説明

高圧処理装置

【課題】処理空間の開閉動作に伴う基板の汚染を抑制しつつ開閉動作を行うことが可能な高圧処理装置を提供する。
【解決手段】上部材22と下部材21とを重ね合わせることにより形成される処理空間20内にて、基板Wに対して高圧の処理流体により処理を行う高圧処理装置において、係止用突起部211は前記処理空間20の外側にて下部材21に固定して設けられ、前記下部材21の周方向に沿って互いに間隔をおいて複数配置されると共に、各々横方向に突出してその下面が係止面212を形成し、押圧部材23は上部材22を下部材21側に押圧する。また被係止用突起部231は押圧部材23に前記複数の係止用突起部211に夫々対応して設けられ、各々横方向に突出してその上面が前記係止面212に係止される被係止面232を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にパターンが形成された基板に対して高圧処理をする高圧処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板である例えば半導体ウエハ(以下、ウエハという)表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造工程などにおいては、ウエハ表面の微小なごみや自然酸化膜などを薬液などの液体により除去する液処理工程が設けられている。
【0003】
この液処理工程に用いられる液処理装置の一つである枚葉式のスピン洗浄装置は、ノズルを用いてウエハの表面に例えばアルカリ性や酸性の液体を供給しながらウエハを回転させることによってウエハ表面のごみや自然酸化物などを除去する。この場合にはウエハ表面に残った液体は例えば純水などによるリンス洗浄を行った後、ウエハを回転させることによる振切乾燥などによって除去される。
【0004】
ところが半導体装置の高集積化に伴い、こうした液体などを除去する処理において、いわゆるパターン倒れの問題が大きくなってきている。パターン倒れは、例えばウエハ表面に残った液体を乾燥させる際に、パターンを形成する凹凸の例えば凸部の左右に残っている液体が不均一に乾燥すると、この凸部を左右に引っ張る表面張力のバランスが崩れて液体の多く残っている方向に凸部が倒れる現象である。
【0005】
こうしたパターン倒れを抑えつつウエハ表面に残った液体を除去する手法として高圧下で得られる超臨界状態の流体(超臨界流体)を用いた乾燥方法が知られている。この方法によれば、液体の付着した状態のウエハを超臨界流体と接触させ、ウエハ表面の液体を超臨界流体に溶解させると、表面張力の影響を受けることなく液体を乾燥させることができる。
【0006】
ここで超臨界流体を得るためには、その流体を臨界点よりも高い温度、圧力にまで昇温、昇圧する必要がある。そこで、超臨界流体を利用したウエハの乾燥処理(以下、超臨界乾燥という)を行う場合には、耐圧性を備えた処理容器内に処理対象のウエハを搬入し、この処理容器を密閉してから例えば液体を供給し、当該流体を加熱や加圧することによって超臨界流体を得ている。
【0007】
ここで例えば特許文献1には、開口部を有する容器本体とこの開口部を塞ぐ容器蓋とを備え、被処理体に対する処理が行われる高圧流体容器が記載されている。容器本体の開口部には周方向に間隔を開けて当該開口部の内側へ向けて突出する部材(掛止爪)が設けられており、容器蓋にもその周方向に間隔を開けて当該容器蓋の外側へ向けて突出する部材(掛止爪)が設けられている。そして容器蓋側の掛止爪が開口部側の掛止爪の間にはまり込むように容器蓋を開口部に嵌入させ、容器本体側の掛止爪の奥手まで容器蓋側の掛止爪を押し込んだら、容器蓋を回転させて双方の掛止爪を重ね合わせることにより容器蓋側の掛止爪が開口部側の掛止爪にて係止され、処理容器内が高圧となっても容器蓋が外れない構造となっている。
【0008】
また容器蓋の開口部に対向する面には、容器本体の内周面に沿って当該容器本体内に嵌り込む部材(嵌入部)が突設されており、この部材の側周面にはシールリングが巻かれていて、容器蓋を閉じたときにこのシールリングと容器本体の内周面とが密接することにより高圧流体容器を気密に密閉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−56703号公報:0033段落〜0038段落、図7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら特許文献1に記載の高圧流体容器にあっては、容器蓋に突設された嵌入部を容器本体に嵌め込んでから容器蓋を回転させて掛止爪同士を重ね合わせるので、この回転動作の際に容器本体の内壁面と嵌入部の側周面やシールリングとが擦れ合うことになる。このような擦れの発生する部分では、各部材が磨耗し、またこの磨耗に伴ってパーティクルが発生するおそれが高い。
【0011】
特に特許文献1に記載の高圧流体容器では、処理容器内の空間に接する嵌入部と容器本体との間で擦れが発生するので、この高圧流体容器を既述の超臨界乾燥処理に適用しようとすると、容器の密閉、開放動作に伴って発生するパーティクルにより洗浄後のウエハが再汚染される可能性が高くなるといった問題がある。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、処理空間の開閉動作に伴う基板の汚染を抑制しつつ開閉動作を行うことが可能な高圧処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る超臨界処理装置は、上部材と下部材とを重ね合わせることにより形成される処理空間内にて、基板に対して高圧の処理流体により処理を行う高圧処理装置において、
前記処理空間の外側にて前記下部材に固定して設けられ、前記下部材の周方向に沿って互いに間隔をおいてあるいは一列に互いに間隔をおいて複数配置されると共に、各々横方向に突出してその下面が係止面を形成する係止用突起部と、
前記上部材を下部材側に押圧するための押圧部材と、
この押圧部材に前記複数の係止用突起部に夫々対応して設けられ、各々横方向に突出してその上面が前記係止面に係止される被係止面を形成する被係止用突起部と、
前記上部材と下部材とを重ね合わせて、処理空間を閉じた状態とする閉鎖位置と、これら上部材及び下部材を上下方向に離間した開放位置と、の間で上部材及び下部材を相対的に昇降させる第1の駆動機構と、
前記上部材及び下部材が閉鎖位置にあるときに、前記押圧部材の被係止用突起部をその上方側から前記係止用突起部間の間隙を介して係止用突起部の下方空間に臨むように位置させ、次いで被係止用突起部を係止用突起部の下方空間に進入させて、押圧部材が上部材を押圧した状態で前記被係止面が前記係止面に係止されるように、前記押圧部材と下部材とを相対的に移動させる第2の駆動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
前記超臨界処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前押圧部材の被係止面が各係止用突起部の係止面に係止された状態を維持するため、間隔をおいて隣り合う係止用突起部同士の隙間に上下方向に挿入されて、前記被係止面が係止面に係止される状態とは反対の方向への前記押圧部材と下部材との相対的な移動を規制する規制部材を備えたこと。
(b)前記係止用突起部の係止面の高さ位置は、前記被係止用突起部の被係止面がこの係止面に係止されるために近づいてくる方向に向けて徐々に高くなっており、また前記被係止面の高さ位置は、当該係止面に近づいていく方向に向けて徐々に低くなっていること。
(c)前記第1の駆動機構により昇降する昇降部材と、この昇降部材と上部材との間に介在すると共に上部材及び下部材が閉鎖位置にあるときには縮退された状態となって上部材を下部材に押し付けるように付勢される付勢手段と、を備えたこと。
【0015】
(d)前記押圧部材は、前記下部材と一体となって上部材全体を格納可能な容器形状に形成され、被係止用突起部の被係止面が係止用突起部の係止面にて係止された状態にて、これら下部材と上部材とが重ね合わされて前記処理空間を閉じた状態とする面の外周領域には、下部材と押圧部材とが密接する面が形成されること。
(e)前記高圧の処理流体は、超臨界状態の処理流体であること。
【0016】
(f)上述の各高圧処理装置において、前記係止用突起部は、前記下部材に固定して設けられる代わりに前記上部材に固定して設けられ、
前記押圧部材は、上部材を下部材側に押圧する代わりに下部材を上部材側に押圧するように構成され、
係止用突起部及び被係止用突起部の各々の位置関係は、上述の各高圧処理装置と上下が逆になっていること。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上部材及び下部材を互いに重ね合わせるだけで処理空間が形成され、これらの部材とは異なる押圧部材を用いて両部材を固定するので、下部材と上部材とが互いに擦れ合う動作が発生せず、パーティクルが発生しにくい構造となっている。このため処理空間内にて高圧処理が行われる基板の汚染を抑えて良好な処理結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ウエハの洗浄処理装置の一例を示す縦断側面図である。
【図2】実施の形態に係る超臨界処理装置の縦断側面図である。
【図3】前記超臨界処理装置内の各チャンバーなどの構成を示す第1の分解斜視図である。
【図4】前記各チャンバーなどの構成を示す第2の分解斜視図である。
【図5】下部チャンバー及び上部チャンバーの構成を示す平面図である。
【図6】前記超臨界処理装置の作用を示す第1の縦断側面図である。
【図7】係止用突起部及び被係止用突起部の作用を示す拡大説明図である。
【図8】前記超臨界処理装置の作用を示す第1の一部破断斜視図である。
【図9】前記超臨界処理装置の作用を示す第2の一部破断斜視図である。
【図10】前記超臨界処理装置の作用を示す第2の縦断側面図である。
【図11】前記超臨界処理装置の作用を示す第3の一部破断斜視図である。
【図12】前記超臨界処理装置の作用を示す第3の縦断側面図である。
【図13】各チャンバーの変形例を示す第1の説明図である。
【図14】各チャンバーの変形例を示す第2の説明図である。
【図15】各チャンバーの変形例を示す第3の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態として、液処理が行われた後のウエハに対して、ウエハに付着した液体を高圧の処理流体である超臨界流体により乾燥する高圧処理装置である超臨界処理装置について説明する。本実施の形態に係る超臨界処理装置の具体的な構成を説明する前に、液処理の一例としてスピン洗浄によりウエハを1枚ずつ洗浄する枚葉式の洗浄装置について簡単に説明しておく。
【0020】
図1は、枚葉式の洗浄装置8を示す縦断側面図である。洗浄装置8は、処理空間を形成するアウターチャンバー81内に配置されたウエハ保持機構83にてウエハWをほぼ水平に保持し、このウエハ保持機構83を鉛直軸周りに回転させることによりウエハWを回転させる。そして回転するウエハWの上方にノズルアーム84を進入させ、その先端部に設けられたノズル841から薬液及びリンス液を予め定められた順に供給してウエハWの表面の洗浄処理が行われる。また、ウエハ保持機構83の内部にも薬液供給路831が形成されており、ここから供給された薬液及びリンス液によってウエハWの裏面洗浄が行われる。
【0021】
洗浄処理は、例えばアルカリ性の薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)によるパーティクルや有機性の汚染物質の除去→リンス液である脱イオン水(DeIonized Water:DIW)によるリンス洗浄→酸性薬液である希フッ酸水溶液(Diluted HydroFluoric acid:DHF)による自然酸化膜の除去→DIWによるリンス洗浄の順に行われ、これらの薬液はアウターチャンバー81内に配置されたインナーカップ82やアウターチャンバー81に受け止められて排液口821、811より排出される。またアウターチャンバー81内の雰囲気は排気口812より排気されている。
【0022】
薬液による洗浄処理を終えたウエハWの表面には、例えばウエハ保持機構83の回転を停止した状態で例えばウエハW表面に残存しているDIWをハイドロフルオロエーテル(Hydrofluoroethers:HFE)で置換し、ウエハW表面にHFEの液体が例えば液盛りされる。そしてウエハWは、液体が液盛りされた状態のまま例えばウエハ保持機構83に設けられた不図示の受け渡し機構により搬送装置に受け渡され、洗浄装置8より搬出される。以下、ウエハW表面にはHFEが液盛りされた状態で搬送されるものとして説明を行う。
【0023】
洗浄装置8での洗浄処理を終えたウエハWは表面にHFEの液盛りがされた状態のまま超臨界処理装置に搬送され、表面に付着した液体を除去する超臨界乾燥が行われる。以下、本実施の形態に係る超臨界処理装置1の構成について図2〜図4を参照しながら説明する。
【0024】
本実施の形態に係る超臨界処理装置1は、図2〜図4に示すようにウエハWに対する超臨界乾燥が行われる処理容器を上下に分割して形成される下部チャンバー21及び内部チャンバー22と、内部の超臨界流体の圧力により下部チャンバー21と内部チャンバー22とを離間させようとする力に抗して内部チャンバー22を下部チャンバー22側に押圧するする上部チャンバー23と、この上部チャンバー23の位置ずれを規制するロックプレート24と、を備えている。
【0025】
下部チャンバー21は本実施の形態の下部材に相当し、図2、図3に示すように、内部が中空で上面側に開口する扁平な円筒形状の部材として形成されており、例えば超臨界処理装置1の床面10上に固定されている。下部チャンバー21内部の底面には、内部チャンバー22と重なり合って内部に処理空間20(図10参照)を形成するための凹部210が形成されており、この凹部210は例えば扁平な円板形状に合わせてくりぬかれている。
【0026】
凹部210内には、処理対象のウエハWを載置するための例えば円板形状の冷却プレート31が配置されており、この冷却プレート31には例えばペルチェ素子や冷媒通流路などの不図示の冷却機構が埋設されている。
【0027】
冷却プレート31の下面側中央部には、下部チャンバー21の底板部及び超臨界処理装置1の床面10を上下方向に貫通する昇降棒32が設けられており、この昇降棒32の下端部には冷却プレート31を昇降するための駆動機構33が設けられている。駆動機構33は図2に示すように凹部210の底面から冷却プレート31を僅かに浮かせた状態で待機する位置と、図10に示すように冷却プレート31を凹部210の底面に接触させて冷却プレート31及びウエハWの全体を凹部210(処理空間20)内に格納する位置との間で冷却プレート31を昇降させることができる。
【0028】
また冷却プレート31の中央部には、搬送装置との間でウエハWの受け渡しを行うためのリフター35が設けられており、このリフター35は冷却プレート31及び昇降棒32を上下方向に貫いている。リフター35の上端部には、ウエハWの受け渡しが行われる例えば円板形状に形成されたウエハ保持部34が設けられている一方、リフター35の下端部にはリフター35を昇降させるための駆動機構36が設けられている。リフター35は、図6に示すように下部チャンバー21の上方側に設定されたウエハWの受け渡し位置と、冷却プレート31の上面に設けられた凹部内にウエハ保持部34を格納して平坦なウエハWの載置面を形成する載置位置との間でウエハ保持部34を昇降させる役割を果たしている。
【0029】
また図3に示すように円筒形状に形成された下部チャンバー21の側壁部には、当該側壁部の内壁面から円筒の径方向中心側へ向けて突出する例えば6個の係止用突起部211が下部チャンバー21の内周面の周方向に沿って等間隔で設けられている。各係止用突起部211は、例えば厚さ数mm〜数十mm、幅数cm〜数十cmに形成された下部チャンバー21の側壁部と同心円状の凹曲面を持つ板状の部材である。係止用突起部211は、下部チャンバー21の上端から当該下部チャンバー21側壁部の高さの例えばおよそ3分の1程度の高さ位置にかけて形成されていて、その下方側は空間となっている。各係止用突起部211はその上端面が下部チャンバー21の側壁部の上端面と面一になる高さ位置に配置されており、下部チャンバー21を上面側から見ると図5(a)に示すようにその開口部の形状が歯車形状となっている。
【0030】
係止用突起部211の下端面には、後述の上部チャンバー23側の被係止用突起部231に設けられている被係止面232を係止するために、上部チャンバー23の側壁部の内周面に沿って周方向(横方向)へと伸びる係止面212が形成されている。図3に示すように係止用突起部211の係止面212は、当該係止面212の高さ位置が、例えば下部チャンバー21を上面側から見たときの時計回りの向きに徐々に低くなる傾斜面として構成されている。
【0031】
また例えば下部チャンバー21の底板部の下面及び側壁部の外周面には、例えば抵抗発熱体などからなるヒーター213が設けられており、不図示の温度検知部における下部チャンバー21の温度の検知結果に基づいて後述の制御部6が給電部61からの給電量を調節し、下部チャンバー21を所望の温度に加熱することができる。
【0032】
次に、本実施の形態の上部材に相当する内部チャンバー22の構成について説明する。図3、図4に示すように内部チャンバー22は、扁平な円板形状の部材として形成され、凹部210よりも径が大きく、且つ、下部チャンバー21の内周面から内側へ向けて突出している6個の係止用突起部211にて囲まれた空間を上下方向に通り抜けることが可能な径を持っている。
【0033】
内部チャンバー22の下面はほぼ平坦になっていて、下部チャンバー21の底板部上に内部チャンバー22が重ね合わされて凹部210を覆い、処理空間20を形成することができる。また凹部210の外周領域を覆う位置においては、内部チャンバー22の下面は、下部チャンバー21の底板部上面に凹部210を囲むように配置されたO‐リング216を介して当該底板部の上面と密接し、凹部210を密閉することが可能になっている。図2に示した224は、内部チャンバー22下面の外周領域に周方向に沿って等間隔に例えば3個配置された位置決めピンであり、下部チャンバー21側に設けられたピン受け部215に嵌合して下部チャンバー21上における内部チャンバー22の位置決めを行う役割を果たす。
【0034】
内部チャンバー22の上面側中央部には、上下方向に伸びる保持棒222が設けられており、この保持棒222の上端は押しバネ223を介して天板部材41に接続されている。天板部材41は、内部チャンバー22及び後述の上部チャンバー23、ロックプレート24を下部チャンバー21の上方位置に保持する役割を果たす。また天板部材41は、例えば駆動機構43により昇降可能に構成された複数本の支持棒42に支持され、これら内部チャンバー22、上部チャンバー23及びロックプレート24を上下方向に移動させることができる。ここで駆動機構43は内部チャンバー22を上下方向に移動させるという観点においては本実施の形態の第1の駆動機構に相当し、上部チャンバーを上下方向に移動させるという観点においては第2の駆動機構の一部を構成している。また天板部材41は昇降部材に相当している。図中、44は、3つのチャンバー21〜23を組み合わせる動作を実行する際に駆動機構43に加わる力を吸収する緩衝バネである。
【0035】
内部チャンバー22はこの天板部材41の昇降動作に伴って、下部チャンバー21の底板部上に載置され、下部チャンバー21と内部チャンバー22とを重ね合わせて処理空間20を形成し、且つ、この処理空間20を閉じた状態とする閉鎖位置と、下部チャンバー21の上方位置まで退避し、処理容器を開放してウエハWの搬入出を可能にする開放位置との間を上下方向に移動することができる。ここで保持棒222と天板部材41との間に介設された押しバネ223は、荷重がかかっていない状態で伸びる方向に付勢されており、内部チャンバー22が下部チャンバー21上に載置されると、縮退された状態となって内部チャンバー22を上方側から押し付けて、下部チャンバー21に向けて密着させる機能を備えている。押しバネ223は、本実施の形態の付勢手段に相当する。
【0036】
内部チャンバー22の上面には例えば抵抗発熱体からなるヒーター221が設けられており、下部チャンバー21側のものと同様に給電部61からの給電量を調節して内部チャンバー22を所望の温度に加熱することができる。また内部チャンバー22には、下面に向けて開口し、処理空間20内に超臨界処理用の流体である例えばHFEを供給するためのHFE供給路51と、同じく内部チャンバー22の下面に向けて開口し、処理空間20から超臨界流体を排出するためのHFE排出路54とが形成されている。これらの流路51、54は上部チャンバー23、ロックプレート24及び天板部材41を貫通し、HFE供給路51については耐圧性を備えた開閉バルブ52を介してHFE供給部53に接続され、またHFE排出路54については同じく耐圧性のある開閉弁55を介して例えば工場の除害設備やHFEの回収設備などへと接続されている。
【0037】
上部チャンバー23は本実施の形態の押圧部材に相当し、処理容器を構成する既述の下部チャンバー21と内部チャンバー22とを互いに固定する役割を果たす。図2〜図4に示すように上部チャンバー23は下面側が開口した扁平な円筒形状の部材として形成されており、下部チャンバー21上に載置された内部チャンバー22全体を上面側から覆うことができる。言い替えると上部チャンバー23は、扁平な円筒型の容器形状に構成されており、下部チャンバー21と一体となって内部チャンバー22全体を格納することができるようになっている。また、後述するように内部チャンバー22が下部チャンバー21と上部チャンバー23との間に形成される空間内に格納された状態において、上部チャンバー23の円筒内部の天井面は内部チャンバー22を上面側から下部チャンバー21に向けて押し付けることが可能であり、この観点において当該天井面は内部チャンバー22の押さえ面233としての役割を果たしている。
【0038】
円筒形状に形成された上部チャンバー23の側壁部には、当該側壁部の外壁面から円筒の径方向外側へ向けて突出する例えば6個の被係止用突起部231が上部チャンバー23の外周面の周方向に沿って等間隔で設けられている。各被係止用突起部231は、例えば厚さ数mm〜数十mm、幅数cm〜数十cmに形成された上部チャンバー23の側壁部と同心円状の凹曲面を持つ板状の部材であり、例えば上部チャンバー23の側壁部とほぼ同程度の高さに形成されている。
【0039】
このように被係止用突起部231が等間隔で配置された上部チャンバー23を上面側から見ると、図5(a)に示すように既述の下部チャンバー21側の開口部に上部チャンバー23を嵌入させることが可能な歯車形状となっている。即ち上部チャンバー23は、下部チャンバー21の上方位置から下部チャンバー21の底板上に載置される位置までの間を上下方向に通り抜けることができる。図4に示すように被係止用突起部231はその下端面が上部チャンバー23の側壁部の下端面と例えば面一となっていて、下部チャンバー21の底板の平坦な面と密接して内部チャンバー22全体を格納することができる。図2に示すように下部チャンバー21の底板には、上部チャンバー23の側壁部の下端面が載置される位置に2本目のO‐リング214が配置されており、下部チャンバー21と上部チャンバー23との間に形成される空間を密閉することができる。
【0040】
ここで下部チャンバー21と内部チャンバー22を密着させるO‐リング216と、下部チャンバー21と上部チャンバー23とを密着させるO‐リング214とで挟まれた位置における下部チャンバー21の底面には、下部チャンバー21と上部チャンバー23との間に形成される空間内の圧力を検知する圧力検知部62が設けられている。圧力検知部62は上部チャンバー23内の圧力を検知することにより、処理空間20側から上部チャンバー23側へのHFEの漏れを監視する役割を果たす。
【0041】
上部チャンバー23の上面側中央部には、ベアリングハウジング234を介して回転軸235が接続されており、この回転軸235後の上端部には例えば天板部材41の上面に固定された駆動機構236が設けられている。この駆動機構236は、鉛直軸周り時計回り及び反時計回りの両方向に上部チャンバー23を予め決められた角度だけ回転させる機能を備えており、図5(a)に示す下部チャンバー21側の開口部に上部チャンバー23が嵌入した状態の位置と、図5(b)に示す係止用突起部211と被係止用突起部231とが上下に重ね合わされる位置との間で上部チャンバー23を回転させることができる。従って駆動機構236は上部チャンバー23を移動させる第2の駆動機構の一部を構成しているといえる。図中の237は、上部チャンバー23を回転させる際に、上部チャンバー23を貫通するHFE供給路51及びHFE排出路54が走行する走行軌道である。
【0042】
また図2に示すように内部チャンバー22の保持棒222は上部チャンバー23の天井面を貫通して天板部材41に接続されており、ベアリングハウジング234は上部チャンバー23を保持棒222周りに回転可能に保持するベアリング機構を内蔵している。
【0043】
そして上部チャンバー23の周囲に設けられた各被係止用突起部231は、図5(b)に示すように係止用突起部211と被係止用突起部231とが上下に重ね合わさったとき、被係止用突起部231が係止用突起部211の係止面212にて係止されるための被係止面232をその上端面側に備えている。図3に示すように被係止用突起部231の被係止面232は、当該被係止面232の高さ位置が、例えば上部チャンバー23を上面側から見たときの時計回りの向きに徐々に低くなる傾斜面として構成されている。
【0044】
既述のように係止用突起部211の係止面212についても上部チャンバー23を上面側から見たときの時計回りにその高さ位置が徐々に低くなる傾斜面が形成されており、これら2つの面212、232は、上下に重ね合わさったとき互いに密着する。この結果、被係止用突起部231を上方向に移動させようとする力に対抗して被係止面232が係止面212にて係止される。
【0045】
上部チャンバー23のさらに上方位置にはロックプレート24が設けられており、ロックプレート24は本実施の形態の規制部材に相当する。ロックプレート24は図3、図4に示すように、円板の側壁面に、当該円板の径方向外側へ向けて突出する例えば6個のロック部材241が設けられており、これらロック部材241はロックプレート24の外周面の周方向に沿って等間隔に配置されている。各ロック部材241は、図5(b)に示すように下部チャンバー21の係止用突起部211と上部チャンバー23の被係止用突起部231を上下に重ね合わせた状態において、これらの部材の周方向左右両側に形成される隙間部230に嵌り込む形状に形成されている。またロック部材241の高さは、当該ロック部材241を隙間部230に嵌め込んだ状態において、ロック部材241の下端が被係止用突起部231の側面を押さえることが可能な位置まで到達できる高さに形成されている。
【0046】
図2に示すようにロックプレート24は、支持棒242を介して、天板部材41上に固定された例えば2個の駆動機構243により保持されており、当該天板部材41の直下の位置と、既述の隙間部230にロック部材241を挿入した位置との間を上下に移動させることができる。ここで図3、図4に示す244はHFE供給路51及びHFE排出路54を貫通させるための貫通孔である。
【0047】
また超臨界処理装置1は、図2に示すように制御部6に接続されている。制御部6は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には超臨界処理装置1の作用、つまり、超臨界処理装置1内にウエハWを搬入し、各チャンバー21〜23を移動させて処理空間20を形成し、ウエハWの超臨界乾燥を実行する動作や当該処理期間中、処理空間20からのガスの漏れを監視する動作などに係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0048】
以上に説明をした構成を備えた超臨界処理装置1の作用について以下に説明する。まず、図1にて説明した洗浄装置8による洗浄処理を終え、表面にHFEが液盛りされた状態で搬送装置により搬送されてきたウエハWが超臨界処理装置1の本体を格納する不図示の筐体内に進入してくる。
【0049】
このとき超臨界処理装置1においては、図6に示すように内部チャンバー22、上部チャンバー23及びロックプレート24は、下部チャンバー21の上方の開放位置まで退避して待機している。またウエハ保持機構3については、ウエハ保持部34が下部チャンバー21の開口部よりも上方に飛び出す位置までリフター35を上昇させ、また冷却プレート31を下部チャンバー21の底板部から浮かした位置にて当該下部チャンバー21を冷却している。
【0050】
処理対象のウエハWを搬入してきた搬送装置は、ウエハWを保持する不図示のピックをウエハ保持部34と交差させてウエハWをウエハ保持部34に受け渡し、超臨界処理装置1の外部へと退避する。しかる後、超臨界処理装置1は、リフター35及び冷却プレート31を降下させると共にウエハWを冷却プレート31上に載置して、処理空間20となる凹部210内にウエハWを格納する。
【0051】
またこの動作と並行して天板部材41全体を降下させ、天板部材41に保持された内部チャンバー22、上部チャンバー23並びにロックプレート24を下部チャンバー21側へと下方移動させる。そして、図5(a)に示したように上部チャンバー23の各被係止用突起部231が下部チャンバー21の係止用突起部211の間を通り抜けるよう上部チャンバー23を下部チャンバー21の開口部に嵌入させて、さらに天板部材41を降下させ、図8の斜視図に模式的に示すように下部チャンバー21の底板部上に内部チャンバー22及び上部チャンバー23が載置された状態となる。
【0052】
この結果、図10に示すように下部チャンバー21の底板部に形成された凹部210が閉鎖位置に到達した内部チャンバー22により覆われて処理空間20が形成され、ウエハWが処理空間20内に格納された状態となる。既述のように押しバネ223は、荷重がかかっていない状態で伸びる方向に付勢されているので、内部チャンバー22はこの押しバネ223が退縮する作用により下部チャンバー21側へ押し付けられてO‐リング216を押しつぶして処理空間20を密閉する。
【0053】
このように本実施の形態に係る超臨界処理装置1においては、下部チャンバー21上に内部チャンバー22が載置されるだけで処理空間20が形成されるので、下部チャンバー21と内部チャンバー22とが擦れ合う動作が無く、パーティクルを殆ど発生することなくウエハWを処理空間20内に格納することができる。また閉止された処理空間20内に処理対象のウエハWが格納された状態では、仮に処理空間20の外側にパーティクルが存在することがあったとしても、このパーティクルが処理空間20内に進入してウエハWを汚染するおそれは殆どないと考えられる。さらに図10には示していないが、押しバネ223によって内部チャンバー22が下部チャンバー21側へと押し付けられることにより、内部チャンバー22の上面と上部チャンバー23の押さえ面233との間には僅かな隙間が形成され、この後の上部チャンバー23を回転させる動作を実行するにあたって内部チャンバー22の存在が障害とならないようになっている。
【0054】
こうして内部チャンバー22及び上部チャンバー23が下部チャンバー21上に載置されたら、上部チャンバー23を回転させ、図5(b)に示すように下部チャンバー21の係止用突起部211の下方空間まで上部チャンバー23の被係止用突起部231を移動させる。このとき被係止用突起部231の動作を詳細に見ると、図7(a)に示すように係止用突起部211の係止面212は、被係止用突起部231が近づいてくる方向へ向けて徐々に高くなっており、また被係止用突起部231の被係止面232は、係止面212に近づいていく方向に向けて徐々に低くなっている。そして、被係止用突起部231の被係止面232は、被係止用突起部231が係止用突起部211の下方空間に進入する動作の途中にて係止用突起部211の係止面212と接触し、この係止面212に案内されて下方側に押し付けられる。
【0055】
こうして被係止用突起部231が係止面212に案内される動作に伴って、上部チャンバー23全体が下部チャンバー21の底板部側に押し付けられ、図10に示すようにO‐リング214を押しつぶして下部チャンバー21と上部チャンバー23とを密接させ、上部チャンバー23内に密閉された空間が形成される。また上部チャンバー23が下部チャンバー21側に押し付けられることにより、内部チャンバー22の上面と上部チャンバー23の押さえ面233との間に形成されていた隙間が無くなり、押さえ面233によって内部チャンバー22がさらに下部チャンバー21側に押し付けられる。
【0056】
以上の動作が実行されるにあたっては、下部チャンバー21側の係止面212によって被係止用突起部231の被係止面232が下方側へと案内されながら上部チャンバー23が回転し、O‐リング214を押しつぶす。
【0057】
これらの動作の結果、図9の斜視図に模式的に示すように、各係止用突起部211及び被係止用突起部231が上下に重なった状態となり、これらの部材211、231の左右両側に隙間部230が形成されたら、ロックプレート24の駆動機構243を駆動させ、ロックプレート24を降下させて図7(b)に示すようにロック部材241を隙間部230に挿入する。この動作により図7(c)、図11に示すように被係止用突起部231の両側面がロック部材241の側面にて押さえられるので、上部チャンバー23の回転動作が規制される。
【0058】
こうして処理空間20及び上部チャンバー23の内側の空間が密閉されたら、HFE供給路51及びHFE排出路54の開閉バルブ52、55を開として(図12中、「O」と表示してある)HFE供給部53よりHFEを供給して処理空間20内の雰囲気をHFEにて置換し、然る後、2つの開閉バルブ52、55を閉じて処理空間20を密閉する。次いで冷却プレート31の冷却状態を解除し、ウエハW及び処理空間20内のHFEを加熱することにより処理空間20内が高温、高圧となって超臨界状態となる。
【0059】
この結果、ウエハWの表面に付着していた液体のHFEが超臨界状態のHFEと渾然一体となり、ウエハWの表面に表面張力が働くことなくパターン倒れを発生させずに当該液体が除去されて超臨界乾燥が実行される。このとき処理空間20内は高圧となるので、下部チャンバー21と内部チャンバー22との間には両チャンバー21、22を上下に離間させようとする力が働く。しかし内部チャンバー22は上部チャンバー23によって押さえられており、この上部チャンバー23に設けられた被係止用突起部231の被係止面232は、下部チャンバー21側の係止用突起部211の係止面212にて係止されているので、2つのチャンバー21、22を上下に離間させようとする力は、当該係止用突起部211に受け止められて、処理空間20の密閉状態を維持することができる。
【0060】
また上下に重なる係止用突起部211と被係止用突起部231との左右両側には、ロックプレート24のロック部材241が挿入されており、係止面212-被係止面232間の係合状態が解除される方向への上部チャンバー23の回転を規制している。このため、処理空間20内に働く力が既述の係合状態の解除方向に上部チャンバー23を回転させようとしても、当該動作をロック部材241によって規制し、上部チャンバー23内及び処理空間20の密閉状態を維持することができる。
【0061】
また本例に係る超臨界処理装置1では、処理空間20の周囲に密閉された上部チャンバー23内の空間が形成されていることにより、仮に下部チャンバー21と内部チャンバー22との間のO‐リング216が寿命に達し、処理空間20からHFEが漏れたとしても、処理空間20から漏れたHFEは上部チャンバー23内の空間に充満し、当該空間の圧力変化として圧力検知部62により直ちに検知することができる。
【0062】
一方、上部チャンバー23が密閉された空間を形成しない構成を採用した場合、例えば単なる平板により内部チャンバー22を上面側から押さえるなどの構成とした場合には、処理空間20から漏れたHFEは周囲に拡散してしまう。このため例えばガス検知器などを設けた場合であっても相当量の漏れが進行するまで漏れの発生を検知することができないか、あるいは検知感度の高い高価なガス検知器を設置する必要が生じることとなる。従って処理空間20の外側に気密な上部チャンバー23の空間が形成されていることにより、処理空間20からの流体の漏れを迅速且つ簡便に検知することができる。但し、ガス漏れなどを速やかに検知する必要がない場合や高感度のガス検知器を設置可能な場合などには、図3などに示した円筒形状の上部チャンバー23に替えて例えば円板形状の押圧部材の周囲に被係止用突起部231を設けてもよいことは勿論である。
【0063】
以上に説明した動作により、予め設定した時間だけウエハWの超臨界乾燥を実行したら、HFE排出路54の開閉弁55を開として処理空間20内のHFEを排出し、超臨界乾燥を終える。このときHFE供給路51側からパージガスを供給するなどしてHFEの排出を促進してもよい。そして、処理開始時とは反対の順番でロックプレート24を上昇させ、上部チャンバー23を反対方向に回転させた後、天板部材41を上昇させて内部チャンバー22及び上部チャンバー23を下部チャンバー21の上方に退避させて処理空間20を開放する。次いでリフター35を上昇させ、外部の搬送装置に処理後のウエハWを受け渡し、一連の動作を終える。
【0064】
本実施の形態に係る超臨界処理装置1によれば以下の効果がある。下部チャンバー21及び内部チャンバー22を上下に密閉状態とし、上部チャンバー23により上内部チャンバー22部材を押圧した状態で上部チャンバー23側の被係止用突起部231の被係止面232が下部チャンバー21側の係止用突起部211の係止面212にて係止されるように各チャンバー22、23を移動させるだけで処理容器を密閉することができるので、超臨界乾燥におけるウエハWの搬入から搬出までの動作を迅速に行うことができる。またこの処理容器は2つのチャンバー21、22を上下に重ね合わせるだけで構成され、これらのチャンバー21、22とは異なる上部チャンバー23を用いて両チャンバー21、22を固定するので、下部チャンバー21と内部チャンバー22との密接面が互いに擦れ合う動作が発生せず、パーティクルが発生しにくい構造となっている。このため処理容器内にて超臨界流体を利用した乾燥処理が行われるウエハWの汚染を抑えて良好な処理結果を得ることができる。
【0065】
ここで下部チャンバー21の係止用突起部211が突出する方向は下部チャンバー21の内周側に向けて突出する場合に限定されず、図13(a)に模式的に示すように下部チャンバー21の外周側へ向けて突出させてもよい。また、下部チャンバー21の形状についても内部チャンバー22を格納可能な円筒形状に形成される場合に限定されず、図13(b)や図13(c)に模式的に示すように下部チャンバー21は扁平な板状の部材にて形成し、例えば上部チャンバー23を円筒形状としてもよい。ここで図13(b)は上部チャンバー23の被係止用突起部231を円筒の外周側へ向けて突出させた場合、図13(c)は被係止用突起部231を円筒の内周側へ向けて突出させた場合を示している。さらには図14に示すように下部チャンバー21の係止用突起部211が下部チャンバー21の側壁部の上端面からL字状に伸びだし、当該下部チャンバー21の周方向に沿って伸びる係止面212を形成してもよい。なお図13(a)〜図13(c)、図14の各図においてはロックプレート24の記載は省略してある。
【0066】
以上に説明した下部チャンバー21や上部チャンバー23は、平面形状が円形に形成されており、これらのチャンバーを周方向に回転させることによって係止用突起部211と被係止用突起部231とを交差させる構成となっているが、例えば図15に示すように下部チャンバー21や上部チャンバー23の平面形状を矩形としてもよい。この場合にも、下部チャンバー21と上部チャンバー23とを互いに横方向に並進移動させることにより一列に互いに間隔をおいて設けられた係止用突起部211と被係止用突起部231とを交差させることができる。
【0067】
そして以上に説明した全ての超臨界処理装置1につき、下部チャンバー21、内部チャンバー22、上部チャンバー23並びにロックプレート24の位置関係を上下反転させてもよい。例えば図2に記載の超臨界処理装置1を上下反転させた場合には、各符号に対応する部材は、23が下部チャンバー、22が内部チャンバー、21が上部チャンバーとなる。そして例えば内部チャンバー22上にウエハWを載置して下部チャンバー23を上部チャンバー21側に上昇させて、内部チャンバー22を上部チャンバー21へ向けて下方側から押圧する構造としてもよい。
【0068】
さらにまた、処理空間20内にて実施されるウエハWに対する高圧処理は、超臨界流体を利用してウエハWに付着した液体を乾燥させる処理に限定されない。例えば超臨界状態の二酸化炭素中に成膜物質の流体を注入してこれらの物質を反応させ、比較的低温の条件下で成膜を行う技術などにも本発明は適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
W ウエハ
1 超臨界処理装置
20 処理空間
21 下部チャンバー
211 係止用突起部
212 係止面
22 内部チャンバー
223 押しバネ
23 上部チャンバー
231 被係止用突起部
232 被係止面
24 ロックプレート
241 ロック部材
41 天板部材
6 制御部
61 給電部
62 圧力検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部材と下部材とを重ね合わせることにより形成される処理空間内にて、基板に対して高圧の処理流体により処理を行う高圧処理装置において、
前記処理空間の外側にて前記下部材に固定して設けられ、前記下部材の周方向に沿って互いに間隔をおいてあるいは一列に互いに間隔をおいて複数配置されると共に、各々横方向に突出してその下面が係止面を形成する係止用突起部と、
前記上部材を下部材側に押圧するための押圧部材と、
この押圧部材に前記複数の係止用突起部に夫々対応して設けられ、各々横方向に突出してその上面が前記係止面に係止される被係止面を形成する被係止用突起部と、
前記上部材と下部材とを重ね合わせて、処理空間を閉じた状態とする閉鎖位置と、これら上部材及び下部材を上下方向に離間した開放位置と、の間で上部材及び下部材を相対的に昇降させる第1の駆動機構と、
前記上部材及び下部材が閉鎖位置にあるときに、前記押圧部材の被係止用突起部をその上方側から前記係止用突起部間の間隙を介して係止用突起部の下方空間に臨むように位置させ、次いで被係止用突起部を係止用突起部の下方空間に進入させて、押圧部材が上部材を押圧した状態で前記被係止面が前記係止面に係止されるように、前記押圧部材と下部材とを相対的に移動させる第2の駆動機構と、を備えたことを特徴とする高圧処理装置。
【請求項2】
前押圧部材の被係止面が各係止用突起部の係止面に係止された状態を維持するため、間隔をおいて隣り合う係止用突起部同士の隙間に上下方向に挿入されて、前記被係止面が係止面に係止される状態とは反対の方向への前記押圧部材と下部材との相対的な移動を規制する規制部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の高圧処理装置。
【請求項3】
前記係止用突起部の係止面の高さ位置は、前記被係止用突起部の被係止面がこの係止面に係止されるために近づいてくる方向に向けて徐々に高くなっており、また前記被係止面の高さ位置は、当該係止面に近づいていく方向に向けて徐々に低くなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の高圧処理装置。
【請求項4】
前記第1の駆動機構により昇降する昇降部材と、この昇降部材と上部材との間に介在すると共に上部材及び下部材が閉鎖位置にあるときには縮退された状態となって上部材を下部材に押し付けるように付勢される付勢手段と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の高圧処理装置。
【請求項5】
前記押圧部材は、前記下部材と一体となって上部材全体を格納可能な容器形状に形成され、被係止用突起部の被係止面が係止用突起部の係止面にて係止された状態にて、これら下部材と上部材とが重ね合わされて前記処理空間を閉じた状態とする面の外周領域には、下部材と押圧部材とが密接する面が形成されることを特徴とする請求項1ないし4に記載の高圧処理装置。
【請求項6】
前記高圧の処理流体は、超臨界状態の処理流体であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の高圧処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6に記載の高圧処理装置において、
前記係止用突起部は、前記下部材に固定して設けられる代わりに前記上部材に固定して設けられ、
前記押圧部材は、上部材を下部材側に押圧する代わりに下部材を上部材側に押圧するように構成され、
係止用突起部及び被係止用突起部の各々の位置関係は、請求項1ないし6に記載の位置関係と上下が逆になっていることを特徴とする高圧処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−9299(P2011−9299A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149022(P2009−149022)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】