説明

車載ナビゲーション装置

【課題】残りの燃料の量で、現在地からの走行可能距離を精度よく示すことが可能な車載ナビゲーション装置を提供すること。
【解決手段】現在地を検出し(ステップS10)、地図データから現在地を基準とした代表的な経路を抽出する(ステップS20)。そして、抽出した各経路ごとに、道路情報(制限速度、車線数、勾配度合い、交差点・信号機の有無等)及び渋滞情報を参照する。そして、参照した道路情報と外部メモリ9に記憶されている各道路特性に応じた燃費との関係とから、各経路を走行した際の予想燃費を算出する(ステップS12)。そして、残りの燃料の量から、各経路ごとの走行可能距離を算出する(ステップS13、14)。その後、地図画面上において、各経路ごとに、走行可能距離に対応する経路の表示色を変える(ステップS15、図3参照)。以上の処理を走行中繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の現在地周辺の地図を表示して当該車両の走行を補助する車載ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行に関してドライバーが気を付ける事の一つに残りの燃料の量がある。これによって、どこまで走行できるかが変わり、それによって今回の走行では燃料補給が必要か否かが決まってくるからである。特許文献1では、残りの燃料と燃費とから車両の走行可能距離を算出し、この走行可能距離を地図表示に重ねて現在地を中心とした円で示している。
これによって、走行可能距離の数値表示に比べて、ドライバーは容易に車両の走行可能距離を把握することができ、適切な燃料補給地点を選択することができる。すなわち、走行時間を短縮させることができる。
【特許文献1】特開2000―131116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、走行可能距離は同じ残燃料であっても、車両がどれくらいの速度で走行するのか、加減速の回数や度合い、エンジンの回転数など車両の走行状態が変わると燃費も変わり、それに伴い走行可能距離も変わってくる。具体的には、車両が走行する道路種別や渋滞の有無などによって、走行可能距離は変わってくる。この観点から、特許文献1は、走行可能距離を経路に関係なく円表示しているだけであるので、正確な走行可能距離を示しているとは言えない。
【0004】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、現在地からの走行可能距離を精度よく示すことが可能な車載ナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1の車載ナビゲーション装置は、車両の現在地を検出する位置検出手段と、走行したときの車両の燃料消費量に関係する道路特性が付された道路データを含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、前記車両の走行状態と燃費との関係に関する燃費情報を記憶する燃費情報記憶手段と、前記車両の残りの燃料を検出する燃料検出手段と、前記車両の現在地からの経路を前記車両が走行したときの前記車両の走行状態を前記道路データに付された道路特性に基づいて予想しつつ、そのときの予想燃料消費量を前記燃費情報を用いて算出し、前記残りの燃料とから前記車両の現在地からの走行可能距離を各経路ごとに算出する走行可能距離算出手段と、前記車両の現在地を含む前記地図データを表示するとともに、前記各経路ごとの走行可能距離を表示する表示手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
上記走行したときの車両の燃料消費量に関係する道路特性としては、例えば制限速度や道路の勾配、信号がよく有るかどうか、車線数などが挙げられる。これらによって走行した際の速度やエンジン回転数などの車両の走行状態が変わってくると予想されるためである。また、上記車両の走行状況と燃費との関係に関する燃費情報としては、例えば車速と燃費との関係が挙げられる。このように、各経路の走行状態に対応した燃費を用いて、各経路ごとに走行可能距離を表示するので、走行可能距離の精度向上を図ることができる。これにより、ドライバーは走行する際にはより正確に燃料補給が必要か否かを判断することができ、燃料補給が必要と判断したときはより適切に燃料補給地点を選択することができる。
【0007】
請求項2の車載ナビゲーション装置は、渋滞情報を取得する渋滞情報取得手段を備え、前記走行可能距離算出手段は、前記車両の走行状況を予想するときは、前記渋滞情報を考慮することを特徴とする。
【0008】
道路が渋滞していると渋滞していないときよりも車速も小さくなり、さらに加減速する回数も増加すると考えられる。すなわち、燃費が変わってくると考えられる。請求項2のように、渋滞情報も考慮することにより、より正確に走行可能距離を算出することができる。なお、渋滞情報を取得する方法としては、周知のVICS(登録商標、以下省略する)からの道路交通情報を受信する方法などが挙げられる。
【0009】
請求項3の車載ナビゲーション装置は、前記表示手段は、前記各経路ごとの走行可能距離までの経路の表示態様を変えることを特徴とする。この経路の表示態様を変える方法としては、例えば表示色を変えたりする方法などが挙げられる。これによって、ドライバーは視覚的に走行可能距離を把握することができるので、目的地に到達するまでに燃料補給が必要か否か、また必要であるならばどの辺りで燃料補給をすればよいかについて、画面から即座に把握することができる。
【0010】
請求項4の車載ナビゲーション装置は、前記表示手段は、前記表示態様を変えるときは、前記各経路ごとに異なる表示態様にすることを特徴とする。例えば、各経路ごとに異なる表示色にする。これによって、ドライバーは各経路に対する走行可能距離を容易に把握することができる。
【0011】
請求項5の車載ナビゲーション装置は、前記表示手段は、燃料補給地点を表示することを特徴とする。これによって、ドライバーはどこに燃料補給地点があるのかを容易に把握することができ、燃料補給が必要な場合には適切な燃料補給地点を選択することができる。
【0012】
請求項6の車載ナビゲーション装置は、前記走行可能距離算出手段は、所定の経路に対してのみ、前記走行可能距離を算出することを特徴とする。仮に全ての経路に対して走行可能距離を算出すると、算出時間の無駄につながり、またそれによってそれ程有益となるわけでもない。なぜなら、全ての経路を走行するわけではないからである。さらに、全ての経路に対して走行可能距離を算出して、それらを表示すると視認性が悪化する恐れもある。請求項6はこのようなことを考慮したものである。
【0013】
請求項7の車載ナビゲーション装置は、前記所定の経路は、道路幅が所定値より広い道路から構成される経路であることを特徴とする。これは、一般的に走行している車両数として、道路幅が狭い道路よりも広い道路のほうが多いことによる。これによって、ドライバーは、これから走行する可能性が高い経路の走行可能距離を把握することができるととともに、全ての経路に対して走行可能距離が表示されるわけではないので、走行可能距離の視認性を向上させることができる。
【0014】
また、走行可能距離を表示する経路を道路幅が所定値より広い道路から構成される経路に限ったとしても、ドライバーにとってはそれ程不利益にはならないと考えられる。なぜなら、例えば燃料補給地点は大概道路幅が広い道路沿いにあり、また道路幅が狭い道路を走行する場合であっても、走行可能距離が表示されている最も近い経路に対する走行可能距離を参考にすることができるからである。
【0015】
なお、道路幅が基準値よりも広い道路か否かを車線数や県道、国道等の道路種類で判断してもよい。車線数が複数あったり、国道であれば必然的に道路幅が広くなるからである。
【0016】
請求項8の車載ナビゲーション装置は、前記所定の経路は、前記車両の現在地から遠ざかる経路であることを特徴とする。これは、一旦現在地から遠ざかって、再度現在地に近づく経路を走行する可能性は低いと考えられることによる。これによって、ドライバーは、これから走行する可能性が高い経路の走行可能距離を把握することができるととともに、全ての経路に対して走行可能距離が表示されるわけではないので、走行可能距離の視認性を向上させることができる。
【0017】
請求項9の車載ナビゲーション装置は、前記車両の前方方向を検出する前方方向検出手段を備え、前記所定の経路は、前記車両の前方の経路であることを特徴とする。これは、車両の後方の経路を走行する可能性は低いと考えられることによる。これによって、ドライバーは、これから走行する可能性が高い経路の走行可能距離を把握することができるととともに、全ての経路に対して走行可能距離が表示されるわけではないので、走行可能距離の視認性を向上させることができる。
【0018】
請求項10の車載ナビゲーション装置は、出発地と目的地を設定する設定手段と、前記地図データを用いて、出発地から目的地までの経路を探索する探索手段とを備え、前記走行可能距離算出手段は、前記探索手段が経路を探索したときは、当該経路に対してのみ前記走行可能距離を算出することを特徴とする。
【0019】
これは、出発地、目的地が設定し経路探索をした場合は、ドライバーはその探索経路を走行するものと考えられることによる。これによって、ドライバーは、これから走行する可能性が高い経路の走行可能距離を把握することができるととともに、全ての経路に対して走行可能距離が表示されるわけではないので、走行可能距離の視認性を向上させることができる。
【0020】
請求項11の車載ナビゲーション装置は、前記探索手段が探索した経路が複数ある場合は、そのうちの一つを選択する経路選択手段を備え、前記走行可能距離算出手段は、前記経路選択手段が一つの経路を選択した後は、当該一つの経路に対してのみ前記走行可能距離を算出することを特徴とする。これによって、より表示されている走行可能距離の視認性を向上させることができる。
【0021】
請求項12の車載ナビゲーション装置は、前記燃費情報は、基準となる走行時における燃費を示す基本燃費と、前記車両の各走行状況における前記基本燃費の変化割合を示す情報とからなるものであり、前記基本燃費を補正する補正手段を備えることを特徴とする。
【0022】
基本燃費としては、例えばカタログ値(10・15モードにおける燃費)などが挙げられる。上述したように燃費は、車両の走行状態によってかわるものである。ここで、この車両の走行状態は、道路特性の違いなどによっても変わるが、ドライバーの運転の癖によっても変わる。つまり、同じ経路を走行したとしても、普段遅い速度で走行する人と速い速度で走行する人、または加減速の度合いの大小によっても、燃料消費量は異なってくる。そこで、請求項12では基本燃費を補正できるようにし、できる限りドライバーの運転の癖を反映した実際の燃費に一致させるようにしたものである。なお、基本燃費を補正すると、それに付随して各走行状況に対する燃費も変化する。また、基本燃費を補正する方法としては、ドライバーが基本燃費を入力できるようにしたり、また普段の走行時の平均燃費を検出できるようにし、この平均燃費を用いてもよい。また、例えばドライバーによる基本燃費の補正をする場合、基本燃費のみを補正することにより各走行状況に対する燃費も補正したことになるので、ドライバーは操作負担となることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る車載ナビゲーション装置の実施形態について説明する。本実施形態では、経路設定がされていないときには、現在地からの経路のうち代表的な経路に対してのみ走行可能距離を道路の色を変えることによって表示する。ここで代表的な経路として、基準の道路幅よりも広い道路から構成され、かつ現在地から遠ざかる車両前方の経路を指すものとする。このような経路は、走行する可能性が高いと考えられるためである。また、全ての経路に対して走行可能距離を表示しないのは、全ての経路に対して走行可能距離を表示すると、かえって各経路の走行可能距離を把握し辛くなると予想されるためである。一方、経路設定をするときには、複数の候補経路がある場合には最初にこれらの経路に対してのみ走行可能距離を表示し、その後、ドライバーによって案内経路を選択されたときには、以降その案内経路に対してのみ走行可能距離を表示する。経路設定をする場合にはドライバーはその経路を走行するものと考えられるため、他の経路の走行可能距離を表示する必要がないためである。以下、図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本実施形態の車載ナビゲーション装置100の全体構成を示すブロック図である。同図に示すように車載ナビゲーション装置100は、位置検出器1、地図データ入力器6、操作スイッチ群7、外部メモリ9、表示装置10、音声出力装置11、リモコンセンサ12、リモコン13、燃料センサ14、VICS情報受信機15及びこれらと接続する制御回路8から構成される。以下各構成部品について説明する。
【0025】
位置検出器1は、いずれも周知の地磁気センサ2、ジャイロスコープ3、距離センサ4、及び衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機5を有している。これらは、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、各センサの精度によっては位置検出器1を上述した一部で構成してもよく、更に、図示しないステアリングの回転センサ、各転動輪の車速センサ等を用いてもよい。この位置検出器1により、車両の現在地が検出され、後述する制御回路8は、例えば、経路案内を行う際には、車両が探索経路のどの位置を走行しているのかを認識でき、また車両がその経路に沿って走行しているか否かを判定することができる。
【0026】
地図データ入力器6は、道路の接続構造を示す道路地図データ、この道路地図データを用いた道路地図を表示する際に、地形や施設に関する背景を表示するための背景データ、地名等を表示するための文字データなどの各種の地図データを制御回路8に入力するためのものである。この地図データ入力器6は、上述した地図データを記憶する記憶媒体を備え、記憶媒体としては、そのデータ量からDVD−ROMやハードディスクを用いるのが一般的であるが、メモリカード等の他の記憶媒体を用いてもよい。
【0027】
ここで、地図データ入力機6の記憶媒体に記憶されている地図データについて、簡単に説明する。まず、道路地図データは、複数の道路が交差、合流、分岐する地点に関するノードデータと、その地点間を結ぶ道路に関するリンクデータを有する。ノードデータは、ノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続する全てのリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、及び交差点種類などの各データから構成される。また、リンクデータは、道路毎に固有の番号を付したリンクID、リンク長、始点及び終点座標、高速道路や一般道路などの道路種別、道路幅員、リンク旅行時間、勾配度合いなどの各データから構成されている。
【0028】
背景データは、地図上の各施設や地形等と、それに対応する地図上の座標を関連付けたデータとして構成している。なお、施設に関しては、その施設に関連付けて電話番号や、住所等のデータも記憶されている。また、文字データは、地名、施設名、道路名等を地図上に表示するものであって、その表示すべき位置に対応する座標データと関連付けて記憶されている。
【0029】
従って、この道路地図データに背景データ及び文字データを組み合わせることにより、道路を含む地図を表示することができる。また、道路地図データは、地図を表示する以外に、マップマッチング処理を行う際の道路の形状を与えるために用いられたり、目的地までの案内経路を検索する際に用いられる。
【0030】
操作スイッチ群7は、例えば、後述する表示装置10と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられ、例えば、経路探索の際の出発地及び目的地の設定をするのに用いられる。
【0031】
外部メモリ9は、例えば、メモリカードやハードディスク等の記憶媒体からなる。この外部メモリ9には、ユーザーによって記憶されたテキストデータ、画像データ、音声データ等の各種データが記憶される。
【0032】
また、本実施形態では、外部メモリ9には車両の走行状態に応じた燃費情報も記憶されている。具体的には、カタログに掲載されている基本燃費と、道路の制限速度と燃費との関係、及び勾配度合いと燃費の関係、車線数と燃費の関係、信号機の有無と燃費との関係等、燃費に関係する道路特性と燃費との関係を基本燃費に対する変化度合いとして記憶している。例えば、制限速度が異なる道路を走行する場合、車速も異なってくると予想されるので、燃費も異なってくると考えられる。また、車線数が複数ある道路に対しては、1車線しかない道路を走行するときよりもスムーズに走行でき、つまりその分加減速する回数が減り、燃費は良くなると考えられる。また、勾配の度合い大きい道路に対しては、定速走行する場合であっても、勾配度合いの小さい道路を走行するときよりも馬力が必要であるので、その分燃費も低くなると考えられる。また、交差点や信号機の数によっても燃費は変わってくると考えられる。例えば交差点で右左折する場合や信号機が赤の場合は、車両は一旦停止しその後発進しなければいけならず、それに伴って余分に燃料を使用するからである。したがって、この基本燃費に対する変化度合いは、以上のようなことを考慮して決められる。なお、定速走行時の速度と燃費との関係、及び加減速時の燃費との関係等、車両の走行状態に応じた燃費情報を直接記憶してもよい。
【0033】
表示装置10は、例えば、液晶ディスプレイによって構成され、表示装置10の画面には、通常、車両の現在位置に対応する自車位置マーク、及び、地図データ入力器6より入力された地図データによって生成される自車両周辺の道路地図が表示される。また、操作スイッチ群7の操作によって、表示装置10には、メニュー画面や設定画面等の各種の画面が表示される。さらに、本実施形態では、現在地からの代表的な経路に対しては、走行可能距離に対応する経路の色を変更表示している。
【0034】
音声出力装置11は、スピーカやオーディオアンプ等から構成されるもので、経路案内などの音声案内等を行う際に用いられる。
【0035】
また、本実施形態の車載ナビゲーション装置100は、リモートコントロール端末(以下、リモコンと称する)13及びリモコンセンサ12を備えており、このリモコン13によっても、上述した操作スイッチ群7とほぼ同様に、各種のナビゲーション操作を行うことが可能である。
【0036】
燃料センサ14は、燃料タンクに入っている残りの燃料の量に対応した電気信号を出力する。これによって、制御回路8は残りの燃料の量を認識することができ、それに基づいて走行可能距離を算出することができる。
【0037】
VICS情報受信機15は、道路に敷設されたビーコンや各地のFM放送局を介して、VICSセンターから配信される道路交通情報等の情報を受信する装置である。VICS情報受信機15が受信する情報としては、例えば、各道路の渋滞度に関する渋滞情報、事故や工事による通行止めや高速道路等の出入り口閉鎖等の規制情報などがある。制御回路8は、走行可能距離を算出する際には、このVICS情報受信機15が受信した渋滞情報を考慮して予想燃費を算出している。
【0038】
制御回路8は、通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインが備えられている。ROMには、制御回路8が実行するためのプログラムが書き込まれており、このプログラムに従ってCPUが上記各部を利用した各種演算処理を行う。例えば、ユーザーから出発地と目的の設定があった場合には、地図データを用いて、その出発地から目的地までの複数の候補経路を探索し、ドライバーがそのうちのいずれかの経路を案内経路として設定した場合には、その案内経路に沿って車両を誘導案内する。また、経路を設定していない場合であっても、位置検出器1からの信号に基づいて車両の現在地を検出し、それを地図データの道路上の位置にくるようにマッチング処理を行う。
【0039】
さらに制御回路8は、本発明の特徴である現在地からの代表的な経路に対しては、各経路に応じた走行可能距離を算出し、その走行可能距離に対応する経路の表示色を変更する処理を行う。以下、このときの処理を図2のフローチャートを用いて説明する。なお、図2に示す処理は、経路設定がされていない場合の処理である。
【0040】
先ず、ステップS10において、位置検出器1に基づいて車両の現在地を検出する。次にステップS11において、地図データから走行可能距離を算出する代表的な経路を抽出する。具体的には、上述したように基準の道路幅よりも広い道路から構成され、かつ現在地から遠ざかる車両前方の経路を抽出する。これらの経路は、走行する可能性が高いと考えられるからである。また、仮にそれ以外の経路を走行する場合であっても、走行可能距離が表示されている最も近くの経路のその走行可能距離を参考にすれば、ドライバーにとってはそれ程問題にはならないと考えられる。近接の経路は、走行距離がほぼ同じなので、それ程走行可能距離に違いはないと考えられるためである。
【0041】
次にステップS12において、ステップS11にて抽出した経路に対して、各経路ごとに走行した際の予想燃費を算出する。具体的には、先ず各経路を構成する各リンク及びノードに付されている道路情報(制限速度、車線数、勾配度合い、交差点・信号機の有無等)を参照する。例えば、ある区間に対しては、制限速度Xkm、車線数Y、勾配度合いZ度、信号機W個等の情報が参照される。そして、これらの道路情報から、外部メモリ9に記憶されている道路特性と燃費との関係に基づいて、各区間ごとの予想燃費を算出する。これを、各経路の各区間ごとに行う。さらに、この際、VICS情報受信機15から入力される渋滞情報も考慮する。つまり、渋滞している旨の情報を取得したときは、その渋滞度合いに応じて道路の制限速度よりも予想走行車速を下げて予想燃費を算出する。
【0042】
次にステップS13において、燃料センサ14から残りの燃料の量を取得する。そしてステップS14において、その残りの燃料の量と各経路ごとに算出した燃費とに基づいて、各経路ごとに走行可能距離を算出する。そしてステップS15において、表示装置10に表示されている現在地周辺の地図において、図3に示すように各経路ごとに走行可能距離に対応する経路の表示色を変更する。なお、この際走行可能距離そのものを併記表示してもよい。また、これと同時に地図上に燃料補給地点(GS)を表示する。これによって、ドライバーは各経路ごとの走行可能距離を地図上で把握することができ、目的地までに燃料が足りるか否かを即座に把握することができる。また、地図上に燃料補給地点(GS)が表示されているので、仮に今の燃料の量では目的地に到達できないときには、ドライバーは走行距離のロスが少ない適切な燃料補給地点で燃料補給をすることができる。
【0043】
その後、再びステップS10に戻り上述した処理(ステップS10〜S15)が繰り返される。つまり、走行中は常に現在地を基準とした代表的な経路の走行可能距離が表示されることになり、さらにその走行可能距離はそのときの残りの燃料の量及び各経路の渋滞度合いが反映されたものである。したがって、ドライバーは走行途中での燃料切れを心配することなく、安心して走行することができる。
【0044】
次に、経路設定をする際の走行可能距離の表示処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0045】
先ずステップS20において、ドライバーによって出発地と目的地が設定されると、ステップS21において、その出発地から目的地までの最適経路をいくつか探索する。例えば、走行距離が最も短い経路や、走行時間が最も短い経路、有料道路を除いた経路などを探索する。具体的には、道路地図データを構成する各リンク及びノードごとに通過しやすさを示す通過コストを算出する。この通過コストは、各リンクの特性(リンク長、道路種、道路幅等)及び各ノードにおける直進、右左折の種別に応じて算出する。そして、出発地から目的地までの任意の経路に対して、各経路を構成する各リンク及び各ノードの通過コストの加算値が最小となる経路をダイクストラ法などの経路探索手法などを用いて探索する。
【0046】
次にステップS22において、探索した候補経路毎に走行した際の予想燃費を算出する。これは、上述のステップS12と同じ方法で行う。その後、上述と同様に、残りの燃料の量を取得し(ステップS23)、候補経路ごとに走行可能距離を算出する(ステップS24)。そして、ステップS25において、図5(a)に示すように、探索した候補経路を表示画面に表示するとともに、各候補経路の走行可能距離を、道路の表示色を変えることにより表示する。また燃料補給地点(GS)も表示する。これにより、ドライバーは現状の燃料の量でどの候補経路を走行すれば最も目的地近くまで到達することができるかを、画面上で即座に把握することができる。したがって、ドライバーは、案内経路を選択する際には、この表示されている走行可能距離を参考にすることができ、またどこで燃料補給をするかを事前に計画することもできる。
【0047】
その後、ステップS26において、ドライバーによって案内経路が選択されたか否かを判定する。そして、案内経路が選択されたときにはステップS27において、図5(b)に示すように、以降その案内経路に対してのみ走行可能距離を算出、表示する処理をする。具体的には、上述した図2に示すフローチャートに従って処理をする。このようにするのは、案内経路を選択したということはその案内経路を走行すると考えられるため、それ以外の経路の走行可能距離を表示しても意味がないからである。一方、ステップS26において、ドライバーによって案内経路が選択されなかったときには、ステップS28において上述したように代表的な経路の走行可能距離を算出、表示する処理を行う(図3参照)。つまり、図2に示す処理を行う。
【0048】
以上、本実施形態では経路設定をしていない通常の走行時には、常に現在地を基準とした代表的な経路の走行可能距離を算出し、それを道路の表示色を変えることによって画面表示している。また、これと同時に地図上に燃料補給地点を表示している。この走行可能距離は、各経路の特性や渋滞度合いを反映して算出したもので正確であると考えられる。これにより、ドライバーは目的地に到達するまでに燃料補給が必要か否かを即座に把握することができ、燃料補給が必要である場合には、どの辺りで燃料補給すればよいかを事前に計画を立てることができる。
【0049】
一方、経路設定をする際には、先ず探索した複数の候補経路に対しての走行可能距離を表示している。これにより、ドライバーは案内経路を選択する際の参考にすることができる。そして、案内経路が選択された場合には、以降その案内経路に対してのみ走行可能距離を表示している。それ以外の経路を走行する可能性は極めて低いからである。
【0050】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。例えば、本実施形態では走行可能距離を道路の表示色を変えて画面表示するのに、各経路同じ表示色に変えていた(図3参照)。しかし、同じ表示色にすると、特に各経路が複雑に交差している場合には、どの経路に対する走行可能距離かが把握し辛くなる可能性もある。そこで、走行可能距離を表示する各経路ごとで、異なった表示色にしてもよい。また、図6に示すように走行可能距離に対応する経路を破線で表示し、さらに各経路ごとに破線の種類を変えて表示してもよい。
【0051】
また、本実施形態では走行可能距離を表示する代表的な経路として、基準の道路幅よりも広い道路から構成され、かつ現在地から遠ざかる車両前方の経路を採用していた。このような経路は車両が走行する可能性が他の経路に比べて高く、また、すべての経路に対して走行可能距離を表示すると、かえって視認性が悪化する可能性があるからである。しかし、走行可能距離を表示する代表的な経路はこれに限定されるわけではなく、目的に応じてどのような経路を走行可能距離を表示する代表的な経路としてもよい。例えば、本実施形態では広い道路か否かを、直接リンクに付された道路幅から判定していたが、例えば車線数や、県道、国道などの道路種から判定してもよい。一般的に、複数の車線を有する道路や、県道、国道は、道路幅が広いからである。また、どのような経路の走行可能距離を表示させるかを、ドライバーが設定できるようにしてもよい。例えば、県道、国道からなる経路のみの走行可能距離を表示させるようにする。
【0052】
また、本実施形態では各経路を走行した際の燃費を、外部メモリ9にあらかじめ記憶された、各走行状態に応じた燃費情報を用いて算出していた。しかし、通常同一の経路を走行する場合であっても、ドライバーが異なると消費燃料も異なる。なぜなら、ドライバーごとに運転の癖が異なっているからである(例えば、急発進、急停車する人もいれば、ゆっくり発進、停車をする人など)。そこで、外部メモリ9に記憶されている基本燃費を補正できるようにしてもよい。その補正方法としては、ドライバー自らが想定している基本燃費を入力できるようにしたり、普段の走行時の燃料消費量と走行距離との関係を記憶していき、その関係から算出される平均燃費を基本燃費としてもよい。なお、各走行状態の燃費は、上述したように基本燃費に対する変化割合として記憶されているので、基本燃費が補正されれば必然的に各走行状態の燃費も補正されることになる。また、基本燃費のみを補正すればよいので、ドライバーの負担となることもない。これによって、よりドライバーの運転の癖を反映した走行可能距離を算出、表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態の車載ナビゲーション装置100の全体構成を示すブロック図である。
【図2】経路設定がされていないときの、現在地を基準とした代表的な経路の走行可能距離を算出し画面表示する処理を示すブロック図である。
【図3】経路設定がされていないときの、現在地を基準とした代表的な経路の走行可能距離を、表示色を変えることによって表示しているところを示す図である。
【図4】経路設定をする際の、現在地を基準とした探索経路の走行可能距離を算出し画面表示する処理を示すブロック図である。
【図5】経路設定をする際の、現在地を基準とした候補経路(同図(a))、案内経路(同図(b))の走行可能距離を、表示色を変えることによって表示しているところを示す図である。
【図6】現在地を基準とした代表的な経路の走行可能距離を、経路を破線表示することによって表示しているところを示す図である。
【符号の説明】
【0054】
100 車載ナビゲーション装置
1 位置検出器
2 地磁気センサ
3 ジャイロスコープ
4 距離センサ
5 GPS受信機
6 地図データ入力器
7 操作スイッチ群
8 制御回路
9 外部メモリ
10 表示装置
11 音声出力装置
12 リモコンセンサ
13 リモコン
14 燃料センサ
15 VICS情報受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在地を検出する位置検出手段と、
走行したときの車両の燃料消費量に関係する道路特性が付された道路データを含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
前記車両の走行状態と燃費との関係に関する燃費情報を記憶する燃費情報記憶手段と、
前記車両の残りの燃料を検出する燃料検出手段と、
前記車両の現在地からの経路を前記車両が走行したときの前記車両の走行状態を前記道路データに付された道路特性に基づいて予想しつつ、そのときの予想燃料消費量を前記燃費情報を用いて算出し、前記残りの燃料とから前記車両の現在地からの走行可能距離を各経路ごとに算出する走行可能距離算出手段と、
前記車両の現在地を含む前記地図データを表示するとともに、前記各経路ごとの走行可能距離を表示する表示手段とを備えることを特徴とする車載ナビゲーション装置。
【請求項2】
渋滞情報を取得する渋滞情報取得手段を備え、
前記走行可能距離算出手段は、前記車両の走行状況を予想するときは、前記渋滞情報を考慮することを特徴とする請求項1に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記各経路ごとの走行可能距離までの経路の表示態様を変えることを特徴とする請求項1又は2に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記表示態様を変えるときは、前記各経路ごとに異なる表示態様にすることを特徴とする請求項3に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記表示手段は、燃料補給地点を表示することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項6】
前記走行可能距離算出手段は、所定の経路に対してのみ、前記走行可能距離を算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項7】
前記所定の経路は、道路幅が所定値より広い道路から構成される経路であることを特徴とする請求項6に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項8】
前記所定の経路は、前記車両の現在地から遠ざかる経路であることを特徴とする請求項6又は7に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項9】
前記車両の前方方向を検出する前方方向検出手段を備え、
前記所定の経路は、前記車両の前方の経路であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項10】
出発地と目的地を設定する設定手段と、
前記地図データを用いて、出発地から目的地までの経路を探索する探索手段とを備え、
前記走行可能距離算出手段は、前記探索手段が経路を探索したときは、当該経路に対してのみ前記走行可能距離を算出することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項11】
前記探索手段が探索した経路が複数ある場合は、そのうちの一つを選択する経路選択手段を備え、
前記走行可能距離算出手段は、前記経路選択手段が一つの経路を選択した後は、当該一つの経路に対してのみ前記走行可能距離を算出することを特徴とする請求項10に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項12】
前記燃費情報は、基準となる走行時における燃費を示す基本燃費と、前記車両の各走行状況における前記基本燃費の変化割合を示す情報とからなるものであり、
前記基本燃費を補正する補正手段を備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−24833(P2007−24833A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211382(P2005−211382)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】