説明

電界効果型トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置

【課題】電界効果型トランジスタにおいて、バンク層をガイドとして半導体溶液を塗布する方法を用いて、精度良く確実にチャネル部に半導体を形成するための電界効果型トランジスタ構造を提供することを目的とする。また、その構造を用いた電界効果型トランジスタの製造方法、及びそれを用いた画像表示装置を提供すること。
【解決手段】ゲート電極と、前記ゲート電極上に形成されたゲート絶縁層と、ソース電極と、下部画素電極と、前記下部画素電極に接続されたドレイン電極と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間に形成された半導体と、半導体を挟むように形成されたバンク層より構成された電界効果型トランジスタにおいて、前記バンク層がストライプ状に形成されていることを特徴とする電界効果型トランジスタとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともゲート電極と、ゲート絶縁層と、ソース電極と、画素電極及びそれに接続されたドレイン電極と、ソース電極−ドレイン電極間に形成された半導体から構成される電界効果型トランジスタ、及びその製造方法、及びそれを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般に普及している液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及び電気泳動型ディスプレイ等の表示装置の多くは薄膜トランジスタ(TFT)を表示スイッチングデバイスとしたアクティブマトリックス型の駆動装置を利用している。このような表示スイッチとしてのトランジスタには、ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース−ドレイン電極、ソース−ドレイン電極間に配置された半導体からなる電界効果型トランジスタ(FET)が利用されている。FETの駆動原理は、ゲート電極に電圧を印加することにより半導体中の電子またはホールからなるチャージキャリア量をコントロールし、ソース−ドレイン間のチャージ移動、すなわち電流を制御するもので、このような作用によりスイッチの役割を果たしている。
【0003】
以上のようなTFTアレイの半導体には、従来、アモルファスもしくは多結晶の薄膜シリコンを半導体として利用したものが使われているが、一般的に、薄膜シリコンTFTの電極や半導体、絶縁層等の各層は真空プロセス及び300℃以上の高温プロセスが必要で、更にパターニングにはフォトリソグラフィーを用いるなど、比較的煩雑で高コストなプロセスにより形成されている。
【0004】
これに対して近年では、電極材料には溶液分散型ナノ金属粒子、半導体には有機半導体、絶縁材料には有機高分子等の溶媒に可溶または分散可能な材料を用いることが提案され、インクジェット、スピンコートやフレキソ印刷等の塗布方式を用いた方法が数多く報告されるようになってきており、これによりプロセスの低温化、高速化、低コスト化が実現可能となってきた。
【0005】
半導体を溶液から塗布する場合、溶媒に可溶にするための置換基を有する有機半導体や酸化物半導体の分散液や前駆体溶液などが用いられ、ソース電極、ドレイン電極に挟まれたチャネル部を覆うように塗布、乾燥することで半導体が形成される。半導体溶液を塗布する際には、溶液が所望の場所のみに塗布できるようにチャネル部に開口部を作ったバンク層を用いて、開口部の窪みに溶液が溜まるようにする方法を用いることができる(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、チャネル部のみに矩形あるいは円形等の開口部を有するバンク層を用いる場合、精度良くチャネル部にバンク層の開口部を合わせる必要があり、特に印刷法を用いてバンク層を形成する時、塗工面積が大きくなったり、画素解像度が高くなるのにしたがい、開口部とチャネル部の位置にずれが生じる問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開2005−142474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、少なくともゲート電極と、ゲート絶縁層と、ソース電極と、画素電極及びそれに接続されたドレイン電極と、ソース電極−ドレイン電極間に形成された半導体から構成される電界効果型トランジスタにおいて、バンク層をガイドとして半導体溶液を塗布する方法を用いて、精度良く確実にチャネル部に半導体を形成するための電界効果型トランジスタ構造を提供することを目的とする。また、その構造を用いた電界効果型トランジスタの製造方法、及びそれを用いた画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために為された請求項1に係る発明は、ゲート電極と、前記ゲート電極上に形成されたゲート絶縁層と、ソース電極と、下部画素電極と、前記下部画素電極に接続されたドレイン電極と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間に形成された半導体と、半導体を挟むように形成されたバンク層より構成された電界効果型トランジスタにおいて、前記バンク層がストライプ状に形成されていることを特徴とする電界効果型トランジスタである。
また請求項2に係る発明は、前記バンク層の一部が前記ソース配線と平行かつソース配線上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電界効果型トランジスタである。
また請求項3に係る発明は、前記バンク層の一部が前記画素電極上に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電界効果型トランジスタである。
また請求項4に係る発明は、前記バンク層が撥インク性を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタである。
また請求項5に係る発明は、前記バンク層がフッ素を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタである。
また請求項6に係る発明は、前記バンク層の厚さが50nm以上1μm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電界効果型トランジスタである。
また請求項7に係る発明は、前記半導体が有機半導体であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタである。
また請求項8に係る発明は、前記半導体が可溶あるいは溶媒に分散できることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタである。
また請求項9に係る発明は、前記半導体がストライプ状に形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタである。
また請求項10に係る発明は、少なくとも、基板上にゲート電極を形成する工程と、ゲート絶縁層を形成する工程と、ソース配線、ソース電極、ドレイン電極及び下部画素電極を形成する工程と、ソース配線と平行かつソース配線上に乗るように、かつストライプ状にバンク層を形成する工程と、半導体溶液または分散液を塗布し、乾燥することにより半導体を形成する工程を含むことを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法である。
また請求項11に係る発明は、請求項10記載の製造方法に加えて、少なくとも下部画素電極上に開口部を有する層間絶縁層を形成する工程を少なくとも含むことを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法である。
また請求項12に係る発明は、前記半導体を形成する工程が、ストライプ状に半導体を形成する工程であることを特徴とする請求項10または11に記載の電界効果型トランジスタの製造方法である。
また請求項13に係る発明は、請求項1から9のいずれか1項に記載の電界効果型トランジスタを用いた画像表示装置である。
また請求項14に係る発明は、請求項13に記載の画像表示装置の表示部に液晶表示素子、有機EL及び電子ペーパーのいずれかを用いたことを特徴とする画像表示装置である。
【発明の効果】
【0010】
半導体層を挟むバンク層をストライプ状に形成することによって、ストライプの長軸方向には厳密に位置合わせする必要がないことから、半導体層形成位置の位置ズレを抑制し、バンク層にフッ素系の材料や、長鎖アルキル基などの表面エネルギーの低い材料を用いることで、チャネル部に半導体を確実に形成することができた。このため、容易に信頼性のあるTFTアレイを製造することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1から5に本発明における電界効果型トランジスタの基本的な構造例の一部、または全部を示した。図1から図4における破線は電界効果型トランジスタを画像表示装置に用いた時の一画素の輪郭を表す。図1から図3はいずれもソース電極、ドレイン電極、画素電極、バンク層、及び半導体の位置関係を画素上部から捉えた様子を模式的に示した例である。図3の太実線の位置における断面構造を図5に示した。
【0012】
本発明の絶縁基板10としては、表面に絶縁性がありシート状で、表面が平坦であれば何でも用いることができ、例えば、ソーダライムガラス、石英ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド(PI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリルレートなどを使用することができる。また、ステンレスシート、アルミ箔、銅箔、シリコンウェハー等の導電性あるいは半導体性の基材であっても、表面に絶縁性の、例えば高分子材料あるいは金属酸化物などを塗布または積層することにより、絶縁基板として用いることができる。更に、以上の絶縁基板は表面に易接着層等の表面処理層を形成しても良いし、コロナ処理、プラズマ処理、UV/オゾン処理等の表面処理を施しても良い。
【0013】
本発明のゲート電極20及びソース配線40、ソース電極41、ドレイン電極42、及び画素電極43としては、Al、Cr、Mo、Cu、Au、Pt、Pd、Fe、Mn、Agなどの金属をPVDやCVD、めっき等の方法で製膜した後にフォトリソグラフィーなどの公知の方法を用いて形成できる。また、インジウム・錫酸化物(ITO)フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)等、公知の透明導電性材料や、PEDOT:PSS、ポリアニリン、ポリチオフェン等、公知の有機導電性材料等を用いることもできるが、これらを用いた時に比較的高い配線抵抗を有する場合は金属バス電極を用いて抵抗の軽減を図ることがより好ましい。また、以上の金属、透明酸化物、有機導電性高分子等の導電性材料あるいはそれらの前駆体を、溶液、ペースト、ナノ粒子分散液等に加工した後、印刷法で塗工し、乾燥、焼成、光硬化あるいはエージング等によって形成することも出来る。用いられる印刷方法は、特に限定されることはないが、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、反転オフセット印刷、スクリーン印刷法、インクジェット、熱転写印刷、ディスペンサ等のパターニング可能な印刷方法を用いた方が工程の簡略化、低コスト化、高速化を達成でき、より好ましい。また、スピンコート、ダイコート、マイクログラビアコート、ディップコート等とフォトリソグラフィー等のパターニング手法を組み合わせても良い。さらに、以上の印刷法を組み合わせて用いても良い。
【0014】
本発明のゲート絶縁層30としては、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ブタジエンゴム等の有機高分子化合物、またはこれらの混合物、またはアルコキシシラン基やビニル基、アクリル酸エステル、エポキシ基など反応性置換基を有する化合物との混合物を用いることができ、更には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化ニッケル、酸化インジウム、酸化ハフニウム等の酸化物、あるいはこれらの複合酸化物または酸化物混合物、酸窒化物なども用いることができるが、十分な絶縁性を有し、膜厚1μm以下の薄膜を形成可能であればこれらに限定されるものではない。また、これらを混合しても良いし、積層してもよい。これら有機高分子化合物の形成方法としては、マイクログラビアコート、ディップコート、スクリーンコート、ダイコート、スピンコート等既存のウエットコーティング法を用いることができる。また、無機酸化物、酸窒化物等の形成方法としては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング、CVDなどの真空成膜法を用いることができ、また成膜中に任意のガスを用いたプラズマやイオン銃、ラジカル銃などを併用してもよい。また、それぞれの金属酸化物に対応する前駆体、具体的には塩化物、臭化物などの金属ハロゲン化物や金属アルコキシド、金属水酸化物等を、アルコールや水中で塩酸、硫酸、硝酸などの酸や水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基と反応させて加水分解することにより形成してもよい。このような溶液系のプロセスを用いる場合、マイクログラビアコート、ディップコート、スクリーンコート、ダイコート、スピンコート等既存のウエットコーティング法を用いることができる。以上のゲート絶縁層は、コロナ処理、プラズマ処理、UV/オゾン処理等の表面処理を施しても良いが、処理による表面粗さが粗くならないように注意する必要がある。ゲート絶縁層の表面は比較的平滑でピンホールや突起、起伏が無いことが好ましい。
【0015】
本発明のゲート絶縁層の最上層に自己組織化単分子膜を形成しても良い。自己組織化単分子膜を形成する化合物として、末端に(モノ、ジ、トリ)アルコキシシラン基、(モノ、ジ、トリ)クロロシラン基、ホスホン酸、ホスフィン酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、アミノ基、ハライド基、カルボン酸、ヒドロキシル基、チオール基、ジスルフィド基、アジ基、アセチレン基、ビニル基、ニトロ基、シアノ基等の官能基を有し、分子内にアルキル基、フェニル基、フェノキシ基、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環、フルオレン環、エーテル、エチレン基、アセチレン基の少なくともいずれか一つを含む炭素数2以上の置換基を有するものが挙げられる。
【0016】
主骨格は、好ましくは分岐しておらず、例えば直鎖状のノルマルアルキル(n−アルキル)基や、フェニル基が三個直列に配置されたter−フェニル基や、フェニル基のパラ位の両側にn−アルキル基が配置されたような構造が良い。また、アルキル鎖の中にエーテル結合を含めても良いし、炭素−炭素二重結合や三重結合を含めても良い。自己組織化単分子膜は分子の一方の反応性置換基が、対応する基材表面の反応性部位と相互作用、あるいは反応し、結合を形成することにより、該基材上に単分子層を形成するものである。分子がより緻密に充填されることにより、自己組織化単分子膜の表面は、より平滑で表面エネルギーの低い表面を与えることから、分子の主骨格は直線状であり、分子長が揃っていることが望ましい。
【0017】
自己組織化単分子膜を形成する化合物は、対応する基材表面に次のような反応により形成される。例えば、トリクロロシラン基を有するものは、シリコン基板表面のシラノール基と反応し、化学結合により吸着し(下記非特許文献1)、またホスホン酸、ホスフィン酸等はアルミナ基板上のヒドロキシル基と反応し、化学結合により吸着する(下記非特許文献2)ことが良く知られている。自己組織化単分子膜は、該自己組織化単分子を形成する化合物を真空下で対応する基板に蒸着する方法、該化合物の溶液中に基板を浸漬する方法、Langmuir−Blodgett法などを用いて形成することができるが、これに限るものではない。しかしながら、例えば、該化合物がより緻密で確実に単分子膜のみを得る方法として下記非特許文献3、4等に記載の方法を用いることがより好ましい。
[参考文献1]J. Am. Chem.Soc. 102,92 (1980)
[参考文献2]J. Phys. Chem.B 107,5877 (2003)
[参考文献3]Langmuir 19, 1159(2003)
[参考文献4]J. Phys. Chem.B 110,21101 (2006)
【0018】
本発明のバンク層50としては、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ブタジエンゴム等の有機高分子化合物、またはこれらの混合物、またはアルコキシシラン基やビニル基、アクリル酸エステル、エポキシ基など反応性置換基を有する化合物との混合物を用いることができ、更には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化ニッケル、酸化インジウム、酸化ハフニウム等の酸化物、あるいはこれらの複合酸化物または酸化物混合物、酸窒化物などの絶縁性材料を用いることができる。また、これらの絶縁材料に撥インク性を付与するために、アルキル鎖と反応性置換基を有する化合物やフッ素含有化合物を添加しても良い。これらの添加する化合物としては、例えば、オクチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、ドデシルジメチルクロロシラン、ヘキサメチレンジシラザン、オクタデシルホスホン酸、オクタデセン、ヘキサン酸、ペンタフルオロチオフェノール、2−パーフルオロオクチルエタノールなどが挙げられる。更には、フッ素系高分子やポリシロキサン化合物等を用いても良く、より具体的にはフッ素系樹脂であるサイトップ(旭硝子株式会社製)を用いることがより好ましい。
【0019】
本発明のバンク層は、図1あるいは2に示したように、一画素において、ソース電極、ドレイン電極、及びそれらに挟まれたチャネル部を開口部とするように、ストライプ状に形成することを特徴とする。ストライプの幅は特に限定されることはなく、図1のようにチャネル部の両側のみにバンク層が形成されていても良いし、図2のように画素電極を覆うように形成されていても良い。チャネル部の右側に形成されたバンク層は、隣接する画素のチャネル部左側のバンク層と一体となっていてもよい。バンク層の膜厚は特に限定されることはないが、好ましくは50nmから1μmで形成すると良い。本発明のバンク層は、チャネル部さえ開口部を持てば画素の上下方向、左右方向のいずれの方向にストライプ状を形成してもよいが、より好ましくはソース配線及び/または画素電極の一部を覆う方向に形成するとよい。これは溶液状の半導体を塗布する際に、配線または電極材料の表面エネルギーの大きさから溶液が配線または電極材料の上に偏って形成されてしまうことを防ぐためである。
【0020】
本発明のバンク層が、チャネル部に開口部を持ったストライプ状に形成されることによって、半導体を堆積させる際にはチャネル部に半導体を確実に形成することができる。このような効果は特にバンク層として表面エネルギーの低い材料、すなわちフッ素系の材料や、長鎖アルキル基を有する材料を用いた時に際立って得ることができる。半導体を溶液から形成する場合、溶液はチャネル部近傍にのみ塗布してもよいし、ストライプ状にバンク層間に形成しても良いが、バンク層間にストライプ状に形成したほうが、チャネル部に確実に半導体を形成することができるためより好ましい。また半導体は真空成膜法を用いて形成しても良い。このようにバンク層がストライプ状であると、ストライプの長軸方向には厳密に位置合わせする必要がなく、容易に信頼性のあるTFTアレイを製造することができる。
【0021】
本発明のバンク層は、チャネル部を覆うようにストライプ状にレジストを形成した後、マイクログラビアコート、ディップコート、スクリーンコート、ダイコート、スピンコート、フレキソ印刷等既存のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング、CVDなどの真空成膜法を用いてバンク層を形成し、その後レジストを剥離することによって形成することができる。また、オフセットグラビア印刷、反転オフセット印刷、スクリーンコート、フレキソ印刷等既存の印刷手法用いてダイレクトに図1あるいは2に示したようにストライプ状に作製する方法を用いてもよい。
【0022】
本発明の半導体60としては、半導体性を示すπ共役有機高分子、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアリルアミン類、フルオレン類、ポリカルバゾール類、ポリインドール類、ポリ(p−フェニレンビニレン)類などや、π共役系を持つ低分子物質、例えば、ペンタセンなどの多環芳香族の誘導体、フタロシアニン誘導体、ペリレン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、フラーレン類、カーボンナノチューブ類などを用いることができるがこの限りではない。また、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、カドミウムテルル、セレン化亜鉛、窒化ガリウム、窒化アルミニウムのような無機半導体、及び酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)や酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウムなどの酸化物半導体を用いても良い。
【0023】
本発明の半導体の形成法は、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、溶液を用いた印刷法等を用いることができるが、生産性、低コスト化等の観点から溶媒に可溶な半導体を用いて塗工する方法を用いることがより好ましい。印刷法を用いる場合は、特に限定されることはないが、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、反転オフセット印刷、スクリーン印刷法、インクジェット、熱転写印刷、ディスペンサ、スピンコート、ダイコート、マイクログラビアコート、ディップコート等を用いることができ、以上の印刷法を組み合わせて用いても良い。
【0024】
本発明の電界効果型トランジスタは、さらに封止層、層間絶縁層、上部画素電極を形成して用いても良い。以上、一画素の構造に沿って本発明の電界効果型トランジスタの詳細を説明したが、本発明の電界効果型トランジスタは通常、画素をアレイ状に配列させることにより、画像表示装置の画素点灯装置として用いる。具体的には、電界効果型トランジスタを用いたアクティブマトリックス型のTFTアレイを背面板として有する画像表示装置とし、その背面板上の表示部に液晶表示素子、有機EL、電子ペーパー等の表示素子を形成し、画像表示装置とすることができる。
【実施例】
【0025】
以下、具体的な実施例によって本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は説明を目的としたもので、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
[実施例1]
図5と同様の構造を有する電界効果型トランジスタを80×60のアレイ状に作製した。絶縁基板10として0.7mm厚のガラスを用い、ゲート電極20としてアルミニウムを真空蒸着法により50nm形成したのちフォトリソグラフィー及びエッチングによってパターニングした。続いて絶縁層30としてSiONをスパッタリング法によって300nm積層し、金を真空蒸着法により膜厚50nmで形成し、ゲート電極と同様の方法でパターニングすることにより、ソース配線40、ソース電極41、ドレイン電極42、及び画素電極43となる電極パターンを形成した。この時、金と絶縁層の密着性を上げる為に金を蒸着する前にクロムを3nm程度積層している。
【0027】
続いて、バンク層50としてサイトップ(旭硝子株式会社製)をフレキソ印刷により図1に示したようにストライプ状に塗工、120℃、30分で乾燥した。さらに半導体60としてポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)をフレキソ印刷により図3に示したようにストライプ状に塗工し、120℃、30分で乾燥することにより形成し、電界効果型トランジスタを得た。
【0028】
以上より得られたアレイ中の電界効果型トランジスタの伝達特性をゲート電圧−20Vから40V、ソース電圧−40Vで測定したところ、移動度は0.01cm/Vs、on/offは105、閾値電圧は−5Vであった。移動度の標準偏差は0.001であり、アレイ全体に渡りほぼ均一な特性の電界効果型トランジスタが作製できた。
【0029】
[実施例2]
図5と同様の構造を有する電界効果型トランジスタを80×60のアレイ状に作製した。絶縁基板10として150μm厚のポリエチレンナフタレート(PEN)を用い、ゲート電極20としてアルミニウムを真空蒸着法により50nm形成したのちフォトリソグラフィー及びエッチングによってパターニングした。続いて絶縁層30としてPVPをスピンコート法により500nm積層し、銀をナノ粒子インクからオフセット反転印刷法により膜厚200nmでパターニングし、180℃で1時間焼成することにより、ソース配線40、ソース電極41、ドレイン電極42、及び画素電極43となる電極パターンを形成した。
【0030】
続いて、バンク層50としてサイトップ(旭硝子株式会社製)をフレキソ印刷により図1に示したようにストライプ状に塗工、120℃、30分で乾燥した。さらに半導体60として6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS−ペンタセン)をフレキソ印刷により図3に示したようにストライプ状に塗工し、90℃、30分で乾燥することにより形成し、電界効果型トランジスタを得た。
【0031】
以上より得られたアレイ中の電界効果型トランジスタの伝達特性をゲート電圧−20Vから40V、ソース電圧−40Vで測定したところ、移動度は0.5cm/Vs、on/offは105、閾値電圧は−10Vであった。移動度の標準偏差は0.01であり、アレイ全体に渡りほぼ均一な特性の電界効果型トランジスタが作製できた。
【0032】
[比較例1]
バンク層を持たない電界効果型トランジスタを80×60のアレイ状に作製した。実施例2と同様に絶縁基板10を用意し、ゲート電極20、絶縁層30、ソース配線40、ソース電極41、ドレイン電極42、及び画素電極43となる電極パターンを形成した。続いて、実施例2と同様に半導体60をフレキソ印刷によりストライプ状に塗工し、90℃、30分で乾燥することにより形成し、電界効果型トランジスタを得た。
【0033】
以上より得られたアレイを観察したところ、一部の画素において半導体がチャネル部の全体を覆っていないトランジスタが観察された。得られたアレイの電界効果型トランジスタの伝達特性をゲート電圧−20Vから40V、ソース電圧−40Vで測定したところ、最大移動度は0.5cm/Vs、on/offは105、閾値電圧は−10Vで実施例2と同様であったが、移動度の平均は0.1cm/Vs、標準偏差は0.2であり、アレイ中の各素子特性は均一でなかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、TFTを用いたアクティブマトリックス型のTFTアレイを背面板として有する液晶表示素子、有機EL、電子ペーパー等の表示素子に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明におけるストライプ状バンク層を有する画素の一部を上部から示した例である。
【図2】本発明におけるストライプ状バンク層を有する画素の一部を上部から示した例である。
【図3】図1のストライプ状バンク層の、チャネル部が存在する間隔に、ストライプ状半導体を有する画素の一部を上部から示した例である。
【図4】図1から図3におけるソース配線、ソース電極、ドレイン電極、画素電極の形状を上部から示した例である。
【図5】本発明の図3における太実線部の断面構造の一例である。
【符号の説明】
【0036】
10 絶縁基板
20 ゲート電極
30 ゲート絶縁層
40 ソース配線
41 ソース電極
42 ドレイン電極
43 画素電極
50 バンク層
60 半導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極と、前記ゲート電極上に形成されたゲート絶縁層と、ソース電極と、下部画素電極と、前記下部画素電極に接続されたドレイン電極と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間に形成された半導体と、半導体を挟むように形成されたバンク層より構成された電界効果型トランジスタにおいて、前記バンク層がストライプ状に形成されていることを特徴とする電界効果型トランジスタ。
【請求項2】
前記バンク層の一部が前記ソース配線と平行かつソース配線上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項3】
前記バンク層の一部が前記画素電極上に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項4】
前記バンク層が撥インク性を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項5】
前記バンク層がフッ素を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項6】
前記バンク層の厚さが50nm以上1μm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項7】
前記半導体が有機半導体であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項8】
前記半導体が可溶あるいは溶媒に分散できることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項9】
前記半導体がストライプ状に形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項10】
少なくとも、基板上にゲート電極を形成する工程と、ゲート絶縁層を形成する工程と、ソース配線、ソース電極、ドレイン電極及び下部画素電極を形成する工程と、ソース配線と平行かつソース配線上に乗るように、かつストライプ状にバンク層を形成する工程と、半導体溶液または分散液を塗布し、乾燥することにより半導体を形成する工程を含むことを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の製造方法に加えて、少なくとも下部画素電極上に開口部を有する層間絶縁層を形成する工程を少なくとも含むことを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項12】
前記半導体を形成する工程が、ストライプ状に半導体を形成する工程であることを特徴とする請求項10または11に記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか1項に記載の電界効果型トランジスタを用いた画像表示装置。
【請求項14】
請求項13に記載の画像表示装置の表示部に液晶表示素子、有機EL、電子ペーパーのいずれかを用いたことを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−80896(P2010−80896A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250801(P2008−250801)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】