説明

TFT基板

【課題】アクティブマトリクス型の表示装置の作製工程又は完成品における静電気による不良の発生を抑制する。
【解決手段】本発明に係る表示装置は、アクティブマトリクス回路の角の部分に隣接して、前記アクティブマトリクス回路に接続されていない格子状の放電パターンが形成されていることを特徴とする。また、本発明に係る表示装置は、アクティブマトリクス回路の周辺に、前記アクティブマトリクス回路を構成するゲイト線又はソース線と交わる放電パターンが形成され、前記放電パターンの長さは、前記アクティブマトリクス回路の画素ピッチよりも長いことを特徴とする。これらにより、各種静電破壊によるアクティブマト
クス型表示装置の不良の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する発明は、周辺駆動回路を内蔵したアクティブマトリクス型のフラッ
トパネルディスプレイの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、周辺駆動回路を内蔵したアクティブマトリクス型の液晶表示装置が知られて
いる。これは、薄膜トランジスタ(TFTと称する)でもって構成される画素領域を構成
するアクティブマトリクス回路と、やはり薄膜トランジスタで構成されるこのアクティブ
マトリクス回路を駆動するための周辺駆動回路と、をガラス基板(または石英基板)上に
集積化した構成を有している。
【0003】
例えばVGAパネルにおいては、約30万個の薄膜トランジスタが同一のガラス基板ま
たは石英基板上に集積化される。またEWSパネルの場合、約130万個の薄膜トランジ
スタが同一のガラス基板または石英基板上に集積化される。
【0004】
このような構成においては、薄膜トランジスタに一つでも不良であると、点欠陥や線欠
陥が形成されてしまう。
【0005】
ディスプレイは、見た目でその性能が判断される。従って、上記の点欠陥や線欠陥が存
在する場合、商品としては不良品となってしまう。
【0006】
ガラス基板や石英基板を用いる場合、その絶縁性が高く、またその面積が大きいことか
ら、静電気による破壊(静電破壊)の問題が特に顕在化する。
【0007】
例えば液晶パネルの形成に際しては、各種薄膜の成膜やエッチングにプラズマを用いた
工程が多用される。これらプラズマを用いた工程においては、後述するようにパルス状の
静電気が発生する。また、ラビング工程のようにプラズマ工程以外の場合において静電気
が発生してしまう工程も存在している。
【0008】
前述したように薄膜トランジスタを構成する各種薄膜の成膜やエッチングに際しては、
プラズマCVD法やプラズマエッチング法で代表されるプラズマ工程が多用される。しか
し、使用される基板の絶縁性が高いということから、このプラズマ工程において、局所的
に放電が生じてしまう現象が起こる。
【0009】
そしてこの放電に起因すると見られる不良が発生してしまう。具体的には、各種静電破
壊や静電気が原因と見られる薄膜トランジスタの動作不良が発生してしまう。これらの不
良は、アクティブマトリクス型の液晶表示装置やその他アクティブマトリクス型のフラッ
トパネル型のディスプレイの生産歩留りを低下させる大きな要因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の各種不良の発生について、本発明者が数々の実例を解析した結果、以下の知見が
得られた。
【0011】
まず、静電気や局在的な高電圧が印加されてしまうことによる不良の発生形態は、以下
の2つに大別できる。
【0012】
第1の形態は、静電パルスによるものである。静電パルスによる不良の種類としては、
コンタクト不良と絶縁膜の絶縁破壊とがある。
【0013】
コンタクト不良は以下のようなメカニズムによって発生する。まず、プラズマCVD法
による薄膜の成膜時やRIE法によるプラズマエッチング時において、局在的な放電が起
こる。この放電は、絶縁性の基板を用いた試料が大面積であり、そもそも局在的な放電が
起こりやすい状態が実現されていることに加えて、パターン表面の凹凸やパターン面積の
違い、さらに膜質の微妙な違い、さらにパーティクルの存在等の些細な要因により発生す
る。
【0014】
上記の局在的な放電の結果、特定の微小な部分に高電圧が瞬間的に加わる。この時、配
線の一部分に局在的に電圧が誘起され、静電パルスが発生する。この静電パルスは瞬間的
に発生するものであり、その誘起される電圧の先頭値が極めて大きなものとなる。
【0015】
そして、この静電パルスに起因して、薄膜トランジスタと配線(または電極)のコンタ
クト部分に瞬間的に大電流が流れる。この瞬間的な大電流が流れることにより、コンタク
ト部分が高い温度に発熱する。そしてこのことにより、コンタクトが破壊される。このコ
ンタクトの破壊は永久的なものであり、一般には修復は困難である。
【0016】
また絶縁膜の破壊は、静電パルスに起因する瞬間的な大電流が配線や電極に流れること
により、本来絶縁機能を維持しなければならない絶縁膜に局在的な強電界が加わり、その
部分において絶縁性が破壊されることによる。この絶縁性の破壊も永久的なものであり、
一般には修復が困難である。
【0017】
第2の形態は、プラズマ誘起による静電気の発生によるものである。これは、成膜やエ
ッチング等のプラズマが用いられる工程において、基板上の配線パターン形状の不均一性
(面積の違いや段差)に起因する。この工程においては、プラズマ放電中にパターン間に
局在的な電位差が瞬間的に誘起される。
【0018】
この局在的な電位差は、導電性パターン同士、あるは導電性パターンと絶縁基板との間
に局在的な放電を引き起こす。そしてこのことに起因して薄膜トランジスタのジャンクシ
ョン(PI接合やNI接合)に損傷が与えられ、薄膜トランジスタの動作が不良となる。
【0019】
この局在的な放電による薄膜トランジスタのジャンクションに対する損傷は、加熱処理
等によって修復することができる場合がある。従ってこの場合の不良は半永久的なものと
見ることができる。
【0020】
本明細書で開示する発明は、上述した各種静電破壊による不良の発生を抑制し、液晶パ
ネルの生産歩留りを向上させる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本明細書で開示する発明は、上述の解析結果に基づくものである。本明細書で開示する
発明は、基本的に2つの構成からなる。第1の構成は、静電パルスの発生を抑制する手段
を提供するものである。また、第2の構成はプラズマによって誘起される静電気の発生を
抑制する手段を提供するものである。
【0022】
本明細書で開示する発明においては、静電パルスの発生を抑制するための構成として、
液晶パネルの周囲に瞬間的な電気パルスを吸収する保護容量(キャパシタ)を配置する。
【0023】
液晶パネルに代表されるアクティブマトリクス型のフラットパネルディスプレイの作製
工程においては、各配線パターンの電位差を無くすためにショートリングと呼ばれる配線
が配置される。このショートリングは、最終的には回路から切り離される。そして、完成
品の段階では配線としての機能は持たない。
【0024】
前述の電気パルスを吸収するためのキャパシタ(保護容量)の電極の一方は、このショ
ートリングに接続される。即ち、ショートリングに誘起される電気パルスを上記保護容量
に吸収させる構成とする。
【0025】
ショートリングはアクティブマトリクス回路を構成するソース配線とゲイト配線の全て
に接続されている。従って、アクティブマトリクス回路のどこかに電気パルスの侵入があ
っても上記の保護容量に電気パルスは吸収される。また、電気パルスが大きく保護容量に
よって完全に吸収されなくても、その影響を弱めることができる。
【0026】
なお一般にショートリングは、アクティブマトリクス回路を駆動するための周辺駆動回
路を構成する薄膜トランジスタのゲイト電極の全てに連結した構成にはなっていない。し
かし、周辺駆動回路ブロックに近い領域に上記保護容量を配置すれば、外部からの電気パ
ルスをそこで吸収し、周辺駆動回路に電気パルスが進入することを抑制することができる
。また、周辺駆動回路に侵入する電気パルスを弱めることができる。
【0027】
また、本明細書に開示する発明においては、プラズマによって誘起される静電気を防ぐ
手段として、この静電気を放電させる放電パターンをショートリングとアクティブマトリ
クス回路部、さらにショートリングと周辺駆動回路部との間に配置する。
【0028】
本発明者らの解析によれば、主に面積の大きい導電性パターンからプラズマによって誘
起される静電気が発生しやすい。
【0029】
液晶パネルの作製工程中における最大の面積を有する導電性パターンは、ショートリン
グである。即ち、ショートリングは、各配線間の電位差をなくし、不要な放電を抑制する
ためのものであるが、一方では、ショートリング自身が静電気の発生を招いてしまう要因
ともなっている。
【0030】
ショートリングに電圧が誘起されると、それが基になって局在的に静電気が生じてしま
う。
【0031】
そこで、本明細書に開示する発明においては、ショートリングとアクティブマトリクス
回路部、さらにショートリングと周辺駆動回路部との間にプラズマ誘起された静電気を消
滅させる放電パターン(ガードリングと称する)を配置する。
【0032】
即ち、ショートリングに誘起された静電気がアクティブマトリクス回路部や周辺駆動回
路部に入り込む前に、放電パターンを通過する段階でこの静電気を放電させてしまう構成
とする。
【0033】
または、電位差が生じては都合の悪い部分においては、ショートリングと当該回路との
間に放電パターンを予め配置する。このようにすることで、回路にはショートリングとの
間で生じる電位差の影響が及ばないようにすることができる。
【0034】
そして、ショートリングに誘起された静電気によってアクティブマトリクス回路部や周
辺駆動回路部に配置された薄膜トランジスタが損傷することを抑制することができる。
【0035】
本明細書で開示する発明の一つは、図1にその一実施形態を示すように、アクティブマ
トリクス回路108と、該アクティブマトリクス回路を駆動するための周辺駆動回路10
4と105と、が同一基板101上に配置された構成を有し、前記アクティブマトリクス
回路108及び前記周辺駆動回路104と105の周辺は放電パターン112、103、
106によって囲まれていることを特徴とする。
【0036】
上記構成において、放電パターンのピッチをアクティブマトリクス回路の画素ピッチよ
り小さくすることは有用である。
【0037】
これは、アクティブマトリクス回路に侵入する電気パルスによって、アクティブマトリ
クス回路において放電が生じないようにするためである。
【0038】
他の発明の構成は、図3にその1実施形態の作製工程を示すように、
アクティブマトリクス型の表示装置であって、
同一基板301上にアクティブマトリクス回路(画素部)が配置されており、 前記ア
クティブマトリクス回路に隣接して容量が形成されており、
前記容量は、
前記アクティブマトリクス回路に配置された薄膜トランジスタのゲイト電極310と
同一材料でかつ同一層に形成された電極307と、
該電極下の前記薄膜トランジスタのゲイト絶縁膜を構成する材料でなる絶縁膜306と

前記絶縁膜306下の前記薄膜トランジスタの活性層を構成する半導体膜302と、
で構成されていることを特徴とする。
【0039】
他の発明の構成は、図3のその実施態様の1つを示すように、
アクティブマトリクス回路(画素部)と、
該アクティブマトリクス回路を駆動するために周辺駆動回路と、
が同一基板301上に配置された表示装置を作製する方法であって、
前記アクティブマトリクス回路を構成する全てのゲイト配線と全てのソース配線とに接
続されるショートリング307を形成する工程と、
前記アクティブマトリクス回路に配置される薄膜トランジスタの不純物領域319〜3
21、300を不純物イオンの注入によって形成する工程と、
該工程と同時に前記ショートリング307をマスクとして不純物イオンを前記ショート
リング下の半導体層302に注入し、前記ショートリング部に容量を形成する工程と、
を有することを特徴とする。
【0040】
上記構成においては、絶縁膜306を介して電極(ショートリング)307と半導体領
域322とが対向する部分で容量が形成される。この容量は、電気パルスを吸収するため
の保護容量として機能する。
【0041】
他の発明の構成は、図3にその実施態様の1つを示すように、
アクティブマトリクス型の表示装置の作製方法であって、
ショートリング307の下部に薄膜半導体層302が形成され、前記薄膜半導体層30
2を利用して容量を形成する工程を有することを特徴とする。
他の発明の構成は、図3にその実施態様の1つを示すように、
アクティブマトリクス型の表示装置の作製方法であって、
ショートリング307の下部に薄膜半導体層302が存在し、アクティブマトリクス回
路に配置される薄膜トランジスタの不純物領域319〜321、300を形成する工程と
同時に前記薄膜半導体層302を利用して容量を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0042】
本明細書に開示する発明を利用することにより、各種静電破壊による不良の発生を抑制
し、液晶パネルの生産歩留りを向上させることができる。この技術は、アクティブマトリ
クス型の液晶表示装置のみではなく、他のアクティブマトリクス型を有するフラットパネ
ルディスプレイに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】アクティブマトリクス型の液晶パネルの概要を示す図。
【図2】アティブマトリクス回路とそれに接続されたショートリングとを示す拡大図。
【図3】アクティブマトリクス型の液晶パネルの作製工程を示す断面図。
【図4】基板上に形成された微細なパターンを示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1に示すアクティブマトリクス型の液晶表示装置の作製工程において、100にその
拡大図を示すアクティブマトリクス回路108と、周辺駆動回路104や105とを囲む
ようにしてショートリング102を配置する。このショートリング102は、アクティブ
マトリクス回路を構成する格子状に配置されたソース線110とゲイト線111の全てに
接続される。
【0045】
そしてこのショートリング102を一方の電極として、薄膜トランジスタの活性層を構
成するのに用いる半導体を用いてMOS容量107が配置される。このMOS容量107
は、外部から誘起されるパルス電圧を吸収する役割を有した保護容量となる。
【0046】
また、ショートリング102とアクティブマトリクス回路108との間に放電パターン
112を配置する。この放電パターン112は、104と105で示される周辺駆動回路
とアクティブマトリクス回路108との間にも配置される。
【0047】
さらにショートリング102と周辺駆動回路104及び105との間にも放電パターン
103及び106が配置される。これらの放電パターンは、ショートリングに誘起された
パルス電圧を放電させ、各回路に電気パルスが侵入することを抑制する役割を有している

【0048】
これらの放電パターンは、例えば図2の203で示されるような形状を有している。こ
れらの放電パターンは、ショートリングの形成と同時に形成され、かつ必要に応じて電気
的に相互に接続される。
【0049】
また放電パターンのピッチは、回路の配線パターンのピッチより短くすることが有効で
ある。このようにすると、回路中において局在的な放電を行うような電気パルスを予め放
電パターンにおいて放電させることができる。
【実施例1】
【0050】
本実施例では、本明細書に開示する発明を利用したアクティブマトリクス型の液晶表示
装置のアクティブマトリクス回路が形成される基板側の作製工程の概略を示す。
【0051】
図3にアクティブマトリクス基板側の作製工程の概略を示す。図3には、画素部に配置
されるNチャネル型の薄膜トランジスタと、周辺回路部に配置されるP及びNチャネル型
の薄膜トランジスタと、ショートリングが形成される部分に配置される保護容量(電気パ
ルスを吸収するための容量)と、を同一基板上に同時に形成する工程が示されている。
【0052】
まず図3(A)に示すガラス基板301上に下地膜として図示しない酸化珪素膜、また
は酸化窒化珪素膜を成膜する。基板301としては、石英基板を利用することもできる。
【0053】
図示しない下地膜を成膜したら、後に薄膜トランジスタの活性層や容量を構成すること
になる珪素膜の形成を行う。
【0054】
ここでは、プラズマCVD法または減圧熱CVD法により、まず非晶質珪素膜を成膜す
る。さらに、加熱処理及び/またはレーザー光の照射により、この非晶質珪素膜を結晶化
させ、図示しない結晶性珪素膜を得る。
【0055】
そしてこの図示しない結晶性珪素膜をパターニングすることにより、302〜305で
示されるパターンを形成する。
【0056】
ここで、302はショートリング部に形成される保護容量の一方の電極を構成すること
になる半導体パターンである。
【0057】
また、303と304とが周辺駆動回路に配置されるPチャネル型の薄膜トランジスタ
とNチャネル型の薄膜トランジスタの活性層となる半導体パターンである。ここで、30
3がPチャネル型の薄膜トランジスタの活性層となる。また、304がNチャネル型の薄
膜トランジスタの活性層となる。
【0058】
また、305が画素部に配置されるNチャネル型の薄膜トランジスタの活性層となる。
この画素部に配置される薄膜トランジスタは、マトリクス状に配置された画素電極のそれ
ぞれにスイッチング用に配置される。
【0059】
こうして図3(A)に示す状態を得る。次にゲイト絶縁膜および他部において電気パル
ス吸収用の保護容量の誘電体を構成する絶縁膜306を成膜する。ここでは、絶縁膜30
6として酸化珪素膜を1000Åの厚さにプラズマCVD法を用いて成膜する。(図3(
B))
【0060】
こうして図3(B)に示す状態を得る。次にゲイト電極を構成するための図示しないア
ルミニウム膜をスパッタ法でもって成膜する。ここでは、アルミニウム膜でもってゲイト
電極を構成する例を示すが、他の金属材料や合金、さらに各種シリサイド材料を用いるこ
ともできる。
【0061】
このアルミニウム膜中には、スカンジウムを0.1 重量%含有させる。これは、後の加熱
が行われる工程において、アルミニウムの異常成長に起因するヒロックやウィスカーの発
生を抑制するためである。ヒロックやウィスカーというのは、アルミニウムの異常成長に
よって形成される針状あるいは刺状の突起物のことである。
【0062】
そしてこのアルミニウム膜をパターニングすることによって、図3(C)に示すアルミ
ニウムでなるパターン307、308、309、310を形成する。
【0063】
ここで、307はショートリングを構成するパターンである。即ち、307はショート
リングの断面を示すものといえる。
【0064】
308は周辺駆動回路部に配置されるPチャンネル型の薄膜トランジスタのゲイト電極
を構成するパターンである。309は周辺駆動回路部に配置されるNチャンネル型の薄膜
トランジスタのゲイト電極を構成するパターンである。
【0065】
さらに310は、画素部に配置されるNチャネル型の薄膜トランジスタのゲイト電極を
構成するパターンである。この画素部に配置される薄膜トランジスタのゲイト電極310
は、図2に示すようなマトリクス状に配置されたゲイト線202から延在して設けられる

【0066】
307〜310で示されるアルミニウムでなるパターンを形成したら、電解溶液中でこ
れらパターンを陽極とした陽極酸化を行う。この工程において、陽極酸化膜311、31
2、313、314が形成される。
【0067】
この陽極酸化工程においては、電解溶液として酒石酸を含んだエチレングリコール溶液
をアンモニア水で中和したものを用いる。この工程において形成される陽極酸化膜は、緻
密な膜質を有し、アルミニウム膜の表面を物理的および電気的に保護する機能を有してい
る。
【0068】
即ち、この陽極酸化膜は、物理的にはヒロックやウィスカーの発生を抑制する機能を有
し、また電気的にはアルミニウムでなるパターンの周囲からの絶縁性を高める機能を有し
ている。
【0069】
このようにして図3(C)に示す状態を得る。この状態を得た段階で不純物イオンの注
入を行う。
【0070】
まず、活性層303が形成された部分を図示しないレジストマスクで覆った状態におい
て、P(リン)イオンの注入をプラズマドーピング法でもって行う。
【0071】
この結果、ソース及びドレイン領域として機能するN型を有する不純物領域320と3
19、さらに321と300が形成される。
【0072】
また、315と316の領域もN型を有する不純物領域として形成される。このN型を
有する不純物領域315と316の少なくとも一方は、保護容量の電極となる。
【0073】
即ち、この保護容量の一方の電極は307であり、他方の電極は315または316ま
たはその両方となる。そして他部においてゲイト絶縁膜として機能する絶縁膜306がこ
の保護容量の誘電体となる。こうしてMOSキャパシタでなる保護容量がN型の薄膜トラ
ンジスタの形成と同時に自己整合的に形成される。
【0074】
次に先にPイオンが注入された領域を新たなレジストマスクでマスクして、B(ボロン
)イオンの注入を行う。この結果、Pチャネル型の薄膜トランジスタのソース領域317
及びドレイン領域318が自己整合的に形成される。
【0075】
こうして図3(C)に示す状態を得る。不純物イオンの注入が終了したら、レーザー光
の照射を行い、不純物イオンの注入が行われた領域の活性化を行う。
【0076】
その後、層間絶縁膜329として酸化珪素膜、または窒化珪素膜と酸化珪素膜の積層膜
、またはこれらの膜と樹脂膜との積層膜を成膜する。
【0077】
さらに画素部の薄膜トランジスタのドレイン領域にコンタクトホールの形成を行い、I
TOでなる画素電極330を形成する。
【0078】
次に再度のコンタクトホールの形成を行い、周辺駆動回路部のPチャネル型の薄膜トラ
ンジスタのソース電極323とドレイン電極324を形成する。また同時に周辺駆動回路
部のNチャネル型の薄膜トランジスタのソース電極326とドレイン電極325を形成す
る。また同時に画素部の薄膜トランジスタのソース電極327を形成する。これらの電極
はチタン膜とアルミニウム膜の積層膜でもって構成する。
【0079】
なお、ソース電極327は、図2に示すソース線201から延在して形成される。
【0080】
図3に示すような画素部の構成は、マトリクス状に配置された数百万以上の各画素にお
いてそれぞれ同時に形成される。
【実施例2】
【0081】
本実施例では、プラズマ放電中において局在的な電位差が誘起されることによるショー
トリングに発生する電気パルスを放電させる放電パターンについて説明する。
【0082】
図2に示すのは、格子状に配置されたソース線201とゲイト線202とを有したアク
ティブマトリクス型の液晶パネルの一方の基板側の一部である。図には、マトリクス状に
配置された薄膜トランジスタ205、206と、この薄膜トランジスタの出力によって駆
動される液晶207、208が示されている。
【0083】
図2に示すのは、薄膜トランジスタが完成し、各部の配線の形成が終了した段階である
。この段階においては、ショートリング204に各ゲイト線は接続されている。また、図
示されていないが、ショートリング204から延在した他のショートリング部分には、ソ
ース線201もそれぞれ電気的に接続されている。
【0084】
図2に示す構成においては、ショートリング204とアクティブマトリクス回路との間
を接続する配線に203で示されるような放電パターンが形成されている。
【0085】
この放電パターン203は、プラズマを用いた成膜やエッチング時において、ショート
リング204と回路部との間で生じる電位差に起因する電気パルスを放電させる機能を有
している。
【0086】
この放電パターン203の効果を高めるには、そのピッチをアクティブマトリクス回路
の画素ピッチよりも小さくすることが有効である。
【0087】
この放電パターンは、アクティブマトリクス回路の周囲を囲むように配置されている。
ここでは、アクティブマトリクス回路とショートリングとを接続する配線に203で示さ
れるような放電パターンを配置する例を示した。
【0088】
しかし、この放電パターンはどこかの配線に必ずしも接続させれている必要は必ずしも
ない。例えば、電位差を持ちそうな回路と回路の間や、回路と配線の間、さらには電位差
を持ちそうな導電性パターン同士の間に203で示されるような形状を有する放電パター
ンを配置することは有効である。
【0089】
このような場合にも何らかの原因(一般にはプラズマ工程に起因)によって生じる電位
差に起因する電気パルスをこの放電パターンが存在することで消滅させることができる。
【0090】
図4にこの放電パターンを取り入れたアクティブマトリクス型の液晶表示装置のTFT
基板の顕微鏡写真を示す。図4に示すのは、ガラス基板上に形成された微細なパターンを
示す写真である。
【0091】
図4には、左上に格子状の配線が形成されたアクティブマトリクス回路が示されている
。また、このアクティブマトリクス回路からショートリング(写真には写っていない)へ
と延在する配線が示されている。
【0092】
左上に示されるアクティブマトリクス回路において、横方向に延在するのがゲイト線で
ある。また縦方向に延在するのがソース線である。
【0093】
また図4には、ゲイト線及びソース線からアクティブマトリクス回路の外側に延在した
領域で電気パルスを放電させるための放電パターンが配置されている状態が示されている

【0094】
さらに電気パルスが侵入し易い、アクティブマトリクス回路の角の部分に隣接して放電
パターンが配置されている。この放電パターンは、写真右下のおよそ1/4強の領域を占
めている。この放電パターンは、アクティブマトリクス回路には直接接続されてはいない

【0095】
このような構成とすることで、アクティブマトリクス回路がプラズマ放電に起因する電
気パルスによってダメージを受けることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0096】
101 ガラス基板
102 ショートリング
103 放電パターン
104、105 周辺駆動回路
106 放電パターン
107 保護容量
108 アクティブマトリクス回路
100 アクティブマトリクス回路の拡大部分
110 ソース線
111 ゲイト線
112 放電パターン
201 ソース線
202 ゲイト線
203 放電パターン
204 ショートリング
205、206 薄膜トランジスタ
207、208 液晶
301 ガラス基板
302 保護容量を構成する半導体パターン
303 Pチャネル型の薄膜トランジスタの活性層
304、305 Nチャネル型の薄膜トランジスタの活性層
306 ゲイト電極と保護容量の誘電体を構成する絶縁膜
307 ショートリング
308、309、310 ゲイト電極
311、312、313 陽極酸化膜
314 陽極酸化膜
315、316 保護容量の一方の電極を形成するN型領域
317 ソース領域
318 ドレイン領域
319 ドレイン領域
320 ソース領域
321 ソース領域
300 ドレイン領域
322 半導体領域
323 ソース電極
324 ドレイン電極
325 ドレイン電極
326 ソース電極
327 ソース電極
328 ドレイン電極
329 層間絶縁膜
330 画素電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の半導体層上及び第2の半導体層上に絶縁層を有し、
前記絶縁層上にゲイト線及びショートリングを有し、
前記ゲイト線と前記ショートリングとは電気的に接続されており、
前記ゲイト線は、前記第1の半導体層と重なる領域を有し、
前記ショートリングは、第2の半導体層と重なる領域を有することを特徴とするTFT基板。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の半導体層は、前記ゲイト線と重ならない第1の不純物領域を有し、
前記第2の半導体層は、前記ショートリングと重ならない第2の不純物領域を有し、
前記第1の不純物領域の導電型は、前記第2の不純物領域の導電型と同じ導電型であることを特徴とするTFT基板。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1の半導体層は、前記ゲイト線と重ならない第1の不純物領域を有し、
前記第2の半導体層は、前記ショートリングと重ならない第2の不純物領域を有し、
前記第1の不純物領域及び前記第2の不純物領域にはリンが含まれていることを特徴とするTFT基板。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1の半導体層は、前記ゲイト線と重ならない第1の不純物領域を有し、
前記第2の半導体層は、前記ショートリングと重ならない第2の不純物領域を有し、
前記第1の不純物領域及び前記第2の不純物領域には、同一工程で添加された不純物が含まれていることを特徴とするTFT基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−182471(P2012−182471A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97341(P2012−97341)
【出願日】平成24年4月23日(2012.4.23)
【分割の表示】特願2006−327269(P2006−327269)の分割
【原出願日】平成8年2月13日(1996.2.13)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】