エンジン制御装置
【課題】荷役作業を行う産業用車両の急加速時及び急減速時において、積荷の落下や車両の転覆を防止する。
【解決手段】本発明のエンジン制御装置によれば、アクセル開度変化量、つまり運転者によるアクセルペダルの操作量が所定値よりも大きい場合には、スロットル開度はその操作量に応じて変化せず、それよりも小さく変化するように制御される。このため、急激な加減速時に産業用車両に付与される慣性力を小さくすることができ、積荷の落下や車両の転覆を防止することができる。
【解決手段】本発明のエンジン制御装置によれば、アクセル開度変化量、つまり運転者によるアクセルペダルの操作量が所定値よりも大きい場合には、スロットル開度はその操作量に応じて変化せず、それよりも小さく変化するように制御される。このため、急激な加減速時に産業用車両に付与される慣性力を小さくすることができ、積荷の落下や車両の転覆を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御装置に関し、特に荷役作業を行う産業用車両の安定走行に好適なスロットル制御を行うエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフト等の荷役作業を行う産業用車両は、その荷物の積載位置が車両の重心から離れた位置にあるため、積荷の重量によって車両に負荷されるモーメントが変化する。また、そのフォークの昇降による積荷のリフト高さによっても車両に負荷されるモーメントが大きく変化する。このため、特に重量の大きな荷物を高くリフトさせた状態では、車両に負荷されるモーメントが大きくなって車両の走行が不安定になる。
【0003】
このような産業用車両には従来、運転者によるアクセルペダルの踏み込み(アクセル操作)に連動する機械式のスロットル(以下、「メカスロットル」という)が使用されていた。しかし、このメカスロットルは運転者のアクセル操作どおりに動くため、車両が重量の大きな荷物を積んでいるときに急激なアクセル操作が行われると、車両の挙動の急激な変化により積荷の落下や車体の転覆のおそれがある。特に、車両が旋回走行をしているときに、このような急激なアクセル操作があると、その危険性が高まる。
【0004】
図11は、フォークリフトにおいてメカスロットルを採用した場合の車両の急加速時及び急減速時の問題点を表す説明図である。(A)は、車両が定常走行状態から急激にスロットルを戻した場合を表している。(B)は、車両が加速状態から急激にスロットルを戻した場合を表している。これら(A)及び(B)において、横軸は時間を表し、縦軸は上段からアクセル開度、実際のスロットル開度(「実スロットル開度」という)、車両の加速度をそれぞれ表している。また、(C)は、ステアリングの切れ角が大きい状態で急発進したときに積荷にかかる横方向の力を表している。その横軸は時間を表し、縦軸は上段からアクセル開度、実スロットル開度、積荷にかかる横方向の加速度(「横G」という)をそれぞれ表している。さらに、(D)は、車両が前傾状態でバックに急発進したときに積荷にかかる前方向の力を表している。その横軸は時間を表し、縦軸は上段からアクセル開度、実スロットル開度、積荷にかかる前方向の慣性力をそれぞれ表している。
【0005】
なお、同図において、アクセル開度等の状態量が階段状に変化しているのは、一定の周期でサンプリングした結果が示されているためである(以下同様)。
同図(A)に示すように、アクセルペダルをほぼ一定に踏み込んで車両が定常走行している状態からアクセルペダルから足を離す、又は足を離さないが急激に戻すなどしてアクセル開度が急激に減少した場合、実スロットル開度もそのアクセル開度に連動して同じ割合で急激に減少する。このとき、急激なスロットル動作により負の加速度が大きくなり、フォーク上の積荷がその慣性力により落下する可能性が高くなる。
【0006】
さらに、同図(B)に示すように、アクセルペダルの踏み込みにより車両が加速している状態から同様にアクセル開度が急激に減少した場合には、フォーク上の積荷には慣性力がより大きく作用する。このため、積荷が落下する可能性がさらに増すことになる。
【0007】
また、同図(C)に示すように、車両がステアリングを大きく切られた状態で急発進した場合には、横Gが大きくなって積荷が落下する可能性が高くなる。
さらに、同図(D)に示すように、車両が前傾状態でバックに急発進したときには、積荷には車両が平地を走行しているときよりも前方向の慣性力が加わる。このため、積荷の落下の可能性が高くなる。
【0008】
ところで、荷役車両の旋回時における荷崩れ、荷落し及び転倒事故を防止する技術としては、例えば車両の旋回状態と車速に応じてスロットルを閉じる速度を変化させて車速を制御する車速制御装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0009】
この車速制御装置は、ステアリング切れ角に応じて制限車速を設定しておき、現車速がその制限車速を超えているときに、現車速と制限車速との差速と制限車速を超えてからの時間とに基づき、スロットルを閉じる速度を変化させる。これにより、車両にショックを与えることなく、徐々に車速を低下させるものである。
【特許文献1】特許第2842875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記引用文献1に記載された技術は、荷役車両の旋回時の遠心力による荷崩れ、荷落し及び転倒事故を防止するという問題はある程度解決できるとしても、車両の急加速時及び急減速時のように車両に瞬間的に大きな慣性力が加わって積荷が落下したり車体が転覆したりすることをも防止できるものではなかった。
【0011】
なお、このような問題は、フォークリフトのみならず、荷役作業を行う車両であれば他の産業用車両ついても同様に発生し得る。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、荷役作業を行う産業用車両の急加速時及び急減速時において、積荷の落下や車両の転覆を防止することができるエンジン制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では上記問題を解決するために、荷役作業を行う産業用車両に搭載されるエンジンを制御するエンジン制御装置であって、検出したアクセル開度に基づいて、スロットル弁の開度を変化させる制御量を算出するスロットル制御量算出手段と、前記スロットル制御量算出手段によって算出された制御量に基づいてスロットル弁を制御するスロットル弁制御手段と、前記スロットル制御量算出手段は、所定時間における前記アクセル開度の変化量が所定値よりも大きい場合に、算出する制御量を減量補正する減量補正手段と、を備えたことを特徴とするエンジン制御装置が提供される。
【0013】
このようなエンジン制御装置によれば、アクセル開度変化量、つまり運転者によるアクセルペダルの操作量が所定値よりも大きい場合には、スロットル開度はその操作量に対応した割合では変化せず、それよりも小さな割合で変化するように制御される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエンジン制御装置によれば、アクセル開度変化量が所定値よりも大きい場合に、スロットル開度の変化量が小さくなるように制御される。このため、急激な加減速時に産業用車両にかかる慣性力を小さくすることができ、積荷の落下や車両の転覆を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
本実施の形態は、本発明のエンジン制御装置をフォークリフト(「産業用車両」に該当する)に適用したものである。図1は、本実施の形態のフォークリフトの全体構成を表す概略構成図である。
【0016】
フォークリフト1は、車両の前方で上下に延びるように立設されたマスト2、マスト2に沿って昇降可能に設けられたフォーク3、フォーク3の昇降を駆動したりマスト2の前後方向の揺動を駆動したりする所定の駆動機構等を備える。運転者は、運転席の前方に設けられたステアリング4や操作レバー5を操作することにより、車両の運転及びフォーク3への荷物の積み下ろしを行う。車両の各部にはエンジン制御のための後述する各種センサが配設され、車両の内部には、エンジン6及びこれを制御するための電子制御装置(Electronic Control Unit:以下「ECU」という)7が設けられている。本実施の形態では、このECU7がエンジン制御装置を構成する。
【0017】
図2は、ECU及びその入出力を表すブロック図である。
ECU7は、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、各種の制御演算プログラムやデータを格納したROM(Read Only Memory)、演算過程の数値やフラグが所定領域に格納されるRAM(Random Access Memory)、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D(Analog/Digital)コンバータ、各種デジタル信号が入出力される入出力インタフェース、及びこれら各機器がそれぞれ接続されるバスラインなどを備えている。
【0018】
ECU7は、エンジン6を含む車両の状態を検出する各種センサからの出力信号を取り込んでエンジン制御のための制御量を演算し、エンジン6に設けられた各種アクチュエータにその制御量に基づく駆動信号を出力する。
【0019】
すなわち、ECU7には、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ11、運転者によるアクセルペダルの操作量を検出するアクセル開度センサ12、後述する電子スロットルの開度を検出するスロットル開度センサ13、ステアリング4の切れ角を検出する操舵角センサ14、フォーク3に積載された積荷の重量を検出する積荷重量センサ15、フォーク3のリフト高さを検出するリフト高低度センサ16、車両の水平方向に対する傾きを検出する傾斜センサ17、変速機による現在のシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ18、イグニッションスイッチ19、パワーステアリングの油圧ポンプを駆動させるパワステスイッチ20などのセンサ・スイッチ類が接続されている。
【0020】
また、ECU7には、気筒毎に設けられて燃料を供給するインジェクタ21、燃料タンクから燃料を汲み上げてインジェクタ21に供給する燃料ポンプ22、気筒毎に点火用の高電圧を生成するイグナイタ23、図示しないスロットル弁の開度を制御して吸入空気量を調整する電子スロットル24、エンジン6をクランキングさせるスタータモータ25などの各種アクチュエータが接続されている。ECU7は、ROMに格納された制御プログラムにしたがって所定の制御演算処理を行う。
【0021】
次に、本実施の形態のエンジン制御方法について説明する。なお、このエンジン制御方法は、アクセル開度に基づくスロットル開度の制御(「スロットル制御」という)に特徴がある。このため、ここではスロットル制御についてのみ説明し、燃料噴射制御、点火時期制御等その他の制御については説明を省略する。
【0022】
図3は、車両の減速時を例にスロットル制御の概略を表した説明図である。同図において、横軸は時間を表し、縦軸は上段からアクセル開度、アクセル開度変化量、実スロットル開度をそれぞれ表している。
【0023】
このスロットル制御は、概略的には、アクセル開度変化量を算出し、その変化量が予め設定したスロットル変化量限界値(「所定値」に該当する)よりも大きければ、スロットル開度の制御量をそのスロットル変化量限界値に制限して除変させるものである。このスロットル変化量限界値は、それを超えると積荷の落下や車両の転覆が発生する可能性が高くなるスロットル開度の変化量として設定されるものである。つまり、スロットル変化量限界値は、安定した車両の走行と安全な荷役作業を確保するために設定されたスロットル開度の変化量の限界値であり、車両の状態に応じて適宜設定される。
【0024】
なお、ここでは、「スロットル開度の変化量」と「アクセル開度変化量」とが、各制御量の割合(つまり、最大制御量に対する割合:%)として対比されているため、両者を直接対応させている。しかし、両者を各制御量の絶対値として対比する場合には、アクセル開度変化量がスロットル変化量限界値に対応した変化量よりも大きいときに、スロットル開度の制御量をスロットル変化量限界値に制限して除変させることになる。
【0025】
ここでは、車両が定常走行しているときのように、アクセル開度変化量がスロットル変化量限界値以下であれば、アクセル開度に連動した(つまり、アクセル開度の変化の割合に対応した)スロットル開度を目標制御量としたスロットル制御が行われる。このため、実スロットル開度は、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応して変化する。
【0026】
一方、車両の急減速によりアクセル開度変化量がスロットル変化量限界値を超えると、スロットル変化量限界値を変化量とするスロットル開度を目標制御量としたスロットル制御が行われる。このため、図示のように、実スロットル開度は、アクセル開度変化量よりも小さな割合で減少する。ただし、最終的には運転者によるアクセルペダルの操作量に対応したスロットル開度を実現するために、アクセル開度がゼロ等の一定値に収束した後も、スロットル開度はそのスロットル変化量限界値に対応した変化量で減少していく。つまり、実スロットル開度は、アクセル開度の総変化量に対応したスロットル開度まで変化を継続する。このように、実スロットル開度の変化量をスロットル変化量限界値でガードすることにより、急減速による車両の急激な挙動の変化を防止するようにしている。
【0027】
なお、同図においては車両の急減速時のスロットル制御について示したが、急加速時についてもアクセル開度及びスロットル開度の変化の方向が逆になる点を除いて基本的には同様の制御が行われる。このため、車両の急加速時のスロットル制御については、その説明を省略する。
【0028】
次に、本実施の形態のスロットル制御処理の流れについて説明する。
図4は、ECUが実行するスロットル制御処理の全体の流れを表すフローチャートである。この処理は、エンジン6が始動を開始してから停止するまで繰り返し実行される。以下、この処理の流れを、ステップ番号(以下「S」で表記する)を用いて説明する。
【0029】
ECU7は、まず、アクセル開度センサ12からの入力信号に基づいて現在のアクセル開度を算出する(S1)。続いて、前回算出したアクセル開度の値を用いてアクセル開度変化量を算出し(S2)、その変化量が正であるか負であるかを判断する(S3)。このとき、アクセル開度変化量が負であれば、後述する減速時処理を実行し(S4)、アクセル開度変化量が正であれば、後述する加速時処理を実行する(S5)。アクセル開度変化量がゼロであれば、そのまま処理を終了する。
【0030】
図5は、スロットル制御において実行される減速時処理の流れを表すフローチャートである。また、図6は、減速時処理に用いられる制御マップを表す説明図である。(A)は、車両が定常走行から急減速したときに用いる制御マップである。(B)は、車両が加速状態から急減速したときに用いる制御マップである。各図の横軸はアクセル開度変化量を表し、縦軸がスロットル変化量限界値の算出のベースとなるガード値(「基本ガード値」という)を表している。さらに、図7は、車両の状態に応じたスロットル変化量限界値を算出するために、上記基本ガード値を補正するための補正係数を算出するための補正マップである。(A)は、積荷の重量をパラメータとした補正係数である積荷重項係数K1を表している。(B)は、フォーク3のリフト高さをパラメータとした補正係数であるリフト高さ項係数K2を表している。さらに、(C)は、車体の傾斜角をパラメータとした補正係数である傾斜項係数K3を表している。
【0031】
図5に示すように、減速時処理においては、まず、積荷重量センサ15からの入力信号に基づいて、現在積荷があるか否かを判断する(S11)。
このとき、積荷があると判断すると(S11:YES)、続いて、前回のアクセル開度変化量が正であるか否かを判断する(S12)。このとき、前回のアクセル開度変化量がゼロ又は負であれば(S12:NO)、図6(A)の制御マップに基づき、基本ガード値1を算出する(S13)。この基本ガード値1は、車両が定常走行から減速又は減速状態からさらに減速したときのガード値であり、アクセル開度変化量が大きくなるにしたがって小さくなる。これは、アクセル開度変化量が大きくなるほど急減速の程度が大きくなるため、基本ガード値を小さくしてスロットル開度の変化量をより制限するようにし、車両へのショックが大きくならないようにするものである。これにより、積荷の落下や車両の転覆が防止される。
【0032】
一方、前回のアクセル開度変化量が正であれば(S12:YES)、図6(B)の制御マップに基づき、基本ガード値2を算出する(S14)。この基本ガード値2は、車両が加速状態から急に減速したときのガード値である。この場合、車両にかかる慣性力がさらに大きくなるため、積荷の落下や車両の転覆を防止するためには、基本ガード値をより厳しくする必要がある。このため、図示のように、アクセル開度変化量に対して基本ガード値2を基本ガード値1よりも小さく設定し、スロットル変化量限界値をより制限するようにしている。
【0033】
続いて、以上のようにして算出した基本ガード値に対して、車両の状態に基づく補正を行う。これは、車両及びその積荷にかかる慣性力がその減速度だけでなく、フォーク3への積荷の積載状況や車両の走行環境によっても変化することを考慮したものである。
【0034】
まず、積荷重量センサ15からの入力信号に基づいて現在の積荷の重量を算出し、図7(A)の補正マップを用いて積荷重項係数K1を算出する(S15)。積荷の重量が大きくなるほど車両の走行が不安定になるため、積荷重項係数K1は、積荷の重量が大きくなるほど小さくなり、基本ガード値を小さく補正してスロットル変化量限界値をより制限するようにしている。
【0035】
続いて、リフト高低度センサ16からの入力信号に基づいて現在のフォーク3のリフト高さを算出し、同図(B)の補正マップを用いてリフト高さ項係数K2を算出する(S16)。フォーク3のリフト高さが高くなるほど車両の走行が不安定になるため、リフト高さ項係数K2は、フォーク3のリフト高さが高くなるほど小さくなり、基本ガード値を小さく補正してスロットル変化量限界値をより制限するようにしている。
【0036】
さらに、傾斜センサ17からの入力信号に基づいて現在の車体の傾斜角を算出し、同図(C)の補正マップを用いて傾斜項係数K3を算出する(S17)。車体の傾斜角が大きくなるほど車両の走行が不安定になるため、傾斜項係数K3は、車体の傾斜角が大きくなるほど小さくなり、基本ガード値を小さく補正してスロットル変化量限界値をより制限するようにしている。
【0037】
そして、スロットル変化量限界値を算出する(S18)。このスロットル変化量限界値は、積荷重項係数K1、リフト高さ項係数K2及び傾斜項係数K3を用いて下記式(1)から算出される。
【0038】
スロットル変化量限界値=基本ガード値(1又は2)×K1×K2×K3・・・(1)
続いて、アクセル開度変化量がこの減速時のスロットル変化量限界値以上であるか否かを判断する(S19)。このとき、アクセル開度変化量がスロットル変化量限界値以上である場合には(S19:YES)、スロットル開度の目標制御量(「スロットル開度制御量」という)をこのスロットル変化量限界値に対応した変化量となるように設定し(S20)、その目標制御量を実現するように電子スロットルを駆動(通電)する(S22)。
【0039】
一方、S11において積荷がないと判断した場合(S11:NO)、及びS19においてアクセル開度変化量がスロットル変化量限界値よりも小さいと判断した場合には(S19:NO)、スロットル開度制御量を現在のアクセル開度に対応したスロットル開度の変化量となるように設定し(S21)、その目標制御量を実現するように電子スロットルを駆動(通電)する(S22)。
【0040】
図8は、スロットル制御において実行される加速時処理の流れを表すフローチャートである。また、図9は、加速時処理に用いられる制御マップを表す説明図である。(A)は、車両がRレンジ(バック)でステアリングが切れているときに加速した場合に用いる制御マップである。(B)は、車両がRレンジでステアリングが切れていないときに加速した場合に用いる制御マップである。両図において、横軸はアクセル開度変化量を表し、縦軸が基本ガード値を表している。さらに、(C)は、車両が直進でステアリングが切れているときに急発進した場合に用いる制御マップである。同図の横軸は車体の傾斜角を表し、縦軸が基本ガード値を表している。さらに、図10は、車両の状態に応じたスロットル変化量限界値を算出するために、上記基本ガード値を補正するための補正係数を算出するための補正マップである。(A)は、積荷の重量をパラメータとした補正係数である積荷重項係数K4を表している。(B)は、車体の傾斜角をパラメータとした補正係数である傾斜項係数K5を表している。
【0041】
図8に示すように、加速時処理においては、まず、積荷重量センサ15からの入力信号に基づいて、現在積荷があるか否かを判断する(S31)。
このとき、積荷があると判断すると(S31:YES)、続いて、シフトポジションセンサ18からの入力信号に基づいて、現在のシフトポジションがRレンジ(バック)であるか否かを判断する(S32)。このとき、シフトポジションがRレンジであると判断すると(S32:YES)、続いて、操舵角センサ14からの入力信号に基づいてステアリングの切れ角があるか否かを判断する(S33)。このとき、ステアリングの切れ角があると判断すると(S33:YES)、図9(A)の制御マップに基づき、基本ガード値3を算出する(S34)。この基本ガード値3は、車両が後進してステアリングを切った状態で加速しているときのガード値であり、アクセル開度変化量が大きくなるにしたがって小さくなる。これは、アクセル開度変化量が大きくなるほど急加速の程度が大きくなり、車両にかかる遠心力が大きくなるため、基本ガード値を小さくしてスロットル開度の変化量をより制限するようにし、積荷の落下や車両の転覆を防止するものである。
【0042】
一方、S33において、ステアリングの切れ角がないと判断した場合には(S33:NO)、図9(B)の制御マップに基づき、基本ガード値4を算出する(S35)。この基本ガード値4は、車両が後方に直進する状態で加速しているときのガード値であるが、ステアリングが切られていない分、積荷の落下や車両の転覆の危険性が下がるため、ガード値をより緩やかにしている。
【0043】
また、S32において、シフトポジションがRレンジでないと判断した場合には(S32:NO)、続いて、ステアリングの切れ角があるか否かを判断する(S36)。このとき、ステアリングの切れ角があると判断すると(S36:YES)、図9(C)の制御マップに基づき、基本ガード値5を算出する(S37)。この基本ガード値5は、車両がステアリングを切った状態で加速しているときのガード値であるが、前進であるために積荷がフォーク3に後方から支持されて落下する可能性が小さいため、ガード値をさらに大きくしてスロットル変化量限界値をより緩やかにしたものである。
【0044】
続いて、以上のようにして算出した基本ガード値に対して、車両の状態に基づく補正を行う。これは、減速時処理と同様に、フォーク3への積荷の積載状況や車両の走行環境によっても変化することを考慮したものである。
【0045】
まず、積荷重量センサ15からの入力信号に基づいて現在の積荷の重量を算出し、図10(A)の補正マップを用いて後進時の積荷重項係数K4を算出する(S38a)。同様に前進時の積荷重項係数K4を算出する(S38b)。なお、前進時と後進時の積荷重項係数K4を同じ補正マップを用いて算出してもよい。この場合、積荷の重量が大きくなりすぎると、その遠心力で車両が転覆する可能性が高くなるため、積荷重項係数K4は、基本的に積荷の重量が大きくなるほど大きくなるが、所定重量を超えると小さくなるようにしている。
【0046】
続いて、傾斜センサ17からの入力信号に基づいて現在の車体の傾斜角を算出し、同図(B)の補正マップを用いて傾斜項係数K5を算出する(S39)。車体の傾斜角が大きくなるほど車両にかかる慣性力の影響が大きくなるため、傾斜項係数K5は、車体の傾斜角が大きくなるほど小さくなり、基本ガード値を小さく補正してスロットル変化量限界値をより制限するようにしている。
【0047】
そして、スロットル変化量限界値を算出する(S40)。このスロットル変化量限界値は、積荷重項係数K4及び傾斜項係数K5を用いて下記式(2)から算出される。
スロットル変化量限界値=基本ガード値(3,4又は5)×K4×K5・・・(2)
続いて、アクセル開度変化量がこの減速時のスロットル変化量限界値以上であるか否かを判断する(S41)。このとき、アクセル開度変化量がスロットル変化量限界値以上である場合には(S41:YES)、スロットル開度制御量をこのスロットル変化量限界値に対応した変化量となるように設定し(S42)、その目標制御量を実現するように電子スロットルを駆動(通電)する(S44)。
【0048】
一方、S31において積荷がないと判断した場合(S31:NO)、S36においてステアリングの切れ角がないと判断した場合(S36:NO)、及びS41においてアクセル開度変化量がスロットル変化量限界値よりも小さいと判断した場合には(S41:NO)、スロットル開度制御量を現在のアクセル開度に対応したスロットル開度の変化量となるように設定し(S43)、その目標制御量を実現するように電子スロットルを駆動(通電)する(S44)。
【0049】
以上に説明したように、本実施の形態のエンジン制御装置によれば、アクセル開度変化量、つまり運転者によるアクセルペダルの操作量がスロットル変化量限界値よりも大きい場合には、スロットル開度はその操作量に応じて変化せず、それよりも小さいスロットル変化量限界値で変化するように制御される。このため、急激な加減速時に産業用車両にかかる慣性力を小さくすることができ、積荷の落下や車両の転覆を防止することができる。
【0050】
なお、上記実施の形態では、図3に示したように、アクセル開度変化量がスロットル変化量限界値よりも大きい場合に、スロットル開度の制御量を除変させる代わりに、アクセル開度がゼロ等に収束した後も、そのスロットル開度の除変を継続させるようにした。しかし、スロットル開度の意図しない除変が運転者に違和感を与えるような場合、つまり除変時間が体感できるような長さである場合には、アクセル開度がゼロ等に収束したとほぼ同時にスロットル開度の変化も収束させるようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、スロットル変化量限界値を、安定した車両の走行と安全な荷役作業を確保するために設定されたスロットル開度の変化量の限界値としたが、その限界値は、積荷の落下や車両の転覆が発生しないぎりぎりの限界値であってもよいし、そのぎりぎりの限界値に所定の安全率をかけた限界値であってもよい。
【0052】
また、上記実施の形態では、図8にてステアリングの切れ角の有無を操舵角センサ14からの入力信号に基づいて判断した例を示したが、パワステスイッチ20がオンにされているか否かにより判断するようにしてもよい。すなわち、パワステスイッチ20は、ステアリングが所定の微小角度切られたときに自動的にオンされるものであるため、その出力信号に基づいてステアリングの切れ角があると判断する。このようにすれば、操舵角センサ14を省略してコストを削減することも可能になる。
【0053】
さらに、上記実施の形態では、本発明のエンジン制御装置をフォークリフトに適用した例を示したが、本発明は、荷役作業を行うフォークリフト以外の他の産業用車両に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態のフォークリフトの全体構成を表す概略構成図である。
【図2】ECU及びその入出力を表すブロック図である。
【図3】車両の減速時を例にスロットル制御の概略を表した説明図である。
【図4】ECUが実行するスロットル制御処理の全体の流れを表すフローチャートである。
【図5】スロットル制御において実行される減速時処理の流れを表すフローチャートである。
【図6】減速時処理に用いられる制御マップを表す説明図である。
【図7】車両の状態に応じたスロットル変化量限界値を算出するために、上記基本ガード値を補正するための補正係数を算出するための補正マップである。
【図8】スロットル制御において実行される加速時処理の流れを表すフローチャートである。
【図9】加速時処理に用いられる制御マップを表す説明図である。
【図10】車両の状態に応じたスロットル変化量限界値を算出するために、上記基本ガード値を補正するための補正係数を算出するための補正マップである。
【図11】フォークリフトにおいてメカスロットルを採用した場合の車両の急加速時及び急減速時の問題点を表す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 フォークリフト
3 フォーク
4 ステアリング
6 エンジン
7 ECU
12 アクセル開度センサ
14 操舵角センサ
15 積荷重量センサ
16 リフト高低度センサ
17 傾斜センサ
18 シフトポジションセンサ
24 電子スロットル
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御装置に関し、特に荷役作業を行う産業用車両の安定走行に好適なスロットル制御を行うエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフト等の荷役作業を行う産業用車両は、その荷物の積載位置が車両の重心から離れた位置にあるため、積荷の重量によって車両に負荷されるモーメントが変化する。また、そのフォークの昇降による積荷のリフト高さによっても車両に負荷されるモーメントが大きく変化する。このため、特に重量の大きな荷物を高くリフトさせた状態では、車両に負荷されるモーメントが大きくなって車両の走行が不安定になる。
【0003】
このような産業用車両には従来、運転者によるアクセルペダルの踏み込み(アクセル操作)に連動する機械式のスロットル(以下、「メカスロットル」という)が使用されていた。しかし、このメカスロットルは運転者のアクセル操作どおりに動くため、車両が重量の大きな荷物を積んでいるときに急激なアクセル操作が行われると、車両の挙動の急激な変化により積荷の落下や車体の転覆のおそれがある。特に、車両が旋回走行をしているときに、このような急激なアクセル操作があると、その危険性が高まる。
【0004】
図11は、フォークリフトにおいてメカスロットルを採用した場合の車両の急加速時及び急減速時の問題点を表す説明図である。(A)は、車両が定常走行状態から急激にスロットルを戻した場合を表している。(B)は、車両が加速状態から急激にスロットルを戻した場合を表している。これら(A)及び(B)において、横軸は時間を表し、縦軸は上段からアクセル開度、実際のスロットル開度(「実スロットル開度」という)、車両の加速度をそれぞれ表している。また、(C)は、ステアリングの切れ角が大きい状態で急発進したときに積荷にかかる横方向の力を表している。その横軸は時間を表し、縦軸は上段からアクセル開度、実スロットル開度、積荷にかかる横方向の加速度(「横G」という)をそれぞれ表している。さらに、(D)は、車両が前傾状態でバックに急発進したときに積荷にかかる前方向の力を表している。その横軸は時間を表し、縦軸は上段からアクセル開度、実スロットル開度、積荷にかかる前方向の慣性力をそれぞれ表している。
【0005】
なお、同図において、アクセル開度等の状態量が階段状に変化しているのは、一定の周期でサンプリングした結果が示されているためである(以下同様)。
同図(A)に示すように、アクセルペダルをほぼ一定に踏み込んで車両が定常走行している状態からアクセルペダルから足を離す、又は足を離さないが急激に戻すなどしてアクセル開度が急激に減少した場合、実スロットル開度もそのアクセル開度に連動して同じ割合で急激に減少する。このとき、急激なスロットル動作により負の加速度が大きくなり、フォーク上の積荷がその慣性力により落下する可能性が高くなる。
【0006】
さらに、同図(B)に示すように、アクセルペダルの踏み込みにより車両が加速している状態から同様にアクセル開度が急激に減少した場合には、フォーク上の積荷には慣性力がより大きく作用する。このため、積荷が落下する可能性がさらに増すことになる。
【0007】
また、同図(C)に示すように、車両がステアリングを大きく切られた状態で急発進した場合には、横Gが大きくなって積荷が落下する可能性が高くなる。
さらに、同図(D)に示すように、車両が前傾状態でバックに急発進したときには、積荷には車両が平地を走行しているときよりも前方向の慣性力が加わる。このため、積荷の落下の可能性が高くなる。
【0008】
ところで、荷役車両の旋回時における荷崩れ、荷落し及び転倒事故を防止する技術としては、例えば車両の旋回状態と車速に応じてスロットルを閉じる速度を変化させて車速を制御する車速制御装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0009】
この車速制御装置は、ステアリング切れ角に応じて制限車速を設定しておき、現車速がその制限車速を超えているときに、現車速と制限車速との差速と制限車速を超えてからの時間とに基づき、スロットルを閉じる速度を変化させる。これにより、車両にショックを与えることなく、徐々に車速を低下させるものである。
【特許文献1】特許第2842875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記引用文献1に記載された技術は、荷役車両の旋回時の遠心力による荷崩れ、荷落し及び転倒事故を防止するという問題はある程度解決できるとしても、車両の急加速時及び急減速時のように車両に瞬間的に大きな慣性力が加わって積荷が落下したり車体が転覆したりすることをも防止できるものではなかった。
【0011】
なお、このような問題は、フォークリフトのみならず、荷役作業を行う車両であれば他の産業用車両ついても同様に発生し得る。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、荷役作業を行う産業用車両の急加速時及び急減速時において、積荷の落下や車両の転覆を防止することができるエンジン制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では上記問題を解決するために、荷役作業を行う産業用車両に搭載されるエンジンを制御するエンジン制御装置であって、検出したアクセル開度に基づいて、スロットル弁の開度を変化させる制御量を算出するスロットル制御量算出手段と、前記スロットル制御量算出手段によって算出された制御量に基づいてスロットル弁を制御するスロットル弁制御手段と、前記スロットル制御量算出手段は、所定時間における前記アクセル開度の変化量が所定値よりも大きい場合に、算出する制御量を減量補正する減量補正手段と、を備えたことを特徴とするエンジン制御装置が提供される。
【0013】
このようなエンジン制御装置によれば、アクセル開度変化量、つまり運転者によるアクセルペダルの操作量が所定値よりも大きい場合には、スロットル開度はその操作量に対応した割合では変化せず、それよりも小さな割合で変化するように制御される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエンジン制御装置によれば、アクセル開度変化量が所定値よりも大きい場合に、スロットル開度の変化量が小さくなるように制御される。このため、急激な加減速時に産業用車両にかかる慣性力を小さくすることができ、積荷の落下や車両の転覆を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
本実施の形態は、本発明のエンジン制御装置をフォークリフト(「産業用車両」に該当する)に適用したものである。図1は、本実施の形態のフォークリフトの全体構成を表す概略構成図である。
【0016】
フォークリフト1は、車両の前方で上下に延びるように立設されたマスト2、マスト2に沿って昇降可能に設けられたフォーク3、フォーク3の昇降を駆動したりマスト2の前後方向の揺動を駆動したりする所定の駆動機構等を備える。運転者は、運転席の前方に設けられたステアリング4や操作レバー5を操作することにより、車両の運転及びフォーク3への荷物の積み下ろしを行う。車両の各部にはエンジン制御のための後述する各種センサが配設され、車両の内部には、エンジン6及びこれを制御するための電子制御装置(Electronic Control Unit:以下「ECU」という)7が設けられている。本実施の形態では、このECU7がエンジン制御装置を構成する。
【0017】
図2は、ECU及びその入出力を表すブロック図である。
ECU7は、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、各種の制御演算プログラムやデータを格納したROM(Read Only Memory)、演算過程の数値やフラグが所定領域に格納されるRAM(Random Access Memory)、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D(Analog/Digital)コンバータ、各種デジタル信号が入出力される入出力インタフェース、及びこれら各機器がそれぞれ接続されるバスラインなどを備えている。
【0018】
ECU7は、エンジン6を含む車両の状態を検出する各種センサからの出力信号を取り込んでエンジン制御のための制御量を演算し、エンジン6に設けられた各種アクチュエータにその制御量に基づく駆動信号を出力する。
【0019】
すなわち、ECU7には、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ11、運転者によるアクセルペダルの操作量を検出するアクセル開度センサ12、後述する電子スロットルの開度を検出するスロットル開度センサ13、ステアリング4の切れ角を検出する操舵角センサ14、フォーク3に積載された積荷の重量を検出する積荷重量センサ15、フォーク3のリフト高さを検出するリフト高低度センサ16、車両の水平方向に対する傾きを検出する傾斜センサ17、変速機による現在のシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ18、イグニッションスイッチ19、パワーステアリングの油圧ポンプを駆動させるパワステスイッチ20などのセンサ・スイッチ類が接続されている。
【0020】
また、ECU7には、気筒毎に設けられて燃料を供給するインジェクタ21、燃料タンクから燃料を汲み上げてインジェクタ21に供給する燃料ポンプ22、気筒毎に点火用の高電圧を生成するイグナイタ23、図示しないスロットル弁の開度を制御して吸入空気量を調整する電子スロットル24、エンジン6をクランキングさせるスタータモータ25などの各種アクチュエータが接続されている。ECU7は、ROMに格納された制御プログラムにしたがって所定の制御演算処理を行う。
【0021】
次に、本実施の形態のエンジン制御方法について説明する。なお、このエンジン制御方法は、アクセル開度に基づくスロットル開度の制御(「スロットル制御」という)に特徴がある。このため、ここではスロットル制御についてのみ説明し、燃料噴射制御、点火時期制御等その他の制御については説明を省略する。
【0022】
図3は、車両の減速時を例にスロットル制御の概略を表した説明図である。同図において、横軸は時間を表し、縦軸は上段からアクセル開度、アクセル開度変化量、実スロットル開度をそれぞれ表している。
【0023】
このスロットル制御は、概略的には、アクセル開度変化量を算出し、その変化量が予め設定したスロットル変化量限界値(「所定値」に該当する)よりも大きければ、スロットル開度の制御量をそのスロットル変化量限界値に制限して除変させるものである。このスロットル変化量限界値は、それを超えると積荷の落下や車両の転覆が発生する可能性が高くなるスロットル開度の変化量として設定されるものである。つまり、スロットル変化量限界値は、安定した車両の走行と安全な荷役作業を確保するために設定されたスロットル開度の変化量の限界値であり、車両の状態に応じて適宜設定される。
【0024】
なお、ここでは、「スロットル開度の変化量」と「アクセル開度変化量」とが、各制御量の割合(つまり、最大制御量に対する割合:%)として対比されているため、両者を直接対応させている。しかし、両者を各制御量の絶対値として対比する場合には、アクセル開度変化量がスロットル変化量限界値に対応した変化量よりも大きいときに、スロットル開度の制御量をスロットル変化量限界値に制限して除変させることになる。
【0025】
ここでは、車両が定常走行しているときのように、アクセル開度変化量がスロットル変化量限界値以下であれば、アクセル開度に連動した(つまり、アクセル開度の変化の割合に対応した)スロットル開度を目標制御量としたスロットル制御が行われる。このため、実スロットル開度は、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応して変化する。
【0026】
一方、車両の急減速によりアクセル開度変化量がスロットル変化量限界値を超えると、スロットル変化量限界値を変化量とするスロットル開度を目標制御量としたスロットル制御が行われる。このため、図示のように、実スロットル開度は、アクセル開度変化量よりも小さな割合で減少する。ただし、最終的には運転者によるアクセルペダルの操作量に対応したスロットル開度を実現するために、アクセル開度がゼロ等の一定値に収束した後も、スロットル開度はそのスロットル変化量限界値に対応した変化量で減少していく。つまり、実スロットル開度は、アクセル開度の総変化量に対応したスロットル開度まで変化を継続する。このように、実スロットル開度の変化量をスロットル変化量限界値でガードすることにより、急減速による車両の急激な挙動の変化を防止するようにしている。
【0027】
なお、同図においては車両の急減速時のスロットル制御について示したが、急加速時についてもアクセル開度及びスロットル開度の変化の方向が逆になる点を除いて基本的には同様の制御が行われる。このため、車両の急加速時のスロットル制御については、その説明を省略する。
【0028】
次に、本実施の形態のスロットル制御処理の流れについて説明する。
図4は、ECUが実行するスロットル制御処理の全体の流れを表すフローチャートである。この処理は、エンジン6が始動を開始してから停止するまで繰り返し実行される。以下、この処理の流れを、ステップ番号(以下「S」で表記する)を用いて説明する。
【0029】
ECU7は、まず、アクセル開度センサ12からの入力信号に基づいて現在のアクセル開度を算出する(S1)。続いて、前回算出したアクセル開度の値を用いてアクセル開度変化量を算出し(S2)、その変化量が正であるか負であるかを判断する(S3)。このとき、アクセル開度変化量が負であれば、後述する減速時処理を実行し(S4)、アクセル開度変化量が正であれば、後述する加速時処理を実行する(S5)。アクセル開度変化量がゼロであれば、そのまま処理を終了する。
【0030】
図5は、スロットル制御において実行される減速時処理の流れを表すフローチャートである。また、図6は、減速時処理に用いられる制御マップを表す説明図である。(A)は、車両が定常走行から急減速したときに用いる制御マップである。(B)は、車両が加速状態から急減速したときに用いる制御マップである。各図の横軸はアクセル開度変化量を表し、縦軸がスロットル変化量限界値の算出のベースとなるガード値(「基本ガード値」という)を表している。さらに、図7は、車両の状態に応じたスロットル変化量限界値を算出するために、上記基本ガード値を補正するための補正係数を算出するための補正マップである。(A)は、積荷の重量をパラメータとした補正係数である積荷重項係数K1を表している。(B)は、フォーク3のリフト高さをパラメータとした補正係数であるリフト高さ項係数K2を表している。さらに、(C)は、車体の傾斜角をパラメータとした補正係数である傾斜項係数K3を表している。
【0031】
図5に示すように、減速時処理においては、まず、積荷重量センサ15からの入力信号に基づいて、現在積荷があるか否かを判断する(S11)。
このとき、積荷があると判断すると(S11:YES)、続いて、前回のアクセル開度変化量が正であるか否かを判断する(S12)。このとき、前回のアクセル開度変化量がゼロ又は負であれば(S12:NO)、図6(A)の制御マップに基づき、基本ガード値1を算出する(S13)。この基本ガード値1は、車両が定常走行から減速又は減速状態からさらに減速したときのガード値であり、アクセル開度変化量が大きくなるにしたがって小さくなる。これは、アクセル開度変化量が大きくなるほど急減速の程度が大きくなるため、基本ガード値を小さくしてスロットル開度の変化量をより制限するようにし、車両へのショックが大きくならないようにするものである。これにより、積荷の落下や車両の転覆が防止される。
【0032】
一方、前回のアクセル開度変化量が正であれば(S12:YES)、図6(B)の制御マップに基づき、基本ガード値2を算出する(S14)。この基本ガード値2は、車両が加速状態から急に減速したときのガード値である。この場合、車両にかかる慣性力がさらに大きくなるため、積荷の落下や車両の転覆を防止するためには、基本ガード値をより厳しくする必要がある。このため、図示のように、アクセル開度変化量に対して基本ガード値2を基本ガード値1よりも小さく設定し、スロットル変化量限界値をより制限するようにしている。
【0033】
続いて、以上のようにして算出した基本ガード値に対して、車両の状態に基づく補正を行う。これは、車両及びその積荷にかかる慣性力がその減速度だけでなく、フォーク3への積荷の積載状況や車両の走行環境によっても変化することを考慮したものである。
【0034】
まず、積荷重量センサ15からの入力信号に基づいて現在の積荷の重量を算出し、図7(A)の補正マップを用いて積荷重項係数K1を算出する(S15)。積荷の重量が大きくなるほど車両の走行が不安定になるため、積荷重項係数K1は、積荷の重量が大きくなるほど小さくなり、基本ガード値を小さく補正してスロットル変化量限界値をより制限するようにしている。
【0035】
続いて、リフト高低度センサ16からの入力信号に基づいて現在のフォーク3のリフト高さを算出し、同図(B)の補正マップを用いてリフト高さ項係数K2を算出する(S16)。フォーク3のリフト高さが高くなるほど車両の走行が不安定になるため、リフト高さ項係数K2は、フォーク3のリフト高さが高くなるほど小さくなり、基本ガード値を小さく補正してスロットル変化量限界値をより制限するようにしている。
【0036】
さらに、傾斜センサ17からの入力信号に基づいて現在の車体の傾斜角を算出し、同図(C)の補正マップを用いて傾斜項係数K3を算出する(S17)。車体の傾斜角が大きくなるほど車両の走行が不安定になるため、傾斜項係数K3は、車体の傾斜角が大きくなるほど小さくなり、基本ガード値を小さく補正してスロットル変化量限界値をより制限するようにしている。
【0037】
そして、スロットル変化量限界値を算出する(S18)。このスロットル変化量限界値は、積荷重項係数K1、リフト高さ項係数K2及び傾斜項係数K3を用いて下記式(1)から算出される。
【0038】
スロットル変化量限界値=基本ガード値(1又は2)×K1×K2×K3・・・(1)
続いて、アクセル開度変化量がこの減速時のスロットル変化量限界値以上であるか否かを判断する(S19)。このとき、アクセル開度変化量がスロットル変化量限界値以上である場合には(S19:YES)、スロットル開度の目標制御量(「スロットル開度制御量」という)をこのスロットル変化量限界値に対応した変化量となるように設定し(S20)、その目標制御量を実現するように電子スロットルを駆動(通電)する(S22)。
【0039】
一方、S11において積荷がないと判断した場合(S11:NO)、及びS19においてアクセル開度変化量がスロットル変化量限界値よりも小さいと判断した場合には(S19:NO)、スロットル開度制御量を現在のアクセル開度に対応したスロットル開度の変化量となるように設定し(S21)、その目標制御量を実現するように電子スロットルを駆動(通電)する(S22)。
【0040】
図8は、スロットル制御において実行される加速時処理の流れを表すフローチャートである。また、図9は、加速時処理に用いられる制御マップを表す説明図である。(A)は、車両がRレンジ(バック)でステアリングが切れているときに加速した場合に用いる制御マップである。(B)は、車両がRレンジでステアリングが切れていないときに加速した場合に用いる制御マップである。両図において、横軸はアクセル開度変化量を表し、縦軸が基本ガード値を表している。さらに、(C)は、車両が直進でステアリングが切れているときに急発進した場合に用いる制御マップである。同図の横軸は車体の傾斜角を表し、縦軸が基本ガード値を表している。さらに、図10は、車両の状態に応じたスロットル変化量限界値を算出するために、上記基本ガード値を補正するための補正係数を算出するための補正マップである。(A)は、積荷の重量をパラメータとした補正係数である積荷重項係数K4を表している。(B)は、車体の傾斜角をパラメータとした補正係数である傾斜項係数K5を表している。
【0041】
図8に示すように、加速時処理においては、まず、積荷重量センサ15からの入力信号に基づいて、現在積荷があるか否かを判断する(S31)。
このとき、積荷があると判断すると(S31:YES)、続いて、シフトポジションセンサ18からの入力信号に基づいて、現在のシフトポジションがRレンジ(バック)であるか否かを判断する(S32)。このとき、シフトポジションがRレンジであると判断すると(S32:YES)、続いて、操舵角センサ14からの入力信号に基づいてステアリングの切れ角があるか否かを判断する(S33)。このとき、ステアリングの切れ角があると判断すると(S33:YES)、図9(A)の制御マップに基づき、基本ガード値3を算出する(S34)。この基本ガード値3は、車両が後進してステアリングを切った状態で加速しているときのガード値であり、アクセル開度変化量が大きくなるにしたがって小さくなる。これは、アクセル開度変化量が大きくなるほど急加速の程度が大きくなり、車両にかかる遠心力が大きくなるため、基本ガード値を小さくしてスロットル開度の変化量をより制限するようにし、積荷の落下や車両の転覆を防止するものである。
【0042】
一方、S33において、ステアリングの切れ角がないと判断した場合には(S33:NO)、図9(B)の制御マップに基づき、基本ガード値4を算出する(S35)。この基本ガード値4は、車両が後方に直進する状態で加速しているときのガード値であるが、ステアリングが切られていない分、積荷の落下や車両の転覆の危険性が下がるため、ガード値をより緩やかにしている。
【0043】
また、S32において、シフトポジションがRレンジでないと判断した場合には(S32:NO)、続いて、ステアリングの切れ角があるか否かを判断する(S36)。このとき、ステアリングの切れ角があると判断すると(S36:YES)、図9(C)の制御マップに基づき、基本ガード値5を算出する(S37)。この基本ガード値5は、車両がステアリングを切った状態で加速しているときのガード値であるが、前進であるために積荷がフォーク3に後方から支持されて落下する可能性が小さいため、ガード値をさらに大きくしてスロットル変化量限界値をより緩やかにしたものである。
【0044】
続いて、以上のようにして算出した基本ガード値に対して、車両の状態に基づく補正を行う。これは、減速時処理と同様に、フォーク3への積荷の積載状況や車両の走行環境によっても変化することを考慮したものである。
【0045】
まず、積荷重量センサ15からの入力信号に基づいて現在の積荷の重量を算出し、図10(A)の補正マップを用いて後進時の積荷重項係数K4を算出する(S38a)。同様に前進時の積荷重項係数K4を算出する(S38b)。なお、前進時と後進時の積荷重項係数K4を同じ補正マップを用いて算出してもよい。この場合、積荷の重量が大きくなりすぎると、その遠心力で車両が転覆する可能性が高くなるため、積荷重項係数K4は、基本的に積荷の重量が大きくなるほど大きくなるが、所定重量を超えると小さくなるようにしている。
【0046】
続いて、傾斜センサ17からの入力信号に基づいて現在の車体の傾斜角を算出し、同図(B)の補正マップを用いて傾斜項係数K5を算出する(S39)。車体の傾斜角が大きくなるほど車両にかかる慣性力の影響が大きくなるため、傾斜項係数K5は、車体の傾斜角が大きくなるほど小さくなり、基本ガード値を小さく補正してスロットル変化量限界値をより制限するようにしている。
【0047】
そして、スロットル変化量限界値を算出する(S40)。このスロットル変化量限界値は、積荷重項係数K4及び傾斜項係数K5を用いて下記式(2)から算出される。
スロットル変化量限界値=基本ガード値(3,4又は5)×K4×K5・・・(2)
続いて、アクセル開度変化量がこの減速時のスロットル変化量限界値以上であるか否かを判断する(S41)。このとき、アクセル開度変化量がスロットル変化量限界値以上である場合には(S41:YES)、スロットル開度制御量をこのスロットル変化量限界値に対応した変化量となるように設定し(S42)、その目標制御量を実現するように電子スロットルを駆動(通電)する(S44)。
【0048】
一方、S31において積荷がないと判断した場合(S31:NO)、S36においてステアリングの切れ角がないと判断した場合(S36:NO)、及びS41においてアクセル開度変化量がスロットル変化量限界値よりも小さいと判断した場合には(S41:NO)、スロットル開度制御量を現在のアクセル開度に対応したスロットル開度の変化量となるように設定し(S43)、その目標制御量を実現するように電子スロットルを駆動(通電)する(S44)。
【0049】
以上に説明したように、本実施の形態のエンジン制御装置によれば、アクセル開度変化量、つまり運転者によるアクセルペダルの操作量がスロットル変化量限界値よりも大きい場合には、スロットル開度はその操作量に応じて変化せず、それよりも小さいスロットル変化量限界値で変化するように制御される。このため、急激な加減速時に産業用車両にかかる慣性力を小さくすることができ、積荷の落下や車両の転覆を防止することができる。
【0050】
なお、上記実施の形態では、図3に示したように、アクセル開度変化量がスロットル変化量限界値よりも大きい場合に、スロットル開度の制御量を除変させる代わりに、アクセル開度がゼロ等に収束した後も、そのスロットル開度の除変を継続させるようにした。しかし、スロットル開度の意図しない除変が運転者に違和感を与えるような場合、つまり除変時間が体感できるような長さである場合には、アクセル開度がゼロ等に収束したとほぼ同時にスロットル開度の変化も収束させるようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、スロットル変化量限界値を、安定した車両の走行と安全な荷役作業を確保するために設定されたスロットル開度の変化量の限界値としたが、その限界値は、積荷の落下や車両の転覆が発生しないぎりぎりの限界値であってもよいし、そのぎりぎりの限界値に所定の安全率をかけた限界値であってもよい。
【0052】
また、上記実施の形態では、図8にてステアリングの切れ角の有無を操舵角センサ14からの入力信号に基づいて判断した例を示したが、パワステスイッチ20がオンにされているか否かにより判断するようにしてもよい。すなわち、パワステスイッチ20は、ステアリングが所定の微小角度切られたときに自動的にオンされるものであるため、その出力信号に基づいてステアリングの切れ角があると判断する。このようにすれば、操舵角センサ14を省略してコストを削減することも可能になる。
【0053】
さらに、上記実施の形態では、本発明のエンジン制御装置をフォークリフトに適用した例を示したが、本発明は、荷役作業を行うフォークリフト以外の他の産業用車両に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態のフォークリフトの全体構成を表す概略構成図である。
【図2】ECU及びその入出力を表すブロック図である。
【図3】車両の減速時を例にスロットル制御の概略を表した説明図である。
【図4】ECUが実行するスロットル制御処理の全体の流れを表すフローチャートである。
【図5】スロットル制御において実行される減速時処理の流れを表すフローチャートである。
【図6】減速時処理に用いられる制御マップを表す説明図である。
【図7】車両の状態に応じたスロットル変化量限界値を算出するために、上記基本ガード値を補正するための補正係数を算出するための補正マップである。
【図8】スロットル制御において実行される加速時処理の流れを表すフローチャートである。
【図9】加速時処理に用いられる制御マップを表す説明図である。
【図10】車両の状態に応じたスロットル変化量限界値を算出するために、上記基本ガード値を補正するための補正係数を算出するための補正マップである。
【図11】フォークリフトにおいてメカスロットルを採用した場合の車両の急加速時及び急減速時の問題点を表す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 フォークリフト
3 フォーク
4 ステアリング
6 エンジン
7 ECU
12 アクセル開度センサ
14 操舵角センサ
15 積荷重量センサ
16 リフト高低度センサ
17 傾斜センサ
18 シフトポジションセンサ
24 電子スロットル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役作業を行う産業用車両に搭載されるエンジンを制御するエンジン制御装置であって、検出したアクセル開度に基づいて、スロットル弁の開度を変化させる制御量を算出するスロットル制御量算出手段と、
前記スロットル制御量算出手段によって算出された制御量に基づいてスロットル弁を制御するスロットル弁制御手段と、
前記スロットル制御量算出手段は、所定時間における前記アクセル開度の変化量が所定値よりも大きい場合に、算出する制御量を減量補正する減量補正手段と、
を備えたことを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記減量補正手段は、前記アクセル開度の変化の方向により前記制御量の補正を変化させることを特徴とする請求項1記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記減量補正手段は、前記アクセル開度が正から負に変化したときに、前記アクセル開度が負から負に変化したときよりも前記制御量の変化量が小さくなるように補正することを特徴とする請求項2記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記産業用車両のシフトポジションを検出するシフトポジション検出手段を備え、
前記スロットル制御量算出手段は、前記シフトポジションがRレンジであるか否かにより前記制御量の補正を変化させることを特徴とする請求項2記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記産業用車両のステアリングの切れ角を検出する操舵角検出手段を備え、
前記減量補正手段は、前記アクセル開度の変化が正である場合には、前記ステアリングの切れ角に応じて前記制御量の変化量を変化させることを特徴とする請求項2記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記産業用車両がフォークリフトであり、
前記フォークリフトのフォークのリフト高さを検出するリフト高さ検出手段を備え、
前記スロットル制御量算出手段は、前記リフト高さに応じて前記制御量の変化量を変化させることを特徴とする請求項1記載のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記スロットル制御量算出手段は、前記産業用車両の積荷にかかる慣性力に応じて前記制御量の補正を変化させることを特徴とする請求項1記載のエンジン制御装置。
【請求項8】
荷役作業を行う産業用車両に搭載されるエンジンを制御するエンジン制御装置であって、検出したアクセル開度に基づいて、スロットル弁の開度を変化させる制御量を算出するスロットル制御量算出手段と、
前記スロットル制御量算出手段によって算出された制御量に基づいてスロットル弁を制御するスロットル弁制御手段と、を備え、
前記スロットル制御量算出手段は、所定時間における前記アクセル開度の変化量が所定値よりも大きい場合に、算出する制御量に制限を設ける、ことを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項1】
荷役作業を行う産業用車両に搭載されるエンジンを制御するエンジン制御装置であって、検出したアクセル開度に基づいて、スロットル弁の開度を変化させる制御量を算出するスロットル制御量算出手段と、
前記スロットル制御量算出手段によって算出された制御量に基づいてスロットル弁を制御するスロットル弁制御手段と、
前記スロットル制御量算出手段は、所定時間における前記アクセル開度の変化量が所定値よりも大きい場合に、算出する制御量を減量補正する減量補正手段と、
を備えたことを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記減量補正手段は、前記アクセル開度の変化の方向により前記制御量の補正を変化させることを特徴とする請求項1記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記減量補正手段は、前記アクセル開度が正から負に変化したときに、前記アクセル開度が負から負に変化したときよりも前記制御量の変化量が小さくなるように補正することを特徴とする請求項2記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記産業用車両のシフトポジションを検出するシフトポジション検出手段を備え、
前記スロットル制御量算出手段は、前記シフトポジションがRレンジであるか否かにより前記制御量の補正を変化させることを特徴とする請求項2記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記産業用車両のステアリングの切れ角を検出する操舵角検出手段を備え、
前記減量補正手段は、前記アクセル開度の変化が正である場合には、前記ステアリングの切れ角に応じて前記制御量の変化量を変化させることを特徴とする請求項2記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記産業用車両がフォークリフトであり、
前記フォークリフトのフォークのリフト高さを検出するリフト高さ検出手段を備え、
前記スロットル制御量算出手段は、前記リフト高さに応じて前記制御量の変化量を変化させることを特徴とする請求項1記載のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記スロットル制御量算出手段は、前記産業用車両の積荷にかかる慣性力に応じて前記制御量の補正を変化させることを特徴とする請求項1記載のエンジン制御装置。
【請求項8】
荷役作業を行う産業用車両に搭載されるエンジンを制御するエンジン制御装置であって、検出したアクセル開度に基づいて、スロットル弁の開度を変化させる制御量を算出するスロットル制御量算出手段と、
前記スロットル制御量算出手段によって算出された制御量に基づいてスロットル弁を制御するスロットル弁制御手段と、を備え、
前記スロットル制御量算出手段は、所定時間における前記アクセル開度の変化量が所定値よりも大きい場合に、算出する制御量に制限を設ける、ことを特徴とするエンジン制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−263012(P2007−263012A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90303(P2006−90303)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
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