説明

金属製キャップの不良検査方法、この検査のための調整方法、および金属製キャップの不良検査装置

【課題】 金属性キャップの下端縁に生じる不良を、精度良く検出できるようにする。
【解決手段】 リング状光源による照明部2により、検査対象のボトル缶を斜め上方から照明するとともに、4台のカメラ1A,1B,1C,1Dにより、キャップを含むボトル缶の上部を全周にわたって撮像する。画像処理装置3は、各カメラ1A,1B,1C,1Dから画像を取り込み、それぞれの画像の首部の部分に検査領域を設定して影領域を検出する。いずれかの画像において影領域が検出されると、検査対象のボトル缶は不良品であると判断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボトル状容器の口部に装着された金属製キャップを対象として、そのキャップの下端縁に不良が生じていないかどうかを検査する方法、ならびにこの検査のための調整方法、および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャップの装着状態の検査に関する発明を開示した文献として、下記の特許文献1,2が存在する。
特許文献1は、ペットボトル等に使用される樹脂製のキャップを検査対象とするもので、同文献には、4台のカメラを用いてキャップを含むボトル上部を全周にわたって撮像し、得られた画像上で、ボトルの首部の下端からキャップの下端までの距離を求め、その距離が適正値であるかどうかによって、装着状態の適否を判別することが記載されている。
【0003】
一方、特許文献2には、キャップに横方向から光を当てながら撮像し、得られた画像からキャップの複数箇所の輪郭線を抽出し、それぞれの輪郭形状の適否を投影処理によって判別することが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3417486号 公報
【特許文献2】特開平8−201042号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ボトル缶など、金属製のキャップを使用するボトル状容器では、前記キャップを開封すると、その下端部(スカート部と呼ばれている。)がキャップから切り離されて、容器本体に残される。そこで、製造者は、開封時や開封後のキャップの開け閉めの際の指の怪我を防止するために、スカート部の下端縁を内側に向けて締め込んで、容器本体に密着させるようにしている。しかし、この締め込みの際に下端縁にかかる力が弱いと、下端縁の一部が容器本体から離れてめくれあがった状態になる場合がある。このような不良は、関係者の間で「ツノダシ」と呼ばれている。
【0006】
図8は、ボトル缶を例に、上記のツノダシ不良の発生例を示したものである。図中、101はボトル缶のキャップを、102は前記スカート部を、103はスカート部102の下端縁を、104はボトル本体の首部を、それぞれ示す。
図中のaの部分では、下端縁103が適切に締め込まれているのに対し、bの部分では、下端縁103が締め込まれずに、下方に伸びた状態になっている。
【0007】
上記のようなツノダシ不良を検出する方法としては、特許文献1や2の方法と同様に、キャップ101を含むボトルの上部を全周にわたって撮像し、エッジ抽出や2値化などにより、スカート部102の下端縁の形状の異常を検出する方法が考えられる。しかし、ボトル缶では、スカート部102に文字や模様などが印刷されていることが多いため、これらがノイズとなって検出精度を確保できない可能性がある。また、キャップ101と首部104とが同系色であると、画像上で両者の境界部を切り分けるのは困難になる。
さらに、検査対象のボトル缶は、キャップの封止後に洗浄されてから検査工程に運ばれるため、水滴が付着していることが多く、その水滴がノイズとなるおそれもある。
【0008】
この発明は、上記の問題に着目してなされたもので、金属製キャップの下端縁に生じる不良を、精度良く検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、キャップやボトル状容器の首部に斜め上方から照明を施す場合に、表面がハレーションに近い状態になるまで照明強度をあげることにより、文字、模様、水滴などのノイズ成分が除去された画像を生成できる点に着目した。さらに、キャップの下端縁にツノダシ不良が生じていると、斜め上方からの照明により、容器本体の首部に不良に対応する影が生じることに着目した。
【0010】
この発明にかかる不良検出方法は、上記の現象に基づいて導き出されたもので、少なくともキャップの下端縁より下方の所定範囲を、斜め上方から照明しつつその照明光の出射位置よりも下方に設けた撮像手段により、全周にわたって撮像する第1ステップと、前記第1ステップで得られた画像上の前記キャップの下端縁より下方に検査領域を設定し、その検査領域において、周囲より明るさが低い影領域が存在するか否かを判別する第2ステップとを実行する。この結果、前記第2ステップにおいて前記検査領域内に影領域が存在すると判別されたとき、前記キャップの下端縁に不良が生じていると判別する。なお、キャップの下端縁は、前記図8のスカート部102の下端縁103に相当する。
【0011】
第1ステップでは、キャップの上端部から容器本体の首部の下端部までを照明しながら撮像するのが望ましいが、照明や撮像の範囲はこれに限らず、上記した影が生じる可能性のある範囲(たとえばキャップの下端縁から首部の上端部までの範囲)に限定してもかまわない。以下では、この照明や撮像の対象となる範囲を「観測対象範囲」という。
【0012】
撮像手段は、1ないし複数の2次元カメラにより構成することができる。カメラを複数台設ける場合には、キャップの全周にわたる前記観測対象範囲を1台のカメラの視野に応じた大きさの領域に分割し、各領域にそれぞれ1台のカメラを割り当てるのが望ましい。またこの場合には、リング照明のような全方位型の照明手段を用いて前記観測対象範囲を全周にわたって照明するとともに、各カメラを同時に駆動することができる。
【0013】
一方、カメラを1台にする場合には、回転ステージなどによりボトル状容器を回転させるか、またはボトル状容器の周面に沿ってカメラを移動させながら、複数回の撮像を行う必要がある。この場合の照明は、全方位型にする必要はなく、撮像手段の視野範囲全体を照明できるようなものであれば良い。
また、撮像手段は2次元カメラに限らず、1次元撮像素子を具備するラインセンサカメラを用いてもよい。この場合、その画素配列方向をボトル状容器の上下方向に合わせた状態の1または複数台のラインセンサカメラを2次元カメラと同様の条件で配置し、ボトル状容器を回転させながら、またはボトル状容器の周面に沿ってカメラを移動させながら撮像を行うことにより、観測対象範囲の全周にわたる画像を生成することができる。
【0014】
第2ステップでは、前記検査領域において、明るさ(いわゆる階調)が所定のしきい値より小さい画素を影候補の画素として抽出することができる。さらに抽出された影候補の画素を、画素間の距離等に応じてクラス分けしてクラス毎に面積を求め、面積が所定値以上のクラスがあれば、影領域が存在すると判別することができる。または、影候補の画素の数を計数し、その計数値が所定値以上であれば、影領域が存在すると判別するようにしてもよい。
なお、第1ステップにおいて複数枚の画像が生成されている場合には、これらの画像毎に第2ステップを実行する必要がある。また検査領域を設定するにあたっては、後記する良品サンプルの画像などを用いて処理対象の画像におけるボトル状容器の位置ずれ量を求め、その位置ずれが解消するように画像を補整するか、または検査領域の設定位置を位置ずれに応じて調整するのが望ましい。
【0015】
上記の方法によれば、キャップの下端縁にツノダシ不良が生じている場合には、斜め上方からの照明の強度を十分に上げることにより、前記下端縁より下方であって、下端縁の近傍の部分、すなわち容器本体の首部に鮮明な影を生じさせることができる。また、照明強度を上げることにより、文字、模様、水滴などのノイズ成分が除去された画像を生成することが可能になる。よって、キャップの下端縁の不良を精度良く検出することが可能になる。
【0016】
上記の方法による検査を実行する場合には、その実行に先立ち、キャップの下端縁に不良がない良品のボトル状容器(以下、「良品サンプル」という。)およびキャップの下端縁に不良がある不良品のボトル状容器(以下、「不良品サンプル」という。)に対し、それぞれ第1ステップを実行し、良品サンプルの画像において前記キャップの下端縁より下方のボトル状用器内の明るさが所定値以上になり、かつ不良品サンプルの画像上の前記キャップの下端縁より下方のボトル状容器内に前記不良の部位に対応する影領域が生じるように、前記照明の強度を調整するのが望ましい。
【0017】
さらに、この照明の強度調整を行った後には、その調整後の良品サンプルの画像や不良品サンプルの画像を用いて、影候補の画素を抽出するためのしきい値や、影領域の有無を判断するための判定用のしきい値、検査領域の設定条件などを設定することができる。また、良品サンプルの画像および不良品サンプルの画像に対し、設定されたしきい値による試験的な検査を実行し、各サンプルに適合した判別結果が得られるかどうかを検証するのが望ましい。
【0018】
つぎに、この発明にかかる金属製キャップの検査装置は、少なくとも前記キャップの下端縁より下方の所定範囲を斜め上方から照明するための照明手段と、前記照明手段よりも下方に前記所定範囲を全周にわたって撮像するように設置された撮像手段と、前記照明手段による照明の強度を調整するための調整手段と、前記調整手段により調整された照明手段による照明下で前記撮像手段により生成された画像を取り込んで、不良検出のための画像処理を実行する画像処理手段と、前記画像処理手段の処理結果に基づき不良の有無を判別する判別手段とを具備する。前記画像処理手段は、処理対象の画像にあらかじめ設定された条件に基づき検査領域を設定し、その検査領域に周囲より明るさが低い影領域が存在するか否かを判別する処理を実行する。また前記判別手段は、前記画像処理手段により前記検査領域に影領域が存在すると判別されたとき、検査対象の金属製キャップの下端縁に不良が生じていると判別する。
【0019】
上記において、撮像手段は、1または複数台のカメラ(2次元カメラまたはラインセンサカメラ)により構成することができる。複数のカメラを用いる場合には、観測対象範囲の全周をカバーできる数だけカメラを設置し、これらを同時に駆動するのが望ましい。また、この場合の照明手段は、リング状照明のような全方位型の照明にするのが望ましい。カメラを1台にする場合やラインセンサカメラを用いる場合には、ボトル状容器を回転させる機構、またはボトル状容器の周面に沿ってカメラを移動させる機構を設け、この機構を駆動しながら観測対象範囲を全周にわたって撮像するのが望ましい。なお、この場合の照明手段は、カメラの視野範囲を照明できるものであればよい。
【0020】
画像処理手段および判別手段は、それぞれその手段の機能が設定されたコンピュータ、または論理回路により構成することができる。また、照明の調整手段は、照明手段に供給する電圧レベルの変更が可能な電源回路として構成することができる。
【0021】
上記構成の検査装置によれば、検査に先立ち、前記した良品サンプルおよび不良品サンプルを用いて照明手段の照明光の強度を調整するとともに、画像上の容器の首部の部分にキャップの下端縁の近傍に位置するような検査領域が設定されるように、検査領域の設定条件を定めておくことにより、前記した検査方法を実行することが可能になる。
なお、前記調整手段による照明の強度調整は手動操作に応じて行うことができるが、これに限らず、自動調整することも可能である。たとえば、前記良品サンプルや不良品サンプルが検査位置に設置された状態下で、照明強度を段階的に変化させながら、前記第1ステップおよび第2ステップを繰り返し、良品サンプルに対して良判定がなされ、不良品サンプルに対しては不良判定がなされるようになった段階で、調整処理を終了すればよい。
【0022】
さらに上記構成の検査装置には、撮像手段および照明手段またはボトル状容器の高さを調整するための位置調整手段を設けるのが望ましい。この手段を設けることにより、検査対象のボトル状容器の高さが種々変動する場合でも、撮像手段および照明手段を検査に適した高さ位置に設置して、検査を実行することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、容器の首部に生じる影領域を検出することにより、金属性キャップの下端縁の不良を検出することが可能になる。また照明強度が十分に強くなるように調整することにより、キャップの色彩、文字、模様、水滴の付着などによるノイズを除去できるとともに、影領域を鮮明にすることが可能になり、安定した検査を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、この発明が適用された検査装置の構成を示す。
この検査装置は、キャップ装着後のボトル缶を検査対象として、前記キャップの下端縁にツノダシ不良が生じていないかどうかを検査するためのものである。検査装置には、2次元撮像素子が組み込まれた4台のディジタルスチルカメラ(以下、単に「カメラ」という。)1A,1B,1C,1Dによる撮像部1、リング状光源による照明部2、画像処理装置3、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)4、モニタ5などが含まれる。なお、カメラ1A,1B,1C,1Dは、トリガ信号の入力に応じて静止画像を生成する機能のほか、所定の時間毎に画像を生成して出力する機能を有する。
【0025】
画像処理装置3は、各カメラ1A,1B,1C,1Dからの画像を用いて検査のための一連の処理を実行する。この画像処理装置3には、前記カメラ1A,1B,1C,1Dのほか、設定操作のためのコンソール6や、撮像タイミングを示すトリガ信号生成用のセンサ7(以下、「トリガセンサ7」という。この実施例では、後記するように光電センサを使用する。)などが接続される。
【0026】
PLC4には、位置調整機構8や照明用電源9が接続されている。位置調整機構8は、カメラ1A,1B,1C,1D、照明部2、およびトリガセンサ7の高さを調整するもので、照明用電源9は、前記照明部2に駆動電源を供給するものである。PLC4は、位置調整機構8を制御してカメラ1A,1B,1C,1Dなどを所定の高さ位置に設置することができる。また、照明用電源9の出力電圧を制御することにより、前記照明部2の照明強度を調整することができる。いずれの調整処理も、画像処理装置3からの指示に基づいて行われる。
【0027】
モニタ5は、画像処理装置3およびPLC4の双方に接続されている。このモニタ5には、後記する調整処理時に、サンプル画像や検査のための設定データの入力画面などが表示される。また、必要に応じて、前記位置調整機構8の高さや照明強度の設定値などを表示することもできる。また検査時には、検査用の画像や検査結果を表示することができる。
【0028】
図2(1)(2)は、前記撮像部1および照明部2の設置状態を示す。
図中の100は、検査対象のボトル缶100である。この実施例では、最終の製造工程を経たボトル缶100を、図示しないコンベア装置に一列に並べて搬送し、その搬送路の所定位置Pを検査位置として、検査位置Pに到達したボトル缶100の検査を実行するようにしている。
【0029】
前記照明部2は、検査位置Pの上方に配備される。撮像部1を構成する4台のカメラ1A,1B,1C,1Dは、照明部2より下方に、検査位置Pのボトル缶100を取り囲むように配備される。また、検査位置Pを挟むようにして前記トリガセンサ7の投受光部7a,7bが対向配備される。
【0030】
カメラ1A,1B,1C,1D、照明部2、およびトリガセンサ7は、上下動可能な支持機構(図示せず。)により支持されている。前記位置調整機構8は、この支持機構の動作の方向および動作量を制御することにより、カメラ1A,1B,1C,1D、照明部2、トリガセンサ7の間の相対位置関係を維持しつつ、これらの高さを調整する。具体的には、図2(2)に示すように、前記照明部2がボトル缶100より上方に位置し、かつ各カメラ1A,1B,1C,1Dの上下方向の視野範囲のほぼ中央にキャップ101の下端縁102が位置するように調整される。またトリガセンサ7は、各カメラ1A,1B,1C,1Dの位置に対応する高さのボトル缶100を検出できるように、調整される。
また各カメラ1A,1B,1C,1Dは、検査位置に到達したボトル缶100の全周を1/4ずつ分割して撮像できるように、ほぼ90度おきに配備される。
【0031】
図3は、前記画像処理装置3に設定される機能を示す。
この画像処理装置3は、コンピュータを主体とするもので、画像入力処理部11、入力処理部12、検査部13、記憶部14、表示処理部15、通信処理部16などを具備する。記憶部14を除く各処理部は、プログラムにより前記コンピュータに設定されるものであるが、一部の機能は、論理回路として構成することも可能である。記憶部14は、前記コンピュータのメモリにより構成される。
【0032】
画像入力処理部11は、各カメラ1A,1B,1C,1Dからの画像を個別に取り込み、図示しない画像メモリに格納する。入力処理部12は、前記コンソール6やトリガセンサ7からの信号を入力し、その内容を認識する。検査部13は、前記カメラ1A,1B,1C,1Dから取り込んだ画像を用いて前記検査を実行するもので、位置補正部31、2値化処理部32、計測部33、設定部34、判定部35などに細分化される。
【0033】
表示処理部15は、前記モニタ5に対する表示制御を行う。通信処理部16は、前記PLC4や図示しない不良品排出機構などと通信を行うためのものである。なお、不良品排出機構は、前記検査位置Pより下流の所定位置に設けられ、前記画像処理装置3が不良品と判定したボトル缶100を搬送路から排除する処理を実行する。
【0034】
つぎに前記検査部13内の各機能について、簡単に説明する。
位置補正部31は、各カメラ1A,1B,1C,1Dからの画像につき、それぞれその画像上のボトル缶の位置ずれを補正する。ここでいう位置ずれは、あらかじめ登録された基準画像上のボトル缶に対する位置ずれであって、基準画像とのパターンマッチング処理などにより検出することができる。
【0035】
2値化処理部32は、位置ずれ補正後の画像の所定位置に検査領域を設定し、その検査領域内の画像を所定のしきい値により2値化する。計測部33は、2値化処理後の画像において、不良を反映する黒画素の数を求める。判定部34は、計測部33が求めた黒画素数を所定の判定しきい値と比較して、検査対象のキャップの良否を判別する。
【0036】
設定部34は、検査に必要な条件を設定するためのものである。この実施例では、具体的な条件として、前記検査領域の設定条件、2値化処理のためのしきい値(以下、「2値化しきい値」という。)、判定処理のためのしきい値(以下、「判定用しきい値」という。)、カメラ1A,1B,1C,1Dおよび照明部2の高さ、照明部2の照明強度などが設定される。これらの条件は、ボトル缶の良品サンプルや不良品サンプルの画像を用いて、後記する図5の手順により設定されるもので、設定された条件は前記記憶部14に登録される。
【0037】
つぎに、上記構成の検査装置において実行される検査の方法およびその原理について、説明する。
一般に流通するボトル缶では、首部から肩部の上部までの範囲に塗装がなく、アルミニウムの地が露出した状態にある。このような構成のボトル缶に前記照明部2により斜め上方から照明を施すと、首部からの反射光量は、照明強度が強くなるほど増加する。
【0038】
また、キャップの下端縁が適切に巻き込まれている場合には、斜め上方からの照明光は前記下端縁に遮られずに首部全体に照射される。したがって、下端縁にツノダシ不良が生じていない場合には、首部全体が明るい状態になる。
一方、キャップの下端縁にツノダシ不良が生じていると、この不良部位により照明光が遮られるため、首部のうち、不良部位の下方に当たる位置に影が生じる。また、この影の周囲に対する明るさの差は、照明の強度を上げるほど大きくなる。
【0039】
この実施例では、上記の原理に着目し、キャップの下端縁の形状ではなく、首部の影を検出する方法によって、不良の有無を判別するようにしている。また影の検出精度を高めるために、この実施例では、検査に先立ち、不良箇所のない良品サンプルと、キャップの下端縁にツノダシ不良が生じている不良品サンプルとを用いて、前記照明部2の照明強度を調整するようにしている。
【0040】
この調整処理では、良品サンプルについて、図4(1)に示すように、画像上の首部23の全体が白色に近い状態の画像が生成され、不良品サンプルについて、図4(2)に示すように、首部23に生じた影24を十分に識別できるような画像が生成されるように、照明強度を調整する。なお、首部23などのアルミニウムの露出面が白色状態に近くなるまで照明強度を上げると、文字、模様、水滴などのノイズ成分は殆ど見えない状態になると考えられる。よって、これらのノイズの影響を受けることなく、前記不良部位による影24を精度良く検出することが可能になる。
【0041】
図5は、検査前に実施される調整処理の流れの一例を示す。なお、この調整処理の主体は画像処理装置3であるが、種々の条件設定やサンプルを設置する処理は、オペレータにより行われる。また、光学系の高さや照明強度を調整する際には、前記PLC4が使用される。
【0042】
以下、図5の流れに沿って、調整処理の具体的内容を説明する。なお、図5および以下の説明では、各処理のステップを「ST」と略す。
まずST1では、良品サンプルが検査位置Pにセットされる。つぎに、ST2では、各カメラ1A,1B,1C,1Dに画像の連続生成を開始させ、生成された画像(以下、「スルー画像」という。)を順に入力する。なお、入力された画像は前記モニタ5に表示される。
【0043】
つぎのST3で、オペレータは、前記モニタ5の表示画面を見ながら、光学系の高さを調整する操作を実行する。この操作の内容は、画像処理装置3からPLC4に伝えられ、さらに前記位置調整機構8に与えられる。位置調整機構8は、前記支持機構の動作を制御して、前記操作内容に応じた位置にカメラ1A,1B,1C,1D、照明部2、およびトリガセンサ7を配置する。
【0044】
つぎのST4で、オペレータは、表示画面を見ながら照明強度を調整する操作を実行する。この操作の内容も、画像処理装置3からPLC4に伝えられ、前記照明用電源9の電圧制御によって照明強度が調整される。
オペレータは、4台のカメラ1A,1B,1C,1Dからの画像がいずれも前記図4(1)のような状態になったことを確認した上で、撮像操作を行う。この操作により、擬似的なトリガ信号が発生し、各カメラ1A,1B,1C,1Dに供給される。この供給に応じて各カメラ1A,1B,1C,1Dはスルー画像の生成を中止し、1枚の静止画像を生成する(ST5)。なお、この撮像処理に応じて、前記モニタ5にも、各カメラ1A,1B,1C,1Dにより生成された静止画像が固定表示される。
【0045】
つぎのST6で、オペレータは、前記モニタ5に表示された画像を確認し、望ましい画像が得られているかどうかを判断する。この判断の結果、コンソール6により「OK」操作が行われると、ST7が「YES」となってST8に進む。
一方、4台のカメラ1A,1B,1C,1Dからの画像の中に不適切なものがあり、オペレータがNG操作を行った場合には、ST7からST4に戻り、照明強度の調整から処理をやり直す。
【0046】
ST8では、オペレータにより、検査領域の設定処理が行われる。図6は、検査領域の設定例を示すもので、画像上の首部23の上端部に帯状の検査領域25が設定されている。この設定操作が行われると、前記設定部34により検査領域の25の設定条件(たとえば左上頂点と右下頂点との座標)が作成され、前記記憶部14に登録される。
【0047】
つぎに、ST9では、オペレータにより、前記2値化しきい値と判定用しきい値とが入力される。この入力データも前記設定部35により記憶部14に登録される。
この後、ST8,9で設定されたデータを用いて、前記良品サンプルに対する試験的な検査を実行する。具体的には、前記検査領域25内の画像の2値化処理および2値化後の画像における黒画素を計数する処理(ST10)と、黒画素数を判定用しきい値と比較する処理(ST11)とを、4枚の画像毎に実行する。ここですべての画像において、黒画素数が判定用しきい値を下回ると、良判定がなされる。この場合には、ST12が「YES」となり、ST13に進む。
一方、いずれかの画像における黒画素数が判定用しきい値以上となると、「不良あり」と判定されるが、この場合には、ST12からST8に戻り、設定処理を最初からやり直す。ただし、すべての設定を変更する必要はなく、検査領域25、2値化しきい値、判定用しきい値のうち、変更が必要と考えられるものを調整すればよい。
【0048】
上記の試験的な検査で良判定が得られると、つぎのST13において、前記検査位置Pに不良品サンプルがセットされる。ついでST14において、前記良品モデルと同様の条件で撮像が行われた後、ST15,16において、前記ST8,9で設定されたデータを用いた試験的な検査が実行される。この検査により不良判定が得られると、ST17が「YES」となり、調整処理を終了する。
【0049】
一方、不良品サンプルに対して良判定が得られた場合には、ST17が「NO」となってST18に進む。ST18では、オペレータは、モニタ5に表示された画像を確認しながら、検査領域25、2値化しきい値、判定用しきい値の少なくとも1つを修正する操作を実行する。この操作に応じて前記記憶部14の登録データが書き換えられると、再度、ST15,16で試験的な検査が実行される。この再検査で不良判定が得られると、ST17が「YES」となり、調整処理を終了する。
【0050】
ただし、不良品サンプルの検査において検査領域25やしきい値の修正処理が行われた場合には、再度、修正された条件により良品サンプルを検査し、適切な結果が得られるのを確認してから調整処理を終了するのが望ましい。また、図5には示していないが、不良品サンプルについても、生成された画像に不良を反映した影が生じているかどうかをオペレータに確認させ、画像が適切でない場合には、再度、照明強度を調整するようにしてもよい。
さらに、図5の調整処理が終了した後は、検査時の位置ずれ補正用の基準画像として、前記良品サンプルの画像を記憶部14に登録するのが望ましい。
【0051】
図7は、検査実行時の一連の処理の流れを示す。なお、この処理は、画像処理装置3がPLC4やカメラ1A,1B,1C,1Dを制御しながら自動的に行うものである。
【0052】
この検査の処理は、前記トリガセンサ7により検査対象のボトル缶が検出され、画像処理装置3にトリガ信号が入力されたことに応じてスタートする。まず最初のステップ(ST21とする。)では、前記4台のカメラ1A,1B,1C,1Dを同時に駆動し、4枚の検査用の画像を生成する。以下、ST22において、生成された4枚の画像を順に選択しながら、その選択された画像に対し、ST23〜25を実行する。
【0053】
ST23では、前記した位置補正部31の機能を用いて画像上のボトル缶の位置ずれを補正する。ST24では、前記図5の調整処理により設定された条件に基づき、前記画像上に検査領域25を設定し、その領域25内の画像を2値化した後、黒画素数を計数する。ST25では、黒画素数を判定用しきい値と比較することにより、良否を判定する。この判定結果は、すべての画像に対する検査が終了するまで、前記記憶部14に保存される。
【0054】
すべての画像に対し、ST22〜25が実行されると、ST26からST27に進み、各画像に対する判定結果を統合した最終判定を行う(ST27〜29)。ここで、すべての画像について良判定を得ている場合には、ST28に進んで良品判定を行うが、1つでも不良判定がある場合には、ST29に進んで不良品判定を行う。ただし、このような手順に限らず、ST22〜26のループの途中で、いずれかの画像に対して不良判定がなされた場合には、前記ループを抜けてST29に進むようにしてもよい。
判定後は、ST30に進み、前記不良品排出機構などに、判定結果を出力する。
【0055】
上記の検査によれば、カメラ1A,1B,1C,1Dや照明部2の高さや照明強度を適切に調整すれば、2値化処理や黒画素の計数といった簡単な処理により、キャップの下端縁のツノダシ不良を精度良く検出することが可能になる。なお、上記の実施例では、ボトル缶を検査対象としたが、これに限らず、首部の部分の鏡面反射性が高く、金属性のキャップが装着されたボトル状容器であれば、上記と同様の方法による検査を実行することが可能である。
また、上記実施例では、不良検出のために2値化処理を行ったが、2値化を行わずに、グレーレベルが所定の範囲内にある画素を抽出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の一実施例にかかる検査装置のブロック図である。
【図2】カメラおよび照明部の設置例を示す平面図および正面図である。
【図3】画像処理装置の機能ブロック図である。
【図4】良品サンプルおよび不良品サンプルの画像の例を示す説明図である。
【図5】検査前の調整処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】検査領域の設定例を示す説明図である。
【図7】検査時の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】キャップの下端縁に生じる不良の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1A,1B,1C,1D カメラ
2 照明部
3 画像処理装置
4 PLC
8 位置調整機構
9 照明用電源
13 検査部
23 画像上の首部
24 画像上の影
100 ボトル缶
101 キャップ
103 (キャップの)下端縁
104 首部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトル状容器の口部に装着された金属製キャップを検査する方法であって、
少なくとも前記キャップの下端縁より下方の所定範囲を、斜め上方から照明しつつその照明光の出射位置よりも下方に設けた撮像手段により、全周にわたって撮像する第1ステップと、
前記第1ステップで得られた画像上の前記キャップの下端縁より下方に検査領域を設定し、その検査領域において、周囲より明るさが低い影領域が存在するか否かを判別する第2ステップとを実行し、
第2ステップにおいて前記検査領域内に影領域が存在すると判別されたとき、前記キャップの下端縁に不良が生じていると判別する金属製キャップの不良検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載された方法の実行に先立ち、キャップの下端縁に不良がない良品のボトル状容器およびキャップの下端縁に不良がある不良品のボトル状容器に対し、それぞれ前記第1ステップを実行し、良品の画像において前記キャップの下端縁より下方のボトル状容器内の明るさが所定値以上になり、かつ不良品の画像上の前記キャップの下端縁より下方のボトル状容器内に前記不良の部位に対応する影領域が生じるように、前記照明の強度を調整する金属製キャップの検査のための調整方法。
【請求項3】
ボトル状容器の口部に装着された金属製キャップを検査するための装置であって、
少なくとも前記キャップの下端縁より下方の所定範囲を斜め上方から照明するための照明手段と、
前記照明手段よりも下方に前記所定範囲を全周にわたって撮像するように設置された撮像手段と、
前記照明手段による照明の強度を調整するための調整手段と、
前記調整手段により調整された照明手段による照明下で前記撮像手段により生成された画像を取り込んで、不良検出のための画像処理を実行する画像処理手段と、
前記画像処理手段の処理結果に基づき不良の有無を判別する判別手段とを具備し、
前記画像処理手段は、処理対象の画像にあらかじめ設定された条件に基づき検査領域を設定し、その検査領域に周囲より明るさが低い影領域が存在するか否かを判別する処理を実行し、
前記判別手段は、前記画像処理手段により前記検査領域に影領域が存在すると判別されたとき、検査対象の金属製キャップの下端縁に不良が生じていると判別する金属製キャップの不良検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−300711(P2006−300711A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122376(P2005−122376)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】