説明

通信機器

【課題】緊急通報に対する的確な(例えば迅速な)対応の実現に寄与する通信機器等を提供することを目的とする。
【解決手段】警察等の緊急機関における機関側通信機器に対して緊急通報が可能な通信機器としての携帯電話機1において、前記緊急機関との間の緊急通話内容を自動的に緊急時用メモリ部113に記録する。また、前記機関側通信機器から発せられたコマンド内容に応じて、携帯電話機1の有する機能(カメラ部111による撮影機能など)が動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の通信機器に関し、特に、警察や消防署等の緊急機関に対する緊急通報が可能な通信機器に関する。また、本発明は、そのような通信機器と緊急通報に関する通信を行う緊急機関側の通信機器(機関側通信機器)、それらを含んで構成される通信システム、並びに、該通信システムの一部である通信システム網及び通信機器群に関する。また、本発明は、通信機器を用いた緊急対応方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緊急時に警察や消防署等の緊急機関に通報するための緊急通報専用ボタンを設けたボタン電話機や携帯電話機が提案されている。この種の携帯電話機等において、緊急通報専用ボタンに110番の電話番号を割り当てておけば、緊急時に緊急通報専用ボタンを押下することにより直ちに警察に電話がかかる。これによれば、緊急時の操作ミスによる時間のロスの発生が抑制されるという効果がある。
【0003】
また、緊急用の専用キーの押下によって、予めメモリに登録されている緊急時の諸情報を特定の電話番号先に送る従来技術も存在する(例えば、下記特許文献1及び2参照)。この従来技術は、緊急時の気のあせりや動揺に起因して正常に通話ができないといった問題を解決しようとしている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−145522号公報
【特許文献2】特開平11−252659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術において、予め登録されている諸情報は、いずれも実際の緊急場面に準じたものではなく、また、警察等からの問合せに対応するものでもないため、その場の緊急度に応じた最適な対応や処理ができない。
【0006】
従って、現在、110番等への緊急アクセスに対応する通信システムには、緊急通報の通報者(発信元)を確認するための「呼び戻し」(呼び返し)と呼ばれる必須機能が備わっているのではあるが、この呼び戻しが有効に機能しない場合もある。つまり、警察等に通報を行った通報者に対して、警察が呼び戻しによってアクセスを試みようとしても、通報者が正常に応答できない状態に陥っていた場合は、上記従来技術は何ら対応できない。そのような場合には、警察は、上記の予め登録されている諸情報以外、本人からの肉声による情報を得ることができないからである。
【0007】
また、初回通報時は、事故等に起因する動揺が軽度であってしっかりした受け答えができ、警察等が必要とする情報を通報できていたとしても、その時点から或る程度の時間が経過した呼び戻しの時点では、動揺が深刻なものとなって、通報者がしゃべることも電話に出ることもできなくなるといった状況も十分に考えられる。このような問題を含め、緊急通報に対する的確な対応の実現に寄与する技術が求められている。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑み、緊急通報に対する的確な(例えば迅速な)対応の実現に寄与する通信機器、緊急機関側の機関側通信機器、通信システム網、通信システム、通信機器群及び緊急対応方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係る通信機器は、通信手段、音声入力手段及び音声出力手段を有し、緊急機関における機関側通信機器に対して緊急通報が可能な通信機器において、前記音声入力手段及び前記通信手段を介した通話内容を記録可能な記録手段と、前記機関側通信機器を介した前記緊急機関との間の緊急通話内容を自動的に前記記録手段に記録する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
これにより、上記緊急通話内容を利用した的確な対応が期待できる。
【0011】
例えば、前記制御手段は、前記機関側通信機器からの呼び戻しがあった際、その機関側通信機器に対して前記緊急通話内容を自動的に送信する。
【0012】
これにより、緊急機関側にて上記緊急通話内容の確認を行うことができる。
【0013】
また例えば、前記制御手段は、前記機関側通信機器から所定の強制終話コマンドを受信した際、前記機関側通信機器を介した前記緊急機関との間の通話を強制的に終了する。
【0014】
また例えば、所定操作を行うことによって通信相手との通話を可能な状態にするための通話開始手段を更に備え、前記機関側通信機器からの呼び戻しに対して所定時間以上、前記所定操作が行われない場合、当該通信機器は強制的に通話状態とされる。
【0015】
これにより、通信機器のユーザによる上記所定操作が行われない場合でも、呼び戻しによる通話が可能となる。
【0016】
また例えば、所定操作を行うことによって通信相手との通話を可能な状態にするための通話開始手段を更に備え、前記機関側通信機器からの呼び戻しに対して前記所定操作が行われない場合、前記制御手段は、当該通信機器の有する所定の機能を前記機関側通信機器からの受信内容に従って動作可能とする。
【0017】
これにより、緊急機関は、通信機器の機能を利用することが可能となり、緊急事態等に対する的確な判断形成への寄与が期待できる。
【0018】
例えば、所定操作を行うことによって通信相手との通話を可能な状態にするための通話開始手段を更に備え、前記機関側通信機器からの呼び戻しに対して前記所定操作が行われない場合において前記機関側通信機器から所定のコマンドを受信したとき、前記制御手段は、前記機関側通信機器に対して前記緊急通話内容を送信する。
【0019】
また例えば、所定操作を行うことによって通信相手との通話を可能な状態にするための通話開始手段と、撮像手段と、を更に備え、前記機関側通信機器からの呼び戻しに対して前記所定操作が行われない場合において前記機関側通信機器から所定のコマンドを受信したとき、前記制御手段は、前記撮像手段を動作させて、前記撮像手段の撮像によって得られる画像データを前記機関側通信機器に送信する。
【0020】
また例えば、所定操作を行うことによって通信相手との通話を可能な状態にするための通話開始手段を更に備え、前記音声出力手段は、第1音声出力手段と第1音声出力手段よりも大きな音量を出力可能な第2音声出力手段とを含み、前記機関側通信機器からの呼び戻しに対して前記所定操作が行われない場合において前記機関側通信機器から所定のコマンドを受信したとき、前記制御手段は、前記機関側通信機器からの受信音声を前記第2音声出力手段から出力する。
【0021】
また例えば、前記制御手段は、前記機関側通信機器からの呼び戻しによる通話状態から開放されると、当該通信機器の動作状態を、着信を待ち受ける待受状態に移行させる。
【0022】
また例えば、前記機関側通信機器からの呼び戻しによる通話状態から開放された後、前記緊急通話内容は自動的に或いは外部からの操作によって前記記録手段から消去される。
【0023】
また例えば、前記緊急通報を行った際、前記制御手段は、予め当該通信機器に登録されている他の通信機器に対して所定情報を一斉に送信する。
【0024】
そして例えば、前記所定情報は、文字情報と音声情報の少なくとも一方を含む。
【0025】
また例えば、当該通信機器の現在地を特定するための位置情報を取得する位置情報取得手段を更に備え、前記緊急通報において自動的に前記位置情報が前記機関側通信機器に送信される。
【0026】
これにより、緊急機関側で通信機器の現在地を特定することが可能となり、緊急通報に係る事態の迅速解決への寄与を期待できる。
【0027】
また例えば、当該通信機器の現在地を特定するための位置情報を取得する位置情報取得手段を更に備え、前記緊急通報を行った際、前記制御手段は、前記位置情報を利用して当該通信機器が有する表示手段に当該通信機器の周辺地図に関する情報を表示させる。
【0028】
これによっても、緊急通報に係る事態の迅速解決への寄与を期待できる。
【0029】
また例えば、上記の何れかに記載の通信機器と通信を行うための前記機関側通信機器は、前記通信機器と協働して有効に機能する。
【0030】
また例えば、前記通信機器と前記機関側通信機器との間に介在する通信システム網は、それらと協働して有効に機能する。
【0031】
また例えば、前記通信機器と、前記機関側通信機器と、前記通信システム網と、を備えた通信システムを構成するとよい。
【0032】
また例えば、前記通信機器と前記他の通信機器とで通信機器群を構成するとよい。そして例えば、前記他の通信機器は、前記所定情報を受信して該所定情報を文字もしくは音声として、又は文字及び音声として出力する。
【0033】
また、上記目的を達成するために本発明に係る緊急対応方法は、通信機器と緊急機関側の機関側通信機器との間で緊急通報を行う際、両者間の緊急通話内容を、前記通信機器側にて自動的に記録することを特徴とする。
【0034】
これにより、上記緊急通話内容を利用した的確な対応が期待できる。
【発明の効果】
【0035】
上述した通り、本発明によれば、緊急通報に対する的確な(例えば迅速な)対応の実現が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本実施形態に係る通信機器としての携帯電話機1の内部構成ブロック図である。
【0037】
携帯電話機1は、アンテナ部101と、送受信部102と、変復調部103と、音声処理部104と、音声入力手段としての音声入力部105と、音声出力手段としての受話部106及びスピーカホン部107と、を備えている。アンテナ部101、送受信部102及び変復調部103は、基地局等を介して他の通信機器と無線通信を行うための通信手段を構成している。
【0038】
マイクロフォンから成る音声入力部105を介して入力された音声は、音声処理部104にてデジタルコーデック処理を施された後、変復調部103にて変調され、更に送受信部102にて信号増幅されてから、アンテナ部101より電波として空中に放射される。
【0039】
逆に、アンテナ部101にて受信された電波は、送受信部102にて増幅された後、変復調部103にてデジタル信号に復調され、更に音声処理部104にてアナログの音声信号に変換されてから、受話部106またはスピーカホン部107に与えられ、それらから音声として出力される。
【0040】
受話部106とスピーカホン部107は、共にスピーカによって構成されているが、スピーカホン部107の方がより大きな音量を出力可能であり、同一の音声信号の供給に対する出力音量は、スピーカホン部107の方が受話部106よりも大きい。通常、音声処理部104からの音声信号は受話部106から音声として出力されるが、携帯電話機1の周辺の複数の人に音声を聞かせる場合等は、上記音声信号をスピーカホン部107から出力させるようにする。後述する制御部108は、上記音声信号を、受話部106とスピーカホン部107の何れから出力させるかを切り換え制御する。
【0041】
携帯電話機1は、更に、制御部108、表示部109、キー入力部110、カメラ部111、記録制御部(録音/再生/消去部)112、緊急時用メモリ部113、メモリ部114、緊急信号検出部115、リンガー部119、電話帳120、DTMF信号検出部121、およびGPS部122を備えている。
【0042】
表示部109は、液晶表示装置等から成り、制御部108の制御に従って、キー入力部110を介して入力された電話番号、メッセージ等の文字やカメラ部111の撮影等によって得られた画像を表示する。
【0043】
キー入力部110は、電話をかける場合に電話番号を入力するための0〜9の番号キー116、発信(通話)を行うための通話キー117、及び、終話を行うための終話キー118を含んで構成される。番号キー116、通話キー117及び終話キー118は、押しボタンスイッチからなり、それぞれを押し下げすることにより、それぞれに割り当てられた操作内容(情報)が制御部108に伝達される。
【0044】
番号キー116にて通信相手の電話番号を押下した後、通話キー117を押し下げることにより、通信相手との通話(通信)が可能な状態に移行し、その状態から終話キー118を押し下げると、その通信相手との通信接続が切断され、通話が終了する。また、通信相手からの着信があった場合に通話キー117を押し下げた場合も、その通信相手との間の通話(通信)が可能となる。この場合においても、終話キー118を押し下げると、その通信相手との通信接続が切断され、通話が終了する。このように、通話キー117は、通信相手との通話(通信)が可能な状態に携帯電話機1を移行させるための通信開始手段として機能する。
【0045】
カメラ部111は、携帯電話機1周辺の被写体を撮像するための撮像手段である。例えば、カメラ部111は、レンズ(不図示)とCCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の固体撮像素子を備え、該レンズを介して入射する光学像を画像データ(画像信号)に変換する。該画像データは、必要に応じてメモリ部114または緊急時メモリ部113に保存される。
【0046】
メモリ部114は、上記画像データの他、受信データや送信データも記憶する。リンガー部119は、着信があった際にその着信をユーザに知らしめるための着信通知を行う部位である。例えば、着信があった際に、リンガー部119は、制御部108と協働して着信音をスピーカホン部107から出力させる。また例えば、着信があった際に、リンガー部119自らが着信音を出力する。電話帳120は、キー入力部110等を介して入力された電話番号を保存している。
【0047】
GPS部122は、図2のGPS衛星210が発する電波を利用して、携帯電話機1の現在地を特定するための位置情報を取得する位置情報作取得手段として機能する。携帯電話機1は、GPS部122を利用した所謂ナビゲーション機能を有している。
【0048】
制御部108は、CPU(Central Processing Unit)等から成り、送受信部102、変復調部103、音声処理部104、音声入力部105、受信部106及びスピーカホン部107から成る通話部、表示部109、キー入力部110、カメラ部111、メモリ部114、リンガー部119、電話帳120及びGPS部122の動作を統括的に制御する。
【0049】
更に、制御部108は、記録制御部112、緊急信号検出部115及びDTMF信号検出部121の動作も制御する。記録制御部112等は、110番や119番等の緊急番号(緊急通報番号)が割り当てられている警察や消防署等の緊急機関への緊急通報時に、有効に機能する。
【0050】
緊急信号検出部115は、110番や119番等の緊急番号に対する発信や、該緊急番号からの受信を検出するための部位である。緊急時用メモリ部113は、緊急通報時における通話内容などを記録する記録手段であり、その記録内容は記録制御部112によって制御される。DTMF信号検出部121については、後述する。
【0051】
図2は、図1の携帯電話機1を利用した通信システムの全体ブロック図である。図2における携帯電話機1は図1の携帯電話機1と同じものである。携帯電話機2も携帯電話機1と同じものであり、その構成は図1を参照して示した携帯電話機1のそれと同じになっている。携帯電話機1は基地局204と通信を行い、携帯電話機2は基地局205と通信を行う。
【0052】
以下、特に記述なき限り、携帯電話機1及び2の内の携帯電話機1に着目して説明を行う。つまり例えば、単に、制御部108といった場合、それは、携帯電話機1の制御部108を指すものとする。
【0053】
携帯電話交換局203は、基地局204及び205と通信回線によって接続され、それらを統制する。携帯電話交換局203は、PSTN(Public Switched Telephone Networks)やISDN(Integrated Services Digital Network)などの一般回線によって一般回線交換局202と接続されていると共に、一般回線交換局202を介して上記緊急機関に設けられた電話機等の通信機器201(以下、「機関側通信機器201」という)に接続されている。
【0054】
また、一般家庭や事務所などに設置されているボタン電話機や多機能電話機等の一般電話機208も、一般回線交換局202に接続されている。GPS地図検索データベース部209は、携帯電話交換局203によって制御され、その格納内容は、携帯電話交換局203によって利用される。また、210は、GPS(Global Positioning System)用のGPS衛星であり、GPS衛星210が発した電波は、携帯電話機1及び2に送られる。
【0055】
図1及び図2、並びに、図3及び図4のフローチャートを参照して、交通事故等の緊急事態が発生した場合の携帯電話機1の動作及び通信システム全体の動作について説明する。今、携帯電話機1が緊急通報を行う緊急機関が警察であるとする。
【0056】
図3は、緊急通報時における、携帯電話機1のユーザと緊急機関との間の通話内容(以下、「緊急通話内容」という)の録音動作を説明するためのフローチャートである。
【0057】
交通事故等の緊急事態が発生した場合、ステップS1にて、携帯電話機1のユーザは警察に電話をかけるべく、番号キー116を介して1、1、0の電話番号を入力した後、通話キー117を押下する。続くステップS2において、制御部108は、番号キー116を介して入力された電話番号(今の例の場合、110)が緊急番号であるか否かを、緊急番号が予め登録された緊急信号検出部115を用いて確認する。
【0058】
ステップS1にて入力された電話番号が、緊急信号検出部115に登録された緊急番号の何れかと合致する場合は(ステップS2のY)ステップS3に移行するが、何れとも合致しない場合は(ステップS2のN)図3の処理を終了する。今の場合、緊急信号検出部115に緊急番号として「110」が予め登録されているものとし、ステップS3に移行する。この時点で、携帯電話機1のユーザと機器側通信機器201を使用して緊急通報の応答を行う警察との間の通話内容(緊急通話内容)を、緊急時用メモリ部113に録音する準備が整う。
【0059】
ステップS3では、警察との通話が可能になったかが確認され、該通話が可能になるまでステップS3の処理は繰り返される。具体的には、携帯電話機1から110番アクセス(110番に対応付けられた機関側通信機器201との通信接続)要請を受けた基地局204は、該アクセス要請が110番への緊急アクセス要請であることを携帯電話交換局203に告げ、更に、携帯電話交換局203はPSTNやISDNなどの一般回線を通じて該緊急アクセス(110番アクセス)要請を一般回線交換局202に告げる。
【0060】
一般回線交換局202は、110番への緊急アクセス要請を確認すると、専用回線を用いて警察の機関側通信機器201に回線をつなぐ。これによって、携帯電話機1と機関側通信機器201との通信チャネルが確立され、携帯電話機1のユーザと警察との通話が可能となる。機関側通信機器201との通信チャネルが確立され、警察との通話が可能になったことを制御部108が検出すると、ステップS3からステップS4に移行し、制御部108は記録制御部112に録音開始を指示する。
【0061】
これにより、緊急通話内容の緊急時用メモリ部113への録音が特別な操作を必要とせずに(即ち、自動的に)開始される。具体的には、音声入力部105を介して入力した携帯電話機1のユーザの音声と、機関側通信機器201並びにアンテナ部101及び送受信部102等を介して入力した(受信した)機関側通信機器201の使用者(警察)の音声とが、音声処理部104にてデジタル信号に変換され、上記緊急通話内容を表す該デジタル信号が記録制御部112の制御の下、緊急時用メモリ部113に記録されていく。この際、警察と通信を行ったことに関する記録(通信記録)も、緊急時用メモリ部113(またはメモリ部114)に記録される。
【0062】
緊急通話内容の緊急時用メモリ部113への録音は、その通話が終了するまで継続される。具体的には、ステップS4に続くステップS5にて、終話キー118の押下等によって通話が終了したかを検出し、終了が検出された時点で上記録音を停止する(ステップS6)。
【0063】
現在、110番等への緊急アクセスに対応する通信システムには、緊急通報の発信元(今の場合、携帯電話機1)を確認するための「呼び戻し」と呼ばれる必須機能が備わっている。ここにおける「呼び戻し」とは、ユーザが110番への緊急通報を行って終話(通話を終了)した後、今度は警察からユーザに電話をかけてユーザ確認を行うために備えられた機能である。
【0064】
携帯電話機1のユーザは、110番への緊急通報を終了して終話キー118を押下することにより、警察との通話を完全に終了したと認識する。しかしながら、扱った通報が110番への緊急通報の場合、一般回線交換局202と携帯電話交換局203は、警察(機関側通信機器201)からの終話要請がないならば、一旦繋がった基地局204から機関側通信機器201までの通話パス(通信チャネル)を保持しておくことが可能である(今の場合、該通話パスが保持されているものとする)。
【0065】
従って、携帯電話機1のユーザが110番への緊急通報を終了して終話キー118を押下することにより、携帯電話機1と基地局204との間の無線インターフェース(無線の通話パス)が切断されたとしても、警察(機関側通信機器201)は呼び戻しにより直ちに携帯電話機1を呼び出すことが可能である。
【0066】
このように、110番への緊急通報の後、基地局204から機関側通信機器201までの通話パス(通信チャネル)を保持された状態で、警察(機関側通信機器201)が携帯電話機1を呼び出す動作が、「呼び戻し」である。尚、キャリアの緊急システムによっては(キャリアの基地局側交換機の種類によっては)、ユーザが、110番への緊急通報を終了して終話キー118を押下しても、上記の無線インターフェースを接続したままで呼び戻しが行われる場合もある。
【0067】
呼び戻し待機中及び呼び戻しによる通話中の携帯電話機1と機関側通信機器201との間の通信プロトコルにおいて、携帯電話機1は、機関側通信機器201からの特殊なコマンドに対応することが可能となっている。そのような携帯電話機1の動作を、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0068】
携帯電話機1の制御部108は、送受信部102及びアンテナ部101を介して任意の信号(コマンドを含む)を基地局204に送ることができると共に、アンテナ部101及び送受信部102を介して受信した基地局204からの信号(コマンドを含む)を解析し、受信した信号に応じて携帯電話機1内の各部の動作を制御する。
【0069】
図4のステップS11は、図3のステップS1〜S3の処理を経た後のステップS4に続いて実行される。具体的には、携帯電話機1のユーザが110番通報して、警察に対して緊急事態の事情説明をした後(図3のステップS1〜S3)、ステップS11にて終話キー118が押下されたか否かの検出が行われる。勿論、緊急通話内容はステップS4の処理を経て録音されている。
【0070】
終話キー118の押下が確認された場合(ステップS11のY)、図3のステップS6にて説明したように緊急通話内容の録音は停止され、ステップS12にて制御部108は、基地局204に終話キー押下確認コマンドを送り、ステップS13に移行する。終話キー118の押下は、通常、携帯電話機1のユーザの意思によって実行される。終話キー押下確認コマンドは携帯電話交換局203に伝達され、終話キー押下確認コマンドを受けた携帯電話交換局203は、一般回線交換局202を介して機関側通信機器201に上記の「呼び戻し」が可能であることを通知する。警察が機関側通信機器201に呼び戻しを行うための発呼コマンドを送信させることで、基地局204より携帯電話機1が呼び戻しされる。
【0071】
ステップS13では、制御部108が、上記発呼コマンドに対応する呼び戻しがあるか否かを検出する。呼び戻しを検出すると(ステップS13のY)、制御部108はリンガー部119を用いて着信通知を起動させ、ステップS14に移行する。
【0072】
ステップS14では、通話キー117が押下されたか否かが検出される。ユーザがしっかりとした意識を有していて通話キー117の押下が行われた場合は(ステップS14のY)、ステップS15に移行し、携帯電話機1の動作状態(動作モード)は、警察との通話が可能な通話状態(通話モード)となる。
【0073】
そして、ユーザが警察からの確認事項や質問事項に答えた後、終話キー118を押下すると、ステップS16及びS17を介してステップS18に移行する。ステップS18では、呼び戻しが終了して警察からの呼び戻しによる通話状態から開放され、携帯電話機1の動作状態は任意の発信元からの着信を待ち受ける待受状態(待受モード)に移行する。この後、ユーザは警察の指示に従って、例えば警察から派遣されたパトカー等の到着を待つことになる。尚、携帯電話機1の動作状態を通話状態にするか、待受状態にするかは、制御部108によって決定される。
【0074】
また、ステップS13にて呼び戻しが検出された直後、或いは、それ以降の任意のタイミング(例えば、ステップS14にて通話キー117の押下が検出されたとき)において、緊急時用メモリ部113に記録された緊急通話内容に関するデータを機関側通信機器201に自動的に送信するようにしてもよい。
【0075】
上記は、緊急通報時の通常の動作例であるが、110番通報時においてユーザが何らかのトラブルが生じる場合も十分に考えられる。例えば、通話中に気を失ったり、正常に通話していたとしても突然気が動転して正常に話せなくなったりする場合もある。このような状況下では、ユーザの意思による終話キー118の押下がなされないことになり(ステップS11のN)、この場合は、ステップS11からステップS12ではなくステップS20に移行する。
【0076】
ステップS20では、機関側通信機器201からの強制終話コマンドを受信したか否かを検出する。警察が機関側通信機器201を操作することにより機関側通信機器201から強制終話コマンドが送信されると、該強制終話コマンドは基地局204から携帯電話機1に送信される。制御部108が、上記強制終話コマンドの受信を検出すると(ステップS20のY)、ステップS21に移行して警察との通話が強制終了される。ステップS21における通話の強制終了は、終話キー118の押下による通話終了と同じ結果をもたらすものであり、ステップS21を経た後も、機関側通信機器201からの呼び戻しが可能である。
【0077】
尚、ステップS20において、強制終話コマンドの受信が検出されない場合は(ステップS20のN)ステップS11に戻る。また、ステップS21において、通話の強制終了と同時に、図3のステップS6にて説明したように緊急通話内容の録音は停止される。
【0078】
ステップS21を終えると上述のステップS13に移行して呼び戻しの検出が行われる。警察が機関側通信機器201に呼び戻しを行うための発呼コマンドを送信させることによって呼び戻しを行い、ステップS13からステップS14に移行したとしても、ユーザ側の上記トラブル等によって通話キー117の押下が検出されない場合は(ステップS14のN)、ステップS22に移行する。
【0079】
ステップS22では、機関側通信装置201からの強制通話コマンドの受信を検出する。ステップS13の後、警察が機関側通信装置201を操作することにより機関側通信装置201に強制通話コマンドを送信させた場合、該強制通話コマンドは携帯電話機1によって受信される。制御部108が、該該強制通話コマンドの受信を検出すると(ステップS22のY)、ステップS15に移行し、携帯電話機1の動作状態は強制的に呼び戻しによる通話状態になる。尚、ステップS22おいて、強制通話コマンドの受信が検出されない場合は(ステップS22のN)、ステップS14に戻る。
【0080】
また、ステップS13にて呼び戻しを検出した後、一定時間以上、通話開始手段としての通話キー117の押下が検出されない場合は、強制通話コマンドの受信を待たずに、ステップS15に移行して、携帯電話機1の動作状態を呼び戻しによる通話状態に移行させるようにしても良い。ステップS13にて呼び戻しを検出してからの経過時間は、携帯電話機1に内蔵されたタイマ(不図示)によって計測される。
【0081】
また、機関側通信装置201からの呼び戻しに対して携帯電話機1が一定時間以上応答しない場合に、即ち、機関側通信装置201より呼び戻しのための発呼コマンドを送信してから、一定時間以上、通話キー117の押下による通話状態が実現されない場合に、強制通話コマンドが送信されるようにしてもよい(そのような取り決めを通信システム全体で設けるようにしてもよい)。
【0082】
ステップS22からステップS15の通話状態に遷移した場合において、ユーザの意識が正常な状態に戻って警察との通話が可能となれば、以後終話キー118の押下によって待受状態に戻るが(ステップS16及びS17を介してS18)、ステップS15の通話状態(通話モード)になっても以前ユーザが通話できない場合も考えられる。そのような場合、警察は、機関側通信装置201を操作して携帯電話機1に各種の機能コマンド(機能実現用コマンド)を送信することが可能である。それらの機能コマンドを受信した場合、制御部108は、携帯電話機1の有する所定の機能を、受信した機能コマンドに従って動作させる。
【0083】
具体的には、携帯電話機1側ではステップS15を終えるとステップS16にて、機関側通信装置201からの何らかの機能コマンドを受信したかを検出する。そして、何らかの機能コマンドの受信を検出した場合は(ステップS16のY)ステップS23に移行し、何れの機能コマンドも検出されない場合は(ステップS16のN)ステップS17に移行する。ステップS17では、終話キー118の押下を検出し、終話キー118が押下された場合はステップS18に移行し、終話キー118の押下が検出されない場合はステップS16に戻る。
【0084】
尚、ステップS22にて強制通話コマンドが検出された場合に限ってステップS23への移行を許可するようにしもよい(逆に言えば、ステップS14にて通話キー117が押下された場合はステップS23への移行が許可されないようにしてもよい)。また、機関側通信装置201からの呼び戻しに対して携帯電話機1が一定時間以上応答しない場合に、機関側通信装置201から機能コマンドが送信されるようにしてもよい(そのような取り決めを通信システム全体で設けるようにしてもよい)。
【0085】
ステップS23では、ステップS16にて検出された機能コマンドが解析され、続くステップS24にてステップS23の解析結果に従った機能の実行が行われる。警察が機関側通信機器201を操作することにより、機関側通信機器201から1以上の機能コマンドが携帯電話機1に伝達される。警察は、機能コマンドを送信することで、トラブルに巻き込まれている可能性のあるユーザの状況を携帯電話機1の機能を用いて素早く認知することが可能となる(認知の可能性が高くなる)。本実施形態では、上記機能コマンドとして、第1、第2、第3、第4、第5及び第6機能コマンドを例示する。
【0086】
例えば、110番通報があった時点からの通話記録(即ち、緊急通話内容)を再度聞こうとする場合は、機関側通信機器201から第1機能コマンドを送信する。この第1機能コマンドを携帯電話機1が受信すると、ステップS16及びS23を経たS24において、緊急時用メモリ部113に記録された緊急通話内容に関するデータが機関側通信機器201に送信される。
【0087】
第2機能コマンドの受信が検出された場合は、ステップS24において、制御部108がカメラ部111を動作させる(撮像を行わせる)。そして、制御部108は、カメラ部111の撮像によって得られる画像データを機関側通信機器201に送信する。警察において、この画像データを画像として再生することで携帯電話機1のユーザの周囲の様子を確認することが可能となる。
【0088】
第3機能コマンドの受信が検出された場合は、ステップS24において、制御部108がスピーカホン部107を動作させる。つまり、機関側通信機器201から受信した音声をスピーカホン部107から出力させるようにする。これにより、スピーカホン部107から出力される比較的大きな音量を有する警察官の呼び掛け等によって、例えば気を失ったユーザが気付く場合もある。
【0089】
第1〜第3機能コマンドに対応した機能が実行された後、ステップS25にて所定の時間の経過が確認されると、ステップS18に移行し、携帯電話機1は待受状態に移行する。尚、機関側通信機器201からの所定のコマンドの受信によっても、第1〜第3機能コマンドに対応した機能の実行は即時停止される。
【0090】
また、携帯電話機1のユーザからの緊急通報に関する通話内容(上記緊急通話内容)及び通信記録だけでなく、呼び戻しによる警察との通話内容及びその通信記録も緊急時用メモリ部113(またはメモリ部114)に記録される。警察との通話内容や上記通信記録がいつまでも携帯電話機1の緊急時用メモリ部113(またはメモリ部114)に残ることは、警察にとっても好ましいことではない。これを考慮し、第4機能コマンドが設けられている。
【0091】
即ち、ステップS16及びS23にて第4機能コマンドの受信が検出された場合、ステップS24において、制御部108は、警察との通話内容(緊急通話内容)やそれに対応する通信記録を緊急時用メモリ部113(またはメモリ部114)から消去する。尚、ユーザによるキー入力部110を介した所定の操作によっても、それらを緊急時用メモリ部113(またはメモリ部114)から消去することは可能である。このユーザによる消去動作は、例えば、ステップS18への移行後、即ち、警察からの呼び戻しによる通話状態から開放された後に実行可能となる。また、ステップS18に移行した時点で、制御部108が自動的に警察との通話内容(緊急通話内容)やそれに対応する通信記録を緊急時用メモリ部113(またはメモリ部114)から消去するようにしてもよい。
【0092】
尚、機関側通信機器201から携帯電話機1に送信される各種コマンド(強制終話コマンド、強制通話コマンド及び機能コマンドを含む)を、例えばDTMF(Dial Tone Multi Frequency)信号によって表現することも可能である。この場合、携帯電話機1は、受信したDTMF信号が表す内容をDTMF信号検出部121にて検出し、検出したコマンドに応じた機能が制御部108により実施される。例えば、第1機能コマンド、第2機能コマンド、・・・には、「001」、「002」・・・といった3つの数字のDTMF信号を割り当てるようにする。
【0093】
また、ステップS16及びS23にて第5機能コマンドの受信が検出された場合は、強制的にステップS18に移行し、呼び戻しによる通話を終了して携帯電話機1の動作状態は待受状態となる。
【0094】
また、ステップS16及びS23にて第6機能コマンドの受信が検出された場合は、ステップS24において、制御部108は、GPS部122を動作させる。この後の動作については後述する。
【0095】
また、110番や119番等の緊急番号(緊急通報番号)が割り当てられている警察や消防署等の緊急機関への緊急通報時に、制御部108は、予め登録されている電話番号先(以下、「緊急連絡先」という)に所定の情報(以下、「緊急連絡情報」という)を自動的に一斉に送信する(通報する)。現在のデジタル携帯電話機の通話チャネルにおいて、110番通報と同時に別の電話番号にアクセス可能なことは周知事項であり、例えば、それはSACCH(Slow. Associated Control Channel)やSMS(Short Message Service)などを用いることによって容易に実施できる。
【0096】
緊急連絡先として、例えば、ユーザの家族や友人、ユーザの知り合いの警察官が駐在しているユーザの住まいの近くの駐在所などを登録しておくことで、110番通報により手配されるパトカーなどの救助の手が早く届くといったメリットの享受が期待される。
【0097】
具体的には例えば、キー入力部110を介して110番の電話番号を入力してから通話キー117を押下した際(即ち、機関側通信機器201に対して発信した際)、或いは、その発信によって携帯電話機1と機関側通信機器201との通信が可能になった際に、上記緊急連絡先に上記緊急連絡情報を自動的に一斉送信する。
【0098】
上記緊急連絡先は、電話帳120に格納されている電話番号の中から、キー入力部110を介したユーザの操作等によって予め選択設定されている。また、電話帳120を用いることなく、直接、キー入力部110を介して電話番号を入力することによっても上記緊急連絡先を登録することが可能である。
【0099】
図5に、上記緊急連絡先を設定登録する際の表示部109の表示画面例を示す。図5に示す画面301〜画面307間の遷移を生じさせる各選択操作は、キー入力部110への操作によって行われる。
【0100】
まず、キー入力部110を介してユーザが所定の操作を行うことにより、表示部109の表示内容は画面301の状態となり、携帯電話機1は、ユーザに上記の一斉送信(一斉アクセス)の設定を行うか否かの選択入力を要求する。一斉送信の設定を行う旨の選択を行うと、表示部109の表示内容は画面302の状態となり、ユーザに上記緊急連絡先の設定手法を選択するよう要求する。
【0101】
画面302の状態において、上記緊急連絡先を電話帳120の中から設定する旨の選択を行うと、表示部109の表示内容は画面303の状態となり、表示部109に電話帳102に登録されている電話番号或いは電話番号に対応付けられた連絡先名が表示される。この状態において、ユーザが上記緊急連絡先として登録を希望する電話番号或いは連絡先名を選択することにより、表示部109の表示内容は画面304の状態を経て画面305の状態に遷移し、上記緊急連絡先が設定される(登録される)。
【0102】
画面302の状態において、番号キー116を用いて電話番号を直接入力することによって上記緊急連絡先を設定する旨の選択を行うと、表示部109の表示内容は画面306の状態となり、ユーザから電話番号が入力されるのを待機する。ここで、ユーザが緊急連絡先となるべき電話番号を入力すると、表示部109の表示内容は画面307の状態を経て画面305の状態に遷移し、その電話番号が緊急連絡先として設定される(登録される)。
【0103】
上記緊急連絡情報は、「現在110番通報している」等の固定メッセージ(内容が固定されたメッセージ)である。上記固定メッセージは、例えば、メモリ部114に予め登録されている文字列「現在、αは110番通報中です」中のαに置換されるべきユーザの名前を、キー入力部110を介して入力することによって形成される。勿論、上記文字列中の「110番」は、緊急通報を行った緊急機関に応じて変更される(例えば、消防署の場合は「119番」に変更される)。
【0104】
図6に、上記緊急連絡先を設定登録する際の表示部109の表示画面例を示す。図6に示す画面311〜画面315間の遷移を生じさせる各選択操作は、キー入力部110への操作によって行われる。
【0105】
まず、キー入力部110を介してユーザが所定の操作を行うことにより、表示部109の表示内容は画面311の状態となり、携帯電話機1は、ユーザに上記固定メッセージの設定を行うか否かの選択入力を要求する。上記固定メッセージの設定を行う旨の選択を行うと、表示部109の表示内容は画面312の状態となり、ユーザに上記固定メッセージの一部を複数の選択肢の中から選択するように要求する。
【0106】
固定メッセージの一部の選択を終えると、表示部109の表示内容は画面313の状態となり、今度は、ユーザの名前の入力を要求する。ここで、ユーザがキー入力部110を介して名前の入力を行うと、表示部109の表示内容は画面314の状態を経て画面315の状態に遷移し、上記固定メッセージの全体が決定される(登録される)。
【0107】
また、上記緊急連絡情報として音声情報を採用するようにしてもよい。例えば、ユーザが音声入力部105を介して「太郎です。緊急事態です。」等の音声を予め携帯電話機1に与え、その音声を音声処理部104を介して音声情報(音声データ)としてメモリ部114に格納しておく。そして、緊急通報時に、制御部108は、上記緊急連絡先に緊急連絡情報としての上記音声情報を自動的に一斉送信する(通報する)。勿論、緊急連絡情報として上記固定メッセージ(文字情報)と上記音声情報の双方を自動的に一斉送信するようにしても良い。
【0108】
緊急通報時に一斉送信された上記固定メッセージは、緊急連絡先の通信機器(携帯電話機2や一般電話機208等)にて受信され、該通信機器の表示部(不図示)に文字として表示される。緊急通報時に一斉送信された音声情報は、緊急連絡先の通信機器(携帯電話機2や一般電話機208等)にて受信され、該通信機器の音声出力部(不図示)から音声として出力される。
【0109】
また、110番や119番等の緊急番号(緊急通報番号)が割り当てられている警察や消防署等の緊急機関への緊急通報時に、制御部108は、GPS部122を動作させて、GPS部122によって取得される携帯電話機1の現在地を特定するための位置情報を機関側通信機器201に自動的に送信する。
【0110】
具体的には例えば、キー入力部110を介して110番の電話番号を入力してから通話キー117を押下した際(即ち、機関側通信機器201に対して発信した際)、或いは、その発信によって携帯電話機1と機関側通信機器201との通信が可能になった際に、制御部108は、GPS衛星210から発せられる電波を用いてGPS部122に上記位置情報を作成させ、その位置情報を基地局204に送信する。該位置情報によって、携帯電話機1の現在地の緯度、経度及び高度などが特定される。
【0111】
基地局204を介して該位置情報を受け取った携帯電話交換局203は、GPS地図検索データベース部209に格納された情報を参照して、携帯電話機1の現在地の具体的な住所を特定すると共に携帯電話機1の周辺地図を表す地図情報を作成する。この地図情報には、携帯電話機1の最寄りの派出所や警察署までの道路情報が含まれている。
【0112】
作成された上記の具体的な住所は、テキストデジタル情報として機関側通信機器201に送信され、機関側通信機器201にて「東京都港区1丁目2−3」等の文字列に変換される。これを利用することで、警察は緊急通報に係る携帯電話機1の現在地を素早く認知することができる。
【0113】
また、作成された上記地図情報は、基地局204を介して携帯電話機1に返送され、制御部108は、受信した地図情報に基づいて携帯電話機1の周辺地図を表示部109に表示させる。
【0114】
尚、図4のステップS16及びS23にて第6機能コマンドの受信が検出された場合に、ステップS24にて行われる処理も上記と同様である。即ち、この場合、ステップS24にて、上記位置情報を作成して該位置情報を基地局204に送信する。この位置情報を利用した処理によって、警察は携帯電話機1の具体的な住所を認識し、また、携帯電話機1の周辺地図が表示部109に表示される。
【0115】
上記のように構成される図1の携帯電話機1及び図2の通信システムによれば、緊急通報を行っている途中や呼び戻しの時にユーザにトラブルが発生して、警察や消防署との緊急事態の確認ができなくなった場合でも、警察や消防署からのコマンドにてユーザの携帯電話機1を可能な限り機能させることにより最善の対応を行うことが可能となる。つまり、例えば、110番通報したにもかかわらず、呼び戻しに応答できなかったことで緊急事態の対応が大きく遅れるといった事が回避でき、最善の対応をとれる確率が著しく向上する。
【0116】
<<変形等>>
尚、通信機器として携帯電話機を例示したが、勿論、携帯電話機以外の通信機器(例えば、設置場所が固定された固定型の電話機等の通信機器)に対しても本発明は適用可能である。
【0117】
また、機関側通信機器201から携帯電話機1に送信される各種コマンド(強制終話コマンド、強制通話コマンド及び機能コマンドを含む)は、携帯電話機1と機関側通信機器201との間の通信プロトコルにおいて、予め定義されている。
【0118】
また、上に記載されている「一定時間」の各長さは、事前に定められている。
【0119】
また、図2に示す通信システムの例において、携帯電話機1と機関側通信機器201の間に介在する通信システム網は、一般回線交通局202、携帯電話交換局203、基地局204及び基地局205並びにそれらを接続する通信回線を含んで構成される。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の実施の形態に係る携帯電話機のブロック構成図である。
【図2】図1の携帯電話機を含む通信システムのブロック構成図である。
【図3】図1の携帯電話機の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図1の携帯電話機の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】図1の表示部の表示内容を表す画面例である。
【図6】図1の表示部の表示内容を表す画面例である。
【符号の説明】
【0121】
1、2 携帯電話機
101 アンテナ部
102 送受信部
103 変復調部
104 音声処理部
105 音声入力部
106 受話部
107 スピーカホン部
108 制御部
109 表示部
110 キー入力部
111 カメラ部
112 記録制御部
113 緊急時用メモリ部
114 メモリ部
115 緊急信号検出部
116 番号キー
117 通話キー
118 終話キー
119 リンガー部
120 電話帳
121 DTMF信号検出部
122 GPS部
201 機関側通信機器
202 一般回線交通局
203 携帯電話交換局
204 基地局
205 基地局
208 一般電話機
209 GPS地図検索データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信手段、音声入力手段及び音声出力手段を有し、緊急機関における機関側通信機器に対して緊急通報が可能な通信機器において、
前記音声入力手段及び前記通信手段を介した通話内容を記録可能な記録手段と、
前記機関側通信機器を介した前記緊急機関との間の緊急通話内容を自動的に前記記録手段に記録する制御手段と、を備えた
ことを特徴とする通信機器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記機関側通信機器からの呼び戻しがあった際、その機関側通信機器に対して前記緊急通話内容を自動的に送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信機器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記機関側通信機器から所定の強制終話コマンドを受信した際、前記機関側通信機器を介した前記緊急機関との間の通話を強制的に終了する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信機器。
【請求項4】
所定操作を行うことによって通信相手との通話を可能な状態にするための通話開始手段を更に備え、
前記機関側通信機器からの呼び戻しに対して所定時間以上、前記所定操作が行われない場合、当該通信機器は強制的に通話状態とされる
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の通信機器。
【請求項5】
所定操作を行うことによって通信相手との通話を可能な状態にするための通話開始手段を更に備え、
前記機関側通信機器からの呼び戻しに対して前記所定操作が行われない場合、前記制御手段は、当該通信機器の有する所定の機能を前記機関側通信機器からの受信内容に従って動作可能とする
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の通信機器。
【請求項6】
所定操作を行うことによって通信相手との通話を可能な状態にするための通話開始手段を更に備え、
前記機関側通信機器からの呼び戻しに対して前記所定操作が行われない場合において前記機関側通信機器から所定のコマンドを受信したとき、前記制御手段は、前記機関側通信機器に対して前記緊急通話内容を送信する
ことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の通信機器。
【請求項7】
所定操作を行うことによって通信相手との通話を可能な状態にするための通話開始手段と、撮像手段と、を更に備え、
前記機関側通信機器からの呼び戻しに対して前記所定操作が行われない場合において前記機関側通信機器から所定のコマンドを受信したとき、前記制御手段は、前記撮像手段を動作させて、前記撮像手段の撮像によって得られる画像データを前記機関側通信機器に送信する
ことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の通信機器。
【請求項8】
所定操作を行うことによって通信相手との通話を可能な状態にするための通話開始手段を更に備え、
前記音声出力手段は、第1音声出力手段と第1音声出力手段よりも大きな音量を出力可能な第2音声出力手段とを含み、
前記機関側通信機器からの呼び戻しに対して前記所定操作が行われない場合において前記機関側通信機器から所定のコマンドを受信したとき、前記制御手段は、前記機関側通信機器からの受信音声を前記第2音声出力手段から出力する
ことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の通信機器。
【請求項9】
前記制御手段は、前記機関側通信機器からの呼び戻しによる通話状態から開放されると、当該通信機器の動作状態を、着信を待ち受ける待受状態に移行させる
ことを特徴とする請求項1〜請求項8の何れかに記載の通信機器。
【請求項10】
前記機関側通信機器からの呼び戻しによる通話状態から開放された後、前記緊急通話内容は自動的に或いは外部からの操作によって前記記録手段から消去される
ことを特徴とする請求項1〜請求項9の何れかに記載の通信機器。
【請求項11】
前記緊急通報を行った際、前記制御手段は、予め当該通信機器に登録されている他の通信機器に対して所定情報を一斉に送信する
ことを特徴とする請求項1〜請求項10の何れかに記載の通信機器。
【請求項12】
前記所定情報は、文字情報と音声情報の少なくとも一方を含む
ことを特徴とする請求項11に記載の通信機器。
【請求項13】
当該通信機器の現在地を特定するための位置情報を取得する位置情報取得手段を更に備え、
前記緊急通報において自動的に前記位置情報が前記機関側通信機器に送信される
ことを特徴とする請求項1〜請求項12の何れかに記載の通信機器。
【請求項14】
当該通信機器の現在地を特定するための位置情報を取得する位置情報取得手段を更に備え、
前記緊急通報を行った際、前記制御手段は、前記位置情報を利用して当該通信機器が有する表示手段に当該通信機器の周辺地図に関する情報を表示させる
ことを特徴とする請求項1〜請求項13の何れかに記載の通信機器。
【請求項15】
請求項1〜請求項14の何れかに記載の通信機器と通信を行うための前記機関側通信機器。
【請求項16】
請求項1〜請求項14の何れかに記載の通信機器と、該通信機器と通信を行うための前記機関側通信機器との間に介在する通信システム網。
【請求項17】
請求項1〜請求項14の何れかに記載の通信機器と、該通信機器と通信を行うための前記機関側通信機器と、それらの間に介在する通信システム網と、を備えた
ことを特徴とする通信システム。
【請求項18】
請求項11に記載の通信機器及び他の通信機器を備えた通信機器群であって、
前記他の通信機器は、前記所定情報を受信して該所定情報を文字もしくは音声として、又は文字及び音声として出力する
ことを特徴とする通信機器群。
【請求項19】
通信機器と緊急機関側の機関側通信機器との間で緊急通報を行う際、
両者間の緊急通話内容を、前記通信機器側にて自動的に記録する
ことを特徴とする緊急対応方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−189363(P2007−189363A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4338(P2006−4338)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】