スパッタリング装置、及び電子デバイスの製造方法
【課題】短時間で薄膜を積層させる場合であっても、スループットを損なうことなく効率的に上記積層を実現可能なスパッタリング装置、及び電子デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るスパッタリング装置は、回転可能な基板ホルダー103と、基板ホルダー130に対して斜めに配置されたターゲットホルダー107a〜107dと、ターゲットホルダーと基板ホルダーの間に設けられ、回転軸Xに対して2回対称に配置された2個の孔を有する第1シャッター115および第2シャッター116とを備える。ターゲットホルダー107a、107cは、回転軸Xに対して2回対称な位置に配置される第1群のターゲットホルダーであり、ターゲットホルダー107b、107dは、第1群のターゲットホルダー同士の間に回転軸Xに対して2回対称に配置される第2群のターゲットホルダーである。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るスパッタリング装置は、回転可能な基板ホルダー103と、基板ホルダー130に対して斜めに配置されたターゲットホルダー107a〜107dと、ターゲットホルダーと基板ホルダーの間に設けられ、回転軸Xに対して2回対称に配置された2個の孔を有する第1シャッター115および第2シャッター116とを備える。ターゲットホルダー107a、107cは、回転軸Xに対して2回対称な位置に配置される第1群のターゲットホルダーであり、ターゲットホルダー107b、107dは、第1群のターゲットホルダー同士の間に回転軸Xに対して2回対称に配置される第2群のターゲットホルダーである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スパッタリングを用いた均一な極薄膜の成膜には回転した基板に対して、斜めにスパッタ粒子を入射させて成膜を行なう、いわゆる斜めスパッタ成膜法が用いられている。特許文献1には、基板に対し、複数のターゲットと、複数の開口を有するシャッター板とを備えたスパッタリング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−68075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、次世代不揮発性メモリとして注目されている磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)の作製には、数nm程度の膜厚を有する絶縁層と金属層等との積層の実現が要求されている。MRAMの記憶部は絶縁材料を磁性材料で挟んだ三層構造を持ち、磁性層の磁化配列状態(平行状態あるいは反平行状態)により情報の定義を可能とする。
【0005】
従来のMRAMは、磁性層の磁化方向が基板に対して平行であった。しかしながら、近年、スケーリング、低消費電力の観点から磁化方向が垂直方向を有する磁性層(垂直磁性膜)を有する垂直型のMRAMが提案されるようになった。
【0006】
垂直型MRAMに含まれる垂直磁性膜にはTbFeCo、FePt、CoPt等の合金材料が用いられる。合金材料の薄膜作製方法としては、一般的に、合金ターゲットを用いたスパッタリング、異種の複数の金属ターゲットを同時放電させるコスパッタリング、あるいは異種の複数の金属ターゲットを交互に成膜させる交互スパッタリング等を用いて成膜し、熱処理で合金に規則化させる方法が主に用いられる。しかし、成膜された面内における均一な規則化合金を実現させるためには、熱処理前に組成比・膜厚分布等がそろえられている必要がある。従って、垂直型MRAMにおける垂直磁性膜の作製において、交互スパッタリングは素性の良い手法とされている。
【0007】
垂直型MRAMにおける交互スパッタリング技術には1nm以下程度の薄い膜を繰り返し積層した積層膜を効率的に形成することが求められている。特許文献1に示すように、従来の斜めスパッタ成膜法で、基板を回転させながら、こうした薄膜を形成する場合、成膜の開始と終了は、ターゲットを遮蔽するシャッターの開閉により、行なわれる。通常、基板への成膜が始まる前にシャッターを閉じた状態で放電を行い、ターゲット表面の不純物を除去した後に放電を維持しながらシャッターを開く。これにより成膜が始められる。故に、ターゲットを基板に露出させたり、遮蔽するシャッター開閉動作中にも成膜が行われており、その間の成膜レートは安定していない。基板の回転数が十分に多い成膜時間が得られている場合、成膜レートが安定しない現象は問題にならない。しかしながら、MRAMを大量生産するに当たって、スループットを向上させなければならない。そのためには成膜時間を短く(例えば、一層あたり3秒ないし6秒)する必要があるが、このような短時間では基板総回転数は少なく、結果として成膜時間のうちに占めるシャッター開閉時間が無視できなくなった。これにより、シャッターが開放されるまでの間に成膜された膜と、シャッターが完全に開放された後に成膜された膜とが、交じり合うことで、面内分布が不均一となるという問題が生じてしまう。また、基板ホルダーをより高速に回転することにより、こうした問題を解決することも可能であるが、基板ホルダーを回転させるモーターの高速化は、物理的限界に達していた。
【0008】
そこで、本発明は、従来の問題に鑑みてなされたものであり、短時間で薄膜を積層させる場合であっても、スループットを損なうことなく効率的に上記積層を実現可能なスパッタリング装置及びその成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、スパッタリング装置であって、処理チャンバと、前記処理チャンバ内に設けられ、基板の被成膜面に対して垂直な回転軸に対して回転可能に設けられ、基板を保持するための基板ホルダーと、前記処理チャンバ内に設けられ、ターゲットを保持可能に構成され、前記回転軸がターゲットの中心点を通る垂線と不一致となるように設けられたターゲットホルダー群と、前記ターゲットホルダー群と前記基板ホルダーの間に設けられ、前記回転軸に対して回転可能であり、前記回転軸に対してn回対称に配置されたn個の孔を有するシャッターと、を備え、前記ターゲットホルダー群は、前記回転軸に対してn回対称な位置に配置されるn個の第1群のターゲットホルダーと、前記回転軸に対してn回対称に配置されるn個の第2群のターゲットホルダーであって、該第2群のターゲットホルダーの各々が前記第1群のターゲットホルダー同士の間に設けられたn個の第2群のターゲットホルダーとを有し、前記n個の孔の第1の回転位置においては、前記n個の第1群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なり、前記n個の孔の第2の回転位置においては、前記n個の第2群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様は、処理チャンバと、前記処理チャンバ内設けられ、基板の被成膜面に対して垂直な回転軸回りに回転可能に設けられ、基板を保持するための基板ホルダーと、前記処理チャンバ内に設けられ、ターゲットを保持可能に構成され、前記回転軸がターゲットの中心点を通る垂線と不一致となるように設けられたターゲットホルダー群と、前記ターゲットホルダー群と前記基板ホルダーの間に設けられ、前記回転軸に対して回転可能であり、前記回転軸に対してn回対称に配置されたn個の孔を有するシャッターと、を備え、前記ターゲットホルダー群は、前記回転軸に対して、n回対称な位置に配置されるn個の第1群のターゲットホルダーと、前記回転軸に対してn回対称に配置されるn個の第2群のターゲットホルダーであって、該第2群のターゲットホルダーの各々が前記第1群のターゲットホルダー同士の間に設けられたn個の第2群のターゲットホルダーとを有し、前記n個の孔の第1の回転位置においては、前記n個の第1群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なり、前記n個の孔の第2の回転位置においては、前記n個の第2群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なるように構成されたスパッタリング装置を用いた、電子デバイスの製造方法であって、前記基板ホルダーの回転を開始する第1準備工程と、前記第1群のターゲットホルダーに第1電力を供給し、前記第2群のターゲットホルダーに第2電力を供給する第2準備工程と、前記シャッターのn個の孔を、前記第1群のターゲットホルダーに対向して位置させる第1成膜工程と、前記シャッターのn個の孔を、前記第2群のターゲットホルダーに対向して位置させる第2成膜工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、短時間成膜における薄膜の積層を、スループットを損なうことなく効率的に行うことが可能なスパッタリング装置及びその成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るスパッタリング装置の構成を説明する概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るターゲットホルダーの上面図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係るターゲットを遮蔽したときのシャッターの構造を説明する図である。
【図3B】本発明の一実施形態に係る第1成膜工程におけるシャッターの構造を説明する図である。
【図3C】本発明の一実施形態に係る第2成膜工程におけるシャッターの構造を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るターゲットとシャッターの孔との位置関係を説明する図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る成膜プロセスフローを説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る第1成膜工程と第2成膜工程のフローを説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る第1成膜工程と第2成膜工程のフローを説明する図である。
【図8】図5の成膜プロセスにより製造された膜構成を説明する断面図である。
【図9】比較例として斜めスパッタ成膜法により形成された膜の面内分布を説明する図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るスパッタリング成膜法により形成された膜の面内分布を説明する図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る3回対称に配置されたターゲットホルダーを説明する平面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るスパッタリング装置における制御系の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るスパッタリング装置の構成を説明する。
スパッタリング装置は、MRAMといった電子デバイスを製造することができる。スパッタリング装置は、処理チャンバ100と、該処理チャンバ内に設けられ、基板の被成膜面に対して垂直な回転軸回りに回転可能に設けられ、基板を保持するための基板ホルダー103と、基板ホルダー103を回転させる回転駆動手段としての回転駆動部121と、基板の被成膜面を含む平面に対する垂線のうち、基板の中心点を通る垂線がターゲットの中心点を通る垂線と不一致となるように設けられた、ターゲットホルダー107a〜107dを有するターゲットホルダー群と、を備えている。ターゲットホルダー107a〜107dはそれぞれ、ターゲットを保持可能に構成され、金属製部材からなり、電極として機能する。また、スパッタリング装置は、各ターゲットホルダーに、電力を供給するための電力供給手段としての直流電源を備えている。すなわち、ターゲットホルダー107a〜107dの各々には直流電源110a〜110dが接続されている。なお、図1においては、ターゲットホルダー107aに電力を供給する直流電源110a、およびターゲットホルダー107cに電力を供給する直流電源110cのみを記載している。
【0015】
ターゲットホルダー107a、107cの背後には、回転可能なマグネットユニット111a、111cが設けられている。なお、ターゲットホルダー107b、107dの背後にもマグネットユニット111a、111cと同様のマグネットユニットが設けられている。また、処理チャンバ100には、プロセスガス(本例ではアルゴン等の不活性ガス)を導入するガス導入手段としてのガス導入部201が、ゲートバルブ202を介して設けられている。さらに、処理チャンバ100には、コンダクタンスバルブ117を介して排気ポンプ118が設けられている。
【0016】
ターゲットホルダー107a〜107dにはそれぞれターゲット106a〜106dが設置されている。ターゲット106a〜106dの前面(すなわち、ターゲットホルダー107a〜107dと基板ホルダー103との間)には、基板102へのスパッタ粒子を遮蔽することが可能な二枚の第1シャッター115、第2シャッター116が設けられている。第1シャッター115、第2シャッター116は、シャッター駆動手段としてのシャッター駆動部120により、個別に駆動可能に構成されている。
なお、直流電源110a〜110d、シャッター駆動部120、及び回転駆動部121は、電気的に接続された制御手段としての制御部130により制御可能に構成されている。
【0017】
図12は、本実施形態のスパッタリング装置における制御部130の概略構成を示すブロック図である。
図12において、スパッタリング装置全体を制御する制御手段としての制御部130は、種々の演算、制御、判別などの処理動作を実行するCPU131と、このCPU131によって実行される、図5にて後述される処理などの制御プログラムなどを格納するROM132とを有する。また、制御部130は、CPU131の処理動作中のデータや入力データなどを一時的に格納するRAM133などを有する。
この制御部130には、所定の指令あるいはデータなどを入力するキーボードあるいは各種スイッチなどを含む入力操作部134、スパッタリング装置の入力・設定状態などをはじめとする種々の表示を行う表示部135がそれぞれ接続されている。また、制御部130には、上記直流電源110a〜110d、シャッター駆動部120、および回転駆動部121がそれぞれ駆動回路136〜138を介して接続されている。
【0018】
図2は、ターゲットホルダーの上面図である。本例では、4つのターゲット106a,106b,106c,106dをそれぞれ保持するためのターゲットホルダー107a,107b,107c,107dが設けられている。ターゲットホルダー107aとターゲットホルダー107cは、基板ホルダー103の回転軸Xに対して、互いに対称に配置されている。同様に、ターゲットホルダー107bとターゲットホルダー107dは、基板ホルダー103の回転軸Xに対して、互いに対称に配置されている。なお、本例では、ターゲットホルダー107aとターゲットホルダー107cには、第1種のターゲット106a、106c(例えば、Fe)が搭載されている。これらのターゲットホルダー107a、107cを、第1群のターゲットホルダーと称す。また、ターゲットホルダー107bとターゲットホルダー107dは、ターゲット106a、106cとは異なり、第2種のターゲット106b、106d(例えば、Pt)が搭載されている。これらのターゲットホルダー107b、107dを、第2群のターゲットホルダーと称す。
【0019】
電力供給手段としての直流電源110a、110cは、第1の層の成膜時においては、第1種のターゲット106a、106c(例えば、Fe)を搭載したターゲットホルダー107aとターゲットホルダー107cに、第1電力(例えば、600W)を供給するように構成されている。一方、電力供給手段としての直流電源110b、110dは、第2の層の成膜時においては、第2種のターゲット106b、106d(例えば、Pt)を搭載したターゲットホルダー107bとターゲットホルダー107dに、第1電力とは異なる第2電力(例えば、300W)を供給するように構成されている。なお、複数のターゲットホルダー107a、107b、107c、107dには、個別に直流電源110a、110b、110c、110dが設けられていることが望ましい。
【0020】
図3A〜3Cは、シャッター115、116の詳細構成を説明する模式図である。
第2シャッター116には、回転軸Xに対して1/2回転(180°)回転させると回転前の孔の位置と重なる2回対称に配置された孔(開口部)116a、116bが設けられている。同様に、第1シャッター115には、回転軸Xに対して2回対称に配置された孔(開口部)115a、115bが設けられている。なお、第1シャッター115の回転軸、第2シャッター116の回転軸、及び基板102の回転軸は、同軸になるように配置されている。
【0021】
図3Aはシャッター115、116により全てのターゲット106a、106b、106c、106dを基板102に対して遮蔽している状態を示している。具体的には、第2シャッター116で、ターゲット106a、106cを遮蔽するとともに、第2シャッター116に設けられた孔116a、116bは、それぞれターゲット106b、106cに対向して配置している。さらに図3Aの状態では、第1シャッター115で、孔116a、116bと、ターゲット106b、106dを基板102に対して遮蔽している。
【0022】
図3Bはスパッタするターゲット106a、106cを基板102に対して開放している状態を示している。つまり、第2シャッター116に設けられた孔116a、116bは、それぞれターゲット106a、106cに対向して配置している。同様に、第1シャッター115に設けられた孔115a、115bは、それぞれターゲット106a、106cに対向して配置している。
【0023】
図3Cはスパッタするターゲット106b、106dを基板102に対して開放している状態を示している。つまり、第2シャッター116に設けられた孔116a、116bは、それぞれターゲット106b、106dに対向して配置している。同様に、第1シャッター115に設けられた孔115a、115bは、それぞれターゲット106b、106dに対向して配置している。
【0024】
以上のように、第1シャッター115及び第2シャッター116は、シャッター駆動部120により、各回転軸で回転させることで、ターゲットと孔の位置を対向させたり、ずらしたりすることで、開閉可能となっている。なお、本明細書において、「開、開状態」とは、所定のターゲットが第1シャッター115および第2シャッター116の双方を介して基板102に対して露出している状態であり、第1シャッター115の孔および第2シャッター116の孔により所定のターゲットが基板102に対して開放されている状態を指す。また、本明細書において、「閉、閉状態」とは、所定のターゲットが第1シャッター115および第2シャッター116の少なくとも一方により基板102に対して露出していない状態であり、所定のターゲットが第1シャッター115および第2シャッター116の少なくとも一方により基板102に対して遮蔽されている状態を指す。
【0025】
図4は、シャッター115、116と各ターゲットとの位置関係を説明する平面概略図である。
【0026】
図4のPosition Aは、図3Bに示すように、スパッタするターゲット106a、106cを基板102に対して開放している状態(開状態)を示す。本実施形態では、孔115a、115bおよび孔116a、116bの第1の回転位置であるPosition Aにおいて、孔115a、115bおよび孔116a、116bがターゲット106a、106cと重なるように、ターゲットホルダー107a、107c、ならびに孔115a、115bおよび孔116a、116bは位置決めされている。図4のPosition Bは、図3Cに示すように、スパッタするターゲット106b、106dを基板102に対して開放している状態(開状態)を示す。本実施形態では、孔115a、115bおよび孔116a、116bの第2の回転位置であるPosition Bにおいて、孔115a、115bおよび孔116a、116bがターゲット106b、106dと重なるように、ターゲットホルダー107b、107d、ならびに孔115a、115bおよび孔116a、116bは位置決めされている。
【0027】
図4のPosition Cは、図4のPosition Aから図4のPosition Bまでの中間地点で、第1シャッター115の孔115a、115b及び116の孔116a、116bがいずれのターゲットにも重ならない状態(閉状態)を示している。図4のPosition Cに示すように、いずれのターゲットからもスパッタ成膜されない状態を作ることにより、基板102へのスパッタ粒子の付着を防止ないしは低減することができる。なお、本実施形態では、Position Cの意義としては、第1シャッター115および第2シャッター116により閉状態を確立することが重要である。従って、図3Aのように、第1シャッター115の孔および第2シャッター116の孔のいずれか一方が対象ターゲットと重なるような場合であっても、他方が該対象ターゲットと重ならないような配置であれば、Position Cに含まれる。すなわち、第1シャッター115と第2シャッター116とにより、ターゲット106a〜ターゲット106dの全てを基板102に対して遮蔽する位置をPositionCと称することにする。
【0028】
なお、本実施形態では、2つのシャッター115、116を用いているが、シャッターの数は2つに限定されない。すなわち、本発明では、第1種のターゲットを用いて成膜を行う場合に、シャッターに形成された孔の各々が、第1種のターゲットの各々に対向して位置し、かつ第2種のターゲットの各々がシャッターによって基板に対して遮られている状態を形成することが重要である。本発明では、これと共に、第2種のターゲットを用いて成膜を行う場合に、シャッターに形成された孔の各々が、第2種のターゲットの各々に対向して位置し、かつ第1種のターゲットの各々がシャッターによって基板に対して遮られている状態を形成することが重要である。これらが実現できるように、少なくとも1つのシャッターを用いれば良いのである。従って、第1シャッター115および第2シャッター116の一方を用い、他方(他のシャッター)を用いない形態であっても良い。
【0029】
次に、図5を参照して、本発明の一実施形態に係る製造方法を説明する。
図5は、本実施形態に係るスパッタリング装置を用いたMRAMの製造方法を説明する図である。以下では、一例として、2つの異なる層(ターゲット106a、106cにより形成された第1の層、およびターゲット106b、106dにより形成された第2の層)を交互に積層させた積層体の製造方法について説明する。本実施形態では、ターゲット106a、106cには、Feが用いられ、ターゲット106b、106dには、Ptが用いられる。しかし、これに限定されず、ターゲット106a、106cとしては、Fe、Co、Niのうちいずれか1つの元素あるいは1つ以上の元素を含む合金からなるターゲット材を採用することができる。また、ターゲット106b、dとしては、Cr、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Os、Re、Au、Cuのうちいずれか1つの元素あるいは1つ以上の元素を含む合金とからなるターゲット材料を採用することができる。なお、以下の処理は、本発明のスパッタリング装置に搭載されたコンピュータ等よりなる制御手段としての制御部130によって実行される。
【0030】
ステップS100で、本工程がスタートされる。すなわち、ユーザが入力操作部134を介して、MRAM製造の開始指示と上記第1の層および第2の層の積層数M(Mは自然数であり、第1および第2の層はそれぞれM層ずつ形成される)を示す情報とを入力すると、制御部130は、該ユーザ入力を受け付けて、上記積層数MをRAM133に記憶させ、上記開始指示に従って図5に示す製造手順を実行する。制御部130は、基板搬送、ガス導入、及びシャッターの遮蔽の3つの準備処理を並列に進行する。即ち、ステップS101では、制御部130は、搬送ロボット(不図示)を制御して、処理チャンバ100内に基板102を搬入し、基板ホルダー103上に載置する。次に、ステップS103(第1準備工程)では、制御部130は、回転駆動部121によって基板ホルダー103が所定の回転速度(本例では100rpm)での回転を開始させる。
【0031】
上記処理と並行して、ステップS104では、制御部130は、ガス導入部201により、処理チャンバ100内にプロセスガス(アルゴンガスなどの不活性ガス)を導入させる。なお、上記処理の間、即ち、ステップS105で示すように、制御部130は、シャッター駆動部120を駆動して、シャッター115、116を、図3Aで示した閉鎖状態となるように位置決めさせる。すなわち、本ステップでは、制御部130は、シャッター駆動部120を制御して、Position Cとなるように、すなわち、シャッター116の孔116a、116bがターゲット106b、106dと重なり、かつシャッター115の孔115a、115bがターゲット106a、106cと重ならないように第1シャッター115および第2シャッター116を回転させ位置決めさせる。
【0032】
ステップS106(第2準備工程)では、制御部130は、直流電源110a〜110dを制御して、ターゲットホルダー107a〜107dに所定の電力を供給する。すなわち、直流電源110a、110cから、ターゲットホルダー107a、107cに第1電力が供給され、直流電源110b、110dから、ターゲットホルダー107b、107dに第2電力が供給される。これにより、処理チャンバ100内のアルゴンガスがプラズマ放電される。以上のように、基板搬送、ガス導入、及びシャッターの遮蔽の3つの準備処理の後に、電力供給工程を行なうことで、ターゲットの消耗を抑制することができる。
【0033】
ステップS107(第1成膜工程)では、シャッター115、116を、図3Bで示す状態とすることで、ターゲット106a、106cのスパッタリング成膜(上記第1の層の成膜)が開始される。すなわち、本ステップでは、制御部130は、シャッター駆動部120を制御して、図4のPosition Aとなるように、すなわち、シャッター116の孔116a、116bおよび第2のシャッター115の孔115a、115bがターゲット106a、106cと重なるように第1シャッター115および第2シャッター116を回転させ位置決めさせる。所定時間、成膜が継続すると、次のステップに進む。
【0034】
ステップS108(第2成膜工程)では、シャッター115、116を90度回転させて、図3Cで示す状態とすることで、ターゲット106b、106dのスパッタリング成膜(上記第2の層の成膜)が開始される。すなわち、本ステップでは、制御部130は、シャッター駆動部120を制御して、図4のPosition Bとなるように、すなわち、シャッター116の孔116a、116bおよび第2のシャッター115の孔115a、115bがターゲット106b、106dと重なるように第1シャッター115および第2シャッター116を回転させ位置決めさせる。所定時間、成膜が継続すると、次のステップに進む。
【0035】
ステップS109では、制御部130は、現在の成膜された積層数が所定の積層数Mに達したかどうかを判定する。本実施形態では、制御部130は、ステップA108を終了する毎に、現在成膜された積層数をカウントし、該カウント結果をRAM133に記憶させる。すなわち、制御部130は、第1成膜工程および第2成膜工程に係る所定時間経過すると、積層数に関するカウント値を1つずつ累積し、該累積したカウント値を現在の積層数としてRAM133に記憶させる。よって、本ステップにおいて制御部130は、RAM133に保持された積層数Mと上記カウント値とを比較し、現在の成膜された積層数が所定の積層数Mに達したか否かを判断する。該判断結果、Noの場合には、ステップS107に戻り、成膜処理が繰り返される。なお、ここでいう「繰り返す」とは、少なくとも第1成膜工程、第2成膜工程、及び第1成膜工程を順に行なうことをいう。
【0036】
なお、本ステップで、判定がNOであって、ステップS107に戻る場合、第1シャッター115と第2シャッター116の回転方向は、ステップS107からステップS108に遷移したときと同方向に90度回転する場合と逆方向に90度回転する場合がある。同方向に回転する場合、シャッター駆動部120は、第1シャッター115および第2シャッター116を同方向に回転させる回転機構だけを備えればよい。また、逆方向へ回転する場合、シャッターのターゲット側の面に付着する膜は異種の膜が積層することが無いため、シャッターを交換した後の膜の剥離が容易であるという利点がある。
【0037】
ここで、図4、図5、図6を参照して、第1の層の成膜と第2の層の成膜の繰返し動作に係る時間を説明する。
【0038】
第1シャッター115、第2シャッター116を、時刻T1まで、例えば図3Aに示すPosition Cを示す状態に維持させる。時刻T1において、図6に示すように、約1秒間(時刻T1からT2までの時間)のシャッター116を動作させてPosition Aを確立する。これにより、ターゲット106a、106cは完全に基板102に対して開放され、図3Bの状態(Position A)となり、時刻T2から所定時間の第1成膜工程が開始される。次に、時刻T3において、シャッター115、116は、回転軸Xに対して、同期して回転し、図4のPostion Cの状態、つまり、第1種のターゲット106a、106cからのスパッタ粒子も、第2種のターゲット106b、106dからのスパッタ粒子も、シャッター115、116によって、基板102に対して遮蔽された状態となる。その後、時刻T5において、シャッター115、116は、図3Cの状態(Position B)となり、時刻T5から所定時間の第2成膜工程が開始される。その後、時刻T6から所定時間のシャッター動作後、時刻T8からT9まで第1成膜工程が行なわれる。さらに、時刻T9からT11までの間の所定時間のシャッター動作後、第2成膜工程が行なわれる。こうして、所定数の積層膜が形成される。なお、シャッターの移動は図6に示すように定速度で行われても良いし、成膜時間終了直後は低速に動作し、Position Cを通過するときは高速に動作し、さらにPosition Aに近づくときは再び低速に動作しても良い。このような動作を行うことで、成膜速度が過渡的に変化する成膜工程終了および開始直後について、成膜速度の制御性を向上させることが可能で、より精密な膜厚分布制御が可能となる。
【0039】
さらに、図6は、第1種ターゲット106a、106cへの電力及び第2種106b、106dへの電力と時間との関係も示している。直流電源110a、110cは、第1種ターゲット(ターゲットホルダー107a、107c)に一定の電力(例えば、600W)を供給し、直流電源110b、110dは第2種ターゲット(ターゲットホルダー107b、107dに一定の電力(例えば、300W)を供給し続けてもよい。しかしながら、これでは、成膜されていないターゲットの消耗が大きく、また電力も無駄になってしまう。そのため、本例では、電力供給手段としての直流電源は、所定も層の成膜に関与していないターゲットへの電力を低減している。
【0040】
具体的には、図6に示すように、前述した第2準備工程では、時刻T0において、直流電源110a、110cは、第1種ターゲット106a、106c(ターゲットホルダー107a、107c)に電力P2(50W)を供給し、一方、直流電源110b、110dは、第2種ターゲット106b、106d(ターゲットホルダー107b、107d)に電力P4(50W)を供給する。シャッター115、116が開動作して、第1成膜工程を開始する際、直流電源110a、110cは、時刻T1において第1種ターゲット106a、106cに供給する電力P2を電力P1まで上昇させる一方、直流電源110b、110dは第2種ターゲット106b、106dに供給する電力P4をそのまま維持する。
【0041】
さらに、Position AからPosition Bに移行する間の時刻T4において、直流電源110a、110cは、第1種ターゲット106a、106cに供給する電力をP1からP2へ減少させる一方、直流電源110b、110dは第2種ターゲット106b、106dに供給する電力をP4からP3へと上昇させる。よって、時刻T5においては、第2種ターゲット106b、106dが基板102に対して開放され、かつ基板ホルダー107b、107dに対して第2の層を形成するのに必要な電力P3が印加された状態となり、第2成膜工程が行われる。
【0042】
以上のように、電力供給手段としての直流電源は成膜されていない側のターゲット群への投入電力を低減(50Wくらい)することでターゲットの無駄な消費を抑えることができる。なお、図6では、各種ターゲットへの電力導入タイミングは、シャッター115、116がPosition Cを通過するときとしたが、これに限定されず、図7に示すように、これ以前に行ってもよい。
【0043】
以上のように、ステップS109で、Yesの場合、即ち、所定数の積層数Mに達した場合には、ステップS110に進み、成膜処理を終了する。
図8は、本製造方法により作製されたFe/Pt人工格子である。図8において、符号91は上記第1の層であり、符号92は上記第2の層である。なお、人工格子の構成はこれに限定されず、Fe、Co、Niのうちいずれか1つの元素あるいは1つ以上の元素を含む合金と、Cr、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Os、Re、Au、Cuのうちいずれか1つの元素あるいは1つ以上の元素を含む合金とが交互に積層された構造であればよい。例えば、Co/Pt人工格子、Co/Pd人工格子、CoCr/Pt人工格子、Co/Ru人工格子、Co/Os、Co/Au、Ni/Cu人工格子等があげられる。
【0044】
以上のように、対向するターゲットをスパッタすることで、基板に均一な膜を形成することができる。また、本実施形態では、第1種ターゲット106a、106cを保持するためのターゲットホルダー107a、107cを回転軸Xに対して2回対称な位置に設け、第2種ターゲット106b、106dを保持するためのターゲットホルダー107b、107dを上記回転軸Xに対して2回対称な位置に設けている。さらに、孔115a、115bを上記回転軸Xに対して2回対称な位置に設け、かつ孔116a、116bを上記回転軸Xに対して2回対称な位置に設けるように第1シャッター115および第2シャッター116を構成している。さらに、これら孔115a、115bおよび孔116a、116bの各々が、ターゲット106a〜106dの各々と重なるように位置決めされている。従って、シャッターを所定角度(本例では90度)回転する動作を継続することで、均質な積層膜を、高いスループットで作製することができる。
【0045】
図9は、比較例として、斜めスパッタにより形成された膜の面内分布を示している。具体的には、符号901は、従来の構成902に示すように、一つのTiターゲットを用いて、基板を回転させながら、斜めスパッタを行なった場合のTi膜の面内分布を示している。成膜中の基板ホルダーの総回転数は、100回転とした。符号903は、従来の構成904に示すように、従来の構成902のターゲットの位置から回転軸に対して180°ずらしたターゲットを用いて、基板を回転させながら、斜めスパッタを行なった。なお、従来の構成902と従来の構成904は、ターゲットの位置以外は、同じ条件で実験を行なった。この結果から、面内分布901および903に示すように、各面内分布は不均一であることが分かる。これは、図6で示したように、シャッターの開動作に起因するものであると考えられる。
【0046】
図10は、本実施形態により形成された膜の面内分布を示している。具体的には、対向するターゲットホルダー106a、106cに保持されたTiターゲットを用いて、基板を回転させながら、斜めスパッタを行なった。この結果より、所定の軸(回転軸X)に対して2回対称な位置に配置された2つのターゲットからスパッタリング成膜を行なうことで、比較例で挙げられた、シャッター開動作に起因する膜の偏りが相殺され、同心円的で、かつ均一なTi膜ができていることが分かる。
【0047】
本実施形態では、基板ホルダー3の回転軸と第1シャッター115および第2シャッター116の回転軸とが一致している。そして、該一致した回転軸Xに対して、成膜しようとする層の材料となるターゲットを2回対称な位置に2つ配置し、孔115a115bを上記回転軸Xに対して2回対称な位置に設け、かつ孔116a、116bも上記回転軸Xに対して2回対称な位置に設けている。従って、開状態の時には、基板ホルダー103の回転軸Xに対して2回対称な位置に成膜対象の2つのターゲットが露出しているので、上記膜の偏りを相殺することができ、面内分布を同心的に均一にすることができる。
【0048】
図11は、ターゲットホルダーの変形例を説明する平面図である。
図2は、回転軸Xに対して、180°対称(2回対称)に配置されたターゲット106a、106cと、ターゲット106a、106cの間であって、回転軸Xに対して、180°対称(2回対称)に配置されたターゲット106b、106dを示した。一方、図10は、回転軸Xに対して、120°対称(3回対称)に配置されたターゲット106a、106c、106eと、ターゲット106a、106c、106eの間(第1群のターゲットホルダー同士の間)であって、回転軸Xに対して、120°対称(3回対称)に配置されたターゲット106b、106d、106fを示している。この場合、シャッター115に設けられた孔115a、115b、115cは、回転軸Xに対して、3回対称に配置されている。同様に、シャッター116に設けられた孔116a、116b、116cは、3回対称に配置されている。
【0049】
以上、本発明に適用可能な第1群のターゲットホルダーの数は、2個や3個に限定されず、n個(nは2以上の整数)であればよい。その場合、各第1群のターゲットホルダーは、基板ホルダーの回転軸Xに対してn回対称に配置する必要がある。同様に、第2群のターゲットホルダーの数もn個であり、かつ各第2群のターゲットホルダーも、上記回転軸Xに対してn回対称に配置する必要がある。シャッターに設けられた孔の数も、同様に、n個であり、かつ各孔は、回転軸Xに対してn回対称に配置する必要がある。なお、シャッターの数は、2個に限らず、1個であっても良いし、3つ以上あっても良い。
【0050】
このように、本発明の一実施形態では、第1の層を形成するためのn個の第1群のターゲットホルダーを基板ホルダーの回転軸Xに対してn回対称に配置し、第2の層を形成するためのn個の第2群のターゲットホルダーを回転軸Xに対してn回対称に配置している。これに加えて、上記回転軸Xを中心に回転可能であり、該回転に応じてそれぞれが第1群および第2群のターゲットホルダーと重なるように設けられたn個の孔を有するシャッターをターゲットホルダーと基板ホルダーとの間に設け、n個の孔を、上記回転軸Xにn回対称に配置している。従って、例えば、第1の層を形成する際には、第1群のターゲットホルダーに保持されたターゲットを、回転軸Xに対してn回対称の位置から基板ホルダーに保持された基板に対して開放することができる。よって、上記膜の偏りを相殺することができ、面内分布を同心的に均一にすることができる。
【符号の説明】
【0051】
100 処理チャンバ
102 基板
103 基板ホルダー
106a〜106d ターゲット
107a〜106d ターゲットホルダー
110a〜110d 直流電源
111a〜111d マグネットユニット
115 第1シャッター
115a、115b 孔
116 第2シャッター
116a、116b 孔
120 シャッター駆動部
121 回転駆動部
130 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スパッタリングを用いた均一な極薄膜の成膜には回転した基板に対して、斜めにスパッタ粒子を入射させて成膜を行なう、いわゆる斜めスパッタ成膜法が用いられている。特許文献1には、基板に対し、複数のターゲットと、複数の開口を有するシャッター板とを備えたスパッタリング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−68075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、次世代不揮発性メモリとして注目されている磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)の作製には、数nm程度の膜厚を有する絶縁層と金属層等との積層の実現が要求されている。MRAMの記憶部は絶縁材料を磁性材料で挟んだ三層構造を持ち、磁性層の磁化配列状態(平行状態あるいは反平行状態)により情報の定義を可能とする。
【0005】
従来のMRAMは、磁性層の磁化方向が基板に対して平行であった。しかしながら、近年、スケーリング、低消費電力の観点から磁化方向が垂直方向を有する磁性層(垂直磁性膜)を有する垂直型のMRAMが提案されるようになった。
【0006】
垂直型MRAMに含まれる垂直磁性膜にはTbFeCo、FePt、CoPt等の合金材料が用いられる。合金材料の薄膜作製方法としては、一般的に、合金ターゲットを用いたスパッタリング、異種の複数の金属ターゲットを同時放電させるコスパッタリング、あるいは異種の複数の金属ターゲットを交互に成膜させる交互スパッタリング等を用いて成膜し、熱処理で合金に規則化させる方法が主に用いられる。しかし、成膜された面内における均一な規則化合金を実現させるためには、熱処理前に組成比・膜厚分布等がそろえられている必要がある。従って、垂直型MRAMにおける垂直磁性膜の作製において、交互スパッタリングは素性の良い手法とされている。
【0007】
垂直型MRAMにおける交互スパッタリング技術には1nm以下程度の薄い膜を繰り返し積層した積層膜を効率的に形成することが求められている。特許文献1に示すように、従来の斜めスパッタ成膜法で、基板を回転させながら、こうした薄膜を形成する場合、成膜の開始と終了は、ターゲットを遮蔽するシャッターの開閉により、行なわれる。通常、基板への成膜が始まる前にシャッターを閉じた状態で放電を行い、ターゲット表面の不純物を除去した後に放電を維持しながらシャッターを開く。これにより成膜が始められる。故に、ターゲットを基板に露出させたり、遮蔽するシャッター開閉動作中にも成膜が行われており、その間の成膜レートは安定していない。基板の回転数が十分に多い成膜時間が得られている場合、成膜レートが安定しない現象は問題にならない。しかしながら、MRAMを大量生産するに当たって、スループットを向上させなければならない。そのためには成膜時間を短く(例えば、一層あたり3秒ないし6秒)する必要があるが、このような短時間では基板総回転数は少なく、結果として成膜時間のうちに占めるシャッター開閉時間が無視できなくなった。これにより、シャッターが開放されるまでの間に成膜された膜と、シャッターが完全に開放された後に成膜された膜とが、交じり合うことで、面内分布が不均一となるという問題が生じてしまう。また、基板ホルダーをより高速に回転することにより、こうした問題を解決することも可能であるが、基板ホルダーを回転させるモーターの高速化は、物理的限界に達していた。
【0008】
そこで、本発明は、従来の問題に鑑みてなされたものであり、短時間で薄膜を積層させる場合であっても、スループットを損なうことなく効率的に上記積層を実現可能なスパッタリング装置及びその成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、スパッタリング装置であって、処理チャンバと、前記処理チャンバ内に設けられ、基板の被成膜面に対して垂直な回転軸に対して回転可能に設けられ、基板を保持するための基板ホルダーと、前記処理チャンバ内に設けられ、ターゲットを保持可能に構成され、前記回転軸がターゲットの中心点を通る垂線と不一致となるように設けられたターゲットホルダー群と、前記ターゲットホルダー群と前記基板ホルダーの間に設けられ、前記回転軸に対して回転可能であり、前記回転軸に対してn回対称に配置されたn個の孔を有するシャッターと、を備え、前記ターゲットホルダー群は、前記回転軸に対してn回対称な位置に配置されるn個の第1群のターゲットホルダーと、前記回転軸に対してn回対称に配置されるn個の第2群のターゲットホルダーであって、該第2群のターゲットホルダーの各々が前記第1群のターゲットホルダー同士の間に設けられたn個の第2群のターゲットホルダーとを有し、前記n個の孔の第1の回転位置においては、前記n個の第1群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なり、前記n個の孔の第2の回転位置においては、前記n個の第2群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様は、処理チャンバと、前記処理チャンバ内設けられ、基板の被成膜面に対して垂直な回転軸回りに回転可能に設けられ、基板を保持するための基板ホルダーと、前記処理チャンバ内に設けられ、ターゲットを保持可能に構成され、前記回転軸がターゲットの中心点を通る垂線と不一致となるように設けられたターゲットホルダー群と、前記ターゲットホルダー群と前記基板ホルダーの間に設けられ、前記回転軸に対して回転可能であり、前記回転軸に対してn回対称に配置されたn個の孔を有するシャッターと、を備え、前記ターゲットホルダー群は、前記回転軸に対して、n回対称な位置に配置されるn個の第1群のターゲットホルダーと、前記回転軸に対してn回対称に配置されるn個の第2群のターゲットホルダーであって、該第2群のターゲットホルダーの各々が前記第1群のターゲットホルダー同士の間に設けられたn個の第2群のターゲットホルダーとを有し、前記n個の孔の第1の回転位置においては、前記n個の第1群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なり、前記n個の孔の第2の回転位置においては、前記n個の第2群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なるように構成されたスパッタリング装置を用いた、電子デバイスの製造方法であって、前記基板ホルダーの回転を開始する第1準備工程と、前記第1群のターゲットホルダーに第1電力を供給し、前記第2群のターゲットホルダーに第2電力を供給する第2準備工程と、前記シャッターのn個の孔を、前記第1群のターゲットホルダーに対向して位置させる第1成膜工程と、前記シャッターのn個の孔を、前記第2群のターゲットホルダーに対向して位置させる第2成膜工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、短時間成膜における薄膜の積層を、スループットを損なうことなく効率的に行うことが可能なスパッタリング装置及びその成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るスパッタリング装置の構成を説明する概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るターゲットホルダーの上面図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係るターゲットを遮蔽したときのシャッターの構造を説明する図である。
【図3B】本発明の一実施形態に係る第1成膜工程におけるシャッターの構造を説明する図である。
【図3C】本発明の一実施形態に係る第2成膜工程におけるシャッターの構造を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るターゲットとシャッターの孔との位置関係を説明する図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る成膜プロセスフローを説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る第1成膜工程と第2成膜工程のフローを説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る第1成膜工程と第2成膜工程のフローを説明する図である。
【図8】図5の成膜プロセスにより製造された膜構成を説明する断面図である。
【図9】比較例として斜めスパッタ成膜法により形成された膜の面内分布を説明する図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るスパッタリング成膜法により形成された膜の面内分布を説明する図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る3回対称に配置されたターゲットホルダーを説明する平面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るスパッタリング装置における制御系の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るスパッタリング装置の構成を説明する。
スパッタリング装置は、MRAMといった電子デバイスを製造することができる。スパッタリング装置は、処理チャンバ100と、該処理チャンバ内に設けられ、基板の被成膜面に対して垂直な回転軸回りに回転可能に設けられ、基板を保持するための基板ホルダー103と、基板ホルダー103を回転させる回転駆動手段としての回転駆動部121と、基板の被成膜面を含む平面に対する垂線のうち、基板の中心点を通る垂線がターゲットの中心点を通る垂線と不一致となるように設けられた、ターゲットホルダー107a〜107dを有するターゲットホルダー群と、を備えている。ターゲットホルダー107a〜107dはそれぞれ、ターゲットを保持可能に構成され、金属製部材からなり、電極として機能する。また、スパッタリング装置は、各ターゲットホルダーに、電力を供給するための電力供給手段としての直流電源を備えている。すなわち、ターゲットホルダー107a〜107dの各々には直流電源110a〜110dが接続されている。なお、図1においては、ターゲットホルダー107aに電力を供給する直流電源110a、およびターゲットホルダー107cに電力を供給する直流電源110cのみを記載している。
【0015】
ターゲットホルダー107a、107cの背後には、回転可能なマグネットユニット111a、111cが設けられている。なお、ターゲットホルダー107b、107dの背後にもマグネットユニット111a、111cと同様のマグネットユニットが設けられている。また、処理チャンバ100には、プロセスガス(本例ではアルゴン等の不活性ガス)を導入するガス導入手段としてのガス導入部201が、ゲートバルブ202を介して設けられている。さらに、処理チャンバ100には、コンダクタンスバルブ117を介して排気ポンプ118が設けられている。
【0016】
ターゲットホルダー107a〜107dにはそれぞれターゲット106a〜106dが設置されている。ターゲット106a〜106dの前面(すなわち、ターゲットホルダー107a〜107dと基板ホルダー103との間)には、基板102へのスパッタ粒子を遮蔽することが可能な二枚の第1シャッター115、第2シャッター116が設けられている。第1シャッター115、第2シャッター116は、シャッター駆動手段としてのシャッター駆動部120により、個別に駆動可能に構成されている。
なお、直流電源110a〜110d、シャッター駆動部120、及び回転駆動部121は、電気的に接続された制御手段としての制御部130により制御可能に構成されている。
【0017】
図12は、本実施形態のスパッタリング装置における制御部130の概略構成を示すブロック図である。
図12において、スパッタリング装置全体を制御する制御手段としての制御部130は、種々の演算、制御、判別などの処理動作を実行するCPU131と、このCPU131によって実行される、図5にて後述される処理などの制御プログラムなどを格納するROM132とを有する。また、制御部130は、CPU131の処理動作中のデータや入力データなどを一時的に格納するRAM133などを有する。
この制御部130には、所定の指令あるいはデータなどを入力するキーボードあるいは各種スイッチなどを含む入力操作部134、スパッタリング装置の入力・設定状態などをはじめとする種々の表示を行う表示部135がそれぞれ接続されている。また、制御部130には、上記直流電源110a〜110d、シャッター駆動部120、および回転駆動部121がそれぞれ駆動回路136〜138を介して接続されている。
【0018】
図2は、ターゲットホルダーの上面図である。本例では、4つのターゲット106a,106b,106c,106dをそれぞれ保持するためのターゲットホルダー107a,107b,107c,107dが設けられている。ターゲットホルダー107aとターゲットホルダー107cは、基板ホルダー103の回転軸Xに対して、互いに対称に配置されている。同様に、ターゲットホルダー107bとターゲットホルダー107dは、基板ホルダー103の回転軸Xに対して、互いに対称に配置されている。なお、本例では、ターゲットホルダー107aとターゲットホルダー107cには、第1種のターゲット106a、106c(例えば、Fe)が搭載されている。これらのターゲットホルダー107a、107cを、第1群のターゲットホルダーと称す。また、ターゲットホルダー107bとターゲットホルダー107dは、ターゲット106a、106cとは異なり、第2種のターゲット106b、106d(例えば、Pt)が搭載されている。これらのターゲットホルダー107b、107dを、第2群のターゲットホルダーと称す。
【0019】
電力供給手段としての直流電源110a、110cは、第1の層の成膜時においては、第1種のターゲット106a、106c(例えば、Fe)を搭載したターゲットホルダー107aとターゲットホルダー107cに、第1電力(例えば、600W)を供給するように構成されている。一方、電力供給手段としての直流電源110b、110dは、第2の層の成膜時においては、第2種のターゲット106b、106d(例えば、Pt)を搭載したターゲットホルダー107bとターゲットホルダー107dに、第1電力とは異なる第2電力(例えば、300W)を供給するように構成されている。なお、複数のターゲットホルダー107a、107b、107c、107dには、個別に直流電源110a、110b、110c、110dが設けられていることが望ましい。
【0020】
図3A〜3Cは、シャッター115、116の詳細構成を説明する模式図である。
第2シャッター116には、回転軸Xに対して1/2回転(180°)回転させると回転前の孔の位置と重なる2回対称に配置された孔(開口部)116a、116bが設けられている。同様に、第1シャッター115には、回転軸Xに対して2回対称に配置された孔(開口部)115a、115bが設けられている。なお、第1シャッター115の回転軸、第2シャッター116の回転軸、及び基板102の回転軸は、同軸になるように配置されている。
【0021】
図3Aはシャッター115、116により全てのターゲット106a、106b、106c、106dを基板102に対して遮蔽している状態を示している。具体的には、第2シャッター116で、ターゲット106a、106cを遮蔽するとともに、第2シャッター116に設けられた孔116a、116bは、それぞれターゲット106b、106cに対向して配置している。さらに図3Aの状態では、第1シャッター115で、孔116a、116bと、ターゲット106b、106dを基板102に対して遮蔽している。
【0022】
図3Bはスパッタするターゲット106a、106cを基板102に対して開放している状態を示している。つまり、第2シャッター116に設けられた孔116a、116bは、それぞれターゲット106a、106cに対向して配置している。同様に、第1シャッター115に設けられた孔115a、115bは、それぞれターゲット106a、106cに対向して配置している。
【0023】
図3Cはスパッタするターゲット106b、106dを基板102に対して開放している状態を示している。つまり、第2シャッター116に設けられた孔116a、116bは、それぞれターゲット106b、106dに対向して配置している。同様に、第1シャッター115に設けられた孔115a、115bは、それぞれターゲット106b、106dに対向して配置している。
【0024】
以上のように、第1シャッター115及び第2シャッター116は、シャッター駆動部120により、各回転軸で回転させることで、ターゲットと孔の位置を対向させたり、ずらしたりすることで、開閉可能となっている。なお、本明細書において、「開、開状態」とは、所定のターゲットが第1シャッター115および第2シャッター116の双方を介して基板102に対して露出している状態であり、第1シャッター115の孔および第2シャッター116の孔により所定のターゲットが基板102に対して開放されている状態を指す。また、本明細書において、「閉、閉状態」とは、所定のターゲットが第1シャッター115および第2シャッター116の少なくとも一方により基板102に対して露出していない状態であり、所定のターゲットが第1シャッター115および第2シャッター116の少なくとも一方により基板102に対して遮蔽されている状態を指す。
【0025】
図4は、シャッター115、116と各ターゲットとの位置関係を説明する平面概略図である。
【0026】
図4のPosition Aは、図3Bに示すように、スパッタするターゲット106a、106cを基板102に対して開放している状態(開状態)を示す。本実施形態では、孔115a、115bおよび孔116a、116bの第1の回転位置であるPosition Aにおいて、孔115a、115bおよび孔116a、116bがターゲット106a、106cと重なるように、ターゲットホルダー107a、107c、ならびに孔115a、115bおよび孔116a、116bは位置決めされている。図4のPosition Bは、図3Cに示すように、スパッタするターゲット106b、106dを基板102に対して開放している状態(開状態)を示す。本実施形態では、孔115a、115bおよび孔116a、116bの第2の回転位置であるPosition Bにおいて、孔115a、115bおよび孔116a、116bがターゲット106b、106dと重なるように、ターゲットホルダー107b、107d、ならびに孔115a、115bおよび孔116a、116bは位置決めされている。
【0027】
図4のPosition Cは、図4のPosition Aから図4のPosition Bまでの中間地点で、第1シャッター115の孔115a、115b及び116の孔116a、116bがいずれのターゲットにも重ならない状態(閉状態)を示している。図4のPosition Cに示すように、いずれのターゲットからもスパッタ成膜されない状態を作ることにより、基板102へのスパッタ粒子の付着を防止ないしは低減することができる。なお、本実施形態では、Position Cの意義としては、第1シャッター115および第2シャッター116により閉状態を確立することが重要である。従って、図3Aのように、第1シャッター115の孔および第2シャッター116の孔のいずれか一方が対象ターゲットと重なるような場合であっても、他方が該対象ターゲットと重ならないような配置であれば、Position Cに含まれる。すなわち、第1シャッター115と第2シャッター116とにより、ターゲット106a〜ターゲット106dの全てを基板102に対して遮蔽する位置をPositionCと称することにする。
【0028】
なお、本実施形態では、2つのシャッター115、116を用いているが、シャッターの数は2つに限定されない。すなわち、本発明では、第1種のターゲットを用いて成膜を行う場合に、シャッターに形成された孔の各々が、第1種のターゲットの各々に対向して位置し、かつ第2種のターゲットの各々がシャッターによって基板に対して遮られている状態を形成することが重要である。本発明では、これと共に、第2種のターゲットを用いて成膜を行う場合に、シャッターに形成された孔の各々が、第2種のターゲットの各々に対向して位置し、かつ第1種のターゲットの各々がシャッターによって基板に対して遮られている状態を形成することが重要である。これらが実現できるように、少なくとも1つのシャッターを用いれば良いのである。従って、第1シャッター115および第2シャッター116の一方を用い、他方(他のシャッター)を用いない形態であっても良い。
【0029】
次に、図5を参照して、本発明の一実施形態に係る製造方法を説明する。
図5は、本実施形態に係るスパッタリング装置を用いたMRAMの製造方法を説明する図である。以下では、一例として、2つの異なる層(ターゲット106a、106cにより形成された第1の層、およびターゲット106b、106dにより形成された第2の層)を交互に積層させた積層体の製造方法について説明する。本実施形態では、ターゲット106a、106cには、Feが用いられ、ターゲット106b、106dには、Ptが用いられる。しかし、これに限定されず、ターゲット106a、106cとしては、Fe、Co、Niのうちいずれか1つの元素あるいは1つ以上の元素を含む合金からなるターゲット材を採用することができる。また、ターゲット106b、dとしては、Cr、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Os、Re、Au、Cuのうちいずれか1つの元素あるいは1つ以上の元素を含む合金とからなるターゲット材料を採用することができる。なお、以下の処理は、本発明のスパッタリング装置に搭載されたコンピュータ等よりなる制御手段としての制御部130によって実行される。
【0030】
ステップS100で、本工程がスタートされる。すなわち、ユーザが入力操作部134を介して、MRAM製造の開始指示と上記第1の層および第2の層の積層数M(Mは自然数であり、第1および第2の層はそれぞれM層ずつ形成される)を示す情報とを入力すると、制御部130は、該ユーザ入力を受け付けて、上記積層数MをRAM133に記憶させ、上記開始指示に従って図5に示す製造手順を実行する。制御部130は、基板搬送、ガス導入、及びシャッターの遮蔽の3つの準備処理を並列に進行する。即ち、ステップS101では、制御部130は、搬送ロボット(不図示)を制御して、処理チャンバ100内に基板102を搬入し、基板ホルダー103上に載置する。次に、ステップS103(第1準備工程)では、制御部130は、回転駆動部121によって基板ホルダー103が所定の回転速度(本例では100rpm)での回転を開始させる。
【0031】
上記処理と並行して、ステップS104では、制御部130は、ガス導入部201により、処理チャンバ100内にプロセスガス(アルゴンガスなどの不活性ガス)を導入させる。なお、上記処理の間、即ち、ステップS105で示すように、制御部130は、シャッター駆動部120を駆動して、シャッター115、116を、図3Aで示した閉鎖状態となるように位置決めさせる。すなわち、本ステップでは、制御部130は、シャッター駆動部120を制御して、Position Cとなるように、すなわち、シャッター116の孔116a、116bがターゲット106b、106dと重なり、かつシャッター115の孔115a、115bがターゲット106a、106cと重ならないように第1シャッター115および第2シャッター116を回転させ位置決めさせる。
【0032】
ステップS106(第2準備工程)では、制御部130は、直流電源110a〜110dを制御して、ターゲットホルダー107a〜107dに所定の電力を供給する。すなわち、直流電源110a、110cから、ターゲットホルダー107a、107cに第1電力が供給され、直流電源110b、110dから、ターゲットホルダー107b、107dに第2電力が供給される。これにより、処理チャンバ100内のアルゴンガスがプラズマ放電される。以上のように、基板搬送、ガス導入、及びシャッターの遮蔽の3つの準備処理の後に、電力供給工程を行なうことで、ターゲットの消耗を抑制することができる。
【0033】
ステップS107(第1成膜工程)では、シャッター115、116を、図3Bで示す状態とすることで、ターゲット106a、106cのスパッタリング成膜(上記第1の層の成膜)が開始される。すなわち、本ステップでは、制御部130は、シャッター駆動部120を制御して、図4のPosition Aとなるように、すなわち、シャッター116の孔116a、116bおよび第2のシャッター115の孔115a、115bがターゲット106a、106cと重なるように第1シャッター115および第2シャッター116を回転させ位置決めさせる。所定時間、成膜が継続すると、次のステップに進む。
【0034】
ステップS108(第2成膜工程)では、シャッター115、116を90度回転させて、図3Cで示す状態とすることで、ターゲット106b、106dのスパッタリング成膜(上記第2の層の成膜)が開始される。すなわち、本ステップでは、制御部130は、シャッター駆動部120を制御して、図4のPosition Bとなるように、すなわち、シャッター116の孔116a、116bおよび第2のシャッター115の孔115a、115bがターゲット106b、106dと重なるように第1シャッター115および第2シャッター116を回転させ位置決めさせる。所定時間、成膜が継続すると、次のステップに進む。
【0035】
ステップS109では、制御部130は、現在の成膜された積層数が所定の積層数Mに達したかどうかを判定する。本実施形態では、制御部130は、ステップA108を終了する毎に、現在成膜された積層数をカウントし、該カウント結果をRAM133に記憶させる。すなわち、制御部130は、第1成膜工程および第2成膜工程に係る所定時間経過すると、積層数に関するカウント値を1つずつ累積し、該累積したカウント値を現在の積層数としてRAM133に記憶させる。よって、本ステップにおいて制御部130は、RAM133に保持された積層数Mと上記カウント値とを比較し、現在の成膜された積層数が所定の積層数Mに達したか否かを判断する。該判断結果、Noの場合には、ステップS107に戻り、成膜処理が繰り返される。なお、ここでいう「繰り返す」とは、少なくとも第1成膜工程、第2成膜工程、及び第1成膜工程を順に行なうことをいう。
【0036】
なお、本ステップで、判定がNOであって、ステップS107に戻る場合、第1シャッター115と第2シャッター116の回転方向は、ステップS107からステップS108に遷移したときと同方向に90度回転する場合と逆方向に90度回転する場合がある。同方向に回転する場合、シャッター駆動部120は、第1シャッター115および第2シャッター116を同方向に回転させる回転機構だけを備えればよい。また、逆方向へ回転する場合、シャッターのターゲット側の面に付着する膜は異種の膜が積層することが無いため、シャッターを交換した後の膜の剥離が容易であるという利点がある。
【0037】
ここで、図4、図5、図6を参照して、第1の層の成膜と第2の層の成膜の繰返し動作に係る時間を説明する。
【0038】
第1シャッター115、第2シャッター116を、時刻T1まで、例えば図3Aに示すPosition Cを示す状態に維持させる。時刻T1において、図6に示すように、約1秒間(時刻T1からT2までの時間)のシャッター116を動作させてPosition Aを確立する。これにより、ターゲット106a、106cは完全に基板102に対して開放され、図3Bの状態(Position A)となり、時刻T2から所定時間の第1成膜工程が開始される。次に、時刻T3において、シャッター115、116は、回転軸Xに対して、同期して回転し、図4のPostion Cの状態、つまり、第1種のターゲット106a、106cからのスパッタ粒子も、第2種のターゲット106b、106dからのスパッタ粒子も、シャッター115、116によって、基板102に対して遮蔽された状態となる。その後、時刻T5において、シャッター115、116は、図3Cの状態(Position B)となり、時刻T5から所定時間の第2成膜工程が開始される。その後、時刻T6から所定時間のシャッター動作後、時刻T8からT9まで第1成膜工程が行なわれる。さらに、時刻T9からT11までの間の所定時間のシャッター動作後、第2成膜工程が行なわれる。こうして、所定数の積層膜が形成される。なお、シャッターの移動は図6に示すように定速度で行われても良いし、成膜時間終了直後は低速に動作し、Position Cを通過するときは高速に動作し、さらにPosition Aに近づくときは再び低速に動作しても良い。このような動作を行うことで、成膜速度が過渡的に変化する成膜工程終了および開始直後について、成膜速度の制御性を向上させることが可能で、より精密な膜厚分布制御が可能となる。
【0039】
さらに、図6は、第1種ターゲット106a、106cへの電力及び第2種106b、106dへの電力と時間との関係も示している。直流電源110a、110cは、第1種ターゲット(ターゲットホルダー107a、107c)に一定の電力(例えば、600W)を供給し、直流電源110b、110dは第2種ターゲット(ターゲットホルダー107b、107dに一定の電力(例えば、300W)を供給し続けてもよい。しかしながら、これでは、成膜されていないターゲットの消耗が大きく、また電力も無駄になってしまう。そのため、本例では、電力供給手段としての直流電源は、所定も層の成膜に関与していないターゲットへの電力を低減している。
【0040】
具体的には、図6に示すように、前述した第2準備工程では、時刻T0において、直流電源110a、110cは、第1種ターゲット106a、106c(ターゲットホルダー107a、107c)に電力P2(50W)を供給し、一方、直流電源110b、110dは、第2種ターゲット106b、106d(ターゲットホルダー107b、107d)に電力P4(50W)を供給する。シャッター115、116が開動作して、第1成膜工程を開始する際、直流電源110a、110cは、時刻T1において第1種ターゲット106a、106cに供給する電力P2を電力P1まで上昇させる一方、直流電源110b、110dは第2種ターゲット106b、106dに供給する電力P4をそのまま維持する。
【0041】
さらに、Position AからPosition Bに移行する間の時刻T4において、直流電源110a、110cは、第1種ターゲット106a、106cに供給する電力をP1からP2へ減少させる一方、直流電源110b、110dは第2種ターゲット106b、106dに供給する電力をP4からP3へと上昇させる。よって、時刻T5においては、第2種ターゲット106b、106dが基板102に対して開放され、かつ基板ホルダー107b、107dに対して第2の層を形成するのに必要な電力P3が印加された状態となり、第2成膜工程が行われる。
【0042】
以上のように、電力供給手段としての直流電源は成膜されていない側のターゲット群への投入電力を低減(50Wくらい)することでターゲットの無駄な消費を抑えることができる。なお、図6では、各種ターゲットへの電力導入タイミングは、シャッター115、116がPosition Cを通過するときとしたが、これに限定されず、図7に示すように、これ以前に行ってもよい。
【0043】
以上のように、ステップS109で、Yesの場合、即ち、所定数の積層数Mに達した場合には、ステップS110に進み、成膜処理を終了する。
図8は、本製造方法により作製されたFe/Pt人工格子である。図8において、符号91は上記第1の層であり、符号92は上記第2の層である。なお、人工格子の構成はこれに限定されず、Fe、Co、Niのうちいずれか1つの元素あるいは1つ以上の元素を含む合金と、Cr、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Os、Re、Au、Cuのうちいずれか1つの元素あるいは1つ以上の元素を含む合金とが交互に積層された構造であればよい。例えば、Co/Pt人工格子、Co/Pd人工格子、CoCr/Pt人工格子、Co/Ru人工格子、Co/Os、Co/Au、Ni/Cu人工格子等があげられる。
【0044】
以上のように、対向するターゲットをスパッタすることで、基板に均一な膜を形成することができる。また、本実施形態では、第1種ターゲット106a、106cを保持するためのターゲットホルダー107a、107cを回転軸Xに対して2回対称な位置に設け、第2種ターゲット106b、106dを保持するためのターゲットホルダー107b、107dを上記回転軸Xに対して2回対称な位置に設けている。さらに、孔115a、115bを上記回転軸Xに対して2回対称な位置に設け、かつ孔116a、116bを上記回転軸Xに対して2回対称な位置に設けるように第1シャッター115および第2シャッター116を構成している。さらに、これら孔115a、115bおよび孔116a、116bの各々が、ターゲット106a〜106dの各々と重なるように位置決めされている。従って、シャッターを所定角度(本例では90度)回転する動作を継続することで、均質な積層膜を、高いスループットで作製することができる。
【0045】
図9は、比較例として、斜めスパッタにより形成された膜の面内分布を示している。具体的には、符号901は、従来の構成902に示すように、一つのTiターゲットを用いて、基板を回転させながら、斜めスパッタを行なった場合のTi膜の面内分布を示している。成膜中の基板ホルダーの総回転数は、100回転とした。符号903は、従来の構成904に示すように、従来の構成902のターゲットの位置から回転軸に対して180°ずらしたターゲットを用いて、基板を回転させながら、斜めスパッタを行なった。なお、従来の構成902と従来の構成904は、ターゲットの位置以外は、同じ条件で実験を行なった。この結果から、面内分布901および903に示すように、各面内分布は不均一であることが分かる。これは、図6で示したように、シャッターの開動作に起因するものであると考えられる。
【0046】
図10は、本実施形態により形成された膜の面内分布を示している。具体的には、対向するターゲットホルダー106a、106cに保持されたTiターゲットを用いて、基板を回転させながら、斜めスパッタを行なった。この結果より、所定の軸(回転軸X)に対して2回対称な位置に配置された2つのターゲットからスパッタリング成膜を行なうことで、比較例で挙げられた、シャッター開動作に起因する膜の偏りが相殺され、同心円的で、かつ均一なTi膜ができていることが分かる。
【0047】
本実施形態では、基板ホルダー3の回転軸と第1シャッター115および第2シャッター116の回転軸とが一致している。そして、該一致した回転軸Xに対して、成膜しようとする層の材料となるターゲットを2回対称な位置に2つ配置し、孔115a115bを上記回転軸Xに対して2回対称な位置に設け、かつ孔116a、116bも上記回転軸Xに対して2回対称な位置に設けている。従って、開状態の時には、基板ホルダー103の回転軸Xに対して2回対称な位置に成膜対象の2つのターゲットが露出しているので、上記膜の偏りを相殺することができ、面内分布を同心的に均一にすることができる。
【0048】
図11は、ターゲットホルダーの変形例を説明する平面図である。
図2は、回転軸Xに対して、180°対称(2回対称)に配置されたターゲット106a、106cと、ターゲット106a、106cの間であって、回転軸Xに対して、180°対称(2回対称)に配置されたターゲット106b、106dを示した。一方、図10は、回転軸Xに対して、120°対称(3回対称)に配置されたターゲット106a、106c、106eと、ターゲット106a、106c、106eの間(第1群のターゲットホルダー同士の間)であって、回転軸Xに対して、120°対称(3回対称)に配置されたターゲット106b、106d、106fを示している。この場合、シャッター115に設けられた孔115a、115b、115cは、回転軸Xに対して、3回対称に配置されている。同様に、シャッター116に設けられた孔116a、116b、116cは、3回対称に配置されている。
【0049】
以上、本発明に適用可能な第1群のターゲットホルダーの数は、2個や3個に限定されず、n個(nは2以上の整数)であればよい。その場合、各第1群のターゲットホルダーは、基板ホルダーの回転軸Xに対してn回対称に配置する必要がある。同様に、第2群のターゲットホルダーの数もn個であり、かつ各第2群のターゲットホルダーも、上記回転軸Xに対してn回対称に配置する必要がある。シャッターに設けられた孔の数も、同様に、n個であり、かつ各孔は、回転軸Xに対してn回対称に配置する必要がある。なお、シャッターの数は、2個に限らず、1個であっても良いし、3つ以上あっても良い。
【0050】
このように、本発明の一実施形態では、第1の層を形成するためのn個の第1群のターゲットホルダーを基板ホルダーの回転軸Xに対してn回対称に配置し、第2の層を形成するためのn個の第2群のターゲットホルダーを回転軸Xに対してn回対称に配置している。これに加えて、上記回転軸Xを中心に回転可能であり、該回転に応じてそれぞれが第1群および第2群のターゲットホルダーと重なるように設けられたn個の孔を有するシャッターをターゲットホルダーと基板ホルダーとの間に設け、n個の孔を、上記回転軸Xにn回対称に配置している。従って、例えば、第1の層を形成する際には、第1群のターゲットホルダーに保持されたターゲットを、回転軸Xに対してn回対称の位置から基板ホルダーに保持された基板に対して開放することができる。よって、上記膜の偏りを相殺することができ、面内分布を同心的に均一にすることができる。
【符号の説明】
【0051】
100 処理チャンバ
102 基板
103 基板ホルダー
106a〜106d ターゲット
107a〜106d ターゲットホルダー
110a〜110d 直流電源
111a〜111d マグネットユニット
115 第1シャッター
115a、115b 孔
116 第2シャッター
116a、116b 孔
120 シャッター駆動部
121 回転駆動部
130 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内に設けられ、基板の被成膜面に対して垂直な回転軸に対して回転可能に設けられ、基板を保持するための基板ホルダーと、
前記処理チャンバ内に設けられ、ターゲットを保持可能に構成され、前記回転軸がターゲットの中心点を通る垂線と不一致となるように設けられたターゲットホルダー群と、
前記ターゲットホルダー群と前記基板ホルダーの間に設けられ、前記回転軸に対して回転可能であり、前記回転軸に対してn回対称に配置されたn個の孔を有するシャッターと、
を備え、
前記ターゲットホルダー群は、
前記回転軸に対してn回対称な位置に配置されるn個の第1群のターゲットホルダーと、前記回転軸に対してn回対称に配置されるn個の第2群のターゲットホルダーであって、該第2群のターゲットホルダーの各々が前記第1群のターゲットホルダー同士の間に設けられたn個の第2群のターゲットホルダーとを有し、
前記n個の孔の第1の回転位置においては、前記n個の第1群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なり、前記n個の孔の第2の回転位置においては、前記n個の第2群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記基板ホルダーを前記回転軸に対して回転させる回転駆動手段と、
前記シャッターを前記回転軸に対して回転させるシャッター駆動手段と、
前記ターゲットホルダー群に電力を供給するための電力供給手段と、
前記回転駆動手段、前記電力供給手段、及び前記シャッター駆動手段を制御するための制御手段とをさらに備え、
前記制御手段は、第1の層および第2の層を交互に積層させた積層体を形成する際、
前記回転駆動手段を駆動して、前記基板ホルダーの回転を開始し、
前記電力供給手段を駆動して、前記第1群のターゲットホルダーに第1電力を供給し、前記第2群のターゲットホルダーに第2電力を供給し、
前記第1の層を成膜する場合、前記シャッター駆動手段を駆動して、前記シャッターのn個の孔を、前記第1群のターゲットホルダーに対向して位置させ、
前記第2の層を成膜する場合、前記シャッター駆動手段を駆動して、前記シャッターのn個の孔を、前記第2群のターゲットホルダーに対向して位置させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記ターゲットホルダー群と前記基板ホルダーの間に設けられ、前記回転軸に対して回転可能であり、前記回転軸に対してn回対称に配置されたn個の孔を有する他のシャッターをさらに備え、
前記他のシャッターが有するn個の孔の各々は、該他のシャッターの回転位置に応じて、前記第1群のターゲットホルダーの各々および前記第2群のターゲットホルダーの各々と重なることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記シャッターおよび前記他のシャッターを前記回転軸に対して回転させるシャッター駆動手段と
前記シャッター駆動手段を制御するための制御手段とをさらに備え、
前記制御手段は、第1の層および第2の層を交互に積層させた積層体を形成する際、
前記第1の層および第2の層の形成の前に、前記シャッターのn個の孔と、前記他のシャッターのn個の孔とを、互いに重ならない位置に配置するように前記シャッター駆動手段を制御することを特徴とする請求項3に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記基板ホルダーを前記回転軸に対して回転させる回転駆動手段と、
前記ターゲットホルダー群に電力を供給するための電力供給手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記回転駆動手段および前記電力供給手段をも制御するように構成されており、
前記制御手段は、前記第1の層および第2の層の形成の前に、前記回転駆動手段を駆動して、前記基板ホルダーの回転を開始し、その後で、前記電力供給手段を駆動して、前記第1群のターゲットホルダーに第1電力を供給し、前記第2群のターゲットホルダーに第2電力を供給するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第1の層の成膜時においては、前記第2群のターゲットホルダーに供給する電力を低減し、前記第2の層の成膜時においては、前記第1群のターゲットホルダーに供給する電力を低減するように前記電力供給手段を制御することを特徴とする請求項2に記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内に設けられ、基板の被成膜面に対して垂直な回転軸回りに回転可能に設けられ、基板を保持するための基板ホルダーと、
前記処理チャンバ内に設けられ、ターゲットを保持可能に構成され、前記回転軸がターゲットの中心点を通る垂線と不一致となるように設けられたターゲットホルダー群と、
前記ターゲットホルダー群と前記基板ホルダーの間に設けられ、前記回転軸に対して回転可能であり、前記回転軸に対してn回対称に配置されたn個の孔を有するシャッターと、
を備え、
前記ターゲットホルダー群は、
前記回転軸に対して、n回対称な位置に配置されるn個の第1群のターゲットホルダーと、前記回転軸に対してn回対称に配置されるn個の第2群のターゲットホルダーであって、該第2群のターゲットホルダーの各々が前記第1群のターゲットホルダー同士の間に設けられたn個の第2群のターゲットホルダーとを有し、
前記n個の孔の第1の回転位置においては、前記n個の第1群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なり、前記n個の孔の第2の回転位置においては、前記n個の第2群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なるように構成されたスパッタリング装置を用いた、電子デバイスの製造方法であって、
前記基板ホルダーの回転を開始する第1準備工程と、
前記第1群のターゲットホルダーに第1電力を供給し、前記第2群のターゲットホルダーに第2電力を供給する第2準備工程と、
前記シャッターのn個の孔を、前記第1群のターゲットホルダーに対向して位置させる第1成膜工程と、
前記シャッターのn個の孔を、前記第2群のターゲットホルダーに対向して位置させる第2成膜工程と
を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記第1成膜工程と前記第2成膜工程とを繰り返すことを特徴とする請求項7に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項1】
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内に設けられ、基板の被成膜面に対して垂直な回転軸に対して回転可能に設けられ、基板を保持するための基板ホルダーと、
前記処理チャンバ内に設けられ、ターゲットを保持可能に構成され、前記回転軸がターゲットの中心点を通る垂線と不一致となるように設けられたターゲットホルダー群と、
前記ターゲットホルダー群と前記基板ホルダーの間に設けられ、前記回転軸に対して回転可能であり、前記回転軸に対してn回対称に配置されたn個の孔を有するシャッターと、
を備え、
前記ターゲットホルダー群は、
前記回転軸に対してn回対称な位置に配置されるn個の第1群のターゲットホルダーと、前記回転軸に対してn回対称に配置されるn個の第2群のターゲットホルダーであって、該第2群のターゲットホルダーの各々が前記第1群のターゲットホルダー同士の間に設けられたn個の第2群のターゲットホルダーとを有し、
前記n個の孔の第1の回転位置においては、前記n個の第1群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なり、前記n個の孔の第2の回転位置においては、前記n個の第2群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記基板ホルダーを前記回転軸に対して回転させる回転駆動手段と、
前記シャッターを前記回転軸に対して回転させるシャッター駆動手段と、
前記ターゲットホルダー群に電力を供給するための電力供給手段と、
前記回転駆動手段、前記電力供給手段、及び前記シャッター駆動手段を制御するための制御手段とをさらに備え、
前記制御手段は、第1の層および第2の層を交互に積層させた積層体を形成する際、
前記回転駆動手段を駆動して、前記基板ホルダーの回転を開始し、
前記電力供給手段を駆動して、前記第1群のターゲットホルダーに第1電力を供給し、前記第2群のターゲットホルダーに第2電力を供給し、
前記第1の層を成膜する場合、前記シャッター駆動手段を駆動して、前記シャッターのn個の孔を、前記第1群のターゲットホルダーに対向して位置させ、
前記第2の層を成膜する場合、前記シャッター駆動手段を駆動して、前記シャッターのn個の孔を、前記第2群のターゲットホルダーに対向して位置させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記ターゲットホルダー群と前記基板ホルダーの間に設けられ、前記回転軸に対して回転可能であり、前記回転軸に対してn回対称に配置されたn個の孔を有する他のシャッターをさらに備え、
前記他のシャッターが有するn個の孔の各々は、該他のシャッターの回転位置に応じて、前記第1群のターゲットホルダーの各々および前記第2群のターゲットホルダーの各々と重なることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記シャッターおよび前記他のシャッターを前記回転軸に対して回転させるシャッター駆動手段と
前記シャッター駆動手段を制御するための制御手段とをさらに備え、
前記制御手段は、第1の層および第2の層を交互に積層させた積層体を形成する際、
前記第1の層および第2の層の形成の前に、前記シャッターのn個の孔と、前記他のシャッターのn個の孔とを、互いに重ならない位置に配置するように前記シャッター駆動手段を制御することを特徴とする請求項3に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記基板ホルダーを前記回転軸に対して回転させる回転駆動手段と、
前記ターゲットホルダー群に電力を供給するための電力供給手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記回転駆動手段および前記電力供給手段をも制御するように構成されており、
前記制御手段は、前記第1の層および第2の層の形成の前に、前記回転駆動手段を駆動して、前記基板ホルダーの回転を開始し、その後で、前記電力供給手段を駆動して、前記第1群のターゲットホルダーに第1電力を供給し、前記第2群のターゲットホルダーに第2電力を供給するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第1の層の成膜時においては、前記第2群のターゲットホルダーに供給する電力を低減し、前記第2の層の成膜時においては、前記第1群のターゲットホルダーに供給する電力を低減するように前記電力供給手段を制御することを特徴とする請求項2に記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内に設けられ、基板の被成膜面に対して垂直な回転軸回りに回転可能に設けられ、基板を保持するための基板ホルダーと、
前記処理チャンバ内に設けられ、ターゲットを保持可能に構成され、前記回転軸がターゲットの中心点を通る垂線と不一致となるように設けられたターゲットホルダー群と、
前記ターゲットホルダー群と前記基板ホルダーの間に設けられ、前記回転軸に対して回転可能であり、前記回転軸に対してn回対称に配置されたn個の孔を有するシャッターと、
を備え、
前記ターゲットホルダー群は、
前記回転軸に対して、n回対称な位置に配置されるn個の第1群のターゲットホルダーと、前記回転軸に対してn回対称に配置されるn個の第2群のターゲットホルダーであって、該第2群のターゲットホルダーの各々が前記第1群のターゲットホルダー同士の間に設けられたn個の第2群のターゲットホルダーとを有し、
前記n個の孔の第1の回転位置においては、前記n個の第1群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なり、前記n個の孔の第2の回転位置においては、前記n個の第2群のターゲットホルダーの各々と前記n個の孔の各々とが重なるように構成されたスパッタリング装置を用いた、電子デバイスの製造方法であって、
前記基板ホルダーの回転を開始する第1準備工程と、
前記第1群のターゲットホルダーに第1電力を供給し、前記第2群のターゲットホルダーに第2電力を供給する第2準備工程と、
前記シャッターのn個の孔を、前記第1群のターゲットホルダーに対向して位置させる第1成膜工程と、
前記シャッターのn個の孔を、前記第2群のターゲットホルダーに対向して位置させる第2成膜工程と
を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記第1成膜工程と前記第2成膜工程とを繰り返すことを特徴とする請求項7に記載の電子デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−149339(P2012−149339A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243539(P2011−243539)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
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