説明

飲酒運転防止システム及び車内監視システム

【課題】運転者以外の他者によるアルコール検査の成り代わりを防止することができる飲酒運転防止システムを提供する。
【解決手段】車両の運転席に着座した乗員のアルコール検査を行うアルコール検出装置4と、入射光L1を発生する半導体レーザ12と、入射光L1が物体に反射した反射光L2を検知する受光素子15とを備え、半導体レーザ12から発生した入射光L1により、乗員の着座位置を囲んだ乗員区画空間を形成するセンサ制御装置5及び移動検出センサ10と、移動検出センサ10の検出結果に基づき、乗員区画空間に対する侵入及び退出の有無を判断する運転可否判定装置2を備える。運転可否判定装置2は、アルコール検出装置4により乗員の飲酒状態を検出せず、且つ乗員区画空間に対する退出及び侵入を検出しない際に、車両の運転を許可し、乗員の飲酒状態を検出せず、且つ乗員区画空間に対する退出又は侵入を検出した際に、発進規制を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲酒運転防止システム及び車内監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
飲酒運転の防止を目的として、特許文献1には、アルコール検知センサをステアリングハンドルに設けた装置が記載されている。この装置では、アルコール検知センサにより、運転者の呼気中から基準値を超えたアルコール濃度が検出された場合に、エンジンの始動を禁止する。
【特許文献1】特開昭63−53120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記装置では、酒気を帯びた運転者に替わって、他者がアルコール検査を行う可能性がある。このような不正行為が行われた場合、上記装置では不正行為を判別し難く、エンジン始動を許可してしまう。従って、運転者のアルコール検査が行われた後に、成り代わりの有無を判断する必要がある。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転者以外の他者によるアルコール検査の成り代わりを防止することができる飲酒運転防止システムを提供することにある。
【0005】
また、本発明の別の目的は、車内に監視対象の空間を生成し、該空間の異常を検出する車内監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両の運転席に着座した乗員のアルコール検査を行うアルコール検知手段と、入射波を発生する入射波発生手段と、入射波が物体に反射した反射波を検知する反射波検知手段とを備え、前記入射波発生手段から発生した入射波により、前記乗員の着座位置を囲んだ乗員区画空間を形成するセンサユニットと、前記センサユニットの検出結果に基づき、前記乗員区画空間に対する侵入及び退出の有無を判断する移動判断手段と、前記アルコール検知手段により前記乗員の飲酒状態を検出せず、且つ前記乗員区画空間に対する退出及び侵入を検出しない際に、車両の運転を許可し、前記乗員の飲酒状態を検出せず、且つ前記乗員区画空間に対する退出又は侵入を検出した際に、車両の運転規制を行う運転可否判定手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、運転者のアルコール検査を行う際に、センサユニットにより乗員の着座位置を囲んだ乗員区画空間が生成され、該乗員区画区間に対する外部からの侵入又は乗員の退出を検出する。このため、運転席の側方又は後方から、運転席に着座した乗員以外の者が、その乗員に成り代わってアルコール検査を行っても、運転を許可しないようにすることができる。また、運転席に着座した乗員が、運転席を離れた場合にも運転を許可しないようにすることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の飲酒運転防止システムにおいて、前記乗員が車両の運転席に着座したか否かを判断する着座検出手段をさらに備え、前記センサユニットは、前記着座検出手段により前記運転席に乗員が着座したと判断した際に、前記乗員区画空間を生成することを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、乗員が運転席に着座した際に、乗員区画空間を生成するので、着座した乗員を囲んだ状態で乗員区画空間を生成することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の飲酒運転防止システムにおいて、前記センサユニットは、運転席の各側方及び後方に入射波を出力することを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、運転席の各側方及び後方を囲むように入射波を出力するので、成り代わりを漏れなく検出することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲酒運転防止システムにおいて、前記センサユニットは、前記運転可否判定手段により運転が許可され前記車両が発進した後、該車両が停止した場合に前記乗員区画空間を生成し、前記運転可否判定手段は、該乗員区画空間に対する退出又は侵入の有無を判断し、該乗員区画空間に対する退出又は侵入を検出した場合には、アルコール検査を要求することを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、車両が一度発進した後に停止した際において、乗員区画空間を生成し、乗員区画空間に対する退出又は侵入を検出するようにした。また、退出又は侵入を検出した場合に、アルコール検査を再度要求するようにした。このため、発進後の成り代わり行為も防止することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、入射波を発生する入射波発生手段と、入射波が物体に反射した反射波を検知する反射波検知手段とを備え、前記入射波発生手段から発生した入射波により、前記乗員の着座位置を囲んだ乗員区画空間を形成するセンサユニットと、前記センサユニットの検出結果に基づき、前記乗員区画空間に対する侵入及び退出の有無を判断する移動判断手段とを備えたことを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、センサユニットにより乗員の着座位置を囲んだ乗員区画空間が生成され、該乗員区画区間に対する外部からの侵入又は乗員の退出を検出する。このため、乗員区画空間に対する外部からの侵入又は乗員の退出を検出した際に、警報又は通知を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、運転者以外の他者によるアルコール検査の成り代わりを防止することができる飲酒運転防止システムを提供することができる。また、車内に監視対象の空間を生成し、該空間の異常を検出する車内監視システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図6に従って説明する。図1は、車内監視システムとしての飲酒運転防止システム1の概略図である。本実施形態では、飲酒運転防止システム1は、移動判断手段、運転可否判定手段としての運転可否判定装置2、着座検出手段としての着座センサ3、アルコール検知手段としてのアルコール検出装置4、センサユニットを構成するセンサ制御装置5及び移動検出センサ10、ブレーキECU6及びシフトロック装置7を備えている。
【0016】
運転可否判定装置2は、CPU、RAM及びROM(図示略)を備えており、ROMには、飲酒運転防止プログラムが格納されている。運転可否判定装置2は、この飲酒運転プログラムに基づき、各種制御を司る。
【0017】
運転可否判定装置2は、イグニッションスイッチ20及び車速センサ21から各種信号を入力する。イグニッションスイッチ20は、イグニッションキーが運転席近傍のキーシ
リンダに挿入されて回動することにより、車両の電気系統の機能ポジションを変更する。機能ポジションには、「OFF」、「ACC(アクセサリ)」、「(イグニッション)ON」、「START」があり、イグニッションスイッチ20は、各時点で選択されたポジションを運転可否判定装置2に出力する。運転可否判定装置2は、イグニッションスイッチ20に基づき、イグニッションオン信号を入力すると、その信号を開始トリガとして、運転席に乗員が着座したか否かを判断する。また、運転可否判定装置2は、車速センサ21から車速パルスを入力し、車両が停止しているか否かを判断する。
【0018】
着座センサ3は、例えば乗員の着座による荷重を検出するセンサであって、例えば圧電素子、圧電素子からの電気信号を入力する制御回路等を備えている。乗員が運転席に着座すると、着座センサ3は運転可否判定装置2に検出信号を出力する。
【0019】
アルコール検出装置4は、通常の状況下において、運転席に着座した乗員のみが検査を実施することができる位置に設けられ、例えばステアリングハンドル、インストルメントパネルといった箇所に取り付けられている。このアルコール検出装置4は、マイコン、アルコールセンサ(図示略)等を備え、その近傍に設けられた検査開始スイッチ8が操作されると、その検査開始スイッチ8からのオン信号に基づき起動する。乗員が、アルコール検出装置4の呼気吸入口に息を吹きかけると、アルコール検出装置4のアルコールセンサは呼気吸入口から吸入した空気中のアルコール濃度を検出し、アルコール濃度に応じた電気信号をマイコンに出力する。マイコンは、アルコールセンサから入力した信号を解析して、呼気中のアルコール濃度を数値化する。アルコール濃度を演算すると、その数値を示すデータを運転可否判定装置2に出力する。
【0020】
センサ制御装置5は、運転可否判定装置2に基づき、各移動検出センサ10の駆動を制御する。各移動検出センサ10は、レーザ光を出射し、物体に反射した反射光を検出するセンサである。図1に示すように、移動検出センサ10は、レーザ駆動回路11、入射波発生手段としての半導体レーザ12、投光レンズ13と、受光レンズ14、反射波検知手段としての受光素子15及び増幅回路16とを備えている。レーザ駆動回路11は、運転可否判定装置2により検査開始要求を入力すると、半導体レーザ12に電圧を印加する。本実施形態では、半導体レーザ12は、可視領域以上の波長のレーザ光を発生する。半導体レーザ12から発生したレーザ光は、投光レンズ13によって、整形及び偏光される。
【0021】
また、移動検出センサ10から照射された入射光L1(入射波)は、車体の所定位置にそれぞれ反射し、反射して拡散した光の一部が、反射光L2(反射波)として移動検出センサ10の受光レンズ14に入る。受光素子15は、CCD(電荷転送素子:Charge coupled Device)や、光位置検出素子(PSD:Position Sensitive Detector)等から構成され、反射光を受けて光電変換し、反射光の検出位置や光強度を示す電気信号を増幅回路16に出力する。増幅回路16は、受光素子15の電気信号を増幅して、センサ制御装置5に出力する。
【0022】
この移動検出センサ10は、車両のルーフ内側に複数設けられ、図2に示すように、運転席S1を取り囲むように配置されている。具体的には、複数個の移動検出センサ10からなる列が、3列設けられている。第1の列A1は、車両のルーフのうち、運転席S1の左側であって、運転席S1と助手席S2との間の位置に設けられている。第2の列A2は、運転席S1の後方に車幅方向に設けられている。第3の列A3は、運転席S1の右側であって、運転席S1とドア(図示略)との間の位置に設けられている。各列を構成する移動検出センサ10は、人間の手や頭等が運転席側に差し込まれたり、乗員が運転席S1から離れようとした場合に、人体の一部を検出できる所定間隔毎(数百ミリ毎)で設けられている。また、第1の列A1は第2の列A2と連続し、第2の列A2は第3の列A3と連続している。即ち、各移動検出センサ10は、所定間隔で、運転席S1の左側から、後方
を介して右側までを囲むように配置されている。
【0023】
また、移動検出センサ10は、レーザ光を鉛直方向下方に向けて出力するようにルーフに対して固定されている。図2に示すように、各移動検出センサ10が入射光L1を下方に向けてそれぞれ出力すると、各移動検出センサ10から出力された入射光L1により運転席S1が区切られ、車室から区画された乗員区画空間Sが形成される。運転席S1に着座した乗員Dは、この乗員区画空間Sに収容される。
【0024】
例えば図3に示すように、各移動検出センサ10と向かい合う車体100等との間に物体がない場合、移動検出センサ10から出力された入射光L1は、車体100の所定箇所に当たって反射する。移動検出センサ10は、一定の方向に入射光L1を放射し続けるので、入射光L1が当たる入射位置は、各移動検出センサ10に対して一定の位置になっている。入射光L1が車体100に反射すると、拡散した反射光のうち、所定方向の反射光L2が移動検出センサ10に入る。移動検出センサ10と車体100との間に物体が無い場合、センサ制御装置5は、光の検出位置及び光の強度が一定の状態で反射光L2を検出し続ける。このため、運転可否判定装置2は、センサ制御装置5の検出状態に変化が無い場合には、センサ制御装置5は乗員区画空間Sに対する退出及び侵入が無いと判断する。
【0025】
図4に示すように、例えば運転席S1に着座した乗員Dの手101が乗員区画空間Sの外へ差し出された場合には、入射光L1は車体100に到達する前に手101に反射する。手101に反射した反射光L2を、移動検出センサ10が受光したとしても、定位置に反射した反射光L2を検出した場合と比べ、光検出位置、強度等が異なっているため、センサ制御装置5は、乗員Dの体の少なくとも一部が乗員区画空間Sの外に出たか、若しくは乗員区画空間Sの外側から、他者の頭や腕等の体の一部が差し込まれたと判断する。また、手101に反射した反射光L2を受光しない場合にも、乗員区画空間Sに対する退出又は侵入があったと判断する。
【0026】
この移動検出センサ10を用いて、運転可否判定装置2は、アルコール検出装置4によるアルコール検査の後、乗員区画空間Sからの退出又は外部から乗員区画空間Sへの侵入の有無を判断する。
【0027】
退出及び侵入が検出されない場合には、シフトロック装置7を駆動して、予め設定された発進規制を解除する。尚、本実施形態では、運転可否判定装置2は、イグニッションオン信号を入力すると、シフトロック装置7(図1参照)を駆動して、自動変速機の変速比を切り替えるシフトレバー(図示略)を「パーキング」等の位置で固定し、アルコール検査を行わなければ他のポジションへの切替ができないようにしている。このため、発進規制を解除する場合には、シフトロック装置7を駆動して、上記シフトレバーのロックを解除し、操作可能な状態にする。
【0028】
一方、乗員区画空間Sに対する退出又は侵入が検出された場合には、運転可否判定装置2は、アルコール濃度が基準値を超えたか否かに関わらずアルコール検出装置4の検出結果を初期化する。また、再検査を促すエラー通知をスピーカ9から出力する。さらにシフトレバーを「パーキング」等のポジションでロックした状態に維持する。或いは、ブレーキECU6を介して車両のブレーキ油圧系統に備えられたバルブを制御し、各車輪に制動力を加える。これにより、エンジン(図示略)が始動したとしても、発進することができない状態になる。
(処理手順)
以下、本実施形態の処理手順を図5に従って説明する。運転可否判定装置2は、イグニッションスイッチ20からイグニッションオン信号を入力すると、シフトロック装置7を駆動して、シフトレバーを「パーキング」の位置で固定して発進できない状態にする。
【0029】
また、運転可否判定装置2は、着座センサ3に基づき、乗員Dが運転席S1に着座したか否かを判断する(ステップS1)。着座センサ3から検出信号を入力すると、運転可否判定装置2は、運転席S1に乗員Dが着座したと判断して(ステップS1においてYES)、センサ制御装置5及び移動検出センサ10を駆動して、乗員区画空間Sを形成する(ステップS2)。このとき運転可否判定装置2は、センサ制御装置5に入射光L1の出力要求を出力し、センサ制御装置5は、この要求を入力すると、各移動検出センサ10を駆動して、入射光L1を出射する。
【0030】
これにより、図2に示すように、各移動検出センサ10から出力された入射光L1により乗員区画空間Sが形成され、該乗員区画空間S内に、運転席S1に着座した乗員Dが収容される。
【0031】
乗員区画空間Sを形成すると、運転可否判定装置2は、アルコール検査の開始を待機する(ステップS3)。検査開始スイッチ8が運転席S1に着座した乗員Dにより押釦されることにより、運転可否判定装置2が、検査開始スイッチ8からオン信号を入力すると、検査を開始すると判断して(ステップS3においてYES)、ステップS4に進む。検査開始スイッチ8からオン信号を入力しない場合には(ステップS3においてNO)、ステップS1に戻る。
【0032】
続いて、運転可否判定装置2は、アルコール検出装置4に基づき、乗員Dの呼気中のアルコール濃度を示す検出値が基準値以下か否かを判断する(ステップS4)。アルコール検出装置4から受信したアルコール濃度が、基準値を超えたと判断すると(ステップS4においてNO)、車両の発進を規制する(ステップS5)。即ち、エンジンは始動可能であるが、発進出来ないモードに移行する。運転可否判定装置2は、シフトロック装置7を駆動して、シフトレバーの「パーキング」の位置での固定を維持する。又は、運転可否判定装置2は、ブレーキECU6を制御して、油圧回路のバルブを制御して各車輪に制動力を付加する。
【0033】
一方ステップS4において、アルコール濃度の検出値が基準値以下であると判断すると(ステップS3においてYES)、乗員区画空間Sに対する退出及び侵入が無いか否かを判断する(ステップS6)。
【0034】
運転可否判定装置2は、移動検出センサ10が一定の状態で反射光L2を検出していると判断すると、乗員区画空間Sに対する退出及び侵入が無いと判断して(ステップS6においてYES)、発進規制を解除する(ステップS7)。即ち、シフトロック装置7を駆動して、シフトレバーのロックを解除する。さらに、運転可否判定装置2は、車両が発進するのを待機する(ステップS8)。運転可否判定装置2は、アクセルペダルの開度を検出するアクセルセンサや、車速センサ等に基づき、車両が発進したと判断すると(ステップS8においてYES)、アルコール検査の検出結果を初期化して(ステップS9)、図6に示す発進後の処理に進む。
【0035】
一方、ステップS7において、運転席S1に着座した乗員Dが、乗員区画空間Sから退出しようとした場合、移動検出センサ10から出射された光は、車体100に反射する前に、その乗員Dの体によって遮られる。これにより、移動検出センサ10は、通常状態とは異なる光検出位置、強度等を検出するか、若しくは反射光L2自体が検出できない状態となる。また、乗員区画空間S内に乗員Dが着座したままで、運転席S1に最も近いサイドウィンドウ等から、乗員D以外の他者が乗員区画空間Sに頭部を侵入させて、着座した乗員Dの替わりにアルコール検査をしようと試みると、上記したように反射光L2の検出状態が変化する。このような場合、運転可否判定装置2は、センサ制御装置5からの送信
データに基づいて、検出状態の変化を検出し、乗員区画空間Sに対する退出及び侵入があると判断する(ステップS7においてNO)。
【0036】
乗員区画空間Sに対する退出及び侵入を検知すると、運転可否判定装置2は、アルコール検査の検出結果を初期化し(ステップS10)、スピーカ9から再検査を促すエラー通知を出力する(ステップS11)。さらに、シフトレバーの固定又は制動力の付加により、車両の発進を規制するとともに(ステップS12)、ステップS1に戻り、再検査のため、上記した処理を繰り返す。
【0037】
図6に示すように、発進後は、運転可否判定装置2は、車速センサ21に基づき車両が停止したか否かを判断する(ステップS13)。車両が停止した場合(ステップS13においてYES)、そのときに運転席S1に着座した者が入れ替わる可能性があるため、再び各移動検出センサ10を駆動して、運転席S1に着座した乗員Dを収容する乗員区画空間Sを形成し(ステップS14)、該乗員区画空間Sに対する退出又は侵入を検出したか否かを判断する(ステップS15)。
【0038】
退出及び侵入を検出しない場合には(ステップS15においてNO),運転可否判定装置2は、イグニッションスイッチ20からイグニッションオフ信号を入力したか否かを判断し(ステップS19)、イグニッションがオフされた場合には(ステップS19においてYES)、検出結果を初期化して(ステップS20)、処理を終了する。イグニッションがオフされていない場合には(ステップS19においてNO)、ステップS13に戻る。
【0039】
一方、ステップS15において乗員区画空間Sに対する退出又は侵入を検出した場合には(ステップS15においてYES)、アルコール検査の要求を行う(ステップS16)。このとき、運転可否判定装置2は、アルコール検出装置4を起動する。また、スピーカ9から、再検査を促す音声を出力しても良いし、インストルメントパネル等に設けられた表示部により通知してもよい。
【0040】
運転可否判定装置2は、アルコール検出装置4からアルコール濃度の検出値を取得し、該検出値が基準値を超えたか否かを判断する(ステップS17)。検出値が基準値以下の場合には(ステップS17においてNO)、ステップS19に進む。検出値が基準値を超えた場合には(ステップS17においてYES)、上記したように車両の発進を規制し(ステップS18)、イグニッションオフ信号の入力の有無を判断する(ステップS19)。
【0041】
第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1実施形態では、飲酒運転防止システム1は、乗員Dのアルコール検査を行うアルコール検出装置4と、入射光L1を発生する半導体レーザ12と、反射光L2を検知する受光素子15とを備え、半導体レーザ12からの入射光L1により、運転席S1を囲んだ乗員区画空間Sを形成する移動検出センサ10及びセンサ制御装置5とを備える。また、移動検出センサ10の検出結果に基づき、乗員区画空間Sに対する侵入及び退出の有無を判断する運転可否判定装置2を備える。この運転可否判定装置2は、アルコール検出装置により乗員の飲酒状態を検出しない状況下において、乗員区画空間Sに対する退出及び侵入を検出しない際に、車両の運転を許可し、乗員区画空間Sに対する退出又は侵入を検出した際に、車両の発進規制を行う。このため、運転席S1の側方又は後方から、運転席S1に着座した乗員以外の者が、その乗員に成り代わってアルコール検査を行っても、発進を許可しないようにすることができる。また、運転席S1に着座した乗員が、運転席S1を離れた場合にも発進を許可しないようにすることができる。
【0042】
(2)第1実施形態では、運転可否判定装置2は、着座センサ3に基づき運転席S1に乗員が着座したと判断した際に、乗員区画空間Sを生成する。このため、運転席S1に乗員が着座したタイミングで、該乗員を囲んだ状態で乗員区画空間Sを生成することができる。
【0043】
(3)第1実施形態では、移動検出センサ10は、運転席S1の各側方及び後方に入射光L1を出力する。即ち、運転席S1を囲むように入射光L1を出力するので、成り代わりを漏れなく検出することができる。また、乗員の手足等が存在する運転席S1の前方には、入射光L1を照射しないので、誤検出を防止することができる。
【0044】
(4)第1実施形態では、移動検出センサ10は、運転可否判定装置2により運転が許可され車両が発進した後、該車両が停止した場合に乗員区画空間Sを生成し、運転可否判定装置2は、このとき形成された乗員区画空間Sに対する退出又は侵入を検出した場合には、アルコール検査を要求する。このため、発進後の成り代わり行為も防止することができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図7及び図8に従って説明する。尚、第2の実施形態は、第1の実施形態の移動検出センサ10の構成を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0046】
図7は移動検出センサ30の構成を示すブロック図である。移動検出センサ30は、上記移動検出センサ10の構成の他、ガルバノミラー等を備えたスキャンアクチュエータ31を備えている。スキャンアクチュエータ31は、半導体レーザ12から出射され、投光レンズ13によって整形及び偏光された光の向きを、移動検出センサ10を中心に所定角度範囲内で変えるアクチュエータである。
【0047】
各移動検出センサ30は、図8に示すように、第1実施形態と同様に車両のルーフ内側に設けられ、移動検出センサ30を中心に入射光L1の向きを所定角度範囲θ内で変えることにより、第1実施形態と同様に乗員区画空間Sを形成することができる。例えばセンサ制御装置5は、各移動検出センサ30の反射光L2の光検出位置及び強度等の検出パターンを予め記憶し、この検出パターンと、各時点の検出パターンとを比較して、検出状態に変化があるか否かを判断する。検出状態に変化が生じた場合には、運転可否判定装置2は、乗員区画空間Sに対する退出又は侵入が発生したと判断する。
【0048】
従って、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(5)第2の実施形態では、移動検出センサ30にスキャンアクチュエータ31を備えるようにした。このため、移動検出センサ30の検出対象範囲を拡大することができるので、センサ個数を少なくすることができる。また、入射光L1の方向を常に変化させることで、漏れのない検出を行うことができるので、移動検出センサ30と車体100との間にある物体の検出率を向上させることができる。
【0049】
尚、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、乗員区画空間Sを形成し、該乗員区画空間Sを監視する車内監視システムを、飲酒運転防止システム1として具体化するようにしたが、他のシステムとしてもよい。例えば、乗員が降車し、車両のドアがロックされた際に、移動検出センサ10,30を駆動して、乗員区画空間Sを形成するようにしてもよい。そして、車両のドアを強制的に開けて車両に侵入し、乗員区画区間に不審者が侵入した際に、警報又は外部への通知を行う。この場合、図9に示すように、乗員区画空間Sは、運転席S1周辺でなく
ても、後部座席S3又は助手席S2を囲むように形成してもよい。このようにすると、防犯機能を高めることができる。
【0050】
又は、図10に示すように、後部座席に乳幼児等の保護対象の乗員102が居る場合に、その乗員102の着座位置を囲むように乗員区画空間Sを形成してもよい。例えばその乗員102が窓から顔や手を出したり、シートから転落するような動作をすると、移動検出センサ10,30の検出結果の変化に基づき、警告音等を出力し、該乗員に注意を促すとともに、他の乗員に、該乗員が乗員区画空間から出ようとしたことを通知する。このようにすると、乗員を保護することができる。
【0051】
・上記各実施形態では、車両の発進後も、乗員区画空間Sに対する退出又は侵入があるか検出するようにしたが、発進後の検出処理は省略してもよい。
・上記実施形態では、着座センサ3は、圧力変動を検出するセンサとしたが、赤外線センサや、カメラにより運転席付近を撮影して画像処理により運転者の着座の有無を検出するセンサ等でもよい。
【0052】
・上記実施形態では、運転可否判定装置2が、イグニッションオンを検出した際に上記した処理を開始するようにしたが、エンジンの始動時に処理を開始するようにしてもよい。又は、ドアロック装置が、ドアがアンロックされた際に、処理を開始するようにしてもよい。
【0053】
・移動検出センサ10,30は、人体に悪影響を及ぼさない入射波を出力するセンサであれば、レーザ光を出力するセンサでなくてもよい。例えば、ミリ波レーダ、超音波レーダ等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態の飲酒運転防止システムの概略図。
【図2】移動検出センサの位置を示す概略図。
【図3】通常時の移動検出センサの検出状態を示す概念図。
【図4】乗員区画空間に対する入出があった場合の移動検出センサの検出状態を示す概念図。
【図5】第1実施形態の処理手順を示すフロー。
【図6】発進後の処理手順を示すフロー。
【図7】第2実施形態の移動検出センサの構成を示すブロック図。
【図8】移動検出センサによる入射光の出力状態を示す概略図。
【図9】別例の乗員区画空間の平面図。
【図10】別例の乗員区画空間の平面図。
【符号の説明】
【0055】
1…車内監視システムとしての飲酒運転防止システム、2…移動判断手段、運転可否判定手段としての運転可否判定装置、3…着座検出手段としての着座センサ、4…アルコール検知手段としてのアルコール検出装置、5…センサユニットを構成するセンサ制御装置、10…センサユニットを構成する移動検出センサ、12…入射波発生手段としての半導体レーザ、15…反射波検知手段としての受光素子、S…乗員区画空間、S1…運転席、D,102…乗員、L1…入射波としての入射光、L2…反射波としての反射光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転席に着座した乗員のアルコール検査を行うアルコール検知手段と、
入射波を発生する入射波発生手段と、入射波が物体に反射した反射波を検知する反射波検知手段とを備え、前記入射波発生手段から発生した入射波により、前記乗員の着座位置を囲んだ乗員区画空間を形成するセンサユニットと、
前記センサユニットの検出結果に基づき、前記乗員区画空間に対する侵入及び退出の有無を判断する移動判断手段と、
前記アルコール検知手段により前記乗員の飲酒状態を検出せず、且つ前記乗員区画空間に対する退出及び侵入を検出しない際に、車両の運転を許可し、前記乗員の飲酒状態を検出せず、且つ前記乗員区画空間に対する退出又は侵入を検出した際に、車両の運転規制を行う運転可否判定手段と
を備えたことを特徴とする飲酒運転防止システム。
【請求項2】
請求項1に記載の飲酒運転防止システムにおいて、
前記乗員が車両の運転席に着座したか否かを判断する着座検出手段をさらに備え、
前記センサユニットは、前記着座検出手段により前記運転席に乗員が着座したと判断した際に、前記乗員区画空間を生成することを特徴とする飲酒運転防止システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の飲酒運転防止システムにおいて、
前記センサユニットは、運転席の各側方及び後方に入射波を出力することを特徴とする飲酒運転防止システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲酒運転防止システムにおいて、
前記センサユニットは、前記運転可否判定手段により運転が許可され前記車両が発進した後、該車両が停止した場合に前記乗員区画空間を生成し、
前記運転可否判定手段は、該乗員区画空間に対する退出又は侵入の有無を判断し、該乗員区画空間に対する退出又は侵入を検出した場合には、アルコール検査を要求することを特徴とする飲酒運転防止システム。
【請求項5】
入射波を発生する入射波発生手段と、入射波が物体に反射した反射波を検知する反射波検知手段とを備え、前記入射波発生手段から発生した入射波により、前記乗員の着座位置を囲んだ乗員区画空間を形成するセンサユニットと、
前記センサユニットの検出結果に基づき、前記乗員区画空間に対する侵入及び退出の有無を判断する移動判断手段と
を備えたことを特徴とする車内監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−23545(P2009−23545A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189585(P2007−189585)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】