説明

道路画像表示制御装置および道路画像表示制御プログラム

【課題】道路および前記道路上を移動する移動体を画像として表示させる装置において、従来とは異なる新規な方法で、表示される移動体を当該道路の現実の状況により即したものとする。
【解決手段】道路画像表示制御装置が、移動体の移動を抑制する信号機の作動内容の情報を取得し、さらに、当該画像内における当該移動体の移動を、取得した信号機の作動内容の情報に基づいて制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路画像表示制御装置および道路画像表示制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路および当該道路上を移動する移動体を画像として表示させる道路画像表示制御装置が提案されている。例えば、特許文献1に記載のナビゲーション装置は、道路の混雑度に関する情報を交通情報センターから受信し、この混雑度に基づいて推定した数の車両を当該道路上に重ねた画像を、画像表示装置に表示させるようになっている。
【0003】
このような特許文献1の技術によれば、表示された画像内において、道路上の移動体の数が、当該道路の現実の混雑度を反映したものとなる。
【特許文献1】特開2003−148971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、道路および前記道路上を移動する移動体を画像として表示させる技術において、従来とは異なる新規な方法で、表示される移動体を当該道路の現実の状況により即したものとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような目的を達成するための本発明の第1の特徴は、道路および当該道路上を移動する移動体を画像として表示させる道路画像表示制御装置が、当該道路における移動体の移動を抑制する移動抑制事象の情報を取得し、さらに、当該画像内における当該移動体の移動速度を、取得した移動抑制事象の情報に基づいて制御することである。
【0006】
このようになっていることで、表示される画像内の移動体は、移動抑制事象が反映された速度で道路上を移動するようになる。したがって、表示される移動体を当該道路の現実の状況により即したものとすることができる。
【0007】
また、取得する移動抑制事象の情報は、当該道路中の信号機の作動内容の情報(以下、信号機情報という)を含んでいてもよい。この場合さらに、道路画像表示制御装置は、当該移動体が移動する道路に対して当該信号機が走行停止を指示しているということを当該信号機情報が示していることに基づいて、当該移動体の移動を停止させるようになっていてもよい。このようにすることで、信号機の停止指示に即して移動体を移動させることができる。
【0008】
更にこのとき、取得する信号機情報は、当該道路中の交差点における信号機の作動内容の情報であってもよい。この場合、道路画像表示制御装置は、当該信号機が走行停止を指示している対象の道路に沿って当該移動体が当該交差点に進入していることに基づいて、当該移動体を当該交差点の外に移動させるようになっていてもよい。このようになっていることで、表示される画像内において、信号機が停止を指示している対象の道路から移動体が交差点に進入して留まってしまうような状況の発生を、信号機の切り替わり時に実際発生するような状況を模した形式で移動体を移動させることで、抑えることができる。
【0009】
また、取得する信号機情報が、当該道路中の交差点における信号機の作動内容の情報である場合、道路画像表示制御装置は、当該信号機が走行停止を指示している対象の道路に沿って当該移動体が当該交差点に進入していることに基づいて、当該移動体を当該画像中から消去するようになっていてもよい。このようになっていることで、表示される画像内において、信号機が停止を指示している対象の道路から移動体が交差点に進入して留まってしまうような状況の発生を迅速に抑えることができる。
【0010】
また、道路画像表示制御装置は、当該道路における移動体の混雑度の情報を取得するようになっていてもよい。この場合、道路画像表示制御装置は、当該画像内において、取得した混雑度の情報に基づいた数の複数の仮想位置に、当該移動体を画像として表示させるようになっていてもよい。このようにすることで、表示される移動体の数が、取得した混雑度の情報を反映することになる。したがって、表示される移動体の量が当該道路の現実の状況により即したものとなる。
【0011】
また、道路画像表示制御装置は、当該移動体の移動速度を、取得した混雑度の情報に基づいて制御するようになっていてもよい。このようにすることで、表示される移動体の移動速度が、取得した混雑度の情報を反映することになる。
【0012】
また、道路画像表示制御装置が車両に搭載されるものであって、表示される画像が、自車両の位置を含んでいる場合、道路画像表示制御装置は、移動体の移動速度を、自車両の車速に基づいて制御するようになっていてもよい。このようになっていることで、当該道路における自車両の周辺の現実の流れを反映した速度で、表示画像中において移動体を移動させることができる。
【0013】
また、道路画像表示制御装置が車両に搭載されるものであり、かつ、自車位置周辺の移動体の位置を検出することができるようになっていてもよい。この場合、道路画像表示制御装置は、表示される画像が自車位置を含む画像であることに基づいて、当該画像内において、検出された周辺の移動体の検出位置に、検出された移動体を表示させるようになっていてもよい。なお、ここでいう検出位置は、1つであってもよいし、複数であってもよい。このように、現に検出された自車両の周囲の移動体を画像中に表示させ、さらに、それら検出された移動体の画像中の位置を、現に検出された位置に基づいたものとすることで、道路と移動体から成る画像を当該道路の現実の状況により即したものとすることができる。
【0014】
また、表示される移動体が複数である場合、道路画像表示制御装置は、当該複数の移動体が重ならないように画像内に表示させるようになっていてもよい。このようにすることで、画像内において、移動体同士が同じ位置を占めてしまうという状況の発生を抑えることができる。
【0015】
また、表示される移動体が複数ある場合、道路画像表示制御装置は、当該複数の移動体のうち、移動させているものと停止させているものとを視覚的に区別できるように、当該複数の移動体を表示させるようになっていてもよい。このようになっていることで、ユーザは動いている移動体と止まっている移動体とを区別することができる。
【0016】
また、道路画像表示制御装置が車両に搭載され、かつ、自車両の周辺の状況を検出する機能を備えていれば、当該機能による検出結果に基づいて、移動抑制事象の情報を取得するようになっていてもよい。
【0017】
また、道路画像表示制御装置は、無線通信の機能を有していてもよい。この場合、道路画像表示制御装置は、無線通信機能を利用して受信した情報に基づいて、移動抑制事象の情報を取得するようになっていてもよい。
【0018】
また、道路画像表示制御装置は、過去における移動体の移動を抑制する事象の情報に基づいて、現在における移動体の移動を抑制する事象の情報を推定することで、当該移動抑制事象の情報を取得するようになっていてもよい。
【0019】
また、取得する移動抑制事象の情報は、当該道路中における人の存在位置の情報を含み、道路画像表示制御装置が、当該画像内における当該移動体の移動速度を、取得した人の存在位置の情報に基づいて制御するようになっていてもよい。このようになっていることで、画像中の移動体の移動速度に、人の存在位置を反映させることができる。
【0020】
また、取得する前記移動抑制事象の情報は、当該道路中の有料道路の入退場ゲートの自動、非自動の区別の情報を含み、道路画像表示制御装置は、当該画像内における当該移動体の移動速度を、当該自動、非自動の区別の情報に基づいて制御するようになっていてもよい。このようになっていることで、画像中の移動体の移動速度に、入退場ゲートの種別の情報を反映させることができる。
【0021】
また、上記目的を達成するための本発明の第2の特徴は、車両に搭載され、道路および前記道路上を移動する移動体を画像として表示させる道路画像表示制御装置が、当該道路における移動体の混雑度の情報を取得し、また、自車位置周辺の移動体の位置を検出し、さらに、当該画像内において、検出位置と、取得した混雑度の情報に基づいた数の仮想位置群と、のそれぞれに、1つの移動体を画像として表示させることである。なお、ここでいう検出位置は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0022】
このように、表示する画像内において、取得した混雑度の情報に応じた数の仮想位置群に加え、現に移動体が検出された自車両の周囲の検出位置に、移動体を表示させるので、道路と移動体から成る画像を当該道路の現実の状況により即したものとすることができる。
【0023】
またこのとき、道路画像表示制御装置は、表示する画像内において、自車位置を含む所定の領域においては検出位置に対応する検出移動体を表示させ、所定領域外の領域においては仮想位置群に対応する仮想移動体を表示させるようになっていてもよい。このようにすることで、自車両に近い位置の移動体がより現実に近いものとなる。
【0024】
またこのとき、道路画像表示制御装置は、自車位置周辺の移動体の位置を検出することができなかった場合、当該画像内において検出移動体を表示させず、かつ、当該画像内の所定領域外の領域においてのみ仮想移動体を表示させるようになっていてもよい。このようにすることで、自車両の周辺に移動体が検出されなかったにもかかわらず、表示画像中の自車両近傍において仮想移動体が表示されてしまうことによるユーザの混乱を防ぐことができる。
【0025】
さらにこの場合、この所定領域は、移動体の位置を検出することができる位置範囲に対応する領域であってもよい。このようになっていることで、実際にはこの所定領域内に存在するはずのない移動体を表す仮想移動体が、画像中の当該所定領域内に対応する領域に表示されてしまうことによるユーザの混乱を防ぐことができる。
【0026】
また、道路画像表示制御装置は、検出移動体と仮想移動体とを視覚的に区別できるように、画像内に表示させるようになっていてもよい。このようにすることで、ユーザは、現に検出された移動体の画像と仮想的な移動体の画像を区別することができる。
【0027】
より具体的には、道路画像表示制御装置は、検出移動体を立体的に表示させ、仮想移動体を平面的に表示させるようになっていてもよい。
【0028】
また、仮想移動体が歩行者である場合、当該道路画像表示制御装置は、当該道路における歩行者の混雑度の情報を記憶する記憶媒体を備え、さらに、当該道路における歩行者の混雑度の情報を、当該記憶媒体から取得するようになっていてもよい。
【0029】
また、上述した本発明の第1の特徴は、移動体の移動を抑制する事象(以下、移動抑制事象という)の情報を取得する移動抑制事象情報取得手段、および、道路および当該道路上を移動する移動体を画像として表示させると共に、当該画像内における当該移動体の移動速度を、当該移動抑制事象情報取得手段が取得した当該移動抑制事象に基づいて制御する画像表示制御手段として、コンピュータを機能させる道路画像表示制御プログラムとしても把握することができる。
【0030】
また、上述した本発明の第2の特徴は、道路および当該道路上を移動する移動体を画像として表示させる画像表示制御手段、当該道路における移動体の混雑度の情報を取得する混雑度情報取得手段、および、自車位置周辺の移動体の位置を検出する移動体位置検出手段として、コンピュータを機能させる道路画像表示制御プログラムであって、当該画像表示制御手段は、当該画像内において、当該移動体位置検出手段によって検出された当該位置と、当該混雑度情報取得手段が取得した当該混雑度の情報に基づいた数の複数の位置と、のそれぞれに、1つの移動体を画像として表示させることを特徴とする道路画像表示制御プログラムとしても把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成を示す。この車両用ナビゲーション装置1は、位置検出器11、画像表示装置12、操作スイッチ群13、スピーカ14、全方位カメラ15、前方カメラ16、VICS受信機17、RAM18、ROM19、データ記憶部20、および制御回路21を有している。
【0032】
位置検出器11は、いずれも周知の図示しない地磁気センサ、ジャイロスコープ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置、走行方向、および走行速度を特定するための情報を制御回路21に出力する。
【0033】
画像表示装置12は、制御回路21から出力された映像信号に基づいた映像をユーザに表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。
【0034】
操作スイッチ群13は、車両用ナビゲーション装置1に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置12の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置から成り、ユーザによるメカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号を制御回路21に出力する。
【0035】
全方位カメラ15は、図2に示すように、車両用ナビゲーション装置1を搭載する車両10の上端部等、自車両10の周囲の道路を見下ろせる位置に設けられている。この全方位カメラ15は、自車両10から所定距離以内の前後左右360°にある道路上の物体を一度に撮影することができる。全方位カメラ15は、撮影した車両周囲360°の画像を、制御回路21に出力する。後述する通り、この全方位カメラ15は、車両周囲の移動体、すなわち他車両や歩行者を検出するために用いられる。
【0036】
前方カメラ16は、自車両10の前方に設けられ、自車両10の前方を撮影し、その撮影画像を制御回路21に出力するようになっている。後述する通り、この前方カメラ16は、前方の信号機の作動状態を検出するために用いられる。
【0037】
VICS受信機17は、FMラジオ放送局、または道路沿いに設置された路上機から無線送信された道路上の車両の混雑度の情報、交通規制情報等を受信して制御回路21に出力する無線受信機である。
【0038】
データ記憶部20は、DVD、CD、HDD等の不揮発性の記憶媒体およびそれら記憶媒体に対してデータの読み出し(および可能ならば書き込み)を行う装置から成り、制御回路21が実行するプログラム、地図表示および経路案内用の地図データ、画像認識用パターンデータ等を記憶している。
【0039】
地図データは、リンクおよびノードの位置、種別、ノードとリンクとの接続関係情報等を含む道路データ、および施設データを有している。道路データはさらに、各リンクにおける歩行者(移動体の一例に相当する)の混雑度のデータを有している。この、歩行者の混雑度のデータは、1つのリンクに1つの混雑度の値が割り当てられていてもよいし、1つのリンクに曜日別、時間帯別等の混雑度の値のテーブルが割り当てられていてもよい。施設データは、デパート、遊園地、レストラン、信号機等の構造物の地図上の位置、種別、名称等の情報を含んでいる。
【0040】
画像認識用パターンデータは、歩行者や車両等の移動体を様々な方向(例えば前後左右)から見たときの外形を示す画像データと、信号機を正面下から見上げたときの外形を示す画像データとから成る。図3に、パターンデータの示す外形の一例として、歩行者を正面から見た外形を示す。また、図4および図5に信号機の外形の例を示す。図4、図5に示すように、画像認識用パターンデータは、複数種類の信号機の外形の画像データを有している。
【0041】
制御回路21は、ROM19およびデータ記憶部20から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM18、ROM19、およびデータ記憶部20から情報を読み出し、RAM18およびデータ記憶部20に対して情報の書き込みを行い、位置検出器11、画像表示装置12、操作スイッチ群13、スピーカ14、全方位カメラ15、前方カメラ16、およびVICS受信機17と信号の授受を行う。
【0042】
制御回路21がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、現在位置特定処理、誘導経路算出処理、地図表示制御処理、経路案内処理、ルートシミュレーション処理等がある。現在位置特定処理は、位置検出器11からの信号に基づいて、周知のマップマッチング等の技術を用いて車両の現在位置や向きを特定する処理である。誘導経路算出処理は、操作スイッチ群13からユーザによる目的地の入力を受け付け、現在位置から当該目的地までの最適な誘導経路を算出する処理である。
【0043】
地図表示制御処理は、地図表示を行う位置、地図表示の拡大率等のパラメータを他の処理から受けることで、そのパラメータに従った地図画像を画像表示装置12に表示させる制御を実行する。この地図表示制御処理の詳細については後述する。
【0044】
経路案内処理は、算出された誘導経路上の右左折交差点の手前に自車両が到達したとき等の必要時に、右折、左折等を指示する案内音声をスピーカ14に出力させる処理である。また、経路案内処理においては、誘導系路上を進行する自車両の周辺の画像を画像表示装置12に表示させる。この画像表示制御のために、制御回路21は、上述した地図表示処理に対して、繰り返しパラメータを渡す。このパラメータは、地図表示位置の指定、および、拡大率の指定を含む。そして、そのパラメータ中の地図表示位置を、刻一刻と変化する現在位置とする。また、そのパラメータ中の拡大率を、自車両が右左折交差点に近づいたときには大きくする。
【0045】
ルートシミュレーション処理は、地図上において、算出された誘導経路に沿って自車位置を示すマークを、自車両の現在位置に関わらず、移動させる処理である。この処理のため、制御回路21は、繰り返し経路案内処理に対してパラメータを渡し、そのパラメータの中で地図表示位置を誘導系路に沿って段階的に進行させる。
【0046】
制御回路21は、地図表示処理にパラメータが渡される度に、図6に示すプログラム100を実行する。このプログラムの実行において、制御回路21は、まずステップ110で、自車位置周辺の画像を表示することを要求されているか否かを判定する。自車位置周辺の画像を表示することを要求されているか否かは、例えば、パラメータとして渡された地図表示位置が自車両の現在位置であるか否かに基づいて判定する。したがって、経路案内処理が実行中である場合には、ステップ110の判定結果は肯定となり、ルーとシミュレーション処理実行中である場合には、ステップ110判定結果は否定となる。自車位置周辺の画像を表示することを要求されていると判定した場合、続いてステップ120を実行し、要求されていないと判定した場合、続いてステップ130を実行する。
【0047】
ステップ120では、自車位置近傍の移動体を算出する。検出は、全方位カメラ15を用いた画像解析によって行う。具体的には、全方位カメラ15が撮影した領域(以下、撮像領域という)全体の画像中から所定の領域(以下、検出領域という)を切り出し、その切り出した領域の二値化(または輝度によるグレースケール化)、ノイズ除去、およびエッジ抽出を行う。そして抽出されたエッジの形状と、画像認識用パターンデータ内の移動体の外形画像データとを比較して、移動体の外形画像データのいずれかと類似度が所定レベル以上のエッジ形状を、当該外形画像データに対応する移動体(具体的には車両または歩行者)として特定する。
【0048】
また、特定した移動体の自車両からの距離および自車両からの位置は、全方位カメラ15が撮影した画像中の、当該移動体の位置に基づいて特定する。全方位カメラ15が撮影した撮像領域の画像は、図7に示すように、円盤形状91となっており、俯角(すなわち、全方位カメラ15の位置を視点として、水平方向から下を見下ろす角度)θが大きい位置の物体ほどこの円盤91の内側に結像する。すなわち、円盤91の中心から遠ざかるほど、自車両10から遠い位置となる。
【0049】
また、この円盤の正面に該当する方向92に対する回転角αが、全方位カメラ15の正面方向に対するずれ角に対応する。例えば、回転角αが90°となる方向に結像した物体は、全方位カメラ15を視点として自車両10の真右方向にある物体である。なお、上述の切り出された検出領域は、円93の内側の領域、すなわち、全方位カメラ15が撮影できるもっとも遠い距離よりも狭い所定の距離までの領域である。
【0050】
続いてステップ130では、地図表示位置周辺の道路の車両における車両の混雑度の情報を、VICS受信機17を介して取得する。さらにステップ130では、地図表示位置周辺の道路における歩行者の混雑度の情報を、地図データ中の道路データから読み出して取得する。
【0051】
続いてステップ140では、自車両が信号機のある地点の手前(例えば手前100メートル以内)にいるか否かを、地図データ中の施設データに含まれる信号機の位置情報、自車両の現在位置の情報、および、自車両の走行方向の情報に基づいて判定する。自車両が信号機のある地点付近にいると判定した場合、続いてステップ150を実行し、自車両が信号機のある地点付近にいないと判定した場合、続いてステップ160を実行する。
【0052】
ステップ150では、前方カメラ16を用いて信号機情報を取得する。具体的には、前方カメラ16によって撮影された画像に対して、領域の二値化(または輝度によるグレースケール化)、ノイズ除去、およびエッジ抽出を行う。そして抽出されたエッジの形状と、画像認識用パターンデータ内の信号機の外形画像データとを比較して、信号機の外形画像データのいずれかと類似度が所定レベル以上のエッジ形状を、当該外形画像データに対応する信号機として特定する。
【0053】
さらにステップ150では、特定した信号機の作動状態を検出する。具体的には、信号機が走行可を示しているか、または、走行停止を示しているかを検出する。ここで、走行可を示しているとは、より詳しくは、車両の現在の走行方向への走行が許可されていることをいう。また、走行停止を示しているとは、より詳しくは、車両の現在の走行方向への走行を停止するよう指示されていることをいう。走行可であるか走行停止であるかは、その信号機が有する複数のライトのうち、どれが点灯しているかに基づいて判定する。例えば、図4のようなライトが横に並んでいる信号機においては、通常右から順に赤色、黄色、青色のライトとなっている。また、降雪の多い地方で多く見られる、図5のようにライトが縦に並んでいる信号機においては、通常上から順に赤色、黄色、青色のライトとなっている。
【0054】
このように、信号機中の各ライトの配置と交通指示の内容との関係は、あらかじめわかっている。したがって、ステップ150では、複数のライトのうちどれが点灯しているかを検出することで、走行可であるか不可であるかを判定する。具体的には、前方カメラ16が撮影した画像のうち、信号機であると特定した部分をグレースケール化し、その信号機のどの部分の輝度が最も高いかを検出し、その位置に対応するライトが点灯していると判定する。そして、点灯しているライトの配置、および検出した信号機の種別に基づいて当該信号機の現在の指示内容を特定する。また、信号機のグレースケール画像中の一部において、急激に輝度が上がった場合、その部分のライトが新たに点灯したライトであると判定する。そして、青色のライトが点灯している場合には、信号機が走行可を示していると判定し、黄色または赤色のライトが点灯している場合には、信号機が走行停止を指示していると判定する。
【0055】
続いてステップ160では、制御回路21は、ステップ130で取得した混雑度情報に基づいた地図および移動体シンボルの表示制御を行う。なお、この表示制御においては、ステップ150で信号機情報を取得していれば、その信号機情報も用い、また、ステップ120で自車位置近傍の移動体の検出を行っていれば、その検出結果も用いる。
【0056】
具体的には、ステップ130で取得した車両の混雑度に基づいて、各道路上を走行しているであろう車両の数を推定する。この推定車両数は、対象となる道路の混雑度が高いほど多くなるようにする。制御回路21は、パラメータとして受けた地図表示地点および縮尺に基づいて、画像表示装置12に表示させる地図範囲を特定し、その範囲内の道路のそれぞれについて、この推定車両数を決定する。そして、画像表示装置12に、当該地図範囲内の道路の画像、施設(例えばビル、信号機)の画像、および、それら道路上の車両の画像(以下、仮想車両シンボルという)を表示させる。各道路に表示させる仮想車両シンボルの数は、当該道路についての推定車両数と同じとする。各道路に表示させる仮想車両シンボルの配置(仮想位置群の一例に相当する)は、当該道路に沿って等間隔とする。各道路に表示させる仮想車両シンボルの当該道路に対する移動速度は、混雑度が大きくなるほど小さくなる速度でもよいし、自車両が走行する道路上の仮想車両シンボルの場合は、自車両の走行速度と同じ速度でもよいし、一定速度(例えば時速40キロメートル)でもよい。
【0057】
また、ステップ130で取得した歩行者の混雑度、および現在日時に基づいて、各道路の歩道部分にいるであろう歩行者の数を推定する。この推定車両数は、対象となる道路の現在日時と同種(同じ曜日、同じ時間帯等)の期間における混雑度が高いほど、多くなるようにする。制御回路21は、地図範囲内の道路のそれぞれについて、この推定歩行者数を決定する。そして、画像表示装置12に、上述した道路、施設、仮想車両シンボルの画像と共に、更に、それら道路の歩道部分における歩行者の画像(以下、仮想歩行者シンボルという)を表示させる。各道路に表示させる仮想歩行者シンボルの数は、当該道路についての推定歩行者数と同じとする。各道路に表示させる仮想歩行者シンボルの配置(仮想位置群の一例に相当する)は、当該道路に沿って等間隔としてもよいし、ほぼランダムな配置でもよい。各道路に表示させる仮想歩行者シンボルの当該道路に対する移動速度は、混雑度が大きくなるほど小さくなる速度でもよいし、一定速度(例えば時速5キロメートル)でもよいし、ほぼランダムな速度でもよい。
【0058】
また、表示させる画像中の自車両の現在位置には、自車両を示す自車両シンボルを表示させる。なお、仮想車両シンボル、仮想歩行者シンボル、および自車両シンボルは、表示する画像中で互いに重ならないように、それらの位置および移動速度を制御する。同様に、仮想車両シンボル同士も、表示する画像中で重ならないように、それらの位置および移動速度を制御する。同様に、仮想歩行者シンボル同士も、表示する画像中で重ならないように、それらの位置および移動速度を制御する。
【0059】
ただし、ステップ120で自車位置近傍の歩行者および車両の位置を検出していれば、表示する画像中の、その検出した位置には、仮想車両シンボルおよび仮想歩行者シンボルを表示させず、実在車両シンボルおよび実在歩行者シンボルを表示させる。表示させる実在車両シンボルのそれぞれは、検出した車両のそれぞれに対応する。また、表示させる実在歩行者シンボルのそれぞれは、検出した歩行者のそれぞれに対応する。実在車両シンボルおよび実在歩行者シンボルのそれぞれの画像中の表示位置は、検出された車両および歩行者のそれぞれの位置と同じ位置とする。
【0060】
さらにこの場合、検出した位置のみならず、表示する画像中の、全方位カメラ15の撮像領域に相当する領域内には、仮想移動体シンボルを表示させないようにする。あるいは、全方位カメラ15の検出領域に相当する領域内には、仮想移動体シンボルを表示させないようにする。換言すれば、仮想移動体シンボルは、全方位カメラ15の撮像領域(または検出領域)外にのみ表示させるようにする。このようになっていることで、撮像領域(または検出領域)内において、現に存在する移動体を表す実在移動体シンボルと、そうでなはい仮想移動体シンボルが混在してしまうことによるユーザの混乱を防ぐことができる。
【0061】
このようにすることで、画像表示装置12は、自車両を含む所定の近傍範囲には、現実により近い形式で車両および歩行者を表示し、カメラによる検出が難しい近傍範囲外には、取得した混雑度に応じた数の車両を表示する。このように、仮想移動体シンボル(仮想車両シンボルおよび仮想歩行者シンボル)と実在移動体シンボル(実在車両シンボルおよび実在歩行者シンボル)の表示位置を区分けすることで、仮想車両シンボル、仮想歩行者シンボル、実在車両シンボル、実在歩行者シンボルは、表示される画像中で互いに重ならないようになる。
【0062】
また、ステップ150で信号機情報を取得している場合は、上記の制御に関わらず、その信号機情報の内容に応じて、その信号機に関連する仮想車両シンボルおよび仮想歩行者シンボルの移動を制限する。図8に、取得した信号機情報に係る信号機が交差点における信号機である場合の、その交差点で交差する道路における仮想車両シンボル、仮想歩行者シンボル移動の制御の方法を、表形式で示す。
【0063】
まず、ステップ150で検出した対面信号機、すなわち、現在自車両の正面にある信号機の指示内容が走行可である場合について説明する。この場合、自車両の走行している道路(以下、自車道路という)を走行する車両および歩行者についての仮想車両シンボルおよび仮想歩行者シンボルは、既述の通り移動させる。そして、自車道路と当該交差点で交差する道路(以下、交差道路という)を走行する車両についての仮想車両シンボルは、当該信号機手前で停止状態にさせる。さらに、交差道路を移動する歩行者についての仮想歩行者シンボルは、当該信号機のある交差点の横断歩道の手前で停止状態にさせる。
【0064】
図9に、対面信号機の指示内容が走行可である場合の画像表示装置12の表示画像の例を示す。この例においては、自車両シンボル31の近傍には、全方位カメラ15によって検出された実在車両シンボル32、33、34および実在歩行者シンボル51、52が表示されている。これら実在移動体シンボルは、それらに対応する実際の車両および歩行者の移動と同じように移動する。また、これら実在移動体シンボルは、3D表示(すなわち立体的表示または鳥瞰図的表示)で表されている。
【0065】
また、自車両シンボル31から離れた位置には、仮想車両シンボル41、42、43、および仮想歩行者シンボル61が、2D表示(すなわち平面的表示)で表されている。そして、仮想車両シンボル41〜43のうち、自車両シンボル31と同じ道路を走行する仮想車両シンボル41、42は、その進行方向に向けて逐次移動させる。しかし、交差道路を走行する仮想車両シンボル43は、交差点手前で停止させる。また、仮想歩行者シンボル61は、交差道路に沿って移動するようになっているので、横断歩道の手前で停止させる。
【0066】
また、交差点には、自車両シンボル31の正面の信号機70も表示ささせる。制御回路21は、この信号機70の3つのライト部分のうち、点灯していることを検出したライト部分を強調表示するようになっていてもよい。
【0067】
次に、ステップ150で検出した対面信号機の指示内容が走行停止である場合について説明する。この場合、図8に示すように、交差道路を走行する車両および歩行者についての仮想車両シンボルおよび仮想歩行者シンボルは、既述の通り移動させる。そして、自車道路を走行する車両についての仮想車両シンボルは、当該信号機手前で停止状態にさせる。さらに、自車道路を移動する歩行者についての仮想歩行者シンボルは、当該信号機のある交差点の横断歩道の手前で停止状態にさせる。
【0068】
図10に、対面信号機の指示内容が走行停止である場合の画像表示装置12の表示画像の例を示す。この例においては、自車両シンボル31の近傍に、全方位カメラ15によって検出された実在車両シンボル32、33、35および実在歩行者シンボル51、52が3D表示されている。
【0069】
また、自車両シンボル31から離れた位置には、仮想車両シンボル45〜49、および仮想歩行者シンボル61、62が、2D表示されている。そして、仮想車両シンボル45〜49のうち、自車両シンボル31と同じ道路を走行する仮想車両シンボル44、45は、交差点の手前で停止させる。しかし、交差道路を走行する仮想車両シンボル46〜49および仮想歩行者シンボル61、62は、その進行方向に逐次移動させる。
【0070】
なお、対面信号機が走行停止を示している状態から走行可を示している状態に変化するタイミングにおいては、それまで走行可であった道路(すなわち交差道路)から交差点内に既に進入している仮想車両シンボルおよび仮想歩行者シンボルが存在する可能性がある。このような場合には、図8の下から2行目に示すように、自車道路に沿う仮想車両シンボルおよび仮想歩行者シンボルについては、その停止状態を保たせる。そして、交差道路に沿って走行する仮想車両シンボルおよび仮想歩行者シンボルのうち、まだ交差点に達していないものは、交差点手前まで逐次進めた後に停止させる。また、既に交差点内にあるものは、そのまま逐次移動させて交差点を通り抜けさせる。
【0071】
図11に、対面信号機が走行停止を示している状態から走行可を示している状態に変化した直後における画像表示装置12表示画像の一例を示す。この図においては、交差道路を走行していた仮想車両シンボル46〜49のうち、まだ交差点に達していない仮想車両シンボル47、49については、交差点手前で停止させる。そして、既に交差点に達している仮想車両シンボル46、48については、矢印71、72の示すような、仮想車両シンボル46、48の進行方向に向けて引き続き進める。このようにすることで、画像表示装置12の表示画面上で、仮想車両シンボル46、48は、交差点から抜け、最後には表示画像の端で消えていく。
【0072】
なお、これら既に交差点内にある仮想車両シンボルおよび仮想歩行者シンボルについては、それを停止させると共に、消去されるまで表示を段階的に薄くしていくようになっていてもよい。
【0073】
また、対面信号機が走行可を示している状態から走行停止を示している状態に変化するタイミングにおいては、図8の最下行に示すように、交差道路に沿う仮想車両シンボルおよび仮想歩行者シンボルについては、その停止状態を保たせる。そして、それまで走行可であった道路(すなわち自車道路)に沿って走行する仮想車両シンボルおよび仮想歩行者シンボルのうち、まだ交差点に達していないものは、交差点手前まで逐次進めた後に停止させる。また、既に交差点内にあるものは、そのまま逐次移動させて交差点を通り抜けさせる。
【0074】
以上のようなプログラム100を制御回路21が実行することで、車両用ナビゲーション装置1は、特定の位置近傍の道路における車両の混雑度情報および歩行者の混雑情報を、それぞれVICS受信機17およびデータ記憶部20中の歩行者の混雑度データを用いて取得する(ステップ130参照)。そして、その取得した混雑度情報に基づいて特定した数の仮想車両シンボルおよび当該混雑度情報に基づいて特定した数の仮想歩行者シンボルを、当該道路上に重ねて表示する(ステップ160参照)。このようにすることで、表示される移動体の数が、取得した混雑度の情報を反映することになる。したがって、表示される移動体の量が当該道路の現実の状況により即したものとなる。
【0075】
さらに車両用ナビゲーション装置1は、その特定の位置が信号機のある地点の近傍であることに基づいて(ステップ140参照)、前方カメラ16を用いてその近傍の信号機の作動内容の情報を取得し(ステップ150参照)、その作動内容に応じて、表示画像における、仮想車両シンボルおよび仮想歩行者シンボルの道路上の移動または停止を制御する(ステップ160参照)。
【0076】
さらに車両用ナビゲーション装置1は、その特定の位置が自車位置である場合、すなわち、画像表示装置12に自車位置周辺を表示させる場合(ステップ110参照)、全方位カメラ15を用いて自車位置から所定距離内にある車両および歩行者を実際に検出し(ステップ150参照)、その検出結果の情報に基づいて、表示画像中において、自車両シンボル、実在車両シンボルおよび仮想車両シンボルを、検出結果の示す位置に表示する(ステップ160参照)。このように、現に検出された自車両の周囲の移動体を画像中に表示させ、さらに、それら検出された移動体の画像中の位置を、現に検出された位置に基づいたものとすることで、道路と移動体から成る画像を当該道路の現実の状況により即したものとすることができる。
【0077】
以上示した通り、道路および当該道路上を移動する移動体を画像として表示させる車両用ナビゲーション装置1が、移動体の移動を抑制する移動抑制事象としての信号機情報を取得し、さらに、当該画像内における当該移動体の移動および停止を、取得した信号機情報に基づいて制御する。したがって、信号機の停止指示に即して移動体を移動させることができ、表示される移動体を当該道路の信号機の現実の状況により即したものとすることができる。このことは、車両のドライバーの運転における安全性の向上にも寄与することになる。
【0078】
より具体的には、車両用ナビゲーション装置1は、当該信号機が走行停止を指示している対象の道路に沿って当該移動体が当該交差点に進入していることを当該信号機情報が示していることに基づいて、当該移動体を当該交差点の外に移動させる。このようになっていることで、表示される画像内において、信号機が停止を指示している対象の道路から移動体が交差点に進入して留まってしまうような状況の発生を、信号機の切り替わり時に実際発生するような状況を模した形式で移動体を移動させることで、抑えることができる。
【0079】
あるいは、信号機情報によれば、当該信号機が走行停止を指示している対象の道路に沿って当該移動体が当該交差点に進入していることに基づいて、当該移動体を当該画像中から徐々に消去する。このようになっていることで、表示される画像内において、信号機が停止を指示している対象の道路から移動体が交差点に進入して留まってしまうような状況の発生を迅速に抑えることができる。
【0080】
また、表示される画像が、自車両の位置を含んでいる場合、車両用ナビゲーション装置1は、移動体の移動速度を、自車両の移動速度に基づいて制御することができる。このようになっていることで、当該道路における自車両の周辺の現実の流れを反映した速度で、表示画像中において移動体を移動させることができる。
【0081】
また、車両用ナビゲーション装置1は、表示する画像内において、自車位置から基準距離以内の領域においては検出位置に対応する実在移動体シンボル(表示される検出移動体の一例に相当する)を表示させ、基準距離外の領域においては仮想位置群に対応する仮想移動体シンボルを表示させるようになっている。このようにすることで、自車両に近い位置の移動体がより現実に近いものとなる。
【0082】
また、車両用ナビゲーション装置1は、実在移動体シンボルと仮想移動体シンボルとを視覚的に区別できるように、それぞれ3D表示および2D表示で表している。このようにすることで、ユーザは、現に検出された移動体の画像と仮想的な移動体の画像を容易に区別することができる。
【0083】
なお、上記の実施形態において、車両用ナビゲーション装置1が道路画像表示制御装置の一例に相当し、制御回路21がコンピュータの一例に相当し、プログラム100が道路画像表示制御プログラムの一例に相当する。また、制御回路21が、プログラム100のステップ160を実行することで画像表示制御手段の一例として機能し、ステップ150を実行することで移動抑制事象情報取得手段の一例として機能し、ステップ130を実行することで混雑度情報取得手段の一例として機能し、ステップ110および120を実行することで移動体位置検出手段の一例として機能する。また、位置検出器11が、車速に関する情報を検出することで、車速検出手段の一例として機能する。また、全方位カメラ15が、移動体位置検出手段の一例に相当する。また、前方カメラ16が、車両周辺状況検出手段の一例に相当する。
【0084】
仮想車両シンボルおよび仮想歩行者シンボルが、画像表示装置によって表示される仮想移動体の一例に相当する。また、実在車両シンボルおよび実在歩行者シンボルが、画像表示装置によって表示される検出移動体の一例に相当する。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0085】
例えば、制御回路21は、プログラム100のステップ160においては、直前のステップ120で自車位置近傍の歩行者および車両の位置の検出に失敗していた(すなわち、車両も人も検出されなかった)としても、表示する画像中の、全方位カメラ15の撮像領域に相当する領域内には、仮想移動体シンボルを表示させないようにしてもよい。あるいは、全方位カメラ15の検出領域に相当する領域内には、仮想移動体シンボルを表示させないようにしてもよい。換言すれば、自車位置近傍に歩行者および車両の位置を検出していてもいなくても、仮想移動体シンボルは、全方位カメラ15の撮像領域(または検出領域)外にのみ表示させるようにしてもよい。このようになっていることで、撮像領域(または検出領域)内において、実際には存在するはずのない移動体を表す仮想移動体シンボルが存在してしまうことによるユーザの混乱を防ぐことができる。
【0086】
また、制御回路21は、移動している仮想移動体シンボルと、移動が制限されている仮想移動体シンボルとを、視覚的に区別できるように画像表示装置12に表示させるようになっていてもよい。例えば、移動している仮想移動体シンボルの表示色と、移動が制限されている仮想移動体シンボルの表示色を、異なるようにしてもよい。また、移動している仮想移動体シンボルと、移動が制限されている仮想移動体シンボルのうち、一方を立体的に、他方を平面的に表示させるようになっていてもよい。このようになっていることで、ユーザは移動が制限されている移動体と制限されていない移動体とを区別することができる。
【0087】
また、上記の実施形態においては、信号機の作動内容の情報を、外部との通信によって取得するようになっていてもよい。例えば、車両用ナビゲーション装置1が無線通信装置(無線手段の一例に相当する)を有し、信号機自体がその作動状態を無線送信し、それを車両用ナビゲーション装置1が当該無線通信装置を介して無線受信するようになっていてもよい。あるいは、当該無線通信装置を用いて広域ネットワークに接続し、複数の信号機を集中管理するセンターから、当該広域ネットワークを介して信号機情報を受信するようになっていてもよい。
【0088】
また、車両用ナビゲーション装置1は、信号機の現在の作動内容の情報を、当該信号機の過去の作動内容の情報を利用して推定するようになっていてもよい。当該信号機の過去の作動内容の情報は、データ記憶部20の地図データ中にあらかじめ(例えば車両用ナビゲーション装置1の製造時)に記憶されるようになっていてもよい。また、当該信号機の過去の作動内容の情報は、車両用ナビゲーション装置1の制御回路21が、前方カメラ16を用いて検出した信号機の作動内容を、その検出日時(月、日、曜日、時、分、秒等)と共にデータ記憶部20等の不揮発性記憶媒体に繰り返し蓄積するようになっていてもよい。そして、この蓄積された検出結果に基づいて、個々の信号機について、その信号機の作動規則(「平日の9:00〜10:00には、60秒周期で指示内容が変化し、毎分の15秒に赤から青に変化する」、「16時10分5秒〜30秒の間は赤」等)を推定し、その推定結果に基づいて、現在時刻の作動内容を推定するようになっていてもよい。
【0089】
また、制御回路21は、信号機が右折(または左折)のみ可である旨を信号機画示しているか否かを、前方カメラ16を用いて検出するようになっていてもよい。この場合、当該信号機に対面する道路上の仮想車両シンボルについては、当該信号機のある交差点を右折(または左折)のみさせる方向に移動させてもよい。
【0090】
また、車両用ナビゲーション装置1は、地図表示位置周辺の道路の混雑度の情報を、VICS受信機17を介して受信するようになっている。しかし、過去にVICS受信機17を介して受信し、さらにデータ記憶部20に記録しておいた混雑度情報に基づいて、上述の信号機情報の推定と同様に、現在の混雑度を推定するようになっていてもよい。
【0091】
また、車両用ナビゲーション装置1が自車両の前方以外の移動体を検出するセンサを有している場合、制御回路21は、ステップ140では、信号機のある地点の手前にいるか否かではなく、近傍にいるか否かを判定するようになっていてもよい。
【0092】
また、制御回路21は、近傍の車両の位置情報を、車車間通信によって取得するようになっていてもよい。具体的には、車両用ナビゲーション装置1が車車間通信装置を備え、他の複数の車両に搭載された装置が、それぞれの自位置を検出し、その検出した位置の情報を送信し、車両用ナビゲーション装置1が、その送信された位置の情報を、車車間通信装置を介して受信するようになっていればよい。このような場合、車車間通信装置が、移動体位置検出手段の一例に相当する。
【0093】
また、移動体の位置を検出するためのセンサは、全方位カメラ15に限らず、車両の複数の位置に設けられ、車両の左右方向、後方を撮影するカメラを含んでいてもよい。また、カメラに限らず、周囲の移動体までの距離を検出するセンサ(例えば超音波センサ、レーザーセンサ)を含んでいてもよい。
【0094】
また、車両用ナビゲーション装置1が検出する、移動体の移動を抑制する事象は、信号機の作動内容に限らない。例えば、踏切の遮断機の作動であってもよい。
【0095】
また、取得する移動抑制事象の情報は、道路中の有料道路の入退場ゲートの自動、非自動の区別の情報であってもよい。自動ゲートとしては、ETCゲートがある。このとき、車両用ナビゲーション装置1は、当該画像内における当該移動体の移動速度を、当該自動、非自動の区別の情報に基づいて制御するようになっていてもよい。例えば、非自動の入退場ゲートを通過させる仮想車両シンボルは、当該ゲート内において所定時間停止させ、かつ、自動の入退場ゲートを通過させる仮想車両シンボルは、停止させずに当該ゲートを通過させるようにしてもよい。このようになっていることで、画像中の移動体の移動速度に、入退場ゲートの種別の情報を反映させることができる。
【0096】
また、取得する移動抑制事象の情報は、歩道から車道に入ってきた人の位置情報であってもよい。この場合、車両用ナビゲーション装置1は、前方カメラ16を用いてその人の位置を検出するようになっていてもよい。このとき、車両用ナビゲーション装置1は、当該画像内における仮想車両シンボルの移動速度を、取得した人の存在位置の情報に基づいて制御するようになっていてもよい。具体的には、この人の手前出、仮想車両シンボルを停止させるようになっていてもよい。このようになっていることで、画像中の移動体の移動速度に、人の存在位置を反映させることができる。
【0097】
また、取得する移動抑制事象の情報は、緊急車両(緊急時の消防車、救急車、パトカー等)の位置情報であってもよい。この場合、車両用ナビゲーション装置1の制御回路21は、上述の車車間通信によって、自位置を送信する緊急車両から当該位置の情報を取得するようになっていればよい。そして制御回路21は、取得した位置情報に基づいて、仮想移動体シンボルを制御するようになっていてもよい。例えば、緊急車両が、停止指示を受けている道路から交差点に進入しようとしていることを検出した場合は、当該緊急車両の位置に車両シンボルを強調して表示させ、さらに、停止指示を受けていない道路から交差点に進入する仮想車両シンボルを停止させるようになっていてもよい。また、緊急車両と同じ道路を移動する仮想車両シンボルを、道路脇に移動させて、さらに速度を低下させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】自車両10における全方位カメラ15の取り付け位置を示す図である。
【図3】歩行者の外形画像データが示す外形の一例を示す図である。
【図4】信号機の外形画像データが示す外形の一例を示す図である。
【図5】信号機の外形画像データが示す外形の一例を示す図である。
【図6】制御回路21が実行するプログラム100のフローチャートである。
【図7】全方位カメラ15の撮影する画像を示す図である。
【図8】交差点内の信号機の作動状態と仮想移動体シンボルの移動の制限内容との対応関係を示す図表である。
【図9】自車両31正面の信号機が青である場合における、移動体シンボルの表示例を示す図である。
【図10】自車両31正面の信号機が赤である場合における、移動体シンボルの表示例を示す図である。
【図11】自車両31正面の信号機が赤から青への変わり目である場合における、移動体シンボルの表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0099】
1…車両用ナビゲーション装置、10…自車両、11…位置検出器、
12…画像表示装置、13…操作スイッチ群、14…スピーカ、15…全方位カメラ、
16…前方カメラ、17…VICS受信機、18…RAM、19…ROM、
20…データ記憶部、21…制御回路、31…自車両シンボル、
32〜35…実在車両シンボル、41〜49…仮想車両シンボル、
51、52…実在歩行者シンボル、61、62…仮想歩行者シンボル、70…信号機、
71、72…移動方向、91…円盤領域、92…自車両前方方向、
93…切り出し範囲境界、100…プログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路および前記道路上を移動する移動体を画像として表示させる画像表示制御手段と、
前記道路における移動体の移動を抑制する事象(以下、移動抑制事象という)の情報を取得する移動抑制事象情報取得手段と、を備え、
前記画像表示制御手段は、前記画像内における前記移動体の移動速度を、前記移動抑制事象情報取得手段が取得した前記移動抑制事象の情報に基づいて制御することを特徴とする道路画像表示制御装置。
【請求項2】
前記移動抑制事象情報取得手段が取得する前記移動抑制事象の情報は、前記道路中の信号機の作動内容の情報(以下、信号機情報という)を含み、
前記画像表示制御手段は、前記移動体が移動する道路に対して前記信号機が走行停止を指示しているということを前記信号機情報が示していることに基づいて、前記移動体の移動を停止させることを特徴とする請求項1に記載の道路画像表示制御装置。
【請求項3】
前記移動抑制事象情報取得手段が取得する前記信号機情報は、前記道路中の交差点における信号機の作動内容の情報であり、
前記画像表示制御手段は、前記信号機が走行停止を指示している対象の道路に沿って前記移動体が前記交差点に進入していることに基づいて、前記移動体を前記交差点の外に移動させることを特徴とする請求項2に記載の道路画像表示制御装置。
【請求項4】
前記移動抑制事象情報取得手段が取得する前記信号機情報は、前記道路中の交差点における信号機の作動内容の情報であり、
前記画像表示制御手段は、前記信号機が走行停止を指示している対象の道路に沿って前記移動体が前記交差点に進入していることに基づいて、前記移動体を前記画像中から消去することを特徴とする請求項2に記載の道路画像表示制御装置。
【請求項5】
前記道路における移動体の混雑度の情報を取得する混雑度情報取得手段を備え、
前記画像表示制御手段は、前記画像内において、前記混雑度情報取得手段が取得した前記混雑度の情報に基づいた数の複数の位置(以下、仮想位置群という)に、前記移動体を画像として表示させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の道路画像表示制御装置。
【請求項6】
前記画像表示制御手段は、前記移動体の移動速度を、前記混雑度情報取得手段が取得した前記混雑度の情報に基づいて制御することを特徴とする請求項5に記載の道路画像表示制御装置。
【請求項7】
当該道路画像表示制御装置は、車両に搭載されるものであって、
当該道路画像表示制御装置は、前記車両の走行速度を検出する車速検出手段を備え、
前記画像は、前記車両の位置を含み、
前記画像表示制御手段は、前記移動体の移動速度を、前記車速検出手段が検出した前記車速に基づいて制御することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の道路画像表示制御装置。
【請求項8】
当該道路画像表示制御装置は、車両に搭載されるものであって、
当該道路画像表示制御装置は、自車位置周辺の移動体の位置を検出する移動体位置検出手段を備え、
前記画像表示制御手段は、前記画像が自車位置を含む画像であることに基づいて、前記画像内において、前記移動体位置検出手段によって検出された前記位置に、移動体を表示させることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の道路画像表示制御装置。
【請求項9】
前記移動体は複数あり、
前記画像表示制御手段は、前記移動体が重ならないように前記画像内に表示させることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の道路画像表示制御装置。
【請求項10】
前記移動体は複数あり、
前記画像表示制御手段は、前記複数の移動体のうち、移動させているものと停止させているものとを視覚的に区別できるように、前記複数の移動体を表示させることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の道路画像表示制御装置。
【請求項11】
当該道路画像表示制御装置は、車両に搭載されるものであって、
当該道路画像表示制御装置は、当該車両の周辺の状況を検出する周辺状況検出手段を備え、
前記移動抑制事象情報取得手段は、車両の周辺の状況を検出する周辺状況検出手段の検出結果に基づいて、前記移動抑制事象の情報を取得することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の道路画像表示制御装置。
【請求項12】
無線通信手段を備え、
前記移動抑制事象情報取得手段は、前記無線通信手段が受信した情報に基づいて、前記移動抑制事象の情報を取得することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の道路画像表示制御装置。
【請求項13】
前記移動抑制事象情報取得手段は、過去における移動体の移動を抑制する事象の情報に基づいて、現在における移動体の移動を抑制する事象の情報を推定することで、前記移動抑制事象の情報を取得することを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1つに記載の道路画像表示制御装置。
【請求項14】
前記移動抑制事象情報取得手段が取得する前記移動抑制事象の情報は、前記道路中における人の存在位置の情報を含み、
前記画像表示制御手段は、前記画像内における前記移動体の移動速度を、前記移動抑制事象情報取得手段が取得した前記人の存在位置の情報に基づいて制御することを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1つに記載の道路画像表示制御装置。
【請求項15】
前記移動抑制事象情報取得手段が取得する前記移動抑制事象の情報は、前記道路中の有料道路の入退場ゲートの自動、非自動の区別の情報を含み、
前記画像表示制御手段は、前記画像内における前記移動体の移動速度を、前記移動抑制事象情報取得手段が取得した前記自動、非自動の区別の情報に基づいて制御することを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1つに記載の道路画像表示制御装置。
【請求項16】
道路および前記道路上を移動する移動体を画像として表示させる画像表示制御手段と、
前記道路における移動体の混雑度の情報を取得する混雑度情報取得手段と、
自車位置周辺の移動体の位置を検出する移動体位置検出手段と、を備え、
前記画像表示制御手段は、前記画像内において、前記移動体位置検出手段によって検出された前記位置(以下、検出位置という)と、前記混雑度情報取得手段が取得した前記混雑度の情報に基づいた数の複数の位置(以下、仮想位置群という)と、のそれぞれに、1つの移動体を画像として表示させることを特徴とする、車両に搭載される道路画像表示制御装置。
【請求項17】
前記画像表示制御手段は、前記画像内において、自車位置を含む所定の領域においては前記検出位置に対応する移動体(以下、検出移動体という)を表示させ、前記所定領域外の領域においては前記仮想位置群に対応する移動体(以下、仮想移動体という)を表示させることを特徴とする請求項16に記載の道路画像表示制御装置。
【請求項18】
前記画像表示制御手段は、前記移動体位置検出手段が前記自車位置周辺の移動体の位置を検出することができなかった場合、前記画像内において前記検出移動体を表示させず、かつ、前記画像内の前記所定領域外の領域においてのみ前記仮想移動体を表示させることを特徴とする請求項17に記載の道路画像表示制御装置。
【請求項19】
前記所定領域は、前記移動体位置検出手段が移動体の位置を検出することができる位置範囲に対応する領域であることを特徴とする請求項18に記載の道路画像表示制御装置。
【請求項20】
前記画像表示制御手段は、前記検出移動体と前記仮想移動体とを視覚的に区別できるように、前記画像内に表示させることを特徴とする請求項16ないし19のいずれか1つに記載の道路画像表示制御装置。
【請求項21】
前記画像表示制御手段は、前記検出移動体を立体的に表示させ、前記仮想移動体を平面的に表示させることを特徴とする請求項20に記載の道路画像表示制御装置。
【請求項22】
前記仮想移動体は歩行者を含み、
当該道路画像表示制御装置は、前記道路における歩行者の混雑度の情報を記憶する記憶媒体を備え、
前記混雑度情報取得手段は、前記道路における歩行者の混雑度の情報を、前記記憶媒体から取得することを特徴とする請求項16ないし21のいずれか1つに記載の道路画像表示制御装置。
【請求項23】
移動体の移動を抑制する事象(以下、移動抑制事象という)の情報を取得する移動抑制事象情報取得手段、および、
道路および前記道路上を移動する移動体を画像として表示させると共に、前記画像内における前記移動体の移動速度を、前記移動抑制事象情報取得手段が取得した前記移動抑制事象に基づいて制御する画像表示制御手段として、コンピュータを機能させる道路画像表示制御プログラム。
【請求項24】
道路および前記道路上を移動する移動体を画像として表示させる画像表示制御手段、
前記道路における移動体の混雑度の情報を取得する混雑度情報取得手段、および、
自車位置周辺の移動体の位置を検出する移動体位置検出手段として、コンピュータを機能させる道路画像表示制御プログラムであって、
前記画像表示制御手段は、前記画像内において、前記移動体位置検出手段によって検出された前記位置と、前記混雑度情報取得手段が取得した前記混雑度の情報に基づいた数の複数の位置と、のそれぞれに、1つの移動体を画像として表示させることを特徴とする道路画像表示制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−3746(P2008−3746A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170953(P2006−170953)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】