説明

パターン検査方法及びその装置

【課題】
ハードディスク用のパターンドメディアの光学的な検査において、下地膜の膜厚変動,膜質変動の影響を受けることなくパターンの検査を行えるようにする。
【解決手段】
パターン検査装置を、試料を載置して回転可能な回転テーブル手段と、試料に照明光を照射する照明手段と、照明手段で光を照射された領域からの反射光を分光して検出する分光検出手段と、分光検出手段で分光して検出した基板のパターンが形成されていない領域からの反射光検出信号を処理して多層膜の光学特性を検出するとともに多層膜を含むパターンからの反射光検出信号を処理して多層膜を含むパターンからの反射光の光学特性を検出する光学特性検出手段と、光学特性検出手段で検出した多層膜からの反射光の光学特性の情報を用いて多層膜を含むパターンからの反射光の光学特性の情報を処理することにより多層膜上に形成されたパターンを検査するパターン検査手段とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ハードディスク用メディアを始めとする凹凸パターン形状を製造する過程及び製造物の検査に係り、そのパターン形状の欠陥、変形、寸法計測を検査するパターン検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータに用いられる記録媒体であるハードディスクは大容量化が進んでいる。記録情報の大容量化には1枚のディスク内に記録する密度の向上が不可欠である。従来のディスク媒体に比較して大幅に記録密度を向上可能な方式としてディスク表面にパターンを形成させた媒体であるパターンドメディアが有望視されている。パターンドメディアの形成には、低コストでナノオーダのパターンが形成可能な、ナノインプリント技術が用いられる。ナノインプリント技術は、予め作成した型(スタンプ)を材料に押し当て、型と同じパターンを複製する技術であり、ハードディスク用のパターンドメディアの他にも、光学素子の形成や、半導体の露光工程の代替としても検討されている。
【0003】
通常パターンドメディアに使用されるパターン寸法は100nm以下であり、可視光の波長の数分の1以下のパターン寸法である。このため通常の顕微鏡などの光学系では解像限界を超えているため、直接パターン形状を捉えることは出来ない。このため、AFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)による形状計測や、SEM(Scanning Electron Microscope: 走査型電子顕微鏡)などによる計測、又はSNOM(Scanning Near field Optical Microscope:走査型近接場光顕微鏡)などによる近接場光検出が考えられるが、いずれもスループットの観点から高速に広い面積を観察することができない。
【0004】
一方、半導体のパターン形成のプロセス管理には、スキャッタロメトリーの原理による光学式の検査装置が適用されている。これは、予め半導体ウェハ上に製品以外の領域に配置するTEG(Test Element Grope)パターンと呼ばれる管理用のパターンを利用し、ラインアンドスペースなどの周期的なパターンの検出を行うものである。例えば、50um□程度以上の領域内の周期的パターンに白色光を照射し、その反射光の分光特性を検出することにより、観察パターンの形状を計算する手法である。この手法によるパターンドメディアの検査方法に関し特許文献1が開示されている。これによれば、スキャットロメトリー法により、検出した光反射強度を解析することで、周期的なパターンの形状を計測・評価可能であるとしている。また、試料上にサーボ情報部がある場合にも取得したデータを解析することで、同様に評価可能であるとしている。
【0005】
また,特許文献2には,スキャッタロメトリー方式による検出ツールを半導体の欠陥分類に利用する方法を述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−133985号公報
【特許文献2】米国特許第6639663号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、スキャットロメトリー法によってパターン形状を計測する場合、予めパターン層を含む下層の光学特性を正確に求めておく必要があった。各層の光学特性を求めるためには、一般にエリプソメトリ計測による光学定数の計測が行われているが、試料として数10um角以上の平面領域を持つ一様な膜が必要である。よって、半導体検査などの場合には、予め光学計測用の専用ウェハを製作するか、前述したTEGパターン上などに均一膜領域を設けて、利用していた。
【0008】
しかし、HDD(Hard Disk Drive)用パターンドメディアでは、現在主流の半導体ウェハサイズである直径12インチと比べて、2.5インチ、3.5インチが主流であり、かつ内周部は回転軸として使用するため利用可能な面積が少ない。このため、検査用にTEGパターンを設けることは困難である。したがって、パターンドメディアでも予め光学計測用の専用ディスクを製作して光学特性を計測する必要があった。しかし、製造プロセス誤差などにより、必ずしも、光学計測用の専用ディスクでの計測と実製品での光学特性が一致することが保証されず、パターン寸法の計測誤差を生じる要因となると予測される。
【0009】
また、スキャットロメトリー法によってパターン形状を計測する場合には、下地膜の変動による計測誤差を考慮する必要がある。下地膜の膜厚変化による分光波形の変化とパターン形状による分光波形の変化が類似している場合、前述したTEGパターン上での均一膜領域を用いて下地膜厚の計測を行う手法が用いられる。しかし、前述の理由によりディスク上に検査用のTEGパターンを設けることは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明ではパターン検査装置を、多層膜上にパターンが形成された基板を載置して回転可能な回転テーブル手段と、回転テーブル手段に載置された試料に照明光を照射する照明手段と、照明手段で光を照射された領域からの反射光を分光して検出する分光検出手段と、分光検出手段で分光して検出した基板のパターンが形成されていない領域からの反射光検出信号を処理して多層膜の光学特性を検出するとともに多層膜を含むパターンからの反射光検出信号を処理して多層膜を含むパターンからの反射光の光学特性を検出する光学特性検出手段と、光学特性検出手段で検出した多層膜からの反射光の光学特性の情報を用いて多層膜を含むパターンからの反射光の光学特性の情報を処理することにより多層膜上に形成されたパターンを検査するパターン検査手段とを備えて構成した。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明では、基板上の多層膜に形成されたパターンを検査する方法において、多層膜のパターンが形成されていない部分に光を照射し、光が照射されたパターンが形成されていない部分からの反射光を分光して検出し、パターンが形成されていない部分からの反射光を分光して検出した信号から多層膜の光学特性を検出し、パターンが形成されている部分に光を照射し、光が照射されたパターンが形成されている部分からの反射光を分光して検出し、パターンが形成されている部分からの反射光を分光して検出した信号からパターンと多層膜とを含む光学特性を検出し、パターンが形成されていない部分からの反射光を分光して検出した信号から得た多層膜の光学特性の情報を用いてパターンが形成されている部分からの反射光を分光して検出した信号から得たパターンと多層膜とを含む光学特性の情報を処理することにより多層膜上に形成されたパターンを検査するようにした。
【0012】
更に、上記課題を解決するために、本発明では、基板上の多層膜に形成されたパターンを検査する方法において、多層膜のパターンが形成されている部分に光を照射し、光が照射されたパターンが形成されている部分からの反射光を分光して検出し、分光して検出したパターンが形成されている部分からの反射光の信号から多層膜の影響を受けやすい波長成分を除去し、多層膜の影響を受けやすい波長成分を除去した信号を処理してパターンを検査するようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パターンドメディアを始めとする微小パターンが形成された試料上の欠陥の特定及び寸法の計測が正確にかつ容易に行え,プロセスの安定化,歩留まり向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係る光学系の概略の構成を示すブロック図である
【図2】検査試料であるパターンドメディアの(a)平面図と(b)断面図である。
【図3】実施例1におけるパターンドメディア検査の処理の流れを示すフロー図である。
【図4】実施例1における片面ディスク検査の処理の流れを示すフロー図である。
【図5】パターンドメディアのサーボパターン付近領域の断面図である。
【図6】実施例2におけるパターンドメディア検査の処理の流れを示すフロー図である。
【図7】(a)パターンが形成されていない一様領域の複数点の分光波形データを示すグラフ、(b)パターンが形成されていない一様領域の波形変化率のデータを示すグラフである。
【図8】パターンが形成されている領域の複数点の分光反波形データを示すグラフである。
【図9】実施例2における検査結果を表示した画面の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態として、フィッティング処理を用いた方法及びその装置と分光波形解析処理を用いた方法及びその装置とについて説明する。
【実施例1】
【0016】
先ず、実施例1として、フィッティング処理を用いた方法について説明する。
図1に本発明による検査装置の一例を示す。
本発明によるディスク検査装置は、照明・検出光学系100とステージ系110、信号処理・制御系120で構成されている。
【0017】
照明・検出光学系100は、光源36、集光レンズ34−1、偏光子37、ハーフミラー32,33、対物レンズ31、集光レンズ34−2、検光子38及び分光検出器35、集光レンズ39及びカメラ30を備えて構成されている。
【0018】
ステージ系110は、回転可能な走査ステージ74と試料を挟持するチャック(図示せず)を備えている。
【0019】
信号処理・制御系120は、波形解析手段71、統合処理手段72、コントローラ73、データベース75、表示画面77を有する入出力手段76を備えて構成されている。
【0020】
上記走査ステージ74は、回転だけする回転ステージでも、また、試料を回転走査しながら半径方向に走査するRθ型ステージでも良い。
【0021】
また上記照明・検出光学系100の光源36は、白色光を照射するランプ、又は、紫外光や赤外光の非可視光を照射するランプ光源でも良く、特定の波長を有するレーザ光源を用いた光学系でも良い。さらには、光源36から発射された照明光に偏光特性を持たせる偏光を光源36とハーフミラー33との間に追加しても良い。
【0022】
また、分光検出器35を、紫外光を含む白色光を波長毎に検出する分光検出器としても良く、また、特定の単波長或いは複数波長の反射光を検出する検出器としても良い。
次に、各部の動作を説明する。
【0023】
検査対象である試料(パターンドメディア)20はその全面が観察可能な回転ステージ74上に設置され,コントローラ73によって,任意の位置が観察可能となる。試料である試料20上の観察点に対して、光源36から発射した光を集光レンズ34−1で集光させて平行光として偏光子37に入射させ、偏光子37を介してハーフミラー33にて反射させたのち、ハーフミラー32を透過させ、対物レンズ31にて集光したビームを照射する。照射された光は試料20上で反射される。
この試料20で反射された光のうち対物レンズ31に入射した反射光は、再び対物レンズ31を通りハーフミラー32とハーフミラー33とを透過した反射光は、集光レンズ34−2にて集光された後、検光子38にて所望の光成分をフィルタイングされ、光検出器35にて検出される。このとき、例えば、光源36に白色光源を、検光子38に偏光板を、光検出器35に分光器を用いると、試料20のパターン形状および光学特性に対応した分光波形が光検出器35で検出される。検出された分光波形は,波形解析手段71に送られ,光学定数および過去分光波形のデータベース75を参照し,検出した波形から所望の光学定数及び膜厚,パターン形状が算出される。
【0024】
また,ハーフミラー32で反射した光を集光レンズ39で集光し,カメラ30で撮像することにより,分光器35で取得した分光データと同位置でのカメラ画像を得ることができる。これらのデータは統合処理手段72において対応付けが行われ,試料20に対して全面での分光波形を検査することができる。検査結果は入出力手段76の表示画面77上にグラフ又は図形によって表示され,欠陥の分布などがマップ上に表示される。
【0025】
図2に試料であるバタードメディア20の1例を示す。(a)には平面図を(b)には断面図を示す。最内周領域21および最外周領域23はパターンの無い一様な領域であり、その中間はパターンが配置されたパターン領域22となる。図1の回転ステージ74を用いて検出位置を移動して検査を行う場合、通常のHDDと同様に試料を回転させつつ、検出系を半径方向に移動させる移動方向24の走査が最速となる。
【0026】
図3に本実施例によるパターンドメディア検査の処理フローを示す。まず、検査対象であるパターンドメディアの中間工程、あるいは最終品を試料20とする。検査装置の回転ステージ74に試料20をロードする(S301)。次にメディア設計情報であるCADデータ309を参照し、図示していない移動手段で照明・検出光学系100を移動させて照明・検出光学系100の検出位置を試料の最内周部21へ移動する(S302)。最内周部21は、パターンの無い一様な領域であるため、この領域において、回転ステージ74を回転させた状態で少なくとも1点以上のポイントにおいて照明・検出光学系100で分光波形検出を行う(S303)。
【0027】
検出した波形を波形解析手段71の内部の処理系310内のデータ記憶部311に送って一旦記憶し、次にデータ記憶部311から波形解析処理部312に送られて、解析処理によって、一様領域での各層の膜厚及び光学定数(複素屈折率)を求めデータ記憶部311に記憶しておく。
【0028】
次に、同様にして、図示していない移動手段で照明・検出光学系100を移動させて照明・検出光学系100の検出位置を試料の最外周部23へ移動する(S304)。 最外周部23も、パターンの無い一様な領域であるため、この領域において、回転ステージ74を回転さた状態で少なくとも1点以上のポイントにおいて照明・検出光学系100で分光波形検出を行う(S305)。検出した波形を処理系310内のデータ記憶部311に送って一旦記憶し、次にデータ記憶部311から波形解析処理部312に送り、解析処理によって、一様領域での各層の膜厚及び光学定数(複素屈折率)を求めデータ記憶部311に記憶しておく。
【0029】
以上の結果から、試料の端部でのパターン部以外の膜厚と光学特性が得られるため、試料全面での膜厚及び光学特性を近似によって算出する。
【0030】
ここで,波形解析処理部312で実行する波形解析処理の詳しい説明をする。一般に,分光波形を用いて多層構造試料の膜厚,膜の光学定数を求める場合,エリプソメトリーを用いて算出することが知られている。本例でも同様の手段によって層構造を決定する。まず,対象となる試料の領域が非パターン領域である場合,設計値を元にして計算上の層構造モデルを構築する。
【0031】
各層で用いる材料と光学特性の基本値はデータベース化しておき,参照可能とする。実際に検出した分光波形と設計値及びデータベースの基本値から算出した波形を比較し,両波形が一致するように,各膜厚値,及び光学特性を繰り返し変化させてフィッティング処理を行う。なお,1点の検出点に対して,独立してフィッティング処理を実施しても良いが,複数点で並列に処理を行っても良い。その場合,面内での光学特性の変化はほとんどないと予想されるため,まず光学特性を初めに決定し,その後,決定した光学特性を使って面内各点の膜厚を決定する手順とすれば効率が良い。
【0032】
次に図示していない移動手段で照明・検出光学系100を移動させて照明・検出光学系100の検出位置をパターンが存在するパターン領域に移動し、回転ステージ74を回転させながら図示していない移動手段で照明・検出光学系100を試料20の半径方向に一定の速度で移動させて照明・検出光学系100でパターン領域22の分光波形検出を行う(S307)。検出した波形は、波形解析手段71の内部の処理系310内のデータ記憶部311に送って一旦記憶され、次にデータ記憶部311から波形解析処理部312に送られて波形処理された後パターン形状算出部313において、スキャッタロメトリー法にて、パターン形状を算出する(S307)。
【0033】
この際、すでにS303及びS305のステップで求めてデータ記憶部311に記憶しておいた各層の膜厚及び、光学定数を用いることにより、パターン計測精度を向上させることができる。検査対象のパターン領域22を全て検出した後、照明・検出光学系100は図示していない移動手段により駆動されて待機領域へ移動し、照明・検出光学系100が待機した状態で回転ステージ74の回転を停止させ、試料20を検査装置よりアンロードして(S308)、1試料の検査を終了する。
【0034】
ここで、説明のため、検出順序を最内周領域21、最外周領域23、パターン領域22としたが、データ記憶部311に十分なデータ保管容量をもたせることにより、検査順序を入れ替え、高速に検出位置を走査することが可能となる。また,パターンの無い一様な領域として内周部及び外周部の検出を行ったが,必ずしも当該部で無くても良く,例えば,片面ディスク試料の場合,パターン形成前の裏面領域でも良い。さらには,中間周であっても非パターン領域であれば,これを検出しても良い。また,波形解析処理部312で膜厚及び光学特性を算出した後に,試料面内の分布を求め,面内の膜厚,光学特性を補間によって近似しても良い。
【0035】
なお、上記した実施例においては、CADデータ309を参照して最内周部21、最外周部23及びパターン領域22を識別していたが、入出力手段76の画面77に試料の画像を表示して画面77上で各領域を指定するようにしても良い。
【0036】
片面ディスク(片側の面だけにパターンが形成されたディスク)の裏面領域(パターンが形成されていない面)を用いた検査フローを図4を用いて説明する。まず,試料を装置に装填する(S401)。その際,非パターン面側(裏面)を検出光学系側となるように装填する。次に、回転ステージ74を回転させて試料を回転させながら図示していない移動手段で照明・検出光学系100を移動させて照明・検出光学系100の検出位置を試料の検出点へ移動する(S402) 。片面ディスクの非パターン面であってもパターン面と同様の磁性体層構造を有しているディスクであれば,非パターン面の分光波形を面内の複数点において検出する。この際,ディスク面内を内挿補間可能なように検出点を配置する。
【0037】
次に、照明・検出光学系100で分光波形検出を行う(S403)。分光波形検出した信号の処理手順については、図3のフローで説明したのと同じである。このようにして,片面ディスクの非パターン面の磁性体層分布を検出した後(S404),試料を反転させてパターンが形成されている表面側が検出光学系側となるようにし(S405),図示していない移動手段で照明・検出光学系100を移動させて照明・検出光学系100の検出位置を試料の検出点へ移動する(S406) 。パターン面側(表面)の分光波形検出を実施する(S407)。その際,レジストパターンの下地膜として,非パターン面での対応する面内箇所の磁性体層分布を利用することで,検査精度を向上できる。この分光波形検出を全測定点の検出が終了するまで実施し、全測定点の測定を完了すると(S408)試料をアンロードして(S409)検査を終了する。
【0038】
図2に示したパターンドメディアにおいて,サーボパターン領域25付近の説明を図5を用いて行う。図5は、図2に示したパターンドメディア20のサーボパターン領域25の断面の概略図であり、厚さ方向の材料の違いによる層構造を省略し単層構造として記載している。サーボパターン領域25は、パターンドメディア20上に複数形成されている。サーボパターンは磁気ディスク記録において,データの読書きを行うために必要な位置制御を行うために必要な情報を保持した重要なパターンである。サーボパターン領域25は、クロックパターン領域251、アドレスパターン領域252、トラッキングパターン領域253で構成されている。
【0039】
サーボパターン領域25の検査においても,下地膜の影響を排除して検査することは必須である。サーボパターンは周期的なパターンでなく,場所によってパターンが異なることから,基準分光波形との単純な比較で検査を行うことはできない。しかし,下地膜の変化による分光波形の変化波長,或いは変化モードとサーボパターンの欠陥による分光波形のそれを比較することにより,周期的パターンであるデータ領域と同様に検査が可能となる。
【実施例2】
【0040】
本実施例においては、分光波形解析処理を用いた方法について説明する。
本実施例において用いる検査装置の構成は、実施例1で説明した図1に示した構成と実質的に同じであり、波形解析手段71における波形解析の手法が異なるだけである。
【0041】
図6に本実施例によるパターンドメディア検査の第2の実施例の処理フローを示す。まず、実施例1と同様に検査対象であるパターンドメディアの試料20とし、検査装置の回転ステージ74に試料をロードする(S601)。次にメディア設計情報であるCADデータ609を参照し、図示していない移動手段で照明・検出光学系100を移動させて照明・検出光学系100の検出位置を試料の最内周部21へ移動する(S602)。最内周部21は、パターンの無い一様な領域であるため、回転ステージ74を回転させた状態でこの領域において少なくとも1点以上のポイントにおいて照明・検出光学系100で分光波形検出を行う(S603)。この検出した分光波形信号を波形解析手段71の内部の処理系610内のデータ記憶部641に送って一旦記憶させ、次に、データ記憶部641から波形解析処理部642に送る。波形解析処理部642における信号処理の内容は後述する。
【0042】
次に、図示していない移動手段で照明・検出光学系100を移動させて照明・検出光学系100の検出位置を試料の最外周部23へ移動する(S604)。 最外周部23もパターンの無い一様な領域であるため、回転ステージ74を回転させた状態でこの領域において少なくとも1点以上のポイントにおいて照明・検出光学系100で分光波形検出を行う(S605)。検出した波形信号を同様に、処理系610内のデータ記憶部641に送って一旦記憶させ、次に、データ記憶部641から波形解析処理部642に送る。
【0043】
波形解析処理部642では、試料上のパターンの無い一様な各領域での分光波形を解析し、波長毎の変化率を求める。次にこの求めた変化率の値に基づき、変化が大きい波長領域を求める。これにより、試料パターンの無い一様な領域21及び23での分光波形変化の様子が把握できる。これらの波長毎の変化率のデータ及び変化が大きい波長領域のデータは、データ記憶部641に記憶される。
【0044】
次に図示していない移動手段で照明・検出光学系100を移動させて照明・検出光学系100の検出位置をパターンが存在するパターン領域22に移動し(S606)、回転ステージ74を回転させながら図示していない移動手段で照明・検出光学系100を試料20の半径方向24に一定の速度で移動させて照明・検出光学系100でパターン領域22の分光波形検出を行う(S607)。
【0045】
検出した波形は、波形解析手段71の内部の波形解析処理部642において解析処理を行うが、既に求めてデータ記憶部641に記憶しておいた分光波形の変化率が大きい波長領域を除外した領域、即ち利用波長域での波形変化を解析する。解析の結果をパターン異常判定部643で処理して、例えば利用波長域での変化が大きい検出領域はパターン異常とするパターン異常判定を行う。
【0046】
検査対象のパターン領域22を全て検出した後、試料を検査装置よりアンロードして(S608)、1試料の検査を終了する。
【0047】
ここで、説明のため、検出順序を最内周領域21、最外周領域23、パターン領域22の順としたが、データ記憶部641に十分なデータ保管容量をもたせることにより、検出順序を入れ替え、高速に検出位置を走査することが可能となる。さらに、本実施例によれば、実施例1のスキャットロメトリ法に比べ、パターン形状そのものを計算する必要が無いため、高速に検査が実施できる。例えば、分光検出器35に高速センサである電子増倍管を多チャネル化したセンサを用いることで、非常に高速に検査を完了することが可能である。例えば、センサ速度を4MHz、試料回転速度を10,000rpm、1つの検出領域(検査スポットと呼ぶ)の大きさをφ30umとすれば、2.5インチディスク全面を4秒程度で検査可能である。
【0048】
なお、上記した実施例においては、CADデータ309を参照して最内周部21、最外周部23及びパターン領域22を識別していたが、入出力手段76の画面77に試料の画像を表示して画面77上で各領域を指定するようにしても良い。
【0049】
図7に波形解析処理部642での波形解析について、詳しく述べる。(a)の処理対象波形50を例えば,最内周領域21及び最外周部領域23での4点の分光波形50a〜50dとする。これらの波形をIi(λ),i=1〜4,λは波長とした場合,波長毎の変化率S(λ)を下式の(数1)とする。
【0050】
【数1】

【0051】
(数1)は波長毎の光量Iの分散(標準偏差σの2乗)を計算したものである。図7(b)の変化率Sを示した波形51から変化率が有意に大きい波長域52を決定する。ここで,たとえば,有意な変化率のしきい値をkσ(標準偏差のk倍)とし,係数kをプロセス条件,試料状態などによって決定する。
次に、ステップS607におけるパターン領域22の分光波形検出信号を受けた波長解析処理部642の処理結果からパターン異常判定部643において実行するパターン異常判定を、図8を用いて詳しく述べる。処理対象波形60を例えばパターン領域22の4点の分光波形60a〜60dとする。分光波形をIi(λ),i=1〜4,λは波長とした場合,図7(b)に示すようなパターンが形成されていない最内周領域21及び最外周領域23などの一様領域での変化率が大きい波長域52に対応する領域を除いた波長域61を設定する。ここで,波長域61をλ=a からλ=bとしてパターン異常判定値E(i)を下記の(数2)とする。 (数2)は,波長域61での分光波形において,平均値からの乖離を求めたものであり,平均自乗誤差と呼ばれるものである。
【0052】
【数2】

【0053】
このパターン異常判定値E(i)を比較し,あるしきい値以上となった検出領域をパターン異常と判定する。
【0054】
あるいは, (数1)で算出したSを用いて, (数2)に示す判定値E’(i)を用いても良い。
【0055】
なお,本例では説明のため,分光波形検出点数を最内周領域21及び最外周領域23とパターン領域22とでおのおの4点としたが,実際の検査では検査に必要なディスク面内の密度,スループットによって検出点数を決定することは言うまでもない。さらに,波長域52,波長域61は1区間としたが,2区間以上にしても良い。さらには,下記の(数3)のE’(i)を用いる場合は,波長域61を全波長域としても良い。
【0056】
【数3】

【0057】
図9に本例による検査結果を入出力部76の画面77に表示した例を示す。
画面77に試料20のディスク面22に対し,各層の分布領域,或いはパターン変化量マップ90を表示する。マップ90上に変化量に応じた領域の分布91を凡例92に従って示すことで,パターンの面内均一性や,下層の影響を読み取ることが可能となる。また,複数毎の試料を比較することで,特定の連続した欠陥か,あるいはその試料固有の欠陥かを見ることで,インプロセス工程でのスタンパ欠陥の有無を判定可能となる。スタンパ欠陥は大量欠陥を生じさせるため早期発見は重要である。
【符号の説明】
【0058】
20・・・試料(パターンドメディア) 30・・・カメラ 31・・・対物レンズ 32,33・・・ハーフミラー 34−1,34−2,39・・・集光レンズ 35・・・分光検出器 36・・・光源 37・・・偏光子 38・・・検光子 71・・・波形解析手段 72・・・統合処理手段 73・・・コントローラ 74・・・回転ステージ 75・・・データベース 76・・・入出力手段 310,610・・・処理系 311,641・・・データ記憶部 312,642・・・波形解析処理部313・・・パターン形状算出部 643・・・パターン異常判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層膜上にパターンが形成された基板を載置して回転可能な回転テーブル手段と、
該回転テーブル手段に載置された前記試料に照明光を照射する照明手段と、
該照明手段で光を照射された領域からの反射光を分光して検出する分光検出手段と、
該分光検出手段で分光して検出した前記基板のパターンが形成されていない領域からの反射光検出信号を処理して前記多層膜の光学特性を検出し、前記多層膜を含むパターンからの反射光検出信号を処理して前記多層膜を含むパターンからの反射光の光学特性を検出する光学特性検出手段と、
該光学特性検出手段で検出した前記多層膜からの反射光の光学特性の情報を用いて前記多層膜を含むパターンからの反射光の光学特性の情報を処理することにより前記多層膜上に形成されたパターンを検査するパターン検査手段と
を備えたことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項2】
前記パターン検査手段は、前記パターンが形成されていない部分からの反射光を分光して検出した信号からフィッティング処理により前記多層膜の膜厚と光学特性を求め、該求めた前記多層膜の膜厚と光学特性の情報を用いて前記パターンが形成されている部分からの反射光を分光して検出した信号からスキャッタロメトリー法により前記パターンの形状を算出することを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置。
【請求項3】
前記パターン検査手段は、前記パターンが形成されている部分の両側の前記パターンが形成されていない部分の前記多層膜の膜厚と光学特性から前記多層膜が形成された基板上の面内の分布を求め、該求めた面内の分布から前記パターンが形成されている部分の膜厚と光学特性を補間して求めることを特徴とする請求項2記載のパターン検査装置。
【請求項4】
前記パターン検査手段は、前記分光検出した前記パターンが形成されていない部分からの反射光について波長ごとの光量の変化率を求め、該光量の変化率が予め設定したしきい値よりも大きい部分の波長領域に対応する領域の反射光を前記パターンが形成されている部分からの反射光から除外し、該除外されて残った波長領域の反射光を用いて前記パターンが形成されている部分のパターンを検査することを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置。
【請求項5】
基板上の多層膜に形成されたパターンを検査する方法であって、
前記多層膜の前記パターンが形成されていない部分に光を照射し、
該光が照射された前記パターンが形成されていない部分からの反射光を分光して検出し、
該パターンが形成されていない部分からの反射光を分光して検出した信号から前記多層膜の光学特性を検出し、
前記パターンが形成されている部分に光を照射し、
該光が照射された前記パターンが形成されている部分からの反射光を分光して検出し、
該パターンが形成されている部分からの反射光を分光して検出した信号から前記パターンと前記多層膜とを含む光学特性を検出し、
前記パターンが形成されていない部分からの反射光を分光して検出した信号から得た前記多層膜の光学特性の情報を用いて前記パターンが形成されている部分からの反射光を分光して検出した信号から得た前記パターンと前記多層膜とを含む光学特性の情報を処理することにより前記多層膜上に形成されたパターンを検査することを特徴とするパターン検査方法。
【請求項6】
前記パターンが形成されていない部分からの反射光を分光して検出した信号からフィッティング処理により前記多層膜の膜厚と光学特性を求め、該求めた前記多層膜の膜厚と光学特性の情報を用いて前記パターンが形成されている部分からの反射光を分光して検出した信号からスキャッタロメトリー法により前記パターンの形状を算出することを特徴とする請求項5記載のパターン検査方法。
【請求項7】
前記パターンが形成されている部分の両側の前記パターンが形成されていない部分の前記多層膜の膜厚と光学特性から前記多層膜が形成された基板上の面内の分布を求め、該求めた面内の分布から前記パターンが形成されている部分の膜厚と光学特性を補間して求めることを特徴とする請求項6記載のパターン検査方法。
【請求項8】
前記分光検出した前記パターンが形成されていない部分からの反射光について波長ごとの光量の変化率を求め、該光量の変化率が予め設定したしきい値よりも大きい部分の波長領域に対応する領域の反射光を前記パターンが形成されている部分からの反射光から除外し、該除外されて残った波長領域の反射光を用いて前記パターンが形成されている部分のパターンを検査することを特徴とする請求項5記載のパターン検査方法。
【請求項9】
基板上の多層膜に形成されたパターンを検査する方法であって、
前記多層膜の前記パターンが形成されている部分に光を照射し、
該光が照射された前記パターンが形成されている部分からの反射光を分光して検出し、
該分光して検出した前記パターンが形成されている部分からの反射光の信号から前記多層膜の影響を受けやすい波長成分を除去し、
該多層膜の影響を受けやすい波長成分を除去した信号を処理して前記パターンを検査する
ことを特徴とするパターン検査方法。
【請求項10】
前記多層膜の影響を受けやすい波長成分は、前記多層膜上の前記パターンが形成されていない部分に光を照射してその反射光を分光して検出し、該分光して検出した信号から抽出したものであることを特徴とする請求項9記載のパターン検査方法。
【請求項11】
前記多層膜の影響を受けやすい波長成分を除去した分光波形信号の平均自乗誤差を求め、該求めた平均自乗誤差を予め設定したしきい値と比較して前記パターンの異常を検出することを特徴とする請求項10記載のパターン検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−165242(P2011−165242A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24350(P2010−24350)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】