説明

通信用半導体集積回路

【課題】送受信動作に使用する周波数シンサセイザとしてフラクショナルN PLL回路を含むRF通信用半導体集積回路において、PLL回路のチャージポンプ回路CPCのソース電流注入トランジスタとスィンク電流放出トランジスタとのミスマッチに起因する非線型性の影響を軽減する一方、PLL回路の位相ノイズを低減するための補償回路の回路規模を小さくして補償回路の制御も単純化すること。
【解決手段】受信動作と送信動作とに使用する周波数シンサセイザFrct_SynthとしてフラクショナルN PLL回路のクローズドループ帯域を、数十KHzのオーダーの狭帯域とする。チャージポンプ回路CPCの2つのトランジスタのミスマッチに起因する非線型性の影響の軽減を最も段純な方法であるオフセット回路MN2、MN3によるループフィルタLFCへのdc直流電流Ioffsetの注入もしくはLFCからのIoffsetの放出によって実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分周比Nが整数だけでなく分数(小数)を含むフラクショナルN PLL(Phase Locked Loop)回路を具備するRF通信用半導体集積回路に関し、特に、受信動作と送信動作とに使用する周波数シンサセイザとしてフラクショナルN PLL回路を具備したRF通信用半導体集積回路において、フラクショナルN PLL回路のチャージポンプ回路CPCのソース電流注入トランジスタとスィンク電流放出トランジスタとのミスマッチに起因する非線型性の影響を軽減する一方、フラクショナルN PLL回路の位相ノイズを低減するための補償回路の回路規模を小さくするとともに補償回路の制御も単純化するのに有益な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
分周比が整数のみの一般的なPLL回路ではロックド・ループの周波数解像度は基準周波数fREFとなるので、精密な周波数解像度が必要な場合は小さな基準周波数fREFを必要とし、従って小さな(狭い)ループ周波数帯域となる。狭いループ周波数帯域はPLL回路のロック周波数決定に長いスイッチング時間を要するので望ましくなく、また、PLL回路の電圧制御発振器(VCO)の位相雑音の抑圧が不十分でPLL回路外部からの雑音の影響を受けやすい。
【0003】
フラクショナルシンセサイザは基準周波数fREFよりも精密な周波数解像度を持つために開発され、フラクショナルN分周器では分周比は周期的にNからN+1に変更され、結果的に平均分周比はNよりも(N+1)分周のデューティー比分だけ増加する。累積加算器(アキュムレータ)からのオーバーフローは、瞬時の分周比を変調するために使用される。
【0004】
このようにフラクショナルPLL回路は、PLL回路の負帰還ループ中の分周器の分周比Nが整数だけでなく分数(小数)を含む有理数である。このフラクショナルN分周によって、与えられたチャンネルスペーシングに対する広いループ帯域は高速・セットリングタイムを可能とし、電圧制御発振器に要求される位相ノイズ要求も低くなる。また、下記非特許文献1には、1次ΔΣ変調器(ΣΔ変調器とも呼ばれる)の累積加算器(アキュムレータ)に関係した分周比がn/n+1の二重係数分周器(Dual Modulus Divider)が記載されている。累積加算器のオーバーフローの条件がn+1への分周へのシフトに使用されている。さらに、下記非特許文献2には、フラクショナルN分周に高次ΔΣ変調による高次ノイズシェービング技術によりフラクショナルN周波数合成でのスプリアス出力周波数も低減すると報告されている。
【0005】
さらに、下記非特許文献3には、1次ΣΔ変調器を複数多段としたMASH(Multistage noise Shaping Technique)を用いたフラクショナルN周波数シンサセイザが報告されている。
【0006】
また、下記非特許文献4には、WCDMA(Wide Band Channel-Division Multiple Access)用途のRF半導体集積回路に採用するためのスプリアス雑音補償と線型化技術とを採用した700KHzの周波数帯域のフラクショナルN周波数シンサセイザが、記載されている。このRF半導体集積回路は、広帯域において直接変調の送信方式を採用している。また、フラクショナルPLL回路のクローズドループ帯域幅は700KHzと、極めて広い帯域となっている。さらに、このフラクショナルN周波数シンサセイザの位相比較器は、データ入力端子に電源電圧VDDが供給されてクロック入力端子に基準周波数信号が供給されたアップ用のフリップフロップと、データ入力端子に電源電圧VDDが供給されてクロック入力端子に分周器からの分周出力信号が供給されたダウン用のフリップフロップと、アップ用のフリップフロップの出力信号とダウン用のフリップフロップの出力信号とが2つの入力端子に供給されたAND回路と、AND回路の出力信号が供給された遅延回路とを含んでいる。遅延回路の出力信号は、アップ用のフリップフロップのリセット入力端子とダウン用のフリップフロップのリセット入力端子とに供給される。電圧制御発振器の発振周波数を制御する位相制御電圧を生成するローパス・フィルターにソース電流を供給するチャージポンプ回路のPチャンネルMOSトランジスタのゲート入力端子はアップ用のフリップフロップの出力信号により駆動され、ローパス・フィルターからスィンク電流を流すNチャンネルMOSトランジスタのゲート入力端子はダウン用のフリップフロップの出力信号により駆動される。この非特許文献4には、PLLビルディングブロックでの非線型性は、主として位相比較器とチャージポンプ回路の入出力特性であり、特にフラクショナルPLL回路の帯域内スプリアス雑音を増加すると記載している。またこの非特許文献4は、位相比較器とチャージポンプ回路との典型的な非線型性は、チャージポンプ回路のP−MOSとN−MOSとのミスマッチに起因すると記載している。さらに非特許文献4は、他の非線型性は、特に位相差が小さい場合での位相差ΔΦ対注入電荷Qで示されると記載している。また、非特許文献4は、この非線型性の影響を完全に回避するためには、位相比較器とチャージポンプ回路とをそれらのより線型な部分で動作させることであると記載している。さらに非特許文献4は、これを達成する最も単純な方法は、ループフィルタにdc直流電流を注入することであるが、参照スプリアス雑音を強調すると言う欠点があると記載している。また、非特許文献4は、より良い解決は、位相比較器とチャージポンプ回路をその非線型部分の外部で動作するように長いパルス幅とされて位相比較器入力の比較エッジに同期した周期電流パルスをループフィルタに注入することであると記載している。
【0007】
さらに、下記非特許文献5には、前記非特許文献4に記載の周期電流パルスのループフィルタへの注入と類似した追加パルスソース電流と追加パルススィンク電流とをループフィルタに流すチャージポンプ線型化技術と位相ノイズキャンセル技術が紹介されている。これにより、ブルートース準拠無線LAN(Local Area Network)送信機として構成したCMOSΔΣフラクショナル−N PLLとダイレクトコンバージョン・ブルートース準拠受信機のための局部発振器において、必要とされた1−Mb/sの転送信号のループ内の変調を可能とする十分に広い460KHzの帯域幅で必要とされる位相ノイズとスプリアス特性との仕様を達成したと報告している。
【0008】
【非特許文献1】Brian Miller and Robert J. Conley ”A Multiple Modulator Fractional Divider”, IEEE TRANSACTIONS ON INSTRUMENTATION AND MEASUREMENT, VOL.40.NO.3.JUNE 1991.PP.578−583.
【非特許文献2】Tom A.D.Riley et al“Delta−Sigma Modulation in Fractional−N Frequency Synthesis”, IEEE JOUNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS, VOL.28.NO.5.MAY 1993.PP.553−559.
【非特許文献3】A.E.Hussein and M.I.Elmasry “A FRACTIONAL−N FREQUENCY SYNTHESIZER FOR WIRELESS COMMUNICATIONS”, 2002 IEEE International Symposium Circuits and Systems,PP.IV−513−IV−516.
【非特許文献4】Enrico Temporiti et al,“A 700−kHz Bandwidth ΣΔ Fractinal Synthesizer With Spur Compensation and Linearization Techniques for WCDMA Applications”, IEEE JOUNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS, VOL.39.NO.9.SEPTEMBER 2004.PP.1446−1454.
【非特許文献5】Sudhakar Pamarti et al,”A Wideband 2.4−GHz Delta−Sigma Fractional−N PLL With 1−Mb/s In−Loop Modulation“, IEEE JOUNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS, VOL.39.NO.1.JANUARY 2004.PP.49−62.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明に先立って、本発明者等は、GSM方式の通信に対応するRF ICの開発に従事した。
【0010】
GSM方式(Global System for Mobile Communication)は、TDMA方式のひとつとして、位相変調のみを使用するGMSK(Gaussian minimum Shift Keying)変調を行う通信方式である。尚、TDMAは、Time-Division Multiple Accessの略称である。このTDMA方式では、携帯電話端末機器の複数のタイムスロットのそれぞれのタイムスロットを、アイドル状態と、基地局からの受信動作と、前記基地局への送信動作とのいずれかに設定可能である。このGSM方式と比較して、通信データ転送レートを改善する方式も知られている。この改善方式として、位相変調とともに振幅変調を使用するEDGE(Enhanced Data for GSM Evolution; Enhanced Data for GPRS)方式も最近注目されている。尚、GPRSはGeneral Packet Radio Serviceの略称である。
【0011】
このRF ICのフラクショナルPLL回路では、水晶振動子とベースバンドLSIからの自動周波数制御(AFC)信号とにより安定で正確な基準信号を生成する基準周波数発振器DCXOの基準発振周波数fREFをベースにRF送信用電圧制御発振器TXVCOの発振周波数fTXVCOを生成する。最近のGSM通信方式に対応するRF ICは、GSM850MHz、GSM900MHz、DCS1800MHz、PCS1900MHzの4つの周波数帯に対応するように構成されている。従って、RF送信用電圧制御発振器TXVCOの発振周波数fTXVCOも、この4つの周波数バンドに対応しなければならない。RF ICの基準周波数発振器DCXOの基準発振周波数fREFは数十MHzのオーダーの周波数であるのに対して、複数の周波数バンドに対応するRF送信用電圧制御発振器TXVCOの発振周波数fTXVCOは数GHzのオーダーの周波数となる。すなわち、基準周波数発振器DCXOの基準発振周波数fREFと比較すると、RF送信用電圧制御発振器TXVCOからの発振周波数fTXVCOは遥かに高い周波数となる。このように、RF ICのフラクショナルPLL回路は、基準周波数発振器DCXOの数十MHzのオーダーの基準発振周波数fREFをフラクショナルN分周比の逆数である周波数逓倍比による周波数逓倍を行うことにより、数GHzのオーダーのRF送信用電圧制御発振器TXVCOの基準発振周波数fTXVCOを生成する。
【0012】
図1は、本発明に先立って本発明者等によって検討された通信用半導体集積回路RF ICのチップ上に形成されたフラクショナルシンサセイザFrct_Synthの構成を示す図である。
【0013】
同図に示すように、フラクショナルシンサセイザFrct_Synthは、水晶振動子Xtalと図示しないベースバンドLSIからの自動周波数制御(AFC)信号とによって安定でかつ正確な基準発振周波数fREFに設定された基準周波数発振器DCXOを含む。この基準発振周波数fREFは、例えば26MHzの周波数に設定されている。基準周波数発振器DCXOからの基準発振周波数fREFの基準周波数信号は、フラクショナルPLL回路の位相比較器PDCの一方の入力端子に供給されている。位相比較器PDCの出力は、チャージポンプ回路CPCとローパスフィルターLFCとを介してRF電圧制御発振器RFVCOに供給される。このRF電圧制御発振器RFVCOの出力は分周器DIVの入力に供給され、分周器DIVの分周出力信号は位相比較器PDCの他方の入力端子に供給される。分周器DIVの分周比を制御する制御入力端子には、分周比設定ロジックDRSLに接続され、分周比設定ロジックDRSLには図示しないベースバンドLSIからのRF通信のためのチャンネル選択情報Channel_infが供給される。尚、分周器DIVはカウンタで構成され、例えばRF電圧制御発振器RFVCOの出力のローレベルからハイレベルへの変化をゼロからカウントアップして、分周比を制御する制御入力端子に設定された値から1を引いた値の頻度で、分周器DIVの分周出力信号をローレベルからハイレベルに変化させる。分周器DIVの分周出力信号がハイレベルとなったら、次のRF電圧制御発振器RFVCOの出力のローレベルからハイレベルへの変化により、カウンタのカウント値をゼロとし、分周器DIVの分周出力信号をローレベルに戻して、次の分周動作を実行する。分周比設定ロジックDRSLは、分周比演算器DRALUとΣΔ変調器ΣΔModと加算器ADDとから構成されている。まず、分周比演算器DRALUの整数ユニットIntと分数ユニットFraとは、入力されたチャンネル選択情報Channel_infに基づいて整数値情報Iと分数値情報Fとを計算する。分周比演算器DRALUの整数ユニットIntからの整数値情報Iは加算器ADDの一方の入力端子に供給され、分周比演算器DRALUの分数ユニットFraからの分数値情報FはΣΔ変調器ΣΔModに供給され、ΣΔ変調器ΣΔModには基準周波数発振器DCXOからの基準周波数信号はfREFが動作クロック信号として更に供給される。一方、ΣΔ変調器ΣΔModは内部情報として分周比を設定する分母情報Gを保持している。一例として、分母情報Gは、1625に設定されている。ΣΔ変調器ΣΔModは、分数値情報Fと分母情報Gとから、分数値情報F÷分母情報G、一例として403/1625の分数(フラクション)の情報を持つ出力信号F/Gを生成して、加算器ADDの他方の入力端子に供給する。加算器ADDは整数値情報I(一例として、I=137)と出力信号F/GとからI+F/G、一例として137+(403/1625)=137.248の出力情報を平均分周比Nとして分周器DIVに供給する。その結果、分周器DIVの平均分周比が137.248と整数と分数(小数)とを含む値に設定される。従って、フラクショナルシンサセイザFrct_Synthは、基準周波数発振器DCXOからの基準発振周波数fREFの26MHzと平均分周比N(137.248)とを乗算した3568.448MHzの発振周波数fRFVCOのRF発振出力信号を生成する。また、平均分周比Nについて詳しく述べると、分周比演算器DRALUの整数ユニットIntからの整数値情報I(I=137)と、ΣΔ変調器ΣΔModからの出力信号F/Gに応じた頻度(403/1625)で発生するオーバーフロー・1ビット出力とに応答して、分周器DIVの分周比nはn(=I=137)からn+1(=I+1=138)に変更される。従って、分周器DIVの分周比がn(=I=137)となる頻度は1222/1625=75.2%で、分周器DIVの分周比がn+1(=I+1=138)となる頻度は403/1625=24.8%である。従って、平均分周比Nは、137×0.752+138×0.248=137.248となる。
【0014】
図2は、図1に示したフラクショナルシンサセイザFrct_SynthのΣΔ変調器ΣΔModの構成を示す図である。
【0015】
同図に示すように、分周比演算器DRALUの分数ユニットFraからの分数値情報Fは第1加算器Sum1の一方の入力端子に入力信号(A)として供給される一方、第1加算器Sum1の他方の入力端子には後に説明する第2加算器Sum2の出力信号(C)が供給される。第1加算器Sum1の出力信号は積分器Intgrtrとしての遅延回路に供給され、積分器Intgrtrの出力信号(B)は1ビット出力の量子化器qntzrの入力に供給される。量子化器qntzrの出力信号(D)は、所定のゲイン1/Gを持つ帰還回路fbcの入力に供給される。このゲイン1/Gの逆数Gは、ΣΔ変調器ΣΔModは内部情報として分周比を設定する分母情報G(一例として、G=1625)に対応する。従って、量子化器qntzrの1ビット出力信号(D)が“0”の非オーバーフロー状態では帰還回路fbcの出力はゼロとなり、量子化器qntzrの1ビット出力信号(D)が“1”のオーバーフロー状態では帰還回路fbcの出力は1625となる。従って、帰還回路fbcは、1ビットのD/A変換器として動作する。従って、量子化器qntzrの1ビット出力信号(D)が“1”のオーバーフロー状態が生じると、第2加算器Sum2では積分器Intgrtrの出力信号(B)の累積加算から帰還回路fbcの出力1625の減算が実行される。さらに、第2加算器Sum2の出力信号(C)は、第1加算器Sum1の他方の入力端子に供給される。また、非オーバーフロー状態・オーバーフロー状態を示す量子化器qntzrの1ビット出力信号(D)は、ΣΔ変調器ΣΔModの出力信号F/Gとして加算器ADDに供給される。
【0016】
図3は、図2に示したフラクショナルシンサセイザFrct_SynthのΣΔ変調器ΣΔModの動作を示す図である。尚、図3のラベル(A)から(D)は、図2の信号(A)から(D)に対応している。
【0017】
図1に示したようにΣΔ変調器ΣΔModには、基準周波数発振器DCXOからの基準周波数fREFを持つ基準周波数信号が動作クロック信号として供給される。また、図3の(A)に示すように、ΣΔ変調器ΣΔModの第1加算器Sum1の一方の入力端子には、入力信号(A)として分数値情報Fが定常的に供給されている。従って、動作クロック信号の1サイクルで、積分器Intgrtrの出力から1回の累積加算結果が得られる。図3の(B)に示すように、動作クロック信号の5サイクル目で、積分器Intgrtrの出力信号(B)から5回目の累積加算結果が得られる。また、図3の(D)に示すように、動作クロック信号の5サイクル目では、量子化器qntzrの1ビット出力信号(D)に“1”のオーバーフロー状態が現れる。すると、図3の(C)に示すように、第2加算器Sum2では積分器Intgrtrの出力の累積加算から帰還回路fbcの出力1625の減算が実行されて、出力信号(C)が生成される。尚、量子化器qntzrは、入力信号が0〜1624の場合には”0”の非オーバーフロー状態の1ビット出力信号を出力する一方、入力信号が1625もしくはそれよりも大きな値の場合には“1”のオーバーフロー状態の1ビット出力信号を出力する。以上のような動作が動作クロック信号fREFに応答して繰り返され、ΣΔ変調器ΣΔModからの分数情報F/G(403/1625)の頻度で“1”のオーバーフロー状態の1ビット出力信号が量子化器qntzrから生成される。
【0018】
図2に示した量子化器qntzrの出力信号(D)、すなわちΣΔ変調器ΣΔModの1ビット出力信号F/Gは、図1の分周比設定ロジックDRSLの加算器ADDに供給され、この加算器ADDで分周比演算器DRALUの整数ユニットIntより供給される整数値情報Iと加算される。ΣΔ変調器ΣΔModの1ビット出力信号が“0”の非オーバーフロー状態ではフラクショナルシンサセイザFrct_Synthの分周器DIVの分周比nは整数値情報I(I=137)に設定され、ΣΔ変調器ΣΔModの1ビット出力信号が“1”のオーバーフロー状態ではフラクショナルシンサセイザFrct_Synthの分周器DIVの分周比は(n+1)(=(I+1)=138)に設定されて、その結果、平均分周比Nは137.248となる。
【0019】
図4は、図1のフラクショナルシンサセイザFrct_Synthで使用されるMASH(Multistage noise Shaping Technique)により構成されたMASH方式のΣΔ変調器ΣΔModを示す図である。MASH方式のΣΔ変調器は、1次ΣΔ変調器を多段接続したもので、n次ΣΔ変調ノイズ・シェービング特性が得られるものである。
【0020】
同図に示すように、1段目のΣΔ変調器は、図2に示したΣΔ変調器ΣΔModと同様に加算器Sum11、積分器Intgrtr11としての遅延回路、1ビット出力の量子化器qntzr1、ゲイン1/Gを持つ帰還回路fbc1、加算器Sum12を含むとともに、量子化器qntzr1の出力は積分器Intgrtr12を介して出力F/Gの加算器Sum13に伝達される。1段目のΣΔ変調器の加算器Sum12の出力は、2段目のΣΔ変調器へ伝達される。1段目のΣΔ変調器と同様に、2段目のΣΔ変調器は、加算器Sum21、積分器Intgrtr21としての遅延回路、1ビット出力の量子化器qntzr2、ゲイン1/Gを持つ帰還回路fbc2、加算器Sum22、積分器Intgrtr22、加算器Sum23を含むとともに、加算器Sum23の出力と加算器Sum13の入力との間に接続されたディジタル微分器dif11を含む。2段目のΣΔ変調器の加算器Sum22の出力は、3段目のΣΔ変調器へ伝達される。3段目のΣΔ変調器は、加算器Sum31、積分器Intgrtr31としての遅延回路、1ビット出力の量子化器qntzr3、ゲイン1/Gを持つ帰還回路fbc3、加算器Sum32を含み、量子化器qntzr3の出力はディジタル微分器dif21を介して加算器Sum23に伝達される。
【0021】
この図4に示したΣΔ変調器ΣΔModは、3次のΣΔ変調器であり、上記の非特許文献3で報告された高次のΣΔ変調器ΣΔModと原理的に同一のものであり、ノイズ・シェービング特性を改善することができる。この高次のΣΔ変調器ΣΔModは3次のΣΔ変調器に限定されるものではなく、3次から5次のΣΔ変調器を使用することができる。
【0022】
尚、図4に示すように、分数値情報Fが供給される入力端子と1段目のΣΔ変調器の加算器Sum11の入力との間には、別の加算部Sum0が接続されている。加算部Sum0の一方の入力端子には分数値情報Fが供給され、加算部Sum0の他方の入力端子にディザーditherの出力からの擬似ランダム雑音がディジタル微分器diff31とゲイン1に設定されたアンプ(1)を介して伝達される。
【0023】
図5は、図4のディザーditherの回路構成を示す図である。同図に示すように、ディザーditherは、5段の遅延回路D1〜D5と排他的OR回路EXOR1、3段の遅延回路D6〜D8と排他的OR回路EXOR2、4段の遅延回路D9〜D12と排他的OR回路EXOR3、2段の遅延回路D13、D14で構成されている。初段の遅延回路D1に初期値が入力されることにより、最終段の遅延回路D14の出力が初段の遅延回路D1の入力に帰還される。このディザーditherの出力は215−1通りの組み合わせを持つ”0”と”1”の1ビットのストリームの擬似ランダム雑音である。その結果、ディザーditherの出力に接続されたディジタル微分器diff31の出力は+1、0、−1のいずれかとなるが、+1は連続して出力されず、−1も連続して出力されない。図4に示した高次のΣΔ変調器ΣΔMod(例えば、3次のΣΔ変調器)では、ディザーditherとディジタル微分器diff31とが省略されると、分数値情報Fに依存した高次のΣΔ変調器ΣΔModの回路の周期的な分周比変化によるスプリアス信号が発生する。このスプリアス信号を低減するため、図4の加算部Sum0の他方の入力端子に接続されたディザーditherからのディザー振幅を適切な値に設定する。その結果、擬似ランダム雑音によって高次のΣΔ変調器ΣΔModの回路の周期的な分周比変化によるノイズ(フラクショナルノイズ)を乱し、ディザーに際して周波数変換されるスプリアス信号を更に高域に周波数変換する。その結果、GMSK(Gaussian minimum Shift Keying)の規格で定められた送信変調スペクトラムの規格で厳しい400KHzの周波数帯域でのスプリアス信号のレベルを低減することができる。
【0024】
図6は、図1のフラクショナルシンサセイザFrct_Synthの位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCとローパスフィルタLFCの回路構成を示す図である。尚、ローパスフィルタLFCからの制御出力電圧VCNTが大きくなると、RF電圧制御発振器RFVCOの出力信号の周波数は高くなる。
【0025】
同図に示すように、位相比較器PDCは、データ入力端子に電源電圧VDDが供給されてクロック入力端子に基準周波数発振器DCXOからの基準周波数信号VREFが供給されたアップ用のフリップフロップFF_Upと、データ入力端子に電源電圧VDDが供給されてクロック入力端子に分周器DIVからの分周出力信号VDIVが供給されたダウン用のフリップフロップFF_Dnと、アップ用のフリップフロップFF_Upの出力信号Qとダウン用のフリップフロップFF_Dnの出力信号Qとが2つの入力端子に供給されたNAND回路と、NAND回路の出力信号が供給された遅延回路Dly_Cirとを含んでいる。遅延回路Dly_Cirの出力信号Vは、アップ用のフリップフロップFF_Upのリセット入力端子/Rとダウン用のフリップフロップFF_Dnのリセット入力端子/Rとに供給される。電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOを制御する位相制御電圧を生成するローパスフィルタLFCにソース電流Isourceを供給するチャージポンプ回路CPCのPチャンネルMOSトランジスタMP1のゲート入力端子はアップ用のフリップフロップFF_Upの出力信号Q(VQREF)により駆動されたスイッチにより制御され、ローパスフィルタLFCからスィンク電流Isinkを流すNチャンネルMOSトランジスタMN1のゲート入力端子はダウン用のフリップフロップFF_Dnの出力信号Q(VQDIV)により駆動されたスイッチにより制御される。ローパスフィルタLFCは、複数の抵抗R1、R2と複数の容量C1、C2、C3とを含む高次(3次)のループフィルタによって構成されている。チャージポンプ回路CPCのソース電流Isourceとスィンク電流Isinkとは、容量C1の一端、抵抗R1の一端、抵抗R2の一端を駆動する。抵抗R2の他端と容量C3の一端の接続ノードから電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOを制御するための制御出力電圧VCNTが生成される。
【0026】
図7は、図1のフラクショナルシンサセイザFrct_Synthにおいてチャージポンプ回路CPCのPチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceの電流値とNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkの電流値とが等しい理想的な状態で、基準周波数発振器DCXOからの基準周波数信号VREFの位相よりも分周器DIVからの分周出力信号VDIVの位相が進んでいる場合のアンロック状態での位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの各部の波形を示す図である。尚、図1のフラクショナルシンサセイザFrct_Synthにおいて、分周器DIVの分周比を制御する制御入力端子には固定値が供給されているものと仮定する。
【0027】
図7に示すように、分周出力信号VDIVのローレベルからハイレベルへの立ち上がりにほぼ同期してダウン用のフリップフロップFF_Dnの出力信号VQDIVがローレベルからハイレベルへ変化して、アップ用のフリップフロップFF_Upがセット状態に制御される。その後基準周波数信号VREFのローレベルからハイレベルへの立ち上がりにほぼ同期してアップ用のフリップフロップFF_Upの出力信号VQREFがローレベルからハイレベルへ変化してダウン用のフリップフロップFF_Dnがセット状態に制御される。出力信号VQDIVと出力信号VQREFとがともにハイレベルになって遅延回路Dly_Cirの遅延時間T_Dlyの経過の後、ローレベルのリセット信号Vが遅延回路Dly_Cirから生成される。すると、ローレベルのリセット信号Vにより、アップ用のフリップフロップFF_Upとダウン用のフリップフロップFF_Dnとがリセット状態に制御される。アップ用のフリップフロップFF_Upのセット状態の期間に、チャージポンプ回路CPCのPチャンネルMOSトランジスタMP1に接続されたスイッチSWがオフ状態となってPチャンネルMOSトランジスタMP1からのソース電流IsourceがローパスフィルタLFCに流れる。ダウン用のフリップフロップFF_Dnのセット状態の期間に、チャージポンプ回路CPCのNチャンネルMOSトランジスタMN1に接続されたスイッチSWがオフ状態となって、ローパスフィルタLFCからNチャンネルMOSトランジスタMN1にスィンク電流Isinkが流れる。基準周波数信号VREFの位相よりも分周出力信号VDIVの位相が進んでいる場合には、ソース電流Isourceが流れる期間よりもスィンク電流Isinkが流れる期間が長くなり、トータルのチャージポンプ電流ICPはNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkによって負の電流となる。従って、ローパスフィルタLFCから生成される制御出力電圧VCNTのレベルが低下して電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOが低下して、分周出力信号VDIVの位相が遅れ始める。最終的には、基準周波数信号VREFの位相に分周出力信号VDIVの位相が合致して、ロック状態に移行する。
【0028】
図8は、図1のフラクショナルシンサセイザFrct_Synthにおいてチャージポンプ回路CPCのPチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceの電流値とNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkの電流値とが等しい理想的な状態で、基準周波数発振器DCXOからの基準周波数信号VREFの位相と分周器DIVからの分周出力信号VDIVの位相とが合致しているロック状態の場合の位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの各部の波形を示す図である。尚、ここでも、図1のフラクショナルシンサセイザFrct_Synthにおいて、分周器DIVの分周比を制御する制御入力端子には固定値が供給されているものと仮定している。
【0029】
図8に示すように、ソース電流Isourceが流れる期間とスィンク電流Isinkが流れる期間が等しくなり、トータルのチャージポンプ電流ICPはゼロとなる。従って、ローパスフィルタLFCから生成される制御出力電圧VCNTのレベルが維持される。最終的には、基準周波数信号VREFの位相と分周出力信号VDIVの位相とが合致した状態が維持される。
【0030】
図9は、図1のフラクショナルシンサセイザFrct_Synthにおいてチャージポンプ回路CPCのPチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceの電流値よりもNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkの電流値が小さな現実的な状態で、基準周波数発振器DCXOからの基準周波数信号VREFの位相よりも分周器DIVからの分周出力信号VDIVの位相が進んでいる位相差オフセット付きロック状態の場合の位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの各部の波形を示す図である。尚、ここでも、図1のフラクショナルシンサセイザFrct_Synthにおいて、分周器DIVの分周比を制御する制御入力端子には固定値が供給されているものと仮定している。RF ICにおいて、NチャンネルMOSトランジスタのドレイン・ソース電圧VDS−ドレイン電流Iの特性での定電流特性よりも、PチャンネルMOSトランジスタのドレイン・ソース電圧VDS−ドレイン電流Iの特性での定電流特性の方が劣っている。すなわち、NチャンネルMOSトランジスタでは、ドレイン・ソース電圧VDSの変動ΔVDSに対するドレイン電流IのΔ変動Iが小さいのに対して、PチャンネルMOSトランジスタでは、ドレイン・ソース電圧VDSの変動ΔVDSに対するドレイン電流IのΔ変動Iが大きい。その結果、NチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkの電流値よりも、PチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceの電流値が大きくなる。
【0031】
図9に示すように、図8のロック状態と比較すると、NチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkが小さい分、ソース電流Isourceが流れる期間よりもスィンク電流Isinkが流れる期間が長くなる。図9において、スィンク電流Isinkの理想電流値からの不足分Aの面積と、スィンク電流Isinkが流れる期間の延長分の面積Bとが等しくなっている。従って、ソース電流Isourceの時間積分値とスィンク電流Isinkの時間積分値とは等しくなって、トータルのチャージポンプ電流ICPはゼロとなる。従って、ローパスフィルタLFCから生成される制御出力電圧VCNTのレベルが維持される。最終的には、基準周波数信号VREFの位相よりも周出力信号VDIVの位相が進んでいる位相差オフセット付きロック状態が維持される。
【0032】
図10は、図1のフラクショナルシンサセイザFrct_Synthにおいてチャージポンプ回路CPCのPチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceの電流値よりもNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkの電流値が小さな現実的な状態で、分周器DIVの分周比が高い分周比から低い分周比に変更された場合の位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの各部の波形を示す図である。フラクショナルPLLに図4に示したような高次のMASH方式のΣΔ変調器を使用すると高次のΣΔ変調ノイズシェーピング特性が得られるだけではなく、量子化器qntzr1、qntzr2、qntzr3から伝達される分周比変更値も高い値となる。すなわち、図4に示したようなMASH方式のΣΔ変調器の次数がNであれば、分周比変更値は2となる。N=3であれば、分周比変更値は8と大きな値となる。フラクショナル分周器DIVの分周比が高い分周比N+8から低い分周比Nに変更された場合を想定する。尚、フラクショナルPLLでは以下に説明するように、位相差オフセット付きロック状態から、電圧制御発振器RFVCOの発振出力信号の周波数を長くしたり短くしたりする制御を常時行うことにより平均して所望の分数(小数)を含む分周比と発振周期とを得るものである。
【0033】
図10に示すように、分周比が低い分周比Nに変更されたことにより、図1のフラクショナルシンサセイザFrct_Synthにおいて分周器DIVのカウントアップの終了のタイミングが早くなるので、図9と比較すると、分周器DIVからの分周出力信号VDIVがローレベルからハイレベルに変化するタイミングがΔTだけ早まる。図10において、アップ用のフリップフロップFF_Upとダウン用のフリップフロップFF_Dnとがリセット状態に制御されるローレベルのリセット信号Vの生成タイミングは遅延回路Dly_Cirによる遅延時間T_Dlyで決定されるので、図9でのローレベルのリセット信号Vの生成タイミングと同一である。従って、ソース電流Isourceが流れる期間よりもスィンク電流Isinkが流れる期間が長くなり、トータルのチャージポンプ電流ICPはNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkによって負の電流となる。従って、ローパスフィルタLFCから生成される制御出力電圧VCNTのレベルが低下して電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOが低下して、電圧制御発振器RFVCOの発振出力信号の発振周期が長くなるように制御される。
【0034】
図11は、図1のフラクショナルシンサセイザFrct_Synthにおいてチャージポンプ回路CPCのPチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceの電流値よりもNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkの電流値が小さな現実的な状態で、分周器DIVの分周比が低い分周比から比較的高い分周比に変更された場合の位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの各部の波形を示す図である。その結果、基準周波数信号VREFの位相に分周出力信号VDIVの位相が偶然的に合致させられ、図10に示した延長期間ΔTは、分周周期の短縮に対応して図11では消失している。尚、図11のこのロック状態は、図9に示したトータルのチャージポンプ電流ICPがゼロの位相差オフセット付きロック状態とは異なり、トータルのチャージポンプ電流ICPがチャージポンプ回路CPCのPチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceによって正の電流となる。従って、ローパスフィルタLFCから生成される制御出力電圧VCNTのレベルが上昇して電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOが上昇して、電圧制御発振器RFVCOの発振出力信号の発振周期が短くなるように制御される。
【0035】
図12は、図1のフラクショナルシンサセイザFrct_Synthにおいてチャージポンプ回路CPCのPチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceの電流値よりもNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkの電流値が小さな現実的な状態で、分周器DIVの分周比が低い分周比Nから相当高い分周比N+8に変更された場合の位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの各部の波形を示す図である。
【0036】
分周比が相当高い分周比N+8に変更されたことにより、図1のフラクショナルシンサセイザFrct_Synthにおいて分周器DIVのカウントアップの終了のタイミングが相当遅延されようとする。しかし、分周器DIVからの分周出力信号VDIVがローレベルからハイレベルに変化するタイミングは、遅延回路Dly_Cirによる遅延時間T_Dlyに侵入することはできない。アップ用のフリップフロップFF_Upとダウン用のフリップフロップFF_Dnとがともにセット状態に制御され、遅延回路Dly_Cirの遅延時間T_Dlyの経過の後、ローレベルのリセット信号Vが遅延回路Dly_Cirから生成されるためには、遅延回路Dly_Cirによる遅延時間T_Dlyが確保されなければならない。
【0037】
従って、図12に示すように、図9と比較すると、分周器DIVからの分周出力信号VDIVがローレベルからハイレベルに変化するタイミングが遅延されるとともに、アップ用のフリップフロップFF_Upとダウン用のフリップフロップFF_Dnとがともにセット状態に制御され、ローレベルのリセット信号Vが生成される遅延回路Dly_Cirの遅延時間がT_DlyからT_Dly‘に延長されている。このように、分周出力信号VDIVの分周周期の期間2ΔTの短縮は、分周出力信号VDIVがローレベルからハイレベルに変化するタイミングの遅延とローレベルのリセット信号Vが生成される生成タイミングの遅延とにより達成される。従って、スィンク電流Isinkが流れる期間よりもソース電流Isourceが流れる期間が長くなり、トータルのチャージポンプ電流ICPはPチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceによって正の電流となる。従って、ローパスフィルタLFCから生成される制御出力電圧VCNTのレベルが上昇して、電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOが上昇して、電圧制御発振器RFVCOの発振出力信号の発振周期が短くなるように制御される。
【0038】
ところで、本発明者等は、チャージポンプ回路CPCのPチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceの電流値よりもNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkの電流値が小さな現実的な状態では、図10に示すように分周比が高い分周比から低い分周比Nに変更された場合には、電圧制御発振器RFVCOはNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkによるトータルの負のチャージポンプ電流ICPによるローパスフィルタLFCの制御出力電圧VCNTによって決定され、図12に示すように分周比が低い分周比から相当高い分周比Nに変更された場合には、電圧制御発振器RFVCOはPチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceによるトータルの正のチャージポンプ電流ICPによるローパスフィルタLFCの制御出力電圧VCNTによって決定されることを見出した。特に、フラクショナルPLLに図4に示したような高次のMASH方式のΣΔ変調器を使用すると、フラクショナル分周器DIVの分周比は高い分周比N+8から低い分周比Nへ、また逆に低い分周比Nから高い分周比N+8へ、大きな変化幅にて頻繁に変更される。このような大きな変化幅の分周比変更の都度、電圧制御発振器RFVCOの発振動作は、PチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceによるトータルの正のチャージポンプ電流ICPで決定される状態とNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkによるトータルの負のチャージポンプ電流ICPで決定される状態との間で切り換えられる。
【0039】
また、本発明者等は、チャージポンプ回路CPCのPチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceの電流値よりもNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkの電流値が小さな現実的な状態では、図11に示すように基準周波数信号VREFの位相に対して分周出力信号VDIVの位相が合致している状態を境界として図9と図10とに示すように基準周波数信号VREFの位相に対して分周出力信号VDIVの位相が進んでおりチャージポンプ電流ICPが負から正に変化する状態と図12に示すように基準周波数信号VREFの位相に対して分周出力信号VDIVの位相が遅れておりチャージポンプ電流ICPが負となることはなく正のみで変化する状態とが存在して、この両極端の2つの状態でチャージポンプ回路CPCの動作も大きく相違することも見出した。
【0040】
特に、本発明者等は、本発明に先立ってチャージポンプ回路CPCのソース電流注入トランジスタとスィンク電流放出トランジスタとの特性のミスマッチにより、2つの状態でのチャージポンプ電流ICPの電流値が相違して、フラクショナルPLL回路の位相ノイズ特性に大きな影響を与えることを見出した。
【0041】
図13は、チャージポンプ回路CPCのソース電流注入トランジスタとスィンク電流放出トランジスタとの特性がマッチして、チャージポンプ回路CPCのNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流IsinkとPチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceの電流値が等しい場合のフラクショナルPLL回路の位相ノイズ特性を示す図である。
【0042】
図13で、縦軸は位相ノイズレベルであり、横軸は中心周波数からのオフセット周波数である。スィンク電流Isinkとソース電流Isourceの電流値が等しい場合には、最大位相ノイズは約−78dBc/Hz以下に抑圧されている。
【0043】
図14は、チャージポンプ回路CPCのソース電流注入トランジスタとスィンク電流放出トランジスタとの特性がミスマッチして、チャージポンプ回路CPCのNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkの電流値よりもPチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceの電流値が大きい場合のフラクショナルPLL回路の位相ノイズ特性を示す図である。スィンク電流Isinkよりもソース電流Isourceの電流値が大きい場合には、最大位相ノイズは約−75dBc/Hzにまで増加している。
【0044】
この図14の結果は、フラクショナルPLL回路の帯域内スプリアス雑音の増加は、チャージポンプ回路のP−MOSとN−MOSとのミスマッチに起因するとの前記非特許文献4の記載とも一致している。
【0045】
前記非特許文献4では、フラクショナルPLL回路のクローズドループ帯域幅は700KHzと、極めて広い帯域となっている。また、このRF ICの送信方式は、700KHzの広帯域での直接変調の送信方式を採用している。直接変調の送信方式とは、ベースバンドLSIのようなベースバンド信号処理ユニットからの送信ベースバンド信号Iと送信ベースバンド信号Qとをベクトル合成して形成したベースバンド送信信号をベースバンド周波数帯域からRF送信周波数帯域に直接変調する方式である。このようなアーキテクチャーのRF ICでは、前記非特許文献4は、非線型性の影響を完全に回避するための最も単純な方法はループフィルタにdc直流電流を注入することであるが、参照スプリアス雑音を強調すると言う欠点があると記載している。
【0046】
しかし、前記非特許文献4でより良い解決として記載された長いパルス幅とされ位相比較器入力の比較エッジに同期した周期電流パルスをループフィルタに注入する方法や前記非特許文献5に記載された追加パルスソース電流と追加パルススィンク電流とをループフィルタに流す方法は、本発明者等の検討によって回路規模も大きいだけではなく、周期電流パルスや追加パルスのタイミング制御も煩雑であるとの問題を有することが明らかとされた。
【0047】
従って、本発明は、上記のような本発明者等による検討結果を基にしてなされたものである。従って、本発明の目的とするところは、受信動作と送信動作とに使用する周波数シンサセイザとしてフラクショナルN PLL回路を具備したRF通信用半導体集積回路において、フラクショナルN PLL回路のチャージポンプ回路CPCのソース電流注入トランジスタとスィンク電流放出トランジスタとのミスマッチに起因する非線型性の影響を軽減する一方、フラクショナルN PLL回路の位相ノイズを低減するための補償回路の回路規模を小さくするとともに補償回路の制御も単純化することにある。
【0048】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴とは、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0049】
上記の目的を解決するための本発明の基本的な技術思想は、受信動作と送信動作とに使用する周波数シンサセイザとしてフラクショナルN PLL回路のクローズドループ帯域を数十KHzのオーダーの狭帯域とし、フラクショナルN PLL回路のチャージポンプ回路CPCのソース電流注入トランジスタとスィンク電流放出トランジスタとのミスマッチに起因する非線型性の影響の軽減を最も段純な方法であるループフィルタへのdc直流電流の注入によって実現することである。前記非特許文献4で参照スプリアス雑音を強調するとの理由によって否定されたループフィルタへのdc直流電流の注入は、本発明においてはフラクショナルN PLL回路のクローズドループ帯域を数十KHzのオーダーの狭帯域に設定することによって、大きなスプリアス雑音や位相ノイズの発生を回避することが可能となる。
【0050】
本発明の前記基本的な技術思想を実現する本発明のより具体的な技術思想は、RF通信用半導体集積回路の送信動作をオフセットPLL回路で実現することである。
【0051】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
【0052】
すなわち、本発明のひとつの形態による通信用半導体集積回路は、基準発振周波数(fREF)の基準周波数信号を生成する基準周波数発振器(DCXO)と、前記基準周波数発振器(DCXO)から形成された前記基準周波数信号が一方の入力端子に供給される位相比較器(PDC)と、前記位相比較器(PDC)のアップ出力信号とダウン出力信号とに応答するチャージポンプ回路(CPC)と、前記チャージポンプ回路(CPC)のチャージポンプ電流(ICP)に応答するローパスフィルタ(LFC)と、前記ローパスフィルタ(LFC)の制御出力電圧(VCNT)に応答するRF電圧制御発振器(RFVCO)と、前記RF電圧制御発振器(RFVCO)の出力端子と前記位相比較器(PDC)の他方の入力端子との間に接続された分周器(DIV)とを含むことにより周波数シンセサイザ(Frct_Synth)を構成するPLL回路と、前記PLL回路の前記RF電圧制御発振器の前記出力端子のRF発振出力信号(fRFVCO)を利用してRF通信のRF送信信号のためのRF送信周波数信号を生成するRF送信用電圧制御発振器(TXVCO)とを具備する。前記周波数シンセサイザ(Frct_Synth)を構成する前記PLL回路は、前記分周器(DIV)の分周比が変更されることにより平均分周比が整数と分数とを含むフラクショナルPLL回路であり、そのクローズドループ帯域は数十KHzのオーダーの狭帯域に設定されている(図15参照)。
【0053】
前記チャージポンプ回路(CPC)は、前記位相比較器(PDC)の前記アップ出力信号(VQREF)に応答して前記ローパスフィルタ(LFC)にソース電流(Isource)を注入するソース電流供給トランジスタ(MP1)と、前記位相比較器(PDC)の前記ダウン出力信号(VQDIV)に応答して前記ローパスフィルタ(LFC)からスィンク電流(Isink)を放出するスィンク電流放出トランジスタ(MN1)と、前記ローパスフィルタ(LFC)からdc直流電流を放出するかまたは前記ローパスフィルタ(LFC)にdc直流電流を注入するオフセット電流回路(MN2、MN3、Roffset)とを含む(図16、図17参照)。
【0054】
上記オフセット電流回路(MN2、MN3、Roffset)は前記dc直流電流を所定値(Ioffset)に設定するように意図的なデバイスサイズに設定されたデバイス(MN2、MN3、Roffset)を含んでいる(図18、図19参照)。
【0055】
本発明の前記ひとつの形態の手段によれば、本発明の前記基本的な技術思想で説明したメカニズムにより、当初の目的を解決することができる。
【0056】
本発明の前記より具体的な形態の手段によれば、GMSK(Gaussian minimum Shift Keying)の規格で定められた送信変調スペクトラムの400KHzの近傍周波数帯域でのスプリアス信号のレベルを低減することができる。
【0057】
本発明のより具体的な形態による半導体集積回路では、前記周波数シンセサイザ(Frct_Synth)を構成する前記PLL回路は、前記RF電圧制御発振器(RFVCO)から生成された前記RF発振出力信号(fRFVCO)を分周することにより中間周波数信号(fIF DIV)を生成する中間周波数分周器(IF DIV)を含む。前記半導体集積回路は、前記中間周波数分周器(IF DIV)から生成される前記中間周波数信号(fIF DIV)と送信ベースバンド信号(TxABI、TXABQ)とから中間周波送信信号を形成する送信ミキサー(TX−MIX_I、TX−MIX_Q)と、送信系オフセットPLL回路(TX_Offset_PLL)と、前記RF電圧制御発振器(RFVCO)から生成された前記RF発振出力信号(fRFVCO)を分周することにより分周RF周波数信号を生成するRF分周器(RF DIV)とを含む。前記送信系オフセットPLL回路(TX_Offset_PLL)は、前記送信ミキサー(TX−MIX_I、TX−MIX_Q)から生成される前記中間周波送信信号が一方の入力端子に供給される位相比較回路(PC)と、前記位相比較回路(PC)の出力に応答する前記RF送信用電圧制御発振器(TXVCO)と、前記RF送信用電圧制御発振器(TXVCO)から生成される前記RF送信周波数信号(fTXVCO)が一方の入力端子に供給され前記RF分周器(RF DIV)から生成される前記分周RF周波数信号が他方の入力端子に供給される位相制御帰還用周波数ダウンミキサー(DWN_MIX_PM)とを含む。前記位相制御帰還用周波数ダウンミキサー(DWN_MIX_PM)の出力信号は、前記位相比較回路(PC)の他方の入力端子に供給される(図15参照)。
【0058】
本発明のより具体的な形態による半導体集積回路は、RF受信信号アナログ信号処理回路(RX SPU)を含む。前記RF受信信号アナログ信号処理回路(RX SPU)は、RF受信信号を増幅するローノイズアンプ(LNA1〜LNA4)と、前記ローノイズアンプ(LNA1〜LNA4)によって生成されたRF増幅受信出力信号が供給されることによって受信ベースバンド信号(RxABI、RxABQ)を生成する受信ミキサー(RX−MIX_I、RX−MIX_Q)とを含む。前記周波数シンセサイザ(Frct_Synth)を構成する前記PLL回路は、前記RF電圧制御発振器(RFVCO)から生成される前記発振周波数(fRFVCO)の前記RF発振出力信号を分周することにより前記受信ミキサー(RX−MIX_I、RX−MIX_Q)へ供給するRFキャリア信号を形成する第1分周器(DIV1)と、前記第1分周器(DIV1)の出力信号を分周する第2分周器(DIV4)とを含む。
【0059】
前記半導体集積回路がGSM850MHzの周波数帯域もしくはGSM900MHzの周波数帯域の前記RF受信信号を受信する場合には、前記第1分周器(DIV1)から生成された分周出力信号が前記RFキャリア信号として前記受信ミキサー(RX−MIX_I、RX−MIX_Q)へ伝達されることにより、前記受信ミキサー(RX−MIX_I、RX−MIX_Q)から前記GSM850MHzの前記周波数帯域もしくは前記GSM900MHzの前記周波数帯域の前記RF受信信号から周波数変換された受信ベースバンド信号(RxABI、RxABQ)が生成される。
【0060】
前記半導体集積回路がDCS1800MHzの周波数帯域もしくはPCS1900MHzの周波数帯域の前記RF受信信号を受信する場合には、前記RF電圧制御発振器(RFVCO)から生成される前記発振周波数(fRFVCO)の前記RF発振出力信号が前記RFキャリア信号として前記受信ミキサー(RX−MIX_I、RX−MIX_Q)へ伝達されることにより、前記DCS1800MHzの前記周波数帯域もしくは前記PCS1900MHzの前記周波数帯域の前記RF受信信号から周波数変換された受信ベースバンド信号(RxABI、RxABQ)が生成される。
【0061】
前記半導体集積回路がGSM850MHzの周波数帯域もしくはGSM900MHzの周波数帯域の前記RF送信周波数信号を形成する場合には、前記送信ミキサー(TX−MIX_I、TX−MIX_Q)により前記中間周波数信号と送信ベースバンド信号(TxABI、TxABQ)とから前記中間周波送信信号が形成され、前記RF分周器(RF DIV)として前記第1分周器(DIV1)と前記第2分周器(DIV4)とが動作することにより、前記第2分周器(DIV4)の分周出力信号が前記送信系オフセットPLL回路(TX_Offset_PLL)の前記位相制御帰還用周波数ダウンミキサー(DWN_MIX_PM)の前記他方の入力端子に前記分周RF周波数信号として伝達され、前記送信系オフセットPLL回路(TX_Offset_PLL)にて前記中間周波送信信号が前記GSM850MHzの前記周波数帯域もしくは前記GSM900MHzの前記周波数帯域の前記RF送信周波数信号(fTXVCO)へ周波数変換される。
【0062】
前記半導体集積回路がDCS1800MHzの周波数帯域もしくはPCS1900MHzの周波数帯域の前記RF送信周波数信号を形成する場合には、前記送信ミキサー(TX−MIX_I、TX−MIX_Q)により前記中間周波数信号と送信ベースバンド信号(TxABI、TxABQ)とから前記中間周波送信信号が形成され、前記RF分周器(RF DIV)として前記第1分周器(DIV1)が動作することにより、前記第1分周器(DIV1)の分周出力信号が前記送信系オフセットPLL回路(TX_Offset_PLL)の前記位相制御帰還用周波数ダウンミキサー(DWN_MIX_PM)の前記他方の入力端子に前記分周RF周波数信号として伝達され、前記送信系オフセットPLL回路(TX_Offset_PLL)にて前記中間周波送信信号が前記DCS1800MHzの前記周波数帯域もしくは前記PCS1900MHzの前記周波数帯域の前記RF送信周波数信号(fTXVCO)へ周波数変換される(図24参照)。
【0063】
本発明の前記より具体的な形態の手段によれば、GSM850MHz、GSM900MHz、DCS1800MHz、PCS1900MHzの4つの周波数帯域の受信・送信が可能となる。
【0064】
本発明のより具体的な形態による半導体集積回路は、EDGE(Enhanced Data for GSM Evolution; Enhanced Data for GPRS)方式に対応するためのポーラループ方式で構成され、前記送信系オフセットPLL回路(TX_Offset_PLL)は前記ポーラループ方式の位相変調のための位相ループ(PM LP)と前記ポーラループ方式の振幅ループ(AM LP)とを含み、前記送信系オフセットPLL回路(TX_Offset_PLL)の前記位相比較回路(PC)と前記RF送信用電圧制御発振器(TXVCO)と前記位相制御帰還用周波数ダウンミキサー(DWN_MIX_PM)とは前記位相ループ(PM LP)を構成する(図25参照)。
【0065】
本発明の前記より具体的な形態の手段によれば、位相変調ともに振幅変調を使用する高い通信データ転送レートのEDGE方式に対応することができる。
【0066】
本発明のより具体的な形態による半導体集積回路は、EDGE方式に対応するためのポーラモジュレータ方式で構成され、前記送信系オフセットPLL回路(TX_Offset_PLL)は前記ポーラモジュレータ方式の位相変調のための位相ループ(PM LP)と前記ポーラモジュレータ方式の振幅ループ(AM LP)とを含み、前記送信系オフセットPLL回路(TX_Offset_PLL)の前記位相比較回路(PC)と前記RF送信用電圧制御発振器(TXVCO)と前記位相制御帰還用周波数ダウンミキサー(DWN_MIX_PM)とは前記位相ループ(PM LP)を構成する(図26参照)。
【0067】
本発明の前記より具体的な形態の手段によれば、位相変調ともに振幅変調を使用する高い通信データ転送レートのEDGE方式に対応することができる。
【0068】
本発明のより具体的な形態による半導体集積回路は、前記フラクショナルPLL回路は前記平均分周比の前記小数を計算するためのΣΔ変調器(ΣΔMod)を含み、前記ΣΔ変調器(ΣΔMod)は1次ΣΔ変調器を複数多段としたMASH型である(図4参照)。
【0069】
本発明のより具体的な形態による半導体集積回路は、前記MASH型の前記ΣΔ変調器(ΣΔMod)にはディジタル微分器(diff31)を介してディザー回路(dither)からの擬似ランダム雑音が供給される(図4参照)。
【0070】
本発明の他のひとつの形態による通信用半導体集積回路は、RF受信信号アナログ信号処理回路(RX SPU)と、RF送信信号アナログ信号処理回路(TX SPU)と、周波数シンセサイザ(Frct_Synth)とを含む。前記RF受信信号アナログ信号処理回路(RX SPU)は、RF受信信号を増幅するローノイズアンプ(LNA1〜LNA4)と、前記ローノイズアンプ(LNA1〜LNA4)によって生成されたRF増幅受信出力信号と前記周波数シンセサイザ(Frct_Synth)によって生成された受信キャリア信号とが供給されることによって受信ベースバンド信号(RxABI、RxABQ)を生成する受信ミキサー(RX−MIX_I、RX−MIX_Q)とを含む。前記RF送信信号アナログ信号処理回路(TX SPU)はベースバンド信号処理ユニット(BB_LSI)から送信ベースバンド信号(TxABI、TxABQ)が供給される送信ミキサー(TX−MIX_I、TX−MIX_Q)を含み、前記RF送信信号アナログ信号処理回路(TX SPU)に前記周波数シンセサイザ(Frct_Synth)によって生成された送信キャリア信号とが供給されることによって、前記RF送信信号アナログ信号処理回路(TX SPU)は、RF送信信号(Tx_GSM850、Tx_GSM900、Tx_DCS1800、Tx_PCS1900)を生成する(図24参照)。
【0071】
前記周波数シンセサイザ(Frct_Synth)は、基準発振周波数(fREF)の基準周波数信号を生成する基準周波数発振器(DCXO)と、前記基準周波数発振器(DCXO)から形成された前記基準周波数信号が一方の入力端子に供給される位相比較器(PDC)と、前記位相比較器(PDC)のアップ出力信号とダウン出力信号とに応答するチャージポンプ回路(CPC)と、前記チャージポンプ回路(CPC)のチャージポンプ電流(ICP)に応答するローパスフィルタ(LFC)と、前記ローパスフィルタ(LFC)の制御出力電圧(VCNT)に応答するRF電圧制御発振器(RFVCO)と、前記RF電圧制御発振器(RFVCO)の出力端子と前記位相比較器(PDC)の他方の入力端子との間に接続された分周器(DIV)とを含むPLL回路により構成されている。前記周波数シンセサイザ(Frct_Synth)を構成する前記PLL回路は、前記分周器(DIV)の分周比が変更されることにより平均分周比が整数と分数とを含むフラクショナルPLL回路であり、そのクローズドループ帯域は数十KHzのオーダーの狭帯域に設定されている(図15参照)。
【0072】
前記チャージポンプ回路(CPC)は、前記位相比較器(PDC)の前記アップ出力信号(VQREF)に応答して前記ローパスフィルタ(LFC)にソース電流(Isource)を注入するソース電流供給トランジスタ(MP1)と、前記位相比較器(PDC)の前記ダウン出力信号(VQDIV)に応答して前記ローパスフィルタ(LFC)からスィンク電流(Isink)を放出するスィンク電流放出トランジスタ(MN1)と、前記ローパスフィルタ(LFC)からdc直流電流を放出するかまたは前記ローパスフィルタ(LFC)にdc直流電流を注入するオフセット電流回路(MN2、MN3、Roffset)とを含む(図16、図17参照)。
【0073】
上記オフセット電流回路(MN2、MN3、Roffset)は前記dc直流電流を所定値(Ioffset)に設定するように意図的なデバイスサイズに設定されたデバイス(MN2、MN3、Roffset)を含んでいる(図18、図19参照)。
【発明の効果】
【0074】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
【0075】
すなわち、本発明によれば、受信動作と送信動作とに使用する周波数シンサセイザとしてフラクショナルN PLL回路を具備した通信用半導体集積回路において、フラクショナルN PLL回路のチャージポンプ回路CPCのP−MOSとN−MOSとのミスマッチに起因する非線型性の影響を軽減するとともに、フラクショナルN PLL回路の位相ノイズを低減するための補償回路の回路規模を小さくするとともに補償回路の制御も単純化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
≪フラクショナルシンサセイザFrct_Synthの構成≫
図15は、本発明のひとつの実施形態に従った通信用半導体集積回路RF ICのチップ上に形成されたフラクショナルシンサセイザFrct_Synthの構成を示す図である。
【0077】
これは、基準周波数発振器DCXOを含むフラクショナルシンサセイザFrct_Synthを用いて通信用半導体集積回路RF ICの送信系信号処理サブユニットの周波数制御を行う実施形態を説明するものである。また、フラクショナルシンサセイザFrct_SynthのΣΔ変調器ΣΔModは図4に示した3次のMASH型ΣΔ変調器で構成されるとともに、図5に示したディザー回路を含んでいる。さらに、このフラクショナルシンサセイザFrct_Synthを構成するフラクショナルN PLL回路のクローズドループ帯域は、100KHzよりも遥かに低い数十KHzのオーダーに設定されている。このクローズドループ帯域の具体的な一例は、30KHzである。この送信系信号処理サブユニットは、送信系オフセットPLL回路TX_Offset_PLLを含んでいる。フラクショナルシンサセイザFrct_SynthのRF電圧制御発振器RFVCOの出力である発振周波数fRFVCO(3568.448MHz)のRF発振出力信号が分周比26に設定された中間周波数分周器IF DIVに供給されることにより、中間周波数分周器IF DIVの出力から2倍中間周波数信号(137.248MHz)が形成される。この2倍中間周波数信号(137.248MHz)が90°位相シフター90degShiftの入力に供給されることにより90°位相の異なる2つの中間周波数信号(68.624MHz)が形成される。送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qにはベースバンド送信信号TxABI、TxABQと90°位相の異なる2つの中間周波数信号(68.624MHz)とが供給されることにより、送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qの出力に接続された加算器の出力にはベクトル合成された中間周波送信信号(68.624MHz)が形成される。この中間周波送信信号(68.624MHz)は、位相比較器PCの一方の入力端子に供給される。位相比較器PCの出力はローパスフィルターLF1を介してRF送信用電圧制御発振器TXVCOに供給されることにより、RF送信用電圧制御発振器TXVCOの周波数が略1715.6MHzに制御される。RF送信用電圧制御発振器TXVCOの発振出力信号はバッファアンプBFを介して位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの一方の入力端子に供給され、位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの他方の入力端子には分周比2に設定されたRF分周器RF DIVからのダウンミキサー用RF信号(1784.224MHz)が供給される。位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMではRF送信用電圧制御発振器TXVCOからの発振信号(略1715.6MHz)とRF分周器RF DIVからのダウンミキサー用RF信号(1784.224MHz)とのミキシングが行われる。従って、位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの出力から、差の周波数である1784.224MHz−1715.6MHz=68.624MHzの帰還信号が形成されて、位相比較器PCの他方の入力端子に供給される。位相比較器PCの二つの入力信号の位相と周波数とが一致するように送信系オフセットPLL回路TX_Offset_PLLが負帰還制御を行い、その結果、RF送信用電圧制御発振器TXVCOからの正確な1715.6MHzのRF送信周波数fTXVCOの信号が得られるようになる。また、位相比較器PCの一方の入力端子には、送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qの出力に接続された加算器の出力でベクトル合成された中間周波送信信号fIF(68.624MHz)が供給されている。更に、位相比較器PCの他方の入力端子には、RF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOを分周比2により分周した分周RF発振周波数fRFVCO/2からRF送信用電圧制御発振器TXVCOのRF送信周波数信号の周波数fTXVCOを減算した差周波数信号(fRFVCO/2−fTXVCO)が供給されている。送信系オフセットPLL回路TX_Offset_PLLの負帰還制御によって、位相比較器PCの一方の入力端子の基準周波数と位相比較器PCの他方の入力端子の負帰還周波数とは一致するので、下記の関係が成立する。
【0078】
IF=fRFVCO/2−fTXVCO …(1式)
上記の式を、変形すると下記の式が得られる。
【0079】
TXVCO=fRFVCO/2−fIF …(2式)
=(3568.448MHz/2)−68.624MHz
=1784.224MHz−68.624MHz
=1715.6MHz
従って、送信系オフセットPLL回路TX_Offset_PLL内部のRF送信用電圧制御発振器TXVCOから生成されるRF送信周波数fTXVCOは、フラクショナルシンセサイザFrct_Synth内部のRF電圧制御発振器RFVCOから生成されるRF発振出力信号の発振周波数fRFVCOと送信ミキサーの出力に接続された加算器の出力の中間周波送信信号fIFとに応答して正確に設定される。また、この中間周波送信信号fIFも、送信系オフセットPLL回路TX_Offset_PLL内部のRF送信用電圧制御発振器TXVCOから生成されるRF送信周波数fTXVCOにより正確に設定される。フラクショナルPLLに図4に示した高次のMASH方式のΣΔ変調器を使用すると、分周比の変更値は8と大きな値となって、分周比の変更値が1のような単純な繰り返しパターンよりも、スプリアスノイズを低減することができる。
【0080】
一方、送信系オフセットPLL回路TX_Offset_PLL内部のRF送信用電圧制御発振器TXVCOから生成されるRF送信信号は、RF電力増幅器とアンテナスイッチとを介してアンテナから基地局へ送信される。このRF送信信号に含まれる位相ノイズ成分やスプリアスノイズ成分は、下記に説明するループフィルタLFCへのdc直流電流の注入とフラクショナルシンセサイザFrct_SynthのフラクショナルPLL回路のクローズドループ帯域を数十KHzのオーダーの狭帯域に設定することにより、十分低いレベルまで低減することが可能となる。
【0081】
≪位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの構成≫
図16は、図15に示した本発明のひとつの実施形態に従った通信用半導体集積回路RF ICのチップ上に形成されたフラクショナルシンサセイザFrct_SynthのフラクショナルN PLL回路を構成する位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの構成を示す回路図である。
【0082】
図16が図6に示した本発明に先立ったRF ICの開発の途中で本発明者等により検討されたチャージポンプ回路と基本的に相違するのは、ローパスフィルタLFCからdc直流電流Ioffsetを放出するオフセット電流回路MN2、MN3が追加されたことである。ローパスフィルタLFCにソース電流Isourceを供給するPチャンネルMOSトランジスタ(以下、P−MOSと略す)MP1とP−MOS MP0はカレントミラーを構成する。ダイオード接続のP−MOS MP0には、100μAに設定された定電流Io_Upが供給される。ローパスフィルタLFCからスィンク電流Isinkを流すNチャンネルMOSトランジスタ(以下、N−MOSと略す)MN1とN−MOS MN0もカレントミラーを構成する。ダイオード接続のN−MOS MN0にも、100μAに設定された定電流Io_Dnが供給される。また、ローパスフィルタLFCからdc直流電流Ioffsetを流すN−MOS MN3とN−MOS MN2もカレントミラーを構成する。ダイオード接続のN−MOS MN2にも、100μAに設定された定電流Io_Dnが供給される。カレントミラーを構成するN−MOS MN2とN−MOS MN3とはdc直流電流Ioffsetを所定値に設定するように意図的なデバイスサイズに設定されいる。
【0083】
図18は、図16に示したチャージポンプ回路CPCのP−MOS MP0、MP1、N−MOS MN0、MN1、MN2、MN3のデバイスサイズを示す図である。
【0084】
同図で、S、G、D、Lg、WgはMOSトランジスタのソース、ゲート、ドレイン、ゲート長、ゲート幅をそれぞれ示している。6個のMOSトランジスタのゲート長Lgは全て等しく設定されている。しかし、P−MOS MP0のゲート幅WgMP0とP−MOS MP1のゲート幅WgMP1とは、5対1の比で設定されている。その結果、定電流Io_Upの100μAの5分の1である20μAのソース電流IsourceがP−MOS MP1のドレインからローパスフィルタLFCに供給される。また、N−MOS MN0のゲート幅WgMN0とN−MOS MN1のゲート幅WgMN1とは、5対1の比で設定されている。その結果、定電流Io_Dnの100μAの5分の1である20μAのスィンク電流IsinkがローパスフィルタLFCからN−MOS MN1のドレインに流れる。更に、N−MOS MN2のゲート幅WgMN2とN−MOS MN3のゲート幅WgMN3とは、5対0.15の比で設定されている。定電流Io_Dnの100μAの5分の0.15である3μAのdc直流電流IoffsetがローパスフィルタLFCからN−MOS MN3のドレインに流れる。
【0085】
また、ローパスフィルタLFCから接地電位GNDにdc直流電流Ioffsetを流すオフセット回路は、N−MOSによるカレントミラーに限定されるものではない。図17は、ローパスフィルタLFCから接地電位GNDにdc直流電流Ioffsetを流すオフセット回路を、抵抗Roffsetで構成することを示す図である。抵抗Roffsetによって、ローパスフィルタLFCから接地電位GNDにdc直流電流Ioffsetを流すために、抵抗Roffsetの抵抗値は、下記のように設計される。
【0086】
図17において、電源電圧VDDが2.8ボルトとする。P−MOS MP1のドレインから流れるソース電流IsourceとN−MOS MN1のドレインに流れるスィンク電流Isinkとがともに20μAと等しい時には、抵抗Roffsetの両端間には電源電圧VDD2.8ボルトの約半分である1.4ボルトが印加される。従って、抵抗Roffsetの抵抗値は、下記のように求められる。
【0087】
Roffset=VDD/(2×Ioffset)=466.7KΩ
図19に示すように、図17のローパスフィルタLFCからdc直流電流Ioffsetを流すオフセット回路を構成する抵抗Roffsetも、所定の抵抗値となるように意図的なデバイスサイズに設定されている。同図に示すように、抵抗Roffsetは蛇行平面形状を持ち、両端の四角の部分において、低抵抗配線層と電気的に接続されている。抵抗Roffsetが、高抵抗ポリシリコン抵抗や拡散抵抗で構成されているとすれば、シート抵抗ρs、抵抗幅Wr、抵抗の蛇行の総距離Lrから、抵抗Roffsetの抵抗値は、下記のように求められる。
【0088】
Roffset=ρs・(Lr/Wr)
≪位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの動作≫
図20は、図16に示した本発明のひとつの実施形態に従ったフラクショナルシンサセイザFrct_SynthのフラクショナルN PLL回路を構成する位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの構成からローパスフィルタLFCから接地電位GNDにdc直流電流Ioffsetを流すオフセット回路を除去した場合の位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの各部の波形を示す図である。ここでも、チャージポンプ回路CPCのPチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceの電流値よりもNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkの電流値が小さな現実的な状態となっている。図20は、基準周波数発振器DCXOからの基準周波数信号VREFの位相と分周器DIVからの分周出力信号VDIVの位相とが合致しているロック状態の場合の位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの各部の波形を示す図である。ここでも、図15のフラクショナルシンサセイザFrct_Synthにおいて、分周器DIVの分周比を制御する制御入力端子には固定値が供給されているものと仮定している。
【0089】
同図に示すように、ソース電流Isourceが流れる期間とスィンク電流Isinkが流れる期間が等しいが、スィンク電流Isink<ソース電流Isourceの電流差により、トータルのチャージポンプ電流ICPは正となる。従って、ローパスフィルタLFCから生成される制御出力電圧VCNTのレベルが上昇し、分周器DIVからの分周出力信号VDIVの位相が進み始める。最終的には、基準周波数信号VREFの位相に対する分周出力信号VDIVの位相の進みが制御され、位相差オフセット付きロック状態に移行する。
【0090】
図21は、図16の本発明のひとつの実施形態に従ったフラクショナルシンサセイザFrct_SynthのフラクショナルN PLL回路を構成する位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの構成に示すように、ローパスフィルタLFCから接地電位GNDにdc直流電流Ioffsetを流すオフセット回路を追加した場合の位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの各部の波形を示す図である。ここでも、図15のフラクショナルシンサセイザFrct_Synthにおいて、分周器DIVの分周比を制御する制御入力端子には固定値が供給されているものと仮定している。更にここでも、チャージポンプ回路CPCのPチャンネルMOSトランジスタMP1のソース電流Isourceの電流値よりもNチャンネルMOSトランジスタMN1のスィンク電流Isinkの電流値が小さな現実的な状態となっている。図16のチャージポンプ回路CPCでは、ローパスフィルタLFCから接地電位GNDにスィンク電流Isinkとdc直流電流Ioffsetとによる負のチャージポンプ電流ICPが流され、電源電圧VddからローパスフィルタLFCへソース電流Isourceによる正のチャージポンプ電流ICPが流される。負のチャージポンプ電流ICP(−Ioffset)の時間積分量と正のチャージポンプ電流ICP(Isource−(Ioffset+Isink))の時間積分量とが互いに等しくなるようにPLL回路は動作するので、図21に示すようにチャージポンプ電流ICPが負のdc直流電流−Ioffsetとなる期間に先行してチャージポンプ電流ICPがトータルで正のIsource−(Ioffset+Isink)となる期間が必然的に存在する。これは、オフセット回路MN2、MN3による負のdc直流電流−Ioffsetによって、基準周波数信号VREFの位相よりも分周出力信号VDIVの位相が必然的に遅れることを意味する。これによって、図12に示すように基準周波数信号VREFの位相に対して分周出力信号VDIVの位相が遅れておりチャージポンプ電流ICPが負となることはなく正のみで変化する状態の発生を回避することができる。
【0091】
図22は、図16に示した本発明のひとつの実施形態に従ったフラクショナルシンサセイザFrct_SynthのフラクショナルN PLL回路を構成する位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの構成からローパスフィルタLFCから接地電位GNDにdc直流電流Ioffsetを流すオフセット回路を除去した場合のフラクショナルPLL回路の位相ノイズ特性を示す図である。図22の4本のラインL1、L2、L3、L4に示した位相ノイズ特性は、チャージポンプ電流ICPの電流値に依存している。このチャージポンプ電流ICPの電流値は、スィンク電流Isinkとソース電流Isourceとの電流値である。チャージポンプ電流ICPが20μAの時の最大位相ノイズは約−76dBc/Hzにまで増加している。このラインL1の最大位相ノイズ約−76dBc/Hzの特性は、図14の位相ノイズ特性と良く一致している。
【0092】
図23は、図16の本発明のひとつの実施形態に従ったフラクショナルシンサセイザFrct_SynthのフラクショナルN PLL回路を構成する位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの構成に示すように、ローパスフィルタLFCから接地電位GNDにdc直流電流Ioffsetを流すオフセット回路を追加した場合のフラクショナルPLL回路の位相ノイズ特性を示す図である。図23の4本のラインL1、L2、L3、L4に示した位相ノイズ特性も、同様にチャージポンプ電流ICPの電流値に依存している。チャージポンプ電流ICPが20μAの最大位相ノイズは、約−80dBc/Hz以下に抑圧されている。このラインL1の最大位相ノイズ約−80dBc/Hzの特性は、図13の位相ノイズ特性と良く類似している。尚、ラインL1の特性で、最大位相ノイズ約−80dBc/Hzよりも3dBc低いクローズドループ帯域は、既に説明したように約30KHzとなっている。
【0093】
また、図23の4本のラインL1、L2、L3、L4から、フラクショナルN PLL回路のクローズドループ帯域はチャージポンプ電流ICPを120μA、80μA、40μA、20μAと減少することにより狭帯域化できることが理解される。
【0094】
その結果、図16に示したチャージポンプ回路CPCの線形性を改善でき、図15に示したフラクショナルシンサセイザFrct_Synthを構成するフラクショナルN PLL回路のクローズドループ帯域の低い数十KHzのオーダーの狭帯域化(具体的一例は30KHz)による効果と相乗して、フラクショナルN PLL回路の位相ノイズとスプリアスノイズとを低減することが可能となった。更に、図15のフラクショナルシンサセイザFrct_SynthのフラクショナルN PLL回路が、図4に示した3次のMASH型ΣΔ変調器と図5に示したディザー回路とを使用したノイズ低減の効果も相乗されている。これらによって、本発明はRF通信用半導体集積回路のRF送信信号の周波数スペクトラムの特性の改善に寄与することとなった。
【0095】
正規のRF送信信号の周波数スペクトラムの外への漏洩スプリアス信号成分は、最終的にはRF ICの送信系信号処理サブユニットの出力に接続されたRF電力増幅器によって電力増幅された後、携帯電話端末機器のアンテナから隣接妨害信号として送信されることなる。RF送信用電圧制御発振器TXVCOの出力信号である1715.6MHzのRF送信周波数fTXVCOの近傍±400KHzの漏洩スプリアス信号成分は、GMSK(Gaussian minimum Shift Keying)の規格によって所定値(−60dBm)以下に厳しく定められている。図27は、GMSKの規格により規定された携帯電話端末機器のRF送信信号の周波数スペクトラムを示し、太い実線PSDがGMSKの規格によって規定されたレベルである。中心周波数(RF送信周波数)の近傍±200KHzでの減衰量は−30dBm以下とされ、中心周波数(RF送信周波数)の近傍±400KHzでの減衰量は−60dBm以下とされている。細い実線は、この規格を満足する例を示している。
【0096】
尚、本発明の変形実施形態として、オフセット回路としては電源電圧VDDからローパスフィルタLFCへdc直流電流+Ioffsetを注入するようにP−MOSでオフセット回路のカレントミラーを構成しても良い。この場合には、逆に、チャージポンプ電流ICPが正のdc直流電流+Ioffsetとなる期間に先行してチャージポンプ電流ICPがトータルで負の−Isink+(Ioffset+source)となる期間が必然的に存在する。これは、P−MOSのカレントミラーで構成されたオフセット回路による正のdc直流電流+Ioffsetによって、基準周波数信号VREFの位相よりも分周出力信号VDIVの位相が必然的に進むことを意味することは言うまでもないであろう。
【0097】
≪本発明のより具体的な実施形態≫
図24は、本発明のより具体的な実施形態による通信用半導体集積回路RF ICの構成を示す図である。図24に示したRF ICは、基地局からの受信動作と基地局への送信動作の両方でGSM850MHz、GSM900MHz、DCS1800MHz、PCS1900MHzのクワッドバンドの4つのバンドに対応するように構成されている。尚、DCSはDigital Cellular Systemの略称、PCSはPersonal Communication Systemの略称である。尚、図24において、Frct_Synthは、図15を用いて説明したフラクショナルPLL回路もしくはフラクショナルシンサセイザで構成されたRFキャリア同期サブユニットである。
【0098】
尚、クワッドバンドのバンドに対応するこのRF ICは、図15で説明したフラクショナルシンサセイザFrct_Synthと、RF受信信号アナログ信号処理サブユニットRX SPUと、RF送信信号アナログ信号処理サブユニットTX SPUとから構成されている。携帯電話端末機器のアンテナANTで受信されたRF受信信号はアンテナスイッチANTSWと表面弾性波フィルターSAWとを介してRF受信信号アナログ信号処理サブユニットRX SPUに供給される。RF受信信号アナログ信号処理サブユニットRX SPUは入力されたRF受信信号を復調することによって受信ベースバンド信号RxABI、RxABQを生成して、受信ベースバンド信号RxABI、RxABQをベースバンドLSI(BB_LSI)へ供給する。RF送信信号アナログ信号処理サブユニットTX SPUには、ベースバンドLSI(BB_LSI)から送信ベースバンド信号TxABI、TxABQが供給される。RF送信信号アナログ信号処理サブユニットTX SPUは入力された送信ベースバンド信号を変調することによりRF送信信号を形成して、RF電力増幅器RF_PA1、RD_PA2とアンテナスイッチANTSWとを介して携帯電話端末機器のアンテナANTに供給する。
【0099】
まず、RF受信信号アナログ信号処理サブユニットRX SPUの受信動作を、説明する。携帯電話端末機器のアンテナで受信されたRF受信信号はアンテナスイッチANTSWと表面弾性波フィルターSAWとを介して、4つのローノイズアンプに供給される。GSM850MHzのバンドのRF受信信号Rx_GSM850の周波数帯域は869MHz〜894MHzで、第1ローノイズアンプLNA1によって増幅される。GSM900MHzのバンドのRF受信信号Rx_GSM900の周波数帯域は925MHz〜960MHzで、第2ローノイズアンプLNA2によって増幅される。DCS1800MHzのバンドのRF受信信号Rx_DCS1800の周波数帯域は1805MHz〜1880MHzで、第3ローノイズアンプLNA3によって増幅される。PCS1900MHzのバンドのRF受信信号Rx_PCS1900の周波数帯域は1930MHz〜1990MHzで、第4ローノイズアンプLNA4によって増幅される。4つのローノイズアンプLNA1〜LNA4のRF増幅受信出力信号は、受信ミキサーを構成する二つの混合回路RX−MIX_I、RX−MIX_Qの一方の入力端子に供給される。二つの混合回路RX−MIX_I、RX−MIX_Qの他方の入力端子には、90°位相シフター90degShift(1/2)で形成された90°位相を有する2つのRFキャリア信号が供給される。GSM850MHzまたはGSM900MHzの受信モードでは、RF電圧制御発振器RFVCOの出力が分周比2の1/2分周器DIV1を介して90°位相シフター90degShift(1/2)に供給される。DCS1800MHzまたはPCS1900MHzの受信モードでは、RF電圧制御発振器RFVCOの出力が直接に90°位相シフター90degShift(1/2)へ供給される。混合回路RX−MIX_Iの出力と混合回路RX−MIX_Qの出力とから、それぞれ受信ベースバンド信号RxABIと受信ベースバンド信号RxABQとが生成される。受信ベースバンド信号RxABIと受信ベースバンド信号RxABQとは、それぞれ可変利得増幅器PGAI1、PGAI2、PGAI3、フィルター回路FCI1、FCI2、FCI3バッファ増幅器BAIと可変利得増幅器PGAQ1、PGAQ2、PGAQ3、フィルター回路FCQ1、FCQ2、FCQ3バッファ増幅器BAQとを介してベースバンドLSI(BB_LSI)へ供給される。
【0100】
GSM850MHzのバンドのRF受信信号Rx_GSM850の周波数帯域の869MHz〜894MHzの受信動作に対応するため、RF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOは3476MHz〜3576MHzに設定される。このRF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOは分周比2に設定された分周器DIV1(1/2)と90°位相シフター90degShift(1/2)とにより1/4分周されて、869MHz〜894MHzに1/4分周されたRF分周周波数信号が受信ミキサーを構成する二つの混合回路RX−MIX_I、RX−MIX_Qに供給される。従って、二つの混合回路RX−MIX_I、RX−MIX_Qの出力から、GSM850MHzのバンドのRF受信信号Rx_GSM850の受信によるアナログベースバンド受信信号RxABI、RXABQが形成される。GSM900MHzのバンドのRF受信信号Rx_GSM900の周波数帯域の925MHz〜960MHzの受信動作に対応するため、RF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOは3700MHz〜3840MHzに設定される。このRF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOは分周比2に設定された分周器DIV1(1/2)と90°位相シフター90degShift(1/2)とにより1/4分周されて、925MHz〜960MHzに1/4分周されたRF分周周波数信号が受信ミキサーを構成する二つの混合回路RX−MIX_I、RX−MIX_Qに供給される。従って、二つの混合回路RX−MIX_I、RX−MIX_Qの出力から、GSM900MHzのバンドのRF受信信号Rx_GSM900の受信によるアナログベースバンド受信信号RxABI、RXABQが形成される。DCS1800MHzのバンドのRF受信信号Rx_DCS1800の周波数帯域は1805MHz〜1880MHzの受信動作に対応するため、RF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOは3610MHz〜3760MHzに設定される。このRF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOは90°位相シフター90degShift(1/2)により1/2分周されて、1805MHz〜1880MHzに1/2分周されたRF分周周波数信号が受信ミキサーを構成する二つの混合回路RX−MIX_I、RX−MIX_Qに供給される。従って、二つの混合回路RX−MIX_I、RX−MIX_Qの出力から、DCS1800MHzのバンドのRF受信信号Rx_DCS1800の受信によるアナログベースバンド受信信号RxABI、RXABQが形成される。PCS1900MHzのバンドのRF受信信号Rx_PCS1900の周波数帯域は1930MHz〜1990MHzの受信動作に対応するため、RF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOは3860MHz〜3980MHzに設定される。このRF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOは90°位相シフター90degShift(1/2)により1/2分周されて、1930MHz〜1990MHzに1/2分周されたRF分周周波数信号が受信ミキサーを構成する二つの混合回路RX−MIX_I、RX−MIX_Qに供給される。従って、二つの混合回路RX−MIX_I、RX−MIX_Qの出力から、PCS1900MHzのバンドのRF受信信号Rx_PCS1900の受信によるアナログベースバンド受信信号RxABI、RXABQが形成される。
【0101】
次に、RF送信信号アナログ信号処理サブユニットTX SPUの送信動作を、説明する。フラクショナルシンサセイザFrct_SynthのRF電圧制御発振器RFVCOの出力のRF発振出力信号が所定の分周比に設定された中間周波数分周器DIV2(1/NIF)に供給されることにより、中間周波数分周器DIV2(1/NIF)の出力から2倍中間周波数信号が形成される。この2倍中間周波数信号が90°位相シフター90degShiftの入力に供給されることにより90°位相の異なる68.624MHzの2つの中間周波数信号が形成される。送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_QにはベースバンドLSI(BB_LSI)からのベースバンド送信信号TxABI、TxABQと90°位相の異なる68.624MHzの2つの中間周波数信号とが供給されることにより、送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qの出力に接続された加算器の出力にはベクトル合成された68.624MHzの中間周波送信信号が形成される。この68.624MHzの中間周波送信信号は、位相比較器PCの一方の入力端子に供給される。位相比較器PCの出力はローパスフィルターLPF1を介してRF送信用電圧制御発振器TXVCOに供給されることによって、RF送信用電圧制御発振器TXVCOの発振周波数が略3431.2MHzに制御される。GSM850MHzのバンドのRF送信信号Tx_GSM850の周波数帯域は824MHz〜849MHzで、RF送信用電圧制御発振器TXVCOの発振出力信号3296MHz〜3396MHzが分周比2に設定された2個の分周器DIV5(1/2)、分周器DIV3(1/2)を介して第1RF電力増幅器RF_PA1の入力に供給される。GSM900MHzのバンドのRF送信信号Tx_GSM900の周波数帯域は880MHz〜915MHzで、RF送信用電圧制御発振器TXVCOの発振出力信号3520MHz〜3660MHzが分周比2に設定された2個の分周器DIV5(1/2)、分周器DIV3(1/2)を介して第1RF電力増幅器RF_PA1の入力に供給される。DCS1800MHzのバンドのRF送信信号Tx_DCS1800の周波数帯域は1710MHz〜1785MHzで、RF送信用電圧制御発振器TXVCOの発振出力信号3420MHz〜3570MHzが分周比2に設定された1個の分周器DIV5(1/2)を介して第2RF電力増幅器RF_PA2の入力に供給される。PCS1900MHzのバンドのRF送信信号Tx_PCS1900の周波数帯域は1850MHz〜1910MHzで、RF送信用電圧制御発振器TXVCOの発振出力信号3700MHz〜3820MHzが分周比2に設定された1個の分周器DIV5(1/2)を介して第2RF電力増幅器RF_PA2の入力に供給される。
【0102】
GSM850MHzのバンドのRF送信信号Tx_GSM850の周波数帯域の824MHz〜848MHzとGSM900MHzのバンドのRF送信信号Tx_GSM900の周波数帯域の880MHz〜915MHzとの送信動作に対応するため、RF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOは分周比2に設定された2個の分周器DIV1(1/2)、DIV4(1/2)を介して送信系オフセットPLL回路TX_Offset_PLLの位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの一方の入力端子に供給される。また、送信系オフセットPLL回路TX_Offset_PLLの送信ミキサーを構成する二つの混合回路TX−MIX_I、TX−MIX_Qに接続された90°位相シフター90degShift(1/2)に接続された中間周波数分周器DIV2(1/NIF)の分周比NIFは26に設定されている。従って、RF送信用電圧制御発振器TXVCOの発振周波数fTXVCOの発振出力信号が分周比2に設定された2個の分周器DIV5(1/2)、分周器DIV3(1/2)を介して位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの一方の入力端子に供給され、位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの他方の入力端子にはRF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOの1/4分周信号が2個の分周器DIV1(1/2)、DIV4(1/2)を介して供給されている。位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMでは、発振周波数fRFVCOの1/4分周信号とRF送信用電圧制御発振器TXVCOの発振周波数fTXVCOの発振出力信号の1/4分周信号とのミキシングが行われる。従って、位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの出力から、(1/4)×fRFVCO−(1/4)fTXVCOの差の周波数の帰還信号が形成されて、送信系オフセットPLL回路TX_Offset_PLLの位相比較器PCの他方の入力端子に供給される。また、位相比較器PCの一方の入力端子には、送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qの出力に接続された加算器の出力にはベクトル合成された中間周波送信信号fIFが供給されている。この中間周波送信信号fIFは、中間周波数分周器DIV2(1/NIF)の分周比NIFである26と90°位相シフター90degShiftでの1/2分周機能により、fRFVCO/52となる。送信系オフセットPLL回路TX_Offset_PLLの負帰還制御によって、位相比較器PCの一方の入力端子の基準周波数と位相比較器PCの他方の入力端子の負帰還周波数とは一致するので、下記の関係が成立する。
【0103】
RFVCO/52=(1/4)×fRFVCO−(1/4)×fTXVCO
(1/4)×fTXVCO=(1/4)×fRFVCO−fRFVCO/52
=((13−1)/52)×fRFVCO
=(12/52)×fRFVCO
∴fRFVCO=4.33333×(1/4)×fTXVCO
従って、GSM850MHzのバンドのRF送信信号Tx_GSM850の周波数帯域の824MHz〜848MHzとGSM900MHzのバンドのRF送信信号Tx_GSM900の周波数帯域の880MHz〜915MHzとの送信動作に対応するため、RF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOをRF送信用電圧制御発振器TXVCOの発振周波数fTXVCOの1/4分周信号((1/4)×fTXVCO)の4.33333倍に設定すれば良い。従って、GSM850MHzのバンドのRF送信信号Tx_GSM850の周波数帯域の824MHz〜849MHzに対応して、RF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOは3570.6639MHz〜3678.9971MHzに設定すれば良く、GSM900MHzのバンドのRF送信信号Tx_GSM900の周波数帯域の880MHz〜915MHzに対応して、RF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOは3813.3304MHz〜3974.997MHzに設定すれば良い。
【0104】
DCS1800MHzのバンドのRF送信信号Tx_DCS1800の周波数帯域の1710MHz〜1785MHzとPCS1900MHzのバンドのRF送信信号Tx_PCS1900の周波数帯域の1850MHz〜1910MHzとの送信動作に対応するため、RF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOは分周比2に設定された1個の分周器DIV1(1/2)を介して送信系オフセットPLL回路TX_Offset_PLLの位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの一方の入力端子に供給される。また、送信系オフセットPLL回路TX_Offset_PLLの送信ミキサーを構成する二つの混合回路TX−MIX_I、TX−MIX_Qに接続された90°位相シフター90degShift(1/2)に接続された中間周波数分周器DIV2(1/NIF)の分周比NIFは26に設定されている。従って、RF送信用電圧制御発振器TXVCOの発振周波数fTXVCOの発振出力信号が分周比2に設定された1個の分周器DIV5(1/2)を介して位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの一方の入力端子に供給され、位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの他方の入力端子にはRF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOの1/2分周信号が1個の分周器DIV1(1/2)を介して供給されている。位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMでは発振周波数fRFVCOの1/2分周信号とRF送信用電圧制御発振器TXVCOの発振周波数fTXVCOの発振出力信号の1/2分周信号とのミキシングが行われる。従って、位相制御帰還用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの出力から、(1/2)×fRFVCO−(1/2)×fTXVCOの差の周波数の帰還信号が形成されて、送信系オフセットPLL回路TX_Offset_PLLの位相比較器PCの他方の入力端子に供給される。また、位相比較器PCの一方の入力端子には、送信ミキサーTX−MIX_I、TX−MIX_Qの出力に接続された加算器の出力でベクトル合成された中間周波送信信号fIFが供給されている。この中間周波送信信号fIFは、中間周波数分周器DIV2(1/NIF)の分周比NIFである26と90°位相シフター90degShiftでの1/2分周機能により、fRFVCO/52となる。送信系オフセットPLL回路TX_Offset_PLLの負帰還制御によって、位相比較器PCの一方の入力端子の基準周波数と位相比較器PCの他方の入力端子の負帰還周波数とは一致するので、下記の関係が成立する。
【0105】
RFVCO/52=(1/2)×fRFVCO−(1/2)×fTXVCO
(1/2)×fTXVCO=(1/2)×fRFVCO−fRFVCO/52
=((26−1)/52)×fRFVCO=(25/52)×fRFVCO
∴fRFVCO=2.08×(1/2)×fTXVCO
従って、DCS1800MHzのバンドのRF送信信号Tx_DCS1800の周波数帯域の1710MHz〜1785MHzとPCS1900MHzのバンドのRF送信信号Tx_PCS1900の周波数帯域の1850MHz〜1910MHzとの送信動作に対応するため、RF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOをRF送信用電圧制御発振器TXVCOの発振周波数fTXVCOの1/2分周信号((1/2)×fTXVCO)の2.08倍に設定すれば良い。従って、DCS1800MHzのバンドのRF送信信号Tx_DCS1800の周波数帯域の1710MHz〜1785MHzに対応して、RF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOは3556.8MHz〜3712.8MHzに設定すれば良く、PCS1900MHzのバンドのRF送信信号Tx_PCS1900の周波数帯域の1850MHz〜1910MHzに対応して、RF電圧制御発振器RFVCOの発振周波数fRFVCOは3848MHz〜3972.8MHzに設定すれば良い。
【0106】
図25は、本発明の更に具体的な実施形態による通信用半導体集積回路RF ICの構成を示す図である。
【0107】
このRF ICは、基地局と通信端末機器との通信が位相変調ともに振幅変調を使用するEDGE方式に対応するためのポーラループ方式の送信方式を採用している。
【0108】
RF ICのひとつの半導体チップは、3つのサブユニットFrct_Synth、RX SPU、TX SPUを含んでいる。図25には、RF IC以外にも、携帯電話端末機器の送受信用のアンテナANTと、フロントエンドモジュールFEMも示されている。フロントエンドモジュールFEMは、アンテナスイッチANT_SWと、送信用RF電力増幅器RF_PAと、送信用RF電力増幅器RF_PAからの送信電力を検出するためのパワーカップラーCPLとを含んでいる。
【0109】
図25において、Frct_Synthは、図15を用いて説明したフラクショナルPLL回路もしくはフラクショナルシンサセイザで構成されたRFキャリア同期サブユニットである。RFキャリア同期サブユニットFrct_Synthでは、集積回路RF ICの外部の水晶振動子Xtalによって発振周波数周波数fREFが安定に維持されたシステム基準クロック発振器DCXOからのシステム基準クロック信号が印加されたフラクショナル周波数シンセサイザは、RF発振器RFVCOのRF発振周波数fRFVCOも安定に維持する。RF発振器RFVCOのRF出力が分周器DIV1(DIV4)(1/2 or 1/4)に供給されることにより、分周器DIV1(DIV4)(1/2 or 1/4)の出力からRF信号ΦRFが得られる。このRF信号ΦRFは、通信用RFアナログ信号処理集積回路RF IC内部のRF受信信号アナログ信号処理サブユニットRX SPUとRF送信信号アナログ信号処理サブユニットTX SPUとに供給される。すなわち、RF送信信号アナログ信号処理サブユニット302TX SPUが、EDGE方式に対応するためのポーラループ方式で構成されている。
【0110】
受信状態に設定されたタイムスロットでは、フロントエンドモジュールFEMのアンテナスイッチANT_SWは上側に接続される。従って、アンテナANTで受信されたRF受信信号は、例えば表面弾性波デバイスにより構成された受信フィルタSAWを介してRF受信信号アナログ信号処理サブユニットRX SPUのローノイズアンプLNAの入力に供給される。このローノイズアンプLNAのRF増幅出力信号は、受信ミキサーを構成する二つの混合回路RX−MIX_I、RX−MIX_Qの一方の入力に供給される。二つの混合回路RX−MIX_I、RX−MIX_Qの他方の入力には、分周器DIV1(DIV4)(1/2 or 1/4)からのRF信号ΦRFに基づいて90°位相シフター90degShift(1/2)で形成された90°位相を有する2つのRFキャリア信号が供給される。その結果、受信ミキサーの混合回路RX−MIX_I、RX−MIX_QではRF受信信号周波数からベースバンド信号周波数へのダイレクトダウン周波数コンバージョンが実行されて、出力から受信アナログベースバンド信号RxABI、RxABQが得られる。この受信アナログベースバンド信号RxABI、RxABQは受信タイムスロット設定で利得が調整された可変利得アンプPGAI1、PGAI2、PGAI3、PGAQ1、PGAQ2、PGAQ3で増幅された後、RF ICのチップ内のA/D変換器によりディジタル信号に変換される。このディジタル受信信号は、図示されていないベースバンド信号処理LSIへ供給される。
【0111】
送信状態に設定されたタイムスロットでは、図示されていないベースバンド信号処理LSIからディジタル送信ベースバンド信号がRF ICに供給される。その結果、RF IC内部の図示されていないD/A変換器の出力から、アナログベースバンド送信信号TxABI、TxABQがRF送信信号アナログ信号処理サブユニットTX SPUの送信ミキサーの二つの混合回路TX−MIX_I、TX−MIX_Qの一方の入力に供給される。RF発振器RFVCOのRF発振周波数fRFVCOが中間周波数分周器DIV2(1/NIF)で分周されることによって、中間周波数fIFの信号ΦIFが得られる。このIF信号ΦIFに基づき90°位相シフター90degShiftで形成された90°位相を有する2つのIF送信キャリア信号が二つの混合回路TX−MIX_I、TX−MIX_Qの他方の入力に供給される。その結果、送信ミキサーの混合回路TX−MIX_I、TX−MIX_Qでは、アナログベースバンド送信信号の周波数からIF送信信号への周波数アップコンバージョンが実行されて、加算器からベクトル合成されたひとつのIF送信変調信号が得られる。加算器からのIF送信変調信号はRF送信信号アナログ信号処理サブユニットTX SPUの位相変調成分の送信のためのPMループ回路PM LPを構成する位相比較器PCの一方の入力に供給されている。PMループ回路PM LPでは、位相比較器PCの出力はチャージポンプCPとローパスフィルタLF1を介して送信用発振器TXVCOの制御入力に伝達される。
【0112】
送信用発振器TXVCOの出力に入力が接続されたバッファアンプBFには、電圧レギュレータVregからの動作電圧が供給されている。送信用電圧制御発振器TXVCOの出力は分周器DIV1(DIV4)(1/2 or 1/4)からRF信号ΦRFが供給されたPMループ用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMの入力に供給されることによって、DWN_MIX_PMの出力から第1IF送信帰還信号が得られる。送信タイムスロットがGSM方式の場合の位相変調情報は、この第1IF送信帰還信号がスイッチSW_1を介してPMループ回路PM LPを構成する位相比較器PCの他方の入力に供給される。この結果、送信用RF電力増幅器RF_PAの出力である送信信号はGSM方式の正確な位相変調情報を含むようになる。また、送信タイムスロットがGSM方式の場合の送信電力情報(送信用RF電力増幅器RF_PAの増幅ゲイン)は、RF IC内部のランプ信号D/A変換器Ramp DACのランプ出力電圧Vrampで指定される。このランプ出力電圧Vrampが、スイッチSW2を介して10MHzフィルタ(10MHzFilter)に供給される。このフィルタからのランプ出力電圧Vrampと、送信用RF電力増幅器RF_PAの送信電力を検出するパワーカップラーCPLと電力検出回路PDETとからの送信電力検出信号Vdetとが、誤差増幅器Err_Ampに供給される。誤差増幅器Err_Ampの出力からの自動パワー制御電圧Vapcによる電源電圧制御もしくはバイアス電圧制御により、送信用RF電力増幅器RF_PAの増幅ゲインは基地局と携帯通信端末装置との距離に比例して設定される。尚、ランプ信号D/A変換器Ramp DACにベースバンドLSIのようなベースバンド信号処理ユニットから供給されるディジタルランプ入力信号は、送信電力のレベルを示す送信電力レベル指示信号であり、基地局と通信端末機器との距離に比例して送信電力レベルを高く制御するものである。このランプ信号D/A変換器Ramp DACの出力から、アナログのランプ出力電圧Vrampが生成される。
【0113】
一方、送信タイムスロットがEDGE方式の場合は、加算器からのIF送信変調信号は、位相変調情報だけではなく振幅変調情報も含むことになる。従って、加算器からIF送信変調信号はPMループ回路PM LPを構成する位相比較器PCの一方の入力に供給されるだけではなく、AMループ回路AM LPを構成する振幅比較器ACの一方の入力に供給される。この時には、位相比較器PCの他方の入力には、送信用発振器TXVCOの出力がPMループ用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_PMを介して供給されるのではない。むしろ、送信用RF電力増幅器RF_PAの送信電力に関係する情報(RF送信電力レベルRFPLV)が、パワーカップラーCPL、可変利得回路MVGA、AMループ用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_AMを介して位相比較器PCの他方の入力に供給されることとなる。また、AMループ回路AM LPを構成する振幅比較器ACの他方の入力にも、送信用RF電力増幅器RF_PAの送信電力に関係する情報(RF送信電力レベルRFPLV)がパワーカップラーCPL、可変利得回路MVGA、AMループ用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_AMを介して供給されることとなる。AMループ回路AM LPでは、振幅比較器ACの出力はローパスフィルタLF2、可変利得回路IVGA、電圧・電流変換器V/I、チャージポンプCP、スイッチWS2を介して10MHzフィルタ(10MHzFilter)に供給される。この結果、まずPMループ回路PM LPによって、送信用発振器TXVCOのRF発振出力信号を増幅する送信用RF電力増幅器RF_PAの出力の送信電力信号はEDGE方式の正確な位相変調情報を含むようになる。さらに、AMループ回路AM LPによって、送信用RF電力増幅器RF_PAの出力の送信電力信号はEDGE方式の正確な振幅変調情報を含むようになる。
【0114】
尚、送信用RF電力増幅器RF_PAの送信電力を検出するパワーカップラーCPLとしては、RF電力増幅器RF_PAの送信電力を電磁気的もしくは容量的に検出するカップラーを採用することができる。このパワーカップラーCPLとしては、それ以外に、カレントセンス形カップラーも採用することができる。このカレントセンス形カップラーでは、RF電力増幅器RF_PAの最終段パワー増幅素子のDC・AC動作電流に比例する小さな検出DC・AC動作電流を検出増幅素子に流すものである。
【0115】
図25のRF ICでは、ランプ信号D/A変換器Ramp DACのランプ電圧Vrampに応答するAMループ回路AM LPの二つの可変利得回路MVGA、IVGAの利得は逆方向となるように、制御回路CNTLが10ビットのディジタルランプ信号に応答して8ビットの2つの制御信号を生成する。すなわち、ランプ電圧Vrampに応答して可変利得回路MVGAの利得が減少する時には、可変利得回路IVGAの利得が増加することで、二つの可変利得回路MVGA、IVGAの利得の和がほぼ一定となる。この結果、AMループ回路AM LPのオープンループ周波数特性の位相余裕がランプ電圧Vrampに応答して著しく小さくなることを軽減している。
【0116】
図26は、基地局との通信が位相変調ともに振幅変調を使用するEDGE方式に対応するため図23に示したポーラループ方式の送信方式を採用したRF ICとは、異なるRF ICである。すなわち、図24に示したRF ICは、基地局との通信が位相変調ともに振幅変調を使用するEDGE方式に対応するために、ポーラモジュレータ方式の送信方式を採用しており、RF送信信号アナログ信号処理サブユニットTX SPUがEDGE方式に対応するためのポーラモジュレータ方式で構成されている。
【0117】
すなわち、送信用変調回路TX_MIX_I、TX_MIX_Qにより形成された送信用中間周波数信号に基づいて送信用RF電力増幅器RF_PAからのRF送信出力信号の振幅を制御する振幅変調ループ制御回路AM_LPは、下記のように構成されている。
【0118】
このAMループ回路AM LPでは、振幅比較器ACの出力はローパスフィルタLF2、可変利得回路IVGA、電圧・電流変換器V/I、チャージポンプCPを介してバッファアンプBFの出力と送信用電圧制御発振器TXVCOの入力との間に挿入された振幅変調用可変利得増幅器VGAに供給される。AMループ回路AM LPの位相比較器ACの一方の入力端子には、送信用変調回路(TX_MIX_I、TX_MIX_Q)で形成された送信用中間周波数信号が供給されている。この位相比較器ACの他方の入力端子には、送信用RF電力増幅器RF_PAの送信電力に関係する情報(RF送信電力レベルRFPLV)がパワーカップラーCPL、可変利得回路MVGA、AMループ用周波数ダウンミキサーDWN_MIX_AMを介して供給されている。その結果、振幅比較器ACの一方の入力端子のIF信号振幅に他方の入力端子のIF信号振幅が一致するように、バッファアンプBFの出力と送信用電圧制御発振器TXVCOの入力との間に挿入された振幅変調用可変利得増幅器VGAの利得がローパスフィルタLF2、可変利得回路IVGA、電圧・電流変換器V/I、チャージポンプCPを介して振幅比較器ACの出力により制御される。その結果、送信用RF電力増幅器RF_PAの送信電力は、EDGE方式の正確な振幅変調情報を含むことになる。
【0119】
尚、GSM方式の場合もEDGE方式の場合も、ランプ信号D/A変換器Ramp DACのランプ出力電圧Vrampと、送信用RF電力増幅器203の送信電力を検出するパワーカップラーCPLと電力検出回路PDETとからの送信電力検出信号Vdetとが、誤差増幅器Err_Ampに供給される。誤差増幅器Err_Ampの出力からの自動パワー制御電圧Vapcによる電源電圧制御もしくはバイアス電圧制御により、送信用RF電力増幅器RF_PAの増幅ゲインは基地局と携帯通信端末装置との距離に比例して設定され、APC制御が行われる。
【0120】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0121】
例えば、図16や図17に示したチャージポンプ回路CPCで、カレントミラーを構成するNチャンネルMOSトランジスタとPチャンネルMOSトランジスタとは、NPNバイポーラトランジスタとPNPバイポーラトランジスタとにそれぞれ置換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は、本発明に先立って本発明者等によって検討された通信用半導体集積回路RF ICのチップ上に形成されたフラクショナルシンサセイザの構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示したフラクショナルシンサセイザのΣΔ変調器の構成を示す図である。
【図3】図3は、図2に示したフラクショナルシンサセイザのΣΔ変調器の動作を示す図である。
【図4】図4は、図1のフラクショナルシンサセイザで使用されるMASH方式のΣΔ変調器を示す図である。
【図5】図5は、図4のディザーの回路構成を示す図である。
【図6】図6は、図1のフラクショナルシンサセイザの位相比較器とチャージポンプ回路とローパスフィルタの回路構成を示す図である。
【図7】図7は、図1のフラクショナルシンサセイザにおいてチャージポンプ回路のPチャンネルMOSトランジスタのソース電流の電流値とNチャンネルMOSトランジスタのスィンク電流の電流値とが等しい理想的な状態で、基準周波数発振器からの基準周波数信号の位相よりも分周器からの分周出力信号の位相が進んでいる場合のアンロック状態での位相比較器とチャージポンプ回路の各部の波形を示す図である。
【図8】図8は、図1のフラクショナルシンサセイザにおいてチャージポンプ回路のPチャンネルMOSトランジスタのソース電流の電流値とNチャンネルMOSトランジスタのスィンク電流の電流値とが等しい理想的な状態で、基準周波数発振器からの基準周波数信号の位相と分周器からの分周出力信号の位相とが合致しているロック状態の場合の位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの各部の波形を示す図である。
【図9】図9は、図1のフラクショナルシンサセイザにおいてチャージポンプ回路のPチャンネルMOSトランジスタのソース電流の電流値よりもNチャンネルMOSトランジスタのスィンク電流の電流値が小さな現実的な状態で、基準周波数発振器からの基準周波数信号の位相よりも分周器からの分周出力信号の位相が進んでいる位相差オフセット付きロック状態の場合の位相比較器PDCとチャージポンプ回路CPCの各部の波形を示す図である。
【図10】図10は、図1のフラクショナルシンサセイザにおいてチャージポンプ回路のPチャンネルMOSトランジスタのソース電流の電流値よりもNチャンネルMOSトランジスタのスィンク電流の電流値が小さな現実的な状態で、分周器の分周比が高い分周比から低い分周比に変更された場合の位相比較器とチャージポンプ回路の各部の波形を示す図である。
【図11】図11は、図1のフラクショナルシンサセイザにおいてチャージポンプ回路のPチャンネルMOSトランジスタのソース電流の電流値よりもNチャンネルMOSトランジスタのスィンク電流の電流値が小さな現実的な状態で、分周器の分周比が低い分周比から比較的高い分周比に変更された場合の位相比較器とチャージポンプ回路の各部の波形を示す図である。
【図12】図12は、図1のフラクショナルシンサセイザにおいてチャージポンプ回路のPチャンネルMOSトランジスタのソース電流の電流値よりもNチャンネルMOSトランジスタのスィンク電流の電流値が小さな現実的な状態で、分周器の分周比が低い分周比から相当高い分周比に変更された場合の位相比較器とチャージポンプ回路の各部の波形を示す図である。
【図13】図13は、図6のチャージポンプ回路のスィンク電流Isinkとソース電流Isourceの電流値が等しい場合のフラクショナルPLL回路の位相ノイズ特性を示す図である。
【図14】図14は、図6のチャージポンプ回路のスィンク電流Isinkの電流値よりもソース電流Isourceの電流値が大きい場合のフラクショナルPLL回路の位相ノイズ特性を示す図である。
【図15】図15は、本発明のひとつの実施形態に従った通信用半導体集積回路のチップ上に形成されたフラクショナルシンサセイザの構成を示す図である。
【図16】図16は、図15に示した本発明のひとつの実施形態に従った通信用半導体集積回路のチップ上に形成されたフラクショナルシンサセイザのフラクショナルN PLL回路を構成する位相比較器とチャージポンプ回路の構成を示す回路図である。
【図17】図17は、ローパスフィルタから接地電位にdc直流電流を流すオフセット回路を、抵抗Roffsetで構成することを示す図である。
【図18】図18は、図16に示したチャージポンプ回路CPCのMOSトランジスタのデバイス・サイズを示す図である。
【図19】図19は、図17に示した抵抗Roffsetのデバイス・サイズを示す図である。
【図20】図20は、図16に示した本発明のひとつの実施形態に従ったフラクショナルシンサセイザのフラクショナルN PLL回路を構成する位相比較器とチャージポンプ回路の構成からローパスフィルタから接地電位にdc直流電流を流すオフセット回路を除去した場合の位相比較器とチャージポンプ回路の各部の波形を示す図である。
【図21】図21は、図16の本発明のひとつの実施形態に従ったフラクショナルシンサセイザのフラクショナルN PLL回路を構成する位相比較器とチャージポンプ回路の構成に示すように、ローパスフィルタから接地電位にdc直流電流を流すオフセット回路を追加した場合の位相比較器とチャージポンプ回路の各部の波形を示す図である。
【図22】図22は、図16に示した本発明のひとつの実施形態に従ったフラクショナルシンサセイザのフラクショナルN PLL回路を構成する位相比較器とチャージポンプ回路の構成からローパスフィルタから接地電位にdc直流電流を流すオフセット回路を除去した場合のフラクショナルPLL回路の位相ノイズ特性を示す図である。
【図23】図23は、図16の本発明のひとつの実施形態に従ったフラクショナルシンサセイザのフラクショナルN PLL回路を構成する位相比較器とチャージポンプ回路の構成に示すように、ローパスフィルタから接地電位にdc直流電流を流すオフセット回路を追加した場合のフラクショナルPLL回路の位相ノイズ特性を示す図である。
【図24】図24は、本発明のより具体的な実施形態による通信用半導体集積回路RF ICの構成を示す図である。
【図25】図25は、本発明の更に具体的な実施形態による通信用半導体集積回路の構成を示す図である。
【図26】図26は、本発明の更に具体的な実施形態による通信用半導体集積回路の構成を示す図である。
【図27】図27は、GMSKの規格により規定された携帯電話端末機器のRF送信信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【符号の説明】
【0123】
RF IC 通信用半導体集積回路
DCXO 基準周波数発振器
PDC 位相比較器
CPC チャージポンプ回路
MP1 ソース電流注入トランジスタ
MN1 スィンク電流放出トランジスタ
Isource ソース電流
Isink スィンク電流
MN2、MN3 オフセット回路
Ioffset オフセット電流
LFC ループフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準発振周波数の基準周波数信号を生成する基準周波数発振器と、前記基準周波数発振器から形成された前記基準周波数信号が一方の入力端子に供給される位相比較器と、前記位相比較器のアップ出力信号とダウン出力信号とに応答するチャージポンプ回路と、前記チャージポンプ回路のチャージポンプ電流に応答するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタの制御出力電圧に応答するRF電圧制御発振器と、前記RF電圧制御発振器の出力端子と前記位相比較器の他方の入力端子との間に接続された分周器とを含むことにより周波数シンセサイザを構成するPLL回路と、
前記PLL回路の前記RF電圧制御発振器の前記出力端子のRF発振出力信号を利用してRF通信のRF送信信号のためのRF送信周波数信号を生成するRF送信用電圧制御発振器とを具備しており、
前記周波数シンセサイザを構成する前記PLL回路は、前記分周器の分周比が変更されることにより平均分周比が整数と分数とを含むフラクショナルPLL回路であり、そのクローズドループ帯域は数十KHzのオーダーの狭帯域に設定され、
前記チャージポンプ回路は、前記位相比較器の前記アップ出力信号に応答して前記ローパスフィルタにソース電流を注入するソース電流供給トランジスタと、前記位相比較器の前記ダウン出力信号に応答して前記ローパスフィルタからスィンク電流を放出するスィンク電流放出トランジスタと、前記ローパスフィルタからdc直流電流を放出するかまたは前記ローパスフィルタにdc直流電流を注入するオフセット電流回路とを含み、
上記オフセット電流回路は前記dc直流電流を所定値に設定するように意図的なデバイスサイズに設定されたデバイスを含んでいる通信用半導体集積回路。
【請求項2】
前記周波数シンセサイザを構成する前記PLL回路は、前記RF電圧制御発振器から生成された前記RF発振出力信号を分周することにより中間周波数信号を生成する中間周波数分周器を含み、
前記半導体集積回路は、前記中間周波数分周器から生成される前記中間周波数信号と送信ベースバンド信号とから中間周波送信信号を形成する送信ミキサーと、送信系オフセットPLL回路と、前記RF電圧制御発振器から生成された前記RF発振出力信号を分周することにより分周RF周波数信号を生成するRF分周器とを含み、
前記送信系オフセットPLL回路は、前記送信ミキサーから生成される前記中間周波送信信号が一方の入力端子に供給される位相比較回路と、前記位相比較回路の出力に応答する前記RF送信用電圧制御発振器と、前記RF送信用電圧制御発振器から生成される前記RF送信周波数信号が一方の入力端子に供給され前記RF分周器から生成される前記分周RF周波数信号が他方の入力端子に供給される位相制御帰還用周波数ダウンミキサーとを含み、前記位相制御帰還用周波数ダウンミキサーの出力信号は、前記位相比較回路の他方の入力端子に供給される請求項1に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項3】
RF受信信号アナログ信号処理回路を含み、
前記RF受信信号アナログ信号処理回路は、RF受信信号を増幅するローノイズアンプと、前記ローノイズアンプによって生成されたRF増幅受信出力信号が供給されることによって受信ベースバンド信号を生成する受信ミキサーとを含み、
前記周波数シンセサイザを構成する前記PLL回路は、前記RF電圧制御発振器から生成される前記発振周波数の前記RF発振出力信号を分周することにより前記受信ミキサーへ供給するRFキャリア信号を形成する第1分周器と、前記第1分周器の出力信号を分周する第2分周器とを含み、
前記半導体集積回路がGSM850MHzの周波数帯域もしくはGSM900MHzの周波数帯域の前記RF受信信号を受信する場合には、前記第1分周器から生成された分周出力信号が前記RFキャリア信号として前記受信ミキサーへ伝達されることにより、前記受信ミキサーから前記GSM850MHzの前記周波数帯域もしくは前記GSM900MHzの前記周波数帯域の前記RF受信信号から周波数変換された受信ベースバンド信号が生成され、
前記半導体集積回路がDCS1800MHzの周波数帯域もしくはPCS1900MHzの周波数帯域の前記RF受信信号を受信する場合には、前記RF電圧制御発振器から生成される前記発振周波数の前記RF発振出力信号が前記RFキャリア信号として前記受信ミキサーへ伝達されることにより、前記DCS1800MHzの前記周波数帯域もしくは前記PCS1900MHzの前記周波数帯域の前記RF受信信号から周波数変換された受信ベースバンド信号が生成され、
前記半導体集積回路がGSM850MHzの周波数帯域もしくはGSM900MHzの周波数帯域の前記RF送信周波数信号を形成する場合には、前記送信ミキサーにより前記中間周波数信号と送信ベースバンド信号とから前記中間周波送信信号が形成され、前記RF分周器として前記第1分周器と前記第2分周器とが動作することにより、前記第2分周器の分周出力信号が前記送信系オフセットPLL回路の前記位相制御帰還用周波数ダウンミキサーの前記他方の入力端子に前記分周RF周波数信号として伝達され、前記送信系オフセットPLL回路にて前記中間周波送信信号が前記GSM850MHzの前記周波数帯域もしくは前記GSM900MHzの前記周波数帯域の前記RF送信周波数信号へ周波数変換され、
前記半導体集積回路がDCS1800MHzの周波数帯域もしくはPCS1900MHzの周波数帯域の前記RF送信周波数信号を形成する場合には、前記送信ミキサーにより前記中間周波数信号と送信ベースバンド信号とから前記中間周波送信信号が形成され、前記RF分周器として前記第1分周器が動作することにより、前記第1分周器の分周出力信号が前記送信系オフセットPLL回路の前記位相制御帰還用周波数ダウンミキサーの前記他方の入力端子に前記分周RF周波数信号として伝達され、前記送信系オフセットPLL回路にて前記中間周波送信信号が前記DCS1800MHzの前記周波数帯域もしくは前記PCS1900MHzの前記周波数帯域の前記RF送信周波数信号へ周波数変換される請求項2に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項4】
前記通信用半導体集積回路は、EDGE方式に対応するためのポーラループ方式で構成され、前記送信系オフセットPLL回路は前記ポーラループ方式の位相変調のための位相ループと前記ポーラループ方式の振幅ループとを含み、前記送信系オフセットPLL回路の前記位相比較器と前記RF送信用電圧制御発振器と前記位相制御帰還用周波数ダウンミキサーとは前記位相ループを構成する請求項2に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項5】
前記通信用半導体集積回路は、EDGE方式に対応するためのポーラモジュレータ方式で構成され、前記送信系オフセットPLL回路は前記ポーラモジュレータ方式の位相変調のための位相ループと前記ポーラモジュレータ方式の振幅ループとを含み、前記送信系オフセットPLL回路の前記位相比較器と前記RF送信用電圧制御発振器と前記位相制御帰還用周波数ダウンミキサーとは前記位相ループを構成する請求項2に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項6】
前記フラクショナルPLL回路は前記平均分周比の前記小数を計算するためのΣΔ変調器を含み、前記ΣΔ変調器は1次ΣΔ変調器を複数多段としたMASH型である請求項1から請求項5のいずれかに記載の通信用半導体集積回路。
【請求項7】
前記MASH型の前記ΣΔ変調器にはディジタル微分器を介してディザー回路からの擬似ランダム雑音が供給される請求項6に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項8】
RF受信信号アナログ信号処理回路と、RF送信信号アナログ信号処理回路と、周波数シンセサイザとを含み、
前記RF受信信号アナログ信号処理回路は、RF受信信号を増幅するローノイズアンプと、前記ローノイズアンプによって生成されたRF増幅受信出力信号と前記周波数シンセサイザによって生成された受信キャリア信号とが供給されることによって受信ベースバンド信号を生成する受信ミキサーとを含み、
前記RF送信信号アナログ信号処理回路はベースバンド信号処理ユニットから送信ベースバンド信号が供給される送信ミキサーを含み、前記RF送信信号アナログ信号処理回路に前記周波数シンセサイザによって生成された送信キャリア信号とが供給されることによって、前記RF送信信号アナログ信号処理回路は、RF送信信号を生成して、
前記周波数シンセサイザは、基準発振周波数の基準周波数信号を生成する基準周波数発振器と、前記基準周波数発振器から形成された前記基準周波数信号が一方の入力端子に供給される位相比較器と、前記位相比較器のアップ出力信号とダウン出力信号とに応答するチャージポンプ回路と、前記チャージポンプ回路のチャージポンプ電流に応答するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタの制御出力電圧に応答するRF電圧制御発振器と、前記RF電圧制御発振器の出力端子と前記位相比較器の他方の入力端子との間に接続された分周器とを含むPLL回路により構成され、
前記周波数シンセサイザを構成する前記PLL回路は、前記分周器の分周比が変更されることにより平均分周比が整数と分数とを含むフラクショナルPLL回路であり、そのクローズドループ帯域は数十KHzのオーダーの狭帯域に設定され、
前記チャージポンプ回路は、前記位相比較器の前記アップ出力信号に応答して前記ローパスフィルタにソース電流を注入するソース電流供給トランジスタと、前記位相比較器の前記ダウン出力信号に応答して前記ローパスフィルタからスィンク電流を放出するスィンク電流放出トランジスタと、前記ローパスフィルタからdc直流電流を放出するかまたは前記ローパスフィルタにdc直流電流を注入するオフセット電流回路とを含み、
上記オフセット電流回路は前記dc直流電流を所定値に設定するように意図的なデバイスサイズに設定されたデバイスを含んでいる通信用半導体集積回路。
【請求項9】
前記周波数シンセサイザを構成する前記PLL回路は、前記RF電圧制御発振器から生成された前記RF発振出力信号を分周することにより中間周波数信号を生成する中間周波数分周器を含み、
前記半導体集積回路の前記RF送信信号アナログ信号処理回路は、前記中間周波数分周器から生成される前記中間周波数信号と送信ベースバンド信号とから中間周波送信信号を形成する前記送信ミキサーと、送信系オフセットPLL回路と、前記RF電圧制御発振器から生成された前記RF発振出力信号を分周することにより分周RF周波数信号を生成するRF分周器とを含み、
前記送信系オフセットPLL回路は、前記送信ミキサーから生成される前記中間周波送信信号が一方の入力端子に供給される位相比較回路と、前記位相比較回路の出力に応答する前記RF送信用電圧制御発振器と、前記RF送信用電圧制御発振器から生成される前記RF送信周波数信号が一方の入力端子に供給され前記RF分周器から生成される前記分周RF周波数信号が他方の入力端子に供給される位相制御帰還用周波数ダウンミキサーとを含み、前記位相制御帰還用周波数ダウンミキサーの出力信号は、前記位相比較回路の他方の入力端子に供給される請求項8に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項10】
前記周波数シンセサイザを構成する前記PLL回路は、前記RF電圧制御発振器から生成される前記発振周波数の前記RF発振出力信号を分周することにより前記受信ミキサーへ供給するRFキャリア信号を形成する第1分周器と、前記第1分周器の出力信号を分周する第2分周器とを含み、
前記半導体集積回路がGSM850MHzの周波数帯域もしくはGSM900MHzの周波数帯域の前記RF受信信号を受信する場合には、前記第1分周器から生成された分周出力信号が前記RFキャリア信号として前記受信ミキサーへ伝達されることにより、前記受信ミキサーから前記GSM850MHzの前記周波数帯域もしくは前記GSM900MHzの前記周波数帯域の前記RF受信信号から周波数変換された受信ベースバンド信号が生成され、
前記半導体集積回路がDCS1800MHzの周波数帯域もしくはPCS1900MHzの周波数帯域の前記RF受信信号を受信する場合には、前記RF電圧制御発振器から生成される前記発振周波数の前記RF発振出力信号が前記RFキャリア信号として前記受信ミキサーへ伝達されることにより、前記DCS1800MHzの前記周波数帯域もしくは前記PCS1900MHzの前記周波数帯域の前記RF受信信号から周波数変換された受信ベースバンド信号が生成され、
前記半導体集積回路がGSM850MHzの周波数帯域もしくはGSM900MHzの周波数帯域の前記RF送信周波数信号を形成する場合には、前記送信ミキサーにより前記中間周波数信号と送信ベースバンド信号とから前記中間周波送信信号が形成され、前記RF分周器として前記第1分周器と前記第2分周器とが動作することにより、前記第2分周器の分周出力信号が前記送信系オフセットPLL回路の前記位相制御帰還用周波数ダウンミキサーの前記他方の入力端子に前記分周RF周波数信号として伝達され、前記送信系オフセットPLL回路にて前記中間周波送信信号が前記GSM850MHzの前記周波数帯域もしくは前記GSM900MHzの前記周波数帯域の前記RF送信周波数信号へ周波数変換され、
前記半導体集積回路がDCS1800MHzの周波数帯域もしくはPCS1900MHzの周波数帯域の前記RF送信周波数信号を形成する場合には、前記送信ミキサーにより前記中間周波数信号と送信ベースバンド信号とから前記中間周波送信信号が形成され、前記RF分周器として前記第1分周器が動作することにより、前記第1分周器の分周出力信号が前記送信系オフセットPLL回路の前記位相制御帰還用周波数ダウンミキサーの前記他方の入力端子に前記分周RF周波数信号として伝達され、前記送信系オフセットPLL回路にて前記中間周波送信信号が前記DCS1800MHzの前記周波数帯域もしくは前記PCS1900MHzの前記周波数帯域の前記RF送信周波数信号へ周波数変換される請求項9に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項11】
前記通信用半導体集積回路は、EDGE方式に対応するためのポーラループ方式で構成され、前記送信系オフセットPLL回路は前記ポーラループ方式の位相変調のための位相ループと前記ポーラループ方式の振幅ループとを含み、前記送信系オフセットPLL回路の前記位相比較器と前記RF送信用電圧制御発振器と前記位相制御帰還用周波数ダウンミキサーとは前記位相ループを構成する請求項9に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項12】
前記通信用半導体集積回路は、EDGE方式に対応するためのポーラモジュレータ方式で構成され、前記送信系オフセットPLL回路は前記ポーラモジュレータ方式の位相変調のための位相ループと前記ポーラモジュレータ方式の振幅ループとを含み、前記送信系オフセットPLL回路の前記位相比較器と前記RF送信用電圧制御発振器と前記位相制御帰還用周波数ダウンミキサーとは前記位相ループを構成する請求項9に記載の通信用半導体集積回路。
【請求項13】
前記フラクショナルPLL回路は前記平均分周比の前記小数を計算するためのΣΔ変調器を含み、前記ΣΔ変調器は1次ΣΔ変調器を複数多段としたMASH型である請求項8から請求項12のいずれかに記載の通信用半導体集積回路。
【請求項14】
前記MASH型の前記ΣΔ変調器にはディジタル微分器を介してディザー回路からの擬似ランダム雑音が供給される請求項13に記載の通信用半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2007−318290(P2007−318290A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143818(P2006−143818)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】