説明

MEMS振動子、発振器、およびMEMS振動子の製造方法

【課題】信頼性が高く、安定した振動特性を有するMEMS振動子を提供する。
【解決手段】MEMS振動子100は、基板10と、基板10の上方に形成された第1電極20と、基板10の上方に形成された支持部30a、および支持部30aから延出し第1電極20と対向配置された梁部30bを有する第2電極30と、を含み、第1電極20は、平面視において第2電極30の外縁の外側に形成された第1側面22aと、平面視において第2電極30の外縁の内側に形成された第2側面22bと、を有し、第1側面22aは、基板10の上面10aに対して傾斜し、第2側面22bと第1電極20の上面22cとは、角部23を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS振動子、発振器、およびMEMS振動子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて製作されたMEMS振動子が注目されている。MEMS振動子は、発振器に用いられ、高い信頼性が要求される。例えば、特許文献1には、固定電極および固定電極に対して対向配置された可動電極を有するMEMS振動子の製造工程において、サイドウォール状のエッチング残りが発生することを防止することにより、信頼性を高める技術が開示されている。具体的には、固定電極の側面部がテーパー面を有することにより、固定電極の断面形状を滑らかにすることが可能となり、サイドウォール状のエッチング残りが形成されることを防止できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−160495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、固定電極の側面部にテーパー面を精度よく形成することは困難であり、MEMS振動子の形状にばらつきが生じる場合があった。したがって、このようなMEMS振動子では、この形状にばらつきに起因した振動特性のばらつきが生じ、安定した振動特性(例えば周波数精度)が得られないという問題があった。
【0005】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、信頼性が高く、安定した振動特性を有するMEMS振動子およびその製造方法を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記MEMS振動子を有する発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るMEMS振動子は、
基板と、
前記基板の上方に形成された第1電極と、
前記基板の上方に形成された支持部、および前記支持部から延出し前記第1電極と対向配置された梁部を有する第2電極と、
を含み、
前記第1電極は、
平面視において前記第2電極の外縁の外側に形成された第1側面と、
平面視において前記第2電極の外縁の内側に形成された第2側面と、
を有し、
前記第1側面は、前記基板の上面に対して傾斜し、
前記第2側面と前記第1電極の上面とは、角部を構成している。
【0007】
このようなMEMS振動子によれば、平面視において第2電極の外縁の外側に形成された第1電極の第1側面が基板の上面に対して傾斜し、平面視において第2電極の外縁の内側に形成された第1電極の第2側面が第1電極の上面と角部を構成している。これにより、第1側面によりサイドウォール状のエッチング残りの発生を防ぎつつ、振動子の振動特性に影響を与える第2側面を精度良く形成できる。第1側面は、基板の上面に対して傾斜しているため、サイドウォール状のエッチング残りの発生を防ぐことができる。したがって、信頼性を高めることができる。第2側面は、第1電極の上面と角部を構成しているため、第2側面が基板の上面に対して傾斜している場合と比べて、精度よく形成できる。したがって、電極形状のばらつきに起因する振動特性のばらつきの影響を低減でき、安定した振動特性を有することができる。
【0008】
なお、本発明に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下、「A」という)の「上方」に他の特定のもの(以下、「B」という)を形成する」などと用いる場合に、A上に直接Bを形成するような場合と、A上に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。
【0009】
本発明に係るMEMS振動子において、
前記第2側面と前記第1電極の上面がなす前記角部の角度は、90°以上100°以下であることができる。
【0010】
このようなMEMS振動子によれば、振動子の振動特性に影響を与える第2側面を精度よく形成できるため、電極形状のばらつきに起因する振動特性のばらつきの影響を低減でき、安定した振動特性を得ることができる。
【0011】
本発明に係るMEMS振動子において、
前記第1側面は、前記基板の上面に対して、5°以上45°以下の角度で傾斜していることができる。
【0012】
このようなMEMS振動子によれば、サイドウォール状のエッチング残りの発生を防ぐことができ、信頼性を高めることができる。
【0013】
本発明に係る発振器は、
本発明に係るMEMS振動子を含む。
【0014】
このような発振器によれば、本発明に係るMEMS振動子を有するため、信頼性が高く、安定した特性が得られる。
【0015】
本発明に係るMEMS振動子の製造方法は、
基板の上方に第1半導体層を形成する工程と、
前記第1半導体層の第1領域に不純物を注入する工程と、
前記第1領域の上方から前記第1領域と隣接する前記第1半導体層の第2領域の上方にわたって第1マスク層を形成し、露出した前記第1領域および前記第2領域を除去して前記第1半導体層をパターニングする工程と、
前記第1マスク層を除去し、パターニングされた前記第1半導体層に不純物を注入して第1電極を形成する工程と、
前記第1電極を覆う絶縁層を形成する工程と、
前記基板の上方および前記絶縁層の上方に第2半導体層を形成する工程と、
前記第2半導体層の上方に第2マスク層を形成して前記第2半導体層をパターニングし、前記基板の上方に形成された支持部、および前記支持部から延出し前記第1電極と対向配置された梁部を形成する工程と、
前記第2マスク層を除去し、パターニングされた前記第2半導体層に不純物を注入して第2電極を形成する工程と、
前記絶縁層を除去する工程と、
を含み、
前記第1半導体層をパターニングする工程において、前記第1領域がパターニングされることによって前記基板の上面に対して傾斜した第1側面が形成され、前記第2領域がパターニングされることによって前記第1半導体層の上面と角部を構成する第2側面が形成され、
前記第2半導体層をパターニングする工程において、前記第1側面が平面視において前記第2マスク層の外縁の外側に位置し、前記第2側面が平面視において前記第2マスク層の外縁の内側に位置するように前記第2マスク層を形成する。
【0016】
このようなMEMS振動子の製造方法によれば、第2半導体層をパターニングする工程においてエッチング残りが発生することを防ぎつつ、第1電極の第2側面を精度よく形成できる。したがって、信頼性が高く、安定した振動特性が得られる振動子を製造することができる。さらに、このようなMEMS振動子の製造方法によれば、第1側面と第2側面を同一工程で形成することができる。
【0017】
本発明に係るMEMS振動子の製造方法において、
前記第1半導体層をパターニングする工程において、前記第1半導体層のパターニングは、ドライエッチングで行われることができる。
【0018】
このようなMEMS振動子の製造方法によれば、第1側面と第2側面を同一工程で形成することができる。
【0019】
本発明に係るMEMS振動子の製造方法において、
前記第1半導体層の第1領域に不純物を注入する工程において、前記第2領域の上方に第3マスク層を形成して露出した前記第1領域に不純物を注入し、
前記第2マスク層と前記第3マスク層とは、同じマスクによって形成されることができる。
【0020】
このようなMEMS振動子の製造方法によれば、低コストで製造することができる。
【0021】
本発明に係るMEMS振動子の製造方法において、
さらに、前記第2マスク層の平面形状を測定する工程を有することができる。
【0022】
このようなMEMS振動子の製造方法によれば、第2マスク層の平面形状から梁部の延出方向の長さを求めることができ、梁部の延出方向の長さを高い精度で制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す平面図。
【図2】本実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す断面図。
【図3】本実施形態に係るMEMS振動子を模式的に示す断面図。
【図4】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図5】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図6】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図7】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図8】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図9】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図10】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図11】本実施形態に係るMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図12】第1側面が基板の上面に対して垂直な面である場合のMEMS振動子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図13】本実施形態の変形例に係るMEMS振動子を模式的に示す断面図。
【図14】本実施形態に係る発振器を模式的に示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
1. MEMS振動子
まず、本実施形態に係るMEMS振動子について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態にかかるMEMS振動子100を模式的に示す平面図である。図2および図3は、MEMS振動子100を模式的に示す断面図である。なお、図2は、図1のII−II線断面図であり、図3は、図1のIII−III線断面図である。
【0026】
MEMS素子100は、図1〜図3に示すように、基板10と、第1電極20と、第2電極30と、を含む。
【0027】
基板10は、支持基板12と、第1下地層14と、第2下地層16と、を有することができる。
【0028】
支持基板12としては、例えば、シリコン基板等の半導体基板を用いることができる。支持基板12として、セラミックス基板、ガラス基板、サファイア基板、合成樹脂基板などの各種の基板を用いてもよい。
【0029】
第1下地層14は、支持基板12上に形成されている。第1下地層14としては、例えば、トレンチ絶縁層、LOCOS(local oxidation of silicon)絶縁層、セミリセスLOCOS絶縁層を用いることができる。第1下地層14は、MEMS振動子100と支持基板12に形成された他の素子(図示しない)とを電気的に分離することができる。
【0030】
第2下地層16は、第1下地層14上に形成されている。第2下地層16の材質としては、例えば、窒化シリコンが挙げられる。第2下地層16は、後述するリリース工程においてエッチングストッパー層として機能することができる。
【0031】
第1電極20は、基板10上に形成されている。第1電極20の形状は、例えば、層状または薄膜状である。第1電極20の平面形状は、例えば、図1に示すように、長方形である。第1電極20は、第1側面22aと、第2側面22bと、を有している。第1側面22aは、図1に示すように、平面視において(基板10の上面10aの垂線方向からみて)、第2電極30の外縁の外側に形成されている。第2側面22bは、平面視において、第2電極30の外縁の内側に形成されている。すなわち、平面視において、第1側面22aは、第2電極30と重なっておらず、第2側面22bは、第2電極30と重なっている。ここで、平面視において第2電極30の外縁の外側の第1電極20の形状は、振動子の振動特性(例えば周波数特性)に与える影響が小さく、平面視において第2電極30の外縁の内側の第1電極20の形状は、振動子の振動特性に与える影響が大きい。図示の例では、第2電極30の外縁の外側に形成された第1電極20の側面の全部が第1側面22aであり、第2電極30の外縁の内側に形成された第1電極20の側面の全部が第2側面22bである。第2側面22bは、図2に示すように、第2電極30の支持部30a(支持部30aの内側面)と対向している。
【0032】
第1側面22aは、基板10の上面10aに対して傾斜している。すなわち、第1側面22aは、第1電極20の端部に近づくに従って第1電極20の厚みが減少するように形成されたテーパー面である。第1側面22aの傾斜角αは、例えば、5°以上45°以下である。傾斜角αは、例えば、25°であることが好ましい。
【0033】
第2側面22bと第1電極20の上面22cとは、角部23を構成している。図示の例では、第2側面22bは、第1電極20の上面22cに対して垂直に形成されている。すなわち、角部23の角度(第2側面22bと上面22cとがなす角度)βは90°である。第2電極30は、間隙を介して第1電極20の第2側面22bおよび上面22cに沿って形成されるため、第2電極30には第1電極20の角部23を反映した角部33が形成される。すなわち、第1電極20の角部23の角度βと、第2電極30の角部33の角度(第1上面32aと接続面32cとがなす角度)とは、例えば、同じ大きさである。第1電極20の角部23の角度βは、平面視においてSEM観察で容易に確認できる角度であり、例えば、90°以上100°以下である。これにより、第2電極30の角部33の角度を、例えば、平面視においてSEM観察で容易に確認できる角度にすることができる。第2電極30の角部33の角度は、具体的には、例えば、90°以上100°以下である。MEMS振動子100では、第2電極30の角部33が、平面視においてSEM観察等で容易に確認できるため、第2電極30の梁部30b(第1上面32a)の平面形状を容易に確認することができる。
【0034】
第2電極30は、基板10上に形成された支持部30aと、支持部30aから延出し第1電極20と対向配置された梁部30bと、を有する。第2電極30は、片持ち梁状に形成されている。電極20,30間に電圧が印加されると、梁部30bは、電極20,30間に発生する静電力により振動することができる。なお、MEMS振動子100は、第1電極20および第2電極30を減圧状態で気密封止する被覆構造体を有していてもよい。これにより、梁部30bの振動時における空気抵抗を減少させることができる。
【0035】
第2電極30は、第1上面32aと、第2上面32bと、を有する。第1上面32aと基板10の上面10aとの間の距離は、第2上面32bと基板10の上面10aとの間の距離よりも長く、第1上面32aと第2上面32bとの間には段差が形成されている。第1上面32aと第2上面32bとは、接続面32cによって接続されており、第1上面32aと接続面32cとが角部33を構成している。
【0036】
第1電極20および第2電極30の材質としては、所定の不純物をドーピングすることにより導電性が付与された多結晶シリコンが挙げられる。
【0037】
MEMS振動子100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0038】
MEMS振動子100では、平面視において第2電極30の外縁の外側に形成された第1電極20の第1側面22aが基板10の上面10aに対して傾斜し、平面視において第2電極30の外縁の内側に形成された第1電極20の第2側面22bが第1電極20の上面22cと角部23を構成している。これにより、第1側面22aによりサイドウォール状のエッチング残りの発生を防ぎつつ、MEMS振動子の振動特性に影響を与える第2側面22bを精度良く形成できる。第1側面22aは、基板10の上面10aに対して傾斜しているため、後述するようにサイドウォール状のエッチング残りの発生を防ぐことができる。したがって、信頼性を高めることができる。第2側面22bは、第1電極20の上面22cと角部23を構成しているため、第2側面22bが基板10の上面10aに対して傾斜している場合と比べて、精度よく形成できる。したがって、MEMS振動子100では、電極形状のばらつきに起因する振動特性のばらつきの影響を低減でき、安定した振動特性を有することができる。
【0039】
さらに、第1電極20に角部23が形成されることにより、第2電極30に角部33を形成することができる。これにより、第2電極30の角部33を平面視においてSEM観察で容易に確認できるため、第2電極30の梁部30b(第1上面32a)の平面形状を容易に確認できる。したがって、例えば、梁部30bの平面形状から梁部30bの延出方向の長さを求めるなどして、MEMS振動子の特性を容易に確認することができる。
【0040】
MEMS振動子100では、第1電極20の第2側面22bと第1電極20の上面22cがなす角部23の角度βが、90°以上100°以下であることができる。これにより、第2側面22bを精度よく形成することができるため、電極形状のばらつきに起因する振動特性のばらつきの影響を低減でき、安定した振動特性を得ることができる。さらに、角部23の角度βを90°以上100°以下とすることで、第2電極30の角部33の角度を平面視においてSEM観察で容易に確認できる角度とすることができる。これにより、第2電極30の梁部30b(第1上面32a)の平面形状を容易に確認できる。したがって、例えば、梁部30bの平面形状から梁部30bの延出方向の長さを求めるなどして、MEMS振動子の特性を容易に確認することができる。
【0041】
MEMS振動子100では、第1電極20の第1側面22aは、基板10の上面10aに対して、5°以上45°以下の角度で傾斜していることができる。これにより、後述するように、第2電極30を形成する工程においてサイドウォール状のエッチング残りが発生することを防ぐことができ、信頼性を高めることができる。
【0042】
2. MEMS振動子の製造方法
次に、本実施形態に係るMEMS振動子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図4〜図11は、本実施形態に係るMEMS振動子100の製造工程を模式的に示す断面図である。なお、図4〜図11は、図2に対応している。
【0043】
図4に示すように、支持基板12上に、第1下地層14および第2下地層16をこの順で形成して、基板10を得る。第1下地層14は、例えば、LOCOS法により形成される。第2下地層16は、例えば、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタ法により形成される。
【0044】
次に、基板10上に第1半導体層2を形成する。第1半導体層2は、例えば、CVD法、スパッタ法により形成される。第1半導体層2の材質としては、例えば、多結晶シリコンを挙げることができる。
【0045】
次に、第1半導体層2の第1領域2aに不純物を注入する。具体的には、第1半導体層2の第1領域2a以外の領域(例えば、第1領域2aと隣接する第2領域2b)にマスク層(第3マスク層)M1を形成し、このマスク層M1をマスクとして、露出した第1領域2aに不純物を注入する。注入される不純物としては、例えば、リン(P)が挙げられる。マスク層M1としては、例えば、レジスト層を用いることができる。第1領域2aに不純物が注入された後、マスク層M1は、除去される。また、熱処理を行い、不純物の活性化を行ってもよい。
【0046】
図5に示すように、第1領域2a上から第2領域2b上にわたってマスク層M2(第1マスク層)を形成する。マスク層M2としては、例えば、レジスト層を用いることができる。
【0047】
図6に示すように、マスク層M2をマスクとして、露出した第1領域2aおよび第2領域2bを除去して第1半導体層2をパターニングする。パターニングは、例えば、塩素(Cl)ガスと六フッ化硫黄(SF)ガスとの混合ガスを用いたドライエッチング法により行われる。ドライエッチングの条件は、例えば、チャンバー内圧力が0mtorr以上20mtorr以下、RFパワーが0W以上300W以下程度、塩素ガスの流量が最大100sccm、六フッ化硫黄ガスの流量が最大20sccm、エッチング時間が5分である。
【0048】
上記のように、第1半導体層2がパターニングされることによって、第1領域2aではサイドエッチングが進むため、基板10の上面10aに対して傾斜した第1側面22aが形成される。第2領域2bではサイドエッチングの影響が少ないため、第1半導体層2の上面22cと角部23を構成する第2側面22bが形成される。第1側面22aの傾斜角αおよび角部23の角度βは、注入する不純物の種類、不純物のドープ濃度、およびエッチングガスの種類を調整することより、制御できる。
【0049】
図7に示すように、マスク層M2を除去し、パターニングされた第1半導体層2に不純物を注入して、第1電極20を形成する。なお、パターニングされた第1半導体層2の全部に不純物を注入してもよいし、第2領域2bにのみに不純物を注入してもよい。これにより、第1半導体層2の抵抗率を下げて第1電極20を形成できる。
【0050】
図8に示すように、第1電極20を覆う絶縁層4を形成する。絶縁層4は、例えば、酸化シリコン層であり、第1電極20を熱酸化することにより形成される。
【0051】
図9に示すように、基板10上および絶縁層4上に第2半導体層6を形成する。第2半導体層6は、例えば、CVD法、スパッタ法により形成される。第2半導体層6の材質としては、例えば、多結晶シリコンを挙げることができる。
【0052】
次に、第2半導体層6上にマスク層M3(第2マスク層)を形成する。マスク層M3は、例えば、第1側面22aが平面視においてマスク層M3の外縁の外側に位置し、第2側面22bが平面視においてマスク層M3の外縁の内側に位置するように形成される。マスク層M3としては、例えば、レジスト層を用いることができる。なお、マスク層M3とマスク層M1(図4参照)とは、同じマスクによって形成することができる。
【0053】
次に、マスク層M3の平面形状を測定する。マスク層M3の平面形状は、例えば、SEMにより測定することができる。マスク層M3は、第2半導体層6に沿って形成されるため、マスク層M3には、第2半導体層6の角部33を反映した角部Cが形成される。これにより、マスク層M3の平面形状をSEM観察等で容易に確認することができる。したがって、マスク層M3の平面形状から梁部30bの延出方向の長さを容易に求めることができる。そのため、例えば、求められた梁部30bの延出方向の長さが所望の長さでない場合には、マスク層M3を再度形成しなおすなどして、梁部30bの延出方向の長さを高い精度で制御することができる。マスク層M3の角部Cの角度は、例えば、第1電極20の角部23の角度βにより制御することができる。第1電極20の角部23の角度βは、例えば、90°以上100°以下である。
【0054】
図10に示すように、マスク層M3をマスクとして第2半導体層6をパターニングし、支持部30aおよび梁部30bを形成する。第1側面22aは、基板10の上面10aに対して傾斜しているため、本工程において、サイドウォール状のエッチング残りが発生することを防ぐことができる。詳細は後述する。
【0055】
図11に示すように、マスク層M3を除去し、パターニングされた第2半導体層6に不純物を注入して第2電極30を形成する。
【0056】
図2に示すように、絶縁層4を除去する(リリース工程)。絶縁層4の除去は、例えば、フッ化水素酸や緩衝フッ酸(フッ化水素酸とフッ化アンモニウムとの混合液)などを用いたウェットエッチングにより行われる。このとき、第2下地層16は、エッチングストッパー層として機能することができる。
【0057】
以上の工程により、MEMS振動子100を製造することができる。
【0058】
本実施形態に係るMEMS振動子100の製造方法によれば、例えば、以下の特徴を有する。
【0059】
MEMS振動子100の製造方法によれば、第1電極20の第1側面22aが基板10の上面10aに対して傾斜するように形成され、第1電極20の第2側面22bが第1電極20の上面22cと角部23を構成するように形成される。これにより、第2半導体層6をパターニングする工程においてエッチング残りが発生することを防ぎつつ、MEMS振動子の振動特性に影響を与える第2側面22bを精度良く形成できる。したがって、信頼性が高く、安定した振動特性を有するMEMS振動子を得ることができる。
【0060】
ここで、第2半導体層6をパターニングする工程において発生するエッチング残りについて説明する。図12は、第1側面22aが基板10の上面10aに対して垂直な面である場合における第2半導体層6をパターニングする工程を模式的に示す断面図である。第1電極20の第1側面22aが基板10の上面10aに対して傾斜していない場合、すなわち、例えば、図12に示すように、第1側面22aが基板10の上面10aに対して垂直な面である場合、基板10上の第1側面22a近傍に形成された第2半導体層6の膜厚は、基板10上の他の領域や絶縁層4上に形成された第2半導体層6の膜厚に比べて、大きい。したがって、図12に示すように、第2半導体層6をドライエッチングでパターニングすることにより、基板10上の第1側面22a近傍にサイドウォール状のエッチング残り7が発生する。このエッチング残り7が基板10上から離れて電極20,30等に付着することにより、電極20,30間の短絡や、梁部30bの振動特性の変化等が起こり、信頼性が低下する。これに対して、MEMS振動子100では、第1側面22aが、基板10の上面10aに対して傾斜しているため、第2半導体層6の膜厚を均一化することができ、第2半導体層6をパターニングする工程においてエッチング残りが発生することを防ぐことができる。
【0061】
MEMS振動子100の製造方法によれば、ドライエッチングによって、第1半導体層2の第1領域2aおよび第2領域2bをパターニングすることにより、第1側面22aと第2側面22bを同一工程で形成することができる。したがって、製造工程を容易化することができる。
【0062】
MEMS振動子100の製造方法によれば、マスク層M1とマスク層M3とは、同じマスクによって形成されることができる。これにより、低コストで製造することができる。
【0063】
MEMS振動子100の製造方法によれば、第2マスク層M2の平面形状を測定する工程を有することができる。これにより、第2マスク層M2の平面形状から梁部30bの延出方向の長さを求めることができ、梁部30bの延出方向の長さを高い精度で制御することができる。
【0064】
3. MEMS振動子の変形例
次に、本実施形態に係るMEMS振動子の変形例について、図面を参照しながら説明する。図13は、本実施形態の変形例に係るMEMS振動子200を模式的に示す平面図である。以下、MEMS振動子200において、MEMS振動子100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0065】
MEMS振動子200では、図13に示すように、第1電極20の第1側面22aの一部が、平面視において第2電極30の外縁の内側に形成されている。すなわち、第2電極30の外縁の内側には、第1側面22aと、第2側面22bと、が形成されている。
【0066】
MEMS振動子200によれば、MEMS振動子100と同様の作用効果を奏することができる。
【0067】
4. 発振器
次に、本実施形態に係る発振器について、図面を参照しながら説明する。図14は、本実施形態に係る発振器300を模式的に示す構成図である。
【0068】
発振器300は、本発明に係るMEMS振動子と、発振回路部310と、を有する。なお、ここでは、本発明に係るMEMS振動子として、MEMS振動子100を用いた例について説明する。
【0069】
発振回路部310は、MEMS振動子100と電気的に接続されている。発振回路部310とMEMS振動子100とは、MEMS振動子100の固有振動数に応じた共振周波数を有する発振回路を構成することができる。発振回路部310を構成するトランジスターやキャパシター等は、例えば、支持基板12上に形成されていてもよい。これにより、MEMS振動子100と発振回路部310とをモノリシックに形成することができる。
【0070】
発振器300は、MEMS振動子100を有するため、信頼性が高く、安定した特性が得られる。
【0071】
なお、上述した実施形態は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0072】
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0073】
2 第1半導体層、2a 第1領域、2b 第2領域、4 絶縁層、6 第2半導体層、
10 基板、10a 上面、12 支持基板、14 第1下地層、16 第2下地層、
20 第1電極、22a 第1側面、22b 第2側面、22c 上面、23 角部、
30 第2電極、30a 支持部、30b 梁部、32a 第1上面、
32b 第2上面、32c 接続面、33 角部、100,200 MEMS振動子、
300 発振器、310 発振回路部、M1,M2,M3 マスク層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に形成された第1電極と、
前記基板の上方に形成された支持部、および前記支持部から延出し前記第1電極と対向配置された梁部を有する第2電極と、
を含み、
前記第1電極は、
平面視において前記第2電極の外縁の外側に形成された第1側面と、
平面視において前記第2電極の外縁の内側に形成された第2側面と、
を有し、
前記第1側面は、前記基板の上面に対して傾斜し、
前記第2側面と前記第1電極の上面とは、角部を構成している、MEMS振動子。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2側面と前記第1電極の上面がなす前記角部の角度は、90°以上100°以下である、MEMS振動子。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1側面は、前記基板の上面に対して、5°以上45°以下の角度で傾斜している、MEMS振動子。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のMEMS振動子を含む、発振器。
【請求項5】
基板の上方に第1半導体層を形成する工程と、
前記第1半導体層の第1領域に不純物を注入する工程と、
前記第1領域の上方から前記第1領域と隣接する前記第1半導体層の第2領域の上方にわたって第1マスク層を形成し、露出した前記第1領域および前記第2領域を除去して前記第1半導体層をパターニングする工程と、
前記第1マスク層を除去し、パターニングされた前記第1半導体層に不純物を注入して第1電極を形成する工程と、
前記第1電極を覆う絶縁層を形成する工程と、
前記基板の上方および前記絶縁層の上方に第2半導体層を形成する工程と、
前記第2半導体層の上方に第2マスク層を形成して前記第2半導体層をパターニングし、前記基板の上方に形成された支持部、および前記支持部から延出し前記第1電極と対向配置された梁部を形成する工程と、
前記第2マスク層を除去し、パターニングされた前記第2半導体層に不純物を注入して第2電極を形成する工程と、
前記絶縁層を除去する工程と、
を含み、
前記第1半導体層をパターニングする工程において、前記第1領域がパターニングされることによって前記基板の上面に対して傾斜した第1側面が形成され、前記第2領域がパターニングされることによって前記第1半導体層の上面と角部を構成する第2側面が形成され、
前記第2半導体層をパターニングする工程において、前記第1側面が平面視において前記第2マスク層の外縁の外側に位置し、前記第2側面が平面視において前記第2マスク層の外縁の内側に位置するように前記第2マスク層を形成する、MEMS振動子の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1半導体層をパターニングする工程において、前記第1半導体層のパターニングは、ドライエッチングで行われる、MEMS振動子の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記第1半導体層の第1領域に不純物を注入する工程において、前記第2領域の上方に第3マスク層を形成して露出した前記第1領域に不純物を注入し、
前記第2マスク層と前記第3マスク層とは、同じマスクによって形成される、MEMS振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか1項において、
さらに、前記第2マスク層の平面形状を測定する工程を有する、MEMS振動子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−85085(P2012−85085A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229321(P2010−229321)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】