説明

高圧水噴射洗浄装置

【課題】 高圧水噴射洗浄装置において、製造ラインで要求されるクリーン度への対応が容易であること、均一な洗浄を可能にすること、構造を簡単にし、コストダウンを図れること、ならびに洗浄時の装置の振動を低減することである。
【解決手段】 洗浄対象物を洗浄装置本体に対し一定速度で移動させながら、高圧水噴射ノズルから一斉に高圧水を前記洗浄対象物に噴射させて洗浄する装置で、洗浄対象物を横切る長さ以上の長さを有する支持フレーム6の一面に、複数の高圧水噴射ノズル7aを洗浄対象物に向けかつ間隔をあけて配列し、支持フレーム6の両端延長部11をその延長面に直交する駆動軸15を介して偏心回転可能に支持するとともに、駆動軸15を駆動装置17にて回転させることにより支持フレーム6が偏心回転するように構成し、回転円運動する各高圧水噴射ノズル7aから高圧水を一斉に噴射させるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル、プラズマパネル、有機EL(エレクトリックルミナンス)パネルなどのFPD(フラットパネルディスプレイ)やガラスや半導体ウエハーなどの平坦な板状物を高圧水を噴射して洗浄する高圧水噴射洗浄装置(ウォータジェット洗浄機ともいう)に関するもので、詳しくは、液晶ディスプレイや半導体ウエハーなどの製造製造工程で、ガラス基板表面の微小な粒子や有機物や金属不純物といった歩留り低下の原因となる汚濁物質を、高圧噴射水にて除去する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の高圧水噴射洗浄装置は、図25(a)に示すように、一つのノズル孔73をノズルの中心に設けた7台の高圧水噴射ノズル72をノズルホルダー71の円周方向に等間隔に配設し、このノズルホルダー71を、その中心軸心を中心に回転(公転)させて洗浄する1組の洗浄ガン(ウォータジェットガン)70が構成される。図24に示すように、この洗浄ガン70の複数台(例えば十数台)をフレーム74上の長手方向に一定間隔で配列し、ガラス板などの洗浄対象物Xを前記各洗浄ガン70から噴射される高圧噴射水を横切るように一定の速度で移動させ、洗浄しようとするものである。図24中の符号75は駆動装置(例えばサーボモータ)を示し、図25(b)は上記1台の高圧水噴射ノズル72による洗浄軌跡を表した正面図である。
【0003】
上記高圧水噴射洗浄装置に使用される洗浄ガンは、例えば、ケーシングの先端に高圧水噴射ノズルを設けたホルダーを有し、該ホルダーに高圧水チューブを連結した高圧水噴射洗浄装置において、前記ケーシングの内部に回転自在に支持した支持軸を設け、該支持軸に軸受面が揺動可能な軸受を設け、該軸受に前記ホルダーの基部側を回転自在に支持し、該ホルダーの後端面と前記支持軸との間に該支持軸とともに回転して該ホルダーの後端面と摺接する斜板を設けたことを特徴とするもので、この洗浄ガンによれば、ケーシングの内部に設けられた回転自在な支持軸の軸受に、高圧水噴射ノズルを設けたホルダーの基部側を回転自在に支持し、このホルダーの後端面と支持軸との間に設けた斜板を支持軸と共に回転させると、この斜板の傾斜に沿って摺接するホルダーは高圧水チューブにより回転が抑止されて円錐状に公転する。この時、ホルダーの傾斜は軸受面の揺動により吸収されるので、ホルダーの先端に設けた高圧水噴射ノズルにより高圧水を円錐状に噴射させて高圧水噴射洗浄作業が行える(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
その他の高圧水噴射洗浄装置に関する先行技術に、洗浄コンベアに搭載されて洗浄室内に移送される被洗浄材に高圧水を噴射する複数のノズルを有する高圧水噴射ノズルヘッドが洗浄コンベアの上方側に設けられ、該高圧水噴射ノズルヘッドが回転しながら各ノズルより高圧水を噴射するようにした洗浄装置であって、高圧水噴射ノズルヘッドは複数個設けられると共に、各高圧水噴射ノズルヘッドを夫々独立して回転駆動する各モーターが前記洗浄室から隔離された位置に設置された構造の洗浄装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許2705719号公報
【特許文献2】特開2002−166235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の高圧水噴射洗浄装置では、次のような理由で要求されるクリーン度や高速化ならびに洗浄の均一化などに対応できない。
【0006】
・各洗浄ガンごとに1台の駆動モータが組み込まれており、したがって軸受けやタイミングベルトなどの回転駆動部、つまり発塵要素が洗浄領域内に位置している。このため、各洗浄ガンの主に回転シール部から発塵するので、例えば、液晶パネルの製造ラインでは、クラス10(米国連邦規格209D、以下同じ)程度のクリーン度が要求されるが、対応が困難である。
【0007】
・各ノズルホルダー(高圧水噴射ノズル)の回転速度は1500rpmで、高圧噴射水の軌跡は図25(b)に示すように、洗浄領域の幅方向(長手方向に)に濃淡が生じて洗浄強度にムラがあり、かつ洗浄に不均一な部分が残る。一方、液晶パネルはガラス面に回路基板が実装されているため、洗浄、特に洗浄用高圧噴射水の強さが不均一になると回路基板などを損傷するおそれがある。図25(b)は一つのノズルによる洗浄用噴射水の軌跡で、これがノズルの台数だけ一部を重ね合わされた幅(洗浄幅)により洗浄する。
【0008】
・各洗浄ガンにサーボモータや回転機構を組み込む必要があるため、コストダウンを図るうえで妨げになっている。また、洗浄領域内への装置の組み込みや配管・配線作業に手間がかかる。
【0009】
・特許文献2に記載の装置は、足場板や足場枠などの建築用架設資材を洗浄するための洗浄装置で、本願発明が対象とする洗浄物とは洗浄対象物が異なる上、高いクリーンどの要求される洗浄には不向きである。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、高圧水噴射洗浄装置において、製造ラインで要求されるクリーン度への対応が容易であること、均一な洗浄を可能にすること、構造を簡単にし、コストダウンを図れること、ならびに洗浄時の装置の振動を低減することを課題としている。また、高圧水噴射洗浄方法も併せて提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために本発明に係る高圧水噴射洗浄装置は、洗浄対象物を洗浄装置本体に対し一定速度で移動させながら、前記洗浄装置本体の高圧水噴射ノズルから高圧水を前記洗浄対象物に噴射させて洗浄する高圧水噴射洗浄装置であって、前記洗浄対象物を横切る長さ以上の長さを有する共通(一つ)の支持フレームの一面に、複数の高圧水噴射ノズルを前記洗浄対象物に向けかつ相互に間隔をあけて配列し、前記支持フレームの両側延長端部を、それぞれ同支持フレームの前記一面またはその延長面に直交する偏心回転軸および軸受部を介して偏心回転可能に支持するとともに、前記偏心回転軸を駆動装置にて回転させることにより前記支持フレームが旋回円運動するように構成し、前記支持フレームに沿って前記各高圧水噴射ノズルに高圧水を供給し、定速移動する前記洗浄対象物に対し旋回円運動する各高圧水噴射ノズルから噴射させるようにしたことを特徴とする。
上記の構成を有する請求項1に係る高圧水噴射洗浄装置によれば、複数の高圧水噴射ノズルを共通の一つの支持フレームの一面に配列し、その両側延長端部で偏心回転可能に支持し、駆動装置で偏心回転させるようにし、複数のノズルが位置する洗浄領域の外側に偏心回転駆動部を配置できるから、洗浄領域には発塵する部材がなく、したがってクリーン度の高い洗浄が可能になる。このため、FPDや半導体ウエハーなどの極めて高いクリーン度(10〜100以下)が要求される洗浄に、容易に対応できる。また、複数の高圧水噴射ノズルを共通の支持フレームの一面に配列し、旋回円運動(ある中心位置を中心に偏心量(半径)rで真円を描くように旋回)させながら洗浄対象物に高圧水を噴射して洗浄するので、例えば、複数のノズルを等間隔に配列して各ノズルから高圧水を一直線状(ストレート)に噴射させることによって、洗浄対象物に対し洗浄強さを一定にして均一な洗浄が可能になるため、ガラス基板のような均一な洗浄が要求される部材を洗浄する際にも、一定の洗浄力が保て、洗浄対象物を損傷させるおそれがない。さらに、各ノズルを駆動装置で個々に回転(旋回円運動)させて洗浄する構造に比べて、構造が簡単で、装置の組立が容易で、配管や配線作業に手間がかからず、コストダウンが図れる。
【0012】
請求項2に記載のように、前記支持フレームの両側延長端部における前記駆動装置を含めた偏心回転駆動部を、前記洗浄対象物の洗浄領域の外側へ位置させることが好ましい。
【0013】
このように構成することにより、洗浄領域の外側に発塵が生じるおそれのある偏心回転駆動部を配置できるので、洗浄領域内のクリーン度の向上に容易にかつ十分に対応できる。
【0014】
請求項3に記載のように、前記各高圧水噴射ノズルの中心位置にノズル孔を、同ノズル先端面に対し直交するように穿設し、前記ノズル孔の基端側に前記支持フレームに沿って配置した高圧水供給路の一端を接続し、前記高圧水供給路の他端を可撓性の金属製配管を介して高圧水源に接続することができる。
【0015】
このように構成することにより、高圧水源から高圧水を旋回円運動する各ノズルへ金属配管で同じく旋回円運動する洗浄装置本体の変位を吸収しながら均一に供給することができ、高圧水を洗浄対象物に全体的に均一に噴射し、効率のよい洗浄ができる。
【0016】
請求項4に記載のように、前記支持フレームの、前記高圧水噴射ノズルと反対の面に、支持フレームの中心軸線を挟んで前記高圧水噴射ノズルの全体質量と釣り合うようにバランスウエイトを取り付けることが好ましい。
【0017】
このように構成することにより、装置本体の重心を支持フレームの、高圧水噴射ノズルと反対面との間の中心軸線上に位置させられるので、高圧水噴射洗浄装置の運転時、特に装置本体の旋回円運動時において装置本体のバランスが図られ、装置本体に不要なモーメントが発生するのを防いで、外部(特に偏心回転駆動部)への振動の伝達を低減できるから、装置全体の振動を低減できる。
【0018】
請求項5に記載のように、前記偏心回転駆動部が、前記偏心回転軸を偏心位置に一体回転可能に接続する回転軸偏心部とこの回転軸偏心部の周囲を回転可能に支持する前記軸受部としての軸受ハウジング部とを備え、この軸受ハウジング部は前記支持フレームの一端に連結板を介して一体に連結することができる。
【0019】
このように構成することにより、洗浄装置本体の両側延長端部において偏心回転駆動部により偏心回転力を発生させるので、複数のノズルを備えた洗浄装置本体が円滑に旋回円運動する。
【0020】
請求項6に記載のように、前記偏心回転軸は、前記軸受ハウジング部内に軸受を介して回転可能に配置された円柱体状の回転軸偏心部の中心位置から偏心した位置に一体回転可能に接続することができる。
【0021】
このように構成することにより、円柱体状の回転軸偏心部の中心位置に対し比較的大きな偏心量を確保することが容易なうえに、回転軸偏心部の周囲を軸受ハウジング部を介して回転可能に支持した状態で回転軸(偏心回転軸)の回転力を回転軸偏心部に伝達して偏心回転させるので、回転軸偏心部がスムーズに回転し、洗浄装置本体を旋回円運動させられる。
【0022】
請求項7に記載のように、前記偏心回転軸および前記軸受ハウジング部を挟んで上下対称位置に、それぞれ前記回転軸偏心部の中心軸線を中心に前記支持フレームの旋回方向と対称に同支持フレームの遠心力に釣り合うようにバランスウエイトを、前記駆動軸と一体回転可能に取り付けることが好ましい。
【0023】
このように構成することにより、装置本体の旋回円運動時に、装置全体において基礎反力の発生を抑制することができる。
【0024】
請求項8に記載のように、 前記洗浄対象物の洗浄領域をクリーン室にて取り囲むとともに、同クリーン室両側の端壁にそれぞれ前記連結板の挿通口を設け、各挿通口の開口周縁部と前記各挿通口から突出する前記連結板の一部周囲とを蛇腹式袋状のシール部材の両端開口周縁部にて接続することができる。
【0025】
このように構成することにより、旋回円運動する洗浄装置本体の連結板の変位をシール部材が変形して吸収し、挿通口を確実にシールすることができる。
【0026】
請求項9に記載のように、前記洗浄対象物の洗浄領域をクリーン室にて取り囲むとともに、同クリーン室両側の端壁にそれぞれ前記連結板の挿通口を設け、各挿通口の外方において前記各挿通口を含め前記各挿通口から突出する前記連結板の一部分を取り囲むシール室を設け、各シール室側方の端壁に前記挿通口と一連に挿通可能に前記連結板の第2の挿通口を設けるとともに、前記各シール室の上壁に排気口を設け、前記各シール室内において前記挿通口および前記第2挿通口の近傍に、一対のU字形で板バネ状のシール部材を一端を前記シール室内壁に固定し、開放端側が前記連結板の両側面に摺接するように相対向して設けることができる。
【0027】
このように構成することにより、請求項8に記載のシール機構に比べて構造は複雑になるが、挿通口をシールすることができる。
【0028】
請求項10に記載のように、前記洗浄対象物の洗浄領域をクリーン室にて取り囲むとともに、同クリーン室両側の端壁にそれぞれ前記連結板の挿通口を設け、この挿通口に対応する開口を長手方向に連続して有し両端を開口した内筒とこの内筒とに間隔をあけて周囲を取り囲み一端を開口した外筒との二重筒形構造の固定式シール室からなり、このシール室の前記内筒には多数の小孔を穿設するとともに、前記外筒には複数の小孔を穿設し、前記シール室の外筒の開口端側を前記クリーン室の端壁にその挿通口と内筒の開口とが連通するように連設することができる。
【0029】
このように構成することにより、請求項8および請求項9に記載のシール機構と相違し、可動するつまり摩耗するシール部材が不要になり、また構造的にも比較的簡略化できる。
【0030】
上記の課題を解決するために請求項11に係る高圧水噴射洗浄装置は、洗浄対象物を洗浄装置本体に対し一定速度で移動させながら、前記洗浄装置本体の高圧水噴射ノズルから高圧水を前記洗浄対象物の両面に噴射させて洗浄する高圧水噴射洗浄装置であって、前記洗浄対象物を横切る長さ以上の長さを有し、前記装置本体の厚み方向の中心軸線を挟んで平行に配置される一対の支持フレームの対向面に、それぞれ複数の高圧水噴射ノズルを相対向させかつ相互に間隔をあけて配列し、前記各支持フレームの両端部(両側部)を一体に結合するとともに、両端(両側)結合部からそれぞれ前記装置本体の中心軸線に沿って両側方へそれぞれ連結板を延設し、前記各連結板の端部を、その一面に直交する偏心回転軸および軸受部を介して偏心回転可能に支持するとともに、前記偏心回転軸を駆動装置にて回転させることにより前記支持フレームが旋回円運動するように構成し、前記各支持フレームに沿って前記各高圧水噴射ノズルに高圧水を供給し、定速移動する前記洗浄対象物の両面に対し旋回円運動する各高圧水噴射ノズルから噴射させるようにしたことを特徴とする。
【0031】
上記の構成を有する高圧水噴射洗浄装置によれば、上記した請求項1に記載の高圧水噴射洗浄装置と同様な作用効果が達成されるほか、洗浄対象物の両面を同時に洗浄できる上に、洗浄装置本体が中心軸線を挟んでバランスが図られるので、請求項3に記載したようなバランスウエイトを取り付ける必要がなく、構造をより簡素化できる。
【0032】
請求項12に記載のように、前記両側の連結板の端部における前記駆動装置を含めた偏心回転駆動部を、前記洗浄対象物の洗浄領域の外側へ位置させることが好ましい。
【0033】
このように構成することにより、請求項2記載の装置と同様に、洗浄領域の外側に発塵が生じるおそれのある偏心回転駆動部を配置できるので、洗浄領域内のクリーン度の向上に容易にかつ十分に対応できる。
【0034】
請求項13に記載のように、前記各高圧水噴射ノズルの中心位置にノズル孔を、同ノズル先端面に対し直交するように穿設し、前記ノズル孔の基端側に前記支持フレームに沿って配置した高圧水供給路の一端を接続し、前記高圧水供給路の他端を可撓性の金属製配管を介して高圧水源に接続することができる。
【0035】
このように構成することにより、請求項3に記載の装置と同様に、高圧水源から高圧水を旋回円運動(円を描くように旋回)する各ノズルへ金属配管により同じく旋回円運動する洗浄装置本体の変位を吸収しながら均一に供給することができ、高圧水を洗浄対象物に全体的に均一に噴射し、効率のよい洗浄ができる。
【0036】
請求項14に記載のように、前記偏心回転駆動部が、前記偏心回転軸を偏心位置に一体回転可能に接続する回転軸偏心部とこの回転軸偏心部の周囲を回転可能に支持する前記軸受部としての軸受ハウジング部とを備え、この軸受ハウジング部は前記支持フレームの一端に連結板を介して一体に連結することができる。
【0037】
このように構成することにより、請求項5に記載の装置と同様に、洗浄装置本体の両側延長端部において偏心回転駆動部によりそれぞれ偏心回転力を発生させるので、複数の各ノズルが洗浄装置本体と同時に円滑に旋回円運動する。
【0038】
請求項15に記載のように、前記偏心回転軸は、前記軸受ハウジング部内の軸受を介して回転可能に配置された円柱体状の回転軸偏心部の中心位置から偏心した位置に一体回転可能に接続することができる。
【0039】
このように構成することにより、円柱体状の回転軸偏心部の中心位置に対し比較的大きな偏心量を確保することが容易なうえに、回転軸偏心部の周囲を軸受ハウジング部を介して回転可能に支持した状態で回転軸(偏心回転軸)の回転力を回転軸偏心部に伝達して偏心回転させるので、回転軸偏心部がスムーズに回転し、洗浄装置本体を旋回円運動させられる。
【0040】
請求項16に記載のように、前記偏心回転軸および前記軸受ハウジング部を挟んで上下対称位置に、それぞれ前記回転軸偏心部の中心軸線を中心に前記支持フレームの偏心方向と対称に同支持フレームの遠心力に釣り合うようにバランスウエイトを、前記駆動軸と一体回転可能に取り付けることができる。
【0041】
このように構成することにより、請求項7に記載の装置と同様に、装置本体の旋回円運動時に、装置全体において基礎反力の発生を抑制することができる。
【0042】
請求項17に記載のように、 前記洗浄対象物の洗浄領域をクリーン室(洗浄室)にて取り囲むとともに、同クリーン室の両側壁にそれぞれ前記連結板の挿通口を設け、各挿通口の開口周縁部と前記各挿通口から突出する前記連結板の一部周囲とを蛇腹式袋状のシール部材の両端開口周縁部にて接続することができる。
【0043】
このように構成することにより、旋回円運動する洗浄装置本体の連結板の変位をシール部材が変形して吸収し、挿通口を確実にシールすることができる。
【0044】
請求項18に記載のように、 前記洗浄対象物の洗浄領域をクリーン室(洗浄室)にて取り囲むとともに、同クリーン室の両側壁にそれぞれ前記連結板の挿通口を設け、各挿通口の外方において前記各挿通口を含め前記各挿通口から突出する前記連結板の一部分を取り囲むシール室を設け、各シール室の側壁に前記挿通口と一連に前記連結板の第2の挿通口を設けるとともに、前記各シール室の上壁に排気口を設け、前記各シール室内の前記挿通口および前記第2挿通口の近傍に、それぞれ一対のU字形で板バネ状のシール部材を開放端側が前記連結板の両側面に摺接するように相対向して配置し、他端側を前記シール室内壁に固定することができる。
【0045】
このように構成することにより、請求項17に記載のシール機構に比べて構造は複雑になるが、偏心回転運動する洗浄装置本体の連結板の変位をシール部材が変形して吸収し、挿通口をシールすることができる。
【0046】
請求項19に記載のように、前記洗浄対象物の洗浄領域をクリーン室にて取り囲むとともに、同クリーン室両側の端壁にそれぞれ前記連結板の挿通口を設け、この挿通口に対応する開口を長手方向に連続して有し両端を開口した内筒とこの内筒とに間隔をあけて周囲を取り囲み一端を開口した外筒との二重筒形構造の固定式シール室からなり、このシール室の前記内筒には多数の小孔を穿設するとともに、前記外筒には複数の小孔を穿設し、前記シール室の外筒の開口端側を前記クリーン室の端壁にその挿通口と内筒の開口とが連通するように連設することができる。
【0047】
このように構成することにより、請求項17および請求項18に記載のシール機構と相違し、可動するつまり摩耗するシール部材が不要になり、また構造的にも比較的簡略化できる。
【発明の効果】
【0048】
本発明に係る高圧水噴射洗浄装置は上記の構成を有するから、下記のような優れた効果を奏する。すなわち、
洗浄対象物を洗浄装置本体に対し一定速度で移動させながら洗浄装置本体の高圧水噴射ノズルから例えば一斉に(あるいは間欠的に)高圧水を洗浄対象物の一面または両面に噴射させて洗浄する高圧水噴射洗浄装置において、製造ラインで要求されるクリーン度への対応が容易であり、洗浄強さが全体的に一定に保たれ均一な洗浄が可能になり、従来の一般的な高圧水噴射洗浄装置に比べて構造を簡単にすることができ、コストダウンが図れるとともに、洗浄時に装置全体の振動を低減することができ、安定した洗浄作業を長期にわたり遂行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下に、本発明に係る高圧水噴射洗浄装置の第1の実施形態について図1〜図15に基づき説明する。
【0050】
図1は本発明の高圧水噴射洗浄装置の第1実施形態を示す、一部を断面で表した正面図、図2は同平面図、図3は同左側面図、図4は図2のC−C断面図である。図5は図1の高圧水噴射洗浄装置を拡大して示す左側面図、図6(a)は図1の向かって左側の支持台とその近傍を拡大して示す正面図、図6(b)は回転軸偏心部と上下の回転軸とを取り出して概略的に示す説明図、図6(c)は図6(b)の平面図、図7は図6(a)の平面図、図8は洗浄装置本体の一部を拡大して示す中央縦断面図、図9は図8のA−A断面図、図10は図8の平面図、図11は図10のノズルヘッド部の底面図、図12(a)はノズルヘッド部の一部を拡大して示す底面図、図12(b)は図12(a)のB−B縦断面図である。
【0051】
これらの図に示すように、本例の高圧水噴射洗浄装置1は、洗浄室(クリーン室)30の下方を横切る機枠2の両側部上に支持台3・3を備えている。各支持台3は支柱3aを備え、両側の支柱3aの上部間が横桁18で結合されている。支柱3aの上部正面に側方より見て略コの字形のブラケット3bおよび支持板3cを介して、洗浄装置本体5が回転可能にボルト3d・3eにより支持されており、洗浄装置本体5は両側の支持台3間に跨って支持されている。また、横桁18の長手方向に間隔をあけて図4に示すように、左右一対の下向きに凹状の保護枠19が洗浄装置本体5の上部を取り囲むように取り付けられている。
【0052】
洗浄装置本体5は、図9に示すように角筒体状のフラットバーからなる中空の支持フレーム(以下、中空フレームという)6を備えており、この中空フレーム6の下面に取付ブラケット8を突設し、多数の高圧水噴射のノズル7aを板状のノズルホルダー7bに千鳥状に等間隔に2列配設したノズルヘッド部7が、取付ブラケット8に下向きにボルト8aにて固定されている。各ノズル7aには、図8・図9・図12のように先端(下端)面の中心位置に直交してノズル孔7cが1つずつ穿設されている。ノズルホルダー7bおよびノズルヘッド部7には、長手方向に沿って高圧水供給路9a・9bが穿設され、図8に示すように高圧水タンク10aから可撓性を有する螺旋状の金属製配管10を介してノズルホルダー7bの高圧水供給路9bの一端に接続され、その高圧水供給路9bからノズルヘッド部7の高圧水供給路9aを通って各ノズル7aのノズル孔7cへ高圧水が供給され、各ノズル7aから一直線状に高圧水が噴射される。なお、金属製配管10は可撓性を備えていれば螺旋状にしなくてもよく、例えば直線状にして配管全体が湾曲するようにしてもよい。
【0053】
本例の場合、洗浄対象物Xがガラス板であり、このガラス板Xは、例えば、ローラコンベヤ40などの搬送装置によって一定速度でノズルヘッド部7の下方を搬送される。このため、ノズルヘッド部7の長さをガラス板Xの幅方向の長さよりもやや長くして洗浄されない箇所が生じないようにしてあり、またノズルヘッド部7が取り付けられる中空フレーム6の長さは、ノズルヘッド部7よりやや長くしている。
【0054】
中空フレーム6の両端には、それぞれ連結板11の一端に固設された取付板11bがボルト11cで一体に連結されている。各連結板11には、軽量化のために円形開口11aが厚み方向に貫通して設けられている。各連結板11の他端(外端)側にはリング状の軸受ハウジング(軸受部)12が一体に形成され、各軸受ハウジング12内には軸受13を介して円柱体状の回転軸偏心部14が回転可能に配装されている。一方、回転軸偏心部14の上下に回転軸(偏心回転軸ともいう)15が軸受ハウジング16内に回転可能に支持されており、これらの上下の各回転軸15は回転軸偏心部14の中心軸線S’から一方(図6では左側)に、例えば数mm〜10数mm偏心した位置に一体回転可能に接続されている。また、左右の各支持台3の上端面には、サーボモータ17が装備されており、このサーボモータ17の駆動軸17aに一体回転可能に回転軸15の上端が連結されている。
【0055】
これにより、左右のサーボモータ17をほぼ同期して(一方が他方に追随するように)回転させることができ、図6(b)(c)に示すように偏心回転軸15はその中心軸線Sが回転軸偏心部14の中心軸線S’に対し偏心して回転するので、中空フレーム6が偏心回転運動すると同時にノズルヘッド部7は旋回円運動(揺動回転)する。つまり、回転軸15の回転で円柱体状の回転軸偏心部14が偏心回転し、軸受ハウジング部(軸受13を含む)12を介して洗浄装置本体5(中空フレーム6やノズルヘッド部7)を旋回円運動させるが、この関係はあたかもクランク機構に近いものである。このため、本例のように左右にサーボモータ17を備えてほぼ同時に駆動力を回転軸15に伝達しない場合、いいかえれば、駆動装置としてのサーボモータ17を一方にだけ設けて、一方の回転軸15を回転させると、洗浄装置本体5の停止状態によっては、回転軸15の回転を開始しようとしても、洗浄装置本体5を旋回円運動させられないおそれがあるが、本例ではそのようなおそれがない。これと同時に、各ノズル7aのノズル孔7cから高圧水が一直線状に噴射され、図23(b)に示すような高圧水の軌跡が被洗浄物の洗浄面に生じて洗浄される。なお、図23(a)に示すように、本例ではノズル7aを相互に等間隔になるように千鳥状に2列配置し、洗浄面の全面にわたり均一性を保つようにしている。また、各ノズル7aの先端面の中心位置に対し直交するノズル孔7cを1つずつ穿設している。そして、この状態で、各ノズル7aは真円形を描くように回転しながら、各ノズル孔7cから直線状に高圧の洗浄液体(超純水や薬液など)を噴射するので、図23(b)に示されるような洗浄水の軌跡を描き、洗浄強度にバラツキのない洗浄作業が達成される。なお、洗浄液体の噴射圧力およびノズルヘッド部7の回転速度は調整可能にしており、洗浄対象物に対応して洗浄条件を最適な状態に設定することができる。
【0056】
ところで、本高圧水噴射洗浄装置1では洗浄装置本体5(ノズルヘッド部7および中空フレーム6を含む)が真円を描くように旋回円運動(揺動回転)するので、中空フレーム6を含む洗浄装置本体5自体のバランスおよび中空フレーム6を含む洗浄装置本体5の旋回円運動時の両側支持台3に対するバランスを含む高圧水噴射洗浄装置1全体のバランスを図ることが重要である。もし、それらのバランスが十分に図れない場合には、高圧水噴射洗浄装置1全体に振動が発生し、洗浄作業が乱れるおそれがある。そこで、本例では、中空フレーム6の厚み方向の中間位置を通る長手方向の中心軸線Mを中心に挟んで、ノズル部7(および高圧水供給路9a・9b)との質量(およびモーメント)のバランスを図るため、フラットバー状のカウンタウエイト21を中空フレーム6の上面に一定間隔をあけて突設した複数のブラケット22に、ボルト22aで取り付けている。この結果、洗浄装置本体5(中空フレーム6を含む)の旋回円運動時に洗浄装置本体5(中空フレーム6を含む)自体には無用なモーメントが発生せず、各ノズル7aがスムーズに真円を描くように旋回する。
【0057】
また、回転軸偏心部14を挟んで上下の回転軸15に対し、洗浄装置本体5の旋回円運動時に生じるモーメントを打ち消すように半円板体状のカウンタウエイト25をそれぞれ一体回転可能に取り付けている。つまり、回転軸15の中心軸線Sを挟んで洗浄装置本体5の揺動回転方向と対称的な位置に、カウンタウエイト25を取り付けており、左右の回転軸15に対してはカウンタウエイト25は同一方向に配置されている。この結果、回転軸15の回転時に、中心軸線Sを挟んで洗浄装置本体5の旋回方向と相対称位置にカウンタウエイト25が変位し、洗浄装置本体5の旋回円運動時に発生しようとするモーメントの発生を打ち消す。したがって、両側の支持台3を含め高圧水噴射洗浄装置1全体には無用なモーメントが発生せず、振動が生じない。
【0058】
図13(a)は洗浄室を構成する両側壁に設けられた、中空フレーム6の延長部(連結板)の挿通口におけるシール機構の実施例を概略的に示す平面視断面図、図13(b)は同側方視断面図である。
【0059】
図13に示すように、洗浄領域を取り囲む洗浄室(クリーン室)30の両側壁30aに、中空フレーム6に連結された連結板11の断面形状に対応する長方形状の挿通口31がそれぞれ開口されている。連結板11は中空フレーム6と一体に偏心回転するので、連結板11の幅方向において挿通口31と連結板11との間に、片側当たり偏心量+α(例えば12mm)の隙間があけられており、また連結板11の厚み方向において挿通口31と連結板11との間に数mm程度の隙間があけられている。このため、それらの隙間からの粉塵等の侵入を防止するため、袋状の蛇腹式シール部材32の一方の開口周縁32aが連結板11の周囲を覆うように取着され、他方の開口周縁32bが挿通口31の周縁部近傍を覆うように取着されている。
【0060】
図14(a)は洗浄室を構成する両側壁に設けられた、中空フレーム6の延長部(連結板)の挿通口におけるシール機構の他の実施例を概略的に示す平面視断面図、図14(b)は同側方視断面図で、図15は一方の挿通口側のシール機構をより具体的に示す、一部を切り欠いて断面で表した斜視図である。
【0061】
図14・図15に示すように、洗浄室(クリーン室)30の両側壁30aに、中空フレーム6に連結された連結板11の断面形状に対応する長方形状の挿通口31がそれぞれ開口されている。本例の場合には、各挿通口31を取り囲むように箱形のシール室33が洗浄室30の両側壁30aに一体に形成されている。また、シール室33の端壁33aにも、挿通口31と同一形状の第2挿通口34が一連に開口されている。さらに、シール室33内において、図15に示すように底板33aが挿通口31と挿通口34との各下端開口縁の近傍に配置されるとともに、挿通口31と挿通口34との各上端開口縁に沿って所定幅の挟持板35・36がそれぞれ内向きに固定されている。挿通口31の近傍で挟持板35と底板33aとの空間部に、一対のU字形で板バネ状のシール部材37を開放端側が連結板11の両側面に摺接するように相対向して配置し、各シール部材37の他端側が底板33bと挟持板35とに固定されている。また、第2挿通口34の近傍で挟持板35と底板33aとの空間部に、一対のU字形で板バネ状のシール部材38を開放端側が連結板11の両側面に摺接するように相対向して配置し、各シール部材38の他端側が底板31bと挟持板35とに固定されている。さらに、シール室33の天板33cのほぼ中央部に、排気口39が開口されている。そして、シール室33内の圧力を洗浄室30内の圧力よりやや低く設定し、洗浄室30内からシール室33内に空気が流入するようにしている。
【0062】
これにより、各シール部材37・38はそれらの開放端側が連結板11の両側面に接触した状態で、洗浄装置本体5の回転円運動に伴って弾性変形しながら連結板11の両側面をシールする。また、連結板11の上下両面については、挟持板35・36がそれぞれ近接しており、隙間はほとんどない。しかも、洗浄室30内にはクリーンな空気が常に導入されており、この空気が挿通口31から連結板11との隙間を通してシール室33内に流入し、排気口39から排出される。また、その空気流によって外気が第2挿通口34から連結板11との隙間を通ってシール室33内に吸い込まれるように流入し、排気口39から排出される。したがって、洗浄室30の挿通口31は外部(第2挿通口34)と遮断された状態となって、洗浄室30内の気密性が保持される。
【0063】
図16(a)〜(c)は洗浄室を構成する両側壁に設けられた、中空フレーム6の延長部(連結板)の挿通口におけるシール機構のさらに別の実施例を概略的に示す図面で、図16(a)は側面図、図16(b)は平面図、図16(c)は図16(b)のC−C断面図である。
【0064】
本例のシール機構は可動または可撓性のシール部材を備えていない固定式で、各挿通口31を取り囲むように内外二重角筒体形のシール室40が洗浄室30の両側壁30aにそれぞれ連設されている。このシール室40は、洗浄室30の挿通口31と同一形状の横長の挿通開口43を長手方向に連続して有し、両端を開口した内筒44と、この内筒44の周囲を全周にわたり一定の間隔をあけて取り囲み一端を開口した外筒41とで一体に形成されている。内筒44の両端開口を含む開口断面形状は挿通開口43と同一で、図16(b)(c)に示すように、内筒44の上下両面および両側面には複数の排気口45が穿設され、また外筒41の両側壁にも排気口46が穿設されている。内筒44の挿通開口43は、挿通口31と同一で図16(c)に示されるように、連結板11の旋回円運動を許容する大きさからなり、洗浄室30内の加圧空気が各排気口45・46から流出し、外部からの流入を阻止する。したがって、洗浄室30の挿通口31は外部(内筒44の外側の開口)と遮断された状態となって、洗浄室30内の気密性が保持される。本例のシール機構は、上記の2つの実施例と異なって可動(いいかえれば摩耗)するシール部材を備えていない。なお、図16中の符号42は外筒の一端(外側)の端壁である。
【0065】
上記のようにして本発明の第1の実施形態に係る高圧水噴射洗浄装置が構成されるが、以下にその洗浄作業の態様を説明する。
【0066】
まず、洗浄室30内において、洗浄対象物Xが搬入され、この洗浄対象物Xが例えばガラス基板Xの場合、ローラコンベヤ40上に載置され、搬入場所から洗浄装置本体5の下方へ一定の速度で搬送される。搬送の開始に当たって、洗浄室30内には正常な空気が導入され、清浄な雰囲気に保たれる。ここで、左右のサーボモータ17の駆動が開始され、回転軸15が回転し、この回転軸15の回転で円柱体状の回転軸偏心部14が偏心回転し、軸受ハウジング部12を介して洗浄装置本体5が旋回円運動する。続いて、高圧水タンク10aから高圧の洗浄液体を可撓性の金属製配管10を介して高圧水供給路9bおよびノズルヘッド部7の高圧水供給路9aを通して各ノズル7aへ供給される。各ノズル7aは真円形を描くように旋回しながら、各ノズル孔7cから直線状に高圧の洗浄液体が噴射される。一方、ローラコンベヤ40でガラス基板Xが洗浄装置本体5の下方へ定速で搬送されてくる。この状態で、ガラス基板Xの一面に対し高圧の洗浄液体が一斉に噴射され、図23(b)に示されるような洗浄液体の軌跡を描き、洗浄強度にバラツキのない洗浄作業が遂行される。
【0067】
図17〜図22は本発明に係る高圧水噴射洗浄装置の第2の実施形態を示すもので、以下に説明する。
【0068】
図17は本発明の高圧水噴射洗浄装置の第2実施形態を示す、一部を断面で表した正面図、図18は同平面図、図19は同左側面図、図20は図17のA−A断面図、図21は図17のB−B断面図、図22は図17のC−C断面図である。
【0069】
これらの図に示すように、本実施形態の高圧水噴射洗浄装置1’が上記第1実施形態の高圧水噴射洗浄装置1と相違するのは、以下の点である。すなわち、
上記洗浄装置1では洗浄対象物Xの片面(上面)を洗浄する構成であったが、本実施形態の洗浄装置1’では洗浄対象物Xの両面を同時に洗浄する構成としている。このため、洗浄装置本体5’を構成する角筒体状で中空の支持フレーム6の一対を所定間隔をあけて上下に平行にかつ相対向させて配置し、上下の支持フレーム6・6の両側部を板状の接続部材51でそれぞれ一体に接続し、各接続部材51の上下方向の中間位置から側方(外方)へ向けて連結板11を一体に延設している。
【0070】
各連結板11には、図19のように長円形の開口11a’を設けて軽量化を図っており、それらの一端(外端)にリング状の軸受ハウジング12を一体に連結し、この軸受ハウジング12内に軸受13を介して円柱体状回転軸偏心部14を回転可能に配装している。また、回転軸偏心部14の中心位置から偏心させた位置に、支持台3に軸受ハウジング16を介して回転可能に支持される上下の回転軸15(図6)を一体回転可能に連結し、それぞれサーボモータ17によりほぼ同期させて回転駆動し、洗浄装置本体5を旋回円運動動させることにより、複数の各ノズル7aを真円を描くように旋回させる。
【0071】
上下の支持フレーム6・6の相対向面に、ノズル7aを相互に等間隔に千鳥状に2列配置したノズルヘッド部7を装着している。本例の場合、図20のように上下のノズル7aの先端面間に、洗浄対象物Xが通過しかつ洗浄対象物(図示せず)の両面に対し高圧水を噴射させて洗浄可能な隙間tを設けている。この隙間tについて数値を限定するものではないが、例えば洗浄対象物が半導体ウエハーなどの比較的厚みの薄い平坦な板状物であれば、その隙間tは10mm〜10数mm程度でよい。また、図16および図18〜図20に示すように、洗浄装置本体5’の中心軸線Mを挟んで対称的に、支持フレーム6・ノズルヘッド部7など質量が同一の部材を配置しているので、上記高圧水噴射洗浄装置1において、洗浄装置本体5自体のバランスを図るために取り付けたカウンタウエイト21やその取り付けのためのブラケット22などは不要である。しかし、洗浄装置本体5’が偏心回転運動する際に生じるモーメントを打ち消すために、円盤部14を挟んで上下の駆動軸15に取り付けたカウンタウエイト25は必要である。また、上下一対の各横桁18の長手方向に間隔をあけて、左右一対の凹状の保護枠19が洗浄装置本体5の上部と下部とをそれぞれ取り囲むように上下に対向させて取り付けられている。
【0072】
その他の構成については、上記第1の実施形態に係る高圧水噴射洗浄装置1と共通するので、共通の部材については同一の符号を用いて図面に示し、説明を省略する。また上記第1実施形態の高圧水噴射洗浄装置1に適用した洗浄室30や挿通口31のシール機構については、第2実施形態の高圧水噴射洗浄装置1’にもそのまま適用できるので、説明および図示は省略する。
【0073】
以上に、本発明に係る高圧水噴射洗浄装置について2つの実施形態(実施例)を示したが、これらに限定されるものではなく、例えば、下記のように実施することができる。
【0074】
・上記実施形態の装置のように2台のサーボモータ17を備える代わりに、サーボモータ17を一方にだけ備えて、他方の駆動軸15に伝動ベルトなどで駆動力を伝達させて駆動する構造にすることができる。
【0075】
・上記実施形態では、洗浄対象物Xを水平に移動させながら高圧水を噴射させて洗浄するようにしたが、洗浄対象物Xの配置は水平状態から垂直(鉛直)状態まで対応可能である。
【0076】
・上記実施例では、支持フレームを断面角筒状の中空フレームにして軽量化を図ったが、例えば板状のフレームにすることもできる。
【0077】
・本願発明に係る高圧水噴射洗浄装置1または1’と、従来の、例えば特許文献1に記載のような洗浄ガンとを組み合わせて高圧水噴射洗浄装置を構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の高圧水噴射洗浄装置の第1実施形態を示す、一部を断面で表した正面図である。
【図2】本発明の高圧水噴射洗浄装置の第1実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明の高圧水噴射洗浄装置の第1実施形態を示す側面図である。
【図4】図2のC−C断面図である。
【図5】図1の高圧水噴射洗浄装置を拡大して示す左側面図である。
【図6】図6(a)は図1の向かって左側の支持台とその近傍を拡大して示す正面図、図6(b)は回転軸偏心部と上下の回転軸とを取り出して概略的に示す説明図、図6(c)は図6(b)の平面図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】図1の洗浄装置本体の一部を拡大して示す中央縦断面図である。
【図9】図8のA−A断面図である。
【図10】図8の平面図である。
【図11】図10のノズルヘッド部を示す底面図である。
【図12】図12(a)はノズルヘッド部の一部を拡大して示す底面図、図12(b)は図12(a)のB−B縦断面図である。
【図13】図13(a)は洗浄室を構成する両側壁に設けられた、中空フレーム6の延長部(連結板)の挿通口におけるシール機構の実施例を概略的に示す平面視断面図、図13(b)は同側方視断面図である。
【図14】図14(a)は洗浄室を構成する両側壁に設けられた、中空フレーム6の延長部(連結板)の挿通口におけるシール機構の他の実施例を概略的に示す平面視断面図、図14(b)は同側方視断面図である。
【図15】図14に示すシール機構の一方の挿通口側のシール機構をより具体的に示す、一部を切り欠いて断面で表した斜視図である。
【図16】図16(a)〜(c)は洗浄室を構成する両側壁に設けられた、中空フレーム6の延長部(連結板)の挿通口におけるシール機構のさらに別の実施例を概略的に示す図面で、図16(a)は側面図、図16(b)は平面図、図16(c)は図16(b)のC−C断面図である。
【図17】図17〜図22は本発明に係る高圧水噴射洗浄装置の第2の実施形態を示すもので、図17は本発明の高圧水噴射洗浄装置の第2実施形態を示す一部を断面で表した正面図である。
【図18】本発明の高圧水噴射洗浄装置の第2実施形態を示す平面図である。
【図19】本発明の高圧水噴射洗浄装置の第2実施形態を示す左側面図である。
【図20】図17のA−A断面図である、
【図21】図17のB−B断面図である。
【図22】図17のC−C断面図である。
【図23】図23(a)はノズルヘッド部の底面図と旋回円運動を表す説明図、図23(b)は図23(a)のノズルヘッド部による洗浄水の軌跡を表す説明図である。なお、図23(b)の両側の部分は洗浄対象物の洗浄域からはみ出した部分(非洗浄部)である。
【図24】従来の高圧水噴射洗浄装置を全体的に示す正面図である。
【図25】図25(a)はノズルヘッド部の底面図と旋回円運動を表す説明図、図25(b)は図25(a)の一つのノズルヘッド部による洗浄軌跡を表す説明図である。なお、洗浄装置に対する洗浄時には図25(a)のノズルヘッド部が複数配列された状態になるので、図25(b)の洗浄軌跡が一部重なり合って5つ集合された状態の洗浄軌跡となる。
【符号の説明】
【0079】
1・1’高圧水噴射洗浄装置
2 機枠
3 支持台
3a支柱
5・5’洗浄装置本体
6 支持フレーム(中空フレーム)
7 ノズルヘッド部
7aノズル
7bノズルホルダー
7cノズル孔
8 取付ブラケット
9a・9b高圧水供給路
12 軸受ハウジング(軸受ハウジング部・軸受部)
13 軸受
14 回転軸偏心部
15 回転軸(偏心回転軸)
16 軸受ハウジング
17 サーボモータ
17a回転駆動軸
18 横桁
19 保護枠
21・25 カウンタウエイト
30 洗浄室(クリーン室)
31 挿通口
32・37・38 シール部材
33・40 シール室
41 外筒
42 端壁
43 挿通開口
44 内筒
45・46 排気口(小孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄対象物を洗浄装置本体に対し一定速度で移動させながら、前記洗浄装置本体の高圧水噴射ノズルから高圧水を前記洗浄対象物に噴射させて洗浄する高圧水噴射洗浄装置であって、
前記洗浄対象物を横切る長さ以上の長さを有する共通の支持フレームの一面に、複数の高圧水噴射ノズルを前記洗浄対象物に向けかつ相互に間隔をあけて配列し、
前記支持フレームの両側延長端部を、それぞれ同支持フレームの前記一面またはその延長面に直交する偏心回転軸および軸受部を介して偏心回転可能に支持するとともに、前記偏心回転軸を駆動装置にて回転させることにより前記支持フレームが旋回円運動するように構成し、
前記支持フレームに沿って前記各高圧水噴射ノズルに高圧水を供給し、定速移動する前記洗浄対象物に対し旋回円運動する各高圧水噴射ノズルから噴射させるようにしたことを特徴とする高圧水噴射洗浄装置。
【請求項2】
前記支持フレームの両側延長端部における前記駆動装置を含めた偏心回転駆動部を、前記洗浄対象物の洗浄領域の外側へ位置させたことを特徴とする請求項1記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項3】
前記各高圧水噴射ノズルの中心位置にノズル孔を、同ノズル先端面に対し直交するように穿設し、前記ノズル孔の基端側に前記支持フレームに沿って配置した高圧水供給路の一端を接続し、前記高圧水供給路の他端を可撓性の金属製配管を介して高圧水源に接続したことを特徴とする請求項1または2記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項4】
前記支持フレームの、前記高圧水噴射ノズルと反対の面に、支持フレームの中心軸線を挟んで前記高圧水噴射ノズルの全体質量と釣り合うようにバランスウエイトを取り付けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項5】
前記偏心回転駆動部が、前記偏心回転軸を偏心位置に一体回転可能に接続する回転軸偏心部とこの回転軸偏心部の周囲を回転可能に支持する前記軸受部としての軸受ハウジング部とを備え、この軸受ハウジング部は前記支持フレームの一端に連結板を介して一体に連結していることを特徴とする請求項1記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項6】
前記偏心回転軸は、前記軸受ハウジング部内に軸受を介して回転可能に配置された円柱体状の回転軸偏心部の中心位置から偏心した位置に一体回転可能に接続されていることを特徴とする請求項5記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項7】
前記偏心回転軸および前記軸受ハウジング部を挟んで上下対称位置に、それぞれ前記回転軸偏心部の中心軸線を中心に前記支持フレームの偏心方向と対称に同支持フレームの遠心力に釣り合うようにバランスウエイトを、前記駆動軸と一体回転可能に取り付けたことを特徴とする請求項6記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄対象物の洗浄領域をクリーン室にて取り囲むとともに、同クリーン室両側の端壁にそれぞれ前記連結板の挿通口を設け、各挿通口の開口周縁部と前記各挿通口から突出する前記連結板の一部周囲とを蛇腹式袋状のシール部材の両端開口周縁部にて接続したことを特徴とする請求項5記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項9】
前記洗浄対象物の洗浄領域をクリーン室にて取り囲むとともに、同クリーン室両側の端壁にそれぞれ前記連結板の挿通口を設け、各挿通口の外方において前記各挿通口を含め前記各挿通口から突出する前記連結板の一部分を取り囲むシール室を設け、各シール室側方の端壁に前記挿通口と一連に挿通可能に前記連結板の第2の挿通口を設けるとともに、前記各シール室の上壁に排気口を設け、前記各シール室内において前記挿通口および前記第2挿通口の近傍に、一対のU字形で板バネ状のシール部材を一端を前記シール室内壁に固定し、開放端側が前記連結板の両側面に摺接するように相対向して設けたことを特徴とする請求項5記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項10】
前記洗浄対象物の洗浄領域をクリーン室にて取り囲むとともに、同クリーン室両側の端壁にそれぞれ前記連結板の挿通口を設け、この挿通口に対応する開口を長手方向に連続して有し両端を開口した内筒とこの内筒とに間隔をあけて周囲を取り囲み一端を開口した外筒との二重筒形構造の固定式シール室からなり、このシール室の前記内筒には多数の小孔を穿設するとともに、前記外筒には複数の小孔を穿設し、
前記シール室の外筒の開口端側を前記クリーン室の端壁にその挿通口と内筒の開口とが連通するように連設したことを特徴とする請求項5記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項11】
洗浄対象物を洗浄装置本体に対し一定速度で移動させながら、前記洗浄装置本体の高圧水噴射ノズルから高圧水を前記洗浄対象物の両面に噴射させて洗浄する高圧水噴射洗浄装置であって、
前記洗浄対象物を横切る長さ以上の長さを有し、前記装置本体の厚み方向の中心軸線を挟んで平行に配置される一対の支持フレームの対向面に、それぞれ複数の高圧水噴射ノズルを相対向させかつ相互に間隔をあけて配列し、
前記各支持フレームの両端部を一体に結合するとともに、両端結合部からそれぞれ前記装置本体の中心軸線に沿って両側方へそれぞれ連結板を延設し、
前記各連結板の端部を、その一面に直交する偏心回転軸および軸受部を介して偏心回転可能に支持するとともに、前記偏心回転軸を駆動装置にて回転させることにより前記支持フレームが旋回円運動するように構成し、
前記各支持フレームに沿って前記各高圧水噴射ノズルに高圧水を供給し、定速移動する前記洗浄対象物の両面に対し旋回円運動する各高圧水噴射ノズルから噴射させるようにしたことを特徴とする高圧水噴射洗浄装置。
【請求項12】
前記両側の連結板の端部における前記駆動装置を含めた偏心回転駆動部を、前記洗浄対象物の洗浄領域の外側へ位置させたことを特徴とする請求項11記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項13】
前記各高圧水噴射ノズルの中心位置にノズル孔を、同ノズル先端面に対し直交するように穿設し、前記ノズル孔の基端側に前記支持フレームに沿って配置した高圧水供給路の一端を接続し、前記高圧水供給路の他端を可撓性の金属製配管を介して高圧水源に接続したことを特徴とする請求項11または12記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項14】
前記偏心回転駆動部が、前記偏心回転軸を偏心位置に一体回転可能に接続する回転軸偏心部とこの回転軸偏心部の周囲を回転可能に支持する前記軸受部としての軸受ハウジング部とを備え、この軸受ハウジング部は前記支持フレームの一端に連結板を介して一体に連結していることを特徴とする請求項11記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項15】
前記偏心回転軸は、前記軸受ハウジング部内に軸受を介して回転可能に配置された円柱体状の回転軸偏心部の中心位置から偏心した位置に一体回転可能に接続されていることを特徴とする請求項14記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項16】
前記偏心回転軸および前記軸受ハウジング部を挟んで上下対称位置に、それぞれ前記回転軸偏心部の中心軸線を中心に前記支持フレームの偏心方向と対称に同支持フレームの遠心力に釣り合うようにバランスウエイトを、前記駆動軸と一体回転可能に取り付けたことを特徴とする請求項15記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項17】
前記洗浄対象物の洗浄領域をクリーン室にて取り囲むとともに、同クリーン室の両側壁にそれぞれ前記連結板の挿通口を設け、各挿通口の開口周縁部と前記各挿通口から突出する前記連結板の一部周囲とを蛇腹式袋状のシール部材の両端開口周縁部にて接続したことを特徴とする請求項11記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項18】
前記洗浄対象物の洗浄領域をクリーン室にて取り囲むとともに、同クリーン室の両側壁にそれぞれ前記連結板の挿通口を設け、
各挿通口の外方において前記各挿通口を含め前記各挿通口から突出する前記連結板の一部分を取り囲むシール室を設け、各シール室の側壁に前記挿通口と一連に前記連結板の第2の挿通口を設けるとともに、前記各シール室の上壁に排気口を設け、
前記各シール室内の前記挿通口および前記第2挿通口の近傍に、それぞれ一対のU字形で板バネ状のシール部材を開放端側が前記連結板の両側面に摺接するように相対向して配置し、他端側を前記シール室内壁に固定したことを特徴とする請求項11記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項19】
前記洗浄対象物の洗浄領域をクリーン室にて取り囲むとともに、同クリーン室両側の端壁にそれぞれ前記連結板の挿通口を設け、この挿通口に対応する開口を長手方向に連続して有し両端を開口した内筒とこの内筒とに間隔をあけて周囲を取り囲み一端を開口した外筒との二重筒形構造の固定式シール室からなり、このシール室の前記内筒には多数の小孔を穿設するとともに、前記外筒には複数の小孔を穿設し、
前記シール室の外筒の開口端側を前記クリーン室の端壁にその挿通口と内筒の開口とが連通するように連設したことを特徴とする請求項11記載の高圧水噴射洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−106845(P2009−106845A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281322(P2007−281322)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(308007505)カワサキプラントシステムズ株式会社 (51)
【Fターム(参考)】