説明

車載電子装置、車両制御システム

【課題】他車両から送信される位置情報の信頼度に応じて適切な処理を行う。
【解決手段】通信制御装置により受信された他車位置情報と比較情報を取得する(ステップS70)。こうして取得した比較情報に基づいて、自車両の地図データと他車両の地図データとを比較し(ステップS80)、その比較結果に基づいて、ステップS70で取得した他車位置情報の信頼度を判定する(ステップS90)。そして、ステップS70で取得した他車位置情報に基づいて、ステップS90で判定した信頼度に応じた処理を行う(ステップS100〜S120)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車載電子装置と、車載電子装置を有する車両制御システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車々間通信により他車両から送信される位置情報を受信し、受信した位置情報に基づいて他車両の位置を求めることにより、他車両の位置を地図上に表示するなどの処理を行う車載用電子装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−64616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される従来の車載用電子装置では、他車両から送信される位置情報がどの程度信頼できるものであるか分からないため、適切な処理を行うことができない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明による車載電子装置は、自車両の地図データを読み出す地図データ読み出し手段と、他車両の地図データに基づいて検出された他車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、自車両の地図データと他車両の地図データとを比較するための比較情報を取得する比較情報取得手段と、比較情報取得手段により取得された比較情報に基づいて自車両の地図データと他車両の地図データとを比較する比較手段と、比較手段による比較結果に基づいて位置情報取得手段により取得された他車両の位置情報の信頼度を判定する判定手段と、位置情報取得手段により取得された他車両の位置情報に基づいて判定手段により判定された信頼度に応じた処理を行う処理制御手段とを備える。
請求項2の発明は、請求項1に記載の車載電子装置において、比較情報取得手段は、他車両の地図データのバージョンを表す情報を比較情報として取得し、比較手段は、自車両の地図データのバージョンと、比較情報が表す他車両の地図データのバージョンとを比較するものである。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の車載電子装置において、比較情報取得手段は、他車両の走行道路の位置を表す情報を比較情報として取得し、比較手段は、比較情報が表す他車両の走行道路の位置と、自車両の地図データにおける他車両の走行道路に対応する道路の位置とを比較するものである。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載電子装置において、判定手段により他車両の位置情報の信頼度が高いと判定された場合、処理制御手段は、自車両と他車両との位置関係に応じて自車両の動作を制御する車両制御装置に対して他車両の位置情報を出力し、判定手段により他車両の位置情報の信頼度が低いと判定された場合、処理制御手段は、車両制御装置に対する他車両の位置情報の出力を禁止するものである。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車載電子装置において、地図を表示モニタに表示し、位置情報取得手段により取得された他車両の位置情報に基づいて他車両の位置を地図上に表示する表示制御手段をさらに備えるものである。
請求項6の発明による車両制御システムは、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車載電子装置と、自車両と他車両との間で車々間通信を行う通信制御装置とを備え、位置情報取得手段と比較情報取得手段は、通信制御装置が車々間通信により他車両から受信した他車両の位置情報と比較情報とを通信制御装置からそれぞれ取得するものである。
請求項7の発明による車両制御システムは、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車載電子装置と、配信センターを介して他車両から送信される情報を受信する通信制御装置とを備え、位置情報取得手段と比較情報取得手段は、通信制御装置が配信センターを介して他車両から受信した他車両の位置情報と比較情報とを通信制御装置からそれぞれ取得するものである。
請求項8の発明は、請求項6または7に記載の車両制御システムにおいて、通信制御装置は、自車両の位置情報と、自車両の地図データのバージョンおよび自車両の走行道路の位置のいずれか少なくとも一つに関する情報とを、他車両へ送信するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、他車両から送信される位置情報の信頼度に応じて適切な処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−第1の実施の形態−
本発明の一実施の形態による車両制御システムの構成を図1に示す。この車両制御システムは、自車両1と他車両2とが車々間通信によって互いの位置情報を交換し、それによって相手方の位置をそれぞれ判断することで、必要に応じて様々な車両制御を行うものである。自車両1には、ナビゲーション装置10、車両制御装置11、通信制御装置12およびアンテナ13が備えられている。同様に、他車両2には、ナビゲーション装置20、車両制御装置21、通信制御装置22およびアンテナ23が備えられている。なお、図1では1台の他車両2のみを示しているが、実際には通信エリア内に存在する複数の他車両2と自車両1との間で車々間通信が行われる。
【0008】
ナビゲーション装置10は、自車両1の位置を検出すると共に、他車両2から送信される他車両2の位置情報に基づいて、他車両2の位置を求める。このとき、他車両2から位置情報と共に送信される比較情報に基づいて、自車両1の地図データと他車両2の地図データとを比較し、その比較結果に基づいて他車両2の位置情報の信頼度を判定する。比較情報は、自車両1の地図データと他車両2の地図データとを比較するための情報であり、その具体的な内容については後述する。そして、検出した自車両1の位置から所定範囲内の地図を表示モニタに表示し、自車両1の位置を示す自車位置マークと、他車両2の位置を示す他車位置マークとをその地図上に表示する。こうした地図表示を行うことにより、自車両1と他車両2との位置関係をユーザに対して知らせる。
【0009】
またナビゲーション装置10は、車両制御装置11からの指示により、必要に応じて警告音の出力や警告メッセージの表示を行う。これにより、自車両1に向かって走行している他車両2の存在などをユーザに知らせることができる。
【0010】
さらにナビゲーション装置10は、目的地が設定されることにより、自車両1をその目的地まで案内するためのナビゲーション処理を実行する。すなわち、ユーザの操作などによりナビゲーション装置10に対して目的地が設定されると、ナビゲーション装置10はその目的地までの推奨経路を地図データに基づいて探索する。そして、探索された推奨経路を地図上に表示し、その推奨経路に従ってユーザに進行方向の指示を行うことにより、自車両1を目的地まで案内する。なお、このときにも前述のように自車位置マークと他車位置マークが地図上に表示される。
【0011】
車両制御装置11は、自車両1の挙動やユーザの運転操作等に応じて、自車両1における様々な動作の制御を行う。たとえば、アクセルペダルの踏み込み量やエンジン回転数などに応じてアクセル開度を調節することで、自車両1に生じる加速度を制御する。さらに車両制御装置11は、ナビゲーション装置10によって求められた自車位置と他車位置に基づいて、自車両1と他車両2との位置関係やその変化状態を判断し、この判断結果に応じて、ナビゲーション装置10に対する警告の指示や自車両1の駆動制御を必要に応じて行う。たとえば、自車両1の走行道路と交差する道路を走行中の他車両2が、自車両1に向かって所定距離以内に接近していると判断されたとする。このような場合、車両制御装置11は、他車両2が接近している旨の警告をナビゲーション装置10に対して指示すると共に、必要であれば自車両1のブレーキを制御して自車両1を停止させる。
【0012】
通信制御装置12は、アンテナ13を用いて、他車両2に搭載された通信制御装置22との間で車々間通信を行う。この車々間通信により、通信制御装置12において、他車両2から送信される他車両2の位置情報と前述の比較情報が受信されると共に、自車両1の位置情報および比較情報が他車両2に対して送信される。なお、このときに車々間通信を行う車両の各々を特定するための車両ID情報が共に送信される。こうして自車両1と他車両2の位置情報が交換される。
【0013】
通信制御装置12において受信された他車両2の位置情報および比較情報は、通信制御装置12からナビゲーション装置10へと出力される。ナビゲーション装置10は、通信制御装置12から出力された他車両2の位置情報に基づいて他車両2の位置を求めると共に、通信制御装置12から出力された比較情報に基づいて他車両2の位置情報の信頼度を判定する。そして、信頼度が高いと判定した場合は、他車両2の位置情報を車両制御装置11へ出力する。こうしてナビゲーション装置10から他車両2の位置情報が出力されると、それに基づいて車両制御装置11は、前述のような制御を自車両1に対して行う。なお、通信制御装置12および22を用いて自車両1と他車両2との間で行われる車々間通信には、たとえばDSRC(Dedicated Short Range Communications)による通信方式などを利用することができる。
【0014】
自車両1に搭載されているナビゲーション装置10、車両制御装置11、通信制御装置12およびアンテナ13は、以上説明したような処理や動作を行う。なお、他車両2に搭載されているナビゲーション装置20、車両制御装置21、通信制御装置22およびアンテナ23も、それぞれに同様の処理や動作を行う。
【0015】
次に、ナビゲーション装置10の構成を図2に示す。ナビゲーション装置10は、制御部101、振動ジャイロ102、車速センサ103、ハードディスク(HDD)104、GPS受信部105、表示モニタ106および入力装置107を備えている。
【0016】
制御部101は、マイクロプロセッサや各種周辺回路、RAM、ROM等によって構成されており、HDD104に記録されている制御プログラムや地図データに基づいて、各種の処理を実行する。この制御部101により、ナビゲーション装置10における様々な処理が実行される。たとえば、目的地を設定する際の目的地の探索処理、設定された目的地までの推奨経路の探索処理、自車位置の検出処理、各種の画像表示処理、ルート案内時の処理などが実行される。
【0017】
制御部101は車両制御装置11および通信制御装置12と接続されており、これらとの間で様々な信号やデータが入出力される。たとえば通信制御装置12に対して、制御部101により検出された自車位置の情報が所定時間ごとに出力される。この自車位置情報は、通信制御装置12が行う車々間通信によって自車両1から他車両2へと送信される。一方、通信制御装置12から制御部101には、他車両2から受信した他車位置情報が入力される。
【0018】
通信制御装置12から他車両2の位置情報が入力されると、制御部101は、その他車両2の位置情報を自車位置の情報と共に車両制御装置11へ出力する。車両制御装置11は、これらの情報に基づいて自車両1と他車両2との位置関係やその変化状態を判断し、前述のような警告指示や駆動制御を必要に応じて行う。
【0019】
振動ジャイロ102は、自車両1の角速度を検出するためのセンサである。車速センサ103は、自車両1の車速を検出するためのセンサである。これらのセンサを用いて自車両1の運動状態を所定の時間間隔ごとに検出することにより、自車両1の移動量が求められ、それによって自車両1の現在位置が検出される。
【0020】
HDD104は、データの書き換えが可能な不揮発性の記録媒体であり、地図データを含む各種のデータが記録されている。HDD104に記録されている地図データは、必要に応じて制御部101の制御により読み出され、制御部101が実行する様々な処理や制御に利用される。この地図データには、経路計算データと、経路誘導データと、道路データと、背景データとが含まれている。経路計算データは、目的地までのルート探索に用いられる。経路誘導データは、設定された経路に従って自車両1を目的地まで誘導するために用いられ、交差点名称や道路名称などを表す。道路データは、道路の形状や種別を表す。背景データは、河川や鉄道などの道路以外の地図形状や、各種施設の位置などを表す。
【0021】
GPS受信部105は、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信して制御部101へ出力する。GPS信号には、自車両1の位置と現在時刻を求めるための情報として、そのGPS信号を送信したGPS衛星の位置と送信時刻が含まれている。したがって、所定数以上のGPS衛星からGPS信号を受信することにより、これらの情報に基づいて自車両1の現在位置と現在時刻を算出することができる。
【0022】
表示モニタ106は、ナビゲーション装置10において様々な画面表示を行うための装置であり、液晶ディスプレイ等を用いて構成される。この表示モニタ106により、前述したように自車両1の周辺について地図が表示され、その地図上に自車位置マークと他車位置マークが表示される。表示モニタ106に表示される画面の内容は、制御部101が行う画面表示制御によって決定される。表示モニタ106は、たとえば自車両1のダッシュボード上やインストルメントパネル内など、ユーザが見やすいような位置に設置されている。
【0023】
入力装置107は、ナビゲーション装置10を動作させるための様々な入力操作をユーザが行うための装置であり、各種の入力スイッチ類を有している。ユーザはこの入力装置107を操作することにより、たとえば、目的地に設定したい施設や地点の名称等を入力したり、予め登録された登録地の中から目的地を選択したり、地図を任意の方向にスクロールしたりすることができる。入力装置107は、操作パネルやリモコンなどによって実現することができる。あるいは、表示モニタ106と一体化されたタッチパネルにより入力装置107を実現してもよい。
【0024】
ユーザが入力装置107を操作して目的地を設定すると、ナビゲーション装置10は、前述の経路計算データに基づいて所定のアルゴリズムの演算を行うことにより、目的地までの推奨経路を探索する。そして、自車両1の現在位置を検出し、その周辺の道路地図を表示しながら、探索された推奨経路に従って自車両1を目的地まで誘導する。
【0025】
ナビゲーション装置10が地図上に自車位置マークと他車位置マークを表示する際の処理のフローチャートを図3に示す。このフローチャートは、制御部101において所定の処理サイクル間隔で実行される。
【0026】
ステップS10において、制御部101は、通信制御装置12により車々間通信が可能な他車両2が自車両1の周囲にあるか否かを判定する。通信可能範囲内に他車両2が検出された場合、次のステップS20へ進む。
【0027】
ステップS20において、制御部101は、自車位置を検出する。ここでは前述したように、振動ジャイロ102および車速センサ103の検出結果に基づいて、自車両1の位置を検出する。なお、このときさらに、HDD104に記録された地図データに基づいてマップマッチングを行うことにより、自車両1が地図上でどの道路を走行しているかを判断し、自車位置の検出結果に反映する。これにより、自車両1が走行している道路に合わせて自車位置を補正することができる。
【0028】
ステップS30において、制御部101は、ステップS20で検出した自車位置に基づいて、表示モニタ106に表示されている地図上に自車位置マークを表示する。こうして自車位置マークを表示することにより、自車両1の現在位置を地図上に示す。
【0029】
ステップS40において、制御部101は、自車両1の走行道路の位置情報を地図データから取得する。ここでは、ステップS20で検出した自車位置と、HDD104から読み込んだ地図データとに基づいて、自車両1の走行道路に該当するリンクを特定する。こうして特定したリンクの位置情報、すなわち当該リンクに対応するノードや形状補間点などの位置情報を地図データから取得する。なお、このときリンク番号(リンクID)などを合わせて取得してもよい。
【0030】
ステップS50において、制御部101は、自車両1の地図データのバージョン情報を取得する。ここでは、HDD104に予め記録されている地図データのバージョン番号の情報を取得する。さらにこのとき、地図データの発行元の情報などを合わせて取得してもよい。
【0031】
上記のステップS40とステップS50でそれぞれ取得した情報は、他車両2のナビゲーション装置20において、自車両1の地図データと他車両2の地図データとを比較するための比較情報として用いられる。すなわち、制御部101はステップS40およびステップS50において、自車両1の地図データのバージョンを表す情報や、自車両1の走行道路の位置を表す情報を、他車両2に送信するための比較情報として取得する。
【0032】
ステップS60において、制御部101は、ステップS20で検出した自車位置を表す自車位置情報と、ステップS40およびステップS50で比較情報としてそれぞれ取得した自車両1の地図データのバージョン情報および走行道路の位置情報とを、通信制御装置12に対して出力する。こうして通信制御装置12へ出力された自車位置情報と比較情報は、通信制御装置12により他車両2へ送信される。これにより、他車両2において自車両1の位置を求めるために必要な情報が、自車両1から他車両2へ送信される。
【0033】
ステップS70において、制御部101は、他車両2から送信される他車位置情報および比較情報を取得する。ここでは前述のように、通信制御装置12を用いて自車両1と他車両2との間で行われる車々間通信により、他車両2からの他車位置情報と比較情報を取得する。すなわち、通信制御装置12において受信された他車位置情報と比較情報が制御部101に対して入力されることにより、これらの情報が制御部101において取得される。
【0034】
なお、ステップS70で取得する他車位置情報は、他車両2において他車両2の地図データに基づいて検出された他車両2の位置を表す。他車両2の地図データとは、ナビゲーション装置20に搭載されているHDDに記録されている地図データである。この地図データに基づいてナビゲーション装置20の制御部が前述のステップS20と同様の処理を行うことにより、他車両2においてその位置が検出される。なお、マップマッチングにより特定された他車両2の走行道路を示すリンク番号などの情報が他車位置情報に含まれていてもよい。一方、ステップS70で取得する他車両2の比較情報は、ナビゲーション装置20の制御部が前述のステップS40およびS50と同様の処理により取得したものである。すなわち、他車両2の地図データのバージョンを表す情報と、他車両2の走行道路の位置を表す情報とを、他車両2の比較情報として取得する。
【0035】
ステップS80において、制御部101は、ステップS70で取得した比較情報に基づいて、HDD104に記録されている自車両1の地図データと、他車両2の地図データとを比較する。ここでは、比較情報として取得した他車両2の地図データのバージョン情報に基づいて、自車両1の地図データのバージョンと、その情報が表す他車両2の地図データのバージョンとを比較する。または、比較情報として取得した他車両2の走行道路の位置情報に基づいて、その情報が表す他車両2の走行道路の位置と、自車両1の地図データにおける当該走行道路に対応する道路の位置とを比較する。すなわち、他車両2の走行道路に当たるリンクのノードおよび形状補間点の位置と、HDD104に記録されている地図データにおいて当該リンクに対応するリンクのノードおよび形状補間点の位置とを比較する。なお、上記の2種類の比較方法を両方同時に用いても良い。こうして自車両1の地図データと他車両2の地図データとを比較したら、ステップS90へ進む。
【0036】
ステップS90において、制御部101は、ステップS80の比較結果に基づいて、ステップS70で取得した他車位置情報の信頼度を判定する。ここでは、ステップS80の比較結果において自車両1の地図データと他車両2の地図データが同一であれば他車位置情報の信頼度が高いと判定し、同一でなければ他車位置情報の信頼度が低いと判定する。すなわち、自車両1の地図データのバージョンと他車両2の地図データのバージョンとを比較した場合は、両者のバージョンが同じであれば他車位置情報の信頼度が高いと判定し、異なれば他車位置情報の信頼度が低いと判定する。一方、他車両2の走行道路の位置と自車両1の地図データにおける当該走行道路に対応する道路の位置とを比較した場合は、両者の位置が同じであれば他車位置情報の信頼度が高いと判定し、異なれば他車位置情報の信頼度が低いと判定する。こうして他車位置情報の信頼度が高いか低いか判定したら、ステップS100へ進む。
【0037】
ステップS90の判定結果により他車位置情報の信頼度が高いと判定された場合、制御部101は、ステップS100からステップS110へ進む。この場合、制御部101はステップS110において、ステップS70で取得した他車位置情報を車両制御装置11に対して出力する。ステップS110を実行したらステップS120へ進む。
【0038】
一方、ステップS90の判定結果により他車位置情報の信頼度が低いと判定された場合、制御部101はステップS110を実行せずに、ステップS100からステップS120へ進む。これにより、ステップS110において他車位置情報を車両制御装置11に対して出力するのを禁止する。
【0039】
ステップS120において、制御部101は、ステップS70で取得した他車位置情報に基づいて、表示モニタ106に表示されている地図上に他車位置マークを表示する。こうして他車位置マークを表示することにより、他車両2の現在位置を地図上に示す。ステップS120を実行したら、図3のフローチャートを終了する。このようにして、自車両1と他車両2との間で車々間通信が行われ、自車位置マークと他車位置マークがそれぞれ表示される。
【0040】
以上説明したような処理を実行することにより自車位置マークと他車位置マークが表示された地図画面の例を図4に示す。この地図画面では、自車位置マーク111の周囲について表示された地図上に、他車位置マーク211が表示されている。
【0041】
以上説明した第1の実施の形態によれば、次の作用効果を奏する。
(1)車載電子装置であるナビゲーション装置10は、制御部101の処理により、通信制御装置12により受信された他車位置情報と比較情報を取得する(ステップS70)。こうして取得した比較情報に基づいて、自車両1の地図データと他車両2の地図データとを比較し(ステップS80)、その比較結果に基づいて、ステップS70で取得した他車位置情報の信頼度を判定する(ステップS90)。そして、ステップS70で取得した他車位置情報に基づいて、ステップS90で判定した信頼度に応じた処理を行う(ステップS100〜S120)。このようにしたので、他車両2から送信される位置情報の信頼度に応じて適切な処理を行うことができる。
【0042】
(2)制御部101はステップS70において、他車両2の地図データのバージョンを表す情報を比較情報として取得することができる。この場合、制御部101はステップS80において、自車両1の地図データのバージョンと、その比較情報が表す他車両2の地図データのバージョンとを比較する。このようにしたので、自車両1の地図データと他車両2の地図データとが同一の地図データであるか否かを簡単に判断することができる。
【0043】
(3)また、制御部101はステップS70において、他車両2の走行道路の位置を表す情報を比較情報として取得することができる。この場合、制御部101はステップS80において、その比較情報が表す他車両2の走行道路の位置と、自車両1の地図データにおける当該走行道路に対応する道路の位置とを比較する。このようにしたので、他車両2の走行道路について、自車両1の地図データによる位置と他車両2の地図データによる位置とが同一であるか否かを正確に判断することができる。したがって、他車位置情報の信頼度を正確に判定することができる。
【0044】
(4)制御部101は、ステップS90において他車位置情報の信頼度が高いと判定した場合、ステップS100からステップS110へ進み、車両制御装置11に対して、ステップS70で取得した他車位置情報を出力する(ステップS110)。一方、ステップS90において他車位置情報の信頼度が低いと判定した場合、ステップS110を実行せずにステップS120へ進み、車両制御装置11に対する他車位置情報の出力を禁止する。このようにしたので、取得した他車位置情報の信頼度が低い場合に、その他車位置情報に基づいて車両制御装置11が不適切な車両制御を行うのを防止できる。
【0045】
(5)制御部101は、地図を表示モニタ106に表示して、ステップS70で取得した他車位置情報に基づいて、他車両2の位置を示す他車位置マークをその地図上に表示する(ステップS120)。このようにしたので、自車両1に搭乗しているユーザに対して、他車両2の位置を判りやすく知らせることができる。
【0046】
(6)通信制御装置12は、自車両1と他車両2との間で車々間通信を行う。制御部101は、ステップS70において、通信制御装置12が車々間通信により他車両2から受信した他車位置情報と比較情報とを、通信制御装置12からそれぞれ取得する。このようにしたので、他車両2について正確な位置情報と比較情報を容易に取得することができる。
【0047】
(7)制御部101は、ステップS60において、自車位置情報と、自車両1の地図データのバージョンおよび自車両1の走行道路の位置のいずれか少なくとも一つに関する比較情報とを、通信制御装置12へ出力する。通信制御装置12は、制御部101から出力された自車位置情報および比較情報を他車両2へ送信する。このようにしたので、他車両2において自車両1の位置情報と比較情報を取得することができる。
【0048】
−第2の実施の形態−
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。上記において説明した第1の実施の形態では、自車両1と他車両2とが車々間通信によって互いの位置情報を交換する例を説明した。これに対して本実施形態では、自車両1と他車両2が配信センターを介して互いの位置情報を交換する例について説明する。
【0049】
図5は、第2の実施の形態による車両制御システムの構成を示している。この車両制御システムでは、図1に示した第1の実施の形態による車両制御システムと同様に、自車両1にはナビゲーション装置10、車両制御装置11、通信制御装置12およびアンテナ13が備えられており、他車両2にはナビゲーション装置20、車両制御装置21、通信制御装置22およびアンテナ23が備えられている。さらにこの車両制御システムは、配信センター3を有している。
【0050】
本実施形態において、通信制御装置12は、配信センター3と無線通信を介して接続される。この無線通信は、たとえば携帯電話等の移動体通信網を用いて行われる。配信センター3は、全国各地を走行中の車両についてそれぞれの位置情報と比較情報を収集し、それを他の各車両へと送信するサービスを行う。すなわち、通信制御装置12と配信センター3が接続されると、通信制御装置12から配信センター3へ自車位置情報および自車両1の比較情報が送信されると共に、配信センター3において収集された他車位置情報および他車両2の比較情報が通信制御装置12へ送信される。この他車位置情報および他車両2の比較情報は、他車両2の通信制御装置22から送信されて配信センター3により収集されたものである。
【0051】
以上説明したようにして、配信センター3から自車両1の通信制御装置12へ他車位置情報および他車両2の比較情報が送信され、通信制御装置12によってこれらの情報が取得される。同様に、配信センター3から他車両2の通信制御装置22へ自車位置情報および自車両1の比較情報が送信され、通信制御装置22によってこれらの情報が取得される。これにより、自車両1と他車両2が配信センター3を介して無線通信を行い、互いの位置情報と比較情報を交換する。
【0052】
こうして通信制御装置12において他車位置情報および他車両2の比較情報が取得されると、通信制御装置12からナビゲーション装置10に対して出力される。この他車位置情報および他車両2の比較情報に基づいて、ナビゲーション装置10および車両制御装置11において、第1の実施の形態で説明したのと同様の処理がそれぞれ実行される。
【0053】
なお、本実施形態においてナビゲーション装置10の制御部101により図3のフローチャートが実行される場合、ステップS70では、以上説明したようにして他車位置情報および他車両2の比較情報の取得を行う。すなわち、通信制御装置12は、無線通信により接続された配信センター3を介して、他車位置情報および他車両2の比較情報を受信する。さらに通信制御装置12は、無線通信により接続された配信センター3を介して、自車位置情報および自車両1の比較情報を送信する。
【0054】
以上説明した第2の実施の形態によれば、次の作用効果を奏する。
(1)制御部101は、ステップS70において、通信制御装置12が配信センター3を介して他車両2から受信した他車位置情報と他車両2の比較情報とを、通信制御装置12からそれぞれ取得する。このようにしたので、自車両1と他車両2の距離が離れており車々間通信を行うことができない場合であっても、他車位置情報および他車両2の比較情報を取得することができる。
【0055】
(2)通信制御装置12により、自車両1の位置情報および比較情報を配信センター3へ送信することとしたので、配信センター3において各車両の位置情報及び比較情報を収集することができる。
【0056】
なお、以上説明した第1の実施の形態と第2の実施の形態とを組み合わせて用いるようにしてもよい。たとえば、自車両1と他車両2との間で車々間通信が可能な場合は、第1の実施の形態で説明したようにして車々間通信を行うことにより、自車両1と他車両2との位置情報および比較情報を交換する。しかし、自車両1と他車両2とが離れており車々間通信が不可能な場合は、第2の実施の形態で説明したように、配信センター3を介して自車両1と他車両2との位置情報および比較情報を交換する。このようにすれば、自車両1において確実に他車両2の位置情報と比較情報を取得することができる。
【0057】
以上説明した各実施の形態では、ナビゲーション装置10により、図3のフローチャートに示す処理を実行する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、様々な車載電子装置に適用することができる。
【0058】
以上説明した各実施の形態や各種の変形例は、あくまで一例である。したがって、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0059】
以上説明した各実施の形態では、特許請求の範囲に記載された各手段を、ナビゲーション装置10の制御部101において実行される処理によりそれぞれ実現することとした。すなわち、ナビゲーション装置10の制御部101は、地図データ読み出し手段、位置情報取得手段、比較情報取得手段、比較手段、判定手段、処理制御手段および表示制御手段として機能する。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、各実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係には何ら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施の形態による車両制御システムの構成図である。
【図2】ナビゲーション装置の構成図である。
【図3】地図上に自車位置マークと他車位置マークを表示する際の処理のフローチャートである。
【図4】自車位置マークと他車位置マークが表示された地図画面の例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態による車両制御システムの構成図である。
【符号の説明】
【0061】
1:自車両 2:他車両
3:配信センター 10,20:ナビゲーション装置
11,21:車両制御装置 12,22:通信制御装置
13,23:アンテナ 101:制御部
102:振動ジャイロ 103:車速センサ
104:HDD 105:GPS受信部
106:表示モニタ 107:入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の地図データを読み出す地図データ読み出し手段と、
他車両の地図データに基づいて検出された前記他車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記自車両の地図データと前記他車両の地図データとを比較するための比較情報を取得する比較情報取得手段と、
前記比較情報取得手段により取得された比較情報に基づいて、前記自車両の地図データと前記他車両の地図データとを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づいて、前記位置情報取得手段により取得された前記他車両の位置情報の信頼度を判定する判定手段と、
前記位置情報取得手段により取得された前記他車両の位置情報に基づいて、前記判定手段により判定された信頼度に応じた処理を行う処理制御手段とを備えることを特徴とする車載電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載電子装置において、
前記比較情報取得手段は、前記他車両の地図データのバージョンを表す情報を前記比較情報として取得し、
前記比較手段は、前記自車両の地図データのバージョンと、前記比較情報が表す前記他車両の地図データのバージョンとを比較することを特徴とする車載電子装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車載電子装置において、
前記比較情報取得手段は、前記他車両の走行道路の位置を表す情報を前記比較情報として取得し、
前記比較手段は、前記比較情報が表す前記他車両の走行道路の位置と、前記自車両の地図データにおける前記他車両の走行道路に対応する道路の位置とを比較することを特徴とする車載電子装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載電子装置において、
前記判定手段により前記他車両の位置情報の信頼度が高いと判定された場合、前記処理制御手段は、前記自車両と前記他車両との位置関係に応じて前記自車両の動作を制御する車両制御装置に対して、前記他車両の位置情報を出力し、
前記判定手段により前記他車両の位置情報の信頼度が低いと判定された場合、前記処理制御手段は、前記車両制御装置に対する前記他車両の位置情報の出力を禁止することを特徴とする車載電子装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車載電子装置において、
地図を表示モニタに表示し、前記位置情報取得手段により取得された前記他車両の位置情報に基づいて、前記他車両の位置を前記地図上に表示する表示制御手段をさらに備えることを特徴とする車載電子装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車載電子装置と、
前記自車両と前記他車両との間で車々間通信を行う通信制御装置とを備え、
前記位置情報取得手段と前記比較情報取得手段は、前記通信制御装置が前記車々間通信により前記他車両から受信した前記他車両の位置情報と前記比較情報とを、前記通信制御装置からそれぞれ取得することを特徴とする車両制御システム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車載電子装置と、
配信センターを介して前記他車両から送信される情報を受信する通信制御装置とを備え、
前記位置情報取得手段と前記比較情報取得手段は、前記通信制御装置が前記配信センターを介して前記他車両から受信した前記他車両の位置情報と前記比較情報とを、前記通信制御装置からそれぞれ取得することを特徴とする車両制御システム。
【請求項8】
請求項6または7に記載の車両制御システムにおいて、
前記通信制御装置は、前記自車両の位置情報と、前記自車両の地図データのバージョンおよび前記自車両の走行道路の位置のいずれか少なくとも一つに関する情報とを、前記他車両へ送信することを特徴とする車両制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−198194(P2009−198194A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37232(P2008−37232)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】