説明

ナビゲーション装置及びプログラム

【課題】ユーザが知った道路の更新に関する情報を、ナビゲーション装置で利用する地図データに適切に反映させるための技術を提供する。
【解決手段】表示部に表示された地図編集画面200上に道路を描画するための操作を受け付け、この受け付けた操作に基づき当該地図編集画面200上に道路を描画する。そして、地図編集画面200上に描画された道路に応じて、地図データ格納部に格納されている地図データを修正する。また、ユーザからの描画によって地図データに追加された道路上を車両が走行した場合、当該道路通行時における走行軌跡に基づいて、当該道路の位置及び形状を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置で利用される地図データを更新するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DVD−ROMやハードディスク等の地図記憶媒体に記憶された地図データに基づいて移動体の現在位置周辺の地図を表示したり、指定された目的地までの最適な経路案内を行うナビゲーション装置が広く普及している。この種のナビゲーション装置においては、地図表示や経路探索の正確性を維持するために、様々な手法で地図データを最新のものに更新することで、刻々と変化する道路を適宜地図に反映させることができるようになっている。地図データを更新する従来技術としては、例えば以下の(1)〜(3)のようなものがある。
【0003】
(1)可搬式の地図記憶媒体(DVD−ROM、CD−ROM等)を最新のものに交換したり、可搬式の記憶媒体等に記憶された更新用の地図データを用いてHDDに記憶されている地図データを書き換えたりして、地図データを更新する。
【0004】
(2)地図データにない道路を通行した場合、GPS(Global Positioning System)による測位結果や、ジャイロセンサや速度センサ等を用いた自律航法による測位結果等で得られる走行軌跡に基づいて当該道路に関するデータを自動的に生成し、地図データを更新する。
【0005】
(3)特許文献1に記載のように、ナビゲーションシステムからの要求に応じて、外部のデータ提供システムから必要な更新情報のみを、通信によってナビゲーションシステムへ提供する。
【特許文献1】特開2004−4104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記(1)の方法のように、地図記憶媒体を交換したりハードディスク内の地図データを書き換えたりするには、更新用のデータを入手するため費用がかかる上に、更新用のデータにはユーザにとって必要のない(ユーザが行きもしない遠方の)地図まで含まれるので無駄が多いといった問題がある。また、上記(2)の方法のように、実際の走行軌跡から地図データ上で道路を自動的に生成する方法では、少なくとも一度は当該道路を走行する必要がある。したがって、ユーザの普段の行動圏内から離れた場所の道路に対しては、わざわざそこへ行って当該道路を走行しなければ地図データが更新されないため実用性に欠ける。また、上記(3)の方法のように、通信によって更新用情報を取得するには、更新用のデータに対する料金や通信費用をユーザが負担する必要がある。
【0007】
さらに、(1),(3)の方法に共通する問題としては、地図データを提供する地図製作会社等で更新用の地図データが作成され発行されるまでは、たとえ新しい道路が開通したり古い道路が廃止されたりしたとしても、ユーザはこれらの変更が反映されていない古い地図データを利用し続けなければなら点が挙げられる。すなわち、地図にない新たな道路の開通や、古い道路の廃止をユーザが知ったとしても、直ぐにそれらが地図データに反映されるわけではないため、ユーザにとっては不便である。特に、自宅付近やよく通行する道路付近といった、ユーザの普段の行動圏内に新しい道路が開通したとき等であれば、その道路が直ぐにナビゲーション装置で利用できないとなると、ユーザはなおさら不便に感じてしまう。
【0008】
本発明は、このような問題を鑑みなされており、ユーザが知った道路の更新に関する情報を、ナビゲーション装置で利用する地図データに適切に反映させるための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載のナビゲーション装置は、ユーザからの描画によって道路地図データを修正可能であり、さらに、実際の移動軌跡に基づいてユーザからの描画によって追加された道路を補正することを特徴とする。
【0010】
具体的には、請求項1に記載のナビゲーション装置は、表示手段に表示された地図画像上に道路を描画するための操作を受け付け、この受け付けた操作に基づき当該地図画像上に道路を描画する。そして、地図画像上に描画された道路に応じて、地図記憶手段に記憶されている道路地図データを修正する。その後、道路地図データに追加された道路上を移動体が通行したと判定した場合、位置検出手段による検出結果に基づく当該道路通行時における移動体の移動軌跡に基づいて、道路地図データにおける当該道路の位置及び形状を補正する。
【0011】
このように構成されたナビゲーション装置によれば、ユーザが地図画像上に道路を描画することによって道路地図データを修正することができる。したがって、新しい道路の開通や古い道路の廃止をユーザが知ったときから、随時道路地図データを修正することができるので便利である。また、従来のように地図製作会社等から更新用のデータが発行されるのを待ってそれを購入したり、新たに開通した道路を実際に通行する必要がないので、地図データの更新に係る費用や更新の即時性の面で有利である。
【0012】
なお、ユーザによって描画された道路は、実際の道路と比較して位置や形状に誤差を含むものと考えられる。そこで、ユーザからの描画によって追加された道路を実際に通行した場合、そのときの移動軌跡に基づいて当該道路の位置・形状の誤差を補正することで、修正された道路地図の精度を向上させることができ、ナビゲーション装置の利便性が向上する。
【0013】
ところで、ユーザによる描画によって道路地図データに新たに追加された道路については、地図を高精度に保つという観点から、実際の移動軌跡に基づいてなるべく速やかに誤差を補正することが望ましい。そこで、ナビゲーション装置が有する経路探索機能を利用し、ユーザによる描画によって追加された道路が、目的地までの経路に優先的に含まれるようにし、ユーザが当該道路を通行するのを促すことが考えられる。
【0014】
具体的には、請求項2に記載のように、地図記憶手段に記憶されている道路地図データに基づいて目的地までの経路を設定する際、道路地図データに追加された道路のうち補正が行われていない道路を、優先的に目的地までの経路に選択するように構成するとよい。
【0015】
ナビゲーション装置における経路探索には、一般にダイクストラ法、あるいはそれに準じたコスト計算が用いられる。そこで、このようなコスト計算における経路探索においては、例えば、ユーザによって描画された未補正の道路に対するコストを通常の水準より低く設定することで目的地までの経路として選択され易くするといった具合に、当該道路の経路探索時における重み(優先度)を上げる方法等が考えられる。あるいは、ユーザによって描画された道路を目的地までの経路に必ず含むようにすることも考えられる。
【0016】
このように構成されたナビゲーション装置によれば、ナビゲーション装置の経路探索機能を利用することで、ユーザによる描画によって追加された道路を早い時期に通行することにつながり、その結果、移動軌跡に基づく誤差の補正を速やかに行うことができるので好適である。
【0017】
つぎに、請求項3に記載のナビゲーション装置は、表示手段に地図画像を表示する際、地図修正手段によって道路地図データに追加された道路のうち補正手段による補正が行われていない道路を強調表示することを特徴とする。
【0018】
このように構成されたナビゲーション装置によれば、表示手段に表示する地図画像上でユーザによる描画によって追加された未補正の道路を強調表示することで、未補正の道路の存在をユーザに対して効果的に認識させることができ、ユーザに対して当該道路を通行することを効果的に促すことができる。その結果、ユーザが当該道路を通過することで、移動軌跡に基づく誤差の補正を速やかに行うことができるので好適である。
【0019】
なお、ユーザによる描画によって追加された未補正の道路を強調表示する方法としては、当該道路を点滅して表示する、他の道路より太く表示する、他の道路より目立つ色で表示する、地図画像上で道路を示す線の線種を他の道路違うものにするといった種々の方法が考えられる。
【0020】
つぎに、請求項4に記載のナビゲーション装置は、地図修正手段によって道路地図データに追加された道路上を移動体が通行したと判定した後、移動体の移動軌跡に基づいて道路地図データにおける当該道路の形状を補正する前に当該補正の実施の許否をユーザに対して問い合わせ、ユーザから補正の実施が許可する旨の指示がなされた場合、当該補正を実施することを特徴とする。このように構成されたナビゲーション装置によれば、ユーザによって描画された道路に対する補正の可否をユーザ自身が判断することができ、便利である。
【0021】
以上で説明したようなナビゲーション装置における描画手段、地図修正手段、及び補正手段をコンピュータシステムで実現するには、請求項5に記載のようにコンピュータシステム上で稼働するプログラムとして備えればよい。このようなプログラムは、例えば磁気ディスク、CD−ROM、ハードディスク、ROM、RAM等のコンピュータにて読取可能な記憶媒体に記録し、必要に応じてコンピュータにロードすることにより、上述の各手段としての機能を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[ナビゲーション装置1の構成の説明]
図1は、本発明の一実施形態である車載用のナビゲーション装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0023】
図1に示すように、ナビゲーション装置1は、車両の現在位置を検出する位置検出器21と、地図データや各種の情報を格納する地図データ格納部22と、利用者からの各種指示を入力するための操作スイッチ群23と、地図表示画面等の各種表示を行うための表示部24と、各種ガイド音声等を出力するためのスピーカ25と、ナビゲーションECU26とを備えている。
【0024】
位置検出器21は、GPS用の人工衛星からの送信電波をGPSアンテナを介して受信し、車両の位置等を検出するGPS受信機21aと、車両に加えられる回転運動の角速度に応じた検出信号を出力するジャイロスコープ21bと、車両の速度に応じた検出信号を出力する車速センサ21cとを備えている。そして、これら各センサ等21a〜21cは、各々が性質の異なる誤差を有しているため、互いに補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては、上述したうちの一部のセンサで構成してもよく、またステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0025】
地図データ格納部22は、ナビゲーションECU26からの制御に基づいて、不揮発性の記憶媒体からデータを読み出し、これをナビゲーションECU26へ入力する。この不揮発性の記憶媒体が記憶しているデータは、上述の位置検出精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データや、地図データ、経路案内用データ、ナビゲーション装置1の作動のためのプログラム等である。これらのデータの記憶媒体としては、ハードディスク、フラッシュメモリ、メモリカード等の書き換え可能な不揮発性記憶媒体を用いることができる。
【0026】
地図データには、ノードデータ、リンクデータ、コストデータ、道路データ、マークデータ、交差点データ、施設データ等の各種データが含まれている。ノードデータは、ノードの識別番号であるノードIDと、ノードの座標、ノードに接続される全リンクのリンクID、ノード種別(交差点、合流地点等の種別)などのノードの特性情報とからなるデータである。リンクデータは、リンクの識別番号であるリンクID、リンク長、始点及び終点に接続する各ノードのノードID、高速道路、有料道路、一般道路等の道路種別、道路幅員、車線数、リンク走行時間、法定制限速度、道路の勾配、その道路を走行するのにかかる距離や時間に関するコスト等の各データから構成されている。
【0027】
操作スイッチ群23は、表示部24と一体に構成され表示画面上に設置されるタッチパネル及び表示部24の周囲に設けられたメカニカルなキースイッチ等が用いられる。
表示部24は、液晶ディスプレイ等の表示面を有するカラー表示装置である。表示部24は、ナビゲーションECU26からの映像信号の入力に応じて各種画像を表示面に表示可能である。例えば、車両が走行中においては、ナビゲーション画面として位置検出器21にて検出した車両の現在位置と地図データ格納部22より入力された地図データとから特定した現在地を示すマーク、目的地までの誘導経路、名称、目印、各種ランドマークのシンボル等の付加データとが重ねて表示される。
【0028】
スピーカ25は、各種情報を音声にてユーザに報知できるように構成されている。これによって、表示部24による表示とスピーカ25からの音声出力との両方でユーザに対してルート案内等の各種案内をすることができる。
【0029】
ナビゲーションECU26は、CPU,ROM,RAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスライン等からなる周知のコンピュータを中心に構成されており、上述した各部構成を統括制御する。このナビゲーションECU26は、ROM等に記憶されたプログラムに従って、各種処理を実行する。ナビゲーションECU26は、機能的な構成要素としてとして、位置算出部31、メモリ部32、経路計算部33、マップマッチング部34、走行軌跡生成部35、地図修正・補正部36、地図データ取得部37、操作検出部38、経路案内部39、描画部40、画像出力部41、及び音声出力部42を備える。なお、これらの構成要素はナビゲーションECU26の機能を抽象的に示したものであり、これらの機能はナビゲーションECU26が備えるCPU,ROM,RAM等によって実現されることとなる。
【0030】
位置算出部31は、位置検出器21からの入力信号に基づいて車両の現在位置を算出する。メモリ部32は、ナビゲーションECU26が行う各種処理に用いるデータを一時的に保持する。経路計算部33は、ユーザから入力された目的地までの最適な経路を算出する。マップマッチング部34は、車両の移動軌跡と地図データに基づく道路形状との相関性に基づき、車両の現在位置を道路上に特定する。
【0031】
走行軌跡生成部35は、位置算出部31による算出結果に基づき、車両が現在位置に至るまでの移動軌跡を生成する。地図修正・補正部36は、ユーザによる描画に基づく地図データの修正、及び修正した地図データの補正に関する各種処理を実行する。地図データ取得部37は、地図データ格納部22から処理に必要な地図データ等を読み込む。操作検出部38は、操作スイッチ群23に対するユーザからの操作を検出する。
【0032】
経路案内部39は、経路計算部33によって算出された目的地までの経路に基づいて目的地までの経路案内等の表示や音声出力を行うための情報を出力する。描画部40は、経路案内部39からの出力情報に基づき、現在位置周辺の地図画像や各種案内情報等を描画する。画像出力部41は、描画部40において描画された画像に基づく映像信号を表示部24へ出力する。音声出力部42は、経路案内部39からの出力情報に基づき、ガイド音声等の音声信号をスピーカ25へ出力する。
【0033】
上述の各部の機能により、ナビゲーションECU26は各種処理を実行する。例えば、ナビゲーション関係の処理としては、地図表示処理や経路案内処理等が挙げられる。地図表示処理は、位置検出器21からの各検出信号に基づいて座標及び進行方向の組として車両の現在位置を算出し、地図データ格納部22から読み込んだ現在位置付近の地図等を表示部24に表示する処理である。また、経路案内処理は、地図データ格納部22に格納された地図データと、操作スイッチ群23の操作に従って設定された目的地とに基づいて、現在位置から目的地までの最適な経路を算出し、その算出した経路に対する走行案内を行う処理である。このように自動的に最適な経路を設定する手法として、ダイクストラ法によるコスト計算等の手法が知られている。
【0034】
さらに、ナビゲーションECU26(特に地図修正・補正部36)は、上述の各種処理において利用する地図データを表示部24に表示された地図画像上でユーザが道路を描画する操作によって修正する処理や、ユーザの描画によって修正された道路を実際の走行軌跡に基づいて補正する処理を実行する。これらの処理の詳細な説明については後述する。
【0035】
以上、実施形態のナビゲーション装置1の概略構成について説明したが、本実施形態における各構成と特許請求の範囲に記載した構成との対応は次のとおりである。本実施形態におけるナビゲーション装置1の地図データ格納部22が、特許請求の範囲における地図記憶手段に相当する。また、表示部24が表示手段に相当する。また、操作スイッチ群23及びナビゲーションECU26の操作検出部38が、操作受付手段に相当する。また、ナビゲーションECU26の地図修正・補正部36が、描画手段、地図修正手段及び補正手段に相当する。また、位置検出器21及びナビゲーションECU26の位置算出部31が、位置検出手段に相当する。また、ナビゲーションECU26の経路計算部33が、経路設定手段に相当する。
【0036】
以下、ナビゲーションECU26の地図修正・補正部36が実行する「地図描画・修正処理」及び「ユーザ描画道路補正処理」について、図2、図5のフローチャート及び図3,4,6,7,8の説明図に基づいて説明する。
【0037】
[地図描画・修正処理の説明]
図2は、ナビゲーションECU26の地図修正・補正部36が実行する「地図描画・修正処理」の手順を示すフローチャートである。
【0038】
この処理では、まず、表示部24に表示されたメニュー画面により「地図描画」機能の選択指示をユーザから受け付ける(S100)。つづいて、ユーザからの選択指示に応じて、編集対象となる地域の地図データを地図データ格納部から読み込み、編集用の地図画像を表示部24に表示する(S110)。
【0039】
ここで、上記S100,S110の処理における表示部24での画像表示例を図3に基づいて説明する。図3(a)は、ナビゲーション装置1に対して実行させる機能をユーザが選択するためのメニュー画面の表示例を示す図である。このメニュー画面100には、「案内中止」、「音量設定」、「VICS」、「メモリ地点」、「ユーザカスタマイズ」、「各種設定」、「地図描画」といった各種アイコン50a〜50gが表示されている。これらの各アイコンは、表示部24の表示面上に形成されたタッチパネルと連動してGUI(Graphical User Interface)を構成しており、画面上のアイコンにユーザが直接触れることで、そのアイコンの機能を選択することができる(以降、同様の操作を「アイコンを押下」などと表現する)。
【0040】
このメニュー画面100において、ユーザによる地図描画を行うための「地図描画」アイコン50gをユーザが押下した場合、図3(b)に示す編集地域選択画面110が表示される。なお、その他のアイコンに対応する機能の詳細な内容については、本発明の本質部分ではないため説明を省略する。
【0041】
図3(b)に示す編集地域選択画面110は、編集対象となる地域を特定するための様々な方法の中から、ユーザが所望する方法を選択するための画面であり、その選択肢として「自宅周辺」、「住所」、「50音順」、「郵便番号」、「メモリ地点」といった各種アイコン51a〜51eが表示されている。ここで、「自宅周辺」アイコン51aを押下することで、ユーザの自宅として予め登録されている地点の周辺地域が編集対象として選択され、当該地域の地図が地図編集画面(図4参照)に表示される。
【0042】
また、「住所」アイコン51bを押下することで、住所入力モードへ移行する。ここでユーザが住所を入力すると、当該住所が示す地点の周辺地域が編集対象として選択され、当該地域の地図が地図編集画面に表示される。また、「50音順」アイコン51cを押下することで、50音順に並べられた地名のリストが表示され、このリストからユーザが選択した地名が示す地域が編集対象として選択され、当該地域の地図が地図編集画面に表示される。
【0043】
また、「郵便番号」アイコン51dを押下することで、郵便番号入力モードへ移行する。ここでユーザが郵便番号を入力すると、当該郵便番号が示す地域が編集対象として選択され、当該地域の地図が地図編集画面に表示される。また、「メモリ地点」アイコン51eを押下することで、ユーザからの指定により予め登録されている特定地点(メモリ地点)の周辺地域が編集対象として選択され、当該地域の地図が地図編集画面に表示される。
【0044】
図2のフローチャートの説明に戻る。S110で編集用の地図画像を表示した後、タッチパネルを介して地図描画のためのユーザからの操作を受け付け、この受け付けた操作に応じて地図編集画面に道路を描画(道路の追加・削除)する(S120)。ユーザから編集完了の指示が入力されていない間(S130:NO)、S120の処理を継続する。そして、ユーザから編集完了の指示が入力された場合(S130:YES)、地図編集画面上に描画された道路の内容に基づき、地図データ格納部22に格納されている当該地域の地図データを修正し(S140)、「地図描画・修正処理」を終了する。
【0045】
ここで、上記S120〜140の処理における表示部24での画像表示例を図4に基づいて説明する。図4は、編集地域選択後に表示部24に表示される地図編集画面の表示例を示す図である。
【0046】
上述の編集地域選択画面110(図3(b)参照)において、ユーザが「自宅周辺」アイコン51aを押下した場合、図4(a)に示すように、地図編集画面200aの中央部には自宅周辺の地図が表示される。また地図の周辺には、地図に道路を書き込む際に押下する「ペン」アイコン52aや地図上の不要な道路を消去する際に押下する「消しゴム」アイコン52d、地図の編集を完了する際に押下する「編集完了」アイコン52c等が表示されている。
【0047】
ユーザが「ペン」アイコン52aを押下すると、図4(b)に示すように、このアイコンが反転して道路書込モードになる。この状態でユーザが画面をタッチした地点が、新たに書き込む道路の始点となり、そのまま指を画面から離さずに移動させることで、その移動軌跡に沿って地図画像上に道路53が描画される。そして、ユーザが画面から指を離すことで、その離した地点が新たに書き込む道路の終点となる(図4(c)参照)。また、「消しゴム」アイコン52bを押下すると、そのアイコンが反転して道路消去モードになる。この状態で地図画面上の既存の道路あるいはユーザが描画した道路をユーザが指でなぞることで、その道路は地図画像上から消去される。
【0048】
以上のような手順により、ユーザが地図の描画(道路の追加・削除)を行った後、ユーザが「編集完了」アイコン52cを押下することで、その描画内容が地図データ格納部内の地図データに反映される。例えば、ユーザの描画により新しく追加された道路(以下、ユーザ描画道路と称する)については、当該道路の両端の座標に対応するノードデータ、道路のリンクデータ、当該道路の長さに応じたコストのデータ、道路の形状に関するデータ等が作成され、地図データとして記憶される。また、ユーザ描画道路と交差や接続する既存の道路がある場合、その既存の道路に対応するノードやリンクの接続情報等も変更される。
【0049】
また、ユーザの描画によって既存の道路が消去されている場合、当該道路に対応するリンクデータ等を消去し、当該道路に交差や接続する他の道路における接続情報等も変更される。
【0050】
[ユーザ描画道路補正処理]
つぎに、上述の「ユーザ描画道路補正処理」によって地図に追加されたユーザ描画道路を車両の走行軌跡に基づいて補正するための処理について説明する。
【0051】
図5は、ナビゲーションECU26の地図修正・補正部36が実行する「ユーザ描画道路補正処理」の手順を示すフローチャートである。
この処理では、まず、ナビゲーションECU26において経路探索が行われるか、地図表示が行われるかを判定する(S200)。ここで、経路探索が行われると判定した場合(S200:経路探索)、地図データに追加されたユーザ描画道路であって、車両の走行軌跡に基づく補正がまだ行われていない道路(以下、未補正のユーザ描画道路と称する)を優先的に経路に選択するように経路探索を実行する(S210)。具体的には、未補正のユーザ描画道路について地図データに予め登録されているコストを一時的に通常の値より低い値にすることで、他の道路より優先的に経路に選択され易くする。
【0052】
ここで、S210において未補正のユーザ描画道路を優先的に経路に選択する場合の具体例を図6に基づいて説明する。図6に示す地図には、ノードA,B,C,D,E,Fの各ノードが存在し、一方のノードと他方のノードまでの間を通行可能なノード間にはリンクが設定されている。このうち、ノードC,D間を結ぶリンクが未補正のユーザ描画道路に相当する。各リンクにはコストが設定されており、リンクAB(ノードAとノードBとを結ぶリンクを指す。他のリンクについても同様)はコスト30、リンクBCはコスト30、リンクBEはコスト40、リンクCDはコスト50(ただし、コスト補正前)、リンクDFはコスト10、リンクEFはコスト30である。
【0053】
このような地図において、出発地のノードAから目的地のノードFまでのコストの合計が最小となる最適経路を探索する場合を想定する。
(1)補正前のユーザ描画道路(リンクCD)のコストを通常の値のままでコスト計算を行う場合、ノードA→ノードB→ノードC→ノードD→ノードFと経由する経路(ルート1)におけるコストの合計は、30+30+50(コスト補正なし)+10=120となる。一方、ノードA→ノードB→ノードE→ノードFと経由する経路(ルート2)におけるコストの合計は、30+40+30=100となる。よって、この場合、コストの合計が最小となる最適経路として、ルート2が選択される。
【0054】
(2)つぎに、補正前のユーザ描画道路の優先的に経路に選択するための措置として、リンクCDコストを一時的に小さい値に補正(50→25)してコスト計算を行う場合を想定する。この場合、上述のルート1におけるコストの合計は、30+30+25(コスト補正あり)+10=95となる。一方、上述のルート2におけるコストの合計は100のままである。よって、この場合、コストの合計が最小となる最適経路として、補正前のユーザ描画道路(リンクCD)が含まれるルート1が選択される。
【0055】
このように、経路探索の際、未補正のユーザ描画道路に対応するコストを予め登録されている通常値よりも低い値に補正してコスト計算を行うことで、未補正のユーザ描画道路が目的地までの経路に優先的に選択される。
【0056】
図5のフローチャートの説明に戻る。S200において、地図表示が行われると判定した場合(S200:地図表示)、画面上の地図表示範囲にある未補正のユーザ描画道路を強調表示する(S220)。図7は、表示部24における車両の現在位置周辺の地図表示画面の表示例を示す図である。この図7に示すように、地図表示画面300における地図表示範囲内には未補正のユーザ描画道路53が存在する。このとき、未補正のユーザ描画道路53については、他の道路よりもユーザが視認し易くするために強調表示が行われる。強調表示の具体例としては、点滅表示、反転表示、他の道路より目立つ色での表示、他の道路と表示線種を変更する(太線、破線、点線等)といった手法が挙げられる。
【0057】
図5のフローチャートの説明に戻る。つぎに、車両が未補正のユーザ描画道路を走行したか否かを判定する(S230)。車両が未補正のユーザ描画道路を走行したか否かを判定するには、例えば車両の走行軌跡が当該道路から所定の範囲を通過したか否か、あるいはマップマッチング部34によって車両の現在位置が当該道路上に補正されたか否かによって判定すればよい。ここで、車両が未補正のユーザ描画道路を走行していないと判定した場合(S230:NO)、S200の処理へ戻る。
【0058】
一方、車両が未補正のユーザ描画道路を走行したと判定した場合(S230:YES)、当該ユーザ描画道路走行時に対応する走行軌跡に基づき、当該ユーザ描画道路を補正するための補正データを生成する(S240)。つづいて、未補正のユーザ描画道路に適用可能な補正データが存在する旨をユーザに通知するための補正アイコンを表示部24に表示する(S250)。
【0059】
そして、この補正アイコンがユーザによって押下されたか否かを判定する(S260)。ここで、補正アイコンが押下されていないと判定した場合(S260:NO)、S200の処理へ戻る。一方、補正アイコンが押下されたと判定した場合(S260:YES)、当該補正データの適用の許否をユーザに問い合わせる旨のメッセージを表示部24に表示し(S270)、ユーザから補正を許可する旨の指示が入力されたか否かを判定する(S280)。ユーザから補正を許可する旨の指示が入力されたと判定した場合(S280:YES)、当該補正データに基づいて未補正のユーザ描画道路に対応する地図データを書き換え(S290)、「ユーザ描画道路補正処理」を終了する。一方、ユーザから補正を許可しない旨の指示が入力されたと判定した場合(S280:NO)、当該補正データを破棄し(S300)、「ユーザ描画道路補正処理」を終了する。
【0060】
ここで、上記S250〜S300の処理における表示部24での画像表示例を図8に基づいて説明する。図8は、実際の走行軌跡に基づいてユーザ描画道路を補正する際の表示部24における表示例を示す図である。
【0061】
図8(a)の地図表示画面400aに示すように、ユーザ描画道路53aに対応する実際の走行軌跡が53bの点線に示すような形状である場合、この走行軌跡53bに基づいて、補正データが生成される。そして、ユーザ描画道路53aに適用可能な補正データが存在する旨をユーザに対して示す「補正データ有」アイコン54aが画面上に表示される。
【0062】
ここで、ユーザが「補正データ有」アイコン54aを押下すると、図8(b)の地図表示画面400bに示すように、「走行軌跡に基づく補正データがあります。破線の道路を補正しますか?」といったメッセージと共に、補正の許否をユーザが指示するための「はい」,「いいえ」の各アイコン54b,54cが表示される。また、このとき、ユーザ描画道路53cは破線で表示される。ユーザが「はい」アイコン54bを押下すると、補正データによる地図データの補正が行われる。これに伴い、地図表示画面400b上のユーザ描画道路53は消去され、補正した道路53dが新たに表示される。ユーザが「いいえ」アイコン54bを押下すると、補正データは破棄され、通常の地図表示画面に戻る。
【0063】
[効果]
実施形態のナビゲーション装置1によれば以下のような効果を奏する。
(1)ユーザが地図画像上に道路を描画することによって地図データを修正することができる。したがって、新しい道路の開通や古い道路の廃止をユーザが知ったときから、随時地図データを修正することができるので便利である。また、従来のように地図製作会社等から更新用のデータが発行されるのを待ってそれを購入したり、新たに開通した道路を実際に通行する必要がないので、地図データの更新に係る費用や更新の即時性の面で有利である。
【0064】
(2)ユーザによって描画された道路は、実際の道路と比較して位置や形状に誤差を含むものと考えられる。そこで、車両がユーザ描画道路を実際に走行した場合、そのときの走行軌跡に基づいてユーザ描画道路の位置・形状の誤差を補正することで、地図の精度を向上させることができる。
【0065】
(3)走行軌跡に基づく補正が行われていないユーザ描画道路については、地図を高精度に保つという観点から、なるべく速やかに誤差を補正することが望ましい。そこで、経路探索を行う際に、未補正のユーザ描画道路を目的地までの経路として優先的に選択することで、ユーザが当該道路を走行するのを促すことできる。
【0066】
(4)表示部24に地図画像を表示する際、未補正のユーザ描画道路を強調表示することで、未補正のユーザ描画道路の存在をユーザに対して効果的に認識させることができ、ユーザに対して当該道路を走行することを効果的に促すことができる。その結果、ユーザが当該道路を通過することで、走行軌跡に基づく誤差の補正を速やかに行うことができるので好適である。
【0067】
(5)未補正のユーザ描画道路上を車両が通行した場合、車両の走行軌跡に基づく補正データの存在をユーザに対して提示し、ユーザ描画道路の補正の実施の許否をユーザに対して問い合わせることができる。これにより、ユーザ描画道路に対する補正の可否をユーザ自身が判断することができ、便利である。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り様々な態様にて実施することが可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態においては、本発明を車載用のナビゲーション装置として実現したものであるが、車載用に限らず、例えばユーザが携帯可能ないわゆる携帯型ナビゲーション装置等に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態であるナビゲーション装置1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】ナビゲーションECU26の地図修正・補正部36が実行する「地図描画・修正処理」の手順を示すフローチャートである。
【図3】表示部24におけるメニュー画面及び編集地域選択画面の表示例を示す図である。
【図4】表示部24における地図編集画面の表示例を示す図である。
【図5】ナビゲーションECU26の地図修正・補正部36が実行する「ユーザ描画道路補正処理」の手順を示すフローチャートである。
【図6】経路探索の際にユーザ描画道路を優先的に経路に選択する措置の具体的内容を模式的に示す図である。
【図7】表示部24の地図表示画面における未補正のユーザ描画道路の表示例を示す図である。
【図8】実際の走行軌跡に基づいてユーザ描画道路を補正する際の表示部24における表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1…ナビゲーション装置、21…位置検出器、21a…GPS受信機、21b…ジャイロスコープ、21c…車速センサ、22…地図データ格納部、23…操作スイッチ群、24…表示部、25…スピーカ、26…ナビゲーションECU、31…位置算出部、32…メモリ部、33…経路計算部、34…マップマッチング部、35…走行軌跡生成部、36…地図修正・補正部、37…地図データ取得部、38…操作検出部、39…経路案内部、40…描画部、41…画像出力部、42…音声出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路地図データを記憶する地図記憶手段と、画像を表示する表示手段とを備え、前記地図記憶手段に記憶された道路地図データに基づく地図画像を前記表示手段に表示可能なナビゲーション装置において、
ユーザからの操作を受け付けるための操作受付手段と、
前記操作受付手段を介して、前記表示手段に表示された地図画像上に道路を描画するための操作を受け付け、この受け付けた操作に基づき当該地図画像上に道路を描画する描画手段と、
前記描画手段によって地図画像上に描画された道路に応じて、前記地図記憶手段に記憶されている道路地図データを修正する地図修正手段と、
移動体の現在位置を検出する位置検出手段と、
前記地図修正手段によって前記道路地図データに追加された道路上を移動体が通行したと判定した場合、前記位置検出手段による検出結果に基づく当該道路通行時における移動体の移動軌跡に基づいて、前記道路地図データにおける当該道路の位置及び形状を補正する補正手段とを備えること、
を特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記地図記憶手段に記憶されている道路地図データに基づき、目的地までの経路を設定する経路設定手段を更に備え、
前記経路設定手段は、前記地図修正手段によって前記道路地図データに追加された道路のうち前記補正手段による補正が行われていない道路を、優先的に目的地までの経路に選択すること
を特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のナビゲーション装置において、
前記表示手段に地図画像を表示する際、前記地図修正手段によって前記道路地図データに追加された道路のうち前記補正手段による補正が行われていない道路を強調表示すること
を特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のナビゲーション装置において、
前記補正手段は、前記地図修正手段によって前記道路地図データに追加された道路上を移動体が通行したと判定した後、移動体の移動軌跡に基づいて前記道路地図データにおける当該道路の形状を補正する前に当該補正の実施の許否をユーザに対して問い合わせ、ユーザから補正の実施が許可する旨の指示がなされた場合、当該補正を実施すること
を特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のナビゲーション装置に用いられるコンピュータを制御するためのプログラムであって、当該コンピュータを前記描画手段、前記地図修正手段、前記補正手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−209140(P2008−209140A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44085(P2007−44085)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】