説明

ハイブリッド車両用動力伝達システムの制御方法

【課題】第1及び第2中間軸と連結する第1クラッチ又は第2クラッチ、複数の変速用クラッチのいずれか一つが開放不能に陥った場合でも、他のクラッチを経由してエンジンの動力を伝達して、通常の運転特性をできる限り満足できる制御方法を提供する。
【解決手段】第1クラッチ16が開放不能になった場合、第2クラッチ17を中立位置とし、第4クラッチ24を第2変速ギア段20側にシフトした停車状態において、発電電動機29を発電機として付勢すると、エンジントルクは差動装置25から第2中間軸15に回転力が伝わり、第2変速ギア段20を介して出力軸18に駆動力が現れて発進(2速発進)が可能になる。複数のクラッチのひとつが開放不能になった場合の代替制御方法をあらかじめ設定することで、運行休止に陥らない高信頼駆動システムが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と電動機とを備えたハイブリッド車両に係り、特に電動機の回転出力を有段ギア変速機により変速させるハイブリッド車両用動力伝達システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から周知の気動車の駆動システムとしては、ディーゼルエンジンのような内燃機関の出力を、トルクコンバータ付の変速機に入力し、該変速機の出力をドライブシャフトを介して車輪に伝達するシステムがある(非特許文献1参照)。この変速機は、変速ギア段を切り替えるために湿式多板クラッチを備えており、クラッチを滑らせることで変速時の回転数変化を吸収しながら、変速ギア段間においてギアからギアへエンジンの駆動力を移し変えるものである。湿式多板クラッチは摩擦クラッチの一種であるので、この方式においては、湿式多板クラッチは、変速時に回転数変化を吸収する際に発熱し、クラッチ開放時においてもクラッチ板の連れ回りによる損失がある。また、摩擦クラッチは温度による特性変化や、磨耗による経年変化の影響を受けやすいので、クラッチの制御にはこれらを補正するために学習補正等の複雑な制御を必要とする。
【0003】
このような問題を解決するため、二つの中間軸を持つとともにこれらを接続する差動装置及び発電電動機を設けたブリッジ型変速機を用い、両中間軸に電動機から互いに逆向きのトルクを印加することで変速動作を行うと共に、加速アシスト・回生制動などのハイブリッド制御機能を有するアクティブシフト変速機が開発されている(特許文献1,2参照)。この変速機においては、摩擦クラッチの代わりに噛み合いクラッチが用いられており、変速時の回転数変化や駆動力の移し変えは電動機の制御により行われるので、摩擦発熱の無い高効率変速を行うことができるとともに、摩擦クラッチに伴う経年変化や温度変化の影響を受けることが無い。
【非特許文献1】エンジンテクノロジー、May2000、pp28−29
【特許文献1】特開2005−76875号公報
【特許文献2】国際公開第01/066971号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクティブシフト変速機は、摩擦部材が無く経年変化や劣化部材の少ない構成であるが、噛み合いクラッチの係合/開放を行うためのクラッチアクチュエータを備えている。クラッチアクチュエータは可動部分を含むので、可動部分に故障の可能性が残る。軌条車両は交通機関として高い信頼性が要求されており、1箇所の故障で走行不能になることは避けなければならないので、従来は故障しにくい高信頼性部品を用いていた。しかしこのような高信頼性部品は高価でありコスト高を招く。
【0005】
そこで、エンジン出力及び電動機により変速動作を行う有段ギア変速機を備えたハイブリッド車両用動力伝達システムにおいて、1箇所のクラッチアクチュエータが故障したときであっても、故障したクラッチを回避して他の正常なクラッチを経由してエンジン駆動力を車輪に伝達させる走行可能なモードを確立する点で解決すべき課題がある。
【0006】
本発明の目的は、たとえ1箇所のクラッチアクチュエータが故障したとしても他のクラッチを用いて走行可能なモードをあらかじめ用意しておくことにより、高価な高信頼性部品を用いることなく安価で信頼性の高いシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するため、この発明による車両用動力伝達システムの制御方法は、エンジン、該エンジンの出力が入力軸に入力される変速機、該変速機に接続された発電電動機、及び前記変速機の出力軸により駆動される車輪を備えており、前記変速機は、前記変速機の前記入力軸と並列に設けられた第1中間軸及び第2中間軸、前記入力軸に噛み合って設けられた入力ギア列、前記入力ギア列と前記第1中間軸とを選択的に連結する第1クラッチ、前記入力ギア列と前記第2中間軸とを選択的に連結する第2クラッチ、前記第1中間軸又は前記第2中間軸と前記出力軸との間に噛み合って設けられた複数組の変速ギア段、記第1中間軸又は前記第2中間軸と前記複数組の変速ギア段とを選択的に連結する複数の変速用クラッチ、及び前記第1中間軸及び前記第2中間軸に接続されると共に前記両中間軸の回転数の差に応じた回転数で回転する回転部を備えた差動装置、を有しており、前記発電電動機は、前記変速機の前記回転部に接続されていることから成る、
車両用動力伝達システムにおいて、前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、複数の前記変速用クラッチのいずれか一つが開放不能に陥った場合、前記エンジンの出力を締結可能な二つのクラッチを介して前記出力軸に伝達することを特徴とする。
【0008】
この変速機は二つの中間軸を備えており、電動機の反力を利用して一方の中間軸から他方の中間軸にエンジンからのトルクを伝達することができる。この特徴を活かし、一方の中間軸に関して設けられているクラッチが開放不能に陥った場合には、他方の中間軸と差動装置を介してエンジンの出力トルクを伝達することで、故障したクラッチが開放できなくても、これを回避して他の正常なクラッチにエンジン駆動力を伝達させることで、正常に近い変速動作をさせることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、1箇所のクラッチアクチュエータが故障したとしても他のクラッチを用いて走行可能になり、車両の運休を回避することができ、交通機関としての信頼性を損なうことなく車両のコストを低減することができるので産業上極めて有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、この発明によるハイブリッド車両用動力伝達システムの制御方法の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明の第1の実施例を図1〜図9により説明する。まず本発明に用いる変速機の構成を図1により説明する。図1は二つの中間軸を持つアクティブシフト変速機の構成を模式的に示したスケルトン図である。エンジン1の出力軸は変速機2の入力軸3に接続されている。入力軸3には前進用ギア列4と後進用ギア列5が並列に配置されており、入力軸3が回転駆動されている状態では、両ギア列4,5は常に駆動されている。前進用ギア列4は、入力軸3に固着された入力ギア6、該入力ギア6と噛み合う第1ギア7及び第2ギア8を備えている。後進用ギア列5は、入力軸3に固定嵌合された入力ギア9、該入力ギア9にそれぞれ噛み合う同じ仕様の反転ギア10,11、該反転ギア10,11にそれぞれ噛み合う第3ギア12及び第4ギア13を備えている。
【0012】
入力軸3に並行に、第1中間軸14と第2中間軸15とが配置されている。第1ギア7と第3ギア12とは第1中間軸14に相対回転可能に嵌合しており、第2ギア8と第4ギア13とは第2中間軸15に相対回転可能に嵌合している。第1中間軸14と第2中間軸15とには、前進用ギア列4と後進用ギア列5との間において、それぞれ、選択的に係合可能な第1クラッチ16と第2クラッチ17とが配設されている。第1クラッチ16及び第2クラッチ17は、それぞれの軸に設けられたスプライン上をシフトするスリーブの爪が、前記第1〜第4ギアに設けられた爪に噛み合うことで係合/開放するものである。したがって、第1中間軸14には第1クラッチ16の選択的なシフトによって係合した側のギア7又は12から前進回転又は後進回転が与えられ、第2中間軸15には第2クラッチ17の選択的なシフトによって係合した側のギア8又は13から前進回転又は後進回転が与えられる。これらのクラッチスリーブは、クラッチアクチュエータ(ACT1〜ACT2)とリンク機構で結ばれ、係合する方向に推力を与えられる。
【0013】
第1中間軸14と第2中間軸15と並行に、出力軸18が配置されている。第1中間軸14と出力軸18との間には第1変速ギア段19と第3変速ギア段21が配置されており、第2中間軸15と出力軸18との間には第2変速ギア段20と第4変速ギア段22が配置されている。各変速ギア段19〜22においては、予め定められた変速比で出力軸18に回転出力を生じさせるために、相異なるギア径(歯数)が定められている。また、各変速ギア段19〜22において、中間軸14、15上に配置されているギアは中間軸14,15に対して相対回転自在であるが、出力軸18に配置されているギアは出力軸18に固定嵌合されている。
【0014】
第1中間軸14において、第1変速ギア段19と第3変速ギア段21との間には選択的に係合可能な第3クラッチ23が配設されている。また、第2中間軸15において、第2変速ギア段20と第4変速ギア段22との間には選択的に係合可能な第4クラッチ24が配設されている。第3クラッチ23及び第4クラッチ24は、それぞれの軸に設けられたスプライン上をシフトするスリーブの爪が、第1〜第4変速ギアに設けられた爪に噛み合うことで係合/開放する。これらのクラッチスリーブは、クラッチアクチュエータ(ACT3〜ACT4)とリンク機構で結ばれ、係合する方向に推力を与えられる。
【0015】
上記の変速ギア段の構成によって、第1クラッチ16を前進用ギア列4側にシフトした状態で、第3クラッチ23を第1変速ギア段19側にシフトしたときには、入力軸3の回転は第1中間軸14及び第1変速ギア段19を介して出力軸18に前進第1変速段で出力され、第3クラッチ23を第3変速ギア段21側にシフトしたときには、入力軸3の回転は第1中間軸14及び第3変速ギア段21を介して出力軸18に前進第3変速段で出力される。このとき、第2クラッチ17は中立位置に置かれる。また、第2クラッチ17を前進用ギア列8側にシフトした状態で、第4クラッチ24を第2変速ギア段20側にシフトしたときには、入力軸3の回転は第2中間軸15及び第2変速ギア段20を介して出力軸18に前進第2変速段で出力され、第4クラッチ24を第4変速ギア段22側にシフトしたときには、入力軸3の回転は第2中間軸15及び第4変速ギア段22を介して出力軸18に前進第4変速段で出力される。このとき、第1クラッチ16は中立位置に置かれる。
【0016】
第1クラッチ16又は第2クラッチ17を後進側に係合した場合は、それぞれ後進方向に各変速段で出力される。このように、第1クラッチ16又は第2クラッチ17を前進用ギア列4側或いは後進用ギア列5側との係合を切り換えることで、車両には、前進・後進のいずれの進行方向にも同じ段数の変速段を与えることができる。
なお、本実施例では後進用ギア列5を入力軸3に設けたが、前後進切替を出力軸18の後で行うことも当然可能であり、その場合は入力軸3に設けられるのは前進用ギア列4のみであるが、前進用ギア列4と呼ぶ代わりに入力ギア列4と呼ぶものとする。
【0017】
第2中間軸15の端部には差動装置25が配設されており、差動装置25のリングギア26と噛み合う取り出しギア27の取り出し軸28は発電電動機29に接続されている。第1中間軸14と差動装置25との間には接続ギア列30が配設され、差動装置25のリングギア回転数が、第1中間軸14の回転数と第2中間軸15の回転数の差の2分の1となるように接続されている。
【0018】
このような構造の変速機に対して、変速制御装置が設けられており、クラッチアクチュエータ(ACT1〜ACT4)への動作指令を発生すると共に、発電電動機29およびエンジンに対してそれぞれトルク指令を発生する。
【0019】
図1の変速機において故障の可能性があるのは各クラッチの可動部である。アクチュエータ(ACT1〜ACT4)の故障も含めて、各クラッチスリーブがスライド不能になった場合の救済制御方法を以下に説明する。
【0020】
第1クラッチ16が係合したまま固着して開放不能になった場合について、図2〜図9を用いて説明する。
図2は停車状態から発進する方法態様について示したものである。1速側の第1中間軸14に設けられた第1クラッチ16が係合したまま固着したものとし、図ではクラッチを黒塗りで示す。第1クラッチ16が係合したままであるので、1速で発進することはできず、2速発進を行う。停車状態において第4クラッチ24を第2変速ギア段20側にシフトして噛み合わせる。図では噛み合い状態にあるクラッチをハッチングで示す。停車状態では出力軸18は停止しているので、第4クラッチ24を介して出力軸18と接続される第2中間軸15も停止している。エンジン1のアイドル回転が第1中間軸14から接続ギア列30及び差動装置25を介して、発電電動機29に伝えられている。エンジン1の出力を上昇させつつ発電電動機29の発電負荷を増加させると、発電トルクの反力が差動装置25を介して第2中間軸15及び第2変速ギア段20に伝わり、出力軸18に出力されて発進する。
【0021】
車速が上昇し1速ギアを接続できる車速に達すると、発電電動機29の回転数を調整することで、第1中間軸14上の第3クラッチ23と第1変速ギア段19の回転を同期させることができる。この状態で図3に示すように第3クラッチ23を第1変速ギア段19側にシフトさせて噛み合わせ、発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は直接第1変速ギア段19を通して出力軸18に出力されて1速走行状態になる。
【0022】
1→2変速すべき車速に達したとき、図4に示すように再び発電電動機29の発電負荷を増加させ、全エンジントルクが差動装置25を介して第2中間軸15に伝達されると、第3クラッチ23を伝達するトルクが0になり、第3クラッチ23を開放することができ、図2と同じモードになる。
発電電動機29に負荷をかけたまま回転数を0にすると、第2中間軸15の回転が第2ギア8の回転と同期するので、図5に示すように第2クラッチ17を係合することができる。発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は直接第2変速ギア段20を通して出力軸18に出力されて2速走行状態になる。
【0023】
2→3変速すべき車速に達したとき、図6に示すように再び発電電動機29の発電負荷を増加させ、全エンジントルクが差動装置25を介して第2中間軸15に伝達されると、第2クラッチ17を伝達するトルクが0になり、第2クラッチ17を開放することができ、図2と同じモードになる。発電電動機29の回転数を調整することで、第3クラッチ23と第3変速ギア段21の回転を同期させることができる。図7に示すように第3クラッチ23を第3変速ギア段21側にシフトさせて、発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は直接第3変速ギア段21を通して出力軸18に出力されて3速走行状態になる。
3速走行中に4速へのアップシフトに備え第4クラッチ24を開放し、さらに発電電動機29の回転数を調整して、第4クラッチ24と第4変速ギア段22の回転を同期係合させておく。
【0024】
3→4変速すべき車速に達したとき、図8に示すように再び発電電動機29の発電負荷を増加させ、全エンジントルクが差動装置25を介して第2中間軸15に伝達されると、第3クラッチ23を伝達するトルクが0になり、第3クラッチ23を開放することができ、図2と同じモードになる。ただし図8が図2と異なるのは第2変速ギア段20ではなく第4変速ギア段22が係合されていることである。
発電電動機29に負荷をかけたまま回転数を0にすると、第2中間軸15の回転が第2ギア8の回転と同期するので、図9に示すように第2クラッチ17を係合することができる。発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は第2中間軸15から直接第4変速ギア段22を通して出力軸18に出力されて4速走行状態になる。
【0025】
以上の図2〜図9に説明した動作を本発明者等が試作した装置について計算した結果を図10に示す。発進から最高車速まで、中断することなく充分な駆動力が得られることが分かる。発進は2速ギアを使って行うので起動駆動力は1速発進より小さくなるが、それでも10999Nが得られるので充分に起動できる。また1速→2速の変速中は駆動力が13259Nに落ちるが、これでも充分な駆動力である。
以上のように本発明の第1の実施例の方法によれば、第1クラッチ16が係合したまま固着して開放不能になったとしても、発進時には2速発進するので駆動力が落ちるものの、1速から4速まで正常時と変わりなく変速して走行できるので、運休を回避することができ、交通機関の信頼性を損なうことが無い。
【0026】
なお、第2クラッチ17が係合したまま固着して開放不能になった場合については、第1中間軸14と第2中間軸15、および第3クラッチ23と第4クラッチ24の関係が逆になるだけで、まったく対称的に動作させることができるので説明を省略するが、同様の効果が得られる。発進から最高車速まで計算した結果を図11に示す。この場合も中断することなく、充分な駆動力が得られることが分かる。発進は1速ギアを使って行うので起動駆動力は15734Nが得られ、充分に起動できる。また1速→2速の変速中の駆動力としては19965Nが得られる。
【実施例2】
【0027】
本発明の第2の実施例は第3クラッチ23が第1変速ギア段19側にシフトしたまま固着し開放不能になった場合の救済制御方法であり、図12〜17を用いて説明する。図12に停車状態からの発進方法を示す。この場合は1速が係合されているので1速発進が可能である。停車状態においては、出力軸18は停止しているので、第1変速ギア段19が係合された状態では、第1変速ギア段19を介して出力軸18と接続された第1中間軸14も停止しており、第2クラッチ17を係合すると、エンジン1のアイドル回転が第2中間軸15から差動装置25を介して発電電動機29に伝えられている。エンジン1の出力を上昇させつつ発電電動機29の発電負荷を増加させると、発電トルクの反力が差動装置25から接続ギア列30を介して第1中間軸14及び第1変速ギア段19に伝わり、出力軸18に出力されて発進する。
車速が上昇し1速走行車速に達すると、発電電動機29の回転数を0にすることで、第1中間軸14の回転数が第2中間軸15の回転数と等しくなり、第1クラッチ16が同期する。図13に示すように第1クラッチ16を係合させて、発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は直接第1変速ギア段19を通して出力軸18に出力されて1速走行状態になる。
【0028】
1→2変速すべき車速に達したとき、図14に示すように再び発電電動機29の発電負荷を増加させ、全エンジントルクが第2中間軸15から差動装置25及び接続ギア列30を介して第1中間軸14に伝達されると、第1クラッチ16を伝達するトルクが0になり、第1クラッチ16を開放することができ、図12と同じモードになる。
発電電動機29の回転数を調整して、第4クラッチ24と第2変速ギア段20の回転を同期させると、図15に示すように第4クラッチ24を第2変速ギア段20側にシフトさせて係合することができる。発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は直接第2変速ギア段20を通して出力軸18に出力されて2速走行状態になる。
【0029】
2→3変速すべき車速に達したとき、エンジン回転数は最大値に近づいている。しかし第3クラッチ23は、第1変速ギア段19に係合したまま固着しているので、3速にアップシフトすることはできない。そこで図16に示すように再び発電電動機29の発電負荷を増加させ、全エンジントルクを差動装置25を介して第1中間軸14に伝達させると、第4クラッチ24を伝達するトルクが0になり、第4クラッチ24を開放することができ、図12と同じモードになる。ただし図12の場合と異なるのは、車速が高いので発電電動機29の回転数が高いことである。本出願人において試作した装置の例では、2→3変速すべき車速に達したときのエンジン回転数は2092rpmであるが、そのときの発電電動機29の回転数は712rpmである。発電電動機29の回転数を865rpmまで上げるとエンジン回転数が1900rpmに下がるので、1速ギアを使いながら過回転にはならずさらに加速を続けることができる。
【0030】
4速へアップシフトすべき車速に達したとき、第4クラッチ24と第4変速ギア段22の回転が同期するので、図17に示すように第4クラッチ24を第4変速ギア段22側にシフトさせて係合し、発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は直接第4変速ギア段22を通して出力軸18に出力されて4速走行状態になる。
【0031】
以上の図12〜図17に説明した動作を本発明者等が試作した装置について計算した結果を図18に示す。発進から最高車速まで、中断することなく充分な駆動力が得られることが分かる。2速エンジン走行までは図11の場合とほぼ同じ特性が得られる。3速走行できないので、57km/h〜82km/hの間は1速ギアを用いて走行するものの、エンジン回転数は過回転になることなく1900rpmから1253rpmの間であり、モータ回転数は865rpmから2415rpmの間で、駆動力は20131Nから4021Nが得られている。
以上のように本発明の第2の実施例の方法によれば、第3クラッチ23が第1変速ギア段19側にシフトしたまま固着し開放不能になったとしても、正常の発進駆動力で発進でき、また3速には変速できないものの、1速から4速まで変速して走行できるので、車両の運休を回避できて、交通機関の信頼性を損なうことが無い。
【実施例3】
【0032】
本発明の第3の実施例は第3クラッチ23が第3変速ギア段21側にシフトしたまま固着し開放不能になった場合の救済制御方法であり、図19〜24を用いて説明する。図19に停車状態からの発進方法を示す。この場合は3速が係合されているので3速発進を行う必要がある。停車状態において出力軸18は停止しており、第3変速ギア段21が係合された状態では、第3変速ギア段21を介して出力軸18と接続された第1中間軸14も停止しており、第2クラッチ17を係合すると、エンジン1のアイドル回転が第2中間軸15から差動装置25を介して発電電動機29に伝えられている。エンジン1の出力を上昇させつつ発電電動機29の発電負荷を増加させると、発電トルクの反力が差動装置25から接続ギア列30を介して第1中間軸14及び第3変速ギア段21に伝わり、出力軸18に出力されて発進する。
【0033】
車速が上昇し2速ギアを接続できる車速に達すると、発電電動機29の回転数を調整することで、第2中間軸15の回転を第2変速ギア段20の回転に同期させ、係合することができる。図20に示すように第2変速ギア段20を係合させて、発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は直接第2変速ギア段20を通して出力軸18に出力されて2速走行状態になる。
【0034】
2→3変速すべき車速に達したとき、エンジン回転数は最大値に近づいている。図21に示すように再び発電電動機29の発電負荷を増加させ、全エンジントルクが差動装置25を介して第1中間軸14に伝達されると、第2変速ギア段20を伝達するトルクが0になり、第2変速ギア段20を開放することができ、図19と同じモードになる。発電電動機29の回転数を0にすることで、第1クラッチ16を第1ギア7の回転に同期させることができる。図22に示すように第1クラッチ16を係合して、発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は直接第3変速ギア段21を通して出力軸18に出力されて3速走行状態になる。
【0035】
3→4変速すべき車速に達したとき、図23に示すように再び発電電動機29の発電負荷を増加させ、全エンジントルクが差動装置25を介して第1中間軸14に伝達されると、第1クラッチ16を伝達するトルクが0になり、第1クラッチ16を開放することができ、図19および図21と同じモードになる。
発電電動機29に負荷をかけたまま回転数を調整すると、第2中間軸15の回転が第4変速ギア段22の回転と同期するので、図24に示すように第4変速ギア段22を係合することができ、発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は直接第4変速ギア段22を通して出力軸18に出力されて4速走行状態になる。
【0036】
以上の図19〜図24に説明した動作を本発明者等が試作した装置について計算した結果を図25に示す。発進から最高車速まで、中断することなく充分な駆動力が得られることが分かる。この場合は3速発進せざるを得ないが、それでも起動駆動力は7627Nが得られるので発進可能である。その後は4速エンジン走行まで充分な駆動力が得られている。
以上のように本発明の第3の実施例の方法によれば、第3クラッチ23が第3変速ギア段21側にシフトしたまま固着し開放不能になった場合には、発進時に3速で発進するので駆動力が小さくなり、また1速には変速できないものの、2速から4速までは通常通り変速して走行できるので、車両の運休を回避できて、交通機関の信頼性を損なうことが無い。
【実施例4】
【0037】
本発明の第4の実施例は第4クラッチ24が第2変速ギア段20側にシフトしたまま固着し開放不能になった場合の救済制御方法であり、図26〜32を用いて説明する。図26に停車状態からの発進方法を示す。この場合は2速が係合されているので2速発進を行う必要がある。停車状態においては、出力軸18は停止しており、第2変速ギア段20が係合された状態では、第2変速ギア段20を介して出力軸18と接続されている第2中間軸15も停止しており、第1クラッチ16を係合すると、エンジン1のアイドル回転が第1中間軸14から差動装置25を介して発電電動機29に伝えられている。エンジン1の出力を上昇させつつ発電電動機29の発電負荷を増加させると、発電トルクの反力が差動装置25から第2中間軸15及び第2変速ギア段20に伝わり、出力軸18に出力されて発進する。
【0038】
車速が上昇し1速ギアを接続できる車速に達すると、発電電動機29の回転数を調整することで、第3クラッチ23と第1変速ギア段19の回転を同期させることができる。図27に示すように第3クラッチ23を第1変速ギア段19側にシフトさせて噛み合わせ、発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は直接第1変速ギア段19を通して出力軸18に出力されて1速走行状態になる。
【0039】
1→2変速すべき車速に達したとき、図28に示すように再び発電電動機29の発電負荷を増加させ、全エンジントルクが第1中間軸14から差動装置25を介して第2中間軸15に伝達されると、第3クラッチ23を伝達するトルクが0になり、第3クラッチ23を開放することができ、図26と同じモードになる。
発電電動機29に負荷をかけたまま回転数を0にすると、第2中間軸15の回転を第1中間軸14の回転と同期させることができる。図29に示すように第2クラッチ17を係合して、発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は直接第2変速ギア段20を通して出力軸18に出力されて2速走行状態になる。
【0040】
2→3変速すべき車速に達したとき、図30に示すように再び発電電動機29の発電負荷を増加させ、全エンジントルクが差動装置25を介して第2中間軸15に伝達されると、第2クラッチ17を伝達するトルクが0になり、第2クラッチ17を開放することができ、図26、図28と同じモードになる。発電電動機29の回転数を調整することで、第3クラッチ23と第3変速ギア段21の回転を同期させることができる。図31に示すように第3クラッチ23を第3変速ギア段21側にシフトさせて、発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は直接第3変速ギア段21を通して出力軸18に出力されて3速走行状態になる。
【0041】
3→4変速すべき車速に達しても第4クラッチが2速側に固着しているので4速にはできない。しかしエンジン回転数は最高回転数に近付いているので、このまま加速するわけには行かない。そこで図32に示すように再び発電電動機29のトルクを増やして第3クラッチ23を開放し、図26、図28、図30と同じモードにする。2速ギアでエンジン回転数を上げずに走行するには、発電電動機29の回転数を上げる必要があり、発電電動機29のトルクは小さくなるものの、最高車速まで駆動することはできる。
【0042】
以上の図26〜図32に説明した動作を本発明者等が試作した装置について計算した結果を図33に示す。発進から最高車速まで、中断することなく充分な駆動力が得られることが分かる。発進から3速エンジン走行までは図10と同じであるが、その後は4速走行の代わりに2速モータ反力走行するので、発電電動機29の回転数が高くなり、最高車速時の駆動力は2705Nと4速エンジン走行の場合の半分以下になる。しかしエンジンを過回転させることなく加速できることが分かる。
本実施例の方法によれば、第4クラッチ24が第2変速ギア段20側にシフトしたまま固着し開放不能になった場合には、発進時に2速で発進するので駆動力が小さくなり、また4速にはできないものの、1速から3速までは通常通り変速して走行できるので、車両の運休を回避できて、交通機関の信頼性を損なうことが無い。
【実施例5】
【0043】
本発明の第5の実施例は、第4クラッチ24が第4変速ギア段22側にシフトしたまま固着し開放不能になった場合の救済制御方法であり、図34〜39を用いて説明する。
この場合は4速が係合されているのでエンジンで発進するには4速発進を行う必要があり、ギア比が小さいので発進駆動力が小さくなってしまう。しかしこのシステムはハイブリッド駆動システムであるので、モータによる発進が可能である。
図34に停車状態からの発進方法を示す。停車状態において第4変速ギア段22が係合された状態において、第1変速ギア段19を係合して、発電電動機29の電動トルクを増加させると、電動トルクの一部は差動装置25から第1中間軸14を介して、第1変速ギア段19から出力軸18に伝達されると共に、電動トルクの残りは差動装置25から第2中間軸15を介して、第4変速ギア段22から出力軸18に出力されて発進する。第1中間軸14に伝えられるトルクをT1とすると、その反力が第2中間軸15に伝えられるので、第1変速ギア段19のギア比をG1、第4変速ギア段22のギア比をG4とすれば、出力軸トルクは、To=(G1−G4)T1 となり、差動装置25と出力軸18は、第1変速ギア段19と第4変速ギア段22のギア比の差で結合されていることになる。
【0044】
車速が上昇し1速ギアを接続できる車速に達すると、エンジン1の回転数制御により、第1ギア7の回転数を第1中間軸14の回転数に同期させることができる。図35に示すように第1クラッチ16を噛み合わせ、エンジン1の出力を高めながら発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は直接第1変速ギア段19を通して出力軸18に出力されて1速走行状態になる。
【0045】
1→2変速すべき車速に達したとき、エンジンは最高回転数近くに達しているから2速にアップシフトしたいが、第4クラッチ24が固着しているので第2変速ギア段20を係合できない。そこで第4変速ギア段22を用いて、発電電動機29によるトルク伝達走行を行う。すなわち図36に示すように、発電電動機29の発電負荷を増加させると、全エンジントルクが第1中間軸14から差動装置25、第2中間軸15、第4変速ギア段22を介して出力軸18に伝達されるので、第3クラッチ23を伝達するトルクが0になり、第3クラッチ23を開放することができる。
【0046】
第3クラッチ23が開放されるとエンジン回転数を変えることができるから、例えば効率の良いエンジン回転数に下げて、その分発電電動機29の回転数を上げて走行すれば、さらに高車速まで加速することができる。
【0047】
3速に変速すべき車速に達したとき、発電電動機29の回転数を調整することで、第3クラッチ23と第3変速ギア段21の回転を同期させることができる。図37に示すように第3クラッチ23を第3変速ギア段21側にシフトさせて、発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は直接第3変速ギア段21を通して出力軸18に出力されて3速走行状態になる。
【0048】
3→4変速すべき車速に達したとき、図38に示すように再び発電電動機29の発電負荷を増加させ、全エンジントルクが第1中間軸14から差動装置25を介して第2中間軸15に伝達されると、第3クラッチ23を伝達するトルクが0になり、第3クラッチ23を開放することができ、図36と同じモードになる。
発電電動機29の回転数を0にすると、第2クラッチ17が同期するので、図39に示すように第2クラッチ17を係合して、発電電動機29のトルクを0にすると、エンジン1の出力は直接、固着状態にある第4変速ギア段22を通して出力軸18に出力されて4速走行状態になる。
【0049】
以上の図34〜図39に説明した動作を本発明者等が試作した装置について計算した結果を図40に示す。発進から最高車速まで、中断することなく充分な駆動力が得られることが分かる。発進はモータで行うので充分な起動駆動力が得られる。2速走行できないので、1速から3速へ飛び越し変速せざるを得ず、変速過程において発電電動機29は高い回転数となるので受け持てるトルクが小さくなり、駆動力は5518Nまで低下する。これによりトルク変動が生じて乗り心地が多少低下するものの、充分な駆動力が得られることが分かる。
本実施例の方法によれば、第4クラッチ24が第4変速ギア段22側にシフトしたまま固着し開放不能になっても、モータ発進したのち1速、3速、4速と変速して走行できるので、運休を回避できて、交通機関の信頼性を損なうことが無い。
【0050】
本発明の各実施例においては、クラッチのアクチュエータなどの可動部分が故障した場合として説明したが、本発明は、タイミング等に起因した故障までには至らない一時的な作動不良に対しても適用可能である。例えば、所定の短い時間内にクラッチの作動が確認されない場合には直ちに当該クラッチを回避した駆動経路に自動的に切り換えて、あたかも正常に作動したのと同等の運転走行を行わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は軌条車両に適用する場合について説明したが、同様のアクティブシフト変速機を用いるハイブリッドシステムであれば軌条車両に限定されるものではなく、自動車に適用する場合にも同様に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の制御に用いるアクティブ変速機の構成を示すスケルトン図および制御システム図。
【図2】本発明の第1実施例における発進方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図3】本発明の第1実施例における1速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図4】本発明の第1実施例における1速から2速への変速過程を示すトルク伝達経路説明図。
【図5】本発明の第1実施例における2速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図6】本発明の第1実施例における2速から3速への変速過程を示すトルク伝達経路説明図。
【図7】本発明の第1実施例における3速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図8】本発明の第1実施例における3速から4速への変速過程を示すトルク伝達経路説明図。
【図9】本発明の第1実施例における4速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図10】本発明の第1実施例における発進から4速までの走行状態を示すタイムチャート。
【図11】本発明の第2クラッチが固着した場合における発進から4速までの走行状態を示すタイムチャート。
【図12】本発明の第2実施例における発進方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図13】本発明の第2実施例における1速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図14】本発明の第2実施例における1速から2速への変速過程を示すトルク伝達経路説明図。
【図15】本発明の第2実施例における2速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図16】本発明の第2実施例における2速から4速への変速過程を示すトルク伝達経路説明図。
【図17】本発明の第2実施例における4速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図18】本発明の第2実施例における発進から4速までの走行状態を示すタイムチャート。
【図19】本発明の第3実施例における発進方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図20】本発明の第3実施例における2速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図21】本発明の第3実施例における2速から3速への変速過程を示すトルク伝達経路説明図。
【図22】本発明の第3実施例における3速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図23】本発明の第3実施例における3速から4速への変速過程を示すトルク伝達経路説明図。
【図24】本発明の第3実施例における4速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図25】本発明の第3実施例における発進から4速までの走行状態を示すタイムチャート。
【図26】本発明の第4実施例における発進方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図27】本発明の第4実施例における1速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図28】本発明の第4実施例における1速から2速への変速過程を示すトルク伝達経路説明図。
【図29】本発明の第4実施例における2速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図30】本発明の第4実施例における2速から3速への変速過程を示すトルク伝達経路説明図。
【図31】本発明の第4実施例における3速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図32】本発明の第4実施例における2速モータ反力走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図33】本発明の第4実施例における発進から最高車速までの走行状態を示すタイムチャート。
【図34】本発明の第5実施例における発進方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図35】本発明の第5実施例における1速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図36】本発明の第5実施例における1速から3速への変速過程を示すトルク伝達経路説明図。
【図37】本発明の第5実施例における3速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図38】本発明の第5実施例における3速から4速への変速過程を示すトルク伝達経路説明図。
【図39】本発明の第5実施例における4速エンジン走行方法を示すトルク伝達経路説明図。
【図40】本発明の第5実施例における発進から4速までの走行状態を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0053】
1:エンジン、2:変速機、3:入力軸、4:前進用ギア列、5:後進用ギア列、14:第1中間軸、15:第2中間軸、16:第1クラッチ、17:第2クラッチ、18:出力軸、19〜22:変速ギア段、23〜24:変速用クラッチ、25:差動装置、29:発電電動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン、該エンジンの出力が入力軸に入力される変速機、該変速機に接続された発電電動機、及び前記変速機の出力軸により駆動される車輪を備えており、前記変速機は、
前記変速機の前記入力軸と並列に設けられた第1中間軸及び第2中間軸、
前記入力軸に噛み合って設けられた入力ギア列、
前記入力ギア列と前記第1中間軸とを 選択的に連結する第1クラッチ、
前記入力ギア列と前記第2中間軸とを選択的に連結する第2クラッチ、
前記第1中間軸又は前記第2中間軸と前記出力軸との間に噛み合って設けられた複数組の変速ギア段、
前記第1中間軸又は前記第2中間軸と前記複数組の変速ギア段とを選択的に連結する複数の変速用クラッチ、及び
前記第1中間軸及び前記第2中間軸に接続されると共に前記両中間軸の回転数の差に応じた回転数で回転する回転部を備えた差動装置、を有しており、
前記発電電動機は、前記変速機の前記回転部に接続されていることから成る、
車両用動力伝達システムにおいて、
前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、複数の前記変速用クラッチのいずれか一つが開放不能に陥った場合、前記エンジンの出力を締結可能な二つのクラッチを介して前記出力軸に伝達する
ことを特徴とする車両用動力伝達システムの制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の車両用動力伝達システムの制御方法において、
前記第1クラッチと前記第2クラッチのうち一方のクラッチが開放不能に陥った場合、前記車両が発進する発進過程又は前記変速ギア段切換えの変速過程において、開放不能に陥った前記一方のクラッチ、当該一方のクラッチに関連する前記第1中間軸と前記第2中間軸のうち一方の中間軸、及び前記差動装置を介して前記エンジンの出力を前記発電電動機に伝達するとともに、前記差動装置により前記発電電動機から他方の中間軸に伝達されるトルク反力を前記他方の中間軸に設けられた複数組の前記変速ギア段の一つを介して前記出力軸に伝達する
ことを特徴とする車両用動力伝達システムの制御方法。
【請求項3】
請求項1記載の車両用動力伝達システムの制御方法において、
前記第1クラッチと前記第2クラッチのうち一方のクラッチが開放不能に陥った場合、前記車両が発進後又は前記変速ギア段切換え後において、前記エンジンの出力を、開放不能に陥った前記一方のクラッチ及び当該一方のクラッチに関連する前記第1中間軸と前記第2中間軸のうち一方の中間軸、又は開放可能な他方のクラッチ及び当該他方のクラッチに関連する前記第1中間軸と前記第2中間軸のうち他方の中間軸に伝達し、当該伝達されたトルクを当該一方の中間軸又は当該他方の中間軸に設けられた複数の前記変速ギア段の一つを介して前記出力軸に伝達する
ことを特徴とする車両用動力伝達システムの制御方法。
【請求項4】
請求項1記載の車両用動力伝達システムの制御方法において、
前記変速クラッチの一つが開放不能に陥った場合、前記車両が発進する発進過程又は前記変速ギア段切換えの変速過程において、当該開放不能の変速クラッチが設置されている方の前記中間軸に設置されている前記第1クラッチ又は前記第2クラッチを開放すると共に、前記開放不能の変速クラッチが設置されていない方の前記中間軸に設置されている前記第1クラッチ又は前記第2クラッチを係合し、係合した当該クラッチと前記差動装置を介して前記エンジンの出力を前記発電電動機に伝達するとともに、前記差動装置により前記発電電動機からのトルク反力を前記開放不能の変速クラッチを介して前記出力軸に伝達する
ことを特徴とする車両用動力伝達システムの制御方法。
【請求項5】
請求項1記載の車両用動力伝達システムの制御方法において、
前記変速クラッチの一つが開放不能に陥った場合、前記車両が発進後又は前記変速ギア段切換え後において、変速段が当該開放不能の変速クラッチが設置されている方の前記中間軸と前記出力軸との間に設けられた前記変速ギア段を用いないときには、当該開放不能の変速クラッチが設置されている方の前記中間軸に設置されている前記第1クラッチ又は前記第2クラッチを開放すると共に、前記開放不能の変速クラッチが設置されていない方の前記中間軸に設置されている前記第1クラッチ又は前記第2クラッチを係合し、前記開放不能の変速クラッチが設置されていない方の前記中間軸に設置されている変速クラッチを介して前記出力軸に伝達する
ことを特徴とする車両用動力伝達システムの制御方法。
【請求項6】
請求項1記載の車両用動力伝達システムの制御方法において、
前記変速クラッチの一つが開放不能に陥った場合、前記車両が発進後又は前記変速ギア段切換え後において、変速段が当該開放不能の変速クラッチが設置されている方の前記中間軸と前記出力軸との間に設けられた前記変速ギア段を用いるときには、当該開放不能の変速クラッチが設置されている方の前記中間軸に設置されている前記第1クラッチ又は前記第2クラッチを係合し、前記開放不能の変速クラッチを介して前記出力軸に伝達する
ことを特徴とする車両用動力伝達システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2010−30565(P2010−30565A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197785(P2008−197785)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)
【出願人】(303025663)株式会社日立ニコトランスミッション (25)
【Fターム(参考)】