パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計
【課題】基板を所望の形状に加熱成形することができるパッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供する。
【解決手段】成形工程は、貫通孔形成工程において、スルーホール30,31に相当する凸部53を有するスルーホール形成用型51でベース基板用ウエハ41を押圧しつつ、加熱することによりスルーホール30,31を形成する工程であり、スルーホール形成用型51は開気孔率が14%以上の材料で構成されていることを特徴とする。
【解決手段】成形工程は、貫通孔形成工程において、スルーホール30,31に相当する凸部53を有するスルーホール形成用型51でベース基板用ウエハ41を押圧しつつ、加熱することによりスルーホール30,31を形成する工程であり、スルーホール形成用型51は開気孔率が14%以上の材料で構成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子(パッケージ)が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装(SMD)型の圧電振動子が知られている。表面実装型の圧電振動子は、例えば互いに接合されたガラス材料からなるベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片(電子部品)とを備えている。
【0003】
このような圧電振動子では、ベース基板に形成された貫通孔に貫通電極を形成し、この貫通電極によってキャビティ内の圧電振動片と、キャビティ外の外部電極とを電気的に接続する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
貫通電極を形成する方法としては、金属材料からなる金属ピンを用いる方法が知られている。具体的には、まずベース基板に形成された貫通孔に金属ピンを挿通するとともに、貫通孔内にガラスフリットを充填する。その後、ガラスフリットを焼成してベース基板と金属ピンとを一体化させることで、貫通孔を塞ぐとともに、圧電振動片と外部電極とを電気的に接続できるようになっている。この場合、貫通電極に金属ピンを使用することにより、安定した導電性を確保することができると考えられる。
しかしながら、上述した方法では、ガラスフリットに含まれる有機物のバインダが焼成により除去されるので、ガラスフリットの表面には体積減少による凹部が生じることがあった。そして、このガラスフリットの凹部が、後に行う電極膜(外部電極等)を形成する工程で断線の原因となることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−124845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、近時では、ベース基板に形成された貫通孔に金属ピンを溶着させることで、貫通電極を形成する方法が開発されている。この方法では、まずカーボン(等方性電気黒鉛質)等からなる貫通孔形成用型でベース基板を押圧しつつ、加熱することで、金属ピンを挿通させるための貫通孔を形成する(1次成形)。その後、貫通孔内に金属ピンを挿通させた状態で、ベース基板及び金属ピンをカーボン等からなる溶着型内にセットし、押圧しつつ加熱する(2次成形)。これにより、ベース基板が溶着型内で流動して金属ピンと貫通孔との隙間を塞ぐとともに、ベース基板が金属ピンに溶着するようになっている。なお、一般的に上述した1次成形は窒素雰囲気で、2次成形は大気雰囲気で成形を行っている。
【0006】
ここで、上述した方法を採用するにあたって、未だ以下の課題が残されている。
まず、ベース基板を加熱すると、ベース基板から型内にアウトガスが放出される。そして、アウトガスが型内に充満すると、アウトガスの逃げ場がなくなってしまう。すると、ベース基板からアウトガスが抜けきらず、ベース基板内に気泡となって残存する。その結果、ベース基板が型崩れを起こし(いわゆる、泡現象が発生する)、ベース基板を所望の形状に維持することができないという問題がある。
【0007】
また、圧電振動子では、ベース基板に貫通電極を形成した後、貫通電極と外部とを電気的接続する外部電極や、貫通電極と圧電振動片とを電気的接続する引き回し電極等の電極膜を、フォトリソグラフィ技術やスパッタリング法等を用いて形成する。そのため、貫通電極と電極膜との導通を確保するためには、ベース基板上における貫通電極の位置精度(貫通孔や金属ピンの位置精度)を高くする必要がある。
【0008】
そこで本発明は、基板を所望の形状に加熱成形することができるパッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係るパッケージの製造方法は、互いに接合されたガラス材料からなる複数の基板と、前記複数の基板の内側に形成された電子部品を封入可能なキャビティとを備えたパッケージの製造方法であって、前記基板を成形型で押圧しつつ加熱して成形する成形工程を有し、前記成形型は開気孔率が14%以上の材料で構成されていることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、開気孔率が14%以上の材料で成形型を構成することで、加熱成形時において、基板から放出されるアウトガスが、成形型の開気孔内に入り込む。すなわち、成形型の開気孔が基板から放出されるアウトガスの逃げ場となり、基板内におけるアウトガスの残存量を低減できるので、上述した泡現象の発生を抑制できる。したがって、加熱成形による基板の型崩れを抑制し、基板を所望の形状に維持することができる。
なお、開気孔率とは、試料の外形容積を1とした場合、この中に占める開気孔部分の容積の百分比である(JIS R 1634)。
【0011】
また、前記成形型は、熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料で構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、成形型の熱膨張係数と基板(ガラス材料の場合、一般的に8.3ppm/℃程度)の熱膨張係数との差を縮小できるので、成形工程での加熱に伴う成形型と基板との間に生じる歪等を抑制でき、成形工程時の位置精度を向上できる。この場合、例えば貫通電極の形成時において基板上の所望の位置に貫通電極を配置できる。その結果、その後に形成される外部電極や引き回し電極等の電極膜と、貫通電極との導通を確保できる。
【0012】
また、前記成形工程は不活性ガス雰囲気下で行い、前記成形型はカーボンを主成分とする材料からなることを特徴としている。
この構成によれば、カーボンは一般的に熱膨張係数がガラス材料に近いため、上述したように加熱に伴う成形型と基板との間に生じる歪等を抑制でき、成形工程時の位置精度を向上できる。
しかも、不活性ガス雰囲気下で成形工程を行うことで、カーボン製の成形型を用いた場合であっても、成形型の酸化を抑制できるので、成形型の基板との濡れ性の上昇を抑制し、成形型の離型性を維持できる。また、成形型の耐久性を向上させることができる。
さらに、カーボンを主成分とする材料は、材料コストが比較的安いため、安価な成形型を作成できる。さらに、カーボンを主成分とする材料は、加工が容易であるため、NCマシン等によって成形型を簡単、かつ高精度に形成できる。これにより、成形型の加工表面における平面度を確保できるため、加工表面に倣って成形される基板の平面度も確保できる。
【0013】
また、前記成形工程は大気雰囲気下で行い、前記成形型はボロンナイトライドを主成分とする材料からなることを特徴としている。
この構成によれば、ボロンナイトライドを主成分とする材料は、耐酸化性に優れているため、大気雰囲気中で成形工程を行った場合でも、成形型の基板との濡れ性の上昇を抑制し、成形型の酸化を抑制できる。これにより、上述したように成形型の離型性を維持できる。また、成形型の耐久性を向上させるとともに、比較的高温での成形を行うことができる。
さらに、ボロンナイトライドを主成分とする材料は、機械加工性に優れているため、成形型の加工表面における平面度を確保することができ、加工表面に倣って成形される基板の平面度を確保できる。
【0014】
また、前記キャビティの内部と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、前記貫通電極形成工程は、前記複数の基板のうち、貫通電極形成基板の厚さ方向に沿う凹部を形成する凹部形成工程と、前記貫通電極形成基板の前記凹部内に、導電材料で形成された芯材部を挿入する芯材部配置工程とを有し、前記成形工程は、前記凹部形成工程において、前記凹部に相当する凸部を有する前記成形型で前記貫通電極形成基板を押圧しつつ、加熱することにより前記凹部を形成する工程であることを特徴としている。
この構成によれば、上述したように貫通電極形成基板の泡現象等の発生を抑制できるので、加熱成形後の貫通電極形成基板を所望の形状に維持できる。
しかも、熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料により構成された成形型を用いた場合には、成形型と貫通電極形成基板との間の歪を抑制できるため、貫通電極形成基板をより高精度に成形できる。また、凹部を所望の位置に高精度に形成することができる。そして、このように形成された凹部内に芯材部を挿入することで、貫通電極を所望の位置に高精度に配置できる。
【0015】
また、前記貫通電極形成工程は、前記芯材部配置工程の後段で、前記貫通電極形成基板を前記芯材部に溶着させる溶着工程を有し、前記成形工程は、前記溶着工程において、前記貫通電極形成基板を前記成形型で押圧しつつ、加熱することにより、前記貫通電極形成基板を前記芯材部に溶着させる工程であることを特徴としている。
この構成によれば、上述したように貫通電極形成基板の泡現象等の発生を抑制できるので、溶着後の貫通電極形成基板を所望の形状に形成できる。
しかも、熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料により構成された成形型を用いた場合には、成形型と貫通電極形成基板との間で発生する歪を抑制できる。これにより、貫通電極形成基板をさらに高精度に成形できる。また、成形型と貫通電極形成基板との間で発生する歪によって、成形型から芯材部へ作用する応力を低減できるので、貫通孔内の芯材部が成形型に引っ張られ、所望の位置から変位したり、倒れ込んだりすることを抑制できる。その結果、貫通電極形成基板上における貫通電極の位置精度を向上できるため、その後に形成される外部電極や引き回し電極等の電極膜と、貫通電極との導通を確保できる。
【0016】
また、前記複数の基板のうち、キャビティ形成基板に対して、前記キャビティを形成するキャビティ形成工程を有し、前記成形工程は、前記キャビティ形成工程において、前記キャビティに相当する凸部を有する前記成形型で前記キャビティ形成基板を押圧しつつ、加熱することにより前記キャビティを形成する工程であることを特徴としている。
この構成によれば、上述したようにキャビティ形成基板の泡現象等の発生を抑制できるので、加熱成形後のキャビティ形成基板を所望の形状に形成できる。
しかも、熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料により成形型を作成した場合には、成形型とキャビティ形成基板との間の歪を抑制できるため、キャビティを所望の位置に高精度に形成することができる。そのため、気密性に優れたパッケージを提供することができる。
【0017】
また、本発明のパッケージは、上記本発明のパッケージの製造方法により製造されたことを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージの製造方法を使用してパッケージを製造することで、基板内でのアウトガスの残存量を低減して、パッケージの気孔率を低減できるので、気密性に優れたパッケージを提供することができる。また、貫通電極の位置精度を向上できるので、キャビティの内部と外部との導通性に優れたパッケージを提供することができる。
【0018】
また、本発明の圧電振動子は、上記本発明のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明の気密性に優れたパッケージを備えているので、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を製造することができる。
【0019】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0022】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に振動特性に優れた信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るパッケージの製造方法及びパッケージによれば、開気孔率が14%以上の材料で成形型を構成することで、基板を所望の形状に加熱成形することができるため、気密性に優れ、かつキャビティの内部と外部との導通性にも優れたパッケージを提供することができる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、上記本発明のパッケージを備えているので、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を製造することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上記圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に振動特性に優れた信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係る圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】圧電振動子のリッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う側面断面図である。
【図4】圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動片の平面図である。
【図6】圧電振動片の底面図である。
【図7】図5のB−B線に沿う断面図である。
【図8】図1に示す圧電振動子を製造する際に使用する鋲体の斜視図である。
【図9】第1実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図10】ウエハ体の分解斜視図である。
【図11】図1に示す圧電振動子に備えるベース基板の元となるベース基板用ウエハにスルーホールを形成した状態を示す斜視図である。
【図12】第1実施形態に係るベース基板用ウエハの断面図を示しており、貫通孔形成工程を説明するための工程図である。
【図13】第1実施形態に係るベース基板用ウエハの断面図を示しており、芯材部挿入工程、溶着工程、及び研磨工程を説明するための工程図である。
【図14】泡現象が発生した状態を示すサンプルウエハの平面写真である。
【図15】第2実施形態に係る図2のA−A線に相当する側面断面図である。
【図16】第2実施形態に係る鋲体の斜視図である。
【図17】第2実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図18】第2実施形態に係るベース基板用ウエハの断面図を示しており、凹部形成工程を説明するための工程図である。
【図19】第2実施形態に係るベース基板用ウエハの断面図を示しており、芯材部挿入工程及び溶着工程を説明するための工程図である。
【図20】実施形態に係る発振器の構成図である。
【図21】実施形態に係る電子機器の構成図である。
【図22】実施形態に係る電波時計の構成図である。
【図23】リッド基板用ウエハの断面図を示しており、キャビティ形成工程の他の方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
(圧電振動子)
次に、本発明の実施形態に係る圧電振動子を、図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る圧電振動子の外観斜視図である。図2は、圧電振動子のリッド基板を取り外した状態の平面図である。図3は、図2のA−A線に沿う側面断面図である。図4は、圧電振動子の分解斜視図である。なお図4では、図面を見易くするために、後述する圧電振動片4の励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17及び重り金属膜21の図示を省略している。
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2及びリッド基板3が接合膜35を介して陽極接合されたパッケージ9と、パッケージ9のキャビティCに収納された圧電振動片4と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。
【0026】
図5は圧電振動片の平面図であり、図6は底面図であり、図7は図5のB−B線に沿う断面図である。
図5〜図7に示すように、圧電振動片4は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。この圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10,11と、該一対の振動腕部10,11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10,11の両主面上に形成された溝部18とを備えている。この溝部18は、該振動腕部10,11の長手方向に沿って振動腕部10,11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0027】
また、本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部10,11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10,11を振動させる第1の励振電極13及び第2の励振電極14からなる励振電極15と、第1の励振電極13及び第2の励振電極14に電気的に接続されたマウント電極16,17とを有している。励振電極15、マウント電極16,17及び引き出し電極19,20は、例えば、クロム(Cr)やニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)等の導電性材料の被膜により形成されている。
【0028】
励振電極15は、一対の振動腕部10,11を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極である。励振電極15を構成する第1の励振電極13及び第2の励振電極14は、一対の振動腕部10,11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部18上と他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極14が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部18上とに主に形成されている。また、第1の励振電極13及び第2の励振電極14は、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極19,20を介してマウント電極16,17に電気的に接続されている。
【0029】
また、一対の振動腕部10,11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。
【0030】
図1,図3及び図4に示すように、リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる陽極接合可能な基板であり、略板状に形成されている。リッド基板3におけるベース基板2との接合面側には、圧電振動片4を収容するキャビティC用の凹部3aが形成されている。
【0031】
リッド基板3におけるベース基板2との接合面側の全体に、陽極接合用の接合膜35が形成されている。すなわち接合膜35は、凹部3aの内面全体に加えて、凹部3aの周囲の額縁領域に形成されている。本実施形態の接合膜35はSi膜で形成されているが、接合膜35をAlで形成することも可能である。なお接合膜として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材を可能することも可能である。そして後述するように、この接合膜35とベース基板2とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0032】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる基板であり、図1〜図4に示すように、リッド基板3と同等の外形で略板状に形成されている。
ベース基板2の上面2a側(リッド基板3との接合面側)には、図1〜図4に示すように、一対の引き回し電極36,37がパターニングされている。各引き回し電極36,37は、例えば下層のCr膜及び上層のAu膜の積層体によって形成されている。
そして図3,図4に示すように、引き回し電極36,37の表面に、金等のバンプBを介して、上述した圧電振動片4のマウント電極16,17がバンプ接合されている。圧電振動片4は、ベース基板2の上面2aから振動腕部10,11を浮かせた状態で接合されている。
【0033】
またベース基板2には、該ベース基板2を貫通する一対の貫通電極32,33が形成されている。貫通電極32,33は、スルーホール30,31の中に導電性の金属材料からなる芯材部28を配設して形成され、芯材部28を通して安定した電気導通性が確保されている。一方の貫通電極32は、一方の引き回し電極36の直下に形成されている。他方の貫通電極33は、振動腕部11の先端付近に形成され、引き回し配線を介して他方の引き回し電極37に接続されている。
【0034】
芯材部28は、ベース基板2との溶着によって固定されており、芯材部28がスルーホール30,31を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持している。芯材部28は、例えば、コバールやFe−Ni合金(42アロイ)等の、熱膨張係数がベース基板2のガラス材料と近い(好ましくは同等か低め)材料により円柱状に形成された導電性の金属芯材で、両端が平坦で且つベース基板2の厚さと同じ厚さである。
【0035】
図8は、鋲体の斜視図である。
なお、貫通電極32,33が完成品として形成された場合には、上述したように芯材部28は、円錐台状でベース基板2の厚さと同じ厚さとなるように形成されているが、製造過程では、図8に示すように、芯材部28の一方の端部に連結された平板状の土台部29と共に鋲体27を形成している。すなわち、芯材部28は、延在方向が土台部29の厚さ方向に一致するように支持されている。また、芯材部28の厚さ(高さ)は、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ41(図10参照)の厚さよりも薄く形成されている。
土台部29及びベース基板用ウエハ41から突出した芯材部28の先端部は、製造過程において、研磨され除去されている。またベース基板2の下面2bには、図1,図3及び図4に示すように、一対の外部電極38,39が形成されている。一対の外部電極38,39は、ベース基板2の長手方向の両端部に形成され、一対の貫通電極32,33に対してそれぞれ電気的に接続されている。
【0036】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極38,39に対して、所定の駆動電圧を印加する。すると、一方の外部電極38から、一方の貫通電極32及び一方の引き回し電極36を介して、圧電振動片4の第1の励振電極13に通電される。また他方の外部電極39から、他方の貫通電極33及び他方の引き回し電極37を介して、圧電振動片4の第2の励振電極14に通電される。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極13及び第2の励振電極14からなる励振電極15に電流を流すことができ、一対の振動腕部10,11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10,11の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0037】
(圧電振動子の製造方法)
次に上述した圧電振動子の製造方法について説明する。図9は、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。図10はウエハ体の分解斜視図である。以下には、ベース基板用ウエハ(貫通電極形成基板)41とリッド基板用ウエハ(キャビティ形成基板)42との間に複数の圧電振動片4を封入してウエハ体43を形成し、ウエハ体43を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図10以下の各図に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
【0038】
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S1)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S30)とを主に有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S1)、ベース基板用ウエハ作製工程(S20)及びリッド基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0039】
圧電振動片作製工程(S1)では、図5〜図7に示す圧電振動片4を作製する。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄等の適切な処理を施した後、ウエハをフォトリソグラフィ技術によって圧電振動片4の外形形状にパターニングするとともに、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17、重り金属膜21を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製することができる。次に、圧電振動片4の共振周波数の粗調を行う。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、振動腕部10,11の重量を変化させることで行う。
【0040】
次に、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ41を製作する工程を行う(S10)。まず、図10,図11に示すようなベース基板用ウエハ41を形成する。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去する(S11)。なお、図11は、ベース基板用ウエハ41の一部分を示す斜視図であり、実際にはベース基板用ウエハ41は略円板状である(図10参照)。また、図11中のスルーホール30,31は、後述するベース基板用ウエハ41に貫通電極32,33を形成する工程にて形成される。
【0041】
(貫通電極形成工程)
続いて、ベース基板用ウエハ41に貫通電極32,33を形成する貫通電極形成工程を行う(S10A)。
(貫通孔形成工程)
まず、ベース基板用ウエハ41を貫通するスルーホール(凹部)30,31を形成する(S12)。図12はベース基板用ウエハの断面図を示しており、貫通孔形成工程(凹部形成工程)を説明するための工程図である。なお、本明細書では、スルーホール30,31等、ベース基板用ウエハ41を厚さ方向に貫通する場合も含めて、ベース基板用ウエハ41の表面から窪んだ部位は凹部に含んでいる。
スルーホール30,31の形成は、図12に示すように、平板部52と平板部52の片面に形成された凸部53とを備えたカーボン材料からなるスルーホール形成用型(成形型)51で、ベース基板用ウエハ41を押圧しつつ加熱して行う。
【0042】
平板部52は、ベース基板用ウエハ41を押圧する時に、ベース基板用ウエハ41の表面に接するフラットな部材である。
凸部53は、ベース基板用ウエハ41を押圧する時に、ベース基板用ウエハ41を貫通してスルーホール30,31を形成する部材である。凸部53の側面には型抜き用のテーパーが形成され、凸部53の形状がスルーホール30,31に転写される。このとき、スルーホール30,31は、芯材部28の径よりも20〜30μm程大きい内径となるように形成される。なお、後の製造工程でベース基板用ウエハ41が芯材部28に溶着することで、スルーホール30,31は芯材部28に塞がれる。
【0043】
貫通孔形成工程(S12)では、まず図12(a)に示すように、スルーホール形成用型51を凸部53が上側(図12中上側)となるように設置し、その上にベース基板用ウエハ41を設置する。そして、不活性ガス雰囲気(窒素雰囲気)下に保持された加熱炉内に配置し、約900℃程の高温状態で圧力をかけることで、ベース基板用ウエハ41に凸部53を貫通させる。
その後、ベース基板用ウエハ41を徐々に温度を下げながら冷却する。
【0044】
上述したように貫通孔形成工程(S12)では、カーボン製のスルーホール形成用型51を使用しているが、加熱炉内が不活性ガス雰囲気(窒素雰囲気)下に保持されているので、スルーホール形成用型51の酸化を抑制でき、スルーホール形成用型51の耐久性を向上できる。この場合、加熱炉の温度は最高1000℃程度まで加熱することができる。また、スルーホール形成用型51の酸化に伴う濡れ性の増加も抑制できるので、ベース基板用ウエハ41からのスルーホール形成用型51の離型性も維持できる。なお、図示しないが、ベース基板用ウエハ41の上側には、スルーホール形成用型51とでベース基板用ウエハ41を挟み込み、スルーホール形成用型51から作用する圧力を支持する受型が配置されている。
【0045】
ここで、本実施形態のスルーホール形成用型51は、開気孔率が14%以上で、かつ熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料を用いて作成することが好ましい。
スルーホール形成用型51の開気孔率を14%以上にすることで、加熱成形時にベース基板用ウエハ41から放出されるアウトガスが、スルーホール形成用型51の開気孔内に入り込む。すなわち、スルーホール形成用型51の開気孔がベース基板用ウエハ41から放出されるアウトガスの逃げ場となり、ベース基板用ウエハ41内でのアウトガスの残存量を低減して、上述した泡現象の発生を抑制できる。したがって、加熱成形後のベース基板用ウエハ41の型崩れを抑制し、ベース基板用ウエハ41を所望の円板形状に維持することができる。
また、離型時にはスルーホール形成用型51の気孔内に存在するガスが、スルーホール形成用型51とベース基板用ウエハ41との間に入り込むため、加熱成形後のベース基板用ウエハ41がスルーホール形成用型51に接着し難くなり、スルーホール形成用型51の離型性を向上させることができる。そのため、ベース基板用ウエハ41の割れ等を防ぐとともに、製造効率を向上できる。なお、開気孔率とは、試料(スルーホール形成用型51)の外形容積を1とした場合、この中に占める開気孔部分の容積の百分比である(JIS R 1634)。
【0046】
さらに、スルーホール形成用型51の熱膨張係数を4ppm/℃以上にすることで、スルーホール形成用型51の熱膨張係数とベース基板用ウエハ(一般的に8.3ppm/℃程度)の熱膨張係数との差を縮小できるので、加熱に伴うスルーホール形成用型51とベース基板用ウエハ41との間に生じる歪を抑制できる。これにより、ベース基板用ウエハ41を所望の厚みや外径に高精度に形成できる。また、ベース基板用ウエハ41上において凸部53を所望の位置に配することができるので、スルーホール30,31の位置精度を確保することができる。
このような条件を満たす材料として、本実施形態のスルーホール形成用型51は、上述したようにカーボンを用いている。カーボンを主成分とする材料は、材料コストが比較的安いため、安価なスルーホール形成用型51を作成できる。さらに、カーボンを主成分とする材料は、加工が容易であるため、NCマシン等によってスルーホール形成用型51を簡単、かつ高精度形成できる。また、スルーホール形成用型51の加工表面における平面度(例えば、30μm以内)を確保できるため、加工表面に倣って成形されるベース基板用ウエハ41の平面度も確保することができる。
【0047】
(芯材部挿入工程)
続いて、スルーホール30,31内に芯材部28を挿入する工程を行う(S13)。図13はベース基板用ウエハの断面図を示しており、芯材部挿入工程、溶着工程、及び研磨工程を説明するための工程図である。
図13(a)に示すように、ベース基板用ウエハ41を後述する溶着型61の加圧型63の上に設置して、スルーホール30,31内に鋲体27の芯材部28を上側から挿入し、鋲体27の土台部29とベース基板用ウエハ41とを接触させて、加圧型63と後述する溶着型61の受型62とでベース基板用ウエハ41及び鋲体27を挟み、図13(b)に示すように、上下反転させる。なお、芯材部28をスルーホール30,31に挿入する工程は、振り込み機を使用して行う。
このとき、土台部29は、スルーホール30,31の開口よりも大きく、開口を塞ぐことができる平面形状とする。芯材部28は土台部29と連結した鋲体27なので、スルーホール30,31に挿入しやすく作業性がよい。
【0048】
(溶着工程)
続いて、ベース基板用ウエハ41を加熱し、芯材部28にベース基板用ウエハ41を溶着させる工程を行う(S14)。
溶着工程は、ベース基板用ウエハ41の下側に設置される受型62と、ベース基板用ウエハ41の上側に設置される加圧型63と、受型62と加圧型63の側方に設置される側板64と、を備えたカーボン材料からなる溶着型61にベース基板用ウエハ41を1枚ずつ設置し、ベース基板用ウエハ41を押圧しつつ加熱して行う。
【0049】
受型62は、ベース基板用ウエハ41の下側を及び鋲体27を保持する型で、ベース基板用ウエハ41の平面形状よりも大きく、スルーホール30,31に鋲体27の芯材部28が挿通されて、ベース基板用ウエハ41から土台部29が突出するベース基板用ウエハ41の下側(図13(b)中下側)に沿った形状をしている。
受型62は、ベース基板用ウエハ41を保持する時にベース基板用ウエハ41の表面に接する受型平板部65と、土台部29に接して土台部29に相当する凹部の受型凹部66とを備えている。
受型凹部66は、ベース基板用ウエハ41に設置された鋲体27の土台部29の位置に合わせて形成されている。受型凹部66に土台部29がはめ込まれることで、受型62は鋲体27を保持できて、鋲体27が外れたり、芯材部28がずれたりすることを防ぐことができる。
【0050】
加圧型63は、ベース基板用ウエハ41を押圧する型で、受型62と同じ平面形状で、スルーホール30,31に鋲体27の芯材部28が挿通されて、ベース基板用ウエハ41から芯材部28の先端部が突出するベース基板用ウエハ41の上側(図13(b)中上側)に沿った形状をしている。
加圧型63は、ベース基板用ウエハ41の上側を押圧する時に、ベース基板用ウエハ41に接する加圧型平板部67と、芯材部28の先端部が挿入される加圧型凹部68とを備えている。
【0051】
加圧型凹部68は、ベース基板用ウエハ41から突出する芯材部28の高さよりも約0.2mm深さのある凹部で、芯材部28の先端部と加圧型凹部68の底部との間には隙間69を備えている。
芯材部28の先端部と加圧型凹部68の底部との間に隙間69があることにより、加熱による芯材部28の膨張を逃がすことができる。また、加圧型63でベース基板用ウエハ41押圧する時に、加圧型63から芯材部28へ圧力がかからず、芯材部28の変形や変位を防ぐことができる。
加圧型凹部68は、ベース基板用ウエハ41から突出する芯材部28の位置に合わせて形成されている。
【0052】
また、加圧型63は、端部に加圧型63を貫通するスリット70を備えている。スリット70は、ベース基板用ウエハ41を加熱し押圧した時の空気やベース基板用ウエハ41の余剰なガラス材料の逃げ穴とすることができる。
【0053】
溶着工程は、まず、溶着型61にセットされたベース基板用ウエハ41及び鋲体27を金属製のメッシュベルトの上に乗せた状態で大気雰囲気下に保持された加熱炉内に入れて加熱する。そして、加熱炉内に配置されたプレス機等を利用して、加圧型63によって、ベース基板用ウエハ41を例えば30〜50g/cm2の圧力で加圧する。なお、加熱温度は、ベース基板用ウエハ41の730℃以上(ソーダ石灰ガラスの軟化点温度前後)に設定する。
【0054】
そして、ベース基板用ウエハ41を高温状態で加圧することによって、ベース基板用ウエハ41が流動して芯材部28とスルーホール30,31との隙間を塞ぎ、ベース基板用ウエハ41が芯材部28に溶着して、芯材部28がスルーホール30,31を塞ぐ状態となる。なお、溶着型61に他の凸部や凹部を形成しておくことにより、ベース基板用ウエハ41を芯材部28に溶着させると共にベース基板用ウエハ41に凹部や凸部を形成することも可能である。
【0055】
次に、溶着工程の加熱時の730℃から徐々に温度を下げ、ベース基板用ウエハ41を冷却する(S15)。これにより、図13(c)に示すような、鋲体27の芯材部28がスルーホール30,31を塞いだ状態のベース基板用ウエハ41が形成される。
【0056】
ここで、本実施形態の溶着型61は、上述したスルーホール形成用型51と同様に、開気孔率が14%以上で、かつ熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料を用いて作成することが好ましい。
溶着型61の開気孔率を14%以上にすることで、上述した泡現象の発生を抑制して、ベース基板用ウエハ41を所望の円板形状に維持することができるとともに、溶着型61の離型性を向上させることができる。
さらに、溶着型61の熱膨張係数を4ppm/℃以上にすることで、加熱に伴う溶着型61とベース基板用ウエハ41との間に生じる歪を抑制できる。これにより、ベース基板用ウエハ41を所望の厚みや外径に高精度に形成できる。また、溶着型61とベース基板用ウエハ41との間に生じる歪によって、溶着型61から鋲体27へ作用する応力を低減できるため、溶着型61の受型凹部66内にはめ込まれた土台部29が溶着型61に引っ張られ、鋲体27が所望の位置から変位したり、倒れ込んだりすることを抑制できる。これにより、ベース基板用ウエハ41上における貫通電極32,33の位置精度を向上できるため、貫通電極32,33に接続される外部電極38,39や引き回し電極36,37との導通性を確保することができる。
【0057】
このような条件を満たす材料として、本実施形態の溶着型61はボロンナイトライド等を主成分とする材料により構成されている。ボロンナイトライドを主成分とする材料は、耐酸化性に優れているため、大気雰囲気中で溶着工程を行った場合でも溶着型61の酸化を抑制できる。これにより、溶着型61の濡れ性の上昇を抑制し、離型性を維持できる。また、溶着型61の耐久性を向上させるとともに、比較的高温での成形を行うことができる。さらに、ボロンナイトライドは、機械加工性に優れているため、溶着型61の加工表面における平面度(例えば、30μm以内)を確保でき、加工表面に倣って成形されるベース基板用ウエハ41の平面度も確保することができる。
【0058】
(研磨工程)
続いて、鋲体27の土台部29及び芯材部28の突出部分を研磨して除去する(S16)。
鋲体27の土台部29及び芯材部28の研磨は公知の方法で行う。そして、図13(d)に示すように、ベース基板用ウエハ41の表面と貫通電極32,33(芯材部28)の表面とが、略面一な状態となる。このようにして、ベース基板用ウエハ41に貫通電極32,33が形成される。なお、土台部29や芯材部28の突出した部分は除去せずに、そのまま使用してもよい。例えば、土台部29や芯材部28の突出した部分は放熱板などとして使用することができる。
【0059】
このように、ベース基板用ウエハ41及び鋲体27を溶着型61で押圧しつつ加熱することで、ベース基板用ウエハ41を芯材部28に溶着させているので、有機物のバインダを含まない材料で貫通電極32,33を形成することができる。そのため、スルーホール30,31と芯材部28との間をガラスフリットで埋める場合と異なり、有機物の除去に伴う体積減少がなく、貫通電極32,33周囲に凹部が生じることを防ぐことができる。
【0060】
次に、図10に示すように、ベース基板用ウエハ41の上面に導電性材料をパターニングして、引き回し電極形成工程を行う(S17)。このようにして、ベース基板用ウエハ41の製作工程が終了する。
【0061】
次に、ベース基板2の製作と同時または前後のタイミングで、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ42を製作する(S30)。リッド基板3を製作する工程では、まず、後にリッド基板3となる円板状のリッド基板用ウエハ42を形成する。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去する(S31)。次いで、リッド基板用ウエハ42にエッチングやプレス加工等によりキャビティC用の凹部3aを形成する(S32)。次に、ベース基板用ウエハ41との接合面を研磨する。
【0062】
次に、リッド基板用ウエハ42におけるベース基板用ウエハ41との接合面及び凹部3aの内面にスパッタ等により接合膜35を形成する(S33)。このように、接合膜35をリッド基板用ウエハ42の内面全体に形成することで、接合膜35のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。なお、接合膜35は、成膜後にパターニングすることで、リッド基板用ウエハ42におけるベース基板用ウエハ41との接合面のみに形成する構成でも構わない。また、接合膜形成工程(S33)の前に接合面を研磨しているので、接合膜35の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ41との安定した接合を実現することができる。
【0063】
そして、上述した圧電振動片作製工程(S1)で作製した複数の圧電振動片4を、ベース基板用ウエハ41の各引き回し電極36,37上に、それぞれ金等のバンプBを介してマウントする。そして、上述した各ウエハ41,42の作成工程で作成されたベース基板用ウエハ41及びリッド基板用ウエハ42を重ね合わせる。これにより、マウントされた圧電振動片4が、リッド基板用ウエハ42に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ41とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0064】
両基板用ウエハ41,42の重ね合わせ後、重ね合わせた2枚のウエハ41,42を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハの外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する。これにより、圧電振動片4をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ41とリッド基板用ウエハ42とが接合したウエハ体43を得ることができる。
その後、一対の貫通電極32,33にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38,39を形成し、圧電振動子1の周波数を微調整する。そして、ウエハ体43を切断線Mに沿って個片化する切断工程を行い、内部の電気特性検査を行うことで圧電振動片4を収容した圧電振動子1が形成される。
【0065】
このように、本実施形態では、開気孔率が14%以上で、かつ熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料からなるスルーホール形成用型51及び溶着型61を用いてベース基板用ウエハ41を加熱成形する構成とした。
この構成によれば、上述したように開気孔率を14%以上に設定することで、上述したようにベース基板用ウエハ41の泡現象の発生を抑制できるとともに、加熱成形後のスルーホール形成用型51及び溶着型61の離型性を向上できる。これにより、圧電振動子1の歩留まりを向上できる。また、ベース基板用ウエハ41でのアウトガスの残存量を低減して、ベース基板用ウエハ41の気孔率を下げることができるので、ベース基板用ウエハ41とリッド基板用ウエハ42の凹部3aが陽極接合されてなる圧電振動子1のキャビティCの気密性を確保することができる。よって、気密性に優れたパッケージ9を製造することができるので、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子1を製造することができる。
【0066】
さらに、熱膨張係数を4ppm/℃以上に設定することで、加熱に伴うスルーホール形成用型51及び溶着型61とベース基板用ウエハ41との間に生じる歪等を抑制して、ベース基板用ウエハ41を所望の形状に形成できるとともに、貫通電極32,33を所望の位置精度で形成できる。これにより、後に形成される引き回し電極36,37や外部電極38,39と、貫通電極32,33との導通を確保できるので、キャビティCの内部と外部との導通性に優れたパッケージ9を提供することができる。
【0067】
(実施例)
ここで、本発明を、実施例を挙げて説明する。
本願発明者は、上述した凹部形成用型や溶着型に使用する材料を選定するために、組成の異なるカーボン(黒鉛)及びボロンナイトライド(BN)を複数種類類ずつ用意し、これら複数種類の材料毎にサンプル型を作成して、各サンプル型を用いてサンプルウエハに加熱成形を行った。なお、図示しないが、サンプルウエハには、上述したベース基板用ウエハと同様にソーダ石灰ガラスからなる円板状のウエハを用いている。また、サンプル型は、上述したスルーホール形成用型51と同様の構成からなり、サンプルウエハの一方の面側に配置されてサンプルウエハを保持する受型と、サンプルウエハの他方の面側に配置されてサンプルウエハにスルーホールを形成するための複数の凸部を有する押圧型とを有している。また、本試験の試験条件は、上述した貫通孔形成工程と同様に設定した。
【0068】
表1は、本試験に用いた型の材料と、それら材料の組成、熱膨張係数、気孔率(開気孔率及び閉気孔率)、及び加工結果をまとめた表である。すなわち、本試験では3種類のカーボン材料、及び4種類のボロンナイトライドを用いた。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示すように、実施例1,2の条件では、サンプルウエハを良好な状態に成形することができた。具体的には、泡現象の発生がなく、サンプルウエハを円板形状に維持できるとともに、スルーホールを所望の位置精度(ピッチ)で配列することができた。さらに、サンプルウエハからサンプル型を取り外す際の離型性も良好であった。
一方、比較例1では、図14に示すように、サンプルウエハに泡現象が発生して、サンプルウエハを円板形状に維持することができなかった。これは、成形時の加熱によってサンプルウエハから放出されるアウトガスが型内に充満して、アウトガスの逃げ場がなくなりサンプルウエハ内に気泡となって残存したためと考えられる。
【0071】
また、実施例3の条件では、実施例1,2と同様に、サンプルウエハを良好な状態に成形することができた。
一方、比較例3,4では、比較例1と同様に、サンプルウエハを所望の形状に維持することができなかった(図14参照)。
【0072】
このような結果から、本実施形態のサンプル型(スルーホール形成用型51及び溶着型61)の開気孔率は14%以上必要であることが分かる。
【0073】
これに対して実施例4では、サンプルウエハに泡現象の発生はなく、サンプルウエハを円板形状に維持できたものの、サンプルウエハとサンプル型との間の歪によって、サンプルウエハの厚さや外径が僅かにずれたり、サンプルウエハ上でのスルーホールの位置精度が低下したりする結果となった。
このような結果から、サンプルウエハの外形寸法や、スルーホールの位置精度を向上させるためには、熱膨張係数がガラス材料に近い材料によりサンプル型を作成することが好ましく、具体的には熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料を用いて作成することが好ましい。
【0074】
ところで、黒鉛製のサンプル型を用い、大気雰囲気下で加熱成形を行うと、加熱炉内の空気とサンプル型とが酸化反応を起こし、サンプル型の耐久性が低下するという問題がある。また、ベース基板とサンプル型との濡れ性が高くなり、サンプル型の離型性が低下するという問題もある。なお、不活性ガス雰囲気中であっても、加熱炉の搬入口及び搬出口から空気や水蒸気が流入してくる場合があり、この場合には上述した大気雰囲気下の場合と同様の問題が生じる虞がある。
表2は成形雰囲気または反応対象物の違いによる黒鉛の酸化反応開始温度を表している。
【0075】
【表2】
【0076】
表2に示すように、黒鉛製のサンプル型は、大気雰囲気下において400℃で酸化反応が開始し、水蒸気雰囲気下において700℃で酸化反応が開始した。
このことから、上述した貫通孔形成工程のように比較的高温で黒鉛製の型(スルーホール形成用型51)を用いる場合には、窒素等の不活性ガス雰囲気下で加工を行なうことが好ましい。一方、溶着工程のようにBN製の型(溶着型61)を用いる場合には、大気雰囲気下で加工を行なうことが可能である。一般的には、大気雰囲気下において600℃以上で加熱成形を行う場合に、BN製の型を使用することが好ましい。
【0077】
但し、生産数量が大規模になった場合等には、耐久性を確保する必要があるため、黒鉛に代わり耐磨耗性に優れたBNによりスルーホール形成用型51を作成し、上述した貫通孔形成工程を行っても構わない。
一方、生産数量が小規模の場合等には、BNに代わり黒鉛により溶着型61を作成しても構わない。この場合、上述したように黒鉛は大気雰囲気中で酸化反応を起こす虞もあるが、BNに比べて材料コストが安いため、黒鉛製の溶着型61を用いて作成した圧電振動子の単価を、BN製の溶着型61を用いて作成した圧電振動子1の単価と同等に抑えることができる。
【0078】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明では、上述した第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図15に示すように、第2実施形態による圧電振動子201は、貫通電極32,33となる芯材部228が円錐台状に形成されていて、スルーホール230,231は、内周面がテーパー面である。
【0079】
図16は、第2実施形態に係る鋲体の斜視図である。
図16に示すように、芯材部228は、第1実施形態と同様に製造過程において土台部229と共に鋲体227を構成している。
また、スルーホール230,231は、製造工程においてまずベース基板用ウエハ41に凹部230a,231a(図18(b)参照)として形成される。そして、後の工程で凹部230a,231aの底部側のベース基板用ウエハ41が研磨されて除去され、図15に示すようにスルーホール230,231はベース基板用ウエハ41を貫通する貫通孔となる。
【0080】
次に、第2実施形態の圧電振動子の製造方法について、図17に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、上述した第1実施形態と同様の工程については、説明を省略する。
まず、図17に示すように、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ41を製作する工程を行う(S20)。具体的に、第1実施形態と同様にベース基板用ウエハ41を製作し(S21)、続いてベース基板用ウエハ41に貫通電極32,33を形成する貫通電極形成工程を行う(S20A)。
【0081】
(凹部形成工程)
次に、ベース基板用ウエハ41に凹部230a,231aを形成する。図18はベース基板用ウエハの断面図を示しており、凹部形成工程を説明するための工程図である。
凹部230a,231aの形成は、図18に示すように、カーボンを主成分とする材料等からなる凹部形成用型(成形型)251でベース基板用ウエハ41を押圧しつつ加熱して行う。
【0082】
凹部形成用型251は、第1実施形態によるスルーホール形成用型51(図18参照)と同様に平板部252と凸部253とを備える構成であるが、凸部253は、スルーホール230,231に相当する円錐台状で、その高さがベース基板用ウエハ41の厚さよりも低く形成されている。
【0083】
図18(b)に示すように、凹部形成工程では、第1実施形態の貫通孔形成工程と同様に、凹部形成用型251の上にベース基板用ウエハ41を設置する。そして、ベース基板用ウエハ41及び凹部形成用型251を窒素等の不活性ガス雰囲気下に保持された加熱炉内に配置し、約900℃程の高温状態で圧力をかけて行う。このとき、凹部形成用型251の凸部253はベース基板用ウエハ41を貫通せず、ベース基板用ウエハ41には凹部形成用型251の凸部253の形状に倣った凹部230a,231aが形成される。凹部230a,231aは、芯材部228の外形よりも、例えば20〜30μm程大きく形成される。次に、ベース基板用ウエハ41を徐々に温度を下げながら冷却する。
【0084】
第2実施形態では、円錐台状の背低の凸部253を備えた凹部形成用型251を使用するので、第1実施形態における円柱状の背高の凸部53を備えたスルーホール形成用型51に比べて、型もちがよい。なお、凹部230a,231aは、テーパーが形成された形状なので、凹部形成工程において凹部形成用型251の離型性がよい。
凹部形成工程は、第1実施形態のようにベース基板用ウエハ41貫通するスルーホール30,31(図12(b)参照)を形成しなくてよいので、第1実施形態による貫通孔形成工程と比べて容易に行うことができる。
【0085】
(芯材部挿入工程)
続いて、凹部230a,231aに芯材部228を挿入する工程を行う(S23)。図19は、ベース基板用ウエハの断面図を示しており、芯材部挿入工程及び後述する溶着工程を説明するための工程図である。
図19に示すように、凹部230a,231aが上面となるようにベース基板用ウエハ41を設置し、上方から芯材部228を挿入し、土台部229とベース基板用ウエハ41とを接触させる。このとき、芯材部228が円錐台状であると共に、凹部230a,231aにテーパー面が形成されているので、芯材部228の挿入が行いやすい。
【0086】
(溶着工程、冷却工程)
続いて、側板64、加圧型263及び受型262を有する溶着型261を用いて、ベース基板用ウエハ41を芯材部228に溶着させる工程を行う(S24)。具体的には、鋲体227が挿入されたベース基板用ウエハ41の上側に加圧型263を設置する。加圧型263には、鋲体227の土台部229に相当する加圧型凹部268が形成されていて、この加圧型凹部268に土台部229が挿入される。土台部229と加圧型凹部268の底部とは離間しておらず、溶着工程の加圧時に土台部229は加圧型263から押圧される。
そして、ベース基板用ウエハ41の下側に、平板状の受型262を設置し、ベース基板用ウエハ41を保持する。溶着型261は、第1実施形態による溶着型61(図13参照)と同様にボロンナイトライドを主成分とする材料等で形成されている。
【0087】
そして、図19(b)に示すように、第1実施形態と同様にベース基板用ウエハ41を高温状態で加圧することで、ベース基板用ウエハ41が流動して、芯材部228と凹部230a,231aとの隙間を塞ぎ、ベース基板用ウエハ41が芯材部228に溶着する。芯材部228は一方の端部が加圧型263側から押圧されても、他方の端部がベース基板用ウエハ41の凹部230a,231aに挿入されていることにより押圧されることが無いので、加熱による芯材部228の膨張を逃がすことが可能であり、芯材部228の変形や損傷を防ぐことができる。また、芯材部228の変形や変位によりベース基板用ウエハ41にクラックや欠けが生じることを防ぐことができる。続いて、第1実施形態と同様にベース基板用ウエハ41を冷却する工程を行う(S25)。
【0088】
(土台部研磨工程、ベース基板用ウエハ研磨工程)
続いて、第2実施形態と同様に、図19(c)に示す鋲体227の土台部229を研磨して除去する(S26)。
また、土台部研磨工程と前後して、ベース基板用ウエハ41を研磨して凹部230a,231aを貫通孔にする(S27)。ベース基板用ウエハ研磨工程では、凹部230a,231aの底部側のベース基板用ウエハ41を公知の方法で研磨する。そして、図18(d)に示すように、凹部230a,231aを貫通させスルーホール230,231とし、ベース基板用ウエハ41から芯材部228の端部を露出させる。
【0089】
続いて、土台部研磨工程、ベース基板用ウエハ研磨工程後の工程を第一の実施の形態と同様に行い、パッケージ(圧電振動子201)が製造される。
【0090】
このように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。そして、溶着工程では、芯材部228を凹部230a,231aに挿入した状態でベース基板用ウエハ41を加圧することにより、芯材部228は加圧型263側の端部から加圧されるが、他方の端部からは加圧されないので、芯材部228の損傷を防ぐことができる。
また、芯材部228が円錐台状であり、凹部230a,231aにテーパー面が形成されているので、凹部230a,231aに芯材部228を挿入しやすい。
また、凹部230a,231aは、テーパーが形成された形状なので、凹部形成工程において凹部形成用型251の型離れがよい。
【0091】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図20を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図20に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0092】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0093】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、ベース基板2とリッド基板3とが確実に陽極接合され、キャビティC内の気密が確実に確保された圧電振動子1を備えているため、発振器100自体も同様に導通性が安定して確保され、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0094】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図21を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0095】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図21に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0096】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0097】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片4が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0098】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0099】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0100】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0101】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしてもよい。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0102】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、ベース基板2とリッド基板3とが確実に陽極接合され、キャビティC内の気密が確実に確保され、歩留まりが向上した高品質な圧電振動子1を備えているため、携帯情報機器自体も同様に導通性が安定して確保され、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0103】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図22を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図22に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0104】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0105】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。 続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0106】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0107】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、ベース基板2とリッド基板3とが確実に陽極接合され、キャビティC内の気密が確実に確保され、歩留まりが向上した高品質な圧電振動子1を備えているため、電波時計自体も同様に導通性が安定して確保され、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0108】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
上述した実施形態では、スルーホール形成用型51によりベース基板用ウエハ41を加熱成形することでスルーホール30,31を形成しているが、他にサンドブラスト法などでベース基板用ウエハ41にスルーホール30,31を形成してもよい。
また、スルーホール30,31内に芯材部28を挿入した後、ガラスフリットを充填し、ガラスフリットを焼成することで貫通電極を形成しても構わない。
【0109】
また、本実施形態では、上述した貫通電極32,33の形成工程の他に、リッド基板用ウエハ42にキャビティC用の凹部3aを形成する場合にも適用できる。
具体的には、図23(a)に示すように、リッド基板用ウエハ42を上下(図23中上下方向)から挟み込むように、キャビティ形成用型(成形型)151を配置する。キャビティ形成用型151は、リッド基板用ウエハ42の下側に配置された平板部152、及び平板部152の片面に形成されて凹部3aに相当する凸部153を備えた押圧型154と、リッド基板用ウエハ42の上側に配置された受型155とを備えている。なお、キャビティ形成用型151は、開気孔率が14%以上のカーボンやボロンナイトライド等により構成されている。
【0110】
そして、図23(b)に示すように、キャビティ形成用型151の押圧型154を凸部153が上側となるように設置し、その上にリッド基板用ウエハ42を設置する。そして、不活性ガス雰囲気下に保持された加熱炉内に配置し、押圧型154により押圧しつつ加熱することで、リッド基板用ウエハ42にキャビティ形成用型151の凸部153の形状に倣った凹部3aを形成することができる。
【0111】
また、上述した実施形態では、ソーダ石灰ガラスからなる基板用ウエハ41,42に対して加熱成形する場合について説明したが、これに限らず、ホウケイ酸ガラス(軟化点温度は820℃程度)を加熱成形しても構わない。
【符号の説明】
【0112】
1…圧電振動子 2…ベース基板(基板) 3…リッド基板(基板) 4…圧電振動片 9…パッケージ 28,228…芯材部 30,31…スルーホール(凹部) 32,33…貫通電極 41…ベース基板用ウエハ(貫通電極形成基板) 42…リッド基板用ウエハ(キャビティ形成基板) 51…スルーホール形成用型(成形型) 53,153,253…凸部 61,261…溶着型(成形型) 100…発振器 101…集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…計時部 130…電波時計 131…フィルタ部 151…キャビティ形成用型(成形型) 230a,231a…凹部 251…凹部形成用型(成形型)
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子(パッケージ)が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装(SMD)型の圧電振動子が知られている。表面実装型の圧電振動子は、例えば互いに接合されたガラス材料からなるベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片(電子部品)とを備えている。
【0003】
このような圧電振動子では、ベース基板に形成された貫通孔に貫通電極を形成し、この貫通電極によってキャビティ内の圧電振動片と、キャビティ外の外部電極とを電気的に接続する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
貫通電極を形成する方法としては、金属材料からなる金属ピンを用いる方法が知られている。具体的には、まずベース基板に形成された貫通孔に金属ピンを挿通するとともに、貫通孔内にガラスフリットを充填する。その後、ガラスフリットを焼成してベース基板と金属ピンとを一体化させることで、貫通孔を塞ぐとともに、圧電振動片と外部電極とを電気的に接続できるようになっている。この場合、貫通電極に金属ピンを使用することにより、安定した導電性を確保することができると考えられる。
しかしながら、上述した方法では、ガラスフリットに含まれる有機物のバインダが焼成により除去されるので、ガラスフリットの表面には体積減少による凹部が生じることがあった。そして、このガラスフリットの凹部が、後に行う電極膜(外部電極等)を形成する工程で断線の原因となることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−124845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、近時では、ベース基板に形成された貫通孔に金属ピンを溶着させることで、貫通電極を形成する方法が開発されている。この方法では、まずカーボン(等方性電気黒鉛質)等からなる貫通孔形成用型でベース基板を押圧しつつ、加熱することで、金属ピンを挿通させるための貫通孔を形成する(1次成形)。その後、貫通孔内に金属ピンを挿通させた状態で、ベース基板及び金属ピンをカーボン等からなる溶着型内にセットし、押圧しつつ加熱する(2次成形)。これにより、ベース基板が溶着型内で流動して金属ピンと貫通孔との隙間を塞ぐとともに、ベース基板が金属ピンに溶着するようになっている。なお、一般的に上述した1次成形は窒素雰囲気で、2次成形は大気雰囲気で成形を行っている。
【0006】
ここで、上述した方法を採用するにあたって、未だ以下の課題が残されている。
まず、ベース基板を加熱すると、ベース基板から型内にアウトガスが放出される。そして、アウトガスが型内に充満すると、アウトガスの逃げ場がなくなってしまう。すると、ベース基板からアウトガスが抜けきらず、ベース基板内に気泡となって残存する。その結果、ベース基板が型崩れを起こし(いわゆる、泡現象が発生する)、ベース基板を所望の形状に維持することができないという問題がある。
【0007】
また、圧電振動子では、ベース基板に貫通電極を形成した後、貫通電極と外部とを電気的接続する外部電極や、貫通電極と圧電振動片とを電気的接続する引き回し電極等の電極膜を、フォトリソグラフィ技術やスパッタリング法等を用いて形成する。そのため、貫通電極と電極膜との導通を確保するためには、ベース基板上における貫通電極の位置精度(貫通孔や金属ピンの位置精度)を高くする必要がある。
【0008】
そこで本発明は、基板を所望の形状に加熱成形することができるパッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係るパッケージの製造方法は、互いに接合されたガラス材料からなる複数の基板と、前記複数の基板の内側に形成された電子部品を封入可能なキャビティとを備えたパッケージの製造方法であって、前記基板を成形型で押圧しつつ加熱して成形する成形工程を有し、前記成形型は開気孔率が14%以上の材料で構成されていることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、開気孔率が14%以上の材料で成形型を構成することで、加熱成形時において、基板から放出されるアウトガスが、成形型の開気孔内に入り込む。すなわち、成形型の開気孔が基板から放出されるアウトガスの逃げ場となり、基板内におけるアウトガスの残存量を低減できるので、上述した泡現象の発生を抑制できる。したがって、加熱成形による基板の型崩れを抑制し、基板を所望の形状に維持することができる。
なお、開気孔率とは、試料の外形容積を1とした場合、この中に占める開気孔部分の容積の百分比である(JIS R 1634)。
【0011】
また、前記成形型は、熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料で構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、成形型の熱膨張係数と基板(ガラス材料の場合、一般的に8.3ppm/℃程度)の熱膨張係数との差を縮小できるので、成形工程での加熱に伴う成形型と基板との間に生じる歪等を抑制でき、成形工程時の位置精度を向上できる。この場合、例えば貫通電極の形成時において基板上の所望の位置に貫通電極を配置できる。その結果、その後に形成される外部電極や引き回し電極等の電極膜と、貫通電極との導通を確保できる。
【0012】
また、前記成形工程は不活性ガス雰囲気下で行い、前記成形型はカーボンを主成分とする材料からなることを特徴としている。
この構成によれば、カーボンは一般的に熱膨張係数がガラス材料に近いため、上述したように加熱に伴う成形型と基板との間に生じる歪等を抑制でき、成形工程時の位置精度を向上できる。
しかも、不活性ガス雰囲気下で成形工程を行うことで、カーボン製の成形型を用いた場合であっても、成形型の酸化を抑制できるので、成形型の基板との濡れ性の上昇を抑制し、成形型の離型性を維持できる。また、成形型の耐久性を向上させることができる。
さらに、カーボンを主成分とする材料は、材料コストが比較的安いため、安価な成形型を作成できる。さらに、カーボンを主成分とする材料は、加工が容易であるため、NCマシン等によって成形型を簡単、かつ高精度に形成できる。これにより、成形型の加工表面における平面度を確保できるため、加工表面に倣って成形される基板の平面度も確保できる。
【0013】
また、前記成形工程は大気雰囲気下で行い、前記成形型はボロンナイトライドを主成分とする材料からなることを特徴としている。
この構成によれば、ボロンナイトライドを主成分とする材料は、耐酸化性に優れているため、大気雰囲気中で成形工程を行った場合でも、成形型の基板との濡れ性の上昇を抑制し、成形型の酸化を抑制できる。これにより、上述したように成形型の離型性を維持できる。また、成形型の耐久性を向上させるとともに、比較的高温での成形を行うことができる。
さらに、ボロンナイトライドを主成分とする材料は、機械加工性に優れているため、成形型の加工表面における平面度を確保することができ、加工表面に倣って成形される基板の平面度を確保できる。
【0014】
また、前記キャビティの内部と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、前記貫通電極形成工程は、前記複数の基板のうち、貫通電極形成基板の厚さ方向に沿う凹部を形成する凹部形成工程と、前記貫通電極形成基板の前記凹部内に、導電材料で形成された芯材部を挿入する芯材部配置工程とを有し、前記成形工程は、前記凹部形成工程において、前記凹部に相当する凸部を有する前記成形型で前記貫通電極形成基板を押圧しつつ、加熱することにより前記凹部を形成する工程であることを特徴としている。
この構成によれば、上述したように貫通電極形成基板の泡現象等の発生を抑制できるので、加熱成形後の貫通電極形成基板を所望の形状に維持できる。
しかも、熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料により構成された成形型を用いた場合には、成形型と貫通電極形成基板との間の歪を抑制できるため、貫通電極形成基板をより高精度に成形できる。また、凹部を所望の位置に高精度に形成することができる。そして、このように形成された凹部内に芯材部を挿入することで、貫通電極を所望の位置に高精度に配置できる。
【0015】
また、前記貫通電極形成工程は、前記芯材部配置工程の後段で、前記貫通電極形成基板を前記芯材部に溶着させる溶着工程を有し、前記成形工程は、前記溶着工程において、前記貫通電極形成基板を前記成形型で押圧しつつ、加熱することにより、前記貫通電極形成基板を前記芯材部に溶着させる工程であることを特徴としている。
この構成によれば、上述したように貫通電極形成基板の泡現象等の発生を抑制できるので、溶着後の貫通電極形成基板を所望の形状に形成できる。
しかも、熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料により構成された成形型を用いた場合には、成形型と貫通電極形成基板との間で発生する歪を抑制できる。これにより、貫通電極形成基板をさらに高精度に成形できる。また、成形型と貫通電極形成基板との間で発生する歪によって、成形型から芯材部へ作用する応力を低減できるので、貫通孔内の芯材部が成形型に引っ張られ、所望の位置から変位したり、倒れ込んだりすることを抑制できる。その結果、貫通電極形成基板上における貫通電極の位置精度を向上できるため、その後に形成される外部電極や引き回し電極等の電極膜と、貫通電極との導通を確保できる。
【0016】
また、前記複数の基板のうち、キャビティ形成基板に対して、前記キャビティを形成するキャビティ形成工程を有し、前記成形工程は、前記キャビティ形成工程において、前記キャビティに相当する凸部を有する前記成形型で前記キャビティ形成基板を押圧しつつ、加熱することにより前記キャビティを形成する工程であることを特徴としている。
この構成によれば、上述したようにキャビティ形成基板の泡現象等の発生を抑制できるので、加熱成形後のキャビティ形成基板を所望の形状に形成できる。
しかも、熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料により成形型を作成した場合には、成形型とキャビティ形成基板との間の歪を抑制できるため、キャビティを所望の位置に高精度に形成することができる。そのため、気密性に優れたパッケージを提供することができる。
【0017】
また、本発明のパッケージは、上記本発明のパッケージの製造方法により製造されたことを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージの製造方法を使用してパッケージを製造することで、基板内でのアウトガスの残存量を低減して、パッケージの気孔率を低減できるので、気密性に優れたパッケージを提供することができる。また、貫通電極の位置精度を向上できるので、キャビティの内部と外部との導通性に優れたパッケージを提供することができる。
【0018】
また、本発明の圧電振動子は、上記本発明のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明の気密性に優れたパッケージを備えているので、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を製造することができる。
【0019】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0022】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に振動特性に優れた信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るパッケージの製造方法及びパッケージによれば、開気孔率が14%以上の材料で成形型を構成することで、基板を所望の形状に加熱成形することができるため、気密性に優れ、かつキャビティの内部と外部との導通性にも優れたパッケージを提供することができる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、上記本発明のパッケージを備えているので、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を製造することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上記圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に振動特性に優れた信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係る圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】圧電振動子のリッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う側面断面図である。
【図4】圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動片の平面図である。
【図6】圧電振動片の底面図である。
【図7】図5のB−B線に沿う断面図である。
【図8】図1に示す圧電振動子を製造する際に使用する鋲体の斜視図である。
【図9】第1実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図10】ウエハ体の分解斜視図である。
【図11】図1に示す圧電振動子に備えるベース基板の元となるベース基板用ウエハにスルーホールを形成した状態を示す斜視図である。
【図12】第1実施形態に係るベース基板用ウエハの断面図を示しており、貫通孔形成工程を説明するための工程図である。
【図13】第1実施形態に係るベース基板用ウエハの断面図を示しており、芯材部挿入工程、溶着工程、及び研磨工程を説明するための工程図である。
【図14】泡現象が発生した状態を示すサンプルウエハの平面写真である。
【図15】第2実施形態に係る図2のA−A線に相当する側面断面図である。
【図16】第2実施形態に係る鋲体の斜視図である。
【図17】第2実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図18】第2実施形態に係るベース基板用ウエハの断面図を示しており、凹部形成工程を説明するための工程図である。
【図19】第2実施形態に係るベース基板用ウエハの断面図を示しており、芯材部挿入工程及び溶着工程を説明するための工程図である。
【図20】実施形態に係る発振器の構成図である。
【図21】実施形態に係る電子機器の構成図である。
【図22】実施形態に係る電波時計の構成図である。
【図23】リッド基板用ウエハの断面図を示しており、キャビティ形成工程の他の方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
(圧電振動子)
次に、本発明の実施形態に係る圧電振動子を、図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る圧電振動子の外観斜視図である。図2は、圧電振動子のリッド基板を取り外した状態の平面図である。図3は、図2のA−A線に沿う側面断面図である。図4は、圧電振動子の分解斜視図である。なお図4では、図面を見易くするために、後述する圧電振動片4の励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17及び重り金属膜21の図示を省略している。
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2及びリッド基板3が接合膜35を介して陽極接合されたパッケージ9と、パッケージ9のキャビティCに収納された圧電振動片4と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。
【0026】
図5は圧電振動片の平面図であり、図6は底面図であり、図7は図5のB−B線に沿う断面図である。
図5〜図7に示すように、圧電振動片4は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。この圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10,11と、該一対の振動腕部10,11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10,11の両主面上に形成された溝部18とを備えている。この溝部18は、該振動腕部10,11の長手方向に沿って振動腕部10,11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0027】
また、本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部10,11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10,11を振動させる第1の励振電極13及び第2の励振電極14からなる励振電極15と、第1の励振電極13及び第2の励振電極14に電気的に接続されたマウント電極16,17とを有している。励振電極15、マウント電極16,17及び引き出し電極19,20は、例えば、クロム(Cr)やニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)等の導電性材料の被膜により形成されている。
【0028】
励振電極15は、一対の振動腕部10,11を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極である。励振電極15を構成する第1の励振電極13及び第2の励振電極14は、一対の振動腕部10,11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部18上と他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極14が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部18上とに主に形成されている。また、第1の励振電極13及び第2の励振電極14は、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極19,20を介してマウント電極16,17に電気的に接続されている。
【0029】
また、一対の振動腕部10,11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。
【0030】
図1,図3及び図4に示すように、リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる陽極接合可能な基板であり、略板状に形成されている。リッド基板3におけるベース基板2との接合面側には、圧電振動片4を収容するキャビティC用の凹部3aが形成されている。
【0031】
リッド基板3におけるベース基板2との接合面側の全体に、陽極接合用の接合膜35が形成されている。すなわち接合膜35は、凹部3aの内面全体に加えて、凹部3aの周囲の額縁領域に形成されている。本実施形態の接合膜35はSi膜で形成されているが、接合膜35をAlで形成することも可能である。なお接合膜として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材を可能することも可能である。そして後述するように、この接合膜35とベース基板2とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0032】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる基板であり、図1〜図4に示すように、リッド基板3と同等の外形で略板状に形成されている。
ベース基板2の上面2a側(リッド基板3との接合面側)には、図1〜図4に示すように、一対の引き回し電極36,37がパターニングされている。各引き回し電極36,37は、例えば下層のCr膜及び上層のAu膜の積層体によって形成されている。
そして図3,図4に示すように、引き回し電極36,37の表面に、金等のバンプBを介して、上述した圧電振動片4のマウント電極16,17がバンプ接合されている。圧電振動片4は、ベース基板2の上面2aから振動腕部10,11を浮かせた状態で接合されている。
【0033】
またベース基板2には、該ベース基板2を貫通する一対の貫通電極32,33が形成されている。貫通電極32,33は、スルーホール30,31の中に導電性の金属材料からなる芯材部28を配設して形成され、芯材部28を通して安定した電気導通性が確保されている。一方の貫通電極32は、一方の引き回し電極36の直下に形成されている。他方の貫通電極33は、振動腕部11の先端付近に形成され、引き回し配線を介して他方の引き回し電極37に接続されている。
【0034】
芯材部28は、ベース基板2との溶着によって固定されており、芯材部28がスルーホール30,31を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持している。芯材部28は、例えば、コバールやFe−Ni合金(42アロイ)等の、熱膨張係数がベース基板2のガラス材料と近い(好ましくは同等か低め)材料により円柱状に形成された導電性の金属芯材で、両端が平坦で且つベース基板2の厚さと同じ厚さである。
【0035】
図8は、鋲体の斜視図である。
なお、貫通電極32,33が完成品として形成された場合には、上述したように芯材部28は、円錐台状でベース基板2の厚さと同じ厚さとなるように形成されているが、製造過程では、図8に示すように、芯材部28の一方の端部に連結された平板状の土台部29と共に鋲体27を形成している。すなわち、芯材部28は、延在方向が土台部29の厚さ方向に一致するように支持されている。また、芯材部28の厚さ(高さ)は、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ41(図10参照)の厚さよりも薄く形成されている。
土台部29及びベース基板用ウエハ41から突出した芯材部28の先端部は、製造過程において、研磨され除去されている。またベース基板2の下面2bには、図1,図3及び図4に示すように、一対の外部電極38,39が形成されている。一対の外部電極38,39は、ベース基板2の長手方向の両端部に形成され、一対の貫通電極32,33に対してそれぞれ電気的に接続されている。
【0036】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極38,39に対して、所定の駆動電圧を印加する。すると、一方の外部電極38から、一方の貫通電極32及び一方の引き回し電極36を介して、圧電振動片4の第1の励振電極13に通電される。また他方の外部電極39から、他方の貫通電極33及び他方の引き回し電極37を介して、圧電振動片4の第2の励振電極14に通電される。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極13及び第2の励振電極14からなる励振電極15に電流を流すことができ、一対の振動腕部10,11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10,11の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0037】
(圧電振動子の製造方法)
次に上述した圧電振動子の製造方法について説明する。図9は、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。図10はウエハ体の分解斜視図である。以下には、ベース基板用ウエハ(貫通電極形成基板)41とリッド基板用ウエハ(キャビティ形成基板)42との間に複数の圧電振動片4を封入してウエハ体43を形成し、ウエハ体43を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図10以下の各図に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
【0038】
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S1)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S30)とを主に有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S1)、ベース基板用ウエハ作製工程(S20)及びリッド基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0039】
圧電振動片作製工程(S1)では、図5〜図7に示す圧電振動片4を作製する。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄等の適切な処理を施した後、ウエハをフォトリソグラフィ技術によって圧電振動片4の外形形状にパターニングするとともに、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17、重り金属膜21を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製することができる。次に、圧電振動片4の共振周波数の粗調を行う。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、振動腕部10,11の重量を変化させることで行う。
【0040】
次に、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ41を製作する工程を行う(S10)。まず、図10,図11に示すようなベース基板用ウエハ41を形成する。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去する(S11)。なお、図11は、ベース基板用ウエハ41の一部分を示す斜視図であり、実際にはベース基板用ウエハ41は略円板状である(図10参照)。また、図11中のスルーホール30,31は、後述するベース基板用ウエハ41に貫通電極32,33を形成する工程にて形成される。
【0041】
(貫通電極形成工程)
続いて、ベース基板用ウエハ41に貫通電極32,33を形成する貫通電極形成工程を行う(S10A)。
(貫通孔形成工程)
まず、ベース基板用ウエハ41を貫通するスルーホール(凹部)30,31を形成する(S12)。図12はベース基板用ウエハの断面図を示しており、貫通孔形成工程(凹部形成工程)を説明するための工程図である。なお、本明細書では、スルーホール30,31等、ベース基板用ウエハ41を厚さ方向に貫通する場合も含めて、ベース基板用ウエハ41の表面から窪んだ部位は凹部に含んでいる。
スルーホール30,31の形成は、図12に示すように、平板部52と平板部52の片面に形成された凸部53とを備えたカーボン材料からなるスルーホール形成用型(成形型)51で、ベース基板用ウエハ41を押圧しつつ加熱して行う。
【0042】
平板部52は、ベース基板用ウエハ41を押圧する時に、ベース基板用ウエハ41の表面に接するフラットな部材である。
凸部53は、ベース基板用ウエハ41を押圧する時に、ベース基板用ウエハ41を貫通してスルーホール30,31を形成する部材である。凸部53の側面には型抜き用のテーパーが形成され、凸部53の形状がスルーホール30,31に転写される。このとき、スルーホール30,31は、芯材部28の径よりも20〜30μm程大きい内径となるように形成される。なお、後の製造工程でベース基板用ウエハ41が芯材部28に溶着することで、スルーホール30,31は芯材部28に塞がれる。
【0043】
貫通孔形成工程(S12)では、まず図12(a)に示すように、スルーホール形成用型51を凸部53が上側(図12中上側)となるように設置し、その上にベース基板用ウエハ41を設置する。そして、不活性ガス雰囲気(窒素雰囲気)下に保持された加熱炉内に配置し、約900℃程の高温状態で圧力をかけることで、ベース基板用ウエハ41に凸部53を貫通させる。
その後、ベース基板用ウエハ41を徐々に温度を下げながら冷却する。
【0044】
上述したように貫通孔形成工程(S12)では、カーボン製のスルーホール形成用型51を使用しているが、加熱炉内が不活性ガス雰囲気(窒素雰囲気)下に保持されているので、スルーホール形成用型51の酸化を抑制でき、スルーホール形成用型51の耐久性を向上できる。この場合、加熱炉の温度は最高1000℃程度まで加熱することができる。また、スルーホール形成用型51の酸化に伴う濡れ性の増加も抑制できるので、ベース基板用ウエハ41からのスルーホール形成用型51の離型性も維持できる。なお、図示しないが、ベース基板用ウエハ41の上側には、スルーホール形成用型51とでベース基板用ウエハ41を挟み込み、スルーホール形成用型51から作用する圧力を支持する受型が配置されている。
【0045】
ここで、本実施形態のスルーホール形成用型51は、開気孔率が14%以上で、かつ熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料を用いて作成することが好ましい。
スルーホール形成用型51の開気孔率を14%以上にすることで、加熱成形時にベース基板用ウエハ41から放出されるアウトガスが、スルーホール形成用型51の開気孔内に入り込む。すなわち、スルーホール形成用型51の開気孔がベース基板用ウエハ41から放出されるアウトガスの逃げ場となり、ベース基板用ウエハ41内でのアウトガスの残存量を低減して、上述した泡現象の発生を抑制できる。したがって、加熱成形後のベース基板用ウエハ41の型崩れを抑制し、ベース基板用ウエハ41を所望の円板形状に維持することができる。
また、離型時にはスルーホール形成用型51の気孔内に存在するガスが、スルーホール形成用型51とベース基板用ウエハ41との間に入り込むため、加熱成形後のベース基板用ウエハ41がスルーホール形成用型51に接着し難くなり、スルーホール形成用型51の離型性を向上させることができる。そのため、ベース基板用ウエハ41の割れ等を防ぐとともに、製造効率を向上できる。なお、開気孔率とは、試料(スルーホール形成用型51)の外形容積を1とした場合、この中に占める開気孔部分の容積の百分比である(JIS R 1634)。
【0046】
さらに、スルーホール形成用型51の熱膨張係数を4ppm/℃以上にすることで、スルーホール形成用型51の熱膨張係数とベース基板用ウエハ(一般的に8.3ppm/℃程度)の熱膨張係数との差を縮小できるので、加熱に伴うスルーホール形成用型51とベース基板用ウエハ41との間に生じる歪を抑制できる。これにより、ベース基板用ウエハ41を所望の厚みや外径に高精度に形成できる。また、ベース基板用ウエハ41上において凸部53を所望の位置に配することができるので、スルーホール30,31の位置精度を確保することができる。
このような条件を満たす材料として、本実施形態のスルーホール形成用型51は、上述したようにカーボンを用いている。カーボンを主成分とする材料は、材料コストが比較的安いため、安価なスルーホール形成用型51を作成できる。さらに、カーボンを主成分とする材料は、加工が容易であるため、NCマシン等によってスルーホール形成用型51を簡単、かつ高精度形成できる。また、スルーホール形成用型51の加工表面における平面度(例えば、30μm以内)を確保できるため、加工表面に倣って成形されるベース基板用ウエハ41の平面度も確保することができる。
【0047】
(芯材部挿入工程)
続いて、スルーホール30,31内に芯材部28を挿入する工程を行う(S13)。図13はベース基板用ウエハの断面図を示しており、芯材部挿入工程、溶着工程、及び研磨工程を説明するための工程図である。
図13(a)に示すように、ベース基板用ウエハ41を後述する溶着型61の加圧型63の上に設置して、スルーホール30,31内に鋲体27の芯材部28を上側から挿入し、鋲体27の土台部29とベース基板用ウエハ41とを接触させて、加圧型63と後述する溶着型61の受型62とでベース基板用ウエハ41及び鋲体27を挟み、図13(b)に示すように、上下反転させる。なお、芯材部28をスルーホール30,31に挿入する工程は、振り込み機を使用して行う。
このとき、土台部29は、スルーホール30,31の開口よりも大きく、開口を塞ぐことができる平面形状とする。芯材部28は土台部29と連結した鋲体27なので、スルーホール30,31に挿入しやすく作業性がよい。
【0048】
(溶着工程)
続いて、ベース基板用ウエハ41を加熱し、芯材部28にベース基板用ウエハ41を溶着させる工程を行う(S14)。
溶着工程は、ベース基板用ウエハ41の下側に設置される受型62と、ベース基板用ウエハ41の上側に設置される加圧型63と、受型62と加圧型63の側方に設置される側板64と、を備えたカーボン材料からなる溶着型61にベース基板用ウエハ41を1枚ずつ設置し、ベース基板用ウエハ41を押圧しつつ加熱して行う。
【0049】
受型62は、ベース基板用ウエハ41の下側を及び鋲体27を保持する型で、ベース基板用ウエハ41の平面形状よりも大きく、スルーホール30,31に鋲体27の芯材部28が挿通されて、ベース基板用ウエハ41から土台部29が突出するベース基板用ウエハ41の下側(図13(b)中下側)に沿った形状をしている。
受型62は、ベース基板用ウエハ41を保持する時にベース基板用ウエハ41の表面に接する受型平板部65と、土台部29に接して土台部29に相当する凹部の受型凹部66とを備えている。
受型凹部66は、ベース基板用ウエハ41に設置された鋲体27の土台部29の位置に合わせて形成されている。受型凹部66に土台部29がはめ込まれることで、受型62は鋲体27を保持できて、鋲体27が外れたり、芯材部28がずれたりすることを防ぐことができる。
【0050】
加圧型63は、ベース基板用ウエハ41を押圧する型で、受型62と同じ平面形状で、スルーホール30,31に鋲体27の芯材部28が挿通されて、ベース基板用ウエハ41から芯材部28の先端部が突出するベース基板用ウエハ41の上側(図13(b)中上側)に沿った形状をしている。
加圧型63は、ベース基板用ウエハ41の上側を押圧する時に、ベース基板用ウエハ41に接する加圧型平板部67と、芯材部28の先端部が挿入される加圧型凹部68とを備えている。
【0051】
加圧型凹部68は、ベース基板用ウエハ41から突出する芯材部28の高さよりも約0.2mm深さのある凹部で、芯材部28の先端部と加圧型凹部68の底部との間には隙間69を備えている。
芯材部28の先端部と加圧型凹部68の底部との間に隙間69があることにより、加熱による芯材部28の膨張を逃がすことができる。また、加圧型63でベース基板用ウエハ41押圧する時に、加圧型63から芯材部28へ圧力がかからず、芯材部28の変形や変位を防ぐことができる。
加圧型凹部68は、ベース基板用ウエハ41から突出する芯材部28の位置に合わせて形成されている。
【0052】
また、加圧型63は、端部に加圧型63を貫通するスリット70を備えている。スリット70は、ベース基板用ウエハ41を加熱し押圧した時の空気やベース基板用ウエハ41の余剰なガラス材料の逃げ穴とすることができる。
【0053】
溶着工程は、まず、溶着型61にセットされたベース基板用ウエハ41及び鋲体27を金属製のメッシュベルトの上に乗せた状態で大気雰囲気下に保持された加熱炉内に入れて加熱する。そして、加熱炉内に配置されたプレス機等を利用して、加圧型63によって、ベース基板用ウエハ41を例えば30〜50g/cm2の圧力で加圧する。なお、加熱温度は、ベース基板用ウエハ41の730℃以上(ソーダ石灰ガラスの軟化点温度前後)に設定する。
【0054】
そして、ベース基板用ウエハ41を高温状態で加圧することによって、ベース基板用ウエハ41が流動して芯材部28とスルーホール30,31との隙間を塞ぎ、ベース基板用ウエハ41が芯材部28に溶着して、芯材部28がスルーホール30,31を塞ぐ状態となる。なお、溶着型61に他の凸部や凹部を形成しておくことにより、ベース基板用ウエハ41を芯材部28に溶着させると共にベース基板用ウエハ41に凹部や凸部を形成することも可能である。
【0055】
次に、溶着工程の加熱時の730℃から徐々に温度を下げ、ベース基板用ウエハ41を冷却する(S15)。これにより、図13(c)に示すような、鋲体27の芯材部28がスルーホール30,31を塞いだ状態のベース基板用ウエハ41が形成される。
【0056】
ここで、本実施形態の溶着型61は、上述したスルーホール形成用型51と同様に、開気孔率が14%以上で、かつ熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料を用いて作成することが好ましい。
溶着型61の開気孔率を14%以上にすることで、上述した泡現象の発生を抑制して、ベース基板用ウエハ41を所望の円板形状に維持することができるとともに、溶着型61の離型性を向上させることができる。
さらに、溶着型61の熱膨張係数を4ppm/℃以上にすることで、加熱に伴う溶着型61とベース基板用ウエハ41との間に生じる歪を抑制できる。これにより、ベース基板用ウエハ41を所望の厚みや外径に高精度に形成できる。また、溶着型61とベース基板用ウエハ41との間に生じる歪によって、溶着型61から鋲体27へ作用する応力を低減できるため、溶着型61の受型凹部66内にはめ込まれた土台部29が溶着型61に引っ張られ、鋲体27が所望の位置から変位したり、倒れ込んだりすることを抑制できる。これにより、ベース基板用ウエハ41上における貫通電極32,33の位置精度を向上できるため、貫通電極32,33に接続される外部電極38,39や引き回し電極36,37との導通性を確保することができる。
【0057】
このような条件を満たす材料として、本実施形態の溶着型61はボロンナイトライド等を主成分とする材料により構成されている。ボロンナイトライドを主成分とする材料は、耐酸化性に優れているため、大気雰囲気中で溶着工程を行った場合でも溶着型61の酸化を抑制できる。これにより、溶着型61の濡れ性の上昇を抑制し、離型性を維持できる。また、溶着型61の耐久性を向上させるとともに、比較的高温での成形を行うことができる。さらに、ボロンナイトライドは、機械加工性に優れているため、溶着型61の加工表面における平面度(例えば、30μm以内)を確保でき、加工表面に倣って成形されるベース基板用ウエハ41の平面度も確保することができる。
【0058】
(研磨工程)
続いて、鋲体27の土台部29及び芯材部28の突出部分を研磨して除去する(S16)。
鋲体27の土台部29及び芯材部28の研磨は公知の方法で行う。そして、図13(d)に示すように、ベース基板用ウエハ41の表面と貫通電極32,33(芯材部28)の表面とが、略面一な状態となる。このようにして、ベース基板用ウエハ41に貫通電極32,33が形成される。なお、土台部29や芯材部28の突出した部分は除去せずに、そのまま使用してもよい。例えば、土台部29や芯材部28の突出した部分は放熱板などとして使用することができる。
【0059】
このように、ベース基板用ウエハ41及び鋲体27を溶着型61で押圧しつつ加熱することで、ベース基板用ウエハ41を芯材部28に溶着させているので、有機物のバインダを含まない材料で貫通電極32,33を形成することができる。そのため、スルーホール30,31と芯材部28との間をガラスフリットで埋める場合と異なり、有機物の除去に伴う体積減少がなく、貫通電極32,33周囲に凹部が生じることを防ぐことができる。
【0060】
次に、図10に示すように、ベース基板用ウエハ41の上面に導電性材料をパターニングして、引き回し電極形成工程を行う(S17)。このようにして、ベース基板用ウエハ41の製作工程が終了する。
【0061】
次に、ベース基板2の製作と同時または前後のタイミングで、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ42を製作する(S30)。リッド基板3を製作する工程では、まず、後にリッド基板3となる円板状のリッド基板用ウエハ42を形成する。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去する(S31)。次いで、リッド基板用ウエハ42にエッチングやプレス加工等によりキャビティC用の凹部3aを形成する(S32)。次に、ベース基板用ウエハ41との接合面を研磨する。
【0062】
次に、リッド基板用ウエハ42におけるベース基板用ウエハ41との接合面及び凹部3aの内面にスパッタ等により接合膜35を形成する(S33)。このように、接合膜35をリッド基板用ウエハ42の内面全体に形成することで、接合膜35のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。なお、接合膜35は、成膜後にパターニングすることで、リッド基板用ウエハ42におけるベース基板用ウエハ41との接合面のみに形成する構成でも構わない。また、接合膜形成工程(S33)の前に接合面を研磨しているので、接合膜35の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ41との安定した接合を実現することができる。
【0063】
そして、上述した圧電振動片作製工程(S1)で作製した複数の圧電振動片4を、ベース基板用ウエハ41の各引き回し電極36,37上に、それぞれ金等のバンプBを介してマウントする。そして、上述した各ウエハ41,42の作成工程で作成されたベース基板用ウエハ41及びリッド基板用ウエハ42を重ね合わせる。これにより、マウントされた圧電振動片4が、リッド基板用ウエハ42に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ41とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0064】
両基板用ウエハ41,42の重ね合わせ後、重ね合わせた2枚のウエハ41,42を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハの外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する。これにより、圧電振動片4をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ41とリッド基板用ウエハ42とが接合したウエハ体43を得ることができる。
その後、一対の貫通電極32,33にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38,39を形成し、圧電振動子1の周波数を微調整する。そして、ウエハ体43を切断線Mに沿って個片化する切断工程を行い、内部の電気特性検査を行うことで圧電振動片4を収容した圧電振動子1が形成される。
【0065】
このように、本実施形態では、開気孔率が14%以上で、かつ熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料からなるスルーホール形成用型51及び溶着型61を用いてベース基板用ウエハ41を加熱成形する構成とした。
この構成によれば、上述したように開気孔率を14%以上に設定することで、上述したようにベース基板用ウエハ41の泡現象の発生を抑制できるとともに、加熱成形後のスルーホール形成用型51及び溶着型61の離型性を向上できる。これにより、圧電振動子1の歩留まりを向上できる。また、ベース基板用ウエハ41でのアウトガスの残存量を低減して、ベース基板用ウエハ41の気孔率を下げることができるので、ベース基板用ウエハ41とリッド基板用ウエハ42の凹部3aが陽極接合されてなる圧電振動子1のキャビティCの気密性を確保することができる。よって、気密性に優れたパッケージ9を製造することができるので、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子1を製造することができる。
【0066】
さらに、熱膨張係数を4ppm/℃以上に設定することで、加熱に伴うスルーホール形成用型51及び溶着型61とベース基板用ウエハ41との間に生じる歪等を抑制して、ベース基板用ウエハ41を所望の形状に形成できるとともに、貫通電極32,33を所望の位置精度で形成できる。これにより、後に形成される引き回し電極36,37や外部電極38,39と、貫通電極32,33との導通を確保できるので、キャビティCの内部と外部との導通性に優れたパッケージ9を提供することができる。
【0067】
(実施例)
ここで、本発明を、実施例を挙げて説明する。
本願発明者は、上述した凹部形成用型や溶着型に使用する材料を選定するために、組成の異なるカーボン(黒鉛)及びボロンナイトライド(BN)を複数種類類ずつ用意し、これら複数種類の材料毎にサンプル型を作成して、各サンプル型を用いてサンプルウエハに加熱成形を行った。なお、図示しないが、サンプルウエハには、上述したベース基板用ウエハと同様にソーダ石灰ガラスからなる円板状のウエハを用いている。また、サンプル型は、上述したスルーホール形成用型51と同様の構成からなり、サンプルウエハの一方の面側に配置されてサンプルウエハを保持する受型と、サンプルウエハの他方の面側に配置されてサンプルウエハにスルーホールを形成するための複数の凸部を有する押圧型とを有している。また、本試験の試験条件は、上述した貫通孔形成工程と同様に設定した。
【0068】
表1は、本試験に用いた型の材料と、それら材料の組成、熱膨張係数、気孔率(開気孔率及び閉気孔率)、及び加工結果をまとめた表である。すなわち、本試験では3種類のカーボン材料、及び4種類のボロンナイトライドを用いた。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示すように、実施例1,2の条件では、サンプルウエハを良好な状態に成形することができた。具体的には、泡現象の発生がなく、サンプルウエハを円板形状に維持できるとともに、スルーホールを所望の位置精度(ピッチ)で配列することができた。さらに、サンプルウエハからサンプル型を取り外す際の離型性も良好であった。
一方、比較例1では、図14に示すように、サンプルウエハに泡現象が発生して、サンプルウエハを円板形状に維持することができなかった。これは、成形時の加熱によってサンプルウエハから放出されるアウトガスが型内に充満して、アウトガスの逃げ場がなくなりサンプルウエハ内に気泡となって残存したためと考えられる。
【0071】
また、実施例3の条件では、実施例1,2と同様に、サンプルウエハを良好な状態に成形することができた。
一方、比較例3,4では、比較例1と同様に、サンプルウエハを所望の形状に維持することができなかった(図14参照)。
【0072】
このような結果から、本実施形態のサンプル型(スルーホール形成用型51及び溶着型61)の開気孔率は14%以上必要であることが分かる。
【0073】
これに対して実施例4では、サンプルウエハに泡現象の発生はなく、サンプルウエハを円板形状に維持できたものの、サンプルウエハとサンプル型との間の歪によって、サンプルウエハの厚さや外径が僅かにずれたり、サンプルウエハ上でのスルーホールの位置精度が低下したりする結果となった。
このような結果から、サンプルウエハの外形寸法や、スルーホールの位置精度を向上させるためには、熱膨張係数がガラス材料に近い材料によりサンプル型を作成することが好ましく、具体的には熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料を用いて作成することが好ましい。
【0074】
ところで、黒鉛製のサンプル型を用い、大気雰囲気下で加熱成形を行うと、加熱炉内の空気とサンプル型とが酸化反応を起こし、サンプル型の耐久性が低下するという問題がある。また、ベース基板とサンプル型との濡れ性が高くなり、サンプル型の離型性が低下するという問題もある。なお、不活性ガス雰囲気中であっても、加熱炉の搬入口及び搬出口から空気や水蒸気が流入してくる場合があり、この場合には上述した大気雰囲気下の場合と同様の問題が生じる虞がある。
表2は成形雰囲気または反応対象物の違いによる黒鉛の酸化反応開始温度を表している。
【0075】
【表2】
【0076】
表2に示すように、黒鉛製のサンプル型は、大気雰囲気下において400℃で酸化反応が開始し、水蒸気雰囲気下において700℃で酸化反応が開始した。
このことから、上述した貫通孔形成工程のように比較的高温で黒鉛製の型(スルーホール形成用型51)を用いる場合には、窒素等の不活性ガス雰囲気下で加工を行なうことが好ましい。一方、溶着工程のようにBN製の型(溶着型61)を用いる場合には、大気雰囲気下で加工を行なうことが可能である。一般的には、大気雰囲気下において600℃以上で加熱成形を行う場合に、BN製の型を使用することが好ましい。
【0077】
但し、生産数量が大規模になった場合等には、耐久性を確保する必要があるため、黒鉛に代わり耐磨耗性に優れたBNによりスルーホール形成用型51を作成し、上述した貫通孔形成工程を行っても構わない。
一方、生産数量が小規模の場合等には、BNに代わり黒鉛により溶着型61を作成しても構わない。この場合、上述したように黒鉛は大気雰囲気中で酸化反応を起こす虞もあるが、BNに比べて材料コストが安いため、黒鉛製の溶着型61を用いて作成した圧電振動子の単価を、BN製の溶着型61を用いて作成した圧電振動子1の単価と同等に抑えることができる。
【0078】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明では、上述した第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図15に示すように、第2実施形態による圧電振動子201は、貫通電極32,33となる芯材部228が円錐台状に形成されていて、スルーホール230,231は、内周面がテーパー面である。
【0079】
図16は、第2実施形態に係る鋲体の斜視図である。
図16に示すように、芯材部228は、第1実施形態と同様に製造過程において土台部229と共に鋲体227を構成している。
また、スルーホール230,231は、製造工程においてまずベース基板用ウエハ41に凹部230a,231a(図18(b)参照)として形成される。そして、後の工程で凹部230a,231aの底部側のベース基板用ウエハ41が研磨されて除去され、図15に示すようにスルーホール230,231はベース基板用ウエハ41を貫通する貫通孔となる。
【0080】
次に、第2実施形態の圧電振動子の製造方法について、図17に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、上述した第1実施形態と同様の工程については、説明を省略する。
まず、図17に示すように、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ41を製作する工程を行う(S20)。具体的に、第1実施形態と同様にベース基板用ウエハ41を製作し(S21)、続いてベース基板用ウエハ41に貫通電極32,33を形成する貫通電極形成工程を行う(S20A)。
【0081】
(凹部形成工程)
次に、ベース基板用ウエハ41に凹部230a,231aを形成する。図18はベース基板用ウエハの断面図を示しており、凹部形成工程を説明するための工程図である。
凹部230a,231aの形成は、図18に示すように、カーボンを主成分とする材料等からなる凹部形成用型(成形型)251でベース基板用ウエハ41を押圧しつつ加熱して行う。
【0082】
凹部形成用型251は、第1実施形態によるスルーホール形成用型51(図18参照)と同様に平板部252と凸部253とを備える構成であるが、凸部253は、スルーホール230,231に相当する円錐台状で、その高さがベース基板用ウエハ41の厚さよりも低く形成されている。
【0083】
図18(b)に示すように、凹部形成工程では、第1実施形態の貫通孔形成工程と同様に、凹部形成用型251の上にベース基板用ウエハ41を設置する。そして、ベース基板用ウエハ41及び凹部形成用型251を窒素等の不活性ガス雰囲気下に保持された加熱炉内に配置し、約900℃程の高温状態で圧力をかけて行う。このとき、凹部形成用型251の凸部253はベース基板用ウエハ41を貫通せず、ベース基板用ウエハ41には凹部形成用型251の凸部253の形状に倣った凹部230a,231aが形成される。凹部230a,231aは、芯材部228の外形よりも、例えば20〜30μm程大きく形成される。次に、ベース基板用ウエハ41を徐々に温度を下げながら冷却する。
【0084】
第2実施形態では、円錐台状の背低の凸部253を備えた凹部形成用型251を使用するので、第1実施形態における円柱状の背高の凸部53を備えたスルーホール形成用型51に比べて、型もちがよい。なお、凹部230a,231aは、テーパーが形成された形状なので、凹部形成工程において凹部形成用型251の離型性がよい。
凹部形成工程は、第1実施形態のようにベース基板用ウエハ41貫通するスルーホール30,31(図12(b)参照)を形成しなくてよいので、第1実施形態による貫通孔形成工程と比べて容易に行うことができる。
【0085】
(芯材部挿入工程)
続いて、凹部230a,231aに芯材部228を挿入する工程を行う(S23)。図19は、ベース基板用ウエハの断面図を示しており、芯材部挿入工程及び後述する溶着工程を説明するための工程図である。
図19に示すように、凹部230a,231aが上面となるようにベース基板用ウエハ41を設置し、上方から芯材部228を挿入し、土台部229とベース基板用ウエハ41とを接触させる。このとき、芯材部228が円錐台状であると共に、凹部230a,231aにテーパー面が形成されているので、芯材部228の挿入が行いやすい。
【0086】
(溶着工程、冷却工程)
続いて、側板64、加圧型263及び受型262を有する溶着型261を用いて、ベース基板用ウエハ41を芯材部228に溶着させる工程を行う(S24)。具体的には、鋲体227が挿入されたベース基板用ウエハ41の上側に加圧型263を設置する。加圧型263には、鋲体227の土台部229に相当する加圧型凹部268が形成されていて、この加圧型凹部268に土台部229が挿入される。土台部229と加圧型凹部268の底部とは離間しておらず、溶着工程の加圧時に土台部229は加圧型263から押圧される。
そして、ベース基板用ウエハ41の下側に、平板状の受型262を設置し、ベース基板用ウエハ41を保持する。溶着型261は、第1実施形態による溶着型61(図13参照)と同様にボロンナイトライドを主成分とする材料等で形成されている。
【0087】
そして、図19(b)に示すように、第1実施形態と同様にベース基板用ウエハ41を高温状態で加圧することで、ベース基板用ウエハ41が流動して、芯材部228と凹部230a,231aとの隙間を塞ぎ、ベース基板用ウエハ41が芯材部228に溶着する。芯材部228は一方の端部が加圧型263側から押圧されても、他方の端部がベース基板用ウエハ41の凹部230a,231aに挿入されていることにより押圧されることが無いので、加熱による芯材部228の膨張を逃がすことが可能であり、芯材部228の変形や損傷を防ぐことができる。また、芯材部228の変形や変位によりベース基板用ウエハ41にクラックや欠けが生じることを防ぐことができる。続いて、第1実施形態と同様にベース基板用ウエハ41を冷却する工程を行う(S25)。
【0088】
(土台部研磨工程、ベース基板用ウエハ研磨工程)
続いて、第2実施形態と同様に、図19(c)に示す鋲体227の土台部229を研磨して除去する(S26)。
また、土台部研磨工程と前後して、ベース基板用ウエハ41を研磨して凹部230a,231aを貫通孔にする(S27)。ベース基板用ウエハ研磨工程では、凹部230a,231aの底部側のベース基板用ウエハ41を公知の方法で研磨する。そして、図18(d)に示すように、凹部230a,231aを貫通させスルーホール230,231とし、ベース基板用ウエハ41から芯材部228の端部を露出させる。
【0089】
続いて、土台部研磨工程、ベース基板用ウエハ研磨工程後の工程を第一の実施の形態と同様に行い、パッケージ(圧電振動子201)が製造される。
【0090】
このように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。そして、溶着工程では、芯材部228を凹部230a,231aに挿入した状態でベース基板用ウエハ41を加圧することにより、芯材部228は加圧型263側の端部から加圧されるが、他方の端部からは加圧されないので、芯材部228の損傷を防ぐことができる。
また、芯材部228が円錐台状であり、凹部230a,231aにテーパー面が形成されているので、凹部230a,231aに芯材部228を挿入しやすい。
また、凹部230a,231aは、テーパーが形成された形状なので、凹部形成工程において凹部形成用型251の型離れがよい。
【0091】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図20を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図20に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0092】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0093】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、ベース基板2とリッド基板3とが確実に陽極接合され、キャビティC内の気密が確実に確保された圧電振動子1を備えているため、発振器100自体も同様に導通性が安定して確保され、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0094】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図21を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0095】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図21に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0096】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0097】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片4が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0098】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0099】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0100】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0101】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしてもよい。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0102】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、ベース基板2とリッド基板3とが確実に陽極接合され、キャビティC内の気密が確実に確保され、歩留まりが向上した高品質な圧電振動子1を備えているため、携帯情報機器自体も同様に導通性が安定して確保され、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0103】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図22を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図22に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0104】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0105】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。 続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0106】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0107】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、ベース基板2とリッド基板3とが確実に陽極接合され、キャビティC内の気密が確実に確保され、歩留まりが向上した高品質な圧電振動子1を備えているため、電波時計自体も同様に導通性が安定して確保され、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0108】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
上述した実施形態では、スルーホール形成用型51によりベース基板用ウエハ41を加熱成形することでスルーホール30,31を形成しているが、他にサンドブラスト法などでベース基板用ウエハ41にスルーホール30,31を形成してもよい。
また、スルーホール30,31内に芯材部28を挿入した後、ガラスフリットを充填し、ガラスフリットを焼成することで貫通電極を形成しても構わない。
【0109】
また、本実施形態では、上述した貫通電極32,33の形成工程の他に、リッド基板用ウエハ42にキャビティC用の凹部3aを形成する場合にも適用できる。
具体的には、図23(a)に示すように、リッド基板用ウエハ42を上下(図23中上下方向)から挟み込むように、キャビティ形成用型(成形型)151を配置する。キャビティ形成用型151は、リッド基板用ウエハ42の下側に配置された平板部152、及び平板部152の片面に形成されて凹部3aに相当する凸部153を備えた押圧型154と、リッド基板用ウエハ42の上側に配置された受型155とを備えている。なお、キャビティ形成用型151は、開気孔率が14%以上のカーボンやボロンナイトライド等により構成されている。
【0110】
そして、図23(b)に示すように、キャビティ形成用型151の押圧型154を凸部153が上側となるように設置し、その上にリッド基板用ウエハ42を設置する。そして、不活性ガス雰囲気下に保持された加熱炉内に配置し、押圧型154により押圧しつつ加熱することで、リッド基板用ウエハ42にキャビティ形成用型151の凸部153の形状に倣った凹部3aを形成することができる。
【0111】
また、上述した実施形態では、ソーダ石灰ガラスからなる基板用ウエハ41,42に対して加熱成形する場合について説明したが、これに限らず、ホウケイ酸ガラス(軟化点温度は820℃程度)を加熱成形しても構わない。
【符号の説明】
【0112】
1…圧電振動子 2…ベース基板(基板) 3…リッド基板(基板) 4…圧電振動片 9…パッケージ 28,228…芯材部 30,31…スルーホール(凹部) 32,33…貫通電極 41…ベース基板用ウエハ(貫通電極形成基板) 42…リッド基板用ウエハ(キャビティ形成基板) 51…スルーホール形成用型(成形型) 53,153,253…凸部 61,261…溶着型(成形型) 100…発振器 101…集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…計時部 130…電波時計 131…フィルタ部 151…キャビティ形成用型(成形型) 230a,231a…凹部 251…凹部形成用型(成形型)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合されたガラス材料からなる複数の基板と、
前記複数の基板の内側に形成された電子部品を封入可能なキャビティとを備えたパッケージの製造方法であって、
前記基板を成形型で押圧しつつ加熱して成形する成形工程を有し、
前記成形型は開気孔率が14%以上の材料で構成されていることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記成形型は、熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料で構成されていることを特徴とする請求項1記載のパッケージの製造方法。
【請求項3】
前記成形工程は不活性ガス雰囲気下で行い、前記成形型はカーボンを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のパッケージの製造方法。
【請求項4】
前記成形工程は大気雰囲気下で行い、前記成形型はボロンナイトライドを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のパッケージの製造方法。
【請求項5】
前記キャビティの内部と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、
前記貫通電極形成工程は、
前記複数の基板のうち、貫通電極形成基板の厚さ方向に沿う凹部を形成する凹部形成工程と、
前記貫通電極形成基板の前記凹部内に、導電材料で形成された芯材部を挿入する芯材部配置工程とを有し、
前記成形工程は、前記凹部形成工程において、前記凹部に相当する凸部を有する前記成形型で前記貫通電極形成基板を押圧しつつ、加熱することにより前記凹部を形成する工程であることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記貫通電極形成工程は、前記芯材部配置工程の後段で、前記貫通電極形成基板を前記芯材部に溶着させる溶着工程を有し、
前記成形工程は、前記溶着工程において、前記貫通電極形成基板を前記成形型で押圧しつつ、加熱することにより、前記貫通電極形成基板を前記芯材部に溶着させる工程であることを特徴とする請求項5記載のパッケージの製造方法。
【請求項7】
前記複数の基板のうち、キャビティ形成基板に対して、前記キャビティを形成するキャビティ形成工程を有し、
前記成形工程は、前記キャビティ形成工程において、前記キャビティに相当する凸部を有する前記成形型で前記キャビティ形成基板を押圧しつつ、加熱することにより前記キャビティを形成する工程であることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載のパッケージの製造方法により製造されたことを特徴とするパッケージ。
【請求項9】
請求項8記載のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項10】
請求項9記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項11】
請求項9記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項12】
請求項9記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
互いに接合されたガラス材料からなる複数の基板と、
前記複数の基板の内側に形成された電子部品を封入可能なキャビティとを備えたパッケージの製造方法であって、
前記基板を成形型で押圧しつつ加熱して成形する成形工程を有し、
前記成形型は開気孔率が14%以上の材料で構成されていることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記成形型は、熱膨張係数が4ppm/℃以上の材料で構成されていることを特徴とする請求項1記載のパッケージの製造方法。
【請求項3】
前記成形工程は不活性ガス雰囲気下で行い、前記成形型はカーボンを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のパッケージの製造方法。
【請求項4】
前記成形工程は大気雰囲気下で行い、前記成形型はボロンナイトライドを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のパッケージの製造方法。
【請求項5】
前記キャビティの内部と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、
前記貫通電極形成工程は、
前記複数の基板のうち、貫通電極形成基板の厚さ方向に沿う凹部を形成する凹部形成工程と、
前記貫通電極形成基板の前記凹部内に、導電材料で形成された芯材部を挿入する芯材部配置工程とを有し、
前記成形工程は、前記凹部形成工程において、前記凹部に相当する凸部を有する前記成形型で前記貫通電極形成基板を押圧しつつ、加熱することにより前記凹部を形成する工程であることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記貫通電極形成工程は、前記芯材部配置工程の後段で、前記貫通電極形成基板を前記芯材部に溶着させる溶着工程を有し、
前記成形工程は、前記溶着工程において、前記貫通電極形成基板を前記成形型で押圧しつつ、加熱することにより、前記貫通電極形成基板を前記芯材部に溶着させる工程であることを特徴とする請求項5記載のパッケージの製造方法。
【請求項7】
前記複数の基板のうち、キャビティ形成基板に対して、前記キャビティを形成するキャビティ形成工程を有し、
前記成形工程は、前記キャビティ形成工程において、前記キャビティに相当する凸部を有する前記成形型で前記キャビティ形成基板を押圧しつつ、加熱することにより前記キャビティを形成する工程であることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載のパッケージの製造方法により製造されたことを特徴とするパッケージ。
【請求項9】
請求項8記載のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項10】
請求項9記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項11】
請求項9記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項12】
請求項9記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−182343(P2011−182343A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47186(P2010−47186)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【出願人】(509336200)エヌ・エス・ジー・プレシジョン株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【出願人】(509336200)エヌ・エス・ジー・プレシジョン株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]