説明

電子部品及びその製造方法

【課題】回路基板上に半導体素子が搭載された電子部品及びその製造方法に関し、回路基板と半導体素子との間の接点接続を維持しつつ回路基板から半導体素子へ加わる応力を効果的に緩和することができる電子部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一方の面側に接続電極32が形成された回路基板30と、回路基板30上に形成され、弾力性を有する突起状端子22を介して接続電極32に電気的に接続された半導体素子10と、回路基板30と半導体素子10との間に充填され、常温で固体であり加熱により液状又はゲル状に相変化する絶縁性の充填材24とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板上に半導体素子を搭載した電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の高密度実装化への要求が年々強くなっている現在、ベアチップ実装方式が注目されている。また、ベアチップ実装における接続方式は、ワイヤボンディング法によるフェイスアップ実装から、半導体素子の電極上に形成した突起状端子を回路基板に直接接続するフェイスダウン実装へと変化してきている。フェイスダウン実装は、ワイヤボンディングに比べて接続端子間の距離を短くできることから、多端子での接続を容易に実現できるとともに、大容量の信号を高速で伝達できるなど電気的な特性に優れた接続方式である。
【0003】
フェイスダウン実装では、半導体素子上に形成した突起状端子を用いて回路基板に接続した後、半導体素子と回路基板との間にアンダーフィル接着材を充填し、突起電極に加わる応力を分散させる方法が一般的に採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−311700号公報
【特許文献1】特開2008−205273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、半導体素子は、アンダーフィル接着剤を介して回路基板上に搭載されており、半導体素子と回路基板との間の熱膨張差は、歪み、反りなどを引き起こす原因となる。特に近年では、高機能化、高密度化、低コスト化の流れの中で、回路基板内の銅配線密度が高まっている。銅の熱膨張係数は17ppm/℃と高い故に、回路基板の熱膨張係数も、半導体素子の4ppm/℃に比べて拡大する傾向にある。
【0006】
このような状況は、接点接続の維持が困難になることのみならず、実稼働環境において多大なストレスを引き起こし、半導体素子の割れ、接合部の破壊などの劣化を招く虞があり、信頼性を十分に満足させることが困難であった。
【0007】
本発明の目的は、回路基板と半導体素子との間の接点接続を維持しつつ回路基板から半導体素子へ加わる応力を効果的に緩和することができる電子部品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一観点によれば、一方の面側に接続電極が形成された回路基板と、前記回路基板上に形成され、弾力性を有する突起状端子を介して前記接続電極に電気的に接続された半導体素子と、前記回路基板と前記半導体素子との間に充填され、常温で固体であり加熱により液状又はゲル状に相変化する絶縁性の充填材とを有する電子部品が提供される。
【0009】
また、実施形態の他の観点によれば、一方の面側に接続電極が形成された回路基板と、前記回路基板上に形成され、弾力性を有する突起状端子を介して前記接続電極に電気的に接続された半導体素子と、前記回路基板と前記半導体素子との間に充填され、液状又はゲル状である絶縁性の充填材とを有する電子部品が提供される。
【0010】
また、実施形態の更に他の観点によれば、弾力性を有する突起状端子が形成された半導体素子を、一方の面側に接続電極が形成された回路基板上に、前記突起状端子と前記接続電極とが接続されるように搭載する工程と、液状又はゲル状の絶縁性の充填材を、前記回路基板と前記半導体素子との間に充填する工程とを有する電子部品の製造方法が提供される。
【0011】
また、実施形態の更に他の観点によれば、一方の面側に接続電極が形成された回路基板上、又は弾力性を有する突起状端子が形成された半導体素子上に、液状又はゲル状の絶縁性の充填材を塗布する工程と、前記突起状端子と前記接続電極とが接続され、前記回路基板と前記半導体素子との間に前記充填材が充填されるように、前記回路基板上に前記半導体素子を搭載する工程とを有する電子部品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
開示の電子部品及びその製造方法によれば、半導体素子と回路基板との間に、半導体素子の発熱時や回路基板のはんだ接合時の温度において液状或いはゲル状となる充填材を充填するので、半導体素子と回路基板との間の熱膨張差に起因する応力を緩和することができる。また、半導体素子の発熱時や回路基板のはんだ接合時には、充填材による突起状端子の拘束が緩むため、カーボンナノチューブなどの突起状端子の弾力性を阻害することはない。これにより、半導体素子と回路基板との間の熱膨張差による歪みや反りが生じた場合にも、半導体素子と回路基板との間の接点接続を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1実施形態による電子部品の構造を示す概略断面図である。
【図2】図2は、第1実施形態による電子部品の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図3】図3は、第1実施形態による電子部品の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図4】図4は、第1実施形態による電子部品の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図5】図5は、第2実施形態による電子部品の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図6】図6は、第2実施形態による電子部品の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図7】図7は、第1実施形態の変形例による電子部品の構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
第1実施形態による電子部品及びその製造方法について図1乃至図4を用いて説明する。
【0015】
図1は、本実施形態による電子部品の構造を示す概略断面図である。図2乃至図4は、本実施形態による電子部品の製造方法を示す工程断面図である。
【0016】
はじめに、本実施形態による電子部品の構造について図1を用いて説明する。
【0017】
回路基板30の一方の面側には、所定の配線パターン(図示せず)と、半導体素子との間で電気的接続を行うための接続電極32が形成されている。回路基板30の他方の面側には、回路基板30を図示しない他の基板(例えば、プリント基板)に電気的に接続するためのはんだバンプ34が形成されている。
【0018】
回路基板30の一方の面上には、半導体素子10が搭載されている。半導体素子10は、半導体素子10の外周部に設けられた接着剤26により、回路基板30に接着されている。また、半導体素子10は、半導体素子10の表面に対して垂直な方向に配向したカーボンナノチューブの束によって形成された突起状端子22により、回路基板30の接続電極32に電気的に接続されている。回路基板30と半導体素子との間には、充填材24が充填されている。
【0019】
半導体素子10上には、枠体36によって回路基板30に固定されたヒートスプレッダ38が形成されており、半導体素子10が封止されている。
【0020】
こうして、回路基板30上に半導体素子10がフェイスダウン実装された本実施形態の電子部品が形成されている。
【0021】
本実施形態による電子部品では、充填材24を、少なくとも半導体素子10の発熱時や回路基板30のはんだ接合時の温度において液状或いはゲル状である絶縁材料により形成している。ゲル状とは、固体と液体とが混在する状態である。
【0022】
充填材24として、半導体素子10の発熱時や回路基板30のはんだ接合時の温度において液状或いはゲル状である材料を用いているのは、加熱された際に回路基板30と半導体素子10との間の物理的拘束を緩めて熱による応力を低減するためである。
【0023】
充填材24は、常温では固体であり、半導体素子10の発熱時や回路基板30のはんだ接合時の温度では液状或いはゲル状となる相変化絶縁材料であってもよい。常温で固体の充填材24を用いることにより、電子部品製造の際に良好なハンドリング性を維持することができる。
【0024】
相変化絶縁材料としては、例えば、半導体素子10の発熱時や回路基板30のはんだ接合時の温度では液状或いはゲル状となる熱可塑性樹脂を適用することができる。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、パラフィン系樹脂が挙げられる。パラフィン系樹脂とは、炭素原子の数が20以上のアルカン(一般式がC2n+2で表される鎖式飽和炭化水素)である。例えば、直鎖型の分子構造をもつノルマルアルカン(ノルマルパラフィン)、分岐(枝分かれ)をもつイソアルカン(イソパラフィン)、環状のシクロアルカン(シクロパラフィン)等を適用することができる。パラフィン系樹脂は、電気的に優れた絶縁体であり、電気抵抗はおよそ1017Ωと高く、信頼性も非常に高い。パラフィン系樹脂の融点は、約45℃〜70℃である。パラフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(融点:約110℃)、ポリプロピレン(融点:約130℃)、ポリオレフィン(融点:約100℃)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0025】
本明細書において常温とは、半導体素子10が発熱していないときの温度であり、特に限定されるものではないが、40℃程度未満の温度である。換言すると、半導体素子10の発熱時の温度とは、40℃程度以上の温度である。
【0026】
はんだ接合時の温度とは、はんだバンプ34を溶解するために必要な温度であり、適用するはんだ材料の融点以上の温度である。はんだ材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、Sn−3wt%Ag−0.5wt%Cu(融点:約217℃)、Sn−9Zn(融点:約199℃)、Sn−37Pb(融点:約183℃)、Sn−3.5Ag(融点:約221℃)等が挙げられる。
【0027】
充填層24には、常温でも液状やゲル状の絶縁材料を適用してもよい。常温でも液状やゲル状の絶縁材料としては、例えば、ポリアルファオレフィン油や、エステル系油などの油を適用することができる。
【0028】
なお、回路基板30と半導体素子10との間の物理的拘束を緩める手段としては、回路基板30と半導体素子10との間を空洞にすることも考えられる。しかしながら、回路基板30と半導体素子10との間を空洞にすると、吸湿などによって電極部が腐食するなどの信頼性低下を引き起こす虞がある。回路基板30と半導体素子10との間に充填材24を充填することにより、回路基板30と半導体素子10との間に水分などが入り込むことを防止することができ、電極部の腐食等を防止することができる。すなわち、充填材24は、電極部を封止する効果を有する。
【0029】
接着剤26は、充填材24が液状或いはゲル状に変化したときに、充填材24が流れ出すのを防止する封止構造体であるとともに、位置ずれすることなく半導体素子10を回路基板30上に固定するためのものである。
【0030】
接着剤26は、特に限定されるものではないが、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂を適用することができる。このとき、UV硬化機能を有する接着剤と組み合わせると更によい。エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、ナフタレン型エポキシなどを適用することができる。アクリル系樹脂としては、特に限定されるものではないが、アクリル酸と誘導体を主成分とする接着剤や、ジアクリレートと過酸化物からなる樹脂などを適用することができる。UV硬化樹脂とする場合には、アクリルモノマーと光重合開始剤を用いることで実現することができる。
【0031】
半導体素子10と回路基板30との間に上述のような充填材24を形成することにより、半導体素子10の発熱時や回路基板30のはんだ接合時の温度において、充填材24が液状或いはゲル状となり、カーボンナノチューブにより形成された突起状端子22は、充填材24による拘束から解放される。
【0032】
カーボンナノチューブは、弾力性を有する導電部材であり、充填材24による拘束が解かれることにより、弾力性を発現できるようになる。これにより、半導体素子10と回路基板30との間の熱膨張差による歪みや反りが生じた場合にも、これらの間に加わる応力を突起状端子22で緩和することができ、半導体素子10と回路基板30との間の接点接続を維持することができる。かかる観点から、液状或いはゲル状のときの充填材24は、カーボンナノチューブにより形成された突起状端子22の弾力性を阻害しない程度の粘性であることが望ましい。上述の充填材24は、このような条件を満たすものである。
【0033】
次に、本実施形態による電子部品の製造方法について図2乃至図4を用いて説明する。
【0034】
半導体素子10は、特に限定されるものではないが、例えば図2(a)に示すように、基板12と、その最上層に形成されたパッド電極14と、基板12及びパッド電極14の上に形成されたパッシベーション膜16とを有している。基板12には、多数のトランジスタその他の素子や多層配線層(図示せず)が形成されている。パッシベーション膜16には、パッド電極14を露出する開口部が形成されている。
【0035】
この半導体素子10のパッド電極14上に、例えばリフトオフ法により、例えば膜厚5nmのAl(アルミニウム)膜18と、例えば膜厚2nmのFe(鉄)膜20とを選択的に形成する(図2(b))。Al膜18及びFe膜20は、例えばスパッタ法により堆積することができる。
【0036】
次いで、Fe膜20を触媒として、Fe膜20上に、例えばCVD法により、カーボンナノチューブを成長し、カーボンナノチューブの束の突起状端子22を形成する(図2(c))。カーボンナノチューブの成長は、例えば、原料ガスとしてアセチレン、メタン等の炭化水素系ガス、エタノール、メタノール等のアルコール系原料を用い、例えば100Paの圧力において、300〜700℃、例えば600℃の成長温度で成長することができる。カーボンナノチューブの長さは、成長時間によって任意に制御することができ、ここでは、例えば100μmとする。
【0037】
或いは、半導体素子10のパッド電極14上にカーボンナノチューブの束を転写することにより、カーボンナノチューブの束の突起状端子22を形成するようにしてもよい。例えば、まず、半導体素子10のパッド電極14上に、予め、はんだ或いは導電性微粒子を含む接着剤を形成しておく。次いで、別の基板(例えばシリコン基板)上に成長したカーボンナノチューブを、半導体素子10のパッド電極14上に押し当て、前記はんだ或いは接着剤によってパッド電極14上に固定する。この後、基板を取り外すことにより、カーボンナノチューブの束をパッド電極14上に転写することができる。
【0038】
なお、上記の例では、カーボンナノチューブの成長に用いる触媒金属としてFe膜20を用いたが、他の材料を触媒として用いてもよい。例えば、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)等の遷移金属を含んだ触媒からなる膜を用いてもよい。また、これらの触媒は、薄膜状にしてもよいし、微粒子状にしてもよい。また、ゼオライト等の担持材料中に触媒を含ませてもよいし、触媒となる金属元素を含んだフェリチン等のタンパク質の自己組織的配列を活用してもよい。
【0039】
こうして、半導体素子10のパッド電極14上に、カーボンナノチューブの束の突起状端子22を形成する。
【0040】
一方、半導体素子10を搭載する回路基板30には、半導体素子10の突起状端子22を接続するための接続電極32が形成されている。また、半導体素子10を搭載する領域の周辺には、ヒートスプレッダを固定するための枠体36が設けられている。
【0041】
この回路基板30上に、突起状端子22を形成した半導体素子10を、半導体素子10の突起状端子22と回路基板30の接続電極32とが向き合うように位置合わせする(図3(a)〜図3(b))。
【0042】
次いで、例えば約30MPaの荷重で半導体素子10を回路基板30に押さえつけながら、半導体素子10と回路基板30との隙間に充填材24を充填する(図3(c))。充填材24として、少なくとも半導体素子10の発熱時や回路基板30のはんだ接合時の温度において液状或いはゲル状となる上述の相変化絶縁材料を適用する。
【0043】
充填材24として、例えばパラフィン系樹脂(C2042(融点:約45℃)、C2246(融点:約50℃)等)を用いる場合、充填材24及び回路基板30の温度を例えば80℃とした状態で、半導体素子10と回路基板30との隙間に充填する。加熱温度は、充填材24が液状又はゲル状となる温度とする。その後、温度を常温に戻し、充填材24を硬化させる。
【0044】
充填材24として、例えばポリアルファオレフィン油やエステル系油を用いる場合、ポリアルファオレフィン油或いはエステル系油及び回路基板30の温度を例えば80℃とした状態で、半導体素子10と回路基板30との隙間に充填する。なお、充填材24を充填する際は、必ずしも昇温する必要はないが、良好な充填性を得るためには昇温することが望ましい。
【0045】
次いで、半導体素子10の周囲に接着剤26を塗布し、硬化させることにより、半導体素子10を回路基板30上に固定する(図4(a))。充填材24として常温でも液体の絶縁材料を用いる場合には、半導体素子10に加重を加えた状態で接着剤を塗布し、硬化させる。なお、接着剤26は、必ずしも半導体素子10の側面だけに形成する必要はない。
【0046】
接着剤26として熱硬化性の接着剤を用いる場合には、加熱処理により、接着剤を硬化させる。熱硬化性の接着剤としては、例えば、サンスター技研株式会社製の「991D」が挙げられる。この接着剤26では、例えば、80℃10分間の加熱処理を行う。
【0047】
接着剤26として紫外線硬化性の接着剤を用いる場合には、例えば、紫外線照射により仮接着を行った後に加熱処理を行い、接着剤26を硬化させる。紫外線照射により仮接着を行うことにより、接着剤26を硬化させる熱処理の際に液状化或いはゲル状化した充填材24が流れ出る等の不具合を防止することができる。紫外線硬化性の接着剤としては、例えば、ナミックス株式会社製の「XV6841−209」が挙げられる。この接着剤26では、例えば、1800mj/cmの強度で紫外線を照射して仮接着した後、120℃1時間の加熱処理を行う。
【0048】
半導体素子10に加重を加えた状態で、充填材24を硬化し或いは回路基板30上に接着することにより、カーボンナノチューブにより形成された突起状端子22は、付勢力を与えられた状態で半導体素子10と回路基板30との間に固定される。
【0049】
次いで、例えば接着剤やネジ止めにより、枠体36にヒートスプレッダ38を接合する(図4(b))。この際、半導体素子10の背面がヒートスプレッダ38に密着するようにする。半導体素子10とヒートスプレッダ38との間には、接触熱抵抗を低減するために接着剤や金属シートなどのサーマルインターフェースマテリアル(図示せず)を形成してもよい。
【0050】
次いで、回路基板30の裏面側に、はんだバンプ34を形成する(図4(c))。
【0051】
はんだバンプ34を形成する際、或いははんだバンプ34を介して回路基板30を他の基板上に実装する際に、本実施形態による電子部品は、はんだの融解温度以上の温度に曝される。しかしながら、この熱によって充填材24は液状或いはゲル状となり、カーボンナノチューブにより形成された突起状端子22は、充填材24による拘束から解放される。
【0052】
これにより、半導体素子10と回路基板30との間の熱膨張差による歪みや反りが生じた場合にも、カーボンナノチューブに加えられた付勢力やカーボンナノチューブの弾力性によって、半導体素子10と回路基板30との間の接点接続を維持することができる。
【0053】
このように、本実施形態によれば、半導体素子と回路基板との間に、半導体素子の発熱時や回路基板のはんだ接合時の温度において液状或いはゲル状となる充填材を充填するので、半導体素子と回路基板との間の熱膨張差に起因する応力を緩和することができる。また、半導体素子の発熱時や回路基板のはんだ接合時には、充填材による突起状端子の拘束が緩むため、カーボンナノチューブなどの突起状端子の弾力性を阻害することはない。これにより、半導体素子と回路基板との間の熱膨張差による歪みや反りが生じた場合にも、半導体素子と回路基板との間の接点接続を維持することができる。
【0054】
[第2実施形態]
第2実施形態による電子部品の製造方法について図5及び図6を用いて説明する。なお、図1乃至図4に示す第1実施形態による電子部品及びその製造方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0055】
図5及び図6は、本実施形態による電子部品の製造方法を示す工程断面図である。
【0056】
本実施形態では、第1実施形態による電子部品の他の製造方法を説明する。
【0057】
まず、回路基板30の半導体素子10搭載領域に、充填材24を塗布する(図5(a))。充填材24は、第1実施形態と同様であり、少なくとも半導体素子10の発熱時や回路基板30のはんだ接合時の温度において液状或いはゲル状である絶縁材料である。
【0058】
充填材24として、例えばパラフィン樹脂(C2042(融点:約45℃)、C2246(融点:約50℃)等)を用いる場合、パラフィン樹脂及び回路基板30の温度を例えば80℃とした状態で、回路基板30上に塗布する。加熱温度は、充填材24が液状又はゲル状となる温度とする。
【0059】
充填材24として、例えばポリアルファオレフィン油を用いる場合、ポリアルファオレフィン油及び回路基板30の温度を例えば80℃とした状態で、回路基板30上に塗布する。なお、充填材24を充填する際は、必ずしも昇温する必要はないが、良好な充填性を得るためには昇温することが望ましい。
【0060】
次いで、充填材24が液状或いはゲル状になる温度において、回路基板30上に、突起状端子22を形成した半導体素子10を、半導体素子10の突起状端子22と回路基板30の接続電極32とが向き合うように位置合わせする。そして、例えば約30MPaの荷重で半導体素子10を回路基板30に押さえつける。これにより、突起状端子22と接続電極32が接続され、半導体素子10と回路基板30との隙間には充填材24が充填される(図5(b)〜図5(c))。充填材24として相変化絶縁材料を用いた場合には、温度を常温に戻し、充填材24を硬化させる。
【0061】
次いで、半導体素子10の周囲に接着剤26を塗布し、硬化させることにより、半導体素子10を回路基板30上に固定する(図6(a))。充填材24として常温でも液体の絶縁材料を用いる場合には、半導体素子10に加重を加えた状態で接着剤を塗布し、硬化させる。
【0062】
半導体素子10に加重を加えた状態で、充填材24を硬化し或いは回路基板30上に接着することにより、カーボンナノチューブにより形成された突起状端子22は、付勢力を与えられた状態で半導体素子10と回路基板30との間に固定される。
【0063】
次いで、例えば接着剤やネジ止めにより、枠体36にヒートスプレッダ38を接合する(図6(b))。
【0064】
次いで、回路基板30の裏面側に、はんだバンプ34を形成する(図6(c))。
【0065】
はんだバンプ34を形成する際、或いははんだバンプ34を介して回路基板30を他の基板上に実装する際に、本実施形態による電子部品は、はんだの融解温度以上の温度に曝される。しかしながら、この熱によって充填材24は液状或いはゲル状となり、カーボンナノチューブにより形成された突起状端子22は、充填材24による拘束から解放される。
【0066】
これにより、半導体素子10と回路基板30との間の熱膨張差による歪みや反りが生じた場合にも、カーボンナノチューブに加えられた付勢力やカーボンナノチューブの弾力性によって、半導体素子10と回路基板30との間の接点接続を維持することができる。
【0067】
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0068】
例えば、上記実施形態では、半導体素子10を回路基板30に接着剤26で固定したが、接着剤26は、必ずしも形成する必要はない。半導体素子10の裏面側にヒートスプレッダ38を配置する場合には、ヒートスプレッダ38によって半導体素子10を固定することができる。したがって、例えば、加熱の際に充填材24が流れ出す虞がないような場合には、必ずしも接着剤26を形成する必要はない。ヒートスプレッダ38の代わりに他の封止構造体を設けるようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、半導体素子10の裏面側にヒートスプレッダ38を設けたが、例えば半導体素子10からの発熱が少なく放熱の必要性がないような場合には、例えば図7に示すように、ヒートスプレッダ38は必ずしも設ける必要はない。
【0070】
また、上記第2実施形態では、充填材24を回路基板30の半導体素子10搭載領域に塗布した後、半導体素子10を回路基板30上に搭載したが、充填材24を半導体素子10上に塗布した後、半導体素子10を回路基板30上に搭載するようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、はんだバンプ34を有する回路基板30を示したが、回路基板30は、必ずしもはんだバンプ34を有する必要はない。
【0072】
また、上記実施形態では、突起状端子22をカーボンナノチューブにより形成したが、突起状端子22は、これに限定されるものではない。弾力性を有する導電性部材としては、例えば、カーボンナノチューブ以外の他の炭素元素の線状構造体が挙げられる。炭素元素の線状構造体としては、カーボンナノチューブのほか、カーボンナノワイヤ、カーボンロッド、カーボンファイバが挙げられる。これら線状構造体は、サイズが異なるほかは、カーボンナノチューブと同様である。
【符号の説明】
【0073】
10…半導体素子
12…基板
14,32…パッド電極
16…パッシベーション膜
18…Al膜
20…Fe膜
22…突起状端子
24…充填材
26…接着剤
30…回路基板
34…はんだバンプ
36…枠体
38…ヒートスプレッダ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面側に接続電極が形成された回路基板と、
前記回路基板上に形成され、弾力性を有する突起状端子を介して前記接続電極に電気的に接続された半導体素子と、
前記回路基板と前記半導体素子との間に充填され、常温で固体であり加熱により液状又はゲル状に相変化する絶縁性の充填材と
を有することを特徴とする電子部品。
【請求項2】
請求項1記載の電子部品において、
前記回路基板の他方の面側に形成されたはんだバンプを更に有し、
前記充填材は、少なくとも前記はんだバンプの形成材料の融点において液状又はゲル状である
ことを特徴とする電子部品。
【請求項3】
一方の面側に接続電極が形成された回路基板と、
前記回路基板上に形成され、弾力性を有する突起状端子を介して前記接続電極に電気的に接続された半導体素子と、
前記回路基板と前記半導体素子との間に充填され、液状又はゲル状である絶縁性の充填材と
を有することを特徴とする電子部品。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子部品において、
前記半導体素子の周囲に設けられ、前記半導体素子を前記回路基板に固定する接着部材を更に有する
ことを特徴とする電子部品。
【請求項5】
弾力性を有する突起状端子が形成された半導体素子を、一方の面側に接続電極が形成された回路基板上に、前記突起状端子と前記接続電極とが接続されるように搭載する工程と、
液状又はゲル状の絶縁性の充填材を、前記回路基板と前記半導体素子との間に充填する工程と
を有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項6】
一方の面側に接続電極が形成された回路基板上、又は弾力性を有する突起状端子が形成された半導体素子上に、液状又はゲル状の絶縁性の充填材を塗布する工程と、
前記突起状端子と前記接続電極とが接続され、前記回路基板と前記半導体素子との間に前記充填材が充填されるように、前記回路基板上に前記半導体素子を搭載する工程と
を有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の電子部品の製造方法において、
前記充填材は、常温で固体であり加熱により液状又はゲル状に相変化する絶縁性の充填材であり、
前記回路基板と前記半導体素子との間に前記充填材を充填した後、前記半導体素子に荷重を加えた状態で前記充填材を硬化する工程を更に有する
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法において、
前記回路基板と前記半導体素子との間に前記充填材を充填した後、前記半導体素子を前記回路基板に固定する工程を更に有する
ことを特徴とする電子部品に製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−206142(P2010−206142A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53230(P2009−53230)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「(ナノテクノロジープログラム・革新的部材産業創出プログラム)/「ナノテク・先端部材実用化研究開発」/「電子デバイスのためのCNTを用いたナノスプリング接点接続の研究開発」」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】