軌道を導出するため、障害物が移動する場合でも、障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する、または車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】車両運動制御の概略を示す図である。
【図2】xy座標の設定を説明するための図である。
【図3】第1の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最短3次元マップを表す線図である。
【図4】第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最短3次元マップを表す線図である。
【図7】第2の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図8】第3の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最適3次元マップを表す線図である。
【図9】第3の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最適3次元マップの他の例を表す線図である。
【図10】第3の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図11】第4の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最適3次元マップを表す線図である。
【図12】第4の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる最適3次元マップの他の例を表す線図である。
【図13】第4の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図14】左側回避と右側回避との対称性を説明するための図である。
【図15】第5の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図16】第5の実施の形態の車両運動制御ルーチンの他の例の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態では、車両が走行する道路上において移動する障害物を回避する場合を想定し、回避直後の位置を障害物の横(障害物の移動方向の延長線上)を通過する位置とし、その回避直後の位置における速度方向を車体前後方向とする場合について説明する。
【0032】
第1の実施の形態では、障害物の速度を検出して、設定された車体合成力の最大値内で車体合成力を発生させて障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出する場合について説明する。
【0033】
図1に示すように、設定したxy座標での時刻t(現時刻をt=0として、現時刻からt秒後)における車体合成加速度のx成分をux(t)、車体合成加速度のy成分をuy(t)、車体合成力の大きさをF(t)、車体合成力の方向をθ0(t)、及び自車両の重量をmとすると、車体合成加速度ux(t)及びuy(t)は、下記(1)式及び(2)式で示される。また、(1)式及び(2)式を積分して、下記(3)式及び(4)式に示すように、自車両の路面に対する速度のx成分vx(t)、及び速度のy成分vy(t)が得られる。また、(3)式及び(4)式を積分して、下記(5)式及び(6)式に示すように、自車両のt秒後のx軸方向の位置X(t)、及びy軸方向の位置Y(t)が得られる。このX(t)及びY(t)により回避軌道が得られる。
【0034】
【数1】
【0035】
なお、xy座標は、t=0における自車両の位置を原点とし、障害物の横を通過する位置における速度方向(車体前後方向)をx軸、x軸に直交する軸(車体横方向)をy軸として設定する(図2参照)。
【0036】
そして、現時刻(t=0)における自車両の路面に対する速度をvx(0)=vx0、vy(0)=vy0、自車両に対する障害物の相対的な位置を(Xe,Z0)、及び障害物の道路に対する速度をZvとした場合に、車体合成力の最大値F0=maxF(t)を設定した場面において、vx0、vy0及びZvをパラメータとする縦移動距離を最小化するための3次元マップ(以下、最短3次元マップという)を用いて、所望の速度方向に対して縦移動距離を最小化する車体合成加速度ux(t)及びuy(t)((1)式、及び(2)式)を導出する。
【0037】
ここで、図1に示すように、自車両及び障害物の速度及びx方向の相対距離が既知の場合において、最適軌道を求める3次元マップの導出例について説明する。
【0038】
まず、x1=X(t)、x2=vx(t)、x3=Y(t)、x4=vy(t)、u1=ux(t)、u2=uy(t)とおくと、(1)式及び(2)式の運動方程式は、下記(7)式及び(8)式のような状態方程式に変形できる。なお、Tはベクトル及び行列の転置記号である。
【0039】
【数2】
【0040】
また、設定された座標軸上において、検出された障害物の速度がZv、位置がZ0の場合で、障害物がy軸方向に等速直線運動すると仮定すると、時刻tにおける障害物のy軸方向の位置は、下記(9)式で表される。
【0041】
【数3】
【0042】
次に、設定された車体合成力の最大値F0の範囲内で、障害物を回避しながら縦移動距離を最小化する最適制御問題として考えると、現時刻をt=0とし、回避に要する時間をteとおいて、評価関数Iを下記(10)式で表した場合、下記(11)式で表される終端条件、及び下記(12)式で表される車体合成力の大きさに関する入力制約条件の下で、評価関数Iを最小化する制御入力を求めよという制御問題に帰着される。
【0043】
【数4】
【0044】
この最適制御問題を公知の技術(特開2007-283910号公報等)を参考に解いていく。まず、ラグランジュ乗数関数ベクトルψ(t)、λ(t)、ハミルトン関数Hを下記(14)式のようにおくと、オイラー方程式を用いて最適解xo(t),uo(t)は、下記(15)〜(17)式を満足する。
【0045】
【数5】
【0046】
また、終端条件に関しては、S(x,t)=x1(t)とおき、定数ベクトルν=(ν1,ν2)Tを導出することで、下記(18)式及び(19)式のような関係が成り立つ。
【0047】
【数6】
【0048】
ただし、(14)式〜(19)式内の右下添え字x,u,tは偏微分を意味する。
【0049】
ここで、(15)〜(17)式を変形すると、下記(20)〜(22)式のような関係が得られる。
【0050】
【数7】
【0051】
また、終端条件より、下記(23)式及び(24)式を用いて、下記(25)式及び(26)式の関係が得られる。
【0052】
【数8】
【0053】
(21)式及び(22)式より、下記(27)式が得られ、uo(t)は下記(28)式となる。
【0054】
【数9】
【0055】
また(20)式及び(25)式によりψ(t)を求めると下記(29)式となり、x2(t)の終端は(26)式より下記(30)式の関係を満たすので、下記(31)式の終端条件が新たに出てくる。
【0056】
【数10】
【0057】
このとき、制御問題は下記(32)式のように書き換えられる。
【0058】
【数11】
【0059】
(32)式を(7)式及び(8)式のu(t)に代入して時間積分し、初期条件((7)式の第2式)と終端条件((11)式及び(31)式を適用すると、te、ν1、ν2を導出する非線形方程式(下記(33)式〜(36)式))が求まる。なお、ν1及びν2は本発明の第1の導入パラメータ及び第2の導入パラメータに相当する。
【0060】
(32)式において必要となるte、ν1、ν2は、(33)式〜(35)式の非線形方程式にm、vx0、vy0、F0、Z0及びZvを代入して解くことにより得られる。また、最小の縦移動距離Xsは、(36)式の関係を満たす。
【0061】
【数12】
【0062】
上記非線形方程式は、移動する障害物の速度を考慮しているため、公知の技術(特開2007−283910号公報等)の非線形方程式とは(33)式の右辺、及び(35)式の左辺の最終項が異なっている。ただし、この場合も公知の演算ソフトウエアで十分計算可能である。この方程式の解を求めるために、低次元化したマップを導出する。
【0063】
まず、(33)〜(35)式に着眼して、任意の正数aを導入して下記(37)式の関係を満足する2組のパラメータP及びP’を考えると、P及びP’に対応する解{ν1、ν2、te}及び{ν1’、ν2’、te’}は、下記(38)式の関係を満たす。
【0064】
【数13】
【0065】
(37)式の最後の式より、aを下記(39)式のようにおくと、(37)式よりvx0’、vy0’及びZv’は下記(40)式のように変形できる。
【0066】
【数14】
【0067】
この関係より、F0’/m’及びZ0’に任意の正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvx0’、vy0’及びZv’が求まる。よって、F0’/m’及びZ0’をある値に設定した場合において、vx0’、vy0’及びZv’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このF0’/m’及びZ0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。
【0068】
ここでは、一例として、F0’/m’=Z0’=1とした場合のvx0’、vy0’及びZv’に関する最短3次元マップを作成する。図3に示すように、vx0’、vy0’及びZv’をパラメータとして(33)式〜(35)式に基づいて得られるν1’の値をマッピングした第1の3次元マップ、ν2’の値をマッピングした第2の3次元マップ、及びte’の値をマッピングした第3の3次元マップを作成する。また、例えば、Zv’について、Zv’=va’、Zv’=vb’、Zv’=vc’の3値(va’<vb’<vc’)を用い、va’〜vb’間、及びvb’〜vc’間は、各々線形近似などで内挿する。ただし、この図3では、vy0’軸方向において相対速度vy0’−Zv’を用いてマッピングしている。
【0069】
そして、これらのマップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、F0’/m’=Z0’=1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(40)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びZv’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を各3次元マップから得て、(38)式及び(39)式に従って{ν1’,ν2’,te’}を{ν1,ν2,te}に変換し、(32)式に適用して入力の時間関数を得る。また、(36)式に代入して最小の縦移動距離Xsを演算する。
【0070】
ただし、Z0<0の場合は、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して、最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得ればよい。
【0071】
この結果、現時刻の障害物の位置及び速度から、設定された車体合成力の最大値内で車体合成力を発生させて、移動する障害物を回避しながら所望の速度方向に対して縦移動距離を最小化する制御入力関数が得られ、また(1)式〜(6)式の積分計算により回避軌道が導出される。
【0072】
なお、上記の最短3次元マップではパラメータvx0’、vy0’及びZv’を(40)式のように定め、F0’/m’=Z0’=1とした場合について説明したが、このパラメータの取り方は、上記以外にも複数存在する。例えば、任意の正数aを(37)式の第1式より下記(41)式のようにおくと、(37)式よりvy0’、Zv’及びZ0’は下記(42)式のように変形できる。
【0073】
【数15】
【0074】
この関係より、F0’/m’及びvx0’にある正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvy0’、Zv’及びZ0’が求まる。よって、F0’/m’及びvx0’をある値に設定した場合において、vy0’、Zv’及びZ0’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このF0’/m’及びvx0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、F0’/m’=vx0’=1とした場合のvy0’、Zv’及びZ0’を変数として、(33)式〜(35)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを作成する。
【0075】
そして、この最短3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、F0’/m’=vx0’=1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(42)式に従ってパラメータvy0’、Zv’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最短3次元マップから得て、(38)式及び(41)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。
【0076】
なお、この最短3次元マップの領域は、vy0’、Zv’及びZ0’のいずれかにおいて0以上に限定してもよい。例えば、Z0≧0の最短3次元マップを作成した場合は、検出値がZ0<0であったとしても、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、さらに−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行えば{ν1,ν2,te}が得られる。
【0077】
また、別のパラメータを用いる場合として、(42)式の第3式を下記(43)式のように変形すると、(41)式のaは、下記(44)式のように変形される。
【0078】
【数16】
【0079】
この関係より、vx0’及びZ0’にある正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってF0’/m’、vy0’及びZv’が求まる。よって、vx0’及びZ0’をある値に設定した場合において、F0’/m’、vy0’及びZv’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このvx0’及びZ0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、vx0’=Z0’=1とした場合のF0’/m’、vy0’及びZv’を変数として、(33)式〜(35)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを作成する。
【0080】
そして、この最短3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、vx0’=Z0’=1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(42)式の第1式及び第2式に従ってパラメータvy0’及びZvを演算し、(43)式に従ってパラメータF0’/m’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最短3次元マップから得て、(38)式及び(44)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。ただし、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得ればよい。
【0081】
また、別のパラメータを用いる場合として、任意の正数aを(37)式の第2式より下記(45)式のようにおくと、(37)式よりvx0’、Zv’及びZ0’は下記(46)式のように変形できる。
【0082】
【数17】
【0083】
この関係より、F0’/m’及びvy0’にある正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによって、vx0’、Zv’及びZ0’が求まる。よって、F0’/m’及びvy0’をある値に設定した場合において、vx0’、Zv’及びZ0’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このF0’/m’及びvy0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、F0’/m’=vy0’=1とした場合のvx0’、Zv’及びZ0’を変数として、(33)式〜(35)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを作成する。
【0084】
そして、この最短3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、F0’/m’=vy0’=1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(46)式に従ってパラメータvx0’、Zv’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップから得て、(38)式及び(45)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。ただし、vy0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して、最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得ればよい。
【0085】
また、別のパラメータを用いる場合として、(46)式の第3式を下記(47)式のように変形すると、(45)式のaは、下記(48)式のように変形される。
【0086】
【数18】
【0087】
この関係より、vy0’及びZ0’にある値を設定することにより、現時刻のパラメータPによってF0’/m’、vx0’及びZv’が求まる。よって、vy0’及びZ0’をある値に設定した場合において、F0’/m’、vx0’及びZv’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このvy0’及びZ0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、vy0’=1、Z0’=±1とした場合のF0’/m’、vx0’及びZv’を変数として、(33)式〜(35)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを作成する。
【0088】
そして、この最短3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、vy0’=1、Z0’=±1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(46)式の第1式及び第2式に従ってパラメータvx0’及びZv’を演算し、(47)式に従ってパラメータF0’/m’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最短3次元マップから得て、(38)式及び(48)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。ただし、vy0≧0、Z0≧0の場合には、Z0’=1の最短3次元マップより{ν1’,ν2’,te’}を求め、vy0≧0、Z0<0の場合には、Z0’=−1の最短3次元マップより{ν1’,ν2’,te’}を求める。また、vy0<0、Z0≧0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=−1の最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求めて、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得る。また、vy0<0、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=1の最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求めて、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得る。
【0089】
また、別のパラメータを用いる場合として、任意の正数aを(37)式の第3式より下記(49)式のようにおくと、(37)式よりvx0’、vy0’及びZ0’は下記(50)式のように変形できる。
【0090】
【数19】
【0091】
この関係より、F0’/m’及びZv’にある正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによって、vx0’、vy0’及びZ0’が求まる。よって、F0’/m’及びZv’をある値に設定した場合において、vx0’、vy0’及びZ0’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このF0’/m’及びZv’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、F0’/m’=Zv’=1とした場合のvx0’、vy0’及びZ0’を変数として、(33)式〜(35)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを作成する。
【0092】
そして、この最短3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、F0’/m’=Zv’=1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(50)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最短3次元マップから得て、(38)式及び(49)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。ただし、Zv<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して、最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得ればよい。
【0093】
また、別のパラメータを用いる場合として、(50)式の第3式を下記(51)式のように変形すると、(49)式のaは、下記(52)式のように変形される。
【0094】
【数20】
【0095】
この関係より、Zv’及びZ0’にある値を設定することにより、現時刻のパラメータPによってF0’/m’、vx0’及びvy0’が求まる。よって、Zv’及びZ0’をある値に設定した場合において、F0’/m’、vx0’及びvy0’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このZv’及びZ0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、Zv’=1、Z0’=±1とした場合のF0’/m’、vx0’及びvy0’を変数として、(33)式〜(35)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最短3次元マップを作成する。
【0096】
そして、この最短3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、Zv’=1、Z0’=±1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(50)式の第1式及び第2式に従ってパラメータvx0’及びvy0’を演算し、(51)式に従ってパラメータF0’/m’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最短3次元マップから得て、(38)式及び(52)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。ただし、Zv≧0、Z0≧0の場合には、Z0’=1の最短3次元マップより{ν1’,ν2’,te’}を求め、Zv≧0、Z0<0の場合には、Z0’=−1の最短3次元マップより{ν1’,ν2’,te’}を求める。また、Zv<0、Z0≧0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=−1の最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求めて、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得る。また、Zv<0、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=1の最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求めて、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得る。
【0097】
また、最短3次元マップの軸の取り方をオーバーシュートする軌道とそうでない軌道との境界線を考慮して変更したマップを作成してもよい。例えば、(42)式のパラメータを下記(85)式のように変更して最短3次元マップを作成することができる。
【0098】
【数21】
【0099】
以下、上記の最短3次元マップを用いた第1の実施の形態について詳細に説明する。図4に示すように、第1の実施の形態の車両運動制御装置には、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段として車両に搭載されたセンサ群、外部環境状態を検出する外部環境検出手段として車両に搭載されたセンサ群、及びこれらのセンサ群からの検出データに基づいて、自車両が運動するように自車両に搭載された車載機器を制御することによって目標位置へ到達するように車両運動を制御する制御装置20、ドライバに車両運動制御状態を報知する表示装置30が設けられている。
【0100】
車両運動制御装置の自車両の走行状態を検出するセンサ群としては、車速を検出する車速センサ10、操舵角を検出する操舵角センサ12、及びスロットル弁の開度を検出するスロットル開度センサ14が設けられている。また、図示しないGPS装置からの情報を加えるようにしてもよい。
【0101】
また、外部環境状態を検出するセンサ群としては、自車両の前方を撮影する前方カメラ16、及び自車両の前方の障害物を検出するレーザレーダ18が設けられている。なお、レーザレーダ18に代えて、又はレーザレーダ18と共にミリ波レーダを設けるようにしてもよい。また、図示しないGPS装置からの情報を加えるようにしてもよい。
【0102】
前方カメラ16は、車両の前方を撮影するように車両のフロントウインドウ上部等に取り付けられている。前方カメラ16は、小型のCCDカメラ又はCMOSカメラで構成され、自車両の前方の道路状況を含む領域を撮影し、撮影により得られた画像データを出力する。出力された画像データは、マイクロコンピュータ等で構成された制御装置20に入力される。なお、カメラとして、前方カメラ16に加えて、前方赤外線カメラを設けるのが好ましい。赤外線カメラを用いることにより、歩行者を障害物として確実に検出することができる。なお、上記の赤外線カメラに代えて近赤外線カメラを用いることができ、この場合においても同様に歩行者を確実に検出することができる。
【0103】
レーザレーダ18は、赤外光パルスを照射する半導体レーザからなる発光素子、赤外光パルスを水平方向に走査する走査装置、及び前方の障害物(歩行者、前方車両等)から反射された赤外光パルスを受光する受光素子を含んで構成され、車両の前方グリル又はバンパに取り付けられている。このレーザレーダ18では、発光素子から発光された時点を基準として受光素子で受光されるまでの反射赤外光パルスの到達時間に基づいて、自車両から前方の障害物までの距離を検出することができる。レーザレーダ18で検出された障害物までの距離を示すデータは制御装置20に入力される。制御装置20は、RAM、ROM、及びCPUを含むマイクロコンピュータ等で構成され、ROMには以下で説明する車両運動制御ルーチンのプログラムが記憶されている。
【0104】
また、制御装置20は、自車両の操舵角、制動力、及び駆動力の少なくとも1つを制御することによって、目標位置へ到達するように車両運動を制御するための車両搭載機器に接続されている。この車両搭載機器としては、車輪の操舵角を制御するための電動パワーステアリング等の操舵角制御装置22、ブレーキ油圧を制御することによって制動力を制御する制動力制御装置24、及び駆動力を制御する駆動力制御装置26が設けられている。制動力制御装置24には、制動力を検出する検出センサ24Aが取り付けられている。また、制御装置20には、演算された制御入力の方向θ等を表示することによって車両運動制御情報をドライバに報知する表示装置30が接続されている。なお、車両運動制御を行なっていることを、ドライバだけでなく車両外部の目標位置方向に向かって報知するようにしてもよい。また、最短回避距離が自車両と障害物との距離よりも短い場合には、ドライバに回避の必要性を予め報知するようにしてもよい。
【0105】
操舵角制御装置22としては、ドライバのステアリングホイール操作に重畳して前輪及び後輪の少なくとも一方の車輪の操舵角を制御する制御手段、ドライバ操作とは機械的に分離され、ステアリングホイールの操作とは独立して前輪及び後輪の少なくとも一方の車輪の操舵角を制御する制御手段(いわゆるステア・バイ・ワイヤ)等を用いることができる。
【0106】
制動力制御装置24としては、ドライバ操作とは独立して各車輪の制動力を個別に制御する、いわゆるESC(Electronic Stability Control)に用いられる制御装置、ドライバ操作とは機械的に分離され、各車輪の制動力を信号線を介して任意に制御する制御装置(いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ)等を用いることができる。
【0107】
駆動力制御装置26としては、スロットル開度、点火進角の遅角、又は燃料噴射量を制御することによって駆動力を制御する制御装置、変速機の変速位置を制御することによって駆動力を制御する制御装置、トルクトランスファを制御することによって前後方向及び左右方向の少なくとも一方の駆動力を制御する制御装置等を用いることができる。
【0108】
また、制御装置20には、制御入力を求めるための最短3次元マップを記憶したマップ記憶装置28が接続されている。
【0109】
また、制御装置20には、ドライバに警報を発する図示しない警報装置が接続されている。警報装置としては、音や音声によって警報を発する装置、光や視覚的な表示によって警報を発する装置、振動によって警報を発する装置、又は操舵反力のような物理量をドライバに与えてドライバの操作を誘導する物理量付与装置を用いることができる。また、表示装置30を警報装置として用いるようにしてもよい。
【0110】
以下、図5を参照して第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する車体合成力を導出するためのマップとして図3の最短3次元マップを用いる場合について説明する。
【0111】
ステップ100で、車速センサ10等で検出された自車両の走行状態、及びレーザレーダ18等で検出された外部環境状態に関する検出データを取り込む。次に、ステップ102で、取り込んだ検出データに基づいて、車両が走行している道路上の障害物の位置及び大きさを含む環境マップを作成する。
【0112】
次に、ステップ104で、障害物の横を通過する位置における速度方向を環境マップに基づいて設定し、さらに自車両の現時刻の位置を原点に、また設定した速度方向を車体前後方向(x軸)に取り、x軸に直交する方向をy軸とするxy座標を設定する。
【0113】
次に、ステップ106で、上記ステップ100で走行状態として取り込まれた自車両及び障害物の状態量を設定された座標に対応させて変換し、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、障害物のy軸方向の位置Z0、及び障害物の速度のy成分Zvを演算する。なお、ここでは、障害物の速度のx成分は0とする。
【0114】
次に、ステップ108で、外部環境及び自車両の構造と状態に基づいて、車体合成力の最大値F0を設定する。
【0115】
次に、ステップ110で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、Zv、Z0、及び上記ステップ108で設定した車体合成力の最大値F0を用いて、(40)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びZv’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最短3次元マップから得て、(38)式及び(39)式に従って{ν1’,ν2’,te’}を{ν1,ν2,te}に変換する。そして、これらのパラメータを(32)式に適用することにより車体合成力を得る。また、(36)式に代入することで最小の縦移動距離Xsを得る。また、(1)式〜(6)式に従って、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離が最小となる回避軌道を導出する。
【0116】
次に、ステップ112で、上記ステップ110で導出された車体合成力に従って、回避軌道に沿った走行を実現するために必要な各車輪のタイヤ発生力を演算し、各車輪のタイヤ発生力が得られるように操舵角制御装置22、制動力制御装置24、及び駆動力制御装置26の少なくとも1つを制御すると共に、車両運動制御情報を表示装置30に表示する。また、障害物を回避するように制御する際には無条件で警報装置から警報を発したり、障害物を回避するための車両運動制御を行っていることを表示装置30に表示したりすることにより警報を行ってもよい。各車輪のタイヤ発生力が得られるように制御することにより、目的とする車体合成力が得られるように制御することができる。
【0117】
以上説明したように、第1の実施の形態の車両運動制御装置によれば、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出するための障害物の速度を考慮した簡単な構成の3次元マップを用いて車体合成力及び回避軌道を導出するため、障害物が移動する場合でも、障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる。
【0118】
次に、第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、車体合成力及び回避軌道を求めるために{ν1’,ν2’,te’}を導出する最短3次元マップを用いる場合について説明したが、現時刻の入力(車体合成力の向き)のみを求めたい場合には、1つのパラメータを出力する最短3次元マップで導出が可能となる。第2の実施の形態ではこの場合について説明する。なお、第2の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0119】
ここで、第2の実施の形態で用いられる最短3次元マップについて説明する。
【0120】
まず、第1の実施の形態と同様に、(40)式まで展開する。そして、一例として、F0’/m’=Z0’=1とした場合のvx0’、vy0’及びZv’に関する最短3次元マップを作成する。図6に示すように、vx0’、vy0’及びZv’をパラメータとして、(32)式〜(35)式に基づいて得られる車体合成加速度の方向θ’の値をマッピングした最短3次元マップを作成する。ただし、この図6では、vy0’軸方向において相対速度vy0’−Zv’を用いてマッピングしている。
【0121】
そして、この最短3次元マップを用いて{θ’}を求めるには、F0’/m’=Z0’=1、既知のm、vx0、vy0、Z0、Zv及びF0から(40)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びZv’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を最短3次元マップから得て、下記(53)式により、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きが得られる。
【0122】
【数22】
【0123】
ただし、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最短3次元マップより{−θ’}を求め、さらに−θ’→θ’の処理を行って{θ’}を得ればよい。
【0124】
また、図6のように{Xs’}も出力する最短3次元マップを導入して、下記(54)式及び公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0125】
【数23】
【0126】
なお、上記の最短3次元マップでは、パラメータを(40)式のように定めた場合について説明したが、第1の実施の形態と同様に、(42)式に示すパラメータを用いた最短3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’}を出力する最短3次元マップを作成することもできる。一例として、F0’/m’=vx0’=1とした場合のvy0’、Zv’及びZ0’に関する最短3次元マップを作成することができる。そして、(53)式により、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きを導出する。
【0127】
なお、この最短3次元マップの領域は、vy0’、Zv’及びZ0’のいずれかにおいて0以上に限定してもよい。例えば、Z0≧0の最短3次元マップを作成した場合は、検出値がZ0<0であったとしても、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最短3次元マップより{−θ’}を求め、さらに−θ’→θ’処理を行えば{θ’}が得られる。
【0128】
また、ここでも{Xs’}も出力する最短3次元マップを導入して、下記(55)式及び公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0129】
また、(42)式の第1式、第2式及び(43)式に示すパラメータを用いた最短3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’}を出力する最短3次元マップを作成することもできる。一例として、vx0’=Z0’=1とした場合のF0’/m’、vy0’及びZv’に関する最短3次元マップを作成することができる。ただし、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最短3次元マップより{−θ’}を求め、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’}を得ればよい。また、ここでも{Xs’}も出力する最短3次元マップを導入して、(54)式及び公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0130】
また、(46)式に示すパラメータを用いた最短3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’}を出力する最短3次元マップを作成することもできる。一例として、F0’/m’=vy0’=1とした場合のvx0’、Zv’及びZ0’に関する最短3次元マップを作成することができる。ただし、vy0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して、最短3次元マップより{−θ’}を求め、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’}を得ればよい。 また、ここでも{Xs’}も出力する最短3次元マップを導入して、下記(56)式及び公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0131】
また、(46)式の第1式、第2式及び(47)式に示すパラメータを用いた最短3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’}を出力する最短3次元マップを作成することもできる。一例として、一例として、vy0’=1、Z0’=±1とした場合のF0’/m’、vx0’及びZv’に関する最短3次元マップを作成することができる。ただし、vy0≧0、Z0≧0の場合には、Z0’=1の最短3次元マップより{θ’}を求め、vy0≧0、Z0<0の場合には、Z0’=−1の最短3次元マップより{θ’}を求める。また、vy0<0、Z0≧0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=−1の最短3次元マップより{−θ’}を求めて、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’}を得る。また、vy0<0、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=1の最短3次元マップより{−θ’}を求めて、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’}を得る。また、ここでも{Xs’}も出力する最短3次元マップを導入して、(54)式及び公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0132】
また、(50)式に示すパラメータを用いた最短3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’}を出力する最短3次元マップを作成することもできる。一例として、F0’/m’=Zv’=1とした場合のvx0’、vy0’及びZ0’に関する最短3次元マップを作成することができる。ただし、Zv<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して、最短3次元マップより{−θ’}を求め、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’}を得ればよい。また、ここでも{Xs’}も出力する最短3次元マップを導入して、下記(57)式及び公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0133】
また、(50)式の第1式、第2式及び(51)式に示すパラメータを用いた最短3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’}を出力する最短3次元マップを作成することもできる。一例として、Zv’=1、Z0’=±1とした場合のF0’/m’、vx0’及びvy0’に関する最短3次元マップを作成することができる。ただし、Zv≧0、Z0≧0の場合には、Z0’=1の最短3次元マップより{θ’}を求め、Zv≧0、Z0<0の場合には、Z0’=−1の最短3次元マップより{θ’}を求める。また、Zv<0、Z0≧0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=−1の最短3次元マップより{−θ’}を求めて、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’}を得る。また、Zv<0、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=1の最短3次元マップより{−θ’}を求めて、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’}を得る。また、ここでも{Xs’}も出力する最短3次元マップを導入して、(54)式及び公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0134】
【数24】
【0135】
以下、図7を参照して第2の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の向きを導出するためのマップとして図6の最短3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0136】
ステップ100〜108を経て、次に、ステップ200で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、Zv、Z0、及び上記ステップ108で設定した車体合成力の最大値F0を用いて、(40)式に従ってパラメータvx0’、vy0’及びZv’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を最短3次元マップから得て、(53)式に適用することにより車体合成力の向き及び大きさを導出する。次に、ステップ112で、上記ステップ200で導出した車体合成力に従って車両運動を制御する。
【0137】
以上説明したように、第2の実施の形態の車両運動制御装置によれば、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の向きを導出するための障害物の速度を考慮した簡単な構成の最短3次元マップを用いて車体合成力の向きを導出するため、障害物が移動する場合でも、障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の向き及び大きさを導出することができる。また、第1の実施の形態の場合の最短3次元マップに比べ、用いるマップが少ないため、マップを記憶するための容量を削減できる。
【0138】
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出する場合について説明する。なお、第3の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0139】
ここで、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出するためのマップ(以下、最適3次元マップという)について説明する。
【0140】
車体合成力の最大値を最小にする最適制御は、第1の実施の形態で述べた場合と同様に(7)式〜(12)式で定式化できる。なぜなら、最小の縦移動距離Xsが自車両と障害物との相対距離のx成分Xeと等しくなる車体合成力の最大値F0を求められれば、そのときの(32)式で示される制御入力は、車体合成力の最大値最小化問題の最適解になるためである。よって、自車両と障害物との相対距離のx成分Xeに対して、x1(te)=Xeの関係を導入することにより、Xs→Xeに変換された非線形方程式(33)式〜(36)式にm、vx0、vy0、Xe、Z0、Zvを代入して、F0、te、ν1、ν2が求まる。
【0141】
まず、(33)式を下記(58)式のように変形し、Xs→Xeに変換された(34)式〜(36)式に代入する((59)式〜(61)式)。
【0142】
【数25】
【0143】
ここで、任意の正数aを導入して下記(62)式の関係を満足する2組のパラメータP及びP’を考えると、P及びP’に対応する解{ν1、ν2、te}及び{ν1’、ν2’、te’}は、下記(63)式の関係を満たす。
【0144】
【数26】
【0145】
(62)式の第2式より、aを下記(64)式のようにおくと、(62)式よりvy0’、Zv’及びZ0’は下記(65)式のように変形できる。
【0146】
【数27】
【0147】
この関係より、vx0’及びXe’に任意の正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvy0’、Zv’及びZ0’が求まる。よって、vx0’及びXe’をある値に設定した場合において、vy0’、Zv’及びZ0’をパラメータとした最適3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このvx0’及びXe’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。
【0148】
ここでは、一例として、vx0’=Xe’=1とした場合のvy0’、Zv’及びZ0’に関する最適3次元マップを作成する。図8に示すように、vy0’、Zv’及びZ0’をパラメータとして、(59)式〜(61)式に基づいて得られるν1’の値をマッピングした第1の3次元マップ、ν2’の値をマッピングした第2の3次元マップ、及びte’の値をマッピングした第3の3次元マップを作成する。ただし、この図8では、vy0’軸方向において相対速度vy0’−Zv’を用いてマッピングしている。
【0149】
そして、これらのマップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、vx0’=Xe’=1、既知のvx0、vy0、Z0、Zv及びXeから(65)式に従ってパラメータvy0’、Zv’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を各3次元マップから得て、(63)式及び(64)式に従って{ν1’,ν2’,te’}を{ν1,ν2,te}に変換する。また、(58)式に代入してF0を演算する。そしてこれらのパラメータを(32)式に適用して入力の時間関数を得る。
【0150】
なお、この最適3次元マップの領域は、vy0’、Zv’及びZ0’のいずれかにおいて0以上に限定してもよい。例えば、Z0≧0の最適3次元マップを作成した場合は、検出値がZ0<0であったとしても、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最適3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、さらに−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行えば{ν1,ν2,te}が得られる。
【0151】
この結果、現在の位置から障害物を回避しながら所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する制御入力関数が得られ、また(1)式〜(6)式の積分計算により回避軌道が導出される。
【0152】
なお、上記の最適3次元マップではパラメータvy0’、Zv’及びZ0’を(65)式のように定め、vx0’=Xe’=1とした場合について説明したが、このパラメータの取り方は、上記以外にも複数存在する。例えば、任意の正数aを(62)式の第4式より下記(66)式のようにおくと、(62)式よりvy0’、Zv’及びXe’は下記(67)式のように変形できる。
【0153】
【数28】
【0154】
この関係より、vx0’及びZ0’にある正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvy0’、Zv’及びXe’が求まる。よって、vx0’及びZ0’をある値に設定した場合において、vy0’、Zv’及びXe’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最適3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このvx0’及びZ0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、vx0’=Z0’=1とした場合のvy0’、Zv’及びXe’を変数として、(59)式〜(61)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最適3次元マップを作成する。
【0155】
そして、この最適3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、vx0’=Z0’=1、既知のvx0、vy0、Z0、Zv及びXeから(67)式に従ってパラメータvy0’、Zv’及びXe’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最適3次元マップから得て、(63)式及び(66)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。ただし、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最適3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得ればよい。
【0156】
また、別のパラメータを用いる場合として、(58)式〜(65)式の展開方法を変更することもできる。まず、(34)式を下記(68)式のように変形し、Xs→Xeに変換された(33)式、(35)式及び(36)式に代入する((69)式〜(71)式)。
【0157】
【数29】
【0158】
ここで、任意の正数a1を導入して下記(72)式の関係を満足する2組のパラメータP及びP’を考えると、P及びP’に対応する解{ν1、ν2、te}及び{ν1’、ν2’、te’}は、下記(73)式の関係を満たす。
【0159】
【数30】
【0160】
(72)式の第2式より、a1を下記(74)式のようにおくと、(72)式よりvx0’、Zv’及びZ0’は下記(75)式のように変形できる。
【0161】
【数31】
【0162】
この関係より、vy0’及びXe’に任意の正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvx0’、Zv’及びZ0’が求まる。よって、vy0’及びXe’をある値に設定した場合において、vx0’、Zv’及びZ0’をパラメータとした最適3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このvy0’及びXe’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。
【0163】
ここでは、一例として、vy0’=Xe’=1とした場合のvx0’、Zv’及びZ0’に関する最適3次元マップを作成する。図9に示すように、vx0’、Zv’及びZ0’をパラメータとして、(69)式〜(71)式に基づいて得られるν1’の値をマッピングした第1の3次元マップ、ν2’の値をマッピングした第2の3次元マップ、及びte’の値をマッピングした第3の3次元マップを作成する。なお、図9では、Zv’=vy0’/2が特異点となるため、この場合を含むように最適3次元マップを構成している。
【0164】
そして、これらのマップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、vy0’=Xe’=1、既知のvx0、vy0、Z0、Zv及びXeから(75)式に従ってパラメータvx0’、Zv’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を各3次元マップから得て、(73)式及び(74)式に従って{ν1’,ν2’,te’}を{ν1,ν2,te}に変換する。また、(68)式に代入してF0を演算し、これらのパラメータを(32)式に適用して入力の時間関数を得る。ただし、vy0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して最適3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求め、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得ればよい。
【0165】
また、別のパラメータを用いる場合として、任意の正数a1を(72)式の第4式より下記(76)式のようにおくと、(72)式よりvx0’、Zv’及びXe’は下記(77)式のように変形できる。
【0166】
【数32】
【0167】
この関係より、vy0’及びZ0’にある正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvx0’、Zv’及びXe’が求まる。よって、vy0’及びZ0’をある値に設定した場合において、vx0’、Zv’及びXe’をパラメータとした{ν1’,ν2’,te’}の最適3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このvy0’及びZ0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。一例として、vy0’=1、Z0’=±1とした場合のvx0’、Zv’及びXe’を変数として、(69)式〜(71)式の非線形方程式を解き、その解である{ν1’,ν2’,te’}の最適3次元マップを作成する。
【0168】
そして、この最適3次元マップを用いて{ν1,ν2,te}を求めるには、vy0’=1、Z0’=±1、既知のvx0、vy0、Z0、Zv及びXeから(77)式に従ってパラメータvx0’、Zv’及びXe’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最適3次元マップから得て、(73)式及び(76)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。ただし、vy0≧0、Z0≧0の場合には、Z0’=1の最適3次元マップより{ν1’,ν2’,te’}を求め、vy0≧0、Z0<0の場合には、Z0’=−1の最適3次元マップより{ν1’,ν2’,te’}を求める。また、vy0<0、Z0≧0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=−1の最適3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求めて、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得る。また、vy0<0、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=1の最適3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を求めて、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行って{ν1,ν2,te}を得る。
【0169】
また、最適3次元マップの軸の取り方をオーバーシュートする軌道とそうでない軌道との境界線を考慮して変更したマップを作成してもよい。例えば、(65)式のパラメータを下記(86)式〜(88)式のように変更して最適3次元マップを作成することができる。
【0170】
【数33】
【0171】
以下、図10を参照して第3の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を導出するためのマップとして図8の最適3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0172】
ステップ100〜106を経て、次に、ステップ300で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量vx0、vy0、Zv、Z0及びXeを用いて、(65)式に従ってパラメータvy0’、Zv’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{ν1’,ν2’,te’}を最適3次元マップから得て、(63)式及び(64)式に従って{ν1’,ν2’,te’}を{ν1,ν2,te}に変換し、(58)式に従ってF0を演算する。そして、これらのパラメータを(32)式に適用することにより車体合成力を得る。また、(1)式〜(6)式に従って、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する回避軌道を導出する。
【0173】
次に、ステップ302で、上記ステップ300で演算したF0が、タイヤ発生力の限界値以下か否かを判定する。車体合成力の最大値がタイヤ発生力の限界値以下の場合には、ステップ112へ移行し、タイヤ発生力の限界値を超えている場合には、ステップ304へ移行する。なお、タイヤ発生力の限界値は、路面とタイヤとの間の摩擦係数に基づいて定まる真の限界値だけでなく、真の限界値に対してマージンを設けて設定した限界値も含む意味である。
【0174】
ステップ112では、第1の実施の形態と同様に、上記ステップ300で導出された車体合成力に従って、回避軌道に沿った走行を実現するための回避車両運動制御を実行する。一方、ステップ304では、急制動制御により障害物の手前で車両が停止するように制動力制御装置24を制御するか、推定される衝突被害が最小化されるように操舵角制御装置22及び制動力制御装置24を制御する。例えば、WO2006−070865記載の技術のような公知の技術を用いればよい。
【0175】
以上説明したように、第3の実施の形態の車両運動制御装置によれば、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出するための障害物の速度を考慮した簡単な構成の3次元マップを用いて車体合成力及び回避軌道を導出するため、障害物が移動する場合でも、障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる。
【0176】
次に、第4の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、車体合成力及び回避軌道を求めるために{ν1’,ν2’,te’}を導出する最適3次元マップを用いる場合について説明したが、現時刻の最適入力(車体合成力の大きさ及び向き)のみを求めたい場合には、2つのパラメータを出力する最適3次元マップで導出が可能となる。第4の実施の形態ではこの場合について説明する。なお、第4の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0177】
ここで、第4の実施の形態で用いられる最適3次元マップについて説明する。
【0178】
まず、第3の実施の形態と同様に、(65)式まで展開する。そして、一例として、vx0’=Xe’=1とした場合のvy0’、Zv’及びZ0’に関する最適3次元マップを作成する。図11に示すように、vy0’、Zv’及びZ0’をパラメータとして、(32)式及び(58)式〜(61)式に基づいて得られる車体合成加速度の方向θ’の値をマッピングした第1の3次元マップ、及びF0’/m’の値をマッピングした第2の3次元マップを作成する。ただし、この図11では、vy0’軸方向において相対速度vy0’−Zv’を用いてマッピングしている。
【0179】
そして、この最適3次元マップを用いて{θ’,F0’/m’}を求めるには、vx0’=Xe’=1、既知のvx0、vy0、Z0、Zv及びXeから(65)式に従ってパラメータvy0’、Zv’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’,F0’/m’}を最適3次元マップから得て、下記(78)式によりF0を求めて、(53)式により、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きが得られる。
【0180】
【数34】
【0181】
なお、上記の最適3次元マップでは、パラメータを(65)式のように定めた場合について説明したが、第3の実施の形態と同様に、(67)式に示すパラメータを用いた最適3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’,F0’/m’}を出力する最適3次元マップを作成することもできる。一例として、vx0’=Z0’=1とした場合のvy0’、Zv’及びXe’に関する最適3次元マップを作成することができる。この場合、下記(79)式によりF0を求める。ただし、Zv<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して、最適3次元マップより{−θ’,F0’/m’}を求め、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’,F0’/m’}を得ればよい。
【0182】
また、(75)式に示すパラメータを用いた最適3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’,F0’/m’}を出力する最適3次元マップを作成することもできる。一例として、vy0’=Xe’=1とした場合のvx0’、Zv’及びZ0’に関する最適3次元マップを作成することができる(図12)。この場合、下記(80)式によりF0を求める。ただし、vy0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換して、最適3次元マップより{−θ’,F0’/m’}を求め、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’,F0’/m’}を得ればよい。
【0183】
また、(77)式に示すパラメータを用いた最適3次元マップ及び(32)式のθ(t)の式を用いて、現時刻の{θ’,F0’/m’}を出力する最適3次元マップを作成することもできる。一例として、vy0’=1、Z0’=±1とした場合のvx0’、Zv’及びXe’に関する最適3次元マップを作成することができる。この場合、下記(81)式によりF0を求める。ただし、vy0≧0、Z0≧0の場合には、Z0’=1の最適3次元マップより{θ’,F0’/m’}を求め、vy0≧0、Z0<0の場合には、Z0’=−1の最適3次元マップより{θ’,F0’/m’}を求める。また、vy0<0、Z0≧0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=−1の最適3次元マップより{−θ’,F0’/m’}を求めて、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’,F0’/m’}を得る。また、vy0<0、Z0<0の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Z0→−Z0に変換してZ0’=1の最適3次元マップより{−θ’,F0’/m’}を求めて、−θ’→ θ’の処理を行って{θ’,F0’/m’}を得る。
【0184】
【数35】
【0185】
以下、図13を参照して第4の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力の向きを導出するためのマップとして図11の最適3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1及び第3の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0186】
ステップ100〜106を経て、次に、ステップ400で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量vx0、vy0、Zv、Z0、及びXeを用いて、(65)式に従ってパラメータvy0’、Zv’及びZ0’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’,F0’/m’}を最適3次元マップから得て、(78)式によりF0を演算し、(53)式に適用することにより車体合成力の向き及び大きさを導出する。次に、ステップ302、及びステップ112または304で、第3の実施の形態と同様に車両運動を制御する。
【0187】
以上説明したように、第4の実施の形態の車両運動制御装置によれば、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力の向きを導出するための障害物の速度を考慮した簡単な構成の最適3次元マップを用いて車体合成力の向きを導出するため、障害物が移動する場合でも、障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力の向き及び大きさを導出することができる。また、第3の実施の形態の場合の最適3次元マップに比べ、用いるマップが少ないため、マップを記憶するための容量を削減できる。
【0188】
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態では、左右の回避軌道を求めて比較する場合について説明する。なお、第5の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0189】
第1〜第4の実施の形態では、自車両の前後方向に対して障害物の左側に回避する回避軌道を導出する場合について説明したが、障害物の右側に回避する回避軌道を導出する場合にも適用することができる。なぜなら、図14に示すように、障害物の右側を回避する軌道は、x軸に関して線対称な場面に対して、障害物の左側に回避する軌道と対称になるためである。
【0190】
図15を参照して第5の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、移動する障害物を回避しながら道路に対する所望の速度方向に移動する際に、縦移動距離を最小化する回避軌道を導出するためのマップとして図3の最短3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0191】
ステップ100〜108を経て、ステップ500で、障害物の現時刻のy軸方向の位置Z0に対応して、Zv=0の時に自車両が障害物の横を通過するときの位置を左側回避ではZl、右側回避ではZrとおく。そして、自車両及び障害物の大きさに基づいた横位置のマージンαZを設定して、下記(82)式のようにZl及びZrを設定する。
【0192】
【数36】
【0193】
次に、ステップ502で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、Z0、Zv、及び上記ステップ108で設定した車体合成力の最大値F0を用いて、最短3次元マップから{ν1’,ν2’,te’}を得る。このステップ内では、Z0について、左側回避ではZ0をZlに、右側回避ではZ0をZrに代えて用いる。そして、(38)式及び(39)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。そして、これらのパラメータを(32)式に適用することにより左側回避及び右側回避の各々の車体合成力を得る。また、(36)式に代入することで左側回避及び右側回避の各々の最小の縦移動距離Xsを得る。なお、左側回避の場合には、Zv及びZlをそのまま第1の実施形態と同様に適用することができるが、右側回避の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Zr→−Zrに変換(x軸に線対称な場面)して、第1の実施形態と同様に適用して、最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を得る。そして、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行えば、障害物の右側を回避する{ν1’,ν2’,te’}が得られる。
【0194】
次に、ステップ504で、左側回避の最小の縦移動距離Xsと右側回避の最小の縦移動距離Xsとを比較し、左側回避の最小の縦移動距離Xsの方が小さい場合には、ステップ506へ移行し、左側回避の軌道を選択し、右側回避の最小の縦移動距離Xsの方が小さい場合には、ステップ508へ移行し、右側回避の軌道を選択する。
【0195】
次に、ステップ510で、選択した回避動作が必要か否かを判定し、その回避動作が必要な場合には、ステップ112へ移行し、回避車両運動制御を実行し、回避動作が必要でない場合、すなわち回避動作を行わなくても障害物と衝突しない場合には、そのまま処理を終了する。なお、公知の技術(特開2007-283910号公報)などを用いて、直進の加減速または横移動のみの回避を選択してもよい。
【0196】
なお、第5の実施の形態では、最短3次元マップを用いた最短回避制御について、左側回避軌道と右側回避軌道とを比較する場合について説明したが、例えば図8に示す最適3次元マップを用いて最適回避制御を行う場合にも適用できる。図16を参照して、第5の実施の形態の最適回避制御の場合について説明する。なお、第1〜第4の実施の形態、及び第5の実施の形態の最短回避制御の場合と同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0197】
ステップ100〜106、及びステップ500を経て、次に、ステップ550で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量vx0、vy0、Z0、Zv、及びXeを用いて、最適3次元マップから{ν1’,ν2’,te’}を得る。このステップ内では、Z0について、左側回避ではZ0をZlに、右側回避ではZ0をZrに代えて用いる。そして、(63)式及び(64)式に従って{ν1,ν2,te}に変換する。そして、これらのパラメータを(32)式に適用することにより左側回避及び右側回避の各々の車体合成力を得る。また、(58)式に代入することで左側回避及び右側回避の各々の車体合成力の最大値F0を得る。なお、左側回避の場合には、Zv及びZlをそのまま第1の実施形態と同様に適用することができるが、右側回避の場合には、vy0→−vy0、Zv→−Zv、Zr→−Zrに変換(x軸に線対称な場面)して、第1の実施形態と同様に適用して、最短3次元マップより{−ν1’,−ν2’,te’}を得る。そして、−ν1’→ν1’、−ν2’→ν2’の処理を行えば、障害物の右側を回避する{ν1’,ν2’,te’}が得られる。
【0198】
次に、ステップ552で、上記ステップ550で得られた左側回避の場合の車体合成力の最大値F0と右側回避の場合の車体合成力の最大値F0とを比較し、左側回避の車体合成力の最大値F0の方が小さい場合には、ステップ506へ移行し、左側回避の軌道を選択し、右側回避の車体合成力の最大値F0の方が小さい場合には、ステップ508へ移行し、右側回避の軌道を選択する。
【0199】
以下、ステップ302、及びステップ112またはステップ304で、回避車両運動制御等を実行する。
【0200】
以上説明したように、第5の実施の形態では、同一の最短3次元マップまたは最適3次元マップを用いて、左側回避の軌道と右側回避の軌道とを導出することができ、最短3次元マップを用いた場合は回避距離、最適3次元マップを用いた場合は車体合成力の最大値が小さい方の回避軌道を選択するため、より最適な回避制御を実行することができる。
【0201】
なお、第5の実施の形態では、第1または第3の実施の形態に左側回避または右側回避を選択する処理を組み合わせた場合について説明したが、第2または第4の実施の形態に組み合わせるようにしてもよい。
【0202】
また、第1〜第5の実施の形態では、道路に対する自車両及び障害物の速度を用いる場合について説明したが、道路に対する自車両の速度vx0、vy0及び自車両に対する障害物の相対速度Zvx’、Zvy’を検出し、それらのパラメータを用いて制御問題を定式化して解いてもよい。なぜなら、導出される制御入力とその非線形方程式が、最終的に(32)式〜(36)式に帰着されるためである。
【符号の説明】
【0203】
10 車速センサ
12 操舵角センサ
14 スロットル開度センサ
16 前方カメラ
18 レーザレーダ
20 制御装置
22 操舵角制御装置
24 制動力制御装置
26 駆動力制御装置
28 マップ記憶装置
30 表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、
前記障害物を回避直後の自車両の速度方向、及び車体合成力の最大値を設定する設定手段と、
・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び車体合成加速度の最大値F0/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータν1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記最大値F0/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値ν1’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、
・前記3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータν1と異なる第2の導入パラメータν2の、前記仮定の下での値ν2’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに
・前記3つのパラメータと、前記障害物の回避に要する時間teの、前記仮定の下での時間te’と、の関係を定めた第3の3次元マップからなる最短3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された車体合成力の最大値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最短3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項2】
自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、
前記障害物を回避直後の自車両の速度方向、及び車体合成力の最大値を設定する設定手段と、
・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び車体合成加速度の最大値F0/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記最大値F0/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた最短3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された車体合成力の最大値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最短3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項3】
自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、
前記障害物を回避直後の自車両の速度方向を設定する設定手段と、
・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び前記自車両と前記障害物との距離の車体前後方向の成分Xeを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータν1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記成分Xeのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値ν1’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、
・前記3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータν1と異なる第2の導入パラメータν2の、前記仮定の下での値ν2’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに
・前記3つのパラメータと、前記障害物の回避に要する時間teの、前記仮定の下での時間te’と、の関係を定めた第3の3次元マップからなる最適3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最適3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項4】
自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、
前記障害物を回避直後の自車両の速度方向を設定する設定手段と、
・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び前記自車両と前記障害物との距離の車体前後方向の成分Xeを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記成分Xeのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、並びに
・前記3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成加速度の最大値F0/mの、前記仮定の下での最大値F0’/m’と、の関係を定めた第2の3次元マップからなる最適3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最適3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項5】
前記導出手段は、前記障害物の左側を回避する回避軌道の前記車体前後方向の移動距離の最短距離と、前記障害物の右側を回避する回避軌道の前記車体前後方向の移動距離の最短距離とを比較し、前記最短距離が小さい側の回避軌道を選択する請求項1または請求項2記載の車両運動制御装置。
【請求項6】
前記導出手段は、前記障害物の左側を回避する回避軌道の車体合成力の最大値と、前記障害物の右側を回避する回避軌道の車体合成力の最大値とを比較し、前記車体合成力の最大値が小さい側の回避軌道を選択する請求項3または請求項4記載の車両運動制御装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記自車両の速度、前記自車両に対する前記障害物の相対距離及び相対速度を検出する請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項8】
前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、操舵角、制動力、及び駆動力の少なくとも一つを制御する制御手段を更に含む請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項9】
前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、ドライバに車両運動状態を報知する報知手段を更に含む請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の車両運動制御装置を構成する各手段として機能させるための車両運動制御プログラム。
【請求項1】
自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、
前記障害物を回避直後の自車両の速度方向、及び車体合成力の最大値を設定する設定手段と、
・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び車体合成加速度の最大値F0/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータν1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記最大値F0/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値ν1’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、
・前記3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータν1と異なる第2の導入パラメータν2の、前記仮定の下での値ν2’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに
・前記3つのパラメータと、前記障害物の回避に要する時間teの、前記仮定の下での時間te’と、の関係を定めた第3の3次元マップからなる最短3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された車体合成力の最大値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最短3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項2】
自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、
前記障害物を回避直後の自車両の速度方向、及び車体合成力の最大値を設定する設定手段と、
・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び車体合成加速度の最大値F0/mを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記最大値F0/mのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた最短3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された車体合成力の最大値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最短3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体前後方向の移動距離を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項3】
自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、
前記障害物を回避直後の自車両の速度方向を設定する設定手段と、
・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び前記自車両と前記障害物との距離の車体前後方向の成分Xeを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータν1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記成分Xeのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値ν1’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、
・前記3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータν1と異なる第2の導入パラメータν2の、前記仮定の下での値ν2’と、の関係を定めた第2の3次元マップ、並びに
・前記3つのパラメータと、前記障害物の回避に要する時間teの、前記仮定の下での時間te’と、の関係を定めた第3の3次元マップからなる最適3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最適3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項4】
自車両の位置及び速度、障害物の位置及び速度を含む状態量を検出する検出手段と、
前記障害物を回避直後の自車両の速度方向を設定する設定手段と、
・前記速度方向を車体前後方向として、前記障害物が車体横方向に等速運動すると仮定して、前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記障害物の速度の車体横方向の成分Zv、前記自車両の現時刻の位置に対する前記障害物の位置の車体横方向の成分Z0、及び前記自車両と前記障害物との距離の車体前後方向の成分Xeを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Zv、前記成分Z0、及び前記成分Xeのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた第1の3次元マップ、並びに
・前記3つのパラメータと、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する車体合成加速度の最大値F0/mの、前記仮定の下での最大値F0’/m’と、の関係を定めた第2の3次元マップからなる最適3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記最適3次元マップを用いて、前記障害物を回避しながら前記速度方向に移動する際、車体合成力の最大値を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項5】
前記導出手段は、前記障害物の左側を回避する回避軌道の前記車体前後方向の移動距離の最短距離と、前記障害物の右側を回避する回避軌道の前記車体前後方向の移動距離の最短距離とを比較し、前記最短距離が小さい側の回避軌道を選択する請求項1または請求項2記載の車両運動制御装置。
【請求項6】
前記導出手段は、前記障害物の左側を回避する回避軌道の車体合成力の最大値と、前記障害物の右側を回避する回避軌道の車体合成力の最大値とを比較し、前記車体合成力の最大値が小さい側の回避軌道を選択する請求項3または請求項4記載の車両運動制御装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記自車両の速度、前記自車両に対する前記障害物の相対距離及び相対速度を検出する請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項8】
前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、操舵角、制動力、及び駆動力の少なくとも一つを制御する制御手段を更に含む請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項9】
前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、ドライバに車両運動状態を報知する報知手段を更に含む請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の車両運動制御装置を構成する各手段として機能させるための車両運動制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図10】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図3】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図10】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図3】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−255759(P2011−255759A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131035(P2010−131035)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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