説明

電子デバイス

【課題】電子部品を覆う封止材にクラックが入るのを防ぎ、基板と電子部品を接合させる接合材の流れ出しを防いだ電子デバイスを提供する。
【解決手段】表面実装型の電子部品の下面に外部端子16が設けられている。また前記電子部品が搭載される基板30上に接合電極32が設けられている。さらに基板には、開口部38および切り込み部40の少なくともいずれか一方が接合電極32に隣接して設けられている。そして電子デバイスは、外部端子16と接合電極32を導電性の接合材18で接合させて前記電子部品を基板30に搭載し、前記電子部品の周囲を封止材12で封止した構成である。この場合、開口部38や切り込み部40を前記電子部品の下側に設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子デバイスに係り、特に表面実装型の電子部品を基板上に搭載した電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスには、表面実装型の電子部品を基板上に搭載した構成のものがある。この電子デバイスの一例としては、圧電デバイスをあげることができる。この圧電デバイスは、表面実装型の圧電振動子(電子部品)および集積回路(IC)チップが基板に搭載され、これらが封止された構成である。
【0003】
具体的には、圧電振動子は、パッケージの内部に圧電振動片が設けられており、このパッケージの裏面に外部端子が設けられている。また基板には、圧電振動子を搭載させるための接合電極と、ICチップに導通するためのボンディング電極が設けられている。そして複数ある接合電極のうちの一部と、複数あるボンディング電極のうちの一部が導通している。また圧電振動子は、接合電極と外部端子とがハンダ等の金属性の接合材により接合されて、基板上に搭載されている。さらにICチップは基板上に搭載され、ICチップとボンディング電極がワイヤ等を介して導通している。そして圧電振動子やICチップ、ワイヤの周囲は、モールド樹脂等の封止材によって封止(モールド)されている。
【0004】
なお特許文献1には、水晶振動子およびICチップを基板上に搭載した構成の水晶発振器について開示されている。また特許文献2には、水晶振動子およびリアクタンス素子を基板上に搭載し、この水晶振動子等の周囲をモールド樹脂で封止した構成の水晶振動子モジュールが開示されている。
【特許文献1】特開2000−31324号公報
【特許文献2】特開平10−70415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した表面実装型の電子部品を基板上に搭載し、この電子部品の周囲を封止材で封止した場合、図6(A)に電子デバイス1の断面が示されるように、電子部品2と基板3の間に封止材4が入り込まないときがある。この場合、完成した電子デバイス1においては、電子部品2と基板3の間に空洞(ボイド)5が発生している。そして電子デバイス1を電子機器に搭載する場合、電子デバイス1は、電子機器の回路基板にハンダを用いて接合されている。しかし、この接合をリフローで行うときには、電子デバイス1の裏面に設けられた実装端子7と回路基板に塗られたハンダを熱で溶かす必要があり、このとき電子デバイス1には200℃を超す温度がかかり、前述した空洞5に溜まっている空気が膨張して大きな応力が発生する。しかし空洞5は、電子部品2と基板3の間に生じているので、応力によって封止材4が変形することができず、封止材4にクラックが入ってしまう問題がある。
【0006】
また電子デバイス1に搭載された電子部品2は、ハンダ(接合材6)を用いて基板3に取り付けられているので、リフロー時にこの接合材6が溶融して膨張する。しかし接合材6の近くには電子部品2や基板3が有り、また接合材6から電子デバイス1(封止材4)の表面までの距離が長いので、接合材6の周囲の封止材4が変形することができず、接合材6の膨張を電子デバイス1側が吸収することはできない。このため図6(B)に電子デバイス1の断面が示されるように、接合材6は、基板3と封止材4の間を毛管現象のように伝っていってしまう。このとき、接合材6が伝っていった方向の基板3上に配線パターンが引き回されていると、この配線パターンと電子部品2が導通し、電子部品2が正常に動作しなくなってしまう。
【0007】
また接合材6は、電子デバイス1の外側に露出するまで伝っていってしまう虞もある。この場合、電子部品2を動作させる電位が電子デバイス1の外側に出てしまうので、ここに容量等の電気的な影響が加わると、電子部品2が正常に動作しなくなってしまう。
【0008】
本発明は、電子部品を覆う封止材にクラックが入るのを防ぎ、基板と電子部品を接合させる接合材の流れ出しを防いだ電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電子デバイスは、表面実装型の電子部品の下面に外部端子を設け、電子部品が搭載される基板上に接合電極を設けて、外部端子と接合電極を導電性の接合材で接合し、この接合電極に隣接して、基板に開口部および切り込み部の少なくともいずれか一方を設け、電子部品の周囲を封止材で封止した、ことを特徴としている。
【0010】
リフロー時において、封止材に生じた空洞内の空気が膨張すると、この膨張に伴う圧力が封止材に加わる。このとき基板に開口部や切り込み部が設けられているので、圧力が開口部に伝わって開口部に露出した封止材が変形し、または圧力が切り込み部に伝わって切り込み部とこれに接する封止材が変形する。これにより基板に開口部や切り込み部を設けることで、空洞内の空気が膨張しても封止材が変形できるので、この膨張の圧力を緩和することができる。また基板(切り込み部)に隣接して空洞が発生している場合では、空洞内の空気が膨張によって切り込み部が開き、空洞内の空気を外部に排出することができる。よって封止材にクラックが生じるのを防止できる。
【0011】
またリフロー時において接合材が溶融し体積が膨張すると、この膨張に伴う圧力が封止材に加わる。このとき基板に開口部や切り込み部が設けられているので、圧力が開口部に伝わって開口部に露出した封止材が変形し、または圧力が切り込み部に伝わって切り込み部とこれに接する封止材が変形する。これにより基板に開口部や切り込み部を設けることで、接合材の体積が膨張しても封止材が変形できるので、この体積膨張を許容することができ、接合材が基板と封止材の間を伝い出ることを防止できる。そして流れ出た接合材が配線パターンと導通することを防止でき、また電子デバイスの外部に露出することを防止できる。よって電子部品を正常に動作させることができる。
【0012】
そして前述した開口部および切り込み部は、電子部品の下側に設けられていることを特徴としている。これにより電子部品と基板の間に空洞が生じたとしても、開口部や切り込み部を設けることにより封止材が変形できるので、空洞内の空気膨張を緩和することができ、封止材にクラックが生じるのを防止できる。また封止材が変形できるので接合材の体積膨張も許容でき、接合材が基板と封止材の間を伝い出ることを防止できる。そして流れ出た接合材が基板上の配線パターンと導通することを防止でき、また電子デバイスの外部に露出することを防止できるので、電子部品を正常に動作させることができる。
【0013】
また前述した開口部および切り込み部は、複数設けられていることを特徴としている。これにより封止材の複数箇所に空洞が生じたとしても、各空洞内の空気膨張に起因する圧力を各開口部や各切り込み部で緩和することができる。また各接合端子に隣接させて開口部や切り込み部を設けることができるので、接合材の体積が膨張しても封止材が変形して、接合材の体積膨張を許容することができる。
【0014】
また本発明に係る電子デバイスは、表面実装型の電子部品を基板上に設け、この電子部品の下側における基板に開口部を設け、電子部品の下側の周囲と基板との間に第1封止材を設け、電子部品の上側および側方を第2封止材で封止したことを特徴としている。この場合、接合材の周囲のいずれかの方向では、第1封止材が薄く設けられているまたは設けられていない構成にすることができる。
【0015】
これにより、電子部品の下側に第2封止材が入り込んで空洞が生じるのを防止することができる。したがって電子デバイスは、第1,2封止材にクラックが入るのを防止できる。またリフロー時において接合材が溶融し体積が膨張すると、接合材の周囲のいずれかの方向において第1封止材が薄く設けられている箇所があるので、この箇所の第1封止材が容易に変形して、接合材の体積膨張を許容することができる。また接合材の周囲に第1封止材が設けられていない箇所があれば、この箇所において接合材の体積膨張を許容することができる。したがって、接合材が基板と第1,2封止材との間を伝い出ることを防止できるので、流れ出た接合材が基板上の配線パターンと導通することを防止でき、また電子デバイスの外部に露出することを防止できる。すなわち電子部品を正常に動作させることができる。
【0016】
そして本発明に係る電子デバイスは、基板上にICチップが搭載され、このICチップは電子部品と導通したことを特徴としている。電子デバイスは、電子部品以外の部品(ICチップ)が基板上に搭載されていたとしても、電子部品と基板の間に生じた空洞の膨張または電子部品と基板を接合する接合材の膨張による悪影響を受けることがない。よって信頼性の高い電子デバイスを得ることができる。なお電子デバイスはICチップを内蔵することによって、機能を向上させることができる。
【0017】
そして前述した電子部品は、圧電振動子であることを特徴としている。これにより前述した特徴を有する信頼性の高い圧電デバイスを得ることができる。そしてICチップ内に圧電振動子を発振させる回路が搭載されていれば、圧電デバイスは圧電発振器を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係る電子デバイスの最良の実施形態について説明する。なお以下では、電子デバイスとして圧電デバイスを用いた形態について説明する。まず第1の実施形態について説明する。図1は第1の実施形態に係る圧電デバイスの説明図である。ここで図1(A)は圧電デバイスの断面図、同図(B)は平面図である。なお図1(A)では、ICチップに設けられるパッドと基板に設けられるボンディング電極の記載を省略している。また図1(B)では、封止材の記載を省略している。第1の実施形態に係る圧電デバイス10は、圧電振動子14(電子部品)および集積回路(IC)チップ20を基板30の上に搭載し、圧電振動子14およびICチップ20等の周囲を封止材12で封止した表面実装型である。具体的には、以下のようになっている。
【0019】
すなわち基板30は、セラミックまたは樹脂等によって形成されている。この基板30は、その上面に圧電振動子14を搭載するための接合電極32と、ICチップ20と導通するためのボンディング電極34がそれぞれ複数設けられており、接合電極32の一部とボンディング電極34の一部とが導通している。また基板30の下面に実装端子36が設けられている。そして接合電極32に接続していないボンディング電極34と実装端子36とが導通している。また基板30には、接合電極32に隣接して開口部38が設けられている。具体的には、開口部38は、基板30の外形を形成する側辺と接合電極32との間や、接合電極32の間等に設けられており、図1(A)に示される場合では接合電極32の間(圧電振動子14の下側)に設けられている。そして開口部38は、例えばエッチング加工や機械加工等をすることによって基板30に形成される。
【0020】
また圧電振動子14は、内部に圧電振動片(不図示)を有している。この圧電振動片は、電気信号を入力すると励振して周波数信号を出力するものであり、例えば特定の角度でカットされた圧電基板を用いた圧電振動片、音叉型圧電振動片、弾性表面波共振片であればよい。この圧電振動子14の裏面に外部端子16が設けられており、この外部端子16は前記圧電振動片と導通している。そして外部端子16と接合電極32がハンダ等の金属性の接合材18によって接合することにより、圧電振動子14が基板30上に搭載されている。
【0021】
またICチップ20は、少なくとも圧電振動子14(前記圧電振動片)を発振させる回路を有している。このICチップ20には、圧電振動子14(前記圧電振動片)から出力される周波数信号の周波数を可変させるための電圧制御回路や、前記圧電振動片の周囲温度にかかわらず一定周波数の信号を出力するための温度補償回路、位相同期回路を有し、プログラムすることにより任意の出力周波数を設定できる回路、圧電振動子14から出力された周波数信号から年月日等のデジタルデータを作り出力する回路、ジャイロセンサ用の駆動制御回路等を設けることもできる。そしてICチップ20の上面には、ワイヤ24が接合されるパッド22が複数設けられている。このようなICチップ20は、ボンディング電極34に隣接して、基板30に搭載されている。そしてパッド22とボンディング電極34にワイヤ24が接合されて、これらが導通している。
【0022】
また基板30の上に設けられた圧電振動子14やICチップ20、ワイヤ24の周囲は封止材12で封止(モールド)されている。この封止材12は、圧電振動子14等を封止できるものであればよく、例えばモールド樹脂等を用いればよい。
【0023】
次に、基板30に設けられる開口部38について説明する。図2は開口部の説明図である。なお図2の各図では、基板30、開口部38および接合電極32のみを示しており、接合電極32の間に開口部38が設けられた構成を示している。基板30に設けられる開口部38の平面形状は任意の形状であればよく、例えば図2(A)に示されるような円形、図2(B)に示されるような楕円形、図2(C)に示されるような長円形であればよい。また開口部38は、基板30に1つだけ設けられるばかりでなく、例えば図2(D)に示されるように2つ設けられてもよく、図2(E)に示されるように多数設けられてもよい。この場合、開口部38は、図2(E)に示されるように整列して設けられてもよく、整列させることなく任意の位置に設けられてもよい。なお接合電極32と基板30の側辺との間に開口部38を設ける場合でも、図2に例示されるような形状の開口部38を設けることができる。
【0024】
このような圧電デバイス10を電子機器の回路基板(不図示)に実装する場合、圧電デバイス10は、前記回路基板に設けられたパターン上に実装される。このとき圧電デバイス10に設けられた実装端子36と前記パターンとがハンダによって接合される。この接合をリフローで行う場合は、実装端子36や前記パターンに塗られたハンダを溶融させるために熱をかける必要があるが、圧電デバイス10における基板30と圧電振動子14の間に設けられている接合材18にもこの熱が加わるので、この接合材18が溶融して体積が膨張する。この接合材18の体積が膨張すると、この膨張の圧力が封止材12に加わるが、基板30に開口部38が設けられているので、この開口部38にも圧力が加わる。そして開口部38に露出している封止材12の表面が外側に変形するので、接合材18の膨張圧力を受けた圧電デバイス10の内部の封止材12も変形し、接合材18の膨張圧力が緩和される。
【0025】
これにより圧電デバイス10は、基板30に開口部38を設けたことにより、接合材18が膨張しても封止材12が変形することができるので、接合材18が溶融することによる体積の膨張を許容することができる。そして接合材18が基板30と封止材12の間を流れ出ることを防止できるので、基板30と封止材12の間を伝って接合材18が流れ出ることを防止でき、圧電振動子14の誤動作を防止できる。
【0026】
また圧電振動子14やICチップ20、ワイヤ24を封止材12で封止するときに、基板30と圧電振動子14の間に封止材12が入り込まず、空洞が発生した場合において、リフローによって空洞内の空気が膨張しても、前述した接合材18の場合と同様に、空気の膨張を許容することができる。すなわち空洞内の空気が膨張すると、この膨張によって生じた圧力が封止材12に加わるが、基板30に開口部38が設けられているので、この開口部38にも圧力が加わる。そして開口部38に露出している封止材12の表面が外側に変形するので、空洞内の空気の膨張圧力を受けた圧電デバイス10の内部の封止材12も変形し、空洞内の空気の膨張圧力が緩和される。
【0027】
これにより圧電デバイス10は、基板30に開口部38を設けたことにより、空洞内の空気が膨張しても封止材12が変形できるので、空洞内の空気膨張を許容することができる。そして圧電デバイス10は、空洞内の空気が膨張して封止材12にクラックが生じるのを防止できる。
【0028】
以上のことから、高信頼性の圧電デバイス10を得ることができる。
なお圧電デバイス10としては、圧電発振器や電圧制御型圧電発振器、温度補償型圧電発振器、プログラマブル圧電発振器、リアルタイムクロックモジュール、ジャイロセンサ等を構成することができる。
【0029】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態の変形例について説明するので、第1の実施形態と同様の構成部分に同番号を付し、その説明を省略または簡略する。図3は第2の実施形態に係る圧電デバイスの断面図である。なお図3では、ICチップに設けられるパッドと基板に設けられるボンディング電極の記載を省略している。第2の実施形態に係る圧電デバイス10は、圧電振動子14およびICチップ20を基板30の上に搭載し、圧電振動子14、ICチップ20およびワイヤ24の周囲を封止材12で封止した表面実装型である。
【0030】
前記基板30は樹脂等によって形成されており、ある圧力を加えると変形するものである。そして、この基板30には、接合電極32に隣接して切り込み部40が設けられている。具体的には、切り込み部40は、基板30の外形を形成する側辺と接合電極32との間や、接合電極32の間等に設けられており、図3に示される場合では接合電極32の間(圧電振動子14の下側)に設けられている。そして切り込み部40は、圧電振動子14やICチップ20、ワイヤ24の周囲を封止材12で封止するときの圧力(モールド圧力)に耐えられるもの、すなわち封止時に切り込み部40が開き、封止材12が外部に出てしまわないものである。この切り込み部40は、例えば刃物を用いて基板30に切り込みを入れることにより形成される。
【0031】
図4は切り込み部の説明図である。なお図4の各図では、基板30、切り込み部40および接合電極32のみを示しており、接合電極32の間に切り込み部40が設けられた構成を示している。基板30に設けられる切り込み部40は任意の形状であればよく、例えば図4(A)に示されるような縦方向の直線、図4(B)に示されるような横方向の直線であればよい。また切り込み部40は、基板30に複数の切り込みを設けることにより形成されてもよく、例えば図4(C)に示されるような十字形、図4(D)に示されるような2本の直線、図4(E)に示されるような接合電極32の外形に沿って形成されたL字形状であってもよい。さらに切り込み部40の切り込みは、図4(F)に示されるように、基板30の外形を形成する辺のうちいずれか1つに到達していてもよい。
【0032】
このような圧電デバイス10を電子機器の回路基板(不図示)に実装する場合、圧電デバイス10はハンダによって前記回路基板に実装される。この実装のためにハンダに熱を加えた場合、圧電デバイス10の内部にある圧電振動子14と基板30を接合している接合材18にも熱が加わる。そして、この接合材18が溶融して体積が膨張すると、この膨張による圧力が封止材12に加わり、基板30に設けられた切り込み部40にも加わる。そして、この圧力によって切り込み部40が圧電デバイス10の外側に向かって開くような形で変形し、この切り込み部40に隣接している封止材12も外側に向かって変形する。また接合材18の膨張圧力を受けた圧電デバイス10の内部の封止材12も変形するので、接合材18の膨張圧力が緩和される。
【0033】
これにより圧電デバイス10は、切り込み部40を設けたことにより、接合材18が膨張しても封止材12が変形することができるので、接合材18が溶融することによる体積の膨張を許容することができる。そして接合材18が基板30と封止材12の間を流れ出ることを防止できるので、基板30と封止材12の間を伝って接合材18が流れ出ることを防止でき、圧電振動子14の誤動作を防止できる。
【0034】
また圧電振動子14と基板30の間に封止材12が入り込まず空洞が発生している場合、前述したリフローを行って空洞内の空気が膨張すると、この空気膨張による圧力が封止材12に加わり、切り込み部40にも加わる。切り込み部40は、この圧力によって圧電デバイス10の外側に向かって開くような形で変形し、この切り込み部40に隣接している封止材12も外側に向かって変形する。また空洞内の空気の膨張圧力を受けた圧電デバイス10の内部の封止材12も変形するので、空洞内の空気の膨張圧力が緩和される。
【0035】
これにより圧電デバイス10は、基板30に切り込み部40を設けたことにより、空洞内の空気が膨張しても封止材12が変形できるので、空洞内の空気膨張を許容することができる。そして圧電デバイス10は、空洞内の空気が膨張して封止材12にクラックが生じるのを防止できる。
【0036】
さらに圧電振動子14等を封止材12で封止するとき、圧電振動子14と基板30の間に生じる空洞が基板30に隣接して生じることがある。すなわち基板30の上面に空洞が生じている場合である。この場合、リフローのために圧電デバイス10に熱が加わると空洞内の空気が膨張するが、この膨張圧力は基板30の切り込み部40に直接加わることになる。この圧力を受けた切り込み部40は、圧電デバイス10の外側に向かって開くような形で変形するので、この空洞内の空気の膨張圧力が緩和される。また圧力がより高くなると、切り込み部40が圧電デバイス10の外側に向かって開くような形で変形しつつ開口するので、空洞内の空気が圧電デバイスの外部に排出され、空洞内の空気の膨張圧力が緩和される。そして空洞内の空気の排出が終了すると、切り込み部40が閉じてもとの状態に戻る。
【0037】
これにより圧電デバイス10は、基板30に切り込み部40を設けたことにより、空洞内の空気が膨張しても封止材12が変形でき、または空洞内の空気を外部に排出できるので、空洞内の空気膨張を許容することができる。そして圧電デバイス10は、空洞内の空気が膨張して封止材12にクラックが生じるのを防止できる。
【0038】
以上のことから、高信頼性の圧電デバイス10を得ることができる。
なお圧電デバイス10に用いられる基板30には、第1の実施形態で説明した開口部38と第2の実施形態で説明した切り込み部40の両方を設けることもできる。
【0039】
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、第1,2の実施形態の変形例について説明するので、第1,2の実施形態と同様の構成部分に同番号を付し、その説明を省略または簡略する。図5は第3の実施形態に係る圧電デバイスの説明図である。ここで図5(A)は圧電デバイスの断面図、同図(B)は平面図である。なお図5(A)では、ICチップに設けられるパッドと基板に設けられるボンディング電極の記載を省略している。また図5(B)では、第2封止材の記載を省略している。
【0040】
第3の実施形態に係る圧電デバイス10は、圧電振動子14およびICチップ20を基板30の上に搭載し、圧電振動子14、ICチップ20およびワイヤ24の周囲を封止材で封止した表面実装型である。具体的には、前記基板30は、第1の実施形態で説明した基板と同様の構成であり、接合電極32の間に開口部38が設けられている。そして圧電振動子14が基板30に搭載された場合、圧電振動子14の下方に開口部38が位置している。なお、このとき圧電振動子14に設けられた外部端子16と基板30に設けられた接合電極32が接合材18によって接合されている。
【0041】
この圧電振動子14の下側の周囲と基板30の間に第1封止材44が設けられている。すなわち、圧電振動子14の側面下側および裏面と基板30との間に第1封止材44が設けられて、圧電振動子14の下側の周囲が第1封止材44によって覆われている。このとき第1封止材44は、圧電振動子14の外側に設けられるのが好ましい。そして、この場合には、接合材18の周囲のいずれかの方向において第1封止材44が設けられていない箇所が生じる。
【0042】
また圧電振動子14の外側に第1封止材44を設けた場合でも、第1封止材44が圧電振動子14や接合材18等の表面を伝って内側に流れ、圧電振動子14の内側に薄く設けられることもある。すなわち接合材18においては、圧電振動子14の外側となる位置に第1封止材44が厚く設けられたとしても、第1封止材44が接合材18等の表面を伝うので、第1封止材44の周囲のいずれかの方向において第1封止材44が薄く設けられた箇所が生じる。
【0043】
そして圧電振動子14の下方の周囲を第1封止材44で覆うと、圧電振動子14の下側に圧電デバイス10の外部に通じる空間が形成される。なお第1封止材44は、圧電振動子14の下方の周囲を覆うことができるものであればよく、例えばアンダーフィル剤等を用いることができる。
【0044】
また圧電振動子14やICチップ20、ワイヤ24の周囲に第2封止材46が設けられて、これらが封止されている。この第2封止材46は、圧電振動子14の下方が第1封止材44で囲まれているので、圧電振動子14の下方に入り込むことがない。この第2封止材46には、例えばモールド樹脂等を用いることができる。
【0045】
このような圧電デバイス10では、第1封止材44を設けることによって第2封止材46が圧電振動子14の下側に入り込むのを防止でき、また開口部38によって圧電振動子14の下方を常に圧電デバイス10の外部に開口させておくことができる。したがって、従来のように圧電振動子と基板の間に空洞が生じることを防止できるので、この空洞内の空気が膨張することがなく、本実施形態に係る圧電デバイス10の第1封止材44および第2封止材46にクラックが生じるのを無くすことができる。
【0046】
また圧電デバイス10では、接合材18の周囲におけるいずれかの方向に第1封止材44が設けられていない箇所があるので、接合材の体積が膨張してもこの箇所で接合材の体積膨張を許容することができる。また圧電デバイス10では、接合材18の周囲におけるいずれかの方向に第1封止材44が薄く設けられた箇所があるので、接合材18が膨張してもこの第1封止材44が薄く設けられた箇所が容易に変形し、接合材18の膨張を許容することができる。したがって基板30と封止材44,46の間を接合材18が伝い出ることを防止できるので、圧電振動子14が誤動作することを防止できる。
【0047】
以上のことから、高信頼性の圧電デバイス10を得ることができる。
なお第1〜3の実施形態では、ハンダ等の接合材18を用いて圧電振動子14を基板30に搭載した構成について説明しているが、フリップチップボンディングによって圧電振動子14を基板30に搭載した構成であってもよい。
【0048】
また第1〜3の実施形態では圧電デバイス10を例にして説明しているが、本発明はこの例に限定されることはない。すなわち表面実装型の電子デバイスを基板30に搭載し、この周囲を封止材12で封止する構成のものであれば、本実施形態を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施形態に係る圧電デバイスの説明図である。
【図2】開口部の説明図である。
【図3】第2の実施形態に係る圧電デバイスの断面図である。
【図4】切り込み部の説明図である。
【図5】第3の実施形態に係る圧電デバイスの説明図である。
【図6】従来技術に係る電子デバイスの説明図である。
【符号の説明】
【0050】
10………圧電デバイス、12………封止材、14………圧電振動子、16………外部端子、18………接合材、20………ICチップ、24………ワイヤ、30………基板、32………接合電極、38………開口部、40………切り込み部、44………第1封止材、46………第2封止材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面実装型の電子部品の下面に外部端子を設け、
前記電子部品が搭載される基板上に接合電極を設けて、前記外部端子と前記接合電極を導電性の接合材で接合し、
前記接合電極に隣接して、前記基板に開口部および切り込み部の少なくともいずれか一方を設け、
前記電子部品の周囲を封止材で封止した、
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
前記開口部および前記切り込み部は、前記電子部品の下側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記開口部および前記切り込み部は、複数設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
表面実装型の電子部品を基板上に設け、前記電子部品の下側における前記基板に開口部を設け、前記電子部品の下側の周囲と前記基板との間に第1封止材を設け、前記電子部品の上側および側方を第2封止材で封止したことを特徴とする電子デバイス。
【請求項5】
前記基板上にICチップが搭載され、このICチップは前記電子部品と導通したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記電子部品は、圧電振動子であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−214307(P2007−214307A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31950(P2006−31950)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】