説明

ナビゲーション装置

【課題】運転者毎に異なる走行速度を考慮して、推奨経路を的確に探索することが可能なナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】CPU41は、目的地が設定されると、自車位置が含まれるメッシュ等を特定し、メッシュ毎に記憶される最小スライス幅と最大スライス幅とを決定後、車両の現在位置から15分毎に到達する最小到達範囲と最大到達範囲を設定し、RAM42に記憶する(S11〜S16)。そして、CPU41は、各最小到達範囲と各最大到達範囲とを重ね合わせて合成し、自車位置からの距離毎の到達時刻範囲を設定後、自車位置から各リンクに到達する到達時刻範囲を設定する。その後、CPU41は、各リンクに到達する到達時刻範囲に該当する該各リンクの時間帯380Bの各リンクコスト390Cの平均値を予測リンクコストとして設定し、目的地までの推奨経路を探索する(S17〜S20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に関し、特に、表示装置の地図上に経路情報を表示するナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行案内を行い、運転者が所望の目的地に容易に到着できるようにしたナビゲーション装置が車両に搭載されていることが多い。このナビゲーション装置とは、GPS受信機などにより車両の現在位置を検出し、その現在位置に対応する地図データをDVD−ROMやHDDなどの記録媒体、又はネットワークを通じて取得して液晶モニタに表示することが可能な装置である。そして、車両の現在位置を含む地図データを記録媒体等から読み出し、地図データに基づいて車両の現在位置の周囲における地図画像を描画して表示装置に表示するとともに、車両位置マークを地図画像に重ね合わせて表示し、車両の移動に応じて地図画像をスクロールしたり、地図画像を画面に固定し車両位置マークを移動させることによって、車両が現在どの地点を走行しているのかを一目でわかるようにしている。
【0003】
ここで、受信した交通情報に基づいて経路探索を行って目的地に最短時間で到達できる誘導経路を探索するナビゲーション装置が種々提案されている。
例えば、メッシュ毎にエリアを区切り、出発地から目的地までの各メッシュIDを持つメッシュ領域各々の代表座標までの直線距離を順次算出し、これを基準距離とする。そして、この基準距離を移動速度で割り算することにより、この各メッシュ領域までの基準移動時間を算出する。そして、出発時刻に、この基準移動時間を加算することで、このメッシュ領域への基準到達時刻を算出する。その後、このメッシュIDを持つメッシュ領域への基準到達時刻を含む時間帯の各リンクの交通データを入手して、出発地および目的地間を結ぶ推奨経路を探索するように構成されたナビゲーション装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−301677号公報(段落(0009)〜(0073)、図1〜図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した特許文献1に記載されたナビゲーション装置では、過去に収集された交通データを用いて、推奨経路を精度よく探索することが可能となる。
しかしながら、一般には、運転者の走行速度は、当該運転者毎に異なり、遠距離になればなるほど到着時刻を正確に推定することが困難になる。そのため、各メッシュ領域間の移動速度を一律に設定して出発地から各エリアへの到着時刻を算出すると、実際に走行した場合の各エリアへの到着時刻との間に誤差が生じ、その算出した各エリアへの到着時刻に基づいて交通情報(渋滞情報や交通規制情報等である。)を取得しているため、実際の到着時刻とは大幅に異なる時間帯の交通情報を用いて推奨経路を探索してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、運転者毎に異なる走行速度を考慮して、推奨経路を的確に探索することが可能なナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため請求項1に係るナビゲーション装置は、車両に搭載されたナビゲーション装置(2)において、車両が所定時間内に到達する距離範囲を予測した最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データとを記憶する予測距離範囲データ記憶手段(38)と、各リンクに対し、各時間帯毎の交通状況に基づいて生成された交通データを記憶する交通データ記憶手段(39)と、前記最小予測距離範囲データに基づいて、現在の自車位置を中心として前記所定時間毎に車両が到達する最小到達範囲を、現在時刻を基準として設定する最小到達範囲設定手段(23)と、前記最大予測距離範囲データに基づいて、現在の自車位置を中心として前記所定時間毎に車両が到達する最大到達範囲を、現在時刻を基準として設定する最大到達範囲設定手段(23)と、前記最小到達範囲と最大到達範囲とに基づいて、現在の自車位置からの距離毎の到達時刻範囲を、現在時刻を基準として予測する到達時刻範囲予測手段(23)と、各リンクの位置情報と前記到達時刻範囲予測手段によって予測した前記到達時刻範囲とに基づいて、該各リンクに到達する到達時刻範囲を設定するリンク到達時刻範囲設定手段(23)と、前記各リンクの到達時刻範囲に対応する交通データに基づいて、該各リンクの予測交通データを設定する予測交通データ設定手段(23)と、各リンクに対して設定された前記予測交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索する探索手段(23)と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係るナビゲーション装置は、請求項1に記載のナビゲーション装置(2)において、前記予測交通データ設定手段(23)は、前記到達時刻範囲内の各時間帯に対応する交通データの平均値を前記予測交通データとして設定することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係るナビゲーション装置は、請求項1又は請求項2に記載のナビゲーション装置(2)において、前記最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データとは、車両が所定時間内に到達する距離範囲の統計データから算出される各距離範囲の平均値と標準偏差とに基づいて予測されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係るナビゲーション装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のナビゲーション装置(2)において、前記予測距離範囲データ記憶手段(38)は、前記最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データとを地図メッシュ毎に記憶しており、前記最小到達範囲設定手段(23)は、自車位置が含まれる地図メッシュを検出し、検出された地図メッシュに対応する前記最小予測距離範囲データを読み出して、最小到達範囲を設定し、前記最大到達範囲設定手段(23)は、自車位置が含まれる地図メッシュを検出し、検出された地図メッシュに対応する前記最大予測距離範囲データを読み出して、最大到達範囲を設定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係るナビゲーション装置は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のナビゲーション装置(2)において、前記最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データとは、区域、季節、曜日、祝日又は連休期間毎に生成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
前記構成を有する請求項1に係るナビゲーション装置では、最小予測距離範囲データに基づいて、現在の自車位置を中心として所定時間毎に車両が到達する最小到達範囲が、現在時刻を基準として設定される。また、最大予測距離範囲データに基づいて、現在の自車位置を中心として所定時間毎に車両が到達する最大到達範囲が、現在時刻を基準として設定される。そして、最小到達範囲と最大到達範囲とに基づいて、現在の自車位置から距離毎の到達時刻範囲が、現在時刻を基準として予測される。また、各リンク位置情報とこの予測した到達時刻範囲とに基づいて、各リンクに到達する到達時刻範囲が設定される。そして、各リンクの到達時刻範囲に対応する交通データに基づいて、該各リンクの予測交通データが設定される。その後、各リンクに対して設定された予測交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路が探索される。
【0012】
これにより、最小到達範囲と最大到達範囲とに基づいて、現在の自車位置から距離毎の到達時刻範囲を予測し、それに基づいて各リンクに到達する到達時刻範囲を設定することによって、運転者毎に異なる走行速度を考慮して、出発地から各リンクまでの到達時刻範囲を設定することが可能となる。また、各リンクの到達時刻範囲に対応する交通データに基づいて予測交通データを設定することによって、運転者毎に異なる走行速度を加味して、精度の高い予測交通データを設定することが可能となり、車両通過時に渋滞が発生する道路、渋滞が解消される道路等を正確に予測して、推奨経路を的確に探索することが可能となる。
【0013】
また、請求項2に係るナビゲーション装置では、予測交通データ設定手段は、到達時刻範囲内の各時間帯に対応する交通データの平均値を予測交通データとして設定する。これにより、到達時刻範囲内の各時間帯に対応する交通データの差が大きくなって不連続であっても、この不連続性を補完できると共に、各リンクの到達時刻範囲に対して予測交通データを迅速に設定することが可能となり、車両が各リンクに到達する到達時刻を予測する処理時間の短縮化を図ることができる。
【0014】
また、請求項3に係るナビゲーション装置では、最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データとは、車両が所定時間内に到達する距離範囲の統計データから算出される各距離範囲の平均値と標準偏差とに基づいて予測されているため、最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データを統計データに基づいて正確に設定することが可能となり、現在の自車位置から各リンクに到達する到達時刻範囲を正確に算出することが可能となる。
【0015】
また、請求項4に係るナビゲーション装置では、最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データとを地図メッシュ毎に記憶する。このため、最小到達範囲設定手段及び最大到達範囲設定手段は、自車位置が含まれる地図メッシュの最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データとを読み出せば良いので、例えば、自車位置から所定距離内のリンクを検出し、そのリンクに対応する最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データとを逐次検索するよりも、処理を軽減することができる。
【0016】
更に、請求項5に係るナビゲーション装置では、最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データとは、区域、季節、曜日、祝日、連休期間等の要因毎に生成されている。このため、地域性、時期的要因、時間的要因を最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データに加味することができるので、最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データの精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るナビゲーション装置をナビゲーションシステムについて具体化した実施例1及び実施例2に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
先ず、実施例1に係るナビゲーションシステム1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は実施例1に係るナビゲーションシステム1を示したブロック図である。
【0019】
図1に示すように実施例1に係るナビゲーションシステム1は、ナビゲーション装置2と、ナビゲーション装置2に対して地図情報を更新する為の更新情報、後述の予測距離範囲データとしてのスライス幅データ380(図4参照)や交通データ390(図6参照)を配信する情報配信センタ3と、ネットワーク4から基本的に構成されている。そして、ナビゲーション装置2と情報配信センタ3は、ネットワーク4を介して各種の情報の送受信が可能となるように構成されている。
【0020】
また、このネットワーク4には、道路交通情報センタ(VICS:登録商標)5が接続され、ナビゲーション装置2と情報配信センタ3とは、ネットワーク4を介して、警察、日本道路公団等の交通管制システムの情報を収集して作成した道路の渋滞等に関する情報や交通規制情報等の交通情報を所定時間毎に受信することが可能に構成されている。また、この交通情報は、例えば、道路の渋滞等に関する道路渋滞情報、道路工事、建築工事等による交通規制情報等の道路交通情報に関する詳細情報である。該詳細情報は、道路渋滞情報の場合、後述のVICSリンクID、渋滞の実際の長さ、渋滞を通過するのに要する所要時間、渋滞度(渋滞無し/混雑/渋滞の別等)、渋滞中の車速、旅行時間、渋滞車線の進行方向、渋滞解消の見込まれる時刻等であり、交通規制情報の場合、後述のVICSリンクID、道路工事、建築工事等の継続期間、通行止め、片側交互通行、車線規制等の交通規制の種類、交通規制の時間帯等である。
尚、ナビゲーション装置2の構成に関しては後に図2を用いて詳細に説明する。
【0021】
情報配信センタ3は、図1に示すようにサーバ10と、サーバ10に接続された地図情報記録部としてのセンタ側地図情報データベース(センタ側地図情報DB)14と、ナビ更新履歴情報データベース(更新履歴情報DB)15と、センタ側交通情報データベース(センタ側交通情報DB)16と、センタ側通信装置17と、スライス幅データ380を格納するスライス幅データベース(スライス幅DB)18と、交通データ390を格納する交通データベース(交通DB)19とを備える。また、サーバ10は、サーバ10の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU11、並びにCPU11が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるRAM12、ナビゲーション装置2からの要求に基づいてナビゲーション装置2に記憶された地図情報の内、所定エリアの地図情報を新たなバージョンの地図情報に更新する為の更新情報をセンタ側地図情報DB14から抽出し、ナビゲーション装置2に対して配信する地図情報更新処理等を行うための各種の制御プログラムが記録されたROM13等の内部記憶装置を備えている。尚、CPU11に代えてMPU等を使用することができる。
【0022】
また、センタ側地図情報DB14には、情報配信センタ3で作成され、ナビゲーション装置2に記憶された地図情報を更新する際の基本となる地図情報である更新用地図情報14Aがバージョン毎に区分されて記憶されている。更に、現在のナビゲーション装置2に記憶される地図情報の一部又は全部を更新用地図情報14Aに更新する為の更新情報についても記憶されている。ここで、バージョンとは地図情報が作成された時期を特定する為の作成時期情報であり、バージョンを参照することによって地図情報が作成された時期を特定することが可能となっている。
【0023】
また、センタ側地図情報DB14に記憶された更新用地図情報14Aには、ナビゲーション装置2で経路案内及び地図表示を行うのに必要な各種情報が記録されており、例えば、地図を表示するための地図表示データや経路データ48(図3参照)等から構成されている。
ここで、特に地図表示データとしては、10km×10kmで区画された2次メッシュをベースに4分割(長さ1/2)、16分割(1/4)、64分割(1/8)されたユニットで構成されており、各ユニットのデータ量が略同レベルになるように、各地のユニットが設定されている。最も小さい64分割サイズのユニットは、約1.25km四方の大きさである。また、10km×10kmで区画された各2次メッシュ(以下、「メッシュ」という。)には、メッシュID380A(図4参照)がそれぞれ付されている。
【0024】
また、図3に示すように、経路データ48は、ヘッダ48A、各交差点に関する交差点データ、ノード点に関するノードデータ48B、施設の一種である道路(リンク)に関するリンクデータ48C、経路を探索するためのリンクコスト48D、ノードやリンクの座標を示す座標データ48E、バージョン48F等から構成されている。また、経路データ48には、施設の一種である店舗等のPOI(Point of Interest)に関する店舗データ、地点を検索するための検索データ等が含まれている。
【0025】
このヘッダ48Aは、全国を区画した区域としてのメッシュのID番号等が格納されている。
また、ノードデータ48Bとしては、実際の道路の分岐点(交差点、T字路等も含む)、各道路に曲率半径等に応じて所定の距離ごとに設定されたノード点の座標(位置)、ノードが交差点に対応するノードであるか等を表すノード属性、ノードに接続するリンクの識別番号であるリンクIDのリストである接続リンク番号リスト、ノードにリンクを介して隣接するノードのノード番号のリストである隣接ノード番号リスト、各ノード点の高さ(高度)等に関するデータ等が記録される。
【0026】
また、リンクデータ48Cとしては、道路を構成する各道路リンク(以下、「リンク」という。)に関してリンクの属する道路の幅員、勾(こう)配、カント、バンク、路面の状態、道路の車線数、車線数の減少する箇所、幅員の狭くなる箇所、踏切り等を表すデータが、コーナに関して、曲率半径、交差点、T字路、コーナの入口及び出口等を表すデータが、道路属性に関して、降坂路、登坂路等を表すデータが、道路種別に関して、国道、県道、細街路等の一般道のほか、高速自動車国道、都市高速道路、一般有料道路、有料橋等の有料道路を表すデータがそれぞれ記録される。更に、有料道路に関して、有料道路の入口及び出口の取付道(ランプウェイ)、料金所(インターチェンジ)等に関するデータが記録される。
【0027】
また、リンクコスト48Dとしては、設定された目的地までの経路を探索及び表示する際に使用されるデータについて記録されており、ノードを通過する際の右左折や道路を構成するリンクの距離、道幅、道路種別等によって決定される各ノードの重み付け(以下、「コスト」という。)を算出する為に使用するコストデータ、経路探索により選択された経路を液晶ディスプレイ25の地図上に表示するための経路表示データ等から構成され、固定値である。
【0028】
また、店舗データとしては、各地域のホテル、病院、ガソリンスタンド、駐車場、観光施設等のPOIに関するデータがPOIを特定するIDとともに記録される。なお、前記センタ側地図情報DB14には、所定の情報をナビゲーション装置2のスピーカ26によって出力するための音声出力データも記録される。
【0029】
そして、情報配信センタ3は、ナビゲーション装置2からの要求があったタイミングで、センタ側地図情報DB14に格納された更新用地図情報14Aの内、最もバージョンの新しい更新用地図情報14Aによってナビゲーション装置2に記憶された地図情報の更新を行う。具体的には、実施例1に係るナビゲーションシステム1では、ナビゲーション装置2から更新用地図情報14Aの配信要求があった場合には、最もバージョンの新しい更新用地図情報14Aに更新する為の更新情報をナビゲーション装置2に対して配信することにより更新が行われる。ここで、ナビゲーション装置2に対して送信される更新情報としては、最もバージョンの新しい更新用地図情報14Aの新設道路を特定するための新設道路情報を含む全情報を送信することとしても良いし、現在のナビゲーション装置に記憶される地図情報から最もバージョンの新しい更新用地図情報14Aに更新する為の必要最小限の情報(新設道路を特定するための新設道路情報を含む更新部分の情報のみ)を送信することとしても良い。
【0030】
一方、ナビ更新履歴情報DB15には、ナビゲーション装置2に記憶されている地図情報について現在までに更新を行った更新履歴に関する情報が、ナビゲーション装置2を特定するナビ識別IDとともに記憶される。更新履歴としては、具体的に地図情報を構成するリンクデータやノードデータ毎にどのバージョンの地図情報が用いられているかが記憶されており、ナビゲーション装置2の地図情報の更新を行う毎に新たな更新履歴に書き換えられる。
【0031】
また、センタ側交通情報DB16には、道路交通情報センタ(VICS:登録商標)5から受信した交通情報を収集して作成した現況の道路の渋滞等に関する情報である現況交通情報16Aが格納されている。また、このセンタ側交通情報DB16には、過去に作成された道路の渋滞等に関する統計的交通情報である統計交通情報16Bが格納されている。この統計交通情報16Bは、祭り、パレード、花火大会等のイベントの開催予定場所、予定日時等のイベント予定情報、例えば、駅周辺や大型商業施設周辺の道路には週末を除く毎日の特定時刻に渋滞が発生するとか、海水浴場周辺の道路には夏季休暇時期に渋滞が発生する等の統計的渋滞情報や渋滞予測情報を含んでもよい。更に、センタ側交通情報DB16には、現況交通情報16A及び統計交通情報16Bに基づいて作成された現況の各渋滞に対する将来における所定時刻毎(例えば、現在時刻から約30分間毎、約1時間毎、約2時間毎等である。)の渋滞予測情報等である予測交通情報16Cが格納されている。
【0032】
そして、情報配信センタ3は、ナビゲーション装置2からの要求があったタイミングで、センタ側交通情報DB16に格納された現況交通情報16A、統計交通情報16B、及び予測交通情報16Cに基づいて各交差点間の交通情報等を選択して配信する。
【0033】
また、道路交通情報センタ(VICS:登録商標)5から受信した交通情報には、種別情報、位置、渋滞区間の距離、渋滞度等の情報とともに、VICSリンクIDが含まれる。該VICSリンクIDは、道路を所定の交差点毎に分割して規格化された走行案内用リンクとしてのVICSリンクに付与された識別番号である。なお、前記交通情報には、各VICSリンクにおける始点及び終点の座標、始点から終点までの距離等の情報も含まれている。
【0034】
ここで、センタ側地図情報DB14に記憶される道路(リンク)とVICSリンクとは同一のものではない(一般的には、道路(リンク)の方がVICSリンクよりも細分化されている。)。そこで、各道路(リンク)に識別番号として付与される道路リンクIDとVICSリンクIDとの間の変換テーブル(対照表)を有し、VICSリンクIDに基づいて、対応する道路リンクIDを特定することができるようになっている。そのため、ナビゲーション装置2のように変換テーブルを有するものである場合には、情報配信センタ3や道路交通情報センタ(VICS:登録商標)5からVICSリンクIDを受信すると、該VICSリンクIDに基づいて渋滞情報等の交通情報を表示すべき道路の区間を特定することができる。
ところが、ナビゲーション装置2が変換テーブルを有するものでない場合には、VICSリンクIDに基づいて道路の区間を特定することができなくなってしまう。そこで、センタ側交通情報DB16には、この変換テーブルも格納されている。これにより、VICSリンクIDをナビゲーション装置2において使用されている道路リンクIDに変換して、交通情報を送信することができる。
【0035】
また、情報配信センタ3は、ナビゲーション装置2から配信要求があったタイミングで、スライス幅DB18に格納されているスライス幅データ380を配信する。
ここで、スライス幅データ380について図4及び図5に基づいて説明する。
図4はスライス幅DB18に格納されるスライス幅データ380のデータ構造を説明する説明図である。図5は最小スライス幅と最大スライス幅とを説明する図である。
図4に示すように、スライス幅データ380は、メッシュID380A、季節380B、曜日380C、距離範囲としてのスライス幅380Dから構成されている。上記の通りメッシュID380Aは、全国を10km四方に区画した各メッシュに割り当てられたIDである。このメッシュID380Aの下位のデータは、季節380Bとなっている。季節380Bは、スライス幅データ380を春・夏・秋・冬・長期連休に分けている。さらに下位にある曜日380Cは、各曜日と、祝日とからなる。
【0036】
また、スライス幅380Dは、メッシュ毎に記憶されており、そのメッシュにおいて、所定時間としての15分の間に自動車が走行可能な距離範囲の最小値を予測した最小予測距離範囲データとしての最小スライス幅と、所定時間としての15分の間に自動車が走行可能な距離範囲の最大値を予測した最大予測距離範囲データとしての最大スライス幅とが、15分間の各時間帯毎に、24時間分のデータが記憶されている。
即ち、各スライス幅380Dの最小スライス幅と最大スライス幅とは、メッシュID380A(地域性)、季節380B、曜日380C、時間帯の要因に、更に、運転者毎に異なる走行速度が加味された予測データであって、実施例1では、情報配信センタ3により、VICS信号や、各自動車から収集したプローブ情報に基づいて統計処理されたデータに基づいて予測したものである。
【0037】
具体的には、図5に示すように、先ず、メッシュに含まれる各リンクに対応するVICS信号、各車両に搭載されたナビゲーション装置2からのプローブ情報から、メッシュ内の各リンクを走行する全ての車両の車速を算出し、各車速に所定時間(15分)を乗じて取得した所定時間内(15分間内)に到達する各走行距離の統計的データから平均距離Lと標準偏差σとを算出する。そして、平均距離Lから標準偏差σを減算した値を最小値とし、即ち、走行速度が遅い車両が所定時間(15分間)に到達する最小到達距離範囲とし、当該メッシュの最小スライス幅として、このメッシュに対応するスライス幅380Dに格納する。また、この平均距離Lに標準偏差σを加算した値を最大値とし、即ち、走行速度が速い車両が所定時間(15分間)に到達する最大到達距離範囲とし、当該メッシュの最大スライス幅として、このメッシュに対応するスライス幅380Dに格納する。
【0038】
尚、実施例1では、平均距離Lから標準偏差σを減算した値を最小値とし、平均距離Lに標準偏差σを加算した値を最大値としたが、これに限ることはない。例えば、平均距離Lから標準偏差σの2倍の距離を減算した値を最小値とし、平均距離Lに標準偏差σの2倍の距離を加算した値を最大値としてもよい。また、平均距離Lから標準偏差σの3倍の距離を減算した値を最小値とし、平均距離Lに標準偏差σの3倍の距離を加算した値を最大値としてもよい。
また、所定時間内(15分間内)に到達する各走行距離の統計的データに複数のピーク値がある場合には、各ピーク値のうちの最小のピーク値を最小値とし、各ピーク値のうちの最大のピーク値を最大値としてもよい。
【0039】
また、情報配信センタ3は、ナビゲーション装置2からの要求があったタイミングで、交通DB19に格納されている交通データ390を配信する。
ここで、交通データ390について図6に基づいて説明する。
図6は、交通DB19に格納される交通データ390のデータ構造を説明する説明図である。
図6に示すように、交通データ390は、例えばメッシュID380A毎に生成されるとともに、時間帯390B毎に、各リンクのリンクID390Aに対するリンクコスト390Cを有している。時間帯390Bは、15分毎に設定され、スライス幅データ380で設定した時間帯(例えば「0:00」〜「0:14」等)と同じ区切りになっている。
また、このリンクコスト390Cは、その時間帯390Bにおいて、そのリンクを通過する際にかかる平均旅行時間を示すデータであって、例えば「3(min)」等になっている。つまり、経路データ48のリンクコスト48Dは、リンクの長さ、道路幅等に基づく、時間帯390Bを加味していないコストである。交通データ390のリンクコスト390Cは、各時間帯390Bの交通状況を反映したコストであって、各リンクコスト390Cを基準リンクコスト(例えば、「2min」である。)で除算した数値に、経路データ48のリンクコスト48Dを加算する等して、新たなリンクコストLCを生成するためのデータである。
【0040】
尚、情報配信センタ3は、個人、企業、団体、地方自治体、政府関係機関等のいずれが運営していてもよく、道路交通情報センタ(VICS:登録商標)5が運営していてもよい。
【0041】
また、ネットワーク4としては、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、イントラネット、携帯電話回線網、電話回線網、公衆通信回線網、専用通信回線網、インターネット等の通信回線網等の通信系を使用することができる。そして、放送衛星によるCS放送、BS放送、地上波ディジタルテレビ放送、FM多重放送等を利用する通信系を使用することもできる。更に、高度道路交通システム(ITS)において利用されるノンストップ自動料金支払いシステム(ETC)、狭域通信システム(DSRC)等の通信系を使用することもできる。
【0042】
次に、実施例1に係るナビゲーションシステム1を構成するナビゲーション装置2の概略構成について図2を用いて説明する。図2は実施例1に係るナビゲーション装置2を示したブロック図である。
【0043】
図2に示すように実施例1に係るナビゲーション装置2は、自車の現在位置を検出する現在地検出処理部21と、各種のデータが記録されたデータ記録部22と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーション制御部23と、操作者からの操作を受け付ける操作部24と、操作者に対して地図等の情報を表示する液晶ディスプレイ25と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ26と、道路交通情報センタ(VICS:登録商標)5や情報配信センタ3等との間で通信を行う通信装置27と、から構成されている。また、ナビゲーション制御部23には自車の走行速度を検出する車速センサ28が接続される。
【0044】
以下に、ナビゲーション装置2を構成する各構成要素について説明すると、現在地検出処理部21は、GPS31、地磁気センサ32、距離センサ33、ステアリングセンサ34、方位検出部としてのジャイロセンサ35、高度計(図示せず)等からなり、現在の自車の位置、方位、目標物(例えば、交差点)までの距離等を検出することが可能となっている。
【0045】
具体的には、GPS31は、人工衛星によって発生させられた電波を受信することにより、地球上における自車の現在地及び現在時刻を検出し、地磁気センサ32は、地磁気を測定することによって自車方位を検出し、距離センサ33は、道路上の所定の位置間の距離等を検出する。ここで、距離センサ33としては、例えば、自車の車輪(図示せず)の回転速度を測定し、測定した回転速度に基づいて距離を検出するセンサ、加速度を測定し、測定した加速度を2回積分して距離を検出するセンサ等を使用することができる。
【0046】
また、ステアリングセンサ34は自車の舵(だ)角を検出する。ここで、ステアリングセンサ34としては、例えば、ステアリングホイール(図示せず)の回転部に取り付けられた光学的な回転センサ、回転抵抗センサ、車輪に取り付けられた角度センサ等が使用される。
【0047】
そして、ジャイロセンサ35は自車の旋回角を検出する。ここで、ジャイロセンサ35としては、例えば、ガスレートジャイロ、振動ジャイロ等が使用される。また、ジャイロセンサ35によって検出された旋回角を積分することにより、自車方位を検出することができる。
【0048】
また、データ記録部22は、外部記憶装置及び記憶媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記憶されたナビ側交通情報データベース(ナビ側交通情報DB)36、ナビ側地図情報データベース(ナビ側地図情報DB)37、スライス幅データベース(スライス幅DB)38、交通データベース(交通DB)39及び所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。尚、実施例1においては、データ記録部22の外部記憶装置及び記憶媒体としてハードディスクが使用されるが、ハードディスクのほかに、フレキシブルディスク等の磁気ディスクを外部記憶装置として使用することができる。また、メモリーカード、磁気テープ、磁気ドラム、CD、MD、DVD、光ディスク、MO、ICカード、光カード等を外部記憶装置として使用することもできる。
【0049】
ここで、ナビ側交通情報DB36には、道路交通情報センタ(VICS:登録商標)5から受信した渋滞の実際の長さ、渋滞の原因、渋滞解消の見込まれる時刻等から構成される現況の道路の渋滞等に関する道路渋滞情報や、道路工事、建築工事等による交通規制情報等の交通情報から作成した現況交通情報36Aが格納される。また、ナビ側交通情報DB36には、過去に作成された道路の渋滞等に関する統計的交通情報である統計交通情報36Bが格納されている。この統計交通情報36Bは、祭り、パレード、花火大会等のイベントの開催予定場所、予定日時等のイベント予定情報、例えば、駅周辺や大型商業施設周辺の道路には週末を除く毎日の特定時刻に渋滞が発生するとか、海水浴場周辺の道路には夏季休暇時期に渋滞が発生する等の統計的渋滞情報や渋滞予測情報を含んでもよい。更に、ナビ側交通情報DB36には、現況交通情報36A及び統計交通情報36Bに基づいて作成された現況の各渋滞に対する将来における所定時刻毎(例えば、現在時刻から約30分間毎、約1時間毎、約2時間毎等である。)の渋滞予測情報等である予測交通情報36BCが格納されている。
【0050】
また、ナビ側地図情報DB37には、ナビゲーション装置2の走行案内や経路探索に使用されるとともに情報配信センタ3による更新対象となるナビ地図情報37Aが格納されている。ここで、ナビ地図情報37Aには、更新用地図情報14Aと同様に経路案内及び地図表示に必要な地図表示データや経路データ48(図3参照)等の各種情報から構成されており、例えば、図3に示すように、経路データ48は、全国を各区域に区画したリージョン毎のデータであって、ヘッダ48A、各交差点に関する交差点データ、ノード点に関するノードデータ48B、施設の一種である道路(リンク)に関するリンクデータ48C、経路を探索するためのリンクコスト48D、ノードやリンクの座標を示す座標データ48E、バージョン48F等から構成されている。
尚、各データの詳細については既に説明したので、ここではその詳細は省略する。
そして、ナビ側地図情報DB37の内容は、情報配信センタ3から通信装置27を介して配信された更新情報をダウンロードすることによって更新される。
【0051】
また、スライス幅DB38には、情報配信センタ3による更新対象となる上述のスライス幅データ380(図4参照)が格納されている。また、交通DB19には、情報配信センタ3による更新対象となる上述の交通データ390(図6参照)が格納されている。
そして、スライス幅DB38に格納されるスライス幅データ380と、交通DB39に格納される交通データ390との各内容は、情報配信センタ3から通信装置27を介して配信された更新情報をダウンロードすることによって更新される。
【0052】
また、図2に示すように、ナビゲーション装置2を構成するナビゲーション制御部23は、ナビゲーション装置2の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データや情報配信センタ3から受信した交通情報等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、後述の最小到達エリア及び最大到達エリアを設定して、自車位置から目的地までの誘導経路を探索する経路探索処理プログラム(図7参照)が記憶されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置や、時間を計測するタイマ45等を備えている。尚、前記RAM42、ROM43、フラッシュメモリ44等としては半導体メモリ、磁気コア等が使用される。そして、演算装置及び制御装置としては、CPU41に代えてMPU等を使用することも可能である。
【0053】
また、実施例1においては、前記ROM43に各種のプログラムが記憶され、前記データ記録部22に各種のデータが記憶されるようになっているが、プログラム、データ等を同じ外部記憶装置、メモリーカード等からプログラム、データ等を読み出して前記フラッシュメモリ44に書き込むこともできる。更に、メモリーカード等を交換することによって前記プログラム、データ等を更新することができる。
【0054】
更に、前記ナビゲーション制御部23には、操作部24、液晶ディスプレイ25、スピーカ26、通信装置27の各周辺装置(アクチュエータ)が電気的に接続されている。
【0055】
操作部24は、走行開始時の現在地を修正し、案内開始地点としての出発地及び案内終了地点としての目的地を入力する際や施設に関する情報の検索を行う場合等に操作され、各種のキーや複数の操作スイッチから構成される。そして、ナビゲーション制御部23は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、操作部24としては、キーボード、マウス、バーコードリーダ、遠隔操作用のリモートコントロール装置、ジョイスティック、ライトペン、スタイラスペン等を使用することもできる。更に、液晶ディスプレイ25の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。
【0056】
また、液晶ディスプレイ25には、ナビ地図情報37Aに基づく地図が表示されて各リンク上の交通情報が表示される経路案内画面の他、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在地から目的地までの誘導経路、誘導経路に沿った案内情報、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。尚、液晶ディスプレイ25の代わりに、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ等を使用したり、車両のフロントガラスにホログラムを投影するホログラム装置等を使用することも可能である。
【0057】
また、スピーカ26は、ナビゲーション制御部23からの指示に基づいて、誘導経路に沿った走行を案内する音声ガイダンス等を出力する。ここで、案内される音声ガイダンスとしては、例えば、「200m先、○○交差点を右方向です。」や「この先の国道○○号線が渋滞しています。」等がある。なお、スピーカ26より出力される音声としては、合成された音声のほかに、各種効果音、予めテープやメモリ等に録音された各種の案内情報を出力することもできる。
【0058】
そして、通信装置27は、情報配信センタ3と通信を行う通信手段であり、情報配信センタ3との間で最もバージョンの新しい更新地図情報、スライス幅データ380や交通データ390等の送受信を行う。また、通信装置27は、情報配信センタ3に加えて、道路交通情報センタ(VICS:登録商標)5等から送信された渋滞情報、規制情報、駐車場情報、交通事故情報、サービスエリアの混雑状況等の各情報から成る交通情報を受信する。
【0059】
次に、前記構成を有するナビゲーションシステム1において、ナビゲーション装置2のCPU41が、最小到達エリア及び最大到達エリア等を設定して、自車位置から目的地までの誘導経路を探索する経路探索処理について図7乃至図12に基づいて説明する。図7は実施例1に係るナビゲーション装置2が実行する自車位置から目的地までの誘導経路を探索する経路探索処理を示すフローチャートである。
尚、図7にフローチャートで示されるプログラムはナビゲーション装置2のナビゲーション制御部23が備えているROM43に記憶されており、CPU41により一定時間毎(例えば、10msec〜100msec毎)に実行される。
【0060】
図7に示すように、先ず、ステップ(以下、Sと略記する)11において、CPU41は、ROM43に記憶された経路探索処理プログラムに従って、タッチパネル、操作スイッチ等の操作部24の入力操作等によって、目的地が設定されたか否かを判定する判定処理を実行する。そして、目的地が設定されていない場合には(S11:NO)、CPU41は、当該処理を終了する。
一方、目的地が入力されたと判断すると(S11:YES)、CPU41は、その目的地の座標等をRAM42に一時格納後、S12の処理に移行する。
続いて、S12において、CPU41は、現在位置検出処理部21により自車の現在位置(以下、「自車位置」という。)を検出する。そして、CPU41は、車両の現在位置を含む地図データをナビ地図情報37Aから読み出し、地図データに基づいて自車位置が含まれるメッシュを検出し、そのメッシュのメッシュID380Aを取得する。
【0061】
そして、S13において、CPU41は、タイマ45の時刻データ等を読み込み、現在日時、現在時刻を取得し、現時点の季節380B、曜日380C、時間帯の要因を特定する。
また、S14において、CPU41は、メッシュID380A、季節380B、曜日380C、時間帯の要因を特定すると、メッシュID380Aが紐付けされたスライス幅データ380のスライス幅380Dを読出し、そのスライス幅380Dに基づき、最小スライス幅と最大スライス幅とを決定して、RAM42に記憶する。
【0062】
例えば、季節380Bが「春」、曜日380Cが「月曜日」、現在時刻が9時00分〜9時14分に含まれる時刻であった場合、CPU41は、図4に示すスライス幅データ380のうち、「9時00分〜9時14分」のスライス幅380Dを読出し、そのスライス幅380Dに基づき、最小スライス幅と最大スライス幅とを決定する。
例えば、このスライス幅380Dの最小スライス幅が「4km」で、最大スライス幅が「5km」であるときは、このメッシュでは、走行速度が遅い車両が15分間に到達する最小到達距離範囲(最小予測距離範囲データ)は、4(km)であり、走行速度が速い車両が15分間に到達する最大到達距離範囲(最大予測距離範囲データ)は、5(km)であることを示している。
【0063】
次に、S15において、CPU41は、最小スライス幅をRAM42から再度、読み出し、現在の自車位置からの所定時間毎(15分毎)に車両が到達する最小到達エリア(最小到達範囲)を現在時刻を基準として設定してRAM42に記憶する。
ここで、最小スライス幅が「4km」の場合に、CPU41が、現在時刻を基準として設定する最小到達範囲の一例を図8及び図9に基づいて説明する。
図8は現在の自車位置を中心として半径方向外側にそれぞれ最小スライス幅「4km」で設定される最小到達範囲の一例を説明する説明図である。図9は最小スライス幅「4km」で設定された各最小到達範囲の現在の自車位置からの距離と現在時刻からの到達時刻範囲との関係の一例を示す図である。
【0064】
図8に示すように、CPU41は、最小スライス幅「4km」をRAM42から読み出し、現在(9時00分)の自車位置50を中心に、自車位置50から半径「4.0km」の円形をなす第1最小到達範囲51を設定してRAM42に記憶する。この第1最小到達範囲51内は、車両が「9時00分〜9時14分」内に到達する最小到達範囲である。
続いて、CPU41は、第1最小到達範囲51の円周から、最小スライス幅「4km」だけ離れた、2番目の第2最小到達範囲52を設定してRAM42に記憶する。この第2最小到達範囲52は、車両が「9時15分〜9時29分」内に到達する最小到達範囲である。
【0065】
また、CPU41は、第2最小到達範囲52の円周から、最小スライス幅「4km」だけ離れた、3番目の第3最小到達範囲53を設定してRAM42に記憶する。この第3最小到達範囲53は、車両が「9時30分〜9時44分」内に到達する最小到達範囲である。
そして、CPU41は、第3最小到達範囲53の円周から、最小スライス幅「4km」だけ離れた、4番目の第4最小到達範囲54を設定してRAM42に記憶する。この第4最小到達範囲54は、車両が「9時45分〜9時59分」内に到達する最小到達範囲である。
【0066】
更に、図9に示すように、CPU41は、車両が「10時00分〜10時14分」乃至「10時45分〜10時59分」内に到達する第5最小到達範囲55乃至第8最小到達範囲58を設定し、RAM42に記憶する。
【0067】
続いて、S16において、最大スライス幅をRAM42から再度、読み出し、現在の自車位置からの所定時間毎(15分毎)に車両が到達する最大到達エリア(最大到達範囲)を現在時刻を基準として設定してRAM42に記憶する。
ここで、最大スライス幅が「5km」の場合に、CPU41が、現在時刻を基準として設定する最大到達範囲の一例を図10及び図11に基づいて説明する。
図10は現在の自車位置を中心として半径方向外側にそれぞれ最大スライス幅「5km」で設定される最大到達範囲の一例を説明する説明図である。図11は最大スライス幅「5km」で設定された各最大到達範囲の現在の自車位置からの距離と現在時刻からの到達時刻範囲との関係の一例を示す図である。
【0068】
図10に示すように、CPU41は、最大スライス幅「5km」をRAM42から読み出し、現在(9時00分)の自車位置50を中心に、自車位置50から半径「5.0km」の円形をなす第1最大到達範囲61を設定してRAM42に記憶する。この第1最大到達範囲61内は、車両が「9時00分〜9時14分」内に到達する最大到達範囲である。
続いて、CPU41は、第1最大到達範囲61の円周から、最大スライス幅「5km」だけ離れた、2番目の第2最大到達範囲62を設定してRAM42に記憶する。この第2最大到達範囲62は、車両が「9時15分〜9時29分」内に到達する最大到達範囲である。
【0069】
また、CPU41は、第2最大到達範囲62の円周から、最大スライス幅「5km」だけ離れた、3番目の第3最大到達範囲63を設定してRAM42に記憶する。この第3最大到達範囲63は、車両が「9時30分〜9時44分」内に到達する最大到達範囲である。
更に、図11に示すように、CPU41は、車両が「9時45分〜9時59分」乃至「10時30分〜10時44分」内に到達する第4最大到達範囲64乃至第7最大到達範囲67を設定し、RAM42に記憶する。
【0070】
そして、S17において、CPU41は、上記S15で設定した各最小到達範囲と上記S16で設定した各最大到達範囲とをRAM42から読み出し、重ね合わせて合成し、現在の自車位置からの距離毎の(例えば、約500m〜1km毎である。)到達時刻範囲を、現在時刻を基準として設定し、RAM42に記憶する。
ここで、図9に示される第1最小到達範囲51乃至第8最小到達範囲58と、図11に示される第1最大到達範囲61乃至第7最大到達範囲67とを重ね合わせて合成した、現在の自車位置からの距離毎の(例えば、約500m〜1km毎である。)到達時刻範囲の一例を図12に示す。
【0071】
図12に示すように、現在(9時00分)の自車位置50を中心に、自車位置50から半径「4.0km」の円形をなす第1到達範囲71においては、CPU41は、車両が到達する到達時刻範囲を「9時00分〜9時14分」に設定し、RAM42に記憶する。
続いて、第1到達範囲71の円周から距離「1km」だけ離れた第2到達範囲72、即ち、自車位置50から半径「4km〜5km」のリング状の第2到達範囲72においては、CPU41は、車両が到達する到達時刻範囲を「9時00分〜9時29分」に設定し、RAM42に記憶する。
【0072】
また、第2到達範囲72の円周から距離「3km」だけ離れた第3到達範囲73、即ち、自車位置50から半径「5km〜8km」のリング状の第3到達範囲73においては、CPU41は、車両が到達する到達時刻範囲を「9時15分〜9時29分」に設定し、RAM42に記憶する。
また、第3到達範囲73の円周から距離「2km」だけ離れた第4到達範囲74、即ち、自車位置50から半径「8km〜10km」のリング状の第4到達範囲74においては、CPU41は、車両が到達する到達時刻範囲を「9時15分〜9時44分」に設定し、RAM42に記憶する。
【0073】
そして、第4到達範囲74の円周から距離「2km」だけ離れた第5到達範囲75、即ち、自車位置50から半径「10km〜12km」のリング状の第5到達範囲75においては、CPU41は、車両が到達する到達時刻範囲を「9時30分〜9時44分」に設定し、RAM42に記憶する。
更に、CPU41は、車両が第6到達範囲76乃至第13到達範囲83に、それぞれ到達する到達時刻範囲を「9時30分〜9時59分」乃至「10時30分〜10時59分」に順次設定し、RAM42に記憶する。
【0074】
次に、S18において、CPU41は、上記S17でRAM42に記憶した現在の自車位置からの距離毎の(例えば、約500m〜1km毎である。)到達時刻範囲に基づいて、現在の自車位置を中心として、自車位置から各リンクまでの距離を算出して、この各リンクに到達する到達時刻範囲を設定する。
【0075】
続いて、S19において、CPU41は、上記S18でRAM42に記憶した各リンク毎の到達時刻範囲を、再度RAM42から順次読み出し、この到達時刻範囲に該当する各リンクの時間帯380Bの各リンクコスト390Cを、交通DB39に格納される交通データ390から読み出す。そして、この読み出した各リンクのリンクコスト390Cの平均値を算出して、この算出した平均値を当該各リンクの予測リンクコスト(予測交通データ)として設定し、RAM42に記憶する。
【0076】
ここで、図6に示す各リンクN、N+1、N+2に設定される到達時刻範囲及び予測リンクコスト(予測交通データ)の一例について図12に基づいて説明する。
例えば、図12に示すように、現在(9時00分)の自車位置50からリンクNまでの直線距離が「11km」の場合、即ち、リンクNの座標位置が第5到達範囲75に存在する場合には、CPU41は、このリンクNに到達する到達時刻範囲を「9時30分〜9時44分」に設定し、RAM42に記憶する。
そして、CPU41は、リンクNの到達時刻範囲「9時30分〜9時44分」を再度、RAM42から読み出し、この到達時刻範囲「9時30分〜9時44分」に該当するリンクNの時間帯380B「9時30分〜9時44分」のリンクコスト390Cである「2min」を交通データ390から読み出し、この「2min」をリンクNの予測リンクコスト(予測交通データ)として設定し、RAM42に記憶する。
【0077】
また、現在(9時00分)の自車位置50からリンクN+1までの直線距離が「14km」の場合、即ち、リンクN+1の座標位置が第6到達範囲76に存在する場合には、CPU41は、このリンクN+1に到達する到達時刻範囲を「9時30分〜9時59分」に設定し、RAM42に記憶する。
そして、CPU41は、リンクN+1の到達時刻範囲「9時30分〜9時59分」を再度、RAM42から読み出し、この到達時刻範囲「9時30分〜9時59分」に該当するリンクN+1の時間帯380B「9時30分〜9時44分」、「9時45分〜9時59分」の各リンクコスト390Cである「15min」と「16min」を交通データ390から読み出し、この「15min」と「16min」との平均値「15.5min」を算出し、この平均値「15.5min」をリンクN+1の予測リンクコスト(予測交通データ)として設定し、RAM42に記憶する。
【0078】
更に、現在(9時00分)の自車位置50からリンクN+2までの直線距離が「24.5km」の場合、即ち、リンクN+2の座標位置が第10到達範囲80に存在する場合には、CPU41は、このリンクN+2に到達する到達時刻範囲を「10時00分〜10時44分」に設定し、RAM42に記憶する。
そして、CPU41は、リンクN+2の到達時刻範囲「10時00分〜10時44分」を再度、RAM42から読み出し、この到達時刻範囲「10時00分〜10時44分」に該当するリンクN+2の時間帯380B「10時00分〜10時14分」、「10時15分〜10時29分」、「10時30分〜10時44分」の各リンクコスト390Cである「15min」と「17min」と「18min」を交通データ390から読み出し、この「15min」と「17min」と「18min」との平均値「16.7min」を算出し、この平均値「16.7min」をリンクN+2の予測リンクコスト(予測交通データ)として設定し、RAM42に記憶する。
【0079】
続いて、S20において、CPU41は、各リンクに設定された予測リンクコスト(予測交通データ)に基づいて、ダイクストラ法等によって、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索して、RAM42に記憶後、当該処理を終了する。
【0080】
以上詳細に説明した通り、実施例1に係るナビゲーション装置2では、CPU41は、目的地が設定されると、自車位置が含まれるメッシュ等を特定し、メッシュ毎に記憶される最小スライス幅と最大スライス幅とを決定後、車両の現在位置から15分毎に到達する最小到達範囲(最小到達エリア)と最大到達範囲(最大到達エリア)を設定し、RAM42に記憶する(S11〜S16)。そして、CPU41は、各最小到達範囲と各最大到達範囲とをRAM42から読み出し、重ね合わせて合成し、現在の自車位置からの距離毎の(例えば、約500m〜1km毎である。)到達時刻範囲を、現在時刻を基準として設定し、RAM42に記憶する(S17)。続いて、CPU41は、現在の自車位置からの距離毎の到達時刻範囲に基づいて、自車位置から各リンクまでの距離を算出して、この各リンクに到達する到達時刻範囲を設定する(S18)。そして、CPU41は、各リンクに到達する到達時刻範囲に該当する各リンクの時間帯380の各リンクコスト390Cの平均値を当該各リンクの予測リンクコスト(予測交通データ)として設定し、各リンクに設定された該予測リンクコスト(予測交通データ)に基づいて、ダイクストラ法等によって、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索する(S19〜S20)。
【0081】
従って、ナビゲーション装置2のCPU41は、メッシュ毎に記憶される最小スライス幅と最大スライス幅とによって設定される最小到達範囲と最大到達範囲とを重ね合わせて合成し、現在の自車位置から距離毎の到達時刻範囲を予測し、それに基づいて各リンクに到達する到達時刻範囲を設定することによって、運転者毎に異なる走行速度を考慮して、出発地から各リンクまでの到達時刻範囲を設定することが可能となる。
【0082】
また、CPU41は、各リンクの到達時刻範囲に対応する各リンクの時間帯380Bの各リンクコスト390Cの平均値を予測リンクコストとして設定するため、到達時刻範囲内の各時間帯380Bに対応するリンクコスト390Cの差が大きくなって不連続であっても、この不連続性を補完できると共に、各リンクの到達時刻範囲に対して予測リンクコストを迅速に設定することが可能となり、車両が各リンクに到達する到達時刻を予測する処理時間の短縮化を図ることができる。また、各リンクの到達時刻範囲に対応する該各リンクの時間帯380Bのリンクコスト390Cに基づいて予測リンクコストを設定することによって、運転者毎に異なる走行速度を加味して、精度の高い予測リンクコストを設定することが可能となり、車両通過時に渋滞が発生する道路、渋滞が解消される道路等を正確に予測して、推奨経路を的確に探索することが可能となる。
【0083】
また、最小スライス幅と最大スライス幅とは、メッシュ内の各リンクを走行する全ての車両の所定時間内(15分間内)に到達する各走行距離の統計的データの平均距離Lと標準偏差σとに基づいて算出されているため、最小スライス幅と最大スライス幅を統計的データに基づいて正確に設定することが可能となり、現在の自車位置から各リンクに到達する到達時刻範囲を正確に算出することが可能となる。
【0084】
また、最小スライス幅と最大スライス幅とを決定する場合には、CPU41は、地図メッシュ毎に記憶されている最小スライス幅と最大スライス幅とを読み出せば良いので、例えば、自車位置から所定距離内のリンクを検出し、そのリンクに対応する最小スライス幅と最大スライス幅とを逐次検索するよりも、処理を軽減することができる。
更に、最小スライス幅と最大スライス幅とは、区域、季節、曜日、祝日、連休期間等の要因毎に生成されている。このため、地域性、時期的要因、時間的要因を最小スライス幅と最大スライス幅に加味することができるので、この最小スライス幅と最大スライス幅の精度を向上させることができる。
【実施例2】
【0085】
次に、実施例2に係るナビゲーションシステム100において、ナビゲーション装置2のCPU41が実行する現在の自車位置から目的地までの経路を探索する経路探索処理と、情報配信センタ3のCPU11が実行する現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索してナビゲーション装置2に配信する経路探索処理について図13に基づいて説明する。図13は実施例2に係るナビゲーションシステム100のナビゲーション装置2が実行する経路探索処理と情報配信センタ3が実行する経路探索処理を示すフローチャートである。
尚、以下の説明において上記図1乃至図12の実施例1に係るナビゲーションシステム1の構成と同一符号は、前記実施例1に係るナビゲーションシステム1の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0086】
この実施例2に係るナビゲーションシステム100の概略構成は、実施例1に係るナビゲーションシステム1とほぼ同じ構成である。また、各種制御処理も実施例1に係るナビゲーションシステム1とほぼ同じ制御処理である。
ただし、図13に示すように、実施例2に係るナビゲーションシステム100は、情報配信センタ3が上記S12乃至S20に相当する処理を実行する点で、前記実施例1に係るナビゲーションシステム1と異なっている。
【0087】
先ず、図13に基づいてナビゲーション装置2のCPU41が実行する「経路探索処理」について説明する。尚、図13に、S101〜S103のフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置2が備えているRAM42やROM43に記憶されており、CPU41により実行される。
【0088】
図13に示すように、S101において、CPU41は、ROM43に記憶された経路探索処理プログラムに従って、タッチパネル、操作スイッチ等の操作部24の入力操作等によって、目的地が設定されたか否かを判定する判定処理を実行する。そして、目的地が設定されていない場合には(S101:NO)、CPU41は、当該処理を終了する。
一方、目的地が入力されたと判断すると(S101:YES)、CPU41は、その目的地の座標等をRAM42に一時格納後、S102の処理に移行する。
続いて、S102において、CPU41は、情報配信センタ3に対して、経路探索を要求する要求コマンドと共に、現在の自車位置のデータ、目的地の座標データ、ナビ地図情報37Aのバージョン情報等を送信する。
【0089】
その後、S103において、CPU41は、情報配信センタ3から、誘導経路(推奨経路)等の経路情報を受信して、この誘導経路の経路情報をRAM42に記憶後、当該処理を終了する。
【0090】
次に、図13に基づいて情報配信センタ3のCPU11が実行する「経路探索処理」について説明する。尚、図13に、S201乃至S210のフローチャートで示されるプログラムは、情報配信センタ3が備えているRAM12やROM13に記憶されており、CPU11により実行される。
先ず、S201において、CPU11は、上記S102でナビゲーション装置2から送信された経路探索を要求する要求コマンドと共に、自車位置のデータ、目的地の座標データ、ナビ地図情報37Aのバージョン情報等の各情報を受信して、この各情報をRAM12に記憶する。そして、CPU11は、センタ側地図情報DB14に格納されるナビ地図情報37Aのバージョン情報に対応する更新用地図情報14Aに基づいて上記S12に相当する処理を実行する。
【0091】
そして、S202乃至S209において、CPU11は、センタ側地図情報DB14に格納されるナビ地図情報37Aのバージョン情報に対応する更新用地図情報14Aと、スライス幅DB18に格納されているスライス幅データ380と、交通DB19に格納されている交通データ390とに基づいて、上記S13乃至S20の処理を実行する。
続いて、S210において、CPU11は、探索した推奨経路の経路情報と更新情報をナビゲーション装置2に送信後、当該処理を終了する。
【0092】
以上説明した通り、実施例2に係るナビゲーションシステム100では、情報配信センタ3のCPU11は、自車位置が含まれるメッシュ等を特定し、メッシュ毎に記憶される最小スライス幅と最大スライス幅とを決定後、車両の現在位置から15分毎に到達する最小到達範囲(最小到達エリア)と最大到達範囲(最大到達エリア)を設定し、RAM12に記憶する(S201〜S205)。そして、CPU11は、各最小到達範囲と各最大到達範囲とをRAM12から読み出し、重ね合わせて合成し、現在の自車位置からの距離毎の(例えば、約500m〜1km毎である。)到達時刻範囲を、現在時刻を基準として設定し、RAM12に記憶する(S206)。続いて、CPU11は、現在の自車位置からの距離毎の到達時刻範囲に基づいて、自車位置から各リンクまでの距離を算出して、この各リンクに到達する到達時刻範囲を設定する(S207)。そして、CPU11は、各リンクに到達する到達時刻範囲に該当する各リンクの時間帯380Bの各リンクコスト390Cの平均値を当該各リンクの予測リンクコスト(予測交通データ)として設定し、各リンクに設定された該予測リンクコスト(予測交通データ)に基づいて、ダイクストラ法等によって、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索して、ナビゲーション装置2に配信する(S208〜S210)。
【0093】
従って、情報配信センタ3のCPU11は、メッシュ毎に記憶される最小スライス幅と最大スライス幅とによって設定される最小到達範囲と最大到達範囲とを重ね合わせて合成し、現在の自車位置から距離毎の到達時刻範囲を予測し、それに基づいて各リンクに到達する到達時刻範囲を設定することによって、運転者毎に異なる走行速度を考慮して、出発地から各リンクまでの到達時刻範囲を設定することが可能となる。
【0094】
また、CPU11は、各リンクの到達時刻範囲に対応する各リンクの時間帯380Bの各リンクコスト390Cの平均値を予測リンクコストとして設定するため、到達時刻範囲内の各時間帯380Bに対応するリンクコスト390Cの差が大きくなって不連続であっても、この不連続性を補完できると共に、各リンクの到達時刻範囲に対して予測リンクコストを迅速に設定することが可能となり、車両が各リンクに到達する到達時刻を予測する処理時間の短縮化を図ることができる。また、各リンクの到達時刻範囲に対応する該各リンクの時間帯380の各リンクコスト390Cに基づいて予測リンクコストを設定することによって、運転者毎に異なる走行速度を加味して、精度の高い予測リンクコストを設定することが可能となり、車両通過時に渋滞が発生する道路、渋滞が解消される道路等を正確に予測して、推奨経路を的確に探索することが可能となる。また、情報配信センタ3が、自車位置から目的地までの経路探索を行うため、ナビゲーション装置2の処理負荷の軽減化を図ることができる。
【0095】
また、最小スライス幅と最大スライス幅とは、メッシュ内の各リンクを走行する全ての車両の所定時間内(15分間内)に到達する各走行距離の統計的データの平均距離Lと標準偏差σとに基づいて算出されているため、最小スライス幅と最大スライス幅を統計的データに基づいて正確に設定することが可能となり、現在の自車位置から各リンクに到達する到達時刻範囲を正確に算出することが可能となる。
【0096】
また、最小スライス幅と最大スライス幅とを決定する場合には、CPU11は、地図メッシュ毎に記憶されている最小スライス幅と最大スライス幅とを読み出せば良いので、例えば、自車位置から所定距離内のリンクを検出し、そのリンクに対応する最小スライス幅と最大スライス幅とを逐次検索するよりも、処理を軽減することができる。
更に、最小スライス幅と最大スライス幅とは、区域、季節、曜日、祝日、連休期間等の要因毎に生成されている。このため、地域性、時期的要因、時間的要因を最小スライス幅と最大スライス幅に加味することができるので、この最小スライス幅と最大スライス幅の精度を向上させることができる。
【0097】
尚、本発明は前記実施例1及び実施例2に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。
【0098】
(1)前記実施例1及び実施例2では、円形状の第1最小到達範囲51〜第8最小到達範囲58、第1最大到達範囲61〜第7最大到達範囲67を設定したが、真円である必要はなく、楕円、一部が突出した変形円でもよい。例えば、車線数等が周囲の道路に比べて極端に大きい道路がある場合、その道路に対応する箇所を突出させた変形円を設定したり、その道路を楕円の長軸部分に相当させた楕円形のエリアを設定してもよい。
【0099】
(2)前記実施例1では、ナビゲーション装置2は、スライス幅データ380及び交通データ390を情報配信センタ3から受信して、スライス幅DB38、交通DB39にそれぞれ格納して更新したが、CD−ROMやDVD−ROM等に格納されたスライス幅データ380及び交通データ390を読み込み、スライス幅DB38、交通DB39にそれぞれ格納して更新するように構成してもよい。
【0100】
(3)前記実施例1において、CPU41は、ステップ20において、ステップ19で各リンクに設定した予測リンクコスト(予測交通データ)に基づいて、ダイクストラ法等によって、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索すると共に、この推奨経路上の各リンクのリンク長と該予測リンクコストから各リンクにおける車速を算出し、目的地までの経路に含まれる各リンクにおける渋滞度(例えば、車速が時速20km以上の場合には「渋滞無し」、車速が時速10km以上20km未満の場合には「混雑」、車速が時速10km未満の場合には「渋滞」等である。)を予測して、渋滞度が「渋滞」等の渋滞リンクを抽出するようにしてもよい。そして、CPU41は、車両の現在位置を含む地図データをナビ地図情報37Aから読み出して、液晶ディスプレイ25に表示すると共に、渋滞度が「渋滞」等の渋滞リンクを地図画像上に赤色点滅表示や、赤色矢印等で識別可能に表示するようにしてもよい。また、CPU41は、渋滞区間や通過するのに要する所要時間等を表す渋滞区間情報を同時に表示するようにしてもよい。これにより、運転者は、推奨経路上の渋滞を正確に予測することが可能となり、この渋滞を迂回する迂回経路等を容易に決定することが可能となる。
【0101】
(4)前記実施例2において、CPU11は、ステップ209において、ステップ208で各リンクに設定した予測リンクコスト(予測交通データ)に基づいて、ダイクストラ法等によって、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索すると共に、この推奨経路上の各リンクのリンク長と該予測リンクコストから各リンクにおける車速を算出し、目的地までの経路に含まれる各リンクにおける渋滞度(例えば、車速が時速20km以上の場合には「渋滞無し」、車速が時速10km以上20km未満の場合には「混雑」、車速が時速10km未満の場合には「渋滞」等である。)を予測して、渋滞度が「渋滞」等の渋滞リンクを抽出するようにしてもよい。そして、CPU11は、ステップ210において、探索した推奨経路の経路情報やこの抽出した渋滞リンクの情報をナビゲーション装置2に送信するようにしてもよい。
【0102】
また一方、CPU41は、ステップ103において、情報配信センタ3から、誘導経路(推奨経路)等の経路情報と渋滞リンクの情報を受信して、この誘導経路の経路情報と渋滞リンクの情報をRAM42に記憶する。そして、CPU41は、車両の現在位置を含む地図データをナビ地図情報37Aから読み出して、液晶ディスプレイ25に表示すると共に、この受信した渋滞リンクの情報に基づいて、渋滞度が「渋滞」等の渋滞リンクを地図画像上に赤色点滅表示や、赤色矢印等で識別可能に表示するようにしてもよい。また、CPU41は、渋滞区間や通過するのに要する所要時間等を表す渋滞区間情報を同時に表示するようにしてもよい。これにより、運転者は、推奨経路上の渋滞を正確に予測することが可能となり、この渋滞を迂回する迂回経路等を容易に決定することが可能となる。また、情報配信センタ3が、自車位置から目的地までの経路探索と渋滞リンクの抽出を行うため、ナビゲーション装置2の処理負荷の更なる軽減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】実施例1に係るナビゲーションシステムを示したブロック図である。
【図2】ナビゲーションシステムのナビゲーション装置を示したブロック図である。
【図3】経路データのデータ構成の説明図である。
【図4】スライス幅データのデータ構成の説明図である。
【図5】最小スライス幅と最大スライス幅とを説明する図である。
【図6】交通データのデータ構成の説明図である。
【図7】実施例1に係るナビゲーション装置が実行する自車位置から目的地までの誘導経路を探索する経路探索処理を示すフローチャートである。
【図8】現在の自車位置を中心として半径方向外側にそれぞれ最小スライス幅「4km」で設定される最小到達エリアの一例を説明する説明図である。
【図9】最小スライス幅「4km」で設定された各最小到達エリアの現在の自車位置からの距離と現在時刻からの到達時刻範囲との関係の一例を示す図である。
【図10】現在の自車位置を中心として半径方向外側にそれぞれ最大スライス幅「5km」で設定される最大到達エリアの一例を説明する説明図である。
【図11】最大スライス幅「5km」で設定された各最大到達エリアの現在の自車位置からの距離と現在時刻からの到達時刻範囲との関係の一例を示す図である。
【図12】図9と図11に示される各最小到達エリアと各最大到達エリアとを合成した現在の自車位置からの距離と現在時刻からの到達時刻範囲との関係の一例を示す図である。
【図13】実施例2に係るナビゲーションシステムのナビゲーション装置が実行する経路探索処理と情報配信センタが実行する経路探索処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0104】
1、100 ナビゲーションシステム
2 ナビゲーション装置
3 情報配信センタ
4 ネットワーク
10 サーバ
11、41 CPU
12、42 RAM
13、43 ROM
14 センタ側地図情報DB
17 センタ側通信装置
18、38 スライス幅DB
19、39 交通DB
23 ナビゲーション制御部
27 通信装置
37 ナビ側地図情報DB
50 自車位置
51〜58 第1最小到達範囲〜第8最小到達範囲
61〜67 第1最大到達範囲〜第7最大到達範囲
71〜83 第1到達範囲〜第13到達範囲
380 スライス幅データ
380A メッシュID
380B 季節
380C 曜日
380D スライス幅
390 交通データ
390A リンクID
390B 時間帯
390C リンクコスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたナビゲーション装置において、
車両が所定時間内に到達する距離範囲を予測した最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データとを記憶する予測距離範囲データ記憶手段と、
各リンクに対し、各時間帯毎の交通状況に基づいて生成された交通データを記憶する交通データ記憶手段と、
前記最小予測距離範囲データに基づいて、現在の自車位置を中心として前記所定時間毎に車両が到達する最小到達範囲を、現在時刻を基準として設定する最小到達範囲設定手段と、
前記最大予測距離範囲データに基づいて、現在の自車位置を中心として前記所定時間毎に車両が到達する最大到達範囲を、現在時刻を基準として設定する最大到達範囲設定手段と、
前記最小到達範囲と最大到達範囲とに基づいて、現在の自車位置からの距離毎の到達時刻範囲を、現在時刻を基準として予測する到達時刻範囲予測手段と、
各リンクの位置情報と前記到達時刻範囲予測手段によって予測した前記到達時刻範囲とに基づいて、該各リンクに到達する到達時刻範囲を設定するリンク到達時刻範囲設定手段と、
前記各リンクの到達時刻範囲に対応する交通データに基づいて、該各リンクの予測交通データを設定する予測交通データ設定手段と、
各リンクに対して設定された前記予測交通データを用いて、現在の自車位置から目的地までの推奨経路を探索する探索手段と、
を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記予測交通データ設定手段は、前記到達時刻間範囲内の各時間帯に対応する交通データの平均値を前記予測交通データとして設定することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データとは、車両が所定時間内に到達する距離範囲の統計データから算出される各距離範囲の平均値と標準偏差とに基づいて予測されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記予測距離範囲データ記憶手段は、前記最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データとを地図メッシュ毎に記憶しており、
前記最小到達範囲設定手段は、自車位置が含まれる地図メッシュを検出し、検出された地図メッシュに対応する前記最小予測距離範囲データを読み出して、最小到達範囲を設定し、
前記最大到達範囲設定手段は、自車位置が含まれる地図メッシュを検出し、検出された地図メッシュに対応する前記最大予測距離範囲データを読み出して、最大到達範囲を設定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記最小予測距離範囲データと最大予測距離範囲データとは、区域、季節、曜日、祝日又は連休期間毎に生成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のナビゲーション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−58022(P2008−58022A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232406(P2006−232406)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】