説明

難燃剤、それを用いた重合体組成物

【課題】液晶表示素子、EL表示素子、プリント配線基板などを製造するために用いられるインクジェット用インクにおいて、難燃性、密着性、耐薬品性、耐熱性、弾性等のバランスのとれた硬化膜を形成することが容易な重合体組成物を与える難燃剤、上記特性バランスに優れた難燃性の重合体組成物を提供する。
【解決手段】例示すれば、下記式(12)、または(16)の構造を有する難燃剤。




(式中、R6はC2〜12のアルキレン基であり、tは1〜30の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃剤、それを用いた熱硬化性組成物、熱硬化性インクジェット用インク、光硬化性組成物、光硬化性インクジェット用インクなどの重合体組成物に関し、具体的には、本発明は液晶表示素子、EL表示素子、プリント配線基板などを製造するために用いられるインクジェット用インクに関する。さらに本発明は、インクジェット用インクから形成された難燃性硬化膜、難燃性硬化膜が形成された電子回路基板、該電子回路基板を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子回路基板に使用される材料には、安全性のために難燃性が要求されている。従来、難燃性を付与するためには各種の臭素化物が用いられてきた。しかし近年、燃焼時のダイオキシンの発生が問題視されており、臭素化物を使用しない難燃剤が求められてきた。さらに、最近の電子部品に対しては耐熱性の向上が求められており、このためには反応性の官能基を持つ難燃剤が求められている。このような状況の中、各種の反応性難燃剤が提案されている(例えば、特開昭60−161993号公報(特許文献1)、特開2001−106766号公報(特許文献2)、特開2001−213889号公報(特許文献3)、特開2002−121245号公報(特許文献4)、特開2004−91683号公報(特許文献5)等を参照)。しかし、これらに記載されている難燃剤はすべてアクリルの二重結合にリン含有化合物を反応させたものであるため、材料としてのバリエーションが狭く、電子回路基板に要求される密着性、耐薬品性、耐熱性、弾性等のバランスをとることが難しかった。一方、近年電子回路基板の製造においてパターン化された硬化膜を形成する方法として、設備投資金額が少なく材料の使用効率が高い等の長所を持つインクジェット法が提案され、これに使用する組成物(インクジェット用インク)も提案されている(例えば、特開2003−302642号公報(特許文献6)、WO2004/099272号パンフレット(特許文献7)、特開2006−282757号公報(特許文献8)、特開2006−307152号公報(特許文献9)等を参照)。
しかしながら、これらのインクジェット用インクから形成された硬化膜は、十分な難燃性を有してはいなかった。
【特許文献1】特開昭60−161993号公報
【特許文献2】特開2001−106766号公報
【特許文献3】特開2001−213889号公報
【特許文献4】特開2002−121245号公報
【特許文献5】特開2004−91683号公報
【特許文献6】特開2003−302642号公報
【特許文献7】WO2004/099272号パンフレット
【特許文献8】特開2006−282757号公報
【特許文献9】特開2006−307152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の状況の下、難燃性、密着性、耐薬品性、耐熱性、弾性等のバランスのとれた硬化膜を形成することが容易な重合体組成物を与える難燃剤、上記特性バランスに優れた難燃性の重合体組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、特定の構造を有する難燃剤を使用すると難燃性、密着性、耐薬品性、耐熱性、弾性等のバランスのとれた硬化膜を形成することが容易な組成物を与えることができ、またこの難燃剤を含有する重合体組成物から形成される硬化膜の難燃性、密着性、耐薬品性、耐熱性、弾性等のバランスが良好であることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0005】
本発明は以下のような難燃剤、さらには、熱硬化性組成物、熱硬化性インクジェット用インク、光硬化性組成物、光硬化性インクジェット用インクなどの重合体組成物を提供する。
【0006】
[1]式(1)、(2)、または(3)で表される化合物。


(式中、Rは水素、またはメチルであり、Rは任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数2〜20のアルキレンであり、R3およびR4は独立して、炭素数1〜20のアルキル、フェニル、任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられたフェニル、または任意の水素がフェニルで置き換えられたフェニルであり、R3とR4が一体となって環状基を形成してもよく、pおよびqは独立して、0又は1である。)
【0007】
[2]式(4)、(5)、または(6)で表される化合物。


(式中、Rは水素、またはメチルであり、Rは任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数2〜20のアルキレンである。)
【0008】
[3][1]または[2]に記載の化合物から選ばれる難燃剤(A)、オキシランまたはオキセタンを2つ以上有する化合物(B)を含有する熱硬化性組成物。
【0009】
[4][1]または[2]に記載の化合物から選ばれる難燃剤(A)、オキシランまたはオキセタンを2つ以上有する化合物(B)を含有する熱硬化性インクジェット用インク。
【0010】
[5][1]または[2]に記載の化合物から選ばれる難燃剤(A)、多官能(メタ)アクリレート(C)、光重合開始剤(D)を含有する光硬化性組成物。
【0011】
[6][1]または[2]に記載の化合物から選ばれる難燃剤(A)、多官能(メタ)アクリレート(C)、光重合開始剤(D)を含有する光硬化性インクジェット用インク。
【0012】
[7]オキシランまたはオキセタンを2つ以上有する化合物(B)が式(7)、(8)、(9)、または(10)である、[3]に記載の熱硬化性組成物、または[4]に記載の熱硬化性インクジェット用インク。



(式(7)中、nは0〜10の整数である。)
【0013】
[8]多官能(メタ)アクリレート(C)が式(11)である、[5]に記載の光硬化性組成物、または[6]に記載の光硬化性インクジェット用インク。



(式(11)中、Rのうちr個は式(11−1)で表される基であり、s個は式(11−2)で表される基であり、rは1〜5の整数であり、sは1〜5の整数であり、r+sは6であり、R1は水素またはメチルである)
【0014】
[9]光重合開始剤(D)がビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、または2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドである、[5]または[8]に記載の光硬化性組成物、または[6]または[8]に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【0015】
[10]さらに単官能(メタ)アクリレート(E)を含有する、[3]または[7]に記載の熱硬化性組成物、[4]または[7]に記載の熱硬化性インクジェット用インク、[5]、[8]または[9]に記載の光硬化性組成物、または[6]、[8]または[9]に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【0016】
[11]単官能(メタ)アクリレート(E)が式(12)の化合物である、[10]に記載の、熱硬化性組成物、熱硬化性インクジェット用インク、光硬化性組成物、または光硬化性インクジェット用インク。



(式中、R6は環状構造を有してよい炭素数2〜12のアルキレンであり、R1は水素またはメチルであり、tは1〜30の整数である。)
【0017】
[12]単官能(メタ)アクリレート(E)が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、および1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1以上である、[11]に記載の、熱硬化性組成物、熱硬化性インクジェット用インク、光硬化性組成物、または光硬化性インクジェットインク。
【0018】
[13]難燃剤(A)が式(4)におけるRが炭素数3〜5のアルキレンである化合物、式(5)におけるRがエチレンである化合物および式(6)におけるRがプロピレンである化合物から選ばれる1つであり、多官能(メタ)アクリレート(C)が式(11)の化合物であり、光重合開始剤(D)がビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、あるいは2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドのいずれかであり、単官能(メタ)アクリレート(E)が、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである、[6]に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【0019】
[14]常圧における沸点が300℃以下の溶媒を含有しない、または常圧における沸点が300℃以下の溶媒の組成物全体に占める割合が10重量%以下である、請求項[3]、[7]、[10]、[11]、または[12]に記載の熱硬化性組成物、[4]、[7]、[10]、[11]、または[12]に記載の熱硬化性インクジェット用インク、[5]、[8]、[9]、[10]、[11]、または[12]に記載の光硬化性組成物、または請求項[6]、[8]、[9]、[10]、[11]、[12]、または[13]に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【0020】
[15][3]、[7]、[10]、[11]、[12]または[14]に記載の熱硬化性組成物、[4]、[7]、[10]、[11]、[12]または[14]に記載の熱硬化性インクジェット用インク、[5]、[8]、[9]、[10]、[11]、[12]または[14]に記載の光硬化性組成物、または[6]、[8]、[9]、[10]、[11]、[12]、[13]または[14]に記載の光硬化性インクジェット用インクを用いて基板上に難燃性硬化膜が形成された電子回路基板。
【0021】
[16][15]に記載された電子回路基板を有する電子部品。
【0022】
[17][16]に記載された電子部品を有する表示素子。
【0023】
なお、本明細書中、アクリレートとメタクリレートの両者を示すために「(メタ)アクリレート」のように表記することがある。
【発明の効果】
【0024】
本発明の好ましい態様に係る難燃剤を使用した熱硬化性組成物、熱硬化性インクジェット用インク、光硬化性組成物、光硬化性インクジェット用インクなどの重合体組成物から形成される硬化膜は難燃性、密着性、耐薬品性、耐熱性、弾性等のバランスに優れ、電子回路基板用の材料として良好かつ安全に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
1 本発明の難燃剤
本発明の難燃剤は、式(1)、(2)、または(3)で表される化合物であり、好ましくは式(4)、(5)、または(6)で表される化合物である。さらに好ましくは、下記式(13)、(14)、または(15)の化合物である。

これらの化合物は分子中におけるリンの含有率が高く難燃性が良好である。また、分子末端に(メタ)アクリロイルやオキシランといった熱硬化性の反応基を有しているため、高温で加熱してもブリードアウトすることがない。したがって、電子回路基板におけるカバーレイ等に使用すると難燃性、密着性、耐薬品性に優れる。また、従来の難燃剤に比べると比較的分子量が小さいため、多量に含有しても粘度の調整が容易である。このため、粘度を2〜200mPa・sに調整した無溶媒タイプのインクジェット用インクに好適に用いることができる。粘度が1Pa・s以上となるように調合してスクリーン印刷用インクとして使用してもよい。
【0026】
2 本発明の熱硬化性組成物
本発明の熱硬化性組成物は、式(1)、(2)、または(3)で表される難燃剤(A)、オキシランまたはオキセタンを2つ以上有する化合物(B)を混合、溶解、ろ過することにより調整するのが好ましい。ろ過には、例えばフッ素樹脂製のメンブレンフィルターなどが用いられる。該熱硬化性組成物は、インクジェット用インク、スクリーン印刷用インクとして使用することができる。
【0027】
2.1 難燃剤(A)
本発明の熱硬化性組成物に用いられる難燃剤(A)は、式(1)、(2)、または(3)で表される化合物であり、好ましくは式(4)、(5)、または(6)で表される化合物である。さらに好ましくは、式(13)、(14)、または(15)の化合物である。
熱硬化性組成物は、難燃剤(A)を含有すると形成される硬化膜の難燃性が高い。難燃剤(A)は熱硬化性組成物の溶媒以外の全量の10重量%以上であると難燃性が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると10〜70重量%であることが好ましい。
【0028】
2.2 オキシランまたはオキセタンを2つ以上有する化合物(B)
本発明の熱硬化性組成物に用いられるオキシランまたはオキセタンを2つ以上有する化合物(B)としては、耐薬品性の高い硬化膜が得られるために多官能であるエポキシ樹脂が好ましい。本発明で用いられるエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の具体例としては、商品名「エピコート807」、「エピコート815」、「エピコート825」、「エピコート827」、「エピコート828」、「エピコート190P」、「エピコート191P」(以上、油化シェルエポキシ(株)製)、商品名「エピコート1004」、「エピコート1256」(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、商品名「アラルダイトCY177」、「アラルダイトCY184」(日本チバガイギー(株)製)、商品名「セロキサイド2021P」、「EHPE−3150」(ダイセル化学工業(株)製)、商品名「テクモアVG3101L」(三井化学(株)製)などを挙げることができる。中でも式(7)の化合物の混合物であるエピコート828、式(8)の化合物であるアラルダイトCY184、式(9)の化合物であるテクモアVG3101L、または式(10)の化合物であるセロキサイド2021Pは、耐熱性、耐薬品性が高いので好ましい。
【0029】
オキシランまたはオキセタンを2つ以上有する化合物(B)は熱硬化性組成物の溶媒以外の全量の10重量%以上であると耐薬品性が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると10〜50重量%であることが好ましい。
【0030】
2.3 単官能(メタ)アクリレート(E)
本発明の熱硬化性組成物は、使用する用途に合わせた粘度に調整するために単官能(メタ)アクリレート(E)を含んでもよい。単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタ−3−イルメチルエーテル、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、ビニルトルエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、5−テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチル(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル] 、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、シクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
中でも、硬化膜の基材への密着性が高いことから、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
単官能(メタ)アクリレート(E)は熱硬化性組成物の溶媒以外の全量の10重量%以上であると、使用する用途に合わせた粘度に調整できるので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると10〜70重量%であることが好ましい。
【0032】
2.4 その他の成分
本発明の熱硬化性組成物には、粘度を調整するための溶媒、耐熱性向上のためのエポキシ硬化剤、膜面均一性向上のための界面活性剤、基材との密着性向上のためのカップリング剤等を添加してもよい。
【0033】
2.4.1 溶媒
本発明の熱硬化性組成物は、使用する用途に合わせた粘度に調整するために溶媒を含んでもよい。本発明の熱硬化性組成物に含まれる溶媒としては沸点が100〜300℃の溶媒が好ましい。
【0034】
沸点が100〜300℃である溶媒の具体例としては、水、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トルエン、キシレン、アニソール、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。
【0035】
溶媒は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。本発明の熱硬化性組成物において、溶媒は固形分濃度が20重量%以下にならない程度に含まれることが好ましい。
【0036】
2.4.2 エポキシ硬化剤
本発明の熱硬化性組成物は、硬化膜の耐熱性を向上させるためにエポキシ硬化剤を含んでもよい。エポキシ硬化剤としては、酸無水物系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、ポリフェノール系硬化剤、および触媒型硬化剤などがあるが、着色および耐熱性の点から酸無水物系硬化剤が好ましい。
酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらのなかでも耐熱性が特に優れたトリメリット酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物が好ましい。
エポキシ硬化剤は熱硬化性組成物の溶媒以外の全量の5重量%以上であると耐熱性が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると5〜30重量%であることが好ましい。
【0037】
2.4.3 界面活性剤
本発明の熱硬化性組成物は、下地基板への濡れ性、硬化膜の膜面均一性を向上させるために界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、およびフッ素系界面活性剤などが用いられる。具体的には、Byk−300、Byk−306、Byk−335、Byk−310、Byk−341、Byk−344、およびByk−370(商品名;ビック・ケミー(株)製)などのシリコン系、Byk−354、ByK−358、およびByk−361(商品名;ビック・ケミー(株)製)などのアクリル系、DFX−18、フタージェント250、並びにフタージェント251(商品名;ネオス(株)製)を挙げることができる。
界面活性剤は、熱硬化性組成物中に0.01重量%以上であると硬化膜の膜面均一性が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると0.01〜1重量%であることが好ましい。
【0038】
2.4.4 カップリング剤
本発明の熱硬化性組成物は、下地基板との密着性を向上させるためにカップリング剤を含んでもよい。カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系およびチタネート系の化合物を用いることができる。具体的には、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、および3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン系、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウム系、並びにテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネートなどのチタネート系を挙げることができる。これらのなかでも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、密着性を向上させる効果が大きいため好ましい。
【0039】
カップリング剤は熱硬化性組成物の溶媒以外の全量の0.5重量%以上であると下地基板との密着性が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると0.5〜10重量%であることが好ましい。
【0040】
2.4.5 着色剤
本発明の熱硬化性組成物は、硬化膜の状態を検査する際に基板との識別を容易にするために、着色剤を含んでもよい。着色剤としては、耐熱性が良好であるため顔料が好ましい。着色剤は、熱硬化性組成物中に1重量%以上であると硬化膜の検査が容易であるので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると1〜10重量%であることが好ましい。
【0041】
2.4.6 重合禁止剤
本発明の熱硬化性組成物は、保存安定性を向上させるために重合禁止剤を含んでもよい。重合禁止剤の具体例としては、4−メトキシフェノール、ヒドロキノン、フェノチアジン等を挙げることができる。これらの中でも、フェノチアジンが長期の保存においても粘度の変化が小さいために好ましい。重合禁止剤は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。重合禁止剤は、熱硬化性組成物中に0.01重量%以上であると長期の保存においても粘度の変化が小さいために好ましく、他特性とのバランスを考慮すると0.01〜1重量%であることが好ましい。
【0042】
3 本発明の熱硬化性インクジェット用インク
2に記載した熱硬化性組成物を、25℃における粘度を2〜200mPa・sに調整すると、熱硬化性インクジェット用インクとして使用することができる。インクジェット用インクとして使用すると所望のパターンを描画することができるため、電子回路基板等の製造に有効である。インクジェットヘッドからの吐出を安定させるためには、25℃における粘度が50mPa・s以下であることが好ましい。
【0043】
25℃における粘度が50mPa・s以上のインクを使用する場合は、インクジェットヘッドを加温することが好ましい。インクジェットヘッドを加温する場合、インクに低沸点の溶媒が含まれていると溶媒が揮発してインクの粘度が上昇しヘッドが詰まってしまうことがある。これを回避するために、インクは溶媒を含まないか、含んだとしても10重量%以下の少量であることが好ましい。また、インクは単官能(メタ)アクリレート(E)を含むことが好ましい。
【0044】
インクジェットヘッドを加温しない場合、インクの粘度は溶媒を加えて調整することができる。
【0045】
4 本発明の光硬化性組成物
本発明の光硬化性組成物は、式(1)、(2)、または(3)で表される難燃剤(A)、多官能(メタ)アクリレート(C)、光重合開始剤(D)を混合、溶解、ろ過することにより調整するのが好ましい。ろ過には、例えばフッ素樹脂製のメンブレンフィルターなどが用いられる。該光硬化性組成物は、インクジェット用インク、スクリーン印刷用インクとして使用することができる。
【0046】
4.1 難燃剤(A)
本発明の光硬化性組成物に用いられる難燃剤(A)の構造、好ましい構造、好ましい含有量は、2.1に記載の難燃剤と同一である。
【0047】
4.2 多官能(メタ)アクリレート(C)
本発明の光硬化性組成物に用いられる多官能(メタ)アクリレート(C)の具体例としては、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート、式(11)で表される多官能(メタ)アクリレート等を挙げることができる。中でも、式(11)で表される多官能(メタ)アクリレートを使用すると、硬化膜の難燃性が向上するので好ましい。
【0048】
本発明で用いられる多官能(メタ)アクリレート(C)は、1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。たとえば、本発明で用いられる多官能(メタ)アクリレート(C)は、式(11)で表される多官能(メタ)アクリレートとそれ以外の重合性モノマーとの混合物であってもよい。多官能(メタ)アクリレート(C)は光硬化性組成物の溶媒以外の全量の10重量%以上であると、少ない紫外線の照射量で硬化するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると10〜80重量%であることが好ましい。
【0049】
4.3 光重合開始剤(D)
本発明の光硬化性組成物に使用される光重合開始剤(D)は、紫外線あるいは可視光線の照射によりラジカルを発生することのできる化合物であれば特に限定されない。光重合開始剤(D)の具体例としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(メトキシカルボニル)−4,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジ(メトキシカルボニル)−3,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(o−ベンゾイルオキシム)、2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等を挙げることができる。中でもビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドはリン原子を有する光重合開始剤であり、これらを使用すると得られる硬化膜の難燃性が向上するので好ましい。
【0050】
本発明で用いられる光重合開始剤(D)は、1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。光重合開始剤(D)は光硬化性組成物の溶媒以外の全量の1重量%以上であると、少ない紫外線の照射量で硬化するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると1〜20重量%であることが好ましい。
【0051】
4.4 単官能(メタ)アクリレート(E)
本発明の光硬化性組成物は、使用する用途に合わせた粘度に調整し、かつ少ない紫外線の照射で硬化する特性を維持するために単官能(メタ)アクリレート(E)を含んでもよい。光硬化性組成物に用いられる単官能(メタ)アクリレートの種類、好ましい含有量は、2.3に記載の単官能(メタ)アクリレートと同一である。
【0052】
4.5 その他の成分
本発明の光硬化性組成物には、粘度を調整するための溶媒、耐薬品性向上のためのエポキシ樹脂、耐熱性向上のためのエポキシ硬化剤、膜面均一性向上のための界面活性剤、基材との密着性向上のためのカップリング剤等を添加してもよい。
【0053】
4.5.1 溶媒
本発明の光硬化性組成物に用いられる溶媒の種類、好ましい含有量は、2.4.1に記載の溶媒と同一である。
【0054】
4.5.2 エポキシ樹脂
本発明の光硬化性組成物に用いられるエポキシ樹脂の種類、好ましい含有量は、2.2に記載のエポキシ樹脂と同一である。
【0055】
4.5.3 エポキシ硬化剤
本発明の光硬化性組成物に用いられるエポキシ硬化剤の種類、好ましい含有量は、2.4.2に記載のエポキシ硬化剤と同一である。
【0056】
4.5.4 界面活性剤
本発明の光硬化性組成物に用いられる界面活性剤の種類、好ましい含有量は、2.4.3に記載の界面活性剤と同一である。
【0057】
4.5.5 カップリング剤
本発明の光硬化性組成物に用いられるカップリング剤の種類、好ましい含有量は、2.4.4に記載のカップリング剤と同一である。

4.5.6 着色剤
本発明の光硬化性組成物に用いられる着色剤の種類、好ましい含有量は、2.4.5に記載の着色剤と同一である。
【0058】
4.5.7 重合禁止剤
本発明の光硬化性組成物に用いられる重合禁止剤の種類、好ましい含有量は、2.4.6に記載の重合禁止剤と同一である。
【0059】
5 本発明の光硬化性インクジェット用インク
4に記載した光硬化性組成物を、25℃における粘度を2〜200mPa・sに調整すると、光硬化性インクジェット用インクとして使用することができる。インクジェット用インクとして使用すると所望のパターンを描画することができるため、電子回路基板等の製造に有効である。インクジェットヘッドからの吐出を安定させるためには、25℃における粘度が50mPa・s以下であることが好ましい。
【0060】
25℃における粘度が50mPa・s以上のインクを使用する場合は、インクジェットヘッドを加温することが好ましい。インクジェットヘッドを加温する場合、インクに低沸点の溶媒が含まれていると溶媒が揮発してインクの粘度が上昇しヘッドが詰まってしまうことがある。これを回避するために、インクは溶媒を含まないか、含んだとしても10重量%以下の少量であることが好ましい。また、インクは単官能(メタ)アクリレート(E)を含むことが好ましい。
【0061】
インクジェットヘッドを加温しない場合、インクの粘度は溶媒を加えて調整することができる。
【0062】
6 硬化膜の形成
本発明の硬化膜は、熱硬化性組成物の場合インクジェット塗布、スクリーン印刷、スピンコート、ロールコート、バーコート、スリットコート等、公知の方法を用いて基板の表面に塗布した後に、150〜250℃のオーブンまたはホットプレートで10〜60分間加熱して得られる。加熱によりエポキシ樹脂が反応し、強固な膜が形成される。
【0063】
光硬化性組成物の場合、上記方法で基板の表面に塗布した後、該組成物に紫外線や可視光線等の光を照射して得られる。光が照射された部分の組成物はアクリルモノマーの重合により三次元化架橋体となって硬化する。光硬化性インクジェット用インクの場合、インクの広がりを効果的に抑えることができるので、高精細なパターンの描画が可能になる。照射する光として紫外線を用いた場合には、照射する紫外線の量は、ウシオ電機(株)製の受光器UVD−365PDを取り付けた積算光量計UIT−201で測定して、10〜1,000mJ/cm程度が好ましい。さらに150〜250℃のオーブンまたはホットプレートで10〜60分間加熱、焼成すると、耐熱性、耐薬品性が向上するので好ましい。
【0064】
本明細書中、「基板」は、本発明の熱硬化性組成物、熱硬化性インクジェット用インク、光硬化性組成物、または光硬化性インクジェット用インクが塗布される対象となり得るものであれば特に限定されず、その形状は平板状に限られず、曲面状であってもよい。
【0065】
また、本発明に使用できる基板の材質は特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックフィルム、セロハン、アセテート、金属箔、ポリイミドと金属箔の積層フィルム、目止め効果があるグラシン紙、パーチメント紙、あるいはポリエチレン、クレーバインダー、ポリビニルアルコール、でんぷん、カルボキシメチルセルロース(CMC)などで目止め処理した紙、ガラスなどを挙げることができる。なお、これらの基板を構成する物質には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、さらに、顔料、染料、酸化防止剤、劣化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤および/または電磁波防止剤等の添加剤を含んでもよい。
【0066】
上記の基板の厚さは、特に限定されないが、通常、10μm〜2mm程度であり、使用する目的により適宜調整されるが、15〜500μmが好ましく、20〜200μmがさらに好ましい。
【0067】
上記の基板の硬化膜を形成する面には、必要によりコロナ処理、プラズマ処理、ブラスト処理等の易接着処理を施したり、易接着層を設けてもよい。
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
[合成例1](難燃剤(A1)の合成)
9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(以下、「HCA」という)23.8g、4−ペンテンー1−オール15g、アゾビスイソブチロニトリル2.7g、テトラヒドロフラン110mlを4つ口フラスコに投入し、70℃で加熱還流し15時間攪拌した。その後、過剰な原料と溶媒を100℃で3時間減圧留去した。この反応物にトリエチルアミン18ml、テトラヒドロフラン200mlを加え、窒素雰囲気下0℃にした。次いで、アクリル酸クロライド11mlを滴下し、20℃で2時間攪拌した。その後、0℃において飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、得られた溶液の水層から酢酸エチルで2回抽出を行い、さらに合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。これに硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、減圧下35℃で溶媒を留去して、41gの式(13)の化合物を得た。図1にNMRスペクトルを示す。これを難燃剤(A1)とする。
【0070】
[合成例2](難燃剤(A2)の合成)
HCA43.2g、アリルグリシジルエーテル43g、アゾビスイソブチロニトリル3.3g、1.4−ジオキサン100mlを4つ口フラスコに投入し、80℃に加熱して10時間攪拌した。その後、過剰な原料と溶媒を90℃で4時間減圧留去して、63gの式(15)の化合物を得た。図2にNMRスペクトルを示す。これを難燃剤(A2)とする。
【0071】
[合成例3](難燃剤(A3)の合成)
合成例2のアリルグリシジルエーテルをセロキサイド2000(商品名 ダイセル化学工業(株)製)に代え、合成例2と同様の方法で式(14)の化合物を得た。図3にNMRスペクトルを示す。これを難燃剤(A3)とする。
【0072】
[合成例4](難燃剤(A4)の合成)
合成例2のHCAをジフェニルホスファイトに代え、合成例2と同様の方法で式(16)の化合物を得る。

【0073】
[合成例5](難燃剤(A5)の合成)
合成例2のHCAをジイソプロピルホスファイトに代え、合成例2と同様の方法で式(17)の化合物を得る。

【0074】
[合成例6](難燃剤(A6)の合成)
合成例2のHCAをジフェニルホスファイトに代え、合成例2と同様の方法で式(18)の化合物を得る。

【0075】
[実施例1]
難燃剤(A1)、多官能アクリレートとしてリポキシHF−DPHA30(商品名;昭和高分子(株)製;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物(式(11)の化合物)とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの80:20(重量比)混合物;以下、「HF−DPHA」という)、単官能アクリレートとして4−ヒドロキシブチルアクリレート(以下、「4HBA」という)、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド[(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)DAROCUR(商品名)TPO;以下、「TPO」という]、および、重合禁止剤としてフェノチアジンを下記組成にて混合溶解し、0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、光硬化性インクジェット用インク1を調製した。
【0076】
難燃剤(A1) 32.00g
HF−DPHA 40.00g
4HBA 100.00g
TPO 5.00g
フェノチアジン 0.02g
【0077】
この光硬化性インクジェット用インク1をインクジェットカートリッジに注入し、インクジェット装置DMP−2811(商品名、Dimatix社製)に装着し、ポリイミドフィルムであるカプトン(登録商標)(商品名、東レ・デュポン(株)製、150μm厚、Hタイプ;以下、「カプトン基板」という)上に描画した。このとき、ラインの幅を200μm、ライン間のスペースの幅を200μmとなるように描画条件を設定した。塗布回数は1回で、ラインの長さは50mm、ノズルからのジェッティング速度は10回/s、ジェッティング温度は70℃とした。
【0078】
描画後の基板に、波長365nmの紫外線を30mJ/cm照射後、190℃で30分間焼成し、ライン&スペースパターンを形成したカプトン基板1を得た。この基板1を顕微鏡で観察したところ、ラインの直線性は良好であり、インクジェット塗布に適したインクであることを確認した。
【0079】
次にこの光硬化性インクジェット用インク1を、幅13mm、長さ125mmの型枠に厚さ5mmとなるように流し込み、波長365nmの紫外線30mJ/cmを20回照射して固めた後、型枠を外して190℃で30分間焼成し、燃焼試験用サンプル1を作成した。この燃焼試験用サンプル1にライターの炎を近づけたところ、炎が接触している間は燃焼しているが、炎を離すと約1秒後に消炎した。したがって難燃性を有していることが確認された。
【0080】
[比較例1]
多官能アクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;以下、「DPHA」という、4HBA、TPO、およびフェノチアジンを下記組成にて混合溶解し、0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、光硬化性インクジェット用インク2を調製した。
【0081】
DPHA 80.00g
4HBA 60.00g
TPO 5.00g
フェノチアジン 0.02g
【0082】
この光硬化性インクジェット用インク2を用いて、実施例1と同様の塗布、露光、焼成を行ったカプトン基板2を得た。この基板2を顕微鏡で観察したところ、ラインの直線性は良好であり、インクジェット塗布に適したインクであることを確認した。
【0083】
次にこの光硬化性インクジェット用インク2を用いて、実施例1と同様の燃焼試験用サンプル2を作成した。この燃焼試験用サンプル2にライターの炎を近づけたところ、炎が接触している間は大きな炎を上げて燃焼し、炎を離しても燃焼し続けた。したがって難燃性を有していないことが確認された。
【0084】
[実施例2]
難燃剤(A2)、エポキシ樹脂としてエピコート828(商品名;ジャパンエポキシレジン(株)製)、エポキシ硬化剤としてトリメリット酸無水物を下記組成にて混合溶解し、0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、熱硬化性組成物1を調製した。
【0085】
難燃剤(A2) 70.00g
エピコート828 30.00g
トリメリット酸無水物 10.00g
【0086】
この熱硬化性組成物1を、幅13mm、長さ125mmの型枠に厚さ5mmとなるように流し込み、220℃で30分焼成して固めた後、型枠を外して燃焼試験用サンプル3を作成した。この燃焼試験用サンプル3にライターの炎を近づけたところ、炎が接触している間は燃焼しているが、炎を離すと約1秒後に消炎した。したがって難燃性を有していることが確認された。
【0087】
[比較例2]
エポキシ樹脂としてセロキサイド2021P(商品名;ダイセル化学工業(株)製)およびエピコート828(商品名;ジャパンエポキシレジン(株)製)、エポキシ硬化剤としてトリメリット酸無水物を下記組成にて混合溶解し、0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、熱硬化性組成物2を調製した。
【0088】
セロキサイド2021P 70.00g
エピコート828 30.00g
トリメリット酸無水物 10.00g
【0089】
次にこの熱硬化性組成物2を用いて、実施例2と同様の燃焼試験用サンプル4を作成した。この燃焼試験用サンプル4にライターの炎を近づけたところ、炎が接触している間は大きな炎を上げて燃焼し、炎を離しても燃焼し続けた。したがって難燃性を有していないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の難燃剤、およびそれを用いたインクジェット用インクから形成される硬化膜は難燃性が良好であるため、例えば、電子回路基板に使用されるエッチングレジストや保護膜あるいは絶縁膜に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】合成例1に示した式(13)の化合物のNMRスペクトル
【図2】合成例2に示した式(15)の化合物のNMRスペクトル
【図3】合成例3に示した式(14)の化合物のNMRスペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)、(2)、または(3)で表される化合物。


(式中、Rは水素、またはメチルであり、Rは任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数2〜20のアルキレンであり、R3およびR4は独立して、炭素数1〜20のアルキル、フェニル、任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられたフェニル、または任意の水素がフェニルで置き換えられたフェニルであり、R3とR4が一体となって環状基を形成してもよく、pおよびqは独立して、0又は1である。)
【請求項2】
式(4)、(5)、または(6)で表される化合物。


(式中、Rは水素、またはメチルであり、Rは任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数2〜20のアルキレンである。)
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物から選ばれる難燃剤(A)、オキシランまたはオキセタンを2つ以上有する化合物(B)を含有する熱硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の化合物から選ばれる難燃剤(A)、オキシランまたはオキセタンを2つ以上有する化合物(B)を含有する熱硬化性インクジェット用インク。
【請求項5】
請求項1または2に記載の化合物から選ばれる難燃剤(A)、多官能(メタ)アクリレート(C)、光重合開始剤(D)を含有する光硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の化合物から選ばれる難燃剤(A)、多官能(メタ)アクリレート(C)、光重合開始剤(D)を含有する光硬化性インクジェット用インク。
【請求項7】
オキシランまたはオキセタンを2つ以上有する化合物(B)が式(7)、(8)、(9)、または(10)である、請求項3に記載の熱硬化性組成物、または請求項4に記載の熱硬化性インクジェット用インク。



(式(7)中、nは0〜10の整数である。)
【請求項8】
多官能(メタ)アクリレート(C)が式(11)である、請求項5に記載の光硬化性組成物、または請求項6に記載の光硬化性インクジェット用インク。



(式(11)中、Rのうちr個は式(11−1)で表される基であり、s個は式(11−2)で表される基であり、rは1〜5の整数であり、sは1〜5の整数であり、r+sは6であり、R1は水素またはメチルである)
【請求項9】
光重合開始剤(D)がビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、または2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドである、請求項5または8に記載の光硬化性組成物、または請求項6または8に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【請求項10】
さらに単官能(メタ)アクリレート(E)を含有する、請求項3または7に記載の熱硬化性組成物、請求項4または7に記載の熱硬化性インクジェット用インク、請求項5、8または9に記載の光硬化性組成物、または請求項6、8または9に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【請求項11】
単官能(メタ)アクリレート(E)が式(12)の化合物である、請求項10に記載の、熱硬化性組成物、熱硬化性インクジェット用インク、光硬化性組成物、または光硬化性インクジェット用インク。



(式中、R6は環状構造を有してよい炭素数2〜12のアルキレンであり、R1は水素またはメチルであり、tは1〜30の整数である。)
【請求項12】
単官能(メタ)アクリレート(E)が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、および1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1以上である、請求項11に記載の、熱硬化性組成物、熱硬化性インクジェット用インク、光硬化性組成物、または光硬化性インクジェットインク。
【請求項13】
難燃剤(A)が式(4)におけるRが炭素数3〜5のアルキレンである化合物、式(5)におけるRがエチレンである化合物および式(6)におけるRがプロピレンである化合物から選ばれる1つであり、多官能(メタ)アクリレート(C)が式(11)の化合物であり、光重合開始剤(D)がビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、あるいは2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドのいずれかであり、単官能(メタ)アクリレート(E)が、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである、請求項6に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【請求項14】
常圧における沸点が300℃以下の溶媒を含有しない、または常圧における沸点が300℃以下の溶媒の組成物全体に占める割合が10重量%以下である、請求項3、7、10、11、または12に記載の熱硬化性組成物、請求項4、7、10、11、または12に記載の熱硬化性インクジェット用インク、請求項5、8、9、10、11、または12に記載の光硬化性組成物、または請求項6、8、9、10、11、12、または13に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【請求項15】
請求項3、7、10、11、12または14に記載の熱硬化性組成物、請求項4、7、10、11、12または14に記載の熱硬化性インクジェット用インク、請求項5、8、9、10、11、12または14に記載の光硬化性組成物、または請求項6、8、9、10、11、12、13または14に記載の光硬化性インクジェット用インクを用いて基板上に難燃性硬化膜が形成された電子回路基板。
【請求項16】
請求項15に記載された電子回路基板を有する電子部品。
【請求項17】
請求項16に記載された電子部品を有する表示素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−222677(P2008−222677A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66958(P2007−66958)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】