説明

高周波プラズマ発生装置と、該高周波プラズマ発生装置により構成された表面処理装置及び表面処理方法

【課題】
VHFプラズマの表面処理への応用において、一対の電極間に発生の定在波を均一化することにより、プラズマの強さの分布を一様化し、その結果、大面積・均一の超高周波プラズマ表面処理が可能な表面処理装置および表面処理方法を提供すること。
【解決手段】
一対の電極における電磁波の伝播上での対向点となる関係にある少なくとも2つの給電点に時間的に分離されたパルス電力を供給し、該一対の電極間に電磁波の定在波の腹の位置が異なる複数の定在波を発生させ、かつそれらを重畳させる手段を備えたことを特徴とする高周波プラズマ発生装置及び方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを利用して基板の表面に所定の処理を施す表面処理装置及び表面処理方法に関する。本発明は、特に、電子温度が低く、かつ、高密度のプラズマ生成が可能という特徴をもつ超高周波プラズマ、すなわち周波数がVHF帯域(30MHzないし300MHz)の高周波電力により生成するプラズマによる表面処理装置および表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを用いて基板の表面に各種処理を施し、各種電子デバイスを製作することは、LSI(大規模集積回路)、LCD(液晶デイスプレー)用TFT(薄膜トランジスター)、アモルファスSi系太陽電池、薄膜多結晶Si系太陽電池、複写機用感光体、および各種情報記録デバイス等の分野において既に実用化されている。また、ダイヤモンド薄膜および立方晶ボロンナイトライド(C−BN)等の超硬質膜製造分野においても実用化が進みつつある。
【0003】
上記技術分野は、薄膜形成、エッチング、表面改質およびコーテイング等多岐に亘るが、いずれも反応性プラズマの化学的および物理的作用を活用したものである。上記反応性プラズマの生成に関する装置および方法には、大別すると3つの代表的技術がある。
第1の代表的技術は、例えば、特許文献1ないし3に記載されているもので、プラズマ発生に非接地電極と接地電極から成る2枚の平行平板電極を一対として用いることを特徴とする。第2の代表的技術は、例えば特許文献4及び5に記載されているもので、プラズマ発生に棒電極あるいはラダー型電極と平板電極を一対として用いることを特徴とする。第3の代表的技術は、例えば、特許文献6に記載されているもので、アンテナ方式であることを特徴とする。
【0004】
また、電力損失防止及び電極間以外で発生の不必要なプラズマの発生を抑制する技術として、平衡不平衡変換装置を用いる技術が、例えば特許文献2及び3に記載されている。
【0005】
上記文献記載の技術の特徴は概略次の通りである。特許文献1に記載の技術は、非接地電極を方形電極とし、該方形電極の第1の辺の側面に複数の第1の電力供給点を配置し、該第1の辺と対向する第2の辺の側面に複数の第2の電力供給点を配置し、かつ、該複数の第1の給電点に供給される電力の電圧と該複数の第2の電力供給点に供給される前記電力の電圧の位相差を時間的に変化させることにより、一対の電極間の電界分布を平均化し、結果として、プラズマの強さの空間的分布を一様化することを特徴としている。なお、この技術では互いに向かい合った方向に伝播するように供給される2つの電力の進行波を干渉させて定在波を生成させ、該定在波の腹の位置を時間的に変化させることが可能である。
特許文献2に記載の技術は、一対の電極は方形の形状を有し、かつ、互いに直交する方向に位置する該電極の第1および第2の辺に、それぞれ、電力供給系の出力回路に接続された複数の電力供給点が設置され、かつ、該複数の電力供給点の反対側に、それぞれ、複数の該電力供給箇点に対応したリアクタンス調整装置が設置されるということを特徴としている。この技術では、該複数の電力供給点に対応したリアクタンス調整装置を制御することにより、反射波の位相を制御することにより、該供給電力の進行波と反射波を干渉させて定在波を生成することが可能で、かつ、該定在波の腹の位置を移動させることが可能である。
特許文献3に記載の技術は、一対の電極に複数の開口を設置し、該開口の縁にそれぞれ電力供給点を配置し、かつ、電力供給系より平衡不平衡変換装置及び平衡伝送路を介して電力を供給することを特徴としている。この技術では、互いに隣接する開口より給電された電力が進行波とその反射波の関係となって生成する定在波を重ねあわせることにより、電極間のプラズマの強さの空間的分布を一様化することが可能である。
特許文献4に記載の技術は、一対の電極の電力供給点の反対側の先端部分に反射電力の位相を調整する位相調整回路が接続されるということを特徴としている。この技術では、該位相調整回路を制御することにより、反射波の位相の調整が可能で、該供給電力の進行波と反射波を干渉させて定在波を生成することが可能で、かつ、該定在波の腹の位置を移動することが可能である。
特許文献5に記載の技術は、電極上のある1つの給電点に供給される電力の電圧と他の少なくとも1つの給電点に供給される前記電力の電圧の位相差を時間的に変化させることにより、一対の電極間の電界分布を平均化し、結果として、プラズマの強さの空間的分布を一様化することを特徴としている。なお、この技術では、互いに向かい合った方向から供給される2つの電力の進行波を干渉させて定在波を生成させ、該定在波の腹の位置を時間的に変化させることが可能である。
特許文献6に記載の技術は、電極が線状導体をその中央点を基準に平面内に含まれるように折り返して形成され、該中央点を給電点としたことが特徴である。なお、この電極の形状には、例えばU字型あるいはM字型がある。また、該U字型あるいはM字型電極がアンテナとなって供給電力が空間へ放射される。
【0006】
非特許文献1に記載の技術は、非接地電極のプラズマに接する面の裏側の面にH文字状の給電帯を設置し、該H文字状給電帯上に複数の給電点を設置したことを特徴としている。 非特許文献2に記載の技術は、非接地電極の給電点の反対側、即ち電力伝播方向に位置する該電極の端部にコイルを設置し、電源と該一対の電極を結ぶ給電線および該電極に発生する定在波の腹の位置をずらすことを特徴としている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−12977(第2頁、第1図、第10−11図)
【特許文献2】特許第3575014号(第1−3頁、第6−10図)
【特許文献3】特開2004−235673(第2―3頁、第9−11図)
【特許文献4】特開平11−243062(第1頁、第1図、第7図)
【特許文献5】特許第3316490号(第1頁、第1図、第8図)
【特許文献6】特開2000−345351(第2頁、第1図、第5図、第7図)
【0008】
【非特許文献1】J.Kuske, U.Stephan, O.Steinke and S.Rohleck: Power feeding in large area PECVD of amorphous silicon, Mat. Res. Soc. Symp.Proc. Vol. 377(1995),p.27-32.
【非特許文献2】L.Sansonnens, A.Pletzer, D.Magni, A.A.Howling,Ch.Hollenstein and J.P.M.Schmitt,:A voltage uniformity study in large-area reactors for RF plasma deposition、Plasma Source Sci. Technol. 6 (1997),p.170-178.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のプラズマ表面処理技術、即ちプラズマ表面処理装置とプラズマ表面処理方法は、LCD,LSI,電子複写機および太陽電池等の産業分野のいずれにおいても、生産性向上に伴う製品コストの低減および大面積壁掛けTVなど性能(仕様)の改善等に関する大面積・均一化および高速処理化のニーズが年々強まっている。特に、エネルギー資源問題や地球環境問題に対応した新エネルギー源として実用化普及の加速化が期待されている薄膜シリコン系太陽電池の分野では、なお一層の生産コストの低減が社会的ニーズとして求められている。
【0010】
上記ニーズに対応するため、最近では、一つの技術傾向として、産業界のみならず、学会でも特に、プラズマCVD(化学蒸着)技術およびプラズマエッチング技術ともに、高性能化と高速処理化が可能(低電子温度で高密度のプラズマが生成可能)という特徴のあるVHF帯(30MHzないし300MHz)の電源を用いたプラズマCVD技術の実用化研究が盛んになっている。しかしながら、従来技術では、以下に述べるような課題が依然として存在し、上記ニーズの分野では齟齬をきたしている。
【0011】
第1の課題は、VHFプラズマを用いた表面処理の高速化・大面積・均一化(生産性向上および性能向上)が可能な高生産性プロセス用VHFプラズマ表面処理装置及びVHFプラズマ表面処理方法に係わる技術のブレークスルーである。一般に、LCD分野では、膜厚分布は再現性を確保して、±5%程度、太陽電池分野では、膜厚分布は再現性を確保して、±10%程度が実用化の一つの指標となっている。しかしながら、1987年世界初の試みとして登場したVHFプラズマの高速化・大面積・均一化に関する技術はあまり進展が見られない状況にある。従来のVHFプラズマ技術では、例えばa−Si膜を製造する場合、再現性の確保を前提条件にすると、基板面積が50cmx50cm程度に関しては、±10〜15%程度の膜厚分布、100cmx100cm程度に関しては、±20〜40%程度の膜厚分布であり、上記指標をクリアできないという問題がある。
【0012】
膜厚分布の不均一性の直接的原因としてはプラズマ密度の不均一性があり、プラズマ密度の不均一性の原因には、上記VHF固有の問題である波の干渉現象に起因する定在波の発生がある。この定在波の問題は電磁波の伝播に伴う基本的な現象であるため、従来、抜本的解決手段がなく、次善の策として、前記特許文献1〜6にあるアイデイアが実用化されつつある。しかしながら、いずれの技術も次に述べるような問題がある。すなわち、この定在波の問題を抜本的に解決できていない。
(1)特許文献1記載の技術は、方形電極の互いに対向した2つの辺から供給される電力の電圧の位相差を時間的に、例えば数kHZの周波数で、鋸歯状に変化させることにより、一対の電極間に発生の定在波の腹の位置を移動させ、時間平均的に見て均一化するものである。膜厚分布は、アモルファスSi製膜では、基板面積が50cmx50cm程度に関しては、±10〜15%程度の膜厚分布が得られているが、100cmx100cm程度に関しては、±20以上と見られている。また、プラズマが例えば数kHzの周波数で変動するので、高品質膜製造や高品質エッチング加工等には適しないという欠点がある。なお、a−Si膜製膜では電源周波数が100kHz〜1MHz程度を境にして、低い周波数帯の場合では膜中水素の量が、高い周波数帯の場合に比べて著しく多くなるという研究成果がある。
(2)特許文献2記載の技術は、複数の電力供給点の反対側に、それぞれ、複数の該電力供給箇点に対応したリアクタンス調整装置を設置し、電力の反射波の位相を制御するので、電力の吸収率が高い条件、例えば圧力が数100Pa〜数1000Paでのプラズマ生成では反射波の強さが弱くなり、反射波の制御が無理となる。すなわち、プラズマ生成の圧力が数100Pa以下との条件の場合でないと応用できないという欠点がある。
(3)特許文献3記載の技術は、互いに隣接する開口より給電された電力が進行波とその反射波の関係となって生成する定在波を重ねあわせることにより、電極間のプラズマの強さの空間的分布を一様化するので、互いに隣接する開口の間隔を使用する電源周波数即ち波長に対応して選定することが必要である。すなわち、電源周波数が予め選定されることが必須条件で、かつ、プラズマ密度の強さに応じて伝播電力の波長が短縮するので、プラズマの均一性はプラズマ密度の強さに依存するという欠点がある。
(4)特許文献4記載の技術は、特許文献2記載の技術と同様に、電力供給点の反対側に、位相調整装置を設置し、電力の反射波の位相を制御するので、電力の吸収率が高い条件、例えば圧力が数100Pa〜数1000Paでのプラズマ生成では反射波の強さが弱くなり、反射波の制御が無理となる。すなわち、プラズマ生成の圧力が数100Pa程度以下との条件の場合でないと応用できないという欠点がある。
(5)特許文献5記載の技術は、特許文献1記載の技術と同様に、電極上のある1つの給電点に供給される電力の電圧と他の少なくとも1つの給電点に供給される前記電力の電圧の位相差を時間的に変化させることにより、一対の電極間の電界分布を平均化し、結果として、プラズマの強さの空間的分布を一様化するので、プロセス用VHFプラズマ表面処理装置及びVHFプラズマ表面処理方法としては、プラズマが例えば数kHzの周波数で変動するので、高品質膜製造や高品質エッチング加工等には適しないという欠点がある。また、膜厚分布は、アモルファスSi製膜では、基板面積が50cmx50cm程度に関しては、±10〜15%程度の膜厚分布が得られているが、100cmx100cm程度に関しては、±20以上と見られている。
(6)特許文献6記載の技術は、アンテナ方式即ち誘導結合型のプラズマ生成なので、圧力条件が数Pa以下という制約がある。すなわち、微結晶Si等のような圧力条件が数100Pa〜数1000Paである応用には無理があるという欠点がある。また、電極の周囲にある真空容器の形状や接地条件に影響を受けやすいで、製膜条件の適正条件の把握が困難と推測される。
【0013】
更に、第2の課題として、量産装置への応用性の高いVHFプラズマ発生用電極の技術開発がある。一般に、高生産性プロセスでの生産装置の基本ラインは、インライン型装置、マルチチャンバー型装置及びロール・ツー・ロール型装置の3つの方式があるが、これらの装置では基板搬送装置との兼ね合いから、プラズマ処理室内の一対の電極と給電ケーブルを接続する場合、例えば該一対の電極形状が矩形の場合、周囲4辺の中の1辺のみを用いて両者が接続できる手段が求められる。しかしながら、従来のVHFプラズマ技術では、このニーズに対応できないという問題がある。なお、前記の特許文献1~6記載の技術で、このニーズに対応可能な技術は、特許文献6記載の技術のみである。しかしながら、この技術は、前述の通り、圧力条件が数Pa以下という制約があるため、実用価値が低いと見られている。
【0014】
以上説明したように、従来技術では、量産性向上や低コスト化に必要な大面積基板、例えばサイズ1mx1m級大面積基板を対象にしたVHFプラズマCVDおよびプラズマエッチング等の応用は、依然として困難で、困難視されている。即ち、プラズマ表面処理の高速化・大面積化・均一化等の課題に対応する為、一つの技術トレンドとして、VHFプラズマ技術が注目され、その実用化応用の開発研究が実施されているが、技術的困難性のため、1mx1m級を越える大面積基板を対象にしたVHFプラズマ利用の高速化・大面積化・均一化が可能な表面処理装置及びその方法の成功例は発表されていない。
【0015】
言い換えれば、現在、VHFプラズマ分野が抱える具体的技術課題は、第1に、一対の電極間に発生の定在波を抑制可能な大面積・均一化技術の創出、第2に、基板搬送装置の設置に制約を与えることが少ない給電手段の創出である。
【0016】
そこで、本発明は、上記従来技術の課題を解決するために必要な、定在波の影響を根本的に抑制し、プラズマ表面処理の高速化・大面積化・均一化が可能で、かつ、基板搬送装置の設置に制約を与えることが少ない給電手段を実現可能なアイデイアを創出し、該アイデイアを実現するための超高周波プラズマ発生用電極と該電極により構成されたプラズマ表面処理装置およびプラズマ表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決するため、高周波プラズマ発生装置と該高周波プラズマ発生装置により構成されたプラズマ表面処理装置およびプラズマ表面処理方法を、次のように構成したことを特徴とする。
【0018】
即ち、本願の請求項1記載の発明は、高周波プラズマを利用して真空容器内に配置された基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置に用いられる高周波プラズマ発生装置であって、一対の電極における電磁波の伝播上での対向点となる関係にある少なくとも2つの給電点に時間的に分離されたパルス電力を供給し、該一対の電極間に電磁波の定在波の腹の位置が異なる複数の定在波を発生させ、かつそれらを重畳させる手段を備えたことを特徴とする。
また、本願の請求項2記載の発明は、請求項1記載の高周波プラズマ発生装置において、前記一対の電極間に発生の複数の定在波の腹の位置を制御する手段を有することを特徴とする。
また、本願の請求項3記載の発明は、請求項1あるいは2において、任意のパルス変調が可能で、かつ、2出力でかつ該2出力の電圧の位相差を任意に設定可能な第1の高周波電源と、該第1の高周波電源のパルス変調信号に同期した任意のパルス変調が可能で、かつ、2出力でかつ該2出力の電圧の位相差を任意に設定可能な第2の高周波電源とを具備し、前記電極に配置された少なくとも2つの給電点のいずれか一方の給電点に、前記第1の高周波電源の2つの出力端子のいずれか一方と前記第2の高周波電源の2つの出力端子のいずれか一方が接続され、他方の給電点に前記第1の高周波電源の他方の出力端子と前記第2の高周波電源の他方の出力端子が接続されるという構成を有することを特徴とする。
また、本願の請求項4記載の発明は、請求項1〜3において、前記第1及び第2の高周波電源の出力端子に電力分配器が接続されるという構成を有することを特徴とする。
また、本願の請求項5記載の発明は、請求項1〜4において、前記給電点に平衡不平衡変換装置が接続されることを特徴とする。
また、本願の請求項6記載の発明は、請求項1〜5において、前記高周波電源の出力の周波数は、30MHzから300MHzのVHF帯に属していることを特徴とする。
また、本願の請求項7記載の発明は、請求項1〜6において、前記高周波電源の出力のパルス変調のデユーテイ比即ちパルス幅Hwと周期T0の比Hw/H0を50%以下にすることを特徴とする。
【0019】
また、本願の請求項8記載の発明は、プラズマを利用して真空容器内に配置された基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、請求項1〜7のいずれか1項に記載の高周波プラズマ発生装置から構成されることを特徴とする。
【0020】
また、本願の請求項9記載の発明は、プラズマを利用して真空容器内に配置された基板の表面を処理するプラズマ表面処理方法において、請求項1〜7のいずれか1項に記載の高周波プラズマ発生装置を用いて前記基板の表面処理を行うことを特徴とする。
また、本願の請求項10記載の発明は、請求項9において、前記一対の電極における電磁波の伝播上での対向点となる関係にある少なくとも2つの地点に配置された給電点のいずれか一方の給電点に、前記第1及び第2の高周波電源のそれぞれの2つの出力端子のいずれか一方をそれぞれ、一つずつ接続し、かつ、他方の給電点に前記第1及び第2の高周波電源の他方の出力端子をそれぞれ、一つずつ接続すると共に、該第1の高周波電源の2つの出力端子から出力される電力をパルス幅Hw及びパルス周期T0でパルス変調し、該第2の高周波電源の2つの出力端子から出力される電力を該第1の高周波電源の出力端子から出力されるパル変調された電力の立ち上がり時刻より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がる形でパルス変調することにより、該第1の高周波電源の2つの出力端子から出力されるパルス変調された電力と該第2の高周波電源の2つの出力端子から出力されるパルス変調された電力の該少なくとも2つの給電点への供給時間帯を分離し、該一対の電極間に該第1の高周波電源の2つの出力端子から出力される電力により形成される第1の定在波と該第2の高周波電源の2つの出力端子から出力される電力により形成される第2の定在波の発生時関領域を異ならしめると共に、該第1の高周波電源の2つの出力端子から出力される電力の電圧の位相差と、該第2の高周波電源の2つの出力端子から出力される電力の電圧の位相差を制御し、該2つの定在波の腹の位置間の距離即ち第1の定在波の腹の位置と第2の定在波の腹の位置との間の距離を前記一対の電極間に生成のプラズマ内部を伝播する電磁波の波長λの0.22〜0.28倍、好ましくは0.25倍、即ち0.22〜0.28λ、好ましくはλ/4に設定することにより、前記基板の表面処理を行うことを特徴とする。
また、本願の請求項11記載の発明は、請求項9あるいは10において、前記基板の表面に、アモルファスSi系材料、微結晶Si系材料、多結晶Si系材料、結晶Si系材料、酸化物、金属、有機金属化合物、有機ケイ素化合物、及び有機化合物のいずれかを形成するようにしたことを特徴とする。
また、本願の請求項12記載の発明は、請求項9あるいは10において、前記基板の表面に固着したアモルファスSi系材料、微結晶Si系材料、多結晶Si系材料、結晶Si系材料、酸化物、金属、有機金属化合物、有機ケイ素化合物、及び有機化合物のいずれかの材料をエッチング加工するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1〜2の高周波プラズマ発生装置によれば、高周波プラズマを利用して真空容器内に配置された基板の表面を処理する高周波プラズマ表面処理装置に用いられる高周波プラズマ発生装置において、大面積プラズマの一様化に不可欠な一対の電極間の電力の強さの分布を均一に制御することが可能である。即ち、従来の装置では該一対の電極間の電力の強さの分布を制御することは不可能視されているが、それが可能である。その結果、従来の装置では不可能視されている大面積基板を対象にした高周波プラズマによる大面積で、かつ均一なプラズマ表面処理が可能になる。即ち、高周波プラズマの応用分野においての重要課題である大面積でかつ均一のプラズマ処理化を実現可能な装置の提供が可能である。その効果は、産業上、著しく大きい価値がある。
請求項3の高周波プラズマ発生装置によれば、請求項1〜2に記載の高周波プラズマ発生装置を応用する具体的装置が提供され、大面積でかつ均一で、かつ高密度のプラズマを確実に生成可能である。産業界における応用上の価値が著しく高い。
請求項4〜7の高周波プラズマ発生装置は、それぞれ、上記請求項1〜3に記載のプラズマ発生装置を実現する確実な手段であり、その産業界における応用上の価値は著しく高い。即ち、請求項4のプラズマ発生装置は、大面積基板に対応可能な大面積電極への多点給電への応用において、実用価値が高い。また、請求項5のプラズマ発生装置は、同軸ケーブルを用いて高周波電力を電極へ供給する際に発生する同軸ケーブル端部での漏洩電流の防止が可能である。その結果、高周波プラズマ発生装置内部での異常放電の抑制及び電力損失防止が図られる。また、請求項6のプラズマ発生装置は、放電周波数がVHF帯域であるので、プラズマ応用で必要な、低電子温度で高密度のプラズマの生成が可能である。その結果、プラズマCVD及びエッチングでの応用における価値は著しく高い。また、請求項7のプラズマ発生装置は、請求項1~3に記載のプラズマ発生装置を確実に実現可能であり、その産業界における応用上の価値は著しく高い。
【0022】
請求項8のプラズマ表面処理装置によれば、発振周波数がVHF帯に属する高周波電源の出力の電力を用いて生成されるプラズマを利用して真空容器に配置された基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、大面積プラズマの一様化に不可欠な一対の電極間の電力の強さの分布の均一化制御が可能である。その結果、従来の装置では困難視されている大面積基板を対象にしたVHFプラズマによる大面積で、かつ均一なプラズマ表面処理が可能になる。即ち、VHFプラズマの応用分野においての重要課題である大面積でかつ均一のプラズマ処理化を実現可能な装置の提供が可能である。その効果は、産業上、著しく大きい価値がある。
【0023】
請求項9のプラズマ表面処理方法によれば、発振周波数がVHF帯域に属する高周波電源の出力の電力を用いて生成されるプラズマを利用して真空容器に配置された基板の表面を処理するプラズマ表面処理方法において、大面積プラズマの一様化に不可欠な一対の電極間の電力の強さの分布の均一化制御が可能である。その結果、従来の方法では困難視されている大面積基板を対象にしたVHFプラズマによる大面積で、かつ均一なプラズマ表面処理が可能になる。即ち、VHFプラズマの応用分野においての重要課題である大面積でかつ均一のプラズマ処理化を実現可能な方法の提供が可能である。その効果は、産業上、著しく大きい価値がある。
請求項10のプラズマ表面処理方法は、発振周波数がVHF帯域に属する高周波電源の出力の電力を用いて生成されるプラズマを利用して真空容器に配置された基板の表面を処理するプラズマ表面処理方法において、大面積プラズマの一様化に不可欠な一対の電極間の電力の強さの分布の均一化制御を確実に実現することが可能である。その結果、従来の方法では困難視されている大面積基板を対象にしたVHFプラズマによる大面積で、かつ均一なプラズマ表面処理が可能になる。即ち、VHFプラズマの応用分野においての重要課題である大面積でかつ均一のプラズマ処理化を実現可能な方法の提供が可能である。その効果は、産業上、著しく大きい価値がある。
請求項11のプラズマ表面処理方法によれば、発振周波数がVHF帯域に属する高周波電源の出力の電力を用いて生成されるプラズマを利用して真空容器に配置された基板の表面を処理するプラズマ表面処理方法において、基板の表面に、アモルファスSi系材料、微結晶Si系材料、多結晶Si系材料、結晶Si系材料、酸化物、金属、有機金属化合物、有機ケイ素化合物、及び有機化合物のいずれかを、大面積で、かつ均一に形成することが可能である。その結果、LSI(大規模集積回路)、LCD(液晶デイスプレー)用TFT(薄膜トランジスター)、アモルファスSi系太陽電池、薄膜多結晶Si系太陽電池、複写機用感光体、および各種情報記録デバイス等のそれぞれの分野における製品の生産性の抜本的向上が実現される。したがって、その効果は、著しく大きい価値がある。
請求項12のプラズマ表面処理方法によれば、発振周波数がVHF帯域に属する高周波電源の出力の電力を用いて生成されるプラズマを利用して真空容器に配置された基板の表面を処理するプラズマ表面処理方法において、基板の表面に固着のアモルファスSi系材料、微結晶Si系材料、多結晶Si系材料、結晶Si系材料、酸化物、金属、有機金属化合物、有機ケイ素化合物、及び有機化合物のいずれかを、大面積で、かつ均一にエッチングすることが可能である。その結果、LSI(大規模集積回路)、LCD(液晶デイスプレー)用TFT(薄膜トランジスター)、アモルファスSi系太陽電池、薄膜多結晶Si系太陽電池、複写機用感光体、および各種情報記録デバイス等のそれぞれの分野における製品の生産性の抜本的向上が実現される。したがって、その効果は、著しく大きい価値がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の一形態に係わる高周波プラズマ発生装置と該高周波プラズマ発生装置により構成されたプラズマ表面処理装置およびプラズマ表面処理方法について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、プラズマ表面処理装置およびプラズマ表面処理方法の一例として、太陽電池を製作する際に必要なa―Si薄膜を製作する装置および方法が記載されているが、本願の発明対象が下記の例の装置及び方法に限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
本発明に関する実施例1の高周波プラズマ発生用電極と該電極により構成のプラズマ表面処理装置(プラズマCVD装置)およびプラズマ表面処理方法(プラズマCVD方法)について、図1ないし図8を参照して説明する。
【0026】
図1は実施例1に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図、図2は図1図示のプラズマ表面処理装置の第1及び第2の電極への給電部の説明図、図3は図1図示の第1及び第2のパルス変調方式位相可変2出力発信器から出力されるパルス変調された出力の典型例を示す説明図、図4は図1図示の第1及び第2のパルス変調方式位相可変2出力発信器から出力されるパルス変調された正弦波信号の典型例を示す説明図、図5は一対の電極間に発生の電圧波の伝播を示す説明図、図6は一対の電極間に発生の電圧の定在波の腹の位置を示す説明図、図7は一対の電極間に発生の定在波の強さ(振幅の2乗の値)の分布を示す説明図及び図8は一対の電極間に発生の2つの定在波の強さを示す説明図である。
【0027】
先ず、装置の構成を説明する。図1及び図2において、符番1は真空容器である。この真空容器1には、後述の放電ガスをプラズマ化する一対の電極、即ち非接地の1本の棒から成る第1の電極2と図示しない基板ヒータ3を内臓した接地された平板状の第2の電極4が配置されている。該第1の電極2は、絶縁物支持材5及びガス混合箱6を介して真空容器1に固着されている。該ガス混合箱6は
放電ガス供給管8より供給されるSiH4等放電ガスを、整流孔7を介して、前記一対の電極2と4の間に均一に供給する機能を有している。供給されたSiH4等放電ガスは前記一対の電極2と4の間でプラズマ化された後、排気管9及び図示しない真空ポンプ10により、真空容器1の外へ排出される。
【0028】
真空容器1内の圧力は、図示しない圧力計によりモニターされ、図示しない圧力調整弁により自動的に所定の値に調整、設定される。なお、本実施例の場合は、放電ガスが流量500sccm〜1、500sccm程度の場合、圧力0.01Torr〜10Torr(1.33Pa〜1330Pa)程度に調整できる。真空容器1の真空到達圧力は2〜3E−7Torr(2.66〜3.99E−5Pa)程度である。
【0029】
符番11は基板で、図示しないゲートバルブ12の開閉操作により、第2の電極4に設置される。そして、図示しない基板ヒータ3により所定の温度に加熱される。
【0030】
電極へ高周波電力を給電する位置である給電点の一つは、前記1本の棒から成る第1の電極2の一方の端部とし、これを第1の給電点21とする。また、該給電点21に対して高周波電力波の伝播上での対向点となる関係にある位置である該電極の他方の端部を第2の給電点27とする。
【0031】
符番100は同期信号伝送ケーブルで、後述の第1のパルス変調方式位相可変2出力発信器15の出力のパルス変調波形信号を同期信号として、後述の第2のパルス変調方式位相可変2出力発信器28に伝送する。
符番15は第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器で、周波数30MHz〜300MHz(VHF帯域)の任意の周波数、例えば60MHzの正弦波信号を発生し、かつ、該正弦波信号をパルス変調し、かつ、その2つの出力端子から出力される2つのパルス変調された正弦波信号の位相差を任意に設定することが可能である。
該位相可変2出力の発信器15の2つの出力端子から出力される2つの正弦波信号の位相差及びパルス変調のパルス幅Hw及び周期T0は、該位相可変2出力の発信器15に付属の位相差調整器及びパルス変調の調整器で、それぞれ任意の値に設定できる。また、該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15は、前述の同期信号伝送ケーブル100を介して、後述の第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28にパルス変調の同期信号を送信する。
該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力端子の一方の出力は、第1の電力増幅器16、第1のインピーダンス整合器17、第1の電流導入端子18、第1の真空用同軸ケーブル19の芯線20を介して、第1の給電点21に供給される。この出力は、典型例として図3及び図4に示すW11(t)のように、パルス幅Hw、周期T0でパルス変調された正弦波である。
なお、位相可変2出力の発信器15と第1の電力増幅器16との接続、第1の電力増幅器16と第1のインピーダンス整合器17との接続、第1のインピーダンス整合器17と第1の電流導入端子18との接続は、いずれも同軸ケーブルが用いられる。そして、第1の真空用同軸ケーブル19の外部導体は第2の電極4に接続される。
該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力端子の他方の出力は、第2の電力増幅器22、第2のインピーダンス整合器23、第2の電流導入端子24、第2の真空用同軸ケーブル25の芯線及26を介して、第2の給電点27に供給される。この出力は、典型例として図3及び図4に示すW21(t)のように、該W11(t)と同様のパルス幅Hw、周期T0でパルス変調された正弦波である。
なお、位相可変2出力の発信器15と第2の電力増幅器22との接続、第2の電力増幅器22と第2のインピーダンス整合器23との接続、第2のインピーダンス整合器23と第2の電流導入端子24との接続は、いずれも同軸ケーブルが用いられる。そして、第2の真空用同軸ケーブル25の外部導体は第2の電極4に接続される。
前記第1の電力増幅器16及び第2の電力増幅器22には、それぞれ出力値(進行波)のモニター及び下流側から反射して戻ってくる反射波のモニターが付属している。また、該該反射波による該第1及び第2の電力増幅器16、22本体の電気回路を防護するためのアイソレータが付属されている。
【0032】
符番28は、第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器で、2つの出力端子から位相の異なる周波数30MHz〜300MHz(VHF帯域)の任意の周波数、例えば60MHzの正弦波信号を発生し、かつ、該2つの正弦波信号を、前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15から同期信号伝送ケーブル100を介して受信した同期信号を用いることにより、該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15のパルス変調信号に同期してパルス変調された信号を出力する。
該位相可変2出力の発信器28の2つの出力端子から出力される2つの正弦波信号の位相差及びパルス変調のパルス幅Hw及び周期T0は、該位相可変2出力の発信器28に付属の位相差調整器及びパルス変調の調整器で、それぞれ任意の値に設定できる。
該第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力端子の一方の出力は、第3の電力増幅器29、第3のインピーダンス整合器30、第3の電流導入端子31、第3の真空用同軸ケーブル32の芯線及33を介して、第1の給電点21に供給される。この出力は、典型例として図3及び図4に示すW12(t)のように、パルス幅Hw、周期T0で、かつ、前記W11(t)及びW21(t)のパルス変調のパルス立ち上がり時間より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がるパルス変調された正弦波である。
なお、第2の位相可変2出力の発信器28と第3の電力増幅器29との接続、第3の電力増幅器29と第3のインピーダンス整合器30との接続、第3のインピーダンス整合器30と第3の電流導入端子31との接続は、いずれも同軸ケーブルが用いられる。そして、第3の真空用同軸ケーブル32の外部導体は第2の電極4に接続される。
該第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力端子の他方の出力は、第4の電力増幅器34、第4のインピーダンス整合器35、第4の電流導入端子36、第4の真空用同軸ケーブル37の芯線38を介して、第2の給電点27に供給される。この出力は、典型例として図3及び図4に示すW22(t)のように、パルス幅Hw、周期T0で、かつ、前記W11(t)及びW21(t)のパルス変調のパルス立ち上がり時間より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がるパルス変調された正弦波である。
なお、第2の位相可変2出力の発信器28と第4の電力増幅器34との接続、第4の電力増幅器34と第4のインピーダンス整合器35との接続、第4のインピーダンス整合器35と第4の電流導入端子36との接続は、いずれも同軸ケーブルが用いられる。また、第4の真空用同軸ケーブル37の外部導体は第2の電極4に接続される。
前記第3の電力増幅器29及び第4の電力増幅器34には、それぞれ出力値(進行波)のモニター及び下流側から反射して戻ってくる反射波のモニターが付属している。また、該該反射波による該第3及び第4の電力増幅器29、34本体の電気回路を防護するためのアイソレータが付属されている。
【0033】
次に、上記構成のプラズマ表面処理装置を用いて、a−Si太陽電池用アモルファスSiを製膜する方法を説明する。なお、本発明の実施あるいは応用では、手順として、第1及び第2の予備製膜工程と本製膜工程が必要である。第1の予備製膜工程は、前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差の設定値を把握するために、第2の予備製膜工程は、前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の設定値を把握するために、本製膜工程は目的とするアモルファスSiの製造のために実施される。
【0034】
先ず、第1の第1の予備製膜工程であるが、図1及び図2において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば250sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
次に、前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15、第1の電力増幅器16、第1のインピーダンス整合器17、第1の電流導入端子18、第1の真空用同軸ケーブル19の芯線20、第2の電力増幅器22、第2のインピーダンス整合器23、第2の電流導入端子24、第2の真空用同軸ケーブル25の芯線26から成る第1の電力供給系を用いて、一対の電極2、4に高周波電力を、例えば周波数60MHz、パルス幅Hw=400μ秒、パルス周期T0=1m秒の電力、例えば合計で200Wを供給する。
即ち、該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差を、例えば零に、パルス幅Hw=400μ秒、パルス周期T0=1m秒に設定し、第1の電力増幅器16の出力を100Wに設定して、その出力を第1のインピーダンス整合器17、第1の電流導入端子18、第1の真空用同軸ケーブル19の芯線20を介して、第1の給電点に供給するとともに、第2の電力増幅器22の出力を100Wに設定して、その出力を第2のインピーダンス整合器23、第2の電流導入端子24、第2の真空用同軸ケーブル25の芯線26を介して、第2の給電点に供給する。
この場合、前記第1のインピーダンス整合器17及び第2のインピーダンス整合器23を調整することにより、それぞれのインピーダンス整合器17、23の上流側に上記供給電力の反射波が戻らないようにすることができる。
その結果、前記SiH4ガスのプラズマが生成され、基板11に例えばアモルファスSiが堆積する。
【0035】
前記要領で、製膜時間を例えば10〜20分間にして、前記基板11にアモルファスSi膜を形成させる。製膜後、真空容器1から前記基板11を取り出して、該アモルファスSi膜の膜厚み分布を評価する。基板11に堆積された例えばアモルファスSiの膜厚分布は、後述するように、VHFプラズマ固有の現象である定在波の発生により、正弦的な分布となる。このような、製膜試験を第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差をパラメータに繰り返し実施する。そして、第1の電極の長さ方向において、基板11の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差の関係をデータとして把握する。例えば、基板11の中央点から第1の給電点21の方向へ波長λの八分の一、即ちλ/8だけ離れた位置に設定するための位相差は、例えばΔθ1であるいうことが把握される。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5〜0.9程度である。
【0036】
ところで、上記第1及び第2の給電点21及び27からパルス状に供給される電力の電圧波は、同一電源から発振され、互いに電極間を伝播していくので、すなわち、両者は互いに向かい合った方向から伝播しあって重なり合うので、干渉現象が発生する。その様子を、図5及び図6を用いて説明する。
図5において、第1の給電点21から第2の給電点27の方向の距離をxとし、xの正方向へ伝播する電圧波をW11(x,t)、xの負方向へ伝播する電圧波、即ち第2の給電点27から第1の給電点21の方向へ伝播する電圧波をW21(x,t)とすると、次のように表現される。
W11(x、t)=V1・sin(ωt+2πx/λ)
W21(x、t)=V1・sin{ωt−2π(x−L0)/λ+Δθ}
ただし、V1は電圧波の振幅、ωは電圧の角周波数、λは電圧波の波長、tは時間、L0は第1及び第2の給電点の間隔、Δθは第1の給電点21から供給される電力の電圧波と第2の給電点27から供給される電力の電圧波の位相差である。この2つの電圧波の合成波W1(x、t)は次式のようになる。
W1(x、t)=W11(x、t)+W21(x、t)
=2・V1cos{2π(x−L0/2)/λ−Δθ/2}・sin{ωt+(πL0/λ+Δθ/2)
上記合成波W1(x、t)を概念的に図6に示す。図6において、Δθ=0の場合、生成されるプラズマの強さは給電点間の中央部(x=L0/2)が強く、該中央部から離れるにしたがって弱くなることを示している。Δθ>0の場合、プラズマの強い部分が一方の給電点側へ移動し、Δθ<0の場合、他方の給電点側へ移動することを示している。
なお、ここでは、前記第1の電力供給系を用いて、前記第1及び第2の給電点21、27に供給される電力の電圧波を、それぞれ、W11(x、t)及びW21(x、t)と呼ぶ。また、その2つの電圧波の合成波を第1の定在波W1(x、t)と呼ぶ。
【0037】
ところで、一対の電極間の電力の強さは、電圧の第1の定在波W1(x、t)の振幅値の二乗に比例する。即ち、電力の強さI1(x、t)は、
I1(x、t)∝cos{2π(x−L0/2)/λ−Δθ/2}
と表される。このI1(x、t)を概念的に、図7に示す。
図7は、VHFプラズマの生成上問題となる定在波の発生により、一対の電極間でのプラズマの一様性は、例えば強さが0.9〜1.0の範囲であるすると、電力伝播方向の距離で、−0.05〜+0.05λの範囲(即ち、膜厚が均一な範囲は長さ0.1λ)に限られるということを示している。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5〜0.9程度である。
また、前記第1の予備製膜工程にて取得した基板の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第1の位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差の関係を示すデータにより、膜厚分布の最大厚みの位置を例えば、基板の中央点から波長λの八分の一、即ちλ/8だけ離れた位置に設定することができる。
なお、ここでは、第1の定在波W1(x、t)の強さの分布をI1(x、t)と呼ぶ。
【0038】
次に、第2の予備製膜工程であるが、図1及び図2において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば250sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
そして、前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28、第3の電力増幅器29、第3のインピーダンス整合器30、第3の電流導入端子31、第3の真空用同軸ケーブル32の芯線33、第4の電力増幅器34、第4のインピーダンス整合器35、第4の電流導入端子36、第4の真空用同軸ケーブル37の芯線38から成る第2の電力供給系を用いて、一対の電極2、4に高周波電力を、例えば周波数60MHz、パルス幅Hw=400μ秒、パルス周期T0=1m秒の電力例えば合計で200Wを供給する。
即ち、該第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差を、例えば零に、パルス幅Hw=400μ秒、パルス周期T0=1m秒に設定し、第3の電力増幅器29の出力を100Wに設定して、その出力を第3のインピーダンス整合器30、第3の電流導入端子31、第3の真空用同軸ケーブル32の芯線33を介して、第1の給電点に供給するとともに、第4の電力増幅器34の出力を100Wに設定して、その出力を第4のインピーダンス整合器35、第4の電流導入端子36、第4の真空用同軸ケーブル37の芯線38を介して、第2の給電点に供給する。
この場合、前記第3のインピーダンス整合器30及び第4のインピーダンス整合器35を調整することにより、それぞれのインピーダンス整合器30、35の上流側に上記供給電力の反射波が戻らないようにできる。
その結果、前記SiH4ガスのプラズマが生成され、基板11に例えばアモルファスSiが堆積する。
【0039】
前記要領で、製膜時間を例えば10〜20分間にして、前記基板11にアモルファスSi膜を形成させる。製膜後、真空容器1から前記基板11を取り出して、該アモルファスSi膜の膜厚み分布を評価する。該基板11に堆積された例えばアモルファスSiの膜厚分布には、前述のVHFプラズマ固有の現象である定在波の発生により、正弦的な分布となる。このような、製膜試験を第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差をパラメータに繰り返し実施する。そして、第1の電極の長さ方向において、基板の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の関係をデータとして把握する。
この場合も、前記第1の予備製膜工程と同様に、第2の電力供給系を用いた場合において、基板の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の関係を示すデータにより、膜厚分布の最大厚みの位置を例えば、基板の中央点から第2の給電点27の方向へ波長λの八分の一、即ちλ/8だけ離れた位置に設定するための位相差は例えばΔθ2であるということが把握される。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5〜0.9程度である。
【0040】
第2の予備製膜工程において、上記第1及び第2の給電点21及び27からパルス状に供給される電力の電圧波は、同一電源から発振され、互いに電極間を伝播していくので、すなわち、両者は互いに向かい合った方向から伝播しあって重なり合うので、干渉現象が発生する。その様子を、図5及び図6に示す。
図5において、第1の給電点21から第2の給電点27の方向の距離をxとし、xの正方向へ伝播する電圧波をW12(x,t)、xの負方向へ伝播する電圧波、即ち第2の給電点27から第1の給電点21の方向へ伝播する電圧波をW22(x,t)とすると、次のように表現される。
W12(x、t)=V2・sin(ωt+2πx/λ)
W22(x、t)=V2・sin{ωt−2π(x−L0)/λ+Δθ}
ただし、V2は電圧波の振幅、ωは電圧の角周波数、λは電圧波の波長、tは時間、L0は第1及び第2の給電点の間隔、Δθは第1の給電点21から供給される電力の電圧波と第2の給電点27から供給される電力の電圧波の位相差である。電圧の合成波W2(x、t)は次式のようになる。
W2(x、t)=W12(x、t)+W22(x、t)
=2・V2cos{2π(x−L0/2)/λ−Δθ/2}・sin{ωt+(πL0/λ+Δθ/2)
上記合成波W2(x、t)を概念的に図6に示す。図6において、Δθ=0の場合、生成されるプラズマの強さは給電点間の中央部(x=L0/2)が強く、該中央部から離れるにしたがって弱くなることを示している。Δθ>0の場合、プラズマの強い部分が一方の給電点側へ移動し、Δθ<0の場合、他方の給電点側へ移動することを示している。
なお、ここでは、前記第2の電力供給系を用いて前記第1及び第2の給電点21、27に供給される電力の電圧波を、それぞれ、W12(x、t)及びW22(x、t)と呼ぶ。また、その2つの波の合成波を第2の定在波W2(x、t)と呼ぶ。
【0041】
ところで、一対の電極間の電力の強さは、電圧の合成波W2(x、t)の振幅値の二乗に比例する。即ち、電力の強さI2(x、t)は、
I2(x、t)∝cos{2π(x−L0/2)/λ−Δθ/2}
と表される。このI2(x、t)を概念的に、図7に示す。
図7は、VHFプラズマの生成上問題となる定在波発生により、一対の電極間でのプラズマの一様性は、例えば強さが0.9〜1.0の範囲であるすると、電力伝播方向の距離で、−0.05〜+0.05λの範囲(即ち、膜厚が均一な範囲は長さ0.1λ)に限られるということを示している。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5〜0.9程度である。
なお、ここでは、第2の定在波W2(x、t)の強さの分布をI2(x、t)と呼ぶ。
【0042】
さて、前記第1および第2の予備製膜工程の結果を受けて、本製膜工程に入る。先ず、図1及び図2において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば300sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
次に、前記第1の電力供給系の構成部材の第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力、例えば周波数60MHzの正弦波の位相差を第1の予備製膜工程のデータとして把握したΔθ1に設定し、そのパルス変調を図3及び図4に示すW11(t)及びW21(t)におけるパルス幅Hw及び周期T0を例えばHw=400μ秒及びT0=1m秒に設定し、第1及び第2の給電点21、27に、それぞれ例えば電力100Wを供給するともとに、前記第2の電力供給系の構成部材の第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力、例えば周波数60MHzの正弦波の位相差を第2の予備製膜工程のデータとして把握したΔθ2に設定し、かつ、そのパルス変調を図3及び図4に示すW12(t)及びW22(t)におけるパルス幅Hw及び周期T0を例えばHw=400μ秒及びT0=1m秒で、かつ、前記W11(t)及びW21(t)のパルス変調のパルス立ち上がり時間より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がるように設定し、第1及び第2の給電点21、27に、それぞれ例えば電力100Wを供給する。即ち、前記第1及び第2の給電点21,27に、前記電圧波W11(x、t)、電圧波W21(x、t)、W12(x、t)及びW22(x、t)が供給される。
ここで、第1の予備製膜工程及び第2の予備製膜工程でそれぞれ設定した第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15及び第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28のパルス幅Hwと周期T0の値を、例えば、Hw=400μ秒を1m秒などへ、T0=1m秒を5m秒などへ変更して、いくつかの製膜データを比較することができる。
【0043】
一対の電極2、4間に4つの電圧波が供給されると、前述のように、W11(x、t)とW21(x、t)は干渉して第1の定在波W1(x、t)を形成し、W12(x、t)とW22(x、t)は干渉して第2の定在波W2(x、t)を形成する。ただし、W11(x、t)は、W12(x、t)及びW22(x、t)とは、時間的に分離されているので干渉しない。また、同様に、W21(x、t)は、W12(x、t)及びW22(x、t)と干渉しない。
したがって、上記パルス変調の周期T0より大幅に長い数秒以上の一般的な製膜時間で考えれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布は、第1の定在波W1(x、t)の強さの分布I1(x、t)と第2の定在波W2(x、t)の強さの分布I2(x、t)の重ね合わせた形となる。その様子を概念的に図8に示す。
ここで、基板の中央点をx軸の原点とし、該原点から第1の給電点21を向いた方向を正の方向とすると、第1の定在波W1(x、t)の強さの分布I1(x、t)は、
I1(x、t)∝cos{2πx/2+2π(λ/8)/λ}
=cos{2πx/2+π/4}
第2の定在波W2(x、t)の強さの分布I2(x、t)は、
I2(x、t)∝cos{2πx/2−2π(λ/8)/λ}
=cos{2πx/2−π/4}
一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、
I(x、t)
=cos{2πx/2+π/4}+cos{2πx/2−π/4}
=1
この結果は、該一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、x即ち電力の伝播方向の位置に依存しないで一定の値であり、均一であるということを示している。
【0044】
また、この結果は、発振周波数がVHF帯域に属する高周波電源の出力の電力を用いて生成されたプラズマを利用して真空容器に配置された基板の表面を処理する表面処理装置に用いられる高周波プラズマ発生装置において、前記基板の表面の法線方向と実質的に同じ方向の電界を有する電磁波の定在波の腹の位置が異なる第1の定在波と第2の定在波を発生させ、かつ、該第1及び第2の定在波を重畳させる手段を備えることにより、プラズマの一様化に不可欠な電極間の電力の強さの分布の制御が可能であるとの意味がある。
さらに、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.25倍、即ち0.25λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、電力の伝播方向の位置に依存しないで一定の値であり、均一であるということを示している。このことは、UHFプラズマ及びUHFプラズマの応用分野においての重要課題である大面積・均一のプラズマ処理化を実現可能な装置の提供ができるという意味で画期的発見であるということを意味している。
また、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.22〜0.28倍、即ち0.22〜0.28λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、±20%以下であることを示している。
また、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.238〜0.263倍、即ち0.238〜0.263λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、±10%以下であることを示している。
【0045】
上記工程において、SiH4ガスがプラズマ化されると、そのプラズマ中に存在するSiH3、SiH2、SiH等のラジカルが拡散現象により拡散し、基板11の表面に吸着されることによりa−Si膜が堆積するが、一対の電極2,4間の電力の分布が、上述の通り、時間平均的に一様であるので、その堆積膜は一様になる。
このことは、本発明の装置及び方法では、波長λの二分の一を越えるサイズの基板を対象にした場合においても、一様な膜厚分布の形成が可能であることを示している。即ち、従来のVHFプラズマ表面処理装置及び方法では不可能視されている波長λの二分の一を越えるサイズの基板を対象にした場合でも、本発明は一様な膜厚分布の形成が実現可能であるということを意味している。
したがって、上記のことはVHFプラズマの応用分野においては画期的な発見であり、その実用価値は著しく大きいものがある。
なお、微結晶Siあるいは薄膜多結晶Si等は、製膜条件の中のSiH4,H2の流量比、圧力および電力を適正化することで製膜できることは公知の技術である。
【0046】
本実施例では、第1の電極2が一本の棒であるので、基板サイズは上記1200mmx100mm程度に制約されるが、第1の電極2である棒電極の個数を増加すれば基板サイズの幅は拡大可能であることは当然のことである。
【0047】
また、a−Si太陽電池、薄膜トランジスタおよび感光ドラム等の製造では、膜厚分布として±10%以内であれば性能上問題はない。上記実施例によれば、60MHzの電源周波数を用いても、従来の装置および方法では不可能であった
該一対の電極2、4間の電力の強さの分布I(x、t)の均一化が可能である。即ち、膜厚分布として±10%以内を実現可能である。このことは、a−Si太陽電池、薄膜トランジスタおよび感光ドラム等の製造分野での生産性向上および低コスト化に係わる工業的価値が著しく大きいことを意味している。
【0048】
(実施例2)
本発明に関する実施例2の高周波プラズマ発生装置と該高周波プラズマ発生装置により構成のプラズマ表面処理装置(プラズマCVD装置)およびプラズマ表面処理方法(プラズマCVD方法)について、図9及び図10を参照して説明する。
【0049】
先ず、装置の構成について説明する。ただし、実施例1に示した部材と同じ部材は同符番を付して説明を省略する。図9は実施例2に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図、図10は図9図示のプラズマ表面処理装置の第1及び第2の電極への給電部の説明図である。
【0050】
最初に、装置の概念を説明する。装置の構成は、全体的には実施例1での図1及び図2の場合と同じであるが、図1及び図2に図示の装置構成において、第1のインピーダンス整合器17と第1の給電点21の間、第2のインピーダンス整合器23と第2の給電点27の間、第3のインピーダンス整合器30と第1の給電点21の間及び第4のインピーダンス整合器35と第2の給電点27の間に、それぞれLCブリッジ型平衡不平衡変換装置及び平衡伝送回路から成る平衡不平衡変換装置が挿入されていることが特徴である。
【0051】
図9及び図10において、電極へ高周波電力を給電する位置である給電点の一つは、第1の電極2の一方の端部とし、これを第1の給電点21とする。また、該給電点21に対して高周波電力波の伝播上での対向点となる関係にある位置である該電極の他方の端部を第2の給電点27とする。
第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力端子の一方の出力端子は、第1の電力増幅器16、第1のインピーダンス整合器17、第1のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置40、該第1のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置40の2つの出力端子に接続され、かつ外部導体同士が短絡されている2本の同軸ケーブル44、45、第1の電流導入端子18、両端部の外部導体が短絡されている真空用同軸ケーブル46、47の芯線48、49を介して、それぞれ第1の給電点21及び第2の電極4に接続される。
なお、給電点21に供給される電力は、典型例として図3及び図4に示すW11(t)のように、パルス幅Hw、周期T0でパルス変調された正弦波である。
第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力端子の他方の出力端子は、第2の電力増幅器22、第2のインピーダンス整合器23、第2のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置41、該第2のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置41の2つの出力端子に接続され、かつ外部導体同士が短絡されている2本の同軸ケーブル50、51、第2の電流導入端子24、両端部の外部導体が短絡されている真空用同軸ケーブル52、53の芯線54、55を介して、それぞれ第2の給電点27及び第2の電極4に接続される。
該位相可変2出力の発信器15の2つの出力端子から出力される2つの正弦波信号の位相差及びパルス変調のパルス幅Hw及び周期T0は、該位相可変2出力の発信器15に付属の位相差調整器及びパルス変調の調整器で、それぞれ任意の値に設定できる。また、該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15は、前述の同期信号伝送ケーブル100を介して、後述の第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28にパルス変調の同期信号を送信する。
なお、給電点27に供給される電力は、典型例として図3及び図4に示すW21(t)のように、該W11(t)と同様のパルス幅Hw、周期T0でパルス変調された正弦波である。
【0052】
図9及び図10において、第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28は、同期信号ケーブル100を介して伝送される第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15のパルス変調波形の同期信号を用いて、該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の出力のパルス変調波形に同期したパルス変調の電力を出力する。
第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力端子の一方の出力端子は、第3の電力増幅器29、第3のインピーダンス整合器30、第3のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置42、該第3のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置42の2つの出力端子に接続され、かつ外部導体同士が短絡されている2本の同軸ケーブル56、57、第3の電流導入端子31、両端部の外部導体が短絡されている真空用同軸ケーブル58、59の芯線60、61を介して、それぞれ第1の給電点21及び第2の電極4に接続される。
なお、給電点21に供給される電力は、典型例として図3及び図4に示すW12(t)のように、パルス幅Hw、周期T0で、かつ、前記W11(t)及びW21(t)のパルス変調のパルス立ち上がり時間より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がるパルス変調された正弦波である。
第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力端子の他方の出力端子は、第4の電力増幅器34、第4のインピーダンス整合器35、第4のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置43、該第4のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置43の2つの出力端子に接続され、かつ外部導体同士が短絡されている2本の同軸ケーブル62、63、第4の電流導入端子36、両端部の外部導体が短絡されている真空用同軸ケーブル64、65の芯線66、67を介して、それぞれ、第2の給電点27及び第2の電極4に接続される。
なお、給電点27に供給される電力は、典型例として図3及び図4に示すW22(t)のように、パルス幅Hw、周期T0で、かつ、前記W11(t)及びW21(t)のパルス変調のパルス立ち上がり時間より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がるパルス変調された正弦波である。
【0053】
次に、上記構成のプラズマ表面処理装置を用いて、a−Si太陽電池用アモルファスSiを製膜する方法を説明する。なお、本発明の実施あるいは応用では、手順として、第1及び第2の予備製膜工程と本製膜工程が必要である。第1の予備製膜工程は、前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差の設定値を把握するために、第2の予備製膜工程は、前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の設定値を把握するために、本製膜工程は目的とするアモルファスSiの製造のために実施される。
【0054】
先ず、第1の予備製膜工程であるが、図9及び図10において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば250sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
そして、前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15、第1の電力増幅器16、第1のインピーダンス整合器17、第1のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置40、第1の電流導入端子18、真空用同軸ケーブル46、47の芯線48、49、第2の電力増幅器22、第2のインピーダンス整合器23、第2のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置41、第2の電流導入端子24、真空用同軸ケーブル52、53の芯線54、55から成る第1の電力供給系を用いて、一対の電極2、4に高周波電力を、例えば周波数70MHz、パルス変調のパルス幅Hw=400μ秒及びパルス周期T0=1m秒の電力例えば合計で200Wを供給する。
即ち、該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差を、例えば零に、パルス幅Hw=400μ秒、パルス周期T0=1m秒に設定し、第1の電力増幅器16の出力を100Wに設定して、その出力を第1のインピーダンス整合器17、第1のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置40、第1の電流導入端子18、真空用同軸ケーブル46、47の芯線48、49を介して、第1の給電点21と第2の電極4間に供給するとともに、第2の電力増幅器22の出力を100Wに設定して、その出力を第2のインピーダンス整合器23、第2のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置41、第2の電流導入端子24、真空用同軸ケーブル52、53の芯線54、55を介して、第2の給電点27と第2の電極4間に供給する。
その結果、前記SiH4ガスのプラズマが生成され、基板11に例えばアモルファスSiが堆積する。
【0055】
前記の要領で、製膜時間を例えば10〜20分間にして、前記基板11にアモルファスSi膜を形成させる。 製膜後、真空容器1から前記基板11を取り出して、該アモルファスSi膜の膜厚み分布を評価する。基板11に堆積された例えばアモルファスSiの膜厚分布は、前述のVHFプラズマ固有の現象である定在波の発生により、正弦的な分布となる。このような、製膜試験を第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差をパラメータに繰り返し実施する。そして、第1の電極の長さ方向において、基板11の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差の関係をデータとして把握する。例えば、基板11の中央点から第1の給電点21の方向へ波長λの八分の一、即ちλ/8だけ離れた位置に設定するための位相差は、例えばΔθ1であるいうことが把握される。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5〜0.9程度である。
【0056】
次に、第2の予備試験であるが、図9及び図10において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば250sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
そして、前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28、第3の電力増幅器29、第3のインピーダンス整合器30、第3のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置42、第3の電流導入端子31、真空用同軸ケーブル58、59の芯線60、61、第4の電力増幅器34、第4のインピーダンス整合器35、第4のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置43、第4の電流導入端子36、真空用同軸ケーブル64、65の芯線66、67から成る第2の電力供給系を用いて、一対の電極2、4に高周波電力を、例えば周波数70MHz、パルス幅Hw=400μ秒、パルス周期T0=1m秒の電力例えば合計で200Wを供給する。
即ち、該第2の位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差を、例えば零に、パルス変調をパルス幅Hw=400μ秒、パルス周期T0=1m秒に設定し、第3の電力増幅器29の出力を100Wに設定して、その出力を第3のインピーダンス整合器30、第3のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置42、第3の電流導入端子31、真空用同軸ケーブル58、59の芯線60、61を介して、第1の給電点21と第2の電極4間に供給するとともに、第4の電力増幅器34の出力を100Wに設定して、その出力を第4のインピーダンス整合器35、第4のLCブリッジ型平衡不平衡変換装置43、第4の電流導入端子36、真空用同軸ケーブル64、65の芯線66、67を介して、第2の給電点27と第2の電極4間に供給する。
その結果、前記SiH4ガスのプラズマが生成され、基板11に例えばアモルファスSiが堆積する。
【0057】
前記の要領で、製膜時間を例えば10〜20分間にして、前記基板11にアモルファスSi膜を形成させる。製膜後、真空容器1から前記基板11を取り出して、該アモルファスSi膜の膜厚み分布を評価する。基板11に堆積された例えばアモルファスSiの膜厚分布は、前述のVHFプラズマ固有の現象である定在波の発生により、正弦的な分布となる。このような、製膜試験を第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差をパラメータに繰り返し実施する。そして、第1の電極の長さ方向において、基板11の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の関係をデータとして把握する。例えば、基板11の中央点から第2の給電点27の方向へ波長λの八分の一、即ちλ/8だけ離れた位置に設定するための位相差は、例えばΔθ2であるいうことが把握される。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5〜0.9程度である。
【0058】
さて、前記第1および第2の予備製膜工程の結果を受けて、本製膜工程に入る。先ず、図9及び図10において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば300sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
次に、前記第1の電力供給系の構成部材の第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力、例えば周波数70MHzの正弦波の位相差を第1の予備試験データで把握したΔθ1に設定し、そのパルス変調を図3及び図4に示すW11(t)及びW21(t)におけるパルス幅Hw及び周期T0を例えばHw=400μ秒及びT0=1m秒に設定し、第1及び第2の給電点21、27に、それぞれ例えば電力100Wを供給するともとに、前記第2の電力供給系の構成部材の第2の位相可変2出力の発信器28の2つの出力、例えば周波数70MHzの正弦波の位相差を第2の予備試験データで把握したΔθ2に設定し、かつ、そのパルス変調を図3及び図4に示すW12(t)及びW22(t)におけるパルス幅Hw及び周期T0を例えばHw=400μ秒及びT0=1m秒で、かつ、前記W11(t)及びW21(t)のパルス変調のパルス立ち上がり時間より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がるように設定し、第1及び第2の給電点21、27に、それぞれ例えば電力100Wを供給する。
即ち、前記第1及び第2の給電点21,27に、前記電圧波W11(x、t)、電圧波W21(x、t)、W12(x、t)及びW22(x、t)が供給される。
ここで、第1の予備製膜工程及び第2の予備製膜工程でそれぞれ設定した第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15及び第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28のパルス幅Hwと周期T0の値を、例えば、Hw=400μ秒を1m秒などへ、T0=1m秒を5m秒などへ変更して、いくつかの製膜データを比較することができる。
【0059】
前記一対の電極2、4間に4つの電圧波が供給されると、前述のように、W11(x、t)とW21(x、t)は干渉して第1の定在波W1(x、t)を形成し、W12(x、t)とW22(x、t)は干渉して第2の定在波W2(x、t)を形成する。ただし、W11(x、t)は、W12(x、t)及びW22(x、t)とは時間的に分離されているので、干渉しない。また、同様に、W21(x、t)は、W12(x、t)及びW22(x、t)と干渉しない。
したがって、上記パルス変調の周期T0より大幅に長い数秒以上の一般的な製膜時間で考えれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布は、第1の定在波W1(x、t)の強さの分布I1(x、t)と第2の定在波W2(x、t)の強さの分布I2(x、t)の重ね合わせた形となる。その様子を概念的に図8に示す。
ここで、基板の中央点をx軸の原点とし、該原点から第1の給電点21を向いた方向を正の方向とすると、第1の定在波W1(x、t)の強さの分布I1(x、t)は、
I1(x、t)=cos{2πx/2+2π(λ/8)/λ}
=cos{2πx/2+π/4}
第2の定在波W2(x、t)の強さの分布I2(x、t)は、
I2(x、t)=cos{2πx/2−2π(λ/8)/λ}
=cos{2πx/2−π/4}
一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、
I(x、t)
=cos{2πx/2+π/4}+cos{2πx/2−π/4}
=1
この結果は、該一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、x即ち電力の伝播方向の位置に依存しないで一定の値であり、均一であるということを示している。
【0060】
また、この結果は、発振周波数がVHF帯域に属する高周波電源の出力の電力を用いて生成されたプラズマを利用して真空容器に配置された基板の表面を処理する表面処理装置に用いられる高周波プラズマ発生装置において、前記基板の表面の法線方向と実質的に同じ方向の電界を有する電磁波の定在波の腹の位置が異なる第1の定在波と第2の定在波を発生させ、かつ、該第1及び第2の定在波を重畳させる手段を備えることにより、プラズマの一様化に不可欠な電極間の電力の強さの分布の制御が可能であるとの意味がある。
さらに、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.25倍、即ち0.25λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、電力の伝播方向の位置に依存しないで一定の値であり、均一であるということを示している。このことは、UHFプラズマ及びUHFプラズマの応用分野においての重要課題である大面積・均一のプラズマ処理化を実現可能な装置の提供ができるという意味で画期的発見であるということを意味している。
また、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.22〜0.28倍、即ち0.22〜0.28λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、±20%以下であることを示している。
また、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.238〜0.263倍、即ち0.238〜0.263λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、±10%以下であることを示している。
【0061】
上記工程において、SiH4ガスがプラズマ化されると、そのプラズマ中に存在するSiH3、SiH2、SiH等のラジカルが拡散現象により拡散し、基板11の表面に吸着されることによりa−Si膜が堆積するが、一対の電極2、4間の電力の分布が、上述の通り一様であるので、その堆積膜は一様になる。
このことは、波長λの二分の一を越えるサイズの基板を対象にした従来の
VHFプラズマ表面処理装置及び方法では不可能視されている一様な膜厚分布の形成が実現可能であるということを意味している。したがって、上記のことはVHFプラズマ及びUHFプラズマ応用分野においては画期的な発見であり、その実用価値は著しく大きい。
【0062】
前記実施例1の装置構成の場合、プラズマの一様化の実現を阻害する要因の一つである給電点21,27近傍で発生の漏洩電流が問題となるが、本実施例においては、給電点21、27と第1、第2、第3及び第4のインピーダンス整合器17、23、30、35の間に、それぞれ挿入された平衡不平衡変換装置と平衡伝送路の機能により該漏洩電流の発生が抑制されるので、堆積膜の一様化が、実施例1の場合より、より一層確実に実現可能である。
【0063】
上記工程において、SiH4ガスがプラズマ化されると、そのプラズマ中に存在するSiH3、SiH2、SiH等のラジカルが拡散現象により拡散し、基板11の表面に吸着されることによりa−Si膜が堆積するが、一対の電極2、4間の電力の分布が、上述の通り、時間平均的に一様であるので、その堆積膜は一様になる。
このことは、本発明の装置及び方法では、波長λの二分の一を越えるサイズの基板を対象にした場合においても、一様な膜厚分布の形成が可能であることを示している。即ち、従来のVHFプラズマ表面処理装置及び方法では不可能視されている波長λの二分の一を越えるサイズの基板を対象にした場合でも、本発明は一様な膜厚分布の形成が実現可能であるということを意味している。
したがって、上記のことはVHFプラズマの応用分野においては画期的な発見であり、その実用価値は著しく大きいものがある。
なお、微結晶Siあるいは薄膜多結晶Si等は、製膜条件の中のSiH4、H2の流量比、圧力および電力を適正化することで製膜できることは公知の技術である。
【0064】
(実施例3)
本発明に関する実施例3の高周波プラズマ発生装置と該高周波プラズマ発生装置により構成のプラズマ表面処理装置(プラズマCVD装置)およびプラズマ表面処理方法(プラズマCVD方法)について、図11ないし図13を参照して説明する。
【0065】
先ず、装置の構成について説明する。ただし、前記実施例1及び実施例2に示した部材と同じ部材は同符番を付して説明を省略する。図11は実施例3に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図である。図12及び図13は、それぞれ図11図示のプラズマ表面処理装置に用いられる第1及び第2の電力供給系の配線図である。
【0066】
最初に、装置の概念を説明する。本装置は図11に示すように、第1の電極として、複数の棒状電極2a、2b、2c、2dを用いていること、その両端部に、それぞれ電力供給点21a、21b、21c、21d及び27a、27b、27c、27dが配置されて、該両端部の電力供給点に、第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15を発振源とする第1の電力供給系及び該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15からの同期信号を用いて発振する第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28を発振源とする第2の電力供給系より、それぞれ、電圧波W11(x、t)と電圧波W21(x、t)及びW12(x、t)とW22(x、t)が供給される構成を有することを特徴とする。
【0067】
図11及び図12において、第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力端子の一方の出力端子は、第1の電力増幅器16、第1のインピーダンス整合器17、第1の電力分配器70の一方の出力端子を介して、第2の電力分配器71、該第2の電力分配器71の一方の出力端子、電流導入端子18a、真空用同軸ケーブル19aの芯線20aを介して給電点21aに接続されるとともに、該第2の電力分配器71の他方の出力端子を介して、電流導入端子18b、真空用同軸ケーブル19bの芯線20bを介して給電点21bに接続されるとともに、該第1の電力分配器70の他方の出力端子を介して、第3の電力分配器72の一方の出力端子、電流導入端子18c、真空用同軸ケーブル19cの芯線20cを介して給電点21cに接続されるとともに、該第3の電力分配器72の他方の出力端子、電流導入端子18d、真空用同軸ケーブル19dの芯線20dを介して給電点21dに接続される。
電力供給点21a〜21dに供給される電力は、典型例として図3及び図4に示すW11(t)のように、パルス幅Hw、周期T0でパルス変調された正弦波である。
第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力端子の他方の出力端子は、第2の電力増幅器22、第2のインピーダンス整合器23、第4の電力分配器73の一方の出力端子を介して、第5の電力分配器74の一方の出力端子、電流導入端子24a、真空用同軸ケーブル25aの芯線26aを介して給電点27aに接続されるとともに、該第5の電力分配器74の他方の出力端子、電流導入端子24b、真空用同軸ケーブル25bの芯線26bを介して給電点27bに接続されるとともに、該第4の電力分配器74の他方の出力端子を介して、第6の電力分配器75の一方の出力端子、電流導入端子24c、真空用同軸ケーブル25cの芯線26cを介して給電点27cに接続されるとともに、該第6の電力分配器75の他方の出力端子、電流導入端子24d、真空用同軸ケーブル25dの芯線26dを介して給電点27dに接続される。
なお、給電点27a〜27bに供給される電力は、典型例として図3及び図4に示すW21(t)のように、該W11(t)と同様のパルス幅Hw、周期T0でパルス変調された正弦波である。
なお、前記第1の電力増幅器16及び第2の電力増幅器22には、それぞれ出力値(進行波)のモニター及び下流側から反射して戻ってくる反射波のモニターが付属している。また、該該反射波による該第1及び第2の電力増幅器16、22本体の電気回路を防護するためのアイソレータが付属されている。
ここで、第1の位相可変2出力の発信器15の2つの出力をそれぞれ電力増幅器16、22等を用いて、第1及び第2の給電点21a〜21d、27a〜27dに供給する電力供給系を第1の電力供給系と呼ぶ。
【0068】
そして、図11及び図13において、第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力端子の一方の出力端子は、第3の電力増幅器29、第3のインピーダンス整合器30、第7の電力分配器76の一方の出力端子を介して、第8の電力分配器77、該第8の電力分配器77の一方の出力端子、電流導入端子31a、真空用同軸ケーブル32の芯線33aを介して給電点21aに接続されるとともに、該第8の電力分配器77の他方の出力端子を介して、電流導入端子31b、真空用同軸ケーブル32bの芯線33bを介して給電点21bに接続されるとともに、該第7の電力分配器76の他方の出力端子を介して、第9の電力分配器78の一方の出力端子、電流導入端子31c、真空用同軸ケーブル32cの芯線33cを介して給電点21cに接続されるとともに、該第9の電力分配器78の他方の出力端子、電流導入端子32d、真空用同軸ケーブル32dの芯線33dを介して給電点21dに接続される。
なお、給電点21a〜21dに供給される電力は、典型例として図3及び図4に示すW12(t)のように、パルス幅Hw、周期T0で、かつ、前記W11(t)及びW21(t)のパルス変調のパルス立ち上がり時間より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がるパルス変調された正弦波である。
また、第7の電力分配器76から第1の給電点21a〜21dまでの電力波の伝播路の長さが同じになるように、分岐されたそれぞれの同軸ケーブル線路は、構造、材質及び長さを等しくしている。
第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力端子の他方の出力端子は、第4の電力増幅器34、第4のインピーダンス整合器35、第10の電力分配器79の一方の出力端子を介して、第11の電力分配器80、該第11の電力分配器80の一方の出力端子、電流導入端子36a、真空用同軸ケーブル37a及び接続線38aを介して給電点27aに接続されるとともに、該第11の電力分配器80の他方の出力端子、電流導入端子36b、真空用同軸ケーブル37b及び接続線38bを介して給電点27bに接続されるとともに、該第10の電力分配器79の他方の出力端子を介して、第12の電力分配器81の一方の出力端子、電流導入端子36c、真空用同軸ケーブル37c及び接続線38cを介して給電点27cに接続されるとともに、該第12の電力分配器81の他方の出力端子、電流導入端子36d、真空用同軸ケーブル37d及び接続線38dを介して給電点27dに接続される。
なお、給電点27a〜27bに供給される電力は、典型例として図3及び図4に示すW22(t)のように、パルス幅Hw、周期T0で、かつ、前記W11(t)及びW21(t)のパルス変調のパルス立ち上がり時間より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がるパルス変調された正弦波である。
また、第10の電力分配器79から第2の給電点27a〜27dまでの電力波の伝播路の長さが同じになるように、分岐されたそれぞれの同軸ケーブル線路は、構造、材質及び長さを等しくしている。
また、前記第3の電力増幅器29及び第4の電力増幅器34には、それぞれ出力値(進行波)のモニター及び下流側から反射して戻ってくる反射波のモニターが付属している。また、該該反射波による該第3及び第4の電力増幅器29、34本体の電気回路を防護するためのアイソレータが付属されている。
ここで、第2の位相可変2出力の発信器28の2つの出力をそれぞれ電力増幅器29、34等を用いて、第1及び第2の給電点21a〜21d、27a〜27dに供給する電力供給系を第2の電力供給系と呼ぶ。
【0069】
次に、上記構成のプラズマ表面処理装置を用いて、a−Si太陽電池用アモルファスSi膜を製造する方法を説明する。なお、本発明の実施あるいは応用では、手順として、第1及び第2の予備製膜工程と本製膜工程が必要である。第1の予備製膜工程は、前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差の設定値を把握するために、第2の予備製膜工程は、前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の設定値を把握するために、本製膜工程は目的とするアモルファスSiの製造のために実施される。
【0070】
先ず、第1の予備製膜工程であるが、図11及び図12において、予め、図示しない基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、図示しない放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
そして、前記第1の電力供給系を用いて、第1及び第2の給電点21a〜21d、27a〜27dに高周波電力を、例えば周波数60MHzの電力例えば合計で500Wを供給する。
即ち、該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差を、例えば零に、パルス幅Hw=400μ秒及び周期T0=1m秒に設定し、第1の電力増幅器16及び第2の電力増幅器22の出力をそれぞれ、周波数60MHzで250Wに設定して、第1の電極の両端部にそれぞれ供給する。
ここで、該第1及び第2の給電点21a〜21d、27a〜27dに給電される電力の典型例を、図3及び図4に、W11(t)、W21(t)として示している。該W11(t)及びW21(t)は、それぞれ、パルス幅Hw、周期T0でパルス変調された超高周波数、例えば60MHzの正弦波である。該パルス幅Hw及び周期T0は、該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15に付属の調整器により任意の値、例えばHw=400μ秒及び周期T0=1m秒に設定される。
その結果、前記SiH4ガスのプラズマが生成され、基板11に例えばアモルファスSiが堆積する。
【0071】
前記の要領で、製膜時間を例えば10〜20分間にして、前記基板11にアモルファスSi膜を形成させる。製膜後、真空容器1から前記基板11を取り出して、該アモルファスSi膜の膜厚み分布を評価する。基板11に堆積された例えばアモルファスSiの膜厚分布は、前述のVHFプラズマ固有の現象である定在波の発生により、正弦的な分布となる。このような、製膜試験を第1の位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差をパラメータに繰り返し実施する。そして、第1の電極の長さ方向において、基板11の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第1の位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差の関係をデータとして把握する。例えば、基板11の中央点から第1の給電点21a〜21dの方向へ波長λの八分の一、即ちλ/8だけ離れた位置に設定するための位相差は、例えばΔθ1であるいうことが把握される。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5~0.9程度である。
【0072】
次に、第2の予備製膜工程であるが、図11及び図13において、予め、図示しない基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、図示しない放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
そして、前記第2の電力供給系を用いて、第1及び第2の給電点21a〜21d、27a〜27dに高周波電力を、例えば周波数60MHzの電力例えば合計で500Wを供給する。
即ち、該第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差を、例えば零に、パルス幅Hw=400μ秒及びパルス周期T0=1m秒に設定し、第3の電力増幅器29及び第2の電力増幅器34の出力をそれぞれ、周波数60MHzで250Wに設定して、第1の電極の両端部にそれぞれ供給する。
その結果、前記SiH4ガスのプラズマが生成され、基板11に例えばアモルファスSiが堆積する。
【0073】
前記の要領で、製膜時間を例えば10〜20分間にして、前記基板11にアモルファスSi膜を形成させる。製膜後、真空容器1から前記基板11を取り出して、該アモルファスSi膜の膜厚み分布を評価する。基板11に堆積された例えばアモルファスSiの膜厚分布は、前述のVHFプラズマ固有の現象である定在波の発生により、正弦的な分布となる。このような、製膜試験を第1の位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差をパラメータに繰り返し実施する。そして、第1の電極の長さ方向において、基板11の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の関係をデータとして把握する。例えば、基板11の中央点から第2の給電点27の方向へ波長λの八分の一、即ちλ/8だけ離れた位置に設定するための位相差は、例えばΔθ2であるいうことが把握される。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5〜0.9程度である。
【0074】
さて、前記第1および第2の予備製膜工程の結果を受けて、本製膜工程に入る。先ず、図9ないし図11において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば800sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
次に、前記第1の電力供給系の構成部材の第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力、例えば周波数60MHzの正弦波の位相差を第1の予備試験データで把握したΔθ1に設定し、そのパルス変調を図3及び図4に示すW11(t)及びW21(t)におけるパルス幅Hw及び周期T0を例えばHw=400μ秒及びT0=1m秒に設定し、第1及び第2の給電点21a〜21b、27a〜27bに、それぞれ例えば電力500Wを供給するともとに、前記第2の電力供給系の構成部材の第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力、例えば周波数60MHzの正弦波の位相差を第2の予備試験データで把握したΔθ2に設定し、そのパルス変調を図3及び図4に示すW12(t)及びW22(t)におけるパルス幅Hw及び周期T0を例えばHw=400μ秒及びT0=1m秒で、かつ、前記W11(t)及びW21(t)のパルス変調のパルス立ち上がり時間より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がるように設定し、第1及び第2の給電点21a〜21b、27a〜27bに、それぞれ例えば電力500Wを供給する。
即ち、前記第1及び第2の給電点21a〜21b、27a〜27bに、それぞれ、電力250Wの電圧波W11(x、t)、電力250Wの電圧波W21(x、t)、電力250WのW12(x、t)及び電力250WのW22(x、t)が供給される。
ここで、第1の予備製膜工程及び第2の予備製膜工程でそれぞれ設定した第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15及び第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28のパルス幅Hwと周期T0の値を、例えば、Hw=400μ秒を1m秒などへ、T0=1m秒を5m秒などへ変更して、いくつかの製膜データを比較することができる。
【0075】
前記一対の電極2a〜2d、4間に、前記第1及び第2の給電点21a〜21b、27a〜27bを介して4つの電圧波からなる電力が供給されると、前述のように、W11(x、t)とW21(x、t)は干渉して第1の定在波W1(x、t)を形成し、W12(x、t)とW22(x、t)は干渉して第2の定在波W2(x、t)を形成する。ただし、W11(x、t)は、W12(x、t)及びW22(x、t)とは時間的に分離されているので干渉しない。また、同様に、W21(x、t)は、W12(x、t)及びW22(x、t)と干渉しない。
したがって、上記パルス変調の周期T0より大幅に長い数秒以上の一般的な製膜時間で考えれば、一対の電極2a〜2d、4間に生成される電力の強さの分布は、第1の定在波W1(x、t)の強さの分布I1(x、t)と第2の定在波W2(x、t)の強さの分布I2(x、t)の重ね合わせた形となる。その様子を概念的に図8に示す。
ここで、基板の中央点をx軸の原点とし、該原点から第1の給電点21a〜21dを向いた方向を正の方向とすると、第1の定在波W1(x、t)の強さの分布I1(x、t)は、
I1(x、t)=cos{2πx/2+2π(λ/8)/λ}
=cos{2πx/2+π/4}
第2の定在波W2(x、t)の強さの分布I2(x、t)は、
I2(x、t)=cos{2πx/2−2π(λ/8)/λ}
=cos{2πx/2−π/4}
一対の電極2a〜2d、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、
I(x、t)
=cos{2πx/2+π/4}+cos{2πx/2−π/4}
=1
この結果は、該一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、x即ち電力の伝播方向の位置に依存しないで一定の値であり、均一であるということを示している。
【0076】
また、この結果は、発振周波数がVHF帯域に属する高周波電源の出力の電力を用いて生成されたプラズマを利用して真空容器に配置された基板の表面を処理する表面処理装置に用いられる高周波プラズマ発生装置において、前記基板の表面の法線方向と実質的に同じ方向の電界を有する電磁波の定在波の腹の位置が異なる第1の定在波と第2の定在波を発生させ、かつ、該第1及び第2の定在波を重畳させる手段を備えることにより、プラズマの一様化に不可欠な電極間の電力の強さの分布の制御が可能であるとの意味がある。
さらに、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.25倍、即ち0.25λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、電力の伝播方向の位置に依存しないで一定の値であり、均一であるということを示している。このことは、UHFプラズマ及びUHFプラズマの応用分野においての重要課題である大面積・均一のプラズマ処理化を実現可能な装置の提供ができるという意味で画期的発見であるということを意味している。
また、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.22〜0.28倍、即ち0.22〜0.28λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、±20%以下であることを示している。
また、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.238〜0.263倍、即ち0.238〜0.263λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、±10%以下であることを示している。
【0077】
上記工程において、SiH4ガスがプラズマ化されると、そのプラズマ中に存在するSiH3、SiH2、SiH等のラジカルが拡散現象により拡散し、基板11の表面に吸着されることによりa−Si膜が堆積するが、一対の電極2、4間の電力の分布が、上述の通り一様であるので、その堆積膜は一様になる。
このことは、波長λの二分の一を越えるサイズの基板を対象にした従来の
VHFプラズマ表面処理装置及び方法では不可能視されている一様な膜厚分布の形成が実現可能であるということを意味している。したがって、上記のことはVHFプラズマ及びUHFプラズマ応用分野においては画期的な発見であり、その実用価値は著しく大きい。
【0078】
本実施例では、第1の電極に用いられる棒電極のサイズを、直径5〜20mm程度で、間隔を5〜30mm、長さを1400mm〜1800mm程度とし、第1の棒電極と第2の平板電極(接地電極)の距離を5〜40mm程度に設定することにより、アモルファスSi膜は、製膜速度1〜3nm/s程度で、膜厚分布は±10%以内の製膜が可能である。
基板サイズの幅は、前記棒電極の個数及び電力供給系の個数を増加することにより拡大できることは当然である。
なお、微結晶Siあるいは薄膜多結晶Si等は、製膜条件の中のSiH4,H2の流量比、圧力および電力を適正化することで製膜できることは公知の技術であり、膜厚分布±10%以内の製膜が可能である。
【0079】
本実施例では、実施例2で用いられた平衡不平衡変換装置と平衡伝送路を使用していないが、該平衡不平衡変換装置と平衡伝送路を用いれば、上記プラズマの一様化は、より確実になることは当然である。
【0080】
(実施例4)
本発明に関する実施例4の高周波プラズマ発生装置と該高周波プラズマ発生装置により構成のプラズマ表面処理装置(プラズマCVD装置)およびプラズマ表面処理方法(プラズマCVD方法)について、図14を参照して説明する。
【0081】
先ず、装置の構成について説明する。ただし、前記実施例1ないし実施例3に示した部材と同じ部材は同符番を付して説明を省略する。図14は実施例4に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図である。
【0082】
最初に、装置の概念を説明する。装置の特徴は、第1の電極に方形平板を用いる構成であることである。
具体的には、第1の電極2は、開口率50%以上、例えば55%程度で設置される直径3mmの孔を有する方形平板の導電体である。厚みは6mm程度、面積は1500mmx300mm程度である。第2の電極は、基板ヒータを内臓する方形平板の導電体である。その厚みは70mm程度で、面積は1500mmx500mm程度である。電極間隔は5〜50mm程度で任意に設定可能である。基板11には、厚み4mm程度の面積:1200mmx200mm程度のガラス基板が用いられる。
【0083】
図14において、第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力端子の一方の出力端子は、第1の電力増幅器16、第1のインピーダンス整合器17、第1の電流導入端子18及び第1の真空同軸ケーブル19の端部の芯線20を介して、第1の給電点21に接続される。該第1の真空同軸ケーブル19の端部の外部導体は第2の電極4に接続される。
なお、給電点21に供給される電力は、典型例として図3及び図4に示すW11(t)のように、パルス幅Hw、周期T0でパルス変調された正弦波である。
第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力端子の他方の出力端子は、第2の電力増幅器22、第2のインピーダンス整合器23、第2の電流導入端子24及び第2の真空同軸ケーブル25の端部の芯線26を介して、第2の給電点27に接続される。該第2の真空同軸ケーブル19の端部の外部導体は第2の電極4に接続される。
なお、給電点27に供給される電力は、典型例として図3及び図4に示すW21(t)のように、パルス幅Hw、周期T0でパルス変調された正弦波である。
また、前記第1の電力増幅器16及び第2の電力増幅器22には、それぞれ出力値(進行波)のモニター及び下流側から反射して戻ってくる反射波のモニターが付属している。また、該該反射波による該第1及び第2の電力増幅器16、22本体の電気回路を防護するためのアイソレータが付属されている。
ここで、第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力をそれぞれ電力増幅器16、22等を用いて、第1及び第2の給電点21、27に供給する電力供給系を第1の電力供給系と呼ぶ。
【0084】
また、図14において、同期信号伝送ケーブル100を介して伝送される第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15のパルス変調信号に同期したパルス変調が可能な第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力端子の一方の出力端子は、第3の電力増幅器29、第3のインピーダンス整合器30、第3の電流導入端子31、第3の真空同軸ケーブル32の端部の芯線33を介して第1の給電点21に接続される。
なお、給電点21に供給される電力は、典型例として図3及び図4に示すW12(t)のように、パルス幅Hw、周期T0で、かつ、前記W11(t)及びW21(t)のパルス変調のパルス立ち上がり時間より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がるパルス変調された正弦波である。
第2の位相可変2出力の発信器28の2つの出力端子の他方の出力端子は、第4の電力増幅器34、第4のインピーダンス整合器35、第3の電流導入端子31、第4の真空同軸ケーブル37の端部の芯線38を介して第2の給電点27に接続される。
なお、給電点27に供給される電力は、典型例として図3及び図4に示すW22(t)のように、パルス幅Hw、周期T0で、かつ、前記W11(t)及びW21(t)のパルス変調のパルス立ち上がり時間より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がるパルス変調された正弦波である。
前記第3の電力増幅器29及び第4の電力増幅器34には、それぞれ出力値(進行波)のモニター及び下流側から反射して戻ってくる反射波のモニターが付属している。また、該反射波による該第1及び第2の電力増幅器29、34本体の電気回路を防護するためのアイソレータが付属されている。
ここで、第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力をそれぞれ電力増幅器29、34等を用いて、第1及び第2の給電点21、27に供給する電力供給系を第2の電力供給系と呼ぶ。
【0085】
次に、上記構成のプラズマ表面処理装置を用いて、a−Si太陽電池用アモルファスSi膜を製造する方法を説明する。なお、本発明の実施あるいは応用では、手順として、第1及び第2の予備製膜工程と本製膜工程が必要である。第1の予備製膜工程は、前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差の設定値を把握するために、第2の予備製膜工程は、前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の設定値を把握するために、本製膜工程は目的とするアモルファスSiの製造のために実施される。
【0086】
先ず、第1の予備製膜工程であるが、図12において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
そして、前記第1の電力供給系を用いて、一対の電極2、4に高周波電力を、例えば周波数70MHzの電力を、例えば合計で400Wを供給する。
即ち、該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差を、例えば零に、パルス変調をパルス幅Hw=400μ秒及びパルス周期T0=1m秒に設定し、第1の電力増幅器16の出力を200Wに設定して、その出力を第1のインピーダンス整合器17、第1の電流導入端子18及び真空用同軸ケーブル19を介して、第1の給電点21と第2の電極4間に供給するとともに、第2の電力増幅器22の出力を200Wに設定して、その出力を第2のインピーダンス整合器23、第2の電流導入端子24、真空用同軸ケーブル25を介して、第2の給電点27と第2の電極4間に供給する。
その結果、前記SiH4ガスのプラズマが生成され、基板11に例えばアモルファスSiが堆積する。
【0087】
前記の要領で、製膜時間を例えば10〜20分間にして、前記基板11にアモルファスSi膜を形成させる。製膜後、真空容器1から前記基板11を取り出して、該アモルファスSi膜の膜厚み分布を評価する。基板11に堆積された例えばアモルファスSiの膜厚分布は、前述のVHFプラズマ固有の現象である定在波の発生により、正弦的な分布となる。このような、製膜試験を第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差をパラメータに繰り返し実施する。そして、第1の電極2の長さ方向において、基板11の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差の関係をデータとして把握する。例えば、基板11の中央点から第1の給電点21の方向へ波長λの八分の一、即ちλ/8だけ離れた位置に設定するための位相差は、例えばΔθ1であるいうことが把握される。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5〜0.9程度である。
【0088】
次に、第2の予備試験であるが、図12において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
そして、前記第2のパルス変調方式電力供給系を用いて、一対の電極2、4に高周波電力を、例えば周波数70MHzの電力を、例えば合計で400Wを供給する。
即ち、該第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差を、例えば零に、パルス変調をパルス幅Hw=400μ秒及びパルス周期T0=1m秒に設定し、第3の電力増幅器29の出力を200Wに設定して、その出力を第3のインピーダンス整合器30、第3の電流導入端子31及び真空用同軸ケーブル32を介して、第1の給電点21と第2の電極4間に供給するとともに、第4の電力増幅器34の出力を200Wに設定して、その出力を第4のインピーダンス整合器35、第4の電流導入端子36、真空用同軸ケーブル37を介して、第2の給電点27と第2の電極4間に供給する。
その結果、前記SiH4ガスのプラズマが生成され、基板11に例えばアモルファスSiが堆積する。
【0089】
前記の要領で、製膜時間を例えば10〜20分間にして、前記基板11にアモルファスSi膜を形成させる。製膜後、真空容器1から前記基板11を取り出して、該アモルファスSi膜の膜厚み分布を評価する。基板11に堆積された例えばアモルファスSiの膜厚分布は、前述のVHFプラズマ固有の現象である定在波の発生により、正弦的な分布となる。このような、製膜試験を第2の位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差をパラメータに繰り返し実施する。そして、第1の電極の長さ方向において、基板11の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第2の位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の関係をデータとして把握する。例えば、基板11の中央点から第2の給電点27の方向へ波長λの八分の一、即ちλ/8だけ離れた位置に設定するための位相差は、例えばΔθ2であるいうことが把握される。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5〜0.9程度である。
【0090】
さて、前記第1および第2の予備製膜工程の結果を受けて、本製膜工程に入る。先ず、図14において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
次に、前記第1の電力供給系の構成部材の第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力、例えば周波数70MHzの正弦波の位相差を前記第1の予備試験データで把握したΔθ1に設定し、そのパルス変調を図3及び図4に示すW11(t)及びW21(t)におけるパルス幅Hw及び周期T0を例えばHw=400μ秒及びT0=1m秒に設定し、第1及び第2の給電点21、27に、それぞれ例えば電力200Wを供給するともとに、前記第2の電力供給系の構成部材の第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力、例えば周波数70MHzの正弦波の位相差を第2の予備試験データで把握したΔθ2に設定し、そのパルス変調を図3及び図4に示すW12(t)及びW22(t)におけるパルス幅Hw及び周期T0を例えばHw=400μ秒及びT0=1m秒で、かつ、前記W11(t)及びW21(t)のパルス変調のパルス立ち上がり時間より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がるように設定し、第1及び第2の給電点21、27に、それぞれ例えば電力200Wを供給する。
即ち、前記第1の給電点21に、電力200Wの電圧波W11(x、t)及び電力200Wの電圧波W12(x、t)が、前記第2の給電点27に電力200WのW21(x、t)及び電力200Wの22(x、t)が供給される。
ここで、第1の予備製膜工程及び第2の予備製膜工程でそれぞれ設定した第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15及び第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28のパルス幅Hwと周期T0の値を、例えば、Tw=400μ秒を1m秒などへ、T0=1m秒を5m秒などへ変更して、いくつかの製膜データを比較することができる。
【0091】
前記一対の電極2、4間に4つの電圧波が供給されると、前述のように、W11(x、t)とW21(x、t)は干渉して第1の定在波W1(x、t)を形成し、W12(x、t)とW22(x、t)は干渉して第2の定在波W2(x、t)を形成する。ただし、W11(x、t)は、W12(x、t)及びW22(x、t)とは時間的に分離されているので干渉しない。また、同様に、W21(x、t)は、W12(x、t)及びW22(x、t)と干渉しない。
したがって、上記パルス変調の周期T0より大幅に長い数秒以上の一般的な製膜時間で考えれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布は、第1の定在波W1(x、t)の強さの分布I1(x、t)と第2の定在波W2(x、t)の強さの分布I2(x、t)の重ね合わせた形となる。その様子を概念的に図8に示す。
ここで、基板の中央点をx軸の原点とし、該原点から第1の給電点21を向いた方向を正の方向とすると、第1の定在波W1(x、t)の強さの分布I1(x、t)は、
I1(x、t)=cos{2πx/2+2π(λ/8)/λ}
=cos{2πx/2+π/4}
第2の定在波W2(x、t)の強さの分布I2(x、t)は、
I2(x、t)=cos{2πx/2−2π(λ/8)/λ}
=cos{2πx/2−π/4}
一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、
I(x、t)
=cos{2πx/2+π/4}+cos{2πx/2−π/4}
=1
この結果は、該一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、x即ち電力の伝播方向の位置に依存しないで一定の値であり、均一であるということを示している。
【0092】
また、この結果は、発振周波数がVHF帯域に属する高周波電源の出力の電力を用いて生成されたプラズマを利用して真空容器に配置された基板の表面を処理する表面処理装置に用いられる高周波プラズマ発生装置において、前記基板の表面の法線方向と実質的に同じ方向の電界を有する電磁波の定在波の腹の位置が異なる第1の定在波と第2の定在波を発生させ、かつ、該第1及び第2の定在波を重畳させる手段を備えることにより、プラズマの一様化に不可欠な電極間の電力の強さの分布の制御が可能であるとの意味がある。
さらに、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.25倍、即ち0.25λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、電力の伝播方向の位置に依存しないで一定の値であり、均一であるということを示している。このことは、UHFプラズマの応用分野においての重要課題である大面積・均一のプラズマ処理化を実現可能な装置の提供ができるという意味で画期的発見であるということを意味している。
また、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.22〜0.28倍、即ち0.22〜0.28λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、±20%以下であることを示している。
また、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.238〜0.263倍、即ち0.238〜0.263λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、±10%以下であることを示している。
【0093】
上記工程において、SiH4ガスがプラズマ化されると、そのプラズマ中に存在するSiH3、SiH2、SiH等のラジカルが拡散現象により拡散し、基板11の表面に吸着されることによりa−Si膜が堆積するが、一対の電極2、4間の電力の分布が、上述の通り一様であるので、その堆積膜は一様になる。
このことは、波長λの二分の一を越えるサイズの基板を対象にした従来の
VHFプラズマ表面処理装置及び方法では不可能視されている一様な膜厚分布の形成が実現可能であるということを意味している。したがって、上記のことはVHFプラズマ応用分野においては画期的な発見であり、その実用価値は著しく大きい。
【0094】
本実施例では、電極間隔を5~40mm程度に設定することにより、ガラス基板サイズ:1200mmx200mmでのアモルファスSi膜は、製膜速度1〜3nm/s程度で、膜厚分布は±10%以内の製膜が可能である。
なお、微結晶Siあるいは薄膜多結晶Si等は、製膜条件の中のSiH4,H2の流量比、圧力および電力を適正化することで製膜できることは公知の技術であり、膜厚分布±10%以内の製膜が可能である。
【0095】
本実施例では、実施例2で用いられた平衡不平衡変換装置と平衡伝送路を使用していないが、該平衡不平衡変換装置と平衡伝送路を用いれば、上記プラズマの一様化は、より確実になることは当然である。
【0096】
(実施例5)
本発明に関する実施例5の高周波プラズマ発生装置と該高周波プラズマ発生装置により構成のプラズマ表面処理装置(プラズマCVD装置)およびプラズマ表面処理方法(プラズマCVD方法)について、図15及び図16を参照して説明する。
【0097】
先ず、装置の構成について説明する。ただし、前記実施例1ないし実施例4に示した部材と同じ部材は同符番を付して説明を省略する。図15は実施例5に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図、図16は図15図示のプラズマ表面処理装置の真空容器内部の断面図である。
【0098】
最初に、装置の概念を説明する。装置の構成は、全体的には実施例1での図1及び図2の場合と同じであるが、基板11が設置される場所が異なることが特徴である。即ち、図15及び図16に示すように、一対の電極2、4に複数の開口を設置することにより、その開口を介して該電極間で発生のプラズマ中のラデイカル種をその外部へ拡散させるのである。この構成の特徴は、基板11の設置場所が一対の電極2、4の間ではなく、電極間の外であることである。このことは、プラズマ生成時の製膜条件が基板の厚みと材質に影響されずに選べることが可能であるとの意味をもつ。特に、プラズマ生成時の圧力条件が、数100Pa〜数1000Pa(数Torr〜数10Torr)と高い場合でも、基板の影響を受けることなく、一対の電極24の間隔を、10〜15mmと狭く設定できることが可能である。これは、従来の構成では出来ない特徴である。
【0099】
図16において、符番109は基板支持材で、図示しない基板ヒータ3を内臓している。第1及び第2の電極2、4は、方形平板状の形状で直径3mm程度の孔が開口率55%程度で設置されている。その厚みは6mm程度、面積は1500mmx300mm程度である。給電点21は、該方形平板電極の一つの辺の中央に、給電点27は対向する辺の中央に設置される。電極2、4の間隔は5〜50mm程度で任意に設定可能である。基板11には、厚み4mm程度、面積:1400mmx200mmのガラス基板が用いられる。放電用のガスは放電ガス供給管8から、ガス混合箱6の整流孔7を介して供給される。
【0100】
次に、上記構成のプラズマ表面処理装置を用いて、a−Si太陽電池用アモルファスSi膜を製造する方法を説明する。なお、本発明の実施あるいは応用では、手順として、第1及び第2の予備製膜工程と本製膜工程が必要である。第1の予備製膜工程は、第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差の設定値を把握するために、第2の予備製膜工程は、前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の設定値を把握するために、本製膜工程は目的とするアモルファスSiの製造のために実施される。
【0101】
先ず、第1の第1の予備製膜工程であるが、図15及び図16において、予め、基板11を基板支持材109の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
次に、前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15、第1の電力増幅器16、第1のインピーダンス整合器17、第1の電流導入端子18、第1の真空用同軸ケーブル19の芯線20、第2の電力増幅器22、第2のインピーダンス整合器23、第2の電流導入端子24、第2の真空用同軸ケーブル25の芯線26から成る第1の電力供給系を用いて、一対の電極2、4に高周波電力を、例えば周波数60MHzの電力例えば合計で400Wを供給する。
即ち、該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差を、例えば零に、パルス変調のパルス幅Hw=400μ秒、パルス周期T0=1m秒に設定し、第1の電力増幅器16の出力を200Wに設定して、その出力を第1のインピーダンス整合器17、第1の電流導入端子18、第1の真空用同軸ケーブル19の芯線20を介して、第1の給電点21に供給するとともに、第2の電力増幅器22の出力を200Wに設定して、その出力を第2のインピーダンス整合器23、第2の電流導入端子24、第2の真空用同軸ケーブル25の芯線26を介して、第2の給電点27に供給する。
この場合、前記第1のインピーダンス整合器17及び第2のインピーダンス整合器23を調整することにより、それぞれのインピーダンス整合器17、23の上流側に上記供給電力の反射波が戻らないようにできる。
ここで、該第1及び第2の給電点21、27に給電される電力の典型例を、図3及び図4に、それぞれW11(t)、W21(t)として示している。該W11(t)及びW21(t)は、それぞれ、パルス幅Hw=400μ秒、周期T0=1m秒でパルス変調された超高周波数、例えば60MHzの正弦波である。該パルス幅Tw及び周期T0は、該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15に付属の調整器により任意の値、例えばTw=400μ秒及び周期T0=1m秒に設定される。
その結果、前記SiH4ガスのプラズマが生成され、基板11に例えばアモルファスSiが堆積する。
【0102】
前記要領で、製膜時間を例えば10〜20分間にして、前記基板11にアモルファスSi膜を形成させる。製膜後、真空容器1から前記基板11を取り出して、該アモルファスSi膜の膜厚み分布を評価する。基板11に堆積された例えばアモルファスSiの膜厚分布は、前述のVHFプラズマ固有の現象である定在波の発生により、正弦的な分布となる。このような、製膜試験を第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差をパラメータに繰り返し実施する。そして、第1の電極の長さ方向において、基板11の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差の関係をデータとして把握する。例えば、基板11の中央点から第1の給電点21の方向へ波長λの八分の一、即ちλ/8だけ離れた位置に設定するための位相差は、例えばΔθ1であるということが把握される。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5〜0.9程度である。
【0103】
次に、第2の予備製膜工程であるが、図15及び図16において、予め、基板11を基板支持材109の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
そして、前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28、第3の電力増幅器29、第3のインピーダンス整合器30、第3の電流導入端子31、第3の真空用同軸ケーブル32の芯線33、第4の電力増幅器34、第4のインピーダンス整合器35、第4の電流導入端子36、第4の真空用同軸ケーブル37の芯線38から成る第2の電力供給系を用いて、一対の電極2、4に高周波電力を、例えば周波数60MHzの電力例えば合計で400Wを供給する。
即ち、該第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差を、例えば零に、パルス変調のパルス幅=400μ秒、パルス周期=1m秒に設定し、第3の電力増幅器29の出力を200Wに設定して、その出力を第3のインピーダンス整合器30、第3の電流導入端子31、第3の真空用同軸ケーブル32の芯線33を介して、第1の給電点に供給するとともに、第4の電力増幅器34の出力を200Wに設定して、その出力を第4のインピーダンス整合器35、第4の電流導入端子36、第4の真空用同軸ケーブル37の芯線38を介して、第2の給電点に供給する。
その結果、前記SiH4ガスのプラズマが生成され、基板11に例えばアモルファスSiが堆積する。
【0104】
前記要領で、製膜時間を例えば10〜20分間にして、前記基板11にアモルファスSi膜を形成させる。製膜後、真空容器1から前記基板11を取り出して、該アモルファスSi膜の膜厚み分布を評価する。該基板11に堆積された例えばアモルファスSiの膜厚分布には、前述のVHFプラズマ固有の現象である定在波の発生により、正弦的な分布となる。このような、製膜試験を第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差をパラメータに繰り返し実施する。そして、第1の電極の長さ方向において、基板の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の関係をデータとして把握する。
この場合も、前記第1の予備製膜工程と同様に、第2の電力供給系を用いた場合において、基板の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の関係を示すデータにより、膜厚分布の最大厚みの位置を例えば、基板の中央点から第2の給電点27の方向へ波長λの八分の一、即ちλ/8だけ離れた位置に設定するための位相差は例えばΔθ2であるということが把握される。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5〜0.9程度である。
【0105】
さて、前記第1および第2の予備製膜工程の結果を受けて、本製膜工程に入る。先ず、図15及び図6において、予め、基板11を基板支持材109の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
次に、前記第1の電力供給系の構成部材の第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力、例えば周波数60MHzの正弦波の位相差を第1の予備製膜工程のデータとして把握したΔθ1に設定し、そのパルス変調を図3及び図4に示すW11(t)及びW21(t)におけるパルス幅Hw及び周期T0を例えばHw=400μ秒及びT0=1m秒に設定し、第1及び第2の給電点21、27に、それぞれ例えば電力200Wを供給するともとに、前記第2の電力供給系の構成部材の第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差を第2の予備製膜工程のデータとして把握したΔθ2に設定し、そのパルス変調を図3及び図4に示すW12(t)及びW22(t)におけるパルス幅Hw及び周期T0を例えばHw=400μ秒及びT0=1m秒で、かつ、前記W11(t)及びW21(t)のパルス変調のパルス立ち上がり時間より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がるように設定し、第1及び第2の給電点21、27に、それぞれ例えば電力200Wを供給する。
即ち、前記第1及び第2の給電点21及び27に、それぞれ、電力200Wの電圧波W11(x、t)と電力200Wの電圧波W12(x、t)及び電力200WのW21(x、t)と電力200WのW22(x、t)が供給される。
ここで、第1の予備製膜工程及び第2の予備製膜工程でそれぞれ設定した第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15及び第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28のパルス幅Hwと周期T0の値を、例えば、Tw=400μ秒を1m秒などへ、T0=1m秒を5m秒などへ変更して、いくつかの製膜データを比較することができる。
【0106】
一対の電極2、4間に4つの電圧波が供給されると、前述のように、W11(x、t)とW21(x、t)は干渉して第1の定在波W1(x、t)を形成し、W12(x、t)とW22(x、t)は干渉して第2の定在波W2(x、t)を形成する。ただし、W11(x、t)は、W12(x、t)及びW22(x、t)とは、時間的に分離されているので干渉しない。また、同様に、W21(x、t)は、W12(x、t)及びW22(x、t)と干渉しない。
したがって、上記パルス変調の周期T0より大幅に長い数秒以上の一般的な製膜時間で考えれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布は、第1の定在波W1(x、t)の強さの分布I1(x、t)と第2の定在波W2(x、t)の強さの分布I2(x、t)の重ね合わせた形となる。その様子を概念的に図8に示す。
ここで、基板の中央点をx軸の原点とし、該原点から第1の給電点21を向いた方向を正の方向とすると、第1の定在波W1(x、t)の強さの分布I1(x、t)は、
I1(x、t)∝cos{2πx/2+2π(λ/8)/λ}
=cos{2πx/2+π/4}
第2の定在波W2(x、t)の強さの分布I2(x、t)は、
I2(x、t)∝cos{2πx/2−2π(λ/8)/λ}
=cos{2πx/2−π/4}
一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、
I(x、t)
=cos{2πx/2+π/4}+cos{2πx/2−π/4}
=1
この結果は、該一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、x即ち電力の伝播方向の位置に依存しないで一定の値であり、均一であるということを示している。
【0107】
この結果は、発振周波数がVHF帯域に属する高周波電源の出力の電力を用いて生成されたプラズマを利用して真空容器に配置された基板の表面を処理する表面処理装置に用いられる高周波プラズマ発生装置において、前記基板の表面の法線方向と実質的に同じ方向の電界を有する電磁波の定在波の腹の位置が異なる第1の定在波と第2の定在波を発生させ、かつ、該第1及び第2の定在波を重畳させる手段を備えることにより、プラズマの一様化に不可欠な電極間の電力の強さの分布の制御が可能であるとの意味がある。
さらに、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.25倍、即ち0.25λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、電力の伝播方向の位置に依存しないで一定の値であり、均一であるということを示している。このことは、UHFプラズマの応用分野においての重要課題である大面積・均一のプラズマ処理化を実現可能な装置の提供ができるという意味で画期的発見であるということを意味している。
また、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.22〜0.28倍、即ち0.22〜0.28λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、±20%以下であることを示している。
また、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.238〜0.263倍、即ち0.238〜0.263λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、±10%以下であることを示している。
【0108】
上記工程において、SiH4ガスがプラズマ化されると、そのプラズマ中に存在するSiH3、SiH2、SiH等のラジカルが拡散現象により拡散し、基板11の表面に吸着されることによりa−Si膜が堆積するが、一対の電極2、4間の電力の分布が、上述の通り一様であるので、その堆積膜は一様になる。
このことは、波長λの二分の一を越えるサイズの基板を対象にした従来の
VHFプラズマ表面処理装置及び方法では不可能視されている一様な膜厚分布の形成が実現可能であるということを意味している。したがって、上記のことはVHFプラズマ及びUHFプラズマ応用分野においては画期的な発見であり、その実用価値は著しく大きい。
なお、微結晶Siあるいは薄膜多結晶Si等は、製膜条件の中のSiH4,H2の流量比、圧力および電力を適正化することで製膜できることは公知の技術である。
【0109】
本実施例では、第1の電極2の給電点が対向する辺の中央部に1点ずつであるので、基板サイズは上記1400mmx200mm程度に制約されるが、該電極の幅を増大し、該給電点の個数を増加することにより、基板サイズの幅は拡大可能であることは当然のことである。ただし、この場合、隣り合う給電点の間隔は100mm〜300mm程度が好ましい。
【0110】
また、a−Si太陽電池、薄膜トランジスタおよび感光ドラム等の製造では、膜厚分布として±10%以内であれば性能上問題はない。上記実施例によれば、60MHzの電源周波数を用いても、従来の装置および方法に比べ著しく良好な、例えば±10%以内の膜厚分布を得ることが可能である。このことは、a−Si太陽電池、薄膜トランジスタおよび感光ドラム等の製造分野での生産性向上および低コスト化に係わる工業的価値が著しく大きいことを意味している。
【0111】
(実施例6)
本発明に関する実施例6の高周波プラズマ発生装置と該高周波プラズマ発生装置により構成のプラズマ表面処理装置(プラズマCVD装置)およびプラズマ表面処理方法(プラズマCVD方法)について、図17及び図18を参照して説明する。
【0112】
先ず、装置の構成について説明する。ただし、実施例1ないし実施例5に示した部材と同じ部材は同符番を付して説明を省略する。図17は実施例6に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図、図18は図17図示のプラズマ表面処理装置の電力供給系配線図を示す説明図である。
【0113】
最初に、装置の概念を説明する。装置構成の特徴は、非接地の第1の電極に設置される第1及び第2の給電点が矩形平板型接地電極である第2の電極4の4辺の中の1辺の近傍に配置されることである。また、第1の電極の形状が1本の棒状導体を前記第1の電極に平行な面内に含まれるように折り返して形成されるU字型の形状を有していることである。そして、好ましくはU字状の棒の全長は使用電力の波長λの二分の一、即ちλ/2の整数倍であるようにした構成を有することである。また、該U字型電極の曲がり部分はアルミナ等の誘電体で被覆されていることである。
【0114】
具体的には、第1の電極2は、直径5〜20mm程度のSUS棒材で構成されるU字型電極を用いる。該U字の直線部の長さは1400mm程度、該直線状棒体の間隔は10〜40mm程度である。U字型電極と第2の平板電極の間隔は5〜50mm程度で任意に設定可能である。基板11には、厚み4mm程度のガラス基板面積1200mmx200mm程度のガラス基板が用いられる。
【0115】
次に装置の構成を説明する。図17及び図18において、第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力端子の一方の出力端子は、第1の電力増幅器16、第1のインピーダンス整合器17、第1の電流導入端子18及び第1の真空同軸ケーブル19の端部の芯線20を介して、第1の給電点21に接続される。該第1の真空同軸ケーブル19の端部の外部導体は第2の電極4に接続される。
第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力端子の他方の出力端子は、第2の電力増幅器22、第2のインピーダンス整合器23、第2の電流導入端子24及び第2の真空同軸ケーブル25の端部の芯線26を介して、第2の給電点27に接続される。該第2の真空同軸ケーブル19の端部の外部導体は第2の電極4に接続される。
なお、前記第1の電力増幅器16及び第2の電力増幅器22には、それぞれ出力値(進行波)のモニター及び下流側から反射して戻ってくる反射波のモニターが付属している。また、該該反射波による該第1及び第2の電力増幅器16、22本体の電気回路を防護するためのアイソレータが付属されている。
ここで、第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力をそれぞれ電力増幅器16、22等により、それぞれ第1及び第2の給電点21、27に供給する電力供給系を第1の電力供給系と呼ぶ。
【0116】
図17及び図18において、第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28は、同期信号ケーブル100を介して伝送される第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15のパルス変調波形の同期信号を用いて、該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の出力のパルス変調波形に同期したパルス変調の電力を出力する。
第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力端子の一方の出力端子は、第3の電力増幅器29、第3のインピーダンス整合器30、第3の電流導入端子31及び第3の真空同軸ケーブル32の端部の芯線33を介して、第1の給電点21に接続される。該第3の真空同軸ケーブル32の端部の外部導体は第2の電極4に接続される。
第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力端子の他方の出力端子は、第4の電力増幅器34、第4のインピーダンス整合器35、第4の電流導入端子36及び第4の真空同軸ケーブル37の端部の芯線38を介して、第2の給電点27に接続される。該第2の真空同軸ケーブル19の端部の外部導体は第2の電極4に接続される。
前記第3の電力増幅器29及び第4の電力増幅器34には、それぞれ出力値(進行波)のモニター及び下流側から反射して戻ってくる反射波のモニターが付属している。また、該該反射波による該第1及び第2の電力増幅器29、34本体の電気回路を防護するためのアイソレータが付属されている。
ここで、第2の位相可変2出力の発信器28の2つの出力をそれぞれ電力増幅器29、34等により、それぞれ第1及び第2の給電点21、27に供給する電力供給系を第2の電力供給系と呼ぶ。
【0117】
次に、上記構成のプラズマ表面処理装置を用いて、a−Si太陽電池用アモルファスSi膜を製造する方法を説明する。なお、本発明の実施あるいは応用では、手順として、第1及び第2の予備製膜工程と本製膜工程が必要である。第1の予備製膜工程は、前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差の設定値を把握するために、第2の予備製膜工程は、前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の設定値を把握するために、本製膜工程は目的とするアモルファスSiの製造のために実施される。
【0118】
先ず、第1の予備製膜工程であるが、図17及び図18において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
そして、前記第1の電力供給系を用いて、一対の電極2、4に高周波電力を、例えばパルス変調された周波数70MHzの電力を、例えば合計で400Wを供給する。
即ち、該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差を、例えば零に、パルス変調のパルス幅Hw=400μ秒、パルス周期T0=1m秒に設定し、第1の電力増幅器16の出力を例えば200Wに設定して、その出力を第1のインピーダンス整合器17、第1の電流導入端子18及び真空用同軸ケーブル19を介して、第1の給電点21と第2の電極4間に供給するとともに、第2の電力増幅器22の出力を例えば200Wに設定して、その出力を第2のインピーダンス整合器23、第2の電流導入端子24、真空用同軸ケーブル25を介して、第2の給電点27と第2の電極4間に供給する。
この場合、給電点21及び27から供給され電力波は、その伝播路である第1の電極の形状が中間点で折れ曲がっているので、若干影響を受けて減衰はするが、該折れ曲り部分に被覆されている誘電体膜92により、その領域での電力損失が抑制される。その結果、その伝播路にて電力波W11(x、t)及びW21(x、t)、による前述の定在波が発生する。
その結果、前記SiH4ガスのプラズマが生成され、基板11に例えば正弦的分布を持つアモルファスSiが堆積する。
【0119】
前記の要領で、製膜時間を例えば10〜20分間にして、前記基板11にアモルファスSi膜を形成させる。製膜後、真空容器1から前記基板11を取り出して、該アモルファスSi膜の膜厚み分布を評価する。基板11に堆積された例えばアモルファスSiの膜厚分布は、前述のVHFプラズマ固有の現象である定在波の発生により、正弦的な分布となる。このような、製膜試験を第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差をパラメータに繰り返し実施する。そして、該U字型電極2の棒のU字に沿った線分上において、該U字型電極2の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差の関係をデータとして把握する。例えば、該U字型電極2の中央点から第1の給電点21の方向へ波長λの八分の一、即ちλ/8だけ離れた位置に設定するための位相差は、例えばΔθ1であるいうことが把握される。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5〜0.9程度である。
【0120】
次に、第2の予備試験であるが、図17及び図18において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
そして、前記第2の電力供給系を用いて、一対の電極2、4に高周波電力を、例えばパルス変調された周波数70MHzの電力を、例えば合計で400Wを供給する。
即ち、該第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差を、例えば零に、パルス変調のパルス幅Hw=400μ秒、パルス周期T0=1m秒に設定し、第1の電力増幅器16の出力を200Wに設定して、第3の電力増幅器29の出力を200Wに設定して、その出力を第3のインピーダンス整合器30、第3の電流導入端子31及び真空用同軸ケーブル32を介して、第1の給電点21と第2の電極4間に供給するとともに、第4の電力増幅器34の出力を200Wに設定して、その出力を第4のインピーダンス整合器35、第4の電流導入端子36、真空用同軸ケーブル37を介して、第2の給電点27と第2の電極4間に供給する。
この場合、給電点21及び27から供給され電力波は、その伝播路である第1の電極の形状が中間点で折れ曲がっているので、若干影響を受けて減衰はするが、該折れ曲り部分に被覆されている誘電体膜92により、その領域での電力損失が抑制される。その結果、その伝播路にて電力波W12(x、t)及びW22(x、t)による前述の定在波が発生する。
その結果、前記SiH4ガスのプラズマが生成され、基板11に例えば正弦的分布を持つアモルファスSiが堆積する。
【0121】
前記の要領で、製膜時間を例えば10〜20分間にして、前記基板11にアモルファスSi膜を形成させる。製膜後、真空容器1から前記基板11を取り出して、該アモルファスSi膜の膜厚み分布を評価する。基板11に堆積された例えばアモルファスSiの膜厚分布は、前述のように、VHFプラズマ固有の現象である定在波の発生により、正弦的な分布となる。このような、製膜試験を第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差をパラメータに繰り返し実施する。そして、該U字型電極2の棒のU字に沿った線分上において、該U字型電極2の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の関係をデータとして把握する。例えば、該U字型電極2の中央点から第2の給電点27の方向へ波長λの八分の一、即ちλ/8だけ離れた位置に設定するための位相差は、例えばΔθ2であるいうことが把握される。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5〜0.9程度である。
【0122】
さて、前記第1および第2の予備製膜工程の結果を受けて、本製膜工程に入る。先ず、図17及び図18において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
次に、前記第1の電力供給系の構成部材の第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力、例えば周波数70MHzの正弦波の位相差を第1の予備試験データで把握したΔθ1に設定し、そのパルス変調を図3及び図4に示すW11(t)及びW21(t)におけるパルス幅Hw及び周期T0を例えばHw=400μ秒及びT0=1m秒に設定し、第1及び第2の給電点21、27に、それぞれ例えば電力200Wを供給するともとに、前記第2の電力供給系の構成部材の第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力、例えば周波数70MHzの正弦波の位相差を第2の予備製膜工程のデータとして把握したΔθ2に設定し、そのパルス変調を図3及び図4に示すW12(t)及びW22(t)におけるパルス幅Hw及び周期T0を例えばHw=400μ秒及びT0=1m秒で、かつ、前記W11(t)及びW21(t)のパルス変調のパルス立ち上がり時間より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がるように設定し、第1及び第2の給電点21、27に、それぞれ例えば電力200Wを供給する。
即ち、前記第1の給電点21に、電力200Wの電圧波W11(x、t)及び電力200Wの電圧波W12(x、t)が、前記第2の給電点27に電力200WのW21(x、t)及び電力200Wの電圧波W22(x、t)が供給される。
ここで、第1の予備製膜工程及び第2の予備製膜工程でそれぞれ設定した第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15及び第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28のパルス幅Hwと周期T0の値を、例えば、Hw=400μ秒を1m秒などへ、T0=1m秒を5m秒などへ変更して、いくつかの製膜データを比較することができる。
【0123】
前記一対の電極2、4間に4つの電圧波が供給されると、前述のように、W11(x、t)とW21(x、t)は干渉して第1の定在波W1(x、t)を形成し、W12(x、t)とW22(x、t)は干渉して第2の定在波W2(x、t)を形成する。ただし、W11(x、t)は、W12(x、t)及びW22(x、t)とは時間的に分離されているので干渉しない。また、同様に、W21(x、t)は、W12(x、t)及びW22(x、t)と干渉しない。
したがって、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布は、第1の定在波W1(x、t)の強さの分布I1(x、t)と第2の定在波W2(x、t)の強さの分布I2(x、t)の重ね合わせた形となる。その様子を概念的に図8に示す。
ここで、該U字型電極2の中央点をx軸の原点とし、該原点からU字に沿った線分上において、第1の給電点21を向いた方向を正の方向とすると、第1の定在波W1(x、t)の強さの分布I1(x、t)は、
I1(x、t)=cos{2πx/2+2π(λ/8)/λ}
=cos{2πx/2+π/4}
第1の定在波W2(x、t)の強さの分布I2(x、t)は、
I2(x、t)=cos{2πx/2−2π(λ/8)/λ}
=cos{2πx/2−π/4}
一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、
I(x、t)
=cos{2πx/2+π/4}+cos{2πx/2−π/4}
=1
この結果は、該一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、x即ち電力の伝播方向の位置に依存しないで一定の値であり、均一であるということを示している。
【0124】
また、この結果は、発振周波数がVHF帯域に属する高周波電源の出力の電力を用いて生成されたプラズマを利用して真空容器に配置された基板の表面を処理する表面処理装置に用いられる高周波プラズマ発生装置において、前記基板の表面の法線方向と実質的に同じ方向の電界を有する電磁波の定在波の腹の位置が異なる第1の定在波と第2の定在波を発生させ、かつ、該第1及び第2の定在波を重畳させる手段を備えることにより、プラズマの一様化に不可欠な電極間の電力の強さの分布の制御が可能であるとの意味がある。
さらに、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.25倍、即ち0.25λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、電力の伝播方向の位置に依存しないで一定の値であり、均一であるということを示している。このことは、VHFプラズマの応用分野においての重要課題である大面積・均一のプラズマ処理化を実現可能な装置の提供ができるという意味で画期的発見であるということを意味している。
また、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.22〜0.28倍、即ち0.22〜0.28λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、±20%以下であることを示している。
また、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.238〜0.263倍、即ち0.238〜0.263λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、±10%以下であることを示している。
【0125】
上記工程において、SiH4ガスがプラズマ化されると、そのプラズマ中に存在するSiH3、SiH2、SiH等のラジカルが拡散現象により拡散し、基板11の表面に吸着されることによりa−Si膜が堆積するが、一対の電極2、4間の電力の強さの分布が上述の通り、時間平均的に一様であるので、その堆積膜は一様になる。このことはVHFプラズマの応用分野においては画期的な発見であり、実用価値は著しく大きい。
即ち、インライン型やマルチチャンバー形やロール・ツー・ロール型のプラズマ表面処理装置の高生産性化のためのプラズマ発生装置の改善において求められている矩形型の第1の電極の一つの辺の近傍のみからVHF電力を供給する手段
に関する一つの新規手段として実現が可能である。このことは、該プラズマ表面処理装置本体の断面を、その基板搬送方向に直交する断面で見た場合、その断面が例えば矩形状の断面であれば、該矩形断面の4辺の中の1辺のみを用いたVHFプラズマ生成用の新規給電手段が実現可能である。
本実施例では、第1及び第2の電極の間隔を5~40mm程度に設定することにより、ガラス基板の面積:1200mmx200mm程度でのアモルファスSi膜は、製膜速度1〜3nm/s程度で、膜厚分布は±10%以内の製膜が可能である。
また、本実施例では、U字型の第1の電極2が1個であるので、基板サイズの幅は200mm程度に制約されるが、該第1の電極の個数を増加すれば基板サイズの幅は拡大可能であることは当然なことである。
なお、微結晶Siあるいは薄膜多結晶Si等は、製膜条件の中のSiH4,H2の流量比、圧力および電力を適正化することで製膜できることは公知の技術であり、膜厚分布±10%以内の製膜が可能である。
【0126】
本実施例では、実施例2で用いられた平衡不平衡変換装置と平衡伝送路を使用していないが、該平衡不平衡変換装置と平衡伝送路を用いれば、上記プラズマの一様化は、より確実になることは当然である。
【0127】
(実施例7)
本発明に関する実施例7の高周波プラズマ発生装置と該高周波プラズマ発生装置により構成のプラズマ表面処理装置(プラズマCVD装置)およびプラズマ表面処理方法(プラズマCVD方法)について、図19を参照して説明する。図19は実施例7に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図である。
【0128】
本装置の特徴は、図19に示すように、実施例6で説明したU字型第1電極を複数個、例えば2個を第2の電極に平行な面内に含まれるように設置し、該複数のU字型第1電極のそれぞれの端部に第1及び第2の給電点を配置させて、かつ、それぞれの該U字型第1電極の第1及び第2の給電点に、前記第1及び第2の電力供給系の出力を供給するような構成を有することである。
第19図図示の構成については、実施例1ないし実施例6に示した部材と同じ部材は同符番を付しているので、説明は省略する。
なお、U字型電極2は直径5〜20mm程度のSUS棒材で構成し、第2の電極との間隔は、5〜50mm程度で任意に設定可能である。
【0129】
(実施例8)
本発明に関する実施例8の高周波プラズマ発生装置と該高周波プラズマ発生装置により構成のプラズマ表面処理装置(プラズマCVD装置)およびプラズマ表面処理方法(プラズマCVD方法)について、図20を参照して説明する。図20は実施例8に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図である。
【0130】
本装置の特徴は、非接地の第1の電極に配置される第1及び第2の給電点21、27が、第2の電極4である矩形平板型接地電極の4辺の中の1辺の近傍に配置されていること及び第1の電極の形状が1本の棒状導体を前記第1の電極に平行な面内に含まれるように折り返して形成されるW字型の形状を有し、かつ、好ましくは、W字の全長は使用電力の波長λの二分の一、即ちλ/2の整数倍であるようにした構成を有することである。また、該W字型電極の曲がり部分をアルミナ等の誘電体で被覆されていることが特徴である。
実施例8の装置は、図20に示すように、W字型第1電極のそれぞれの端部に、第1及び第2の給電点21、27を配置させ、該第1及び第2の給電点に前記第1及び第2の電力供給系の出力を供給するような構成を有している。
図20図示の構成については、前記実施例1ないし実施例7に示した部材と同じ部材で構成され、同符番を付しているので、説明を省略する。
なお、W字型電極2は、直径5〜20mm程度のSUS棒材で構成し、第2の平板電極との間隔は5〜50mmで任意に設定可能である。
【0131】
(実施例9)
本発明に関する実施例9の高周波プラズマ発生装置と該高周波プラズマ発生装置により構成のプラズマ表面処理装置(プラズマCVD装置)およびプラズマ表面処理方法(プラズマCVD方法)について、図21を参照して説明する。図21は実施例9に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図である。
【0132】
本実施例の装置は、円筒形の基板を対象にしたプラズマ表面処理装置に用いられる超高周波プラズマ発生用電極であり、その構成は、図21に示すように、実施例8で説明したW字型の第1電極を複数個、例えば2個を円筒形状を有する第2の電極を外套状に取り囲む円筒の面内に含まれるように設置し、該複数のW字型第1電極のそれぞれの端部に第1及び第2の給電点21、27を配置させて、かつ、それぞれの該W字型第1電極の第1及び第2の給電点21、27に、前記第1及び第2の電力供給系の出力を供給するような構成を有することである。そして、好ましくは、それぞれのW字型電極の全長は使用電力の波長λの二分の一、即ちλ/2の整数倍であるようにした構成を有することである。
図21図示の構成については、実施例1ないし実施例8に示した部材と同じ部材で構成され、同符番を付しているので、説明は省略する。
なお、W字型電極2は、直径5〜20mm程度のSUS棒材で構成し、第2の平板電極との間隔は5〜50mmで任意に設定可能である。
【0133】
(実施例10)
本発明に関する実施例10の高周波プラズマ発生装置と該高周波プラズマ発生装置により構成のプラズマ表面処理装置(プラズマCVD装置)およびプラズマ表面処理方法(プラズマCVD方法)について、図22を参照して説明する。
【0134】
先ず、装置の構成について説明する。ただし、前記実施例1ないし実施例9
に示した部材と同じ部材は同符番を付して説明を省略する。図22は実施例10に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図である。
【0135】
最初に、装置の概念を説明する。装置構成の特徴は、矩形平板の導電体をW字状のスリットで2分割し、その一方の導体を第1の電極とし、他方を第2の電極とし、かつ、該W字状スリットの端部に給電点を配置させるという構造を有することである。
なお、該スリットの形状はW字状以外の、例えばU字状及びジグザグ状にしても良い。また、該導電体の形状は矩形平板のみならず、例えば基板の形状が円筒形の場合にはそれに対応して円筒形にすることができる。
【0136】
次に装置の構成を説明する。図22において、符番91はスリットである。ここでは、W字状のスリットを用いている。該スリットの幅は、2mm〜50mm程度、ここでは後述の圧力条件:0.5Torr(66.5Pa)を考慮して、例えば8mmにする。
符番2は第1の電極で、符番4は第2の電極である。該第1及び第2の電極のサイズは、例えば一対の外寸法で、1400mmx200mm程度である。符番21は第1の給電点、符番27は第2の給電点で、それぞれ、対向した形でW字状スリット91の端部に配置される。符番90は放電ガス通過孔で、該第1及び第2の電極に設置される。その孔の直径は1〜5mm程度で、開口率は50%程度以上が好ましい。
図22において、第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力端子の一方の出力端子は、第1の電力増幅器16、第1のインピーダンス整合器17、第1の電流導入端子18及び第1の真空同軸ケーブル19の端部の芯線20を介して、第1の給電点21に接続される。該第1の真空同軸ケーブル19の端部の外部導体は第2の電極4に接続される。
第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力端子の他方の出力端子は、第2の電力増幅器22、第2のインピーダンス整合器23、第2の電流導入端子24及び第2の真空同軸ケーブル25の端部の芯線26を介して、第2の給電点27に接続される。該第2の真空同軸ケーブル19の端部の外部導体は第2の電極4に接続される。
なお、前記第1の電力増幅器16及び第2の電力増幅器22には、それぞれ出力値(進行波)のモニター及び下流側から反射して戻ってくる反射波のモニターが付属している。また、該該反射波による該第1及び第2の電力増幅器16、22本体の電気回路を防護するためのアイソレータが付属されている。
ここで、第1の位相可変2出力の発信器15の2つの出力をそれぞれ電力増幅器16、22等により、それぞれ第1及び第2の給電点21、27に供給する電力供給系を第1の電力供給系と呼ぶ。
【0137】
図22において、第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力端子の一方の出力端子は、第3の電力増幅器29、第3のインピーダンス整合器30、第3の電流導入端子31及び第3の真空同軸ケーブル32の端部の芯線33を介して、第1の給電点21に接続される。該第3の真空同軸ケーブル32の端部の外部導体は第2の電極4に接続される。
第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力端子の他方の出力端子は、第4の電力増幅器34、第4のインピーダンス整合器35、第4の電流導入端子36及び第4の真空同軸ケーブル37の端部の芯線38を介して、第2の給電点27に接続される。該第2の真空同軸ケーブル19の端部の外部導体は第2の電極4に接続される。
なお、前記第3の電力増幅器29及び第4の電力増幅器34には、それぞれ出力値(進行波)のモニター及び下流側から反射して戻ってくる反射波のモニターが付属している。また、該該反射波による該第1及び第2の電力増幅器29、34本体の電気回路を防護するためのアイソレータが付属されている。
ここで、第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力をそれぞれ電力増幅器29、34等により、それぞれ第1及び第2の給電点21、27に供給する電力供給系を第2の電力供給系と呼ぶ。
【0138】
次に、上記構成のプラズマ表面処理装置を用いて、a−Si太陽電池用アモルファスSi膜を製造する方法を説明する。なお、本発明の実施あるいは応用では、手順として、第1及び第2の予備製膜工程と本製膜工程が必要である。第1の予備製膜工程は、前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差の設定値を把握するために、第2の予備製膜工程は、前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の設定値を把握するために、本製膜工程は目的とするアモルファスSiの製造のために実施される。
【0139】
先ず、第1の予備製膜工程であるが、図22において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
そして、前記第1の電力供給系を用いて、一対の電極2、4に超高周波電力を、例えば周波数70MHzの電力を、例えば合計で400Wを供給する。
即ち、該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力、例えばパルス変調された周波数70MHzの正弦波の位相差を、例えば零に設定し、第1の電力増幅器16の出力を例えば200Wに設定して、その出力を第1のインピーダンス整合器17、第1の電流導入端子18及び真空用同軸ケーブル19を介して、第1の給電点21と第2の電極4間に供給するとともに、第2の電力増幅器22の出力を例えば200Wに設定して、その出力を第2のインピーダンス整合器23、第2の電流導入端子24、真空用同軸ケーブル25を介して、第2の給電点27と第2の電極4間に供給する。
ここで、該第1及び第2の給電点21、27に給電される電力の典型例を、図3及び図4に、W11(t)、W21(t)として示している。該W11(t)及びW21(t)は、それぞれ、パルス幅Hw、周期T0でパルス変調された超高周波数、例えば70MHzの正弦波である。該パルス幅Hw及び周期T0は、該第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15に付属の調整器により任意の値、例えばHw=400μ秒及び周期T0=1m秒に設定される。
この場合、給電点21及び27から供給され電力波は、その伝播路であるW字状スリットが途中で折れ曲がっているので、若干影響を受けて減衰はするが、該折れ曲り部分に被覆されている誘電体92により、その領域での電力損失が抑制される。その結果、その伝播路にて電力波W11(x、t)及びW21(x、t)、による前述の定在波が発生する。
その結果、前記SiH4ガスのプラズマが生成され、基板11に正弦的分布を持つアモルファスSiが堆積する。
【0140】
前記の要領で、製膜時間を例えば10〜20分間にして、前記基板11にアモルファスSi膜を形成させる。製膜後、真空容器1から前記基板11を取り出して、該アモルファスSi膜の膜厚み分布を評価する。基板11に堆積された例えばアモルファスSiの膜厚分布は、前述のVHFプラズマ固有の現象である定在波の発生により、正弦的な分布となる。このような、製膜試験を第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差をパラメータに繰り返し実施する。そして、W字状スリット91の長さ方向において、該W字状スリット91の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力の位相差の関係をデータとして把握する。例えば、該W字状スリット91の中央点から第1の給電点21の方向へ波長λの八分の一、即ちλ/8だけ離れた位置に設定するための位相差は、例えばΔθ1であるいうことが把握される。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5〜0.9程度である。
【0141】
次に、第2の予備試験であるが、図22において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
そして、前記第2の電力供給系を用いて、一対の電極2、4に超高周波電力を、例えば周波数70MHzの電力を、例えば合計で400Wを供給する。
即ち、該第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力、例えばパルス変調された周波数70MHzの正弦波の位相差を、例えば零に設定し、第3の電力増幅器29の出力を200Wに設定して、その出力を第3のインピーダンス整合器30、第3の電流導入端子31及び真空用同軸ケーブル32を介して、第1の給電点21と第2の電極4間に供給するとともに、第4の電力増幅器34の出力を200Wに設定して、その出力を第4のインピーダンス整合器35、第4の電流導入端子36、真空用同軸ケーブル37を介して、第2の給電点27と第2の電極4間に供給する。
ここで、該第1及び第2の給電点21、27に給電される電力の典型例を、図3及び図4に、W12(t)、W22(t)として示している。該W12(t)及びW22(t)は、それぞれ、パルス幅Tw、周期T0でパルス変調された超高周波数、例えば70MHzの正弦波で、前記W11(t)及びW21(t)の立ち上がり時刻よりT0/2だけ遅れて立ち上がるような関係にある。該パルス幅Tw及び周期T0は、該第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28に付属の調整器により任意の値、例えばTw=400μ秒及び周期T0=1m秒に設定される。
この場合、給電点21及び27から供給され電力波は、その伝播路であるW字状スリットが途中で折れ曲がっているので、若干影響を受けて減衰はするが、該折れ曲り部分に被覆されている誘電体92により、その領域での電力損失が抑制される。その結果、その伝播路にて電力波W12(x、t)及びW22(x、t)による前述の定在波が発生する。
その結果、前記SiH4ガスのプラズマが生成され、基板11に例えば
正弦的分布を持つアモルファスSiが堆積する。
【0142】
前記の要領で、製膜時間を例えば10〜20分間にして、前記基板11にアモルファスSi膜を形成させる。製膜後、真空容器1から前記基板11を取り出して、該アモルファスSi膜の膜厚み分布を評価する。基板11に堆積された例えばアモルファスSiの膜厚分布は、前述のVHFプラズマ固有の現象である定在波の発生により、正弦的な分布となる。このような、製膜試験を第2の位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差をパラメータに繰り返し実施する。そして、W字状スリット91の長さ方向において、W字状スリット91の中央点から正弦的な膜厚分布の最大厚みの位置までの距離と前記第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力の位相差の関係をデータとして把握する。例えば、W字状スリット91の中央点から第2の給電点27の方向へ波長λの八分の一、即ちλ/8だけ離れた位置に設定するための位相差は、例えばΔθ2であるいうことが把握される。
ただし、その波長λは、真空中での電磁波の波長ではなく、上記製膜条件での波長λであり、真空中での電磁波の波長λに比べて短くなる。一般的にはSiH4ガスのプラズマでは、プラズマ中での波長λと真空中での波長λとの比λ/λは0.5〜0.9程度である。
【0143】
さて、前記第1および第2の予備製膜工程の結果を受けて、本製膜工程に入る。先ず、図22において、予め、基板11を第2の電極4の上に設置し、図示しない真空ポンプ10を稼動させ、真空容器1内の不純物ガス等を除去した後、放電ガス供給管8からSiH4ガスを、例えば500sccm、圧力0.5Torr(66.5Pa)で供給しつつ、基板温度は80〜350℃の範囲、例えば180℃に保持する。
次に、前記第1の電力供給系の構成部材の第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15の2つの出力、例えば周波数70MHzの正弦波の位相差を第1の予備試験データで把握したΔθ1に設定し、そのパルス変調を図3及び図4に示すW11(t)及びW21(t)におけるパルス幅Hw及び周期T0を例えばHw=400μ秒及びT0=1m秒に設定し、第1及び第2の給電点21、27に、それぞれ例えば電力200Wを供給するともとに、前記第2の電力供給系の構成部材の第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28の2つの出力、例えば周波数70MHzの正弦波の位相差を第2の予備製膜工程のデータとして把握したΔθ2に設定し、そのパルス変調を図3及び図4に示すW12(t)及びW22(t)におけるパルス幅Hw及び周期T0を例えばHw=400μ秒及びT0=1m秒で、かつ、前記W11(t)及びW21(t)のパルス変調のパルス立ち上がり時間より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がるように設定し、第1及び第2の給電点21、27に、それぞれ例えば電力200Wを供給する。
即ち、前記第1の給電点21に、電力200Wの電圧波W11(x、t)及び電力200Wの電圧波W12(x、t)が、前記第2の給電点27に電力200WのW21(x、t)及び電力200Wの電圧波W22(x、t)が供給される。
ここで、第1の予備製膜工程及び第2の予備製膜工程でそれぞれ設定した第1のパルス変調方式位相可変2出力の発信器15及び第2のパルス変調方式位相可変2出力の発信器28のパルス幅Hwと周期T0の値を、例えば、Hw=400μ秒を1m秒などへ、T0=1m秒を5m秒などへ変更して、いくつかの製膜データを比較することができる。
【0144】
前記一対の電極2、4間に4つの電圧波が供給されると、前述のように、W11(x、t)とW21(x、t)は干渉して第1の定在波W1(x、t)を形成し、W12(x、t)とW22(x、t)は干渉して第2の定在波W2(x、t)を形成する。ただし、W11(x、t)は、W12(x、t)及びW22(x、t)とは時間的に分離されているので、干渉しない。また、同様に、W21(x、t)は、W12(x、t)及びW22(x、t)と干渉しない。
したがって、上記パルス変調の周期T0より大幅に長い数秒以上の一般的な製膜時間で考えれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布は、第1の定在波W1(x、t)の強さの分布I1(x、t)と第2の定在波W2(x、t)の強さの分布I2(x、t)の重ね合わせた形となる。その様子を概念的に図8に示す。
ここで、基板の中央点、即ち該楔形90の頂点とスリットを結ぶラインをx軸の原点とし、該原点から第1の給電点21を向いた方向を正の方向とすると、第1の定在波W1(x、t)の強さの分布I1(x、t)は、
I1(x、t)=cos{2πx/2+2π(λ/8)/λ}
=cos{2πx/2+π/4}
第2の定在波W2(x、t)の強さの分布I2(x、t)は、
I2(x、t)=cos{2πx/2−2π(λ/8)/λ}
=cos{2πx/2−π/4}
一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、
I(x、t)
=cos{2πx/2+π/4}+cos{2πx/2−π/4}
=1
この結果は、該一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、x即ち電力の伝播方向の位置に依存しないで一定の値であり、均一であるということを示している。
【0145】
また、この結果は、発振周波数がVHF帯域に属する高周波電源の出力の電力を用いて生成されたプラズマを利用して真空容器に配置された基板の表面を処理する表面処理装置に用いられる高周波プラズマ発生装置において、前記基板の表面の法線方向と実質的に同じ方向の電界を有する電磁波の定在波の腹の位置が異なる第1の定在波と第2の定在波を発生させ、かつ、該第1及び第2の定在波を重畳させる手段を備えることにより、プラズマの一様化に不可欠な電極間の電力の強さの分布の制御が可能であるとの意味がある。
さらに、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.25倍、即ち0.25λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、電力の伝播方向の位置に依存しないで一定の値であり、均一であるということを示している。このことは、UHFプラズマの応用分野においての重要課題である大面積・均一のプラズマ処理化を実現可能な装置の提供ができるという意味で画期的発見であるということを意味している。
また、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.22〜0.28倍、即ち0.22〜0.28λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、±20%以下であることを示している。
また、上記第1及び第2の定在波のそれぞれの腹の位置の間の距離が、使用する電磁波のプラズマ中の波長λの0.238〜0.263倍、即ち0.238〜0.263λであれば、一対の電極2、4間に生成される電力の強さの分布I(x、t)は、±10%以下であることを示している。
【0146】
上記工程において、SiH4ガスがプラズマ化されると、そのプラズマ中に存在するSiH3、SiH2、SiH等のラジカルが拡散現象により拡散し、基板11の表面に吸着されることによりa−Si膜が堆積するが、一対の電極2、4間の電力の強さの分布が上述の通り、時間平均的に一様であるので、その堆積膜は一様になる。このことはVHFプラズマの応用分野においては画期的な発見であり、実用価値は著しく大きい。
即ち、インライン型やマルチチャンバー形やロール・ツー・ロール型のプラズマ表面処理装置の高生産性化のためのプラズマ発生装置の改善において求められている矩形型の第1の電極の一つの辺の近傍のみからVHF電力を供給する手段
に関する一つの新規手段として実現が可能である。このことは、該プラズマ表面処理装置本体の断面を、その基板搬送方向に直交する断面で見た場合、その断面が例えば矩形状の断面であれば、該矩形断面の4辺の中の1辺のみを用いたVHFプラズマ生成用の新規給電手段が実現可能である。
本実施例では、第1及び第2の電極の設置面と基板との間隔を5~40mm程度に設定することにより、ガラス基板サイズ:1200mmx200mm程度でのアモルファスSi製膜は、製膜速度1〜3nm/s程度で、膜厚分布は±10%以内の製膜が可能である。
また、本実施例では、W字状スリット91を含む一対の電極2、4が1式であるので、基板サイズの幅は200mm程度に制約されるが、該W字状スリット91を含む一対の電極2、4の個数を増加すれば基板サイズの幅は拡大可能であることは当然なことである。
なお、微結晶Siあるいは薄膜多結晶Si等は、製膜条件の中のSiH4,H2の流量比、圧力および電力を適正化することで製膜できることは公知の技術であり、膜厚分布±10%以内の製膜が可能である。
【0147】
本実施例では、実施例2で用いられた平衡不平衡変換装置と平衡伝送路を使用していないが、該平衡不平衡変換装置と平衡伝送路を用いることにより、上記プラズマの一様化は、より確実になることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】実施例1に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図。
【図2】図1図示のプラズマ表面処理装置の第1及び第2の電極への給電部の説明図。
【図3】図1図示の第1及び第2のパルス変調方式位相可変2出力発信器から出力されるパルス変調された出力の典型例を示す説明図。
【図4】図1図示の第1及び第2のパルス変調方式位相可変2出力発信器から出力されるパルス変調された正弦波信号の典型例を示す説明図。
【図5】一対の電極間に発生の電圧波の伝播を示す説明図。
【図6】一対の電極間に発生の電圧の定在波の腹の位置を示す説明図。
【図7】一対の電極間に発生の定在波の強さ(振幅の2乗の値)の分布を示す説明図。
【図8】一対の電極間に発生の2つの定在波の強さを示す説明図。
【図9】実施例2に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図。
【図10】図9図示のプラズマ表面処理装置の第1及び第2の電極への給電部の説明図。
【図11】実施例3に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図。
【図12】図11図示のプラズマ表面処理装置に用いられる第1の電力供給系の配線図。
【図13】図11図示のプラズマ表面処理装置に用いられる第2の電力供給系の配線図。
【図14】実施例4に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図。
【図15】実施例5に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図。
【図16】図15図示のプラズマ表面処理装置の真空容器内部の断面図。
【図17】実施例6に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図。
【図18】図17図示のプラズマ表面処理装置の電力供給系配線図を示す説明図。
【図19】実施例7に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図。
【図20】実施例8に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図。
【図21】実施例9に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図。
【図22】実施例10に係わるプラズマ表面処理装置の全体を示す概略図。
【符号の説明】
【0149】
1...真空容器、
2...第1の電極、
3...図示しない基板ヒータ、
4...第2の電極、
5...絶縁物支持材、
6...ガス混合箱、
7...整流孔、
8...放電ガス供給管、
9...排気管、
10...図示しない真空ポンプ、
11...基板、
12...図示しないゲートバルブ、
15...第1のパルス変調方式位相可変2出力発信器、
16...第1の電力増幅器、
17...第1のインピーダンス整合器、
18...第1の電流導入端子、
19...第1の真空用同軸ケーブル、
20...第1の真空用同軸ケーブルの芯線、
21...第1の給電点、
100...同期信号伝送ケーブル、
22...第2の電力増幅器、
23...第2のインピーダンス整合器、
24...第2の電流導入端子、
25...第2の真空用同軸ケーブル、
26...第2の真空用同軸ケーブルの芯線、
27...第2の給電点、
28...第2のパルス変調方式位相可変2出力発信器、
29...第3の電力増幅器、
30...第3のインピーダンス整合器、
31...第3の電流導入端子、
32...第3の真空用同軸ケーブル、
33...第3の真空用同軸ケーブルの芯線、
34...第4の電力増幅器、
35...第4のインピーダンス整合器、
36...第4の電流導入端子、
37...第4の真空用同軸ケーブル、
38...第4の真空用同軸ケーブルの芯線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波プラズマを利用して真空容器内に配置された基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置に用いられる高周波プラズマ発生装置であって、一対の電極における電磁波の伝播上での対向点となる関係にある少なくとも2つの給電点に時間的に分離されたパルス電力を供給し、該一対の電極間に電磁波の定在波の腹の位置が異なる複数の定在波を発生させ、かつそれらを重畳させる手段を備えたことを特徴とする高周波プラズマ発生装置。
【請求項2】
前記一対の電極間に発生の複数の定在波の腹の位置を制御する手段を有することを特徴とする請求項1記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項3】
任意のパルス変調が可能で、かつ、2出力でかつ該2出力の電圧の位相差を任意に設定可能な第1の高周波電源と、該第1の高周波電源のパルス変調信号に同期した任意のパルス変調が可能で、かつ、2出力でかつ該2出力の電圧の位相差を任意に設定可能な第2の高周波電源とを具備し、前記電極に配置された少なくとも2つの給電点のいずれか一方の給電点に、前記第1の高周波電源の2つの出力端子のいずれか一方と前記第2の高周波電源の2つの出力端子のいずれか一方が接続され、他方の給電点に前記第1の高周波電源の他方の出力端子と前記第2の高周波電源の他方の出力端子が接続されるという構成を有することを特徴とする請求項1あるいは2のいずれか1項に記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の高周波電源の出力端子に電力分配器が接続されるという構成を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項5】
前記給電点に平衡不平衡変換装置が接続されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項6】
前記高周波電源の出力の周波数は、30MHzから300MHzのVHF帯に属していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項7】
前記高周波電源の出力のパルス変調のデユーテイ比即ちパルス幅Hwと周期T0の比Hw/H0を50%以下にすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項8】
プラズマを利用して真空容器内に配置された基板の表面を処理するプラズマ表面処理装置において、請求項1〜7のいずれか1項に記載の高周波プラズマ発生装置から構成されることを特徴とするプラズマ表面処理装置。
【請求項9】
プラズマを利用して真空容器内に配置された基板の表面を処理するプラズマ表面処理方法において、請求項1〜7のいずれか1項に記載の高周波プラズマ発生装置を用いて前記基板の表面処理を行うことを特徴とするプラズマ表面処理方法。
【請求項10】
前記一対の電極における電磁波の伝播上での対向点となる関係にある少なくとも2つの地点に配置された給電点のいずれか一方の給電点に、前記第1及び第2の高周波電源のそれぞれの2つの出力端子のいずれか一方をそれぞれ、一つずつ接続し、かつ、他方の給電点に前記第1及び第2の高周波電源の他方の出力端子をそれぞれ、一つずつ接続すると共に、該第1の高周波電源の2つの出力端子から出力される電力をパルス幅Hw及びパルス周期T0でパルス変調し、該第2の高周波電源の2つの出力端子から出力される電力を該第1の高周波電源の出力端子から出力されるパル変調された電力の立ち上がり時刻より半周期、即ちT0/2遅れた時刻に立ち上がる形でパルス変調することにより、該第1の高周波電源の2つの出力端子から出力されるパルス変調された電力と該第2の高周波電源の2つの出力端子から出力されるパルス変調された電力の該少なくとも2つの給電点への供給時間帯を分離し、該一対の電極間に該第1の高周波電源の2つの出力端子から出力される電力により形成される第1の定在波と該第2の高周波電源の2つの出力端子から出力される電力により形成される第2の定在波の発生時関領域を異ならしめると共に、該第1の高周波電源の2つの出力端子から出力される電力の電圧の位相差と、該第2の高周波電源の2つの出力端子から出力される電力の電圧の位相差を制御し、該2つの定在波の腹の位置間の距離即ち第1の定在波の腹の位置と第2の定在波の腹の位置との間の距離を前記一対の電極間に生成のプラズマ内部を伝播する電磁波の波長λの0.22〜0.28倍、好ましくは0.25倍、即ち0.22〜0.28λ、好ましくはλ/4に設定することにより、前記基板の表面処理を行うことを特徴とする請求項8あるいは9のいずれか1項に記載のプラズマ表面処理方法。
【請求項11】
前記基板の表面に、アモルファスSi系材料、微結晶Si系材料、多結晶Si系材料、結晶Si系材料、酸化物、金属、有機金属化合物、有機ケイ素化合物、及び有機化合物のいずれかを形成するようにしたことを特徴とする請求項9あるいは10のいずれか1項に記載のプラズマ表面処理方法。
【請求項12】
前記基板の表面に固着したアモルファスSi系材料、微結晶Si系材料、多結晶Si系材料、結晶Si系材料、酸化物、金属、有機金属化合物、有機ケイ素化合物、及び有機化合物のいずれかの材料をエッチング加工するようにしたことを特徴とする請求項9あるいは10のいずれか1項に記載のプラズマ表面処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−228933(P2006−228933A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40300(P2005−40300)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(303034908)
【Fターム(参考)】