スタッカクレーンの制振方法
【課題】製造コストの上昇を招くことなく、発生する昇降台の自由振動の振幅を小さくして、作業効率を向上させるスタッカクレーンの制振方法を提供する。
【解決手段】増速領域、等速領域、及び減速領域を備えた速度パターンで走行レール11上を往復走行可能な走行台車12と、これに立設された昇降マスト13と、搬送物13aを搭載し昇降マスト13に沿って昇降する昇降台14を有するスタッカクレーン10の制振方法であって、昇降台14及び搬送物13aの重量と昇降台14の高さ位置に基づいて、スタッカクレーン10の固有振動周期を予め求め、この2倍以上の整数倍の時間に増速領域及び減速領域の時間を設定し、増速領域及び減速領域の各加速度パターンを、左右対称の増加及び減少加速度と負の増加及び負の減少加速度として、搬送物13aを搭載した昇降台14の増速領域及び減速領域の終了後に発生する自由振動の振幅を小さくする。
【解決手段】増速領域、等速領域、及び減速領域を備えた速度パターンで走行レール11上を往復走行可能な走行台車12と、これに立設された昇降マスト13と、搬送物13aを搭載し昇降マスト13に沿って昇降する昇降台14を有するスタッカクレーン10の制振方法であって、昇降台14及び搬送物13aの重量と昇降台14の高さ位置に基づいて、スタッカクレーン10の固有振動周期を予め求め、この2倍以上の整数倍の時間に増速領域及び減速領域の時間を設定し、増速領域及び減速領域の各加速度パターンを、左右対称の増加及び減少加速度と負の増加及び負の減少加速度として、搬送物13aを搭載した昇降台14の増速領域及び減速領域の終了後に発生する自由振動の振幅を小さくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体倉庫又は自動倉庫で搬送物の搬出入に使用されるスタッカクレーンの制振方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体倉庫又は自動倉庫の荷役作業を行う機械として、スタッカクレーンが使用されている。
スタッカクレーンは、走行レール上を往復走行可能な走行台車と、走行台車に立設された昇降マストと、搬送物を搭載し昇降マストに沿って昇降する昇降台(以下、キャレッジともいう)とを有している。また、スタッカクレーンの走行台車の走行と昇降台の昇降の各制御は、スタッカクレーンに搭載された制御装置(以下、搭載盤ともいう)により行われる。
このスタッカクレーンの使用にあっては、ステーションから棚への搬送物の入庫、又は棚からステーションへの搬送物の出庫を行うように、上位の制御盤(地上盤と称する)から制御装置へ指令を送っている。なお、この時点で、スタッカクレーンの走行距離と昇降距離が決定されるので、この決定した位置に移動して停止するような走行速度軌道(走行速度曲線)及び昇降速度軌道(昇降速度曲線)を決定している。そして、モータの回転速度を制御する装置に速度指令を行い、スタッカクレーンの走行台車の走行及びキャレッジの昇降を行っている。
【0003】
上記した走行速度軌道の最も簡単な形は台形であり、スタッカクレーンの走行はこの台形速度曲線に合わせて行われている。具体的には、走行台車の走行速度を一定加速度で直線的に増加させ(以下、増速領域ともいう)、予め決めた最高速度に達した時点で加速をやめて一定速度とした後、停止位置から減速に必要な距離を引いた位置から一定減速度で直線的に減速して(以下、減速領域ともいう)、走行速度が0となる位置で走行台車を停止している。
ここで、走行台車が一定速度で走行している間(即ち、増速領域の終了後)と、減速して走行を停止した後(即ち、減速領域の終了後)の昇降マストの変形を物理的に考える。この昇降マストは、断面矩形状(弾性体)であり、その下端部が走行台車に固定され、上端部がガイドローラで上部レールに接しているため、昇降マストが常に垂直状態を保って走行台車と同じ動きをする一方、その上端部をほとんど自由端として考えることができる。
【0004】
一方、実際のスタッカクレーンは、フレーム構造となっており、昇降マストを構成する2本のマスト部を走行台車に立設して、その上部を横梁で結合している。このため、昇降マストは、各マスト部と横梁との接合部分が常に直角状態を保つように変形しようとするので、自由端の場合よりも撓みが減少する。また、昇降マストを昇降するキャレッジは、重量が重い質点として考えることができるため、昇降マストに質点が存在することになり、走行台車が加速した場合に慣性力が発生するポイントとなる。更に、昇降マストそのものも、その高さ方向に分布質量をもつため、慣性力が発生する。
このため、スタッカクレーンの走行台車が一定の加速を続けると、これらの慣性力によって昇降マストが横方向に撓みだし、その撓みの時間変化がA{1−cos(ωt)}という振動(振幅)となる。なお、Aは平均撓み量(振幅)、ωは昇降マストの振動角速度である。このとき、昇降マストがばねの要素をもち、質点が錘の要素を有するので、キャレッジと昇降マストを、上端部に錘がつけられたばねを走行台車に固定したモデルとして考えることができ、従って、ある固有振動数でキャレッジが振動を行うと考えることができる。
【0005】
通常は、キャレッジの振動の状態を考慮することなく、走行台車の走行速度が最高速度に達したら走行台車の加速をやめ、減速位置に到達したら走行台車の減速を開始しその停止位置で減速をやめるので、慣性力が発生している期間と振動の周期とが一定の関係にない。例えば、昇降マストが一番撓んで中心位置に戻りだす位相のときに、走行台車の加速又は減速をやめると、昇降マストが中心位置に戻ろうとするため、昇降マストはこの中心位置のときに最大速度を有する。
このため、この運動エネルギーが昇降マストをスタッカクレーンの進行方向又は後退方向に撓ませ、昇降マストが最大振幅に達したときに、上記した運動エネルギーの全てが昇降マストを撓ませるエネルギーに変わる。続いて、昇降マストは今までとは反対側に速度を増しながら中心位置に向かって振れるようになる。従って、スタッカクレーンが、その上部にガイドローラがあるだけの構造のように、振れの減衰が小さい場合には、数周期間自由振動を行うようになる。なお、この振動周期は、キャレッジの重さが重くその高さ位置が高いほど遅くなり、また振動周期の二乗で撓み量も大きくなる。更に、この撓み量は、走行台車の加速度に比例して大きくなる。
【0006】
特に、昇降マストは、その高さが数mから数十mに達するものがほとんどであるため、キャレッジが上部にあるほどキャレッジの揺動が大きい。このため、走行台車の走行停止後に、キャレッジに搭載したフォークにより行う搬送物の受け渡しを、キャレッジの横揺れが収まるまで行うことができなかった。キャレッジが振動している状態で、搬送物の入庫又は出庫のためのフォーク動作を行うと、フォークが棚に衝突する恐れがあるからである。
このため、キャレッジの振動が小さくなるまでの時間として、走行台車が停止してからフォークを出すまでのアイドル時間を設定する必要があった。なお、アイドル時間は、例えば、棚の位置、入庫動作、出庫動作、及び荷の重さ等の各状況により、様々であるため、これらの最大時間に設定する必要があり、必要以上にスタッカクレーンのサイクルタイムを伸ばしてしまい、作業効率が非常に悪いものとなっていた。
【0007】
そこで、キャレッジの振動を抑える方法として、以下の方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、スタッカクレーンの下部台車と上部台車にそれぞれ走行用モータを搭載し、これを同期して走行させるスタッカクレーンが開示されている。
また、特許文献2には、昇降マストの上部に設けられたローラの回転を電気粘性流体によって制御することにより走行停止時の揺動を低減する、いわゆるダンパー機構が設けられたスタッカクレーンの揺動低減装置が開示されている。
そして、特許文献3には、昇降マストに設けた加速度計と距離計から昇降マストの振動を観測し、フィードバック制御などで振動発生を抑えるスタッカクレーンの走行停止制御装置が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−104614号公報
【特許文献2】特開平9−208009号公報
【特許文献3】特開2001−88909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の方法には、未だ解決すべき以下のような問題があった。
特許文献1、2の方法は、いずれもキャレッジの振動の発生そのものを抑制しようとするものではなく、発生した振動を新たに設けた各種装置で抑制しようとするものであり、振動発生の根本的な解決にはならない。
また、特許文献3の方法についても、走行台車の走行停止時に発生する昇降マストの揺動を相殺させるように、走行台車の走行停止直前に加減速を行って昇降マストを強制的に揺動させるものであり、キャレッジの振動の発生そのものを抑制しようとするものではなく、振動を十分に低減できるものではない。
更に、特許文献1〜3では、振動を抑えるためだけに使用する各種装置を、スタッカクレーンに新たに設ける必要があり、通常使用しているスタッカクレーンをそのまま使用するものではなく、製造コストが上昇するという問題があった。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、製造コストの上昇を招くことなく、発生する昇降台の自由振動の振幅を小さくして、作業効率を向上させるスタッカクレーンの制振方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的に沿う本発明に係るスタッカクレーンの制振方法は、増速領域、等速領域、及び減速領域を備えた速度パターンで走行レール上を往復走行可能な走行台車と、該走行台車に立設された昇降マストと、搬送物を搭載し前記昇降マストに沿って昇降する昇降台とを有するスタッカクレーンの制振方法であって、
前記昇降台及び前記搬送物の重量と、前記搬送物を載せた該昇降台の高さ位置に基づいて、前記スタッカクレーンの固有振動周期を予め求め、該固有振動周期の2倍以上の整数倍の時間に、前記増速領域及び前記減速領域の時間を設定し、しかも、前記増速領域の加速度パターンを左右対称の増加及び減少加速度とし、前記減速領域の加速度パターンを左右対称の負の増加及び負の減少加速度として、前記搬送物を搭載した昇降台の前記増速領域及び前記減速領域の終了後に発生する自由振動の振幅を小さくする。
【0012】
本発明に係るスタッカクレーンの制振方法において、前記増速領域の速度パターン及び前記減速領域の速度パターンを、それぞれ放物速度曲線とすることが好ましい。
本発明に係るスタッカクレーンの制振方法において、前記増速領域の速度パターン及び前記減速領域の速度パターンを、それぞれ調和速度曲線とすることが好ましい。
本発明に係るスタッカクレーンの制振方法において、前記搬送物を搭載した昇降台の重さを、前記昇降台の昇降用モータの負荷電流から計測することが好ましい。
【0013】
本発明に係るスタッカクレーンの制振方法において、前記固有振動周期を前記走行台車の走行用モータの負荷電流から計測することが好ましい。
本発明に係るスタッカクレーンの制振方法において、前記固有振動周期を解析的に求め、得られた計算結果を更に実測値を用いて補正することが好ましい。
本発明に係るスタッカクレーンの制振方法において、実測値で補正された前記固有振動周期は、複数の点データからなる代表値であって、前記点データの間に存在する前記固有振動周期は、前記複数の点データから補間法によって求められることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜7記載のスタッカクレーンの制振方法は、増速領域及び減速領域の各加速度パターンを、それぞれ左右対称の増加及び減少加速度と負の増加及び負の減少加速度とし、しかも各領域の時間を固有振動周期の2倍以上の整数倍の時間に設定するので、増速領域及び減速領域の終了後に、昇降マストの撓みと搬送物を搭載した昇降台の振動速度を0に設定することができる。これにより、昇降台の振動の発生そのものを抑制でき、自由振動の振幅を小さく、更には0にできるので、残留振動を最小の状態、更には0にできる。
また、昇降台及び搬送物の重量と、搬送物を載せた昇降台の高さ位置に基づいて、スタッカクレーンの固有振動周期を予め求めるので、様々な搬送条件ごとの固有振動周期を得ることができる。
従って、振動が減少するまでのアイドル時間を従来よりも小さくでき、フォーク動作が即座に可能となるため、スタッカクレーンのサイクルタイムを短くでき、作業効率を向上できる。
更に、従来のように、振動を抑えるためだけに使用する各種装置を、スタッカクレーンに新たに設ける必要もない。これは、昇降台及び搬送物の重量を、例えば、昇降台の昇降用モータの負荷電流から計測でき、昇降台の高さ位置を、例えば、スタッカクレーンに設けたレーザ距離計から計測できることによる。
従って、通常使用しているスタッカクレーンをそのまま使用でき、スタッカクレーンの製造コストも低減できる。
【0015】
請求項2記載のスタッカクレーンの制振方法は、増速領域及び減速領域の各速度パターンを放物速度曲線とするので、左右対称の増加及び減少加速度と負の増加及び負の減少加速度を容易に設定できる。
請求項3記載のスタッカクレーンの制振方法は、増速領域及び減速領域の各速度パターンを調和速度曲線とするので、左右対称の増加及び減少加速度と負の増加及び負の減少加速度を容易に設定できる。
請求項4記載のスタッカクレーンの制振方法は、搬送物を搭載した昇降台の重さを、昇降台の昇降用モータの負荷電流から計測するので、別途新たな装置を設けることなく、昇降マストの振動周期を容易に得ることができる。
【0016】
請求項5記載のスタッカクレーンの制振方法は、固有振動周期を走行台車の走行用モータの負荷電流から計測するので、別途新たな装置を設けることなく、昇降マストの振動周期を容易に得ることができる。
請求項6記載のスタッカクレーンの制振方法は、固有振動周期を解析的に求め、得られた計算結果を更に実測値を用いて補正するので、実際に発生する昇降マストの振動周期により近づけることができ、昇降マストの振動を更に抑制できる。
請求項7記載のスタッカクレーンの制振方法は、実測値で補正された固有振動周期が複数の点データからなる代表値であり、点データの間に存在する固有振動周期を複数の点データから補間法によって求めるので、各種条件ごとの全ての固有振動周期を求める必要がなく、データ数の低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、本発明の一実施の形態に係るスタッカクレーンの制振方法を適用するスタッカクレーンについて説明した後、本発明の一実施の形態に係るスタッカクレーンの制振方法について説明する。
図1、図2に示すように、スタッカクレーン10は、直線状の走行レール11上を往復走行可能な走行台車12と、走行台車12に立設された昇降マスト13と、搬送物13aを搭載し昇降マスト13に沿って昇降する昇降台14と、走行台車12上に取付けられ走行台車12の走行制御及び昇降台14の昇降制御を行う制御装置(搭載盤)15とを有する従来公知のものである。なお、スタッカクレーン10の走行方向を前後方向として、以下説明する。
【0018】
走行台車12は、走行台車12の前後下部に配置され、1本の走行レール11上を走行する車輪16と、この車輪16を回転駆動する走行手段17を有している。なお、走行手段17は、制御装置15内に配置され走行台車12の速度制御を行うインバータ18(ベクトル制御式)、減速機19、走行用モータ20、及び走行用モータ20の出力を検出するエンコーダ21を有している。
このように構成することで、制御装置15の制御器21aからの速度指令とエンコーダ21からのフィードバックにより、走行用モータ20をインバータ18で駆動制御し、走行用モータ20の動力を減速機19を介して車輪16へ伝達して、走行台車12を走行させている。なお、走行台車12の走行レール11上の走行距離は、走行台車12に設けられたレーザ距離計22(走行距離検出手段)により測定され、制御器21aに入力される。また、制御器21aには、走行用モータ20を制御するインバータ18の負荷電流も入力される。
【0019】
昇降マスト13は、その高さが数mから数十mのものであり、走行台車12の前後上部に間隔を有して平行に立設された対となるマスト部23、24と、このマスト部23、24をその上端部で接続する横梁25で構成されている。この横梁25の前後上部には、ガイドローラ25aが設けられ、このガイドローラ25aが、スタッカクレーン10の上方に、走行レール11に対して平行に配置されるガイドレール26に沿って回転する構成となっている。
昇降マスト13を構成する一対のマスト部23、24の間には、昇降台14が昇降可能に配置されている。この昇降台14には、搬送物13aの入庫又は出庫を行うためのフォーク(図示しない)が、出し入れ可能に設けられている。
【0020】
また、昇降台14には、ワイヤロープ27(チェーンでもよい)が取付けられ、このワイヤロープ27を、走行台車12上に設けられた巻き上げ機28を用い、巻き上げ又は巻き戻しすることにより、昇降台14を昇降マスト13に沿って昇降可能にしている。
なお、巻き上げ機28は、走行台車12上に設けられた昇降手段29により駆動する。この昇降手段29は、昇降台14の速度制御を行うインバータ30(ベクトル制御式)、減速機31、昇降用モータ32、及び昇降用モータ32の出力を検出するエンコーダ33を有している。
【0021】
このように構成することで、制御器21aからの速度指令とエンコーダ33からのフィードバックにより、昇降用モータ32をインバータ30で駆動制御し、昇降用モータ32の動力を減速機31を介して巻き上げ機28へ伝達して、昇降台14を昇降マスト13に沿って昇降できる。なお、昇降台14の走行台車12に対する高さ位置は、走行台車12に設けられたレーザ距離計34(高さ位置検出手段)により測定され、制御器21aに入力される。また、制御器21aには、昇降用モータ32を制御するインバータ30の負荷電流も入力される。
【0022】
以上に示したように、スタッカクレーン10は、振動を抑制するための特別な装置を新たに付加したものではなく、この条件が満足されるものであれば、上記した構成に限定されるものではない。
例えば、昇降マストを、2本のマスト部で構成した場合について説明したが、1本のマスト部で構成してもよい。
また、走行台車の走行距離は、レーザ距離計により測定した場合について説明したが、走行台車にエンコーダを取り付けて測定してもよい。なお、昇降台の高さ位置についても、巻き上げ機にエンコーダを取り付けて測定してもよい。また、昇降台の高さ位置については、昇降用モータのエンコーダで測定してもよい。
【0023】
次に、本発明の一実施の形態に係るスタッカクレーンの制振方法について説明する。
図3(A)に示すように、従来のスタッカクレーン10は、増速領域、等速領域、及び減速領域を備えた台形速度曲線の速度パターンで、走行レール11上を往復走行している。なお、増速領域の加速度パターンは、図3(B)の加速度と時間との関係図及び式で表され、増速領域の時間ta内では一定の加速度a0になっている。一方、減速領域の加速度パターンは、減速領域の時間td内では一定の負の加速度−a0になっている。
このとき、スタッカクレーン10の増速領域と減速領域の終了後では、昇降マスト13に振動が発生する。
そこで、増速領域の加速度パターンを左右対称の増加及び減少加速度とし、減速領域の加速度パターンを左右対称の負の増加及び負の減少加速度とする。
【0024】
具体的には、図4(A)に示すように、増速領域の速度パターン及び減速領域の速度パターンを、それぞれ前記した台形速度曲線の増速領域及び減速領域の直線に対してS字状に交差する調和速度曲線とする。このとき、増速領域での加速度パターンは、図4(B)に示すように、加速度を徐々に増加させた後、徐々に減少させる曲線となり、左右対称の増加及び減少加速度となっている。一方、減速領域での加速度パターンは、図4(C)に示すように、加速度を負の方向に徐々に増加させた後、徐々に減少させる曲線となり、左右対称の負の増加及び負の減少加速度となっている。なお、図4(C)に示す関係図は、図4(B)に示す関係図を、時間軸に対して対称にした形状で表される。
【0025】
なお、増速領域の速度パターン及び減速領域の速度パターンは、それぞれ放物速度曲線としてもよい。このときの増速領域での加速度パターンは、図5(A)に示すように、増速領域の全時間taの半分の時間ta/2まで加速度を直線的に上昇させ、その後、加速度を直線的に減少させた左右対称の増加及び減少加速度となっている。なお、図5(A)には、この関係図の式も記載している。一方、減速領域での加速度パターンは、図5(B)に示すように、増速領域の全時間tdの半分の時間td/2まで、加速度を直線的に負の方向に増加させ、その後、加速度を直線的に減少させた左右対称の負の増加及び負の減少加速度となっている。なお、図5(B)に示す関係図は、図5(A)に示す関係図を、時間軸に対して対称にした形状で表される。
【0026】
しかし、昇降マストの撓みが0、即ち、昇降マストが走行台車に対して垂直状態に戻ったときに、振動速度が0とならなければ、昇降マストに振動が発生する。
そこで、増速領域の時間ta及び減速領域の時間tdを、スタッカクレーンの固有振動周期の2倍以上の整数倍の時間に設定する必要がある。なお、各時間ta、tdの上限については規定していないが、この時間が長くなれば、スタッカクレーンのサイクルタイムが長くなり、作業効率が悪くなるので、2倍、3倍、又は4倍(最も好ましくは2倍)とすることが好ましい。
以下、増速領域の時間ta及び減速領域の時間tdを、上記した値に設定した理由について説明する。
【0027】
まず、図6(A)に示すように、スタッカクレーンを、上端部に錘が付けられた板ばねを台車に立設したモデルに置き換える。ここで、ばねが、図6(B)に示す自由振動を行う場合の関係式は、ニュートンの第二法則から得られる式(1)と、フックの法則から得られる式(2)から、式(3)の自由振動方程式で表される。なお、mは錘の質量、kは板ばねの弾性係数である。
【0028】
【数1】
【0029】
【数2】
【0030】
【数3】
【0031】
これを、加速度で表すと、式(4)となる。
【0032】
【数4】
【0033】
この自由振動方程式の解(斉次解)は、振動振幅の時間変化、即ち調和関数で表され、式(5)が得られる。なお、A、Bはそれぞれ定数であり、ωは錘の振動角周波数である。
【0034】
【数5】
【0035】
この式(4)と式(5)から、式(6)に示す振動角周波数ωが得られ、この式(6)から式(7)が得られる。
【0036】
【数6】
【0037】
【数7】
【0038】
更に、式(4)、式(6)、式(7)から、式(8)が得られる。
【0039】
【数8】
【0040】
ここで、(A2+B2)1/2は錘の振幅を、(k/m)1/2は錘の振動角周波数(周期)を、tan−1(B/A)は位相を、それぞれ表している。
続いて、図6(C)に示すように、台車を加速したときのばねの振動(強制振動)について説明する。
このときのばねの振動は、前記した式(1)及び式(2)と、ニュートンの第二法則から得られる式(9)の外力から、式(10)の強制振動方程式で表される。
【0041】
【数9】
【0042】
【数10】
【0043】
これを、加速度で表すと、式(11)となる。
【0044】
【数11】
【0045】
この強制振動方程式の解(非斉次解)は、式(12)に示すように、一般解xhと特殊解xpの和である。この一般解(斉次解)xhを式(13)に、特殊解xpを式(14)に、それぞれ示す。なお、a0は一定の加速度であり、A0は定数である。
【0046】
【数12】
【0047】
【数13】
【0048】
【数14】
【0049】
ここで、台車の加速度を、図3(B)に示すように、ステップ的(段階的)に与えた場合、前記した式(11)に、上記した式(14)、及びこの式(14)から得られる式(15)を代入することで、式(16)が得られる。
【0050】
【数15】
【0051】
【数16】
【0052】
この式(16)をA0について解くと、式(17)となる。
【0053】
【数17】
【0054】
以上から得られた式(13)と式(17)を、式(12)に代入することで、式(18)が得られる。
【0055】
【数18】
【0056】
ここで、式(18)に、それぞれ境界条件t=0、t=T/4を代入することで、定数A、Bが、式(19)に示すように求まる。なお、Tは振動周期である。
【0057】
【数19】
【0058】
この式(19)を式(18)に代入することで、式(20)が得られる。
【0059】
【数20】
【0060】
この式(20)から、式(21)に示す振動周期Tと、式(22)に示す振幅が、それぞれ得られる。
【0061】
【数21】
【0062】
【数22】
【0063】
上記した式(21)から、錘の振動周期Tは昇降台が重いほど大きく、また式(22)から、錘の振幅が加速度に比例し、更に錘の振動周期Tの2乗で大きくなることがわかる。
次に、台車の加速度を、図4(B)に示した式(23)で与えた場合について検討する。
【0064】
【数23】
【0065】
この式(23)を、式(10)に代入すると式(24)で示され、更にこの式(24)を、式(25)に示すように、加速度について表し、更にω0とω1を規定すると、式(26)が得られる。なお、ω0は昇降マストの振動周期であり、ω1は台車の加速周期である。
【0066】
【数24】
【0067】
【数25】
【0068】
【数26】
【0069】
なお、式(26)の特殊解は、式(27)で表されるため、xの解は式(28)となる。このC、Dはそれぞれ定数である。
【0070】
【数27】
【0071】
【数28】
【0072】
ここで、式(29)と式(30)を、前記した式(26)から得られる式(31)に代入する。
【0073】
【数29】
【0074】
【数30】
【0075】
【数31】
【0076】
このとき、式(32)が恒等的に成り立つためには、C及びDが式(33)の条件を満たす必要があるので、これを前記した式(29)に代入すると、式(34)が得られる。
【0077】
【数32】
【0078】
【数33】
【0079】
【数34】
【0080】
従って、この式(34)と、前記した式(20)及び式(28)から、式(35)が得られる。
【0081】
【数35】
【0082】
この式(35)が昇降マストの振動を表す式となる。
ここで、台車の加速時間を昇降マストの振動周期の2倍、即ちω1=ω0/2とすると、昇降マストの振動振幅は式(36)で、また昇降マストの振動速度は式(37)で、それぞれ表される。
【0083】
【数36】
【0084】
【数37】
【0085】
上記した昇降マストの振動振幅を示す式(36)は、昇降マストの撓みエネルギーに相当し、昇降マストの振動速度を示す式(37)は、昇降マストの運動エネルギーに相当する。これを図7に示す。
この図7からも明らかなように、式(36)と式(37)において、t=2T=4π/ω0のときは、昇降マストが垂直状態に戻ったときで、昇降マストの振動速度がゼロになるので、振動が発生しなくなる。
このため、走行台車が停止するタイミングで、昇降マストの撓みがゼロで、その振動速度もゼロとなり、停止後の残留振動を最小の状態に、更にはゼロにできる。
以上のことから、増速領域の時間ta及び減速領域の時間tdを、昇降マスト(スタッカクレーン)の固有振動周期の2倍以上の整数倍の時間に設定した。
【0086】
しかし、実際には、搬送物を載置した昇降台の高さ位置hや重さmが変化することで、昇降マストの固有振動周期が変化する。この固有振動周期は、次のような方法で求めることができる。
1)フレーム構造のモデルを使って、振動方程式から行列計算で、又は有限要素法の汎用解析プログラムを使用して、解析的に求める。
2)スタッカクレーンの走行用モータを制御する走行用インバータ(ベクトル制御)のベクトル電流は、昇降マストが振動するときに振動波形を描くため、このベクトル電流を計測することで求める。
3)昇降マストにひずみゲージやレーザ距離計を取り付け、計測して求める。
【0087】
昇降マストの固有振動周期Tと、搬送物を載置した昇降台の高さ位置h及びその搬送物の重さmとの関係は、例えば、図8のような関係を示す。
図8は、断面が175mm×175mmのマスト部を使用し、昇降台の高さ位置hを12mの範囲で変えた場合の0〜500kgの各搬送物の重さmの固有振動周期Tの解析結果を示している。なお、この解析は、昇降台の自重210kgを含んで行っている。
図8からも明らかなように、固有振動周期Tは、高さ位置h及び重さmと相関性があるため、この高さ位置h及び重さmから求めることができる。
【0088】
昇降マストの固有振動周期を、上記した1)の方法で求めた場合には、更に上記した2)の方法を用いて振動測定を行い補正することにより、図9に示すように、固有振動周期を更に精度良く求めることができる。
このように、実測値で補正された固有振動周期は、複数の点データ(図8では、42個の点データ)からなる代表値であるため、この点データの間に存在する高さ位置hと重さmの固有振動周期は、これらの複数の点データから補間法によって求めることができる。
これにより、例えば、搬送物を載置した昇降台の高さ位置及び搬送物の重さから、昇降マストの固有振動周期が求まるプログラムを使用して、固有振動周期を求めることができる。
【0089】
また、搬送物を搭載した昇降台の重さは、昇降台の昇降用モータを制御する昇降用インバータ(ベクトル制御)のトルク電流から計測することができる。
ここで、質量Wとトルク電流Iとの関係について、以下の方法で検討した。
1個25kgの錘を20個準備し、この錘を、重さ210kgの昇降台に50kgずつ載置して、インバータのトルク電流Iを測定した。このときの質量Wとトルク電流Iとの関係を、図10に示す。
以上の測定結果から、質量Wとトルク電流Iとの関係は、図10の直線で示した次の式で表される。
W=Wend・I/Iend=150×I(kg)
即ち、質量Wは、K×Iで計算できる。
従って、トルク電流Iは、昇降台の質量Wに比例して増えることがわかった。
【0090】
以上のことから、増速領域及び減速領域の時間ta、tdを、予め求めたスタッカクレーンの固有振動周期の2倍以上の整数倍の時間に設定し、しかも、増速領域及び減速領域の各加速度パターンを左右対称の増加及び減少加速度及び負の増加及び負の減少加速度とすることで、フィードフォワード的に、昇降台の増速領域及び減速領域の終了後に発生する自由振動の振幅を小さくできる。従って、簡単な制御方法で、停止後の昇降マストの振動発生を抑制することができる。
【0091】
なお、棚の位置によっては、昇降台の昇降を行いながら、走行台車の走行を停止する場合がある。この場合、昇降マストの振動周期が変化しているので、理論的には、走行台車の停止のタイミングで、昇降マストの撓みが0(垂直状態)、かつ昇降マストの振動速度が0となることはなく、昇降マストに振動が発生する。しかし、発生する昇降マストの振動の大きさは、走行台車の停止のタイミングでの昇降マストの振動周期、減速のタイミングでの昇降マストの振動周期、更にその近傍の振動周期の2以上の整数倍に設定すれば、最小にする効果がある。
【0092】
ここで、振動の大きさは、前記したように、振動周期の二乗に比例して大きくなる性質をもち、また、昇降マストの振動周期は昇降台の高さ位置が高いほど、また質量が重いほど大きくなる性質をもつ。更に、2本のマスト部を上部で連結したフレーム構造の場合、その上部にいくほど振動周期は大きくなるが、その変化率は、高さ位置が半分程度で最大変化を示し、上部にいくほど小さくなる。
従って、昇降台の昇降を行いながら、走行台車の走行を停止するとしても、振動周期の変化が小さいため、振動発生を抑える効果はある。
なお、昇降マストの撓み量は、昇降マストの設計時にその大きさが問題がない程度に、マスト部の径などを大きくしたりして設計されるので、フォーク動作に支障があるような大きな残留振動振幅にならないように製作されているものと考えられる。
【実施例】
【0093】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、図1に示すフレーム構造のスタッカクレーンのモデルについて検討した。なお、昇降マストの2本のマスト部は、高さ14.6m、肉厚6mm、幅175mmの断面正方形の鉄角パイプで製作され、この2本の角パイプがその上端部で横梁により連結されている。また、昇降台の自重を180kg、搬送物の荷重を1000kgとした。
一方、搬送物を入庫又は出庫する棚(ラック)は、幅方向の連ピッチが1.26m、高さ方向の段ピッチが1.6mであり、全部で38連8段あるものとし、1連1段の棚の手前にステーションが存在し、このステーションから38連8段棚への入庫の場合の台車加速度、台車速度、昇降台の昇降速度の変化の様子を調べた。
【0094】
まず、比較例として、スタッカクレーンの速度パターンを台形速度曲線とした場合、即ち走行台車(以下、単に台車ともいう)の加速度及び減速度を、0.1Gで一定にした結果について、図11、図12を参照しながら説明する。なお、台車の走行最高速度を120m/分、昇降台の昇降最高速度を30m/分とした。また、昇降台は、台車が減速を開始する直前で昇降が完了し、11.2mの高さに位置させた。そして、昇降台の自重と搬送物の荷重を加えた1180kgの質点が、昇降マストの上部にある状態で、台車の減速を開始した。なお、昇降マストの振動周期は、有限要素法で計算すると1.17秒であった。また、減速時間は、120m/分から0m/分まで、0.1Gの一定で減速するので、2.00秒となる。
ここで、台車の加速度と昇降マストの撓みとの関係は、昇降マストを弾性体としたばねの要素と昇降台という質点と昇降マストの分布荷重という慣性項、台車の加速度によって発生する強制外力といった要素から表される振動方程式が成立する。この微分方程式を、ルンゲクッタ法で数値積分して、昇降マストの振動の振幅の変化を求めた振動の様子を、図12に示す。
【0095】
図12から明らかなように、台車の減速停止中に昇降マストは前方に傾き、物理的に決まった最大傾きの位置から方向を変えて垂直の状態に戻り、また前方に戻ろうとする振動を、一定の振動周期で繰り返す。このとき、台車は、この振動のタイミングとは独立したタイミングで停止するので、停止が撓みが大きくなるタイミングで行われると、その撓み量と同じ量で、振動の中心位置が昇降マストの垂直状態の位置に変わり、いわゆる自由振動を繰り返すことになる。なお、実際には減衰があるので、複数回繰り返す間に、振幅は小さくなってくる。
この場合、片側40mmの振れ幅で、1.17秒周期の振動が発生することが分かる。フォークがラックなどと衝突しないで動作できる横揺れ幅を5mm以下とした場合、昇降台が11.2mでマスト先端14.6mに接近した位置なので、おおよそ昇降マスト先端と同じ振れ幅で昇降台が横揺れしてることになり、15秒近くフォーク動作が行えないことになる。
【0096】
次に、実施例として、スタッカクレーンの増速領域と減速領域の速度パターンを調和速度曲線とした場合、即ち平均加速度を上記した台形速度曲線と同じ0.1G付近にし、加速時間と減速時間に差が生じないようにした結果について、図13、図14を参照しながら説明する。なお、台車の速度及び加速度は、図4(A)、(B)に示す形状となる。
減速開始のタイミングでは、昇降台は搬送物を積んで停止している。この状況では、昇降マストの振動周期は一定値を保ち、1.17秒であることが分かる。そこで、減速時間を振動周期の2倍に設定して2.34秒とした。そのときの昇降マストの撓み(振動)の様子は、図14に示すようになる。
【0097】
ここで、1−cos{(2π/Td)×t}という減速度曲線で、その周期Tdを振動周期Tの2倍にする。この場合、昇降マストは前方に撓んで、最大撓みに達すると垂直位置に戻りだし、垂直位置に戻る時間がTの2倍の時間になるという性質をもつ。このため、このタイミングで台車の減速が停止した場合、昇降マストを垂直位置で静止した状態で停止させることができる。
なお、図14に示すシミュレーション結果では、その残留した昇降マスト先端での自由振動の片側振れ幅が3mmという結果になっており、アイドル時間を設けずに、即フォーク動作を行うことができることを示している。
以上の結果から、本願発明のスタッカクレーンの制振方法を適用することで、製造コストの上昇を招くことなく、発生する昇降台の自由振動の振幅を小さくして、作業効率を向上させることができることを確認できた。
【0098】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明のスタッカクレーンの制振方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、スタッカクレーンとして、昇降マストの振動を抑制するための特別な装置を設けていないスタッカクレーンを使用した場合について説明したが、例えば、昇降マストの上端部に従来公知のダンパー機構を設けてもよい。本願発明の作用効果により、昇降台の振幅を充分に抑制できるが、この場合、簡単な構成のダンパー機構を設けることにより、昇降台の振幅を更に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスタッカクレーンの制振方法を適用するスタッカクレーンの正面図である。
【図2】同スタッカクレーンの制御ブロックの説明図である。
【図3】(A)、(B)はそれぞれスタッカクレーンの台形速度曲線の速度パターンの説明図、加速度パターンの説明図である。
【図4】(A)〜(C)はそれぞれスタッカクレーンの調和速度曲線の速度パターンの説明図、増速領域の加速度パターンの説明図、減速領域の加速度パターンの説明図である。
【図5】(A)、(B)はそれぞれスタッカクレーンの放物速度曲線の増速領域の加速度パターンの説明図、減速領域の加速度パターンの説明図である。
【図6】(A)〜(C)はそれぞればね台車のモデルの説明図、錘が自由振動する場合の説明図、錘が強制振動する場合の説明図である。
【図7】昇降マストの振動振幅と振動速度との関係を示す説明図である。
【図8】昇降マストの固有振動周期と搬送物を載置した昇降台の高さ位置及びその重さとの関係を示す説明図である。
【図9】昇降マストの固有振動周期の解析値とこの解析値の補正値を示す説明図である。
【図10】搬送物を載置した昇降台の質量Wとトルク電流Iとの関係を示す説明図である。
【図11】比較例に係る台車加速度と台車速度と昇降台の昇降速度変化を示す説明図である。
【図12】同台車加速度と昇降マストの振動変化を示す説明図である。
【図13】実施例に係る台車加速度と台車速度と昇降台の昇降速度変化を示す説明図である。
【図14】同台車加速度と昇降マストの振動変化を示す説明図である。
【符号の説明】
【0100】
10:スタッカクレーン、11:走行レール、12:走行台車、13:昇降マスト、13a:搬送物、14:昇降台、15:制御装置、16:車輪、17:走行手段、18:インバータ、19:減速機、20:走行用モータ、21:エンコーダ、21a:制御器、22:レーザ距離計、23、24:マスト部、25:横梁、25a:ガイドローラ、26:ガイドレール、27:ワイヤロープ、28:巻き上げ機、29:昇降手段、30:インバータ、31:減速機、32:昇降用モータ、33:エンコーダ、34:レーザ距離計
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体倉庫又は自動倉庫で搬送物の搬出入に使用されるスタッカクレーンの制振方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体倉庫又は自動倉庫の荷役作業を行う機械として、スタッカクレーンが使用されている。
スタッカクレーンは、走行レール上を往復走行可能な走行台車と、走行台車に立設された昇降マストと、搬送物を搭載し昇降マストに沿って昇降する昇降台(以下、キャレッジともいう)とを有している。また、スタッカクレーンの走行台車の走行と昇降台の昇降の各制御は、スタッカクレーンに搭載された制御装置(以下、搭載盤ともいう)により行われる。
このスタッカクレーンの使用にあっては、ステーションから棚への搬送物の入庫、又は棚からステーションへの搬送物の出庫を行うように、上位の制御盤(地上盤と称する)から制御装置へ指令を送っている。なお、この時点で、スタッカクレーンの走行距離と昇降距離が決定されるので、この決定した位置に移動して停止するような走行速度軌道(走行速度曲線)及び昇降速度軌道(昇降速度曲線)を決定している。そして、モータの回転速度を制御する装置に速度指令を行い、スタッカクレーンの走行台車の走行及びキャレッジの昇降を行っている。
【0003】
上記した走行速度軌道の最も簡単な形は台形であり、スタッカクレーンの走行はこの台形速度曲線に合わせて行われている。具体的には、走行台車の走行速度を一定加速度で直線的に増加させ(以下、増速領域ともいう)、予め決めた最高速度に達した時点で加速をやめて一定速度とした後、停止位置から減速に必要な距離を引いた位置から一定減速度で直線的に減速して(以下、減速領域ともいう)、走行速度が0となる位置で走行台車を停止している。
ここで、走行台車が一定速度で走行している間(即ち、増速領域の終了後)と、減速して走行を停止した後(即ち、減速領域の終了後)の昇降マストの変形を物理的に考える。この昇降マストは、断面矩形状(弾性体)であり、その下端部が走行台車に固定され、上端部がガイドローラで上部レールに接しているため、昇降マストが常に垂直状態を保って走行台車と同じ動きをする一方、その上端部をほとんど自由端として考えることができる。
【0004】
一方、実際のスタッカクレーンは、フレーム構造となっており、昇降マストを構成する2本のマスト部を走行台車に立設して、その上部を横梁で結合している。このため、昇降マストは、各マスト部と横梁との接合部分が常に直角状態を保つように変形しようとするので、自由端の場合よりも撓みが減少する。また、昇降マストを昇降するキャレッジは、重量が重い質点として考えることができるため、昇降マストに質点が存在することになり、走行台車が加速した場合に慣性力が発生するポイントとなる。更に、昇降マストそのものも、その高さ方向に分布質量をもつため、慣性力が発生する。
このため、スタッカクレーンの走行台車が一定の加速を続けると、これらの慣性力によって昇降マストが横方向に撓みだし、その撓みの時間変化がA{1−cos(ωt)}という振動(振幅)となる。なお、Aは平均撓み量(振幅)、ωは昇降マストの振動角速度である。このとき、昇降マストがばねの要素をもち、質点が錘の要素を有するので、キャレッジと昇降マストを、上端部に錘がつけられたばねを走行台車に固定したモデルとして考えることができ、従って、ある固有振動数でキャレッジが振動を行うと考えることができる。
【0005】
通常は、キャレッジの振動の状態を考慮することなく、走行台車の走行速度が最高速度に達したら走行台車の加速をやめ、減速位置に到達したら走行台車の減速を開始しその停止位置で減速をやめるので、慣性力が発生している期間と振動の周期とが一定の関係にない。例えば、昇降マストが一番撓んで中心位置に戻りだす位相のときに、走行台車の加速又は減速をやめると、昇降マストが中心位置に戻ろうとするため、昇降マストはこの中心位置のときに最大速度を有する。
このため、この運動エネルギーが昇降マストをスタッカクレーンの進行方向又は後退方向に撓ませ、昇降マストが最大振幅に達したときに、上記した運動エネルギーの全てが昇降マストを撓ませるエネルギーに変わる。続いて、昇降マストは今までとは反対側に速度を増しながら中心位置に向かって振れるようになる。従って、スタッカクレーンが、その上部にガイドローラがあるだけの構造のように、振れの減衰が小さい場合には、数周期間自由振動を行うようになる。なお、この振動周期は、キャレッジの重さが重くその高さ位置が高いほど遅くなり、また振動周期の二乗で撓み量も大きくなる。更に、この撓み量は、走行台車の加速度に比例して大きくなる。
【0006】
特に、昇降マストは、その高さが数mから数十mに達するものがほとんどであるため、キャレッジが上部にあるほどキャレッジの揺動が大きい。このため、走行台車の走行停止後に、キャレッジに搭載したフォークにより行う搬送物の受け渡しを、キャレッジの横揺れが収まるまで行うことができなかった。キャレッジが振動している状態で、搬送物の入庫又は出庫のためのフォーク動作を行うと、フォークが棚に衝突する恐れがあるからである。
このため、キャレッジの振動が小さくなるまでの時間として、走行台車が停止してからフォークを出すまでのアイドル時間を設定する必要があった。なお、アイドル時間は、例えば、棚の位置、入庫動作、出庫動作、及び荷の重さ等の各状況により、様々であるため、これらの最大時間に設定する必要があり、必要以上にスタッカクレーンのサイクルタイムを伸ばしてしまい、作業効率が非常に悪いものとなっていた。
【0007】
そこで、キャレッジの振動を抑える方法として、以下の方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、スタッカクレーンの下部台車と上部台車にそれぞれ走行用モータを搭載し、これを同期して走行させるスタッカクレーンが開示されている。
また、特許文献2には、昇降マストの上部に設けられたローラの回転を電気粘性流体によって制御することにより走行停止時の揺動を低減する、いわゆるダンパー機構が設けられたスタッカクレーンの揺動低減装置が開示されている。
そして、特許文献3には、昇降マストに設けた加速度計と距離計から昇降マストの振動を観測し、フィードバック制御などで振動発生を抑えるスタッカクレーンの走行停止制御装置が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−104614号公報
【特許文献2】特開平9−208009号公報
【特許文献3】特開2001−88909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の方法には、未だ解決すべき以下のような問題があった。
特許文献1、2の方法は、いずれもキャレッジの振動の発生そのものを抑制しようとするものではなく、発生した振動を新たに設けた各種装置で抑制しようとするものであり、振動発生の根本的な解決にはならない。
また、特許文献3の方法についても、走行台車の走行停止時に発生する昇降マストの揺動を相殺させるように、走行台車の走行停止直前に加減速を行って昇降マストを強制的に揺動させるものであり、キャレッジの振動の発生そのものを抑制しようとするものではなく、振動を十分に低減できるものではない。
更に、特許文献1〜3では、振動を抑えるためだけに使用する各種装置を、スタッカクレーンに新たに設ける必要があり、通常使用しているスタッカクレーンをそのまま使用するものではなく、製造コストが上昇するという問題があった。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、製造コストの上昇を招くことなく、発生する昇降台の自由振動の振幅を小さくして、作業効率を向上させるスタッカクレーンの制振方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的に沿う本発明に係るスタッカクレーンの制振方法は、増速領域、等速領域、及び減速領域を備えた速度パターンで走行レール上を往復走行可能な走行台車と、該走行台車に立設された昇降マストと、搬送物を搭載し前記昇降マストに沿って昇降する昇降台とを有するスタッカクレーンの制振方法であって、
前記昇降台及び前記搬送物の重量と、前記搬送物を載せた該昇降台の高さ位置に基づいて、前記スタッカクレーンの固有振動周期を予め求め、該固有振動周期の2倍以上の整数倍の時間に、前記増速領域及び前記減速領域の時間を設定し、しかも、前記増速領域の加速度パターンを左右対称の増加及び減少加速度とし、前記減速領域の加速度パターンを左右対称の負の増加及び負の減少加速度として、前記搬送物を搭載した昇降台の前記増速領域及び前記減速領域の終了後に発生する自由振動の振幅を小さくする。
【0012】
本発明に係るスタッカクレーンの制振方法において、前記増速領域の速度パターン及び前記減速領域の速度パターンを、それぞれ放物速度曲線とすることが好ましい。
本発明に係るスタッカクレーンの制振方法において、前記増速領域の速度パターン及び前記減速領域の速度パターンを、それぞれ調和速度曲線とすることが好ましい。
本発明に係るスタッカクレーンの制振方法において、前記搬送物を搭載した昇降台の重さを、前記昇降台の昇降用モータの負荷電流から計測することが好ましい。
【0013】
本発明に係るスタッカクレーンの制振方法において、前記固有振動周期を前記走行台車の走行用モータの負荷電流から計測することが好ましい。
本発明に係るスタッカクレーンの制振方法において、前記固有振動周期を解析的に求め、得られた計算結果を更に実測値を用いて補正することが好ましい。
本発明に係るスタッカクレーンの制振方法において、実測値で補正された前記固有振動周期は、複数の点データからなる代表値であって、前記点データの間に存在する前記固有振動周期は、前記複数の点データから補間法によって求められることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜7記載のスタッカクレーンの制振方法は、増速領域及び減速領域の各加速度パターンを、それぞれ左右対称の増加及び減少加速度と負の増加及び負の減少加速度とし、しかも各領域の時間を固有振動周期の2倍以上の整数倍の時間に設定するので、増速領域及び減速領域の終了後に、昇降マストの撓みと搬送物を搭載した昇降台の振動速度を0に設定することができる。これにより、昇降台の振動の発生そのものを抑制でき、自由振動の振幅を小さく、更には0にできるので、残留振動を最小の状態、更には0にできる。
また、昇降台及び搬送物の重量と、搬送物を載せた昇降台の高さ位置に基づいて、スタッカクレーンの固有振動周期を予め求めるので、様々な搬送条件ごとの固有振動周期を得ることができる。
従って、振動が減少するまでのアイドル時間を従来よりも小さくでき、フォーク動作が即座に可能となるため、スタッカクレーンのサイクルタイムを短くでき、作業効率を向上できる。
更に、従来のように、振動を抑えるためだけに使用する各種装置を、スタッカクレーンに新たに設ける必要もない。これは、昇降台及び搬送物の重量を、例えば、昇降台の昇降用モータの負荷電流から計測でき、昇降台の高さ位置を、例えば、スタッカクレーンに設けたレーザ距離計から計測できることによる。
従って、通常使用しているスタッカクレーンをそのまま使用でき、スタッカクレーンの製造コストも低減できる。
【0015】
請求項2記載のスタッカクレーンの制振方法は、増速領域及び減速領域の各速度パターンを放物速度曲線とするので、左右対称の増加及び減少加速度と負の増加及び負の減少加速度を容易に設定できる。
請求項3記載のスタッカクレーンの制振方法は、増速領域及び減速領域の各速度パターンを調和速度曲線とするので、左右対称の増加及び減少加速度と負の増加及び負の減少加速度を容易に設定できる。
請求項4記載のスタッカクレーンの制振方法は、搬送物を搭載した昇降台の重さを、昇降台の昇降用モータの負荷電流から計測するので、別途新たな装置を設けることなく、昇降マストの振動周期を容易に得ることができる。
【0016】
請求項5記載のスタッカクレーンの制振方法は、固有振動周期を走行台車の走行用モータの負荷電流から計測するので、別途新たな装置を設けることなく、昇降マストの振動周期を容易に得ることができる。
請求項6記載のスタッカクレーンの制振方法は、固有振動周期を解析的に求め、得られた計算結果を更に実測値を用いて補正するので、実際に発生する昇降マストの振動周期により近づけることができ、昇降マストの振動を更に抑制できる。
請求項7記載のスタッカクレーンの制振方法は、実測値で補正された固有振動周期が複数の点データからなる代表値であり、点データの間に存在する固有振動周期を複数の点データから補間法によって求めるので、各種条件ごとの全ての固有振動周期を求める必要がなく、データ数の低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、本発明の一実施の形態に係るスタッカクレーンの制振方法を適用するスタッカクレーンについて説明した後、本発明の一実施の形態に係るスタッカクレーンの制振方法について説明する。
図1、図2に示すように、スタッカクレーン10は、直線状の走行レール11上を往復走行可能な走行台車12と、走行台車12に立設された昇降マスト13と、搬送物13aを搭載し昇降マスト13に沿って昇降する昇降台14と、走行台車12上に取付けられ走行台車12の走行制御及び昇降台14の昇降制御を行う制御装置(搭載盤)15とを有する従来公知のものである。なお、スタッカクレーン10の走行方向を前後方向として、以下説明する。
【0018】
走行台車12は、走行台車12の前後下部に配置され、1本の走行レール11上を走行する車輪16と、この車輪16を回転駆動する走行手段17を有している。なお、走行手段17は、制御装置15内に配置され走行台車12の速度制御を行うインバータ18(ベクトル制御式)、減速機19、走行用モータ20、及び走行用モータ20の出力を検出するエンコーダ21を有している。
このように構成することで、制御装置15の制御器21aからの速度指令とエンコーダ21からのフィードバックにより、走行用モータ20をインバータ18で駆動制御し、走行用モータ20の動力を減速機19を介して車輪16へ伝達して、走行台車12を走行させている。なお、走行台車12の走行レール11上の走行距離は、走行台車12に設けられたレーザ距離計22(走行距離検出手段)により測定され、制御器21aに入力される。また、制御器21aには、走行用モータ20を制御するインバータ18の負荷電流も入力される。
【0019】
昇降マスト13は、その高さが数mから数十mのものであり、走行台車12の前後上部に間隔を有して平行に立設された対となるマスト部23、24と、このマスト部23、24をその上端部で接続する横梁25で構成されている。この横梁25の前後上部には、ガイドローラ25aが設けられ、このガイドローラ25aが、スタッカクレーン10の上方に、走行レール11に対して平行に配置されるガイドレール26に沿って回転する構成となっている。
昇降マスト13を構成する一対のマスト部23、24の間には、昇降台14が昇降可能に配置されている。この昇降台14には、搬送物13aの入庫又は出庫を行うためのフォーク(図示しない)が、出し入れ可能に設けられている。
【0020】
また、昇降台14には、ワイヤロープ27(チェーンでもよい)が取付けられ、このワイヤロープ27を、走行台車12上に設けられた巻き上げ機28を用い、巻き上げ又は巻き戻しすることにより、昇降台14を昇降マスト13に沿って昇降可能にしている。
なお、巻き上げ機28は、走行台車12上に設けられた昇降手段29により駆動する。この昇降手段29は、昇降台14の速度制御を行うインバータ30(ベクトル制御式)、減速機31、昇降用モータ32、及び昇降用モータ32の出力を検出するエンコーダ33を有している。
【0021】
このように構成することで、制御器21aからの速度指令とエンコーダ33からのフィードバックにより、昇降用モータ32をインバータ30で駆動制御し、昇降用モータ32の動力を減速機31を介して巻き上げ機28へ伝達して、昇降台14を昇降マスト13に沿って昇降できる。なお、昇降台14の走行台車12に対する高さ位置は、走行台車12に設けられたレーザ距離計34(高さ位置検出手段)により測定され、制御器21aに入力される。また、制御器21aには、昇降用モータ32を制御するインバータ30の負荷電流も入力される。
【0022】
以上に示したように、スタッカクレーン10は、振動を抑制するための特別な装置を新たに付加したものではなく、この条件が満足されるものであれば、上記した構成に限定されるものではない。
例えば、昇降マストを、2本のマスト部で構成した場合について説明したが、1本のマスト部で構成してもよい。
また、走行台車の走行距離は、レーザ距離計により測定した場合について説明したが、走行台車にエンコーダを取り付けて測定してもよい。なお、昇降台の高さ位置についても、巻き上げ機にエンコーダを取り付けて測定してもよい。また、昇降台の高さ位置については、昇降用モータのエンコーダで測定してもよい。
【0023】
次に、本発明の一実施の形態に係るスタッカクレーンの制振方法について説明する。
図3(A)に示すように、従来のスタッカクレーン10は、増速領域、等速領域、及び減速領域を備えた台形速度曲線の速度パターンで、走行レール11上を往復走行している。なお、増速領域の加速度パターンは、図3(B)の加速度と時間との関係図及び式で表され、増速領域の時間ta内では一定の加速度a0になっている。一方、減速領域の加速度パターンは、減速領域の時間td内では一定の負の加速度−a0になっている。
このとき、スタッカクレーン10の増速領域と減速領域の終了後では、昇降マスト13に振動が発生する。
そこで、増速領域の加速度パターンを左右対称の増加及び減少加速度とし、減速領域の加速度パターンを左右対称の負の増加及び負の減少加速度とする。
【0024】
具体的には、図4(A)に示すように、増速領域の速度パターン及び減速領域の速度パターンを、それぞれ前記した台形速度曲線の増速領域及び減速領域の直線に対してS字状に交差する調和速度曲線とする。このとき、増速領域での加速度パターンは、図4(B)に示すように、加速度を徐々に増加させた後、徐々に減少させる曲線となり、左右対称の増加及び減少加速度となっている。一方、減速領域での加速度パターンは、図4(C)に示すように、加速度を負の方向に徐々に増加させた後、徐々に減少させる曲線となり、左右対称の負の増加及び負の減少加速度となっている。なお、図4(C)に示す関係図は、図4(B)に示す関係図を、時間軸に対して対称にした形状で表される。
【0025】
なお、増速領域の速度パターン及び減速領域の速度パターンは、それぞれ放物速度曲線としてもよい。このときの増速領域での加速度パターンは、図5(A)に示すように、増速領域の全時間taの半分の時間ta/2まで加速度を直線的に上昇させ、その後、加速度を直線的に減少させた左右対称の増加及び減少加速度となっている。なお、図5(A)には、この関係図の式も記載している。一方、減速領域での加速度パターンは、図5(B)に示すように、増速領域の全時間tdの半分の時間td/2まで、加速度を直線的に負の方向に増加させ、その後、加速度を直線的に減少させた左右対称の負の増加及び負の減少加速度となっている。なお、図5(B)に示す関係図は、図5(A)に示す関係図を、時間軸に対して対称にした形状で表される。
【0026】
しかし、昇降マストの撓みが0、即ち、昇降マストが走行台車に対して垂直状態に戻ったときに、振動速度が0とならなければ、昇降マストに振動が発生する。
そこで、増速領域の時間ta及び減速領域の時間tdを、スタッカクレーンの固有振動周期の2倍以上の整数倍の時間に設定する必要がある。なお、各時間ta、tdの上限については規定していないが、この時間が長くなれば、スタッカクレーンのサイクルタイムが長くなり、作業効率が悪くなるので、2倍、3倍、又は4倍(最も好ましくは2倍)とすることが好ましい。
以下、増速領域の時間ta及び減速領域の時間tdを、上記した値に設定した理由について説明する。
【0027】
まず、図6(A)に示すように、スタッカクレーンを、上端部に錘が付けられた板ばねを台車に立設したモデルに置き換える。ここで、ばねが、図6(B)に示す自由振動を行う場合の関係式は、ニュートンの第二法則から得られる式(1)と、フックの法則から得られる式(2)から、式(3)の自由振動方程式で表される。なお、mは錘の質量、kは板ばねの弾性係数である。
【0028】
【数1】
【0029】
【数2】
【0030】
【数3】
【0031】
これを、加速度で表すと、式(4)となる。
【0032】
【数4】
【0033】
この自由振動方程式の解(斉次解)は、振動振幅の時間変化、即ち調和関数で表され、式(5)が得られる。なお、A、Bはそれぞれ定数であり、ωは錘の振動角周波数である。
【0034】
【数5】
【0035】
この式(4)と式(5)から、式(6)に示す振動角周波数ωが得られ、この式(6)から式(7)が得られる。
【0036】
【数6】
【0037】
【数7】
【0038】
更に、式(4)、式(6)、式(7)から、式(8)が得られる。
【0039】
【数8】
【0040】
ここで、(A2+B2)1/2は錘の振幅を、(k/m)1/2は錘の振動角周波数(周期)を、tan−1(B/A)は位相を、それぞれ表している。
続いて、図6(C)に示すように、台車を加速したときのばねの振動(強制振動)について説明する。
このときのばねの振動は、前記した式(1)及び式(2)と、ニュートンの第二法則から得られる式(9)の外力から、式(10)の強制振動方程式で表される。
【0041】
【数9】
【0042】
【数10】
【0043】
これを、加速度で表すと、式(11)となる。
【0044】
【数11】
【0045】
この強制振動方程式の解(非斉次解)は、式(12)に示すように、一般解xhと特殊解xpの和である。この一般解(斉次解)xhを式(13)に、特殊解xpを式(14)に、それぞれ示す。なお、a0は一定の加速度であり、A0は定数である。
【0046】
【数12】
【0047】
【数13】
【0048】
【数14】
【0049】
ここで、台車の加速度を、図3(B)に示すように、ステップ的(段階的)に与えた場合、前記した式(11)に、上記した式(14)、及びこの式(14)から得られる式(15)を代入することで、式(16)が得られる。
【0050】
【数15】
【0051】
【数16】
【0052】
この式(16)をA0について解くと、式(17)となる。
【0053】
【数17】
【0054】
以上から得られた式(13)と式(17)を、式(12)に代入することで、式(18)が得られる。
【0055】
【数18】
【0056】
ここで、式(18)に、それぞれ境界条件t=0、t=T/4を代入することで、定数A、Bが、式(19)に示すように求まる。なお、Tは振動周期である。
【0057】
【数19】
【0058】
この式(19)を式(18)に代入することで、式(20)が得られる。
【0059】
【数20】
【0060】
この式(20)から、式(21)に示す振動周期Tと、式(22)に示す振幅が、それぞれ得られる。
【0061】
【数21】
【0062】
【数22】
【0063】
上記した式(21)から、錘の振動周期Tは昇降台が重いほど大きく、また式(22)から、錘の振幅が加速度に比例し、更に錘の振動周期Tの2乗で大きくなることがわかる。
次に、台車の加速度を、図4(B)に示した式(23)で与えた場合について検討する。
【0064】
【数23】
【0065】
この式(23)を、式(10)に代入すると式(24)で示され、更にこの式(24)を、式(25)に示すように、加速度について表し、更にω0とω1を規定すると、式(26)が得られる。なお、ω0は昇降マストの振動周期であり、ω1は台車の加速周期である。
【0066】
【数24】
【0067】
【数25】
【0068】
【数26】
【0069】
なお、式(26)の特殊解は、式(27)で表されるため、xの解は式(28)となる。このC、Dはそれぞれ定数である。
【0070】
【数27】
【0071】
【数28】
【0072】
ここで、式(29)と式(30)を、前記した式(26)から得られる式(31)に代入する。
【0073】
【数29】
【0074】
【数30】
【0075】
【数31】
【0076】
このとき、式(32)が恒等的に成り立つためには、C及びDが式(33)の条件を満たす必要があるので、これを前記した式(29)に代入すると、式(34)が得られる。
【0077】
【数32】
【0078】
【数33】
【0079】
【数34】
【0080】
従って、この式(34)と、前記した式(20)及び式(28)から、式(35)が得られる。
【0081】
【数35】
【0082】
この式(35)が昇降マストの振動を表す式となる。
ここで、台車の加速時間を昇降マストの振動周期の2倍、即ちω1=ω0/2とすると、昇降マストの振動振幅は式(36)で、また昇降マストの振動速度は式(37)で、それぞれ表される。
【0083】
【数36】
【0084】
【数37】
【0085】
上記した昇降マストの振動振幅を示す式(36)は、昇降マストの撓みエネルギーに相当し、昇降マストの振動速度を示す式(37)は、昇降マストの運動エネルギーに相当する。これを図7に示す。
この図7からも明らかなように、式(36)と式(37)において、t=2T=4π/ω0のときは、昇降マストが垂直状態に戻ったときで、昇降マストの振動速度がゼロになるので、振動が発生しなくなる。
このため、走行台車が停止するタイミングで、昇降マストの撓みがゼロで、その振動速度もゼロとなり、停止後の残留振動を最小の状態に、更にはゼロにできる。
以上のことから、増速領域の時間ta及び減速領域の時間tdを、昇降マスト(スタッカクレーン)の固有振動周期の2倍以上の整数倍の時間に設定した。
【0086】
しかし、実際には、搬送物を載置した昇降台の高さ位置hや重さmが変化することで、昇降マストの固有振動周期が変化する。この固有振動周期は、次のような方法で求めることができる。
1)フレーム構造のモデルを使って、振動方程式から行列計算で、又は有限要素法の汎用解析プログラムを使用して、解析的に求める。
2)スタッカクレーンの走行用モータを制御する走行用インバータ(ベクトル制御)のベクトル電流は、昇降マストが振動するときに振動波形を描くため、このベクトル電流を計測することで求める。
3)昇降マストにひずみゲージやレーザ距離計を取り付け、計測して求める。
【0087】
昇降マストの固有振動周期Tと、搬送物を載置した昇降台の高さ位置h及びその搬送物の重さmとの関係は、例えば、図8のような関係を示す。
図8は、断面が175mm×175mmのマスト部を使用し、昇降台の高さ位置hを12mの範囲で変えた場合の0〜500kgの各搬送物の重さmの固有振動周期Tの解析結果を示している。なお、この解析は、昇降台の自重210kgを含んで行っている。
図8からも明らかなように、固有振動周期Tは、高さ位置h及び重さmと相関性があるため、この高さ位置h及び重さmから求めることができる。
【0088】
昇降マストの固有振動周期を、上記した1)の方法で求めた場合には、更に上記した2)の方法を用いて振動測定を行い補正することにより、図9に示すように、固有振動周期を更に精度良く求めることができる。
このように、実測値で補正された固有振動周期は、複数の点データ(図8では、42個の点データ)からなる代表値であるため、この点データの間に存在する高さ位置hと重さmの固有振動周期は、これらの複数の点データから補間法によって求めることができる。
これにより、例えば、搬送物を載置した昇降台の高さ位置及び搬送物の重さから、昇降マストの固有振動周期が求まるプログラムを使用して、固有振動周期を求めることができる。
【0089】
また、搬送物を搭載した昇降台の重さは、昇降台の昇降用モータを制御する昇降用インバータ(ベクトル制御)のトルク電流から計測することができる。
ここで、質量Wとトルク電流Iとの関係について、以下の方法で検討した。
1個25kgの錘を20個準備し、この錘を、重さ210kgの昇降台に50kgずつ載置して、インバータのトルク電流Iを測定した。このときの質量Wとトルク電流Iとの関係を、図10に示す。
以上の測定結果から、質量Wとトルク電流Iとの関係は、図10の直線で示した次の式で表される。
W=Wend・I/Iend=150×I(kg)
即ち、質量Wは、K×Iで計算できる。
従って、トルク電流Iは、昇降台の質量Wに比例して増えることがわかった。
【0090】
以上のことから、増速領域及び減速領域の時間ta、tdを、予め求めたスタッカクレーンの固有振動周期の2倍以上の整数倍の時間に設定し、しかも、増速領域及び減速領域の各加速度パターンを左右対称の増加及び減少加速度及び負の増加及び負の減少加速度とすることで、フィードフォワード的に、昇降台の増速領域及び減速領域の終了後に発生する自由振動の振幅を小さくできる。従って、簡単な制御方法で、停止後の昇降マストの振動発生を抑制することができる。
【0091】
なお、棚の位置によっては、昇降台の昇降を行いながら、走行台車の走行を停止する場合がある。この場合、昇降マストの振動周期が変化しているので、理論的には、走行台車の停止のタイミングで、昇降マストの撓みが0(垂直状態)、かつ昇降マストの振動速度が0となることはなく、昇降マストに振動が発生する。しかし、発生する昇降マストの振動の大きさは、走行台車の停止のタイミングでの昇降マストの振動周期、減速のタイミングでの昇降マストの振動周期、更にその近傍の振動周期の2以上の整数倍に設定すれば、最小にする効果がある。
【0092】
ここで、振動の大きさは、前記したように、振動周期の二乗に比例して大きくなる性質をもち、また、昇降マストの振動周期は昇降台の高さ位置が高いほど、また質量が重いほど大きくなる性質をもつ。更に、2本のマスト部を上部で連結したフレーム構造の場合、その上部にいくほど振動周期は大きくなるが、その変化率は、高さ位置が半分程度で最大変化を示し、上部にいくほど小さくなる。
従って、昇降台の昇降を行いながら、走行台車の走行を停止するとしても、振動周期の変化が小さいため、振動発生を抑える効果はある。
なお、昇降マストの撓み量は、昇降マストの設計時にその大きさが問題がない程度に、マスト部の径などを大きくしたりして設計されるので、フォーク動作に支障があるような大きな残留振動振幅にならないように製作されているものと考えられる。
【実施例】
【0093】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、図1に示すフレーム構造のスタッカクレーンのモデルについて検討した。なお、昇降マストの2本のマスト部は、高さ14.6m、肉厚6mm、幅175mmの断面正方形の鉄角パイプで製作され、この2本の角パイプがその上端部で横梁により連結されている。また、昇降台の自重を180kg、搬送物の荷重を1000kgとした。
一方、搬送物を入庫又は出庫する棚(ラック)は、幅方向の連ピッチが1.26m、高さ方向の段ピッチが1.6mであり、全部で38連8段あるものとし、1連1段の棚の手前にステーションが存在し、このステーションから38連8段棚への入庫の場合の台車加速度、台車速度、昇降台の昇降速度の変化の様子を調べた。
【0094】
まず、比較例として、スタッカクレーンの速度パターンを台形速度曲線とした場合、即ち走行台車(以下、単に台車ともいう)の加速度及び減速度を、0.1Gで一定にした結果について、図11、図12を参照しながら説明する。なお、台車の走行最高速度を120m/分、昇降台の昇降最高速度を30m/分とした。また、昇降台は、台車が減速を開始する直前で昇降が完了し、11.2mの高さに位置させた。そして、昇降台の自重と搬送物の荷重を加えた1180kgの質点が、昇降マストの上部にある状態で、台車の減速を開始した。なお、昇降マストの振動周期は、有限要素法で計算すると1.17秒であった。また、減速時間は、120m/分から0m/分まで、0.1Gの一定で減速するので、2.00秒となる。
ここで、台車の加速度と昇降マストの撓みとの関係は、昇降マストを弾性体としたばねの要素と昇降台という質点と昇降マストの分布荷重という慣性項、台車の加速度によって発生する強制外力といった要素から表される振動方程式が成立する。この微分方程式を、ルンゲクッタ法で数値積分して、昇降マストの振動の振幅の変化を求めた振動の様子を、図12に示す。
【0095】
図12から明らかなように、台車の減速停止中に昇降マストは前方に傾き、物理的に決まった最大傾きの位置から方向を変えて垂直の状態に戻り、また前方に戻ろうとする振動を、一定の振動周期で繰り返す。このとき、台車は、この振動のタイミングとは独立したタイミングで停止するので、停止が撓みが大きくなるタイミングで行われると、その撓み量と同じ量で、振動の中心位置が昇降マストの垂直状態の位置に変わり、いわゆる自由振動を繰り返すことになる。なお、実際には減衰があるので、複数回繰り返す間に、振幅は小さくなってくる。
この場合、片側40mmの振れ幅で、1.17秒周期の振動が発生することが分かる。フォークがラックなどと衝突しないで動作できる横揺れ幅を5mm以下とした場合、昇降台が11.2mでマスト先端14.6mに接近した位置なので、おおよそ昇降マスト先端と同じ振れ幅で昇降台が横揺れしてることになり、15秒近くフォーク動作が行えないことになる。
【0096】
次に、実施例として、スタッカクレーンの増速領域と減速領域の速度パターンを調和速度曲線とした場合、即ち平均加速度を上記した台形速度曲線と同じ0.1G付近にし、加速時間と減速時間に差が生じないようにした結果について、図13、図14を参照しながら説明する。なお、台車の速度及び加速度は、図4(A)、(B)に示す形状となる。
減速開始のタイミングでは、昇降台は搬送物を積んで停止している。この状況では、昇降マストの振動周期は一定値を保ち、1.17秒であることが分かる。そこで、減速時間を振動周期の2倍に設定して2.34秒とした。そのときの昇降マストの撓み(振動)の様子は、図14に示すようになる。
【0097】
ここで、1−cos{(2π/Td)×t}という減速度曲線で、その周期Tdを振動周期Tの2倍にする。この場合、昇降マストは前方に撓んで、最大撓みに達すると垂直位置に戻りだし、垂直位置に戻る時間がTの2倍の時間になるという性質をもつ。このため、このタイミングで台車の減速が停止した場合、昇降マストを垂直位置で静止した状態で停止させることができる。
なお、図14に示すシミュレーション結果では、その残留した昇降マスト先端での自由振動の片側振れ幅が3mmという結果になっており、アイドル時間を設けずに、即フォーク動作を行うことができることを示している。
以上の結果から、本願発明のスタッカクレーンの制振方法を適用することで、製造コストの上昇を招くことなく、発生する昇降台の自由振動の振幅を小さくして、作業効率を向上させることができることを確認できた。
【0098】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明のスタッカクレーンの制振方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、スタッカクレーンとして、昇降マストの振動を抑制するための特別な装置を設けていないスタッカクレーンを使用した場合について説明したが、例えば、昇降マストの上端部に従来公知のダンパー機構を設けてもよい。本願発明の作用効果により、昇降台の振幅を充分に抑制できるが、この場合、簡単な構成のダンパー機構を設けることにより、昇降台の振幅を更に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスタッカクレーンの制振方法を適用するスタッカクレーンの正面図である。
【図2】同スタッカクレーンの制御ブロックの説明図である。
【図3】(A)、(B)はそれぞれスタッカクレーンの台形速度曲線の速度パターンの説明図、加速度パターンの説明図である。
【図4】(A)〜(C)はそれぞれスタッカクレーンの調和速度曲線の速度パターンの説明図、増速領域の加速度パターンの説明図、減速領域の加速度パターンの説明図である。
【図5】(A)、(B)はそれぞれスタッカクレーンの放物速度曲線の増速領域の加速度パターンの説明図、減速領域の加速度パターンの説明図である。
【図6】(A)〜(C)はそれぞればね台車のモデルの説明図、錘が自由振動する場合の説明図、錘が強制振動する場合の説明図である。
【図7】昇降マストの振動振幅と振動速度との関係を示す説明図である。
【図8】昇降マストの固有振動周期と搬送物を載置した昇降台の高さ位置及びその重さとの関係を示す説明図である。
【図9】昇降マストの固有振動周期の解析値とこの解析値の補正値を示す説明図である。
【図10】搬送物を載置した昇降台の質量Wとトルク電流Iとの関係を示す説明図である。
【図11】比較例に係る台車加速度と台車速度と昇降台の昇降速度変化を示す説明図である。
【図12】同台車加速度と昇降マストの振動変化を示す説明図である。
【図13】実施例に係る台車加速度と台車速度と昇降台の昇降速度変化を示す説明図である。
【図14】同台車加速度と昇降マストの振動変化を示す説明図である。
【符号の説明】
【0100】
10:スタッカクレーン、11:走行レール、12:走行台車、13:昇降マスト、13a:搬送物、14:昇降台、15:制御装置、16:車輪、17:走行手段、18:インバータ、19:減速機、20:走行用モータ、21:エンコーダ、21a:制御器、22:レーザ距離計、23、24:マスト部、25:横梁、25a:ガイドローラ、26:ガイドレール、27:ワイヤロープ、28:巻き上げ機、29:昇降手段、30:インバータ、31:減速機、32:昇降用モータ、33:エンコーダ、34:レーザ距離計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増速領域、等速領域、及び減速領域を備えた速度パターンで走行レール上を往復走行可能な走行台車と、該走行台車に立設された昇降マストと、搬送物を搭載し前記昇降マストに沿って昇降する昇降台とを有するスタッカクレーンの制振方法であって、
前記昇降台及び前記搬送物の重量と、前記搬送物を載せた該昇降台の高さ位置に基づいて、前記スタッカクレーンの固有振動周期を予め求め、該固有振動周期の2倍以上の整数倍の時間に、前記増速領域及び前記減速領域の時間を設定し、しかも、前記増速領域の加速度パターンを左右対称の増加及び減少加速度とし、前記減速領域の加速度パターンを左右対称の負の増加及び負の減少加速度として、前記搬送物を搭載した昇降台の前記増速領域及び前記減速領域の終了後に発生する自由振動の振幅を小さくすることを特徴とするスタッカクレーンの制振方法。
【請求項2】
請求項1記載のスタッカクレーンの制振方法において、前記増速領域の速度パターン及び前記減速領域の速度パターンを、それぞれ放物速度曲線としたことを特徴とするスタッカクレーンの制振方法。
【請求項3】
請求項1記載のスタッカクレーンの制振方法において、前記増速領域の速度パターン及び前記減速領域の速度パターンを、それぞれ調和速度曲線としたことを特徴とするスタッカクレーンの制振方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のスタッカクレーンの制振方法において、前記搬送物を搭載した昇降台の重さを、前記昇降台の昇降用モータの負荷電流から計測することを特徴とするスタッカクレーンの制振方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のスタッカクレーンの制振方法において、前記固有振動周期を前記走行台車の走行用モータの負荷電流から計測することを特徴とするスタッカクレーンの制振方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のスタッカクレーンの制振方法において、前記固有振動周期を解析的に求め、得られた計算結果を更に実測値を用いて補正することを特徴とするスタッカクレーンの制振方法。
【請求項7】
請求項6記載のスタッカクレーンの制振方法において、実測値で補正された前記固有振動周期は、複数の点データからなる代表値であって、前記点データの間に存在する前記固有振動周期は、前記複数の点データから補間法によって求められることを特徴とするスタッカクレーンの制振方法。
【請求項1】
増速領域、等速領域、及び減速領域を備えた速度パターンで走行レール上を往復走行可能な走行台車と、該走行台車に立設された昇降マストと、搬送物を搭載し前記昇降マストに沿って昇降する昇降台とを有するスタッカクレーンの制振方法であって、
前記昇降台及び前記搬送物の重量と、前記搬送物を載せた該昇降台の高さ位置に基づいて、前記スタッカクレーンの固有振動周期を予め求め、該固有振動周期の2倍以上の整数倍の時間に、前記増速領域及び前記減速領域の時間を設定し、しかも、前記増速領域の加速度パターンを左右対称の増加及び減少加速度とし、前記減速領域の加速度パターンを左右対称の負の増加及び負の減少加速度として、前記搬送物を搭載した昇降台の前記増速領域及び前記減速領域の終了後に発生する自由振動の振幅を小さくすることを特徴とするスタッカクレーンの制振方法。
【請求項2】
請求項1記載のスタッカクレーンの制振方法において、前記増速領域の速度パターン及び前記減速領域の速度パターンを、それぞれ放物速度曲線としたことを特徴とするスタッカクレーンの制振方法。
【請求項3】
請求項1記載のスタッカクレーンの制振方法において、前記増速領域の速度パターン及び前記減速領域の速度パターンを、それぞれ調和速度曲線としたことを特徴とするスタッカクレーンの制振方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のスタッカクレーンの制振方法において、前記搬送物を搭載した昇降台の重さを、前記昇降台の昇降用モータの負荷電流から計測することを特徴とするスタッカクレーンの制振方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のスタッカクレーンの制振方法において、前記固有振動周期を前記走行台車の走行用モータの負荷電流から計測することを特徴とするスタッカクレーンの制振方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のスタッカクレーンの制振方法において、前記固有振動周期を解析的に求め、得られた計算結果を更に実測値を用いて補正することを特徴とするスタッカクレーンの制振方法。
【請求項7】
請求項6記載のスタッカクレーンの制振方法において、実測値で補正された前記固有振動周期は、複数の点データからなる代表値であって、前記点データの間に存在する前記固有振動周期は、前記複数の点データから補間法によって求められることを特徴とするスタッカクレーンの制振方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−30728(P2010−30728A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193852(P2008−193852)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000196705)西部電機株式会社 (80)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000196705)西部電機株式会社 (80)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]