PECVDによってSi−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜を形成する方法
【課題】プラズマ励起化学蒸着(PECVD)により、半導体基板上にSi−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜を形成する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、窒素及び/または水素を含有する反応ガスと希ガスを、中に半導体基板が配置された反応空間に導入する工程と、RFパワーを反応空間に印加する工程と、水素を含有するシリコンガスを含む前駆体を、5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で反応空間に導入し、その間プラズマが励起されている状態で反応ガスと希ガスとを中断することなく導入し、それによって基板上にSi−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜を形成する工程を含む。
【解決手段】本方法は、窒素及び/または水素を含有する反応ガスと希ガスを、中に半導体基板が配置された反応空間に導入する工程と、RFパワーを反応空間に印加する工程と、水素を含有するシリコンガスを含む前駆体を、5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で反応空間に導入し、その間プラズマが励起されている状態で反応ガスと希ガスとを中断することなく導入し、それによって基板上にSi−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜を形成する工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路の製造に関するもので、特に、低温においてプラズマ励起化学蒸着(PECVD)によって、窒化シリコン膜のようなコンフォーマルな誘電体膜を形成する方法及び添加前駆体を用いて誘電体膜のエッチ特性を修正する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路を半導体基板上に作製する際、半導体チップ上に形成された半導体デバイスの個々の層を、電気的に相互接続するために複数のレベルの金属配線が必要である。異なったレベルの相互配線はさまざまな絶縁または誘電体層によって隔てられるが、それら層はひとつのレベルの金属配線を別のレベルの金属配線と接続するビアホールを形成するためにエッチされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願第12/331,309号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チップの設計の進化によって、集積回路は絶えずより速く、より高密度であることが求められる。殊に、集積回路の部品がサブミクロンのスケールまで縮小される局面においては、高密度でありかつ速いといった集積回路を作製するために用いられる物質には、一定の特性が必要とされる。また、集積回路のさらなる高密度化のための部品の製造には、一定のプロセスシーケンスが必要とされる。
【0005】
近年は、低温(400℃以下)で成膜された窒化シリコン層が、メモリデバイスのための多くの重要な応用例において、例えば不動態化層や表面保護層、及び/またはトランジスタゲートのためのスペーサとして、用いられてきた。窒化シリコン膜は、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)方法によって形成することができる。CVD方法より優れたPECVD方法の主要な利点は、広範囲な屈折率にわたり成膜率が高く、制御性に優れていることである。PECVD方法の更なる利点は、プロセスが比較的低温、たとえば400℃以下で行われ、セル処理での熱の総量が最小に維持されることである。
【0006】
しかしながら、窒化シリコン膜を形成するためのPECVD方法では、小さな及び/または高いアスペクト比の特徴部を含む基板上でのコンフォーマリティ(conformality)またはステップカバレージが十分なものとならない。極超大規模集積回路(ULSI)のように、小さな回路やデバイスにおいては、コンフォーマリティが不十分なカバレージは、集積回路のデバイスやエレメントのさらなる高密度化の進展を妨げかねない。
【0007】
近年、原子層の成膜(ALD)が、小さな特徴部を含む基板における窒化シリコン膜のコンフォーマリティまたはステップカバレージを改善するために研究されている。しかしながら、窒化シリコン膜を形成するための原子層の成膜(ALD)方法は、極めて低い成膜率という結果をもたらす。そのような低い成膜率は、集積回路のデバイスやエレメントのさらなる高密度化を進めることによる製造コストの引き下げを妨げる。
【0008】
本発明の少なくとも一実施例の目的は、例えば400℃以下の低温で、集積回路のためのトレンチの表面に窒化シリコン層のようなSi−N結合を有する水素を含有するコンフォーマルな層を形成する方法を提供することである。
【0009】
本発明の少なくとも一実施例の他の目的は、第二の前駆体を添加することによって、高い成膜率と高いコンフォーマリティを維持しながら、ウェットエッチングレートのような、成膜された層のエッチ特性を修正するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例では、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)によって、半導体基板上に、Si−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜を形成する方法が提供される。この方法は、窒素及び/又は水素を含有する反応ガスと希ガスを、基板が配置された反応空間に導入する工程を含み、RFパワーが反応空間に印加される。水素を含有するシリコンガスを含む前駆体が、5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で反応空間に導入され、その間反応ガスと希ガスが中断することなく導入され、プラズマが励起され、そのことによってSi−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜が基板上に形成される。ここで開示する発明において、“ガス”は固体及び/または液体の蒸気を含み、混合ガスを含んでもよい。
【0011】
他の実施例においては、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)によって、Si−N結合を有する水素を含有する高度にコンフォーマルな層を半導体基板上に形成する方法は、反応ガスと添加ガスとを、中に半導体基板が配置されたCVD反応チャンバーに導入する工程を含み、半導体基板の温度は、約0℃ないし約400℃の範囲に維持される。反応ガスと添加ガスとが反応チャンバーに導入されたあと、反応チャンバーにおいてプラズマが励起された状態になる。水素を含有するシリコン前駆体が、パルス流量制御弁を用いて、パルスの状態で反応チャンバーに導入され、シリコン前駆体がプラズマが励起された反応チャンバーに導入され、それらのガスのプラズマ反応によって、基板上にSi−N結合を有する水素を含有するコンフォーマルな膜が形成される。
【0012】
一実施例では、基板は約0℃ないし400℃の温度に維持される。水素を含有するシリコン前駆体は、シリコンと水素の組合せ、シリコンと水素と窒素との組合せ、又はシリコンと水素、炭素、窒素との組合せを含んで成ってもよい。一実施例において、水素を含有する気化したシリコン前駆体は、約0.1秒ないし約1.0秒の持続時間をもつパルスの状態で、約0.5秒ないし約3秒のインターバル(パルス間の間隔)をもって導入されてもよく、その間、プラズマ重合が維持される。一実施例として、反応ガスは、窒素ガスと水素ガスとの組合せ又はアンモニアガスと水素ガスとの組合せを含んで成ってもよい。一実施例として、添加ガスはHe、Ar、Kr、Xeのグループから選択されてもよく、添加ガスのモル流量は、水素を含有するシリコンソースのモル流量を超えるものであってもよい。一実施例として、反応チャンバーは、約0.1トルないし約10トルの圧力に維持されてもよい。一実施例として、RFパワーは、約0.02W/cm2ないし約20W/cm2の間であってよい。チャンバーに導入されたあと、反応ガスはパルスの状態で供給される水素を含有するシリコン前駆体とプラズマ反応によって反応し、その結果、基板表面にSi−N結合を有するコンフォーマルな膜が形成される。
【0013】
一実施例として、水素を含有するシリコンガスは、その分子中に炭素原子を含まなくともよく、これを第一の前駆体として構成し、さらに前駆体は第二の前駆体として、炭化水素を含有するガスを含んで成ってもよい。第二の前駆体を添加することにより、例えば結果としてできる膜のウェットエッチングレートは、著しく改善できまたは補整できる。
【0014】
以上のとおり、第一の前駆体と第二の前駆体は、それが炭素を含むか否かによって、区別されてよいものである。反応ガスは、炭化水素やシリコンを含有しないガスとして定義されてよい。以上のように、第一、第二の前駆体と反応ガスは、ガスのタイプとして重複することはない。一実施例として、第一の前駆体と第二の前駆体は同じタイミングでパルスの状態で導入されてよい。一実施例として、第二の前駆体のパルスの持続時間は、第一の前駆体のそれと異なってもよい。
【0015】
本発明の態様及び従来技術を超えて達成される効果を要約する目的のために、本発明の一定の目的及び効果がここで説明される。もちろん、このような目的や効果のすべてが本発明の特定の実施例のいずれかに従って達成されるわけではないことは理解されるであろう。したがって、たとえば、以下で教示する他の目的、効果を必ずしも達成することなく、ここで教示する一つの効果又は一群の効果を達成又は最適にする方法で本発明を実施又は成し遂げることができることを、当業者は理解するであろう。
【0016】
さらに、本発明の態様、特徴及び利点は以下の詳細な説明により明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施例に従った窒化シリコン膜を成膜するPECVD装置の略示図である。
【図2】図2a及び2bは、窒化シリコン膜を成膜するための比較例のPECVD方法のプロセス工程を示す。
【図3a】図3aは、本発明の実施例に従って形成されたコンフォーマルな窒化シリコン膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図3b】図3bは、本発明の実施例に従って形成されたコンフォーマルな窒化シリコン膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図4】図4は、本発明の実施例に従って形成されたコンフォーマルな窒化シリコン膜のフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)スペクトルである。
【図5】図5は、本発明の実施例に従ったPECVD方法のプロセス工程を示す。
【図6】図6は、本発明の実施例に従った誘電体膜のFT−IRスペクトルを示す。
【図7】図7は、本発明の実施例に従った誘電体層と標準的な熱酸化層のウェットエッチングレートを比較するグラフである。
【図8】図8は、本発明に従った膜における窒素の流速とウェットエッチングレートおよび炭素濃度との相関関係を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明の実施例に従った窒素の流速と屈折率及びSi/N比との相関関係を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の実施例に従ったヘキサンの供給持続時間とウェットエッチングレートとの相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のこれら又は他の特徴は、本発明を限定することを意図するものではないが、好適実施例を図示する図面を参照して説明される。図面は説明の目的で単純化され、尺度も必ずしも一致しない。
【0019】
本発明は、本発明を制限することを意図しない実施例を参照して記述される。さらに、一実施例に適用された要素を他の実施例に適用することは可能であり、異なる実施例に適用された要素を、特別な条件が付されない限り、互いに置き換えても、あるいは交換してもよい。さらに、以下で示された範囲の端点は、実施例において含む場合もあり、含まない場合もある。
【0020】
一実施例では、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)によって、半導体基板上に、Si−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜を形成する方法が提供される。この方法は、(a)窒素及び/または水素を含有する反応ガスと希ガスを、基板が配置された反応空間に導入する工程と、(b)RFパワーを反応空間に印加する工程と、(c)水素を含有するシリコンガスを含む前駆体を、5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で反応空間に導入し、その間プラズマが励起されている状態で反応ガスと希ガスとを中断することなく導入し、それによってSi−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜を基板上に形成する工程、を含む。
【0021】
一実施例において、水素を含有するシリコン前駆体は、SiαHβXγの化学式を有してよく、ここでα、βおよびγは整数であり、γはゼロを含む。XはN、F及び/またはCmHnを含んでよく、ここでmとnは整数である。一実施例において、αは1ないし5、βは1ないし10、そしてγは0ないし6であってよい。一実施例において、mは2ないし18、そしてnは6ないし30であってよい。
【0022】
前述のどの実施例においても、基板上に成膜される間、基板の温度は0℃ないし400℃の間に維持されてよい。他の実施例においては、成膜の間、基板の温度は約250℃ないし約350℃の間である。
【0023】
前述のどの実施例においても、水素を含有するシリコン前駆体は反応空間の上流で気化させられてもよい。
【0024】
前述のどの実施例においても、水素を含有するシリコン前駆体は、室温で液体であってもよい。
【0025】
前述のどの実施例においても、水素を含有するシリコン前駆体は、反応ガスと添加ガスとが連続して導入され、RFパワーが連続して印加される間に、パルスの状態で導入されてよい。
【0026】
前述のどの実施例においても、水素を含有するシリコン前駆体は、約0.1秒ないし約1.0秒の持続時間をもつパルスの状態で導入されてよい。他の実施例においては、水素を含有するシリコン前駆体は、約0.2秒ないし約0.3秒の持続時間をもつパルスの状態で導入される。
【0027】
他の実施例においては、水素を含有するシリコン前駆体のパルスは、約0.1秒ないし約3.0秒のインターバルがあけられる。他の実施例においては、インターバルは約0.5秒ないし約3.0秒、または約1.0秒ないし約2.0秒である。一実施例においては、パルスの持続時間は、インターバルの長さ以下であってよい。
【0028】
上記の実施例のいずれも、反応ガスは、N2とH2の混合物、NH3とH2の混合物、窒素−ホウ素−水素ガスを含んで成ってもよい。一実施例として、反応ガスは、N2とH2の混合物(N2/H2のモル流量が約1/1ないし約10/1である)を含んでよい。他の実施例では、N2/H2のモル流量は約2/1ないし約4/1である。一実施例では、反応ガスは、NH3とH2の混合物(NH3/H2のモル流量が約1:1ないし約1:10である)を含んでよい。また、他の実施例では、NH3/H2のモル流量は約1:1ないし約1:3である。
【0029】
上記の実施例のいずれも、添加ガスは、He、Ar、Kr及びXeのグループから選択された一つ又はそれ以上のガスであってよく、添加ガスのモル流量は、水素を含有するシリコンソースのモル流量を超えるものでもよい。一実施例として、反応チャンバーに導入される添加ガスの流量は、約30sccmないし約3000sccmであってよい。他の実施例として、添加ガスの流量は、約1500sccmないし約2500sccmである。一実施例として、添加ガスは、ヘリウムとアルゴンの混合物またはヘリウムとクリプトンとの混合物を含んでよい。一実施例では、添加ガスはヘリウムとアルゴンの混合物で、ヘリウム/アルゴンのモル流量比が約3/1ないし約20/1のものを含んで成ってもよい。他の実施例として、ヘリウム/アルゴンのモル流量比は、約5/1ないし約15/1である。一実施例では、添加ガスはヘリウムとクリプトンの混合物であって、ヘリウム/クリプトンのモル流量比が約3/1ないし約20/1のものを含んで成ってもよい。他の実施例として、ヘリウム/クリプトンのモル流量比は、約5/1ないし約15/1である。
【0030】
他の実施例においては、三つのタイプのガス(すなわち、水素を含有するシリコン前駆体、反応ガス及び添加ガス)のみが用いられ、炭素前駆体のような他のガスは用いられなくともよい。
【0031】
上記の実施例のいずれも、コンフォーマルな誘電体膜は、窒化シリコン膜であってもよい。
【0032】
上記の実施例のいずれも、RFパワーは、基板表面積当たり約0.02W/cm2ないし約20W/cm2の範囲で印加されてよく(例えば、0.05〜10W/cm2の範囲、1〜5W/cm2の範囲、0.5〜3W/cm2の範囲)、反応空間の圧力は約0.1トルないし約10トルの範囲で調節されてよい。他の実施例においては、反応空間の圧力は約2トルないし9トルであってよい。
【0033】
上記の実施例のいずれも、水素を含有するシリコン前駆体を導入するパルスの持続時間及びパルスのインターバルは、コンフォーマルな誘電体膜が、少なくとも80%(例えば、80%ないし95%)のステップカバレージまたはコンフォーマリティを有するようにするものであってよい。一実施例において、水素を含有するシリコン前駆体を導入するパルスの持続時間及びパルスのインターバルは、コンフォーマルな誘電体膜が、例えば、ウェットエッチングのためにバッファードHFを用いる場合、標準的な熱酸化膜よりも低いエッチングレートを有するようにするものであってよい。一実施例においては、水素を含有するシリコン前駆体を導入するパルスの持続時間及びパルス間のインターバルは、コンフォーマルな誘電体膜が、1MVで1.0E−08A/cm2以下のリーク電流になるようにするものであってよい。他の実施例では、リーク電流は1MVで約1.0E−08A/cm2と約1.0E−10A/cm2の間である。
【0034】
上記の実施例のいずれも、コンフォーマルな誘電体膜の誘電率は、4.5ないし7.5の範囲であってよい。他の実施例においては、誘電率は約6.5ないし約7.2である。
【0035】
上記の実施例のいずれも、水素を含有するシリコン前駆体は、室温で気体または液体であってよい。他の実施例では、水素を含有するシリコン前駆体は、シラン、ジシラン、トリシリルアミン及びビス(tertブチルアミノ)シランを含むグループから選択されてよい。
【0036】
他の実施例においては、プラズマ反応の工程には、5MHzを越える周波数が使用されてよい。例えば、13.56MHz、27MHzまたは60MHzの高周波RFパワーが用いられ得る。他の実施例では、高周波RFパワーは、5MHzまたはそれ以下の低周波RFパワーと組み合わせられ得る。低周波パワーの高周波パワーに対する比率は、0ないし約50%またはそれ以下であってよい。他の実施例では、低周波パワーの高周波パワーに対する比率は、0ないし約30%またはそれ以下である。
【0037】
上記の実施例のいずれも、水素を含有するシリコンガスはその分子中に炭素原子を有さないものでもよく、これを第一の前駆体として構成し、さらに前駆体は第二の前駆体として炭化水素を含有するガスを含んで成ってもよい。一実施例において、第一の前駆体と第二の前駆体はパルスの状態で、同じタイミングで導入されてよい。一実施例において、第二の前駆体のパルスの持続時間は、第一の前駆体のパルスの持続時間と異なってもよい。
【0038】
他の態様では、実施例は、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)によって、半導体基板上にSi−N結合を有する誘電体膜を形成する方法を提供し、該方法は、(i)窒素及び/または水素を含有する反応ガスと希ガスとを、中に半導体基板が配置された反応空間に導入する工程と、(ii)RFパワーを反応空間に印加する工程と、(iii)第一の前駆体として水素を含有するシリコンガスを5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で反応空間に導入し、その間にプラズマが励起されている状態で反応ガスと不活性ガスを中断することなく導入し、それによって基板上にSi−N結合を有する第一の誘電体膜を形成する工程と、(iv)工程(i)ないし(iii)を繰り返すことによって基板上にSi−N結合を有する第二の誘電体膜を形成する工程とを含み、ここで、工程(iii)はさらに、第一の前駆体をパルスの状態で導入する間に、同じタイミングで第二の前駆体をパルスの状態で導入し、それによって、第二の誘電体膜のウェットエッチング抵抗を第一の誘電体膜のそれと比較して増加させる工程を含み、前記第二の前駆体は前記第一の前駆体より多くの炭化水素をその分子中に有する。
【0039】
一実施例では、工程(iv)はさらに、第二の前駆体のパルスの持続時間を第一の前駆体の持続時間よりも長くする工程を含んでよい。一実施例では、工程(iv)はさらに、第一の誘導体膜に対するのと比較して、窒素ガスの流量を減少させる工程を含んでよい。
【0040】
さらに他の態様においては、実施例は、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)によって、半導体基板上にSi−N結合を有する誘電体膜を形成する方法を提供し、該方法は、(i)窒素及び/または水素を含有する反応ガスと希ガスとを、中に半導体基板が配置された反応空間に導入する工程と、(ii)RFパワーを反応空間に印加する工程と、(iii)第一の前駆体と第二の前駆体を同じタイミングで、それぞれ5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で反応空間に導入し、その間プラズマが励起されている状態で反応ガスと不活性ガスを中断することなく導入し、それによって、基板上にSi−N結合を有する第一の誘電体膜を形成する工程であって、前記第一の前駆体は水素を含有するシリコンガスで、前記第二の前駆体は第一の前駆体より多くの炭化水素を有する、ところの工程と、(iv)工程(i)ないし(iii)を繰り返すことにより基板上にSi−N結合を有する第二の誘電体膜を形成する工程とを含み、ここで工程(iii)はさらに、第一の前駆体と第二の前駆体を同じタイミングにおいてパルスの状態で導入する間に、もう一つの第二の前駆体をパルスの状態で導入し、それによって、第二の誘電体膜のウェットエッチング抵抗を第一の誘電体膜のそれと比較して変更する工程、を含む。
【0041】
一実施例では、工程(iv)は、さらにもう一つの第二の前駆体のパルスの持続時間を第二の前駆体のパルスの持続時間と比べて変更する工程を含んでよい。一実施例では、工程(iv)はさらに、第二の誘導体膜に対するのと比べて、窒素ガスの流量を変更する工程を含んでよい。
【0042】
上記の実施例のいずれも、基板は約0℃ないし約400℃の温度に保たれてよい。ケイ素を含有する前駆体(第一の前駆体)は、シリコンと水素の組合せ、またはシリコン、水素、窒素及び炭素の組合せであってよい。第二の前駆体は、シリコン水素及び炭素の組合せ、または水素と炭素の組合せであってよい。一実施例では、プラズマ重合を維持する間、気化したケイ素を含有する前駆体と気化した第二の前駆体は、約0.1秒ないし約1.0秒の持続時間をもつ、約0.5秒ないし約3秒のインターバルをあけたパルスの状態で導入されてよい。一実施例では、反応ガスは窒素ガスと水素ガスの組合せであってよい。一実施例では、添加前駆体は、NH3またはCxHyまたは炭化水素を含有するシリコン前駆体であってよく、ここで、xとyは整数である。一実施例では、xは1ないし8であってよく、yは4ないし18であってよい。一実施例では、反応チャンバーの圧力は約0.1トルないし約10トルに保たれてよい。一実施例では、RFパワーは約0.01W/cm2と約1.0W/cm2の間であってよい。
【0043】
実施例が、本発明を限定することを意図することなく、図を参照して説明される。図1は、流量制御弁を有するプラズマCVDリアクター(本発明で使用することができる)を組み込む装置の略示図であって、以下に説明されるシーケンスを実施するためのプログラムされた制御と連動することが望ましいものである。
【0044】
この例では、反応チャンバー3の内部11に、平行で対向する一対の導電性の平板電極4、2を備え、一方にRFパワー5を印加し、他方を電気接地(12)することによって、プラズマが電極の間に励起される。温度レギュレータが下のステージ(下部電極2)に備えられ、その上に置かれた基板1の温度が所定の温度に一定に保たれる。上方電極4は、シャワープレートとしても機能し、反応ガス及び添加ガスが、ガス流量制御器21及び22をそれぞれ通過し、シャワープレート(4)を通過して反応チャンバー3に導入される。水素を含有するシリコン前駆体もまた、ガス流量制御器23、パルス流量制御弁31及びシャワープレート(4)を通過して反応チャンバー3に導入される。さらに、反応チャンバー3の内部11のガスを排気する排気パイプ6が、反応チャンバー3に設けられている。さらに、反応チャンバー3には、反応チャンバー3の内部11に封止ガスを導入するための封止ガス流量制御器24が設けられる。図では、反応チャンバーの内部において、反応ゾーンと移動ゾーンとを分離する分離プレートが省略されている。封止ガスは必要ではないが、反応ガスが分離プレートの下のチャンバー下部へ連通するのを防ぐのを助けるために、いくつかの実施例において用いられる。
【0045】
一実施例では、パルス流量制御弁31として、ALD(原子層の成膜)のために使用されるパルス供給弁を適宜使用することができる。
【0046】
図2aはPECVD法の比較例のプロセス工程を示し、図2bは窒化シリコン膜を成膜するための本発明の方法にかかる実施例のプロセス工程を示している。比較例の方法は図2aに示されているように、主要な(シリコン)前駆体と反応ガスと添加ガスが、中に基板が配置された反応チャンバーの内部に導入され、プラズマが励起され、その間三つのタイプのガスすべてが供給され続ける。その結果、窒化シリコン膜がプラズマ反応によって基板上に形成され得る。比較例のPECVD法によって形成された窒化シリコン膜は、ステップカバレージが不十分であり、それは成膜物質の表面移動を妨げる過剰な気相反応によるであろう。
【0047】
対照的に、本発明の一実施例においては、過剰な気相反応を効果的に防ぐべく、シリコン前駆体が5秒以下の持続時間、好適には2秒以下の持続時間をもつパルス状態で反応チャンバーに導入され、それによってステップカバレージまたはコンフォーマリティが改善されている。例えば、図2bに示されている本発明の実施例では、パルス流量制御弁によって、約0.1秒ないし約1.0秒間シリコン前駆体が反応チャンバーに導入され、そして約1.0秒ないし約3秒間、パルス流量制御弁が閉じられる。パルス状態でのシリコン前駆体の導入は繰り返される。これをすることによって、膜が成長する間、H*,N*ラジカルを著しく生成するものと考えられるプロセスに大量の水素と窒素を添加することができ、結果として、成膜物質の表面移動が改善され、基板上に高度にコンフォーマルな窒化シリコン膜を形成することができる。
【0048】
一実施例では、サイクルごとに成膜される平均厚さは、約0.6nm/サイクルないし1.0nm/サイクルであってよい。シリコン前駆体のパルスの供給は、膜の所望の厚さが得られるまで続けられ得る。もし膜の所望の厚さが20nmないし100nmであれば、約20サイクルないし約150サイクル(例えば、40ないし100サイクル)が実施されてもよい。
【0049】
特定の枚葉式PECVDリアクタを用いる他の実施例では、供給パルスが0.1秒以下の場合は、前駆体の供給量が均一な膜を成膜し成長させるのに十分でないために、成膜率は遅くなり、成膜される膜の均一性は悪くなるだろう。他方、供給パルスが1.0秒以上になると、過剰な気相反応のために、ステップカバレージは悪く(80%以下)なるだろう。一実施例おいては、高いステップカバレージを構成するために、過剰な気相反応は避けられるべきであり、成膜の間、表面移動が生じるべきである。図2bのパルス供給シーケンスは上記を実現するための変数を与えるものである。他の実施例では、もしパルス間のインターバルが0.1秒以下で、供給パルスの持続時間が0.1秒ないし1.0秒である場合もまた、ステップカバレージが不十分という結果になる。他方、もしパルス間のインターバルが3.0秒以上で、供給パルスの持続時間が0.1秒ないし1.0秒である場合、膜の特徴とステップカバレージは実質的に影響されないかもしれないが、全体のプロセス時間が長くなり過ぎる。
【0050】
本発明の実施例に従い、膜のコンフォーマリティは、他の窒化シリコン成膜プロセスと比較して驚くほど改善され得る。
【0051】
一実施例において、半導体基板上にコンフォーマルな窒化シリコン層を形成するための成膜条件は、以下の通りである。
【0052】
シラン:10〜200sccm
水素:500〜2000sccm
窒素:1000〜2000sccm
プロセスヘリウム:500〜3000sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:50〜500sccm
基板温度:0〜400℃
RFパワー:0.02W/cm2〜20W/cm2
圧力:0.1〜10Torr
シランの供給時間:0.5〜1秒の供給、1〜3秒の供給停止
【0053】
他の実施例では、得られた窒化シリコン膜のステップカバレージ(コンフォーマリティ)は80%以上であってよく、ここでステップカバレージは、基板上面の窒化シリコン層の平均厚さに対するトレンチの側壁に成膜された窒化シリコン層の平均厚さのパーセント比率として定義される。リーク電流は、1MVのチャージで、約1.0E−08A/cm2以下であってよい。さらに、別の実施例では、633nmでの屈折率(n)は、約1.80〜2.60の範囲であってよい。
【0054】
コンフォーマルな窒化シリコン成膜プロセスの別の利点は、水素を含有する液体のシリコン前駆体との適合性である。一実施例での成膜条件は、以下の通りである。
【0055】
トリシリルアミン:10〜2000sccm
水素:500〜2000sccm
窒素:500〜2000sccm
プロセスヘリウム:0〜5000sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:50〜500sccm
基板温度:0〜400℃
RFパワー:0.02W/cm2〜20W/cm2
圧力:0.1〜10Torr
トリシリルアミンの供給時間:0.1〜0.5秒の供給、0.1〜2秒の供給停止
【0056】
本発明の実施例に従った窒化シリコン層は、約80%以上、または約90%以上のコンフォーマリティを有してよい。リーク電流は、1MVのチャージで、約1.0E−08A/cm2以下であってよい。さらに、別の実施例では、誘電率は約6.7ないし約7.3であってよい。他の実施例では、633nmでの屈折率(n)は、約1.80ないし約2.60の範囲であってよい。本発明の実施例に従って成膜された窒化シリコン膜のエッチングレートは、バッファードフッ化水素を用いて計測した場合、従来の熱酸化膜の10分の1ないし2分の1であってよい。
【0057】
一実施例において、第一の前駆体は、SiαHβXγの化学式を有してよく、ここでα、βおよびγは整数であり、γはゼロを含む。XはNまたはCmHnを含み得る。一実施例において、αは1ないし5、βは1ないし10、そしてγは0ないし6であってよい。一実施例において、mは2ないし18、そしてnは6ないし30であってよい。
【0058】
一実施例において、第二の前駆体は、アンモニアまたはCxHyもしくは炭化水素を含有するシリコン前駆体であってよく、ここで、xおよびyは整数である。一実施例では、xは1ないし8、yは4ないし18であってよい。一実施例では、炭化水素を含有するシリコン前駆体は、SiαHβXγの化学式を有してよく、ここでα、βおよびγは整数である。XはNまたはCmHnを含み得る。一実施例において、αは1ないし5、βは1ないし10、そしてγは1ないし6であってよい。一実施例において、mは2ないし18、そしてnは6ないし30であってよい。
【0059】
他の実施例では、第一の前駆体は炭素を含有しないのに対して、第二の前駆体は炭化水素を含有する。他の実施例では、第一及び第二の前駆体は炭化水素を含有するが、第二の前駆体は第一の前駆体よりもその分子中により多くの炭化水素を有する。他の実施例では、第一の前駆体はシリコンを含有するのに対して、第二の前駆体はシリコンを含有しない。他の実施例では、第一の前駆体が窒素を含有するのに対して、第二の前駆体は窒素を含有しない。第一及び第二の前駆体は、上記の定義のいずれかの組合せにおいて定義され得る。他の実施例では、二つ以上のタイプの前駆体が用いられ得る。
【0060】
上記の実施例のいずれも、基板上に成膜される間、基板は0℃ないし400℃の温度に保たれてよい。他の実施例では、成膜の間、基板温度は約300℃ないし約400℃である。
【0061】
上記の実施例のいずれも、反応ガスと希ガスが連続して導入され、RFパワーが連続して印加される間に、第一の前駆体及び第二の前駆体がパルスの状態で導入されてよい。上記の実施例のいずれも、第一の前駆体と第二の前駆体は、約0.1秒ないし約1.0秒(例えば、0.2秒ないし0.3秒)の持続時間のパルスの状態で、約0.1秒ないし約3秒(例えば、1.0秒ないし2.0秒)のインターバルをあけて導入されてよい。一実施例では、第一の前駆体と第二の前駆体のパルスの持続時間は、インターバルと等しいかまたはそれ以下であってよい。
【0062】
上記の実施例のいずれも、反応ガスは、窒素と水素の混合物、または窒素−ホウ素−水素ガスから成る。一実施例として、反応ガスは、窒素と水素の混合物(N2/H2のモル流量比が約1/10ないし約10/1である)を含んでよい。他の実施例では、N2/H2のモル流量比は約1/4ないし約4/1である。
【0063】
上記の実施例のいずれも、希ガスは、He、Ar、Kr及びXeのグループから選択された一つ又はそれ以上のガスであってよく、希ガスのモル流量は、水素を含有するシリコンソース(第一及び第二の前駆体の合計)のモル流量を超えるものでもよい。一実施例として、反応チャンバーに導入される希ガスの流量は、約40sccmないし約4000sccmであってよい。他の実施例として、希ガスの流量は、約1500sccmないし約3000sccmである。一実施例として、希ガスは、ヘリウムとアルゴンの混合物又はヘリウムとクリプトンとの混合物を含んでよい。一実施例では、希ガスはヘリウムとアルゴンの混合物で、ヘリウム/アルゴンのモル流量比が約1/1ないし約20/1のものを含んでよい。他の実施例として、ヘリウム/アルゴンのモル流量比は、約2/1ないし約10/1である。一実施例においては、希ガスはヘリウムとクリプトンの混合物であって、ヘリウム/クリプトンのモル流量比が約2/1ないし約10/1のものを含んでよい。
【0064】
上記の実施例のいずれも、RFパワーは、基板表面積当たり約0.01W/cm2ないし約1.0W/cm2の範囲で印加されてよく(例えば、0.02〜0.1W/cm2の範囲、0.1〜0.5W/cm2の範囲、0.5〜1W/cm2の範囲)、反応空間の圧力は約0.1トルないし約10トル(例えば、2トルないし9トル)の範囲で調節されてよい。
【0065】
上記の実施例のいずれも、形成された誘電体膜は、少なくとも80%(例えば、80%ないし95%)のステップカバレージまたはコンフォーマリティを有するものであってよい。一実施例では、形成された誘電体膜のリーク電流は、1MVで、約1.0E−08A/cm2以下であってよい(例えば、1.0E−08A/cm2ないし1.0E−10A/cm2)。
【0066】
上記の実施例のいずれも、形成された誘電体膜は、第二の前駆体のタイプによって、さまざまなエッチ抵抗を有するものであってよい。一実施例では、炭化水素、または炭化水素を含有するシリコン前駆体が第二の前駆体として用いられて形成された誘電体膜は、標準的な熱酸化膜よりも低いエッチングレートを有する。他の実施例では、エッチ抵抗は、炭素の量を増すことによって増加する。
【0067】
さらに、プラズマ反応の工程は、5MHzを越える周波数、例えば、13.56MHz、27MHzまたは60MHzの高周波RFパワーのうちのいずれか一つを用いて実行されてよく、一実施例ではさらに、前記高周波RFパワーのいずれか一つと5MHzまたはそれ以下の低周波RFパワーと組み合わせることができ、その場合の低周波パワーの高周波パワーに対する比率は、50%またはそれ以下であってよい(例えば、約30%またはそれ以下)。
【0068】
図5は、調節されたエッチ特性を有する誘電体膜を成膜するための本発明の方法にかかる実施例のプロセス工程を示している。図5に示されているように、本発明の一実施例では、主要な前駆体(第一の前駆体)及び添加前駆体(第二の前駆体)は、パルス流量制御弁を用いて、約0.1秒ないし約1.0秒の持続時間で、約0.5秒ないし約3秒のインターバルをあけたパルス状態で導入され、その間プラズマ重合を維持している。こうすることによって膜が成長する間、大量の水素、窒素及び炭素がプロセスに添加され(それによってHx,Nx及びCxラジカルを著しく生成するものと考えられる)、成膜物質の表面吸着を改善し、高い成膜率で炭素がドープされた誘電体膜を基板上に形成するという結果をもたらす。さらに、添加前駆体を付加することによって、成膜された膜の組成は変更され得る。添加前駆体の付加は、エッチング液中でのウェットエッチングレートのような特性の変化を導くことができる。
【0069】
エッチ特性が変更された誘電体膜を半導体基板上に形成するための一実施例での成膜条件は、以下の通りである。
【0070】
トリシリルアミン(第一の前駆体):10〜2000sccm(好適に、100〜500sccm)
水素:20〜2000sccm(好適に、500〜1000sccm)
窒素:0〜5000sccm(好適に、20〜2000sccm)
ヘキサン(第二の前駆体):0〜2000sccm(好適に、100〜1500sccm)
第二の前駆体の第一の前駆体に対する流量比:0ないし5(好適に、1ないし3))
ジエチルシラン:0〜2000sccm(好適に、100〜500sccm)
ビス(エチルメチルアミノ)シラン:0〜2000sccm(好適に、100〜500sccm)
プロセスヘリウム:0〜5000sccm(好適に、500〜1500sccm)
封止ヘリウム:200〜500sccm(好適に、300〜500sccm)
アルゴン:50〜2000sccm(好適に、500〜1500sccm)
基板温度:0〜400℃(好適に、300〜400℃)
高周波RFパワー:約0.01W/cm2〜約0.3W/cm2(好適に、0.02〜0.08W/cm2)
低周波RFパワー:高周波RFパワーの0〜100%(好適に、0〜50%)
トリシリルアミンの供給時間:0.1〜1.0秒(好適に、0.2〜0.5秒)の供給、0.1〜2.0秒(好適に、1.0〜2.0秒)の供給停止
添加前駆体(ヘキサン)の供給時間:0.1〜1.0秒(好適に、0.2〜0.5秒、供給時間は第一の前駆体と等しいかまたはそれより長く、第一の前駆体を供給するパルスと同じタイミング)
【0071】
上記の例において、ここに開示したようなその他のタイプのガスが、その他の実施例として代替または付加的に用いられ得る。例えば、ヘキサンに代わって、ビス(エチルメチルアミノ)シランまたはジエチルシランが第二の前駆体として用いられ得る。好適に、第二の前駆体は第一の前駆体よりも多くの炭化水素をその分子中に有し、それによってSiN構造の中により多くの炭素が組み込まれる(炭素がドープされた窒化シリコン)。実施例では、SiN誘電体膜(Si−N結合が主結合または支配的な結合である)の炭素の含有量は、4アトミックパーセントないし20アトミックパーセントの範囲でよく、好適には、5アトミックパーセント以上(10アトミックパーセント以上や15アトミックパーセント以上を含む)である。一実施例では、第二の前駆体は、シリコンを含有する必要はない。
【0072】
本発明の実施例に従った誘電体層は、約90%以上のコンフォーマリティを有してよい。633nmで計測される屈折率(n)は、約1.80ないし約2.80の範囲であってよい。本発明の実施例に従って成膜された誘電体膜のエッチングレートは、フッ化水素酸を含有する酸性溶液を用いて計測する場合、添加前駆体を付加することによって変更され得る。第一及び第二の前駆体を用いて得られた誘電体層のウェットエッチングレートは驚くべきことに、そして意外にも、第二の前駆体のタイプによって、標準的な熱酸化層のウェットエッチングレートの1/20ないし1/400(例えば、1/100以下)になり得る。他の実施例で、第二の前駆体を使用せずに得られた誘電体層のウェットエッチングレートは、標準的な熱酸化層のウェットエッチングレートの1/3ないし1/5であってよい。
【0073】
実施例が具体的な例を参照して説明されるであろうが、本発明の限定を意図するものではない。具体的な例に適用される数値は、他の条件の下で、少なくとも±50%の範囲で修正してもよい。ここで範囲の端点を含む場合もあれば含まない場合もある。条件及び/又は構成が特定されていない開示例に関して、当業者であれば、開示内容を考慮し日常の実験の問題として、このような条件及び/又は構成を容易に示すことができる。
【0074】
例1
図2bに記載されたシーケンスと図1に記載されたPECVD装置とを用い、以下に示される条件下で、トレンチを有する基板上に窒化シリコン絶縁層が形成された。トレンチは比較的幅の広いトレンチ(幅が500nmで深さが350nm)と比較的狭いトレンチ(幅が50nmで深さが350nm)を含む。従って、異なる縦横比のトレンチがコートされた。
【0075】
シラン:50sccm
水素:1000sccm
窒素:2000sccm
プロセスヘリウム:2000sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:100sccm
基板温度:300℃
RFパワー(周波数13.56MHz):0.12W/cm2
圧力:6Torr
シランの供給時間:1秒の供給、3秒の供給停止
【0076】
成膜が完了したあと、トレンチは走査型電子顕微鏡によって観察された。
【0077】
表面の厚さに対する側壁の厚さの比として定義されるところのステップカバレージ(コンフォーマリティ)は80%以上(80%〜87%)であることが確認された。対照的に、図2aに記載されたシーケンスに従ったプロセスによって得られた膜のステップカバレージは70%以下であった。
【0078】
例2
図2bに記載のシーケンスと図1に記載されたPECVD装置を用い、以下に示される条件下で、トレンチを有する基板上に窒化シリコン絶縁層が形成された。トレンチは比較的幅の広いトレンチ(幅が500nmで深さが350nm)と比較的幅が狭いトレンチ(幅が50nmで深さが350nm)を含むものであった。
【0079】
トリシリルアミン:300sccm
水素:500sccm
窒素:1000sccm
プロセスヘリウム:1400sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:500sccm
基板温度:300℃
RFパワー(周波数13.56MHz):0.12W/cm2
圧力:6Torr
トリシリルアミンの供給時間:0.2秒の供給、2秒の供給停止
【0080】
成膜が完了したあと、トレンチは走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察された。
【0081】
図3a及び図3bは、走査型電子顕微鏡のコンフォーマルな窒化シリコン層が形成された基板断面図である。定性的に窒化シリコン層は高度にコンフォーマルで、完全にトレンチの側壁を覆っている。窒化シリコン層は、図3a(a=43.7nm、b=49.6nm、c=41.7nm)に示されているように88%(43.7/49.6)のコンフォーマリティを有し、図3b(a=49.6nm、b=51.6nm、c=51.6nm)に示されているように96%(49.5/51.6)のコンフォーマリティを有していた。計測されたリーク電流は1MVのチャージで、1.0E−08A/cm2以下であった。誘電率は1MHzで6.8だった。633nmでの屈折率(n)は1.99だった。図4は、成膜された窒化シリコン膜の赤外線吸収スペクトルを示している。図4に示されているように、主要なSi−N帯域を観察することができ、Si−H及びN−Hの弱い帯域もまた観察できる。この例で成膜された窒化シリコン膜のエッチングレートは、バッファードフッ化水素を用いて計測したところ、従来の熱酸化膜の4分の1であった。エッチングテストは、BHF130エッチング液を用いて行われた。Si基板上に成膜された膜(SiN)はBHF130エッチング液に5分間浸漬され、そして脱イオン水で洗浄された。厚さは偏光解析器で計測された。
【0082】
本発明で開示された実施例の少なくともひとつの方法における特筆すべき利点は、高度にコンフォーマルな窒化シリコン層またはその他のSi−N誘電体層がさまざまなタイプの基板上に形成され得ることである。窒化シリコンコーティング及びその他のSi−N誘電体膜はまた、比較的低い基板温度で形成されてもよく、その結果、基板への過度の熱量による熱損傷または消耗なく生産性を向上し、そして応用できる基板のタイプを拡張できる。さらに、本発明の実施例にかかる方法は、高い成膜率を達成可能であり、また容易に拡張可能であり、その結果、大規模応用及び/またはダイ−ウエハまたはウエハ−ウエハの三次元集積のような三次元の生産を可能にするものである。
【0083】
例3
誘電体層は図5に記載されたシーケンスに基づき、以下に示される条件下で、添加前駆体なく基板上に形成された。
【0084】
トリシリルアミン:100sccm
水素:500sccm
窒素:1000sccm
プロセスヘリウム:1400sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:1000sccm
基板温度:400℃
高周波RFパワー(周波数13.56MHz):0.07W/cm2
低周波RFパワー(周波数430kHz):0.0W/cm2
トリシリルアミンの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
【0085】
このケースでは、サイクルごとの膜厚は約0.20nm/サイクルだった。図6(TSA:(a)線)は、例3において成膜されたSiN膜の赤外線吸収スペクトルを示している。添加前駆体なしに成膜された誘電体膜は、図7(TSA)に示されているように、4.1nm/minのウェットエッチングレートを有している。エッチングテストはBHF130エッチング液を用いて行われた。Si基板上に成膜された膜はエッチング液に5分間浸漬され、そして脱イオン水で洗浄された。膜厚は偏光解析器で計測された。
【0086】
例4
誘電体層が、図5に記載されたシーケンスを用い、以下に示される条件下で、添加前駆体、ビス(エチルメチルアミノ)シランを用いて基板上に形成された。
【0087】
トリシリルアミン:100sccm
水素:500sccm
窒素:0sccm
ビス(エチルメチルアミノ)シラン:300sccm
プロセスヘリウム:1400sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:1000sccm
基板温度:400℃
高周波RFパワー(周波数13.56MHz):0.07W/cm2
低周波RFパワー(周波数430kHz):0.0W/cm2
トリシリルアミンの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
ビス(エチルメチルアミノ)シランの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
【0088】
このケースでは、サイクルごとの膜厚は約0.25nm/サイクルだった。図6(TSA+BEMAS:(b)線)は、例4において成膜された炭素ドープSiN膜の赤外線吸収スペクトルを示しており、Si−CHのピーク(1130〜1090cm-1)と−CHxのピークが観察される。ビス(エチルメチルアミノ)シランを添加して成膜された誘電体膜は、図7(BEMAS)に示されているとおり、BHF130エッチング液では0.9nm/minのウェットエッチングレートを有している。
【0089】
例5
誘電体層が、図5に記載されたシーケンスを用い、以下に示される条件下で、添加前駆体、ジエチルシラン、を用いて基板上に形成された。
【0090】
トリシリルアミン:100sccm
水素:500sccm
窒素:0sccm
ジエチルシラン:300sccm
プロセスヘリウム:1400sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:1000sccm
基板温度:400℃
高周波RFパワー(周波数13.56MHz):0.07W/cm2
低周波RFパワー(周波数430kHz):0.0W/cm2
トリシリルアミンの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
ジエチルシランの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
【0091】
このケースでは、サイクルごとの膜厚は、約0.11nm/サイクルだった。図6(TSA+DES:(c)線)は、例5において成膜された炭素ドープSiN膜の赤外線吸収スペクトルを示しており、主要なピークは835cm-1から800cm-1にシフトされている。Si−Nの吸収ピークは、通常は812cm-1から892cm-1の範囲に現れる(例えば、Si3N4は830cm-1周辺に現れる)が、それに対して、Si−Cの吸収ピークは、900cm-1ないし700cm-1、814cm-1ないし800cm-1の範囲に現れる。吸収ピークのシフトは、成膜された膜中に炭素が存在していることを示唆している。ジエチルシランを付加して成膜された誘電体膜は、BHF130エッチング液では0.05nm/minのウェットエッチングレートを有する。
【0092】
例6
誘電体層が、図1に記載されたシーケンスを用い、以下に示される条件下で、添加前駆体、例えばヘキサン、を用いて基板上に形成された。
【0093】
トリシリルアミン:100sccm
水素:500sccm
窒素:0sccm
ヘキサン:300sccm
プロセスヘリウム:1400sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:1000sccm
基板温度:400℃
高周波RFパワー(周波数13.56MHz):0.07W/cm2
低周波RFパワー(周波数430kHz):0.0W/cm2
トリシリルアミンの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
ヘキサンの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
【0094】
このケースでは、サイクルごとの膜厚は、約0.11nm/サイクルだった。図6(TSA+ヘキサン:(d)線)は、例6において成膜された炭素ドープSiN膜の赤外線吸収スペクトルを示しており、主要なピークは835cm-1から800cm-1にシフトされている。Si−Nの吸収ピークは、通常は812cm-1から892cm-1の範囲に現れる(例えば、Si3N4は830cm-1周辺に現れる)が、それに対して、Si−Cの吸収ピークは、900cm-1ないし700cm-1、814cm-1ないし800cm-1の範囲に現れる。吸収ピークのシフトは、成膜された膜中に炭素が存在していることを示唆している。ヘキサンを添加して成膜された誘電体膜は、図7(ヘキサン)に示されているとおり、BHF130エッチング液では0.03nm/minのウェットエッチングレートを有している。
【0095】
図7は、熱酸化膜と成膜された膜のそれぞれ(TSA、TSA+BEMAS、TSA+DES及びTSA+ヘキサン)のウェットエッチングレートの比較を示す。
【0096】
表1は上記の例の要約である。添加前駆体を付加することにより、成膜される膜の組成は変化し得る。これら付加された前駆体は、エッチング液中でのウェットエッチングレートのような特性の変化を導き得る。
【0097】
【表1】
【0098】
例4ないし6では、結果として得られたSiCN膜のコンフォーマリティ(ステップカバレージ:側壁/上面)は94%前後であり、例1及び2のコンフォーマリティより良好だった。
【0099】
例7
表2はさまざまなプロセスの条件下でのウェットエッチング特性及び膜特性の変化を示すものである。誘電体層は、TSA及びヘキサンによって成膜された。窒素の流量は0sccmから1000sccmまで変えられ、ヘキサンの供給時間は0.1秒から0.5秒まで変えられた。他のプロセス条件は例6と同様であった。プロセス条件を変えることによって、成膜された膜のウェットエッチングレート及び膜特性は変化した。表2によれば、窒素の流量が減少するとウェットエッチングレートは減少し、窒素の流量が増加すると屈折率は減少した。これらは、化学物質及びプロセスの制御変数を組み合わせることによって、炭素がドープされた誘電体膜の組成を制御することが可能であることを示唆している。
【0100】
図8は窒素の流量の関数としての、膜におけるBHF130のウェットエッチングレート及び炭素の濃度を示している。炭素の量は、RBS/HFS分析及びXPS分析によって割り出された。窒素の流量が低くなるほど、炭素の含有量は高くなり、ウェットエッチングレートは低くなる。良好なウェットエッチング抵抗を考慮すると、炭素の含有量は5アトミックパーセント若しくはそれ以上、または10アトミックパーセント若しくはそれ以上が好適であることが分かる。
【0101】
図9は窒素の流量の関数としての屈折率及びSi/N比を示している。シリコン及び窒素の量(Si/N比)はRBS/HFS分析及びXPS分析によって割り出された。窒素の流量が低くなるほど、屈折率が高くなり、Si/N比が高くなる。屈折率を考慮すると、Si/N比は1.0以上であることが好適である。
【0102】
図10はヘキサンの供給時間によって変化するBHF130のウェットエッチングレートを示すものである。ヘキサンの供給時間が第一の前駆体の供給時間と同じかそれ以上であるとき、ウェットエッチング抵抗は極めて高くなる。
【0103】
【表2】
【0104】
本発明の開示された実施例のうちの少なくとも一つの方法における特筆すべき利点は、半導体基板上に形成された誘電体膜のエッチ特性が、添加前駆体をプロセスの制御変数と組み合わせて用いることによって、望ましく修正または変更され得ることである。誘電体膜はまた比較的低い基板温度で形成され、膜の組成は制御が可能であって、それによって、熱損傷を基板に与えることなく生産性が向上し、応用できる基板のタイプが拡張する。さらに、本発明の実施例のうち少なくとも一つの方法は、膜厚を正確に制御することが可能であり、高い成膜率を達成し、高度にコンフォーマルな構成を形成することが可能である。
【0105】
本発明の思想及び態様から離れることなく多くのさまざまな修正が可能であることは当業者の知るところである。したがって、言うまでもなく、本発明の態様は例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路の製造に関するもので、特に、低温においてプラズマ励起化学蒸着(PECVD)によって、窒化シリコン膜のようなコンフォーマルな誘電体膜を形成する方法及び添加前駆体を用いて誘電体膜のエッチ特性を修正する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路を半導体基板上に作製する際、半導体チップ上に形成された半導体デバイスの個々の層を、電気的に相互接続するために複数のレベルの金属配線が必要である。異なったレベルの相互配線はさまざまな絶縁または誘電体層によって隔てられるが、それら層はひとつのレベルの金属配線を別のレベルの金属配線と接続するビアホールを形成するためにエッチされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願第12/331,309号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チップの設計の進化によって、集積回路は絶えずより速く、より高密度であることが求められる。殊に、集積回路の部品がサブミクロンのスケールまで縮小される局面においては、高密度でありかつ速いといった集積回路を作製するために用いられる物質には、一定の特性が必要とされる。また、集積回路のさらなる高密度化のための部品の製造には、一定のプロセスシーケンスが必要とされる。
【0005】
近年は、低温(400℃以下)で成膜された窒化シリコン層が、メモリデバイスのための多くの重要な応用例において、例えば不動態化層や表面保護層、及び/またはトランジスタゲートのためのスペーサとして、用いられてきた。窒化シリコン膜は、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)方法によって形成することができる。CVD方法より優れたPECVD方法の主要な利点は、広範囲な屈折率にわたり成膜率が高く、制御性に優れていることである。PECVD方法の更なる利点は、プロセスが比較的低温、たとえば400℃以下で行われ、セル処理での熱の総量が最小に維持されることである。
【0006】
しかしながら、窒化シリコン膜を形成するためのPECVD方法では、小さな及び/または高いアスペクト比の特徴部を含む基板上でのコンフォーマリティ(conformality)またはステップカバレージが十分なものとならない。極超大規模集積回路(ULSI)のように、小さな回路やデバイスにおいては、コンフォーマリティが不十分なカバレージは、集積回路のデバイスやエレメントのさらなる高密度化の進展を妨げかねない。
【0007】
近年、原子層の成膜(ALD)が、小さな特徴部を含む基板における窒化シリコン膜のコンフォーマリティまたはステップカバレージを改善するために研究されている。しかしながら、窒化シリコン膜を形成するための原子層の成膜(ALD)方法は、極めて低い成膜率という結果をもたらす。そのような低い成膜率は、集積回路のデバイスやエレメントのさらなる高密度化を進めることによる製造コストの引き下げを妨げる。
【0008】
本発明の少なくとも一実施例の目的は、例えば400℃以下の低温で、集積回路のためのトレンチの表面に窒化シリコン層のようなSi−N結合を有する水素を含有するコンフォーマルな層を形成する方法を提供することである。
【0009】
本発明の少なくとも一実施例の他の目的は、第二の前駆体を添加することによって、高い成膜率と高いコンフォーマリティを維持しながら、ウェットエッチングレートのような、成膜された層のエッチ特性を修正するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例では、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)によって、半導体基板上に、Si−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜を形成する方法が提供される。この方法は、窒素及び/又は水素を含有する反応ガスと希ガスを、基板が配置された反応空間に導入する工程を含み、RFパワーが反応空間に印加される。水素を含有するシリコンガスを含む前駆体が、5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で反応空間に導入され、その間反応ガスと希ガスが中断することなく導入され、プラズマが励起され、そのことによってSi−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜が基板上に形成される。ここで開示する発明において、“ガス”は固体及び/または液体の蒸気を含み、混合ガスを含んでもよい。
【0011】
他の実施例においては、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)によって、Si−N結合を有する水素を含有する高度にコンフォーマルな層を半導体基板上に形成する方法は、反応ガスと添加ガスとを、中に半導体基板が配置されたCVD反応チャンバーに導入する工程を含み、半導体基板の温度は、約0℃ないし約400℃の範囲に維持される。反応ガスと添加ガスとが反応チャンバーに導入されたあと、反応チャンバーにおいてプラズマが励起された状態になる。水素を含有するシリコン前駆体が、パルス流量制御弁を用いて、パルスの状態で反応チャンバーに導入され、シリコン前駆体がプラズマが励起された反応チャンバーに導入され、それらのガスのプラズマ反応によって、基板上にSi−N結合を有する水素を含有するコンフォーマルな膜が形成される。
【0012】
一実施例では、基板は約0℃ないし400℃の温度に維持される。水素を含有するシリコン前駆体は、シリコンと水素の組合せ、シリコンと水素と窒素との組合せ、又はシリコンと水素、炭素、窒素との組合せを含んで成ってもよい。一実施例において、水素を含有する気化したシリコン前駆体は、約0.1秒ないし約1.0秒の持続時間をもつパルスの状態で、約0.5秒ないし約3秒のインターバル(パルス間の間隔)をもって導入されてもよく、その間、プラズマ重合が維持される。一実施例として、反応ガスは、窒素ガスと水素ガスとの組合せ又はアンモニアガスと水素ガスとの組合せを含んで成ってもよい。一実施例として、添加ガスはHe、Ar、Kr、Xeのグループから選択されてもよく、添加ガスのモル流量は、水素を含有するシリコンソースのモル流量を超えるものであってもよい。一実施例として、反応チャンバーは、約0.1トルないし約10トルの圧力に維持されてもよい。一実施例として、RFパワーは、約0.02W/cm2ないし約20W/cm2の間であってよい。チャンバーに導入されたあと、反応ガスはパルスの状態で供給される水素を含有するシリコン前駆体とプラズマ反応によって反応し、その結果、基板表面にSi−N結合を有するコンフォーマルな膜が形成される。
【0013】
一実施例として、水素を含有するシリコンガスは、その分子中に炭素原子を含まなくともよく、これを第一の前駆体として構成し、さらに前駆体は第二の前駆体として、炭化水素を含有するガスを含んで成ってもよい。第二の前駆体を添加することにより、例えば結果としてできる膜のウェットエッチングレートは、著しく改善できまたは補整できる。
【0014】
以上のとおり、第一の前駆体と第二の前駆体は、それが炭素を含むか否かによって、区別されてよいものである。反応ガスは、炭化水素やシリコンを含有しないガスとして定義されてよい。以上のように、第一、第二の前駆体と反応ガスは、ガスのタイプとして重複することはない。一実施例として、第一の前駆体と第二の前駆体は同じタイミングでパルスの状態で導入されてよい。一実施例として、第二の前駆体のパルスの持続時間は、第一の前駆体のそれと異なってもよい。
【0015】
本発明の態様及び従来技術を超えて達成される効果を要約する目的のために、本発明の一定の目的及び効果がここで説明される。もちろん、このような目的や効果のすべてが本発明の特定の実施例のいずれかに従って達成されるわけではないことは理解されるであろう。したがって、たとえば、以下で教示する他の目的、効果を必ずしも達成することなく、ここで教示する一つの効果又は一群の効果を達成又は最適にする方法で本発明を実施又は成し遂げることができることを、当業者は理解するであろう。
【0016】
さらに、本発明の態様、特徴及び利点は以下の詳細な説明により明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施例に従った窒化シリコン膜を成膜するPECVD装置の略示図である。
【図2】図2a及び2bは、窒化シリコン膜を成膜するための比較例のPECVD方法のプロセス工程を示す。
【図3a】図3aは、本発明の実施例に従って形成されたコンフォーマルな窒化シリコン膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図3b】図3bは、本発明の実施例に従って形成されたコンフォーマルな窒化シリコン膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図4】図4は、本発明の実施例に従って形成されたコンフォーマルな窒化シリコン膜のフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)スペクトルである。
【図5】図5は、本発明の実施例に従ったPECVD方法のプロセス工程を示す。
【図6】図6は、本発明の実施例に従った誘電体膜のFT−IRスペクトルを示す。
【図7】図7は、本発明の実施例に従った誘電体層と標準的な熱酸化層のウェットエッチングレートを比較するグラフである。
【図8】図8は、本発明に従った膜における窒素の流速とウェットエッチングレートおよび炭素濃度との相関関係を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明の実施例に従った窒素の流速と屈折率及びSi/N比との相関関係を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の実施例に従ったヘキサンの供給持続時間とウェットエッチングレートとの相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のこれら又は他の特徴は、本発明を限定することを意図するものではないが、好適実施例を図示する図面を参照して説明される。図面は説明の目的で単純化され、尺度も必ずしも一致しない。
【0019】
本発明は、本発明を制限することを意図しない実施例を参照して記述される。さらに、一実施例に適用された要素を他の実施例に適用することは可能であり、異なる実施例に適用された要素を、特別な条件が付されない限り、互いに置き換えても、あるいは交換してもよい。さらに、以下で示された範囲の端点は、実施例において含む場合もあり、含まない場合もある。
【0020】
一実施例では、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)によって、半導体基板上に、Si−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜を形成する方法が提供される。この方法は、(a)窒素及び/または水素を含有する反応ガスと希ガスを、基板が配置された反応空間に導入する工程と、(b)RFパワーを反応空間に印加する工程と、(c)水素を含有するシリコンガスを含む前駆体を、5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で反応空間に導入し、その間プラズマが励起されている状態で反応ガスと希ガスとを中断することなく導入し、それによってSi−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜を基板上に形成する工程、を含む。
【0021】
一実施例において、水素を含有するシリコン前駆体は、SiαHβXγの化学式を有してよく、ここでα、βおよびγは整数であり、γはゼロを含む。XはN、F及び/またはCmHnを含んでよく、ここでmとnは整数である。一実施例において、αは1ないし5、βは1ないし10、そしてγは0ないし6であってよい。一実施例において、mは2ないし18、そしてnは6ないし30であってよい。
【0022】
前述のどの実施例においても、基板上に成膜される間、基板の温度は0℃ないし400℃の間に維持されてよい。他の実施例においては、成膜の間、基板の温度は約250℃ないし約350℃の間である。
【0023】
前述のどの実施例においても、水素を含有するシリコン前駆体は反応空間の上流で気化させられてもよい。
【0024】
前述のどの実施例においても、水素を含有するシリコン前駆体は、室温で液体であってもよい。
【0025】
前述のどの実施例においても、水素を含有するシリコン前駆体は、反応ガスと添加ガスとが連続して導入され、RFパワーが連続して印加される間に、パルスの状態で導入されてよい。
【0026】
前述のどの実施例においても、水素を含有するシリコン前駆体は、約0.1秒ないし約1.0秒の持続時間をもつパルスの状態で導入されてよい。他の実施例においては、水素を含有するシリコン前駆体は、約0.2秒ないし約0.3秒の持続時間をもつパルスの状態で導入される。
【0027】
他の実施例においては、水素を含有するシリコン前駆体のパルスは、約0.1秒ないし約3.0秒のインターバルがあけられる。他の実施例においては、インターバルは約0.5秒ないし約3.0秒、または約1.0秒ないし約2.0秒である。一実施例においては、パルスの持続時間は、インターバルの長さ以下であってよい。
【0028】
上記の実施例のいずれも、反応ガスは、N2とH2の混合物、NH3とH2の混合物、窒素−ホウ素−水素ガスを含んで成ってもよい。一実施例として、反応ガスは、N2とH2の混合物(N2/H2のモル流量が約1/1ないし約10/1である)を含んでよい。他の実施例では、N2/H2のモル流量は約2/1ないし約4/1である。一実施例では、反応ガスは、NH3とH2の混合物(NH3/H2のモル流量が約1:1ないし約1:10である)を含んでよい。また、他の実施例では、NH3/H2のモル流量は約1:1ないし約1:3である。
【0029】
上記の実施例のいずれも、添加ガスは、He、Ar、Kr及びXeのグループから選択された一つ又はそれ以上のガスであってよく、添加ガスのモル流量は、水素を含有するシリコンソースのモル流量を超えるものでもよい。一実施例として、反応チャンバーに導入される添加ガスの流量は、約30sccmないし約3000sccmであってよい。他の実施例として、添加ガスの流量は、約1500sccmないし約2500sccmである。一実施例として、添加ガスは、ヘリウムとアルゴンの混合物またはヘリウムとクリプトンとの混合物を含んでよい。一実施例では、添加ガスはヘリウムとアルゴンの混合物で、ヘリウム/アルゴンのモル流量比が約3/1ないし約20/1のものを含んで成ってもよい。他の実施例として、ヘリウム/アルゴンのモル流量比は、約5/1ないし約15/1である。一実施例では、添加ガスはヘリウムとクリプトンの混合物であって、ヘリウム/クリプトンのモル流量比が約3/1ないし約20/1のものを含んで成ってもよい。他の実施例として、ヘリウム/クリプトンのモル流量比は、約5/1ないし約15/1である。
【0030】
他の実施例においては、三つのタイプのガス(すなわち、水素を含有するシリコン前駆体、反応ガス及び添加ガス)のみが用いられ、炭素前駆体のような他のガスは用いられなくともよい。
【0031】
上記の実施例のいずれも、コンフォーマルな誘電体膜は、窒化シリコン膜であってもよい。
【0032】
上記の実施例のいずれも、RFパワーは、基板表面積当たり約0.02W/cm2ないし約20W/cm2の範囲で印加されてよく(例えば、0.05〜10W/cm2の範囲、1〜5W/cm2の範囲、0.5〜3W/cm2の範囲)、反応空間の圧力は約0.1トルないし約10トルの範囲で調節されてよい。他の実施例においては、反応空間の圧力は約2トルないし9トルであってよい。
【0033】
上記の実施例のいずれも、水素を含有するシリコン前駆体を導入するパルスの持続時間及びパルスのインターバルは、コンフォーマルな誘電体膜が、少なくとも80%(例えば、80%ないし95%)のステップカバレージまたはコンフォーマリティを有するようにするものであってよい。一実施例において、水素を含有するシリコン前駆体を導入するパルスの持続時間及びパルスのインターバルは、コンフォーマルな誘電体膜が、例えば、ウェットエッチングのためにバッファードHFを用いる場合、標準的な熱酸化膜よりも低いエッチングレートを有するようにするものであってよい。一実施例においては、水素を含有するシリコン前駆体を導入するパルスの持続時間及びパルス間のインターバルは、コンフォーマルな誘電体膜が、1MVで1.0E−08A/cm2以下のリーク電流になるようにするものであってよい。他の実施例では、リーク電流は1MVで約1.0E−08A/cm2と約1.0E−10A/cm2の間である。
【0034】
上記の実施例のいずれも、コンフォーマルな誘電体膜の誘電率は、4.5ないし7.5の範囲であってよい。他の実施例においては、誘電率は約6.5ないし約7.2である。
【0035】
上記の実施例のいずれも、水素を含有するシリコン前駆体は、室温で気体または液体であってよい。他の実施例では、水素を含有するシリコン前駆体は、シラン、ジシラン、トリシリルアミン及びビス(tertブチルアミノ)シランを含むグループから選択されてよい。
【0036】
他の実施例においては、プラズマ反応の工程には、5MHzを越える周波数が使用されてよい。例えば、13.56MHz、27MHzまたは60MHzの高周波RFパワーが用いられ得る。他の実施例では、高周波RFパワーは、5MHzまたはそれ以下の低周波RFパワーと組み合わせられ得る。低周波パワーの高周波パワーに対する比率は、0ないし約50%またはそれ以下であってよい。他の実施例では、低周波パワーの高周波パワーに対する比率は、0ないし約30%またはそれ以下である。
【0037】
上記の実施例のいずれも、水素を含有するシリコンガスはその分子中に炭素原子を有さないものでもよく、これを第一の前駆体として構成し、さらに前駆体は第二の前駆体として炭化水素を含有するガスを含んで成ってもよい。一実施例において、第一の前駆体と第二の前駆体はパルスの状態で、同じタイミングで導入されてよい。一実施例において、第二の前駆体のパルスの持続時間は、第一の前駆体のパルスの持続時間と異なってもよい。
【0038】
他の態様では、実施例は、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)によって、半導体基板上にSi−N結合を有する誘電体膜を形成する方法を提供し、該方法は、(i)窒素及び/または水素を含有する反応ガスと希ガスとを、中に半導体基板が配置された反応空間に導入する工程と、(ii)RFパワーを反応空間に印加する工程と、(iii)第一の前駆体として水素を含有するシリコンガスを5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で反応空間に導入し、その間にプラズマが励起されている状態で反応ガスと不活性ガスを中断することなく導入し、それによって基板上にSi−N結合を有する第一の誘電体膜を形成する工程と、(iv)工程(i)ないし(iii)を繰り返すことによって基板上にSi−N結合を有する第二の誘電体膜を形成する工程とを含み、ここで、工程(iii)はさらに、第一の前駆体をパルスの状態で導入する間に、同じタイミングで第二の前駆体をパルスの状態で導入し、それによって、第二の誘電体膜のウェットエッチング抵抗を第一の誘電体膜のそれと比較して増加させる工程を含み、前記第二の前駆体は前記第一の前駆体より多くの炭化水素をその分子中に有する。
【0039】
一実施例では、工程(iv)はさらに、第二の前駆体のパルスの持続時間を第一の前駆体の持続時間よりも長くする工程を含んでよい。一実施例では、工程(iv)はさらに、第一の誘導体膜に対するのと比較して、窒素ガスの流量を減少させる工程を含んでよい。
【0040】
さらに他の態様においては、実施例は、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)によって、半導体基板上にSi−N結合を有する誘電体膜を形成する方法を提供し、該方法は、(i)窒素及び/または水素を含有する反応ガスと希ガスとを、中に半導体基板が配置された反応空間に導入する工程と、(ii)RFパワーを反応空間に印加する工程と、(iii)第一の前駆体と第二の前駆体を同じタイミングで、それぞれ5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で反応空間に導入し、その間プラズマが励起されている状態で反応ガスと不活性ガスを中断することなく導入し、それによって、基板上にSi−N結合を有する第一の誘電体膜を形成する工程であって、前記第一の前駆体は水素を含有するシリコンガスで、前記第二の前駆体は第一の前駆体より多くの炭化水素を有する、ところの工程と、(iv)工程(i)ないし(iii)を繰り返すことにより基板上にSi−N結合を有する第二の誘電体膜を形成する工程とを含み、ここで工程(iii)はさらに、第一の前駆体と第二の前駆体を同じタイミングにおいてパルスの状態で導入する間に、もう一つの第二の前駆体をパルスの状態で導入し、それによって、第二の誘電体膜のウェットエッチング抵抗を第一の誘電体膜のそれと比較して変更する工程、を含む。
【0041】
一実施例では、工程(iv)は、さらにもう一つの第二の前駆体のパルスの持続時間を第二の前駆体のパルスの持続時間と比べて変更する工程を含んでよい。一実施例では、工程(iv)はさらに、第二の誘導体膜に対するのと比べて、窒素ガスの流量を変更する工程を含んでよい。
【0042】
上記の実施例のいずれも、基板は約0℃ないし約400℃の温度に保たれてよい。ケイ素を含有する前駆体(第一の前駆体)は、シリコンと水素の組合せ、またはシリコン、水素、窒素及び炭素の組合せであってよい。第二の前駆体は、シリコン水素及び炭素の組合せ、または水素と炭素の組合せであってよい。一実施例では、プラズマ重合を維持する間、気化したケイ素を含有する前駆体と気化した第二の前駆体は、約0.1秒ないし約1.0秒の持続時間をもつ、約0.5秒ないし約3秒のインターバルをあけたパルスの状態で導入されてよい。一実施例では、反応ガスは窒素ガスと水素ガスの組合せであってよい。一実施例では、添加前駆体は、NH3またはCxHyまたは炭化水素を含有するシリコン前駆体であってよく、ここで、xとyは整数である。一実施例では、xは1ないし8であってよく、yは4ないし18であってよい。一実施例では、反応チャンバーの圧力は約0.1トルないし約10トルに保たれてよい。一実施例では、RFパワーは約0.01W/cm2と約1.0W/cm2の間であってよい。
【0043】
実施例が、本発明を限定することを意図することなく、図を参照して説明される。図1は、流量制御弁を有するプラズマCVDリアクター(本発明で使用することができる)を組み込む装置の略示図であって、以下に説明されるシーケンスを実施するためのプログラムされた制御と連動することが望ましいものである。
【0044】
この例では、反応チャンバー3の内部11に、平行で対向する一対の導電性の平板電極4、2を備え、一方にRFパワー5を印加し、他方を電気接地(12)することによって、プラズマが電極の間に励起される。温度レギュレータが下のステージ(下部電極2)に備えられ、その上に置かれた基板1の温度が所定の温度に一定に保たれる。上方電極4は、シャワープレートとしても機能し、反応ガス及び添加ガスが、ガス流量制御器21及び22をそれぞれ通過し、シャワープレート(4)を通過して反応チャンバー3に導入される。水素を含有するシリコン前駆体もまた、ガス流量制御器23、パルス流量制御弁31及びシャワープレート(4)を通過して反応チャンバー3に導入される。さらに、反応チャンバー3の内部11のガスを排気する排気パイプ6が、反応チャンバー3に設けられている。さらに、反応チャンバー3には、反応チャンバー3の内部11に封止ガスを導入するための封止ガス流量制御器24が設けられる。図では、反応チャンバーの内部において、反応ゾーンと移動ゾーンとを分離する分離プレートが省略されている。封止ガスは必要ではないが、反応ガスが分離プレートの下のチャンバー下部へ連通するのを防ぐのを助けるために、いくつかの実施例において用いられる。
【0045】
一実施例では、パルス流量制御弁31として、ALD(原子層の成膜)のために使用されるパルス供給弁を適宜使用することができる。
【0046】
図2aはPECVD法の比較例のプロセス工程を示し、図2bは窒化シリコン膜を成膜するための本発明の方法にかかる実施例のプロセス工程を示している。比較例の方法は図2aに示されているように、主要な(シリコン)前駆体と反応ガスと添加ガスが、中に基板が配置された反応チャンバーの内部に導入され、プラズマが励起され、その間三つのタイプのガスすべてが供給され続ける。その結果、窒化シリコン膜がプラズマ反応によって基板上に形成され得る。比較例のPECVD法によって形成された窒化シリコン膜は、ステップカバレージが不十分であり、それは成膜物質の表面移動を妨げる過剰な気相反応によるであろう。
【0047】
対照的に、本発明の一実施例においては、過剰な気相反応を効果的に防ぐべく、シリコン前駆体が5秒以下の持続時間、好適には2秒以下の持続時間をもつパルス状態で反応チャンバーに導入され、それによってステップカバレージまたはコンフォーマリティが改善されている。例えば、図2bに示されている本発明の実施例では、パルス流量制御弁によって、約0.1秒ないし約1.0秒間シリコン前駆体が反応チャンバーに導入され、そして約1.0秒ないし約3秒間、パルス流量制御弁が閉じられる。パルス状態でのシリコン前駆体の導入は繰り返される。これをすることによって、膜が成長する間、H*,N*ラジカルを著しく生成するものと考えられるプロセスに大量の水素と窒素を添加することができ、結果として、成膜物質の表面移動が改善され、基板上に高度にコンフォーマルな窒化シリコン膜を形成することができる。
【0048】
一実施例では、サイクルごとに成膜される平均厚さは、約0.6nm/サイクルないし1.0nm/サイクルであってよい。シリコン前駆体のパルスの供給は、膜の所望の厚さが得られるまで続けられ得る。もし膜の所望の厚さが20nmないし100nmであれば、約20サイクルないし約150サイクル(例えば、40ないし100サイクル)が実施されてもよい。
【0049】
特定の枚葉式PECVDリアクタを用いる他の実施例では、供給パルスが0.1秒以下の場合は、前駆体の供給量が均一な膜を成膜し成長させるのに十分でないために、成膜率は遅くなり、成膜される膜の均一性は悪くなるだろう。他方、供給パルスが1.0秒以上になると、過剰な気相反応のために、ステップカバレージは悪く(80%以下)なるだろう。一実施例おいては、高いステップカバレージを構成するために、過剰な気相反応は避けられるべきであり、成膜の間、表面移動が生じるべきである。図2bのパルス供給シーケンスは上記を実現するための変数を与えるものである。他の実施例では、もしパルス間のインターバルが0.1秒以下で、供給パルスの持続時間が0.1秒ないし1.0秒である場合もまた、ステップカバレージが不十分という結果になる。他方、もしパルス間のインターバルが3.0秒以上で、供給パルスの持続時間が0.1秒ないし1.0秒である場合、膜の特徴とステップカバレージは実質的に影響されないかもしれないが、全体のプロセス時間が長くなり過ぎる。
【0050】
本発明の実施例に従い、膜のコンフォーマリティは、他の窒化シリコン成膜プロセスと比較して驚くほど改善され得る。
【0051】
一実施例において、半導体基板上にコンフォーマルな窒化シリコン層を形成するための成膜条件は、以下の通りである。
【0052】
シラン:10〜200sccm
水素:500〜2000sccm
窒素:1000〜2000sccm
プロセスヘリウム:500〜3000sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:50〜500sccm
基板温度:0〜400℃
RFパワー:0.02W/cm2〜20W/cm2
圧力:0.1〜10Torr
シランの供給時間:0.5〜1秒の供給、1〜3秒の供給停止
【0053】
他の実施例では、得られた窒化シリコン膜のステップカバレージ(コンフォーマリティ)は80%以上であってよく、ここでステップカバレージは、基板上面の窒化シリコン層の平均厚さに対するトレンチの側壁に成膜された窒化シリコン層の平均厚さのパーセント比率として定義される。リーク電流は、1MVのチャージで、約1.0E−08A/cm2以下であってよい。さらに、別の実施例では、633nmでの屈折率(n)は、約1.80〜2.60の範囲であってよい。
【0054】
コンフォーマルな窒化シリコン成膜プロセスの別の利点は、水素を含有する液体のシリコン前駆体との適合性である。一実施例での成膜条件は、以下の通りである。
【0055】
トリシリルアミン:10〜2000sccm
水素:500〜2000sccm
窒素:500〜2000sccm
プロセスヘリウム:0〜5000sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:50〜500sccm
基板温度:0〜400℃
RFパワー:0.02W/cm2〜20W/cm2
圧力:0.1〜10Torr
トリシリルアミンの供給時間:0.1〜0.5秒の供給、0.1〜2秒の供給停止
【0056】
本発明の実施例に従った窒化シリコン層は、約80%以上、または約90%以上のコンフォーマリティを有してよい。リーク電流は、1MVのチャージで、約1.0E−08A/cm2以下であってよい。さらに、別の実施例では、誘電率は約6.7ないし約7.3であってよい。他の実施例では、633nmでの屈折率(n)は、約1.80ないし約2.60の範囲であってよい。本発明の実施例に従って成膜された窒化シリコン膜のエッチングレートは、バッファードフッ化水素を用いて計測した場合、従来の熱酸化膜の10分の1ないし2分の1であってよい。
【0057】
一実施例において、第一の前駆体は、SiαHβXγの化学式を有してよく、ここでα、βおよびγは整数であり、γはゼロを含む。XはNまたはCmHnを含み得る。一実施例において、αは1ないし5、βは1ないし10、そしてγは0ないし6であってよい。一実施例において、mは2ないし18、そしてnは6ないし30であってよい。
【0058】
一実施例において、第二の前駆体は、アンモニアまたはCxHyもしくは炭化水素を含有するシリコン前駆体であってよく、ここで、xおよびyは整数である。一実施例では、xは1ないし8、yは4ないし18であってよい。一実施例では、炭化水素を含有するシリコン前駆体は、SiαHβXγの化学式を有してよく、ここでα、βおよびγは整数である。XはNまたはCmHnを含み得る。一実施例において、αは1ないし5、βは1ないし10、そしてγは1ないし6であってよい。一実施例において、mは2ないし18、そしてnは6ないし30であってよい。
【0059】
他の実施例では、第一の前駆体は炭素を含有しないのに対して、第二の前駆体は炭化水素を含有する。他の実施例では、第一及び第二の前駆体は炭化水素を含有するが、第二の前駆体は第一の前駆体よりもその分子中により多くの炭化水素を有する。他の実施例では、第一の前駆体はシリコンを含有するのに対して、第二の前駆体はシリコンを含有しない。他の実施例では、第一の前駆体が窒素を含有するのに対して、第二の前駆体は窒素を含有しない。第一及び第二の前駆体は、上記の定義のいずれかの組合せにおいて定義され得る。他の実施例では、二つ以上のタイプの前駆体が用いられ得る。
【0060】
上記の実施例のいずれも、基板上に成膜される間、基板は0℃ないし400℃の温度に保たれてよい。他の実施例では、成膜の間、基板温度は約300℃ないし約400℃である。
【0061】
上記の実施例のいずれも、反応ガスと希ガスが連続して導入され、RFパワーが連続して印加される間に、第一の前駆体及び第二の前駆体がパルスの状態で導入されてよい。上記の実施例のいずれも、第一の前駆体と第二の前駆体は、約0.1秒ないし約1.0秒(例えば、0.2秒ないし0.3秒)の持続時間のパルスの状態で、約0.1秒ないし約3秒(例えば、1.0秒ないし2.0秒)のインターバルをあけて導入されてよい。一実施例では、第一の前駆体と第二の前駆体のパルスの持続時間は、インターバルと等しいかまたはそれ以下であってよい。
【0062】
上記の実施例のいずれも、反応ガスは、窒素と水素の混合物、または窒素−ホウ素−水素ガスから成る。一実施例として、反応ガスは、窒素と水素の混合物(N2/H2のモル流量比が約1/10ないし約10/1である)を含んでよい。他の実施例では、N2/H2のモル流量比は約1/4ないし約4/1である。
【0063】
上記の実施例のいずれも、希ガスは、He、Ar、Kr及びXeのグループから選択された一つ又はそれ以上のガスであってよく、希ガスのモル流量は、水素を含有するシリコンソース(第一及び第二の前駆体の合計)のモル流量を超えるものでもよい。一実施例として、反応チャンバーに導入される希ガスの流量は、約40sccmないし約4000sccmであってよい。他の実施例として、希ガスの流量は、約1500sccmないし約3000sccmである。一実施例として、希ガスは、ヘリウムとアルゴンの混合物又はヘリウムとクリプトンとの混合物を含んでよい。一実施例では、希ガスはヘリウムとアルゴンの混合物で、ヘリウム/アルゴンのモル流量比が約1/1ないし約20/1のものを含んでよい。他の実施例として、ヘリウム/アルゴンのモル流量比は、約2/1ないし約10/1である。一実施例においては、希ガスはヘリウムとクリプトンの混合物であって、ヘリウム/クリプトンのモル流量比が約2/1ないし約10/1のものを含んでよい。
【0064】
上記の実施例のいずれも、RFパワーは、基板表面積当たり約0.01W/cm2ないし約1.0W/cm2の範囲で印加されてよく(例えば、0.02〜0.1W/cm2の範囲、0.1〜0.5W/cm2の範囲、0.5〜1W/cm2の範囲)、反応空間の圧力は約0.1トルないし約10トル(例えば、2トルないし9トル)の範囲で調節されてよい。
【0065】
上記の実施例のいずれも、形成された誘電体膜は、少なくとも80%(例えば、80%ないし95%)のステップカバレージまたはコンフォーマリティを有するものであってよい。一実施例では、形成された誘電体膜のリーク電流は、1MVで、約1.0E−08A/cm2以下であってよい(例えば、1.0E−08A/cm2ないし1.0E−10A/cm2)。
【0066】
上記の実施例のいずれも、形成された誘電体膜は、第二の前駆体のタイプによって、さまざまなエッチ抵抗を有するものであってよい。一実施例では、炭化水素、または炭化水素を含有するシリコン前駆体が第二の前駆体として用いられて形成された誘電体膜は、標準的な熱酸化膜よりも低いエッチングレートを有する。他の実施例では、エッチ抵抗は、炭素の量を増すことによって増加する。
【0067】
さらに、プラズマ反応の工程は、5MHzを越える周波数、例えば、13.56MHz、27MHzまたは60MHzの高周波RFパワーのうちのいずれか一つを用いて実行されてよく、一実施例ではさらに、前記高周波RFパワーのいずれか一つと5MHzまたはそれ以下の低周波RFパワーと組み合わせることができ、その場合の低周波パワーの高周波パワーに対する比率は、50%またはそれ以下であってよい(例えば、約30%またはそれ以下)。
【0068】
図5は、調節されたエッチ特性を有する誘電体膜を成膜するための本発明の方法にかかる実施例のプロセス工程を示している。図5に示されているように、本発明の一実施例では、主要な前駆体(第一の前駆体)及び添加前駆体(第二の前駆体)は、パルス流量制御弁を用いて、約0.1秒ないし約1.0秒の持続時間で、約0.5秒ないし約3秒のインターバルをあけたパルス状態で導入され、その間プラズマ重合を維持している。こうすることによって膜が成長する間、大量の水素、窒素及び炭素がプロセスに添加され(それによってHx,Nx及びCxラジカルを著しく生成するものと考えられる)、成膜物質の表面吸着を改善し、高い成膜率で炭素がドープされた誘電体膜を基板上に形成するという結果をもたらす。さらに、添加前駆体を付加することによって、成膜された膜の組成は変更され得る。添加前駆体の付加は、エッチング液中でのウェットエッチングレートのような特性の変化を導くことができる。
【0069】
エッチ特性が変更された誘電体膜を半導体基板上に形成するための一実施例での成膜条件は、以下の通りである。
【0070】
トリシリルアミン(第一の前駆体):10〜2000sccm(好適に、100〜500sccm)
水素:20〜2000sccm(好適に、500〜1000sccm)
窒素:0〜5000sccm(好適に、20〜2000sccm)
ヘキサン(第二の前駆体):0〜2000sccm(好適に、100〜1500sccm)
第二の前駆体の第一の前駆体に対する流量比:0ないし5(好適に、1ないし3))
ジエチルシラン:0〜2000sccm(好適に、100〜500sccm)
ビス(エチルメチルアミノ)シラン:0〜2000sccm(好適に、100〜500sccm)
プロセスヘリウム:0〜5000sccm(好適に、500〜1500sccm)
封止ヘリウム:200〜500sccm(好適に、300〜500sccm)
アルゴン:50〜2000sccm(好適に、500〜1500sccm)
基板温度:0〜400℃(好適に、300〜400℃)
高周波RFパワー:約0.01W/cm2〜約0.3W/cm2(好適に、0.02〜0.08W/cm2)
低周波RFパワー:高周波RFパワーの0〜100%(好適に、0〜50%)
トリシリルアミンの供給時間:0.1〜1.0秒(好適に、0.2〜0.5秒)の供給、0.1〜2.0秒(好適に、1.0〜2.0秒)の供給停止
添加前駆体(ヘキサン)の供給時間:0.1〜1.0秒(好適に、0.2〜0.5秒、供給時間は第一の前駆体と等しいかまたはそれより長く、第一の前駆体を供給するパルスと同じタイミング)
【0071】
上記の例において、ここに開示したようなその他のタイプのガスが、その他の実施例として代替または付加的に用いられ得る。例えば、ヘキサンに代わって、ビス(エチルメチルアミノ)シランまたはジエチルシランが第二の前駆体として用いられ得る。好適に、第二の前駆体は第一の前駆体よりも多くの炭化水素をその分子中に有し、それによってSiN構造の中により多くの炭素が組み込まれる(炭素がドープされた窒化シリコン)。実施例では、SiN誘電体膜(Si−N結合が主結合または支配的な結合である)の炭素の含有量は、4アトミックパーセントないし20アトミックパーセントの範囲でよく、好適には、5アトミックパーセント以上(10アトミックパーセント以上や15アトミックパーセント以上を含む)である。一実施例では、第二の前駆体は、シリコンを含有する必要はない。
【0072】
本発明の実施例に従った誘電体層は、約90%以上のコンフォーマリティを有してよい。633nmで計測される屈折率(n)は、約1.80ないし約2.80の範囲であってよい。本発明の実施例に従って成膜された誘電体膜のエッチングレートは、フッ化水素酸を含有する酸性溶液を用いて計測する場合、添加前駆体を付加することによって変更され得る。第一及び第二の前駆体を用いて得られた誘電体層のウェットエッチングレートは驚くべきことに、そして意外にも、第二の前駆体のタイプによって、標準的な熱酸化層のウェットエッチングレートの1/20ないし1/400(例えば、1/100以下)になり得る。他の実施例で、第二の前駆体を使用せずに得られた誘電体層のウェットエッチングレートは、標準的な熱酸化層のウェットエッチングレートの1/3ないし1/5であってよい。
【0073】
実施例が具体的な例を参照して説明されるであろうが、本発明の限定を意図するものではない。具体的な例に適用される数値は、他の条件の下で、少なくとも±50%の範囲で修正してもよい。ここで範囲の端点を含む場合もあれば含まない場合もある。条件及び/又は構成が特定されていない開示例に関して、当業者であれば、開示内容を考慮し日常の実験の問題として、このような条件及び/又は構成を容易に示すことができる。
【0074】
例1
図2bに記載されたシーケンスと図1に記載されたPECVD装置とを用い、以下に示される条件下で、トレンチを有する基板上に窒化シリコン絶縁層が形成された。トレンチは比較的幅の広いトレンチ(幅が500nmで深さが350nm)と比較的狭いトレンチ(幅が50nmで深さが350nm)を含む。従って、異なる縦横比のトレンチがコートされた。
【0075】
シラン:50sccm
水素:1000sccm
窒素:2000sccm
プロセスヘリウム:2000sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:100sccm
基板温度:300℃
RFパワー(周波数13.56MHz):0.12W/cm2
圧力:6Torr
シランの供給時間:1秒の供給、3秒の供給停止
【0076】
成膜が完了したあと、トレンチは走査型電子顕微鏡によって観察された。
【0077】
表面の厚さに対する側壁の厚さの比として定義されるところのステップカバレージ(コンフォーマリティ)は80%以上(80%〜87%)であることが確認された。対照的に、図2aに記載されたシーケンスに従ったプロセスによって得られた膜のステップカバレージは70%以下であった。
【0078】
例2
図2bに記載のシーケンスと図1に記載されたPECVD装置を用い、以下に示される条件下で、トレンチを有する基板上に窒化シリコン絶縁層が形成された。トレンチは比較的幅の広いトレンチ(幅が500nmで深さが350nm)と比較的幅が狭いトレンチ(幅が50nmで深さが350nm)を含むものであった。
【0079】
トリシリルアミン:300sccm
水素:500sccm
窒素:1000sccm
プロセスヘリウム:1400sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:500sccm
基板温度:300℃
RFパワー(周波数13.56MHz):0.12W/cm2
圧力:6Torr
トリシリルアミンの供給時間:0.2秒の供給、2秒の供給停止
【0080】
成膜が完了したあと、トレンチは走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察された。
【0081】
図3a及び図3bは、走査型電子顕微鏡のコンフォーマルな窒化シリコン層が形成された基板断面図である。定性的に窒化シリコン層は高度にコンフォーマルで、完全にトレンチの側壁を覆っている。窒化シリコン層は、図3a(a=43.7nm、b=49.6nm、c=41.7nm)に示されているように88%(43.7/49.6)のコンフォーマリティを有し、図3b(a=49.6nm、b=51.6nm、c=51.6nm)に示されているように96%(49.5/51.6)のコンフォーマリティを有していた。計測されたリーク電流は1MVのチャージで、1.0E−08A/cm2以下であった。誘電率は1MHzで6.8だった。633nmでの屈折率(n)は1.99だった。図4は、成膜された窒化シリコン膜の赤外線吸収スペクトルを示している。図4に示されているように、主要なSi−N帯域を観察することができ、Si−H及びN−Hの弱い帯域もまた観察できる。この例で成膜された窒化シリコン膜のエッチングレートは、バッファードフッ化水素を用いて計測したところ、従来の熱酸化膜の4分の1であった。エッチングテストは、BHF130エッチング液を用いて行われた。Si基板上に成膜された膜(SiN)はBHF130エッチング液に5分間浸漬され、そして脱イオン水で洗浄された。厚さは偏光解析器で計測された。
【0082】
本発明で開示された実施例の少なくともひとつの方法における特筆すべき利点は、高度にコンフォーマルな窒化シリコン層またはその他のSi−N誘電体層がさまざまなタイプの基板上に形成され得ることである。窒化シリコンコーティング及びその他のSi−N誘電体膜はまた、比較的低い基板温度で形成されてもよく、その結果、基板への過度の熱量による熱損傷または消耗なく生産性を向上し、そして応用できる基板のタイプを拡張できる。さらに、本発明の実施例にかかる方法は、高い成膜率を達成可能であり、また容易に拡張可能であり、その結果、大規模応用及び/またはダイ−ウエハまたはウエハ−ウエハの三次元集積のような三次元の生産を可能にするものである。
【0083】
例3
誘電体層は図5に記載されたシーケンスに基づき、以下に示される条件下で、添加前駆体なく基板上に形成された。
【0084】
トリシリルアミン:100sccm
水素:500sccm
窒素:1000sccm
プロセスヘリウム:1400sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:1000sccm
基板温度:400℃
高周波RFパワー(周波数13.56MHz):0.07W/cm2
低周波RFパワー(周波数430kHz):0.0W/cm2
トリシリルアミンの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
【0085】
このケースでは、サイクルごとの膜厚は約0.20nm/サイクルだった。図6(TSA:(a)線)は、例3において成膜されたSiN膜の赤外線吸収スペクトルを示している。添加前駆体なしに成膜された誘電体膜は、図7(TSA)に示されているように、4.1nm/minのウェットエッチングレートを有している。エッチングテストはBHF130エッチング液を用いて行われた。Si基板上に成膜された膜はエッチング液に5分間浸漬され、そして脱イオン水で洗浄された。膜厚は偏光解析器で計測された。
【0086】
例4
誘電体層が、図5に記載されたシーケンスを用い、以下に示される条件下で、添加前駆体、ビス(エチルメチルアミノ)シランを用いて基板上に形成された。
【0087】
トリシリルアミン:100sccm
水素:500sccm
窒素:0sccm
ビス(エチルメチルアミノ)シラン:300sccm
プロセスヘリウム:1400sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:1000sccm
基板温度:400℃
高周波RFパワー(周波数13.56MHz):0.07W/cm2
低周波RFパワー(周波数430kHz):0.0W/cm2
トリシリルアミンの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
ビス(エチルメチルアミノ)シランの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
【0088】
このケースでは、サイクルごとの膜厚は約0.25nm/サイクルだった。図6(TSA+BEMAS:(b)線)は、例4において成膜された炭素ドープSiN膜の赤外線吸収スペクトルを示しており、Si−CHのピーク(1130〜1090cm-1)と−CHxのピークが観察される。ビス(エチルメチルアミノ)シランを添加して成膜された誘電体膜は、図7(BEMAS)に示されているとおり、BHF130エッチング液では0.9nm/minのウェットエッチングレートを有している。
【0089】
例5
誘電体層が、図5に記載されたシーケンスを用い、以下に示される条件下で、添加前駆体、ジエチルシラン、を用いて基板上に形成された。
【0090】
トリシリルアミン:100sccm
水素:500sccm
窒素:0sccm
ジエチルシラン:300sccm
プロセスヘリウム:1400sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:1000sccm
基板温度:400℃
高周波RFパワー(周波数13.56MHz):0.07W/cm2
低周波RFパワー(周波数430kHz):0.0W/cm2
トリシリルアミンの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
ジエチルシランの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
【0091】
このケースでは、サイクルごとの膜厚は、約0.11nm/サイクルだった。図6(TSA+DES:(c)線)は、例5において成膜された炭素ドープSiN膜の赤外線吸収スペクトルを示しており、主要なピークは835cm-1から800cm-1にシフトされている。Si−Nの吸収ピークは、通常は812cm-1から892cm-1の範囲に現れる(例えば、Si3N4は830cm-1周辺に現れる)が、それに対して、Si−Cの吸収ピークは、900cm-1ないし700cm-1、814cm-1ないし800cm-1の範囲に現れる。吸収ピークのシフトは、成膜された膜中に炭素が存在していることを示唆している。ジエチルシランを付加して成膜された誘電体膜は、BHF130エッチング液では0.05nm/minのウェットエッチングレートを有する。
【0092】
例6
誘電体層が、図1に記載されたシーケンスを用い、以下に示される条件下で、添加前駆体、例えばヘキサン、を用いて基板上に形成された。
【0093】
トリシリルアミン:100sccm
水素:500sccm
窒素:0sccm
ヘキサン:300sccm
プロセスヘリウム:1400sccm
封止ヘリウム:500sccm
アルゴン:1000sccm
基板温度:400℃
高周波RFパワー(周波数13.56MHz):0.07W/cm2
低周波RFパワー(周波数430kHz):0.0W/cm2
トリシリルアミンの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
ヘキサンの供給時間:0.3秒の供給、2.0秒の供給停止
【0094】
このケースでは、サイクルごとの膜厚は、約0.11nm/サイクルだった。図6(TSA+ヘキサン:(d)線)は、例6において成膜された炭素ドープSiN膜の赤外線吸収スペクトルを示しており、主要なピークは835cm-1から800cm-1にシフトされている。Si−Nの吸収ピークは、通常は812cm-1から892cm-1の範囲に現れる(例えば、Si3N4は830cm-1周辺に現れる)が、それに対して、Si−Cの吸収ピークは、900cm-1ないし700cm-1、814cm-1ないし800cm-1の範囲に現れる。吸収ピークのシフトは、成膜された膜中に炭素が存在していることを示唆している。ヘキサンを添加して成膜された誘電体膜は、図7(ヘキサン)に示されているとおり、BHF130エッチング液では0.03nm/minのウェットエッチングレートを有している。
【0095】
図7は、熱酸化膜と成膜された膜のそれぞれ(TSA、TSA+BEMAS、TSA+DES及びTSA+ヘキサン)のウェットエッチングレートの比較を示す。
【0096】
表1は上記の例の要約である。添加前駆体を付加することにより、成膜される膜の組成は変化し得る。これら付加された前駆体は、エッチング液中でのウェットエッチングレートのような特性の変化を導き得る。
【0097】
【表1】
【0098】
例4ないし6では、結果として得られたSiCN膜のコンフォーマリティ(ステップカバレージ:側壁/上面)は94%前後であり、例1及び2のコンフォーマリティより良好だった。
【0099】
例7
表2はさまざまなプロセスの条件下でのウェットエッチング特性及び膜特性の変化を示すものである。誘電体層は、TSA及びヘキサンによって成膜された。窒素の流量は0sccmから1000sccmまで変えられ、ヘキサンの供給時間は0.1秒から0.5秒まで変えられた。他のプロセス条件は例6と同様であった。プロセス条件を変えることによって、成膜された膜のウェットエッチングレート及び膜特性は変化した。表2によれば、窒素の流量が減少するとウェットエッチングレートは減少し、窒素の流量が増加すると屈折率は減少した。これらは、化学物質及びプロセスの制御変数を組み合わせることによって、炭素がドープされた誘電体膜の組成を制御することが可能であることを示唆している。
【0100】
図8は窒素の流量の関数としての、膜におけるBHF130のウェットエッチングレート及び炭素の濃度を示している。炭素の量は、RBS/HFS分析及びXPS分析によって割り出された。窒素の流量が低くなるほど、炭素の含有量は高くなり、ウェットエッチングレートは低くなる。良好なウェットエッチング抵抗を考慮すると、炭素の含有量は5アトミックパーセント若しくはそれ以上、または10アトミックパーセント若しくはそれ以上が好適であることが分かる。
【0101】
図9は窒素の流量の関数としての屈折率及びSi/N比を示している。シリコン及び窒素の量(Si/N比)はRBS/HFS分析及びXPS分析によって割り出された。窒素の流量が低くなるほど、屈折率が高くなり、Si/N比が高くなる。屈折率を考慮すると、Si/N比は1.0以上であることが好適である。
【0102】
図10はヘキサンの供給時間によって変化するBHF130のウェットエッチングレートを示すものである。ヘキサンの供給時間が第一の前駆体の供給時間と同じかそれ以上であるとき、ウェットエッチング抵抗は極めて高くなる。
【0103】
【表2】
【0104】
本発明の開示された実施例のうちの少なくとも一つの方法における特筆すべき利点は、半導体基板上に形成された誘電体膜のエッチ特性が、添加前駆体をプロセスの制御変数と組み合わせて用いることによって、望ましく修正または変更され得ることである。誘電体膜はまた比較的低い基板温度で形成され、膜の組成は制御が可能であって、それによって、熱損傷を基板に与えることなく生産性が向上し、応用できる基板のタイプが拡張する。さらに、本発明の実施例のうち少なくとも一つの方法は、膜厚を正確に制御することが可能であり、高い成膜率を達成し、高度にコンフォーマルな構成を形成することが可能である。
【0105】
本発明の思想及び態様から離れることなく多くのさまざまな修正が可能であることは当業者の知るところである。したがって、言うまでもなく、本発明の態様は例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ励起化学蒸着(PECVD)により半導体基板上にSi−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜を形成する方法であって、
窒素及び/または水素を含有する反応ガスと希ガスとを、中に半導体基板が配置された反応空間に導入する工程と、
RFパワーを反応空間に印加する工程と、
水素を含有するシリコンガスを含む前駆体を、5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で反応空間に導入し、その間プラズマが励起されている状態で反応ガスと希ガスとを中断することなく導入し、それによって基板上にSi−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜を形成する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
水素を含有するシリコン前駆体はSiαHβXγの化学式を有し、α、β及びγは整数(γは0を含む)であり、XはN、F及び/またはCmHnを含み、m及びnは整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素を含有するシリコン前駆体は、室温では液体であり、反応空間の上流で気化させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
水素を含有するシリコン前駆体がパルスの状態で導入され、その間反応ガスと添加ガスが連続して導入され、RFパワーが連続して印加される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
パルスの持続時間が、パルス間のインターバルの長さ以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水素を含有するシリコン前駆体は、持続時間が約0.1秒ないし約1.0秒であって、パルス間のインターバルが約0.1秒ないし約3.0秒であるパルスの状態で導入される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
反応ガスは、N2とH2の混合物、NH3とH2の混合物及び窒素−ホウ素−水素ガスのうちの少なくとも一つを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
希ガスはヘリウムとアルゴンの混合物またはヘリウムとクリプトンの混合物を含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
コンフォーマルな誘電体膜は窒化シリコン膜である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
水素を含有するシリコンガスは第一の前駆体と第二の前駆体とを含んで成り、第一の前駆体はその分子中に炭素原子を含まず、第二の前駆体は炭化水素を含有するガスを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第一の前駆体と第二の前駆体は同じタイミングでパルスの状態で導入される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第二の前駆体のパルスの持続時間は、第一の前駆体のパルスの持続時間と異なる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コンフォーマルな誘電体膜は炭素がドープされた窒化シリコン膜である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
プラズマ励起化学蒸着(PECVD)により半導体基板上にSi−N結合を有する誘電体膜を形成する方法であって、
(i)窒素及び/または水素を含有する反応ガスと希ガスとを、中に半導体基板が配置された反応空間に導入する工程と、
(ii)RFパワーを反応空間に印加する工程と、
(iii)第一の前駆体として水素を含有するシリコンガスを5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で反応空間に導入し、その間プラズマが励起されている状態で反応ガスと不活性ガスとを中断することなく導入し、それによって基板上にSi−N結合を有する第一の誘電体膜を形成する工程と、
(iv)工程(i)ないし(iii)を繰り返すことによって基板上にSi−N結合を有する第二の誘電体膜を形成する工程と、
工程(iii)はさらに、第一の前駆体をパルスの状態で導入する間に、同じタイミングで第二の前駆体をパルスの状態で導入し、それによって、第二の誘電体膜のウェットエッチング抵抗を第一の誘電体膜のそれと比較して増加させる工程を含み、前記第二の前駆体は前記第一の前駆体以上の炭化水素をその分子中に有する、ところの工程と、
を含む、方法。
【請求項15】
さらに、工程(iv)は第二の前駆体のパルスの持続時間を第一の前駆体の持続時間よりも長くする工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
さらに、工程(iv)は第一の誘導体膜に対するのと比較して窒素ガスの流量を減少させる工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
プラズマ励起化学蒸着(PECVD)により半導体基板上にSi−N結合を有する誘電体膜を形成する方法であって、
(i)窒素及び/または水素を含有する反応ガスと希ガスとを、中に半導体基板が配置された反応空間に導入する工程と、
(ii)RFパワーを反応空間に印加する工程と、
(iii)第一の前駆体と第二の前駆体とをそれぞれ5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で、同じタイミングで反応空間に導入し、その間プラズマが励起されている状態で反応ガスと不活性ガスとを中断することなく導入し、それによって基板上にSi−N結合を有する第一の誘電体膜を形成する工程であって、前記第一の前駆体は水素を含有するシリコンガスで、前記第二の前駆体は第一の前駆体以上の炭化水素を有する、ところの工程と、
(iv)工程(i)ないし(iii)を繰り返すことにより基板上にSi−N結合を有する第二の誘電体膜を形成する工程とを含み、
工程(iii)はさらに、第一の前駆体と第二の前駆体を同じタイミングにおいてパルスの状態で導入する間に、もう一つの第二の前駆体をパルスの状態で導入し、それによって、第二の誘電体膜のウェットエッチング抵抗を第一の誘電体膜のそれと比較して変更する、ところの工程とを含んで成る、
方法。
【請求項18】
さらに、工程(iv)はもう一つの第二の前駆体のパルスの持続時間を第二の前駆体の持続時間と比較して変更する工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
さらに、工程(iv)は第二の誘導体膜に対するのと比較して窒素ガスの流量を変更する工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項1】
プラズマ励起化学蒸着(PECVD)により半導体基板上にSi−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜を形成する方法であって、
窒素及び/または水素を含有する反応ガスと希ガスとを、中に半導体基板が配置された反応空間に導入する工程と、
RFパワーを反応空間に印加する工程と、
水素を含有するシリコンガスを含む前駆体を、5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で反応空間に導入し、その間プラズマが励起されている状態で反応ガスと希ガスとを中断することなく導入し、それによって基板上にSi−N結合を有するコンフォーマルな誘電体膜を形成する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
水素を含有するシリコン前駆体はSiαHβXγの化学式を有し、α、β及びγは整数(γは0を含む)であり、XはN、F及び/またはCmHnを含み、m及びnは整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素を含有するシリコン前駆体は、室温では液体であり、反応空間の上流で気化させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
水素を含有するシリコン前駆体がパルスの状態で導入され、その間反応ガスと添加ガスが連続して導入され、RFパワーが連続して印加される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
パルスの持続時間が、パルス間のインターバルの長さ以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水素を含有するシリコン前駆体は、持続時間が約0.1秒ないし約1.0秒であって、パルス間のインターバルが約0.1秒ないし約3.0秒であるパルスの状態で導入される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
反応ガスは、N2とH2の混合物、NH3とH2の混合物及び窒素−ホウ素−水素ガスのうちの少なくとも一つを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
希ガスはヘリウムとアルゴンの混合物またはヘリウムとクリプトンの混合物を含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
コンフォーマルな誘電体膜は窒化シリコン膜である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
水素を含有するシリコンガスは第一の前駆体と第二の前駆体とを含んで成り、第一の前駆体はその分子中に炭素原子を含まず、第二の前駆体は炭化水素を含有するガスを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第一の前駆体と第二の前駆体は同じタイミングでパルスの状態で導入される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第二の前駆体のパルスの持続時間は、第一の前駆体のパルスの持続時間と異なる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コンフォーマルな誘電体膜は炭素がドープされた窒化シリコン膜である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
プラズマ励起化学蒸着(PECVD)により半導体基板上にSi−N結合を有する誘電体膜を形成する方法であって、
(i)窒素及び/または水素を含有する反応ガスと希ガスとを、中に半導体基板が配置された反応空間に導入する工程と、
(ii)RFパワーを反応空間に印加する工程と、
(iii)第一の前駆体として水素を含有するシリコンガスを5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で反応空間に導入し、その間プラズマが励起されている状態で反応ガスと不活性ガスとを中断することなく導入し、それによって基板上にSi−N結合を有する第一の誘電体膜を形成する工程と、
(iv)工程(i)ないし(iii)を繰り返すことによって基板上にSi−N結合を有する第二の誘電体膜を形成する工程と、
工程(iii)はさらに、第一の前駆体をパルスの状態で導入する間に、同じタイミングで第二の前駆体をパルスの状態で導入し、それによって、第二の誘電体膜のウェットエッチング抵抗を第一の誘電体膜のそれと比較して増加させる工程を含み、前記第二の前駆体は前記第一の前駆体以上の炭化水素をその分子中に有する、ところの工程と、
を含む、方法。
【請求項15】
さらに、工程(iv)は第二の前駆体のパルスの持続時間を第一の前駆体の持続時間よりも長くする工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
さらに、工程(iv)は第一の誘導体膜に対するのと比較して窒素ガスの流量を減少させる工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
プラズマ励起化学蒸着(PECVD)により半導体基板上にSi−N結合を有する誘電体膜を形成する方法であって、
(i)窒素及び/または水素を含有する反応ガスと希ガスとを、中に半導体基板が配置された反応空間に導入する工程と、
(ii)RFパワーを反応空間に印加する工程と、
(iii)第一の前駆体と第二の前駆体とをそれぞれ5秒以下の持続時間をもつパルスの状態で、同じタイミングで反応空間に導入し、その間プラズマが励起されている状態で反応ガスと不活性ガスとを中断することなく導入し、それによって基板上にSi−N結合を有する第一の誘電体膜を形成する工程であって、前記第一の前駆体は水素を含有するシリコンガスで、前記第二の前駆体は第一の前駆体以上の炭化水素を有する、ところの工程と、
(iv)工程(i)ないし(iii)を繰り返すことにより基板上にSi−N結合を有する第二の誘電体膜を形成する工程とを含み、
工程(iii)はさらに、第一の前駆体と第二の前駆体を同じタイミングにおいてパルスの状態で導入する間に、もう一つの第二の前駆体をパルスの状態で導入し、それによって、第二の誘電体膜のウェットエッチング抵抗を第一の誘電体膜のそれと比較して変更する、ところの工程とを含んで成る、
方法。
【請求項18】
さらに、工程(iv)はもう一つの第二の前駆体のパルスの持続時間を第二の前駆体の持続時間と比較して変更する工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
さらに、工程(iv)は第二の誘導体膜に対するのと比較して窒素ガスの流量を変更する工程を含む、請求項17に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図3a】
【図3b】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図3a】
【図3b】
【公開番号】特開2011−54968(P2011−54968A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193285(P2010−193285)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000227973)日本エー・エス・エム株式会社 (68)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000227973)日本エー・エス・エム株式会社 (68)
【Fターム(参考)】
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