説明

ハイブリッド使用のための湿式の発進クラッチを備えるパワートレーン

本発明では、内燃機関(A)及びスタータジェネレータ(C)を備える自動車のパワートレーンに、オイル内で作動する発進クラッチ(B)が設けられている。スタータジェネレータ(C)のロータ(18)は少なくとも間接的にクラッチカバー(17)に支承されており、クラッチカバー(17)は相対回動不能に伝動装置(E)のクラッチハウジング(15)に結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内のパワートレーンであって、内燃機関及びスタータジェネレータを備え、オイル内で作動する発進クラッチにより、回転結合が、内燃機関と、スタータジェネレータ及び伝動装置との間の力伝達経路において形成可能である形式のものに関する。
【0002】
背景技術(FR2862025)から、例えば、湿式に作動するクラッチと、この背景技術においてはつめクラッチの形態の別のクラッチとにより、スタータジェネレータ(又は電気機械又はモータジェネレータ、下の定義を参照のこと)が自動車のパワートレーン内に配置されている解決策が公知である。
【0003】
本発明の課題は、この種のクラッチシステムをさらに改良することである。改良とはこの関連において、パワートレーンがより安価に、かつ省スペースに構成されていることを意味する。
【0004】
この課題は、湿式の発進クラッチがハイブリッド化されたパワートレーンで使用可能であることにより解決される。本発明に係る自動車内のパワートレーンは、内燃機関及びスタータジェネレータを備え、オイル内で作動する発進クラッチにより、回転結合が、内燃機関と、スタータジェネレータ及び伝動装置との間の力伝達経路において形成可能である形式のものにおいて、スタータジェネレータのロータが、少なくとも間接的に、クラッチカバーに支承されており、クラッチカバーが相対回動不能にかつ油密に伝動装置のクラッチハウジングに結合されていることを特徴とする。内燃機関は伝動装置入力軸を、発進クラッチを介して駆動する。伝動装置入力軸には、アシスト及び回生のために使用可能な電動モータ又はスタータジェネレータが存在する。電動モータ、及びクラッチの閉鎖を介して、内燃機関のスタート機能及び再スタート機能が実現される。伝動装置は、オートメイテッドトランスミッション又はトルクコンバータを有しないオートマチックトランスミッションである。
【0005】
本発明の枠内で、スタータジェネレータとはモータジェネレータと解されるべきであり、モータは必ずしもスタータとして機能しない。換言すれば、本発明における自動車は、付加的なスタータ、つまり付加的な始動装置を有していてもよい。スタータジェネレータという概念を本明細書では、これが長年にわたって当業者の間で慣用されているために選択した。電気機械という概念も普及している。
【0006】
以下に述べる態様は、如何に発進クラッチ及び減衰器システムがパワートレーンに統合され得るかを説明する。好ましくは、ロータが相対回動不能にロータキャリアに配置されており、ロータキャリアがクラッチカバーに支承されている。好ましくは、発進クラッチがアウタディスクキャリア及びインナディスクキャリアを有しており、クラッチカバーがロータキャリアとアウタディスクキャリアとの間に配置されており、これにより、スタータジェネレータが発進クラッチのオイル領域から隔離されて、乾いた領域内で作動する。好ましくは、ロータキャリアとクラッチカバーとの間に、シールが配置されている。好ましくは、アウタディスクキャリアとクラッチカバーとの間に、シールが配置されている。好ましくは、アウタディスクキャリアの続きである駆動ボスと、ロータキャリアとの間に、シールが配置されている。好ましくは、ロータキャリア及びアウタディスクキャリアが一体的に形成されている。好ましくは、ロータキャリア及びアウタディスクキャリアが互いにかしめられている。好ましくは、ロータキャリア及びアウタディスクキャリアが互いに溶接されている。好ましくは、発進クラッチとロータとの間又はロータキャリアと発進クラッチとの間の力伝達経路に少なくとも1つの振動減衰器が配置されている。好ましくは、発進クラッチ内の力伝達経路が内側から外側に延びており、インナディスクキャリアがクラッチの駆動側を形成し、アウタディスクキャリアがクラッチの被動側を形成する。好ましくは、インナディスクキャリアの支承が伝動装置入力軸上で行われる。好ましくは、クラッチの支承が伝動装置側で、被動ボスに設けられた差込み歯列を介して伝動装置入力軸上で行われる。好ましくは、実質的にアウタディスクキャリアにより形成されるクラッチケースが、ボス金属薄板から立設された補強舌片により補強される。好ましくは、実質的にアウタディスクキャリアにより形成されるクラッチケースが、ボス金属薄板及びアウタディスクキャリアの溶接により補強される。好ましくは、ロータとクラッチカバーとの間に設けられた軸受に、予圧ばねによりプリロードが印加されており、予圧ばねが伝動装置入力軸上に支持されている。好ましくは、オイル領域の供給のためのオイルポンプが設けられており、ポンプの駆動が、伝動装置入力軸上にプレスばめされたポンプピニオンにより実現されており、伝動装置入力軸が同時に、ポンプピニオンの支承部としても役立つ。好ましくは、内燃機関から発進クラッチへの力伝達経路にねじり振動減衰器が配置されている。好ましくは、ねじり振動減衰器がデュアルマスフライホイールとして形成されている。好ましくは、ねじり振動減衰器がクラッチハウジングの乾室内に配置されている。オイル領域内にスクープ管が配置されており、スクープ管がオイル領域の半径方向外側の領域からオイルをオイルポンプへ導く。好ましくは、オイル領域内に掻取りユニットが配置されている。好ましくは、ピストンに、他方のピストン側の遠心油圧を補償する遠心力領域が配設されている。
【0007】
本発明について以下に図面を参照しながら詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るパワートレーンの概略図である。
【図2】乾室内で作動するスタータジェネレータを備える第1の実施の形態を示す図である。
【図3】乾室内で作動するスタータジェネレータを備える第2の実施の形態を示す図である。
【図4】オイル内で作動するスタータジェネレータを備える第1の実施の形態を示す図である。
【図5】オイル内で作動するスタータジェネレータを備える第2の実施の形態を示す図である。
【図6】オイル内で作動するスタータジェネレータを備える第3の実施の形態を示す図である。
【0009】
図1は、本発明に係るパワートレーンの概略構造を示す。内燃機関Aは、発進クラッチBを介してスタータジェネレータCに結合可能である。スタータジェネレータCは、伝動装置入力軸27を介して伝動装置に結合されている。伝動装置は、オートマチックトランスミッションであるが、本発明に係るパワートレーンでは、トルクコンバータを有しない。スタータジェネレータCにより内燃機関Aを始動するためには、オートマチックトランスミッションにおいて走行段が入れられていてはならない。この回路により、スタータジェネレータCによる運転時、唯一のクラッチ、厳密にいえば発進クラッチBだけで事足りる。
【0010】
図2に示した態様において、駆動ボス8、ひいてはインナディスクキャリア4は、差込み歯列を介して内燃機関Aにより駆動される。内燃機関Aと駆動ボス8との間には、デュアルマスフライホイールとして形成されたねじり振動減衰器1が存在する。アウタディスクキャリア3は、被動側である。湿式クラッチBは、車両が電動モータによらずに発進可能であるように構成されている。
【0011】
スタータジェネレータC(=電動モータ)のロータ18は、ロータキャリア2を介してアウタディスクキャリア3に結合されている。ロータキャリア2とクラッチカバー17との間には、シール部材6(例えばラジアル軸封リング)が存在する。このシール部材6は、アウタディスクキャリア3から流出したクラッチ冷却油が乾室内に浸入することを防止する。乾室内には、ねじり振動減衰器1並びに電動モータのステータ16及びロータ18が存在する。別のシール部材6が、インナディスクキャリア4とロータキャリア2との間に存在する。このシール部材6は、インナディスクキャリアとアウタディスクキャリアとの間に存在する漏油が乾室内に浸入することを防止する。シール部材6はここで、回転数差を有して回転する2つの部品間のシール機能を保証する。
【0012】
クラッチカバー17は、クラッチベルとも呼ばれるクラッチハウジング(Kupplungsglocke)15に相対回動不能かつ油密に結合されている。
【0013】
インナディスクキャリア4又は駆動ボス8は、ころ軸受又はすべり軸受9を介して伝動装置入力軸27上に支承されている。
【0014】
アウタディスクキャリア3とボス金属薄板23とから構成されるクラッチケース(Kupplungskorb)は、左側でころがり軸受5を介してクラッチカバー17上に支承されている。このころがり軸受5は、半径方向力及び軸方向力を受容可能である。択一的には、この箇所に、2つの別個の軸受が使用されてもよい(例えばスラスト軸受及びラジアル軸受、図2には図示せず)。ボス金属薄板23は、伝動装置入力軸27上に支承されている被動ボス26に溶接されている。クラッチケースを伝動装置入力軸27上で支持することにより、付加的なころがり支承部又はすべり支承部は省略可能である。
【0015】
アウタディスクキャリア3及びボス金属薄板23が、支承のために必要な剛性的な構造を形成するように、ボス金属薄板23には補強舌片20が立設されている。補強舌片20はアウタディスクキャリア3を支持し、これに張力を加える。オプションとして、ボス金属薄板23はアウタディスクキャリア3に溶接されてもよい。
【0016】
クラッチカバー17とアウタディスクキャリア3との間の上記ころがり軸受5は、予圧される必要がある。このために、予圧ばね25が、伝動装置入力軸27上にプレスばめされたピニオン31(図3参照)に支持され、被動ボス26を介してクラッチケース及びころがり軸受5にプリロードを加える。
【0017】
伝動装置入力軸27上にプレスばめされたピニオン31は、オイルポンプ24の支承部及び駆動部を形成する。
【0018】
クラッチBのための作動油は、クラッチハウジング15又はポンプカバー内に統合された通路22を介して供給される。オイルは、被動ボス26内に設けられた回転導入部(Drehdurchfuehrung)14を介して、回転するクラッチユニットに導入される。被動ボス26内で、オイルは孔を通して操作ピストン13に向かって流動する。
【0019】
クラッチBの操作に関与するコンポーネントは、伝動装置入力回転数で回転するので、クラッチの伝動装置側での操作に該当する。付加的に、操作力はクラッチケース内で受容される。
【0020】
回転導入部は、付加的にオイルポンプ24へのシール機能を請け負う。それゆえ、オートマチックトランスミッションにおいてこの箇所で一般的なラジアル軸封リングは省略される。
【0021】
冷却油は、クラッチBに伝動装置入力軸27を介して供給される。伝動装置入力軸27内に設けられた横方向孔と、被動ボス26と伝動装置入力軸27との間の橋渡しリング12と、被動ボス26内に設けられた横方向孔とを介して、オイルは遠心力補償ユニットに到達する。この遠心力補償ユニットは、左側で山形又は角状の構成部材により画成され、右側でピストン13により画成される。オイルは、戻しばね11内に設けられた開口を通して本来の遠心力チャンバ10に到達する。角状の構成部材は、半径方向内側の端部又は半径方向内側の左側の壁に通路を有する。遠心力チャンバ10が実質的にオイルで満たされて初めて、遠心力チャンバ10のオイルは、遠心力チャンバ10から、ここでは図示しない通路を介して流出する。ピストン13の右側にもやはりオイルで満たされた空間があるので、ピストン13の両側にあるオイルは、回転するオイル質量の遠心効果の下でそれぞれ油圧を形成する。圧力負荷される面積は実質的に同じ大きさであるので、遠心力チャンバ10により、ピストン13は実質的に力の均衡が取れた状態に維持される。
【0022】
遠心力金属薄板に設けられた開口は、遠心力チャンバ10内のオイルの充填レベルを決定する。後から流入した冷却油は、遠心力金属薄板に設けられた開口を介して流出し、引き続いてインナディスクキャリア4に向かって半径方向で流動し、クラッチを冷却する。
【0023】
アウタディスクキャリア3からの冷却油の流出後、クラッチカバー17内で回転するオイルは、掻取りユニット(Ausschaeleinheit)19により、クラッチBと伝動装置Eとの間の隔壁を通して油受にフィードされる。
【0024】
クラッチユニットの組立ては、以下のように実施される。クラッチBの組立てに際して、ロータキャリア2とクラッチカバー17との間に存在するシール部材6と、クラッチカバー17とアウタディスクキャリア3との間に存在するころがり軸受5とを、場合によっては溶接する。このユニットはもはや解体不能である。クラッチカバー17、ロータキャリア2及びロータ18を含む完全に組み立てられたクラッチを伝動装置入力軸27上に被せ嵌める。引き続いて、クラッチカバー17をクラッチハウジング15の背壁に螺設する。その後、スタータジェネレータCのステータ16を組み付け、ねじり振動減衰器1をクランク軸7に螺設する。最終的に、クラッチBを駆動ボス8上の歯列を介してねじり振動減衰器1に結合し、内燃機関Aとクラッチハウジング15とを互いに螺設する。
【0025】
図3に示した態様において、駆動ボス8、ひいてはインナディスクキャリア4は、差込み歯列を介して内燃機関Aにより駆動される。駆動ボス8と内燃機関Aとの間には、デュアルマスフライホイール1が存在する。駆動ボス8は、インナディスクキャリア4に溶接又はリベット留めされている。アウタディスクキャリア3は、被動側である。湿式クラッチBは、車両が電動モータによらずに発進可能であるように構成されている。
【0026】
電動モータCのロータ18は、ロータキャリア2を介してアウタディスクキャリア3に結合されている。ロータキャリア2とクラッチカバー17との間には、シール部材6(例えばラジアル軸封リング)が存在する。このシール部材6は、アウタディスクキャリア3から流出したクラッチ冷却油が乾室内に浸入することを防止する。乾室内には、ねじり振動減衰器1並びに電動モータCのステータ16及びロータ18が存在する。別のシール部材6(例えばラジアル軸封リング)が、駆動ボス8とロータキャリア2との間に存在する。このシール部材6は、インナディスクキャリア4とアウタディスクキャリア3との間に存在する漏れ油が乾室内に浸入することを防止する。このシール部材6はここで、回転数差を伴って回転する2つの部品間のシール機能を保証する。
【0027】
駆動ボス8は、ころがり軸受又はすべり軸受を介して伝動装置入力軸27上に支承されている。
【0028】
被動ボス26は、差込み歯列を介して伝動装置入力軸27に結合されている。ボス金属薄板23は、被動ボス26に溶接されており、かつ形状結合(formschluessig:形状による束縛)式にアウタディスクキャリア3に結合されている。アウタディスクキャリア3及びボス金属薄板23は、リテーナ部材29により不都合な解離に抗して保持されている。
【0029】
アウタディスクキャリア3、ボス金属薄板23及び被動ボス26からなるクラッチケースは、クラッチカバー17とロータキャリア2との間のころがり軸受5、及び伝動装置入力軸27上の嵌合部を介して支承されている。
【0030】
アウタディスクキャリア3をクラッチカバー17上に支承するころがり軸受5には、被動ボス26と、被動ボス26の背後に存在するリテーナ部材32との間に存在する予圧ばね25(図3には図示せず)を介してプリロードが印加される。
【0031】
ポンプピニオン31は、伝動装置入力軸27上にプレスばめされており、オイルポンプ24の支承部及び駆動部として役立つ。
【0032】
作動油及び冷却油は、クラッチBに、伝動装置入力軸27内に統合された2つの孔(図3には図示せず)を介して供給される。半径方向で延びる孔を介して、冷却油及び作動油は、回転導入部14に向かって流動し、そこで、機関回転数で回転する駆動ボス8に受け渡される。駆動ボス8内で作動油は、半径方向で延びる孔を介して作動シリンダに供給される。冷却油は、やはり半径方向で延びる孔を介して、遠心力補償手段及びクラッチ冷却手段に供給される。遠心力補償手段に流入した余剰のオイルは、遠心力金属薄板内に設けられた、充填レベルを決定する孔を通してクラッチ冷却手段に流入する。
【0033】
ピストン13とインナディスクキャリア4との間の戻しばね11は、作動圧の降下後にクラッチBを開放し、ピストン13をその初期位置へ運動させる。
【0034】
クラッチBの操作手段は機関回転数で回転するので、クラッチBの機関側での操作に該当する。クラッチBの発生した操作力は、駆動ボス8内で受容される。
【0035】
この態様では、回転導入部14が被動ボス26内に統合されていないので、クラッチハウジング15又はポンプハウジングと被動ボスとの間には、ポンプ24が空気を吸い込むことを防止するために付加的なシール部材30が必要となる。
【0036】
クラッチユニットの組立ては、以下のように実施される。クラッチBの組立てに際して、ロータキャリア2とクラッチカバー17との間に存在するシール部材6と、クラッチカバー17とアウタディスクキャリア3との間に存在するころがり軸受5とを、場合によっては溶接する。このユニットはもはや解体不能である。溶接の代わりに、この結合が単に差込み又はかしめにより行われていてもよい。
【0037】
完全に組み立てられたクラッチB及び電気機械Cのロータ18を伝動装置入力軸27上に被せ嵌める。引き続いて、クラッチカバー17をクラッチハウジング15の背壁に螺設する(螺設部は図3には示されていない)。その後、電気機械Cのステータ16を組み付ける。
【0038】
ねじり振動減衰器1をクランク軸7に螺設する。最終的に、クラッチBを駆動ボス8上の歯列を介してねじり振動減衰器1に結合し、内燃機関Aとクラッチハウジング15とを互いに螺設する。
【0039】
図2及び図3の相違は主として、図2ではオイル供給がクラッチハウジング15内に設けられた通路22と、伝動装置入力軸27内に設けられた回転導入部とを介して行われる一方、図3ではオイルが両。
【0040】
図4に示した態様において、駆動ボス8、ひいてはインナディスクキャリア4は、差込み歯列を介して内燃機関Aにより駆動される。内燃機関Aと駆動ボス8との間には、デュアルマスフライホイール1が存在する。アウタディスクキャリア3は、被動側である。湿式クラッチは、車両が電動モータによらずに発進可能であるように構成されている。
【0041】
図2及び図3に示した態様とは異なり、スタータジェネレータCは湿室内に存在する。ねじり振動減衰器1のみが乾室内にある。湿室と乾室とを隔離するために、クラッチカバー17と駆動ボス8との間に、シール部材6が存在する。この解決策は、クラッチカバー17がもはやロータキャリア2とアウタディスクキャリア3との間にないこともその特徴である。図4において、アウタディスクキャリア3は同時にロータキャリアである。
【0042】
クラッチカバー17は、クラッチB及びスタータジェネレータCをねじり振動減衰器1から隔離する。それゆえ、電気機械のロータ18は、アウタディスクキャリアに直接固定可能である。ロータは、軸方向で延びるオイル通路を有しており、クラッチから流出した冷却油を導出可能である。
【0043】
アウタディスクキャリア3は、クラッチカバー17にラジアル軸受及びスラスト軸受を介して支持されており、ボス金属薄板23及び被動ボス26と共にクラッチケースを形成する。ボス金属薄板23は、トルク伝達のために、歯列を介して形状結合式にアウタディスクキャリア3に結合されており、かつ被動ボス26に溶接又はリベット留め(リベット留めは図4には示されていない)されている。被動ボス26は、差込み歯列を介して伝動装置入力軸27に支持される。
【0044】
インナディスクキャリア4又は駆動ボス8は、2つのころがり軸受を介して伝動装置入力軸27上に支承されている。
【0045】
クラッチケース又はアウタディスクキャリア3を支持するスラスト軸受5には、リテーナリングと被動ボス26との間に存在するばね25を介してプリロードが印加される。
【0046】
ポンプピニオン31は、伝動装置入力軸27上にプレスばめされており、オイルポンプ24の支承部及び駆動部として役立つ。
【0047】
作動油及び冷却油は、クラッチBに、伝動装置入力軸27内に統合された2つの孔22,28を介して供給される。半径方向で延びる孔を介して、冷却油及び作動油は、回転導入部14に向かって流動し、そこで、機関回転数で回転する駆動ボス8に受け渡される。駆動ボス8内で作動油は、孔を介して作動シリンダに供給される。冷却油は、やはり孔を介して、遠心力補償手段及びクラッチ冷却手段に流入する。遠心力補償手段に流入した余剰のオイルは、遠心力金属薄板10内に設けられた、充填レベルを決定する孔を通してクラッチ冷却手段に流入する。
【0048】
クラッチの操作手段は機関回転数で回転するので、クラッチBの機関側での操作に該当する。クラッチの発生した操作力は、駆動ボス8内で受容される。
【0049】
ピストン13とインナディスクキャリア4との間の戻しばね11は、作動圧の降下後にクラッチBを開放し、ピストン13をその初期位置へ運動させる。
【0050】
この態様では、回転導入部14が被動ボス26内に統合されていないので、クラッチハウジング15又はポンプハウジングと被動ボス26との間には、ポンプが空気を吸い込むことを防止するために付加的なシール部材30が必要となる。
【0051】
クラッチユニットの組立ては、以下のように実施される。ロータ18を含む完全に組み立てられたクラッチを伝動装置入力軸27上に被せ嵌める。その後、クラッチカバー17をスラスト軸受と共にクラッチハウジング15内に装入する。引き続いて、クラッチカバー17をリテーナ部材を介してクラッチハウジング15内に固定する。その後、クラッチカバー17と駆動ボス8との間にシール部材を取り付ける。そして、電気機械のステータ16を組み付ける。
【0052】
ねじり振動減衰器1をクランク軸に螺設する。最終的に、クラッチBを駆動ボス8上の歯列を介してねじり振動減衰器1に結合し、内燃機関Aとクラッチハウジング15とを互いに螺設する。
【0053】
図5に示した態様において、駆動ボス8、ひいてはインナディスクキャリア4は、差込み歯列を介して内燃機関Aにより駆動される。内燃機関Aと駆動ボスとの間には、フレックスプレート(Flexplatte)33が存在する。アウタディスクキャリア3は、被動側である。湿式クラッチは、車両が電動モータによらずに発進可能であるように構成されている。
【0054】
アウタディスクキャリア3は、振動減衰器35を介して被動ボス26に結合されている。
【0055】
電気機械Cのロータキャリア34は、機関側でころがり軸受を介してクラッチカバー17に支持されている。被動側でロータキャリア34は、形状結合式にボス金属薄板23に結合されている。ボス金属薄板23は、被動ボス26に溶接又はリベット留め(図5には図示せず)されている。
【0056】
図4と同様に、電気機械Cは湿室内に存在する。フレックスプレート33のみが乾室内にある。湿室と乾室とを隔離するために、クラッチカバー17と駆動ボス8との間に、シール部材6が存在する。
【0057】
アウタディスクキャリア3は、振動減衰器35を介して被動ボス26に結合されている。被動ボス26は、差込み歯列を介して伝動装置入力軸27に支持されている。
【0058】
インナディスクキャリア4又は駆動ボス8は、2つのころがり軸受を介して伝動装置入力軸27上に支承されている。
【0059】
ポンプピニオン31(図5には図示せず)は、伝動装置入力軸27上にプレスばめされており、オイルポンプ24の支承部及び駆動部として役立つ。
【0060】
作動油及び冷却油は、クラッチに、伝動装置入力軸27内に統合された2つの孔を介して供給される。半径方向で延びる孔を介して、冷却油及び作動油は、回転導入部に向かって流動し、そこで、機関回転数で回転する駆動ボスに受け渡される。駆動ボス内で作動油は、孔を介して作動シリンダに供給される。冷却油は、やはり孔を通して遠心力補償手段及びクラッチ冷却手段に流入する。遠心力補償手段に流入した余剰のオイルは、遠心力金属薄板内に設けられた、充填レベルを決定する孔を通してクラッチ冷却手段に流入する。
【0061】
クラッチの操作手段は機関回転数で回転するので、クラッチBの機関側での操作に該当する。クラッチの発生した操作力は、駆動ボス8内で受容される。
【0062】
ピストン13と遠心力金属薄板との間の戻しばね11は、作動圧の降下後にクラッチを開放し、ピストン13をその初期位置へ運動させる。戻しばねには、回転導入部から到来したオイルを遠心力チャンバ内に流入させる孔が存在する。
【0063】
回転導入部14が被動ボス26内に統合されていないので、クラッチハウジング15又はポンプハウジングと被動ボス26との間には、ポンプ24が空気を吸い込むことを防止するために付加的なシール部材30が必要となる。
【0064】
クラッチユニットの組立ては、以下のように実施される。ロータキャリア及びロータを含む完全に組み立てられたクラッチを伝動装置入力軸上に被せ嵌める。その後、クラッチカバーをスラスト軸受と共にクラッチハウジング内に装入する。引き続いて、クラッチカバーをリテーナ部材を介してクラッチハウジング内に固定する。その後、シール部材をクラッチカバーと駆動ボスとの間に取り付ける。そして、機械のステータを組み付ける。
【0065】
フレックスプレート33をクランク軸7に螺設する。最終的に、クラッチBを駆動ボス8上の歯列を介してフレックスプレート33に結合し、内燃機関Aとクラッチハウジング15とを互いに螺設する。
【0066】
図5に示した態様とは異なり、図6に示した態様は、付加的にスクープ管(Schoepfrohr)37を有する。ロータ34は、アウタディスクキャリアに結合されており、ボス金属薄板23にリベット留めされている。ロータキャリア及びボス金属薄板23は、アウタディスクキャリア3から流出したオイルが、周速度で回転するオイルリングを形成する溝を形成する。スクープ管37は、クラッチハウジング15に結合されており、オイルの運動エネルギを、排出通路38を介して油受に戻すオイル戻し流を形成するために利用する。
【0067】
アウタディスクキャリア、ロータキャリア及びボス金属薄板は、クラッチケースを形成する。クラッチケースは、伝動装置側でころ軸受を介してクラッチハウジングに支持されており、機関側でころがり軸受を介してクラッチカバーに支持されている。
【0068】
圧油は伝動装置入力軸27に、クラッチハウジング15又はポンプハウジング内に設けられた管路、及び回転導入部14を通して供給される。回転導入部14のシールリングは、同時にポンプ吸込み室をシールし、ポンプが空気を吸い込むことを防止する。同時に、付加的なシール部材が省略される。
【符号の説明】
【0069】
1 ねじり振動減衰器;デュアルマスフライホイール
2 ロータキャリア
3 アウタディスクキャリア
4 インナディスクキャリア
5 ころがり軸受
6 シール部材
7 クランク軸
8 駆動ボス
9 ころがり軸受
10 遠心力領域
11 戻しばね
12 橋渡しリング
13 ピストン
14 回転導入部
15 クラッチハウジング
16 スタータジェネレータ(電気機械)のステータ
17 クラッチカバー
18 スタータジェネレータ(電気機械)のロータ
19 掻取りユニット
20 補強舌片
21 当接ディスク
22 圧油のオイル供給部
23 ボス金属薄板
24 オイルポンプ
25 予圧ばね
26 被動ボス
27 伝動装置入力軸
28 冷却油及び遠心油のオイル供給部
29 リテーナ部材
30 シール部材
31 ポンプピニオン
32 リテーナ部材
34 ロータキャリア
35 振動減衰器
36 ころ軸受
37 スクープ管
38 排出通路
A 内燃機関
B 発進クラッチ
C スタータジェネレータ(電気機械)
E トルクコンバータを有しないオートマチックトランスミッション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車内のパワートレーンであって、内燃機関(A)及びスタータジェネレータ(C)を備え、オイル内で作動する発進クラッチ(B)により、回転結合が、内燃機関(A)と、スタータジェネレータ(C)及び伝動装置との間の力伝達経路において形成可能である形式のものにおいて、スタータジェネレータ(C)のロータ(18,34)が、少なくとも間接的に、クラッチカバー(17)に支承されており、クラッチカバー(17)が相対回動不能にかつ油密に伝動装置(E)のクラッチハウジング(15)に結合されていることを特徴とする、パワートレーン。
【請求項2】
ロータ(18,34)が相対回動不能にロータキャリア(2)に配置されており、ロータキャリア(2)がクラッチカバー(17)に支承されている、請求項1記載のパワートレーン。
【請求項3】
発進クラッチ(B)がアウタディスクキャリア(3)及びインナディスクキャリア(4)を有しており、クラッチカバー(17)がロータキャリア(2)とアウタディスクキャリア(3)との間に配置されており、これにより、スタータジェネレータ(C)が発進クラッチ(B)のオイル領域から隔離されて、乾いた領域内で作動する、請求項1又は2記載のパワートレーン。
【請求項4】
ロータキャリア(2)とクラッチカバー(17)との間に、シール(6)が配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項5】
アウタディスクキャリア(3)とクラッチカバー(17)との間に、シール(6)が配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項6】
アウタディスクキャリア(3)の続きである駆動ボス(8)と、ロータキャリア(2)との間に、シール(6)が配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項7】
ロータキャリア(2)及びアウタディスクキャリア(3)が一体的に形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項8】
ロータキャリア(2)及びアウタディスクキャリア(3)が互いにかしめられている、請求項1から7までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項9】
ロータキャリア(2)及びアウタディスクキャリア(3)が互いに溶接されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項10】
発進クラッチ(B)とロータ(18,34)との間又はロータキャリア(2)と発進クラッチ(B)との間の力伝達経路に少なくとも1つの振動減衰器(35)が配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項11】
発進クラッチ(B)内の力伝達経路が内側から外側に延びており、インナディスクキャリア(4)がクラッチの駆動側を形成し、アウタディスクキャリア(3)がクラッチの被動側を形成する、請求項1から10までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項12】
インナディスクキャリア(4)の支承が伝動装置入力軸(27)上で行われる、請求項1から11までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項13】
クラッチの支承が伝動装置側で、被動ボス(26)に設けられた差込み歯列を介して伝動装置入力軸(27)上で行われる、請求項1から12までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項14】
実質的にアウタディスクキャリア(3)により形成されるクラッチケースが、ボス金属薄板(23)から立設された補強舌片(20)により補強される、請求項1から13までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項15】
実質的にアウタディスクキャリア(3)により形成されるクラッチケースが、ボス金属薄板(23)及びアウタディスクキャリア(3)の溶接により補強される、請求項1から13までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項16】
ロータ(18,34)とクラッチカバー(17)との間に設けられた軸受に、予圧ばね(25)によりプリロードが印加されており、予圧ばね(25)が伝動装置入力軸(27)上に支持されている、請求項1から15までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項17】
オイル領域の供給のためのオイルポンプ(24)が設けられており、ポンプの駆動が、伝動装置入力軸(27)上にプレスばめされたポンプピニオン(31)により実現されており、伝動装置入力軸(27)が同時に、ポンプピニオン(31)の支承部としても役立つ、請求項1から16までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項18】
内燃機関から発進クラッチ(B)への力伝達経路にねじり振動減衰器(1)が配置されている、請求項1から17までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項19】
ねじり振動減衰器(1)がデュアルマスフライホイール(1)として形成されている、請求項18記載のパワートレーン。
【請求項20】
ねじり振動減衰器(1)がクラッチハウジング(15)の乾室内に配置されている、請求項19記載のパワートレーン。
【請求項21】
オイル領域内にスクープ管(37)が配置されており、スクープ管(37)がオイル領域の半径方向外側の領域からオイルをオイルポンプ(24)へ導く、請求項1から20までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項22】
オイル領域内に掻取りユニット(19)が配置されている、請求項1から21までのいずれか1項記載のパワートレーン。
【請求項23】
ピストン(13)に、他方のピストン側の遠心油圧を補償する遠心力領域が配設されている、請求項1から22までのいずれか1項記載のパワートレーン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−516558(P2010−516558A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547526(P2009−547526)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000142
【国際公開番号】WO2008/092426
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany
【Fターム(参考)】