説明

GaN膜生成方法及び半導体素子並びにIII族窒化物の薄膜生成方法及びIII族窒化物の薄膜を有する半導体素子

【課題】結晶性の良いIII族窒化物を格子整合基板上に成長させる。
【解決手段】GaN膜を有する窒化物半導体素子10は、表面が平坦化されたZnO基板11の表面上に、GaN層12が形成される。GaN層12は、300℃以下の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第1の成膜工程と、上記第1の成膜工程により成膜されたGaN上に、550℃以上の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第2の成膜工程とにより成膜される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GaN膜を生成するGaN膜生成方法及びGaN膜を有する半導体素子並びにIII族窒化物の薄膜生成方法及びIII族窒化物の薄膜を有する半導体素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
III族の窒化物半導体の一つであるGaNは、青色LED(Light Emitting Diode)、青色レーザダイオードへの応用がされている。
【0003】
GaNは、主としてMOCVD(有機金属気相成長法)等により、サファイア(Al203)又は炭化シリコン(SiC)上にエピタキシャル成長させて生成している。
【0004】
しかしながら、GaNと、サファイア及び炭化シリコンとの間には格子不整合が存在する。例えば、GaNとサファイアとの間には23%の面内格子不整合があり、GaNと炭化シリコンとの間には3.5%の面内格子不整合がある。このため、エピタキシャル成長時においてGaNの結晶格子に加わる応力によってミスフィット転位が多数発生し、GaN層を貫通する貫通転位が発生し、良質の結晶を得ることができず、品質が低下してしまうという問題点があった。
【0005】
また、ZnOも、GaNのエピタキシャル成長のための基板として理論上用いることができることも知られている。
【0006】
ZnOは、GaNとの面内格子不整が2.2%でしかなく、C軸方向に対しても格子不整合が0.5%でしかないため、サファイア及び炭化シリコンと比べて格子不整合を低減することができる。
【0007】
しかしながら、ZnOは、次の(1)、(2)の問題があることから、GaNのエピタキシャル成長のための基板としては実際には用いられてはいなかった。
【0008】
(1)Znは蒸気圧が高く、ZnO基板の表面を平坦化することが困難である。
【0009】
(2)GaNは、ZnOと容易に反応するので、ZnOの表面に化合物層が形成されてしまい、格子整合の利点を生かせなかった。
【0010】
本発明者は、このような問題を解決するための発明を、国際特許出願PCT/IB2004/000916において提案した。具体的には、ZnO基板をZnOの板によって囲み加熱処理を行うことによって上記(1)の問題を解決し、GaNのエピタキシャル成長の温度を低温とすることにより上記(2)の問題を解決した。
【0011】
ところが、低温でGaNのエピタキシャル成長を行った場合、多くの点欠陥を含み結晶性が悪いという問題があった。
【0012】
また、ZnO基板のみならず、格子不整合が小さい格子整合基板上にIII族窒化物を成長させる場合も、安定して良質な薄膜を得ることができず、格子整合の利点を生かせなかった。例えば、6H−SiCや基板上にGaNを従来のようにMOCVDやMBE(Molecular Beam Epitaxy)を用いて700℃以上の成長温度で成長させた場合、成長初期から3次元成長が起こっていた。また、Hf基板は導電性が高く格子不整合が0.3%と小さいので、GaN成長用基板として注目されているものの、上述の成長方法では、HfとIII族窒化物が激しく反応し、良質なIII族窒化物を得ることが困難であった(例えば、非特許文献3参照。)。また、LiGaO、(MnZn)Fe、MgAl、LiAlO、NdGaO等の基板についても同様であった(例えば、非特許文献4参照。)。
【0013】
【非特許文献1】Davydov V.Yu et al., Phys.Stat.Solidi.(b),229(2002)
【非特許文献2】E.S.Hellman et al., MRS Internet J.Nitride Semicond.Res.1,16(1996)
【非特許文献3】J.Cryst.Growth, 178, 189-200(1977)
【非特許文献4】W.A.Doolittle et al., Solid-State Electronics 44(2000)229-238.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、以上のような課題を解決し、結晶性のよいGaNをZnO基板上にエピタキシャル成長させることができるGaN膜生成方法、及び、結晶性の良いGaN膜がZnO基板上に成膜された半導体素子を提供することを目的とする。
【0015】
また、結晶性の良いIII族窒化物を格子整合基板上に成長させることができるIII族窒化物の薄膜生成方法、及び、結晶性の良いIII族窒化物が格子整合基板上に成膜された半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るGaN膜生成方法は、表面が平坦化されたZnO基板の表面上に、300℃以下の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第1の成膜工程と、上記第1の成膜工程により成膜されたGaN上に、550℃以上の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第2の成膜工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
ここで、300℃以下の温度でZnO基板の表面上にGaNをエピタキシャル成長させると、ZnOとGaNとの間の界面反応が非常に小さい。また、550℃以上の温度でGaNをエピタキシャル成長させると、点欠陥の生成が抑えられる。
【0018】
また、本発明に係るGaN膜生成方法は、表面が平坦化されたZnO基板の表面上に、InGaNをエピタキシャル成長させる第1の成膜工程と、上記第1の成膜工程により成膜されたInGaN上に、320℃以下の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第2の成膜工程と、上記第2の成膜工程により成膜されたGaN上に、550℃以上の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第3の成膜工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
ここで、320℃以下の温度でInGaN上にGaNをエピタキシャル成長させると、InGaNが熱により破壊等をせず、品質悪化がしない。
【0020】
本発明に係る半導体素子は、表面が平坦化されたZnO基板と、当該ZnO基板上に成膜されたGaN膜とを有し、上記GaN膜は、300℃以下の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第1の成膜工程と、上記第1の成膜工程により成膜されたGaN上に、550℃以上の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第2の成膜工程とにより成膜されたことを特徴とする。
【0021】
ここで、300℃以下の温度でZnO基板の表面上にGaNをエピタキシャル成長させると、ZnOとGaNとの間の界面反応が非常に小さい。また、550℃以上の温度でGaNをエピタキシャル成長させると、点欠陥の生成が抑えられる。
【0022】
また、本発明に係る半導体素子は、表面が平坦化されたZnO基板と、当該ZnO基板面上に成膜されたInGaN層と、当該InGaN層上に成膜されたGaN膜とを有し、上記InGaN層は、表面が平坦化されたZnO基板の表面上にInGaNをエピタキシャル成長させる第1の成膜工程により成膜され、上記GaN膜は、上記InGaN層上に320℃以下の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第2の成膜工程と、上記第2の成膜工程により成膜されたGaN上に、550℃以上の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第3の成膜工程とにより成膜されたことを特徴とする。
【0023】
ここで、320℃以下の温度でInGaN上にGaNをエピタキシャル成長させると、InGaNが熱により破壊等をせず、品質悪化がしない。
【0024】
また、本発明に係るGaN結晶は、300℃以下の温度によりエピタキシャル成長して生成された第1のGaN層と、上記第1のGaN層上に形成され、550℃以上の温度によりエピタキシャル成長して生成された第2のGaN層とを備えることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係るInGaN/GaN結晶は、エピタキシャル成長して生成されたInGaN層と、320℃以下の温度によりエピタキシャル成長して生成された第1のGaN層と、上記第1のGaN層上に形成され、550℃以上の温度によりエピタキシャル成長して生成された第2のGaN層とを備えることを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係るIII族窒化物の薄膜生成方法は、表面が平坦化されたIII族窒化物に対する格子整合基板の表面上に、300℃以下の温度でIII族窒化物をエピタキシャル成長させる第1の成膜工程と、上記第1の成膜工程により成膜されたIII族窒化物上に、550℃以上の温度でIII族窒化物をエピタキシャル成長させる第2の成膜工程とを含むことを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る半導体素子は、表面が平坦化されたIII族窒化物に対する格子整合基板と、当該格子整合基板上に成膜されたIII族窒化物膜とを有し、上記III族窒化物膜は、300℃以下の温度でIII族窒化物をエピタキシャル成長させる第1の成膜工程と、上記第1の成膜工程により成膜されたIII族窒化物上に、550℃以上の温度でIII族窒化物をエピタキシャル成長させる第2の成膜工程とにより成膜されたことを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係るIII族窒化物結晶は、300℃以下の温度によりエピタキシャル成長して生成された第1のIII族窒化物層と、上記第1のIII族窒化物層上に形成され、550℃以上の温度によりエピタキシャル成長して生成された第2のIII族窒化物層とを備えることを特徴とする。
【0029】
ここで、上記第1の成膜工程では上記特定温度以下で第1のIII族窒化物層をエピタキシャル成長させ、上記第2の成膜工程では上記特定温度以上で第2のIII族窒化物層をエピタキシャル成長させることにより、上記第2の成膜工程において上記第1のIII族窒化物層が上記格子整合基板の完全性の高い良質な結晶情報を上記第2のIII族窒化物層に伝えるため、上記第2のIII族窒化物層の成長時の点欠陥の生成が抑えられる。さらに、上記第2の成膜工程において上記特定温度以上で上記第2のIII族窒化物層を成長させるため、上記第1のIII族窒化物層の成長時に存在していた微細なグレインが融合・消滅する。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るGaN膜生成方法では、ZnO上にGaNを成膜することができるとともに、成膜したGaNの品質を高くすることができる。
【0031】
また、本発明に係る半導体素子、GaN結晶及びInGaN/GaN結晶は、ZnO基板上にGaNが成膜されており、そのGaN膜の品質が高い。
【0032】
また、本発明に係るGaN膜生成方法では、ZnO上にGaNを成膜しているため、ZnO基板が導体であることから当該ZnOを半導体の下部の電極とすることができる。
【0033】
また、本発明に係るIII族窒化物の薄膜生成方法では、表面が平坦化されたIII族窒化物に対する格子整合基板の表面上に、300℃以下の温度でIII族窒化物をエピタキシャル成長させ、このIII族窒化物上に、550℃以上の温度でIII族窒化物をさらにエピタキシャル成長させることにより、界面反応を抑制し、結晶性のよいIII族窒化物の薄膜を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は、G
aN膜を有する半導体素子及びその製造プロセスに適用される。また、本発明は、エピタキシャル成長させるIII族窒化物と格子不整が小さい格子整合基板を用いた半導体素子及びその製造プロセスに適用される。
【0035】
なお、本明細書において、格子不整合は、〔(膜結晶の格子定数)−(基板結晶の格子定数)〕/(基板結晶の格子定数)で表されるものとし、格子定数は、単位結晶の繰り返し周期を表すものとする。また、格子整合基板は、膜結晶と格子不整合が小さい基板であり、より具体的には、例えば、格子不整合が16%以下といったものである。
【0036】
第1の実施形態
まず、第1の実施形態の半導体製造プロセスについて説明をする。
【0037】
(半導体の構成)
第1の実施形態の半導体素子製造プロセスでは、図1に示すような、ZnO基板11上にGaN層12が形成された窒化物半導体素子10を製造する。
【0038】
窒化物半導体素子10は、図1に示すように、ZnOからなるZnO基板11の(0001)面又は(000−1)面に対して、六方晶であるGaNのc軸が垂直となるように配向されたGaN層12を有する。また、このGaN層12は、ZnO基板11上に低温(300℃以下)でエピタキシャル成長して成膜された第1のGaN層13と、第1のGaN層13上に高温(550℃以上)でエピタキシャル成長して成膜された第2のGaN層14とから構成されている。
【0039】
ZnO基板11を構成するZnOは、ウルツ鉱型の結晶構造を有し、格子定数はa=3.252Åであり、禁制帯幅が3.2eV、励起子の結合エネルギーが60meVである。
【0040】
また、ZnO基板11上に積層形成されるGaN層12を構成するGaNもウルツ鉱型の結晶構造(図2参照。)を有し、格子定数はa=3.189Åであり、禁制帯幅が3.4eV、励起子の結合エネルギーが21meVである。
【0041】
このような結晶構造からなるZnO及びGaNは、互いに格子定数がほぼ等しいため、格子不整を極力低減させることが可能となる。
【0042】
(全体フロー)
つぎに、窒化物半導体素子10の製造するための各工程について説明をする。
【0043】
窒化物半導体素子10を製造する場合、図3に示すように、ZnO基板の平坦化工程(S11)、GaN層の低温成膜工程(S12)、GaN層の高温成膜工程(S13)という工程を順番に行う。
【0044】
(平坦化工程S11)
平坦化工程S11では、先ず、基板表面が(0001)面又は(000−1)面となるようにZnO基板11を切り出す。
【0045】
続いて、平坦化工程S11では、切り出したZnO基板11の(0001)面又は(000−1)面を例えばダイヤモンドスラリーを使用して機械研磨する。この機械研磨では、使用するダイヤモンドスラリーの粒径を徐々に微細化してゆき、最後に粒径約0.5μmのダイヤモンドスラリーで鏡面研磨する。このとき、更にコロイダルシリカを用いて研磨することにより、表面粗さのrmsが10Å以下となるまで平坦化させてもよい。
【0046】
続いて、平坦化工程S11では、この機械研磨されたZnO基板11を、800℃以上の温度に制御された高温オーブン内において、図4に示すようにZnOの焼結体で周囲を箱状に囲んで加熱処理する。かかる場合において、ZnO基板11をZnO焼結体により包囲していればよく、また包囲する焼結体によりZnO基板11全てを包み込むことは必須とはならない。また、例えばZnO焼結体からなる坩堝を作製してその中にZnO基板11を載置するようにしてもよい。また、ZnO焼結体からなる箱を作製してその中にZnO基板11を載置するようにしてもよい。
【0047】
Znの蒸気圧は比較的高いため、基板材料として用いるZnO基板11を加熱処理するとこれが分解してしまうという問題点があったが、図4の如くZnO焼結体により包囲したZnO基板11を加熱することにより、いわばZnOの蒸気圧をかけた状態で加熱処理することができるため、ZnO基板11自体の分解を抑制することが可能となる。
【0048】
これは、以下に説明する理由から導くことができる。即ち、Znの蒸気圧は比較的に高いため、周囲をZnO焼結体で包囲しない場合には、次の反応2ZnO=2Zn+O2に基づいてZnが効率よくZnO基板11から除去されることになる。これに対して、ZnO基板11の周囲をZnO焼結体で包囲することにより、かかるZnO焼結体からZnO基板周囲の気相中へZnが逃散する結果、かかる気相中におけるZn濃度が高くなる。このため、ZnO基板11中のZnが気相中へ逃散するいわゆる逃散能を低くすることができる結果、ZnO基板11自体の分解を抑制することできるためである。
【0049】
ちなみに、ZnO基板11中のZnの気相中への逃散を抑えるためには、その周囲をZnO焼結体で包囲する以外に、Znを含む材料で包囲するようにしてもよい。Znを含む材料の例として、例えばZnO単結晶を用いてもよいし、Znの板を用いてもよい。かかる場合においても同様に、ZnO基板11自体の分解を抑制することできる。
【0050】
図5(A)は、この1150℃で6.5時間加熱処理したZnO基板11の(0001)面を原子間力顕微鏡で観察した結果を示している。この図5(A)より、曲線状の原子ステップがZnO基板11の(0001)面上において形成されているのが分かる。図5(B)は、1150℃で3.5時間加熱処理したZnO基板11の(000−1)面を原子間力顕微鏡で観察した結果を示している。この図5(B)より、滑らかな直線状の原子ステップがZnO基板11の(000−1)面上において規則的に形成されているのが分かる。なお、各原子ステップの高さをこの原子間力顕微鏡を用いて測定した結果、約0.5nmであった。
【0051】
即ち、上述の条件に基づいてZnO基板11を加熱処理することにより、原子ステップが形成されたZnO基板11を結晶成長用基板として適用することが可能となる。この原子ステップが観察されることは、基板表面を最も平坦な状態に仕上げることができ、良好なGaN薄膜を形成させることが可能となる。またこの原子ステップは、GaNのエピタキシャル成長における核となりうることから、更に良好な成膜環境を作り上げることも可能となる。
【0052】
また、ZnO基板11は、導体であるため、当該ZnO自体を電極とすることができる。従って、サファイア基板等の絶縁基板とは異なり、GaNの下部を電極とした半導体を製造することができ、製造時の工程を簡略化することができる。
【0053】
(低温成膜工程S12)
つぎに、低温成膜工程S12では、平坦化工程S11によりZnO基板11の平坦化した面上に、パルスレーザ堆積法(以下、PLD法)により、第1のGaN層13をエピタキシャル成長させる。
【0054】
このとき、GaNの成長時の温度を300℃以下とする。さらに、GaNの成長時における初期の成長速度を、10nm/時間とする。
【0055】
第1のGaN層13の成長時の温度を300℃以下とする理由は、ZnOとGaNとの界面で界面反応が生じずに、界面反応層が形成されない温度とするためである。
【0056】
図6は、PLD法によりZnO基板11の平坦化した面上にGaNを成長させた後の当該GaNの表面を、原子間力顕微鏡で観察した結果の図を示している。なお、図6の左側は写真に基づく図面であり、右側はその模式図である。
【0057】
図6(A)は成長温度を室温としたときの表面の観察結果であり、図6(B)は成長温度を100℃としたときの表面の観察結果であり、図6(C)は成長温度を300℃としたときの表面の観察結果であり、図6(D)は成長温度を650℃としたときの表面の観察結果である。
【0058】
成長温度が300℃以下の場合には、図6の(A)〜(C)に示すように、GaNの表面に直線状の原子ステップが規則的に形成されていることがわかる。なお、室温の場合の各原子ステップの高さを原子間力顕微鏡で測定すると、図7に示すように、約0.5nmであった。なお、図7は、図6(A)の直線の範囲の高さを表している。またEBSD測定をすると、この第1のGaN層13は、成長温度が300℃以下の場合には、ツイスト角が0.3°以下となる。
【0059】
このように原子ステップが形成されるということは、GaNの原子層が一層ずつ整然と積層されていることを示している。
【0060】
これに対して、成長温度が650℃の場合には、図6の(D)に示すように、GaNの表面に原子ステップは観察されない。つまり、良質な結晶構造となっていない。
【0061】
また、図8は、PLD法によりZnO基板11の平坦化した面上にGaNを成長させた後の当該GaNの表面を、反射光速電子線回折(RHEED)法により観察した結果を示す図である。なお、図8の左側は写真に基づく図面であり、右側はその模式図である。
【0062】
図8(A)は成長温度を室温としたときのRHEED像であり、図8(B)は成長温度を100℃としたときのRHEED像であり、図8(C)は成長温度を300℃としたときのRHEED像であり、図8(D)は成長温度を650℃としたときのRHEED像である。
【0063】
成長温度が300℃以下の場合には、図8の(A)〜(C)に示すように、シャープな縞の形状(ストリーキーパターン)が観察され、良質な結晶が成長していることがわかる。
【0064】
これに対して、成長温度が650℃の場合には、図8の(D)に示すように、シャープな縞の形状が得られず、良質な結晶構造となっていない。
【0065】
以上のようにGaNの成長温度を300℃以下とすることで、ZnOとの界面反応が抑制され、ZnOとの間の格子整合の利点を生かしたエピタキシャル成長を行わせることができるようになることがわかる。
【0066】
また、PLD法に基づくGaNの低温成膜工程S12において、初期の成長速度を10nm/時間以下とするのは、つぎのような理由による。
【0067】
PLD法に基づくGaNの蒸着過程において、反射光速電子線回折(RHEED)法に基づいて、リアルタイムに状態変化を測定した。この結果を、図9に示す。
【0068】
図9(A)は、低温成膜工程S12において10nm/時間の成長速度でGaNを640秒間成長させ、その後、35nm/時間の成長速度でGaNを成長させた場合の反射光速電子線回折(RHEED)の検出量の時間変化を示す図である。図9(B)は、低温成膜工程S12において、初めから35nm/時間の成長速度でGaNを成長させた場合の反射光速電子線回折(RHEED)の検出量の時間変化を示す図である。
【0069】
図9(A)のグラフは、初期段階(成長速度が10nm/時間)でも、後段階(成長速度が35n/時間)でも、RHEEDの検出量の増減が一定周期で繰り返されている。これは、一つの周期が原子1つの層を示している。従って、初期段階(成長速度が10nm/時間)で、5原子層分のGaNが積層されていることがわかる。
【0070】
これに対して、図9(B)に示すように、初めから35nm/時間といったような高速成長をさせた場合には、RHEEDの検出量の増減の周期波形がほとんど見られず、GaN層の結晶構造が崩れていることがわかる。
【0071】
このように、PLD法によりZnO基板11の平坦化した面上にGaNを成長させる場合、初期段階から35nm/時間というような高速度で結晶成長させると、結晶品質が悪くなってしまう。これに対して、初期段階で成長速度を10nm/時間といったような低速度で成長させると結晶品質がよく、さらに、5原子層程度の低速度成長させたのちであれば、その後に高速成長させたとしてもそのまま結晶品質が保たれる。
【0072】
従って、低温成膜工程S12のPLD法によりZnO基板11の平坦化した面上にGaNを成長させる場合、まず、初期段階では10nm/時間以下の成長速度でGaNを成長させ、数原子層分(例えば5原子層分)積層したのちに、高速度に結晶成長をさせるようにすればよい。
【0073】
つぎに、PLD法について説明をする。
【0074】
PLD法では、例えば図10に示すようなPLD装置30を用いてGaN層12をZnO基板11上に堆積させる。
【0075】
PLD装置30は、内部に充填されたガスの圧力及び温度を一定に保つために密閉空間を形成するチャンバ31を備えている。チャンバ31内には、ZnO基板11とターゲット32とが対向して配置されている。ここで、ターゲット32となるのは、ガリウム金属である。
【0076】
また、PLD装置30は、波長が248nmの高出力のパルスレーザを出射するKrFエキシマレーザ33を備えている。KrFエキシマレーザ33から出射されたパルスレーザ光は、レンズ34により焦点位置がターゲット32近傍となるようにスポット調整され、チャンバ31の側面に設けられた窓31aを介してチャンバ31内に配設されたターゲット32表面に対して約30°の角度で入射する。
【0077】
また、PLD装置30は、チャンバ31内へ窒素ガスを注入するためのガス供給部35と、その窒素ガスをラジカル化するラジカル源36とを備えている。窒素ラジカル源35は、ガス供給部35から排出された窒素ガスを、高周波を用いて一旦励起することにより窒素ラジカルとし、その窒素ラジカルをチャンバ31内に供給する。なお、チャンバ31とガス供給部35との間には、窒素ラジカルガス分子とパルスレーザ光の波長との関係においてZnO基板11への吸着状態を制御すべく、ガスの濃度を制御するための調整弁36aが設けられている。
【0078】
また、PLD装置30は、チャンバ31内の圧力を制御するための圧力弁37とロータリーポンプ38とを備えている。チャンバ31内の圧力は、減圧下で成膜するPLD法のプロセスを考慮しつつ、ロータリーポンプ38により例えば窒素雰囲気中において所定の圧力となるように制御される。
【0079】
また、PLD装置30は、パルスレーザ光が照射されている点を移動するために、ターゲット32を回転させる回転軸39を備えている。
【0080】
以上のPLD装置30では、チャンバ31内に窒素ガスを充満させた状態で、ターゲット32を回転軸39を介して回転駆動させつつ、パルスレーザ光を断続的に照射する。このことにより、ターゲット32表面の温度を急激に上昇させ、Ga原子が含まれたアブレーションプラズマを発生させることができる。このアブレーションプラズマ中に含まれるGa原子は、窒素ガスとの衝突反応等を繰り返しながら状態を徐々に変化させてZnO基板11へ移動する。そして、ZnO基板11へ到達したGa原子を含む粒子は、そのままZnO基板11上の(0001)面又は(000−1)面に拡散し、格子整合性の最も安定な状態で薄膜化されることになる。
【0081】
このとき、ZnO基板11の温度は、300℃以下にする。
【0082】
その結果、GaN層12が形成されることとなる。
【0083】
なお、GaN層の低温成膜工程S12でのGaNのエピタキシャル成長の手法は、PLD法に限定されるものではなく、例えば分子線エピタキシャル(MBE)法やスパッタリング法等、他の物理気相蒸着(PVD)法に基づいて作製してもよい。また、物理気相蒸着(PVD)法ではなく、例えばMOCVD法を利用した化学気相蒸着(CVD)法に基づいて作製してもよい。
【0084】
(高温成膜工程S13)
つぎに、高温成膜工程S13では、低温成膜工程S12で成膜された第1のGaN層13上にPLD法により、第2のGaN層14をエピタキシャル成長させる。このとき、GaNの成長時の温度を550℃以上とする。
【0085】
高温成膜工程S13において、第2のGaN層14の成長時の温度を550℃以上とする理由は、GaN層がエピタキシャル成長する際に点欠陥の発生が充分に抑制される温度とするためである。
【0086】
図11に、GaN膜に対して、HeCdレーザを照射した場合の発光光量の周波数特性図を示す。図11のAは、室温で成長させたGaNに対してHeCdレーザを照射した場合の特性を示すグラフであり、図11のBは、550℃で結晶成長させたGaNに対してHeCdレーザを照射した場合の特性を示すグラフである。このように、室温で結晶成長したGaN膜は点欠陥を多く含むために励起されたキャリアが非輻射再結合し、発光が観測されない。これに対して、550℃で結晶成長した場合には、発光が観測され、点欠陥が非常に少ないことがわかる。つまり、高温成膜工程S13により、低温成膜工程S12で成膜された際に生じた微細なグレインが融合、消滅したと考えられる。
【0087】
なお、高温成膜工程S13でのPLD法は、低温成膜工程S12での方法と同一である。つまり、高温成膜工程S13でも、PLD装置30を用いてGaN層を成膜する。もっとも、高温成膜工程S13の場合、ZnO基板11の温度は、550℃以上にする。
【0088】
また、高温成膜工程S13でのGaNのエピタキシャル成長の手法は、PLD法に限定されるものではなく、例えば分子線エピタキシャル(MBE)法やスパッタリング法等、他の物理気相蒸着(PVD)法に基づいて作製してもよい。また、物理気相蒸着(PVD)法ではなく、例えばMOCVD法を利用した化学気相蒸着(CVD)法に基づいて作製してもよい。
【0089】
(GaN層の具体的な製造例、及び、その測定結果)
具体的に例えば次のような条件でGaN層12のエピタキシャル成長を行った。
【0090】
低温成膜工程S12では、ターゲット32は、Ga金属(純度99.99%)で構成した。ターゲット32は、ZnO基板11における(0001)面又は(000−1)面に対して平行となるように配置した。窒素源としてRFプラズマ・ラジカル窒素源を320Wで用い、成長圧力は8×10−6Torrとした。KrFエキシマレーザ33から出射するパルスレーザ光を、パルス周波数が10Hzとし、エネルギー密度を1〜3J/cm2とした。GaN層12の成長速度は、10nm/時間であった。
【0091】
そして、低温成膜工程S12では、ZnO基板11の基板温度を室温とした。
【0092】
また、高温成膜工程S13では、ターゲット32は、Ga金属(純度99.99%)で構成した。ターゲット32は、ZnO基板11における(0001)面又は(000−1)面に対して平行となるように配置した。窒素源としてRFプラズマ・ラジカル窒素源を320Wで用い、成長圧力は8×10−6Torrとした。KrFエキシマレーザ33から出射するパルスレーザ光を、パルス周波数が50Hzとし、エネルギー密度を1〜3J/cm2とした。GaN層12の成長速度は、35nm/時間であった。
【0093】
そして、高温成膜工程S13では、ZnO基板11の基板温度を650℃とした。
【0094】
このように生成した窒化物半導体素子10に対してX線回折測定を行った。
【0095】
0002回折を観測するときに窒化物半導体素子10を回転させ、その回転角に対するX線量を測定すると山型のカーブが得られる。0002回折のX線量のピークの1/2の値(半値幅)は0.08度であった。また−2024回折を観測するときに窒化物半導体素子を10を回転させ、その回転角に対するX線量を測定すると山型のカーブが得られる。−2024回折のX線量のピークの1/2の値(半値幅)は0.09度であった。
【0096】
このように、本発明によれば、表面が平坦化したGaN層12が成膜されることがわかる。
【0097】
なお、低温成膜工程S12でのGaN層の成膜を行わなかった場合、つまり、ZnO基板11に直接650℃でのPLD法によるGaNをエピタキシャル成長させた場合の0002回折のX線量の半値幅は0.5度程度、−2024回折のX線量の半値幅は0.7度程度となる。このように、低温成膜工程S12でのGaN層の成膜を行わなかった場合には、表面が荒れたGaN層が成膜されてしまう。
【0098】
第2の実施形態
つぎに、第2の実施形態の半導体製造プロセスについて説明をする。
【0099】
(半導体の構成)
第2の実施形態の半導体素子製造プロセスでは、図12に示すような、ZnO基板41上にInGaN層42が形成され、さらにその上にGaN層43が形成された窒化物半導体素子40を製造する。
【0100】
窒化物半導体素子40は、ZnOからなるZnO基板41の(0001)面又は(000−1)面に対して、InGaNのc軸が垂直となるように配向されたInGaN層42を有する。さらに、窒化物半導体素子40は、InGaN層42上に、ZnO基板41の(0001)面又は(000−1)面に対して、GaNのc軸が垂直となるように配向されたGaN層43を有する。また、GaN層43は、InGaN層42上に低温(320℃以下)でエピタキシャル成長して成膜された第1のGaN層44と、第1のGaN層33上に高温(550℃以上)でエピタキシャル成長して成膜された第2のGaN層45とから構成されている。
【0101】
ZnO及びInGaNは、互いに格子定数がほぼ等しいため、格子不整を極力低減させることが可能となる。
【0102】
(全体フロー)
つぎに、窒化物半導体素子40の製造するための各工程について説明をする。
【0103】
窒化物半導体素子40を製造する場合、図13に示すように、ZnO基板の平坦化工程(S21)、InGaN層の成膜工程(S22)、GaN層の低温成膜工程(S23)、GaN層の高温成膜工程(S24)という工程を順番に行う。
【0104】
(平坦化工程S21)
平坦化工程S21では、上述した第1の実施形態におけるステップS11の平坦化工程と同一の処理を行う。
【0105】
(InGaN成膜工程S22)
つぎに、InGaN成膜工程S22では、PLD法により、ZnO基板41の平坦化した面上にInGaNをエピタキシャル成長させて、InGaN層42を成膜する。
【0106】
InGaNは、格子定数がGaNよりもZnOに近い。このため、GaN層とZnO基板との間にこのInGaN層42を設けると、GaN層の結晶品質の向上が図れる。
【0107】
PLD法は、第1の実施形態での方法と同一である。ただし、チャンバ31内に配置されるターゲット32は、InGa金属である。
【0108】
また、PLD法に限らず、MBE法等の物理気相蒸着(PVD)法、例えばMOCVD法を利用した化学気相蒸着(CVD)法を用いてInGaN層を成膜してもよい。
【0109】
(低温成膜工程S23)
つぎに、低温成膜工程S23では、PLD法により、InGaN層42上に、第1のGaN層44をエピタキシャル成長させる。このとき、GaNの成長時の温度を320℃以下とする。
【0110】
第1のGaN層44の成長時の温度を320℃以下とする理由は、InGaNが熱に弱く、高い温度でGaNを成膜することができないためである。つまり、GaNの成長時の温度を320℃以下とすることで、InGaNを破壊することなく、GaNを成膜することができる。
【0111】
図14に、ステップS22で成膜されたInGaN(In:20%,GaN:60%)を超高真空中で加熱処理した場合のInGaNの表面状態を示す。なお、図14の左側は写真に基づく図面であり、右側はその模式図である。
【0112】
図14(A)は、室温の場合のInGaNの表面状態である。図14(B)は、320℃の場合のInGaNの表面状態である。図14(C)は、445℃の場合のInGaNの表面状態である。これらの図に示すように、室温及び320℃では、InGaNが分解して表面がほとんど荒れていないが、445℃となると、InGaNが分解して表面が荒れてしまっていることがわかる。従って、低温成膜工程23では、GaNの成長時の温度を320℃以下とするわけである。
【0113】
PLD法は、第1の実施形態の低温成膜工程S12での方法と同一である。
【0114】
(高温成膜工程S24)
つぎに、高温成膜工程S24では、低温成膜工程S23で成膜された第1のGaN層44上にPLD法により、第2のGaN層45をエピタキシャル成長させる。このとき、GaNの成長時の温度を550℃以上とする。
【0115】
高温成膜工程S24において、GaNの成長時の温度を550℃以上とする理由は、GaN層がエピタキシャル成長する際に点欠陥の発生が充分に抑制される温度とするためである。
【0116】
つまり、低温成膜工程S23で低温で成膜された際に生じている微細なグレインは融合、消滅する。
【0117】
なお、低温成膜工程23により既にInGaN層42上にGaN層が成膜されているので、当該InGaN層42には熱による影響はない。
【0118】
PLD法は、第1の実施形態の高温成膜工程S13での方法と同一である。つまり、高温成膜工程S24でも、PLD装置30を用いてGaN層を成膜する。
【0119】
(GaN層の具体的な製造例、及び、その測定結果)
具体的に例えば次のような条件でInGaN層42,GaN層43のエピタキシャル成長を行った。
【0120】
InGaN成膜工程S22では、ターゲット32は、InGa金属(In:18%、Ga:82%)で構成した。ターゲット32は、ZnO基板41における(0001)面又は(000−1)面に対して平行となるように配置した。窒素源としてRFプラズマ・ラジカル窒素源を320Wで用い、成長圧力は8×10−6Torrとした。KrFエキシマレーザ33から出射するパルスレーザ光を、パルス周波数が10Hzとし、エネルギー密度を1〜3J/cm2とした。InGaN成膜工程S22では、ZnO基板41の基板温度を室温とした。
【0121】
InGaN成膜工程S22では、InGaNを5原子層分体積させた。
【0122】
GaNの低温成膜工程S23では、ターゲット32は、Ga金属(純度99.99%)で構成した。ターゲット32は、ZnO基板41における(0001)面又は(000−1)面に対して平行となるように配置した。窒素源としてRFプラズマ・ラジカル窒素源を320Wで用い、成長圧力は8×10−6Torrとした。KrFエキシマレーザ33から出射するパルスレーザ光を、パルス周波数が10Hzとし、エネルギー密度を1〜3J/cm2とした。GaN層44の成長速度は、10nm/時間であった。
【0123】
そして、GaNの低温成膜工程S23では、ZnO基板41の基板温度を室温とした。
【0124】
GaNの低温成膜工程S23では、GaNを10nm堆積させた。
【0125】
また、GaNの高温成膜工程S24では、ターゲット32は、Ga金属(純度99.99%)で構成した。ターゲット32は、ZnO基板41における(0001)面又は(000−1)面に対して平行となるように配置した。窒素源としてRFプラズマ・ラジカル窒素源を320Wで用い、成長圧力は8×10−6Torrとした。KrFエキシマレーザ33から出射するパルスレーザ光を、パルス周波数が50Hzとし、エネルギー密度を1〜3J/cm2とした。GaN層12の成長速度は、35nm/時間であった。
【0126】
そして、高温成膜工程S24では、ZnO基板41の基板温度を650℃とした。
【0127】
このように生成した窒化物半導体素子40に対してX線回折測定を行った。
【0128】
0002回折を観測するときに窒化物半導体素子40を回転させ、その回転角に対するX線量を測定すると山型のカーブが得られる。0002回折のX線量のピークの1/2の値の幅(半値幅)は、0.029度であった。また、−2024回折を観察するときに窒化物半導体素子40を回転させ、その回転角に対するX線量を測定すると、山型のカーブが得られる。−2024方向のX線量のピーク値に対する1/2の値の角度幅(半値幅)は、0.079度であった。
【0129】
なお、現在、MOCVD法を用いて量産されているGaNの0002回折のX線量の半値幅は0.1度程度、−2024回折のX線量の半値幅は0.11度程度であるので、大幅に特性を改善できることがわかる。
【0130】
た、InGaN層42を成膜した後、GaNの低温成膜工程S23を行わずに、直接GaNの高温成膜工程S24を行った場合、GaNの0002回折半値幅は0.4度、−2024回折半値幅は0.6度となり、GaN層の特性が悪く、GaNの低温成膜工程S23が必要であることがわかる。
【0131】
また、また、PLD法に基づくInGaN及びGaNの蒸着過程において、反射光速電子線回折(RHEED)法に基づいて、リアルタイムに状態変化を測定した。
【0132】
この結果を、図15(A)に示す。なお、図15(B)は、比較例である。この比較例は、InGaN成膜工程S22でのInGaN層の成膜を行わなかった場合、つまり、ZnO基板41に室温でGaNを直接PLD法によるエピタキシャル成長させた場合の測定結果である。
【0133】
図15(A)のグラフ及び図15(B)のグラフとも、反射光速電子線回折(RHEED)の検出量の増減が一定周期で繰り返されている。これは、一つの周期が、原子1つの層を示している。つまり、本発明を利用してInGaN層又はGaN層を成膜すると、原子層が1層1層に整然と積層されていくことがわかる。
【0134】
ただし、図15(A)のグラフの方が、その周期の増減が明確に形成されている。つまり、InGaNをZnO上に形成した方が、結晶構造が崩れないことがわかる。
【0135】
第3の実施形態
次に、第3の実施形態の半導体製造プロセスについて説明する。
【0136】
(半導体の構成)
第3の実施形態の半導体素子製造プロセスでは、図16に示すような、6H−SiC(0001)基板51上にGaN層52が形成された窒化物半導体素子50を製造する。
【0137】
窒化物半導体素子50は、図16に示すように、6H−SiC基板51の(0001)面に対して、六方晶であるGaNのc軸が垂直となるように配向されたGaN層52を有する。また、このGaN層12は、6H−SiC基板51上に低温(300℃以下)でエピタキシャル成長して成膜された第1のGaN層53と、第1のGaN層53上に高温(550℃以上)でエピタキシャル成長して成膜された第2のGaN層54とから構成されている。
【0138】
6H−SiC基板51を構成する6H−SiCは、ウルツ鉱型の結晶構造を有し、格子定数はa=3.08Åである。また、GaN層52を構成するGaNは、ウルツ鉱型の結晶構造(図2参照。)を有し、格子定数はa=3.189Åである。
【0139】
このような結晶構造からなる6H−SiC及びGaNは、格子不整が3.5%と小さいため、6H−SiC基板51上に結晶性のよいGaNをエピタキシャル成長させることが可能となる。また、6H−SiC基板51は導電性であるため、6H−SiC自体を電極とした半導体を製造することができる。
【0140】
(全体フロー)
つぎに、窒化物半導体素子50を製造するための各工程について説明をする。
【0141】
図17に示すように窒化物半導体素子50の製造方法は、第1の実施形態と同様に6H−SiC基板の平坦化工程(S31)、GaN層の低温成膜工程(S32)、GaN層の高温成膜工程(S33)に分けられる。
【0142】
(平坦化工程S31)
平坦化工程S31では、先ず、基板表面が(0001)面となるように6H−SiC基板51を切り出す。
【0143】
続いて、切り出した6H−SiC基板51の(0001)面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理する。この処理は、例えばダイヤモンドスラリーを使用して機械研磨する。この機械研磨では、使用するダイヤモンドスラリーの粒径を徐々に微細化してゆき、最後に粒径約0.5μmのダイヤモンドスラリーで鏡面研磨する。このとき、更にコロイダルシリカを用いて研磨することにより、表面粗さのrmsが10Å以下となるまで平坦化させることが好ましい。そして、800℃以上の温度及び水素・ヘリウム混合雰囲気下に制御された高温オーブンを用いて、機械研磨された6H−SiC基板51に熱処理を施す。これにより原子レベルで平坦化した6H−SiC基板51を得ることができる。
(低温成膜工程S32)
低温成膜工程S32では、PLD法により、平坦化工程S31により平坦化した6H−SiC基板51面上に、第1のGaN層53をエピタキシャル成長させる。PLD法は、第1の実施形態における方法と同一である。ただし、チャンバ31内に配置される基板は、6H−SiC基板51である。
【0144】
このとき、GaNの成長時の温度を300℃以下とする。さらに、第1のGaN層の生成時における初期の成長速度を、10nm/時間とする。これにより、6H−SiCとGaNとの界面で界面反応が生じないため、界面反応層が形成されない。
【0145】
(高温成膜工程S33)
高温成膜工程S33では、低温成膜工程S32で成膜された第1のGaN層53上にPLD法により、第2のGaN層54をエピタキシャル成長させる。このとき、第2のGaN層の生成時の温度を550℃以上とする。これにより、第2のGaN層54がエピタキシャル成長する際の点欠陥の発生を充分に抑制することができる。また、このとき低温成膜工程S32で成膜された際に生じた微細なグレインが融合、消滅する。なお、成長温度を800℃以上とすると、GaNが蒸発してしまい結晶を得ることができない。また、ステップS33における第2のGaN層54のエピタキシャル成長では、PLD法に限らず、MBE法等の物理気相蒸着(PVD)法やMOCVD法を用いてもよい。
【0146】
(測定結果)
平坦化工程S31において熱処理された6H−SiC基板と、熱処理していない6H−SiC基板のGaNのエピタキシャル成長について比較した。
【0147】
基板の前処理は、6H−SiC(0001)基板をCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理した後、基板をアルコール洗浄し、3%のフッ酸、塩酸でWetエッチングを行った。その後、水素ヘリウム混合ガス中において1300℃、20分間の熱処理を行った。そして、基板を超真空チャンバ内に導入し、GaN成長前にGa−flashingを行い、表面の酸化膜を除去した。
【0148】
図18は、CMP処理後の6H−SiC(0001)基板表面の観察結果を示すものであり、図19(A)は、CMP処理後、熱処理を行った6H−SiC(0001)基板表面の観察結果を示すものである。この観察結果より、熱処理を行うことによって、ステップアンドテラス構造が観察されていることが分かる。また、図19(B)に示すa線の断面プロファイルから、6H−SiCの1ユニットセルに相当する約1.5nmのステップ高さを持つ、原子レベルで平坦な基板表面を確認することができた。
【0149】
図20〜図22は、CMP処理のみ行った6H−SiC(0001)基板上に、それぞれ、700℃、300℃、室温でGaNを膜厚約200nm成長させた際のRHEEDパターンを示している。基板温度700℃で成長を行ったところ、図20に示すようにRHEEDパターンは、3次元成長を示唆するスポットパターンとなり、エピタキシャル成長していることが分かった。これに対し、成長温度を低減し、300℃及び室温で成長させたところ、図21及び図22に示すように、RHEEDパターンは、それぞれ多結晶成長を示唆するリングパターン及びアモルファス状態であることを示唆するハローパターンとなり、エピタキシャル成長しないことが分かった。これらの結果から、CMP処理のみの6−SiC基板上では、低温領域におけるGaN薄膜のエピタキシャル成長が困難であることが分かる。
【0150】
図23〜図25は、上述のCMP処理後、熱処理を行った6H−SiC(0001)基板上に、それぞれ、700℃、300℃、室温でGaNを成長させた際のRHEEDパターンを示している。図23に示すように、基板温度700℃で成長させたところ、CMP処理のみを行った図20に示すRHEEDパターンと同様にスポットパターンが得られた。また、300℃で成長させた場合、3次元成長を示唆するスポットパターンが得られた。また、室温で成長させた場合、2次元成長を示唆するストリークパターンが得られ、GaN薄膜のエピタキシャル成長が起こっていることが分かった。つまり、原子レベルで平坦なSiC基板上では、室温から700℃までの全ての温度領域でGaNのエピタキシャル成長が可能であることが分かった。これは、原子レベルで平坦な基板を用いることにより、基板表面における原子の表面拡散が促進されたためである。
【0151】
次に、熱処理を行った原子レベルで平坦な6H−SiC基板上において、成長初期過程におけるin−situRHEED観察を行い、成長温度における成長モードを解析する。図26は、700℃の高温成長におけるRHEED specular spotの強度プロファイルを示している。また、図27は、図26に示すa点、すなわちGaN薄膜の膜厚が3MLの時のRHEED像を示すものであり、図28は、図26に示すb点、すなわちGaN薄膜の膜厚が6MLの時のRHEED像を示すものである。GaN薄膜の膜厚が3ML及び6MLのときのRHEED像がスポットパターンを示していることから、700℃では3次元成長が起こっていることが分かる。また、図26に示す強度プロファイルからも成長初期から3次元成長が起こっていることが分かる。つまり、図29に示す成長の模式図のように、700℃の高温成長では、成長初期から3次元島状成長となり、表面が荒れてしまうことが分かった。
【0152】
続いて、熱処理を行った原子レベルで平坦な6H−SiC基板上に、室温でGaN薄膜を成長させた場合について説明する。図30は、室温成長におけるRHEED specular spotの強度プロファイルを示している。また、図31は、図30に示すa点、すなわちGaN薄膜の膜厚が3MLの時のRHEED像を示すものであり、図32は、図30に示すb点、すなわちGaN薄膜の膜厚が13MLの時のRHEED像を示すものである。GaN薄膜の膜厚が3ML及び13MLのRHEED像がストリークパターンを示していることから、高温成長時と異なり、2次元成長が起こっていることが分かる。また、図30に示すRHEEDプロファイルから、図33に示すようにGaN薄膜の成長がlayer−by−layerモードで進行していることが分かった。これは、室温成長を行うことにより、GaNの核形成密度が高まったためである。
【0153】
図34(A)は、室温で9nm成長させたGaN薄膜のAFM像を示すものである。このAFM観察結果より、室温成長させたGaN結晶表面は、原子レベルで平坦なステップアンドテラス構造を有していることが分かる。また、図34(B)に示すa線の断面プロファイルから、ステップ高さは、GaNの3MLに相当する約0.8nmであった(図34(C)参照。)。
【0154】
このように、原子レベルで平坦な6H−SiC基板上に300℃以下の温度でGaNを成長させると、layer−by−layerモードの2次元成長で進行し、その結晶表面が原子レベルで平坦なステップアンドテラス構造を有するため、高温成膜工程S33における550℃以上の成長においても、高い品質の結晶を得ることができる。
【0155】
なお、上記例で説明した6H−SiCだけでなく、面内の格子定数などの性質がよく似ている4H−SiC基板や3C−SiC基板も、同様にして高い品質のGaN結晶を成長させることができる。
【0156】
第4の実施形態
次に、第4の実施形態の半導体製造プロセスについて説明する。
【0157】
(半導体の構成)
第4の実施形態の半導体素子製造プロセスでは、図35に示すような、Hf(0001)基板61上にGaN層62が形成された窒化物半導体素子60を製造する。
【0158】
窒化物半導体素子60は、図35に示すように、HfからなるHf基板61の(0001)面に対して、六方晶であるGaNのc軸が垂直となるように配向されたGaN層62を有する。また、このGaN層62は、Hf基板61上に低温(300℃以下)でエピタキシャル成長して成膜された第1のGaN層63と、第1のGaN層63上に高温(550℃以上)でエピタキシャル成長して成膜された第2のGaN層64とから構成されている。
【0159】
Hf基板61を構成するHfは、六方最密構造の結晶構造を有し、GaNとの格子不整合が面内で0.3%、c軸方向で2.4%と小さい。また、熱膨張係数差も5.5%と小さいため、結晶性のよいGaNをエピタキシャル成長させるのに有効な格子整合基板である。特に、HfとGaNは、c軸方向の不整合が小さいため、発光特性が良い無極性面に結晶性のよいGaNを成長させることが可能となる。例えば、図36に示すように、a軸に直交する(−1−120)面(A面)や結晶構造の外壁である(1010)面(M面)にエピタキシャル成長させることができる。なお、以下では(0001)面にGaNを成長させることとして説明する。
【0160】
(全体フロー)
つぎに、窒化物半導体素子60を製造するための各工程について図37に示すフローチャートを参照して説明をする。
【0161】
窒化物半導体素子60の製造方法は、第1の実施の形態と同様に、Hf基板の平坦化工程(S41)、GaN層の低温成膜工程(S42)、GaN層の高温成膜工程(S43)に分けられる。
【0162】
(平坦化工程S41)
平坦化工程S41では、先ず、基板表面が(0001)面となるようにHf基板61を切り出す。
【0163】
続いて、切り出したHf基板61の(0001)面を例えばダイヤモンドスラリーを使用して機械研磨する。この機械研磨では、使用するダイヤモンドスラリーの粒径を徐々に微細化してゆき、最後に粒径約0.5μmのダイヤモンドスラリーで鏡面研磨する。このとき、更にコロイダルシリカを用いて研磨することにより、表面粗さのrmsが10Å以下となるまで平坦化させることが好ましい。そして、800℃以上の温度及び水素・ヘリウム混合雰囲気下に制御された高温オーブンを用いて、機械研磨されたHf基板61に熱処理を施す。これにより原子レベルで平坦化したHf基板61を得ることができる。
(低温成膜工程S42)
低温成膜工程S42では、パルスレーザ堆積法(以下、PLD法)により、平坦化工程S41により平坦化したHf基板61面上に、第1のGaN層63をエピタキシャル成長させる。PLD法は、第1の実施形態における方法と同一である。ただし、チャンバ31内に配置される基板は、Hf基板61である。
【0164】
このとき、GaNの成長時の温度を300℃以下とする。さらに、第1のGaN層の生成時における初期の成長速度を、10nm/時間とする。これにより、HfとGaNとの界面で界面反応が生じないため、界面反応層が形成されない。
【0165】
(高温成膜工程S43)
高温成膜工程S43では、低温成膜工程S42で成膜された第1のGaN層63上にPLD法により、第2のGaN層64をエピタキシャル成長させる。このとき、第2のGaN層の生成時の温度を550℃以上とする。これにより、第2のGaN層64がエピタキシャル成長する際の点欠陥の発生を充分に抑制することができる。また、このとき低温成膜工程S42で成膜された際に生じた微細なグレインが融合、消滅する。なお、成長温度を800℃以上とすると、GaNが蒸発してしまい結晶を得ることができない。また、ステップS43における第2のGaN層64のエピタキシャル成長では、PLD法に限らず、MBE法等の物理気相蒸着(PVD)法やMOCVD法を用いてもよい。
【0166】
(測定結果)
平坦化工程S41において超高真空中で熱処理されたHf(0001)基板をXPSの測定結果を用いて評価した。図38〜図40は、それぞれ、Hf4fスペクトル、O1sスペクトル、C1sスペクトルを示している。図38に示すHf4fスペクトルでは、熱処理前にはHf酸化物のピークが確認できるが、加熱に伴い酸化物のピークは減少し、Hf金属のピークが明瞭になっていることが分かる。また、図39に示すO1sスペクトルでは、Hf4fのスペクトルと同様に、加熱に伴い酸素Oが減少し、1000℃の加熱により大幅に表面濃度が減少していることが分かる。また、図40に示すC1sスペクトルでは、熱処理前にHf表面に吸着していた分子種が500℃の加熱により脱離していることが分かる。また、図40に示す500℃及び600℃のスペクトルには、新たなピークが現れているが、これは表面に吸着していた不純物の一部がHfと結合し、HfCを形成したものである。さらに加熱を続けることによりこのHfCのピークは減少し、1000℃では、Cの表面濃度が大幅に減少している。すなわち、800℃以上の熱処理によりHf(0001)基板の酸素及び炭素の表面濃度を大幅に減少させることができることが分かる。
【0167】
図41及び図42は、それぞれ1000℃の加熱によるRHEED観察結果及びAFM観察結果を示すものである。このRHEED像がシャープなストリーキーパターンを示すことから、鏡面研磨と熱処理により平坦で結晶性のよいHf(0001)表面を得ることができたことが分かる。また、AFM像によりステップ表面が現れていることが確認できる。
【0168】
次に、上述のように熱処理され、平坦化されたHf(0001)基板上にGaNを成長させた結果について述べる。図43〜図46は、それぞれ基板温度700℃でGaNを成長させた膜厚0.3nm、3.3nm、6.7nm、10.0nmにおけるRHEEDパターンを示すものである。基板温度700℃の結晶成長では、膜厚が増加するに従い、徐々にリングパターンに変化していることから、多結晶GaNが成長し、エピタキシャル成長していないことが分かった。
【0169】
また、図47に示すように、この多結晶GaN表面のXPS測定を行ったところ、Hf4dピークが確認され、表面にHfが拡散していることが分かった。また、GIXR測定により界面反応層厚が4nm相当であることから、界面反応が生じていることが分かった。これより、700℃の成長では温度が高いため界面反応が生じ、成長が阻害されることがわかった。
【0170】
図48〜図51は、それぞれ室温でGaNを成長させた膜厚8nm、20nm、25nm、30nmの場合のRHEEDパターンを示すものである。室温による結晶成長では、膜厚が増加してもストリークパターンを示していることから、エピタキシャル成長していることが分かる。また、図52に示すRHEED強度振動が明瞭に観測されていることから、layer−by−layerで成長が進行していることが分かった。また、分光エリプソメトリーにより界面の反応層を評価したところ、10.5nmと見積もられたことから、650℃の基板温度では界面反応が起こり、多結晶のGaNになることが分かった。また、基板温度を550℃にして成長させると、RHEED像がストリークパターンを示すことから、低温成膜工程S42では、550℃以下の基板温度で成長させることが好ましい。
【0171】
続いて、室温成長させたGaNの界面反応層の評価について述べる。図53及び図54は、それぞれXPS測定結果及びGIXR測定結果を示すものである。XPS測定結果には、Hf4dのピークは見られず、Hfの拡散がないことが確認できた。また、GIXR測定結果により、界面反応層厚は0.96nmと見積もられ、界面反応は抑制され急峻な界面が得られていることが分かった。すなわち、PLD法では、成長温度を室温にまで低減させることができるため、界面反応を抑制するとともに、室温でのGaNのエピタキシャル成長を実現することができることがわかった。
【0172】
また、室温成長させたGaNがバッファー層として機能するかについて検討した。図55は、熱処理温度に対するGaN薄膜厚の変化を示すものである。また、図56及び図57は、室温成長させたGaN薄膜の700℃におけるGIXR測定結果及びAFM観察結果を示すものである。図55に示すように700℃の加熱においても界面反応層厚の増加は見られない。また、図56に示すGIXR測定結果よりHfは表面に拡散していないことが確認できた。また、図57に示すAFM像により700℃でもステップ構造を保ったままであることが分かった。したがって、室温成長GaNはバッファー層として機能することが分かった。すなわち、550℃以下の基板温度でバッファー層をエピタキシャル成長させ、その後、550℃より大きい基板温度でGaNを成長させることにより、Hf(0001)基板上に結晶性の良いGaNを得ることできることが分かった。
【0173】
第5の実施形態
次に、第5の実施形態の半導体製造プロセスについて説明する。
【0174】
(半導体の構成)
第5の実施形態の半導体素子製造プロセスでは、図58に示すようなLiGaO基板71上にGaN層72が形成された窒化物半導体素子70を製造する。
【0175】
窒化物半導体素子70は、LiGaOからなるLiGaO基板71の(001)面に対して、GaNのc軸が垂直となるように配向されたGaN層72を有する。また、GaN層72は、LiGaO基板71上に低温(300℃以下)でエピタキシャル成長して成膜された第1のGaN層73と、第1のGaN層73上に高温(550℃以上)でエピタキシャル成長して成膜された第2のGaN層74とから構成されている。
【0176】
LiGaOは、斜方昌の結晶構造を有し、GaNのC面との面内格子不整がa軸方向+1.9%、b軸方向−0.19%と極めて小さいため、GaNをエピタキシャル成長させるのに有効な格子整合基板である。
【0177】
また、LiGaOは中心対象性を持たず、Metal−faceとO−faceという極性を有しており、その化学的性質も面により大きく異なる。例えば、Metal−faceにはGa極性、O−faceにはN極性のGaNが成長し、容易に極性を制御することができる。なお、後述するようにO−faceに比べ成長面として適しているMetal−faceにGaN結晶を成長させることとする。
【0178】
(全体フロー)
つぎに、窒化物半導体素子70を製造するための各工程について図59に示すフローチャートを参照して説明する。
【0179】
窒化物半導体素子70の製造方法は、第1の実施の形態と同様に、LiGaO基板の平坦化工程(S51)、GaN層の低温成膜工程(S52)、GaN層の高温成膜工程(S53)に分けられる。
【0180】
(平坦化工程S51)
平坦化工程S51では、先ず、基板表面が(001)面となるようにLiGaO基板71を切り出す。
【0181】
続いて、切り出したLiGaO基板の(001)面を例えばダイヤモンドスラリーを使用して機械研磨する。この機械研磨では、使用するダイヤモンドスラリーの粒径を徐々に微細化してゆき、最後に粒径約0.5μmのダイヤモンドスラリーで鏡面研磨する。このとき、更にコロイダルシリカを用いて研磨することにより、表面粗さのrmsが10Å以下となるまで平坦化させることが好ましい。そして、700℃以上の温度及び水素・ヘリウム混合雰囲気下に制御された高温オーブンを用いて、機械研磨されたLiGaO基板に熱処理を施す。これにより原子レベルで平坦化したLiGaO基板71を得ることができる。
(低温成膜工程S52)
低温成膜工程S52では、パルスレーザ堆積法(以下、PLD法)により、平坦化工程S51により平坦化したLiGaO基板71面上に、第1のGaN層73をエピタキシャル成長させる。PLD法は、第1の実施形態における方法と同一である。ただし、チャンバ31内に配置される基板は、LiGaO基板71である。
【0182】
このとき、GaNの成長時の温度を300℃以下とする。さらに、第1のGaN層の生成時における初期の成長速度を、10nm/時間とする。これにより、LiGaOとGaNとの界面で界面反応が生じないため、界面反応層が形成されない。
【0183】
(高温成膜工程S53)
高温成膜工程S53では、低温成膜工程S52で成膜された第1のGaN層73上にPLD法により、第2のGaN層74をエピタキシャル成長させる。このとき、第2のGaN層の生成時の温度を550℃以上とする。これにより、第2のGaN層74がエピタキシャル成長する際の点欠陥の発生を充分に抑制することができる。また、このとき低温成膜工程S52で成膜された際に生じた微細なグレインが融合、消滅する。なお、成長温度を800℃以上とすると、GaNが蒸発してしまい結晶を得ることができない。また、ステップS53における第2のGaN層74のエピタキシャル成長では、PLD法に限らず、MBE法等の物理気相蒸着(PVD)法やMOCVD法を用いてもよい。
【0184】
(測定結果)
図60及び図61は、それぞれMetal−faceにおける熱処理前と熱処理後のRHEED像を示すものである。また、図62及び図63は、それぞれO−faceにおける熱処理前と熱処理後のRHEED像を示すものである。超高真空中での熱処理前は、図60及び図62に示すRHEED像は、どちらの面でもストリークパターンを示し、平坦な表面を有していることが分かる。しかし、700℃で熱処理した後の図61及び図63に示すRHEED像は、Metal−faceではシャープなストリークパターンであるのに対し、O−faceではスポットパターンであった。このことから、Metal−faceは、O−faceに比べ熱的耐性が高く、熱処理後でも表面平坦性が保たれることが分かった。
【0185】
図64〜図67は、それぞれO−face基板上に700℃、500℃、300℃、室温でGaNを成長させた場合のRHEED像を示すものである。700℃で成長させた場合、図64に示すRHEED像がスポットパターンであることから、O−face基板が荒れてしまい、その上に成長したGaNが3次元成長したものと考えられる。また、図65に示す基板温度が500℃の場合のRHEED像もスポットパターンであることから、GaNが3次元成長していることが分かる。また、図66に示す基板温度が300℃の場合のRHEED像はストリークパターンであることから、GaNがエピタキシャル成長していることが分かる。しかし、図67に示す基板温度が室温の場合のRHEED像はリングパターンとなり、単結晶の成長が見られなかった。
【0186】
また、図68〜図71は、それぞれMetal−face基板上に700℃、500℃、300℃、室温でGaNを成長させた場合のRHEED像を示すものである。Metal−face基板上での成長では、これら全ての温度領域で明瞭なストリークパターンが観察され、良質なGaNが室温においてもエピタキシャル成長することが分かる。
【0187】
次に、Metal−face基板上に室温で成長させたGaNの結晶品質を調べるために、EBSD(Electron Backscatter Diffraction)による結晶方位の解析を行った。図72及び図73は、それぞれ(0001)方位の極点図及び(11−24)方位の極点図である。図72より、GaNのc軸の方向が面直方向であることが分かった。また、図73より、明瞭な六回対称性が確認され、成長を室温で行っても30度回転ドメインが混入しないことが分かった。
【0188】
続いて、Metal−face基板上に成長させたGaNの表面モフォロジーをAFMにより観察した。図74は、成長温度に対する表面粗さRMS値をプロットしたグラフである。このグラフより成長温度が低い程、GaN表面が平坦化し、室温成長ではRMS値0.25nmという良好な結果を得ることができた。これは、高温による界面反応を、成長温度を下げることにより抑制し、基板表面の平坦性を保ったまま成長が進行したためであると考えられる。
【0189】
また、GIXR測定によりGaNとLiGaO基板の界面に形成される反応層の厚さを測定した。図75は、成長温度に対する界面反応層の厚さをプロットしたグラフである。このグラフより成長温度を低くすることにより界面反応層の厚さが低減することが分かる。すなわち、成長温度を低減し、界面反応を抑制することにより、その上のGaNの膜質が向上する。また、室温で成長させたGaNをアニール処理し、その界面反応層の厚さを測定したところ、室温から700℃まであまり変化が見られないため、室温成長させたGaNは高温成膜工程S53で成長させるバッファー層とすることができる。
【0190】
第6の実施形態
次に、第6の実施形態の半導体製造プロセスについて説明する。
【0191】
(半導体の構成)
第6の実施形態の半導体素子製造プロセスでは、図76に示すような(Mn,Zn)Fe基板(以下、MnZnフェライト基板81)上にGaN層82が形成された窒化物半導体素子80を製造する。
【0192】
窒化物半導体素子80は、MnZnフェライト基板81の(111)面に対して、GaNのc軸が垂直となるように配向されたGaN層82を有する。また、GaN層82は、MnZnフェライト基板81上に室温でエピタキシャル成長して成膜された第1のGaN層83と、第1のGaN層83上に高温(550℃以上)でエピタキシャル成長して成膜された第2のGaN層84とから構成されている。
【0193】
MnZnフェライトは、図77に示すようなスピネル構造を有し、(111)面に対してGaNとの格子不整が6.1%と小さいため、GaNをエピタキシャル成長させるのに有効な格子整合基板である。このMnZnフェライトは高い導電性を有しているため、素子作成プロセス上有利である。
【0194】
(全体フロー)
つぎに、窒化物半導体素子80を製造するための各工程について図78に示すフローチャートを参照して説明する。
【0195】
窒化物半導体素子80の製造方法は、第1の実施の形態と同様に、MnZnフェライト基板の平坦化工程(S61)、GaN層の低温成膜工程(S62)、GaN層の高温成膜工程(S63)に分けられる。
【0196】
(平坦化工程S61)
平坦化工程S61では、先ず、基板表面が(111)面となるようにMnZnフェライト基板81を切り出す。
【0197】
続いて、切り出したMnZnフェライト基板の(111)面を例えばダイヤモンドスラリーを使用して機械研磨する。この機械研磨では、使用するダイヤモンドスラリーの粒径を徐々に微細化してゆき、最後に粒径約0.5μmのダイヤモンドスラリーで鏡面研磨する。このとき、更にコロイダルシリカを用いて研磨することにより、表面粗さのrmsが10Å以下となるまで平坦化させることが好ましい。そして、MnZnフェライト基板をアルコール中で超音波洗浄した後、超真空下800℃で15分間の熱処理を施す。これにより原子レベルで平坦化したMnZnフェライト基板81を得ることができる。
(低温成膜工程S62)
低温成膜工程S62では、PLD法により、平坦化工程S61にて平坦化したMnZnフェライト基板81面上に、第1のGaN層83をエピタキシャル成長させる。PLD法は、第1の実施形態における方法と同一である。ただし、チャンバ31内に配置される基板は、MnZnフェライト基板81である。
【0198】
このとき、GaNの成長時の温度を300℃以下とする。さらに、第1のGaN層の生成時における初期の成長速度を、10nm/時間とする。これにより、MnZnフェライトとGaNとの界面で界面反応が生じないため、界面反応層が形成されない。
【0199】
(高温成膜工程S63)
高温成膜工程S63では、低温成膜工程S62で成膜された第1のGaN層83上にPLD法により、第2のGaN層84をエピタキシャル成長させる。このとき、第2のGaN層の生成時の温度を550℃以上とする。これにより、第2のGaN層84がエピタキシャル成長する際の点欠陥の発生を充分に抑制することができる。また、このとき低温成膜工程S62で成膜された際に生じた微細なグレインが融合、消滅する。なお、成長温度を800℃以上とすると、GaNが蒸発してしまい結晶を得ることができない。また、ステップS63における第2のGaN層84のエピタキシャル成長では、PLD法に限らず、MBE法等の物理気相蒸着(PVD)法やMOCVD法を用いてもよい。
【0200】
(測定結果)
図79は、GaN薄膜の室温成長におけるin-situRHEED観察の結果を示すものである。成長初期においてGaNのlayer−by−layer成長を示すRHEED振動が観察された。また、GaN薄膜の成長膜厚が増加すると、3次元成長を示すスポットパターンへ変化することから、MnZnフェライト上へのGaN薄膜室温成長では、2次元成長から3次元成長へ遷移が起こることが明らかになった。これは、GaN薄膜中の歪みエネルギーの蓄積に起因するものと考えられる。
【0201】
また、図80に示すように界面層の厚さをX線反射率法(GIXR)により測定した。その結果、界面層厚さは成長温度の低下とともに減少し、成長温度を低減することにより、界面急峻性が向上することが明らかになった。
【0202】
図81は700℃でGaNを成長させた際のRHEED像、図82は室温でGaNを成長させた際のRHEED像を示し、図83はGaNを室温で成長させた後700℃でGaNを成長させた際のRHEED像を示すものである。なお、図81〜図83において、左側は写真に基づく図面であり、右側はその模式図である。
【0203】
図82に示すように室温で成長させたGaNはlayer−by−layer成長を示すRHEED振動を示すが、図81に示すように700℃の温度によりGaNを成長させた場合、結晶性が悪いスポット状のパターンを示す。しかし、図83に示すようにGaNを室温で成長させた後700℃でGaNを成長させた場合には、スポット状のパターンではなく、ストリーキーパターンを示すことから、結晶性のよいGaN薄膜が成長していることが分かる。
【0204】
図84(A)及び図84(B)は、室温成長させた膜厚100nmを有するGaN膜のXRDカーブである。このXRDの測定結果から、室温成長したGaN薄膜は30°回転ドメインの混入はなく、シングルドメインである。
【0205】
このように、室温成長を行うことにより基板と窒化物との間の界面反応が抑制され、MnZnフェライト基板上へ良質なGaNがエピタキシャル成長することが分かった。
【0206】
第7の実施形態
次に、第7の実施形態の半導体製造プロセスについて説明する。
【0207】
(半導体の構成)
第7の実施形態の半導体素子製造プロセスでは、図85に示すような(Mn,Zn)Fe基板(以下、MnZnフェライト基板91)上にInN層92が形成された窒化物半導体素子90を製造する。
【0208】
窒化物半導体素子90は、MnZnフェライト基板81の(111)面に対して、InNのc軸が垂直となるように配向されたInN層92を有する。また、InN層92は、MnZnフェライト基板91上に室温でエピタキシャル成長して成膜された第1のInN層93と、第1のInN層93上に高温(500〜550℃)でエピタキシャル成長して成膜された第2のInN層94とから構成されている。
【0209】
MnZnフェライトは、上述した図77に示すようなスピネル構造を有し、(111)面に対してInNとの格子不整が17.7%であるが、後述するように30°回転により格子不整が2.0%と小さくなるため、InNをエピタキシャル成長させるのに有効な格子整合基板である。このMnZnフェライトは高い導電性を有しているため、素子作成プロセス上有利である。
【0210】
(全体フロー)
つぎに、窒化物半導体素子90を製造するための各工程について図86に示すフローチャートを参照して説明する。
【0211】
窒化物半導体素子90の製造方法は、第1の実施の形態と同様に、MnZnフェライト基板の平坦化工程(S71)、InN層の低温成膜工程(S72)、InN層の高温成膜工程(S73)に分けられる。
【0212】
(平坦化工程S71)
平坦化工程S71では、先ず、基板表面が(111)面となるようにMnZnフェライト基板91を切り出す。
【0213】
続いて、切り出したMnZnフェライト基板の(111)面を例えばダイヤモンドスラリーを使用して機械研磨する。この機械研磨では、使用するダイヤモンドスラリーの粒径を徐々に微細化してゆき、最後に粒径約0.5μmのダイヤモンドスラリーで鏡面研磨する。このとき、更にコロイダルシリカを用いて研磨することにより、表面粗さのrmsが10Å以下となるまで平坦化させることが好ましい。そして、MnZnフェライト基板をアルコール中で超音波洗浄した後、超真空下800℃で15分間の熱処理を施す。これにより原子レベルで平坦化したMnZnフェライト基板91を得ることができる。
(低温成膜工程S72)
低温成膜工程S72では、PLD法により、平坦化工程S71にて平坦化したMnZnフェライト基板91面上に、第1のInN層93をエピタキシャル成長させる。PLD法は、第1の実施形態における方法と同一である。ただし、チャンバ31内に配置される基板は、MnZnフェライト基板91である。
【0214】
このとき、InNの成長時の温度を300℃以下とする。さらに、第1のInN層の生成時における初期の成長速度を、10nm/時間とする。これにより、MnZnフェライトとInNとの界面で界面反応が生じないため、界面反応層が形成されない。
【0215】
(高温成膜工程S73)
高温成膜工程S73では、低温成膜工程S72で成膜された第1のInN層93上にPLD法により、第2のInN層94をエピタキシャル成長させる。このとき、第2のInN層の生成時の温度を550℃以上とする。これにより、第2のInN層94がエピタキシャル成長する際の点欠陥の発生を充分に抑制することができる。なお、ステップS73における第2のInN層94のエピタキシャル成長では、PLD法に限らず、MBE法等の物理気相蒸着(PVD)法やMOCVD法を用いてもよい。
【0216】
(測定結果)
図87は、X線反射率法(GIXR)により成長温度に対する界面層の厚さを測定した結果を示すものである。この測定結果より、界面層厚さは成長温度の低下とともに減少し、成長温度を低減することにより、界面急峻性が向上することが明らかになった。
【0217】
図88〜図91は、それぞれ、室温、150℃、400℃、550℃によりInNをエピタキシャル成長させた場合のRHEED像及びXRDの測定結果を示す。また、図92〜図95はそれぞれ、室温、150℃、400℃、550℃によりInNをエピタキシャル成長させた場合の原子間力顕微鏡の観察結果を示す。なお、図92〜図95において左側は写真に基づく図面であり、右側はその模式図である。
【0218】
室温でInNを成長させた場合、図88(A)に示すようにRHEED像がストリーキーパターンを示し、図88(B)より0002回析のX線量のピークの1/2の値(半値幅)は0.028°であることから、表面が平坦化したInN層が成膜されたことが分かる。これは、図92に示す観察結果の表面がステップ状であることからも分かる。
【0219】
また、150℃によりInNを成長させた場合、図89(A)に示すようにRHEED像がストリーキーパターンを示し、図89(B)より半値幅が0.028°であることから、表面が平坦化したInN層が成膜されたことが分かる。これは、図93に示す観察結果の表面がステップ状であることからも分かる。
【0220】
また、400℃によりInNを成長させた場合、図90(A)に示すようにRHEED像がスポットパターンを示し、図90(B)より半値幅が0.03°である。また、図94に示す観察結果の表面がステップ状でないことから、結晶性の劣化が生じていることが分かる。これは、図96に示すXRD測定結果のように、400℃による成長では、InNの(11−20)面とMnZnフェライトの(01−1)面とが平行となり、格子不整合が18%となるためであると考えられる。一方、室温による成長ではInNの(11−20)面とMnZnフェライトの(11−2)面とが平行となり、格子不整合が2.0%であるため、良質な結晶成長が行われたと考えられる。
【0221】
また、550℃によりInNを成長させた場合、図91に示すようにRHEED像がリング状のパターンを示し、半値幅が0.73°であることから、良質なInN層が成膜されていないことが分かる。これは、図95に示す表面状態において、2乗平均粗さが41nmであったことからも分かる。
【0222】
図97は、(a)InN層を500〜550℃で成長させた場合と、(b)InN層を室温で成長させた場合と、(c)InN層を室温で成長させた後、InN層を500〜550℃で成長させた場合のRHEED像をそれぞれ示すものである。なお、図97の左側は写真に基づく図面であり、右側はその模式図である。
【0223】
InN層を500〜550℃で成長させた場合、図97(a)に示すようにリング状のパターンが得られ、図98に示すようにGIXR測定を行ったところ、MnZnフェライトとInN層との界面に10nm以上の反応層が生じていた。一方、InN層を室温で成長させた場合、図97(b)に示すストリーキーパターンが得られ、反応層の生成が抑制されて単結晶成長が生じていることが分かった。また、InN層を室温で成長させた後、InN層を500〜550℃で成長させた場合、図97(c)に示すパターンが得られ、室温成長させたIn層をバッファー層として用いることにより、高温においても良質な単結晶を得ることができることが分かった。また、このときの面内配向関係は、InNの(11−20)面とMnZnフェライトの(11−2)面とが平行であった。
【0224】
このように、室温成長を行うことにより基板と窒化物との間の界面反応が抑制され、MnZnフェライト基板上への良質なInNのテロエピタキシャル成長を実現することができることが分かった。
【0225】
また、格子定数a=3.110を有するAlNも、MnZnフェライトとの格子不整合が3.4%と低いため、MnZnフェライト基板上にAlNを成長させることが可能である。
【0226】
図99は、MnZnフェライト基板上へGaN、InN、AlNをそれぞれ成長させた場合の成長温度に対する界面反応層の厚さを示すものである。この測定結果より、成長温度を低減させることにより、界面反応を抑制することができることが分かった。
【0227】
図100〜図102は、それぞれ750℃、550℃、室温で成長させたAlNのRHEED像を示すものである。また、図103〜図105は、それぞれ750℃、550℃、室温で成長させたAlNの表面観察結果である。770℃で成長させた場合、図100に示すようにスポットパターンを示すRHEED像が得られ、図103に示すAFM像の表面が粗いことから、AlNが3次元成長していることが分かった。また、550℃で成長させた場合も、図101に示すようにスポットパターンを示すRHEED像が得られ、図104に示すAFM像の表面が粗いことから、AlNが3次元成長していることが分かった。一方、室温成長させた場合、図103に示すようにストリークパターンを示すRHEED像が得られ、図105に示すAFM像の表面が平坦なことから、AlNが2次元成長していることが分かった。
図106及び図107は、室温成長させたAlNのXRDカーブを示すものである。このXRDの測定結果から、室温成長したAlNは、シングルドメインであることが分かった。また、図107より、明瞭な六回対称性が確認することができた。
【0228】
図108は、AlNの初期成長を観察した結果である。図108(a)に示すMnZnフェライト基板のRHEED像は、AlNを厚さ1nmまで成長させると、図108(b)に示すように、シャープなストリークパターンに変化した。また、さらにAlNを厚さ2nmまで成長させると、図108(c)に示すように、スポットパターンに変化した。すなわち、初期成長の段階で成長モードが変化することが分かった。
【0229】
第8の実施形態
つぎに、第8の実施形態の半導体製造プロセスについて説明をする。
【0230】
(半導体の構成)
第8の実施形態の半導体素子製造プロセスでは、図109に示すような、ZnO基板101上にAlGaN層102が形成された窒化物半導体素子100を製造する。
【0231】
窒化物半導体素子100は、図109に示すように、ZnOからなるZnO基板101の(0001)面又は(000−1)面に対して、AlGaNのc軸が垂直となるように配向されたAlGaN層102を有する。また、このAlGaN層102は、ZnO基板101上に低温(300℃以下)でエピタキシャル成長して成膜された第1のAlGaN層103と、第1のGaN層103上に高温(550℃以上)でエピタキシャル成長して成膜された第2のGaN層104とから構成されている。
【0232】
ZnO基板101を構成するZnOは、ウルツ鉱型の結晶構造を有し、格子定数はa=3.252Åであり、禁制帯幅が3.2eV、励起子の結合エネルギーが60meVである。
【0233】
また、ZnO基板101上に積層形成され、AlGaN層102を構成するAlGaNは、図110に示すようにAl及びGaの含有割合により格子不整合が変化するものの、その不整合は5%以下である。
【0234】
このような結晶構造からなるZnO及びAlGaNは、互いに格子定数がほぼ等しいため、格子不整を極力低減させることが可能となる。
【0235】
(全体フロー)
つぎに、窒化物半導体素子100を製造するための各工程について説明をする。
【0236】
窒化物半導体素子100を製造する場合、図111に示すように、ZnO基板の平坦化工程(S81)、AlGaN層の低温成膜工程(S82)、AlGaN層の高温成膜工程(S83)という工程を順番に行う。
【0237】
(平坦化工程S81)
平坦化工程S81では、上述した第1の実施形態におけるステップS11の平坦化工程と同一の処理を行う。
【0238】
(低温成膜工程S82)
つぎに、低温成膜工程S82では、PLD法により、ZnO基板101の(0001)面又は(000−1)面上に、第1のAlGaN層104をエピタキシャル成長させる。このとき、AlGaNの成長時の温度を300℃以下とする。なお、PLD法は、第1の実施形態の低温成膜工程S12での方法と同一である。
【0239】
(高温成膜工程S83)
つぎに、高温成膜工程S83では、低温成膜工程S82で成膜された第1のAlGaN層104上にPLD法により、第2のAlGaN層45をエピタキシャル成長させる。このとき、AlGaNの成長時の温度を550℃以上とする。
【0240】
高温成膜工程S24において、AlGaNの成長時の温度を550℃以上とする理由は、GaN層がエピタキシャル成長する際に点欠陥の発生が充分に抑制される温度とするためである。また、低温成膜工程S83において低温で成膜された際に生じている微細なグレインは融合、消滅する。
(測定結果)
図112〜図115は、それぞれ600℃、400℃、200℃、室温で成長させたAlGaNのRHEED像を示すものである。また、図116〜図119は、それぞれ600℃、400℃、200℃、室温で成長させたAlGaNのAFM像を示すものである。これらの観察結果において、図112に示すRHEED像はスポットパターンを示すとともに図116に示すAFM像から分かるように、600℃で成長させたAlGaNは結晶性の悪い3次元成長であることが分かる。一方、図113〜図115に示すRHEED像がストリークパターンを示すとともに、図117〜図119に示すAFM像がステップアンドテラス構造であることから、室温から400℃まで良好なエピタキシャル成長が起こっていることが分かる。
【0241】
図120は、約30nmの膜厚まで成長させたAlGaNの成長温度に対するEBSD測定結果を示すものである。この結果より成長温度を低くすることにより、成長極初期の結晶性を向上させることが分かる。すなわち、室温成長させることにより結晶性の良い極薄膜を得ることができる。
【0242】
図121は、AlGaNの室温成長のRFEED強度振動を示すグラフである。この明瞭な強度プロファイルより、室温においてlayer−by−layer成長していることが分かる。また、図122に示す熱処理後のZnOのAFM像及び図123に示す室温成長させたAlGaNのAFM像から分かるように、基板の表面状態を反映した平坦なAlGaN表面であることが分かる。
【0243】
図124は、室温成長において、10Hz、20Hz、30Hz、40HzのKrFエキシマレーザ周波数におけるRHEED強度振動を示すものである。また、図125は、室温成長におけるKrFエキシマレーザ周波数に対する成長速度を示すものであり、図126〜図129は、それぞれ10Hz、20Hz、30Hz、40HzにおけるRHEED像を示すものである。これらの結果より、成長速度は、アブレーション周波数に強く依存していることが分かる。また、図126〜図129に示すRHEED像により、室温成長では成長速度を遅くすることにより、エピタキシャル成長することが分かる。
【0244】
図130は、約30nmの膜厚まで成長させたAlGaNの成長速度に対するEBSD測定結果を示すものである。この結果より成長速度を下げることにより、テラス上で十分な拡散長を得ることができることが分かる。すなわち、室温成長ではAlGa供給量を減らし、成長速度を下げることにより、初期段階から結晶性の高いAlGaNを得ることができる。
【0245】
図131〜図133は、それぞれ室温成長させたAlGaNを室温、300℃、700℃で熱処理した場合のAFM像を示すものである。750℃で熱処理してもステップアンドテラス構造を維持していることから、室温成長させたAlGaNは、高温成長過程におけるバッファー層として有効であることが分かった。
【0246】
以上のように本発明によれば、III族原子を高エネルギーで供給可能なPLD法を用いて、InGaAl1−X−YN(0≦X+Y≦1)で示されるIII族窒化物に対して格子不整合が小さい格子整合基板上に低温でIII族窒化物を成長させ、基板と窒化物間の界面反応を抑制することにより、良質なIII族窒化物薄膜を得ることができる。つまり、成長させるIII族窒化物の格子定数との差が小さい格子整合基板を用いることにより、欠損が生じ、電子の移動度が下がるのを抑制することができる。また、低温でIII族窒化物を成長させることにより、欠損と界面反応とを抑制し、良質なバッファー層を成長させることができる。そして、形成された良質なバッファー層の上に高温でIII族窒化物を成長させることにより、III族窒化物の結晶性の劣化を抑制することができる。
【0247】
換言すれば、低温で成長させたバッファー層が上述した格子整合基板の完全性の高い良質な結晶情報を高温で成長させるIII族窒化物層に伝えることにより、500℃以上の成長温度では点欠陥の生成が抑えられ、また、低温成長時に存在していた微細なグレインが融合・消滅するため、III族窒化物結晶の品質を大いに向上させることができる。また、バッファー層として格子定数が基板に近いInGaAl1−X−YNを用いることにより、結晶品質をさらに向上させることができる。
【0248】
なお、本発明は上記実施の形態に限られることなく、例えば、MgAl、LiAlO、NdGaO等の基板でも、III族窒化物を低温成長させ、さらにIII族窒化物を高温成長させることにより、良質なIII族窒化物薄膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】第1の実施の形態の窒化物半導体素子の模式的な断面図である。
【図2】ZnO及びGaNの原子配列を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の窒化物半導体素子の製造手順を示すフローチャートである。
【図4】ZnOの焼結体でZnO基板を囲んだ状態を示す図である。
【図5】ZnO基板の0001面を原子間力顕微鏡で観察した図である。
【図6】PLD法によりZnO基板の平坦化した面上にGaNを成長させた後の当該GaNの表面を、原子間力顕微鏡で観察した結果を示す図である。
【図7】室温の場合の各原子ステップの高さを原子間力顕微鏡で測定した結果を示す図である。
【図8】PLD法によりZnO基板の平坦化した面上にGaNを成長させた後の当該GaNの表面を、RHEED法により観察した結果を示した図である。
【図9】低温成膜工程においてGaNを蒸着する過程中に、RHEED法でリアルタイムにGaNの状態変化を測定した結果を示す図である。
【図10】PLD装置の構成を示す模式的な図である。
【図11】GaN膜に対して、HeCdレーザを照射した場合の発光光量の周波数特性図である。
【図12】第2の実施の形態の窒化物半導体素子の模式的な断面図である。
【図13】第2の実施の形態の窒化物半導体素子の製造手順を示すフローチャートである。
【図14】InGaN(In:20%,GaN:60%)を超高真空中で加熱処理した場合のInGaNの表面状態を示す図である。
【図15】第2の実施の形態の製造手順によってZnO基板上に成膜したInGaN、及び、GaNのRHEED振動を観察した結果を示す図である。
【図16】第3の実施の形態の窒化物半導体素子の模式的な断面図である。
【図17】第3の実施の形態の窒化物半導体素子の製造手順を示すフローチャートである。
【図18】CMP処理後の6H−SiC(0001)基板表面の観察結果を示す図である。
【図19】CMP処理後、熱処理を行った6H−SiC(0001)基板表面の観察結果を示す図である。
【図20】CMP処理のみ行った6H−SiC(0001)基板上に、700℃でGaNを膜厚約200nm成長させた際のRHEEDパターンを示す図である。
【図21】CMP処理のみ行った6H−SiC(0001)基板上に、300℃でGaNを膜厚約200nm成長させた際のRHEEDパターンを示す図である。
【図22】CMP処理のみ行った6H−SiC(0001)基板上に、室温でGaNを膜厚約200nm成長させた際のRHEEDパターンを示す図である。
【図23】CMP処理後、熱処理を行った6H−SiC(0001)基板上に、700℃でGaNを成長させた際のRHEEDパターンを示す図である。
【図24】CMP処理後、熱処理を行った6H−SiC(0001)基板上に、300℃でGaNを成長させた際のRHEEDパターンを示す図である。
【図25】CMP処理後、熱処理を行った6H−SiC(0001)基板上に、室温でGaNを成長させた際のRHEEDパターンを示す図である。
【図26】700℃の高温成長におけるRHEED specular spotの強度プロファイルを示す図である。
【図27】GaN薄膜の膜厚が3MLの時のRHEED像を示す図である。
【図28】GaN薄膜の膜厚が6MLの時のRHEED像を示す図である。
【図29】700℃における高温成長を説明するための模式図である。
【図30】室温成長におけるRHEED specular spotの強度プロファイルを示す図である。
【図31】GaN薄膜の膜厚が3MLの時のRHEED像を示す図である。
【図32】GaN薄膜の膜厚が13MLの時のRHEED像を示す図である。
【図33】室温成長を説明するための模式図である。
【図34】室温で9nm成長させたGaN薄膜のAFM像を示す図である。
【図35】第4の実施の形態の窒化物半導体素子の模式的な断面図である。
【図36】Hfの結晶構造を示す摸式図である。
【図37】第4の実施の形態の窒化物半導体素子の製造手順を示すフローチャートである。
【図38】Hf4fスペクトルの測定結果を示す図である。
【図39】O1sスペクトルの測定結果を示す図である。
【図40】C1sスペクトルの測定結果を示す図である。
【図41】1000℃の加熱によるRHEED観察結果を示す図である。
【図42】1000℃の加熱によるAFM観察結果を示す図である。
【図43】基板温度700℃でGaNを成長させた膜厚0.3nmにおけるRHEEDパターンを示す図である。
【図44】基板温度700℃でGaNを成長させた膜厚3.3nmにおけるRHEEDパターンを示す図である。
【図45】基板温度700℃でGaNを成長させた膜厚6.7nmにおけるRHEEDパターンを示す図である。
【図46】基板温度700℃でGaNを成長させた膜厚10.0nmにおけるRHEEDパターンを示す図である。
【図47】Hf基板上の多結晶GaN表面のXPS測定結果を示す図である。
【図48】室温でGaNを成長させた膜厚8nmにおけるRHEEDパターンを示す図である。
【図49】室温でGaNを成長させた膜厚20nmにおけるRHEEDパターンを示す図である。
【図50】室温でGaNを成長させた膜厚25nmにおけるRHEEDパターンを示す図である。
【図51】室温でGaNを成長させた膜厚30nmにおけるRHEEDパターンを示す図である。
【図52】室温でGaNを成長させた場合のRHEED強度振動を示す図である。
【図53】室温成長させたGaNのXPS測定結果示す図である。
【図54】室温成長させたGaNのGIXR測定結果を示す図である。
【図55】熱処理温度に対するGaN薄膜厚の変化を示すグラフである。
【図56】室温成長させたGaN薄膜の700℃におけるGIXR測定結果を示す図である。
【図57】室温成長させたGaN薄膜の700℃におけるAFM観察結果を示す図である。
【図58】第5の実施の形態の窒化物半導体素子の模式的な断面図である。
【図59】第5の実施の形態の窒化物半導体素子の製造手順を示すフローチャートである。
【図60】Metal−faceにおける熱処理前のRHEED像を示す図である。
【図61】Metal−faceにおける熱処理後のRHEED像を示す図である。
【図62】O−faceにおける熱処理前のRHEED像を示す図である。
【図63】O−faceにおける熱処理後のRHEED像を示す図である。
【図64】O−face基板上に700℃でGaNを成長させた場合のRHEED像を示す図である。
【図65】O−face基板上に500℃でGaNを成長させた場合のRHEED像を示す図である。
【図66】O−face基板上に300℃でGaNを成長させた場合のRHEED像を示す図である。
【図67】O−face基板上に室温でGaNを成長させた場合のRHEED像を示す図である。
【図68】Metal−face基板上に700℃でGaNを成長させた場合のRHEED像を示す図である。
【図69】Metal−face基板上に500℃でGaNを成長させた場合のRHEED像を示す図である。
【図70】Metal−face基板上に300℃でGaNを成長させた場合のRHEED像を示す図である。
【図71】Metal−face基板上に室温でGaNを成長させた場合のRHEED像を示す図である。
【図72】(0001)方位の極点図である。
【図73】(11−24)方位の極点図である。
【図74】成長温度に対する表面粗さRMS値をプロットしたグラフである。
【図75】成長温度に対する界面反応層の厚さをプロットしたグラフである。
【図76】第6の実施の形態の窒化物半導体素子の模式的な断面図である。
【図77】MnZnフェライト基板の結晶構造を示す摸式図である。
【図78】第6の実施の形態の窒化物半導体素子の製造手順を示すフローチャートである。
【図79】GaN薄膜の室温成長におけるin-situRHEED観察の結果を示す図である。
【図80】X線反射率法(GIXR)による界面層の厚さの測定結果を示す図である。
【図81】700℃でGaNを成長させた際のRHEED像を示す図である。
【図82】室温でGaNを成長させた際のRHEED像を示す図である。
【図83】GaNを室温で成長させた後700℃でGaNを成長させた際のRHEED像を示す図である。
【図84】室温成長させた膜厚100nmを有するGaN膜のXRDカーブを示す図である
【図85】第7の実施の形態の窒化物半導体素子の模式的な断面図である。
【図86】第7の実施の形態の窒化物半導体素子の製造手順を示すフローチャートである。
【図87】X線反射率法(GIXR)により成長温度に対する界面層の厚さを測定した結果を示す図である。
【図88】室温によりInNをエピタキシャル成長させた場合のRHEED像及びXRDの測定結果を示す図である。
【図89】150℃によりInNをエピタキシャル成長させた場合のRHEED像及びXRDの測定結果を示す図である。
【図90】400℃によりInNをエピタキシャル成長させた場合のRHEED像及びXRDの測定結果を示す図である。
【図91】550℃によりInNをエピタキシャル成長させた場合のRHEED像及びXRDの測定結果を示す図である。
【図92】室温によりInNをエピタキシャル成長させた場合の原子間力顕微鏡の観察結果を示す図である。
【図93】150℃によりInNをエピタキシャル成長させた場合の原子間力顕微鏡の観察結果を示す図である。
【図94】400℃によりInNをエピタキシャル成長させた場合の原子間力顕微鏡の観察結果を示す図である。
【図95】550℃によりInNをエピタキシャル成長させた場合の原子間力顕微鏡の観察結果を示す図である。
【図96】InNの400℃及び室温におけるXRD測定結果を示す図である。
【図97】(a)InN層を500〜550℃で成長させた場合と、(b)InN層を室温で成長させた場合と、(c)InN層を室温で成長させた後、InN層を500〜550℃で成長させた場合のRHEED像をそれぞれ示す図である。
【図98】InN層のGIXR測定結果を示す図である。
【図99】MnZnフェライト基板上へGaN、InN、AlNをそれぞれ成長させた場合の成長温度に対する界面反応層の厚さを示す図である。
【図100】750℃で成長させたAlNのRHEED像を示す図である。
【図101】550℃で成長させたAlNのRHEED像を示す図である。
【図102】室温で成長させたAlNのRHEED像を示す図である。
【図103】750℃で成長させたAlNの表面観察結果を示す図である。
【図104】550℃で成長させたAlNの表面観察結果を示す図である。
【図105】室温で成長させたAlNの表面観察結果を示す図である。
【図106】室温成長させたAlNのXRDカーブを示す図である。
【図107】室温成長させたAlNのXRDカーブを示す図である。
【図108】AlNの初期成長を観察した結果を示す図である。
【図109】第8の実施の形態の窒化物半導体素子の模式的な断面図である。
【図110】Al及びGaの含有割合による格子不整合を示す図である。
【図111】第8の実施の形態の窒化物半導体素子の製造手順を示すフローチャートである。
【図112】600℃で成長させたAlGaNのRHEED像を示す図である。
【図113】400℃で成長させたAlGaNのRHEED像を示す図である。
【図114】200℃で成長させたAlGaNのRHEED像を示す図である。
【図115】室温で成長させたAlGaNのRHEED像を示す図である。
【図116】600℃で成長させたAlGaNのAFM像を示す図である。
【図117】400℃で成長させたAlGaNのAFM像を示す図である。
【図118】200℃で成長させたAlGaNのAFM像を示す図である。
【図119】室温で成長させたAlGaNのAFM像を示す図である。
【図120】約30nmの膜厚まで成長させたAlGaNの成長温度に対するEBSD測定結果を示す図である。
【図121】AlGaNの室温成長のRFEED強度振動を示すグラフである。
【図122】熱処理後のZnOのAFM像を示す図である。
【図123】室温成長させたAlGaNのAFM像を示す図である。
【図124】室温成長において、10Hz、20Hz、30Hz、40HzのKrFエキシマレーザ周波数におけるRHEED強度振動を示す図である。
【図125】室温成長におけるKrFエキシマレーザ周波数に対する成長速度を示すグラフである。
【図126】室温成長においてKrFエキシマレーザが10Hzの場合のRHEED像を示す図である。
【図127】室温成長においてKrFエキシマレーザが20Hzの場合のRHEED像を示す図である。
【図128】室温成長においてKrFエキシマレーザが30Hzの場合のRHEED像を示す図である。
【図129】室温成長においてKrFエキシマレーザが40Hzの場合のRHEED像を示す図である。
【図130】約30nmの膜厚まで成長させたAlGaNの成長速度に対するEBSD測定結果を示す図である。
【図131】室温成長させたAlGaNを室温で熱処理した場合のAFM像を示す図である。
【図132】室温成長させたAlGaNを300℃で熱処理した場合のAFM像を示す図である。
【図133】室温成長させたAlGaNを700℃で熱処理した場合のAFM像を示す図である。
【符号の説明】
【0250】
10,40 窒化物半導体素子、11,41 ZnO基板、12,43 GaN層、13,44 第1のGaN層、14,15 第2のGaN層、42 InGaN層、30 PLD装置、50 窒化物半導体素子、51 6H−SiC基板、52 GaN層、53 第1のGaN層、54 第2のGaN層、60 窒化物半導体素子、61 Hf基板、62 GaN層、63 第1のGaN層、64 第2のGaN層、70 窒化物半導体素子、71 LiGaO基板、72 GaN層、73 第1のGaN層、74 第2のGaN層、80 窒化物半導体素子、81 MnZnフェライト基板、82 GaN層、83 第1のGaN層、84 第2のGaN層、90 窒化物半導体素子、91 MnZnフェライト基板、92 InN層、93 第1のInN層、94 第2のInN層、100 窒化物半導体素子、101 ZnO基板、102 AlGaN層、93 第1のAlGaN層、94 第2のAlGaN層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaN膜を生成するGaN膜生成方法において、
表面が平坦化されたZnO基板の表面上に、300℃以下の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第1の成膜工程と、
上記第1の成膜工程により成膜されたGaN上に、550℃以上の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第2の成膜工程と
を含むことを特徴とするGaN膜生成方法。
【請求項2】
上記第1の成膜工程では、窒素ガス雰囲気中にGa金属及びZnO基板を配置し、上記Ga金属に対してレーザ光を照射することにより、上記ZnO基板の表面にGaNを成膜すること
を特徴とする請求項1記載のGaN膜生成方法。
【請求項3】
上記第1の成膜工程では、エピタキシャル成長の初期の成長速度を、10nm/時間以下とすること
を特徴とする請求項1記載のGaN膜生成方法。
【請求項4】
GaN膜を形成するGaN膜生成方法において、
表面が平坦化されたZnO基板の表面上に、InGaNをエピタキシャル成長させる第1の成膜工程と、
上記第1の成膜工程により成膜されたInGaN上に、320℃以下の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第2の成膜工程と、
上記第2の成膜工程により成膜されたGaN上に、550℃以上の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第3の成膜工程と
を含むことを特徴とするGaN膜生成方法。
【請求項5】
上記第2の成膜工程では、窒素ガス雰囲気中にGa金属及びZnO基板を配置し、上記Ga金属に対してレーザ光を照射することにより、上記ZnO基板の表面にGaNを成膜すること
を特徴とする請求項4記載のGaN膜生成方法。
【請求項6】
表面が平坦化されたZnO基板と、当該ZnO基板上に成膜されたGaN膜とを有し、
上記GaN膜は、300℃以下の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第1の成膜工程と、上記第1の成膜工程により成膜されたGaN上に、550℃以上の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第2の成膜工程とにより成膜されたこと
を特徴とする半導体素子。
【請求項7】
上記第1の成膜工程では、窒素ガス雰囲気中にGa金属及びZnO基板を配置し、上記InGa金属に対してレーザ光を照射することにより、上記ZnO基板の表面にGaNを成膜すること
を特徴とする請求項6記載の半導体素子。
【請求項8】
上記第1の成膜工程では、エピタキシャル成長の初期の成長速度を、10nm/時間以下とすること
を特徴とする請求項6記載の半導体素子。
【請求項9】
表面が平坦化されたZnO基板と、当該ZnO基板面上に成膜されたInGaN層と、
当該InGaN層上に成膜されたGaN膜とを有し、
上記InGaN層は、表面が平坦化されたZnO基板の表面上にInGaNをエピタキシャル成長させる第1の成膜工程により成膜され、
上記GaN膜は、上記InGaN層上に320℃以下の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第2の成膜工程と、上記第2の成膜工程により成膜されたGaN上に、550℃以上の温度でGaNをエピタキシャル成長させる第3の成膜工程とにより成膜されたこと
を特徴とする半導体素子。
【請求項10】
上記第2の成膜工程では、窒素ガス雰囲気中にGa金属及びZnO基板を配置し、上記Ga金属に対してレーザ光を照射することにより、上記ZnO基板の表面にGaNを成膜すること
を特徴とする請求項9記載の半導体素子。
【請求項11】
300℃以下の温度によりエピタキシャル成長して生成された第1のGaN層と、
上記第1のGaN層上に形成され、550℃以上の温度によりエピタキシャル成長して生成された第2のGaN層とを備えること
を特徴とするGaN結晶。
【請求項12】
上記第1のGaN層は、表面が平坦化されたZnO基板の表面上に形成されていること
を特徴とする請求項11記載のGaN結晶。
【請求項13】
エピタキシャル成長して生成されたInGaN層と、
320℃以下の温度によりエピタキシャル成長して生成された第1のGaN層と、
上記第1のGaN層上に形成され、550℃以上の温度によりエピタキシャル成長して生成された第2のGaN層とを備えること
を特徴とするInGaN/GaN結晶。
【請求項14】
上記InGaN層は、表面が平坦化されたZnO基板の表面上に形成されていること
を特徴とする請求項13記載のInGaN/GaN結晶。
【請求項15】
III族窒化物の薄膜生成方法において、
表面が平坦化されたIII族窒化物に対する格子整合基板の表面上に、300℃以下の温度でIII族窒化物をエピタキシャル成長させる第1の成膜工程と、
上記第1の成膜工程により成膜されたIII族窒化物上に、550℃以上の温度でIII族窒化物をエピタキシャル成長させる第2の成膜工程と
を含むことを特徴とするIII族窒化物の薄膜生成方法。
【請求項16】
上記第1の成膜工程では、窒素ガス雰囲気中にIII族金属及び上記基板を配置し、上記III族金属に対してレーザ光を照射することにより、上記格子整合基板の表面にIII族窒化物を成膜すること
を特徴とする請求項15記載のIII族窒化物の薄膜生成方法。
【請求項17】
上記III族窒化物は、InGaAl1−X−YN(0≦X≦1、0≦Y≦1、X0≦X+Y≦1)で示される化合物であることを特徴とする請求項15記載のIII族窒化物の薄膜生成方法。
【請求項18】
上記III族金属は、InGaAl1−X−Y(0≦X≦1、0≦Y≦1、X0≦X+Y≦1)であることを特徴とする請求項16又は17記載の薄膜生成方法。
【請求項19】
上記格子整合基板は、SiC、Hf、LiGaO、(MnZn)Fe、MgAl、LiAlO及びNdGaOからなる群から選択された材料からなることを特徴とする請求項15乃至18のいずれか1項記載の薄膜生成方法。
【請求項20】
上記格子整合基板がLiGaOからなる場合、表面が平坦化されたMetal−face面に上記III族窒化物を成長させることを特徴とする請求項15又は16記載のIII族窒化物の薄膜生成方法。
【請求項21】
表面が平坦化されたIII族窒化物に対する格子整合基板と、当該格子整合基板上に成膜されたIII族窒化物膜とを有し、
上記III族窒化物膜は、300℃以下の温度でIII族窒化物をエピタキシャル成長させる第1の成膜工程と、上記第1の成膜工程により成膜されたIII族窒化物上に、550℃以上の温度でIII族窒化物をエピタキシャル成長させる第2の成膜工程とにより成膜されたこと
を特徴とする半導体素子。
【請求項22】
上記第1の成膜工程では、窒素ガス雰囲気中にIII族金属及び格子整合基板を配置し、上記III族金属に対してレーザ光を照射することにより、上記格子整合基板の表面にIII族窒化物を成膜すること
を特徴とする請求項21記載の半導体素子。
【請求項23】
300℃以下の温度によりエピタキシャル成長して生成された第1のIII族窒化物層と、
上記第1のIII族窒化物層上に形成され、550℃以上の温度によりエピタキシャル成長して生成された第2のIII族窒化物層とを備えること
を特徴とするIII族窒化物結晶。
【請求項24】
上記第1のIII族窒化物層は、表面が平坦化された格子整合基板の表面上に形成されていること
を特徴とする請求項23記載のIII族窒化物結晶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【図78】
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【図79】
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【図80】
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【図81】
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【図82】
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【図83】
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【図84】
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【図85】
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【図86】
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【図87】
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【図88】
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【図89】
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【図90】
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【図91】
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【図92】
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【図93】
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【図94】
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【図95】
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【図96】
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【図97】
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【図98】
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【図99】
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【図100】
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【図101】
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【図102】
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【図103】
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【図104】
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【図105】
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【図106】
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【図107】
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【図108】
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【図109】
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【図110】
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【図111】
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【図112】
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【図113】
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【図114】
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【図115】
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【図116】
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【図117】
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【図118】
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【図119】
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【図120】
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【図121】
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【図122】
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【図123】
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【図124】
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【図125】
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【図126】
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【図127】
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【図128】
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【図129】
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【図130】
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【図131】
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【図132】
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【図133】
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【公開番号】特開2006−237556(P2006−237556A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258571(P2005−258571)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年3月29日〜4月1日 社団法人応用物理学会発行の「2005年(平成17年)春季第52回応用物理学関係連合講演会講演予稿集」に発表
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】