説明

トンネル層に量子ドットを有するトランジスタ

本発明は、半導体本体(1)内に配置された半導体部品を記述したもので、前記半導体部品は、第1の導電型である少なくとも1つのソース領域(4)及び少なくとも1つのドレイン領域(5)を有し、ソース領域とドレイン領域の間に配置された第2の導電型である少なくとも1つの本体領域(8)を有し、絶縁層(9)により半導体本体から絶縁された少なくとも1つのゲート電極(10)を有し、前記絶縁層(9)は好ましくは焼結された一体化量子ドット含有層である。本発明は更に、量子ドット含有誘電性懸濁液が半導体本体に塗布され、次に例えば焼結によって一体化される上記の半導体部品の作製方法を記述する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の導電型である少なくとも1つのソース領域及び少なくとも1つのドレイン領域を有し、ソース領域とドレイン領域の間に配置された第2の導電型である少なくとも1つの本体領域を有し、絶縁層により半導体本体から絶縁された少なくとも1つのゲート電極を有する、半導体本体内に配置された半導体部品に関する。本発明は半導体部品を作製する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタ機能を有する部品は広い範囲の実施形態で知られており、これら実施形態の1つは電界効果トランジスタ(FET)タイプである。電界効果トランジスタの場合、ソース領域及びドレイン領域に接触して配置された電気チャネル内の電荷キャリア濃度は、制御電極(ゲート電極)へ電圧を印加することにより変更される。制御電極はPN接合(JFET)によってか、絶縁層(一般にSiO又は金属酸化皮膜)(MOSFET)によってかのいずれかによりチャネルから絶縁されることがある。MOSFETの場合、導電チャネルトンネルは、ゲート電圧が上昇するにつれて、ゲート電極の誘電により生成される。電圧のタイプ、即ち正又は負電圧は、FETのドーピングタイプに依存する。
【0003】
不揮発性メモリに使用するためそれ自体大きな潜在力を有するいわゆる単一電子トランジスタの作製には多くの関心がある。ゲート酸化物に量子ドットを有するMOSFETは、このような単一電子トランジスタである。電圧がゲート電極に印加されると、電子はゲート酸化物から量子ドットへトンネルし、それにより吸い上げられる(taken up)。量子ドットに吸い上げられる電子の数は、量子ドットの負の電荷、及び負に荷電された量子ドットと負に荷電された電子との間の結果として生じるクーロン反発力によって制限される。
【0004】
保持時間即ち電荷がゲート酸化物の量子ドットに保存される時間は、電子がトンネルされるときに高いエネルギバリアを克服しなければならないので、このようなトランジスタでは極めて長い。これは、特に関心の高い不揮発性メモリでこれらのトランジスタを使用させている。エネルギバリアは、ゲート電極へ電圧を印加することにより下げられることがある。
【0005】
米国特許第6586785号は、トランジスタの浮遊ゲートが、誘電体シェルに包囲された半導体ナノ粒子の層を含んでいるトランジスタを記載している。浮遊ゲートは、2つの酸化物層の間に配置され、そのうちの一方はトンネル酸化物である。ナノ粒子は真空技術を使用して作製され、堆積される。
【0006】
このトランジスタの欠点は、真空技術を使用した作製が極めて複雑且つ費用がかかることである。トンネル酸化物層の作製は、しばしば更なる困難をもたらす。トンネル酸化物層は、薄すぎる場合には短絡を起こすので、薄すぎず従って導電性であってはならない。他方厚すぎてもならず、厚すぎると電子がトンネル酸化物層をトンネルすることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、作製が簡単で経済的な、絶縁層を有する改善された半導体部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、第1の導電型である少なくとも1つのソース領域及び少なくとも1つのドレイン領域を有し、ソース領域とドレイン領域の間に配置された第2の導電型である少なくとも1つの本体領域(body zone)を有し、量子ドットを含む一体化層(consolidated layer)である絶縁層により半導体本体(semiconductor body)から絶縁された少なくとも1つのゲート電極を有する、半導体本体内に配置された半導体部品(semiconductor component)によって達成される。
【0009】
本発明による半導体部品は、いかなる個別に配置された量子ドットも含まない一体化された絶縁層を使用し、対象の量子ドットが連続層に配置され、従ってこの層がより頑丈であるという利点を有する。
【0010】
また本発明による半導体部品の場合には、トンネル酸化物層が追加される必要がない。これは半導体部品を作製する方法を単純化し、より少ない層しか半導体部品内に存在しないので、半導体部品が動作するときに層の界面に起こることがある接触問題の数を減少させる。
【0011】
本発明による半導体部品の更なる利点は、量子ドットが湿式化学プロセスによって作製され、従って半導体部品の生産コストを低減できることである。
【0012】
本発明は更に、第1の導電型である少なくとも1つのソース領域及び少なくとも1つのドレイン領域を有し、ソース領域とドレイン領域の間に配置された第2の導電型である少なくとも1つの本体領域を有し、量子ドットを含む一体化層により半導体本体から絶縁された少なくとも1つのゲート電極を有する、半導体本体内に配置された半導体部品を作製する方法に関し、この方法では、一体化された絶縁層は量子ドット包含懸濁液を半導体本体に塗布し、それを一体化することによって作製される。
【0013】
絶縁層を作製するときに、有利にはナノ結晶材料の融点低下が利用される。この効果を利用することによって、絶縁層は低温Tで一体化され、一般にT<300℃である。
【0014】
更なる有利な開発は、それぞれの特許請求の範囲の独立項から明らかになるであろう。
【0015】
本発明は、図面に示された実施形態の実施例を参照して更に記載されるが、本発明はそれらに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1はMOSFETの構造の略図である。例えばシリコン、GaAs、SiC、GaN、又はInPの半導体本体1は第1表面(ウエハ表面)2及び第2表面(ウエハ裏面)3を備えている。高濃度のn型にドープされたソース領域4及びこれから離隔した高濃度のn型にドープされたドレイン領域5が第1表面2へ導入される。MOSFETのこの実施形態において、第1導電タイプは従ってn型の導電性であり、第2導電タイプはp型の導電性であり、nチャネルMOSFETが得られる。原理的には、n型及びp型のドーピングは逆転されることがあり、従ってpチャネルMOSFETが得られる。ホウ素が例えばp型導電性領域のドーピング原子として使用され、リン、ヒ素又はアンチモンが例えばn型導電性領域のドーピング原子として使用されてもよい。ソース領域4はソースメタライゼーション6(ソース電極)により導電的に接触され、ドレイン領域5はドレインメタライゼーション7(ドレイン電極)により導電的に接触される。p型導電性本体領域8は、ソース領域4とドレイン領域5の間に配置される。第1表面2に配置された本体領域8の範囲のエリアには、絶縁層9により半導体本体1から絶縁されたゲート電極10(制御電極)が配置されている。ゲート電極10、ソース電極6及びドレイン電極7はそれぞれゲート端子G、ソース端子S及びドレイン端子Dに接続され、図1に示されていないパッシベーション層、例えば電界酸化物により、第1表面2で互いにある距離で外側が絶縁されている。絶縁層11は、半導体部品の臨界域にも配置されている。ゲート電極10、ソース電極6及びドレイン電極7は、例えばAl、Au−Sb、Ni−Ge、Au−Ni−Ge、Ni−Ag−Ge、Ni−Pd−Ge、Ni−Pt−Ge、Ni−In−Ge、Ti、Al−Ti、Al−Ti−Al、Ni、Ti−Au、又はPd−Auを材料として含んでいてもよい。各個々の場合で材料の選択は、それ自体、使用される半導体材料及びドーピングの型に依存する。
【0017】
一体化絶縁層9は誘電体マトリックスに埋め込まれた量子ドットを含む。量子ドットは、例えばいわゆる複合半導体即ち周期律表の主群からの各種元素で構成された半導体を含む。半導体材料は、例えばIV群材料、III/V群材料、II/VI群材料、I/VII群材料又はこれら半導体材料の1つ又は複数の組み合わせである。好ましくは量子ドットは、Si、或いは例えばCdSe、CdS、CdTe、ZnS、HgS、ZnTe、ZnSe、ZnOなどのII/VI群材料、或いは例えばInP、InAs、InN、GaAs、GaN、GaP、GaSb、AlAs又はAlPなどのIII/V群材料を含む。量子ドットは、TiO、PbS又はその他の所望の材料を含む。
【0018】
代替的に、量子ドットは、量子ドットが大きなバンドギャップの誘電体シェルによって包囲された半導体材料のコアを含むように構成されてもよい。誘電体シェルの材料は、例えばSiO、Al又はYなどの誘電体材料である。これら材料は大きなバンドギャップを示し、従って良好な絶縁性を有する。このような量子ドットは「コア/シェル量子ドット」としても知られている。コア/シェル構造の好ましい量子ドットは、例えばTiO/SiO又はZn/SiOである。
【0019】
量子ドットの直径又はコア/シェル量子ドットのコア直径は使用される材料に依存し、好ましくは1〜10nmの間の大きさである。量子ドットの直径は、1〜5nmの間であることが特に好ましいことがある。誘電体シェルの層の厚さも使用される材料に依存する。層の厚さは、それが大きい場合には電子がもはや誘電体マトリックスを通って、完成した一体化された絶縁層9の量子ドットへトンネルできないので大きすぎてはならない。層の厚さは、小さすぎると誘電体マトリックスが不十分に絶縁され、従って短絡をもたらすことがあるので、小さすぎてもならない。誘電体シェルの層厚は2.5nmの範囲であることが好ましい。
【0020】
この文脈において、一体化とは、粒子即ち量子ドットを集めて連続絶縁層9を形成する物理的方法を表している。これは、例えば熱、圧力、光への露出、化学反応又はこれら手段の組み合わせによって起こることがある。一体化プロセスは、熱によって行われることが特に好ましい。この方法は、絶縁層9の焼結を示すこともある。
【0021】
量子ドットは、一般にコロイド化学合成により作製される。この方法では、反応相手、通常は金属含有化合物及び非金属含有化合物が有機溶液又は水に混合され、高温で反応させられる。
【0022】
コア及び誘電体を含有した量子ドットを作製するために、まずコアが上記のように作製される。次に溶液が冷却され、誘電体シェルの1つ又は複数の前駆体が溶液に加えられる。
【0023】
SiOの誘電体シェルの場合、まずコアが作製され、アルコール溶液に分散される。テトラエチルオルソシリケート(TEOS)を添加しpH値を上昇させた後、SiO前駆体がコアに付着される。溶液を約400℃の温度まで加熱することにより、SiOの完全なシェルが得られる。Yの誘電体シェルの場合、まずコアが上記のように作製される。次にY(NOの水性溶液が(NHCOと混合され、コア含有溶液に添加される。この混合液を80℃に加熱すると、Y(OH)COがコアに徐々に付着され、次いで約600℃の温度でYに転化される。
【0024】
沈殿反応中、量子ドットの表面に結合する錯体配位子(complexing ligand)が添加される。サイズの分布を改善するために、次いでサイズの分別(fractionation)が行われる。
【0025】
錯体配位子は、一体化プロセス中、特に焼結中に残留物を残さず蒸発する有機配位子を含むことが好ましい。ピリジンが錯体配位子として使用されることが好ましい。代替的には、例えばヘキサデシルアミン(HDA)、トリオクチルホスフィン酸化物(TOPO)及び/又はトリオクチルホスフィン(TOP)など、他の錯体配位子がまず量子ドットの合成中に使用されることができる。一体化絶縁層9の作製前に、錯体配位子は、ピリジンでの反復洗浄によりピリジンと置き換えられる。
【0026】
量子ドットのタイプに応じて、2つの異なる変形が一体化絶縁層9を作製するために使用される。
【0027】
誘電体シェルを有する量子ドットに基づいて一体化絶縁層9を作製するために、安定化された量子ドット含有懸濁液が半導体本体1に塗布される。これは、例えば半導体本体1の懸濁液への反復浸漬、スピンコーティング、電気泳動又は沈殿により行われてもよい。
【0028】
絶縁層9は次に不活性雰囲気中で350℃、好ましくは300℃以下の温度で一体化される。一体化温度は、一体化プロセス中に過度の圧力が加えられれば下げられる。
【0029】
一体化プロセス中に、シェルはコアよりも前に溶融し、シェルの材料も量子ドットのコアの間に広がる。冷却後、量子ドットが誘電体マトリックスに埋め込まれた連続一体化絶縁層9が得られる。この変形を用いると、誘電体マトリックスが量子ドットの誘電体シェルから作製される。
【0030】
代替的に、誘電体材料の粒子の直径が量子ドット全体(シェルを含む)の粒子直径よりも小さい、安定化された量子ドット含有懸濁液へ誘電体材料の粒子が添加されるような一体化絶縁層9が得られることがある。絶縁層9は次に半導体本体1に塗布され、上記のように一体化される。一体化プロセス中に、誘電体材料は、ナノ結晶材料の融点低下の結果として、量子ドットの前に融解し、誘電体材料は量子ドットの間に一様に広がる。量子ドットが分布する誘電体材料の連続する膜を含む一体化絶縁層9が得られる。これらの変形において、量子ドットは絶縁シェル付きでも、絶縁シェルなしでも使用できる。誘電体材料の量は、電子が一体化絶縁層9の量子ドットへトンネルできるように選択される。誘電体材料は、好ましくはSiO、Al又はYである。誘電体シェルの材料が誘電体粒子の材料と同一の場合、誘電体シェル付き量子ドットが追加的に好ましい。
【0031】
半導体部品の作動時に、対応する電圧がゲート電極10に印加され量子ドットにより蓄積されたとき、電子は本体領域8から一体化絶縁層9にトンネルする。誘電体シェル材料及び/又は誘電体粒子から形成される誘電体マトリックスは、量子ドットと本体領域8の間でトンネル酸化物として機能する。電荷(=電子)は、本体領域8に面する縁部に配置された量子ドットによってのみ吸い上げられる。その上に配置された一体化絶縁層9の領域は、絶縁の働きをする。従って、往来技術による半導体部品と異なり、本発明による半導体部品においては、単一層即ち一体化絶縁層9のみが必要とされ、トンネル酸化物、量子ドット及び絶縁酸化物からなる層構造は必要ない。この半導体部品は付加的に更に、ゲート電極10と一体化絶縁層9の間の酸化物層を備えることがあるが、時には作製するのが困難なトンネル酸化物層が除去されているので、この実施形態でもなお依然として従来技術に関して有利である。
【0032】
この半導体部品自体は、知られている方法を使用して作製される。
【実施例1】
【0033】
本発明による半導体部品を作製するために、まずn型導電性ソース領域4及びn型導電性ドレイン領域5が、ホウ素をドープしたシリコンの半導体本体へのリンのイオン注入によって作製された。0.5重量%のCuがドープされたAlのソース電極6及びドレイン電極7が、リソグラフィ法を使用して付着された。TiO/SiO量子ドット含有懸濁液が、不活性雰囲気中300℃以下の温度でのスピンコーティング及び一体化により2つの電極4、5の間に塗布された。一体化絶縁層9は、SiOのマトリックスに埋め込まれた5nmの直径を有するTiO量子ドットを含んでいた。室温に冷却した後、Alのゲート電極10が絶縁層9に付着された。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】MOS電界効果トランジスタの構造の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体本体内に配置された半導体部品であって、第1の導電型である少なくとも1つのソース領域及び少なくとも1つのドレイン領域を有し、ソース領域とドレイン領域の間に配置された第2の導電型である少なくとも1つの本体領域を有し、量子ドットを含む一体化層である絶縁層により前記半導体本体から絶縁された少なくとも1つのゲート電極を有する、半導体部品。
【請求項2】
前記一体化された絶縁層が誘電体材料のマトリックスに埋め込まれた量子ドットを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体部品。
【請求項3】
前記量子ドットが半導体材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体部品。
【請求項4】
前記一体化された絶縁層が焼結された層であることを特徴とする請求項1に記載の半導体部品。
【請求項5】
半導体本体内に配置された半導体部品を作製する方法であって、前記半導体部品は、第1の導電型である少なくとも1つのソース領域及び少なくとも1つのドレイン領域を有し、ソース領域とドレイン領域の間に配置された第2の導電型である少なくとも1つの本体領域を有し、量子ドットを含む一体化された絶縁層により半導体本体から絶縁された少なくとも1つのゲート電極を有するものであり、この方法において、前記一体化された絶縁層を、量子ドット包含懸濁液を前記半導体本体に塗布し、それを一体化することにより製造する、方法。
【請求項6】
前記絶縁層の一体化が焼結により行われることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記懸濁液が誘電体材料の粒子を追加的に含み、前記誘電体材料の前記粒子の直径が前記量子ドットの直径よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−519240(P2007−519240A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548446(P2006−548446)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052905
【国際公開番号】WO2005/076368
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】