面外サスペンション方式を使用するMEMS質量−バネ−ダンパシステム
面外(または、垂直)サスペンション方式を使用するMEMS質量-バネ-ダンパシステム(MEMSジャイロスコープおよび加速度計を含む)であって、サスペンションがプルーフマスに対して垂直であるMEMS質量-バネ-ダンパシステムが開示される。そのような面外サスペンション方式は、そのようなMEMS質量-バネ-ダンパシステムが慣性グレード性能を達成するのを助ける。MEMS質量-バネ-ダンパシステム(MEMSジャイロスコープおよび加速度計を含む)において面外サスペンションを製造する方法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年5月27日に出願された米国仮特許出願第61/181,565号による優先権を主張し、その主題は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、微小電気機械(MEMS)質量-バネ-ダンパ(MSD)システムに関する。より具体的には、本発明は、慣性グレードでおよび/または面外(または垂直)サスペンション方式を使用するMEMSジャイロスコープおよび加速度計を含むMEMS MSDシステム、ならびにそのようなMEMS MSDシステムを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
MEMSジャイロスコープおよび加速度計などのMEMSセンサは当技術分野において公知である。過去数十年で、そのようなセンサは大きな関心を集めてきた。MEMS技術は、他にも理由はあるが、それが効率的なパッケージングを可能にし、センサ面積を最小にし、電力消費量を大幅に減らすため、魅力的である。さらに、より具体的には、MEMSセンサを駆動電子機器および検出電子機器(CMOS適合できる)と容易に一体化でき、それにより、全てのものを同じチップ上にパッケージングすることができる。
【0004】
先行技術のMEMSセンサは一般にレートグレードで動作する。すなわち、一般的に言うと、そのようなMEMSセンサは、0.1°/hr1/2よりも大きいレート分解能を有するとともに、該検出の分解能のためには100μgを要する。レートグレードセンサは、自動車産業におけるエアバッグ配備システム、車両安定化システム、およびナビゲーションシステムなどの特定の用途において有用である。しかし、より高いセンサ感度が必要とされる用途では、レートグレードセンサが適さない場合がある。例えば、宇宙産業の用途(ピコサテライトおよび惑星着陸船など)では、慣性グレードセンサが使用される。慣性グレードセンサは、一般に、0.001°/hr1/2未満のレート分解能を有するとともに、該検出の分解能のためには4μg未満しか必要でない。
【0005】
先行技術のMEMSセンサは、一般に、センサのサスペンションの形態に起因してレートグレードで動作する場合がある。一般に、そのようなMEMSセンサは、面内(または、水平)サスペンションを使用する(これは、そのような形態によりそのようなMEMSセンサを更に容易にかつ更に費用効率高く製造できるという事実に少なくとも部分的に起因する場合がある)。しかしながら、面内サスペンションの使用により、慣性グレード動作を得ることが難しくなる。これは多くの理由に起因する場合がある。例えば、そのような形態を用いると、サスペンションおよびプルーフマスが互いに幾何学的に結合される。すなわち、プルーフマスの幾何学的形態に影響を及ぼすことなくサスペンションの寸法を変えることができない。また、そのような形態は、センサのプルーフマス面積充填係数(または、言い換えると、プルーフマスが占める面積とセンサの全面積との間の比率)も制限する。このことは次に、プルーフマスの想定し得るサイズを制限する。プルーフマスのサイズの減少により、とりわけ、ブラウンノイズフロアが低下し、最小検出可能角速度が増大し、入力角速度に対する出力信号感度が悪化するとともに、信号対雑音比(SNR)が減少する場合がある。さらに、そのような配置では、面外偏向が抑制される場合があり、そのため、特定の場合には、性能に悪影響が及ぶ場合がある。
【0006】
しかしながら、MEMSセンサにおける面外サスペンションの使用はセンサ性能を大幅に向上させ、それにより、MEMSセンサは慣性グレードの動作を達成できる。そのような形態は、多くの理由によりそのようにする場合がある。例えば、該形態は、サスペンションをプルーフマスから分離し、それにより、プルーフマスのために利用できる空間に影響を及ぼすことなくサスペンションの寸法を最適化できるようにし、かつさらに、センサのプルーフマス面積充填係数および体積充填係数を大幅に向上させる。そのような形態は、更に大きいプルーフマスを可能にして、共振周波数およびブラウンノイズフロアを減少させるとともに、機械的品質係数、入力角速度に対する出力信号感度、およびSNRを向上させる。
【0007】
前述した理由および他の理由のため、当技術分野においては、慣性グレードでありかつ/または面外(または、垂直)サスペンションを使用するMEMSセンサ(MEMSジャイロスコープおよび加速度計を含む)、ならびにそのようなMEMSセンサを製造するための方法が必要である。
【発明の概要】
【0008】
面外サスペンションを使用する新規なMEMS MSDシステムが提供される。幾つかの態様では、そのようなMEMS MSDシステムは慣性グレードであり得る。
【0009】
本発明のMEMSジャイロスコープの一態様も提供され、このジャイロスコープは、共用プルーフマスと、一つまたは複数のアンカーと、一つまたは複数の可動コムと、複数のサスペンションとからなり、前記サスペンションは前記共用プルーフマスの面外にある。幾つかの態様では、そのようなMEMSジャイロスコープが慣性グレードであり得る。
【0010】
本発明のMEMS加速度計の一態様も提供され、この加速度計は、プルーフマスと、一つまたは複数のアンカーと、複数のサスペンションとからなり、前記サスペンションは前記プルーフマスの面外にある。幾つかの態様では、そのようなMEMS加速度計が慣性グレードであり得る。
【0011】
MEMS MSDシステムにおいて面外サスペンションを製造するための製造方法も提供される。そのような製造方法の一態様では、基板の上面からのエッチングによって面外サスペンションの第1の2つの側面が実現され、前記基板の下面からのエッチングによって前記面外サスペンションの残り2つの側面が実現される。本発明のMEMSジャイロスコープおよびMEMS加速度計の態様のための製造方法の態様も、面外サスペンションを製造するための前述した製造方法の用途として提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様の傾斜上面図である。
【図1B】本発明のMEMSジャイロスコープの他の態様の傾斜上面図である。
【図1C】駆動および/または検出電子機器を本発明のMEMSジャイロスコープに対してどのようにして接続できるのかを示している。
【図1D】駆動および/または検出電子機器を本発明のMEMSジャイロスコープに対してどのようにして接続できるのかを示している。
【図2A】本発明のMEMS加速度計の一態様の傾斜上面図である。
【図2B】本発明のMEMS加速度計の一態様の正面図である。
【図2C】本発明のMEMS加速度計の他の態様の正面図である。
【図2D】駆動および/または検出電子機器を本発明のMEMS加速度計に対してどのようにして接続できるのかを示している。
【図3A】先行技術のデュアルマスジャイロスコープを使用する想定し得る四重質量検出方式の一例である。
【図3B】先行技術のデュアルマスジャイロスコープがいかに四重質量検出方式で互いに隣接して「積み重ねる」ことができないかを示している。
【図3C】クアッドマスジャイロスコープが直線的に駆動されて直線的に検出される本発明の四重質量検出方式の態様である。
【図3D】クアッドマスジャイロスコープが直線的に駆動されて直線的に検出される本発明の四重質量検出方式の態様である。
【図3E】クアッドマスジャイロスコープが直線的に駆動されるが非直線的に検出される本発明の四重質量検出方式の態様である。
【図3F】クアッドマスジャイロスコープが直線的に駆動されるが非直線的に検出される本発明の四重質量検出方式の態様である。
【図3G】図3C〜図3Fの四重質量検出方式のための検出方向性を示している。
【図4A】MEMS MSDシステムで垂直サスペンションを実現するために使用される工程を示している。
【図4B】MEMS MSDシステムで垂直サスペンションを実現するために使用される工程を示している。
【図5A】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5B】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5C】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5D】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5E】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5F】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5G】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5H】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5I】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5J】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5K】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5L】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6A】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6B】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6C】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6D】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6E】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6F】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6G】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6H】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6I】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6J】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6K】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6L】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図7A】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図7B】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図7C】前記ジャイロスコープにおける特定の構成要素を短絡するために使用される開口を示す本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のSEM画像である。
【図8】本発明のMEMS加速度計の一態様のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
ジャイロスコープ
図1Aは本発明のMEMSジャイロスコープの一態様を示している。ジャイロスコープ10は、特に、共用プルーフマス20と、第1、第2、第3、および第4のアンカー30A、30B、30C、30Dと、第1および第2の駆動コム40A、40Bと、第1および第2の検出コム50A、50Bと、複数のサスペンション60とを備える。
【0014】
共用プルーフマス20は、前記ジャイロスコープ10の中心に配置され、第1、第2、第3、および第4の縁と、第1、第2、第3、および第4の角とを有する。幾つかの態様では、共用プルーフマス20が正方形状である。共用プルーフマス20(およびジャイロスコープ10の他の構成要素)が任意の誘電体物質から作製される。幾つかの態様では、共用プルーフマス20が結晶シリコン(Si)からなる。また、幾つかの態様では、共用プルーフマス20を上側マスと下側マスとに分割する酸化物層が存在する。ジャイロスコープ10の動作中、共用プルーフマス20が振動してもよい。ジャイロスコープ10の回転がある場合には、共用プルーフマス20が「二次振動」または直交方向の振動を受ける。そのような二次振動は、ジャイロスコープ10が取り付けられるまたは接続される物体または装置の角速度(したがって、角変位)を決定するために使用されてもよい。
【0015】
ジャイロスコープ10の各アンカー30A〜Dは前記共用プルーフマス20の縁と平行に位置してもよく、それにより、例えば、第1のアンカー30Aが共用プルーフマス20の第1の縁と平行に位置する。各アンカー30A〜Dは第1の角と第2の角とを有してもよい。幾つかの態様において、アンカー30A-Dは、共用プルーフマス20と同じ長さおよび厚さの範囲を有し、更に、それぞれが200μm〜400μmの範囲の幅を有する。前記アンカーの寸法の変化は一般にジャイロスコープ10の性能に影響を与えるべきでない。幾つかの態様では、アンカー30A〜Dが結晶Siから作製される。アンカー30A〜Dは、ジャイロスコープ10および/またはその構成要素をジャイロスコープ10が載置される基板に固定するまたは「アンカー固定する」ために使用される。
【0016】
サスペンション60はアンカー30A〜Bの第1および第2の角から面外にまたは垂直にまたは上方に延びる。同様に、サスペンション60が共用プルーフマス20の第1、第2、第3、および第4の角から面外に延びる。したがって、幾つかの態様では、前記共用プルーフマス20が、サスペンション60の下側に、特定のそのような態様ではアンカー30A〜Bと同一面内に置かれる。また、幾つかの態様において、前記サスペンション60は、5×5μm2〜100×100μm2の範囲の断面積を有し、特定のそのような態様では10×70μm2の断面積を有する。また、幾つかの態様において、前記サスペンション60は、150μm〜600μmの範囲の長さを有し、特定のそのような態様では250μmの長さを有する。サスペンション60の断面寸法および長さは、そのようなセンサの共振周波数、支持損失、品質係数、および/またはノイズレベル、ならびに回転速度に影響を及ぼす場合がある前記サスペンション60の剛性定数に影響を与え得る。一般的に言えば、サスペンション60の断面のサイズが増大すると、その剛性が増大し、サスペンション60の長さが増大すると、その剛性が低下する。サスペンション60の断面積および長さは、サスペンション60の剛性を最小にするように設計されるべきである。幾つかの態様では、サスペンション60が結晶Siから作製される。
【0017】
前記サスペンション60が可動コムのための支持を行なってもよい。幾つかの態様において、前記可動コムは、第1および第2の駆動コム40A〜Bと、第1および第2の検出コム50A〜Bとからなる。第1および第2の駆動コム40A〜Bは、第1、第2、第3、および第4の角を有する。同様に、第1および第2の検出コム50A〜Bは、第1、第2、第3、および第4の角を有する。前記アンカー30A〜Dおよび前記共用プルーフマス20から延びる前記サスペンション60は、前記コム40A〜B、50A〜Bが前記サスペンション60の上端に載置される状態で、前記コム40A〜B、50A〜Bの前記角と接続する。
【0018】
幾つかの態様では、駆動コム40A〜Bおよび検出コム50A〜Bが互いと同じ寸法を有し、ジャイロスコープ10が三回対称ジャイロスコープ(3FSG)であってもよい。すなわち、ジャイロスコープ10は、X軸と平行な中心線についての、Y軸と平行な中心線についての、およびジャイロスコープ10の対角線についての、3つの幾何学的対称性を有する。そのような対称性は、前記ジャイロスコープ10の駆動モードおよび検出モードの適合に役立つ。駆動コム40A〜Bは、バネ-質量-ダンパシステムの(例えばX方向での)作動のために使用される。回転速度が(例えばZ方向に)加えられると、外積方向(例えばY方向)のコリオリの力を検出するために検出コム50A〜Bが使用される。幾つかの態様では、コム40A〜B、50A〜Bが結晶Siから作製される。
【0019】
ジャイロスコープ10の全プルーフマスが共用プルーフマス20+2種類のコム40A〜B、50A〜Bであってもよい。幾つかの態様では、全駆動プルーフマスが共用プルーフマス20+第1および第2の駆動コム40A〜Bであり、かつ同様に、全検出プルーフマスが共用プルーフマス20+第1および第2の検出コム50A〜Bである。全プルーフマスは、100μm〜3mmの範囲の長さおよび幅と、10μm〜300μmの範囲の厚さとを有してもよい。特定の態様において、全プルーフマスは、1200μm×1200μm×200μmであり、73.4%のプルーフマス面積充填係数を有する。また、幾つかの態様では、全プルーフマスが30μg〜3mgの範囲の重量を有する。特定の態様では、2種類のコム40A〜B、50A〜Bが全プルーフマスの10%未満の面積および重量を備える。
【0020】
図1Bは、本発明のMEMSジャイロスコープ10'の他の態様、具体的にはジンバル状のMEMSジャイロスコープ10'を示している。この態様では、前記ジャイロスコープ10'を該ジャイロスコープ10'が載置される基板に対して固定するまたは「アンカー固定する」ために4つのアンカー30A'〜30D'が使用される。この場合、外側プルーフマス(またはジンバル)20A'を支持するために外側サスペンション60A'が面外に(または、サスペンションから外側に)延びる。このとき、内側サスペンション60B'が前記外側プルーフマス20A'から面外に延びる。前記内側サスペンション60B'の上端に載置されるのは内側プルーフマス20B'である。図1Bから分かるように、この態様では、プルーフマス20A'〜B'は、(図1Aの場合のように)それらのそれぞれのサスペンション60A'〜B'の下側に吊るされているのではなく、それらのそれぞれのサスペンション60A'〜B'の上端に載置される。この態様では、外側プルーフマス20A'が駆動モード(X軸)で振動し得、一方、内側プルーフマス20B'が検出モード(Y軸)で振動し得る。そのような形態は、検出動作を2つの直交方向に分離し得る。
【0021】
加速度計
図2Aは、本発明のMEMS加速度計の一態様を示している。加速度計110は、特に、プルーフマス120と、第1、第2、第3、および第4のアンカー130A、130B、130C、130Dと、複数のサスペンション160とを備え得る。
【0022】
プルーフマス120は、前記加速度計110の中心に配置され、第1、第2、第3、および第4の角を有する。幾つかの態様では、プルーフマス120を上側マス122Aと下側マス122Bとに分ける酸化物層が存在する。また、幾つかの態様において、上側マス122Aおよび下側マス122Bは、100μm〜3mmの範囲の長さおよび幅を有するとともに、10μm〜300μmの範囲の厚さを有する。また、幾つかの態様では、プルーフマス120が30μg〜3mgの範囲の重量を有する。ジャイロスコープと同様に、プルーフマス120の重量を増大させると、加速度計110の感度を高めることができ、一方、プルーフマス120の寸法を増大させると、性能に悪影響を与える場合がある。プルーフマス120(および加速度計110の他の構成要素)は任意の誘電体物質から作製される。幾つかの態様では、プルーフマス120が結晶Siから作製される。加速度計110が取り付けられるまたは接続される物体または装置が移動する場合には、プルーフマス120が振動しまたは変位される。そのような振動または変位は、そのような物体または装置の角加速度を決定するために使用される。
【0023】
加速度計110の各アンカー130A〜Dはプルーフマス120の角にまたはその付近に位置し、それにより、例えば、第1のアンカー130Aがプルーフマス120の第1の角にまたはその付近に位置する。各アンカー130A〜Dが第1の角を有する。前記アンカー130A〜Dの寸法の変化は一般に加速度計110の性能に影響を与えるべきでない。幾つかの態様では、アンカー130A〜Dが結晶Siから作製される。アンカー130A〜Dは、加速度計110および/またはその構成要素を加速度計110が載置された基板に固定するまたは「アンカー固定する」ために使用される。
【0024】
サスペンション160がアンカー130A〜Dの第1の角から面外にまたは垂直にまたは上方に延びてもよく、かつ、プルーフマス120の第1、第2、第3、および第4の角と接続してもよい。したがって、幾つかの態様では、プルーフマス120が前記サスペンション160の上端に載置される。そのような形態は、単一のモードでの検出のみを必要とする加速度計の機能と一致する。幾つかの態様において、前記サスペンション160は、5×5μm2〜100×100μm2の範囲の断面積を有する。また、幾つかの態様において、前記サスペンション160は、250μm〜600μmの範囲の長さを有する。サスペンション160の断面寸法および長さは、そのような寸法および長さが同様にジャイロスコープ10に影響を与える(前述した)ように前記サスペンション160の剛性定数に影響を及ぼす場合があり、より具体的には、加速度計の分解能に影響を与える場合がある。幾つかの態様では、サスペンション160が結晶Siから作製される。
【0025】
図2Bおよび図2Cは、本発明のMEMS加速度計の2つの態様の正面図を示している。図2Bは、図2Aと同様、プルーフマス120がサスペンション160上に載置される態様を示している。図2Cは、サスペンション160が上側マス122Aに直接に接続し、下側マス122Bが前記上側マス122Aよりも小さく、したがって、下側マス122Bが前記上側マス122Aの下側に「吊り下がる」他の態様を示している。幾つかの態様において、前記下側マス122Bは前記上側マス122Aよりも長さが100μm〜200μm短い。そのような形態は、後述する製造方法で選択エッチング中に達成され得る。図2Bと図2Cとの比較により分かるように、図2Cの形態はサスペンション160の長さの増大を可能にする。図2Cは、本発明の利点である、サスペンション160とプルーフマス120との幾何学的な分離を更に明らかにする。
【0026】
クアッドマスMEMSジャイロスコープおよび他のセンサ
面外(または垂直)サスペンションの使用は、マルチマスセンサに関して更なる利点を与える。一例として、マルチマスジャイロスコープは、図3Aから分かるように、2つの先行技術のデュアルマスジャイロスコープ210A、210Bを対向する方向に向けて互いに隣接して配置することより実施される(アンカーが212として符号付けされ、面内サスペンションが214として符号付けされる)。そのような配置には多くの欠点が存在する。例えば、この配置は、センサ(または、ジャイロスコープ)が占める全体の面積を2倍にする。さらに、そのような先行技術のデュアルマスジャイロスコープ210A〜Bは、検出情報を共有するために互いに配線されなければならない。そのような欠点は、そのような先行技術のデュアルマスジャイロスコープを使用して軽減することができない。なぜなら、図3Bから分かるように、互いに干渉する面内(または水平)サスペンション214の存在に起因して、そのようなジャイロスコープ210A〜Bを互いに隣接して「積み重ねる」ことができないからである。
【0027】
一方、図3C〜図3Fから分かるように、面外サスペンションの使用により、本発明の4つのセンサ(MEMSジャイロスコープおよび加速度計を含むが、これらに限定されない)を互いに隣接して配置できる。一例として、本発明のクアッドマスジャイロスコープでは、二重差動検出方式を作成するために本発明の4つのジャイロスコープ220A、220B、220C、220Dが互いに隣接して配置される。ジャイロスコープ220A〜Dは検出コムおよび/または駆動コム(したがって、電気的な検出および/または駆動信号回路)を共有してもよい。図3Cおよび図3Dに関して、そのようなクアッドマスジャイロスコープ220は直線的に駆動されて直線的に検出される。図3Eおよび図3Fに関しては、そのようなクアッドマスジャイロスコープ220が直線的に駆動されるが非直線的に検出される。第1の(駆動)信号、第3の(検出)信号、適用可能な場合には第4の(検出)信号が見い出され得る場所が250A、250C、250Dで符号付けされている(第2の(駆動)信号は、図示されないが、他の駆動信号と同様にDC分極電圧を供給するためにジャイロスコープ220A〜Dに接続される)。図3Cおよび図3Dと図3Eおよび図3Fとを比較することにより分かるように、図3Eおよび図3Fの態様は検出コムに関して平行板コンデンサを使用し、一方、図3Cおよび図3Dの態様はコム駆動コンデンサを使用する。平行板コンデンサは、変位に起因して、より多くの検出キャパシタンスおよびキャパシタンス変化を与えることができる。
【0028】
当業者に明らかなように、本明細書において与えられる面外(または、垂直)サスペンション方式は、ジャイロスコープ、加速度計、およびクアッドマスジャイロスコープに関する使用に限定されず、他のMEMS検出システムで使用することができる。具体的には、そのような面外サスペンション方式は、任意のMEMS MSDシステム(一例として、高周波MEMS共振器およびMEMSベースの機械フィルタを含むが、これらに限定されない)で使用できる。これは、検出情報を検出しおよび/または決定するためにMSDシステムがサスペンションに取り付けられるマスを使用するからである。
【0029】
製造方法
MEMSジャイロスコープおよび加速度計を含む本発明のMEMS MSDシステムは、様々なタイプのマイクロマシン加工を使用して製造できる。一例として、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)、LIGA、およびエレクトロフォーミングを含むが、これらに限定されない様々なタイプのバルクマイクロマシン加工が使用される。バルクマイクロマシン加工は、表面マイクロマシン加工を超える多くの利点を与える。例えば、バルクマイクロマシン加工は、より大きなプルーフマスおよび向上されたキャパシタンスを有するセンサを可能にする。また、一例として、表面マイクロマシン加工を使用すると、表面マイクロマシン加工された構造層の固有の機械的応力および応力勾配に部分的に起因して、横(ウエハ面内)寸法が一般にバルクマシン加工技術により可能とされる横寸法よりも緊密になる。
【0030】
前述したように、本発明のMEMS MSDシステムは面外サスペンションを使用する。以下の工程は、本MEMS MSDシステムにおける本面外サスペンションを製造するために使用され得る製造方法の一態様を表わす。第1に、図4Aから分かるように、面外サスペンションの第1の2つの側面506A〜Bを形成するために誘電体基板500が上面502からエッチングされる。幾つかの態様では、前記面外サスペンションの前記第1の2つの側面506A〜BがDRIEを使用してパターニングされる。第2に、図4Bから分かるように、前記面外サスペンションの他の2つの側面506C〜Dを形成するために前記誘電体基板500が下面504からエッチングされる。幾つかの態様では、前記面外サスペンションの前記他の2つの側面506C〜DがDRIEを使用してパターニングされる。前記サスペンションの断面および長さは、適用可能なMEMS MSDシステムの所望の性能特性によって決定され得る。
【0031】
ここで、先の段落で説明した製造方法の応用として、本発明のMEMSジャイロスコープの一態様および本発明のMEMS加速度計の一態様を製造する方法が与えられる。以下の方法は特定の順序で与えられるが、他の順序が使用されてもよく、かつ特定の工程を省略または追加してもよい。当業者に明らかなように、任意のエッチングの形状、およびそのような形状の寸法、ならびに任意の堆積金属の形状および深さは、センサおよびその構成要素の所望の寸法および形状によって決定されることに留意すべきである。
【0032】
MEMSジャイロスコープ
図5Aに示されるように、上面512および下面514を有するシリコンオンインシュレータ(SOI)基板などの基板510が設けられる。幾つかの態様において、前記基板510は、上面512から始まって、以下の層、すなわち、4μmの厚さを有する第1の酸化物層520と、100μmの厚さを有する第1のシリコン層522と、4μmの厚さを有する第2の酸化物層524と、570μmの厚さを有する第2のシリコン層526と、4μmの厚さを有する第3の酸化物層528とを有する。前記酸化物層520、524、528はそれぞれエッチング中に犠牲層として作用する。
【0033】
図5Bおよび図5Cに示されるように、共用プルーフマス、可動コム、および面外サスペンション、ならびに第2の酸化物層524によって分離される特定のジャイロスコープ構成要素の部分を短絡するために使用る開口530を画定するために、基板510の上面512が選択的にエッチングされる。一般的に言うと、前記開口530は、導電性の金属の絶縁保護コーティングを可能にしかつそれを貫通してエッチングされるトレンチが前記金属の堆積時に完全に閉じることができるようにするべく十分狭くすべきである。前記開口530にエッチングされるトレンチ内に導電材料を堆積させることにより、前記特定のジャイロスコープ構成要素の前記部分が「短絡され」、したがって互いに電気的に接続される。これらの工程において、共用プルーフマスのための接点パッドがエッチングされる。面外サスペンションを通じてセンサのアンカーに至るまで共用プルーフマスにより検出された信号がそのような接点パッドへ伝えられる。幾つかの態様では、エッチングが130μm〜140μmの深さまでであり、それにより、前記第1の酸化物層520、前記第1のシリコン層522、前記第2の酸化物層524、および前記第2のシリコン層526の一部を貫通してエッチングされる。
【0034】
図5Dに示されるように、第1の酸化物層520の残りの部分を除去するために基板510の上面512が更にエッチングされる。これにより、次の段落で説明される導電性金属の堆積のための基板510が調製される。
【0035】
図5Eに示されるように、この工程では、様々な技術(スパッタリング、メッキ、およびパルスレーザ堆積を含むが、これらに限定されない)により導電性金属を基板510の上面512に堆積させる。幾つかの態様では、低圧化学蒸着(LPCVD)を使用して、先の2つの工程でエッチングされた領域(例えば、開口530)で、シリコンゲルマニウム(SiGe)の絶縁保護コーティングを前記上面512に堆積させる。そのような導電性金属は全プルーフマスを短絡してもよい。この場合、全プルーフマスの短絡は、この態様では、アンカーに取り付けられるサスペンションに接続される部分である可動コムを介して行なわれる。可動コムからの信号がアンカーを介して面外サスペンションによって送られるように、そのような短絡が必要であり得る。
【0036】
図5Fに示されるように、基板510の上面512には先の工程で堆積させた導電性金属上にわたって薄い酸化物層を選択的に堆積させる。幾つかの態様では、LPCVDを使用して二酸化ケイ素(SiO2)を選択的に堆積させる。これは、特に、固定電極を画定するために使用される。固定電極は、駆動モードおよび検出モードの可動コム駆動電極と対向する固定コム駆動電極である。前記固定電極は、線形コム駆動キャパシタンスの他の端子に相当する(ジャイロスコープの駆動モードおよび検出モードの場合または加速度計の検出モードの場合であろうとなかろうと)。固定電極は、製造されたジャイロスコープを駆動回路および検出回路に結合させるために使用される(すなわち、CMOS)。幾つかの態様では、許容できる寄生容量に応じて酸化物の厚さが1μm未満〜10μmの範囲である。
【0037】
図5Gに示されるように、前記固定電極550とジャイロスコープとの間の領域が選択的にエッチングされる。幾つかの態様では、前記領域がDRIEを使用して第2の酸化物層524に至るまでエッチングされる。
【0038】
その後、図5Hに示されるように、幾つかの態様ではDRIEを使用して基板510の上面512に残存する酸化物層がエッチングされ、それにより、そのような酸化物の残りの部分が除去される。そのようなエッチングにより、固定電極550、共用プルーフマス20、および駆動・検出コム40A〜B、50A〜Bを実現する基板510の上面512の製造が完了する(図5Hから分かるように、可動コムの中央に、第2の酸化物層524の上下にある前記コムの部分を接続する「短絡」が存在する)。
【0039】
図5Iおよび図5Jに示されるように、幾つかの態様ではDRIEを使用して基板510の下面514が選択的にエッチングされ、それにより、ジャイロスコープの外側境界532が画定される。そのようなエッチングは50μmの深さまでである。
【0040】
図5Kに示されるように、基板510の下面514が更に選択的にエッチングされて、第3の酸化物層の選択された部分が除去され、それにより、更なるエッチングのための基板510の下面514が調製される。
【0041】
図5Lに示されるように、基板510の下面514が選択的にエッチングされてジャイロスコープが仕上げられる。外側境界では、前記下面514が第2の酸化物層524に至るまでエッチングされる。下面は、面外サスペンション60を実現するために250μm〜500μmの深さまでエッチングされる。幾つかの態様では、そのようなエッチングを行なうためにDRIEが使用される。そのようなエッチングは、特に、寄生容量を減少させる。
【0042】
MEMS加速度計
図6Aに示されるように、上面612および下面614を有するシリコンオンインシュレータ(SOI)基板などの基板610が設けられる。幾つかの態様において、前記基板610は、上面612から始まって、以下の層、すなわち、4μmの厚さを有する第1の酸化物層620と、100μmの厚さを有する第1のシリコン層622と、4μmの厚さを有する第2の酸化物層624と、570μmの厚さを有する第2のシリコン層626と、4μmの厚さを有する第3の酸化物層628とを有する。前記酸化物層620、624、628はそれぞれエッチング中に犠牲層として作用する。
【0043】
図6Bに示されるように、プルーフマスを「短絡する」ために使用されるトレンチのための開口630を画定するため、および面外サスペンションを画定するために、第1の酸化物層620が選択的にエッチングされる。さらに、図6Cに示されるように、開口630および面外サスペンションが130μm〜140μmの深さまでエッチングされる。幾つかの態様では、前記エッチングがDRIEを使用して行なわれる。
【0044】
図6Dに示されるように、第1の酸化物層620の残りの部分を除去するために基板610の上面612が更にエッチングされる。幾つかの態様では、前記エッチングがDRIEを使用して行なわれる。これにより、次の段落で説明される導電性金属の堆積のための基板610が調製される。
【0045】
図6Eに示されるように、この工程では、様々な技術(スパッタリング、メッキ、およびパルスレーザ堆積を含むが、これらに限定されない)により導電性金属を基板610の上面612に堆積させる。幾つかの態様では、低圧化学蒸着(LPCVD)を使用して、開口630および面外サスペンションで、シリコンゲルマニウム(SiGe)の絶縁保護コーティングを前記上面612に堆積させる。ジャイロスコープと同様に、開口に堆積させた導電性金属はプルーフマスの一部を短絡する(すなわち、第2の酸化物層の上下部分)。
【0046】
図6Fに示されるように、基板610の上面612に薄い酸化物層を選択的に堆積させる。幾つかの態様では、LPCVDを使用して二酸化ケイ素(SiO2)を選択的に堆積させる。これは、特に、絶縁電極を画定するために使用される。絶縁電極は、検出目的のために必要な電気信号を伝える。幾つかの態様では、最大許容寄生容量に応じて酸化物の厚さが1μm未満〜10μmの範囲である。
【0047】
図6Gに示されるように、絶縁電極650と加速度計との間の領域が選択的にエッチングされる。幾つかの態様では、前記領域がDRIEを使用して第2の酸化物層624に至るまでエッチングされる。
【0048】
その後、図6Hに示されるように、幾つかの態様ではDRIEを使用して基板610の上面612に残存する酸化物層がエッチングされ、それにより、そのような酸化物の残りの部分が除去される。そのようなエッチングにより、絶縁電極650およびプルーフマス120を実現する基板610の上面612の製造が完了する。
【0049】
図6Iおよび図6Jに示されるように、幾つかの態様ではDRIEを使用して基板610の下面614が選択的にエッチングされ、それにより、加速度計の外側境界632が画定される。そのようなエッチングは50μmの深さまでである。
【0050】
図6Kに示されるように、基板610の下面614が更に選択的にエッチングされて、第3の酸化物層628の選択された部分が除去され、それにより、更なるエッチングのための基板610の下面614が調製される。
【0051】
図6Lに示されるように、基板610の下面614が選択的にエッチングされて加速度計が仕上げられる。外側境界では、前記下面614が第2の酸化物層624に至るまでエッチングされる。面外サスペンションの周囲では、下面614が250μm〜550μmの深さまでエッチングされ、それにより、前記サスペンション160が実現される。幾つかの態様では、そのようなエッチングを行なうためにDRIEが使用される。そのようなエッチングは、特に、寄生容量を減少させる。
【0052】
検査結果
MEMSジャイロスコープ
本発明のMEMSジャイロスコープの一態様を、先行技術のMEMSジャイロスコープに対して検査した。そのような先行技術のジャイロスコープは、以下の刊行物、すなわち、A. Sharm, F. Zaman, B. Amini, F. Ayazi, 「A High-Q In-Plane SOI Tuning Fork Gyroscope」, IEEE, 2004, pp.467〜470に記載されている。そのようなジャイロスコープは、同じセンサ面積2mm2およびウエハ厚675μmを有していた。そのようなジャイロスコープ間の重要な相違点は、先行技術のMEMSジャイロスコープが面内サスペンションを使用したのに対し、本発明のMEMSジャイロスコープが面外サスペンションを使用したという点であった。本発明のMEMSジャイロスコープに関して、そのような検査はCOMSOL Multiphysics v3.5を使用して行った。先行技術のジャイロスコープの性能結果は前述した刊行物から得られた。各ジャイロスコープの性能の比較を以下の表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1から分かるように、本発明のMEMSジャイロスコープでは、同じ全装置面積(すなわち、2mm2)において、全プルーフマスサイズは一桁(すなわち、10倍)超、増大する。品質係数、駆動振幅、および共振周波数は4.7倍向上する。支配的なブラウンノイズフロアは、1/22に、すなわち一桁超低下する。更に、検出されたコリオリ変位、出力信号、およびセンサ感度が103倍向上する。最後に、SNRは三桁超向上する。
【0055】
表2は、本発明のMEMSジャイロスコープの様々な態様における共振周波数および結合割合を示している。そのようなシミュレーション結果はCOMSOL Multiphysics v3.5を使用して得られた。この表から分かるように、本発明のMEMSジャイロスコープのそのような様々な態様の分離比率は、先行技術のMEMSジャイロスコープ(すなわち、面内サスペンションを使用するMEMSジャイロスコープ)と同じ範囲内にある。したがって、本発明のMEMSジャイロスコープは、他の性能指標に悪影響を及ぼすことなく(表1に示されるように)性能を向上させることができる。
【0056】
【表2】
【0057】
MEMS加速度計
本発明のMEMS加速度計の態様を先行技術のMEMS加速度計に対して検査した。そのような先行技術の加速度計は、以下の刊行物、すなわち、B. V. AminiおよびF. Ayazi, 「Micro-Gravity Capacitive Silicon-On-Insulator Accelerometers」 Journal of Micromechanics, Vol.15, No.11, Oct. 2005, pp.2113〜2120に記載されている。加速度計間の重要な相違点は、先行技術のMEMS加速度計が面内サスペンションを使用したのに対し、本発明のMEMS加速度計が明らかに面外サスペンションを使用したという点であった。本発明のMEMS加速度計に関して、そのような検査はCOMSOL Multiphysics v3.5を使用して行った。先行技術の加速度計の性能結果は前述した刊行物から得られた。各加速度計の性能の比較を以下の表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
表3から分かるように、本発明のMEMS加速度計は、先行技術設計と同じまたは類似する性能を与えることができるが、プルーフマス面積は15%を下回る。得られる共振周波数は66%未満である。さらに、本発明を用いると、ブラウンノイズフロアは1μg未満のままである。更に、本発明のMEMS加速度計が先行技術設計と同じ装置面積を使用するように設計される場合には、性能が大幅に向上する。第1に、プルーフマスが大幅に大きくなる(約7mg)。更に、共振周波数が250Hzまで減少し、これは先行技術設計の共振周波数の13%未満である。加えて、ブラウンノイズフロアは完全に慣性グレード範囲内である。最後に、本発明を用いると、SNRは一桁超向上する。
【0060】
表4は、本発明のMEMS加速度計の様々な態様における共振周波数および結合割合を示している。そのようなシミュレーション結果はCOMSOL Multiphysics v3.5を使用して得られた。この表は、小さなプルーフマスで本発明を使用して達成される共振周波数の範囲を示している。
【0061】
【表4】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年5月27日に出願された米国仮特許出願第61/181,565号による優先権を主張し、その主題は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、微小電気機械(MEMS)質量-バネ-ダンパ(MSD)システムに関する。より具体的には、本発明は、慣性グレードでおよび/または面外(または垂直)サスペンション方式を使用するMEMSジャイロスコープおよび加速度計を含むMEMS MSDシステム、ならびにそのようなMEMS MSDシステムを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
MEMSジャイロスコープおよび加速度計などのMEMSセンサは当技術分野において公知である。過去数十年で、そのようなセンサは大きな関心を集めてきた。MEMS技術は、他にも理由はあるが、それが効率的なパッケージングを可能にし、センサ面積を最小にし、電力消費量を大幅に減らすため、魅力的である。さらに、より具体的には、MEMSセンサを駆動電子機器および検出電子機器(CMOS適合できる)と容易に一体化でき、それにより、全てのものを同じチップ上にパッケージングすることができる。
【0004】
先行技術のMEMSセンサは一般にレートグレードで動作する。すなわち、一般的に言うと、そのようなMEMSセンサは、0.1°/hr1/2よりも大きいレート分解能を有するとともに、該検出の分解能のためには100μgを要する。レートグレードセンサは、自動車産業におけるエアバッグ配備システム、車両安定化システム、およびナビゲーションシステムなどの特定の用途において有用である。しかし、より高いセンサ感度が必要とされる用途では、レートグレードセンサが適さない場合がある。例えば、宇宙産業の用途(ピコサテライトおよび惑星着陸船など)では、慣性グレードセンサが使用される。慣性グレードセンサは、一般に、0.001°/hr1/2未満のレート分解能を有するとともに、該検出の分解能のためには4μg未満しか必要でない。
【0005】
先行技術のMEMSセンサは、一般に、センサのサスペンションの形態に起因してレートグレードで動作する場合がある。一般に、そのようなMEMSセンサは、面内(または、水平)サスペンションを使用する(これは、そのような形態によりそのようなMEMSセンサを更に容易にかつ更に費用効率高く製造できるという事実に少なくとも部分的に起因する場合がある)。しかしながら、面内サスペンションの使用により、慣性グレード動作を得ることが難しくなる。これは多くの理由に起因する場合がある。例えば、そのような形態を用いると、サスペンションおよびプルーフマスが互いに幾何学的に結合される。すなわち、プルーフマスの幾何学的形態に影響を及ぼすことなくサスペンションの寸法を変えることができない。また、そのような形態は、センサのプルーフマス面積充填係数(または、言い換えると、プルーフマスが占める面積とセンサの全面積との間の比率)も制限する。このことは次に、プルーフマスの想定し得るサイズを制限する。プルーフマスのサイズの減少により、とりわけ、ブラウンノイズフロアが低下し、最小検出可能角速度が増大し、入力角速度に対する出力信号感度が悪化するとともに、信号対雑音比(SNR)が減少する場合がある。さらに、そのような配置では、面外偏向が抑制される場合があり、そのため、特定の場合には、性能に悪影響が及ぶ場合がある。
【0006】
しかしながら、MEMSセンサにおける面外サスペンションの使用はセンサ性能を大幅に向上させ、それにより、MEMSセンサは慣性グレードの動作を達成できる。そのような形態は、多くの理由によりそのようにする場合がある。例えば、該形態は、サスペンションをプルーフマスから分離し、それにより、プルーフマスのために利用できる空間に影響を及ぼすことなくサスペンションの寸法を最適化できるようにし、かつさらに、センサのプルーフマス面積充填係数および体積充填係数を大幅に向上させる。そのような形態は、更に大きいプルーフマスを可能にして、共振周波数およびブラウンノイズフロアを減少させるとともに、機械的品質係数、入力角速度に対する出力信号感度、およびSNRを向上させる。
【0007】
前述した理由および他の理由のため、当技術分野においては、慣性グレードでありかつ/または面外(または、垂直)サスペンションを使用するMEMSセンサ(MEMSジャイロスコープおよび加速度計を含む)、ならびにそのようなMEMSセンサを製造するための方法が必要である。
【発明の概要】
【0008】
面外サスペンションを使用する新規なMEMS MSDシステムが提供される。幾つかの態様では、そのようなMEMS MSDシステムは慣性グレードであり得る。
【0009】
本発明のMEMSジャイロスコープの一態様も提供され、このジャイロスコープは、共用プルーフマスと、一つまたは複数のアンカーと、一つまたは複数の可動コムと、複数のサスペンションとからなり、前記サスペンションは前記共用プルーフマスの面外にある。幾つかの態様では、そのようなMEMSジャイロスコープが慣性グレードであり得る。
【0010】
本発明のMEMS加速度計の一態様も提供され、この加速度計は、プルーフマスと、一つまたは複数のアンカーと、複数のサスペンションとからなり、前記サスペンションは前記プルーフマスの面外にある。幾つかの態様では、そのようなMEMS加速度計が慣性グレードであり得る。
【0011】
MEMS MSDシステムにおいて面外サスペンションを製造するための製造方法も提供される。そのような製造方法の一態様では、基板の上面からのエッチングによって面外サスペンションの第1の2つの側面が実現され、前記基板の下面からのエッチングによって前記面外サスペンションの残り2つの側面が実現される。本発明のMEMSジャイロスコープおよびMEMS加速度計の態様のための製造方法の態様も、面外サスペンションを製造するための前述した製造方法の用途として提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様の傾斜上面図である。
【図1B】本発明のMEMSジャイロスコープの他の態様の傾斜上面図である。
【図1C】駆動および/または検出電子機器を本発明のMEMSジャイロスコープに対してどのようにして接続できるのかを示している。
【図1D】駆動および/または検出電子機器を本発明のMEMSジャイロスコープに対してどのようにして接続できるのかを示している。
【図2A】本発明のMEMS加速度計の一態様の傾斜上面図である。
【図2B】本発明のMEMS加速度計の一態様の正面図である。
【図2C】本発明のMEMS加速度計の他の態様の正面図である。
【図2D】駆動および/または検出電子機器を本発明のMEMS加速度計に対してどのようにして接続できるのかを示している。
【図3A】先行技術のデュアルマスジャイロスコープを使用する想定し得る四重質量検出方式の一例である。
【図3B】先行技術のデュアルマスジャイロスコープがいかに四重質量検出方式で互いに隣接して「積み重ねる」ことができないかを示している。
【図3C】クアッドマスジャイロスコープが直線的に駆動されて直線的に検出される本発明の四重質量検出方式の態様である。
【図3D】クアッドマスジャイロスコープが直線的に駆動されて直線的に検出される本発明の四重質量検出方式の態様である。
【図3E】クアッドマスジャイロスコープが直線的に駆動されるが非直線的に検出される本発明の四重質量検出方式の態様である。
【図3F】クアッドマスジャイロスコープが直線的に駆動されるが非直線的に検出される本発明の四重質量検出方式の態様である。
【図3G】図3C〜図3Fの四重質量検出方式のための検出方向性を示している。
【図4A】MEMS MSDシステムで垂直サスペンションを実現するために使用される工程を示している。
【図4B】MEMS MSDシステムで垂直サスペンションを実現するために使用される工程を示している。
【図5A】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5B】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5C】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5D】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5E】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5F】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5G】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5H】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5I】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5J】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5K】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図5L】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6A】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6B】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6C】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6D】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6E】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6F】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6G】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6H】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6I】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6J】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6K】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図6L】本発明のMEMS加速度計の一態様のための製造方法の一態様における様々な工程の断面を示している。
【図7A】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図7B】本発明のMEMSジャイロスコープの一態様の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図7C】前記ジャイロスコープにおける特定の構成要素を短絡するために使用される開口を示す本発明のMEMSジャイロスコープの一態様のSEM画像である。
【図8】本発明のMEMS加速度計の一態様のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
ジャイロスコープ
図1Aは本発明のMEMSジャイロスコープの一態様を示している。ジャイロスコープ10は、特に、共用プルーフマス20と、第1、第2、第3、および第4のアンカー30A、30B、30C、30Dと、第1および第2の駆動コム40A、40Bと、第1および第2の検出コム50A、50Bと、複数のサスペンション60とを備える。
【0014】
共用プルーフマス20は、前記ジャイロスコープ10の中心に配置され、第1、第2、第3、および第4の縁と、第1、第2、第3、および第4の角とを有する。幾つかの態様では、共用プルーフマス20が正方形状である。共用プルーフマス20(およびジャイロスコープ10の他の構成要素)が任意の誘電体物質から作製される。幾つかの態様では、共用プルーフマス20が結晶シリコン(Si)からなる。また、幾つかの態様では、共用プルーフマス20を上側マスと下側マスとに分割する酸化物層が存在する。ジャイロスコープ10の動作中、共用プルーフマス20が振動してもよい。ジャイロスコープ10の回転がある場合には、共用プルーフマス20が「二次振動」または直交方向の振動を受ける。そのような二次振動は、ジャイロスコープ10が取り付けられるまたは接続される物体または装置の角速度(したがって、角変位)を決定するために使用されてもよい。
【0015】
ジャイロスコープ10の各アンカー30A〜Dは前記共用プルーフマス20の縁と平行に位置してもよく、それにより、例えば、第1のアンカー30Aが共用プルーフマス20の第1の縁と平行に位置する。各アンカー30A〜Dは第1の角と第2の角とを有してもよい。幾つかの態様において、アンカー30A-Dは、共用プルーフマス20と同じ長さおよび厚さの範囲を有し、更に、それぞれが200μm〜400μmの範囲の幅を有する。前記アンカーの寸法の変化は一般にジャイロスコープ10の性能に影響を与えるべきでない。幾つかの態様では、アンカー30A〜Dが結晶Siから作製される。アンカー30A〜Dは、ジャイロスコープ10および/またはその構成要素をジャイロスコープ10が載置される基板に固定するまたは「アンカー固定する」ために使用される。
【0016】
サスペンション60はアンカー30A〜Bの第1および第2の角から面外にまたは垂直にまたは上方に延びる。同様に、サスペンション60が共用プルーフマス20の第1、第2、第3、および第4の角から面外に延びる。したがって、幾つかの態様では、前記共用プルーフマス20が、サスペンション60の下側に、特定のそのような態様ではアンカー30A〜Bと同一面内に置かれる。また、幾つかの態様において、前記サスペンション60は、5×5μm2〜100×100μm2の範囲の断面積を有し、特定のそのような態様では10×70μm2の断面積を有する。また、幾つかの態様において、前記サスペンション60は、150μm〜600μmの範囲の長さを有し、特定のそのような態様では250μmの長さを有する。サスペンション60の断面寸法および長さは、そのようなセンサの共振周波数、支持損失、品質係数、および/またはノイズレベル、ならびに回転速度に影響を及ぼす場合がある前記サスペンション60の剛性定数に影響を与え得る。一般的に言えば、サスペンション60の断面のサイズが増大すると、その剛性が増大し、サスペンション60の長さが増大すると、その剛性が低下する。サスペンション60の断面積および長さは、サスペンション60の剛性を最小にするように設計されるべきである。幾つかの態様では、サスペンション60が結晶Siから作製される。
【0017】
前記サスペンション60が可動コムのための支持を行なってもよい。幾つかの態様において、前記可動コムは、第1および第2の駆動コム40A〜Bと、第1および第2の検出コム50A〜Bとからなる。第1および第2の駆動コム40A〜Bは、第1、第2、第3、および第4の角を有する。同様に、第1および第2の検出コム50A〜Bは、第1、第2、第3、および第4の角を有する。前記アンカー30A〜Dおよび前記共用プルーフマス20から延びる前記サスペンション60は、前記コム40A〜B、50A〜Bが前記サスペンション60の上端に載置される状態で、前記コム40A〜B、50A〜Bの前記角と接続する。
【0018】
幾つかの態様では、駆動コム40A〜Bおよび検出コム50A〜Bが互いと同じ寸法を有し、ジャイロスコープ10が三回対称ジャイロスコープ(3FSG)であってもよい。すなわち、ジャイロスコープ10は、X軸と平行な中心線についての、Y軸と平行な中心線についての、およびジャイロスコープ10の対角線についての、3つの幾何学的対称性を有する。そのような対称性は、前記ジャイロスコープ10の駆動モードおよび検出モードの適合に役立つ。駆動コム40A〜Bは、バネ-質量-ダンパシステムの(例えばX方向での)作動のために使用される。回転速度が(例えばZ方向に)加えられると、外積方向(例えばY方向)のコリオリの力を検出するために検出コム50A〜Bが使用される。幾つかの態様では、コム40A〜B、50A〜Bが結晶Siから作製される。
【0019】
ジャイロスコープ10の全プルーフマスが共用プルーフマス20+2種類のコム40A〜B、50A〜Bであってもよい。幾つかの態様では、全駆動プルーフマスが共用プルーフマス20+第1および第2の駆動コム40A〜Bであり、かつ同様に、全検出プルーフマスが共用プルーフマス20+第1および第2の検出コム50A〜Bである。全プルーフマスは、100μm〜3mmの範囲の長さおよび幅と、10μm〜300μmの範囲の厚さとを有してもよい。特定の態様において、全プルーフマスは、1200μm×1200μm×200μmであり、73.4%のプルーフマス面積充填係数を有する。また、幾つかの態様では、全プルーフマスが30μg〜3mgの範囲の重量を有する。特定の態様では、2種類のコム40A〜B、50A〜Bが全プルーフマスの10%未満の面積および重量を備える。
【0020】
図1Bは、本発明のMEMSジャイロスコープ10'の他の態様、具体的にはジンバル状のMEMSジャイロスコープ10'を示している。この態様では、前記ジャイロスコープ10'を該ジャイロスコープ10'が載置される基板に対して固定するまたは「アンカー固定する」ために4つのアンカー30A'〜30D'が使用される。この場合、外側プルーフマス(またはジンバル)20A'を支持するために外側サスペンション60A'が面外に(または、サスペンションから外側に)延びる。このとき、内側サスペンション60B'が前記外側プルーフマス20A'から面外に延びる。前記内側サスペンション60B'の上端に載置されるのは内側プルーフマス20B'である。図1Bから分かるように、この態様では、プルーフマス20A'〜B'は、(図1Aの場合のように)それらのそれぞれのサスペンション60A'〜B'の下側に吊るされているのではなく、それらのそれぞれのサスペンション60A'〜B'の上端に載置される。この態様では、外側プルーフマス20A'が駆動モード(X軸)で振動し得、一方、内側プルーフマス20B'が検出モード(Y軸)で振動し得る。そのような形態は、検出動作を2つの直交方向に分離し得る。
【0021】
加速度計
図2Aは、本発明のMEMS加速度計の一態様を示している。加速度計110は、特に、プルーフマス120と、第1、第2、第3、および第4のアンカー130A、130B、130C、130Dと、複数のサスペンション160とを備え得る。
【0022】
プルーフマス120は、前記加速度計110の中心に配置され、第1、第2、第3、および第4の角を有する。幾つかの態様では、プルーフマス120を上側マス122Aと下側マス122Bとに分ける酸化物層が存在する。また、幾つかの態様において、上側マス122Aおよび下側マス122Bは、100μm〜3mmの範囲の長さおよび幅を有するとともに、10μm〜300μmの範囲の厚さを有する。また、幾つかの態様では、プルーフマス120が30μg〜3mgの範囲の重量を有する。ジャイロスコープと同様に、プルーフマス120の重量を増大させると、加速度計110の感度を高めることができ、一方、プルーフマス120の寸法を増大させると、性能に悪影響を与える場合がある。プルーフマス120(および加速度計110の他の構成要素)は任意の誘電体物質から作製される。幾つかの態様では、プルーフマス120が結晶Siから作製される。加速度計110が取り付けられるまたは接続される物体または装置が移動する場合には、プルーフマス120が振動しまたは変位される。そのような振動または変位は、そのような物体または装置の角加速度を決定するために使用される。
【0023】
加速度計110の各アンカー130A〜Dはプルーフマス120の角にまたはその付近に位置し、それにより、例えば、第1のアンカー130Aがプルーフマス120の第1の角にまたはその付近に位置する。各アンカー130A〜Dが第1の角を有する。前記アンカー130A〜Dの寸法の変化は一般に加速度計110の性能に影響を与えるべきでない。幾つかの態様では、アンカー130A〜Dが結晶Siから作製される。アンカー130A〜Dは、加速度計110および/またはその構成要素を加速度計110が載置された基板に固定するまたは「アンカー固定する」ために使用される。
【0024】
サスペンション160がアンカー130A〜Dの第1の角から面外にまたは垂直にまたは上方に延びてもよく、かつ、プルーフマス120の第1、第2、第3、および第4の角と接続してもよい。したがって、幾つかの態様では、プルーフマス120が前記サスペンション160の上端に載置される。そのような形態は、単一のモードでの検出のみを必要とする加速度計の機能と一致する。幾つかの態様において、前記サスペンション160は、5×5μm2〜100×100μm2の範囲の断面積を有する。また、幾つかの態様において、前記サスペンション160は、250μm〜600μmの範囲の長さを有する。サスペンション160の断面寸法および長さは、そのような寸法および長さが同様にジャイロスコープ10に影響を与える(前述した)ように前記サスペンション160の剛性定数に影響を及ぼす場合があり、より具体的には、加速度計の分解能に影響を与える場合がある。幾つかの態様では、サスペンション160が結晶Siから作製される。
【0025】
図2Bおよび図2Cは、本発明のMEMS加速度計の2つの態様の正面図を示している。図2Bは、図2Aと同様、プルーフマス120がサスペンション160上に載置される態様を示している。図2Cは、サスペンション160が上側マス122Aに直接に接続し、下側マス122Bが前記上側マス122Aよりも小さく、したがって、下側マス122Bが前記上側マス122Aの下側に「吊り下がる」他の態様を示している。幾つかの態様において、前記下側マス122Bは前記上側マス122Aよりも長さが100μm〜200μm短い。そのような形態は、後述する製造方法で選択エッチング中に達成され得る。図2Bと図2Cとの比較により分かるように、図2Cの形態はサスペンション160の長さの増大を可能にする。図2Cは、本発明の利点である、サスペンション160とプルーフマス120との幾何学的な分離を更に明らかにする。
【0026】
クアッドマスMEMSジャイロスコープおよび他のセンサ
面外(または垂直)サスペンションの使用は、マルチマスセンサに関して更なる利点を与える。一例として、マルチマスジャイロスコープは、図3Aから分かるように、2つの先行技術のデュアルマスジャイロスコープ210A、210Bを対向する方向に向けて互いに隣接して配置することより実施される(アンカーが212として符号付けされ、面内サスペンションが214として符号付けされる)。そのような配置には多くの欠点が存在する。例えば、この配置は、センサ(または、ジャイロスコープ)が占める全体の面積を2倍にする。さらに、そのような先行技術のデュアルマスジャイロスコープ210A〜Bは、検出情報を共有するために互いに配線されなければならない。そのような欠点は、そのような先行技術のデュアルマスジャイロスコープを使用して軽減することができない。なぜなら、図3Bから分かるように、互いに干渉する面内(または水平)サスペンション214の存在に起因して、そのようなジャイロスコープ210A〜Bを互いに隣接して「積み重ねる」ことができないからである。
【0027】
一方、図3C〜図3Fから分かるように、面外サスペンションの使用により、本発明の4つのセンサ(MEMSジャイロスコープおよび加速度計を含むが、これらに限定されない)を互いに隣接して配置できる。一例として、本発明のクアッドマスジャイロスコープでは、二重差動検出方式を作成するために本発明の4つのジャイロスコープ220A、220B、220C、220Dが互いに隣接して配置される。ジャイロスコープ220A〜Dは検出コムおよび/または駆動コム(したがって、電気的な検出および/または駆動信号回路)を共有してもよい。図3Cおよび図3Dに関して、そのようなクアッドマスジャイロスコープ220は直線的に駆動されて直線的に検出される。図3Eおよび図3Fに関しては、そのようなクアッドマスジャイロスコープ220が直線的に駆動されるが非直線的に検出される。第1の(駆動)信号、第3の(検出)信号、適用可能な場合には第4の(検出)信号が見い出され得る場所が250A、250C、250Dで符号付けされている(第2の(駆動)信号は、図示されないが、他の駆動信号と同様にDC分極電圧を供給するためにジャイロスコープ220A〜Dに接続される)。図3Cおよび図3Dと図3Eおよび図3Fとを比較することにより分かるように、図3Eおよび図3Fの態様は検出コムに関して平行板コンデンサを使用し、一方、図3Cおよび図3Dの態様はコム駆動コンデンサを使用する。平行板コンデンサは、変位に起因して、より多くの検出キャパシタンスおよびキャパシタンス変化を与えることができる。
【0028】
当業者に明らかなように、本明細書において与えられる面外(または、垂直)サスペンション方式は、ジャイロスコープ、加速度計、およびクアッドマスジャイロスコープに関する使用に限定されず、他のMEMS検出システムで使用することができる。具体的には、そのような面外サスペンション方式は、任意のMEMS MSDシステム(一例として、高周波MEMS共振器およびMEMSベースの機械フィルタを含むが、これらに限定されない)で使用できる。これは、検出情報を検出しおよび/または決定するためにMSDシステムがサスペンションに取り付けられるマスを使用するからである。
【0029】
製造方法
MEMSジャイロスコープおよび加速度計を含む本発明のMEMS MSDシステムは、様々なタイプのマイクロマシン加工を使用して製造できる。一例として、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)、LIGA、およびエレクトロフォーミングを含むが、これらに限定されない様々なタイプのバルクマイクロマシン加工が使用される。バルクマイクロマシン加工は、表面マイクロマシン加工を超える多くの利点を与える。例えば、バルクマイクロマシン加工は、より大きなプルーフマスおよび向上されたキャパシタンスを有するセンサを可能にする。また、一例として、表面マイクロマシン加工を使用すると、表面マイクロマシン加工された構造層の固有の機械的応力および応力勾配に部分的に起因して、横(ウエハ面内)寸法が一般にバルクマシン加工技術により可能とされる横寸法よりも緊密になる。
【0030】
前述したように、本発明のMEMS MSDシステムは面外サスペンションを使用する。以下の工程は、本MEMS MSDシステムにおける本面外サスペンションを製造するために使用され得る製造方法の一態様を表わす。第1に、図4Aから分かるように、面外サスペンションの第1の2つの側面506A〜Bを形成するために誘電体基板500が上面502からエッチングされる。幾つかの態様では、前記面外サスペンションの前記第1の2つの側面506A〜BがDRIEを使用してパターニングされる。第2に、図4Bから分かるように、前記面外サスペンションの他の2つの側面506C〜Dを形成するために前記誘電体基板500が下面504からエッチングされる。幾つかの態様では、前記面外サスペンションの前記他の2つの側面506C〜DがDRIEを使用してパターニングされる。前記サスペンションの断面および長さは、適用可能なMEMS MSDシステムの所望の性能特性によって決定され得る。
【0031】
ここで、先の段落で説明した製造方法の応用として、本発明のMEMSジャイロスコープの一態様および本発明のMEMS加速度計の一態様を製造する方法が与えられる。以下の方法は特定の順序で与えられるが、他の順序が使用されてもよく、かつ特定の工程を省略または追加してもよい。当業者に明らかなように、任意のエッチングの形状、およびそのような形状の寸法、ならびに任意の堆積金属の形状および深さは、センサおよびその構成要素の所望の寸法および形状によって決定されることに留意すべきである。
【0032】
MEMSジャイロスコープ
図5Aに示されるように、上面512および下面514を有するシリコンオンインシュレータ(SOI)基板などの基板510が設けられる。幾つかの態様において、前記基板510は、上面512から始まって、以下の層、すなわち、4μmの厚さを有する第1の酸化物層520と、100μmの厚さを有する第1のシリコン層522と、4μmの厚さを有する第2の酸化物層524と、570μmの厚さを有する第2のシリコン層526と、4μmの厚さを有する第3の酸化物層528とを有する。前記酸化物層520、524、528はそれぞれエッチング中に犠牲層として作用する。
【0033】
図5Bおよび図5Cに示されるように、共用プルーフマス、可動コム、および面外サスペンション、ならびに第2の酸化物層524によって分離される特定のジャイロスコープ構成要素の部分を短絡するために使用る開口530を画定するために、基板510の上面512が選択的にエッチングされる。一般的に言うと、前記開口530は、導電性の金属の絶縁保護コーティングを可能にしかつそれを貫通してエッチングされるトレンチが前記金属の堆積時に完全に閉じることができるようにするべく十分狭くすべきである。前記開口530にエッチングされるトレンチ内に導電材料を堆積させることにより、前記特定のジャイロスコープ構成要素の前記部分が「短絡され」、したがって互いに電気的に接続される。これらの工程において、共用プルーフマスのための接点パッドがエッチングされる。面外サスペンションを通じてセンサのアンカーに至るまで共用プルーフマスにより検出された信号がそのような接点パッドへ伝えられる。幾つかの態様では、エッチングが130μm〜140μmの深さまでであり、それにより、前記第1の酸化物層520、前記第1のシリコン層522、前記第2の酸化物層524、および前記第2のシリコン層526の一部を貫通してエッチングされる。
【0034】
図5Dに示されるように、第1の酸化物層520の残りの部分を除去するために基板510の上面512が更にエッチングされる。これにより、次の段落で説明される導電性金属の堆積のための基板510が調製される。
【0035】
図5Eに示されるように、この工程では、様々な技術(スパッタリング、メッキ、およびパルスレーザ堆積を含むが、これらに限定されない)により導電性金属を基板510の上面512に堆積させる。幾つかの態様では、低圧化学蒸着(LPCVD)を使用して、先の2つの工程でエッチングされた領域(例えば、開口530)で、シリコンゲルマニウム(SiGe)の絶縁保護コーティングを前記上面512に堆積させる。そのような導電性金属は全プルーフマスを短絡してもよい。この場合、全プルーフマスの短絡は、この態様では、アンカーに取り付けられるサスペンションに接続される部分である可動コムを介して行なわれる。可動コムからの信号がアンカーを介して面外サスペンションによって送られるように、そのような短絡が必要であり得る。
【0036】
図5Fに示されるように、基板510の上面512には先の工程で堆積させた導電性金属上にわたって薄い酸化物層を選択的に堆積させる。幾つかの態様では、LPCVDを使用して二酸化ケイ素(SiO2)を選択的に堆積させる。これは、特に、固定電極を画定するために使用される。固定電極は、駆動モードおよび検出モードの可動コム駆動電極と対向する固定コム駆動電極である。前記固定電極は、線形コム駆動キャパシタンスの他の端子に相当する(ジャイロスコープの駆動モードおよび検出モードの場合または加速度計の検出モードの場合であろうとなかろうと)。固定電極は、製造されたジャイロスコープを駆動回路および検出回路に結合させるために使用される(すなわち、CMOS)。幾つかの態様では、許容できる寄生容量に応じて酸化物の厚さが1μm未満〜10μmの範囲である。
【0037】
図5Gに示されるように、前記固定電極550とジャイロスコープとの間の領域が選択的にエッチングされる。幾つかの態様では、前記領域がDRIEを使用して第2の酸化物層524に至るまでエッチングされる。
【0038】
その後、図5Hに示されるように、幾つかの態様ではDRIEを使用して基板510の上面512に残存する酸化物層がエッチングされ、それにより、そのような酸化物の残りの部分が除去される。そのようなエッチングにより、固定電極550、共用プルーフマス20、および駆動・検出コム40A〜B、50A〜Bを実現する基板510の上面512の製造が完了する(図5Hから分かるように、可動コムの中央に、第2の酸化物層524の上下にある前記コムの部分を接続する「短絡」が存在する)。
【0039】
図5Iおよび図5Jに示されるように、幾つかの態様ではDRIEを使用して基板510の下面514が選択的にエッチングされ、それにより、ジャイロスコープの外側境界532が画定される。そのようなエッチングは50μmの深さまでである。
【0040】
図5Kに示されるように、基板510の下面514が更に選択的にエッチングされて、第3の酸化物層の選択された部分が除去され、それにより、更なるエッチングのための基板510の下面514が調製される。
【0041】
図5Lに示されるように、基板510の下面514が選択的にエッチングされてジャイロスコープが仕上げられる。外側境界では、前記下面514が第2の酸化物層524に至るまでエッチングされる。下面は、面外サスペンション60を実現するために250μm〜500μmの深さまでエッチングされる。幾つかの態様では、そのようなエッチングを行なうためにDRIEが使用される。そのようなエッチングは、特に、寄生容量を減少させる。
【0042】
MEMS加速度計
図6Aに示されるように、上面612および下面614を有するシリコンオンインシュレータ(SOI)基板などの基板610が設けられる。幾つかの態様において、前記基板610は、上面612から始まって、以下の層、すなわち、4μmの厚さを有する第1の酸化物層620と、100μmの厚さを有する第1のシリコン層622と、4μmの厚さを有する第2の酸化物層624と、570μmの厚さを有する第2のシリコン層626と、4μmの厚さを有する第3の酸化物層628とを有する。前記酸化物層620、624、628はそれぞれエッチング中に犠牲層として作用する。
【0043】
図6Bに示されるように、プルーフマスを「短絡する」ために使用されるトレンチのための開口630を画定するため、および面外サスペンションを画定するために、第1の酸化物層620が選択的にエッチングされる。さらに、図6Cに示されるように、開口630および面外サスペンションが130μm〜140μmの深さまでエッチングされる。幾つかの態様では、前記エッチングがDRIEを使用して行なわれる。
【0044】
図6Dに示されるように、第1の酸化物層620の残りの部分を除去するために基板610の上面612が更にエッチングされる。幾つかの態様では、前記エッチングがDRIEを使用して行なわれる。これにより、次の段落で説明される導電性金属の堆積のための基板610が調製される。
【0045】
図6Eに示されるように、この工程では、様々な技術(スパッタリング、メッキ、およびパルスレーザ堆積を含むが、これらに限定されない)により導電性金属を基板610の上面612に堆積させる。幾つかの態様では、低圧化学蒸着(LPCVD)を使用して、開口630および面外サスペンションで、シリコンゲルマニウム(SiGe)の絶縁保護コーティングを前記上面612に堆積させる。ジャイロスコープと同様に、開口に堆積させた導電性金属はプルーフマスの一部を短絡する(すなわち、第2の酸化物層の上下部分)。
【0046】
図6Fに示されるように、基板610の上面612に薄い酸化物層を選択的に堆積させる。幾つかの態様では、LPCVDを使用して二酸化ケイ素(SiO2)を選択的に堆積させる。これは、特に、絶縁電極を画定するために使用される。絶縁電極は、検出目的のために必要な電気信号を伝える。幾つかの態様では、最大許容寄生容量に応じて酸化物の厚さが1μm未満〜10μmの範囲である。
【0047】
図6Gに示されるように、絶縁電極650と加速度計との間の領域が選択的にエッチングされる。幾つかの態様では、前記領域がDRIEを使用して第2の酸化物層624に至るまでエッチングされる。
【0048】
その後、図6Hに示されるように、幾つかの態様ではDRIEを使用して基板610の上面612に残存する酸化物層がエッチングされ、それにより、そのような酸化物の残りの部分が除去される。そのようなエッチングにより、絶縁電極650およびプルーフマス120を実現する基板610の上面612の製造が完了する。
【0049】
図6Iおよび図6Jに示されるように、幾つかの態様ではDRIEを使用して基板610の下面614が選択的にエッチングされ、それにより、加速度計の外側境界632が画定される。そのようなエッチングは50μmの深さまでである。
【0050】
図6Kに示されるように、基板610の下面614が更に選択的にエッチングされて、第3の酸化物層628の選択された部分が除去され、それにより、更なるエッチングのための基板610の下面614が調製される。
【0051】
図6Lに示されるように、基板610の下面614が選択的にエッチングされて加速度計が仕上げられる。外側境界では、前記下面614が第2の酸化物層624に至るまでエッチングされる。面外サスペンションの周囲では、下面614が250μm〜550μmの深さまでエッチングされ、それにより、前記サスペンション160が実現される。幾つかの態様では、そのようなエッチングを行なうためにDRIEが使用される。そのようなエッチングは、特に、寄生容量を減少させる。
【0052】
検査結果
MEMSジャイロスコープ
本発明のMEMSジャイロスコープの一態様を、先行技術のMEMSジャイロスコープに対して検査した。そのような先行技術のジャイロスコープは、以下の刊行物、すなわち、A. Sharm, F. Zaman, B. Amini, F. Ayazi, 「A High-Q In-Plane SOI Tuning Fork Gyroscope」, IEEE, 2004, pp.467〜470に記載されている。そのようなジャイロスコープは、同じセンサ面積2mm2およびウエハ厚675μmを有していた。そのようなジャイロスコープ間の重要な相違点は、先行技術のMEMSジャイロスコープが面内サスペンションを使用したのに対し、本発明のMEMSジャイロスコープが面外サスペンションを使用したという点であった。本発明のMEMSジャイロスコープに関して、そのような検査はCOMSOL Multiphysics v3.5を使用して行った。先行技術のジャイロスコープの性能結果は前述した刊行物から得られた。各ジャイロスコープの性能の比較を以下の表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1から分かるように、本発明のMEMSジャイロスコープでは、同じ全装置面積(すなわち、2mm2)において、全プルーフマスサイズは一桁(すなわち、10倍)超、増大する。品質係数、駆動振幅、および共振周波数は4.7倍向上する。支配的なブラウンノイズフロアは、1/22に、すなわち一桁超低下する。更に、検出されたコリオリ変位、出力信号、およびセンサ感度が103倍向上する。最後に、SNRは三桁超向上する。
【0055】
表2は、本発明のMEMSジャイロスコープの様々な態様における共振周波数および結合割合を示している。そのようなシミュレーション結果はCOMSOL Multiphysics v3.5を使用して得られた。この表から分かるように、本発明のMEMSジャイロスコープのそのような様々な態様の分離比率は、先行技術のMEMSジャイロスコープ(すなわち、面内サスペンションを使用するMEMSジャイロスコープ)と同じ範囲内にある。したがって、本発明のMEMSジャイロスコープは、他の性能指標に悪影響を及ぼすことなく(表1に示されるように)性能を向上させることができる。
【0056】
【表2】
【0057】
MEMS加速度計
本発明のMEMS加速度計の態様を先行技術のMEMS加速度計に対して検査した。そのような先行技術の加速度計は、以下の刊行物、すなわち、B. V. AminiおよびF. Ayazi, 「Micro-Gravity Capacitive Silicon-On-Insulator Accelerometers」 Journal of Micromechanics, Vol.15, No.11, Oct. 2005, pp.2113〜2120に記載されている。加速度計間の重要な相違点は、先行技術のMEMS加速度計が面内サスペンションを使用したのに対し、本発明のMEMS加速度計が明らかに面外サスペンションを使用したという点であった。本発明のMEMS加速度計に関して、そのような検査はCOMSOL Multiphysics v3.5を使用して行った。先行技術の加速度計の性能結果は前述した刊行物から得られた。各加速度計の性能の比較を以下の表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
表3から分かるように、本発明のMEMS加速度計は、先行技術設計と同じまたは類似する性能を与えることができるが、プルーフマス面積は15%を下回る。得られる共振周波数は66%未満である。さらに、本発明を用いると、ブラウンノイズフロアは1μg未満のままである。更に、本発明のMEMS加速度計が先行技術設計と同じ装置面積を使用するように設計される場合には、性能が大幅に向上する。第1に、プルーフマスが大幅に大きくなる(約7mg)。更に、共振周波数が250Hzまで減少し、これは先行技術設計の共振周波数の13%未満である。加えて、ブラウンノイズフロアは完全に慣性グレード範囲内である。最後に、本発明を用いると、SNRは一桁超向上する。
【0060】
表4は、本発明のMEMS加速度計の様々な態様における共振周波数および結合割合を示している。そのようなシミュレーション結果はCOMSOL Multiphysics v3.5を使用して得られた。この表は、小さなプルーフマスで本発明を使用して達成される共振周波数の範囲を示している。
【0061】
【表4】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.共用プルーフマスと、
b.一つまたは複数のアンカーと、
c.一つまたは複数の可動コムと、
d.複数のサスペンションと
を備え、
e.該複数のサスペンションが該共用プルーフマスの面外にある、
MEMSジャイロスコープ。
【請求項2】
慣性グレードMEMSジャイロスコープである、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項3】
前記共用プルーフマスが、前記一つまたは複数の可動コムと合わせて30μg〜3mgの範囲の合計重量を有する、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項4】
前記共用プルーフマスが前記サスペンションの下に配置される、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項5】
前記サスペンションが5×5μm2〜100×100μm2の範囲の断面積を有する、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項6】
前記サスペンションが150μm〜600μmの範囲の長さを有する、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項7】
前記一つまたは複数の可動コムが前記サスペンション上に載置される、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項8】
前記一つまたは複数の可動コムが第1および第2の検出コムと第1および第2の駆動コムとからなる、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項9】
三回対称ジャイロスコープである、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項10】
前記共用プルーフマス、前記一つまたは複数のアンカー、前記一つまたは複数の可動コム、および前記サスペンションが結晶シリコンからなる、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項11】
バルクマイクロマシン加工された、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項12】
a.プルーフマスと、
b.一つまたは複数のアンカーと、
c.複数のサスペンションと
を備え、
e.該複数のサスペンションが該プルーフマスの面外にある、
MEMS加速度計。
【請求項13】
慣性グレードMEMS加速度計である、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項14】
前記プルーフマスが、100μm〜3mmの範囲の長さおよび幅と、10μm〜300μmの範囲の厚さとを有する、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項15】
前記プルーフマスが上側マスと下側マスとからなる、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項16】
前記下側マスが前記上側マスよりも短い長さを有する、請求項15記載のMEMS加速度計。
【請求項17】
前記下側マスの長さが前記上側マスよりも100μm〜200μm短い、請求項16記載のMEMS加速度計。
【請求項18】
前記プルーフマスが30μg〜3mgの範囲の重量を有する、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項19】
前記プルーフマス、前記一つまたは複数のアンカー、および前記サスペンションが結晶シリコンからなる、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項20】
前記プルーフマスが前記サスペンション上に載置される、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項21】
前記サスペンションが5×5μm2〜100×100μm2の範囲の断面積を有する、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項22】
前記サスペンションが250μm〜600μmの範囲の長さを有する、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項23】
バルクマイクロマシン加工された、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項24】
a.複数のプルーフマスと、
b.一つまたは複数のアンカーと、
c.一つまたは複数の可動コムと、
d.複数のサスペンションと
を備え、
e.該サスペンションが該プルーフマスの面外にある、
クアッドマスMEMSジャイロスコープ。
【請求項25】
前記一つまたは複数の可動コムが複数の検出コムと複数の駆動コムとからなる、請求項24記載のクアッドマスMEMSジャイロスコープ。
【請求項26】
各プルーフマスがそれ自体の駆動コムをそれぞれ有するが、前記プルーフマスが前記検出コムを共用する、請求項25記載のクアッドマスMEMSジャイロスコープ。
【請求項27】
a.少なくとも一つのプルーフマスと、
b.複数のサスペンションと
を備え、
c.該サスペンションが該少なくとも一つのプルーフマスの面外にある、
MEMS質量-バネ-ダンパシステム。
【請求項28】
慣性グレード範囲のMEMS質量-バネ-ダンパシステムである、請求項27記載のMEMS質量-バネ-ダンパシステム。
【請求項29】
バルクマイクロマシン加工された、請求項27記載のMEMS質量-バネ-ダンパシステム。
【請求項30】
MEMS質量-バネ-ダンパシステムにおいて基板内に垂直サスペンションを製造するための方法であって、以下の工程を含む方法:
a.該基板の上面を選択的にエッチングすることにより該垂直サスペンションの第1の側面および第2の側面を実現する工程;および
b.該基板の下面を選択的にエッチングすることにより該垂直サスペンションの第3の側面および第4の側面を実現する工程。
【請求項31】
工程(a)および(b)におけるエッチングがDRIEを使用して行なわれる、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記MEMS質量-バネ-ダンパシステムが慣性グレードMEMSジャイロスコープである、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記MEMS質量-バネ-ダンパシステムが慣性グレードMEMS加速度計である、請求項30記載の方法。
【請求項1】
a.共用プルーフマスと、
b.一つまたは複数のアンカーと、
c.一つまたは複数の可動コムと、
d.複数のサスペンションと
を備え、
e.該複数のサスペンションが該共用プルーフマスの面外にある、
MEMSジャイロスコープ。
【請求項2】
慣性グレードMEMSジャイロスコープである、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項3】
前記共用プルーフマスが、前記一つまたは複数の可動コムと合わせて30μg〜3mgの範囲の合計重量を有する、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項4】
前記共用プルーフマスが前記サスペンションの下に配置される、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項5】
前記サスペンションが5×5μm2〜100×100μm2の範囲の断面積を有する、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項6】
前記サスペンションが150μm〜600μmの範囲の長さを有する、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項7】
前記一つまたは複数の可動コムが前記サスペンション上に載置される、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項8】
前記一つまたは複数の可動コムが第1および第2の検出コムと第1および第2の駆動コムとからなる、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項9】
三回対称ジャイロスコープである、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項10】
前記共用プルーフマス、前記一つまたは複数のアンカー、前記一つまたは複数の可動コム、および前記サスペンションが結晶シリコンからなる、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項11】
バルクマイクロマシン加工された、請求項1記載のMEMSジャイロスコープ。
【請求項12】
a.プルーフマスと、
b.一つまたは複数のアンカーと、
c.複数のサスペンションと
を備え、
e.該複数のサスペンションが該プルーフマスの面外にある、
MEMS加速度計。
【請求項13】
慣性グレードMEMS加速度計である、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項14】
前記プルーフマスが、100μm〜3mmの範囲の長さおよび幅と、10μm〜300μmの範囲の厚さとを有する、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項15】
前記プルーフマスが上側マスと下側マスとからなる、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項16】
前記下側マスが前記上側マスよりも短い長さを有する、請求項15記載のMEMS加速度計。
【請求項17】
前記下側マスの長さが前記上側マスよりも100μm〜200μm短い、請求項16記載のMEMS加速度計。
【請求項18】
前記プルーフマスが30μg〜3mgの範囲の重量を有する、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項19】
前記プルーフマス、前記一つまたは複数のアンカー、および前記サスペンションが結晶シリコンからなる、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項20】
前記プルーフマスが前記サスペンション上に載置される、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項21】
前記サスペンションが5×5μm2〜100×100μm2の範囲の断面積を有する、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項22】
前記サスペンションが250μm〜600μmの範囲の長さを有する、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項23】
バルクマイクロマシン加工された、請求項12記載のMEMS加速度計。
【請求項24】
a.複数のプルーフマスと、
b.一つまたは複数のアンカーと、
c.一つまたは複数の可動コムと、
d.複数のサスペンションと
を備え、
e.該サスペンションが該プルーフマスの面外にある、
クアッドマスMEMSジャイロスコープ。
【請求項25】
前記一つまたは複数の可動コムが複数の検出コムと複数の駆動コムとからなる、請求項24記載のクアッドマスMEMSジャイロスコープ。
【請求項26】
各プルーフマスがそれ自体の駆動コムをそれぞれ有するが、前記プルーフマスが前記検出コムを共用する、請求項25記載のクアッドマスMEMSジャイロスコープ。
【請求項27】
a.少なくとも一つのプルーフマスと、
b.複数のサスペンションと
を備え、
c.該サスペンションが該少なくとも一つのプルーフマスの面外にある、
MEMS質量-バネ-ダンパシステム。
【請求項28】
慣性グレード範囲のMEMS質量-バネ-ダンパシステムである、請求項27記載のMEMS質量-バネ-ダンパシステム。
【請求項29】
バルクマイクロマシン加工された、請求項27記載のMEMS質量-バネ-ダンパシステム。
【請求項30】
MEMS質量-バネ-ダンパシステムにおいて基板内に垂直サスペンションを製造するための方法であって、以下の工程を含む方法:
a.該基板の上面を選択的にエッチングすることにより該垂直サスペンションの第1の側面および第2の側面を実現する工程;および
b.該基板の下面を選択的にエッチングすることにより該垂直サスペンションの第3の側面および第4の側面を実現する工程。
【請求項31】
工程(a)および(b)におけるエッチングがDRIEを使用して行なわれる、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記MEMS質量-バネ-ダンパシステムが慣性グレードMEMSジャイロスコープである、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記MEMS質量-バネ-ダンパシステムが慣性グレードMEMS加速度計である、請求項30記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図5J】
【図5K】
【図5L】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【図6K】
【図6L】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図5J】
【図5K】
【図5L】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【図6K】
【図6L】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【公表番号】特表2012−528335(P2012−528335A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513255(P2012−513255)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/036406
【国際公開番号】WO2010/138717
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(511286296)キング アブドゥーラ ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/036406
【国際公開番号】WO2010/138717
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(511286296)キング アブドゥーラ ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー (2)
【Fターム(参考)】
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