説明

電動機駆動装置

【課題】インバータをスイッチング制御する際のノイズの発生の低減と素子の温度上昇の抑制とを両立させる。
【解決手段】インバータのPWM制御に用いるキャリアの周波数(キャリア周波数F)を、モータの電気角θeが電気角周期Tの1/4周期進む度に(ステップS120)、高周波数範囲内からランダムに抽出した高周波数の設定と低周波数範囲内からランダムに抽出した低周波数の設定とに交互に切り替える(ステップS150〜S170)。これにより、モータMGの電気信号(変調波)の山や谷(T/2周期)に対して高周波数の設定期間と低周波数の設定期間とを同期間割り当てることができ、特定のトランジスタに対して熱集中が生じるのを抑制することができる。また、キャリア周波数Fを拡散させるから、ノイズの発生を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機を駆動する電動機駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動機駆動装置としては、インバータのスイッチング素子をパルス幅変調制御(PWM)によりオンオフする際に用いるキャリアの周波数を、第1の周波数範囲fc1〜fc2内および第2の周波数範囲内fc3〜fc4内で時間の経過と共に変化させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、キャリア周波数のn次周波数帯域の周波数スペクトルにおける所定周波数帯域(n・fc2〜n・fc3)に、隣り合う(nー1)次周波数帯域の周波数スペクトルおよび(n+1)次周波数帯域の周波数スペクトルが重畳しないように第1および第2の周波数範囲(周波数fc1,fc2,fc3,fc4)を定めている。この際、所定周波数帯域(n・fc2〜n・fc3)にラジオ放送波の帯域が含まれるように次数n,周波数fc2,fc3を決定することにより、インバータの近傍に配置されたラジオ受信機で受信される放送を聴取する場合の障害の発生を抑制することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−295744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した電動機駆動装置では、所定周波数帯域(n・fc2〜n・fc3)のノイズレベルを低減させることができるものの、スイッチングにより素子が発熱する場合については考慮されていない。インバータのスイッチング素子の発熱量はキャリア周波数が高くなるほど多くなると共に素子を流れる電流が高いほど多くなるため、キャリア周波数の高低を変化させる周期によっては、ある一つの素子に対する変調波の山または谷とキャリア周波数が高い期間とが同期し、その素子に熱集中が生じる。発熱を予め見込んでスイッチング素子を設計すればよいが、装置が大型化してしまう。
【0005】
本発明の電動機駆動装置は、インバータをスイッチング制御する際のノイズの発生の低減と素子の温度上昇の抑制とを両立させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動機駆動装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電動機駆動装置は、
電動機を駆動する電動機駆動装置であって、
複数のスイッチング素子のスイッチングにより直流を交流に変換して前記電動機に出力するインバータと、
前記電動機の電気角周期を取得する電気角周期取得手段と、
前記取得された電気角周期の1/2周期とは異なる周期を切替周期として該切替周期毎に、第1の周波数範囲内で拡散させた第1の周波数と該第1の周波数範囲よりも低い第2の周波数範囲内で拡散させた第2の周波数とを交互に切り替えて前記インバータのキャリア周波数を設定するキャリア周波数設定手段と、
前記設定されたキャリア周波数に基づいてキャリアを生成し、該生成したキャリアと変調波との比較によりパルス幅変調信号を生成して前記複数のスイッチング素子をスイッチング制御するインバータ制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の電動機駆動装置では、電気角周期の1/2周期とは異なる周期を切替周期として切替周期毎に、第1の周波数範囲内で拡散させた第1の周波数と第1の周波数範囲よりも低い第2の周波数範囲内で拡散させた第2の周波数とを交互に切り替えてインバータのキャリア周波数を設定し、設定したキャリア周波数に基づいてキャリアを生成し、生成したキャリアと変調波との比較によりパルス幅変調信号を生成して複数のスイッチング素子をスイッチング制御する。これにより、変調波の山や谷に対してキャリア周波数の高低を分散させることができるから、特定のスイッチング素子に熱集中が生じるのを抑制することができ、素子の温度上昇を抑制することができる。もとより、周波数を拡散させてキャリア周波数を設定するから、ノイズの発生を低減することができる。
【0009】
こうした本発明の電動機駆動装置において、前記切替周期は、前記電気角周期の1/2周期未満の周期であるものとすることもできる。こうすれば、より確実に特定のスイッチング素子に熱集中が生じるのを抑制することができる。この態様の本発明の電動機駆動装置において、前記切替周期は、前記電気角周期の1/(4n)周期(nは1以上の整数)であるであるものとすることもできる。こうすれば、変調波の山や谷に対してキャリア周波数の高い期間と低い期間とを同期間割り当てることができるから、素子の温度上昇をさらに確実に抑制することができる。
【0010】
また、本発明の電動機駆動装置において、前記スイッチング素子の温度を検出する温度検出手段を備え、前記キャリア周波数設定手段は、前記検出された温度が所定温度未満のときには、前記第1の周波数範囲および前記第2の周波数範囲から抽出した周波数を前記インバータのキャリア周波数に設定し、前記検出された温度が前記所定温度以上のときには、前記第1の周波数範囲から抽出した第1の周波数と前記第2の周波数範囲から抽出した第2の周波数とを交互に切り替えて前記インバータのキャリア周波数として設定する手段であるものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例としての駆動装置20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例の電子制御ユニット30の機能ブロックを示すブロック図である。
【図3】キャリア周波数設定部58により実行されるキャリア周波数設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】キャリア周波数Fの設定の様子を示す説明図である。
【図5】キャリア周波数Fの変更周期をモータMGの電気角周期の1/2周期としたときのキャリア周波数Fの時間変化の様子を示す説明図である。
【図6】キャリア周波数Fの変更周期をモータMGの電気角周期の1/4周期としたときのキャリア周波数Fの時間変化の様子を示す説明図である。
【図7】キャリア周波数とトランジスタ発熱量との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としての駆動装置20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、電子制御ユニット30の機能ブロックを示すブロック図である。
【0014】
実施例の駆動装置20は、永久磁石が貼り付けられた回転子と3相コイルが巻回された固定子とからなる同期発電電動機として構成されたモータMGと、複数のスイッチング素子のスイッチングによりモータMGを駆動するインバータ22と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ24と、バッテリ24が接続された低圧側とインバータ22が接続された高圧側との間で電圧を変換して電力のやり取りが可能な昇圧コンバータ26と、バッテリ24と昇圧コンバータ26との接続と接続の解除とが可能なシステムメインリレー28と、装置全体をコントロールする電子制御ユニット30と、を備える。
【0015】
インバータ22は、6つのスイッチング素子としてのトランジスタT11〜T16と、トランジスタT11〜T16に逆方向に並列接続された6つのダイオードD11〜D16とにより構成されている。トランジスタT11〜T16は、正極母線と負極母線とに対してソース側とシンク側になるよう2個ずつペアで配置されており、対となるトランジスタ同士の接続点の各々にモータMGの三相コイル(U相,V相,W相)の各々が接続されている。
【0016】
電子制御ユニット30は、CPU32を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU32の他に処理プログラムを記憶するROM34と、データを一時的に記憶するRAM36と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートと、を備える。この電子制御ユニット30には、モータMGのロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ40からの回転位置θmやモータMGの三相コイルのV相,W相の各相に流れる相電流を検出する電流センサ42V,42Wからの相電流Iv,Iw,インバータ22のスイッチング素子近傍に取り付けられた温度センサ44からのスイッチング素子の温度(スイッチング素子温度)Tinv,バッテリ24を流れる電流を検出する電流センサ46からの充放電電流Ib,バッテリ24の端子間に接続された電圧センサ48からの端子間電圧Vbなどが入力ポートを介して入力されている。また、電子制御ユニット30からは、インバータ22のスイッチング素子T11〜T16へのスイッチング制御信号や昇圧コンバータ26のスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、電子制御ユニット30は、回転位置検出センサ40からの回転位置θmに基づいてモータMGの回転子の電気角θeやモータMGの回転数Nmも演算している。
【0017】
また、電子制御ユニット30は、その機能ブロックとしては、図2に示すように、電流センサ42V,42Wからの相電流Iv,IwとモータMGの電気角θeとに基づいて相電流Iv,Iwをdq座標系におけるd軸電流Id,q軸電流Iqに座標変換する3相2相変換部52と、モータMGから出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm*とモータMGの電気角θeとに基づいてdq座標系における電流指令Id*,Iq*を生成する電流指令生成部50と、変換したd軸電流Idと設定した電流指令Id*との偏差(Id*−Id)に基づくフィードバック制御によりd軸電流Idが電流指令Id*に近づくように電圧指令Vd*を設定すると共に変換したq軸電流Iqと設定した電流指令Iq*との偏差(Iq*−Iq)に基づくフィードバック制御によりq軸電流Iqが電流指令Iq*に近づくように電圧指令Vq*を生成する電圧指令生成部54と、モータMGの電気角θeに基づいて電圧指令Vd*,Vq*を相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に座標変換する2相3相変換部56と、モータMGの電気角θeに基づいてキャリア周波数Fを設定するキャリア周波数設定部58と、設定したキャリア周波数Fの三角波信号をキャリア信号として生成するキャリア生成部60と、生成したキャリア信号と変換したU相の相電圧指令Vu*と比較することによりパルス幅変調信号(PWM信号)を生成し生成したPWM信号をトランジスタT11に出力すると共にPWM信号を否定回路64Uを介してトランジスタT14に出力するU相比較器62Uと、生成したキャリア信号と変換したV相の相電圧指令Vv*と比較することによりPWM信号を生成し生成したPWM信号をトランジスタT12に出力すると共にPWM信号を否定回路64Vを介してトランジスタT15に出力するV相比較器62Vと、生成したキャリア信号と変換したW相の相電圧指令Vw*と比較することによりPWM信号を生成し生成したPWM信号をトランジスタT13に出力すると共にPWM信号を否定回路64Wを介してトランジスタT16に出力するW相比較器62Wとを備える。
【0018】
次に、こうして構成された実施例の駆動装置20の動作、特に、PWM信号の生成に用いるキャリア周波数Fを設定する際の動作について説明する。図3は、電子制御ユニット30のキャリア周波数設定部58(CPU32)により実行されるキャリア周波数設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、モータMGの駆動が指令されているときに所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
【0019】
キャリア周波数設定ルーチンが実行されると、キャリア周波数設定部58は、モータMGの電気角θeやタイマ値t,スイッチング素子温度Tinvを入力し(ステップS100)、入力した電気角θeに基づいてモータMGの電気角周期Tを演算する(ステップS110)。ここで、電気角周期Tは、例えば、2π(360度)を今回入力した電気角θeと前回入力した電気角θeとの偏差で除したものに、このルーチンの実行時間間隔を乗じることにより演算することができる。タイマ値tは、時間の経過と共にカウントアップし、後述するように電気角周期Tの1/4周期を経過する度に値0にリセットされるものである。続いて、タイマ値tが演算した電気角周期Tの1/4周期(T/4周期)以上か否かを判定する(ステップS120)。タイマ値tがT/4周期以上と判定されると、入力したスイッチング素子温度Tinvが閾値Tref未満か否かを判定する(ステップS130)。ここで、閾値Trefは、トランジスタの適正温度範囲の上限よりも若干低い温度として予め定められたものである。スイッチング素子温度Tinvが閾値Tref未満のときには、キャリア周波数Fの可変範囲の全範囲を選択する(ステップS140)。一方、スイッチング素子温度Tinvが閾値Tref以上のときには、前回選択した周波数範囲を調べ(ステップS150)、前回選択した周波数範囲が低周波数範囲のときには高周波数範囲を選択し(ステップS160)、前回選択した周波数範囲が高周波数範囲か全範囲かのいずれかのときには低周波数範囲を選択する(ステップS170)。ここで、低周波数範囲は、キャリア周波数Fの可変範囲のうち中心の周波数である中心周波数Fcenよりも低い周波数範囲として定められたものであり、高周波数範囲は、中心周波数Fcenよりも高い周波数範囲として定められたものである。こうして周波数範囲を選択すると、選択した周波数範囲内の数値をランダムに抽出し(ステップS180)、抽出した数値をキャリア周波数Fに設定し(ステップS190)、タイマ値tをリセットして(ステップS200)、本ルーチンを終了する。ステップS120でタイマ値tがT/4周期未満と判定されると、キャリア周波数Fを変更することなくそのまま本ルーチンを終了する。図4に、キャリア周波数Fの設定の様子を示す。スイッチング素子温度Tinvが閾値Tref以上のときのキャリア周波数Fの設定は、図示するように、タイマ値t(電気角θe)が電気角周期Tの1/4周期進む度に、高周波数範囲内からランダムに抽出した高周波数の設定と低周波数範囲内からランダムに抽出した低周波数の設定とが交互に切り替えられるものとなる。
【0020】
図5に、キャリア周波数Fの変更周期をモータMGの電気角周期Tの1/2周期としたときのキャリア周波数Fの時間変化の様子を示し(比較例)、図6に、キャリア周波数Fの変更周期をモータMGの電気角周期Tの1/4周期としたときのキャリア周波数Fの時間変化の様子を示す(実施例)。なお、図5では、電気角周期Tの1/2周期毎に可変範囲の全域からランダムに抽出した周波数をキャリア周波数Fとして設定した。モータMGの電気角周期の1/2周期毎にキャリア周波数Fを変更するときには、キャリア周波数Fの変更周期とモータMGの電気信号(変調波)とが同期する。キャリア周波数Fは、可変範囲内でランダムに抽出された数値が設定されるため、図5に示すように、モータMGの電気信号(変調波)の山に対して高周波数ばかりが設定される場合もあり得る。この場合、図7に例示するキャリア周波数とトランジスタの発熱量との関係からわかるように、高周波数でスイッチングされるトランジスタに熱集中し、温度上昇が過大となる。実施例では、キャリア周波数Fの変更周期をモータMGの電気角周期の1/4周期としているから、モータMGの電気信号(変調波)の山(T/2周期)に対して高周波数の設定期間と低周波数の設定期間とが同期間割り当てられることになり、特定のトランジスタに対して熱集中は生じない。
【0021】
以上説明した実施例の駆動装置20によれば、インバータ22のPWM制御に用いるキャリアの周波数(キャリア周波数F)を、モータMGの電気角θeが電気角周期Tの1/4周期進む度に、高周波数範囲内からランダムに抽出した高周波数の設定と低周波数範囲内からランダムに抽出した低周波数の設定とに交互に切り替えるから、キャリア周波数Fの変更周期とモータMGの電気信号(変調波)とが同期することがなく、モータMGの電気信号(変調波)の山や谷(T/2周期)に対して高周波数の設定期間と低周波数の設定期間とを分散させることができる。したがって、特定のトランジスタに対して熱集中が生じるのを抑制することができ、インバータ22を温度をより適正範囲内とすることができる。もとより、キャリア周波数Fを可変範囲内で電気角周期Tの1/4周期毎に変更するから、ノイズレベルを低減させることができる。また、スイッチング素子温度Tinvが閾値Tref未満のときには、可変範囲の全範囲からランダムに抽出した数値をキャリア周波数Fとして設定するから、スイッチング素子温度Tinvが閾値Tref未満の通常駆動時には、周波数の拡散性をより良好なものとすることができる。
【0022】
実施例の駆動装置20では、スイッチング素子温度Tinvが閾値Tref未満のときには、可変範囲の全範囲からランダムに抽出した数値をキャリア周波数Fに設定するものとしたが、スイッチング素子温度Tinvに拘わらず、高周波数範囲から抽出した数値と低周波数範囲から抽出した数値とを切り替えてキャリア周波数Fに設定するものとしてもよい。この場合、図3のキャリア周波数設定ルーチンのステップS130,S140の処理を省略するものとすればよい。
【0023】
実施例の駆動装置20では、キャリア周波数Fとして、選択した周波数範囲内からランダムに抽出することにより離散的な数値を用いるものとしたが、選択した周波数範囲内で時間の経過と共に連続的に変化させた数値を用いるものとしてもよい。
【0024】
実施例の駆動装置20では、キャリア周波数Fの変更周期をモータMGの電気角周期Tの1/4周期としたが、キャリア周波数Fの変更周期とモータMGの電気信号(変調波)とが同期しなければよいから、必ずしもこれに限定されるものではなく、電気角周期Tの1/2周期と異なる周期であれば如何なる周期としても構わない。ただし、電気角周期Tの1/2周期未満とすれば、モータMGの変調波の山や谷(T/2周期)に対して高周波数の設定期間と低周波数の設定期間とを常に含ませることができ、さらに、電気角周期Tの1/(4n)周期(nは1以上の整数)とすれば、モータMGの変調波の山や谷(T/2周期)に対して高周波数の設定期間と低周波数の設定期間とを同期間割り当てることができるから、より好適なものとなる。
【0025】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、トランジスタT11〜T16が「スイッチング素子」に相当し、インバータ22が「インバータ」に相当し、回転位置検出センサ40と回転位置検出センサ40により検出されたモータMGの回転位置θmに基づいて演算された電気角θeを入力して電気角周期Tを演算するキャリア周波数設定ルーチンのステップS100,S110の処理を実行する電子制御ユニット30とが「電気角周期取得手段」に相当し、モータMGの電気角θeが電気角周期Tの1/4周期進む度に、高周波数範囲内からランダムに抽出した高周波数の設定と低周波数範囲内からランダムに抽出した低周波数の設定とに交互に切り替えるステップS120〜S200の処理を実行し、設定したキャリア周波数Fをもってキャリア信号を生成すると共に生成したキャリア信号と変調波とからPWM信号を生成してインバータ22のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御する電子制御ユニット30が「インバータ制御手段」に相当する。なお、実施例の要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、実施例の要素をもって課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明のついての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、自動車産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
20 駆動装置、22 インバータ、24 バッテリ、26 昇圧コンバータ、28 システムメインリレー、30 電子制御ユニット、32 CPU、34 ROM、36 RAM、40 回転位置検出センサ、42V,42W 電流センサ、44 温度センサ、46 電流センサ、48 電圧センサ、50 電流指令生成部、52 3相2相変換部、54 電圧指令生成部、56 2相3相変換部、58 キャリア周波数設定部、60 キャリア生成部、62U U相比較器、62V V相比較器、62W W相比較器、64U,64V,64W 否定回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機を駆動する電動機駆動装置であって、
複数のスイッチング素子のスイッチングにより直流を交流に変換して前記電動機に出力するインバータと、
前記電動機の電気角周期を取得する電気角周期取得手段と、
前記取得された電気角周期の1/2周期とは異なる周期を切替周期として該切替周期毎に、第1の周波数範囲内で拡散させた第1の周波数と該第1の周波数範囲よりも低い第2の周波数範囲内で拡散させた第2の周波数とを交互に切り替えて前記インバータのキャリア周波数を設定するキャリア周波数設定手段と、
前記設定されたキャリア周波数に基づいてキャリアを生成し、該生成したキャリアと変調波との比較によりパルス幅変調信号を生成して前記複数のスイッチング素子をスイッチング制御するインバータ制御手段と、
を備える電動機駆動装置。
【請求項2】
前記切替周期は、前記電気角周期の1/2周期未満の周期である請求項1記載の電動機駆動装置。
【請求項3】
前記切替周期は、前記電気角周期の1/(4n)周期(nは1以上の整数)である請求項2記載の電動機駆動装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の電動機駆動装置であって、
前記スイッチング素子の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記キャリア周波数設定手段は、前記検出された温度が所定温度未満のときには、前記第1の周波数範囲および前記第2の周波数範囲内で拡散させた周波数を前記インバータのキャリア周波数に設定し、前記検出された温度が前記所定温度以上のときには、前記第1の周波数範囲内で拡散させた第1の周波数と前記第2の周波数範囲内で拡散させた第2の周波数とを交互に切り替えて前記インバータのキャリア周波数として設定する手段である
電動機駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−130099(P2012−130099A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276980(P2010−276980)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】