説明

金属酸化物半導体薄膜の製造方法及び電子デバイスの製造方法

【課題】酸化物半導体薄膜の形成を湿式法だけで行い得る金属酸化物半導体薄膜の製造方法、3端子型電子デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】金属酸化物半導体薄膜の製造方法においては、金属酸化物半導体薄膜を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させる。また、(A)少なくとも、第1電極及び第2電極、並びに、(B)第1電極と第2電極16の間に設けられ、金属酸化物半導体から成る能動層20を備えた電子デバイスの製造方法は、能動層20を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物半導体薄膜の製造方法及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物半導体を用いたトランジスタが、次世代の大面積、高移動度の薄膜トランジスタ(TFT)アレイを実現する系として注目を浴びている。金属酸化物半導体を通常の透明導電膜として利用する場合とは異なり、トランジスタへの応用を視野に入れると、金属酸化物半導体中の酸素欠損量の精密な制御が重要となる。これは、酸素欠損部位が、金属酸化物半導体において伝導キャリアのドナーとして振る舞うという性質による。この酸素欠損量の制御に関しては、様々な成膜方法において成膜条件の最適化がなされている。
【0003】
具体的には、例えば、スパッタリング法では、成膜時の酸素分圧を大きくすることで対処されている。また、塗布法においては、成膜後のアニール温度を高くすることで対処されている。その他、トランジスタの場合、キャリア数を抑制という観点からチャネル形成領域を構成する金属酸化物半導体薄膜の膜厚を比較的薄くするが(例えば100nm以下)、金属酸化物半導体薄膜の膜厚が薄くなればなるほど、金属酸化物半導体薄膜の表面状態が特性に大きな影響を及ぼすようになる。即ち、金属酸化物半導体薄膜の表面には酸素欠損部位に由来すると考えられる表面準位が大量に存在し、その結果、表面状態が金属酸化物半導体薄膜の特性を決定してしまう。
【0004】
このような問題に対処するための技術が、例えば、特開2005−033172に開示されている。この特許公開公報には、ZnO又はMgxZn1-xOの多結晶状態、アモルファス状態又は多結晶状態とアモルファス状態とが混在する状態である半導体から成り、I族、III族、IV族、V族又はVII族の元素が添加されている活性層と、この活性層を、活性層において可動電荷が移動する領域が雰囲気の影響を受けない範囲で雰囲気から隔絶する隔絶体とを備えている半導体装置が開示されている。ここで、隔絶体として、SiO2、Al23等の絶縁性酸化物が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−033172
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、SiO2、Al23等の絶縁性酸化物から成る隔絶体は、塗布法にて形成することが困難である。然るに、コスト減といった観点からは、金属酸化物半導体薄膜全体の形成を湿式法(あるいは塗布法)だけで行うことが強く望まれている。
【0007】
従って、本発明の目的は、金属酸化物半導体薄膜の形成を湿式法だけで行い得る金属酸化物半導体薄膜の製造方法、並びに、係る金属酸化物半導体薄膜の製造方法を適用した電子デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の金属酸化物半導体薄膜の製造方法においては、金属酸化物半導体薄膜を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させる。
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の電子デバイスの製造方法は、
(A)少なくとも、第1電極及び第2電極、並びに、
(B)第1電極と第2電極の間に設けられ、金属酸化物半導体から成る能動層、
を備えた電子デバイスの製造方法であって、
能動層を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させる工程を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の金属酸化物半導体薄膜の製造方法あるいは電子デバイスの製造方法にあっては、金属酸化物半導体薄膜(金属酸化物半導体層)を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させ、また、能動層を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させる。その結果、金属酸化物半導体薄膜あるいは能動層に存在する酸素欠陥準位を低減させることができ、金属酸化物半導体薄膜あるいは能動層中の伝導キャリア数(自由キャリア数)を抑制することができる。しかも、この工程は、湿式法にて成膜された金属酸化物半導体薄膜あるいは能動層に対して、湿式法によって行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1の(A)及び(B)は、実施例1の電子デバイスの製造方法の概要を説明するための支持体等の模式的な一部端面図である。
【図2】図2の(A)及び(B)は、実施例2の電子デバイスの製造方法の概要を説明するための支持体等の模式的な一部端面図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、実施例3の電子デバイスの製造方法の概要を説明するための支持体等の模式的な一部端面図である。
【図4】図4の(A)〜(C)は、実施例4の電子デバイスの製造方法の概要を説明するための支持体等の模式的な一部端面図である。
【図5】図5の(A)、(B)は、電子デバイスの変形例の模式的な一部断面図である。
【図6】図6は、実施例1の[工程−130]にて得られた金属酸化物半導体薄膜(能動層)、及び、実施例1の[工程−140]にて得られた金属酸化物半導体薄膜(能動層)のId−Vgカーブを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の金属酸化物半導体薄膜の製造方法及び電子デバイスの製造方法、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の金属酸化物半導体薄膜の製造方法及び本発明の電子デバイスの製造方法)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1の別の変形)
5.実施例4(実施例1の更に別の変形)、その他
【0013】
[本発明の金属酸化物半導体薄膜の製造方法及び電子デバイスの製造方法、全般に関する説明]
本発明の金属酸化物半導体薄膜の製造方法あるいは本発明の電子デバイスの製造方法(以下、これらを総称して、単に、『本発明の方法』と呼ぶ場合がある)において、リガンド分子は金属酸化物半導体の酸素欠損部位に吸着する形態とすることができる。
【0014】
このような形態を含む本発明の方法において、リガンド分子は、リン酸基又はカルボニル基を有することが好ましい。これらは、金属酸化物半導体の酸素欠損部位に吸着する性質を有する分子群である。但し、リガンド分子は、これらに限定するものではなく、金属酸化物半導体の酸素欠損部位に吸着する性質を有する分子であればよい。ここで、具体的には、リン酸基を有するリガンド分子として、リン酸ナトリウム[Na3PO4]、アルキルホスホン酸ナトリウム[Na2PO3(CH2nCH3]、Na2PO3−R(ここで、Rは、芳香族炭化水素あるいは脂肪族炭化水素)を挙げることができる。また、カルボニル基を有するリガンド分子として、酢酸[CH3COOH]、酢酸ナトリウム[CH3COONa]、R−COOH(ここで、Rは、芳香族炭化水素あるいは脂肪族炭化水素)、R−COONa(ここで、Rは、芳香族炭化水素あるいは脂肪族炭化水素)を挙げることができる。
【0015】
更には、上記の各種の好ましい形態を含む本発明の方法においては、金属酸化物半導体薄膜あるいは能動層を湿式法にて形成する構成とすることができる。
【0016】
ここで、金属酸化物半導体薄膜あるいは能動層を形成するための湿式法(湿式プロセス)として、また、金属酸化物半導体薄膜や能動層を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させるための湿式法(湿式プロセス)として、スピンコート法;浸漬法;キャスト法;スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、オフセット印刷法、反転オフセット印刷法、グラビア印刷法、マイクロコンタクト法といった各種印刷法;スタンプ法;スプレー法;エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、ナイフコーター法、スクイズコーター法、リバースロールコーター法、トランスファーロールコーター法、グラビアコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、スリットオリフィスコーター法、カレンダーコーター法、キャピラリーコーター法といった各種コーティング法;ディスペンサーを用いる方法といった、液状材料を塗布する方法を挙げることができる。更には、金属酸化物半導体薄膜の形成方法として、その他、ゾル−ゲル法や水熱合成法を挙げることもできる。
【0017】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の方法(以下、これらを総称して、単に、『本発明』と呼ぶ場合がある)において、金属酸化物としては、ZnO、SnO2、TiO2、InGaZnOx、AlZnSnOx、In23、CdO、Ga23、Cu2O、Ag2O、BeO、NiO、AgInO2、AgSbO3、Cd2GeO4、CdIn24、Cd2Sb27、CdSnO3、Cd2SnO4、CuAlO2、CuInO2、CuGaO2、In4Sn3O12、MgIn24、SrCu22、ZnGa24、Zn2In25、Zn3In26、ZnSnO3、Zn2SnO4、InGaMgO4等を挙げることができる。金属酸化物は、薄膜状構造の集合体、微小柱状構造の集合体、微粒子の集合体といった微小構造体から構成され、あるいは又、これらの集合体の集合から構成されるが、特に限定されるものではない。あるいは又、金属酸化物半導体薄膜は、基本的に、表面に凹凸が多い多孔質状、柱状、層状の構造を有する。尚、金属酸化物半導体薄膜の表面における凹凸の平均値(山の部分と谷の部分の差である高さの平均値)として、例えば、1×10-9m乃至1×10-7mを挙げることができる。
【0018】
本発明の電子デバイスの製造方法において得られる電子デバイスとして、第1電極及び第2電極を備えた2端子型電子デバイス、並びに、第1電極、第2電極及び制御電極を備えた3端子型電子デバイスを挙げることができる。尚、3端子型電子デバイスにあっては、第1電極と第2電極の間であって、絶縁層を介して能動層と対向して制御電極が設けられている。
【0019】
3端子型電子デバイスにあっては、制御電極に印加される電圧によって、第1電極から第2電極に向かって能動層に流れる電流が制御される形態とすることができ、この場合、制御電極がゲート電極に相当し、第1電極及び第2電極がソース/ドレイン電極に相当し、絶縁層がゲート絶縁膜に相当し、能動層がチャネル形成領域に相当する電界効果型トランジスタから3端子型電子デバイスは成る形態とすることができる。具体的には、3端子型電子デバイスを電界効果型トランジスタ(FET)とする場合、電界効果型トランジスタとして、ボトムゲート/ボトムコンタクト型、ボトムゲート/トップコンタクト型、トップゲート/ボトムコンタクト型、トップゲート/トップコンタクト型を挙げることができる。
【0020】
より具体的には、ボトムゲート/ボトムコンタクト型の電界効果型トランジスタは、
(a)支持体上に形成されたゲート電極、
(b)ゲート電極及び支持体上に形成されたゲート絶縁膜(絶縁層が相当する)、
(c)ゲート絶縁膜上に形成されたソース/ドレイン電極、並びに、
(d)ソース/ドレイン電極の間であってゲート絶縁膜上に形成され、能動層によって構成されたチャネル形成領域、
を備えている。
【0021】
また、ボトムゲート/トップコンタクト型の電界効果型トランジスタは、
(a)支持体上に形成されたゲート電極、
(b)ゲート電極及び支持体上に形成されたゲート絶縁膜(絶縁層が相当する)、
(c)ゲート絶縁膜上に形成され、能動層によって構成されたチャネル形成領域を含むチャネル形成領域構成層、並びに、
(d)チャネル形成領域構成層上に形成されたソース/ドレイン電極、
を備えている。
【0022】
また、トップゲート/ボトムコンタクト型の電界効果型トランジスタは、
(a)支持体上に形成されたソース/ドレイン電極、
(b)ソース/ドレイン電極の間の支持体上に形成され、能動層によって構成されたチャネル形成領域、
(c)ソース/ドレイン電極及びチャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁膜(絶縁層が相当する)、並びに、
(d)ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極、
を備えている。
【0023】
また、トップゲート/トップコンタクト型の電界効果型トランジスタは、
(a)支持体上に形成され、能動層によって構成されたチャネル形成領域を含むチャネル形成領域構成層、
(b)チャネル形成領域構成層上に形成されたソース/ドレイン電極、
(c)ソース/ドレイン電極及びチャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁膜(絶縁層が相当する)、並びに、
(d)ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極、
を備えている。
【0024】
あるいは又、本発明の電子デバイスの製造方法において得られる3端子型電子デバイスにあっては、制御電極、第1電極及び第2電極への電圧の印加によって能動層が発光する発光素子から電子デバイスは成る形態とすることができる。あるいは又、能動層への光の照射によって第1電極と第2電極との間に電流が流れる光電変換素子から成る形態とすることができる。光電変換素子から成る形態とする場合、光電変換素子によって、具体的には、紫外線センサーを構成することができ、この場合、制御電極への電圧の印加は行わなくともよいし、行ってもよく、後者の場合、制御電極への電圧の印加によって、流れる電流の変調を行うことが可能となる。尚、3端子型電子デバイスを発光素子や光電変換素子とする場合、発光素子や光電変換素子の構成、構造は、例えば、上述した4種類の電界効果型トランジスタの構成、構造のいずれかと同様とすることができる。
【0025】
本発明の電子デバイスの製造方法において得られる2端子型電子デバイスは、例えば、紫外線センサーとして機能するが、この場合、第1電極は高仕事関数(例えば、φ=4.5eV〜5.5eV)を有する金属から成り、第2電極は低仕事関数(例えば、φ=3.5eV〜4.5eV)を有する金属から成る形態とすることができる。尚、このような形態にあっては、支持体上に第2電極、能動層、第1電極を順次形成するといった、所謂縦型のデバイス構造とすることが、光電変換効率の向上といった観点から望ましい。ここで、第2電極を構成する低仕事関数を有する金属として、仕事関数が4.19eVのアルミニウム(Al)、又は、仕事関数が3.61eVのマグネシウム(Mg)を挙げることができ、これによって、能動層において生成した電子が第2電極へ注入され易くなる。尚、電子デバイスは、縦型構造に限定するものではなく、支持体上に第1電極及び第2電極を形成し、第1電極と第2電極との間に位置する支持体の部分の上に能動層を形成するといった、所謂横型のデバイス構造とすることもできる。第1電極を構成する材料として、透明電極を構成するITOや、STOを例示することもできる。また、本発明の電子デバイスの製造方法において得られる3端子型電子デバイスにおいて、電子デバイスとしての光電変換素子を紫外線センサーとして機能させる場合の第1電極及び第2電極も、以上に説明した材料から構成することが好ましい。あるいは又、化学物質センサーとして機能させることもできる。
【0026】
支持体は、酸化ケイ素系材料(例えば、SiOXやスピンオンガラス(SOG));窒化ケイ素(SiNY);酸窒化ケイ素(SiON);酸化アルミニウム(Al23);金属酸化物;金属塩から構成することができる。支持体をこれらの材料から構成する場合、支持体を、以下に挙げる材料から適宜選択された基板上に(あるいは基板の上方に)形成すればよい。即ち、基板として、あるいは又、上述した支持体以外の支持体として、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリエチレンナフタレート(PEN)に例示される有機ポリマー(高分子材料から構成された可撓性を有するプラスチック・フィルムやプラスチック・シート、プラスチック基板といった高分子材料の形態を有する)を挙げることができる。このような可撓性を有する高分子材料から構成された基板や支持体を使用すれば、例えば曲面形状を有するディスプレイ装置や電子機器への電子デバイスの組込みあるいは一体化が可能となる。あるいは又、基板や支持体として、各種ガラス基板や石英基板;表面に絶縁膜が形成された各種ガラス基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成されたシリコン基板、表面に絶縁膜が形成された導電性基板(金やアルミニウム、ステンレス鋼等の金属や合金から成る基板、高配向性グラファイトから成る基板);雲母等の天然鉱物系絶縁材料;金属系半導体材料;分子性半導体材料を挙げることができる。
【0027】
得られた金属酸化物半導体薄膜を、必要に応じて、ポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリエチレンナフタレート(PEN)等から成る有機保護膜で被覆してもよい。
【0028】
本発明の電子デバイスの製造方法において得られる電子デバイスにあっては、制御電極や第1電極、第2電極、各種の配線を構成する材料として、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)、インジウム(In)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)等の金属、あるいは、これらの金属元素を含む合金、これらの金属から成る導電性粒子、これらの金属を含む合金の導電性粒子、不純物を含有したポリシリコン、炭素系材料等の導電性物質を挙げることができるし、これらの元素を含む層の積層構造とすることもできる。更には、制御電極や第1電極、第2電極、各種の配線を構成する材料として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸[PEDOT/PSS]といった有機材料(導電性高分子)を挙げることもできる。
【0029】
制御電極や第1電極、第2電極、各種の配線の形成方法として、これらを構成する材料にも依るが、物理的気相成長法(PVD法);MOCVD法を含む各種の化学的気相成長法(CVD法);スピンコート法;浸漬法;キャスト法;上述した各種の印刷法;スタンプ法;上述した各種のコーティング法;リフト・オフ法;ゾル−ゲル法;電着法;シャドウマスク法;電解メッキ法や無電解メッキ法あるいはこれらの組合せといったメッキ法;及び、スプレー法の内のいずれかと、必要に応じてパターニング技術との組合せを挙げることができる。尚、PVD法として、(a)電子ビーム加熱法、抵抗加熱法、フラッシュ蒸着等の各種真空蒸着法、(b)プラズマ蒸着法、(c)2極スパッタリング法、直流スパッタリング法、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、バイアススパッタリング法等の各種スパッタリング法、(d)DC(direct current)法、RF法、多陰極法、活性化反応法、電界蒸着法、高周波イオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法等の各種イオンプレーティング法を挙げることができる。
【0030】
更には、絶縁層やゲート絶縁膜を構成する材料として、酸化ケイ素系材料;窒化ケイ素(SiNY);酸化アルミニウム(Al23)等の金属酸化物高誘電絶縁膜にて例示される無機系絶縁材料だけでなく、ポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリビニルフェノール(PVP);ポリビニルアルコール(PVA);ポリイミド;ポリカーボネート(PC);ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリスチレン;N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)等のシラノール誘導体(シランカップリング剤);オクタデカンチオール、ドデシルイソシアネイト等の一端に制御電極と結合可能な官能基を有する直鎖炭化水素類にて例示される有機系絶縁材料(有機ポリマー)を挙げることができるし、これらの組み合わせを用いることもできる。尚、酸化ケイ素系材料として、酸化シリコン(SiOX)、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、酸化窒化シリコン(SiON)、SOG(スピンオングラス)、低誘電率SiO2系材料(例えば、ポリアリールエーテル、シクロパーフルオロカーボンポリマー及びベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、アモルファスカーボン、有機SOG)を例示することができる。
【0031】
また、絶縁層やゲート絶縁膜の形成方法として、上述の各種PVD法;各種CVD法;スピンコート法;上述した各種印刷法;上述した各種コーティング法;浸漬法;キャスティング法;ゾル−ゲル法;電着法;シャドウマスク法;及び、スプレー法の内のいずれかを挙げることができる。あるいは又、絶縁層やゲート絶縁膜は、制御電極の表面を酸化あるいは窒化することによって形成することができるし、制御電極の表面に酸化膜や窒化膜を成膜することで得ることもできる。制御電極の表面を酸化する方法として、制御電極を構成する材料にも依るが、O2プラズマを用いた酸化法、陽極酸化法を例示することができる。また、制御電極の表面を窒化する方法として、制御電極を構成する材料にも依るが、N2プラズマを用いた窒化法を例示することができる。あるいは又、例えば、Au電極に対しては、一端をメルカプト基で修飾された直鎖状炭化水素のように、制御電極と化学的に結合を形成し得る官能基を有する絶縁性分子によって、浸漬法等の方法で自己組織的に制御電極表面を被覆することで、制御電極の表面に絶縁層やゲート絶縁膜を形成することもできる。あるいは又、制御電極の表面をシラノール誘導体(シランカップリング剤)により修飾することで、絶縁層やゲート絶縁膜を形成することもできる。
【0032】
電子デバイスを、ディスプレイ装置や各種の電子機器に適用、使用する場合、例えば基板に多数の電子デバイスを集積したモノリシック集積回路としてもよいし、各電子デバイスを切断して個別化し、ディスクリート部品として使用してもよい。また、電子デバイスを樹脂にて封止してもよい。
【実施例1】
【0033】
実施例1は、本発明の金属酸化物半導体薄膜の製造方法、及び、本発明の電子デバイスの製造方法に関する。実施例1の電子デバイスは、
(A)少なくとも、第1電極及び第2電極、並びに、
(B)第1電極と第2電極の間に設けられ、金属酸化物半導体から成る能動層、
を備えた電子デバイスである。具体的には、実施例1の電子デバイスは、
(A)制御電極、
(B)第1電極及び第2電極、並びに、
(C)第1電極と第2電極の間であって、絶縁層を介して制御電極と対向して設けられ、金属酸化物半導体から成る能動層、
を備えた3端子型電子デバイスである。
【0034】
より具体的には、実施例1の3端子型電子デバイスは、制御電極に印加される電圧によって、第1電極から第2電極に向かって能動層に流れる電流が制御される電界効果型トランジスタ(FET)であり、制御電極がゲート電極に相当し、第1電極及び第2電極がソース/ドレイン電極に相当し、絶縁層がゲート絶縁膜に相当し、能動層がチャネル形成領域に相当する。即ち、図1の(B)に模式的な一部断面図を示すように、実施例1の電子デバイスは、ボトムゲート/ボトムコンタクト型の電界効果型トランジスタ[より具体的には、薄膜トランジスタ(TFT)]であり、
(a)支持体10上に形成されたゲート電極14(制御電極に相当する)、
(b)ゲート電極14及び支持体10上に形成されたゲート絶縁膜15(絶縁層に相当する)、
(c)ゲート絶縁膜15上に形成されたソース/ドレイン電極16(第1電極及び第2電極に相当する)、並びに、
(d)ソース/ドレイン電極16の間であってゲート絶縁膜15上に形成され、能動層20によって構成されたチャネル形成領域17、
を備えている。
【0035】
以下、支持体等の模式的な一部端面図である図1の(A)及び(B)を参照して、実施例1の金属酸化物半導体薄膜の製造方法、実施例1の電子デバイス(電界効果型トランジスタ)の製造方法の概要を説明する。
【0036】
尚、能動層を形成するための溶液(便宜上、『能動層形成溶液』と呼ぶ)を準備しておく。ここで、能動層形成溶液は、インジウムアセチルアセトネート[In(CH2COCH2COCH33,インジウム−2,4−ペンタジオネート,In(acac)3]のエタノール溶液から成る。また、リガンド分子を含む溶液(便宜上、『リガンド分子溶液』と呼ぶ)は、アルキル燐酸のイソプロピルアルコール(IPA)溶液から成る。
【0037】
[工程−100]
先ず、支持体10上にゲート電極14を形成する。具体的には、ガラス基板11の表面に形成されたSiO2から成る絶縁膜12上に、ゲート電極14を形成すべき部分が除去されたレジスト層(図示せず)を、リソグラフィ技術に基づき形成する。その後、密着層としてのチタン(Ti)層(図示せず)、及び、ゲート電極14としての金(Au)層を、順次、真空蒸着法にて全面に成膜し、その後、レジスト層を除去する。こうして、所謂リフト・オフ法に基づき、ゲート電極14を得ることができる。
【0038】
[工程−110]
次に、ゲート電極14を含む支持体10(より具体的には、ガラス基板11の表面に形成された絶縁膜12)上に、絶縁層に相当するゲート絶縁膜15を形成する。具体的には、SiO2から成るゲート絶縁膜15を、スパッタリング法に基づきゲート電極14及び絶縁膜12上に形成する。ゲート絶縁膜15の成膜を行う際、ゲート電極14の一部をハードマスクで覆うことによって、ゲート電極14の取出部(図示せず)をフォトリソグラフィ・プロセス無しで形成することができる。
【0039】
[工程−120]
その後、ゲート絶縁膜15の上に、密着層としての厚さ1nmのクロム(Cr)層(図示せず)、及び、厚さ25nmの金(Au)層から成るソース/ドレイン電極16を、順次、真空蒸着法に基づき形成する(図1の(A)参照)。これらの層の成膜を行う際、ゲート絶縁膜15の一部をハードマスクで覆うことによって、ソース/ドレイン電極16をフォトリソグラフィ・プロセス無しで形成することができる。
【0040】
[工程−130]
次いで、能動層(金属酸化物半導体薄膜)20を、湿式法(塗布法)に基づきゲート絶縁膜15及びソース/ドレイン電極16上に形成する。具体的には、上述した能動層形成溶液をスピンコート法により全面に塗布し、乾燥させることで、能動層20をゲート絶縁膜15及びソース/ドレイン電極16上に形成することができる(図1の(B)参照)。尚、必要に応じて、能動層(金属酸化物半導体薄膜)20の密着性向上のために、能動層(金属酸化物半導体薄膜)20に紫外線を照射してもよい。次いで、ホットプレート上で300゜C、1時間のアニール処理を施した。得られた能動層20(インジウム酸化物から成る金属酸化物半導体薄膜)の走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、多孔質状の薄膜であることが確認された。
【0041】
[工程−140]
その後、金属酸化物半導体薄膜(能動層20)を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させた。具体的には、金属酸化物半導体薄膜(能動層20)を、リガンド分子溶液に1日浸漬した。浸漬後、金属酸化物半導体薄膜(能動層20)をイソプロピルアルコールで洗浄し、乾燥させた。
【0042】
[工程−150]
最後に、全面にパッシベーション膜(図示せず)を形成することで、ボトムゲート/ボトムコンタクト型のFET(具体的には、TFT)を得ることができる。
【0043】
図6に、[工程−130]にて得られた金属酸化物半導体薄膜(能動層20)のId−Vgカーブ(図6中、『リン酸処理前』にて示す)、及び、[工程−140]にて得られた金属酸化物半導体薄膜(能動層20)のId−Vgカーブ(図6中、『リン酸処理後』にて示す)を示す。金属酸化物半導体薄膜(能動層20)を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させることによって、ゲート変調効果を得ることができた。これは、リガンド分子が金属酸化物半導体の酸素欠損部位に吸着することで伝導キャリアを捕獲し、金属酸化物半導体薄膜(能動層20)のキャリア濃度を抑制していることを示している。
【0044】
このように、実施例1にあっては、得られた金属酸化物半導体薄膜(金属酸化物半導体層)は、その表面に比較的凹凸が多く、表面積が大きい、多孔質薄膜となる。そして、この多孔質薄膜をリガンド分子によって処理することで、即ち、金属酸化物半導体薄膜(能動層)を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させることで、湿式法(塗布法)に基づき安価に金属酸化物半導体薄膜を得ることが可能になるし、リガンド分子の酸素欠損部位への吸着によって酸素欠損準位を低減させることが可能になる。そして、3端子型電子デバイス(電界効果型トランジスタ)においては、伝導キャリア数(自由キャリア数)を抑制することができる結果、トランジスタのオフ時の電流値を低減することができるし、ヒステリシスを低減することが可能となる。尚、金属酸化物半導体薄膜(能動層20)を形成(成膜した後)、金属酸化物半導体薄膜(能動層20)を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させるのではなく、金属酸化物半導体とリガンド分子とが共存した状態で金属酸化物半導体薄膜を形成(成膜)した場合、リガンド分子がキャリアの移動を妨げる虞がある。
【実施例2】
【0045】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2にあっては、3端子型電子デバイスを、ボトムゲート/トップコンタクト型のFET(具体的には、TFT)とした。実施例2の電界効果型トランジスタは、図2の(B)に模式的な一部断面図を示すように、
(a)支持体10上に形成されたゲート電極14(制御電極に相当する)、
(b)ゲート電極14及び支持体10上に形成されたゲート絶縁膜15(絶縁層に相当する)、
(c)ゲート絶縁膜15上に形成され、能動層20によって構成されたチャネル形成領域17を含むチャネル形成領域構成層18、並びに、
(d)チャネル形成領域構成層18上に形成されたソース/ドレイン電極16(第1電極及び第2電極に相当する)、
を備えている。
【0046】
以下、支持体等の模式的な一部端面図である図2の(A)及び(B)を参照して、実施例2の電子デバイス(電界効果型トランジスタ)の製造方法の概要を説明する。
【0047】
[工程−200]
先ず、実施例1の[工程−100]と同様にして、支持体10上にゲート電極14を形成した後、実施例1の[工程−110]と同様にして、ゲート電極14を含む支持体(より具体的には絶縁膜12)上にゲート絶縁膜15を形成する。
【0048】
[工程−210]
次いで、実施例1の[工程−130]と同様にして、能動層(金属酸化物半導体薄膜)20をゲート絶縁膜15の上に形成する(図2の(A)参照)。こうして、チャネル形成領域17を含むチャネル形成領域構成層18を形成することができる。その後、実施例1の[工程−140]と同様にして、金属酸化物半導体薄膜(能動層20)を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させる。
【0049】
[工程−220]
その後、チャネル形成領域構成層18の上に、チャネル形成領域17を挟むようにソース/ドレイン電極16を形成する(図2の(B)参照)。具体的には、実施例1の[工程−120]と同様にして、密着層としてのチタン(Ti)層(図示せず)、及び、ソース/ドレイン電極16としての金(Au)層を、順次、真空蒸着法に基づき形成する。これらの層の成膜を行う際、チャネル形成領域構成層18の一部をハードマスクで覆うことによって、ソース/ドレイン電極16をフォトリソグラフィ・プロセス無しで形成することができる。
【0050】
[工程−230]
最後に、全面にパッシベーション膜(図示せず)を形成することで、実施例2の半導体装置を完成させることができる。
【実施例3】
【0051】
実施例3も、実施例1の変形である。実施例3にあっては、3端子型電子デバイスを、トップゲート/ボトムコンタクト型のFET(具体的には、TFT)とした。実施例3の電界効果型トランジスタは、図3の(B)に模式的な一部断面図を示すように、
(a)支持体に相当する絶縁膜12上に形成されたソース/ドレイン電極16(第1電極及び第2電極に相当する)、
(b)ソース/ドレイン電極16の間の絶縁膜12上に形成され、能動層20によって構成されたチャネル形成領域17、
(c)ソース/ドレイン電極16及びチャネル形成領域17上に形成されたゲート絶縁膜15(絶縁層に相当する)、並びに、
(d)ゲート絶縁膜15上に形成されたゲート電極14(制御電極に相当する)、
を備えている。
【0052】
以下、支持体等の模式的な一部端面図である図3の(A)及び(B)を参照して、実施例3の電子デバイス(電界効果型トランジスタ)の製造方法の概要を説明する。
【0053】
[工程−300]
先ず、実施例1の[工程−120]と同様の方法で、支持体に相当する絶縁膜12上にソース/ドレイン電極16を形成した後、実施例1の[工程−130]と同様にして、ソース/ドレイン電極16を含む絶縁膜12上に、能動層(金属酸化物半導体薄膜)20を形成する(図3の(A)参照)。その後、実施例1の[工程−140]と同様にして、金属酸化物半導体薄膜(能動層20)を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させる。
【0054】
[工程−310]
次いで、ゲート絶縁膜15を、実施例1の[工程−110]と同様の方法で形成する。その後、チャネル形成領域17の上のゲート絶縁膜15の部分に、実施例1の[工程−100]と同様の方法でゲート電極14を形成する(図3の(B)参照)。
【0055】
[工程−320]
最後に、全面にパッシベーション膜(図示せず)を形成することで、実施例3の半導体装置を完成させることができる。
【実施例4】
【0056】
実施例4も、実施例1の変形である。実施例4にあっては、3端子型電子デバイスを、トップゲート/トップコンタクト型のFET(具体的には、TFT)とした。実施例4の電界効果型トランジスタは、図4の(C)に模式的な一部断面図を示すように、
(a)支持体に相当する絶縁膜12上に形成され、能動層20によって構成されたチャネル形成領域17を含むチャネル形成領域構成層18、
(b)チャネル形成領域構成層18上に形成されたソース/ドレイン電極16(第1電極及び第2電極に相当する)、
(c)ソース/ドレイン電極16及びチャネル形成領域17上に形成されたゲート絶縁膜15(絶縁層に相当する)、並びに、
(d)ゲート絶縁膜15上に形成されたゲート電極14(制御電極に相当する)、
を備えている。
【0057】
以下、支持体等の模式的な一部端面図である図4の(A)〜(C)を参照して、実施例4の電子デバイス(電界効果型トランジスタ)の製造方法の概要を説明する。
【0058】
[工程−400]
先ず、実施例1の[工程−130]と同様にして、支持体(より具体的には絶縁膜12)上に、能動層(金属酸化物半導体薄膜)20を形成する(図4の(A)参照)。その後、実施例1の[工程−140]と同様にして、金属酸化物半導体薄膜(能動層20)を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させる。
【0059】
[工程−410]
次いで、実施例1の[工程−120]と同様の方法で、チャネル形成領域構成層18上にソース/ドレイン電極16を形成する(図4の(B)参照)。
【0060】
[工程−420]
その後、ゲート絶縁膜15を実施例1の[工程−110]と同様の方法で形成する。次いで、チャネル形成領域17の上のゲート絶縁膜15の部分に、実施例1の[工程−100]と同様の方法でゲート電極14を形成する(図4の(C)参照)。
【0061】
[工程−430]
最後に、全面にパッシベーション膜(図示せず)を形成することで、実施例4の半導体装置を完成させることができる。
【0062】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。電子デバイスの構造や構成、形成条件、製造条件は例示であり、適宜変更することができる。本発明によって得られた電子デバイスである電界効果型トランジスタ(FET)を、例えば、ディスプレイ装置や各種の電子機器に適用、使用する場合、支持体に多数のFETを集積したモノリシック集積回路としてもよいし、各FETを切断して個別化し、ディスクリート部品として使用してもよい。実施例にあっては、金属酸化物半導体薄膜(能動層)を単層構成としたが、場合にいっては、複数層が積層された積層構造とすることもでき、この場合、各金属酸化物半導体薄膜(能動層)を形成(成膜)した後、各金属酸化物半導体薄膜(各能動層)を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させるといった工程を繰り返してもよいし、積層された金属酸化物半導体薄膜(能動層)を形成(成膜)した後、一度に、積層された金属酸化物半導体薄膜(能動層)を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させる工程を実行してもよい。
【0063】
模式的な一部断面図を図5の(A)あるいは(B)に示すように、2端子型電子デバイスから成る化学物質センサーとして機能させることもできる。具体的には、検出すべき化学物質が能動層33に吸着すると、第1電極31と第2電極32との間の電気抵抗値が変化する。従って、第1電極31と第2電極32との間に電流を流し、あるいは又、第1電極31と第2電極32との間に適切な電圧を印加し、能動層33の電気抵抗値を測定することで、能動層33に吸着した化学物質の量(濃度)を測定することができる。尚、化学物質は能動層33において吸着平衡状態となっているので、時間が経過し、能動層33が置かれた雰囲気における化学物質の量(濃度)が変化すると、平衡状態も変化する。
【符号の説明】
【0064】
10・・・支持体、11・・・ガラス基板、12・・・絶縁膜、14・・・ゲート電極(制御電極)、15・・・ゲート絶縁膜(絶縁層)、16・・・ソース/ドレイン電極(第1電極及び第2電極)、17・・・チャネル形成領域、18・・・チャネル形成領域構成層、20,33・・・能動層(金属酸化物半導体薄膜)、31・・・第1電極、32・・・第2電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物半導体薄膜を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させる金属酸化物半導体薄膜の製造方法。
【請求項2】
リガンド分子は、金属酸化物半導体の酸素欠損部位に吸着する請求項1に記載の金属酸化物半導体薄膜の製造方法。
【請求項3】
リガンド分子は、リン酸基又はカルボニル基を有する請求項2に記載の金属酸化物半導体薄膜の製造方法。
【請求項4】
金属酸化物半導体薄膜を湿式法にて形成する請求項1に記載の金属酸化物半導体薄膜の製造方法。
【請求項5】
(A)少なくとも、第1電極及び第2電極、並びに、
(B)第1電極と第2電極の間に設けられ、金属酸化物半導体から成る能動層、
を備えた電子デバイスの製造方法であって、
能動層を構成する金属酸化物半導体にリガンド分子を吸着させる工程を含む電子デバイスの製造方法。
【請求項6】
リガンド分子は、金属酸化物半導体の酸素欠損部位に吸着する請求項5に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項7】
リガンド分子は、リン酸基又はカルボニル基を有する請求項6に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
能動層を湿式法にて形成する請求項5に記載の電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−124312(P2011−124312A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279291(P2009−279291)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】