説明

シリコンウエハ及びその製造方法

【課題】ミスフィット転位や反りを低減できるシリコンウエハおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】シリコン基板10と、ドナー濃度およびアクセプタ濃度間の差の絶対値が1×1018atoms/cm以上で、かつ前記基板10上に設けられた第一のエピタキシャル層11と、ドナー濃度およびアクセプタ濃度間の差の絶対値が5×1017atoms/cm以下で、かつ第一のエピタキシャル層11上に設けられ、該エピタキシャル層11と同じ導電型である第二のエピタキシャル層12と、を有し、第一のエピタキシャル層11に格子定数調整成分を添加して、シリコン単結晶の格子定数(aSi)に対する第一のエピタキシャル層11の格子定数(a)の変化量((a−aSi)/aSi)およびシリコン単結晶の格子定数に対する第二のエピタキシャル層12の格子定数(a)の変化量((a−aSi)/aSi)を臨界格子不整合度未満に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスに使われるシリコンウエハの技術分野において、特に、エピタキシャル成長膜を伴うシリコンウエハ中に発生するミスフィット転位の抑制技術に関連する。
【背景技術】
【0002】
現在半導体デバイスに使われるシリコンウエハは、その表層のデバイス活性領域の無欠陥性と高いゲッタリング能力とが要求される。これらの要求を満たした例として、ハイドープ基板を使ったエピタキシャルウエハが従来から知られている。当該ウエハの一例としては、5×1019atoms/cm程度のボロン濃度を含有するp+基板を作製し、これに鏡面研磨・洗浄等を施した後、当該鏡面研磨したp+基板上に1×1015atoms/cm程度の比較的低濃度のボロンを含有するデバイス活性層5μmを気相成長でエピタキシャル成長させたp/p+基板が挙げられる。またパワーMOSFETなどでは、リンや砒素などのn型ドーパントを高濃度にドープしたn+基板を用いて、このn+基板上に例えば1×1016atoms/cm程度の比較的低濃度リンがドープされたn型エピ層を堆積してなるn/n+基板などが挙げられる。また、IGBTではボロンを高濃度ドープしたp型基板上に、空乏層を止める1×1017atoms/cm以上の高濃度のn型ドーパントをドープした高濃度のドープ層を堆積し、更にその上に低濃度のn型リンドープ層を堆積した構造がよく用いられる。最上部のn型低ドープ層はその所定耐圧に応じて、1×1013〜1×1015atoms/cm程度の濃度にコントロールされる。
【0003】
エピタキシャル成長により堆積された表層が無欠陥性を有し、かつデバイスプロセス中に混入する重金属、特にFe汚染を強力にゲッタリングさせることから、デバイスの歩留まりを向上できるとして、これら高濃度のドープ基板を使ったエピタキシャルウエハは、広く半導体デバイスに使用されている。
【0004】
しかし、上記のように高濃度のドーパントをドープした基板上に低濃度のドーパントをドープしたエピタキシャル層を堆積したウエハや、IGBT用の構造にみられるように、低濃度のドーパントをドープしたエピタキシャル層および高濃度のドーパントをドープしたエピタキシャル層を堆積したウエハにおいては、シリコン結晶の格子定数が変化することに起因して、基板と低濃度のドーパントをドープした層との界面または前記低濃度のエピタキシャル層と高濃度のドーパントをドープした層との界面にミスフィット転位が生じやすくなる。
【0005】
かかるミスフィット転位は、その形態によってはデバイス活性層に貫通してしまう場合がある。縦型パワーMOSFETを例にとると、デバイス活性層を貫通する転位(貫通転位とも称される)が存在すると、裏面のドレインと表面のソースを貫通して、ソース−ドレイン間のリーク電流を発生することが懸念される。IGBTの場合では、コレクタとエミッタ間のリーク電流が発生する恐れがある。このようなリーク電流はパワーデバイスのスタンバイ時の消費電力の増大につながる。
【0006】
そのため、かかるミスフィット転位を防止する技術としては特許文献1が挙げられる。当該特許文献1の発明は、シリコン融液にボロンおよびゲルマニウムを同時に所定量添加して成長させたシリコン基板上にシリコンエピタキシャル層を堆積させる方法が記載されている。かかる方法は、シリコン結晶の格子定数を短小化させるボロンと、シリコン結晶の格子定数を長大化させるゲルマニウムとをシリコン融液に所定量添加することで、ボロンの格子定数を短小化させる効果をゲルマニウムの格子定数を長大化させる効果で相殺させるものである。これによりミスフィット転位の発生が抑制されたエピタキシャルシリコンウエハの作製が可能となると記載されている。
【0007】
その他のミスフィット転位を防止する技術としては、特許文献2が挙げられる。当該特許文献2には、Si基板の表面にSiCまたはGaN膜がエピタキシャル成長により形成される際に、閃亜鉛鉱型単結晶のBP(リン化ホウ素)をバッファー膜として用いることにより、格子不整合によるミスフィット転位を抑制できる旨が記載されている。より具体的には、Si基板の自然酸化膜を除去した後、BPの原料として、BClおよびPClを反応管に流し、低温成長を約200〜500℃で30分程度行い、BPの結晶成長温度である900〜1200℃まで昇温してBP膜を1〜5μm程度成膜し、その上にSiCまたはGaN膜をエピタキシャル法で堆積している。また、これにより、SiO膜やSi膜をSiCまたはGaN膜に加えて成膜させることによって、半導体ウエハ全体の反り量をコントロールすることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−175658号公報
【特許文献2】特開2003−218031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献2のように、格子不整合によるミスフィット転位を抑制するため、独立したバッファー膜を設ける場合は、バッファー層がデバイスとして機能しない。また、上記特許文献1のように、ゲルマニウムと高濃度のボロンとを同時にドープしたシリコン融液からシリコン基板を作製し、このシリコン基板上にゲルマニウムとボロンとを所定の濃度でドープしたエピタキシャル層を堆積する方法の場合、チョクラルスキー法の成長結晶を使用してシリコン基板を作製すると、ドーパントなどの不純物の偏析の問題が避けられず、かつボロンとゲルマニウムとの偏析係数が大きく異なる。したがって、当該特許文献1の方法では結晶全長に渡って適切なボロンとゲルマニウムとの比率を維持することは困難である。そのため、当該方法由来の結晶から得られた全ての基板において、当該基板とエピタキシャル層との格子不整合を解消することは困難であった。また、当該特許文献1のようにチョクラルスキー法や帯域溶融法といった結晶成長を利用すると高価なゲルマニウムを大量に使用する必要があり、ウエハの製造コストが上がってしまう問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、上記課題に鑑み、本発明者らが鋭意研究を行った結果、本発明である、抵抗率が0.1Ωcm以上のシリコン基板と、ドナー濃度およびアクセプタ濃度間の差の絶対値が1×1018atoms/cm以上であり、かつ前記シリコン基板の一方の面上に設けられた第一のエピタキシャル層と、ドナー濃度およびアクセプタ濃度間の差の絶対値が5×1017atoms/cm以下であり、かつ前記第一のエピタキシャル層の面上に設けられ、前記第一のエピタキシャル層と同じ導電型である第二のエピタキシャル層とを有し、前記第一のエピタキシャル層に格子定数調整成分を添加することによって、シリコン単結晶の格子定数(aSi)に対する前記第一のエピタキシャル層の格子定数(a)の変化量((a−aSi)/aSi)およびシリコン単結晶の格子定数(aSi)に対する前記第二のエピタキシャル層の格子定数(a)の変化量((a−aSi)/aSi)を臨界格子不整合度未満に調整されたことを特徴とするシリコンウエハにより、ミスフィット転位や反りが軽減されたウエハ構造を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来のチョクラルスキー法あるいは帯域溶融法を使った高濃度ドープの基板を使用することなく、高濃度の不純物ドープ層を全てエピタキシャル成長によって形成する。そして、当該高濃度の不純物ドープ層に格子定数調整成分をドープすることよって、格子定数を適切に制御し、低濃度の不純物ドープ層との界面での格子不整合を解消できる。これによって、ミスフィット転位や反りといった問題を解決できる。
【0012】
本発明では、エピタキシャル成長により格子定数調整成分をドープしているため、従来の液相成長中でのドーパント(例えば、ゲルマニウム、ホウ素など)をドープする際の濃度不均一という問題を回避できる。
【0013】
また、本発明のシリコンウエハをパワーMOSFET用途に使用すると、オン抵抗低減のため、ドーパントを高濃度含む層は低抵抗率が望ましいが、従来の液相成長からなるドーパントを高濃度含む基板に比べて更に低抵抗率化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1Aは、本発明に係るシリコンウエハの構造を示す模式図である。
【図1B】図1Bは、ミスフィット転位が発生した場合のエピタキシャルウエハにおけるエピタキシャル層とシリコン基板との界面を拡大した模式図である。
【図2】図2は、本発明に係るシリコンウエハの構造を示す模式図である。
【図3】POWERMOSFETおよびIGBTの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第一は、抵抗率が0.1Ωcm以上のシリコン基板と、ドナー濃度およびアクセプタ濃度間の差の絶対値が1×1018atoms/cm以上であり、かつ前記シリコン基板の一方の面上に設けられた第一のエピタキシャル層と、ドナー濃度およびアクセプタ濃度間の差の絶対値が5×1017atoms/cm以下であり、かつ前記第一のエピタキシャル層の面上に設けられ、前記第一のエピタキシャル層と同じ導電型である第二のエピタキシャル層とを有し、前記第一のエピタキシャル層に格子定数調整成分を添加することによって、シリコン単結晶の格子定数(aSi)に対する前記第一のエピタキシャル層の格子定数(a)の変化量((a−aSi)/aSi)およびシリコン単結晶の格子定数(aSi)に対する前記第二のエピタキシャル層の格子定数(a)の変化量((a−aSi)/aSi)を臨界格子不整合度未満に調整されたことを特徴とするシリコンウエハである。
【0016】
これにより、ミスフィット転位や反りといった問題を解決できる。本発明では、エピタキシャル成長により格子定数調整成分をドープしているため、従来の液相成長中でのドーパント(格子定数調整成分を含む)をドープする際の濃度不均一という問題を回避できる。また、例えば特開2006−080278号公報、特開2006−024728号公報などに記載されているように、格子不整合による貫通転位の発生を抑制するため、シリコン基板表面に格子定数調整成分としてゲルマニウムを含有したシリコンエピタキシャル層を形成させ、かつ漸次または段階的にゲルマニウム濃度をシリコン基板とエピタキシャル層界面から減少させることが開示されている。しかし、いずれの場合であってもミスフィット転位を抑制できていない。また特開2006−86179号公報のように、漸次または段階的にゲルマニウム濃度を変化させたゲルマニウム含有シリコンエピタキシャル層を複数積層させる間に窒化膜層を導入した場合であってもミスフィット転位が発生している(特開2006−86179号公報 表1)。これら漸次または段階的にゲルマニウム濃度を変化させる方法の場合、ゲルマニウム含有シリコンエピタキシャル層を1μm成長させるごとにゲルマニウム濃度を10%しか高めることができない。例えば、30%のゲルマニウム濃度を有するエピタキシャル層を成膜するには、3μmも成長させる必要があり、通常行われているエピタキシャル層成長速度(約0.1nm/s)では、1時間近い長時間を必要とするため、生産性が悪いという問題点がある。しかしながら、本発明ではゲルマニウム濃度を段階的に変化させることなく、エピタキシャル層の格子定数を適切に制御しているため成長速度には影響されにくい。
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明のシリコンウエハを説明する。
【0018】
図1(A)は、本発明の好適な実施形態の半導体基板の一例を示す模式的断面図である。まず、図1(A)に示すように、本発明に係るシリコンウエハは、シリコン基板(例えば、ノンドープ、n型、またはp型のシリコン単結晶)10の上にエピタキシャル成長法によって、格子定数調整成分ならびにドナーおよび/またはアクセプタを含有する第一のエピタキシャル層11(n型またはp型)を成長させる。そしてさらに、エピタキシャル成長法によって、当該第一のエピタキシャル層11の上に当該第一のエピタキシャル層11と同一の導電型のドナーおよび/またはアクセプタを含有する第二のエピタキシャル層12を成長させたものである。
【0019】
なお、後述するが、図2に示すように、前記第一のエピタキシャル層11とシリコン基板10との間に格子定数調整成分ならびにドナーおよび/またはアクセプタを含有し、かつp型の第三のエピタキシャル層13をさらに備えてもよい。
【0020】
また、図1(B)に示すように、シリコン基板10と第一のエピタキシャル層11との界面を一例にあげると、シリコン基板10および第一のエピタキシャル層11間の格子定数が大幅に異なると、第一のエピタキシャル層11に応力が作用する。さらにエピタキシャル成長を続け、第一のエピタキシャル層11の格子定数の変化量が臨界値(または臨界格子不整合度とも称する)を超えると(または、第一のエピタキシャル層11の膜厚が臨界膜厚を越えると)、図1−2に示すように、当該応力を緩和するために格子のずれ(ミスフィット転位)等の結晶欠陥が発生する。
【0021】
しかし、当該第一のエピタキシャル層の格子定数の変化量が臨界値を超えない場合は(すなわち当該第一のエピタキシャル層の膜厚が十分薄い場合は)、格子不整合が多少生じていても、エピタキシャル層の格子が歪むことにより界面での格子の連続性が保たれて成長する(コヒーレント成長)。
【0022】
本発明に係る格子定数の変化量について、より詳細に説明すると、格子定数の変化は、一般に式(1)で記述される。
【0023】
【数1】

【0024】
格子定数の変化量である格子不整合度(Δa/a)は、不純物の濃度Nに比例するが、文献1に記載されているように、比例係数βは不純物によって異なることが知られている(文献1:「Property of Crystaline Silicon」 出版社 Inspec/Iee 2000年1月、ISBN : 0852969333)
この知見によると、例えば、アクセプタとしてボロンを使用し、ドナーとしてリンを使用する場合に対しては表1のような値が知られている。
【0025】
【表1】

【0026】
このように、ボロン・リンドープの系ではβは負の値を持ち、格子定数を小さくする。すなわち、シリコン結晶に、ドナーまたはアクセプタといったドーパントをドープする場合、シリコンの原子半径(1.17Å)より大きい原子半径を有するドーパント(As、Ge、Sbなど)をドープすると、そのドーパントを含むシリコン結晶の格子定数は増加する傾向にある。一方、シリコンの原子半径(1.17Å)より小さい原子半径を有するドーパント(B、P)をドープすると、そのドーパントを含むシリコン結晶の格子定数は減少する傾向にある。これらのことはエピタキシャル成長により得られるエピタキシャル層でもドーパントを添加したシリコン基板でも同様である。
【0027】
そのため、シリコンエピタキシャル層でシリコンの原子半径(1.17Å)より小さい原子半径を有する原子をアクセプタまたはドナーとして使用する場合においてミスフィット転位を低減させるには、シリコンエピタキシャル層の格子定数を増加させる必要があるため、シリコンの原子半径より大きい原子を格子定数調整成分として使用する。一方、シリコンエピタキシャル層でシリコンの原子半径(1.17Å)より大きい原子半径を有する原子をアクセプタまたはドナーとして使用する場合は、シリコンエピタキシャル層の格子定数を低下させる必要があるために、シリコンの原子半径より小さい原子をシリコンの格子定数を低下させる原子を格子定数調整成分として使用する。
【0028】
本発明に係る格子定数調整成分は、シリコンの格子定数を増加させるために使用する場合は、シリコンの原子半径より大きい原子であって、エピタキシャル層(第一および第三)の抵抗を変化させないものが好ましく、なかでも、ゲルマニウム、スズを含む化合物がより好ましく、ゲルマニウムを含む化合物が特に好ましい。また、本発明に係る格子定数調整成分をシリコンの格子定数を低下させるために使用する場合は、シリコンの原子半径より小さい原子であって、エピタキシャル層(第一および第三)の抵抗を変化させないものが好ましい。
【0029】
また、本発明に係るエピタキシャル層(第一および第三)にはリンの代わりに砒素をドープすることも可能である。砒素に対するβ値は正確には分かっていないが、極めて小さいことが知られている。従って砒素ドープエピに際してはゲルマニウムドープが必ずしも必須ではない。
【0030】
なお、本発明に係る格子定数調整成分を添加する際、原子自体で添加しても当該原子を含む化合物を添加してもよい。
【0031】
したがって、前記シリコンエピタキシャル層にアクセプタとしてボロンを使用し、および/またはドナーとしてリンを使用する場合は、このシリコンの格子定数を低下させる効果を相殺するにはゲルマニウムの添加が有効である。ゲルマニウムはシリコンに比べておよそ4.2%格子定数が大きい。Vegard則を使った単純な近似によると、βGeは+8.4×10−25cm/atom程度となり、絶対値はほぼリンと同程度で、逆符号となる。従って本発明に係るエピタキシャル層へドープするゲルマニウム濃度に制御することによって、Δa/aをゼロに近づけることが出来る。
【0032】
シリコンエピタキシャル層内のそれぞれのドナーの濃度[X]Dk、β値をβDk、およびそれぞれのアクセプタの濃度を[X]Ak、β値をβAk、格子定数調整成分のβ値をβ、前記格子定数調整成分の濃度[Y]とすると、下記式(2)で示されるように制御すれば、系内での格子不整合度(Δa/a)がなくなりミスフィット転位が発生しなくなる。
【0033】
【数2】

【0034】
例えば、ドナーまたはアクセプタとして、リンまたはボロンのいずれか一つを使用する場合を考えると、リンまたはボロンの濃度を[X]、β値をβx、ゲルマニウムの濃度[Ge]、β値をβGeとすると、下記式(2−2)で表される値に制御すればよい。
【0035】
【数3】

【0036】
しかし一方で、上述したように、コヒーレント成長の場合、エピタキシャル層の膜厚が十分薄いと当該エピタキシャル層の格子が歪むことができるため、ミスフィット転位の発生有無は膜厚にも依存する。詳細は文献2(「J. W. Matthews, A. E. Blakeslee [J. Cryst. Growth (Netherlands) vol.27(1974) p.118; vol.29(1975) p.273; vol.32(1976) p.265)」]に詳しい。
【0037】
即ち膜厚が薄い場合は式(2)または式(2−2)を完全に満たさなくてもミスフィット転位が発生しない場合がある。発明者らの知見によれば式(3)を満たせばミスフィット転位を発生しないことが確認された。
【0038】
【数4】

【0039】
また、上記式(3)において、β×[Y]は、格子定数調整成分をシリコン単結晶にドープした際の格子定数の変化(Δa)をシリコン単結晶の格子定数(aSi)で割ったΔa/aSiに他ならず、同様に、βDk×[X]Dkは、種々のドナーをシリコン単結晶にドープした際の格子定数の変化(ΔaDk)をシリコン単結晶の格子定数(aSi)で割ったΔaDk/aSiであり、βAk×[X]Akは種々のアクセプタをシリコン単結晶にドープした際の格子定数の変化(ΔaAk)をシリコン単結晶の格子定数(aSi)で割ったΔaAk/aSiであるため、上記式(3)の左辺は、格子定数調整成分、各ドナー、および各アクセプタをそれぞれ単独でシリコン単結晶のドープした際の格子定数の変化の総和に対してシリコン単結晶の格子定数を割ったものである。一方、シリコンエピタキシャル層において格子定数調整成分、各ドナー、および各アクセプタを同時に添加した場合の格子定数の変化は、前記格子定数調整成分、各ドナー、および各アクセプタをそれぞれ単独でシリコン単結晶のドープした際の格子定数の変化の総和で求められることから、例えば、本発明の第一のエピタキシャル層の格子定数の変化であるΔa1−Si(=a−aSi)は、上記式(3)の左辺にシリコン単結晶の格子定数を乗じたものと等価であることが理解される。なお、本発明の第二および第三のエピタキシャル層の格子定数の変化量も同様に考える。
【0040】
また、ドナーまたはアクセプタとして、リンまたはボロンのいずれか一つを使用し、格子定数調整成分としてゲルマニウムを使用する上記式(2−2)の場合は、以下の式(3−2)となる。
【0041】
【数5】

【0042】
上記式中のγはエピタキシャル層の膜厚の関数になるが、事前に所定膜厚に対応するγを測定することによって適正な値を容易に取得できる。発明者らの知見によればγはエピタキシャル層の膜厚をT(μm)とすると以下の式(4)で記述される。
【0043】
【数6】

【0044】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態の一例を説明する。
図2は、本発明の好適な他の実施形態の半導体基板の一例を示す模式的断面図である。まず、図2に示すように、本発明に係るシリコンウエハは、シリコン基板(例えば、ノンドープ、n型、またはp型のシリコン単結晶)10の上にエピタキシャル成長法によって、格子定数調整成分ならびにドナーおよび/またはアクセプタを含有するp型の第三のエピタキシャル層13を成長させる。次いで、エピタキシャル成長法によって、当該第三のエピタキシャル層13の上に格子定数調整成分ならびにドナーおよび/またはアクセプタを含有するn型の第一のエピタキシャル層11を成長させ、さらに、第一のエピタキシャル層11上に当該第一のエピタキシャル層11と同一の導電型のドナーおよび/またはアクセプタを含有する第二のエピタキシャル層12を成長させたものである。
【0045】
なお、上記のようにシリコン基板に第三のエピタキシャル層、第一のエピタキシャル層、および第二のエピタキシャル層の順で積層させた後、必要により熱処理をしてもよい。
【0046】
本発明に係るシリコン基板は、抵抗率が0.1Ωcm以上であれば特に制限されることはなく、抵抗率が1Ωcm〜100Ωcmであることが好ましい。また、本発明に係るシリコン基板の製造方法は、チョクラルスキー法またはFZ法など公知の方法で製造されたシリコン結晶から得られたものでよく、製造しても市販のものを購入してもよく、さらにn型またはp型のどちらでもよい。
【0047】
さらに、本発明に係るシリコン基板が水素、窒素、および炭素を含有したシリコン結晶を使用してもよい。
【0048】
なお、シリコン結晶(または育成されたシリコン結晶を切り出したシリコン基板)に窒素、水素や炭素を添加する方法に関しては特に制限はなく、従来公知の方法が好ましく使用可能である。より具体的には窒素の添加方法として、窒化膜付きのシリコン基板をシリコン結晶引き上げの融液に添加して、得られるシリコン基板の窒素濃度を調節すること、水素の添加方法として、水素混合ガスを各引上炉中に導入することにより水素濃度を調整すること、炭素の添加方法として、炭素粉をシリコン結晶引き上げの融液に添加して、得られるシリコンサブストレートウエハの炭素濃度を調節することができる。
【0049】
本発明に係る第一のエピタキシャル層は、ドーパントおよび結合定数調整剤をドープしたシリコンエピタキシャル層であることが好ましく、主成分としてシリコンと、ドーパントとしてドナー成分(ボロンなど第13属の原子または当該原子を含む公知のドーパント)およびアクセプタ成分(リン、砒素など第15属の原子または当該原子を含む公知のドーパント)からなる群から選択される少なくとも一つと、結合定数調整成分と、を含む。また、ドーパントとして、ドナーおよびアクセプタを両方含む場合は、ドナー濃度およびアクセプタ濃度間の差の絶対値が1×1018atoms/cm以上であり、1×1020atoms/cm以下であることが好ましい。ドナーまたはアクセプタのいずれか一つを前記第一のエピタキシャル層に含む場合も同様の濃度範囲である。
【0050】
さらに、当該第一のエピタキシャル層の上記構成成分は、上記式(3)を満たすような組成比である。
【0051】
また、当該第一のエピタキシャル層の厚さは、10μm以下であることが好ましく、1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0052】
上記層の厚さが10μm以下であると、エピタキシャル層の臨界膜厚未満であるため、ミスフィット転位を抑制・防止することができる。
【0053】
本発明に係る第二のエピタキシャル層は、ドーパントをドープしたシリコンエピタキシャル層であることが好ましく、主成分としてシリコンと、ドーパントとしてドナー成分(ボロンなど第13属の原子または当該原子を含む公知のドーパント)およびアクセプタ成分(リン、砒素など第15属の原子または当該原子を含む公知のドーパント)からなる群から選択される少なくとも一つとを含む。また、ドーパントとして、ドナーおよびアクセプタを両方含む場合は、ドナー濃度およびアクセプタ濃度間の差の絶対値が5×1017atoms/cm以下であることが好ましい。ドナーまたはアクセプタのいずれか一つを含む場合も同様である。
【0054】
さらに、当該第二のエピタキシャル層の上記構成成分は、上記式(3)を満たすような組成比である。
【0055】
本発明に係る第三のエピタキシャル層は、アクセプタおよび結合定数調整剤をドープしたシリコンエピタキシャル層であることが好ましく、主成分としてシリコンと、アクセプタとして、ボロンなど第13属の原子、または当該原子を含む公知のドーパントと、結合定数調整剤とを含む。また、ドーパントとして、ドナーおよびアクセプタを両方含む場合は、ドナー濃度およびアクセプタ濃度間の差の絶対値が1×1018atoms/cm以上であり、ドナー濃度およびアクセプタ濃度間の差の絶対値が1×1018atoms/cm以上1×1020atoms/cm以下であることが好ましい。ドナーまたはアクセプタのいずれか一つを含む場合も同様である。
【0056】
さらに、当該第三のエピタキシャル層の上記構成成分は、上記式(3)を満たすような組成比である。
【0057】
また、当該第三のエピタキシャル層の厚さは、20μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0058】
厚さが20μm以下であると、エピタキシャル層の臨界膜厚未満であるため、ミスフィット転位を抑制・防止することができる。
【0059】
本発明に係る第一、第二および第三のエピタキシャル層は、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学蒸着)法やMBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシー)法などにより行うことができ、特に制限されることはない。
【0060】
例えば、CVD法を利用する場合は、原料ガスは公知のものを使用することができ特に制限されることはなく、例えばシリコン成分として、SiHCl、SiH、SiHClなど、アクセプタとしてボロンを使用する場合はボロン成分としてBなど、ドナーとしてリンを使用する場合はリン成分としてPHなど、格子定数調整成分としてゲルマニウムを使用する場合はGeH、GeClなど混合ガスを用いることができる。また、キャリアガスとしてはHが用いられる。成長条件は特に制限されず適宜選択されるものであり、例えば温度700〜1100℃、圧力100Pa以上乃至は常圧で実施すればよい。
【0061】
以下、添付図面を参照しながら本発明のシリコンウエハの好適な実施形態の一例を説明する。
【0062】
例えば、本発明に係るシリコンウエハを、図3(a)に示されるようなn型およびp型パワーMOSFET用ウエハに使用される場合について例にとって以下説明する。
【0063】
上記で説明したように例えばチョクラルスキー法によってシリコン基板を作製する。この基板の抵抗率は0.1Ωcm以上であれば問題なく、n型、p型、あるいはノンドープであっても良い。即ちパワーMOSFETのドリフト層に用いるエピタキシャル層に対して、格子不整合が問題にならない程度に低ければ良い。本発明者らの知見によれば、ノンドープのシリコン結晶に対して格子定数の変化率((a−aSi)/aSi)がおよそ1×10−5以下であれば、ミスフィット転位は発生せず、反りの悪化もみられないことが確認されている。
【0064】
つづいて前記シリコン基板に高濃度にドーパント(ドナーおよび/またはアクセプタ)をドープした第一のエピタキシャル層を形成する。このエピタキシャル層はドレイン電極に対応する層になる。したがって、多くの場合、不純物やドーパントの濃度が1×1019atoms/cm以上にドープされるため、シリコン基板、特にノンドープのシリコン基板を使用した場合に比べて格子定数を変化させる。
【0065】
上記第一のエピタキシャル層を形成した後、低濃度のドープの第二のエピタキシャル層を形成する。当該第二のエピタキシャル層はパワーデバイスではドリフト層などに使われるため比較的不純物濃度は低い。一般的には不純物やドーパントの濃度は5×1017atoms/cm以下であり、格子定数の変化は無視できる範囲であるため、前記第一のエピタキシャル層などの高濃度のドープ層のように、ゲルマニウムなどの格子定数調整剤をドープしなくてもよい。
【0066】
また、例えば、本発明に係るシリコンウエハを、図3(b)に示されるようなパンチスルー型IGBT用ウエハに使用される場合について例にとって以下説明する。
【0067】
上記と同様にシリコン基板を作製した後、ボロンを1×1018atoms/cm以上1×1020atoms/cm以下の濃度でドープしたp型の第三のエピタキシャル層を形成する。この層はIGBTのコレクタに対応する。更に続いて、リンまたは砒素を1×1017atoms/cm以上1×1019atoms/cm以下の濃度でドープしたn型の第一のエピタキシャル層を形成する。この層は空乏層のフィールドストップ層に対応する。
【0068】
上記のp型およびn型の高濃度のドープ層はその濃度によってはミスフィット転位を発生する可能性があり、必要に応じて、上記式(3)を満たすようにゲルマニウムなどの格子定数調整剤を第一のエピタキシャル層および/または第三のエピタキシャル層にドープする。
【0069】
更に続いてリンまたは砒素を1×1013atoms/cm以上1×1015atoms/cm以下の濃度でドープしたn型層(第二のエピタキシャル層)を形成する。このn型層はバイポーラのベース部に相当するが、一般には前記のような低ドープであるため、ゲルマニウムなどの格子定数調整剤をドープしなくともよい。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の実施例を説明する。しかし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。すなわち、下記実施例は単なる例示に過ぎず、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様の作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含まれる。
(実施例1)
チョクラルスキー法で育成したリン濃度が5×1014atms/cmの直径200mmのn型シリコン単結晶インゴットからウエハ加工し、直鏡面ウエハを用意した後、枚葉型、ランプ加熱方式のエピタキシャル気相成長装置に該ウエハを設置し、クリーニングのため1100℃、水素雰囲気で熱処理した。
【0071】
次いで1050℃、常圧の条件で、SiHCl、GeClおよびPH混合反応ガスを供給し、CVD法により該ウエハ上に、ドナー濃度(リン濃度)7×1019atoms/cm、格子定数調整成分(ゲルマニウム濃度)9×1019atoms/cmの第一のエピタキシャル層10μmを成長させた。また、当該第一のエピタキシャル層のゲルマニウム濃度およびリン濃度は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)により行った。
【0072】
なお、当該第一のエピタキシャル層中のゲルマニウム濃度およびリン濃度を制御するためには、PHガスやGeClガスの濃度を変えてもよいし、流量を変えてもよい。また、10μmの第一のエピタキシャル層を成長するためには、5分要した。
【0073】
次いで、1150℃、常圧の条件で、第一のエピタキシャル層上にCVD法によりドナー濃度(リン濃度)1×1014atoms/cmの第二のエピタキシャル層50μmを成長させた。この場合の成長時間は20分要した。
【0074】
前記エピタキシャル成長終了後、上記ウエハをアルゴン雰囲気中で1100℃、1時間の熱処理を施した。その後、X線トポグラフ装置を用いてミスフィット転位の発生状態を調べたところ、ミスフィット転位は発生していないことが確認された。
(実施例2)
チョクラルスキー法で育成したリン濃度が5×1014atms/cmの直径200mmのn型シリコン単結晶インゴットからウエハ加工し、直鏡面ウエハを用意した後、枚葉型、ランプ加熱方式のエピタキシャル気相成長装置に該ウエハを設置し、クリーニングのため1100℃、水素雰囲気で熱処理した。次いで1050℃、常圧の条件で、SiHCl、GeClおよびB混合反応ガスを供給し、CVD法により該ウエハ上に、アクセプタ濃度(ボロン濃度)5×1019atoms/cm、格子定数調整成分(ゲルマニウム濃度)3.3×1020atoms/cmの第三のエピタキシャル層(p型)10μmを成長させた。
【0075】
なお、当該第三のエピタキシャル層中のゲルマニウム濃度およびボロン濃度を制御するためには、BガスやGeClガスの濃度を変えてもよいし、流量を変えてもよい。また、10μmの第三のエピタキシャル層を成長するためには、5分要した。
【0076】
次いで、1150℃、常圧の条件により、SiHCl、GeClおよびPH混合反応ガスを供給し、CVD法により前記第三のエピタキシャル層上に、ドナー濃度(リン濃度)1×1019atoms/cm、格子定数調整成分(ゲルマニウム濃度)1×1019atoms/cmの第一のエピタキシャル層10μmを成長させた。この場合の成長時間は5分要した。
【0077】
そして、1150℃、常圧の条件により、SiHClおよびPH混合反応ガスを供給し、第一のエピタキシャル層上にCVD法によりドナー濃度(リン濃度)1×1014atoms/cmの第二のエピタキシャル層50μmを成長させた。この場合の成長時間は20分要した。
【0078】
前記エピタキシャル成長終了後、上記ウエハをアルゴン雰囲気中で1100℃、1時間の熱処理を施した。その後、X線トポグラフ装置を用いてミスフィット転位の発生状態を調べたところ、ミスフィット転位は発生していないことが確認された。
(比較例1)
チョクラルスキー法で育成したリン濃度が5×1014atms/cmの直径200mmのn型シリコン単結晶インゴットからウエハ加工し、直鏡面ウエハを用意した後、枚葉型、ランプ加熱方式のエピタキシャル気相成長装置に該ウエハを設置し、クリーニングのため1100℃、水素雰囲気で熱処理した。
【0079】
次いで、1150℃、常圧の条件により、SiHClおよびPH混合反応ガスを供給し、CVD法により該ウエハ上に、ドナー濃度(リン濃度)7×1019atoms/cmのハイドープエピタキシャル層10μmを成長させた。また、当該高ドープエピタキシャル層の濃度は、上記と同様にSIMSにより行った。
【0080】
その後、1150℃、常圧の条件により、SiHClおよびPH混合反応ガスを供給し、上記高ドープエピタキシャル層上にCVD法によりドナー濃度(リン濃度)1×1014atoms/cmの低ドープエピタキシャル層50μmを成長させた。この場合の成長時間は20分要した。
【0081】
前記エピタキシャル成長終了後、上記ウエハをアルゴン雰囲気中で1100℃、1時間の熱処理を施した。その後、X線トポグラフ装置を用いてミスフィット転位の発生状態を調べたところ、ほぼウエハ全面に渡ってミスフィット転位が発生していることが確認された。
(比較例2)
チョクラルスキー法で育成したリン濃度が5×1014atms/cmの直径200mmのn型シリコン単結晶インゴットからウエハ加工し、直鏡面ウエハを用意した後、枚葉型、ランプ加熱方式のエピタキシャル気相成長装置に該ウエハを設置し、クリーニングのため1100℃、水素雰囲気で熱処理した。次いで、1150℃、常圧の条件により、SiHClおよびB混合反応ガスを供給し、CVD法により該ウエハ上に、アクセプタ濃度(ボロン濃度)5×1019atoms/cmのp型のハイドープエピタキシャル層10μmを成長させた。
【0082】
なお、p型のハイドープエピタキシャル層中のゲルマニウム濃度およびボロン濃度を制御するためには、BガスやGeClガスの濃度を変えてもよいし、流量を変えてもよい。また、10μmのp型のハイドープエピタキシャル層を成長するためには、5分要した。
【0083】
次いで、1150℃、常圧の条件により、SiHCl、およびPH混合反応ガスを供給し、CVD法により前記p型のハイドープエピタキシャル層上に、ドナー濃度(リン濃度)1×1019atoms/cmのn型のハイドープエピタキシャル層10μmを成長させた。この場合の成長時間は5分要した。
【0084】
そして、1150℃、常圧の条件より、SiHClおよびPH混合反応ガスを供給し、n型のハイドープエピタキシャル層上にCVD法によりドナー濃度(リン濃度)1×1014atoms/cmの低ドープのエピタキシャル層50μmを成長させた。この場合の成長時間は20分要した。
【0085】
前記エピタキシャル成長終了後、上記ウエハをアルゴン雰囲気中で1100℃、1時間の熱処理を施した。その後、X線トポグラフ装置を用いてミスフィット転位の発生状態を調べたところ、ほぼウエハ全面に渡ってミスフィット転位が発生していることが確認された。
【0086】
なお、以下の表2に、実施例および比較例の抵抗率、および各エピタキシャル層の格子定数の変化量を示す。
【0087】
【表2】

【符号の説明】
【0088】
10 シリコン基板
11 第一のエピタキシャル層
12 第二のエピタキシャル層
13 第三のエピタキシャル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗率が0.1Ωcm以上のシリコン基板と、
ドナー濃度およびアクセプタ濃度間の差の絶対値が1×1018atoms/cm以上であり、かつ前記シリコン基板の一方の面上に設けられた第一のエピタキシャル層と、
ドナー濃度およびアクセプタ濃度間の差の絶対値が5×1017atoms/cm以下であり、かつ前記第一のエピタキシャル層の面上に設けられ、前記第一のエピタキシャル層と同じ導電型である第二のエピタキシャル層とを有し、
前記第一のエピタキシャル層に格子定数調整成分を添加することによって、シリコン単結晶の格子定数(aSi)に対する前記第一のエピタキシャル層の格子定数(a)の変化量((a−aSi)/aSi)およびシリコン単結晶の格子定数(aSi)に対する前記第二のエピタキシャル層の格子定数(a)の変化量((a−aSi)/aSi)を臨界格子不整合度未満に調整されたことを特徴とするシリコンウエハ。
【請求項2】
前記臨界格子不整合度は、下記の式(4):
【数1】

式中、γは、臨界格子不整合度であり、Tはエピタキシャル層の膜厚(μm)である、
で示されることを特徴とする、請求項1に記載のシリコンウエハ。
【請求項3】
前記格子定数調整成分は、ゲルマニウムを含む化合物であることを特徴とするシリコンウエハ。
【請求項4】
前記第一のエピタキシャル層および前記第二のエピタキシャル層の前記導電型は、n型であり、前記第一のエピタキシャル層と前記シリコン基板との間にアクセプタ濃度が1×1018atoms/cm以上のp型の第三のエピタキシャル層をさらに備え、
前記第一のエピタキシャル層および第三のエピタキシャル層に格子定数調整成分を添加することによって、シリコン単結晶の格子定数(aSi)に対する前記第三のエピタキシャル層の格子定数(a)の変化量((a−aSi)/aSi)を、前記臨界格子不整合度未満に調整されたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコンウエハ。

【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図1B】
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【公開番号】特開2012−38973(P2012−38973A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178928(P2010−178928)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】