3次元形状測定方法及び測定装置
【目的】 格子パターン投影法によって、計測対象物体の3次元形状を常に正確に効率よく計測できるようにする。
【構成】 複数の計測対象物体14が設けられた平面15に対して、投影部10によって斜め方向から格子パターンLPを投影し、その格子パターンが投影された平面15を格子パターンの投影方向とは異なる方向から撮像部16によって撮像し、その撮像した明暗のパターンの2次元画像データを画像メモリ19に記憶し、データ処理部17によってそれを解析して計測対象物体14の3次元形状を測定する。投影部10は液晶格子12によって格子パターンを生成する際に、平面15上の特定の計測対象物体14の計測領域以外の領域(マスクエリアMA)に対しては、格子パターンLPを投影しないようにマスクする。
【構成】 複数の計測対象物体14が設けられた平面15に対して、投影部10によって斜め方向から格子パターンLPを投影し、その格子パターンが投影された平面15を格子パターンの投影方向とは異なる方向から撮像部16によって撮像し、その撮像した明暗のパターンの2次元画像データを画像メモリ19に記憶し、データ処理部17によってそれを解析して計測対象物体14の3次元形状を測定する。投影部10は液晶格子12によって格子パターンを生成する際に、平面15上の特定の計測対象物体14の計測領域以外の領域(マスクエリアMA)に対しては、格子パターンLPを投影しないようにマスクする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、格子パターン投影法によって凹凸がミリメートル(mm)領域の物体の3次元形状を計測する方法、およびその計測に使用する3次元計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3次元形状測定のニーズが高まり、特に光学的手段を用いた測定器が望まれている。凹凸の高さ範囲がマイクロメートル(μm)領域の場合は、レーザ光を用いた干渉計が多く用いられている。しかし、高さがミリメートル(mm)領域近くになると、干渉縞が密集して干渉縞の解析が困難になるという問題点が生じ、レーザ干渉計が使用できなくなってくる。mm領域以上での3次元形状測定では、広がりのある対象物を線あるいは面でとらえるエリア計測法が測定時間及び自動計測化の面から有利である。そのエリア計測法の代表的なものとして、白黒の格子模様の直線状の縞を投影する格子パターン投影法があり、構成が簡素なことと測定精度が高いことなどから注目されている。
【0003】
図13に格子パターン投影法による従来の3次元形状測定装置の構成例を示す。投影部20はハロゲンランプなどの照明用光源と集光レンズ等からなる光源部21と格子22と投影レンズ23とから構成され、光源部21からの白色光がその前面に置かれた格子22を照射する。格子22は一定のピッチと形状の白黒模様をもつ多数の直線状パターンから構成されており、そのパターンが投影レンズ23を通して、白黒の格子パターン(格子縞)LPとして形状が測定される物体(計測対象物体)24が設けられた平面25に投影される。物体24の表面にはその凹凸度合いに応じて変形(湾曲)した変形格子パターン(変形格子縞)ができ、凹凸が小さい場合は格子縞の変形が小さく(直線に近い)、凹凸が大きいと格子縞の変形が大きくなる。この変形格子パターンを、投影部20による投影方向とは異なる角度方向から、CCDカメラからなる撮像部26で2次元画像として撮像する。
【0004】
撮像部26で撮像された2次元画像は物体24の凹凸情報を含んでいる。物体24がなく、平面25に格子パターンLPを投影した場合は図14の(a)に示すように直線縞になり、撮像部26によって撮影される明暗の波形は同図の(b)に示すように一定周期で正弦波状に変化する。これに対し、凹凸のある物体の24の表面に斜め方向から格子パターンLPを投影した場合は図15の(a)に示すような変形格子縞となり、撮像部26によって撮影される明暗の波形も同図の(b)に示すようにその変形に応じて不規則に変化する。
【0005】
したがって、物体24の凹凸の段差の大きさは、変形格子縞が基準となる直線縞からどれだけずれているかを検出することによって評価できる。そこで、パーソナルコンピュータなどのデータ処理部27(図13)により、2次元画像の各画素ごとの座標p(x,y)での格子縞の変形を全画素について解析し、物体24の3次元座標P(X,Y,Z)を決定する。このときのデータ処理は、レンズ23、物体24、および撮像部26内の撮像面の相互の距離と見込み角度の関係から定まる三角測量法の原理によって行う。
【0006】
この格子パターン投影法を用いた3次元形状測定装置では、変形格子縞が物体24の凹凸形状に応じて変形するため、凹凸の程度に応じた形状とピッチをもった格子パターンLPを物体24に投影する必要がある。凹凸の段差が大きい場合は格子パターンのピッチが大きく、凹凸の段差が小さいほど格子パターンのピッチは小さいことが望ましい。また、格子パターンの強度分布も後述する位相シフト法にとって重要である。そのため、格子22の形状とピッチ及び強度分布特性が3次元形状測定の高精度化と高信頼化にとって重要である。
従来から最も一般に用いられていた格子は、主として、一定の形状とピッチ(共に固定)をもった白黒の二値格子であった。そして、形状やピッチの異なる格子を数種類用意しておき、物体の凹凸度合いに応じてその複数の格子を選択して使用していた。
【0007】
しかし、高精度な3次元形状測定のためには、上記白黒の二値格子を用いるよりも、照度分布が正弦波状に変化する正弦波格子を用いた位相シフト法が有効である。これは、正弦波的な照度分布を有する格子パターンを物体に投影し、4ステップ法の場合には、正弦波格子の位相をπ/2ずつシフトさせ、投影された各位置での照度分布を周期的に変化させる技術である。このとき、位相が異なる4枚の2次元画像を撮像し、それらの画像の明暗の強度分布を解析して凹凸形状を計測する。
【0008】
そこで、計測対象物体の凹凸の程度に応じた形状とピッチをもった正弦波格子を容易に生成でき、且つその位相シフトも容易に行えるようにするため、液晶パネル(液晶シャッタ)を用いた液晶格子を使用することも、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平11−83454号公報
【0009】
例えば計測対象物体に図14に示したような正弦波状に変化する格子パターンを投影し、その格子パターンの図15に示したような変形を撮像すると、格子パターンを投影した画像平面上の一点(x,y)における明るさI(Intensity)は、次式のようになる。
I(θ)=a(x,y)+b(x,y) cos{φ(x,y)+θ}
ここで、a:バイアス(明るさの平均値) b:明るさの変化の振幅
φ:基準面からの高さに相当する位相値 θ:操作可能な位相
【0010】
バイアスaと振幅bは、物体表面の反射率や汚れに依存するため、位相θを0,π/2,π,3π/2と変化させ、未知数a,bを消去すると、位相情報(値)φが次式によって求められる。すなわち、縞の強弱を排除し、縞の位置情報のみに着目する。
φ(x,y)=arctan[{I(3π/2)−I(π/2)}/{I(0)−I(π)}]
格子ピッチが既知であるから、三角測量の原理を用いて、この位相情報φより高さZを算出することができる。
この3次元形状測定方法によれば、物体表面の反射率の分布や汚れに強く、コンピュータによる高速処理に適し、高分解能が期待できるなどの利点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような格子パターン投影法によって、計測対象物体の3次元形状を計測する場合、隣接する物体による多重反射が発生して、正確な計測ができなくなる場合がある。
例えば、ICやLSIのような半導体集積回路パッケージの実装面に形成されたBGA(Ball Grid Array) の半田ボールやCSP(Chip Size Package) のバンプなどのように、平面上に規則的に配列された物体の高さを含む3次元形状を計測するような場合、格子パターンを投影したときに、物体の表面状態によっては隣接する物体からの反射光が対象とする物体に映り込む場合がある。
【0012】
すなわち、図16の(a)に示すように平面25上に配列して設けられた撮像・演算範囲W内のバンプや半田ボール等の物体24(図示の例では半球状の物体)の3次元形状を計測する場合、同図の(b)に示すように正弦波状に照度(明暗)が変化する格子パターンを斜め方向から投影し、ある物体24Aの表面のある点を光線aが照射し、それに隣接する物体24Bの表面のある点を光線bが照射したとすると、その光線aによる物体24Aからの垂直方向の反射光a′と光線bによる物体24Bからの垂直方向の反射光b′のみを、それぞれ図13に示した撮像部26が撮像すべきである。しかし、物体24Aに対して隣接する物体24Bに照射した光線bの水平方向の反射光bxが物体24Aで垂直方向に反射(多重反射)されると、その反射光bx′も本来の反射光a′と合わせて撮像されてしまうことになる。
【0013】
このような多重反射現象が発生すると、正確な光強度変化が得られなくなるため、データ処理部による演算結果に大きな誤差が生じてしまい、正確な計測ができなくなる。
また、格子パターンをどのように投影しても正確な投影ができない形状(例えば、アリ溝形状のような上部が突き出ていて下部が引っ込んでいるような形状や、窪みの深い形状など)が明らかな場合には、画像を撮影しても不明確な画像データとなってしまう。
【0014】
この発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、格子パターン投影法によって計測対象物体の3次元形状を計測する際、上述したような多重反射が発生するのを防止したり、画像データが不明確なことが予測される部分の画像データの作成をしないようにして、常に計測対象物体の3次元形状を正確に効率よく計測できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明による3次元形状測定方法は、複数の計測対象物体が設けられた面に対して斜め方向から格子パターンを投影し、その格子パターンが投影された面を格子パターンの投影方向とは異なる方向から撮像し、その撮像した明暗のパターンを解析して計測対象物体の3次元形状を測定する3次元形状測定方法において、上記の目的を達成するため、上記格子パターンを投影する際に、上記面上の特定の計測対象物体の計測領域以外には上記格子パターンを投影しないようにマスクすることを特徴とする。
【0016】
あるいは、上記格子パターンを投影する際に、上記面上の特定の計測対象物体に対して少なくとも投影する格子パターンの格子配列方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアには格子パターンを投影しないようにマスクするようにしてもよい。
さらに、上記格子パターンを投影する際に、上記面上の特定の計測対象物体に対して投影する格子パターンの格子配列方向及び/又は該方向に直交する方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアにも格子パターンを投影しないようにマスクするようにするとなおよい。
【0017】
これらの3次元形状測定方法において、上記投影する格子パターンは、液晶格子を使用して照度分布が正弦波状に変化するように形成されたパターンとし、1回の計測においてその格子パターンを、上記正弦波状の変化の1周期の1/nずつ位相をずらしてn回投影するのが望ましい。ここで、nは3以上の整数である。
【0018】
この発明による3次元形状測定装置は、複数の計測対象物体が設けられた面に対して斜め方向から格子パターンを投影する投影部と、その投影部によって格子パターンが投影された面を前記格子パターンの投影方向とは異なる方向から撮像する撮像部と、その撮像部によって撮像した明暗のパターンを解析して計測対象物体の3次元形状を測定するデータ処理部とを備えた3次元形状測定装置において、上記の目的を達成するため、次のように構成したものである。
【0019】
上記投影部は、光源部と液晶格子と投影レンズとからなる。そして、その液晶格子に、光源部からの照射光の透過率を2次元的に変化させて格子パターンを生成させるとともに、その格子パターンを上記面に投影することによりその面上の特定の計測対象物体に対して多重反射光を生起することが想定されるエリアに対しては照射光の透過率を最低にするように、その液晶格子を駆動制御する液晶格子駆動制御部を設ける。
【0020】
上記3次元形状測定装置において、上記液晶格子駆動制御部は、上記複数の計測対象物体が上記面上に2次元的に規則性を持って配列されている場合には、上記特定の計測対象物体に対して多重反射光を生起することが想定されるエリアとして、上記面上で上記特定の計測対象物体に対して少なくとも上記格子パターンの格子配列方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアに対しては照射光の透過率を最低にするように上記液晶格子を駆動制御するものであるとよい。
さらに、上記特定の計測対象物体に対して多重反射光を生起することが想定されるエリアを、上記面上で上記特定の計測対象物体に対して上記格子パターンの格子配列方向及び/又は該方向に直交する方向でそれぞれ隣接する計測対象物体を含む所定エリアとするとなおよい。
【0021】
これらの3次元形状測定装置において、上記液晶格子駆動制御部は、上記光源部からの照射光の照度分布が正弦波状に変化するように上記液晶格子の透過率を2次元的に変化させて格子パターンを生成させるとともに、1回の計測においてその格子パターンを、正弦波状の変化の1周期の1/nずつ位相をずらしてn回投影するように、上記液晶格子を駆動制御する手段を有するのが望ましい。
また、上記投影部を、上記撮像部の光軸を中心とする同一円周上の異なる位置に複数個設け、その複数個の投影部を切り換えて使用できるようにするとよい。
【発明の効果】
【0022】
この発明による3次元形状測定方法および3次元形状測定装置によれば、格子パターンを投影する面上の特定の計測対象物体(今測定しようとする対象物体)に対して多重反射光を生起することが想定されるエリアには上記格子パターンを投影しないようにマスクする(液晶格子による照射光の透過率を最低にする)ため、平面上に規則的に配列された物体の3次元形状を計測するような場合でも、多重反射が発生するのを防止して、常に計測対象物体の表面の凹凸に応じた変形格子縞を確実に撮像し、計測対物体の3次元形状を正確に計測することができる。
【0023】
なお、多重反射光を生起することが想定されるエリアとして、上記面上の特定の計測対象物体に対して少なくとも投影する格子パターンの格子配列方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアを設定し、そこに格子パターンを投影しないようにマスクすることにより、多重反射の発生を殆ど防ぐことができる。さらに、格子パターンの格子配列方向に直交する方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアも、多重反射光を生起することが想定されるエリアに設定して格子パターンを投影しないようにマスクすれば、一層確実に多重反射の影響をなくすことができる。
【0024】
上記投影する格子パターンを、液晶格子を使用して照度分布が正弦波状に変化するように形成されたパターンとし、1回の計測においてその格子パターンを、上記正弦波状の変化の1周期の1/nずつ位相をずらしてn回投影するようにすれば、その各回の画像の明暗を撮像してその強度分布を解析することにより、さらに精度のよい3次元形状の測定が可能になる。
【0025】
また、投影部を、撮像部の光軸を中心とする同一円周上の異なる位置に複数個設け、その複数個の投影部を切り換えて使用できるようにすることによって、表面反射率が高い凹凸面を有する物体の3次元形状の測定する場合でも、その物体の表面からの投影光の正反射を撮像してしまったら、投影部を切り換えて異なる角度から格子パターンを投影して、正確な形状測定を行えるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、この発明による3次元形状測定装置の第1の実施形態の概略構成を示す図である。この3次元形状測定装置は、複数の計測対象物体14が設けられた面である平面15に対して斜め方向から格子パターンLPを投影する投影部10と、その投影部10によって格子パターンLPが投影された面を格子パターンLPの投影方向とは異なる方向から撮像するCCDカメラやC−MOSカメラ等による撮像部16と、その撮像部16によって撮像した明暗のパターンを解析して計測対象物体14の3次元形状を測定するデータ処理部(パーソナルコンピュータ等の演算装置)17とを備えている。
【0027】
投影部10は、光源部11と液晶格子12と投影レンズ13とからなる。その光源部11は、ハロゲンランプなどの照明用光源と集光レンズ等からなる。さらに、その光源部11の点灯を制御する光源点灯制御部18と、液晶格子12を駆動してその透過率を制御する液晶格子駆動制御部30と、画像メモリ19とを備えている。
そして、撮像部16によって撮像した明暗のパターンの二次元画像の強度をA/D変換して(アナログカメラを使用する場合)、画像メモリ19に一時記憶する。データ処理部17は、その画像メモリ19に一時記憶した二次元画像の強度データを三角測量の原理で解析し、計測対象物体14の3次元形状の測定値を算出する。
【0028】
液晶格子駆動制御部30は液晶格子12を駆動制御して、光源部11からの照射光の透過率を2次元的に変化させて格子パターンLPを生成させるとともに、その格子パターンLPを平面15に投影することによりその平面15上の特定の計測対象物体14に対して多重反射光を生起することが想定されるエリア(図1に斜線を施して示す領域)MAに対しては、液晶格子12による照射光の透過率を最低にする。それによって、エリアMAに対しては格子パターンLPを投影しないようにマスクすることになる。
【0029】
この発明による3次元形状測定方法の一実施例は、図1に示した3次元形状測定装置を用いて、複数の計測対象物体14が2次元的に規則性を持って配列されている平面15に対して投影部10によって斜め方向から格子パターンLPを投影し、その格子パターンLPが投影された面を格子パターンの投影方向とは異なる方向から撮像部16によって撮像し、その撮像した明暗のパターンをデータ処理部17によって解析して、計測対象物体14の3次元形状を測定する。この点は従来の測定方法と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0030】
従来のこの種の3次元形状測定方法では、図2の(a)に示すように、複数の計測対象物体14A,14Bが2次元的に配列されている平面15の全体に対して斜め方向から格子パターンLPを投影し、それを撮像していたので、例えば今計測しようとする計測対象物体14A上の変形格子パターンを撮像する際に、格子パターンLPの格子配列方向で隣接する他の計測対象物体14Bの表面からの反射光によるスポット状の映り込みRPも撮像してしまうことがある。そうすると、その撮像した明暗のパターンを解析しても、計測対象物体14Aの正確な3次元形状測定ができなくなる。
【0031】
しかし、この発明による3次元形状測定方法では、格子パターンLPを投影する際に図2の(b)に示すように、格子パターンLPを投影する平面15上の今計測しようとする特定の計測対象物体14Aに対して多重反射光を生起することが想定されるエリアMAには前記格子パターンを投影しないようにマスクする。そのエリアMAとして、平面15上の特定の計測対象物体14Aに対して少なくとも投影する格子パターンLPの格子配列方向で隣接する計測対象物体14Bを含む所定エリアを設定するとよい。
【0032】
このような格子パターンLPをマスクエリアMAには投影しないようにするのは、投影部10の格子パターンLPを生成する液晶格子12を液晶格子駆動制御部30によって駆動制御して、マスクエリアMAに対応する部分の透過率を最低(光源部11からの光を殆ど透過しない状態)にすることによって容易に実現できる。
この実施例によれば、投影部10から投影する格子パターンLPの投影範囲を必要な部分のみに制限して、必要今計測しようとする特定の計測対象物体(図2では14A)の計測領域以外(マスクエリアMA)には投影しない。そのため、計測対象物体の凹凸の状態や要求される測定精度に応じた正確な3次元形状の計測を効率よく行うことができる。
【0033】
なお、その格子パターンの投影範囲としては、この実施例のように1箇所の計測対象物体の部位を中心とする範囲で大きさを増減して投影範囲を規制するだけでなく、後述する図9に示すように、複数箇所の計測対象物体の部位を中心とするそれぞれ必要な範囲にのみ飛び石状に格子パターンを投影することも可能である。
【0034】
次に、図1における液晶格子12と液晶格子駆動制御部30の具体例を図3によって説明する。図3は液晶格子12の模式的な断面とそれを駆動制御する液晶格子駆動制御部30のブロック構成をデータ処理部と共に示している。
液晶格子12は、第1のガラス基板121と第2のガラス基板122とがシール材114によって一定の間隔を置いて張り合わされ、その間隙にTN(ツイストネマティック)液晶123を封入している。第1のガラス基板121の内面にはその全面にITO等の透明導電膜による共通電極が形成され、それに対向する第2のガラス基板122の内面には、一定幅の多数のストライプ状(直線状)の格子電極126が僅かな間隔を置いて一定のピッチで、やはり透明導電膜で形成されている。
【0035】
図では分かり易いように、各格子電極126の幅と間隔を大きくし、その数を少なくして示しているが、実際の格子電極は10〜100μm程度の狭い幅で多数形成され、その間隔はなるべく狭い方がよい(格子電極の幅によって3〜20μm以下)。
第1のガラス基板121の外側には第1の偏光板127が、第2のガラス基板122の外側には第2の偏光板128が、互いにその偏光軸を直交させるか又は平行にするように配設されている。
【0036】
そして、光源部11による白色光がこの液晶格子12の例えば第1の偏光板127側から照射されると、第1の偏光板を透過した光はその偏光軸の方向に偏光した直線偏光となって、第1のガラス基板121及び共通電極125を透過してTN液晶123に通過する。このとき、共通電極125と格子電極126との間に電圧が印加されていない部分では、その直線偏光が90°旋光され、格子電極126と第2のガラス基板122を透過して第2の偏光板128に達する。第2の偏光板128の偏光軸が第1の偏光板127の偏光軸と平行になっていれば、その直線偏光は第2の偏光板を殆ど透過できず、透過率が最低になる。
【0037】
一方、共通電極125と格子電極126との間に所定の電圧が印加されている部分では、TN液晶123を通過する直線偏光は旋光されなくなるため、第2の偏光板128の偏光軸が第1の偏光板127の偏光軸と平行になっていれば、その直線偏光は第2の偏光板を透過し、透過率は最高になる。共通電極125と格子電極126との間に印加される電圧が所定の電圧とゼロとの間の値の場合は、その印加電圧に応じて透過率が変化する。
第1の偏光板127の偏光軸と第2の偏光板128の偏光軸とが直交している場合には、共通電極125と格子電極126との間に印加する電圧と透過率との関係が逆になる。
【0038】
いずれにしても、多数の格子電極126を所定本ずつのグループに分けて、その各グループ内の各格子電極と共通電極125との間に印加する電圧を段階的に制御することによって、その部分の透過率を段階的に制御し、明るさが略正弦波状に変化する格子パターンを形成したり、グループ内の全ての格子電極126と共通電極125との間に電圧を印加しない(あるいは所定の電圧を印加する)ことによって、透過率が最低のマスク状態にしたりすることができる。
【0039】
液晶格子駆動制御部30は、位相シフト設定部31、格子強度設定部32、格子分割設定部33、液晶駆動信号作成部34、液晶格子ドライバ35、およびマスクエリア設定部36によって構成されている。
この液晶格子駆動制御部30はデータ処理部27によって制御され、投影する格子パターンの形、状強レベル、マスクする領域などの作成条件を、データ処理部27から位相シフト設定部31、格子強度設定部32、格子分割設定部33、およびマスクエリア設定部36に入力することによって、自在な形状と強度およびマスク領域をもった格子パターンを作成することができる。
【0040】
以下にその各部の機能について説明する。格子分割設定部33は、正弦波の一周期をn等分に分割するための分割条件を設定する。液晶格子12にM本の格子電極126が設けられている場合、nの倍数となる電極数mを一つの単位として、M本の格子電極126をM/m個のグループに分割する。それによって、m本の格子電極126によって一周期の正弦波格子縞を作成するため、M/m本の正弦波格子縞を作成する。なお、m=12又は24などで十分な精度の正弦波格子縞を生成できることが確認されている。
【0041】
格子強度設定部32は、正弦波の一周期がn分割されたときの正弦波強度に関するデータを作成して記憶する。nは変数であるため、分割された強度データは可変の値になる。正弦波の強度はバイアス強度と振幅によって決る。バイアス強度とは正弦波の振幅が0の場合の直流的なオフセット強度で、投影された格子パターンの背景の明るさを表わす。振幅は正弦波の大きさで、投影された格子パターンの明部と暗部の間のコントラストを表わす。そこで、正弦波の一周期をn分割したときの分割された各々の領域における正弦波の振幅とバイアス強度との和の強度を計算し、n個の強度データを数値配列情報としてメモリに記憶する。
【0042】
位相シフト設定部31は、正弦波格子の強度分布の位相を設定する。m本の格子電極126で1本の正弦波格子を作成する際、nが3の場合は2π/3、4の場合はπ/2のピッチで正弦波強度の位相をシフトさせる。位相シフトでは正弦波の強度データの値は変化せず、各格子電極126に印加する電圧の印加順序を変えるだけでよい。
以上によって、正弦波格子の作成とそれに位相シフトを与える条件の設定ができるが、この実施例ではさらにマスクエリア設定部36によって、格子パターンを投影しない(マスクする)領域の格子電極126を設定し、それには電圧を印加させないようにする。すなわち、その領域内の全ての格子電極126の強度データをゼロにする。
【0043】
このようにして作成されたM/m周期の正弦波格子縞を形成するm本ずつのグループの各格子電極126の各強度データと、マスク領域に設定されているか否かの情報とによって、液晶駆動信号作成部34によって液晶格子12を駆動する信号を作成する。TN液晶を用いた液晶格子12の場合、前述したように共通電極125と格子電極126との間に加わる実効電圧に応じて液晶層の光透過特性が決る。そこで、上述した正弦波強度データから、正弦波強度に対応する実効電圧値が得られるような液晶駆動信号を作成する。液晶格子12はスタティック駆動を行うため、液晶駆動信号は二値の強度レベルを持ったパルス信号である。
【0044】
一方の共通電極125に印加する共通信号に対して、格子電極126に印加する信号の位相を変えることによって実効電圧を変化させる。但し、マスク領域に設定されている格子電極126に対しては実効電圧がゼロになる信号にする。
この液晶駆動信号作成部34によって作成された液晶駆動信号を液晶格子ドライバ35に入力し、液晶格子12の共通電極125と各格子電極に対して液晶駆動信号に応じた実効電圧を印加して、光源部からの照射光の透過率を2次元的に変化させて、一部のエリアがマスクされた正弦波格子パターンを発生させる。
【0045】
図2に示した格子パターンLPは、明部と暗部が白黒の縞になっているが、この実施例では各格子縞の明暗はその配列方向に正弦波状に徐々に変化する。且つその正弦波状の変化の1周期(2π)の1/nずつ位相をずらした格子パターンをn回順次投影し、その都度計測対象物体の表面の変形格子パターンを撮像部16によって撮像してその二次元画像の強度データを画像メモリに記憶させ、その各回の画像データをデータ処理部17で解析して、計測対象物体の3次元形状の測定値を算出する。ここで、nは3以上の整数であり、例えばn=3,4,8,16などとする。
【0046】
この発明の3次元形状測定方法によって、一度に複数列の計測対象物体の3次元形状を測定する方法を図4によって説明する。
図4の(a)は、平面15上に半球状の計測対象物体14Aと14Bが交互に列設(各列の計測対象物体14A又は14Bは紙面に垂直な方向に並んでいる)されている。計測対象物体14Aと14Bは殆どおなじ物体であるが、説明の便宜上符号を区別している。
そして、図1の撮像部16で撮像した二次元画像データのうちデータ処理部17で演算(解析)に使用する範囲(実質的な撮像・演算範囲)を、計測対象物体14Aの列を含む範囲WAと計測対象物体14Bの列を含む範囲WBの2つに分けて設定する。範囲WAと範囲WBとは交互になる。
【0047】
まず、範囲WAを実質的な撮像・演算範囲とする場合には、図1の投影部10からは図4の(b)に示すように、平面15上の範囲WAに相当する帯状の領域にのみ正弦波状の格子パターンAを投影し、範囲WBに相当する帯状の領域には格子パターンAを投影しないようにマスクした状態にする。その格子パターンAの正弦波状に変化する位相を実線で示す1の状態から破線で示す2,3,4に示すようにπ/2ずつシフトさせて4回投影し、その都度計測対象物体14Aの表面の変形格子パターンを撮像部16で撮像し、その2次元画像データを画像メモリ19に記憶して、それをデータ処理部17で解析して、各列の各計測対象物体14Aの3次元形状の測定値を算出する。これは、前述したnが「4」の場合の例である。
【0048】
このとき、図4の(a)に示すように、例えば一番左の計測対象物体14Aのある点に投影された光線aの垂直方向の反射光a′、および中央の計測対象物体14Aのある点に投影された光線bの垂直方向の反射光は、撮像・演算範囲WA内にあるため撮像されて演算に使用されるが、左から2番目の計測対象物体14Bに対する中央の計測対象物体14Aからの多重反射による垂直方向の反射光Bx′は、撮像・演算範囲WA内にないので、仮に撮像されてもその画像データは解析(演算)に使用しない。
【0049】
次に、範囲WBを実質的な撮像・演算範囲とする場合には、図1の投影部10からは図4の(c)に示すように、平面15上の範囲WBに相当する帯状の領域にのみ正弦波状の格子パターンBを投影し、範囲WAに相当する帯状の領域には格子パターンBを投影しないようにマスクした状態にする。その格子パターンBの正弦波状に変化する位相を実線で示す1の状態から破線で示す2,3,4に示すようにπ/2ずつシフトさせて4回投影し、その都度計測対象物体14Bの表面の変形格子パターンを撮像部16で撮像し、その2次元画像データを画像メモリ19に記憶して、それをデータ処理部17で解析して、各列の各計測対象物体14Bの3次元形状の測定値を算出する。このときは、範囲WA内の反射光が撮像されたとしても、その画像データは解析(演算)に使用しない。
【0050】
このようにすれば、一度に多数の計測対象物体の3次元形状を測定することができ、撮像部16による撮影範囲内の計測対象物体の3次元形状の測定を2度に分けて行うことにはなるが、隣接する列の計測対象物体からの多重反射の影響をなくして、各計測対象物体の3次元形状を精度よく測定することができる。
なお、格子パターンを投影しないマスクエリアMAを設定するには、上述のように液晶格子を使用すれば容易に任意の領域に対して設定できるので好ましいが、それはこの発明による3次元形状測定方法を実施するために必須のことではなく、機械的な格子とマスク板とを組み合わせて実施することも可能である。予め決った形状及び配列の計測非対象物体を繰り返し測定するような場合には、それでも十分対応可能である。
【0051】
次に、この発明の他の実施形態について図5乃至図9によって説明する。
図5は、この発明による3次元形状測定装置の第2の実施形態の要部のみを模式的に示す構成図であって、図1と対応する部分には同一の符号を付してあり、それらの説明は省略する。図1に示したデータ処理部17、光源点灯制御部、液晶格子駆動制御部30、及び画像メモリ19も当然備えているが、図示を省略している。
この実施形態において、図1に示した第1の実施形態の3次元形状測定装置と相違するのは、投影部10が光源部11と2枚の液晶格子12X,12Yと投影レンズ13とによって構成されている点だけであり、その液晶格子12Xと液晶格子12Yとは、図3に示した格子電極126のストライプ方向が互いに直交するように配置されている。
【0052】
その2枚の液晶格子12X,12Yを、図3に示した液晶格子駆動制御部30の液晶格子ドライバ35を2個にした回路によって駆動制御することによって、平面15上の格子パターンLPの格子配列方向に隣接する複数の計測対象物体14A,14Bのうち、例えば図7に示すように、一方の計測対象物体14Aを含む所定の領域にのみ明暗が正弦波状に変化する格子パターンLPを投影し、他方の計測対象物体14Bを含む所定のエリア及び格子パターンLPの格子配列方向に直交する方向(帯状の格子が延びる方向)で隣接するエリアもマスクエリアMAとして、格子パターンLPを投影しないようにすることができる。
【0053】
それによって、格子パターンLPの格子配列方向に直交する方向からの多重反射の影響も防ぐことができる。これは、格子パターンLPの格子が延びる方向にも複数の計測対象物体が配列されている場合や、すり鉢状の凹部内の3次元形状を測定する場合などに有効である。
そして、図8に示すように、多数の計測対象物体が平面上に2次元的に(縦横に)規則性をもって(この例では等間隔に)配列されている場合、その全体に縦列に沿う方向に延びる格子パターン(実際はその格子配列方向の明暗が正弦波状に変化する)を投影するか、図9に示すように、各計測対象物体14を縦横に1個置きに含む市松模様状に、格子パターンを投影する領域と投影しない領域(マスクエリアMA)を交互に形成する状態とを切り替えることができる。
【0054】
図8に示すように全面に格子パターン投影して撮影した2次元の画像データをデータ処理部で解析して、適正な3次元形状の計測値が得られればよいが、異常な値を含む測定結果になった場合には、図9に示すように格子パターンを縦横1個置きの計測対象物体14を含む正方形の領域のみに市松模様状に投影するように、液晶格子12X,12Yの駆動状態を切り替えることができる。それによって、今計測しようとする計測対象物体14に対して、隣接する他の計測対象物体14からの多重反射を完全に防止することができる。
【0055】
図9に示す格子パターンの投影状態での計測対象物体14の3次元形状の測定が完了した後、格子パターンの投影領域とマスク領域とを逆転して、図9でマスクされている正方形の領域にのみ格子パターンを投影し、その領域にある計測対象物体14の3次元形状を測定する。こうして、全ての計測対象物体14の3次元形状を正確に測定することができる。
【0056】
図6は、この発明による3次元形状測定装置の第3の実施形態の要部のみを模式的に示す図5と同様な構成図であって、図1及び図5と対応する部分には同一の符号を付してあり、それらの説明は省略する。
この実施形態において、図5に示した第2の実施形態の3次元形状測定装置と相違するのは、投影部10における液晶格子を、ストライプ状格子電極を有する2枚の液晶格子12X,12Yに代えて、マトリクス状のドット電極を有する1枚の液晶格子12Dとした点だけである。
【0057】
この液晶格子12Dは、図3に示した液晶格子12のストライプ状の格子電極126に代えて、透明導電膜からなる多数の小さな正方形のドット電極が僅かな間隙をあけて縦横に整列してマトリクス状に形成されている。したがって、図3に示した液晶格子駆動制御部30と同様な液晶格子駆動制御回路によって、その各ドット電極と共通電極との間に印加する実効電圧を制御して、その各ドット電極ごとの光透過率を制御することができる。そのため、縦横いずれの方向に延びる格子パターンも生成することができ、且つ任意の領域を光透過率を最低にして格子パターンを投影しないマスク領域にすることもできる。
【0058】
それによって、図7に示すように特定の計測対象物体14Aを含む所定領域のみに格子パターンを投影したり、図8に示すように多数の計測対象物体14が設けられた平面全体に格子パターンを投影したり、図9に示すように、格子パターンを縦横1個置きの計測対象物体14を含む正方形の領域のみに市松模様状に投影するように切り替えたりすることが容易にできる。このように、1枚の液晶格子12Dで、第2実施例における2枚の液晶格子12X,12Yと同様な機能を果たすことができる。
【0059】
次に、この発明の第4の実施形態について図10乃至図12によって説明する。図10は、その3次形状測定装置の要部のみを模式的に示す構成図であり、図1と対応する部分には同一の符号を付している。
この3次形状測定装置は、撮影レンズ16aを備えた撮像部16の光軸16cを中心とする同一円周上の異なる位置(この例では180°離れた対向する位置)に、2個の投影部10A,10Bを、それぞれ光軸を撮像部16の光軸16cに対して反対側に同じ角度だけ傾けて設けている。
【0060】
各投影部10A,10Bは、図1における投影部10と同様に、光源部11、液晶格子12、および投影レンズ13によって構成されているが、この例では、液晶格子12と投影レンズ13を計測対象物体14が設けられている平面15に平行(光軸は垂直)に配置し、光源部11の光軸に対してアオリを持たせている。それによって、平面15及び計測対象物体14に対する投影距離の差による格子パターンのピントずれを防止するようにしている。この点は、前述の各実施例の投影部にも適用するとよい。
【0061】
これらの、撮像部16と2個の投影部12A,12Bは共通の支持体40に取り付けられている。また、図示を省略しているが、図1に示したデータ処理部17及び画像メモリ19と、各投影部10A,10Bに対してそれぞれ光源点灯制御部18および液晶格子駆動制御部30を備えている。
そして、2個の投影部10Aと10Bを任意に切り換えて使用することができ、いずれを使用するかによって、格子パターンの投影方向が変わることになる。
【0062】
表面反射率の高い凹凸面を持つ物体の3次元形状をこの発明による方法で計測する場合、図11に示すように、格子パターンの投影方向Pと撮像部による撮像方向Qとの角度関係によって、計測対象物体14の表面のある点で光が正反射して撮像部に入射してしまうことがある。その正反射が強く、撮像部であるCCDカメラの受光量の許容値を超えてしまうと、正確な計測ができなくなってしまう。
そこで、オペレータがそのような正反射が生じていることを認識したとき、あるいはデータ処理部が撮像された画像データを解析した結果が適性な値でなかった場合に、投影部を切り換えて、図12に示すように格子パターンの投影方向Pを変えることによって、撮像方向Qへの正反射をなくして、正常な計測ができるようにする。
【0063】
図11及び図12において、(a)は計測対象物体と格子パターンの投影方向及び反射方向と撮像方向を示し、(b)は投影する4回の位相の異なる格子パターンの明暗の変化を示している。この場合も多重反射を生起することが予測される領域には格子パターンを投影しないようにマスクするが、それは前述の各実施形態と同様であるから、説明を省略する。
【0064】
投影部を3個以上設けて、それらを切り換えて使用できるようにしてもよい。この実施形態によれば、正反射を防止できるだけでなく、計測対象物体の表面形状によって、格子パターンの投影方向が一定だと蔭になって投影できない部分が生じてしまうような場合にも、投影部を切り換えて格子パターンの投影方向を変えることによって、計測対象物体の全表面に格子パターンを投影することが可能になることもある。
また、1個の投影部を撮像部の光軸を中心とする同一円周上で回動させることができるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
この発明による、3次元形状測定方法および3次元形状測定装置は、複数の計測対象物体が隣接して設けられているような場合に、その各計測対象物体の各3次元形状を正確に効率よく測定するために有効である。
特に、ICやLSIのような半導体集積回路パッケージの実装面に形成されたBGAの半田ボールやCSPのバンプなどのように、平面上に規則的に配列された多数の物体の高さを含む3次元形状を計測するような場合に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明による3次形状測定装置の第1の実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】従来の3次元形状測定方法とこの発明による3次元形状測定方法との格子パターンの投影状態の相違を説明するための図である。
【図3】図1における液晶格子12の模式的な断面と液晶格子駆動制御部30のブロック構成をデータ処理部と共に示す図である。
【図4】この発明の3次形状測定方法によって一度に複数列の計測対象物体の3次元形状を測定する方法を説明するための図である。
【0067】
【図5】この発明による3次形状測定装置の第2の実施形態の要部のみを模式的に示す構成図である。
【図6】この発明による3次形状測定装置の第3の実施形態の要部のみを模式的に示す構成図である。
【図7】図5又は図6に示した3次形状測定装置による格子パターン投影状態の一例を示す図である。
【図8】図5又は図6に示した3次形状測定装置によるマスクエリアを設けない格子パターン投影状態の例を示す図である。
【0068】
【図9】図5又は図6に示した3次形状測定装置によるマスクエリアを市松状に設けた格子パターン投影状態の例を示す図である。
【図10】この発明による3次形状測定装置の第4の実施形態の要部のみを模式的に示す構成図である。
【図11】格子パターンの投影による正反射の発生例を説明するための図である。
【図12】同じくその格子パターンの投影方向を変えて正反射を防止した例を説明するための図である。
【0069】
【図13】従来の3次形状測定装置の要部のみを模式的に示す構成図である。
【図14】平面に格子パターンを投影した場合の格子縞とその明暗の変化波形を示す図である。
【図15】凹凸のある計測対象物体の表面に格子パターンを投影した場合の変形格子縞とその明暗の変化波形を示す図である。
【図16】従来の3次形状測定方法で計測対象物体の3次元形状を測定する場合の多重反射について説明するための図である。
【符号の説明】
【0070】
10,10A,10B:投影部 11:光源部 12,12X,12Y,12D:液晶格子 13:投影レンズ 14:計測対象物体 15:平面 16:撮像部
17:データ処理部(演算装置) 18:光源点灯制御部 19:画像メモリ
30:液晶格子駆動制御部 31:位相シフト設定部 32:格子強度設定部
33:格子分割設定部 34:液晶駆動信号作成部 35:液晶格子ドライバ
36:マスクエリア設定部 40:支持体
121:第1のガラス基板 122:第2のガラス基板 123:TN液晶
124:シール材 125:共通電極 126:格子電極 127:第1の偏光板
128:第2の偏光板
【技術分野】
【0001】
この発明は、格子パターン投影法によって凹凸がミリメートル(mm)領域の物体の3次元形状を計測する方法、およびその計測に使用する3次元計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3次元形状測定のニーズが高まり、特に光学的手段を用いた測定器が望まれている。凹凸の高さ範囲がマイクロメートル(μm)領域の場合は、レーザ光を用いた干渉計が多く用いられている。しかし、高さがミリメートル(mm)領域近くになると、干渉縞が密集して干渉縞の解析が困難になるという問題点が生じ、レーザ干渉計が使用できなくなってくる。mm領域以上での3次元形状測定では、広がりのある対象物を線あるいは面でとらえるエリア計測法が測定時間及び自動計測化の面から有利である。そのエリア計測法の代表的なものとして、白黒の格子模様の直線状の縞を投影する格子パターン投影法があり、構成が簡素なことと測定精度が高いことなどから注目されている。
【0003】
図13に格子パターン投影法による従来の3次元形状測定装置の構成例を示す。投影部20はハロゲンランプなどの照明用光源と集光レンズ等からなる光源部21と格子22と投影レンズ23とから構成され、光源部21からの白色光がその前面に置かれた格子22を照射する。格子22は一定のピッチと形状の白黒模様をもつ多数の直線状パターンから構成されており、そのパターンが投影レンズ23を通して、白黒の格子パターン(格子縞)LPとして形状が測定される物体(計測対象物体)24が設けられた平面25に投影される。物体24の表面にはその凹凸度合いに応じて変形(湾曲)した変形格子パターン(変形格子縞)ができ、凹凸が小さい場合は格子縞の変形が小さく(直線に近い)、凹凸が大きいと格子縞の変形が大きくなる。この変形格子パターンを、投影部20による投影方向とは異なる角度方向から、CCDカメラからなる撮像部26で2次元画像として撮像する。
【0004】
撮像部26で撮像された2次元画像は物体24の凹凸情報を含んでいる。物体24がなく、平面25に格子パターンLPを投影した場合は図14の(a)に示すように直線縞になり、撮像部26によって撮影される明暗の波形は同図の(b)に示すように一定周期で正弦波状に変化する。これに対し、凹凸のある物体の24の表面に斜め方向から格子パターンLPを投影した場合は図15の(a)に示すような変形格子縞となり、撮像部26によって撮影される明暗の波形も同図の(b)に示すようにその変形に応じて不規則に変化する。
【0005】
したがって、物体24の凹凸の段差の大きさは、変形格子縞が基準となる直線縞からどれだけずれているかを検出することによって評価できる。そこで、パーソナルコンピュータなどのデータ処理部27(図13)により、2次元画像の各画素ごとの座標p(x,y)での格子縞の変形を全画素について解析し、物体24の3次元座標P(X,Y,Z)を決定する。このときのデータ処理は、レンズ23、物体24、および撮像部26内の撮像面の相互の距離と見込み角度の関係から定まる三角測量法の原理によって行う。
【0006】
この格子パターン投影法を用いた3次元形状測定装置では、変形格子縞が物体24の凹凸形状に応じて変形するため、凹凸の程度に応じた形状とピッチをもった格子パターンLPを物体24に投影する必要がある。凹凸の段差が大きい場合は格子パターンのピッチが大きく、凹凸の段差が小さいほど格子パターンのピッチは小さいことが望ましい。また、格子パターンの強度分布も後述する位相シフト法にとって重要である。そのため、格子22の形状とピッチ及び強度分布特性が3次元形状測定の高精度化と高信頼化にとって重要である。
従来から最も一般に用いられていた格子は、主として、一定の形状とピッチ(共に固定)をもった白黒の二値格子であった。そして、形状やピッチの異なる格子を数種類用意しておき、物体の凹凸度合いに応じてその複数の格子を選択して使用していた。
【0007】
しかし、高精度な3次元形状測定のためには、上記白黒の二値格子を用いるよりも、照度分布が正弦波状に変化する正弦波格子を用いた位相シフト法が有効である。これは、正弦波的な照度分布を有する格子パターンを物体に投影し、4ステップ法の場合には、正弦波格子の位相をπ/2ずつシフトさせ、投影された各位置での照度分布を周期的に変化させる技術である。このとき、位相が異なる4枚の2次元画像を撮像し、それらの画像の明暗の強度分布を解析して凹凸形状を計測する。
【0008】
そこで、計測対象物体の凹凸の程度に応じた形状とピッチをもった正弦波格子を容易に生成でき、且つその位相シフトも容易に行えるようにするため、液晶パネル(液晶シャッタ)を用いた液晶格子を使用することも、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平11−83454号公報
【0009】
例えば計測対象物体に図14に示したような正弦波状に変化する格子パターンを投影し、その格子パターンの図15に示したような変形を撮像すると、格子パターンを投影した画像平面上の一点(x,y)における明るさI(Intensity)は、次式のようになる。
I(θ)=a(x,y)+b(x,y) cos{φ(x,y)+θ}
ここで、a:バイアス(明るさの平均値) b:明るさの変化の振幅
φ:基準面からの高さに相当する位相値 θ:操作可能な位相
【0010】
バイアスaと振幅bは、物体表面の反射率や汚れに依存するため、位相θを0,π/2,π,3π/2と変化させ、未知数a,bを消去すると、位相情報(値)φが次式によって求められる。すなわち、縞の強弱を排除し、縞の位置情報のみに着目する。
φ(x,y)=arctan[{I(3π/2)−I(π/2)}/{I(0)−I(π)}]
格子ピッチが既知であるから、三角測量の原理を用いて、この位相情報φより高さZを算出することができる。
この3次元形状測定方法によれば、物体表面の反射率の分布や汚れに強く、コンピュータによる高速処理に適し、高分解能が期待できるなどの利点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような格子パターン投影法によって、計測対象物体の3次元形状を計測する場合、隣接する物体による多重反射が発生して、正確な計測ができなくなる場合がある。
例えば、ICやLSIのような半導体集積回路パッケージの実装面に形成されたBGA(Ball Grid Array) の半田ボールやCSP(Chip Size Package) のバンプなどのように、平面上に規則的に配列された物体の高さを含む3次元形状を計測するような場合、格子パターンを投影したときに、物体の表面状態によっては隣接する物体からの反射光が対象とする物体に映り込む場合がある。
【0012】
すなわち、図16の(a)に示すように平面25上に配列して設けられた撮像・演算範囲W内のバンプや半田ボール等の物体24(図示の例では半球状の物体)の3次元形状を計測する場合、同図の(b)に示すように正弦波状に照度(明暗)が変化する格子パターンを斜め方向から投影し、ある物体24Aの表面のある点を光線aが照射し、それに隣接する物体24Bの表面のある点を光線bが照射したとすると、その光線aによる物体24Aからの垂直方向の反射光a′と光線bによる物体24Bからの垂直方向の反射光b′のみを、それぞれ図13に示した撮像部26が撮像すべきである。しかし、物体24Aに対して隣接する物体24Bに照射した光線bの水平方向の反射光bxが物体24Aで垂直方向に反射(多重反射)されると、その反射光bx′も本来の反射光a′と合わせて撮像されてしまうことになる。
【0013】
このような多重反射現象が発生すると、正確な光強度変化が得られなくなるため、データ処理部による演算結果に大きな誤差が生じてしまい、正確な計測ができなくなる。
また、格子パターンをどのように投影しても正確な投影ができない形状(例えば、アリ溝形状のような上部が突き出ていて下部が引っ込んでいるような形状や、窪みの深い形状など)が明らかな場合には、画像を撮影しても不明確な画像データとなってしまう。
【0014】
この発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、格子パターン投影法によって計測対象物体の3次元形状を計測する際、上述したような多重反射が発生するのを防止したり、画像データが不明確なことが予測される部分の画像データの作成をしないようにして、常に計測対象物体の3次元形状を正確に効率よく計測できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明による3次元形状測定方法は、複数の計測対象物体が設けられた面に対して斜め方向から格子パターンを投影し、その格子パターンが投影された面を格子パターンの投影方向とは異なる方向から撮像し、その撮像した明暗のパターンを解析して計測対象物体の3次元形状を測定する3次元形状測定方法において、上記の目的を達成するため、上記格子パターンを投影する際に、上記面上の特定の計測対象物体の計測領域以外には上記格子パターンを投影しないようにマスクすることを特徴とする。
【0016】
あるいは、上記格子パターンを投影する際に、上記面上の特定の計測対象物体に対して少なくとも投影する格子パターンの格子配列方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアには格子パターンを投影しないようにマスクするようにしてもよい。
さらに、上記格子パターンを投影する際に、上記面上の特定の計測対象物体に対して投影する格子パターンの格子配列方向及び/又は該方向に直交する方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアにも格子パターンを投影しないようにマスクするようにするとなおよい。
【0017】
これらの3次元形状測定方法において、上記投影する格子パターンは、液晶格子を使用して照度分布が正弦波状に変化するように形成されたパターンとし、1回の計測においてその格子パターンを、上記正弦波状の変化の1周期の1/nずつ位相をずらしてn回投影するのが望ましい。ここで、nは3以上の整数である。
【0018】
この発明による3次元形状測定装置は、複数の計測対象物体が設けられた面に対して斜め方向から格子パターンを投影する投影部と、その投影部によって格子パターンが投影された面を前記格子パターンの投影方向とは異なる方向から撮像する撮像部と、その撮像部によって撮像した明暗のパターンを解析して計測対象物体の3次元形状を測定するデータ処理部とを備えた3次元形状測定装置において、上記の目的を達成するため、次のように構成したものである。
【0019】
上記投影部は、光源部と液晶格子と投影レンズとからなる。そして、その液晶格子に、光源部からの照射光の透過率を2次元的に変化させて格子パターンを生成させるとともに、その格子パターンを上記面に投影することによりその面上の特定の計測対象物体に対して多重反射光を生起することが想定されるエリアに対しては照射光の透過率を最低にするように、その液晶格子を駆動制御する液晶格子駆動制御部を設ける。
【0020】
上記3次元形状測定装置において、上記液晶格子駆動制御部は、上記複数の計測対象物体が上記面上に2次元的に規則性を持って配列されている場合には、上記特定の計測対象物体に対して多重反射光を生起することが想定されるエリアとして、上記面上で上記特定の計測対象物体に対して少なくとも上記格子パターンの格子配列方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアに対しては照射光の透過率を最低にするように上記液晶格子を駆動制御するものであるとよい。
さらに、上記特定の計測対象物体に対して多重反射光を生起することが想定されるエリアを、上記面上で上記特定の計測対象物体に対して上記格子パターンの格子配列方向及び/又は該方向に直交する方向でそれぞれ隣接する計測対象物体を含む所定エリアとするとなおよい。
【0021】
これらの3次元形状測定装置において、上記液晶格子駆動制御部は、上記光源部からの照射光の照度分布が正弦波状に変化するように上記液晶格子の透過率を2次元的に変化させて格子パターンを生成させるとともに、1回の計測においてその格子パターンを、正弦波状の変化の1周期の1/nずつ位相をずらしてn回投影するように、上記液晶格子を駆動制御する手段を有するのが望ましい。
また、上記投影部を、上記撮像部の光軸を中心とする同一円周上の異なる位置に複数個設け、その複数個の投影部を切り換えて使用できるようにするとよい。
【発明の効果】
【0022】
この発明による3次元形状測定方法および3次元形状測定装置によれば、格子パターンを投影する面上の特定の計測対象物体(今測定しようとする対象物体)に対して多重反射光を生起することが想定されるエリアには上記格子パターンを投影しないようにマスクする(液晶格子による照射光の透過率を最低にする)ため、平面上に規則的に配列された物体の3次元形状を計測するような場合でも、多重反射が発生するのを防止して、常に計測対象物体の表面の凹凸に応じた変形格子縞を確実に撮像し、計測対物体の3次元形状を正確に計測することができる。
【0023】
なお、多重反射光を生起することが想定されるエリアとして、上記面上の特定の計測対象物体に対して少なくとも投影する格子パターンの格子配列方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアを設定し、そこに格子パターンを投影しないようにマスクすることにより、多重反射の発生を殆ど防ぐことができる。さらに、格子パターンの格子配列方向に直交する方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアも、多重反射光を生起することが想定されるエリアに設定して格子パターンを投影しないようにマスクすれば、一層確実に多重反射の影響をなくすことができる。
【0024】
上記投影する格子パターンを、液晶格子を使用して照度分布が正弦波状に変化するように形成されたパターンとし、1回の計測においてその格子パターンを、上記正弦波状の変化の1周期の1/nずつ位相をずらしてn回投影するようにすれば、その各回の画像の明暗を撮像してその強度分布を解析することにより、さらに精度のよい3次元形状の測定が可能になる。
【0025】
また、投影部を、撮像部の光軸を中心とする同一円周上の異なる位置に複数個設け、その複数個の投影部を切り換えて使用できるようにすることによって、表面反射率が高い凹凸面を有する物体の3次元形状の測定する場合でも、その物体の表面からの投影光の正反射を撮像してしまったら、投影部を切り換えて異なる角度から格子パターンを投影して、正確な形状測定を行えるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、この発明による3次元形状測定装置の第1の実施形態の概略構成を示す図である。この3次元形状測定装置は、複数の計測対象物体14が設けられた面である平面15に対して斜め方向から格子パターンLPを投影する投影部10と、その投影部10によって格子パターンLPが投影された面を格子パターンLPの投影方向とは異なる方向から撮像するCCDカメラやC−MOSカメラ等による撮像部16と、その撮像部16によって撮像した明暗のパターンを解析して計測対象物体14の3次元形状を測定するデータ処理部(パーソナルコンピュータ等の演算装置)17とを備えている。
【0027】
投影部10は、光源部11と液晶格子12と投影レンズ13とからなる。その光源部11は、ハロゲンランプなどの照明用光源と集光レンズ等からなる。さらに、その光源部11の点灯を制御する光源点灯制御部18と、液晶格子12を駆動してその透過率を制御する液晶格子駆動制御部30と、画像メモリ19とを備えている。
そして、撮像部16によって撮像した明暗のパターンの二次元画像の強度をA/D変換して(アナログカメラを使用する場合)、画像メモリ19に一時記憶する。データ処理部17は、その画像メモリ19に一時記憶した二次元画像の強度データを三角測量の原理で解析し、計測対象物体14の3次元形状の測定値を算出する。
【0028】
液晶格子駆動制御部30は液晶格子12を駆動制御して、光源部11からの照射光の透過率を2次元的に変化させて格子パターンLPを生成させるとともに、その格子パターンLPを平面15に投影することによりその平面15上の特定の計測対象物体14に対して多重反射光を生起することが想定されるエリア(図1に斜線を施して示す領域)MAに対しては、液晶格子12による照射光の透過率を最低にする。それによって、エリアMAに対しては格子パターンLPを投影しないようにマスクすることになる。
【0029】
この発明による3次元形状測定方法の一実施例は、図1に示した3次元形状測定装置を用いて、複数の計測対象物体14が2次元的に規則性を持って配列されている平面15に対して投影部10によって斜め方向から格子パターンLPを投影し、その格子パターンLPが投影された面を格子パターンの投影方向とは異なる方向から撮像部16によって撮像し、その撮像した明暗のパターンをデータ処理部17によって解析して、計測対象物体14の3次元形状を測定する。この点は従来の測定方法と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0030】
従来のこの種の3次元形状測定方法では、図2の(a)に示すように、複数の計測対象物体14A,14Bが2次元的に配列されている平面15の全体に対して斜め方向から格子パターンLPを投影し、それを撮像していたので、例えば今計測しようとする計測対象物体14A上の変形格子パターンを撮像する際に、格子パターンLPの格子配列方向で隣接する他の計測対象物体14Bの表面からの反射光によるスポット状の映り込みRPも撮像してしまうことがある。そうすると、その撮像した明暗のパターンを解析しても、計測対象物体14Aの正確な3次元形状測定ができなくなる。
【0031】
しかし、この発明による3次元形状測定方法では、格子パターンLPを投影する際に図2の(b)に示すように、格子パターンLPを投影する平面15上の今計測しようとする特定の計測対象物体14Aに対して多重反射光を生起することが想定されるエリアMAには前記格子パターンを投影しないようにマスクする。そのエリアMAとして、平面15上の特定の計測対象物体14Aに対して少なくとも投影する格子パターンLPの格子配列方向で隣接する計測対象物体14Bを含む所定エリアを設定するとよい。
【0032】
このような格子パターンLPをマスクエリアMAには投影しないようにするのは、投影部10の格子パターンLPを生成する液晶格子12を液晶格子駆動制御部30によって駆動制御して、マスクエリアMAに対応する部分の透過率を最低(光源部11からの光を殆ど透過しない状態)にすることによって容易に実現できる。
この実施例によれば、投影部10から投影する格子パターンLPの投影範囲を必要な部分のみに制限して、必要今計測しようとする特定の計測対象物体(図2では14A)の計測領域以外(マスクエリアMA)には投影しない。そのため、計測対象物体の凹凸の状態や要求される測定精度に応じた正確な3次元形状の計測を効率よく行うことができる。
【0033】
なお、その格子パターンの投影範囲としては、この実施例のように1箇所の計測対象物体の部位を中心とする範囲で大きさを増減して投影範囲を規制するだけでなく、後述する図9に示すように、複数箇所の計測対象物体の部位を中心とするそれぞれ必要な範囲にのみ飛び石状に格子パターンを投影することも可能である。
【0034】
次に、図1における液晶格子12と液晶格子駆動制御部30の具体例を図3によって説明する。図3は液晶格子12の模式的な断面とそれを駆動制御する液晶格子駆動制御部30のブロック構成をデータ処理部と共に示している。
液晶格子12は、第1のガラス基板121と第2のガラス基板122とがシール材114によって一定の間隔を置いて張り合わされ、その間隙にTN(ツイストネマティック)液晶123を封入している。第1のガラス基板121の内面にはその全面にITO等の透明導電膜による共通電極が形成され、それに対向する第2のガラス基板122の内面には、一定幅の多数のストライプ状(直線状)の格子電極126が僅かな間隔を置いて一定のピッチで、やはり透明導電膜で形成されている。
【0035】
図では分かり易いように、各格子電極126の幅と間隔を大きくし、その数を少なくして示しているが、実際の格子電極は10〜100μm程度の狭い幅で多数形成され、その間隔はなるべく狭い方がよい(格子電極の幅によって3〜20μm以下)。
第1のガラス基板121の外側には第1の偏光板127が、第2のガラス基板122の外側には第2の偏光板128が、互いにその偏光軸を直交させるか又は平行にするように配設されている。
【0036】
そして、光源部11による白色光がこの液晶格子12の例えば第1の偏光板127側から照射されると、第1の偏光板を透過した光はその偏光軸の方向に偏光した直線偏光となって、第1のガラス基板121及び共通電極125を透過してTN液晶123に通過する。このとき、共通電極125と格子電極126との間に電圧が印加されていない部分では、その直線偏光が90°旋光され、格子電極126と第2のガラス基板122を透過して第2の偏光板128に達する。第2の偏光板128の偏光軸が第1の偏光板127の偏光軸と平行になっていれば、その直線偏光は第2の偏光板を殆ど透過できず、透過率が最低になる。
【0037】
一方、共通電極125と格子電極126との間に所定の電圧が印加されている部分では、TN液晶123を通過する直線偏光は旋光されなくなるため、第2の偏光板128の偏光軸が第1の偏光板127の偏光軸と平行になっていれば、その直線偏光は第2の偏光板を透過し、透過率は最高になる。共通電極125と格子電極126との間に印加される電圧が所定の電圧とゼロとの間の値の場合は、その印加電圧に応じて透過率が変化する。
第1の偏光板127の偏光軸と第2の偏光板128の偏光軸とが直交している場合には、共通電極125と格子電極126との間に印加する電圧と透過率との関係が逆になる。
【0038】
いずれにしても、多数の格子電極126を所定本ずつのグループに分けて、その各グループ内の各格子電極と共通電極125との間に印加する電圧を段階的に制御することによって、その部分の透過率を段階的に制御し、明るさが略正弦波状に変化する格子パターンを形成したり、グループ内の全ての格子電極126と共通電極125との間に電圧を印加しない(あるいは所定の電圧を印加する)ことによって、透過率が最低のマスク状態にしたりすることができる。
【0039】
液晶格子駆動制御部30は、位相シフト設定部31、格子強度設定部32、格子分割設定部33、液晶駆動信号作成部34、液晶格子ドライバ35、およびマスクエリア設定部36によって構成されている。
この液晶格子駆動制御部30はデータ処理部27によって制御され、投影する格子パターンの形、状強レベル、マスクする領域などの作成条件を、データ処理部27から位相シフト設定部31、格子強度設定部32、格子分割設定部33、およびマスクエリア設定部36に入力することによって、自在な形状と強度およびマスク領域をもった格子パターンを作成することができる。
【0040】
以下にその各部の機能について説明する。格子分割設定部33は、正弦波の一周期をn等分に分割するための分割条件を設定する。液晶格子12にM本の格子電極126が設けられている場合、nの倍数となる電極数mを一つの単位として、M本の格子電極126をM/m個のグループに分割する。それによって、m本の格子電極126によって一周期の正弦波格子縞を作成するため、M/m本の正弦波格子縞を作成する。なお、m=12又は24などで十分な精度の正弦波格子縞を生成できることが確認されている。
【0041】
格子強度設定部32は、正弦波の一周期がn分割されたときの正弦波強度に関するデータを作成して記憶する。nは変数であるため、分割された強度データは可変の値になる。正弦波の強度はバイアス強度と振幅によって決る。バイアス強度とは正弦波の振幅が0の場合の直流的なオフセット強度で、投影された格子パターンの背景の明るさを表わす。振幅は正弦波の大きさで、投影された格子パターンの明部と暗部の間のコントラストを表わす。そこで、正弦波の一周期をn分割したときの分割された各々の領域における正弦波の振幅とバイアス強度との和の強度を計算し、n個の強度データを数値配列情報としてメモリに記憶する。
【0042】
位相シフト設定部31は、正弦波格子の強度分布の位相を設定する。m本の格子電極126で1本の正弦波格子を作成する際、nが3の場合は2π/3、4の場合はπ/2のピッチで正弦波強度の位相をシフトさせる。位相シフトでは正弦波の強度データの値は変化せず、各格子電極126に印加する電圧の印加順序を変えるだけでよい。
以上によって、正弦波格子の作成とそれに位相シフトを与える条件の設定ができるが、この実施例ではさらにマスクエリア設定部36によって、格子パターンを投影しない(マスクする)領域の格子電極126を設定し、それには電圧を印加させないようにする。すなわち、その領域内の全ての格子電極126の強度データをゼロにする。
【0043】
このようにして作成されたM/m周期の正弦波格子縞を形成するm本ずつのグループの各格子電極126の各強度データと、マスク領域に設定されているか否かの情報とによって、液晶駆動信号作成部34によって液晶格子12を駆動する信号を作成する。TN液晶を用いた液晶格子12の場合、前述したように共通電極125と格子電極126との間に加わる実効電圧に応じて液晶層の光透過特性が決る。そこで、上述した正弦波強度データから、正弦波強度に対応する実効電圧値が得られるような液晶駆動信号を作成する。液晶格子12はスタティック駆動を行うため、液晶駆動信号は二値の強度レベルを持ったパルス信号である。
【0044】
一方の共通電極125に印加する共通信号に対して、格子電極126に印加する信号の位相を変えることによって実効電圧を変化させる。但し、マスク領域に設定されている格子電極126に対しては実効電圧がゼロになる信号にする。
この液晶駆動信号作成部34によって作成された液晶駆動信号を液晶格子ドライバ35に入力し、液晶格子12の共通電極125と各格子電極に対して液晶駆動信号に応じた実効電圧を印加して、光源部からの照射光の透過率を2次元的に変化させて、一部のエリアがマスクされた正弦波格子パターンを発生させる。
【0045】
図2に示した格子パターンLPは、明部と暗部が白黒の縞になっているが、この実施例では各格子縞の明暗はその配列方向に正弦波状に徐々に変化する。且つその正弦波状の変化の1周期(2π)の1/nずつ位相をずらした格子パターンをn回順次投影し、その都度計測対象物体の表面の変形格子パターンを撮像部16によって撮像してその二次元画像の強度データを画像メモリに記憶させ、その各回の画像データをデータ処理部17で解析して、計測対象物体の3次元形状の測定値を算出する。ここで、nは3以上の整数であり、例えばn=3,4,8,16などとする。
【0046】
この発明の3次元形状測定方法によって、一度に複数列の計測対象物体の3次元形状を測定する方法を図4によって説明する。
図4の(a)は、平面15上に半球状の計測対象物体14Aと14Bが交互に列設(各列の計測対象物体14A又は14Bは紙面に垂直な方向に並んでいる)されている。計測対象物体14Aと14Bは殆どおなじ物体であるが、説明の便宜上符号を区別している。
そして、図1の撮像部16で撮像した二次元画像データのうちデータ処理部17で演算(解析)に使用する範囲(実質的な撮像・演算範囲)を、計測対象物体14Aの列を含む範囲WAと計測対象物体14Bの列を含む範囲WBの2つに分けて設定する。範囲WAと範囲WBとは交互になる。
【0047】
まず、範囲WAを実質的な撮像・演算範囲とする場合には、図1の投影部10からは図4の(b)に示すように、平面15上の範囲WAに相当する帯状の領域にのみ正弦波状の格子パターンAを投影し、範囲WBに相当する帯状の領域には格子パターンAを投影しないようにマスクした状態にする。その格子パターンAの正弦波状に変化する位相を実線で示す1の状態から破線で示す2,3,4に示すようにπ/2ずつシフトさせて4回投影し、その都度計測対象物体14Aの表面の変形格子パターンを撮像部16で撮像し、その2次元画像データを画像メモリ19に記憶して、それをデータ処理部17で解析して、各列の各計測対象物体14Aの3次元形状の測定値を算出する。これは、前述したnが「4」の場合の例である。
【0048】
このとき、図4の(a)に示すように、例えば一番左の計測対象物体14Aのある点に投影された光線aの垂直方向の反射光a′、および中央の計測対象物体14Aのある点に投影された光線bの垂直方向の反射光は、撮像・演算範囲WA内にあるため撮像されて演算に使用されるが、左から2番目の計測対象物体14Bに対する中央の計測対象物体14Aからの多重反射による垂直方向の反射光Bx′は、撮像・演算範囲WA内にないので、仮に撮像されてもその画像データは解析(演算)に使用しない。
【0049】
次に、範囲WBを実質的な撮像・演算範囲とする場合には、図1の投影部10からは図4の(c)に示すように、平面15上の範囲WBに相当する帯状の領域にのみ正弦波状の格子パターンBを投影し、範囲WAに相当する帯状の領域には格子パターンBを投影しないようにマスクした状態にする。その格子パターンBの正弦波状に変化する位相を実線で示す1の状態から破線で示す2,3,4に示すようにπ/2ずつシフトさせて4回投影し、その都度計測対象物体14Bの表面の変形格子パターンを撮像部16で撮像し、その2次元画像データを画像メモリ19に記憶して、それをデータ処理部17で解析して、各列の各計測対象物体14Bの3次元形状の測定値を算出する。このときは、範囲WA内の反射光が撮像されたとしても、その画像データは解析(演算)に使用しない。
【0050】
このようにすれば、一度に多数の計測対象物体の3次元形状を測定することができ、撮像部16による撮影範囲内の計測対象物体の3次元形状の測定を2度に分けて行うことにはなるが、隣接する列の計測対象物体からの多重反射の影響をなくして、各計測対象物体の3次元形状を精度よく測定することができる。
なお、格子パターンを投影しないマスクエリアMAを設定するには、上述のように液晶格子を使用すれば容易に任意の領域に対して設定できるので好ましいが、それはこの発明による3次元形状測定方法を実施するために必須のことではなく、機械的な格子とマスク板とを組み合わせて実施することも可能である。予め決った形状及び配列の計測非対象物体を繰り返し測定するような場合には、それでも十分対応可能である。
【0051】
次に、この発明の他の実施形態について図5乃至図9によって説明する。
図5は、この発明による3次元形状測定装置の第2の実施形態の要部のみを模式的に示す構成図であって、図1と対応する部分には同一の符号を付してあり、それらの説明は省略する。図1に示したデータ処理部17、光源点灯制御部、液晶格子駆動制御部30、及び画像メモリ19も当然備えているが、図示を省略している。
この実施形態において、図1に示した第1の実施形態の3次元形状測定装置と相違するのは、投影部10が光源部11と2枚の液晶格子12X,12Yと投影レンズ13とによって構成されている点だけであり、その液晶格子12Xと液晶格子12Yとは、図3に示した格子電極126のストライプ方向が互いに直交するように配置されている。
【0052】
その2枚の液晶格子12X,12Yを、図3に示した液晶格子駆動制御部30の液晶格子ドライバ35を2個にした回路によって駆動制御することによって、平面15上の格子パターンLPの格子配列方向に隣接する複数の計測対象物体14A,14Bのうち、例えば図7に示すように、一方の計測対象物体14Aを含む所定の領域にのみ明暗が正弦波状に変化する格子パターンLPを投影し、他方の計測対象物体14Bを含む所定のエリア及び格子パターンLPの格子配列方向に直交する方向(帯状の格子が延びる方向)で隣接するエリアもマスクエリアMAとして、格子パターンLPを投影しないようにすることができる。
【0053】
それによって、格子パターンLPの格子配列方向に直交する方向からの多重反射の影響も防ぐことができる。これは、格子パターンLPの格子が延びる方向にも複数の計測対象物体が配列されている場合や、すり鉢状の凹部内の3次元形状を測定する場合などに有効である。
そして、図8に示すように、多数の計測対象物体が平面上に2次元的に(縦横に)規則性をもって(この例では等間隔に)配列されている場合、その全体に縦列に沿う方向に延びる格子パターン(実際はその格子配列方向の明暗が正弦波状に変化する)を投影するか、図9に示すように、各計測対象物体14を縦横に1個置きに含む市松模様状に、格子パターンを投影する領域と投影しない領域(マスクエリアMA)を交互に形成する状態とを切り替えることができる。
【0054】
図8に示すように全面に格子パターン投影して撮影した2次元の画像データをデータ処理部で解析して、適正な3次元形状の計測値が得られればよいが、異常な値を含む測定結果になった場合には、図9に示すように格子パターンを縦横1個置きの計測対象物体14を含む正方形の領域のみに市松模様状に投影するように、液晶格子12X,12Yの駆動状態を切り替えることができる。それによって、今計測しようとする計測対象物体14に対して、隣接する他の計測対象物体14からの多重反射を完全に防止することができる。
【0055】
図9に示す格子パターンの投影状態での計測対象物体14の3次元形状の測定が完了した後、格子パターンの投影領域とマスク領域とを逆転して、図9でマスクされている正方形の領域にのみ格子パターンを投影し、その領域にある計測対象物体14の3次元形状を測定する。こうして、全ての計測対象物体14の3次元形状を正確に測定することができる。
【0056】
図6は、この発明による3次元形状測定装置の第3の実施形態の要部のみを模式的に示す図5と同様な構成図であって、図1及び図5と対応する部分には同一の符号を付してあり、それらの説明は省略する。
この実施形態において、図5に示した第2の実施形態の3次元形状測定装置と相違するのは、投影部10における液晶格子を、ストライプ状格子電極を有する2枚の液晶格子12X,12Yに代えて、マトリクス状のドット電極を有する1枚の液晶格子12Dとした点だけである。
【0057】
この液晶格子12Dは、図3に示した液晶格子12のストライプ状の格子電極126に代えて、透明導電膜からなる多数の小さな正方形のドット電極が僅かな間隙をあけて縦横に整列してマトリクス状に形成されている。したがって、図3に示した液晶格子駆動制御部30と同様な液晶格子駆動制御回路によって、その各ドット電極と共通電極との間に印加する実効電圧を制御して、その各ドット電極ごとの光透過率を制御することができる。そのため、縦横いずれの方向に延びる格子パターンも生成することができ、且つ任意の領域を光透過率を最低にして格子パターンを投影しないマスク領域にすることもできる。
【0058】
それによって、図7に示すように特定の計測対象物体14Aを含む所定領域のみに格子パターンを投影したり、図8に示すように多数の計測対象物体14が設けられた平面全体に格子パターンを投影したり、図9に示すように、格子パターンを縦横1個置きの計測対象物体14を含む正方形の領域のみに市松模様状に投影するように切り替えたりすることが容易にできる。このように、1枚の液晶格子12Dで、第2実施例における2枚の液晶格子12X,12Yと同様な機能を果たすことができる。
【0059】
次に、この発明の第4の実施形態について図10乃至図12によって説明する。図10は、その3次形状測定装置の要部のみを模式的に示す構成図であり、図1と対応する部分には同一の符号を付している。
この3次形状測定装置は、撮影レンズ16aを備えた撮像部16の光軸16cを中心とする同一円周上の異なる位置(この例では180°離れた対向する位置)に、2個の投影部10A,10Bを、それぞれ光軸を撮像部16の光軸16cに対して反対側に同じ角度だけ傾けて設けている。
【0060】
各投影部10A,10Bは、図1における投影部10と同様に、光源部11、液晶格子12、および投影レンズ13によって構成されているが、この例では、液晶格子12と投影レンズ13を計測対象物体14が設けられている平面15に平行(光軸は垂直)に配置し、光源部11の光軸に対してアオリを持たせている。それによって、平面15及び計測対象物体14に対する投影距離の差による格子パターンのピントずれを防止するようにしている。この点は、前述の各実施例の投影部にも適用するとよい。
【0061】
これらの、撮像部16と2個の投影部12A,12Bは共通の支持体40に取り付けられている。また、図示を省略しているが、図1に示したデータ処理部17及び画像メモリ19と、各投影部10A,10Bに対してそれぞれ光源点灯制御部18および液晶格子駆動制御部30を備えている。
そして、2個の投影部10Aと10Bを任意に切り換えて使用することができ、いずれを使用するかによって、格子パターンの投影方向が変わることになる。
【0062】
表面反射率の高い凹凸面を持つ物体の3次元形状をこの発明による方法で計測する場合、図11に示すように、格子パターンの投影方向Pと撮像部による撮像方向Qとの角度関係によって、計測対象物体14の表面のある点で光が正反射して撮像部に入射してしまうことがある。その正反射が強く、撮像部であるCCDカメラの受光量の許容値を超えてしまうと、正確な計測ができなくなってしまう。
そこで、オペレータがそのような正反射が生じていることを認識したとき、あるいはデータ処理部が撮像された画像データを解析した結果が適性な値でなかった場合に、投影部を切り換えて、図12に示すように格子パターンの投影方向Pを変えることによって、撮像方向Qへの正反射をなくして、正常な計測ができるようにする。
【0063】
図11及び図12において、(a)は計測対象物体と格子パターンの投影方向及び反射方向と撮像方向を示し、(b)は投影する4回の位相の異なる格子パターンの明暗の変化を示している。この場合も多重反射を生起することが予測される領域には格子パターンを投影しないようにマスクするが、それは前述の各実施形態と同様であるから、説明を省略する。
【0064】
投影部を3個以上設けて、それらを切り換えて使用できるようにしてもよい。この実施形態によれば、正反射を防止できるだけでなく、計測対象物体の表面形状によって、格子パターンの投影方向が一定だと蔭になって投影できない部分が生じてしまうような場合にも、投影部を切り換えて格子パターンの投影方向を変えることによって、計測対象物体の全表面に格子パターンを投影することが可能になることもある。
また、1個の投影部を撮像部の光軸を中心とする同一円周上で回動させることができるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
この発明による、3次元形状測定方法および3次元形状測定装置は、複数の計測対象物体が隣接して設けられているような場合に、その各計測対象物体の各3次元形状を正確に効率よく測定するために有効である。
特に、ICやLSIのような半導体集積回路パッケージの実装面に形成されたBGAの半田ボールやCSPのバンプなどのように、平面上に規則的に配列された多数の物体の高さを含む3次元形状を計測するような場合に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明による3次形状測定装置の第1の実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】従来の3次元形状測定方法とこの発明による3次元形状測定方法との格子パターンの投影状態の相違を説明するための図である。
【図3】図1における液晶格子12の模式的な断面と液晶格子駆動制御部30のブロック構成をデータ処理部と共に示す図である。
【図4】この発明の3次形状測定方法によって一度に複数列の計測対象物体の3次元形状を測定する方法を説明するための図である。
【0067】
【図5】この発明による3次形状測定装置の第2の実施形態の要部のみを模式的に示す構成図である。
【図6】この発明による3次形状測定装置の第3の実施形態の要部のみを模式的に示す構成図である。
【図7】図5又は図6に示した3次形状測定装置による格子パターン投影状態の一例を示す図である。
【図8】図5又は図6に示した3次形状測定装置によるマスクエリアを設けない格子パターン投影状態の例を示す図である。
【0068】
【図9】図5又は図6に示した3次形状測定装置によるマスクエリアを市松状に設けた格子パターン投影状態の例を示す図である。
【図10】この発明による3次形状測定装置の第4の実施形態の要部のみを模式的に示す構成図である。
【図11】格子パターンの投影による正反射の発生例を説明するための図である。
【図12】同じくその格子パターンの投影方向を変えて正反射を防止した例を説明するための図である。
【0069】
【図13】従来の3次形状測定装置の要部のみを模式的に示す構成図である。
【図14】平面に格子パターンを投影した場合の格子縞とその明暗の変化波形を示す図である。
【図15】凹凸のある計測対象物体の表面に格子パターンを投影した場合の変形格子縞とその明暗の変化波形を示す図である。
【図16】従来の3次形状測定方法で計測対象物体の3次元形状を測定する場合の多重反射について説明するための図である。
【符号の説明】
【0070】
10,10A,10B:投影部 11:光源部 12,12X,12Y,12D:液晶格子 13:投影レンズ 14:計測対象物体 15:平面 16:撮像部
17:データ処理部(演算装置) 18:光源点灯制御部 19:画像メモリ
30:液晶格子駆動制御部 31:位相シフト設定部 32:格子強度設定部
33:格子分割設定部 34:液晶駆動信号作成部 35:液晶格子ドライバ
36:マスクエリア設定部 40:支持体
121:第1のガラス基板 122:第2のガラス基板 123:TN液晶
124:シール材 125:共通電極 126:格子電極 127:第1の偏光板
128:第2の偏光板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の計測対象物体が設けられた面に対して斜め方向から格子パターンを投影し、該格子パターンが投影された前記面を前記格子パターンの投影方向とは異なる方向から撮像し、その撮像した明暗のパターンを解析して前記計測対象物体の3次元形状を測定する3次元形状測定方法において、
前記格子パターンを投影する際に、前記面上の特定の計測対象物体の計測領域以外には前記格子パターンを投影しないようにマスクすることを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項2】
複数の計測対象物体が2次元的に規則性を持って配列されている面に対して斜め方向から格子パターンを投影し、該格子パターンが投影された前記面を前記格子パターンの投影方向とは異なる方向から撮像し、その撮像した明暗のパターンを解析して前記計測対象物体の3次元形状を測定する3次元形状測定方法において、
前記格子パターンを投影する際に、前記面上の特定の計測対象物体に対して少なくとも前記投影する格子パターンの格子配列方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアには前記格子パターンを投影しないようにマスクすることを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項3】
請求項2記載の3次元形状測定方法において、
前記格子パターンを投影する際に、前記面上の特定の計測対象物体に対して前記投影する格子パターンの格子配列方向に直交する方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアにも前記格子パターンを投影しないようにマスクすることを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の3次元形状測定方法において、
前記投影する格子パターンは、液晶格子を使用して照度分布が正弦波状に変化するように形成されたパターンであり、1回の計測において該格子パターンを、前記正弦波状の変化の1周期の1/nずつ位相をずらしてn回(nは3以上の整数)投影することを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項5】
複数の計測対象物体が設けられた面に対して斜め方向から格子パターンを投影する投影部と、該投影部によって格子パターンが投影された前記面を前記格子パターンの投影方向とは異なる方向から撮像する撮像部と、該撮像部によって撮像した明暗のパターンを解析して前記計測対象物体の3次元形状を測定するデータ処理部とを備えた3次元形状測定装置において、
前記投影部は、光源部と液晶格子と投影レンズとからなり、
前記光源部からの照射光に対する前記液晶格子の透過率を2次元的に変化させて格子パターンを生成させるとともに、該格子パターンを前記面に投影することにより該面上の特定の計測対象物体に対して多重反射光を生起することが想定されるエリアに対しては前記照射光の透過率を最低にするように、前記液晶格子を駆動制御する液晶格子駆動制御部を設けたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項6】
請求項5記載の3次元形状測定装置において、
前記液晶格子駆動制御部は、前記複数の計測対象物体が前記面上に2次元的に規則性を持って配列されている場合には、前記特定の計測対象物体に対して多重反射光を生起することが想定されるエリアとして、前記面上で前記特定の計測対象物体に対して少なくとも前記格子パターンの格子配列方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアに対しては前記照射光の透過率を最低にするように前記液晶格子を駆動制御することを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項7】
請求項5記載の3次元形状測定装置において、
前記液晶格子駆動制御部は、前記複数の計測対象物体が前記面上に2次元的に規則性を持って配列されている場合には、前記特定の計測対象物体に対して多重反射光を生起することが想定されるエリアとして、前記面上で前記特定の計測対象物体に対して前記格子パターンの格子配列方向および該方向に直交する方向でそれぞれ隣接する計測対象物体を含む所定エリアに対しては前記照射光の透過率を最低にするように前記液晶格子を駆動制御することを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の3次元形状測定装置において、
前記液晶格子駆動制御部は、前記光源部からの照射光の照度分布が正弦波状に変化するように前記液晶格子の透過率を2次元的に変化させて格子パターンを生成させるとともに、1回の計測において該格子パターンを、前記正弦波状の変化の1周期の1/nずつ位相をずらしてn回(nは3以上の整数)投影するように、前記液晶格子を駆動制御する手段を有することを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか一項に記載の3次元形状測定装置において、
前記投影部を、前記撮像部の光軸を中心とする同一円周上の異なる位置に複数個設け、その複数個の投影部を切り換えて使用できるようにしたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項1】
複数の計測対象物体が設けられた面に対して斜め方向から格子パターンを投影し、該格子パターンが投影された前記面を前記格子パターンの投影方向とは異なる方向から撮像し、その撮像した明暗のパターンを解析して前記計測対象物体の3次元形状を測定する3次元形状測定方法において、
前記格子パターンを投影する際に、前記面上の特定の計測対象物体の計測領域以外には前記格子パターンを投影しないようにマスクすることを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項2】
複数の計測対象物体が2次元的に規則性を持って配列されている面に対して斜め方向から格子パターンを投影し、該格子パターンが投影された前記面を前記格子パターンの投影方向とは異なる方向から撮像し、その撮像した明暗のパターンを解析して前記計測対象物体の3次元形状を測定する3次元形状測定方法において、
前記格子パターンを投影する際に、前記面上の特定の計測対象物体に対して少なくとも前記投影する格子パターンの格子配列方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアには前記格子パターンを投影しないようにマスクすることを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項3】
請求項2記載の3次元形状測定方法において、
前記格子パターンを投影する際に、前記面上の特定の計測対象物体に対して前記投影する格子パターンの格子配列方向に直交する方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアにも前記格子パターンを投影しないようにマスクすることを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の3次元形状測定方法において、
前記投影する格子パターンは、液晶格子を使用して照度分布が正弦波状に変化するように形成されたパターンであり、1回の計測において該格子パターンを、前記正弦波状の変化の1周期の1/nずつ位相をずらしてn回(nは3以上の整数)投影することを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項5】
複数の計測対象物体が設けられた面に対して斜め方向から格子パターンを投影する投影部と、該投影部によって格子パターンが投影された前記面を前記格子パターンの投影方向とは異なる方向から撮像する撮像部と、該撮像部によって撮像した明暗のパターンを解析して前記計測対象物体の3次元形状を測定するデータ処理部とを備えた3次元形状測定装置において、
前記投影部は、光源部と液晶格子と投影レンズとからなり、
前記光源部からの照射光に対する前記液晶格子の透過率を2次元的に変化させて格子パターンを生成させるとともに、該格子パターンを前記面に投影することにより該面上の特定の計測対象物体に対して多重反射光を生起することが想定されるエリアに対しては前記照射光の透過率を最低にするように、前記液晶格子を駆動制御する液晶格子駆動制御部を設けたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項6】
請求項5記載の3次元形状測定装置において、
前記液晶格子駆動制御部は、前記複数の計測対象物体が前記面上に2次元的に規則性を持って配列されている場合には、前記特定の計測対象物体に対して多重反射光を生起することが想定されるエリアとして、前記面上で前記特定の計測対象物体に対して少なくとも前記格子パターンの格子配列方向で隣接する計測対象物体を含む所定エリアに対しては前記照射光の透過率を最低にするように前記液晶格子を駆動制御することを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項7】
請求項5記載の3次元形状測定装置において、
前記液晶格子駆動制御部は、前記複数の計測対象物体が前記面上に2次元的に規則性を持って配列されている場合には、前記特定の計測対象物体に対して多重反射光を生起することが想定されるエリアとして、前記面上で前記特定の計測対象物体に対して前記格子パターンの格子配列方向および該方向に直交する方向でそれぞれ隣接する計測対象物体を含む所定エリアに対しては前記照射光の透過率を最低にするように前記液晶格子を駆動制御することを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の3次元形状測定装置において、
前記液晶格子駆動制御部は、前記光源部からの照射光の照度分布が正弦波状に変化するように前記液晶格子の透過率を2次元的に変化させて格子パターンを生成させるとともに、1回の計測において該格子パターンを、前記正弦波状の変化の1周期の1/nずつ位相をずらしてn回(nは3以上の整数)投影するように、前記液晶格子を駆動制御する手段を有することを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか一項に記載の3次元形状測定装置において、
前記投影部を、前記撮像部の光軸を中心とする同一円周上の異なる位置に複数個設け、その複数個の投影部を切り換えて使用できるようにしたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−275529(P2006−275529A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90427(P2005−90427)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000001960)シチズン時計株式会社 (1,939)
【出願人】(505111823)有限会社ソフトロン (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000001960)シチズン時計株式会社 (1,939)
【出願人】(505111823)有限会社ソフトロン (1)
【Fターム(参考)】
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