説明

ハイブリッド車およびその制御方法

【課題】電動走行により触媒の温度低下を生じたときでもエミッションの悪化を抑制すると共に車両の良好な動特性を確保する。
【解決手段】モータ走行からハイブリッド走行に移行するためエンジンを始動する際にエンジンの排気管に取り付けられた浄化装置の触媒の温度Tcがその機能を十分に発揮できない閾値Tcref1未満となるときには(S120)、触媒温度Tcやモータ走行を継続した時間であるEV走行時間Tevに基づいてパワー制限値αを設定すると共に(S140)、このパワー制限値αによる出力制限をもってエンジンから出力するエンジン要求パワーPe*を設定し(S190)、このエンジン要求パワーPe*を用いてエンジンや二つのモータを制御する(S200〜S250)。これにより、エミッションの悪化を抑制すると共に車両の良好な動特性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車およびその制御方法に関し、詳しくは、排気を浄化するための触媒を有する浄化装置が排気管に取り付けられた内燃機関からの動力と電動機からの動力とにより走行可能なハイブリッド車およびこうしたハイブリッド車の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車としては、エンジンと、エンジンの出力軸と車軸側とに接続された遊星歯車機構と、この遊星歯車機構に接続されたジェネレータと、車軸側に動力を出力するモータとを備え、エンジンの運転を停止した状態でモータからの動力だけによって走行可能なものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、モータ走行するためにエンジンの運転を停止するときには、ジェネレータによりエンジンに負荷を与えてエンジンの排気系に取り付けられて排気を浄化する触媒コンバータに空気が排出されるのを抑制することによって触媒コンバータ内の触媒が劣化をするのを抑制している。
【特許文献1】特開2002−130001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のハイブリッド車では、モータ走行の継続時間にもよるが、エンジンの運転を再開したときに触媒の温度が低下している場合が生じる。排気の浄化に用いる触媒は、その機能を十分に発揮させるためには機能発揮温度範囲内とする必要があるのが通常であり、モータ走行により触媒の温度が機能発揮温度範囲の下限温度未満になると、エンジンの運転を再開した直後は触媒がその機能を十分に発揮することができず、エミッションが悪化する。この場合、触媒の温度が機能発揮温度範囲内となるまでエンジンに負荷を作用させずに触媒暖機運転とすることも考えられるが、運転者が要求する駆動力を出力するためのパワー不足となり、車両の動特性を著しく低下させてしまう。
【0004】
本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、電動走行により触媒の温度低下を生じたときでもエミッションの悪化を抑制することを目的の一つとする。また、本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、電動走行により触媒の温度低下を生じたときでも車両の良好な動特性を確保することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の第1のハイブリッド車は、
排気を浄化するための触媒を有する浄化装置が排気管に取り付けられた内燃機関からの動力と電動機からの動力とにより走行可能なハイブリッド車であって、
走行に要求される要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記内燃機関の運転を停止した状態で前記電動機からの動力により走行する電動走行を行なった後に前記内燃機関の運転を再開した機関運転再開の際に前記触媒の温度が低下している触媒温度低下条件が成立していないときには前記設定された要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、前記機関運転再開の際に前記触媒温度低下条件が成立しているときには所定の復帰条件が成立するまでは所定の出力制限をもって前記設定された要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し前記所定の復帰条件が成立した以降は前記所定の出力制限を解除して前記設定された要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定する目標パワー設定手段と、
前記内燃機関の運転を停止しているときには前記内燃機関の運転が停止された状態で前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記内燃機関を運転しているときには前記設定された目標パワーが前記内燃機関から出力されると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の第1のハイブリッド車では、内燃機関の運転を停止した状態で電動機からの動力により走行する電動走行を行なった後に内燃機関の運転を再開した機関運転再開の際に内燃機関の排気管に取り付けられた浄化装置が有する触媒の温度が低下している触媒温度低下条件が成立していないときには走行に要求される要求駆動力に基づいて内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、設定した目標パワーが内燃機関から出力されると共に設定した要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。即ち、触媒がその機能を十分に発揮することができる温度にあるときには、エミッションの悪化は生じないから、走行に要求される要求駆動力に基づいて内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、この目標パワーが内燃機関から出力されるようにするのである。これにより、エミッションの悪化を招くことなく車両の良好な動特性を確保することができる。また、機関運転再開の際に触媒温度低下条件が成立しているときには所定の復帰条件が成立するまでは所定の出力制限をもって要求駆動力に基づいて内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、設定した目標パワーが内燃機関から出力されると共に設定した要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。即ち、触媒がその機能を十分に発揮することができる温度より低くなると、エミッションの悪化が生じるから、所定の出力制限をもって目標パワーを設定し、この目標パワーが内燃機関から出力されるようにするのである。所定の出力制限をもって目標パワーを設定して内燃機関を運転するから、出力制限を課さずに目標パワーを設定して内燃機関を運転するものに比してエミッションの悪化を抑制することができ、内燃機関から目標パワーの出力を行なうから、内燃機関を単に触媒暖機運転するものに比して車両の動特性を良好なものとすることができる。さらに、機関運転再開の際に触媒温度低下条件が成立したときでも所定の復帰条件が成立した以降は所定の出力制限を解除して要求駆動力に基づいて内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、目標パワーが内燃機関から出力されると共に設定した要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。即ち、触媒がその機能を十分に発揮することができる温度に至った以降は、エミッションの悪化は生じないから、所定の出力条件を解除するのである。これにより、エミッションの悪化を招くことなく車両の良好な動特性を確保することができる。
【0008】
こうした本発明の第1のハイブリッド車において、運転者の近傍に配置され前記電動走行を指示する電動走行指示スイッチを備え、前記目標パワー設定手段は、前記電動走行指示スイッチがオフとされているときの前記機関運転再開の際には前記触媒温度低下条件の成立に拘わらずに前記設定された要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定する手段である、ものとすることもできる。即ち、電動走行指示スイッチがオンとされている状態で機関運転再開の際に触媒温度低下条件が成立しているときに所定の復帰条件が成立するまでの間だけ所定の出力制限をもって目標パワーを設定するのである。電動走行指示スイッチがオンとされたときは電動走行指示スイッチがオフとされたときに比して電動走行の継続時間が長くなるから、こうした状況により適切に対応することができる。
【0009】
本発明の第2のハイブリッド車は、
排気を浄化するための触媒を有する浄化装置が排気管に取り付けられた内燃機関からの動力と電動機からの動力とにより走行可能なハイブリッド車であって、
前記内燃機関の運転を停止した状態で前記電動機からの動力により走行する電動走行を行なった後に前記内燃機関の運転を再開した機関運転再開の際に前記触媒の温度が低下している触媒温度低下条件が成立していないときには所定の制約を用いて走行に要求される要求駆動力を設定し、前記機関運転再開の際に前記触媒温度低下条件が成立しているときには所定の復帰条件が成立するまでは所定の出力制限をもって前記所定の制約を用いて前記要求駆動力を設定し前記所定の復帰条件が成立した以降は前記所定の出力制限を解除して前記所定の制約を用いて前記要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記内燃機関の間欠運転を伴って前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0010】
この本発明の第2のハイブリッド車では、内燃機関の運転を停止した状態で電動機からの動力により走行する電動走行を行なった後に内燃機関の運転を再開した機関運転再開の際に内燃機関の排気管に取り付けられた浄化装置が有する触媒の温度が低下している触媒温度低下条件が成立していないときには所定の制約を用いて走行に要求される要求駆動力を設定し、設定した要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。即ち、触媒がその機能を十分に発揮することができる温度にあるときには、エミッションの悪化は生じないから、所定の制約を用いて走行に要求される要求駆動力を設定し、この要求駆動力に基づく駆動力により走行するように制御するのである。これにより、エミッションの悪化を招くことなく車両の良好な動特性を確保することができる。また、機関運転再開の際に触媒温度低下条件が成立しているときには所定の復帰条件が成立するまでは所定の出力制限をもって所定の制約を用いて要求駆動力を設定し、設定した要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。即ち、触媒がその機能を十分に発揮することができる温度より低くなると、エミッションの悪化が生じるから、所定の出力制限をもって要求駆動力を設定し、この要求駆動力に基づく駆動力により走行するように制御するのである。所定の出力制限をもって要求駆動力を設定するから、この要求駆動力に基づいて運転される内燃機関からの出力も制限されることになり、出力制限を課さずに要求駆動力を設定して制御するものに比してエミッションの悪化を抑制することができる。また、出力制限が課されていても要求駆動力に基づいて内燃機関も制御されるから、内燃機関を単に触媒暖機運転するものに比して車両の動特性を良好なものとすることができる。さらに、機関運転再開の際に触媒温度低下条件が成立したときでも所定の復帰条件が成立した以降は所定の出力制限を解除して所定の制約を用いて要求駆動力を設定し、設定した要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。即ち、触媒がその機能を十分に発揮することができる温度に至った以降は、エミッションの悪化は生じないから、通常時の制御に戻すのである。これにより、エミッションの悪化を招くことなく車両の良好な動特性を確保することができる。
【0011】
こうした本発明の第2のハイブリッド車において、運転者の近傍に配置され前記電動走行を指示する電動走行指示スイッチを備え、前記要求駆動力設定手段は、前記電動走行指示スイッチがオフとされているときの前記機関運転再開の際には前記触媒温度低下条件の成立に拘わらずに前記所定の制約を用いて前記要求駆動力を設定する手段である、ものとすることもできる。即ち、電動走行指示スイッチがオンとされている状態で機関運転再開の際に触媒温度低下条件が成立しているときに所定の復帰条件が成立するまでの間だけ所定の出力制限をもって要求駆動力を設定するのである。電動走行指示スイッチがオンとされたときは電動走行指示スイッチがオフとされたときに比して電動走行の継続時間が長くなるから、こうした状況により適切に対応することができる。
【0012】
本発明の第1または第2のハイブリッド車において、前記所定の出力制限は、前記触媒の温度が低いほど厳しくなる傾向の制限であるものとすることもできる。これは、触媒の温度が低いほどエミッションが悪化することに基づく。また、前記所定の出力制限は、前記内燃機関の運転を再開する直前の前記電動走行の継続時間が長いほど厳しくなる傾向の制限であるものとすることもできる。これは、電動走行の継続時間が長いほど触媒の温度も低くなることに基づく。更に、前記所定の出力制限は、上限に制限を課す制限であるものとすることもできる。
【0013】
また、本発明の第1または第2のハイブリッド車において、前記触媒温度低下条件は、前記触媒の温度が第1の温度未満となる条件であるものとすることもできる。この場合、前記所定の復帰条件は、前記触媒の温度が前記第1の温度より高い第2温度以上となる条件であるものとすることもできる。ここで、第1の温度としては触媒がその機能を十分に発揮することができる下限の温度やその近傍の温度を用いることができ、第2の温度としては第1の温度より所定温度、例えば30℃や50℃,70℃などの温度だけ高い温度を用いることができる。
【0014】
さらに、本発明の第1または第2のハイブリッド車において、前記触媒温度低下条件は、前記電動走行を第1の時間以上に亘って継続した条件であるものとすることもできる。ここで、第1の時間としては、例えば2分や3分,5分など種々の時間を用いることができる。
【0015】
あるいは、本発明の第1または第2のハイブリッド車において、前記所定の復帰条件は、前記内燃機関の運転を再開したときから第2の時間が経過した条件または所定距離を走行した条件であるものとすることもできる。第2の時間としては、例えば1分や2分など種々の時間を用いることができ、所定距離としては1kmや2km5kmなど種々の距離を用いることができる。
【0016】
また、本発明の第1または第2のハイブリッド車において、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記内燃機関とに動力を入出力する電力動力入出力手段を備えるものとすることもできる。この場合、前記電力動力入出力手段は、前記駆動軸と前記出力軸と第3の軸との3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記第3の軸に動力を入出力する発電機と、を備える手段であるものとすることもできる。
【0017】
本発明の第1のハイブリッド車の制御方法は、
排気を浄化するための触媒を有する浄化装置が排気管に取り付けられた内燃機関からの動力と電動機からの動力とにより走行可能なハイブリッド車の制御方法であって、
(a)前記内燃機関の運転を停止した状態で前記電動機からの動力により走行する電動走行を行なった後に前記内燃機関の運転を再開した機関運転再開の際に前記触媒の温度が低下している触媒温度低下条件が成立していないときには走行に要求される要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、前記機関運転再開の際に前記触媒温度低下条件が成立しているときには所定の復帰条件が成立するまでは所定の出力制限をもって前記要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し前記所定の復帰条件が成立した以降は前記所定の出力制限を解除して前記設定された要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、
(b)前記内燃機関の運転を停止しているときには前記内燃機関の運転が停止された状態で前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記内燃機関を運転しているときには前記設定された目標パワーが前記内燃機関から出力されると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する、
ことを特徴とする。
【0018】
この本発明の第1のハイブリッド車の制御方法では、内燃機関の運転を停止した状態で電動機からの動力により走行する電動走行を行なった後に内燃機関の運転を再開した機関運転再開の際に内燃機関の排気管に取り付けられた浄化装置が有する触媒の温度が低下している触媒温度低下条件が成立していないときには走行に要求される要求駆動力に基づいて内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、設定した目標パワーが内燃機関から出力されると共に設定した要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。即ち、触媒がその機能を十分に発揮することができる温度にあるときには、エミッションの悪化は生じないから、走行に要求される要求駆動力に基づいて内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、この目標パワーが内燃機関から出力されるようにするのである。これにより、エミッションの悪化を招くことなく車両の良好な動特性を確保することができる。また、機関運転再開の際に触媒温度低下条件が成立しているときには所定の復帰条件が成立するまでは所定の出力制限をもって要求駆動力に基づいて内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、設定した目標パワーが内燃機関から出力されると共に設定した要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。即ち、触媒がその機能を十分に発揮することができる温度より低くなると、エミッションの悪化が生じるから、所定の出力制限をもって目標パワーを設定し、この目標パワーが内燃機関から出力されるようにするのである。所定の出力制限をもって目標パワーを設定して内燃機関を運転するから、出力制限を課さずに目標パワーを設定して内燃機関を運転するものに比してエミッションの悪化を抑制することができ、内燃機関から目標パワーの出力を行なうから、内燃機関を単に触媒暖機運転するものに比して車両の動特性を良好なものとすることができる。さらに、機関運転再開の際に触媒温度低下条件が成立したときでも所定の復帰条件が成立した以降は所定の出力制限を解除して要求駆動力に基づいて内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、目標パワーが内燃機関から出力されると共に設定した要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。即ち、触媒がその機能を十分に発揮することができる温度に至った以降は、エミッションの悪化は生じないから、所定の出力条件を解除するのである。これにより、エミッションの悪化を招くことなく車両の良好な動特性を確保することができる。
【0019】
本発明の第2のハイブリッド車の制御方法は、
排気を浄化するための触媒を有する浄化装置が排気管に取り付けられた内燃機関からの動力と電動機からの動力とにより走行可能なハイブリッド車の制御方法であって、
(a)前記内燃機関の運転を停止した状態で前記電動機からの動力により走行する電動走行を行なった後に前記内燃機関の運転を再開した機関運転再開の際に前記触媒の温度が低下している触媒温度低下条件が成立していないときには所定の制約を用いて走行に要求される要求駆動力を設定し、前記機関運転再開の際に前記触媒温度低下条件が成立しているときには所定の復帰条件が成立するまでは所定の出力制限をもって前記所定の制約を用いて前記要求駆動力を設定し、前記所定の復帰条件が成立した以降は前記所定の出力制限を解除して前記所定の制約を用いて前記要求駆動力を設定し、
(b)前記内燃機関の間欠運転を伴って前記設定した要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する、
ことを特徴とする。
【0020】
この本発明の第2のハイブリッド車の制御方法では、内燃機関の運転を停止した状態で電動機からの動力により走行する電動走行を行なった後に内燃機関の運転を再開した機関運転再開の際に内燃機関の排気管に取り付けられた浄化装置が有する触媒の温度が低下している触媒温度低下条件が成立していないときには所定の制約を用いて走行に要求される要求駆動力を設定し、設定した要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。即ち、触媒がその機能を十分に発揮することができる温度にあるときには、エミッションの悪化は生じないから、所定の制約を用いて走行に要求される要求駆動力を設定し、この要求駆動力に基づく駆動力により走行するように制御するのである。これにより、エミッションの悪化を招くことなく車両の良好な動特性を確保することができる。また、機関運転再開の際に触媒温度低下条件が成立しているときには所定の復帰条件が成立するまでは所定の出力制限をもって所定の制約を用いて要求駆動力を設定し、設定した要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。即ち、触媒がその機能を十分に発揮することができる温度より低くなると、エミッションの悪化が生じるから、所定の出力制限をもって要求駆動力を設定し、この要求駆動力に基づく駆動力により走行するように制御するのである。所定の出力制限をもって要求駆動力を設定するから、この要求駆動力に基づいて運転される内燃機関からの出力も制限されることになり、出力制限を課さずに要求駆動力を設定して制御するものに比してエミッションの悪化を抑制することができる。また、出力制限が課されていても要求駆動力に基づいて内燃機関も制御されるから、内燃機関を単に触媒暖機運転するものに比して車両の動特性を良好なものとすることができる。さらに、機関運転再開の際に触媒温度低下条件が成立したときでも所定の復帰条件が成立した以降は所定の出力制限を解除して所定の制約を用いて要求駆動力を設定し、設定した要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。即ち、触媒がその機能を十分に発揮することができる温度に至った以降は、エミッションの悪化は生じないから、通常時の制御に戻すのである。これにより、エミッションの悪化を招くことなく車両の良好な動特性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の第1実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。第1実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0023】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃料室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する触媒(例えば、三元触媒など)134aを有する浄化装置134を介して外気へ排出される。
【0024】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、例えばクランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温,燃焼室内に取り付けられた圧力センサ143からの筒内圧力Pin,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からのエアフローメータ信号AF,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,浄化装置134に取り付けられた触媒温度センサ134bからの触媒温度Tc,空燃比センサ135aからの空燃比AF,酸素センサ135bからの酸素信号などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ち、エンジン22の回転数Neも計算している。
【0025】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0026】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0027】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算すると共にこのバッテリ50の残容量(SOC)と温度センサ51により検出されたバッテリ50の電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい上下限値であるバッテリ50の入出力制限Win,Woutも演算している。
【0028】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0029】
こうして構成された第1実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードは、充放電運転モードにおけるバッテリ50の充放電を行なわない状態であるから、充放電運転モードとして考えることができる。
【0030】
次に、こうして構成された第1実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にモータ運転モードによりエンジン22の運転を停止した状態でモータMG2からの動力だけで走行するモータ走行からエンジン22を始動して充放電運転モードによるハイブリッド走行に移行したときの動作について説明する。図3は、モータ走行からハイブリッド走行に移行したときにハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。なお、エンジン22の運転を停止した状態では、ハイブリッド用電子制御ユニット70により図示しないモータ走行ルーチンにより、図6の要求トルク設定用マップを用いて後述するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて設定される要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aにモータMG2から出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とが制御される。
【0031】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,触媒温度Tc,EV走行時間Tev,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されるモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて計算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、触媒温度Tcは、触媒温度センサ134bにより検出されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbと残容量(SOC)とに基づいて演算されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。EV走行時間Tevは、ハイブリッド走行に移行する直前のモータ走行を継続した時間を図示しない計時タイマにより計時して入力するものとした。
【0032】
次に、出力制限フラグFpの値を調べる(ステップS110)。出力制限フラグFpは、モータ走行により浄化装置134の触媒134aがその機能を十分に発揮することができる下限温度未満になることによって出力制限を課すか否かの状態を示すものであり、このルーチンにより設定される。エンジン22が始動された直後にこの駆動制御ルーチンが実行されたときには、初期値として値0が設定されている。いま、エンジン22が始動された直後に触媒134aの温度が低い状態のときを考える。このとき、出力制限フラグFpは値0となっている。
【0033】
出力制限フラグFpが値0のときには、触媒温度Tcが閾値Tcref1未満であるか否かを判定する(ステップS120)。閾値Tcref1は、浄化装置134の触媒134aがその機能を十分に発揮できる温度範囲にあるか否かを判定するのに用いられる閾値でありその温度範囲の下限温度やその近傍の温度を用いることができる。いま、触媒134aの温度が低い状態のときを考えているから、触媒温度Tcは閾値Tcref1未満であると判定される。すると、出力制限フラグFpに値1をセットし(ステップS130)、触媒温度TcとEV走行時間Tevとに基づいてパワー制限値αを設定する(ステップS140)。パワー制限値αは、エンジン22から出力するパワーを制限するためにエンジン22から出力可能な最大パワーPmaxに乗じる補正係数であり、値0から値1の範囲で設定され、触媒温度Tcが低いほど小さく且つEV走行時間が長いほど小さく設定される。第1実施例では、パワー制限値αは、触媒温度TcとEV走行時間Tevとパワー制限値αとの関係を予め定めてパワー制限値設定用マップとしてROM74に記憶しておき、触媒温度TcとEV走行時間Tevとが与えられるとマップから対応するパワー制限値αを導出して設定するものとした。触媒温度Tcとパワー制限値αとの関係の一例を図4に、EV走行時間Tevとパワー制限値αとの関係の一例を図5に示す。なお、パワー制限値αは、エンジン22の始動直後に最初に駆動制御ルーチンが実行されるときには、初期値として何ら出力制限を課すものではない値1がセットされている。
【0034】
続いて、触媒温度Tcを閾値Tcref1より若干高い温度(例えば、50℃程度高い温度)として設定された閾値Tcref2と比較する(ステップS150)。触媒134aの温度が低い状態のときを考えているから、この判定では触媒温度Tcは閾値Tcref2未満と判定される。このように判定されると、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*と車両に要求される車両要求パワーP*とを設定する(ステップS180)。要求トルクTr*は、第1実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図6に要求トルク設定用マップの一例を示す。車両要求パワーP*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じることによって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ることによって求めることができる。
【0035】
次に、設定した車両要求パワーP*とエンジン22から出力可能な最大パワーPmaxにパワー制限値αを乗じた値とのうち小さい方をエンジン要求パワーPe*として設定し(ステップS190)、設定したエンジン要求パワーPe*に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とからなる目標運転ポイントを設定する(ステップS200)。このように、エンジン要求パワーPe*を設定することにより、触媒温度TcとEV走行時間Tevと応じてエンジン要求パワーPe*を制限することができる。なお、目標運転ポイントの設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図7に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
【0036】
続いて、設定した目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(Nm2/Gr)と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づいて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS210)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図8に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0037】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (1)
Tm1*=前回Tm1*+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0038】
こうしてモータMG1の目標回転数Nm1*とトルク指令Tm1*とを計算すると、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと計算したモータMG1のトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmin,Tmaxを次式(3)および式(4)により計算すると共に(ステップS220)、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρを用いてモータMG2から出力すべきトルクとしての仮モータトルクTm2tmpを式(5)により計算し(ステップS230)、計算したトルク制限Tmin,Tmaxで仮モータトルクTm2tmpを制限した値としてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS240)。このようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定することにより、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力する要求トルクTr*を、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で制限したトルクとして設定することができる。なお、式(5)は、前述した図8の共線図から容易に導き出すことができる。
【0039】
Tmin=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (3)
Tmax=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (4)
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (5)
【0040】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS250)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における燃料噴射制御や点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0041】
以上、エンジン22が始動された直後で触媒134aの温度が低い状態のときに最初に駆動制御ルーチンが実行されたときについて説明した。次回以降に駆動制御ルーチンが実行されると、ステップS110では出力制限フラグFpは値1であると判定されるから、触媒温度Tcが閾値Tcref2以上となるまで、エンジン22の始動直後の触媒温度TcとEV走行時間に応じて設定されたパワー制限値αによる出力制限をもって設定されたエンジン要求パワーPe*を用いたエンジン22やモータMG1,MG2の制御が実行される。
【0042】
出力制限をもって設定されたエンジン要求パワーPe*を用いたエンジン22やモータMG1,MG2の制御が繰り返し実行されているうちに触媒温度Tcが閾値Tcref2以上になると、出力制限フラグFpに値0をセットすると共に(ステップS160)、パワー制限値αに値1をセットし(ステップS170)、値1のパワー制限値αを用いてステップS180以降の処理を実行して駆動制御ルーチンを終了する。即ち、触媒134aがその機能を十分に発揮することができる下限温度未満となることに伴う出力制限を解除して通常の駆動制御を実行するのである。
【0043】
なお、エンジン22が始動された直後の触媒134aの温度Tcが十分に高いとき、即ち、エンジン22を始動後に最初に駆動制御ルーチンを実行したときに触媒温度Tcが閾値Tcref1以上のときには、何ら出力制限を課すものではない初期値の値1がセットされているパワー制限値αを用いてエンジン要求パワーPe*が設定され、このエンジン要求パワーPe*を用いてステップS180以降の処理によりエンジン22やモータMG1,MG2が制御される。
【0044】
以上説明した第1実施例のハイブリッド自動車20によれば、モータ走行からハイブリッド走行に移行する際にエンジン22が始動された直後の触媒134aの温度Tcが低くなったために触媒134aがその機能を十分に発揮できない状態にあるときには、出力制限をもってエンジン要求パワーPe*を設定すると共にこのエンジン要求パワーPe*を用いてエンジン22やモータMG1,MG2を制御するから、こうした出力制限を課さない制御に比してエミッションの悪化を抑制することができ、エンジン22を単に触媒暖機運転するものに比して車両の良好な動特性を確保することができる。しかも、触媒温度TcやEV走行時間Tevに応じてパワー制限値αを設定して出力制限するから、触媒温度TcやEV走行時間Tevに応じてより適切に出力制限することができる。また、出力制限をもって設定したエンジン要求パワーPe*を用いたエンジン22やモータMG1,MG2の制御を実行しているうちに触媒温度Tcが閾値Tcref2以上となると、エミッションの悪化は生じなくなるから、こうした出力制限を課した制御を解除し、出力制限を課さないエンジン要求パワーPe*を用いたエンジン22やモータMG1,MG2の制御(通常の駆動制御)を実行するから、エミッションの悪化を招くことなく車両の良好な動特性を迅速に確保することができる。さらに、モータ走行からハイブリッド走行に移行する際にエンジン22が始動された直後の触媒134aがその機能を十分に発揮できる温度にある状態のときには、エミッションの悪化は生じないから、出力制限を課すことなくエンジン要求パワーPe*を設定すると共にこのエンジン要求パワーPe*を用いてエンジン22やモータMG1,MG2を制御することにより、エミッションの悪化を招くことなく車両の良好な動特性を確保することができる。
【0045】
第1実施例のハイブリッド自動車20では、触媒温度TcとEV走行時間Tevとに基づいてパワー制限値αを設定するものとしたが、触媒温度Tcだけに基づいてパワー制限値αを設定するものとしてもよいし、EV走行時間Tevだけに基づいてパワー制限値αを設定するものとしてもよいし、触媒温度TcにもEV走行時間Tevにも無関係に所定値(例えば、0.7などの値)をパワー制限値αとして設定するものとしても構わない。
【0046】
第1実施例のハイブリッド自動車20では、車両要求パワーP*とエンジン22から出力可能な最大パワーPmaxにパワー制限値αを乗じた値とのうち小さい方をエンジン要求パワーPe*として設定することにより出力制限を課すものとしたが、車両要求パワーP*にパワー制限値αを乗じることによりエンジン要求パワーPe*を設定して出力制限を課すものとしてもよい。
【0047】
第1実施例のハイブリッド自動車20では、モータ走行からハイブリッド走行に移行するためにエンジン22が始動された直後に検出された触媒温度Tcが閾値Tcref1未満のときにパワー制限値αを用いて出力制限を課し、その後に検出された触媒温度Tcが閾値Tcref2以上に至ったときに出力制限を解除するものとしたが、出力制限を課してから所定時間(例えば、1分や2分)を経過したときに出力制限を解除するものとしても構わない。
【0048】
第1実施例のハイブリッド自動車20では、モータ走行からハイブリッド走行に移行するためにエンジン22が始動された直後に検出された触媒温度Tcが閾値Tcref1未満のときにパワー制限値αを用いて出力制限を課し、その後に検出された触媒温度Tcが閾値Tcref2以上に至ったときに出力制限を解除するものとしたが、運転席近傍に配置されてモータ走行を指示するモータ走行スイッチを有し、モータ走行スイッチがオンされたときには、モータ走行からハイブリッド走行に移行するためにエンジン22が始動された直後に検出された触媒温度Tcが閾値Tcref1未満のときにパワー制限値αを用いて出力制限を課し、その後に検出された触媒温度Tcが閾値Tcref2以上に至ったときに出力制限を解除するものとし、モータ走行スイッチがオフされたときには、モータ走行からハイブリッド走行に移行するためにエンジン22が始動された直後に検出された触媒温度Tcに拘わらず、パワー制限値αを用いた出力制限を行なわないものとしてもよい。
【0049】
第1実施例のハイブリッド自動車20では、浄化装置134は触媒温度センサ134bを有し、モータ走行からハイブリッド走行に移行するためにエンジン22が始動された直後に触媒温度センサ134bによって検出された触媒温度Tcが閾値Tcref1未満のときにパワー制限値αを用いて出力制限を課し、その後に触媒温度センサ134bによって検出された触媒温度Tcが閾値Tcref2以上に至ったときに出力制限を解除するものとしたが、触媒温度センサ134bを備えず、EV走行時間Tevに基づいてパワー制限値αを用いる出力制限を課したり、その後の経過時間に基づいて出力制限を解除するものとしても構わない。この場合、図3の駆動制御ルーチンに代えて図9の駆動制御ルーチンを実行すればよい。この図9の駆動制御ルーチンでは、触媒温度Tc以外のデータを入力し(ステップS100B)、出力制限フラグFpが値0のときには、EV走行時間Tevを閾値Tevref(例えば、3分や4分など)と比較し(ステップS120B)、EV走行時間Tevが閾値Tevref以上のときに触媒134aがその機能を十分に発揮できない状態に至っていると判断し、EV走行時間Tevに基づいてパワー制限値αを設定し(ステップS130,S140)、出力制限をもって設定したエンジン要求パワーPe*を用いたエンジン22やモータMG1,MG2の制御を実行する。そして、こうした出力制限を開始してから所定時間(例えば、1分や2分)を経過したか否かを判定し(ステップS150B)、この所定時間を経過したときに触媒134aがその機能を十分に発揮できる状態に至っていると判断して、出力制限を解除して(ステップS160,S170)、出力制限を課さないエンジン要求パワーPe*を用いたエンジン22やモータMG1,MG2の制御(通常の駆動制御)を実行する。こうした変形例は、モータ走行の継続時間であるEV走行時間Tevが長いと触媒134aの温度Tcも低下することに基づく。こうした変形例でも、エミッションの悪化を抑制することができると共に車両の動特性を確保することができる。
【実施例2】
【0050】
次に、本発明の第2実施例としてのハイブリッド自動車20Bについて説明する。第2実施例のハイブリッド自動車20Bは、第1実施例のハイブリッド自動車20と同一のハード構成をしている。したがって、重複した説明を回避するため、第2実施例のハイブリッド自動車20Bのハード構成に第1実施例のハイブリッド自動車20のハード構成と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。第2実施例のハイブリッド自動車20Bでは、モータ走行からハイブリッド走行に移行したときには、ハイブリッド用電子制御ユニット70は図3の駆動制御ルーチンに代えて図10の駆動制御ルーチンを実行する。なお、第2実施例のハイブリッド自動車20Bでも、エンジン22の運転を停止した状態では、ハイブリッド用電子制御ユニット70により図示しないモータ走行ルーチンにより、図6の要求トルク設定用マップを用いて後述するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて設定される要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aにモータMG2から出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とが制御される。
【0051】
図10の駆動制御ルーチンを実行すると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、図3の駆動制御ルーチンと同様に、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,触媒温度Tc,EV走行時間Tev,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS300)。そして、駆動制限フラグFtの値を調べる(ステップS310)。ここで、駆動制限フラグFtは、出力制限フラグFpと同様に、モータ走行により浄化装置134の触媒134aがその機能を十分に発揮することができる下限温度未満になることによって出力制限を課すか否かの状態を示すものであり、このルーチンにより設定される。いま、エンジン22が始動された直後の触媒134aの温度が低い状態のときを考えれば、駆動制限フラグFtは値0となっている。
【0052】
駆動制限フラグFtが値0のときには、触媒温度Tcが閾値Tcref1未満であるか否かを判定し(ステップS320)、触媒温度Tcが閾値Tcref1未満であるときには、駆動制限フラグFtに値1をセットすると共に(ステップS330)、触媒温度TcとEV走行時間Tevとに基づいて駆動制限値βを設定する(ステップS340)。ここで、閾値Tcref1は第1実施例の閾値Tcref1と同一のものである。また、駆動制限値βは、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべきトルクを制限するためにそのときの車速Vに対応して設定可能な要求トルクTr*の最大値である許容トルクTmaxに乗じる補正係数であり、値0から値1の範囲で設定され、触媒温度Tcが低いほど小さく且つEV走行時間が長いほど小さく設定される。第2実施例では、駆動制限値βは、触媒温度TcとEV走行時間Tevと駆動制限値βとの関係を予め定めて駆動制限値設定用マップとしてROM74に記憶しておき、触媒温度TcとEV走行時間Tevとが与えられるとマップから対応する駆動制限値βを導出して設定するものとした。触媒温度Tcと駆動制限値βとの関係の一例を図11に、EV走行時間Tevと駆動制限値βとの関係の一例を図12に示す。なお、駆動制限値βは、エンジン22の始動直後に最初に駆動制御ルーチンが実行されるときには、初期値として何ら駆動制限を課すものではない値1がセットされている。続いて、触媒温度Tcを閾値Tcref1より若干高い温度(例えば、50℃程度高い温度)として設定された閾値Tcref2と比較し(ステップS350)、触媒温度Tcが閾値Tcref2未満のときには、アクセル開度Accと車速Vに対して図6の要求トルク設定用マップから導出される要求トルクTr*を仮要求トルクTrtmpとして設定すると共に車速Vでアクセル開度Accを100%としたときに図6の要求トルク設定用マップから導出される要求トルクTr*を許容トルクTmaxとして設定し(ステップS380)、設定した仮要求トルクTrtmpと許容トルクTmaxに駆動制限値βを乗じた値とのうち小さい方を要求トルクTr*として設定し(ステップS390)、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和としてエンジン22に要求されるエンジン要求パワーPe*を設定し(ステップS395)、この設定したエンジン要求パワーPe*を用いて図3の駆動制御ルーチンのステップS200〜S250の処理と同一の処理のステップS400〜S450の処理を実行して本ルーチンを終了する。そして、次回以降にこの駆動制御ルーチンが実行されたときには、触媒温度Tcが閾値Tcref2以上となるまでは、エンジン22の始動直後の触媒温度TcとEV走行時間に応じて設定された駆動制限値βによる駆動制限をもって設定された要求トルクTr*を用いたエンジン22やモータMG1,MG2の制御が実行される。こうした制御は、モータ走行からハイブリッド走行に移行する際にエンジン22が始動された直後の触媒134aの温度Tcが低くなったために触媒134aがその機能を十分に発揮できない状態にあるときには、駆動制限をもって駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定し、この要求トルクTr*を用いてエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するものとなる。このように、駆動制限をもって要求トルクTr*を設定すると共にこの要求トルクTr*を用いてエンジン22とモータMG1,MG2とを制御することにより、駆動制限を課さずに要求トルクTr*を設定すると共にこの要求トルクTr*を用いてエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するものに比して、エミッションの悪化を抑制することができる。また、エンジン22を単に触媒暖機運転するものに比して車両の良好な動特性を確保することができる。
【0053】
駆動制限をもって設定された要求トルクTr*を用いてエンジン22やモータMG1,MG2の制御を繰り返し実行しているうちに触媒温度Tcが閾値Tcref2以上になると、駆動制限フラグFtに値0をセットすると共に(ステップS360)、駆動制限値βに値1をセットし(ステップS370)、値1の駆動制限値βを用いてステップS380以降の処理を実行して駆動制御ルーチンを終了する。即ち、触媒134aがその機能を十分に発揮することができる下限温度未満となることに伴う駆動制限を解除して通常の駆動制御を実行するのである。これにより、エミッションの悪化を招くことなく車両の良好な動特性を迅速に確保することができる。なお、エンジン22が始動された直後の触媒134aの温度Tcが十分に高いとき、即ち、エンジン22を始動後に最初に駆動制御ルーチンを実行したときに触媒温度Tcが閾値Tcref1以上のときには、何ら駆動制限を課すものではない初期値の値1がセットされている駆動制限値βを用いて要求トルクTr*が設定され、この要求トルクTr*を用いてステップS380以降の処理によりエンジン22やモータMG1,MG2が制御される。
【0054】
以上説明した第2実施例のハイブリッド自動車20Bによれば、モータ走行からハイブリッド走行に移行する際にエンジン22が始動された直後の触媒134aの温度Tcが低くなったために触媒134aがその機能を十分に発揮できない状態にあるときには、駆動制限をもって要求トルクTr*を設定すると共にこの要求トルクTr*を用いてエンジン22やモータMG1,MG2を制御するから、こうした駆動制限を課さない制御に比してエミッションの悪化を抑制することができ、エンジン22を単に触媒暖機運転するものに比して車両の良好な動特性を確保することができる。しかも、触媒温度TcやEV走行時間Tevに応じて駆動制限値βを設定して駆動制限するから、触媒温度TcやEV走行時間Tevに応じてより適切に駆動制限することができる。また、駆動制限をもって設定した要求トルクTr*を用いたエンジン22やモータMG1,MG2の制御を実行しているうちに触媒温度Tcが閾値Tcref2以上となると、エミッションの悪化は生じなくなるから、こうした駆動制限を課した制御を解除し、駆動制限を課さないエンジン要求パワーPe*を用いたエンジン22やモータMG1,MG2の制御(通常の駆動制御)を実行するから、エミッションの悪化を招くことなく車両の良好な動特性を迅速に確保することができる。さらに、モータ走行からハイブリッド走行に移行する際にエンジン22が始動された直後の触媒134aがその機能を十分に発揮できる温度にある状態のときには、エミッションの悪化は生じないから、駆動制限を課すことなく要求トルクTr*を設定すると共にこの要求トルクTr*を用いてエンジン22やモータMG1,MG2を制御することにより、エミッションの悪化を招くことなく車両の良好な動特性を確保することができる。
【0055】
第2実施例のハイブリッド自動車20Bでは、触媒温度TcとEV走行時間Tevとに基づいて駆動制限値βを設定するものとしたが、触媒温度Tcだけに基づいて駆動制限値βを設定するものとしてもよいし、EV走行時間Tevだけに基づいて駆動制限値βを設定するものとしてもよいし、触媒温度TcにもEV走行時間Tevにも無関係に所定値(例えば、0.7などの値)を駆動制限値βとして設定するものとしても構わない。
【0056】
第2実施例のハイブリッド自動車20Bでは、仮要求トルクTrtmpと車速Vでアクセル開度Accを100%としたときに図6の要求トルク設定用マップにより導出される要求トルクTr*である許容トルクTmax2に駆動制限値βを乗じた値とのうち小さい方を要求トルクTr*として設定することにより駆動制限を課すものとしたが、アクセル開度Accと車速Vとに対して図6の要求トルク設定用マップから導出される要求トルクTr*の値に駆動制限値βを乗じることにより要求トルクTr*を設定して駆動制限を課すものとしてもよい。
【0057】
第2実施例のハイブリッド自動車20Bでは、モータ走行からハイブリッド走行に移行するためにエンジン22が始動された直後に検出された触媒温度Tcが閾値Tcref1未満のときに駆動制限値βを用いて駆動制限を課し、その後に検出された触媒温度Tcが閾値Tcref2以上に至ったときに駆動制限を解除するものとしたが、駆動制限を課してから所定時間(例えば、1分や2分)を経過したときに駆動制限を解除するものとしても構わない。
【0058】
第2実施例のハイブリッド自動車20では、モータ走行からハイブリッド走行に移行するためにエンジン22が始動された直後に検出された触媒温度Tcが閾値Tcref1未満のときに駆動制限値βを用いて駆動制限を課し、その後に検出された触媒温度Tcが閾値Tcref2以上に至ったときに駆動制限を解除するものとしたが、運転席近傍に配置されてモータ走行を指示するモータ走行スイッチを有し、モータ走行スイッチがオンされたときには、モータ走行からハイブリッド走行に移行するためにエンジン22が始動された直後に検出された触媒温度Tcが閾値Tcref1未満のときに駆動制限値βを用いて駆動制限を課し、その後に検出された触媒温度Tcが閾値Tcref2以上に至ったときに駆動制限を解除するものとし、モータ走行スイッチがオフされたときには、モータ走行からハイブリッド走行に移行するためにエンジン22が始動された直後に検出された触媒温度Tcに拘わらず、駆動制限値βを用いた出力制限を行なわないものとしてもよい。
【0059】
第2実施例のハイブリッド自動車20Bでは、浄化装置134に触媒温度センサ134bを有し、モータ走行からハイブリッド走行に移行するためにエンジン22が始動された直後に触媒温度センサ134bによって検出された触媒温度Tcが閾値Tcref1未満のときに駆動制限値βを用いて駆動制限を課し、その後に触媒温度センサ134bによって検出された触媒温度Tcが閾値Tcref2以上に至ったときに駆動制限を解除するものとしたが、触媒温度センサ134bを備えず、EV走行時間Tevに基づいて駆動制限値βを用いる駆動制限を課したり、その後の経過時間に基づいて駆動制限を解除するものとしても構わない。この場合、図10の駆動制御ルーチンに代えて図13の駆動制御ルーチンを実行すればよい。この図13の駆動制御ルーチンでは、触媒温度Tc以外のデータを入力し(ステップS300B)、駆動制限フラグFtが値0のときには、EV走行時間Tevを閾値Tevref(例えば、3分や4分など)と比較し(ステップS320B)、EV走行時間Tevが閾値Tevref以上のときに触媒134aがその機能を十分に発揮できない状態に至っていると判断し、EV走行時間Tevに基づいて駆動制限値βを設定し(ステップS330,S340)、駆動制限をもって設定した要求トルクTr*を用いたエンジン22やモータMG1,MG2の制御を実行する。そして、こうした駆動制限を開始してから所定時間(例えば、1分や2分)を経過したか否かを判定し(ステップS350B)、この所定時間を経過したときに触媒134aがその機能を十分に発揮できる状態に至っていると判断して、駆動制限を解除して(ステップS360,S370)、駆動制限を課さない要求トルクTr*を用いたエンジン22やモータMG1,MG2の制御(通常の駆動制御)を実行する。こうした変形例は、モータ走行の継続時間であるEV走行時間Tevが長いと触媒134aの温度Tcも低下することに基づく。こうした変形例でも、エミッションの悪化を抑制することができると共に車両の動特性を確保することができる。
【0060】
第1実施例や第2実施例のハイブリッド自動車20,20Bでは、触媒温度Tcを触媒温度センサ134bにより直接検出するものとしたが、エンジン22の排気温度から触媒温度Tcを推定するものとしてもよいし、エンジン22の運転状態から触媒温度Tcを推定するものとしてもよい。
【0061】
第1実施例や第2実施例のハイブリッド自動車20,20Bでは、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図14の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図14における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
【0062】
第1実施例や第2実施例のハイブリッド自動車20,20Bでは、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図15の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
【0063】
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、排気を浄化するための触媒を有する浄化装置が排気管に取り付けられた内燃機関からの動力と電動機からの動力とにより走行可能なハイブリッド車であれば如何なる構成のハイブリッド車の形態としても構わない。さらに、こうしたハイブリッド車の制御方法の形態としてもよい。
【0064】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。第1実施例では、触媒134aを有する浄化装置134が排気管に取り付けられたエンジン22が「内燃機関」に相当し、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して走行用の動力を出力するモータMG2が「電動機」に相当し、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定する図3の駆動制御ルーチンのステップS180の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「要求駆動力設定手段」に相当し、モータ走行からハイブリッド走行に移行する際にエンジン22が始動された直後の触媒134aがその機能を十分に発揮できる温度にある状態のときには出力制限を課すことなくエンジン要求パワーPe*を設定し、モータ走行からハイブリッド走行に移行する際にエンジン22が始動された直後の触媒134aの温度Tcが低くなったために触媒134aがその機能を十分に発揮できない状態にあるときには出力制限をもってエンジン要求パワーPe*を設定し、出力制限をもって設定したエンジン要求パワーPe*を用いたエンジン22やモータMG1,MG2の制御を実行しているうちに触媒温度Tcが閾値Tcref2以上となったときに出力制限を課した制御を解除すると共に出力制限を課さずにエンジン要求パワーPe*を設定する図3の駆動制御ルーチンのステップS110からS190の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「目標パワー設定手段」に相当し、エンジン22の運転を停止した状態では図6の要求トルク設定用マップを用いてアクセル開度Accと車速Vとに基づいて設定される要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aにモータMG2から出力されるようエンジン22とモータMG1とモータMG2とを制御する図示しないモータ走行ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70およびエンジン22を運転しているときにはエンジン要求パワーPe*がエンジン22から出力されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*を駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するようエンジン22とモータMG1とモータMG2とを制御する図3の駆動制御ルーチンのステップS200からS250の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70およびこのハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御するエンジンECU24,ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりモータMG1およびモータMG2を駆動制御するモータECU40が「制御手段」に相当する。第2実施例では、触媒134aを有する浄化装置134が排気管に取り付けられたエンジン22が「内燃機関」に相当し、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して走行用の動力を出力するモータMG2が「電動機」に相当し、モータ走行からハイブリッド走行に移行する際にエンジン22が始動された直後の触媒134aがその機能を十分に発揮できる温度にある状態のときには駆動制限を課すことなくアクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定し、モータ走行からハイブリッド走行に移行する際にエンジン22が始動された直後の触媒134aの温度Tcが低くなったために触媒134aがその機能を十分に発揮できない状態にあるときには触媒温度TcとEV走行時間Tevとによって設定される駆動制限値βによる駆動制限をもって要求トルクTr*を設定し、駆動制限をもって設定した要求トルクTr*を用いたエンジン22やモータMG1,MG2の制御を実行しているうちに触媒温度Tcが閾値Tcref2以上となったときに駆動制限を課した制御を解除すると共に駆動制限を課さずに要求トルクTr*を設定する図10の駆動制御ルーチンのステップS310からS390の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「要求駆動力設定手段」に相当し、エンジン22の間欠運転を伴ってバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*を駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するようエンジン22とモータMG1とモータMG2とを制御する図10の駆動制御ルーチンのステップS395からS450の処理および充放電運転モードやモータ運転モードを用いて制御するハイブリッド用電子制御ユニット70およびこのハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御するエンジンECU24,ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりモータMG1およびモータMG2を駆動制御するモータECU40が「制御手段」に相当する。また、動力分配統合機構30およびモータMG1や対ロータ電動機230が「電力動力入出力手段」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当する。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0065】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、ハイブリッド車の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】モータ走行からハイブリッド走行に移行したときにハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】触媒温度Tcとパワー制限値αとの関係の一例を示す説明図である。
【図5】EV走行時間Tevとパワー制限値αとの関係の一例を示す説明図である。
【図6】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図7】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定する様子を示す説明図である。
【図8】動力分配統合機構30の回転要素を力学的に説明するための共線図の一例を示す説明図である。
【図9】変形例の駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図10】第2実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図11】触媒温度Tcと駆動制限値βとの関係の一例を示す説明図である。
【図12】EV走行時間Tevと駆動制限値βとの関係の一例を示す説明図である。
【図13】変形例の駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図14】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図15】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0068】
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、134a 触媒、134b 触媒温度センサ、136,スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、143 圧力センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ 234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気を浄化するための触媒を有する浄化装置が排気管に取り付けられた内燃機関からの動力と電動機からの動力とにより走行可能なハイブリッド車であって、
走行に要求される要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記内燃機関の運転を停止した状態で前記電動機からの動力により走行する電動走行を行なった後に前記内燃機関の運転を再開した機関運転再開の際に前記触媒の温度が低下している触媒温度低下条件が成立していないときには前記設定された要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、前記機関運転再開の際に前記触媒温度低下条件が成立しているときには所定の復帰条件が成立するまでは所定の出力制限をもって前記設定された要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し前記所定の復帰条件が成立した以降は前記所定の出力制限を解除して前記設定された要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定する目標パワー設定手段と、
前記内燃機関の運転を停止しているときには前記内燃機関の運転が停止された状態で前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記内燃機関を運転しているときには前記設定された目標パワーが前記内燃機関から出力されると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えるハイブリッド車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車であって、
運転者の近傍に配置され前記電動走行を指示する電動走行指示スイッチを備え、
前記目標パワー設定手段は、前記電動走行指示スイッチがオフとされているときの前記機関運転再開の際には前記触媒温度低下条件の成立に拘わらずに前記設定された要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項3】
排気を浄化するための触媒を有する浄化装置が排気管に取り付けられた内燃機関からの動力と電動機からの動力とにより走行可能なハイブリッド車であって、
前記内燃機関の運転を停止した状態で前記電動機からの動力により走行する電動走行を行なった後に前記内燃機関の運転を再開した機関運転再開の際に前記触媒の温度が低下している触媒温度低下条件が成立していないときには所定の制約を用いて走行に要求される要求駆動力を設定し、前記機関運転再開の際に前記触媒温度低下条件が成立しているときには所定の復帰条件が成立するまでは所定の出力制限をもって前記所定の制約を用いて前記要求駆動力を設定し前記所定の復帰条件が成立した以降は前記所定の出力制限を解除して前記所定の制約を用いて前記要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記内燃機関の間欠運転を伴って前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えるハイブリッド車。
【請求項4】
請求項3記載のハイブリッド車であって、
運転者の近傍に配置され前記電動走行を指示する電動走行指示スイッチを備え、
前記要求駆動力設定手段は、前記電動走行指示スイッチがオフとされているときの前記機関運転再開の際には前記触媒温度低下条件の成立に拘わらずに前記所定の制約を用いて前記要求駆動力を設定する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項5】
前記所定の出力制限は、前記触媒の温度が低いほど厳しくなる傾向の制限である請求項1ないし4いずれか記載のハイブリッド車。
【請求項6】
前記所定の出力制限は、前記内燃機関の運転を再開する直前の前記電動走行の継続時間が長いほど厳しくなる傾向の制限である請求項1ないし5いずれか記載のハイブリッド車。
【請求項7】
前記所定の出力制限は、上限に制限を課す制限である請求項1ないし6いずれか記載のハイブリッド車。
【請求項8】
前記触媒温度低下条件は、前記触媒の温度が第1の温度未満となる条件である請求項1ないし7いずれか記載のハイブリッド車。
【請求項9】
前記所定の復帰条件は、前記触媒の温度が前記第1の温度より高い第2温度以上となる条件である請求項8記載のハイブリッド車。
【請求項10】
前記触媒温度低下条件は、前記電動走行を第1の時間以上に亘って継続した条件である請求項1ないし7いずれか記載のハイブリッド車。
【請求項11】
前記所定の復帰条件は、前記内燃機関の運転を再開したときから第2の時間が経過した条件または所定距離を走行した条件である請求項8または10記載のハイブリッド車。
【請求項12】
車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記内燃機関とに動力を入出力する電力動力入出力手段を備える請求項1ないし11いずれか記載のハイブリッド車。
【請求項13】
前記電力動力入出力手段は、前記駆動軸と前記出力軸と第3の軸との3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記第3の軸に動力を入出力する発電機と、を備える手段である請求項12記載のハイブリッド車。
【請求項14】
排気を浄化するための触媒を有する浄化装置が排気管に取り付けられた内燃機関からの動力と電動機からの動力とにより走行可能なハイブリッド車の制御方法であって、
(a)前記内燃機関の運転を停止した状態で前記電動機からの動力により走行する電動走行を行なった後に前記内燃機関の運転を再開した機関運転再開の際に前記触媒の温度が低下している触媒温度低下条件が成立していないときには走行に要求される要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、前記機関運転再開の際に前記触媒温度低下条件が成立しているときには所定の復帰条件が成立するまでは所定の出力制限をもって前記要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し前記所定の復帰条件が成立した以降は前記所定の出力制限を解除すると共に前記設定された要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、
(b)前記内燃機関の運転を停止しているときには前記内燃機関の運転が停止された状態で前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記内燃機関を運転しているときには前記設定された目標パワーが前記内燃機関から出力されると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する、
ことを特徴とするハイブリッド車の制御方法。
【請求項15】
排気を浄化するための触媒を有する浄化装置が排気管に取り付けられた内燃機関からの動力と電動機からの動力とにより走行可能なハイブリッド車の制御方法であって、
(a)前記内燃機関の運転を停止した状態で前記電動機からの動力により走行する電動走行を行なった後に前記内燃機関の運転を再開した機関運転再開の際に前記触媒の温度が低下している触媒温度低下条件が成立していないときには所定の制約を用いて走行に要求される要求駆動力を設定し、前記機関運転再開の際に前記触媒温度低下条件が成立しているときには所定の復帰条件が成立するまでは所定の出力制限をもって前記所定の制約を用いて前記要求駆動力を設定し、前記所定の復帰条件が成立した以降は前記所定の出力制限を解除して前記所定の制約を用いて前記要求駆動力を設定し、
(b)前記内燃機関の間欠運転を伴って前記設定した要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する、
ことを特徴とするハイブリッド車の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−106675(P2008−106675A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290278(P2006−290278)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】