説明

電界効果半導体装置

【課題】ノーマリオフのHEMTを得ることが困難であった。
【解決手段】本発明に従うHEMTは、電子走行層4と、この上を覆う電子供給層5と、電子供給層5と、ソース電極6と、ドレイン電極7と、ゲート電極8と、第1及び第2の絶縁膜9,10と、圧電体層11とを有している。第1の絶縁膜9は電子走行層4と電子供給層5とのヘテロ接合面に沿って生じる2DEG層13を分断する働きを有する。圧電体層11はゲート電極8の電圧に応答して第1の絶縁膜9の応力を打ち消す働きを有する。これにより、ノーマリオフ特性を有し且つオン抵抗が小さいHEMTを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電子移動度トランジスタ即ちHEMT( High Electron Mobility Transistor)又はこれに類似の電界効果半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な従来のHEMTは、シリコン、サファイア等の基板の上にバッファ層を介して形成されたアンドープGaNから成る電子走行層と、n型不純物がドープされた又はアンドープのAlGaNから成る電子供給層又はバリア層と、電子供給層の上に形成されたソース電極とドレイン電極とゲート電極(ショットキー電極)とを有している。AlGaNから成る電子供給層のバンドギャプはGaNから成る電子走行層のバンドギャプよりも大きく、AlGaNから成る電子供給層の格子定数はGaNから成る電子走行層の格子定数よりも小さい。電子走行層の上にこれよりも格子定数が小さい電子供給層を配置すると、電子供給層に伸張性歪み即ち引っ張り応力が生じ、ピエゾ分極する。AlGaNから成る電子供給層は自発分極もするので、ピエゾ分極と自発分極とに基づく電界の作用で電子走行層のヘテロ接合面の近傍部分に周知の2次元電子ガス層即ち2DEG層が生じる。2DEG層は周知のようにドレイン電極とソース電極との間の電流通路(チャネル)として利用され、この電流通路を流れる電流はゲート電極に印加されるバイアス電圧で制御される。
【0003】
ところで、一般的な構成のHEMTは、ゲート電極に電圧を印加しない状態(ノーマリ状態)でソース電極とドレイン電極との間に電流が流れる特性即ちノーマリオン特性を有する。ノーマリオン特性のHEMTをオフ状態に保つためにはゲート電極を負電位にするための負電源が必要になり、電気回路が必然的に高価になる。従って、従来のノーマリオン特性のHEMTの使い勝手は良くない。
【0004】
そこで、AlGaNから成る電子供給層を薄く形成することによってノーマリオフ特性、即ちゲート電極に電圧を印加しない状態(ノーマリ状態)でソース電極とドレイン電極との間に電流が流れない特性を得ることが試みられている。AlGaNから成る電子供給層を薄く形成すると、電子供給層のピエゾ分極及び自発分極による電界が弱くなり、2DEG層の電子濃度が減少する。電子濃度が低下した2DEG層に対して電子供給層とここにショットキー接触しているゲート電極との間にビルトインポテンシャル(built−in potential)即ちバイアス電圧が無い状態での電位差に基づく電界が作用すると、ゲート電極の直下の2DEG層が消失する。このため、ゲート電極にバイアス電圧を加えない状態においてドレイン・ソース間がオフ状態になる。
【0005】
上述のように電子供給層を薄くすることによってノーマリオフのHEMTを提供することができる。しかし、電子供給層を薄くすると、ゲート電極の直下以外の2DEG層においても電子濃度の低下が生じ、ドレイン・ソース間のオン抵抗が増大する。この問題を解決するために例えば特開2005−183733号公報(特許文献1)に開示されているように電子供給層のゲート電極の下の部分に凹部(リセス)を形成し、電子供給層のゲート電極の下の部分のみを薄くしてノーマリオフ特性を得ることが知られている。しかし、この方法を採用して電子供給層を極端に薄くすると、選択的エッチングによって電子供給層を薄くする時に電子走行層及び電子供給層の半導体結晶にダメージが生じ、HEMTの電気的特性が劣化する。また、選択的エッチングした時のエッチング深さのばらつきがHEMTの閾値電圧のばらつきとなるため、高い歩留りで生産できないという問題がある。このため、現在、ノーマリオフのHEMTが実用化されていない。
【0006】
ノーマリオフ特性を有するHEMTを得るための別な方法として、電子供給層(バリア層)の格子定数を電子走行層の格子定数よりも大きくすることによってノーマリ状態でソース電極とドレイン電極との間をオフ状態に保つこと、及び電子供給層(バリア層)の上のソース電極とドレイン電極との間の全部にピエゾ効果を有する層(圧電体層)を配置し、この圧電体層の上にゲート電極を配置することが特開2006−156816号公報(特許文献2)に開示されている。しかし、この場合には、ゲート電極に電圧を印加することによって電子供給層(バリア層)と電子走行層とのヘテロ接合面の全部に2DEG層を発生させなければならない。このため電子供給層(バリア層)の表面のソース電極とドレイン電極との間の全部に圧電体層を配置し、ゲート電極をできるだけ広い面積に形成することが必要になる。この結果、ゲート電極とソース電極及びドレイン電極との間隔をさほど大きくすることができず、ゲート・ソース間耐圧、及びゲート・ドレイン間耐圧をさほど大きくすることができない。また、耐圧を考慮してゲート電極を小さく形成すると、ヘテロ接合面の全部に2DEG層を良好に形成することができず、オン抵抗が大きくなる。
【特許文献1】特開2005−183733号公報
【特許文献2】特開2006−100820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、ノーマリオフ特性を有し且つ小さいオン抵抗を有する電界効果半導体装置が要求されていることであり、本発明の目的は上記要求に応えることができる電界効果半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、
第1の半導体層と、前記第1の半導体層にヘテロ接合され且つ前記ヘテロ接合に基づいて2次元キャリアガス層を形成することができる材料から成る第2の半導体層とを備えている主半導体領域と、
前記主半導体領域の一方の主面上に配置されたソース電極と、
前記主半導体領域の一方の主面上に前記ソース電極から離間して配置されたドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の電流通路を制御するために前記主半導体領域の一方の主面上における前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に配置されたゲート電極と、
前記ゲート電極と前記主半導体領域の一方の主面との間に配置され且つ平面的に見て前記主半導体領域の一方の主面上における前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の一部のみに配置され且つ前記2次元キャリアガス層のキャリア濃度を低減させる方向の応力を発生する材料で形成された絶縁膜と、
前記ゲート電極と前記絶縁膜との間に配置され且つ前記ゲート電極に印加された電圧に応答して前記絶縁膜の前記応力を打ち消す方向の歪みを発生する材料、即ち電界を印加することで前記絶縁膜の前記応力を打ち消す方向の歪みを発生する材料から成る圧電体層と
を備えていることを特徴とする電界効果半導体装置に係わるものである。
【0009】
なお、請求項2に示すように、前記主半導体領域の一方の主面上における前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の前記絶縁膜が配置されていない部分の上に2次元キャリアガス層のキャリア濃度を高める方向の応力を発生する材料から成る別の絶縁膜が配置されていることが望ましい。
また、請求項3に示すように、前記圧電体層は前記別の絶縁膜の上に延在している延在部分を有し、前記ゲート電極は前記圧電体層の前記延在部分の上に延在している部分を有していることが望ましい。
また、請求項4に示すように、前記圧電体層は前記主半導体領域の一方の主面上における前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の前記絶縁膜が配置されていない部分の上に延在している延在部分を有し、前記ゲート電極は前記圧電体層の前記延在部分の上に延在している部分を有していることが望ましい。
また、請求項5に示すように、前記2次元キャリアガス層のキャリア濃度を低減させる方向の応力を発生する材料から成る絶縁膜はシリコン窒化物(例えばSiN)から成ることが望ましい。
また、請求項6に示すように、2次元キャリアガス層のキャリア濃度を高める方向の応力を発生する材料から成る別の絶縁膜はシリコン酸化膜から成ることが望ましい。
また、請求項7に示すように、前記圧電体層は、遷移金属又はLi(リチウム)が添加されたZnO(酸化亜鉛)、Pb(鉛)とZr(ジルコニウム)とTi(チタン)とを主成分とする酸化物、及びLa(ランタン)とTi(チタン)とを主成分とする酸化物から選択されたものであるであることが望ましい。
また、請求項8に示すように、前記主半導体領域は、更に、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層との間に配置されたスペーサー層を有することが望ましい。
また、請求項9に示すように、前記第2の半導体層は前記ゲート電極に対向する部分に凹部を有していることが望ましい。
また、請求項10に示すように、電界効果半導体装置を、
第1の半導体層と、前記第1の半導体層にヘテロ接合され且つ前記ヘテロ接合に基づいて2次元キャリアガス層を形成することができる材料から第2の半導体層とを備え、且つ第2の半導体層を第1の部分と第2の部分とに分割する溝を有している主半導体領域と、
前記第2の半導体層の第1の部分の上に配置されたソース電極と、
前記第2の半導体層の第2の部分の上に配置されたドレイン電極と、
前記溝の中及び平面的に見て前記第2の半導体層の前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の少なくとも一部の上に配置され且つ印加された電界に応答して前記2次元キャリアガス層におけるキャリア濃度を高めることができる方向の応力を生じる圧電特性を有し且つ絶縁性を有する材料で形成された圧電体層と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の電流通路を制御するために前記圧電体層の上に配置されたゲート電極とで構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本願の請求項1〜9の発明に従う電界効果半導体装置は次の効果を有する。
(1)2次元キャリアガス層のキャリア濃度を低減させる方向の応力を発生する材料から成る絶縁膜は、ゲート電極と主半導体領域の一方の主面との間に配置されている。この絶縁膜の応力は第2の半導体層の本来の応力(2次元キャリアガス層を発生させる方向の応力)を打ち消す方向性を有する。この結果、ゲート電極に電圧が印加されていない状態(ノーマリ状態)において、第1の半導体層と第2の半導体層とのヘテロ接合面の絶縁膜に対応する部分の近傍に2次元キャリアガス層が発生しなくなる。これにより、2次元キャリアガス層の分断が生じ、ノーマリ状態においてオフ状態になる。一方、ゲート電極に電圧が印加されると、圧電体層が絶縁膜の応力を打ち消す方向の歪(応力)を発生する。このため、絶縁膜による2次元キャリアガス層の分断が解除され、ソース電極とドレイン電極との間がオン状態になる。この結果、ノーマリオフ特性を有する電界効果半導体装置を提供することができる。更に、絶縁膜は平面的に見て主半導体領域の一方の主面上におけるソース電極とドレイン電極との間の一部のみに配置されている。従って、平面的に見て主半導体領域の一方の主面上におけるソース電極とドレイン電極との間の絶縁膜が配置されていない部分においては絶縁膜による2次元キャリアガス層のキャリア濃度の低減が発生しない。このため、ソース電極とドレイン電極との間のオン抵抗が比較的小さい電界効果半導体装置を提供することができる。要するに、本発明によればノーマリオフ特性を有するにも拘らずオン抵抗が比較的小さい電界効果半導体装置を提供することができる。
(2)ゲート電極と主半導体領域の一方の主面との間に絶縁膜が配置されているので、ゲートリーク電流を低減できる。
請求項10の発明に従う電界効果半導体装置においては、請求項1〜9の発明の電界効果半導体装置における絶縁膜が省かれ、圧電体層が第1の半導体層に接触し且つ第2の半導体層の上に延在している。請求項10の発明における圧電体層はゲート電極に印加された電圧に基づく電界に応答して歪み、2次元キャリアガス層のキャリア濃度を高めることができる方向の応力を第1の半導体層に与える。これにより、2次元キャリアガス層の抵抗即ちオン抵抗が低減する。なお、ゲート電極に電圧が印加されると、圧電体層がゲート絶縁膜として機能して周知の電界効果作用によって第1の半導体層の表面部分にチャネルが生じ、ソース電極とドレイン電極との間がオン状態になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、図面を参照して本発明の実施形態に係わる電界効果半導体装置を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1に示す本発明の実施例1に従う電界効果半導体装置は、単結晶シリコン半導体から成る基板1と、この基板1の一方の主面1aの上にバッファ層2を介して順次に配置された電子走行層(第1の半導体層)4と電子供給層(第2の半導体層)5とから成る主半導体領域3と、主半導体領域3の上に配置されたソース電極6、ドレイン電極7及びゲート電極8と、第1及び第2の絶縁膜9,10と、圧電体層11と、補助電極としての背面電極12とを備えている。この電界効果半導体装置は典型的なHEMTと異なるゲート構造を有するが、典型的なHEMTと同様な原理で動作するので、HEMT又はHEMT型半導体装置と呼ぶこともできる。以下、図1の各部を詳しく説明する。
【0013】
基板1は、一方の主面1aとこれに対向する他方の主面1bとを有し、且つバッファ層2及び主半導体領域3のための半導体材料をエピタキシャル成長させるための成長基板の機能と、これ等を機械的に支持するための支持基板の機能と、背面電極12を設けるための導電性基板の機能とを有する。本実施例では、コストの低減を図るために基板1がシリコンで形成されている。しかし、基板1をシリコン以外のシリコンカーバイト(SiC)、GaN等の半導体、又はサファイア、セラミック等の絶縁体で形成することもできる。
【0014】
基板1の一方の主面1a上のバッファ層2は、周知のMOCVD法等のエピタキシャル成長法で形成されている。図1では、図示を簡略化するためにバッファ層2が1つの層で示されているが、実際には複数の層で形成されている。即ち、このバッファ層2は、AlN(窒化アルミニウム)から成る第1のサブレイヤ−(第1の副層)とGaN(窒化ガリウム)から成る第2のサブレイヤー(第2の副層)とが交互に積層された多層構造バッファである。このバッファ層2はHEMTの動作に直接に関係していないので、これを省くこともできる。また、バッファ層2の半導体材料をAlN、GaN以外の3−5族化合物半導体に置き換えること、又は単層構造のバッファ層にすることもできる。
【0015】
主半導体領域3における第1の半導体層としての電子走行層4は、バッファ層2の上に周知のMOCVD法等のエピタキシャル成長法で形成されている。このの電子走行層4は、この上の電子供給層5とのヘテロ接合面の近傍に電流通路(チャネル)としての2DEG層13(点線で示す)を得るためのものであって、不純物が添加されていないアンドープGaN(窒化ガリウム)を例えば1〜5μmの厚さにエピタキシャル成長させたものである。なお、電子走行層4は、GaN以外の例えば
AlaGa1-aN,
ここで、aは0≦a<1を満足する数値、
等の窒化物半導体、又は別の化合物半導体で形成することもできる。
【0016】
電子走行層4の上に周知のMOCVD法等のエピタキシャル成長法で形成された電子供給層5は、Al0.3Ga0.7Nから成り、電子走行層4よりも薄い5〜50nmの厚みを有し、且つ2DEG層13を得るために電子走行層4よりも大きいバンドギャプを有し且つ電子走行層4よりも小さい格子定数を有する。なお、電子供給層5をAl0.3Ga0.7N以外の例えば次式で示す窒化物半導体で形成することもできる。
AlxGa1-XN,
ここで、xは0<x<1、及びa<xを満足する数値であり、好ましくは0.2〜0.4である。
なお、電子供給層5を、アンドープのAlxGa1-xNで形成する代りに、n型(第1導電型)の不純物を添加したAlxGa1-xNから成る窒化物半導体、又は別の組成の窒化物半導体、又は別の化合物半導体で形成することもできる。
【0017】
ソース電極6及びドレイン電極7は、主半導体領域3の一方の主面14即ち電子供給層5の一方の主面に例えばチタン(Ti)を所望の厚み(例えば25nm)に蒸着し、続いてアルミニウム(Al)を所望の厚み(例えば500nm)に蒸着し、その後フォトリソグラフイ技術で所望のパターンにすることによってそれぞれ形成されている。この実施例のソース電極6及びドレイン電極7は、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)との積層体でそれぞれ形成されているが、これ以外の低抵抗性接触(オーミック接触)可能な金属で形成することもできる。なお、主半導体領域3の電子供給層5は極めて薄いので、この厚み方向の抵抗は無視できるほど小さい。従って、ソース電極6及びドレイン電極7は、2DEG層13に電気的に結合されている。
【0018】
主半導体領域3の一方の主面14即ち電子供給層5の一方の主面とゲート電極8との間に配置され且つ平面的に見て(主半導体領域3の一方の主面14に対して垂直な方向から見て)主半導体領域3の一方の主面上におけるソース電極6とドレイン電極7との間の一部のみに配置された第1の絶縁膜9は、電子供給層5と電子走行層4とのヘテロ接合面の近傍に形成される2次元電子ガス層(2DEG層)のキャリア濃度(例えば電子濃度)を低減させることができる方向の応力を発生する材料から成る。この第1の絶縁膜9の好ましい材料はシリコン窒化物即ちSiNである。例えばプラズマCVD(化学気相成長法)で形成されたシリコン窒化物即ちSiNから成る第1の絶縁膜9は、図1において矢印15で示すように主半導体領域3の一方の主面14が延びる方向(面方向)において引っ張り応力即ち伸張性歪み(例えば−6.14×109dyn/cm2)を発生する。この第1の絶縁膜9の応力は2次元キャリアガス層の発生を抑制する方向即ちキャリア濃度を低減する方向の応力、即ち電子供給層5と電子走行層4とのヘテロ接合に基づいて電子供給層5に生じる引張り応力(伸張性歪み)を打ち消す方向の応力である。ゲート電極8に電圧が印加されていない状態(ノーマリ状態)において、第1の絶縁膜9の引っ張り応力がAlGaNから成る電子供給層5に作用すると、第1の絶縁膜9の下の電子供給層5に圧縮性応力(矢印15と反対方向の応力)が生じ、これにより電子供給層5と電子走行層4とのヘテロ接合に基づいて電子供給層5に生じた引張り応力(伸張性歪み)が打ち消される。この結果、ヘテロ接合面の第1の絶縁膜9に対向する部分に沿って2DEG層が形成されない。ヘテロ接合面の第1の絶縁膜9に対向する部分において2DEG層13の分断が生じると、ソース電極6とドレイン電極7との間はオフ状態になる。これは電界効果半導体装置がノーマリオフ特性を有することを意味する。第1の絶縁膜9の引っ張り応力に基づいてノーマリオフ特性を得るためには、上述から明らかのように、電子供給層5と電子走行層4とのヘテロ接合に基づいて電子供給層5に生じる引っ張り応力即ち伸張性歪みを打ち消すことができる圧縮性応力を電子供給層5に生じさせなければならない。これを可能にするために第1の絶縁膜9の厚みを電子供給層5よりも厚くすることが必要であり、例えば50〜1000nmにする。
【0019】
本実施例では主半導体領域3の一方の主面14即ち電子供給層5の一方の主面上の第1の絶縁膜9が形成されていない部分の上に2次元キャリアガス層13のキャリア濃度を高める方向の応力を発生する材料から成る第2の絶縁膜10が形成されている。第2の絶縁膜10の好ましい材料はシリコン酸化物、即ちSiOX(ここで、xは1〜2の数値を示し、好ましくは2である。)である。第2の絶縁膜10は、好ましくはプラズマCVD(化学気相成長法)で例えば300〜800nm(好ましくは500nm)の厚みに形成され、図1で矢印16で示す方向の圧縮応力即ち圧縮性歪み(例えば4.00×109dyn/cm2)を発生する性質を有する。なお、第2の絶縁膜10を電子供給層5よりも厚く形成することが望ましい。シリコン酸化物から成る第2の絶縁膜10の下にはAlGaNから成る電子供給層5が配置されているので、第2の絶縁膜10の圧縮応力が電子供給層5に作用すると、この反作用で電子供給層5に伸張性歪み即ち引張り応力が生じ、電子供給層5のピエゾ分極が強められ、2次元電子ガス層即ち2DEG層13における電子濃度が増大する。この電子濃度の増大は電界効果半導体装置のオン時におけるソース電極6とドレイン電極7との間の抵抗の低減に寄与する。
【0020】
ゲート電極8と第1の絶縁膜9との間に配置された圧電体層11は、ゲート電極8に印加された電圧に応答して第1の絶縁膜9の応力を打ち消す方向の歪みを発生する材料から成る。即ち圧電体層11は、電界を印加することで絶縁膜9の応力を打ち消す方向の歪みを発生する材料から成る。この圧電体層11の好ましい材料は、リチウム(Li)やNi(ニッケル)などの遷移金属が5重量%以下、例えば1〜2重量%添加されたZnO(酸化亜鉛)である。なお、リチウム(Li)やNi(ニッケル)などの遷移金属は半導体としてのZnOの高抵抗化のために添加されている。従って、圧電体層11に高抵抗化が要求されない場合はリチウム(Li)やNi(ニッケル)などの遷移金属をZnOに添加しなくとも良い。ZnOから成る圧電体層11は周知のスパッタリングで形成することができる。圧電体層11はZnO以外のPZTと呼ばれているPb(鉛)とZr(ジルコニウム)とTi(チタン)とを主成分とする酸化物、例えば、PbZrO3(鉛ジルコニウム酸化物)−PbTiO3(鉛チタン酸化物)の混合物、又はLTOと呼ばれているLa(ランタン)とTi(チタン)とを主成分とする酸化物、例えば、(La,Ti)O3、又はAlNの多結晶等の圧電体で形成することもできる。なお、圧電体層11を電子供給層5よりも厚い例えば50〜1000nmに形成することが望ましい。
圧電体層11はゲート電極8に印加された制御電圧に応答して図1で矢印17で示す方向の圧縮性歪み(圧縮応力)を発生する。この圧電体層11の圧縮性歪み(圧縮応力)は第1の絶縁膜9の伸張性歪み(伸張性応力)を打ち消す方向性を有する。圧電体層11の圧縮性歪み(圧縮応力)によって第1の絶縁膜9の伸張性歪み(伸張性応力)が打ち消されると、電子供給層5と電子走行層4とのヘテロ接合面の近傍に2DEG層が生じ、第1の絶縁膜9による2DEG層13の分断作用が消失し、ソース電極6とドレイン電極7との間がオン状態になる。
【0021】
ゲート電極8は圧電体層11の上に被着された金属層から成る。なお、ゲート電極8を金属層で形成する代りに、導電性を有するポリシリコン等で形成することもできる。
基板1に形成れた背面電極12は図示されていない導体によってソース電極6に接続され、HEMTの安定化に寄与する。
【0022】
図1の電界効果半導体装置において、ゲート電極8に電圧が印加されていない時には、たとえドレイン電極7の電位がソース電極6の電位よりも高くても、前述した第1の絶縁膜9の働きによって2DEG層13の分断が生じているので、電子がソース電極6からドレイン電極7に向って流れず、ソース電極6とドレイン電極7との間はオフ状態になる。
【0023】
ドレイン電極7の電位がソース電極6の電位よりも高い状態で、ゲート電極8とソース電極6との間に所定の閾値よりも高い電圧を印加すると、圧電体層11に圧縮性歪み(圧縮性応力)が発生し、これにより第1の絶縁膜9の伸張性歪み(伸張性応力)が打ち消され、第1の絶縁膜9から電子供給層5に伸張性応力が作用しなくなり、電子供給層5のゲート電極8に対向している部分がこれ以外の部分と同様にピエゾ分極し、ゲート電極8の下にも2DEG層13が生じ、電子走行層4と電子供給層5とのヘテロ接合面の全部に沿って2DEG層13が生じ、ソース電極6とドレイン電極7との間がオン状態になる。このオン状態の時には、電子がソース電極6、電子供給層5、2DEG層13、電子供給層5、及びドレイン電極7の経路で流れる。なお、電子供給層5は極く薄いので、この厚み方向に電流を流すことができる。
圧電体層11の圧縮性歪み(圧縮性応力)によって第1の絶縁膜9の伸張性歪み(伸張性応力)を打ち消すことができる電圧よりも高い電圧をゲート電極8に印加すると、ゲート電極8の下の2DEG層13の電子濃度が更に高くなる。
【0024】
図1の実施例1の電界効果半導体装置は次の効果を有する。
(1)ゲート電極8に電圧を印加しないノーマリ状態において、ソース電極6とドレイン電極7との間の一部のみに設けた第1の絶縁膜9の応力に基づいて2DEG層13が分断され、ソース電極6とドレイン電極7との間がオフ状態になる。これにより、ノーマリオフ特性を有する電界効果半導体装置を提供することができる。
(2)第1の絶縁膜9、圧電体層11及びゲート電極8を平面的に見て主半導体領域3の一方の主面14のソース電極6とドレイン電極7との間の一部のみに設けられ、残りの部分には設けられていない。従って、残りの部分の2DEG層13の電子濃度は第1の絶縁膜9に基づいて低減しない。この結果、ノーマリオフ特性を有しているにも拘わらず、オン抵抗の小さい電界効果半導体装置を提供することができる。
(3)上述のように第1の絶縁膜9、圧電体層11及びゲート電極8は平面的に見て主半導体領域3の一方の主面14のソース電極6とドレイン電極7との間の一部のみに設けられている。この結果、ゲート電極8を幅広に形成することが不要になり、ゲート電極8をソース電極6及びドレイン電極7から十分離間させることができ、ゲート・ソース間耐圧、及びゲート・ドレイン間耐圧が大きく設定することができる。
(4)シリコン酸化物から成る第2の絶縁膜10が2DEG層13における電子濃度の増大に寄与するので、ソース電極6とドレイン電極7との間のオン抵抗が低減する。
(5)電子供給層5を特別に薄くしてノーマリオフ特性を得る従来のHEMTに比べて2DEG層13における電子濃度を増大させることができ、オン抵抗の低減を図ることができる。
(6)ゲート電極8と主半導体領域3の一方の主面14との間に第1の絶縁膜9が配置されているので、ゲートリーク電流を低減できる。
【実施例2】
【0025】
次に、図2に示す実施例2に従う電界効果半導体装置即ちHEMTを説明する。但し、図2及び後述する図3〜図5において図1と実質的に同一の部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0026】
図2に示す電界効果半導体装置の主半導体領域3aは変形された電子供給層5aを有する他は、図1の主半導体領域3と同一に形成されている。電子供給層5aの凹部(リセス)18は第1の絶縁膜9と圧電体層11とゲート電極8との下に形成されている。図2の電子供給層5aの凹部18を有さない部分は凹部18を有する部分よりも厚く形成されている。電子供給層5aの凹部18を有する部分の厚みを図1の電子供給層5の厚みと同一に設定した場合には、電子供給層5aの凹部18を有さない部分の厚みが図1の電子供給層5よりも厚くなるので、電子供給層5のピエゾ分極及び自発分極による電界が図1よりも強くなり、2DEG層13の電子濃度が高くなり、オン抵抗が低減する。また、電子供給層5aの凹部18を有する部分の厚みを図1の電子供給層5の厚みよりも薄く設定した場合には、電子供給層5のピエゾ分極及び自発分極による電界が図1よりも弱くなり、第1の絶縁膜9の伸張性歪みを図1よりも小さく設定しても2DEG層13を消滅(分断)させることができる。
【0027】
図2の実施例2の電界効果半導体装置即ちHEMTの基本構成は図1と同一であるので、図2の実施例2によっても図1の実施例1と同様な効果を得ることができる。
【実施例3】
【0028】
図3の実施例3の電界効果半導体装置即ちHEMTは、図1の圧電体層11とゲート電極8の横方向の寸法を大きくしたものに相当する圧電体層11aとゲート電極8aを設け、この他は図1と同一に形成したものである。図3の圧電体層11aとゲート電極8aは第1の絶縁膜9よりも幅広に形成されており、第2の絶縁膜10の上に延在している。
【0029】
図3の電界効果半導体装置のゲート電極8aに電圧を印加しない時(ノーマリ状態)には、第1の絶縁膜9の働きで、図1の電界効果半導体装置と同様にソース電極6とドレイン電極7との間がオフ状態になる。
ゲート電極8aに電圧を印加した時には、圧電体層11aに働きで電子供給層5と電子走行層4とのヘテロ接合の第1の絶縁膜9に対向する部分の近傍に図1の電界効果半導体装置と同様に2DEG層が形成され、ソース電極6とドレイン電極7との間がオン状態になる。これと共に、圧電体層11aの圧縮性歪み(圧縮性応力)が第2の絶縁膜10を介して電子供給層5に作用し、電子供給層5のピエゾ分極が強められ、2DEG層13の電子濃度が高くなり、ソース電極6とドレイン電極7との間のオン抵抗が低減する。これにより、ノーマリオフ特性を有しているにも拘わらず、オン抵抗が小さい電界効果半導体装置即ちHEMTを提供することが可能になる。また、図3の圧電体層11aとゲート電極8aは第1の絶縁膜9よりも幅広に形成されており、第2の絶縁膜10の上に延在しているので、第1の絶縁膜9の下に生じる2DEG層と第2の絶縁膜9の下に生じる2DEG層との連続性(つながり)が良くなる。なお、図3の実施例3の電界効果半導体装置は、図1の実施例1と同一の基本構成を有するので、図1の実施例1と同一の効果を得ることができる。但し、図3の実施例3の電界効果半導体装置のゲート・ソース間耐圧、及びゲート・ドレイン間耐圧は図1の実施例1よりも劣る。
【実施例4】
【0030】
図4の実施例4の電界効果半導体装置即ちHEMTは、図3の電界効果半導体装置から第1の絶縁膜9を省き、且つ変形された主半導体領域3bを設け、この他はこの他は図3と同一に形成したものである。変形された主半導体領域3bの電子供給層5bは溝18aを有する。この溝18aは、電子走行層4の一方の主面から他方の主面に貫通するように形成されている。圧電体層11bは溝18aを介して電子走行層4に接触するように変形されている。ゲート電極8bは圧電体層11bに適合するように変形されている。実施例1〜3で示す絶縁膜9上ではなく、電子走行層4等の主半導体領域3b上に圧電体層11bを直接形成すると、高い結晶性を有する圧電体層11bを得ることができ、圧電体層11bを設ける効果を高めることができる。
【0031】
ゲート電極8bに電圧が印加されないノーマリ状態では、電子供給層5の溝18aの底面に露出する電子走行層4には2DEG層が形成されない。ゲート電極8bに電圧が印加された時には、圧電体層11bがゲート絶縁膜として機能し、周知の電界効果に基づいて電子走行層4の表面に沿ってチャネル(電流通路)が形成され、ソース電極6とドレイン電極7との間がオン状態になる。
【0032】
図4の実施例4の電界効果半導体装置は図1〜図3と同一の基本構成を有するので、図1〜図3の実施例1〜3と同様の効果を得ることができる。また、図4の圧電体層11bとゲート電極8bは図3と同様にSiOXから成る第2の絶縁膜10の上に延在しているので、図4の実施例4によっても図3の実施例3と同様にオン抵抗の低減効果を得ることができる。
なお、溝18aを図4で点線19で示す深さに変形し、溝18aの底部に電子供給層5bを残存させることができる。周知のように電子供給層5bが薄い場合には目的とする2DEG層が得られず、ノーマリ状態においてソース電極6とドレイン電極7との間がオフ状態になる。
【実施例5】
【0033】
図5の実施例5の電界効果半導体装置即ちHEMTは、変形された主半導体領域3cを有する他は、図1と同一に形成されている。図5の主半導体領域3cはn型不純物を含むAlxGa1-xNから成る電子供給層5cを設け、このn型の電子供給層5cとGaNから成る電子走行層4との間にアンドープAlNから成る周知のスペーサー層20を配置し、主半導体領域3cのソース電極6及びドレイン電極7との下に斜線を付けて示すn型不純物注入領域から成るコンタクト層21,22を設け、この他は図1に示されている実施例1の電界効果半導体装置と実質的に同一に形成したものである。スペーサー層20は、電子供給層5cの不純物又は元素が電子走行層4に拡散することを防ぎ、2DEG層17における電子の移動度の低下を抑制する。コンタクト層21,22は、ソース電極6及びドレイン電極7の接触抵抗の低減に寄与する。図5の電界効果半導体装置は図1と同様な基本構成を有するので、図1の実施例と同様な効果を有する。
【0034】
図5に示すスペーサー層20に相当するものを図2〜図4の電界効果半導体装置に設けることができる。また、図5に示すコンタクト層21,22に相当するものを図2〜図4の電界効果半導体装置に設けることができる。また、図1〜図4の電子供給層5,5a、5bに図5の電子供給層5cと同様にn型不純物を添加することができる。
【0035】
本発明は、上述の実施例に限定されるものでなく、例えば、次の変形が可能なものである。
(1)主半導体領域3,3a、3b、3cを、GaN、AlGaN以外のInGaN、AllnGaN、AlN、InAlN、AlP、GaP、AllnP、GalnP、AlGaP、AlGaAs、GaAs、AlAs、InAs、InP,InN、GaAsP等の別の3−5族化合物半導体、又はZnO等の2−6族化合物半導体、又は更に別の化合物半導体で形成することができる。
(2) 各実施例の電子供給層5〜5cをp型半導体から成る正孔供給層に置き換えることができる。この場合には、2DEG層13に対応する領域に2次元キャリアガス層として2次元正孔ガス層が生じる。
(3)図2の圧電体層11及びゲート電極8を鎖線で示すように横方向に延長させることができる。これにより図3の圧電体層11a及びゲート電極8aに基づくオン抵抗低減効果と同様な効果を得ることができる。
(4)図4の圧電体層11bと電子走行層4との間に絶縁膜を介在させてゲートリーク電流の低減を図ることができる。
(5)周知のゲートフィールドプレート、ソースフィールドプレート、ドレインフィールドプレートの内の1つ又は複数を設けることができる。
(6)主半導体領域3〜3cの最も上に、表面電荷のコントロールのため等の目的で例えばアンドープGaN等から成るキャップ層を設けることができる。
(7)図1〜図5にそれぞれ1つのソース電極6、ドレイン電極7及びのゲート電極8が示されているが、それぞれ複数個設けることができる。
(8)実施例1〜4において、電子供給層(5,5a〜5b)のソース電極6及びドレイン電極7の下の部分を除去し、ソース電極6及びドレイン電極7を電子走行層4に直接に接続することができる。
(9)第1の絶縁膜9を、SiN以外のSiNx(xはSiに対するNの割合を示す任意の数値)、Si23,Si34等の別のシリコン窒化物、又は主半導体領域3の一方の主面14が延びる方向(面方向)において引っ張り応力即ち伸張性歪みを発生する別の絶縁材料で形成することができる。
(10)第2の絶縁膜10を、SiOX以外の圧縮応力即ち圧縮性歪みを発生する別の絶縁材料で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例1の電界効果半導体装置を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例2の電界効果半導体装置を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例3の電界効果半導体装置を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例4の電界効果半導体装置を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例5の電界効果半導体装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 基板
2 バッファ層
3 主半導体領域
4 電子走行層(第1の半導体層)
5 電子供給層(第2の半導体層)
6 ソース電極
7 ドレイン電極
8 ゲート電極
9 第1の絶縁膜
10 第2の絶縁膜
11 圧電体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の半導体層と、前記第1の半導体層にヘテロ接合され且つ前記ヘテロ接合に基づいて2次元キャリアガス層を形成することができる材料から成る第2の半導体層とを備えている主半導体領域と、
前記主半導体領域の一方の主面上に配置されたソース電極と、
前記主半導体領域の一方の主面上に前記ソース電極から離間して配置されたドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の電流通路を制御するために前記主半導体領域の一方の主面上における前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に配置されたゲート電極と、
前記ゲート電極と前記主半導体領域の一方の主面との間に配置され且つ平面的に見て前記主半導体領域の一方の主面上における前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の一部のみに配置され且つ前記2次元キャリアガス層のキャリア濃度を低減させる方向の応力を発生する材料で形成された絶縁膜と、
前記ゲート電極と前記絶縁膜との間に配置され且つ前記ゲート電極に印加された電圧に応答して前記絶縁膜の前記応力を打ち消す方向の歪みを発生する材料から成る圧電体層と
を備えていることを特徴とする電界効果半導体装置。
【請求項2】
前記主半導体領域の一方の主面上における前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の前記絶縁膜が配置されていない部分の上に前記2次元キャリアガス層のキャリア濃度を高める方向の応力を発生する材料から成る別の絶縁膜が配置されていることを特徴とする請求項1記載の電界効果半導体装置。
【請求項3】
前記圧電体層は前記別の絶縁膜の上に延在している延在部分を有し、前記ゲート電極は前記圧電体層の前記延在部分の上に延在している部分を有していることを特徴とする請求項2記載の電界効果半導体装置。
【請求項4】
前記圧電体層は前記主半導体領域の一方の主面上における前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の前記絶縁膜が配置されていない部分の上に延在している延在部分を有し、前記ゲート電極は前記圧電体層の前記延在部分の上に延在している部分を有していることを特徴とする請求項1記載の電界効果半導体装置。
【請求項5】
前記2次元キャリアガス層のキャリア濃度を低減する方向の応力を発生する材料から成る絶縁膜はシリコン窒化物から成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の電界効果半導体装置。
【請求項6】
前記2次元キャリアガス層のキャリア濃度を高める方向の応力を発生する材料から成る別の絶縁膜はシリコン酸化膜から成ることを特徴とする請求項2又は3記載の電界効果半導体装置。
【請求項7】
前記圧電体層は、遷移金属又はリチウム(Li)が添加されたZnO(酸化亜鉛)、Pb(鉛)とZr(ジルコニウム)とTi(チタン)とを主成分とする酸化物、及びLa(ランタン)とTi(チタン)とを主成分とする酸化物から選択されたものであるであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の電界効果半導体装置。
【請求項8】
前記主半導体領域は、更に、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層との間に配置されたスペーサー層を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の電界効果半導体装置。
【請求項9】
前記第2の半導体層は前記ゲート電極に対向する部分に凹部を有していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載の電界効果半導体装置。
【請求項10】
第1の半導体層と、前記第1の半導体層にヘテロ接合され且つ前記ヘテロ接合に基づいて2次元キャリアガス層を形成することができる材料から第2の半導体層とを備え、且つ第2の半導体層を第1の部分と第2の部分とに分割する溝を有している主半導体領域と、
前記第2の半導体層の第1の部分の上に配置されたソース電極と、
前記第2の半導体層の第2の部分の上に配置されたドレイン電極と、
前記溝の中及び平面的に見て前記第2の半導体層の前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の少なくとも一部の上に配置され且つ印加された電界に応答して前記2次元キャリアガス層におけるキャリア濃度を高めることができる方向の応力を生じる圧電特性を有し且つ絶縁性を有する材料で形成された圧電体層と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の電流通路を制御するために前記圧電体層の上に配置されたゲート電極と
を備えていることを特徴とする電界効果半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−4743(P2009−4743A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108902(P2008−108902)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】