説明

電気自動車

【課題】 電気制御式の操舵機構の異常や、左右の駆動輪のモータ駆動系の異常に対し、操舵機構と左右個別のモータとによる旋回走行の相互補完機能を利用し、上記異常の発生時に、ドライバーの意図した方向に進めるように制御できる電気自動車を提供する。
【解決手段】 左右の駆動輪2,2を駆動する独立したモータ6,6と、転舵機構11に機械的に連結されていないステアリングホイール14により操舵する操舵機構12を備える電気自動車に適用する。異常時補完手段37として、操舵系の異常の検出によって、その異常による転舵不足を補うように、左右駆動輪2,2のトルク指令の配分を変更する異常対応トルク配分変更部39を設ける。また、車輪駆動系の異常検出によって、その異常による左右両駆動輪2,2の駆動バランスの変化量を補うように、操舵機構12の転舵用モータ13の回転量を変更する異常対応転舵量変更部38を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インホイールモータ車両等の車輪を個別に駆動するモータを備えたバッテリ駆動、燃料電池駆動等の電気自動車に関し、特にその旋回補助制御に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、旋回走行するとき、回転半径に応じて左右の駆動輪の回転数を変え、旋回の補助を行う。エンジン駆動車両では、左右の駆動輪の回転数の差はディファレンシャルで与えるが、インホイールモータ車両等の車輪を個別にモータ駆動する電気自動車では、左右の駆動輪のモータの駆動トルクを変えることで積極的に回転数を変化させる。
また、自動車の操舵機構として、ステアリングホイールと転舵軸とが機械的に連結されていず、ステアリングホイールの回転角度を検出して転舵用のモータを駆動する電気制御式の操舵機構を用いたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−74957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気制御式の操舵機構では、転舵用のモータやその駆動回路の過熱状態、あるいはその他の何らかの異常で、ハンドル角度に応じた車輪の角度変化が行えなくなる恐れがある。また、左右の車輪を別のモータで駆動する電気自動車では、左右いずかのモータが、過熱等の異常で出力制限が必要となった場合や、何らかの異常で駆動できなくなった場合に、車輪が直進方向を向いていても、左右の駆動トルクの差によって車両が旋回走行してしまったり、ハンドルが切られて車輪が直進方向に対して角度を持っていても、本来の軌道を描かないことが予想される。このように、各部の異常で、ドライバーの意図した方向に進めなくなることがある。この場合、車両を自力で道路の安全な場所へ移動させたり、修理工場へ移動させることができなくなる。
従来は、このような電気制御式の操舵機構の異常や、左右輪の個別の駆動系の異常に対して、効果的に対応できる適切な制御を行えるものがなかった。
【0005】
この発明の目的は、電気制御式の操舵機構の異常や、左右の駆動輪の個別のモータ駆動系の異常に対して、操舵機構と左右個別のモータとによる旋回走行の相互補完機能を利用し、上記異常の発生時に、できだけドライバーの意図した方向に進めるように制御できる電気自動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の電気自動車は、左右少なくとも一対の駆動輪2,2をそれぞれ駆動する互いに独立した走行用のモータ6,6と、転舵機構11に機械的に連結されていない操舵具14の操作量を検出し前記転舵機構11の転舵用モータ13により左右の操舵輪3,3を転舵させる操舵機構12と、アクセル操作手段16の駆動指令を、前記操舵具14の操作量に応じて、前記左右の駆動輪2,2のモータ6,6の制御手段22,22に分配して与えるトルク配分手段33とを備えた電気自動車において、
前記転舵用モータ13および操舵機構12を含む操舵系の異常の検出によって、その異常による転舵不足を補うように、前記トルク配分手段33による左右の駆動輪2,2のモータ6,6に対するトルク指令の配分を変更する機能と、前記走行用のモータ6,6およびこのモータ6,6の制御手段22,22を含む車輪駆動系の異常の検出によって、その異常による左右両駆動輪2,2の駆動バランスの変化量を補うように、前記転舵用モータ13による転舵量を変更する機能とのいずれか一方または両方を有する異常時補完手段37を設けたことを特徴とする。
【0007】
この構成によると、異常時補完手段37は、転舵用モータ13および操舵機構12を含む操舵系の異常の検出によって、その異常による転舵不足を補うように、前記トルク配分手段33による左右の駆動輪2,2のモータ6,6に対するトルク指令の配分を変更する機能を備える。または、前記走行用のモータ6,6およびこのモータ6,6の制御手段22,22を含む車輪駆動系の異常の検出によって、その異常による左右両駆動輪2,2の駆動バランスの変化量を補うように、前記転舵用モータ13による転舵量を変更する機能を備える。あるいは両機能を備える。このように、操舵機構12と左右個別のモータ6,6とによる旋回走行の相互補完機能を利用し、電気制御式の操舵機構12の異常、または左右の駆動輪2,2の個別のモータ駆動系の異常の発生時に、できだけドライバーの意図した方向に進めるように制御することができる。
なお、異常による転舵不足を補うように左右のトルク指令の配分をどの程度に変化させるかは、適宜設計すれば良い。また、車輪駆動系の異常の検出によって、左右両駆動輪2,2の駆動バランスの変化量を補うように、転舵用モータ13による転舵量を変更するにつき、どの程度の変更を行うかについても、適宜設計すれば良い。
【0008】
この発明において、前記操舵系の異常を検出する操舵系異常検出手段42を設け、前記異常時補完手段37として、前記操舵系異常検出手段42による異常の検出に応答して、その異常による転舵不足を補うように、前記トルク配分手段33による左右の駆動輪2,2のモータ6,6に対するトルク指令の配分を変更する異常対応トルク配分変更部39を設けても良い。
この構成の場合、操舵系に異常が発生しても、その異常による転舵不足を、左右の駆動輪2,2のトルク配分の変更により補完し、できだけドライバーの意図した方向に走行させることができる。
【0009】
この発明において、前記車輪駆動系の異常を検出する駆動系異常検出手段43を設け、前記異常時補完手段37として、前記車輪駆動系異常検出手段43による異常検出に応じて、その異常による左右両駆動輪2,2の駆動バランスの変化量を補うように、前記操舵機構12の転舵用モータ13の回転量を変更する異常対応転舵量変更部38を設けてもよい。
この構成の場合は、左右の駆動輪2,2のいずれかの車輪駆動系の異常が発生しても、その異常による左右両駆動輪2,2の駆動バランスの変化量を、操舵輪3,3の転舵角度によって補完し、できだけドライバーの意図した方向に走行させることができる。
【0010】
この発明において、前記転舵用モータ13またはこの転舵用モータ13の駆動回路44の温度を検出する温度検出手段45,46の検出温度が閾値を超えた場合に、前記操舵系の異常と判定する操舵系異常検出手段42を設けても良い。
電気制御式の操舵系の異常は、転舵用モータ13またはその駆動回路44の過熱による場合が多く、この過熱を監視して異常判断を行うことで、多くの場合の電気制御式の操舵系の異常が検出でき、温度測定による簡単な処理で、確実性の高い異常判定が行える。
【0011】
この発明において、直進方向に対する車体1の曲がり量を検出する手段、または操舵輪3,3の転舵角度を検出する手段の検出値である曲がり量検出値と、前記操舵具14の操作量とを比較し、前記曲がり量検出値と操作量とが、定められた範囲から外れたときに、前記操舵系の異常と判定する操舵系異常検出手段42を設けても良い。
車体の曲がり量、または操舵輪3,3の転舵角度を検出し、操舵具14の操作量と比較すれば、操舵系のより確実な異常検出が行える。直進方向に対する車体1の曲がり量の検出は、車両の姿勢制御等に用いられているヨーレートセンサ48や車両左右の加速度を検出するセンサ等の出力から検出できる。
【0012】
この発明において、前記走行用のモータ6,6またはこの走行用モータ6,6の駆動回路22,22の温度を検出する温度検出手段49,50の検出温度が閾値を超えた場合に、前記車輪駆動系の異常と判定する駆動系異常検出手段43を設けても良い。
車輪駆動系の異常は、前記走行用のモータ6,6またはこの走行用モータ6,6の駆動回路22,22の過熱による場合が多く、この過熱を監視して異常判断を行うことで、多くの場合の車輪駆動系の異常が検出でき、温度測定による簡単な処理で、確実性の高い異常判定が行える。
【0013】
この発明において、前記走行用のモータ6,6は、このモータ6と、前記駆動輪2を支持する車輪用軸受4と、前記モータ6の駆動を前記車輪用軸受4に伝える減速機7とでインホイールモータ駆動装置8を構成するものであっても良い。インホイールモータ駆動装置8の場合、各駆動輪2,2を個別に駆動することになる。減速機7を備える場合、モータ6の異常は拡大して駆動輪2,2に伝わるため、この発明による相互補完による異常対応の効果が、より効果的に得られる。
前記減速機7がサイクロイド減速機である場合は、円滑な減速動作が得られるが、減速比が高いため、モータ6の異常が拡大して駆動輪2に伝わる。そのため、この発明による相互補完による異常対応の効果が、より効果的に得られる。
【0014】
この発明において、左右一対の駆動輪ではなく、左右二対以上の駆動輪をそれぞれ独立した走行用モータで駆動する車両に適応してもよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明の電気自動車は、 左右少なくとも一対の駆動輪をそれぞれ駆動する互いに独立した走行用のモータと、転舵機構に機械的に連結されていない操舵具の操作量を検出し前記転舵機構の転舵用モータにより左右の操舵輪を転舵させる操舵機構と、アクセル操作手段の駆動指令を、前記操舵具の操作量に応じて、前記左右の駆動輪のモータの制御手段に分配して与えるトルク配分手段とを備えた電気自動車において、前記転舵用モータおよび操舵機構を含む操舵系の異常の検出によって、その異常による転舵不足を補うように、前記トルク配分手段による左右の駆動輪のモータに対するトルク指令の配分を変更する機能と、前記走行用のモータおよびこのモータの制御手段を含む車輪駆動系の異常の検出によって、その異常による左右両駆動輪の駆動バランスの変化量を補うように、前記転舵用モータによる転舵量を変更する機能とのいずれか一方または両方を有する異常時補完手段を設けたため、電気制御式の操舵機構の異常や、左右の駆動輪の個別のモータ駆動系の異常に対して、操舵機構と左右個別のモータとによる旋回走行の相互補完機能を利用し、上記異常の発生時に、できだけドライバーの意図した方向に進めるように制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施形態に係る電気自動車を平面図で示す概念構成のブロック図である。
【図2】同ブロック図につきECUの構成を詳細化して他の部分を簡略化したブロック図である。
【図3】同電気自動車のインホイールモータユニットの概念構成を示すブロック図である。
【図4】同電気自動車の正常時の動作説明図である。
【図5】同電気自動車の操舵系異常の場合の動作説明図である。
【図6】同電気自動車の駆動系異常の場合の動作説明図である。
【図7】同電気自動車におけるインホイールモータ駆動装置の破断正面図である。
【図8】図7のVIII−VIII 線断面図である。
【図9】図8の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の一実施形態を図1ないし図9と共に説明する。この電気自動車は、車体1の左右の後輪となる車輪が駆動輪2とされ、左右の前輪となる車輪が従動輪の操舵輪3とされた4輪の自動車である。駆動輪2および操舵輪3となる車輪は、いずれもタイヤを有し、それぞれ車輪用軸受4,5を介して車体1に支持されている。車輪用軸受4,5は、図1ではハブベアリングの略称「H/B」を付してある。左右の駆動輪2,2は、それぞれ独立の走行用のモータ6,6により駆動される。モータ6の回転は、減速機7および車輪用軸受4を介して駆動輪2に伝達される。これらモータ6、減速機7、および車輪用軸受4は、互いに一つの組立部品であるインホイールモータ駆動装置8を構成しており、インホイールモータ駆動装置8は、一部または全体が駆動輪2内に配置される。各インホイールモータ駆動装置8は、後述のインバータ装置22と共に、インホイールモータユニット30を構成する。各駆動輪2および操舵輪3には、電動式等の摩擦ブレーキである機械式のブレーキ9,10がそれぞれ設けられている。
【0018】
左右の前輪となる操舵輪3,3は、転舵機構11を介して転舵可能であり、操舵機構12により操舵される。転舵機構11は、タイロッド11aを左右移動させることで、車輪用軸受5を保持した左右のナックルアーム11bの角度を変える機構であり、転舵用モータ13により、回転・直線運動変換機構(図示せず)を介して左右移動させられる。ナックルアーム11bとタイロッド11aの間には、転舵角検出手段47が設けられている。操舵機構12は、タイロッド11aと機械的に連結されていないステアリングホイール14の操舵角を操舵角センサ15で検出し、その検出した操舵角である旋回指令により、操舵制御手段34を介して転舵用モータ13に駆動指令を与えられる電動パワーステアリングシステム(EPS)とされている。
【0019】
アクセル操作手段16は、アクセルペダルとその踏み込み量を検出して前記加速指令を出力するセンサ16aとでなる。ブレーキ操作手段17は、ブレーキペダルとその踏み込み量を検出して前記減速指令を出力するセンサ17aとでなる。
【0020】
制御系を説明する。自動車全般の制御を行う統合制御用の電気制御ユニットであるメインのECU21と、このECU21の指令に従って各走行用のモータ6の制御を行うインバータ装置22と、ブレーキコントローラ23とが、車体1に搭載されている。ECU21は、コンピュータとこれに実行されるプログラム、並びに各種の電子回路等で構成される。
【0021】
ECU21は、機能別に大別すると、駆動および操舵に関する制御を行う駆動制御部21aと、その他の制御を行う一般制御部21bとに分けられる。駆動制御部21aは、トルク配分手段48および前記操舵制御手段34を有している。
トルク配分手段48は、アクセル操作手段16の出力する加速指令と、ブレーキ操作手段17の出力する減速指令と、操舵角センサ15の出力する旋回指令とから、左右輪の走行用モータ6,6に与える加速・減速指令をトルク指令値として生成し、各インバータ装置22へ配分して出力する。トルク配分手段48は、ブレーキ操作部手段17の出力する減速指令があったときに、モータ6を回生ブレーキとして機能させる制動トルク指令値と、機械式のブレーキ9,10を動作させる制動トルク指令値とに配分する機能を持つ。回生ブレーキとして機能させる制動トルク指令値は、前記左右輪の走行用モータ6,6に与える加速・減速指令をトルク指令値に反映させる。機械式のブレーキ9,10を動作させる制動トルク指令値は、ブレーキコントローラ23へ出力する。
【0022】
ECU21の一般制御部21bは、各種の補機システム25を制御する機能、コンソールの操作パネル26からの入力指令を処理する機能、表示装置27に表示を行う機能などを有する。前記補機システム25は、例えば、エアコン、ライト、ワイパー、GPS、アエバッグ等であり、ここでは代表して一つのブロックとして示す。
【0023】
ブレーキコントローラ23は、ECU21から出力される制動指令に従って、各駆動輪2,操舵輪3の機械式のブレーキ9,10に制動指令を与える手段であり、制動専用のECUとなる電子回路やマイコン等により構成される。
【0024】
インバータ装置22は、各モータ6に対して設けられたパワー回路部28と、このパワー回路部28を制御するモータコントール部29とで構成される。モータコントール部29は、このモータコントール部29が持つインホイールモータ駆動装置8に関する各検出値や制御値等の各情報(「IWMシステム情報」と称す)をECU21に出力する機能を有する。前記インバータ装置22と、その制御対象のモータ6を含むインホイールモータ駆動装置8とで、インホイールモータユニット30が構成される。
【0025】
図3は、インホイールモータユニット30の概念構成を示すブロック図である。インバータ装置22のパワー回路部28は、バッテリ19の直流電力をモータ6の駆動に用いる3相の交流電力に変換するインバータ31と、このインバータ31を制御するPWMドライバ32とで構成される。モータ6は3相の同期モータ、例えばIPM型(埋込磁石型)同期モータ等からなる。インバータ31は、複数の半導体スイッチング素子(図示せず)で構成され、PWMドライバ32は、入力された電流指令をパルス幅変調し、前記各半導体スイッチング素子にオンオフ指令を与える。
【0026】
モータコントール部29は、コンピュータとこれに実行されるプログラム、および電子回路により構成される。モータコントール部29は、上位制御手段であるECU21から与えられるトルク指令等による加速・減速指令に従い、電流指令に変換して、パワー回路部28のPWMドライバ32に電流指令を与える。また、モータコントール部29は、インバータ31からモータ6に流すモータ電流値を電流センサ35から得て、電流フィードバック制御を行う。この電流制御では、モータ6のロータの回転角を角度センサ36から得て、ベクトル制御等の回転角に応じた制御を行う。
【0027】
この実施形態は、上記基本構成の電気自動車において、図2に示すように、ECU21に、次の異常時補完手段37と、異常報告手段18とを設けたものである。異常時補完手段37は、次の異常対応転舵量変更部38、異常対応トルク配分部39、操舵系異常検出手段42、および駆動系異常検出手段43により構成される。
【0028】
操舵系異常検出手段42は、転舵用モータ13および操舵機構12を含む操舵系の異常を検出する手段である。操舵系異常検出手段42は、例えば、転舵用モータ13またはこの転舵用モータ13の駆動回路44の温度を検出する温度検出手段45,46の検出温度が閾値を超えた場合に、前記操舵系の異常と判定する手段とされる。温度検出手段45,46は、それぞれ転舵用モータ13およびその駆動回路44に設けられたサーミスタ等からなる。前記閾値は設計により適宜定められる。
【0029】
操舵系異常検出手段42は、上記温度検出による構成の他に、直進方向に対する車体1の曲がり量を検出する手段、または操舵輪3,3の転舵角度を検出する転舵角検出手段47の検出値である曲がり量検出値と、前記ステアリングホイール14の操作量とを比較し、曲がり量検出値と操作量とが、定められた範囲から外れたときに、前記操舵系の異常と判定するものであっても良い。上記の「定められた範囲」は、設計により適宜定める。直進方向に対する車体1の曲がり量は、車両の姿勢制御等に用いられているヨーレートセンサ48や車両左右の加速度を検出するセンサ(図示せず)等の出力から検出できる。
【0030】
駆動系異常検出手段43は、走行用のモータ6およびこのモータ6の制御手段であるインバータ装置22を含む車輪駆動系の異常を検出する手段である。駆動系異常検出手段43は、走行用のモータ6またはこの走行用モータ6のインバータ装置22の温度を検出する温度検出手段49,50のいずれかの検出温度が閾値を超えた場合に、前記車輪駆動系の異常と判定する手段である。温度検出手段49,50は、サーミスタ等からなる。インバータ装置22の温度検出は、モータ電流の駆動回路であるインバータ31(図3)の温度を検出するものとされる。
【0031】
異常対応トルク配分部39は、操舵系異常検出手段42による異常の検出に応答して、その異常による転舵不足を補うように、前記トルク配分手段33による左右の駆動輪2,2のモータ6,6に対するトルク指令の配分を変更する手段である。上記の「異常による転舵不足を補うように」とは、「操舵系の駆動不能または駆動力低下の異常によって、ステアリングホイール14の実際の操作量に比べて操舵輪3,3の曲がり角度が少なくなる場合に、左右の駆動輪2,2のトルク差による車両走行の曲がりの補助が大きくなるように、」という意味であり、必ずしも転舵の不足量の全体を補わなくても良い。異常対応トルク配分部39によるトルク配分手段33のトルク配分の変更量は、適宜定めれば良いが、例えば一定量であっても良く、またステアリングホイール14の操舵角に比例する値であっても良い。
【0032】
異常対応転舵量変更部38は、駆動系異常検出手段43の異常検出に応じて、その異常による左右両駆動輪2,2の駆動バランスの変化量を補うように、操舵機構12の転舵用モータ13の回転量を変更する手段である。上記の「駆動バランスの変化量」は、駆動系の異常がなければ左右両駆動輪2,2に生じているはずの駆動トルクのバランスに対して、駆動系の異常のために生じている左右両駆動輪2,2の駆動バランスの差を言う。この駆動バランスの変化量を補うようにする転舵用モータ13の回転量を変更量は、適宜定めれば良いが、例えば一定量であっても良く、また左右のうちの異常の生じていない駆動輪2,2のトルクに対する一定割合の値であっても良い。
【0033】
異常報知手段18は、車輪駆動系の異常検出によって異常対応転舵量変更部38による転舵量の変更を行わせた場合、および操舵系の異常検出によって異常対応トルク配分変更部39によるトルク配分の変更を行わせた場合、運転席のコンソールの液晶画面等の表示装置27に、操舵系異常や車輪駆動系の異常の報知を行う手段である。
【0034】
図4〜6図と共に、上記構成の動作を説明する。なお、制御系の構成については図2を参照する。また、上記動作説明と共に、異常対応トルク配分部39および異常対応転舵量変更部38の、より具体的な機能を説明する。
【0035】
図4は正常時の動作を示す。同図(A)に走行方向を破線の矢印で示すように、旋回走行するときは、操舵輪3,3が直進方向(車体1の中心軸の方向)に対して転舵角θを持つように、ステアリングホイール14により操作される。このとき、旋回経路の外側の駆動輪2o のトルクAが、内側の駆動輪2i のトルクBよりも大きくなるように、トルク配分手段33はステアリングホイール14の操作量に応じて両側の駆動輪2o ,2i のモータ6,6へのトルク配分を行う。このように、左右の駆動輪2o ,2i のトルクに差を持たせることで、車両の旋回走行の補助を行う。同図(B)のように直進する場合は、両側の駆動輪2o ,2i のモータ6,6のトルクC,Dが等しくなるようにトルク配分する。
【0036】
図5は操舵系異常時を示す。操舵系の異常より、同図(A)のように操舵輪3,3の転舵角度θが、ドライバーによるステアリングホイール14の回転操作量に対して小さかったり、零となることがある。このときは、旋回経路の外側の駆動輪2o についてはトルクA′が、正常時のトルクAよりも大きくなり、旋回経路の内側の駆動輪2i についてはトルクB′が正常時のトルクBよりも小さくなるように、異常対応トルク配分変更部39によって、トルク配分手段33により出力する両側の駆動輪2o ,2i のモータ6,6へのトルク配分を変更する。異常対応トルク配分変更部39は、操舵系異常検出手段42による操舵系の異常検出に応答して、上記のトルク配分の制御を行う。このように、駆動輪2o ,2i のトルク差による車両の曲がりの補助を高めることで、操舵輪3,3の転舵角度θが小さくても、また零であっても、旋回経路をとることができ、ドライバーの意図した車両曲がり動作に近づけることができる。
このように異常対応トルク配分変更部39は、操舵系の異常による転舵不足を補うようにトルク配分を変更するが、その変更量は、一定量であっても良く、ステアリングホイール14の操舵角に比例する値であっても良い。また、操舵系の異常による転舵角度θの誤差量が検出できる場合は、その検出された誤差量に相当する値分だけ、トルク配分を変更しても良い。
【0037】
また、ステアリングホイール14が直進方向とされていても、操舵系の異常より、同図(B)のように操舵輪3,3に転舵角度θが生じることがある。この場合は、操舵輪3,3が転舵角度θを生じていてもなるだけ直進するように、両側の駆動輪2o ,2i のトルクC′,D′の配分を行う。例えば、同図のように操舵輪3,3が左側に曲がる転舵角度θを生じている場合は、左の駆動輪2o のトルクC′を正常時のトルクCよりも大きくし、右側の駆動輪2i のトルクD′を正常時のトルクCよりも小さくする。これにより、ドライバーの意図する直進に近づけることができる。このトルク配分の変更は、操舵系異常検出手段42による操舵系の異常検出に応答し、異常対応トルク配分変更部39により行う。 トルク配分の変更量は、一定量であっても良く、また操舵系の異常による転舵角度θの誤差量が検出できる場合は、その検出された誤差量に相当する値分だけ、トルク配分を変更しても良い。
【0038】
図6は、車輪駆動系の異常時を示す。車輪駆動系の異常、つまり左右の片方の駆動輪2のモータ6やそのインバータ装置22に異常が生じ、モータ6の駆動が不能となったり、モータ6にトルク指令値に応じたトルクの出力が出せなくなることがある。左右の片方の駆動輪3に、トルク指令値に応じたトルクの出力が出せなくなると、車両旋回時における左右の駆動輪2o ,2i による旋回補助が十分に行えなくなったり、直進しようとしも、曲がりが生じることがある。
例えば、図6(A)のように、右側へ旋回しようとするときに、左側の駆動輪2o のトルクA″が、旋回に適したトルクAよりも小さくなることがある。この場合は、操舵輪2,2の転舵角度θを、ステアリングホイール14の操作量に対応する転舵角度よりも大きくする。このように、異常による左右両駆動輪2,2の駆動バランスの変化量を補うように、転舵角度θを変えることで、ドライバーの操作したステアリングホイール14の操作量に対応した旋回走行が行える。
【0039】
また、図6(B)のように、たとえば、左側の駆動輪2o のモータ6のトルクが、トルク指令値よりも小さくなる異常が生じ、左右の駆動輪2,2のトルクC″,D″に差が生じている場合は、トルクC″,D″の小さい駆動輪2o ,2i (図示の例では駆動輪2o )と反対側へ旋回するように、転舵輪3に転舵角度θを生じさせる。このように転舵角度θを生じさせることで、左右の駆動輪2,2のトルクC″,D″に差が生じていても直進することができる。この転舵角度θを生じさせる制御は、駆動系異常検出手段43による異常検出に応答し、異常対応転舵量変更部38により操舵制御手段34を介して行う。
【0040】
このように、左右の駆動輪2,2のいずれかの車輪駆動系の異常が発生しても、その異常による左右両駆動輪2,2の駆動バランスの変化量を、操舵輪3,3の転舵角度によって補完し、できだけドライバーの意図した方向に走行させることができる。車輪駆動系の異常の発生により操舵輪3,3の転舵角度をどの程度に変えるかは、例えば変更量を一定量としても、また異常の発生によるトルク変化量が分かる場合はその変化量分としても良く、さらに正常側の駆動輪2のトルクに比例した量としても良い。
【0041】
なお、上記のような車輪駆動系の異常検出により異常対応転舵量変更部38による転舵量の変更を行わせた場合、および操舵系の異常検出により、異常対応トルク配分変更部39によってトルク配分の変更を行わせた場合、ECU21に設けられた異常報知手段18によって、運転席のコンソールの液晶画面等の表示装置27に、操舵系や駆動系の異常報知の表示を行う。操舵系や車輪駆動系に異常が生じていても上記のように車両の操舵や走行が可能であるが、本来の正常な操舵・走行ではない。しかし、ドライバーが、異常報知手段18による表示を見ることで、異常発生時に、車両を交通の障害とならない安全な場所まで移動させたり、修理工場まで低速で走行するなどの処置が行え、安全性の向上、交通障害の回避、修理場所への移動の容易が達成できる。
【0042】
操舵系および車輪駆動系の異常検出につき説明する。
操舵系異常検出手段42は、例えば、転舵用モータ13またはこの転舵用モータ13の駆動回路44の温度を検出する温度検出手段45,46の検出温度が閾値を超えた場合に操舵系の異常と判定する。
電気制御式の操舵系の異常は、転舵用モータ13またはその駆動回路44の過熱による場合が多く、この過熱を監視して異常判断を行うことで、多くの場合の電気制御式の操舵系の異常が検出でき、温度測定による簡単な処理で、確実性の高い異常判定が行える。
【0043】
また、操舵系異常検出手段42は、直進方向に対する車体1の曲がり量を検出する手段、または操舵輪3,3の転舵角検出手段47の検出値である曲がり量検出値と、前記ステアリングホイール14の操作量とを比較し、前記曲がり量検出値と操作量とが、定められた範囲から外れたときに、前記操舵系の異常と判定するものとしても良い。
車体の曲がり量、または操舵輪3,3の転舵角度を検出し、ステアリングホイール14の操作量と比較すれば、操舵系のより確実な異常検出が行える。直進方向に対する車体1の曲がり量の検出は、車両の姿勢制御等に用いられているヨーレートセンサ48や車両左右の加速度を検出するセンサ等の出力から検出できる。
【0044】
駆動系異常検出手段43は、例えば、走行用のモータ6またはこの走行用モータ6の駆動回路であるインバータ装置22の温度を検出する温度検出手段49,50の検出温度が閾値を超えた場合に、車輪駆動系の異常と判定するものとしても良い。
車輪駆動系の異常は、走行用のモータ6またはその駆動回路であるインバータ装置22の過熱による場合が多く、この過熱を監視して異常判断を行うことで、多くの場合の車輪駆動系の異常が検出でき、温度測定による簡単な処理で、確実性の高い異常判定を行うことができる。
【0045】
なお、この実施形態では、減速機7を備えるため、モータ6の異常は拡大して駆動輪2,2に伝わる。そのため、上記の操舵系の異常と車輪駆動系の異常に対する相互補完による異常対応の効果が、より効果的に得られる。前記減速機7がサイクロイド減速機である場合は、円滑な減速動作が得られるが、減速比が高いため、モータ6の異常が拡大して駆動輪2に伝わる。そのため、上記の相互補完による異常対応の効果が、より効果的に得られる。
【0046】
次に、図7〜図9と共に、前記インホイールモータ駆動装置8の具体例を示す。このインホイールモータ駆動装置8は、車輪用軸受4とモータ6との間に減速機7を介在させ、車輪用軸受4で支持される駆動輪2のハブとモータ6の回転出力軸74とを同軸心上で連結してある。減速機7は、サイクロイド減速機であって、モータ6の回転出力軸74に同軸に連結される回転入力軸82に偏心部82a,82bを形成し、偏心部82a,82bにそれぞれ軸受85を介して曲線板84a,84bを装着し、曲線板84a,84bの偏心運動を車輪用軸受4へ回転運動として伝達する構成である。なお、この明細書において、車両に取り付けた状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車両の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。
【0047】
車輪用軸受4は、内周に複列の転走面53を形成した外方部材51と、これら各転走面53に対向する転走面54を外周に形成した内方部材52と、これら外方部材51および内方部材52の転走面53,54間に介在した複列の転動体55とで構成される。内方部材52は、駆動輪を取り付けるハブを兼用する。この車輪用軸受4は、複列のアンギュラ玉軸受とされていて、転動体55はボールからなり、各列毎に保持器56で保持されている。上記転走面53,54は断面円弧状であり、各転走面53,54は接触角が背面合わせとなるように形成されている。外方部材51と内方部材52との間の軸受空間のアウトボード側端は、シール部材57でシールされている。
【0048】
外方部材51は静止側軌道輪となるものであって、減速機7のアウトボード側のハウジング83bに取り付けるフランジ51aを有し、全体が一体の部品とされている。フランジ51aには、周方向の複数箇所にボルト挿通孔64が設けられている。また、ハウジング83bには,ボルト挿通孔64に対応する位置に、内周にねじが切られたボルト螺着孔94が設けられている。ボルト挿通孔94に挿通した取付ボルト65をボルト螺着孔94に螺着させることにより、外方部材51がハウジング83bに取り付けられる。
【0049】
内方部材52は回転側軌道輪となるものであって、車輪取付用のハブフランジ59aを有するアウトボード側材59と、このアウトボード側材59の内周にアウトボード側が嵌合して加締めによってアウトボード側材59に一体化されたインボード側材60とでなる。これらアウトボード側材59およびインボード側材60に、前記各列の転走面54が形成されている。インボード側材60の中心には貫通孔61が設けられている。ハブフランジ59aには、周方向複数箇所にハブボルト66の圧入孔67が設けられている。アウトボード側材59のハブフランジ59aの根元部付近には、駆動輪および制動部品(図示せず)を案内する円筒状のパイロット部63がアウトボード側に突出している。このパイロット部63の内周には、前記貫通孔61のアウトボード側端を塞ぐキャップ68が取り付けられている。
【0050】
減速機7は、上記したようにサイクロイド減速機であり、図8のように外形がなだらかな波状のトロコイド曲線で形成された2枚の曲線板84a,84bが、それぞれ軸受85を介して回転入力軸82の各偏心部82a,82bに装着してある。これら各曲線板84a,84bの偏心運動を外周側で案内する複数の外ピン86を、それぞれハウジング83bに差し渡して設け、内方部材2のインボード側材60に取り付けた複数の内ピン88を、各曲線板84a,84bの内部に設けられた複数の円形の貫通孔89に挿入状態に係合させてある。回転入力軸82は、モータ6の回転出力軸74とスプライン結合されて一体に回転する。なお、回転入力軸82はインボード側のハウジング83aと内方部材52のインボード側材60の内径面とに2つの軸受90で両持ち支持されている。
【0051】
モータ6の回転出力軸74が回転すると、これと一体回転する回転入力軸82に取り付けられた各曲線板84a,84bが偏心運動を行う。この各曲線板84a,84bの偏心運動が、内ピン88と貫通孔89との係合によって、内方部材52に回転運動として伝達される。回転出力軸74の回転に対して内方部材52の回転は減速されたものとなる。例えば、1段のサイクロイド減速機で1/10以上の減速比を得ることができる。
【0052】
前記2枚の曲線板84a,84bは、互いに偏心運動が打ち消されるように180°位相をずらして回転入力軸82の各偏心部82a,82bに装着され、各偏心部82a,82bの両側には、各曲線板84a,84bの偏心運動による振動を打ち消すように、各偏心部82a,82bの偏心方向と逆方向へ偏心させたカウンターウエイト91が装着されている。
【0053】
図9に拡大して示すように、前記各外ピン86と内ピン88には軸受92,93が装着され、これらの軸受92,93の外輪92a,93aが、それぞれ各曲線板84a,84bの外周と各貫通孔89の内周とに転接するようになっている。したがって、外ピン86と各曲線板84a,84bの外周との接触抵抗、および内ピン88と各貫通孔89の内周との接触抵抗を低減し、各曲線板84a,84bの偏心運動をスムーズに内方部材52に回転運動として伝達することができる。
【0054】
図7において、モータ6は、円筒状のモータハウジング72に固定したモータステータ73と、回転出力軸74に取り付けたモータロータ75との間にラジアルギャップを設けたラジアルギャップ型のIPMモータである。回転出力軸74は、減速機7のインボード側のハウジング83aの筒部に2つの軸受76で片持ち支持されている。
【0055】
モータステータ73は、軟質磁性体からなるステータコア部77とコイル78とでなる。ステータコア部77は、その外周面がモータハウジング72の内周面に嵌合して、モータハウジング72に保持されている。モータロータ75は、モータステータ73と同心に回転出力軸74に外嵌するロータコア部79と、このロータコア部79に内蔵される複数の永久磁石80とでなる。
【0056】
モータ6には、モータステータ73とモータロータ75の間の相対回転角度を検出する角度センサ36が設けられる。角度センサ36は、モータステータ73とモータロータ75の間の相対回転角度を表す信号を検出して出力する角度センサ本体70と、この角度センサ本体70の出力する信号から角度を演算する角度演算回路71とを有する。角度センサ本体70は、回転出力軸74の外周面に設けられる被検出部70aと、モータハウジング72に設けられ前記被検出部70aに例えば径方向に対向して近接配置される検出部70bとでなる。被検出部70aと検出部70bは軸方向に対向して近接配置されるものであっても良い。ここでは、各角度センサ36として、磁気エンコーダまたはレゾルバが用いられる。モータ6の回転制御は上記モータコントール部29(図1,2)により行われる。このモータ6では、その効率を最大にするため、角度センサ42の検出するモータステータ73とモータロータ75の間の相対回転角度に基づき、モータステータ73のコイル78へ流す交流電流の各波の各相の印加タイミングを、モータコントール部29のモータ駆動制御部33によってコントロールするようにされている。
なお、インホイールモータ駆動装置8のモータ電流の配線や各種センサ系,指令系の配線は、モータハウジング72等に設けられたコネクタ99により纏めて行われる。
【0057】
なお、上記実施形態では、図1,2に示すように、モータコントロール部29をインバータ装置22に設けたが、モータコントール部29はメインのECU21に設けても良い。また、ECU21とインバータ装置22とは、この実施形態では分けて設けているが、一体化した制御装置として設けても良い。
【0058】
なお、上記実施形態においては、左右一対の駆動輪を後輪に設定した場合を説明しているが、駆動輪が前輪であってもよい。また、左右二対以上の駆動輪をそれぞれ独立した走行用モータで駆動する車両に適応してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…車体
2…駆動輪
3…操舵輪
6…モータ
7…減速機
8…インホイールモータ駆動装置
11…転舵機構
12…操舵機構
13…転舵用モータ
16…ステアリングホイール(操舵具)
22…インバータ装置(モータの制御手段)
33…トルク配分手段
37…異常時補完手段
38…異常対応転舵量変更部
39…異常対応トルク配分変更部
42…操舵系異常検出手段
43…駆動系異常検出手段
44…駆動回路
45,46…温度検出手段
48…ヨーレートセンサ
49,50…温度検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右少なくとも一対の駆動輪をそれぞれ駆動する互いに独立した走行用のモータと、転舵機構に機械的に連結されていない操舵具の操作量を検出し前記転舵機構の転舵用モータにより左右の操舵輪を転舵させる操舵機構と、アクセル操作手段の駆動指令を、前記操舵具の操作量に応じて、前記左右の駆動輪のモータの制御手段に分配して与えるトルク配分手段とを備えた電気自動車において、
前記転舵用モータおよび操舵機構を含む操舵系の異常の検出によって、その異常による転舵不足を補うように、前記トルク配分手段による左右の駆動輪のモータに対するトルク指令の配分を変更する機能と、前記走行用のモータおよびこのモータの制御手段を含む車輪駆動系の異常の検出によって、その異常による左右両駆動輪の駆動バランスの変化量を補うように、前記転舵用モータによる転舵量を変更する機能とのいずれか一方または両方を有する異常時補完手段を設けたことを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
請求項1において、前記操舵系の異常を検出する操舵系異常検出手段を設け、前記異常時補完手段として、前記操舵系異常検出手段による異常の検出に応答して、その異常による転舵不足を補うように、前記トルク配分手段による左右の駆動輪のモータに対するトルク指令の配分を変更する異常対応トルク配分変更部を設けた電気自動車。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記車輪駆動系の異常を検出する駆動系異常検出手段を設け、前記異常時補完手段として、前記車輪駆動系異常検出手段による異常検出に応じて、その異常による左右両駆動輪の駆動バランスの変化量を補うように、前記操舵機構の転舵用モータの回転量を変更する異常対応転舵量変更部を設けた電気自動車。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記転舵用モータまたはこの転舵用モータの駆動回路の温度を検出する温度検出手段の検出温度が閾値を超えた場合に、前記操舵系の異常と判定する操舵系異常検出手段を設けた電気自動車。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、直進方向に対する車体の曲がり量を検出する手段、または操舵輪の転舵角度を検出する手段の検出値である曲がり量検出値と、前記操舵具の操作量とを比較し、前記曲がり量検出値と操作量とが、定められた範囲から外れたときに、前記操舵系の異常と判定する操舵系異常検出手段を設けた電気自動車。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記走行用のモータまたはこの走行用モータの駆動回路の温度を検出する温度検出手段の検出温度が閾値を超えた場合に、前記車輪駆動系の異常と判定する駆動系異常検出手段を設けた電気自動車。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記走行用のモータは、このモータと、前記駆動輪を支持する車輪用軸受と、前記モータの駆動を前記車輪用軸受に伝える減速機とでインホイールモータ駆動装置を構成する電気自動車。
【請求項8】
請求項7において、前記減速機がサイクロイド減速機である電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−176643(P2012−176643A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39410(P2011−39410)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】